官報資料版 平成14年7月31日




                  ▽首都圏白書のあらまし……………………国土交通省

                  ▽ビデオリンク方式による証人尋問………最高裁判所











首都圏白書のあらまし


国土交通省


 「首都圏整備に関する年次報告」は、首都圏整備法(昭和三十一年法律第八三号)第三十条の二の規定に基づき、首都圏整備計画の策定及び実施に関する状況について、報告を行うものである。

全体構成

序 章 トピックで見る首都圏この一年
第1章 首都圏整備をめぐる最近の動向
 第1節 首都圏の人の流れ
     〜バランスのとれた圏域構造に向けて〜
 第2節 国際比較にみる東京の生活
     〜各国主要都市との比較と外国人アンケートにより東京の魅力を探る〜
 第3節 魅力ある都市を目指して
     〜都市再生の最近の動向〜
第2章 首都圏の現況
 第1節 人口の状況
 第2節 活力創出に資する機能の状況
 第3節 個人の多様な活動の展開
 第4節 環境との共生
 第5節 安全・快適で質の高い生活環境の整備
 第6節 将来に引き継ぐ社会資本の整備
第3章 首都圏整備の推進
 第1節 首都圏整備計画の推進
 第2節 首都圏整備計画に基づく主要な事業の実施状況
 参 考:首都圏整備に関する各種データ

序章 トピックで見る首都圏この一年

 首都圏において、平成十三年度に起こった主要な出来事をトピックとして取り上げ、首都圏整備が着実に進展している様子を写真入りで紹介した。
☆横浜市立大学連携大学院の開設<平成十三年四月二日>
 平成十三年四月、京浜臨海部の研究開発拠点「横浜サイエンスフロンティア」(横浜市鶴見区)内に、横浜市立大学大学院生態超分子システム科学専攻(鶴見キャンパス)が開設された。
 同大学院は、ゲノム科学の総合的な研究開発拠点を目指して設立された理化学研究所横浜研究所ゲノム科学研究センターに隣接し、同研究所との連携大学院を構築して、研究交流、施設の共同利用等を進めている。
☆さいたま市誕生<平成十三年五月一日>
 平成十三年五月一日、浦和・大宮・与野の三市が合併した「さいたま市」が誕生した。
 さいたま市は、人口約百四万人(平成十四年二月一日現在)、面積一六八・三三平方キロメートルで、全国十番目の百万都市となり、平成十五年度には全国十三番目の政令指定都市を目指す。
☆成田空港暫定平行滑走路完成<平成十三年十月三十日>
 新東京国際空港(成田空港)では、二本目の滑走路となる長さ二千百八十メートルの暫定平行滑走路が十月三十日に完成し、サッカーワールドカップに先立つ平成十四年四月十八日に供用開始した。
 このほか、
 ・横浜港大水深(十六メートル)岸壁供用開始(平成十三年四月二日)
 ・晴海アイランド トリトンスクエア グランドオープン(平成十三年四月十四日)
 ・埼玉スタジアム二〇〇二の完成(平成十三年十月六日)
 ・高速湾岸線(五期)開通(平成十三年十月二十二日)
 ・工業等制限制度の廃止を答申(平成十三年十二月二十七日)
 ・首都圏中央連絡自動車道 青梅IC〜日の出IC開通(平成十四年三月二十九日)のトピックを紹介した。

