官報資料版 平成14年9月4日




                  ▽男女共同参画白書のあらまし………内 閣 府

                  ▽月例経済報告(八月)………………内 閣 府

                  ▽家計収支(五月)……………………総 務 省











平成14年版


男女共同参画白書のあらまし


内 閣 府


 平成十四年六月十八日、「平成十三年度男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告」及び「平成十四年度において講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」(この二つを合わせて「男女共同参画白書」と称している)が、閣議決定の後、国会に提出され、公表された。
 男女共同参画白書は、平成十一年六月に公布、施行された男女共同参画社会基本法に基づき、政府が毎年国会に提出することとされているものであり、内閣府及び関係府省において執筆し、内閣府において整理・編集し、取りまとめている。
 「平成十三年度男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告」は、第一部「男女共同参画社会の形成の状況」と第二部「平成十三年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」に分かれている。「平成十四年度において講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」においては、平成十四年度予算に盛り込まれた男女共同参画の推進に係る施策を中心に取りまとめている。なお、施策の記述に当たっては、平成十二年十二月に閣議決定された「男女共同参画基本計画」の構成に従っている。
 白書の概要は、以下のとおりである。

平成十三年度 男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告

第一部 男女共同参画社会の形成の状況

序説 都道府県別にみた男女共同参画社会の形成の状況

 @議会(市区・町村の計)における女性議員割合をみると、東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、京都府といった大都市圏で高く、地方圏で低い状況にある。
 A管理的公務員、会社・団体等の役員など管理的職業従事者に占める女性割合については、東京都、沖縄県、徳島県、高知県、京都府で高く、大都市圏、地方圏といった地域性はあまりない。
 一方、B育児期(ここでは三十〜三十九歳)の女性の労働力率をみると、山形県、富山県、鳥取県、福井県、島根県といった地方圏で高く、
奈良県、神奈川県、大阪府などの大都市圏で
低い。
 このように、女性の参画は、地域的に一様ではなく、分野ごとにばらつきがみられる。一部の分野では、大都市圏よりも地方圏の方が女性の参画が多いところもみられる(第1表参照)。

(都市圏で低い男女の就業率)
 平成十二年の女性の就業率は、都道府県別にみると、福井県、山形県、富山県で高く、奈良県、大阪府、兵庫県で低い。一方、男性では、長野県、富山県、静岡県で高く、沖縄県、福岡県、大阪府で低い。男女の就業率はともに都市圏で低い。

(男女ともに第三次産業が高いが、男性では第二次産業で女性に比して高い)
 都道府県ごとに、産業別の就業者構成比をみると、女性では、各都道府県とも第三次産業が六割を超え、男性も六割程度に達している。都道府県別にみると、女性では沖縄県が八割を超え、次いで、東京都、神奈川県で高く、男性では東京都、沖縄県、千葉県が高い。第二次産業は、女性より男性で高く、男性では滋賀県、富山県、岐阜県で、女性では岐阜県、福井県、富山県で多い。第一次産業は、女性では岩手県、青森県、長野県で高く、男性では青森県、高知県、宮崎県で高い。

(九州、四国地方で高い専門・技術職に占める女性割合)
 ここで、看護師、教員等といった専門的・技術的職業従事者における女性割合をみると、九州、四国地方で高く、関東地方では低い(第1図参照)。
 専門的・技術的職業従事者の内訳をみると、女性割合が高い地域では、保健・医療(主に看護師)、福祉の割合が高く、逆に、女性割合の低い地域では、科学・技術研究者や法務・経営専門従事者を含むその他の専門・技術職が多くなっており、職域に幅がみられる。教員についてみると、いずれの地域においても二割程度を占めている。このように専門的・技術的職業の女性割合が高い地域、地方圏では、保健・医療、福祉などの対人サービスの割合が高い。一方、男性の専門的・技術的職業従事者の内訳を、男性比率の順にみてみると、男性比率の高い地域では、科学・技術研究者が多く、男性比率が少なくなると、社会福祉・保健医療従事者、教員の割合が多くなっている(第2図参照)。

