官報資料版 平成14年8月21日




                  ▽交通安全白書のあらまし……………………………………………内 閣 府

                  ▽循環型社会白書のあらまし…………………………………………環 境 省

                  ▽家計調査報告(総世帯・単身世帯)
                  (平成十四年一〜三月期平均及び平成十三年度平均速報)………総 務 省











交通安全白書のあらまし


―交通事故の状況及び交通安全施策の現況―


内 閣 府


 交通安全白書は、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第一一〇号)第十三条に基づき、毎年政府が国会に報告しているものである。
 今回の白書(平成十四年版交通安全白書)は昭和四十六年に第一回の報告がなされて以来三十二回目のものであり、その構成は次のとおりとなっている。
 本冊の「平成十三年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、近年の交通事故の状況と平成十三年度中の交通安全施策の実施状況を記述している。
 分冊の「平成十四年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、平成十四年度の交通安全施策の実施計画について記述している。
 本冊の概要は次のとおりである。

<第1編> 陸上交通

<第1部> 道路交通

<第1章> 道路交通事故の動向

道路交通事故の長期的推移等

1 道路交通事故の長期的推移
 道路交通事故死者数は、昭和四十五年に史上最悪の一万六千七百六十五人を記録した。このため、同年に交通安全対策基本法が制定され、同法に基づき四十六年度以降、交通安全基本計画を五年ごとに策定し、交通安全対策を総合的・計画的に推進してきた。
 交通事故死者数は、四十六年以降着実に減少を続け、五十四年には八千四百六十六人にまで減少した。しかし、その後増勢に転じ、五十七年以降九千人台を続けた後、六十三年から八年連続して一万人を超えていたが、平成七年を境に減少傾向となり、八年には一万人を下回った。
 平成十三年の死者数は八千七百四十七人、発生件数は九十四万七千百六十九件、死傷者数は百十八万九千七百二人であった(第1図参照)。

2 道路交通事故による経済的損失
 平成十三年度の内閣府調査によって算出された道路交通事故による経済的損失の総額は四兆二千八百五十億円で、そのうち、人身損失が一兆七千二百六十九億円、物的損失が一兆八千四十一億円などとなっている(第1表参照)。

平成十三年中の道路交通事故の状況

1 概況
 平成十三年の交通事故の発生件数は九十四万七千百六十九件で、これによる死者数は八千七百四十七人、負傷者数は百十八万九百五十五人であった。
 死者数は二十年ぶりに九千人を下回ったが、事故発生件数は九年連続して最悪の記録を更新し、さらに、負傷者数は四年連続して最悪の記録を更新した。

2 年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、九年連続で六十五歳以上の高齢者が最も多く(三千二百十六人、三六・八%)、次に十六〜二十四歳の若者となっており(一千四百二人、一六・〇%)、この二つの年齢層で全交通事故死者数の五二・八%を占めている(第2図参照)。
 負傷者数は、十六〜二十四歳の若者(二十六万二千八百四十五人)が最も多く、全負傷者数の二二・三%を占めている。また、前年と比較して十六〜二十四歳を除くすべての年齢層で増加している。

3 状態別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、自動車乗車中が三千七百十一人と最も多く、全死者数の四二・四%を占めている(第3図参照)。
 負傷者数は、自動車乗車中が七十三万三千八百六十六人と最も多く、全負傷者数の六二・一%を占めている。

4 シートベルト着用の有無別死者数
 自動車乗車中の死傷者についてシートベルト着用者率(死傷者数中のシートベルトを着用している者の割合)をみると、平成五年以降上昇しており、十三年では八六・四%となっている。
 着用者の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、非着用者の致死率の約十一分の一程度である(第4図参照)。

5 チャイルドシート着用の有無別死者数
 六歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は四十四人であり、車両大破事故を除いた死者十一人のチャイルドシート着用の有無は、着用二人、非着用は九人であった。

6 第一当事者の交通死亡事故発生件数
 自動車運転者が第一当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう)となった死亡事故件数は減少傾向で推移しているが、これを運転者の年齢別にみると、六十五歳以上の高齢者は、平成十三年には元年の二・九七倍となっている。

<第2章> 道路交通に対する主な安全施策

1 交通安全施設等の重点的整備
 平成十三年度は、交通安全施設等整備事業七箇年計画の第六年度として、次のような事業を実施した。
 @ 事故多発地点のうち緊急度の高い箇所について、交差点改良等を重点的に実施した。また、中央帯等の整備、危険性が高い場所等への信号機の設置、既存の信号機の集中制御化、系統化等の高度化、道路標識の高輝度化・大型化・可変化等を推進するとともに、キロポスト(地点標)、対向車接近システム、高速走行抑止システム、道路照明・視線誘導標等の整備を推進した。
 A 高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道、音響信号機等を整備するとともに、交通結節点におけるエレベーターの設置等を推進した。特に、交通バリアフリー法に基づき重点整備地区に定められた駅の周辺地区等においては、誰もが歩きやすい幅の広い歩道、道路横断時の安全を確保する機能を付加した信号機等の整備が面的かつネットワークとして行われるよう配慮した。
 また、高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備、通学路、通園路の整備を図るとともに、道路空間と一体になって交通安全施設と同様に機能する歩行者用通路や交通広場等の整備を推進した。
 B 円滑・快適で安全な道路交通を確保するため、交通管制システムの充実・高度化、幹線道路における信号機の高度化、総合的な駐車対策を推進するとともに、追越しのための付加車線や「道の駅」などの休憩施設等の整備を推進した。また、交通監視カメラ、道路情報提供装置、系統的で分かりやすい案内標識等の整備を推進した。特に、主要な幹線道路の交差点等における大型案内標識等の整備を重点的に進めるとともに、外国人に分かりやすいローマ字併用表示・シンボル表示を積極的に取り入れ、国際化の進展への対応に努めた。

2 高度道路交通システムの整備
 平成八年に策定したITS全体構想に基づき、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備等を推進している。

3 交通需要マネジメントの推進
 交通容量の拡大策、交通管制の高度化等に加えて、パークアンドライド、情報提供、相乗り、時差通勤・通学、フレックスタイムなど、道路の利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進した。また、平成十三年度より、地域における交通流・量の調整、事業者による交通事業の改善等を行うTDM実証実験に対する認定制度を設け、二十六地域の実証実験を認定した。

4 高齢者に対する交通安全教育
 高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を積極的に促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して「ヒヤリ地図」の作成、高齢運転者の実技講習等自主的な交通安全運動を展開できるよう指導・援助を行った。特に、シルバーリーダーについては、参加・体験・実践型の高齢者交通安全教育の継続的な推進役の養成を目的とする「市民参加型の高齢者交通安全学習普及事業」を実施した。

5 交通安全総点検の実施
 交通安全は、人・道・車の調和が図られることにより保たれるものであり、利用する人の視点に立ってとらえるべき課題であることから、地域の人々や道路利用者の主体的参加の下、交通安全総点検を実施した。

6 自動車アセスメント情報の提供等
 自動車の衝突安全性能等の比較試験の結果を公表する自動車アセスメントの一環として、平成十三年度からチャイルドシートの前面衝突試験と使用性評価試験を実施し、その結果をチャイルドシートアセスメントとして公表した。