第1章 首都圏整備をめぐる最近の動向

 首都圏の近年の動向の中で、特徴的な事柄や圏域整備に資する施策について記述した。

第1節 首都圏の人の流れ
    〜バランスのとれた圏域構造に向けて〜

1 東京都心部への人口の回帰
(1) 転入超過に転じた東京都区部の人口
 東京都区部においては転入者数、転出者数ともピーク時には年間六十万人を超えていたが、その後、転入、転出ともに減少を続け、近年は転入、転出とも三十万人台と移動規模は縮小してきた。その間、常に転出が転入を上回る転出超過の状態で推移していたため、東京都区部の人口は減少していた。
 一九九〇年代後半から、こうした状況に変化が現れ、転入者数は横ばいから微増に留まっているのに対し、転出者数は大きく減少しており、平成九年に転入が転出を上回る転入超過に転じた(第1図参照)。
(2) 年齢別にみた人口の動向
    〜十代後半から三十代の動向が大きく影響〜
 「東京都区部」について、国勢調査結果による年齢五歳階級別人口の移動の増減を、五年間の年代別に分析すると、昭和六十年〜平成二年では、十代後半と二十代前半以外の年齢階級については人口が減少していた。
 特に、二十代後半マイナス一八・五%、三十代前半マイナス一六・二%、三十代後半マイナス一二・三%と大きく減少していたが、平成七年から十二年については、二十代後半マイナス〇・一%、三十代前半マイナス三・〇%、三十代後半マイナス二・三%とわずかな減少にとどまった(第2図参照)。
 これまで結婚や出産などにより東京都区部の近郊・郊外へ転出していた傾向が、東京都区部に留まる傾向に転じつつあると考えられる。
(3) 東京都区部と周辺地域で緩やかに職住近接が進展
 こうした東京都区部での夜間人口の増加により、平成七年まで拡大していた東京都区部の昼夜人口差が三百二十六万人から三百三万人に縮小した。
 一方、夜間人口の増加が鈍化し、昼間人口の増加を下回った多摩地域及び近隣三県(埼玉、千葉、神奈川県)の昼夜人口差もマイナス三百十一万人からマイナス二百九十万人に縮小し、東京都区部とその周辺地域ともにわずかながら昼夜間人口の格差が縮小した(第3図第4図参照)。
 また、都心三区の人口密度は、人口の転出超過により、平成二年には郊外(多摩地域+近隣三県)の人口集中地区の人口密度を下回り、その差はさらに拡大する傾向にあった。しかし平成十二年には、都心三区の人口密度が再び上昇し、郊外との差は縮小した(第5図参照)。
 こうした都心部の昼夜間人口格差や、郊外との人口密度の格差縮小から、職住近接を目的とした都心居住が進展していることが考えられる。

2 東京圏における拠点的な都市への機能集積
(1) 業務核都市において進む人口集積
 東京都区部への一極依存型構造を是正し、バランスのとれた地域構造へ改善するため、東京都区部以外の地域において、その周辺の相当程度広範囲の地域(自立都市圏)の中核となるべき都市の区域を業務核都市として重点的に育成・整備している。
 平成七〜十二年では、東京都区部への人口回帰とともに、業務核都市への人口集積が進展した(第6図参照)。
(2) 業務核都市の拠点性の向上
 業務核都市における業務機能の集積をみるために、事業所数、従業員数について、業務核都市と東京都区部を比較してみると、いずれも業務核都市における増勢が上回っており、下落に転じた平成八〜十一年においても、東京都区部より高い水準を保っている(第7図第8図参照)。

3 分散型ネットワーク構造の形成の進展
 通勤、買い物等において、業務核都市間を移動する人の流れは、業務核都市と東京都区部間を移動する人の流れに比べ、伸び率で上回っており、業務核都市間の交流・連携が活発化し、環状方向のネットワーク形成が進展していることが分かる(第9図第10図参照)。
 このように、首都圏の圏域構造は、東京都区部に大きく依存した放射方向の地域構造から、諸機能をバランスよく備えた自立性の高い地域が、相互に連携・交流しあう「分散型ネットワーク構造」の形成へと進展しつつあるものと考えられる。

第2節 国際比較にみる東京の生活
    〜各国主要都市との比較と外国人アンケートにより東京の魅力を探る〜

1 各国主要都市とのデータによる比較
(1) 交通環境
 東京(二十三区)は、鉄道・地下鉄の路線密度が最も高く、広域にわたり鉄道網が整備されており、鉄道への依存度が高い都市であるが、地下鉄の混雑率は各都市より高くなっている(第1表第11図参照)。また、東京は、ニューヨーク・ロンドンと比べると、深夜の地下鉄・深夜バスの本数が少ない(第12図参照)。国際空港へのアクセス時間は、現状では最も長くなっている(第1表参照)。
 タクシー料金を二キロメートル当たりで比較してみると、東京は、他の都市と比べるとやや高めである。また、交通事故による死者数は、十万人当たりでみると、香港に次いで少なくなっている(第13図参照)。
(2) 生活環境
 文化施設を比較すると、オーケストラ、劇場、映画館、博物館等の数において、アジアの都市との比較では上回っているものの、欧米の都市よりおおむね少ない(第14図参照)。
 医療の充実度をみると、東京は、一千人当たりの病院・診療所数、医師・歯科医師数、病床数のいずれについても上位に位置している(第15図参照)。
 また、東京の保育所数は、十万世帯当たりでみると、中ほどに位置している(第2表参照)。