(増加傾向にあるが、依然として低い女性の管理職への就任)
 地方公共団体、民間企業における女性の管理職への就任の状況をみると、総じて増加傾向にあるものの、その割合は依然低い。
 地方公共団体のうち、都道府県における管理職の女性割合は、平成三年には三%台に達し、十三年には四・三%となっている。政令指定都市においても堅調に増加しており、十三年には五・四%となっている。
 民間企業では、部長相当職、課長相当職ともに増加傾向にあり、平成十三年で部長相当職一・八%、課長相当職三・六%となっている。なお、国の行政機関における管理職の女性割合は、地方公共団体、民間企業に比べ低い状況にある。

(女性管理職の登用・活用が進まない理由)
 女性管理職の少ない理由について、企業を対象とした調査をみると、理由として多いのが、「必要な知識や経験、判断力等を有する女性が少ない」、次いで「勤続年数が短く、役職者になるまでに退職する」、「将来就く可能性のある者はいるが、役職者に就くための在職年数等を満たしている者がいない」となっており、職務経験の有無を理由としている。
 また、企業側からみた女性の活用に当たっての問題点としては、「女性の勤続年数が平均的に短い」、「家庭責任を考慮する必要がある」、「時間外労働、深夜業をさせにくい」が多くなっている。
 このように、女性の管理職への登用、活用の問題点として、女性の勤続年数の短さが指摘されることが多い。

(女性労働者の勤続年数)
 では、女性労働者の勤続年数はどのような状況にあるのだろうか。平均勤続年数をみると、全国平均では八・九年であるが、地域別にみるとばらつきがある。富山県、岩手県、徳島県、福井県、山形県、秋田県、福島県、新潟県、島根県、鳥取県、栃木県、滋賀県で十年を超えているなど、東北、北陸、中国、四国地方において長くなっている(第3図参照)。

(M字カーブ)
 こうした地域による勤続年数の違いはどうして起こるのだろうか。勤続年数が長い県と短い県について、女性の年齢階級別にみた労働力率、いわゆるM字カーブをみると、勤続年数の長い県のM字カーブは、勤続年数の短い県とは大きく異なり、M字のくぼみが小さく、三十歳代の育児期の女性の就業が多い。
 女性の勤続年数が長い富山県における労働力率の前半のピークとなる二十〜二十四歳とボトムの三十〜三十四歳の差をみると七・八ポイント、岩手県では同様に九・〇ポイントであった。
 一方、勤続年数が短い北海道はピークとなる二十〜二十四歳とボトムの三十〜三十四歳の差をみると一六・一ポイント、奈良県は同様に一七・八ポイントとなっており、M字のくぼみに違いがみられる。
 M字カーブのくぼみが大きい理由をみると、労働力率が落ち込む三十〜三十四歳層の離職理由は、結婚、育児にその主因があると考えられる(第4図参照)。

(家庭のサポート)
 一方、勤続年数が長い県では、仕事と家事・育児などの両立に、家庭のサポートがあると考えられる。具体的には、親との同居による家事・育児分担による家庭のサポートが勤続年数が長くなっている一要因と考えられる。
 親との同居世帯と勤続年数の長さとの関係をみると、勤続年数の長い県では親との同居割合が高く、他方、勤続年数の短い県では低い傾向がみられる。

(一層の仕事と子育ての両立支援が必要)
 このように、家庭のサポートの有無は、女性の勤続年数に影響を与えるものと考えられる。例えば、六歳未満の子のいる世帯でみると、夫婦のみの世帯よりも親と同居している世帯での妻の有業割合が高い。
 世帯構成比の推移をみると、親との同居世帯は減少傾向となっている。一方、妻が有業で末子が六歳未満である世帯(計)は横ばいであるが、妻が有業で末子が六歳未満である核家族は増加している。
 したがって、親との同居世帯の減少、さらには、育児期の子を持つ核家族の妻についても、一層の仕事と子育ての両立支援が重要である。例えば、都道府県別にみた共働き世帯の割合と保育所利用率に相関がみられることは、両立支援の重要性を裏付けるものといえよう。