7 リコール制度の充実
 自動車不具合情報ホットラインを活用し、ユーザーからの自動車の不具合情報を幅広く収集し、得られた多数の情報を分析してリコール該当車の早期発見に努める等リコール制度の適正な運用を図るとともに、平成十三年四月より、ユーザーからの不具合情報について国土交通省のホームページで公開し、情報収集の強化に努めている。

8 自動車損害賠償保障制度の充実等
 政府再保険を廃止し、一方で保険会社等による被害者等に対する情報提供措置の義務付け、紛争処理機関による新たな紛争処理の仕組みの整備など、被害者保護の充実を盛り込んだ改正自賠法が成立し、平成十四年四月一日から施行された。
 平成十四年四月から、重度後遺障害者に対する保険金限度額が引き上げられた。

9 交通事故被害者対策の充実強化
 自動車事故対策センターが、自動車事故により植物状態になり、常時介護を要する被害者のみに支給していた介護料を、平成十三年七月から、常時又は随時介護を要する被害者にも拡大して支給している。
 重度後遺障害者に対し専門的な治療及び養護を行う療護センターとして、全国で四番目の中部療護センターが平成十三年七月に開業した。

<第2部> 鉄軌道交通

<第1章> 鉄軌道交通事故の動向

 踏切事故防止対策の推進、各種の運転保安設備の整備・充実、制御装置の改善、乗務員等の資質の向上など総合的な安全対策を実施してきた結果、運転事故は、長期にわたり減少傾向が続いており、平成十三年の運転事故件数は九百八件、運転事故による死傷者六百九十六人(うち死亡者三百十四人)であった(第5図参照)。
 運転事故の種類別の発生件数では、踏切障害四百七十五件(五二・三%)、人身障害三百六件(三三・七%)、道路障害九十五件(一〇・五%)となっている。
 踏切事故(四百七十九件)は運転事故の約半数を占めているが、長期的には減少傾向にある。

<第2章> 鉄軌道交通に対する主な安全施策

1 線路施設、運転保安設備等の整備
 線路施設、信号保安設備等の整備、自動列車停止装置(ATS)の高機能化等を推進した。
 また、高齢者、身体障害者等の安全利用のために、鉄道駅等のバリアフリー化を推進した。

2 保安監査等の実施
 施設、車両、安全管理体制等についての保安監査を効果的かつ機動的に実施するとともに、プラットホームからの転落事故に対して適切な安全対策を講ずるよう鉄軌道事業者を指導した。

3 踏切事故防止対策
 平成十三年三月に改正された踏切道改良促進法及び平成十三年度を初年度とする第七次踏切事故防止総合対策に基づき、踏切道の立体交差化、構造改良及び保安設備の整備を促進している。また、踏切道の統廃合についても併せて実施している。

4 鉄軌道事故調査機関の設置
 営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故等を背景に、鉄道の安全確保に対する国民の期待が一層高まり、その体制整備が強く求められていたことから、鉄道事故の原因を究明するための適確な調査及び鉄道事故の兆候(重大インシデント)についての調査を行うため、平成十三年十月一日に従来の「航空事故調査委員会」が改組され、「航空・鉄道事故調査委員会」が発足した。

5 鉄道の運転事故等に係る報告制度の改善
 運転事故等の情報をより迅速かつ的確に把握し、運転事故・運転事故が発生するおそれがあると認められる事態等を調査・分析するための体制を整備するため、運転事故等の報告内容の充実及び事故速報の対象範囲等を見直し、鉄道事故等報告規則等の改正を行った。

<第2編> 海上交通

<第1章> 海難等の動向

 @ 海難に遭遇した船舶(海難船舶)の隻数は、前年に比べ三十七隻減の二千八百三十六隻となっており、平成十年以降増加していたものの減少に転じた(第6図参照)。
 A 近年のマリンレジャー活動の活発化に伴い、プレジャーボート等の海難は、昨年に比べ百二十六隻増の一千二百六十八隻で過去最悪であり、海難船舶隻数に占める割合は四五%であった。
 B 海難船舶乗船者のうち死亡・行方不明者数は百七十一人であった(第6図参照)。
 また、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数は百四十九人であった。

<第2章> 海上交通に対する主な安全施策

 @ 港湾整備七箇年計画等に基づき、開発保全航路、港湾及び漁港の整備、港湾等の耐震性の強化を図るとともに、港湾等の整備の進展、船舶の高速化等により変化する海上交通環境に適応した航路標識の整備を実施している。
 A 船舶交通のふくそうする海域においては、特別の交通ルール等を定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行った。このほか、船舶自動識別装置(AIS)の設備義務化及び東京湾口航路整備事業の進展を踏まえつつ、湾内航行のノンストップ化を図ることにより、安全かつ効率的な海上交通環境である「海上ハイウェイネットワーク」を構築するための整備を行った。
 B 海図・水路誌等の整備及び水路通報、気象情報等の充実を図った。
 C 船舶の安全性を確保するため、平成十三年十月に、内航船舶に係る満載喫水線基準の合理化のための関連規則の改正を行った。また、旅客船のバリアフリー化の義務化に対し、事業者等が円滑に対応できるよう、旅客船のバリアフリー基準説明会の開催等必要な対策を講じた。
 D 平成十二年九月の沖合底びき網漁船「第五龍寶丸」転覆沈没事故を受け、同種事故の再発防止対策及び今後の課題に関する提言を取りまとめるとともに、同提言を受け、漁業関係者に対し再発防止対策を指導した。
 E 近年における人的要因に係る海難等の発生に対応するため、操作要件(乗組員が機器等の操作に習熟しているかどうか)に係るPSCやISMコードに関するPSCを重点的に実施するとともに、GMDSS(海上における遭難及び安全のための通信システム)の関連要件等に関するPSCの強化を図った。
 F プレジャーボート等の活動が活発化する時期等を考慮しながら、巡視船艇を効率的に配備し、ヘリコプターを最大限に活用する等、救助体制の強化を図るとともに、海難防止講習会や訪船指導等を通じて、海難防止指導を行っている。
 また、気象・海象情報、海上安全情報の提供、民間救助機関による安全サポート体制の構築といった「マリンロード構想」の基本コンセプトを構築した。
 さらに、海中転落事故に際しては、救命胴衣の着用率を向上させるための方策について検討を行い、常時着用により適した救命胴衣の技術基準の導入等の対策を検討した。
 G 漁船の海難による死亡・行方不明者数は、全体の四割以上を占めていることから、海難防止講習会の開催や訪船指導の実施等により、見張りの励行等について、指導・啓発を行い乗組員の安全運航の意識向上に努めるとともに、安全基準の適用が免除されている一部の小型漁船の安全性について評価を行った。
 H 海難情報の入手体制の整備、巡視船艇・航空機による救助体制の強化及び海難救助技術の向上を図るとともに、(社)日本水難救済会に対し、救助訓練の指導を行う等、救助体制の充実強化を図っている。
 I SAR条約への対応として、近隣諸国等の要請に応じ、技術協力を積極的に推進するとともに、海運・水産関係者に対して、JASREPへの参加を促進した。
 J 海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者を減少させるために、救命胴衣の常時着用、携帯電話等の連絡手段の確保及び緊急通報用電話番号「一一八番」の有効活用を基本とする「自己救命策確保キャンペーン」を強力に推進した。