2 外国人からみた東京の魅力
 東京の魅力や欠点について、外国人居住者の認識を把握するため過去に海外主要都市で居住し、現在東京に居住する外国人に対してアンケートを行った。
(1) 東京に対する印象
 都市景観については、「路上の清潔さ」や「賑わい・活気」を評価していることから、道や街の雰囲気に対する評価はおおむね高い一方で、「建物の調和」に対して評価が厳しい。都市交通については、「鉄道・地下鉄の運行時間・本数・路線の充実」を評価している一方で、「鉄道・地下鉄の快適さ(混雑度の低さ)」への評価は低い(第16図参照)。
 生活環境については、「買い物の便利さ」「飲食の便利さ」が評価されているが、「住宅の住みやすさ」や「住宅の探しやすさ」の住居関係と美術館等文化施設やスポーツ環境の充実度に対して低い評価がされている。
 また、治安については評価する一方で近隣住民との付き合いは、評価が低い傾向にある(第17図参照)。
 過去に居住した都市別結果で、都市間で差異の大きいものについてみると、「建物の調和」はロンドン・パリ居住経験者の評価が低い(第18図参照)。
 情報通信環境は、ソウル居住経験者の情報通信への不満が大きく、東京のインターネット環境への不満が反映しているものと考えられる(第19図参照)。
 治安は、特に欧米三都市居住経験者の評価が高い(第20図参照)。
(2) 外国人居住者に好まれる東京の街
「皇居周辺、新宿御苑」をはじめ、「青山、表参道、代官山」や「多摩地域」のように、街路樹や緑が多い街・地域への評価が高い。「上野、浅草、谷中」といった古い都市景観を残した街や「お台場、幕張、横浜MM21」といったその対極にある近年整備された近未来的な都市景観を持つ街、そして「新宿、渋谷、池袋」や「銀座、日本橋」のショッピング・外食関係店舗の集積地が好まれている(第21図参照)。
 なお、東京のどこが好まれるのかについて、回答者が居住経験のある都市別にみると、「お台場、幕張、横浜MM21」は欧米三都市居住経験者より、アジア三都市居住経験者に好まれている一方で、「新宿、渋谷、池袋」は、欧米三都市居住経験者の方が好む傾向がある。

第3節 魅力ある都市をめざして〜都市再生の最近の動向〜

 平成十三年五月、内閣総理大臣を本部長とする「都市再生本部」が内閣に設置され、構造改革の一環として、都市再生の推進に強力に取り組むこととなった。ここでは、首都圏における都市再生の取組等を紹介する。

1 都市環境インフラ
 水と緑のネットワーク空間の形成など都市環境インフラを保全・再生・創出することにより、環境負荷を低減するとともに、自然環境を回復し、持続可能な社会を実現する地域整備が求められている。
 都市環境インフラの重要な構成要素である緑を中心とした自然的土地利用(森林、荒地、河川敷等。以下、「緑地等」という)の状況をみると、首都圏における既成市街地及び近郊整備地帯において、昭和六十二年から平成八年までの間に、緑地等の約一万八千二百ヘクタール(緑地等の約九%)が失われ、住宅地等に変わっている。
 こうしたことから、首都圏の緑地等について、保全すべき対象及びその課題を抽出するため、自然環境を総点検するとともに、水と緑のネットワーク空間の形成に資する都市環境インフラのグランドデザインについて検討することを目的として、平成十四年三月一日に「自然環境の総点検等に関する協議会」が関係都県市及び関係省庁を構成員として設置され、具体的な取組が始められた。