第一章 政策・方針決定過程への女性の参画

(立候補者、当選者に占める女性割合は増加)
 国政選挙における立候補者及び当選者に占める女性割合をみると、衆議院では昭和三十五年(第二十九回選挙)以降、立候補者に占める女性割合が当選者に占める割合を上回っている。また、立候補者、当選者ともに増加傾向にある。特に、平成十二年六月の選挙では、立候補者の一四・四%、当選者の七・三%を女性が占め、八年十月の立候補者一〇・二%、当選者四・六%から大きく増加している(第5図参照)。
 また参議院では、昭和五十八年(第十三回選挙)以降、立候補者に占める女性割合は着実に増加しており、平成十三年(第十九回選挙)では、立候補者の二七・六%を占め、十年(第十八回選挙)の二三・二%から大きな伸びを示している。一方、当選者に占める女性割合は、十三年(第十九回選挙)では一四・九%となっており、七年(第十七回選挙)以降わずかながら減少している(第6図参照)。
 衆議院、参議院とも、当選者に占める女性割合は長期的には増加しているが、それ以上に立候補者に占める割合が大幅に伸びており、女性が積極的に政治に参加していこうとする意識・意欲が高まっていることがうかがわれる。

第二章 就業の分野における男女の共同参画

(依然として残るM字カーブ)
 男女別の年齢階級別労働力率をみると、男性が二十歳代後半から五十歳代までを山とする台形を描くのに対し、女性では、三十歳代前半を谷とするM字カーブを描いている。これは、昭和四十年代からみられる我が国の女性労働力率の特徴である(第7図参照)。
 年齢階級別労働力率の推移をみると、男性では大きな変化がみられない一方、女性では、二十五〜二十九歳層では昭和五十年から平成十三年にかけて二八・五ポイントと大幅に上昇している。しかし、M字の谷に当たる三十〜三十四歳層では一四・九ポイントと、比較的小幅にとどまっている。

(所定内給与の男女差は縮小傾向、パートタイム労働者の賃金は一般労働者の三分の二)
 女性一般労働者の平均所定内給与額は、平成十二年で男性一般労働者の六五・五%(十三年は六五・三%)であり、徐々に縮小してきているものの、依然として大きな開きがある(第8図参照)。この要因として、いわゆる年功制の下で、女性労働者では勤続年数の短い者の割合が高く、管理職の割合が低いこと、高学歴者の割合が低いことなどが挙げられる。実際、女性の学歴別構成・勤続年数階級別構成が男性と同じになったと仮定して推計すると、七七・五%と男女比は大幅に上昇する。
 一方、女性パートタイム労働者(同一企業の一般労働者より一日の所定労働時間又は一週間の労働日数が少ない労働者。以下同じ)の一時間当たり所定内給与額は女性一般労働者の六六・九%であり、低下傾向にある。しかし、男女計の一般労働者の所定内給与額と比較すると五〇%前後と安定しており、先に触れたような女性一般労働者の給与水準の上昇により、勤続に伴う賃金の上昇程度が正社員と比較して低いパートタイム労働者との差が拡大したものと考えられる(第8図参照)。
 企業が急速な環境変化に対応していくためにも、制度面を改善し男女均等なものとすることに加え、真に性別にとらわれず個人がその能力を発揮でき、処遇される仕組みが望まれる。

(男性の就業時間は三十歳代で長い)
 「労働力調査」で性・年齢階級別に平均週間就業時間をみると、男性では三十歳代を山とするゆるやかな逆U字カーブを描き、週六十時間以上就業している者の割合をみても同様のカーブを描く。一方、女性では、二十歳代と五十歳代を山とし三十歳代後半層を谷とするゆるやかなM字カーブを描いており、男女の働き方には明確な違いがみられる(第9図参照)。第三章でみるように、こうした男女の働き方の相違は、仕事と家庭の両立にも大きな影響を与えている。

第三章 仕事と子育ての両立

(女性に偏る出産・子育てによる仕事への影響)
 出産・子育ての仕事への影響を厚生労働省「地域児童福祉事業等調査」(平成十二年)でみると、保育所などの保育施設に入所している子どもの親では、母の二二・一%が一時仕事を辞め、一四・〇%が仕事(会社)を変え、二二・三%が育児休業を取得しているのに対し、父では大半が(八九・〇%)変化なしとしており、出産・子育ての仕事への影響は母に大きく偏っていることがわかる(第10図参照)。

(三歳以下の子の四分の三は父母が保育)
 三歳以下の子について、日中の保育の状況をみると、父母が約七五%、保育所や認可外保育施設などの施設が延べ約二四%となっており、子の年齢が低いほど父母の割合が高い。親の就業状態別にみると、父のみ仕事がある世帯では約九割が父母であるのに対し、母に仕事がある世帯では約四割と低いなど、父母の就業状態によって相違がみられる。