<第3編> 航空交通

<第1章> 航空交通事故の動向

 我が国における民間航空機の事故の発生件数は、ここ数年多少の変動はあるものの、減少傾向を示しており、平成十三年の事故件数は二十一件であった(第2表参照)。

<第2章> 航空交通に対する主な安全施策

 @ 第七次空港整備七箇年計画(平成八〜十四年度)に基づき、空港、航空保安施設等の整備を計画的に推進している。
 A 洋上空域における航空交通の安全性、効率性及び航空交通容量の拡大を図るため、衛星を利用した新たな航空通信・航法・管制システムの整備を推進しており、平成十三年度は運輸多目的衛星新T・U号機及び新T号機打ち上げ用ロケットの製造等を推進するとともに、新U号機用地上システムの整備に着手した。
 B 空港、航空保安施設の耐震性の強化については、既存施設の耐震補強(庁舎等の点検・改修等)及び管制施設の多重化(管制機能の代替等の整備)等を推進した。
 C 大型航空機を運航する航空運送事業者については、運航規程・整備規程の認可、安全性確認検査等を通じ、運航及び整備体制の充実、安全意識の高揚、関係規程の遵守等運航の安全に万全を期すよう指導している。
 D 小型航空機の事故を防止するため、法令及び安全関係諸規程の遵守、無理のない飛行計画による運航の実施、的確な気象情報の把握、操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導している。
 E 外国航空機に対する立入り検査(ランプ・インスペクション)を実施し、外国航空機の安全性を確認するとともに、問題点が発見された場合には、当該航空機の所属する外国政府に通知する等所要の措置を講じている。
 F スカイレジャーについては、愛好者に対し、関係団体を通じた安全教育の充実、航空安全に係る情報公開、「スカイレジャー・ジャパン」等のイベントの機会等を活用して安全対策の充実・強化を図っている。




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循環型社会白書のあらまし


環 境 省


序章 循環型社会におけるライフスタイル、ビジネススタイル

―リデュース・リユース・リサイクルを推進するリ・スタイル(Re−Style)―

<序章の要約>
 本年の序章では、二十世紀から現在にかけての我が国の国民生活(ライフスタイル)や経済活動(ビジネススタイル)を踏まえつつ、我が国が目指す循環型社会について考えていきます。まず、二十世紀の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会において、豊かな物資や高度な技術進歩が暮らしを真に豊かにしたかを振り返ります。また、現在進められている循環型社会の形成に向けた暮らしやビジネスにおける先進的な取組について概観していきます。さらに、平成十三年七月に実施した世論調査の結果より、国民の考えをみていきます。
 これらを踏まえ、我が国の循環型社会のイメージの例示として、三つの社会シナリオについてストーリーラインを示します。そして、独立行政法人国立環境研究所と京都大学で開発した経済モデルに基づき、これら三つの社会シナリオにおける廃棄物、CO、経済成長率について分析を行います。

第一節 私たちの暮らしと廃棄物

1 利便性の追求と大量生産・大量消費・大量廃棄の始まり―昭和三十年代―
 昭和三十五年に我が国は国民総生産(GNP)でカナダを抜いて世界第五位(旧ソ連を除く)の「豊かな社会」となりました。所得が増加した私たちは、利便性の向上を求めて消費活動に向かいました。

2 高度経済成長とその代償の顕在化―昭和四十年代―
 高度経済成長がもたらした物質的な豊かさは、種々の代償を伴いました。昭和四十六年三月の世論調査では、経済成長に対してプラス面を評価しつつも、公害、物価、交通事故などにマイナスの評価をする人も多くいました。

3 重厚長大から軽薄短小への産業転換―昭和五十年代―
 石油危機の影響で、経済成長率は急速に低下し、石油への依存低下、石油以外の代替エネルギーの開発推進、省エネ型のライフスタイルを導入することなどが急務となりました。特に、産業構造は、それまでの重化学工業路線(「重厚長大」)から、省エネ・省資源型技術(「軽薄短小」)に支えられた新しい産業へと新旧交代が急速に進んでいきます。

4 成熟・更新期を迎えた資本ストック―昭和六十年代以降―
 我が国の社会資本ストック総額(平成二年価格)は、平成五年度で総額六百十七兆円(推計)となっています。過去四十年余りで十四倍弱と大きく積み上がっており、この間のインフラ整備が着実に進展してきた様子がうかがえます。現在、これらのストックが更新期を迎えるため、建設廃棄物の発生量が急増することが懸念されています。

5 私たちの暮らしと廃棄物
 昭和三十年から昭和四十八年ごろまでの高度経済成長期から石油危機前までの一般廃棄物排出量の伸びはGDPの伸びに近似して急増します。一方、この間の人口は安定的に増加しており、その結果、昭和四十年度には一人一日当たり〇・七キログラムであった廃棄物排出量が、平成十一年度には一・一キログラムとなっています。
 一方、最終処分量(埋立量)の総量は近年低減の傾向にあります。廃棄物の最終処分量を実質GDPで割ったもの(GDP一単位を生産するごとに、最終処分量がどれだけ生じているのかが分かります)の傾向をみると、GDP単位当たりの最終処分量は年々減っており、我が国が廃棄物等の発生の少ないライフスタイル、ビジネススタイル(ビジネスモデル)を組み込んだ社会経済構造に推移しつつあるためとも考えられます。
 ただし、最終処分量を減らすための中間処理(破砕、圧縮、リサイクルなど)に伴って生じる環境への負荷があることなどに留意する必要があり、また、方向は循環型社会へ向かっているとしても、その速度をより一層早める必要もあります。

第二節 変わるライフスタイル、広がるビジネススタイル

1 変わるライフスタイル
 第一節でみてきた二十世紀のライフスタイルでは、品目は移り変わりつつも所有する「もの」の増大が豊かさの一つの指標でした。しかし、二十一世紀を迎えて、今までのライフスタイルとは異なる新しいスタイルを志向する兆しもみられます。
 ここでは、二十一世紀型の豊かな暮らし、ライフスタイルを考える手がかりとして、現在の様々な新しい動きを概観していきます。
(1) リサイクルショップ
 商業統計速報によると、平成十一年の中古品小売業は約一万五百店となり、平成九年の調査と比べて二年間で四割以上も増加しています。中古品小売業の販売額が小売業全体に占める割合は〇・二%とまだ小さいものの、消費者の安さを求める志向や環境や資源の有効な利用を重視する志向の高まりなどによって、今後、中古品市場はさらに拡大するものと見込まれます。
(2) フリーマーケット
 都市部では、休日に開催されるフリーマーケットは日常的な風景となりつつあります。最近は「フリマ」と呼ばれ、大規模イベント会場やスタジアムでの開催や、集客ソフトとしての効果を期待した商業施設や商店街での開催なども目立ちます。
(3) グリーン購入
 平成十二年にグリーン購入法が制定され、再生品などの環境物品マーケットの拡大が進みつつあります。
(4) スローフード・地域内循環
 イタリアで発足し世界に広がったスローフード協会は消えつつある郷土料理や質の高い食品を守る食文化のNPOです。我が国でも、このような考えを踏まえ、地域で採れた農水産物を地域で消費するという「地産地消」の考え方を普及しようとする動きがあります。また、地域の特性に応じた循環の取組も各地で進められています。
(5) ゼロエミッションを掲げたイベント
 平成十三年に開催された北九州博覧祭では、「リデュース・リユース・リサイクル」によるゼロエミッションを目標に、様々な試みが行われました。この結果、ごみのリサイクル率は約五割、来場者一人当たりの廃棄物量は約七十グラムと、従来の博覧会の平均量約三百グラムから大きく減らすことができました。