2 民間都市開発プロジェクト
 東京都区部では大規模な都市開発プロジェクトが着実に進められている。高さ百メートルを超える建築物を建築確認により把握すると、平成九年度から棟数が多くなり、平成十二年度末現在、総棟数百八十二棟となっている。それ以前に比べて共同住宅の割合が高い(第22図第23図参照)。
 また、都市の再生の主要な担い手である民間による都市開発を促進させるため、平成十四年三月二十九日に都市再生特別措置法が成立した。
 同法においては、内閣に都市再生本部を設置し、都市の再生の推進に関する基本方針等を策定するとともに、都市の再生に資する民間の都市開発事業に係る認定及び支援制度、都市計画に係る特例措置の創設等、様々な措置を講じることとしている。
 このほか、都市再生に関する以下の取組等を紹介した。
・東京湾の再生
 都市再生プロジェクトとして「海の再生」が位置付けられ、先行的に東京湾奥部について、水質を改善するための行動計画を策定することととされた。この決定を受け、平成十四年二月に七都県市及び関係各省からなる東京湾再生推進会議が設置された。
・ゴミゼロ型都市への取組
 循環型社会構築のため、都市再生プロジェクトとして決定された「大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築」に向け、平成十三年七月に、七都県市及び関係各省による「ゴミゼロ協議会」が設置され、平成十四年四月に中長期計画をとりまとめた。
・東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備
 都市再生プロジェクトとして、基幹的広域防災拠点を、東京湾臨海部に整備するとされたことを受け、平成十三年七月に関係省庁及び関係都県市による「首都圏広域防災拠点整備協議会」が設置された。
・国際交流・物流機能強化の推進
 新東京国際空港(成田空港)については、暫定平行滑走路(二千百八十メートル)の供用開始に引き続き、これを、二千五百メートルの平行滑走路として早期完成すること、東京国際空港(羽田空港)については再拡張に早期着手すること、これに加え、両空港の利便性を向上させるための空港アクセスの改善が都市再生プロジェクトとして決定された。また、港湾の二十四時間フルオープン化等国際港湾の機能強化についても、併せて位置づけられた。
・環状道路の整備
 大都市圏の交通混雑を緩和するためには、環状道路の整備が重要である。首都圏においては、首都圏三環状道路と横浜環状線を整備することとし、特に、首都圏三環状道路においては、平成十九年度までに暫定的な環状機能を確保すること等が、都市再生プロジェクトとして決定された。

都市再生プロジェクト一覧

プロジェクトの内容

第一次決定(平成十三年六月十四日)
 @東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備
 ・基幹的広域防災拠点の整備
 A大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築
 ・廃棄物・リサイクル関連施設の整備と水運等を活用した静脈物流システムの構築
 B中央官庁施設のPFIによる整備
 ・文部科学省・会計検査院の建替え
第二次決定(平成十三年八月二十八日)
 C大都市圏における国際交流・物流機能の強化
 ○大都市圏における空港の機能強化と空港アクセスの利便性向上
 ・成田、羽田(再拡張)、関西国際空港(二期)、中部国際空港の整備
 ・北総開発鉄道北総・公団線を延伸して成田空港へ至る路線の早期整備
 ・東京外かく環状道路(東側区間)の早期整備と北千葉道路の計画の早期具体化
 ・都営浅草線の東京駅接着及び追い抜き線新設の早期実現
 ・京浜急行蒲田駅改善事業の早期実施
 ○大都市圏における国際港湾の機能強化
 ・港湾の二十四時間フルオープン化の早期実現等港湾運営のさらなる効率化、国際コンテナターミナル機能の強化(東京圏等の中枢国際港湾)
 ・輸出入・港湾行政手続きのワンストップサービス化、湾内ノンストップ航行の実現、国際水準の高規格コンテナターミナルの整備、幹線道路網とのアクセス向上(東京港・横浜港において先導的に実施)
 D大都市圏における環状道路体系の整備
 ・首都圏三環状道路(首都圏中央連絡自動車道・東京外かく環状道路、中央環状線)の整備推進
 ・横浜環状線の整備推進
 E大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点形成
 ・ライフサイエンスに関する大学や試験研究機関、医療・製薬産業等の集積を育成し、相互に連携させることにより、ライフサイエンスの基礎から臨床研究、産業化に至る総合的な国際拠点を形成
 F都市部における保育所待機児童の解消
 GPFI手法の一層の推進
第三次決定(平成十三年十二月四日)
 H密集市街地の緊急整備
 ・密集市街地のうち特に大火の可能性の高い危険な市街地を今後十年間で重点地区として整備
 ・密集市街地全域について、敷地の集約化等に向けた住民の主体的取組の支援体制を強化するとともに民間活力を最大限発揮できる制度を導入
 I都市における既存ストックの活用
 ・既存の建築物について長期間にわたって活用を促すしくみの整備、既存の民間住宅を安心して売買・更新できるしくみの整備や、公共賃貸住宅約三百万戸の総合活用計画の策定、学校の余裕教室や用途廃止した庁舎等公共施設等の用途転換による有効活用等
 J大都市圏における都市環境インフラの再生
 ・大都市圏の既成市街地において、自然環境を保全・創出・再生することにより水と緑のネットワークを構築し、自然とのふれあいの場の拡大等を図る
 ・まとまりのある自然環境の保全、大都市における緑の創出、河川や海の再生、市街地の雨水貯留・浸透機能の回復等、各領域の施策を総合的に推進