(減らない待機児童、開所時間が短いほど在所率は低い)
 保育ニーズが高まる中で、待機児童(保育所に入所できず待機している児童)は都市部を中心に少なくない。待機児童数は平成九年をピークにやや減少しているものの、平成十三年四月一日現在で二万一千三十一人となっている。
 このような中で、定員の弾力化や延長保育の実施などの取組が進んできており、開所時間が十一時間を超える保育所の割合は、平成七年の一三・九%から十二年には四〇・三%と大きく増加している。しかし、保育所の六割弱を占める公営保育所では二二・〇%と、民営保育所(六四・七%)に比べ取組が遅れている状況にある。また、開所時間別に在所率(定員に対する在所者数の割合)をみると、開所時間が長い施設ほどニーズが高い傾向がみられる。
 保育所の受入れ拡大については、定員の弾力化や設置主体制限の撤廃など規制緩和が進められているところであるが、こうした保育サービスの充実により、待機児童を解消していくことが必要である。

(進む未婚化、晩婚化)
 少子化の要因としては、未婚化や晩婚化などが挙げられている。
 平均初婚年齢をみると、昭和五十年には女性で二四・七歳、男性で二七・〇歳であったが、平成十二年には女性で二七・〇歳、男性で二八・八歳と、特に女性で晩婚化が進んでいる。初婚者の年齢別分布の推移をみると、男女とも二十歳代後半を山とする逆U字カーブを描くが、次第にカーブが緩やかになり、より高い年齢に分散化してきている。特に、女性ではピークの年齢も上昇しており、晩婚化が進展していることがうかがえる(第11図参照)。

(大きく増加する夫婦のみの世帯や単独世帯、母子世帯も増加傾向)
 我が国の一般世帯数は、平成十二年には四千六百七十八万二千世帯と昭和五十年(三千三百五十九万六千世帯)から大きく増加している。五十年と比べると、夫婦と子どもからなる世帯には大きな変化がない一方、夫婦のみの世帯が二・三倍、単独世帯、片親と子どもからなる世帯及び夫婦と親からなる世帯がそれぞれ二倍近くに増加している。特に、二十歳代の男女、高齢女性を中心に単独世帯は大きく増加しており、昭和五十年には夫婦と子どもからなる世帯の数の半分以下だったものが、平成十二年には八七%になっており、二十五(西暦二〇一三)年には夫婦と子どもからなる世帯を上回ると推計されている。
 このように世帯員の少ない家族の増加の結果、一世帯当たりの世帯人員は三・二八人から二・六七人へと大幅に減少しており、平成三十二(西暦二〇二〇)年には二・五人を切ると推計されている。
 また、世帯人員別の世帯数の構成割合をみても、昭和三十五年には四人以上の世帯が全体の約六割を占めていたが、平成十二年には、一人世帯二七・六%、二人世帯二五・一%と、二人以下の世帯が過半数に達するなど、小世帯化が進んでいる。

第四章 高齢男女の暮らし

(高まる高齢者の単独世帯割合)
 高齢者の家族形態別の構成割合の推移をみると、全体として「ひとり暮らし」、「夫婦のみ」が上昇し、「子供夫婦と同居」は低下している。特に女性では「ひとり暮らし」など配偶者がいない場合が五二・七%と男性(一五・〇%)と比べ非常に多くなっている。
 総務省「国勢調査」(平成十二年)によると、約五百九十万人の女性高齢者が配偶者と死別しており、七十五歳以上では全体の三分の二が死別である。これは、女性の高齢者が多いことに加えて、年上の男性と結婚する女性が多いことが影響している。このようなことから、女性の単身高齢者は、昭和五十五年の六十九万人(男性十八万人)から、平成十二年には二百二十九万人(男性七十四万人)と、大幅に増加しており、三十二(西暦二〇二〇)年には、三百六十一万人(男性百七十六万人)に達すると推計されている。

第五章 女性に対する暴力

(配偶者間における暴力の被害者の多くは女性)
 警察庁の統計によると、平成十三年中に検挙された配偶者(内縁関係を含む)間における殺人、傷害、暴行は一千四百四十四件、そのうち一千三百三十三件(九二・三%)は女性が被害者となった事件である。
 殺人においては、女性が被害者となった割合は六〇・七%とやや低くなっているが、暴行については百五十六件中百五十二件(九七・四%)、傷害については一千九十七件中一千六十五件(九七・一%)とそれぞれ高い割合になっており、配偶者(内縁関係を含む)間における暴力の被害者は多くの場合女性であることが明らかになっている(第12図参照)。