2 広がるビジネススタイル
 循環型社会に向けて、新しいビジネススタイルが広がりつつあります。従来の環境産業では装置や製品といったハードウェアの商品を提供するというビジネスが中心でした。しかし、今後は単にものを提供することに留まらず、いわゆるソリューション・サービスとして廃棄物の発生抑制・再生・処理を請け負うビジネスや動脈産業と静脈産業が得意分野を補完しつつ共同で行うビジネス、あるいは個人向けにリースやレンタルサービスを行うビジネスへと拡大していくことが予想されます。
 また、従来行われてきた出口部分(エンド・オブ・パイプ)での環境対策でも、各種法制度の整備などにより設けられた環境規制に対応するために、様々な投資が行われています。このような環境対策の投資は、企業にとっては単なるコストの増加とも捉えられますが、長期的には開発された先進的な技術や製品により企業競争力を高めることにつながる可能性もあります。また、静脈分野で培った技術を持った企業が、これらの装置の開発に加わることで、新しい市場の形成が進められるという面もあります。

3 循環型社会ビジネスの市場規模
 今後、循環型社会の形成が進み、成長が見込まれるエコビジネスのうち廃棄物・リサイクル分野の市場規模は、平成九年で十一兆九千億円となっており、我が国のGDPの約二・三%を占めると推計されています。さらに、平成二十二年時点の将来予測としては、十八兆一千億円となると推計されました。雇用規模については、平成九年では三十二万五千人であり、平成二十二年時点では四十万九千人に増加するという推計結果が得られています。
 また、現在、環境報告書を発行している企業のうち、環境報告書上で環境会計ガイドラインに沿った環境会計情報を公表していた企業の一部二百三十三社について集計、分析を行ったところ、廃棄物・リサイクル関連の環境保全コストとして年間で投入している金額は、年間売上高の〇・三%に当たる六千三百五十九億円で、一社当たりでは二十七億円でした。

第三節 国民の意識―「循環型社会の形成に関する世論調査」―

 平成十三年七月に内閣府では「循環型社会の形成に関する世論調査」を行いました。ここでは、その主な結果から、循環型社会に対する国民の意識をみていきます。
(1) みんな「ごみ問題に関心」
 ごみ問題にどの程度関心があるかについては、「関心がある」が八九・八%、「関心がない」が一〇・〇%となっています。
(2) ごみ問題の原因は「大量生産・大量消費・大量廃棄の生活様式」
 ごみ問題の原因は何かということについては、「大量生産・大量消費・大量廃棄といった私たちの生活様式」が七〇・五%、「使い捨て製品が身の回りに多すぎる」が六五・一%となっています(複数回答)。
(3) 国がすべきは「ごみの排出を減らす取組」
 今後、国が最も重点的に対応すべきことはどのようなことかについては、「リサイクルや焼却をする前に、まず、ごみの排出を減らすことに取り組むべきだ」が四九・一%、「ごみや不要品を、リユースやリサイクルすることに取り組むべきだ」が三三・九%となっています。
(4) 関心は高くても「実行はもう一息」
 日ごろの暮らしの中で、ごみとどのようにかかわっているか、行っていることに近いものとしては、「多少意識して、ごみを少なくする配慮やリサイクルを心がけている」が五六・七%、「ごみの問題は深刻だと思いながらも、多くのものを買い、多くのものを捨てている」が二三・〇%となっています。
(5) ごみを減らすことは「女性が熱心」
 ごみを少なくするため心がけていることとしては、「詰め替え製品をよく使う」が四七・〇%、「すぐに流行遅れとなったり飽きたりしそうな不要なものは買わない」が三六・六%、「壊れにくく、長持ちする製品を選ぶ」が三四・一%で、ほとんどの項目で男性より女性のほうが取り組んでいる率が高く、また、「特にしていない」が女性で三・三%なのに対し、男性は一一・四%となっています(複数回答)。
(6) ごみの分別は「若い男性は苦手」
 ごみや、一度使ったものがリユース、リサイクルされやすいように、心がけていることについては、「家庭で出たごみはきちんと分けて、分別して定められた場所に出している」を挙げた者の割合が八二・一%となっていますが、このうち男性の二十歳代は五五・六%と、他の年代の男女が七五%以上なのに対し、かなり低くなっています。
(7) 若い世代ほど「生活水準を落とさず大量生産・大量消費しながらリサイクル」
 大量生産・大量消費・大量廃棄型社会から脱却し、循環型社会を形成する施策を進めていくことについては、「現在の生活水準を落とさずに、大量生産・大量消費は維持しながら、廃棄物のリユースやリサイクルを積極的に進めればよい」が二四・六%、「廃棄物の処理場や天然資源がなくなってくるのであれば、循環型社会への移行はやむを得ない」が二〇・三%、「現在の生活水準が多少落ちることになっても、循環型社会に移行するべきである」が一九・三%となっています。特に、「現在の生活水準を落とさずに、大量生産・大量消費は維持しながら、廃棄物のリユースやリサイクルを積極的に進めればよい」と答えたのは男性の二十歳代が三五・七%、女性の二十歳代が三〇・四%と高くなっています。

第四節 循環型社会のイメージ

1 循環という考え方
 二十世紀に入り人口の爆発的な増加や科学技術の急速な進歩、経済活動の飛躍的な成長により環境へ与える負荷も増大しました。このような状況を踏まえ、私たちが目指していく社会のキーワードとして「循環」という概念が使われるようになりました。

2 循環型社会の姿
 循環型社会とは、循環型社会形成推進基本法では、@製品等が廃棄物等となることの抑制、A循環資源が発生した場合におけるその適正な循環的な利用の促進及びB循環的な利用が行われない循環資源の適正な処分の確保という手段・方法によって実現される、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減される社会と定義されています。
 以下では、さらに具体的に、それはどのような社会としてイメージされるのか循環型社会に向けたシナリオについて考えていきます。