第2章 首都圏の現況

 産業、居住、環境、社会資本整備など各分野における首都圏の現況について記述した。

1 魅力ある居住環境の整備
 平成十三年、東京圏において新築分譲マンションの供給戸数は、過去最高だった平成十二年を六・七%下回る八万九千二百五十六戸になったものの、史上第二番目の供給戸数であり、平成十一年以降三年連続して八万戸を超える大量供給であった(第24図参照)。供給されている物件は、東京圏、東京都区部ともに平均価格はほぼ横ばいで平均面積は拡大している(第25図参照)。
 マンションの総戸数規模別でみると、ここ三年の傾向として、百戸未満の物件で供給戸数が減少しているのに対し、四百戸以上の物件は増加しており、また供給月販売率は規模が大きくなるにつれ高くなる傾向にある(第26図参照)。

2 産業機能の状況
(1) ソフト系IT産業の動向
 ソフト系IT産業は全国に三万五千七百六十九事業所あり、首都圏に立地する事業所は一万六千三百十七で全国比約四六%となっている(第27図参照)。
 首都圏におけるソフト系IT産業の開業率は平成十二年三〜九月の二二・九%をピークに低下傾向にあるものの、極めて高い水準にある(参考:平成八〜十一年の首都圏全産業の開業率は四・五%)。一方、廃業率はやや上昇傾向にあることがうかがえる(第28図参照)。
(2) アニメーション産業の動向
 日本のアニメーションは、国際的にも高い評価を受けており、日本で放映されるテレビアニメーションの多くが輸出されている。また、DVD市場の拡大、ブロードバンド化が進展する中で、アニメーション市場の成長も期待されている。
 アニメーション産業の事業所立地について調査したところ全国に二百八十三事業所あり、その七六%に当たる二百十四事業所が東京都に立地している。
 事業所の分布をみると西武新宿線(四十七社)、中央線(四十七社)、西武池袋線(四十社)等の沿線に多くの事業所が立地している(第29図参照)。この背景として、この地域に、アニメ草創期を支えた大手プロダクションが昭和三十年代から立地していたことなどが考えられる。

3 リサイクルの推進
 資源循環型の都市の創造に向けて、東京湾臨海部では、リサイクル施設整備が緒についている。川崎市では、ゼロエミッション工業団地が平成十三年度に概成し、今後、団地内の企業は団地内とその周辺で廃棄物処理・リサイクルを推進し、廃棄物の発生・移動を抑制していくこととしている。
 また、千葉市では、臨海部地域の再生を先導する地区として、蘇我臨海部を位置づけ、低未利用地を都市的な土地利用へ転換することで有効活用を図り、都市の再生・再構築を推進していくこととしている。このうちリサイクル機能系の土地利用を図る地区では、国内初のガス化溶融炉施設が平成十二年四月より稼働しており、一般廃棄物・産業廃棄物をリサイクルしている。

4 安全な暮らしの実現
  〜木造住宅密集市街地における震災対策の取組〜
 地震時に大きな被害が想定される木造住宅密集市街地については、その早急な整備改善が課題になっており、平成十三年十二月に都市再生本部において「密集市街地の緊急整備」が都市再生プロジェクトとして決定された。