(近年増加する夫から妻への暴力の検挙件数)
 配偶者間における犯罪のうち女性が被害者である場合の検挙件数の推移を罪種別にみると、暴行、傷害がそれぞれ平成十二年以降、大幅に増加している。十三年においては、暴行が百五十二件で前年よりも二十八件(二二・六%)の増加、傷害が一千六十五件で二百二十七件(二七・一%)の増加となっている。
 内閣府「男女間における暴力に関する調査」において、夫から身体的な暴力を受けた女性のうち、被害を警察、人権擁護委員、婦人相談所等公的な機関に相談している者の割合はそれぞれ一%未満と低く、関係機関による被害実態の把握ができず、被害が潜在している状況が明らかになったが、近年、これまで潜在していた夫から妻への暴力が顕在化し始めたといえる(第13図参照)。

(シェルターの実態)
 シェルター(配偶者からの暴力などから逃れてきた女性のための一時避難所)として利用できる施設で、法律に設置根拠があるものとしては、婦人相談所、婦人保護施設、母子生活支援施設がある。婦人相談所は売春防止法に基づき、各都道府県に一か所、婦人保護施設は同じく売春防止法に基づき、全国に五十一か所(公立三十六か所、私立十五か所)、母子生活支援施設は、児童福祉法に基づき、全国に二百八十六か所(公立百八十二か所、私立百四か所)がそれぞれ設置されている。
 このほかに、民間の団体等が自主的に運営している「民間シェルター」がある。
 平成十三年十一〜十二月に内閣府が実施した調査の結果、十四都道府県に計三十五の民間シェルター(個人が、配偶者からの暴力の被害者を受け入れているようなケースについては計上していない)が存在することが明らかになっている。NPO法人や社会福祉法人など法人格を有しているものもあるが、約七割(二十四施設)は法人格を有していない。
 また、「現在どのような問題を抱えているか」とのアンケートを行った結果、運営費用が足りず財政的に限界がある、施設のセキュリティ面に問題がある、十分なスタッフが確保できないなどの問題点が寄せられた。
 民間シェルターは、被害者の保護を積極的に行うなど、配偶者からの暴力の被害者支援に関し、先駆的な取組を実施している。今後、民間シェルターの活動に役立つよう、必要な援助が求められている。

(配偶者間の暴力の認知度)
 内閣府が平成十四年一月から二月にかけて有識者五千人を対象に実施した「配偶者等からの暴力に関する有識者アンケート調査」では、四二・五%の有識者が配偶者暴力防止法について「内容を知らない」と回答しており、まだまだ、法律についての認知度が低いことが明らかになった(第14図参照)。

第六章 生涯を通じた女性の健康

(女性のストレス)
 厚生労働省「保健福祉動向調査」(平成十二年)でみると、女性と男性のストレスを感じている度合いを比較すると、大いにストレスがある、ストレスが多少あると感じている割合は、女性が男性を上回っている。
 ストレスへの対処方法は、女性では、「人に話し発散する」が五三・四%で男性の約二倍、「買い物をする」が二六・二%で男性の約四倍と高くなっている。一方男性では、「タバコを吸う」が二二・八%、「アルコール飲料を飲む」が二八・六%で、女性の三倍以上と高くなっている。
 ストレスが健康に与える影響は大きく、ストレスをいかに解消していくかが健康を維持するための課題となりつつある。

第七章 メディアにおける女性の人権

(方針決定過程への女性の参画)
 新聞や放送などのメディアの分野における女性の参画は、提供する情報の内容が偏ることを防止したり、性・暴力表現の規制等、メディアが自主的に女性の人権に配慮した表現を行うように取り組んでいく上で重要な役割を果たすものと期待されている。新聞・放送業界における女性の参画状況についてみると、メディアにおける女性の参画は、徐々にではあるが、増加している。
 新聞・放送業界における部門別の女性従業員の割合をみると、新聞では、統括・管理部門、出版・事業・電子メディア部門で高く、製作・印刷・発送部門、営業部門で低い。放送では、アナウンス、編成・広報、総務・経理の順で高く、技術、スポーツ、製作・情報は低い(第15図参照)。