3 循環型社会に向けた三つのシナリオ
 循環型社会に至る道筋は一つだけではありません。以下では、考えられる三つの循環型社会の形成に向けたシナリオを描き、循環型社会についてのイメージを示してみましょう。
 以下に示すA、B、Cの三つのシナリオについては、循環型社会に関する様々な文献等をもとに典型的な例として作成したもので、現実には、この各シナリオが組み合わさった形になるものと考えられますが、選択的なイメージを示すという目的のために、できるだけ差異を設けています。
 シナリオAは極めて高度な工業化社会となることを想定しています。そのような社会では廃棄物等は品目別ごとに収集され、高度化した静脈物流システムにより集積され、廃棄物発電などのサーマルリサイクルも活発に行われるでしょう。
 シナリオBは生活のペースを今より少しスローダウンし、得られた時間で自ら家の手入れや家庭菜園などの園芸を行ったり、ものを修理しつつ大事に使う生産的消費者への変化が求められます。また、地域でのNGO/NPO活動への参加や朝市などによる地産地消といった小さな経済で充足感を得る社会になります。
 シナリオCは環境効率性の高い社会で産業の高次化が進むイメージです。環境産業の発展により経済成長もしながら、そのような産業が供給する環境に配慮した製品やサービスにより暮らしの面でも環境負荷の低減が進むという社会になります。
 以上の三つのシナリオの示す社会について、独立行政法人国立環境研究所と京都大学で開発した経済モデル(AIM/Materialモデル)を用いてシミュレーションを行いました。
 @ シナリオAの場合は、他のシナリオより経済成長がすべての時期で上回りますが、CO排出量も〇・四八〜一・五一%と増加します。このため、すべてのシナリオの中で温暖化対策の強化が最も必要となります。一方、廃棄物の最終処分量は当初は他のシナリオに比べ特に一般廃棄物で減少が進みませんが、廃棄物処理対策への投資や技術進歩により一般廃棄物については二〇一〇年から、産業廃棄物については二〇二〇年からシナリオBより減少します。
 A シナリオBの場合は、他のシナリオより経済成長がすべての時期で下回りますが、CO排出量はすべてのシナリオの中で最も大幅に低減します。また、廃棄物の最終処分量は一般廃棄物についてはライフスタイルの変化によって、ある程度減少しますが、産業廃棄物については技術進歩が遅いため二〇二〇〜二〇三〇年には三・九二%減で減少率が他のシナリオより下回ります。
 B シナリオCの場合は、経済成長とCO排出量は他のシナリオの中間となります。一方、廃棄物の最終処分量は経済活動の脱物質化が進むことによって、一般廃棄物で三・二六〜三・九一%減、産業廃棄物で〇・九五〜五・一〇%減とすべてのシナリオの中で最も大幅に低減します。
 将来の我が国のライフスタイル・ビジネススタイルであるリデュース・リユース・リサイクルの三つのリ(Re−)が推進されるスタイル「リ・スタイル(Re−Style)」が実践される社会には、この三つの社会像のどれがふさわしいでしょうか。私たちが、働き、暮らしていく二十一世紀の社会のあるべき姿については、みんなで広く議論をし、考えていきたいと思います。

第一章 循環資源の発生、循環的な利用及び処分の状況

<第一章の要約>
 この章では、我が国における循環資源の発生、循環的な利用及び処分の状況を明らかにし、我が国の物質収支の特徴、循環的利用の概観などから我が国の実態を明らかにします。
 また、循環資源の利用促進が地球温暖化対策にも有効であることについても考察します。

第一節 発生量、循環的な利用の量及び処分量

1 我が国の物質収支
(1) 我が国の物質収支の概観と問題点
 我が国の物質収支の特徴をみると、@「総物質投入量」が高水準、A「資源採取」の量が高水準、B資源、製品等の流入量と流出量がアンバランス、C「再生利用量」が低水準、D総廃棄物発生量が高水準、Eエネルギー消費が高水準、F「資源採取」に伴って生じる「隠れたフロー」が多いこと等が課題です。使用しようとする資源以外の「隠れたフロー」は、統計に現れませんが資源採取量の二倍と膨大な量になると推計されており、循環型社会の形成に向けてこの隠れたフローも可能な限り低減することが不可欠です。
(2) 我が国における循環的利用の概観
 平成十年度における我が国の循環的利用の現状をみると、一年間に六億二千万トンが排出され、三億一千万トン(五〇%)が再使用、再生利用などにより循環的に利用され、二億四千万トン(三九%)が焼却・脱水などにより減量化されています。この結果、七千万トン(一二%)が最終処分されています。
 循環資源の素材構成から四つの区分ごとに特徴を述べると以下のとおりです。
 家畜排せつ物、有機汚泥、木くず、繊維くず、厨芥類等のバイオマス資源では、焼却や脱水による減量の割合が多く、肥料、飼料としての利用の拡大等が望まれます。
 がれき類や鉱さい、無機汚泥等の土石系循環資源は、半分以上が循環的な利用にまわっている反面、最終処分される割合も比較的高く、土木建築資材としての利用の拡大等が望まれます。
 金属系資源は、従来、回収・再生利用のシステムが既に構築されており、一層の回収・再資源化の徹底が望まれます。
 廃プラスチック等の化石燃料系循環資源は、焼却による減量の割合が多くなっており、回収率の向上や、再資源化技術開発の一層の促進が望まれます。

2 廃棄物の発生量
(1) 一般廃棄物(ごみ)
 平成十一年度の一般廃棄物の総排出量は、約五千百万トンとなっており、東京ドーム百三十九杯分に相当します。国民一人当たりでは一日に約一キログラム排出することになります。
 リサイクル率は、平成二年度の五・三%から一三・一%に大きく増加しています。最終処分場に埋め立てられる量は約一千百万トンであり、年々減少しています。
(2) 産業廃棄物
 平成十一年度の産業廃棄物の総排出量は、約四億トンです。再生利用量及び減量化量の割合は年々向上し、最終処分量は約五千万トンです。

3 循環的な利用の現状
 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)等の各リサイクル法に基づく循環的な利用のほか、従来行われている循環的な利用もあります。
 容器包装廃棄物の分別収集に取り組む市町村は年々増加しています。廃家電製品については、平成十三年四月の家電リサイクル法の施行により、今後さらにリサイクルが推進されることとなります。建設廃棄物のうち、コンクリート塊及びアスファルト・コンクリート塊のリサイクル率は、平成十二年度の実績でいずれも目標の九五%を超えていますが、建設発生木材の再資源化については、ほぼ横ばいで推移しています。
 なお、古紙については自主的な取組も進んでいますが、一人一人が分別排出と再生紙の利用に努めることが必要といえます。
 製品ごとのリサイクル法が定められていない物品についても循環的な利用は行われていますが、再生用途先の確保が課題となっています。

4 再資源化施設の整備状況
 従来、回収・再資源化されてきた循環資源については、排出量に対する再資源化能力は十分ですが、リサイクル関連法に基づいて新たに再資源化が始められた循環資源の中には、そのインフラ整備が不十分なものも少なくありません。現在個々の施策によりそれらの施設整備が図られているところです。

第二節 循環資源の利用促進と地球温暖化対策

 循環資源の利用を促進することは、一般に化石燃料等の天然資源の消費量を抑制し、廃棄物の発生量の減少をもたらすものであり、廃油・廃プラスチック焼却量の減少、エネルギー消費の減少等を通じて、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量削減に寄与することになります。
 本年三月に決定された新たな地球温暖化対策推進大綱では、廃棄物の焼却や直接埋立に起因する温室効果ガスを二〇一〇年には約六百万トン削減することを目標にしています。

第二章 循環型社会の形成に向けた制度の整備状況

<第二章の要約>
 第二章では、循環型社会の形成に向けた制度等の整備状況を紹介します。
 まず、循環型社会形成のための施策の基本理念や手法をめぐる進展をまとめています。具体的には、排出者責任の考え方や拡大生産者責任の適用をめぐる国際的な動向、我が国の地方公共団体や諸外国における経済的手法の活用に関する検討状況や実施状況などを紹介します。
 次に、循環型社会に向けた法制度の整備では、循環型社会形成推進基本法、廃棄物処理法その他個別のリサイクル法の概要や実施状況を紹介します。