5 交通体系の整備
@臨海部を支える東京湾岸道路
 〜首都高速道路高速湾岸線(五期)の開通〜
 平成十三年十月二十二日、首都高速道路高速湾岸線のうち杉田から三渓園までの間七キロメートルの区間(高速湾岸線(五期))が開通した。今回の開通により、横須賀・湘南方面と横浜・川崎・東京方面の所要時間が大幅に短縮され、また、狩場線や横浜横須賀道路の交通量が減少することにより渋滞が大幅に緩和している(第3表参照)。
A交通渋滞等の原因となる踏切の解消を図る立体交差化の推進
 都市部の交通渋滞などを引き起こしている踏切への対策として、これまで踏切道の立体交差化等を積極的に進めてきた。このうち連続立体交差事業は複数の踏切を同時に除去するものであり、交通渋滞の解消を図るとともに、まちづくりの面からの効果も期待される事業である。
 こうした連続立体交差事業は平成十三年度現在、全国で六十二か所、首都圏では十五か所で事業を実施しており、円滑、安全、快適な都市空間の創出に向け、今後も国、道路管理者、鉄道事業者等が連携し推進していくこととしている。
 このほか、事務所立地動向、NPO・テレワーク等個人の多様な活動、河川環境の保全・回復等環境との共生、鉄道・空港・港湾等の社会基盤の整備の状況等を記述した。

第3章 首都圏整備の推進

 平成十三年十月に策定された整備計画等、首都圏整備に資する国土交通省の各種施策や十三年度の事業実施状況について記述した。

1 首都圏整備計画の推進
  〜首都圏整備計画の概要〜
 第五次首都圏基本計画(平成十一年三月)に基づき、最初の整備計画(計画期間:平成十三年度〜十七年度)が、平成十三年十月に策定された。本整備計画は、東京中心部、近郊地域などの地域区分ごとに整備の方向性を明示するとともに、その実現に必要な道路、鉄道等の各種施設の事業を重点的に記述している。
 地域整備の方向性としては、東京中心部への過度の依存を緩和し、各地域の拠点的な都市を中心に、自立性の高い地域の形成と、それらの地域の相互の連携・交流によって機能を高めあう「分散型ネットワーク構造」の形成を目指している。
 そのために必要な事業として、東京中心部では、東京外かく環状道路、東京港の整備推進や東京国際空港(羽田空港)の再拡張等が、近郊地域では、拠点都市の連携強化につながる首都圏中央連絡自動車道、つくばエクスプレス(常磐新線)の整備推進等が盛り込まれている。

2 国の行政機関の移転の推進
 平成十四年三月末までに、移転対象の七十六機関十一部隊等(廃止等により現在は七十一機関十一部隊等)のうち、さいたま新都心地区への集団的移転(九省庁十七機関、約六千三百人、平成十二年五月完了)をはじめとする四十六機関十一部隊等の移転が完了している。
 なお、平成十四年度に移転する六特殊法人について、各設立根拠法における主たる事務所の所在地の規定を一括して改正する法的措置を行うこととしている。

3 筑波研究学園都市の整備
 平成十三年度においては、国等の試験研究・教育機関の施設整備事業について、独立行政法人産業技術総合研究所スーパークリーンルーム産学官連携研究棟(仮称)等が完成するとともに、つくばWAN(Wide Area Network)の整備の進捗等を図った。また、つくばエクスプレスつくば駅(仮称)等の工事の進捗を図った。

4 国会等の移転に関する検討
 現在、国会等移転審議会の答申を踏まえ国会において大局的な観点から移転に関する検討が進められている。衆議院・参議院の「国会等の移転に関する特別委員会」においては、「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」「三重・畿央地域」を対象として移転先候補地の絞り込みの検討が進められている。特に衆議院の同委員会では、平成十二年五月に「二年を目途にその結論を得る」旨の決議がなされている。
 このほか、業務核都市の整備、大深度地下の適正かつ合理的な利用の推進等について記述した。


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ビデオリンク方式による証人尋問


最高裁判所


 刑事裁判における証人尋問の方法としてビデオリンク方式による証人尋問という制度ができたそうですが、どのようなものですか。

 刑事裁判で、性犯罪の被害者の方などを、証人として尋問するときに、その証人に、法廷の外の部屋(法廷がある建物の中にある別の部屋になります。)にいてもらい、モニターやマイクなどを通じて証言してもらうという制度です。このような証人にとっては、訴訟関係人や傍聴人のいる法廷で証言すること自体から強い精神的圧迫を感じることがあるので、こうした精神的圧迫を軽減するため、平成十二年の刑事訴訟法の改正で新設された制度です。
 この制度は、平成十三年六月一日から施行されています。