第八章 男女平等を推進する教育・学習

(子どもに期待する性格は「思いやり」、男の子では「責任感」も高い)
 小学四年生〜中学三年生の親に、自分の子どもに将来どのような性格を持つ大人になってほしいかを聞いたところ(三つ選択)、女の子、男の子とも「思いやり」が最も高く、次いで「規則を守り、人に迷惑をかけない公共心」となっている。男女差に注目すると、五年前と比べて全体的に男女差は縮小しているが、「責任感」、「自分で物事を計画し実行する力」、「忍耐強さ」は母親・父親とも男の子の方が高く、「思いやり」、「礼儀正しさ」、「協調性」、「金銭や物を大切にする心」は母親・父親とも女の子の方が高く、全体として、男の子には社会生活での課題遂行に役立つ特性を、女の子には情緒的な特性を望む傾向にあることがうかがわれる(第16図参照)。

第二部 平成十三年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

第一章 男女共同参画社会に向けた施策の総合的推進

○ 男女共同参画会議においては、平成十三年度は、前年度に引き続き仕事と子育ての両立支援策について調査審議を進め、六月に、具体的な目標と実施期限を明示した「仕事と子育ての両立支援策に関する方針についての意見」を決定した。
 また、平成十三年十月には、女性に対する暴力に関して、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成十三年法律第三一号。以下「配偶者暴力防止法」という)が同月に一部を除き施行されたことに伴い、「『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律』の円滑な施行に関する意見」を決定し、関係各大臣に意見を述べるとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況を監視するに当たり、「男女共同参画会議における監視の実施方針」及び「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視に関する平成十三年度の活動方針について」を決定した。
 このほか、女性が新たな分野に積極的に挑戦していくことを支援するため、総理からの指示に基づき調査審議を開始した「女性のチャレンジ支援策」や、選択的夫婦別氏制度、男女共同参画に関する苦情の処理システム、女性のライフスタイルに大きな影響を及ぼす税制、社会保障制度、雇用システムに対する調査など様々な課題について調査審議を行っている。

第二章 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

○ 人事院は、各府省が「積極的改善措置」により女性国家公務員の採用・登用の拡大を総合的かつ計画的に推進するよう、平成十三年五月、採用・登用の拡大に取り組む基本的考え方、現状把握及び分析の実施、採用・登用の拡大に当たっての留意点、勤務環境の整備等を盛り込んだ「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を策定し、各府省に通知した。
 この指針を踏まえ、平成十三年六月、男女共同参画推進本部において、政府一体となって推進するよう「女性国家公務員の採用・登用等の促進について」決定を行った。各府省は、指針に基づき、女性職員の採用・登用状況についての現状把握及び分析を行い、その結果を踏まえ、平成十七(二〇〇五)年度までの目標を設定した「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し、女性の採用・登用の拡大に向けての取組を推進している。

第三章 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革

○ 厚生労働省では、「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」を開催、検討を行い、平成十三年十二月に最終報告書をまとめた。

第四章 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保

○ 厚生労働省は、男女労働者間の格差が大きい企業に対して、ポジティブ・アクションを行うよう指導を行うほか、具体的取組方法についての相談、情報提供等を実施し、企業での取組を促進している。また、ポジティブ・アクションの取組を一層広く普及させていくための新たな仕組みとして、経営者団体と連携し、女性の活躍推進協議会を開催している。

第五章 農山漁村における男女共同参画の確立

○ 農林水産省では、新たに、女性農業者自らのライフステージに応じて出産・育児期にある女性の農業経営参画が可能となるよう経営管理等の研修、母性保護のためのセミナーの開催等を行った。

第六章 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援

○ 平成十三年七月、政府は「仕事と子育ての両立支援策について」を閣議決定した。同閣議決定は、「両立ライフへ職場改革」、「待機児童ゼロ作戦」、「必要な地域すべてに放課後児童対策を」など五つの柱立てに沿って、それぞれ具体的目標及び施策を示し、十六年度までに実施することとしており、これに基づき各種施策を実施している。内閣府では、経済団体等に対して、閣議決定の趣旨や仕事と子育ての両立に向け協力を依頼するとともに、男女共同参画に係る各種会議等の場において、閣議決定の趣旨の説明や意見交換などの取組を行っている。