第一節 施策の基本理念や手法をめぐる進展

1 排出者責任の考え方
 排出者責任とは、廃棄物等を排出する者が、その適正なリサイクルや処理に関する責任を負うべきであるという考え方です。これは廃棄物・リサイクル対策の基本的な原則の一つで、具体的には、廃棄物を排出する際に分別すること、事業者がその廃棄物のリサイクルや処理を自ら行うこと等が挙げられます。
 循環型社会基本法では、事業者と国民について、@その事業活動等に伴う廃棄物等の発生の抑制に努め、A廃棄物等が生じた場合には、自らの責任において循環的な利用に供するよう努める責務を課しています。また、事業者については、これに加えてB最終的にそれ以上利用できないものについて、これを適正に処分する責務を課しています。

2 拡大生産者責任の考え方
 拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)とは、生産者が、その生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方で、(T)製品の設計を工夫すること、(U)製品の材質又は成分の表示を行うこと、(V)一定の製品について、それが廃棄等された後、生産者が引取りやリサイクルを実施すること等が挙げられます。
 この拡大生産者責任の考え方は循環型社会の形成のために重要であり、循環型社会基本法では、一定の条件の下での事業者の拡大生産者責任を規定しています。
 OECDでは、環境対策の政策ツールの一つとして拡大生産者責任を検討しており、二〇〇一年に、OECD加盟国政府に対するガイダンス・マニュアルを策定しています。

3 経済的手法の活用
 循環型社会の形成に当たっては、従来の規制的手法のほか、ごみ処理手数料、税・課徴金、デポジット制度等の経済的手法の活用や自主的取組の促進など、多様な政策手段を組み合わせていくことが必要です。
 経済的手法については、地方公共団体において、一般廃棄物の処理手数料の徴収やデポジット制度等の活用例があるほか、産業廃棄物税など、廃棄物対策に税の活用を検討する動きが各地でみられます。
 また、米国やドイツ等のOECD諸国においても、経済的手法の活用例をみることができます。

第二節 循環型社会の形成に向けた法制度の整備

1 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)
(1) 循環型社会
 「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会活動は、私たちに大きな恩恵をもたらしてきた一方で、物質循環の輪を断ってしまうという側面も有しています。このため、二十一世紀の経済社会のあり方として考えられたのが、循環型社会です。「循環型社会」とは、第一に製品等が廃棄物等となることを抑制し、第二に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として循環的な利用をし、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが徹底されることにより実現される、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会のことです。
(2) 循環型社会における施策の優先順位
 循環型社会基本法は、施策の優先順位を我が国で初めて法定化しました。すなわち、第一に発生抑制、第二に再使用、第三に再生利用、第四に熱回収、最後に適正処分という優先順位です。ただし、この順位に従わないことが環境負荷の低減に有効である場合は必ずしもこの順位に従う必要はありません。
(3) 循環型社会形成推進基本計画
 循環型社会基本法では、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府に循環型社会形成推進基本計画の策定を義務付けています。

2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
 廃棄物処理法は、廃棄物の発生の抑制及び適正な再生利用、処分等について定めている法律です。廃棄物を不適正に処理した場合の罰則や、市町村、廃棄物処理業者等が廃棄物処理施設を整備又は設置するときのルールを規定しています。
 昭和四十五年の制定以来、社会情勢の変化等に対応するためにこれまでに数次にわたり改正されてきていますが、平成十二年には、廃棄物について適正な処理体制を整備し、不適正な処理を防止するため、@廃棄物の減量化の推進、A廃棄物の適正処理のための規制強化、B公的関与による産業廃棄物処理施設の整備の促進、等を内容とした改正が行われました。

3 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)
 メーカーなどの事業者に対して3Rの取組(@事業者による製品の回収・リサイクルの実施、A製品の省資源化・長寿命化等による廃棄物の発生抑制対策、B回収した製品の部品等の再使用対策、C副産物の発生抑制及びリサイクルの促進)を包括的に義務付けることで循環型社会の形成を促進します。

4 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)
 一般廃棄物の約六割(容積比)を占めるとともに再生資源としての利用が技術的に可能な容器包装廃棄物について、消費者による分別排出、市町村による分別収集及び事業者による再商品化等を促進するために制定されました。
 再商品化の義務がある対象品目として、平成十二年四月から、ガラス製容器、ペットボトルに加え、プラスチック製容器包装、紙製容器包装(段ボール及び飲料用紙パックを除く)が新たに対象になるとともに、対象となる事業者の範囲が拡大されました。

5 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)
 市町村において技術的に再商品化等が困難な廃家電等について、小売業者による収集及び運搬、製造業者等による再商品化等を義務付け、廃家電等の適切なリサイクル・処理を確保するために制定されました。エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機が対象となっています。

6 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
 建設工事に伴って廃棄される木材やコンクリート等の建設廃棄物は産業廃棄物の排出量の約二割、最終処分量の約四割を占め、また不法投棄量の約六割を占めています(平成十二年度)。これらの建設廃棄物のリサイクルの推進を図るため、受注者に対し、分別解体及び再資源化等を義務付けるとともに、発注者による工事の事前届出制度、解体工事業者の登録制度を創設しました。

7 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)
 食品廃棄物は、一般廃棄物の排出量の約三割を占めている一方、再生利用率は食品廃棄物全体で約一割にとどまっています。これら食品廃棄物等の排出の抑制等を図るため、食品循環資源の再生利用等にかかわる各主体の責務、食品関連事業者の基準に基づく再生利用等の実施を内容として制定されました。

8 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)
 循環型社会の形成のためには、供給面において再生材料の使用等の取組を強化することに加え、再生品等への需要の転換を促進することが重要です。グリーン購入法は、国等が再生品などの環境物品等の調達を推進することなどにより、需要の転換を促進し、循環型社会の形成を支援しようとするものです。

9 使用済自動車の再資源化等に関する法律案(自動車リサイクル法案)
 年間約五百万台排出される使用済自動車については、産業廃棄物最終処分場のひっ迫により、使用済自動車から発生するシュレッダーダストを低減する必要性が高まっているほか、最終処分費の高騰、鉄スクラップ価格の低迷により、不法投棄・不適正処理の懸念も生じている状況にあります。自動車製造業者を中心とした関係者に適切な役割分担を義務付けることにより使用済自動車のリサイクル・適正処理の推進を図るため、平成十四年四月に使用済自動車の再資源化等に関する法律案を第百五十四回国会へ提出したところです。

第三章 廃棄物等の発生抑制及び循環資源の循環的な利用に関する取組の状況

<第三章の要約>
 現在、循環型社会の形成に向けた取組は、多種多様なかたちで始まっており、これらの取組は、廃棄物等の発生抑制及び循環資源の循環的な利用の原動力となるものと期待されます。
 本章では、循環型社会の形成に向けて進展しつつある先進的な取組を紹介します。

第一節 廃棄物等の発生抑制及び循環資源の循環的な利用に関する主な取組の状況

1 国民、民間団体等の取組事例
 NGO等民間団体レベルにおける循環型社会の形成に向けた取組は、廃棄物等の発生抑制及び循環資源の循環的な利用の原動力となるものと期待されます。