 犯罪の被害者の方などを証人として尋問する場合に、証人の心情などに配慮するための制度としては、ほかにどのようなものがありますか。

 裁判所では、犯罪の被害者の方などを証人として尋問する場合には、これまでも、いろいろな配慮をしてきました。例えば、証人を公開の法廷でないところで尋問する期日外尋問や裁判所外での尋問などの、以前から刑事訴訟法に設けられていた制度や、憲法八十二条二項による対審の非公開の制度などを、事件の内容などに応じて活用していました。また、場合によって、証人の家族の方などに、証言中証人へ付き添うことを認めたり、証言の際に、被告人等と顔を合わせなくてすむように証人を被告人との間で遮へいする運用もありました。今回の刑事訴訟法の改正で、この付添いや遮へいが法律上の制度とされました。これらの制度は、それぞれに特色があり、裁判所は、ビデオリンク方式による証人尋問も含め、それぞれの事件の内容などによって、最も適切な制度を選択することになるわけです。

 ビデオリンク方式による証人尋問を行うのは、どのような場合ですか。

 性犯罪の被害者の方を証人として尋問する場合や、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が法廷で証言をするときに圧迫を受けるおそれがある場合で、裁判所が相当と認めるときです。

 ビデオリンク方式による証人尋問は、具体的には、どのような方法で行うのですか。

 法廷と別室に、それぞれ、カメラ、モニター、マイクなどを設置し、その間をケーブルで接続します。そして、訴訟当事者や裁判所は、証人の映像と音声を、裁判官席や訴訟当事者席に設置されたモニターで見聞きしながら、証人を尋問します。証人は、別室に設置されたモニターを通して尋問を受け、カメラとマイクに向かって証言します。

 証拠や図面を証人に示して尋問したり、尋問中に証人に図面を作成してもらうようなことはできるのですか。

 法廷の検察官席、弁護人席と、別室に、図面などを映すための専用のカメラ(書面カメラ)を設置してあり、そのカメラからの映像が先ほどの法廷と別室のモニターに映し出されることになっています。

 被告人や傍聴人用のモニターはないのですか。

 被告人と傍聴人用にもモニターが設置され、裁判官や検察官、弁護人が見るのと同じ画面を見ることができます。なお、ビデオリンク方式による証人尋問をする場合にも、同時に証人の遮へいの措置を採ることができ、その場合には、被告人や傍聴人には画面が見えないことになります。

 機器の操作は誰が行うのですか。

 尋問者を映すカメラを切り替えるなどの操作が必要ですが、これは、通常は訴訟を進行させる権限を持っている裁判長が行うことになります。

 ビデオリンク方式による証人尋問の方法は、通常の証人尋問の場合と比べて、どのような点が違いますか。

 カメラとマイクを通して尋問をすることになるため、尋問者は、通常の場合以上にゆっくり、はっきりと発言するなどの配慮をする必要はあると思いますが、それ以外の点では、通常の証人尋問の場合とさほど違いはありません。そうはいっても、この制度はこれまでになかったものですので、進行手順等について、裁判所と検察官や弁護人とがよく打ち合わせるなどして、制度を適切に運営していくことが必要になると思われます。




言葉の履歴書


金とと

 太宰治の小説『ヴィヨンの妻』に、「昔はね、このお池に鯉(こい)トトや金(きん)トトがたくさんいたのだけれども、いまはなんにも、いないわねえ……」という一節があります。この「トト」は魚を意味する幼児語。「金とと」といえば、俳句では夏の季語「金魚」のことです。
 「とと」の語源には多くの説がありますが、「はやく来い」と呼びかける「疾(と)う疾(と)う」からきたとする説が有力。魚だけでなく、鳥や鶏を指したり、犬や猫を「トト」という地方もあります。
 幼児をあやすとき、「ちょち、ちょち」と手を打ってから「とっとの目」と、自分の目か手を指しますが、この「とっと」も「とと」と同じです。
 蒲鉾(かまぼこ)の材料が、すりつぶした白身の魚肉であることはご存じのとおりですが、「蒲鉾は魚で作るのか」と聞いた人がいたことから、「かまとと」といえば、分かっているのに知らないふりをして、いかにもうぶらしく振る舞う人のこと。「かまとと」の意味を知らないなどと言うと、それこそ「かまとと」と言われるかもしれません。






    <8月7日号の主な予定>

 ▽防災白書のあらまし……………………………………内 閣 府 

 ▽平成十三年平均消費者物価地域差指数の概況………総 務 省 

 ▽月例経済報告(七月)…………………………………内 閣 府 




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