第七章 高齢者等が安心して暮らせる条件の整備

○ 厚生労働省では、高年齢者の雇用・就業の促進を図るため、定年の引上げ、継続雇用制度導入等による六十五歳までの雇用の確保や再就職の援助を進めるほか、シルバー人材センターによる就業意欲や体力の多様化に応じた就業機会の提供等に努めている。また、雇用対策法(昭和四十二年法律第一三二号)を改正し、募集・採用における年齢制限緩和の努力義務の規定を設け、事業主に対し年齢制限の緩和の指導を行っている。さらに、国民各層を代表する者で形成される有識者会議を開催し、「年齢にかかわりなく働ける社会」の実現に向けて、雇用全般の在り方について幅広く議論している。

第八章 女性に対するあらゆる暴力の根絶

○ 平成十三年四月、配偶者からの暴力に関し、都道府県が配偶者暴力相談支援センターの役割を果たすことや裁判所が加害者に対して保護命令を発することなどの規定が盛り込まれた配偶者暴力防止法が成立し、同年十月(一部については十四年四月)から施行された。政府としては、この法律が円滑に施行されるよう、関係府省が連携を取りながら、各種取組を行っている。

第九章 生涯を通じた女性の健康支援

○ 平成十四年四月から使用される母子健康手帳の様式の大幅な改正を行い、父親の育児参加、育児支援、働く女性・男性のための出産・育児に関する制度についての記述の充実等を行った。

第十章 メディアにおける女性の人権の尊重

○ 内閣府では、青少年の健全な育成の観点から、青少年が各種メディア等を通じて性描写や暴力・残虐表現を含む情報に接することに関する問題に対応するため、@国の取組事項、A国から地方公共団体への要請事項、B国から関係業界団体等への要請事項について盛り込んだ「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」(青少年育成推進会議申合せ)を平成十三年十月に策定し、関係各省と連携しながら取組を推進している。

第十一章 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

○ 平成十三年度から、青少年の社会性を育むために、地域の子どもたちが年間七日程度の奉仕活動に取り組むモデル事業や、悩みを抱える青少年を対象とした体験活動推進事業を実施している。また、独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センターに「子どもゆめ基金」を新たに設け、民間団体の行う子どもの体験活動等に対する助成を行っている。

第十二章 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

○ 平成十四年二月、内閣官房長官の懇談会として「アフガニスタンの女性支援に関する懇談会」を開催し、アフガニスタン復興支援を進めるに当たり、女性のニーズに配慮した支援の在り方について検討を行っている。

平成十四年度において講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

○ 男女共同参画会議は、引き続き「女性のチャレンジ支援」等の課題について調査審議を進めるとともに、専門調査会を積極的に活用し、その結果を会議の調査審議に活用するよう努める。
○ いわゆる間接差別については、海外調査を行うなど、諸外国の施策や判例を収集し、更に検討を行う。
 また、平成十四年度には、ポジティブ・アクションの取組を全国的に広く普及するため、地方における取組を強化することとし、都道府県ごとに女性の活躍推進協議会を開催する。
○ 厚生労働省では、労働者派遣制度の施行状況の適格な把握等のための総合的実態調査を行い、その結果等を踏まえ制度全体の見直し検討を進めていくこととしている。
○ 農林水産省では、高付加価値化及びIT化の推進による起業活動の高度化を図るとともに、農業改良資金を見直す中で、女性起業向け優先枠を設定する。
 さらに、女性農業者の子育てと農業活動の両立及び経営参画への総合的な支援等を行う施設(女性アグリサポートセンター)を整備する。
○ 「仕事と子育ての両立支援策の方針について」(平成十三年七月閣議決定)並びに「少子化対策推進基本方針」(十一年十二月少子化対策推進関係閣僚会議決定)及び「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(新エンゼルプラン)(十一年十二月大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治六大臣合意)に基づき、多様な需要に対応した保育サービスの整備、子育ての孤立化や不安の解消を図るための相談・支援体制の充実等に努める。また、ひとり親家庭の経済的・社会的自立を促進するための施策の充実を図る。
○ 厚生労働省では、平成十四年度から創設される看護休暇制度導入奨励金及び育児両立支援奨励金を活用し、子の看護のための休暇制度と勤務時間の短縮等の措置の導入を進める。
○ 経済産業省では、今後の少子高齢化の進展に備える観点から、女性や高齢者の雇用及び多様な産業の創出を図るため、平成十四年度より、女性や高齢者が中心となった市民活動等のビジネス化を後押しするためのモデル事業の普及に努める。
○ 厚生労働省では、平成十六年までに行うこととなっている次期財政再計算に向けて、引き続き、社会保障審議会年金部会において制度全般にわたる検討を進める。この中で、女性と年金をめぐる問題についても、主要な検討課題の一つとして、十三年十二月の「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」の報告書を踏まえて、議論を進めていくこととしている。
○ 内閣府では、配偶者からの暴力に関し、国内の被害者の実態や、海外の加害者に関する取組について調査を実施する。
 また、平成十四年四月より、配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ法令、制度及び関係施設についての情報を、内閣府のホームページを通じて提供する(http://www.gender.go.jp/e− vaw/)。
○ 警察では、薬物乱用をなくすため、薬物の供給の遮断と需要の根絶を柱とした総合的な対策を推進する。
 厚生労働省では、薬物乱用対策として、平成十四年度より、新たに、薬物乱用防止指導員が地域の各種会合において啓発活動を行うためのCD−ROM等の啓発用資材を作成・配布し、啓発活動の一層の充実を図る。
○ 文部科学省では、平成十四年度から新たに、地域や家庭の教育力の低下、男女共同参画社会の形成などの課題について、地域社会全体で課題解決に取り組むことができるよう、行政とNPOをはじめとする民間団体との連携による地域学習活動の活性化を支援する。
○ 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に関し、条約実施のためにとった立法、司法、行政等の措置とその実施の進ちょく状況を含む取組を国連に報告するため、第五回報告書を作成する。