2 産業界における取組
 我が国の産業界は、経団連が業界ごとにリサイクル率、最終処分量などの数値目標並びにその達成のための対策を示した自主行動計画を作成するなどリサイクルの推進や廃棄物の排出抑制に取り組んでいます。
 このほか、鉄鋼業、セメント製造業、建設業、電気事業等個別の業種においても、様々な取組がみられます。

3 政府の取組
(1) 廃棄物等の発生抑制
 今後は、廃棄物等の発生抑制に関する施策を充実していくことがまず必要であることから、ゼロ・エミッション構想推進のため全国の十五地区で「エコタウン事業」を実施しています。承認地域では、リサイクル関連施設整備事業等に対するハード面の支援及び環境関連情報提供事業等に関するソフト面での支援を実施しています。
(2) 循環資源の循環的な利用
 これまで、自動車廃タイヤのセメントの原材料利用、シールド工法に伴う建設汚泥の高規格堤防の築造材としての利用、廃プラスチック類の高炉還元剤としての利用及び廃肉骨粉のセメントの原材料利用が、再生利用認定制度の対象となっており、環境大臣による認定を受けた者が再生利用を行う場合には、業及び施設設置の許可が不要とされています。平成十三年度には、建設汚泥の再生利用を行う三事業者及び廃肉骨粉の再生利用を行う二十一業者が認定を受けました。
(3) 環境物品等の購入の推進
 グリーン購入ネットワークの活動を積極的に支援するとともに、国民の生活様式の見直し、使い捨て製品の使用の自粛等を促進するための普及啓発が行われています。
(4) 都市再生プロジェクトの推進
 平成十三年六月十四日の都市再生本部決定に基づいて、大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築に向けた取組が開始されました。第一段階のプロジェクトとして、東京圏(一都三県)を対象とした検討が行われています。
(5) 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築
 平成十三年七月六日に閣議決定された「新総合物流施策大綱」において、環境問題の深刻化、循環型社会の構築等の社会的課題に対応した物流システムを構築する観点から、地方公共団体とも連携して、今後のリサイクル拠点の配置にも対応しつつ、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築することとされており、その具体化に向けた検討が行われています。

第二節 ごみ焼却施設における熱回収の取組

 平成十一年度末において、稼動もしくは建設中のごみ焼却施設のうち、ごみ発電を行っている施設は、二百十五施設(うち百三十施設は売電も実施)に上り、その発電能力(約百六万キロワット)は、約二百十六万世帯の消費電力に匹敵します。
 RDF(ごみ固形燃料)は、石炭並みの発熱量と安定した燃焼が可能なため、ダイオキシン発生量を低く抑えられる点やRDF化によって元のごみ重量の半分程度となることによる運搬の容易化、長期保管が可能な点などの特徴が注目を集めています。

第三節 廃棄物等の発生抑制及び循環資源の循環的な利用に関する国民等の意識

1 企業等の意識
 企業・自治体などを対象としたアンケート調査(平成十三年十月)によれば、約四七%の団体が、「五%程度割高でも環境配慮型商品を購入する」としています。また環境配慮型商品の価格低下を実感する団体は三八%に上り、紙類や文具・事務用品は七〇〜九〇%、複写機類、パソコン、制服、自動車は、約半数の団体がグリーン購入の対象としていることが分かりました。

2 地方公共団体のグリーン購入への意識と取組
 平成十四年一月の環境省調査によると、ほとんどの地方公共団体がグリーン購入の推進を重要視しており、グリーン購入に対する認識は高くなってきています。一方、実際のグリーン購入への取組状況については、都道府県・政令市と区市・町村とでは格差があります。

第四章 廃棄物の適正処分の推進

<第四章の要約>
 この章では、廃棄物の適正処分に関して、処理方法や施設整備等の現状を示すとともに、併せてPCB対策やダイオキシン対策、BSE廃棄物処理についても適正処理の促進の観点から施策を述べます。また、不法投棄の現状、取締りの強化に向けた動きなども紹介します。

第一節 廃棄物処理対策

1 一般廃棄物(ごみ)
 一般廃棄物の総排出量、一人一日当たりの排出量及びごみ処理事業費は、近年、ほぼ横ばい傾向が続いています。地方公共団体等に収集された一般廃棄物の近年の処理方法は、直接埋立量が減り、資源化及び直接焼却量が増えています。
 平成十一年度のごみ焼却施設数は一千七百十七施設で、ダイオキシン対策に有効でかつごみ発電が可能な二十四時間燃焼方式(全連続炉)の焼却施設が増加しています。
 ダイオキシン類の排出削減とともに一般廃棄物のリサイクルの促進のため、平成十三年度は、約三千三十四億円の補助金により、一般廃棄物処理施設の整備が図られています。

2 一般廃棄物(し尿)
 し尿処理人口の推移をみると、浄化槽人口がほぼ横ばいの推移であるのに対し、下水道人口の増加により、水洗化人口は年々増加しています。
 浄化槽の設置基数は増加傾向が続いています。平成十二年の浄化槽法改正によって、新設時の合併浄化槽の設置が義務付けられるとともに、既設単独処理浄化槽の設置者は、合併処理浄化槽への設置替えに努力することとなっています。
 し尿及び浄化槽汚泥はし尿処理施設又は下水道投入によって、その九四・四%が処理されています。海洋投入処分量の割合は年々わずかずつ減少しており、平成十四年二月から現に海洋投入処分を行っている者に対して五年間の経過措置を設けた上で禁止しました。

3 産業廃棄物
 産業廃棄物の排出量は、バブル経済の崩壊後はほぼ横ばいとなっています。
 産業廃棄物の中間処理施設の許可施設数は、平成十一年度末において、全国で一万三千九百十四施設となっており、前年度とほぼ同じです。
 産業廃棄物処理施設に係る新規の許可件数は焼却施設及び最終処分場共に年々減ってきており、特に平成九年の廃棄物処理法の改正後は、許可件数が激減しています。

4 最終処分場の残余容量と残余年数の推移
 平成十一年度末における一般廃棄物の最終処分場の残余容量は前年より三・七%減少し、また残余年数は全国平均で一二・三年分でした。残余年数が五年未満の都道府県もみられ、廃棄物の減量化を推進して最終処分場の延命化に努めながら、地域ごとに必要となる最終処分場を今後とも整備する必要があります。
 産業廃棄物の最終処分場は、特に首都圏において依然として非常に厳しい状況にあり、実際には首都圏外で多くの産業廃棄物が処分されています。
 産業廃棄物の最終処分場は、排出者責任を原則としつつ、公共関与による施設整備も進めていく必要があります。

5 特別管理廃棄物
 平成三年の廃棄物処理法改正において、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物を特別管理廃棄物として指定し、その管理を特別に強化することとしています。

6 PCB廃棄物
 PCB廃棄物は、昭和四十三年に発生したカネミ油症事件を契機にその毒性が確認され、以降PCBの製造・輸入・使用が、原則禁止となりましたが、廃棄物となったPCBについては、適正な処理施設が存在しないまま最大で約三十年間、保管が継続しています。
 その結果、多くのPCB廃棄物の紛失・不明が生じ、環境汚染のおそれが高まっています。この問題を抜本的に解決するため、平成十三年六月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」の制定及び「環境事業団法」の一部改正を行い、PCB廃棄物の処理体制の構築に向けた施策を実施することとし、今後、十五年間を努力目標として、PCB廃棄物の処理を終えるようにしたいと考えています。

7 ダイオキシン類の排出抑制
 平成十一年三月三十日のダイオキシン対策関係閣僚会議において「ダイオキシン対策推進基本指針」が策定され、政府一体となってダイオキシン類の排出量を大幅に下げるなどの各種対策を鋭意推進することとされました。特に、この基本指針に基づき、平成十四年度までにダイオキシン類の排出総量を平成九年に比べて「約九割削減」することとされました。
 平成十一年七月十二日には、「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立し、平成十二年九月二十二日には、同法に基づく「我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシン類の量を削減するための計画」において削減目標量が設定されるなど、現在は廃棄物も含め、ダイオキシン類問題は同法に従って対策が進められています。

8 BSE廃棄物処理
 BSE(牛海綿状脳症)対策として農林水産省によって肉骨粉の飼料及び肥料としての使用が全面禁止され、また焼却処理することが決定されたことを受けて、環境省では、平成十三年十月十二日に廃棄物処理法施行令を改正して、食肉処理場から出る牛の脳、せき髄などの臓器や骨等の動物系の固形不要物を産業廃棄物に指定するとともに、肉骨粉については、都道府県を通じて市町村に対してごみ焼却施設での受入れを要請し、平成十三年末で年間約十二〜十三万トン程度の受入表明がなされています。また、環境省は、更に処理を進めるため、セメント工場での焼成処理に肉骨粉を再生利用することを工場別に環境大臣認定しており、平成十四年三月末現在で三十三工場から申請があり、二十一工場を認定しています。

第二節 大都市圏における産業廃棄物の広域移動

 首都圏などの大都市圏では、土地利用の高度化や環境問題等に起因して、焼却炉などの中間処理施設や最終処分場を確保することが難しくなっています。
 廃棄物の処理は、安全性や経済性を考慮すれば、できる限りその排出地域に近い所で行われることが望ましいことから、首都圏の状況にかんがみ、減量化、リサイクルの推進等を図った上で、産業廃棄物の最終処分場を確保することが重要です。

第三節 不法投棄対策

1 不法投棄の現状
 産業廃棄物の不法投棄量についてはその対策を実施しているにもかかわらずここ数年横ばいで、引き続き対策を強化することが必要な状況にあり、そのことが産業廃棄物処理全体に対する国民の信頼を失わせる大きな要因となっています。
 また、不法投棄された廃棄物の種類は、投棄件数、投棄量ともに建設廃棄物が全体の六割以上を占めています。

2 不法投棄の防止と原状回復措置
 産業廃棄物の不法投棄対策としては、まず第一に未然防止を図ることが重要です。このため平成十二年に廃棄物処理法を改正し、排出事業者責任を徹底するための規制強化を行いました。
 一方、いったん不法投棄された場合には、その廃棄物によって生活環境保全上の支障が生じないようにすることも重要です。
 不法投棄された廃棄物によって生活環境保全上の支障のおそれがある場合には都道府県知事等は原因者に対して原状回復等の措置を命令することができ、平成十一年度には二十九件の命令が発せられています。原因者が命令に従わない場合などには、都道府県知事等が原状回復の措置を行い、それに要した費用を原因者に求償することになります。またその場合に、平成九年の廃棄物処理法の改正により、産業界の自主的な拠出によって造成される基金による資金協力が可能となりました。

第四節 有害廃棄物の越境移動

 経済活動がグローバル化した現代の国際社会にあって、有害廃棄物の不法輸出の防止などについても国際的に連携をとりつつ適切に対処することが必要です。
 国連環境計画(UNEP)を中心に、一九九二年(平成四年)五月に発効した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(バーゼル条約)」の国内対応法として、我が国では、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」が平成四年十二月に制定、公布されるとともに、平成五年九月にバーゼル条約にも加入しました。
 平成五年十二月からは、廃棄物処理法により、国内処理の原則の下、廃棄物の輸出の場合の環境大臣の確認、廃棄物の輸入の場合の環境大臣の許可等、廃棄物の輸出入についても必要な規制が行われています。

第五章 循環型社会を形成する基盤整備

<第五章の要約>
 政府は、財政措置、教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援、調査の実施・科学技術の振興、地方公共団体の施策支援など、循環型社会の形成を進める上で必要な基盤となる施策を実施しています。

○以下の観点から、循環型社会の形成に向けた基盤となる施策を実施しています。
1 財政措置等
2 教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成
3 調査の実施・科学技術の振興
4 国際的な取組
5 地方公共団体との関係

○平成十四年度において講じようとする循環型社会の形成に関する施策
 循環型社会形成推進基本法に基づいて平成十四年度に実施する予定の環境保全施策を、次のような章立てで報告しています。
第一章 概説
第二章 循環型社会形成推進基本計画の策定等
第三章 廃棄物等の発生抑制
第四章 循環資源の循環的な利用
第五章 廃棄物の適正な処理の推進
第六章 環境物品等の購入の推進
第七章 循環型社会を形成する基盤整備




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家計調査報告(総世帯・単身世帯)


―平成十四年一〜三月期平均及び平成十三年度平均速報―


総 務 省


T 平成十四年一〜三月期平均

一 全世帯の家計

 総世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり十万一千五百七十二円となり、前年同期に比べ名目〇・八%の減少、実質〇・九%の増加となった。
 単身世帯の全世帯の消費支出は、十七万三千六十八円となり、前年同期に比べ、名目四・二%の増加、実質六・〇%の増加となった。

二 勤労者世帯の家計

 総世帯の勤労者世帯の実収入は、実質増加となった。また、平均消費性向は、前年同期を下回った。
 消費支出は、実質減少となった。

三 勤労者以外の世帯の家計

 総世帯の勤労者以外の世帯の消費支出は、一人当たり九万八千百十六円となり、前年同期に比べ、名目〇・五%、実質二・二%の増加となった。

四 財・サービス区分別の支出

 半耐久財及び非耐久財が実質増加したため、財(商品)全体では、実質〇・八%の増加となった。
 サービスは、実質一・一%の増加となった。

U 平成十三年度平均

一 全世帯の家計

 総世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり十万二千四百八十三円となり、前年度に比べ名目一・六%の減少、実質〇・三%の減少となった。
 単身世帯の全世帯の消費支出は、十七万九千百二十四円となり、前年度に比べ、名目一・四%、実質二・七%の増加となった。

二 勤労者世帯の家計

 総世帯の勤労者世帯の実収入は、実質増加となった。また、平均消費性向は、前年度を下回った。
 消費支出は、実質減少となった。

三 勤労者以外の世帯の家計

 総世帯の勤労者以外の世帯の消費支出は、一人当たり九万九千九百三十二円となり、前年度に比べ、名目〇・七%の減少、実質〇・六%の増加となった。

四 財・サービス区分別の支出

 耐久財及び半耐久財が実質減少したため、財(商品)全体では、実質〇・六%の減少となった。
 サービスでは、実質〇・三%の増加となった。























    <8月28日号の主な予定>

 ▽科学技術白書のあらまし…………文部科学省 

 ▽毎月勤労統計調査(五月)………厚生労働省 




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