暮らしのワンポイント

帽子や日傘のお手入れ

 夏の間に使った日よけの帽子や日傘も、そろそろ役目を終える季節です。きれいにしてしまっておけば、また来シーズンも気持ちよく使えます。
 帽子は、素材によって手入れの方法が異なります。布製で「水洗い可」の表示がついたものは、洗剤を薄めた液に浸して、内側と外側をブラシでこすり洗いします。頭の丸くなった部分は、内側からザルを当てると洗いやすくなります。シャワーですすいで風通しのよいところで陰干しを。このときも頭部にザルを当てておくと、型くずれが防げます。水洗いできない天然素材の帽子は、ブラシでホコリをきれいに払います。内側のベルト部分は汗などで汚れているので、洗濯洗剤を薄めた液に浸したタオルを絞ってふき、その後、水ぶきで仕上げます。
 日傘は、ブラシでホコリや汚れを払い落とした後、洗濯洗剤を溶かした水をスポンジに含ませて洗います。傘の内側、骨の部分も忘れずに洗ってください。シャワーですすぎ、タオルで水気を取った後、陰干しに。すっかり乾いたら、防水スプレーをかけておきましょう。
 クリーニングに出した衣類は、戻ってきたらビニールカバーから出し、一日陰干しして湿気を除いてから保管します。カバーをかけたままにすると、湿気がこもり、カビの原因になります。



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月例経済報告(八月)


―景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動きがみられる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動きがみられる。
 ・失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は依然として厳しい。
 ・個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
 ・輸出は大幅に増加しており、生産は持ち直しの動きがみられる。業況判断は全体として改善がみられ、設備投資は減少しているものの、先行きについて下げ止まる兆しもみられる。
 先行きについては、輸出の大幅な増加や生産の持ち直しの影響が、今後経済全体に波及していくなかで、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、世界的な株安やドル安が進展したことにより、世界経済の先行き不透明感が一層高まっており、我が国の最終需要が下押しされる懸念がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二」を早期に具体化する。十五年度予算編成については、歳出改革を加速すると同時に、経済活性化を目指した本格的かつ一体的な税制改革について具体化を進める。
 また、デフレ克服に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
 個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。所得面で弱い動きが続いていることなどから全体的な基調の改善には至らないものの、消費者マインドに持ち直しの動きがみられることなどから一部の業種や支出項目においては増加の動きがみられる。
 需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は三か月前と比べ増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、一時的な要因により大きく増加した項目がみられるほか、食料が引き続き前年を上回るなど主に基礎的な支出項目に底固さがみられる。
 販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。このところ減少幅を縮小してきていたチェーンストア販売額は、平成十四年六月はほぼ前年並みとなった。百貨店販売額は、昨夏以降一進一退の動きを続けており、均してみれば横ばいとなっている。新車販売台数は、軽乗用車と小型乗用車が引き続き好調に推移しているものの、普通乗用車が大幅に前年を下回ったことから、前年をやや下回った。家電販売金額は、テレビ等が大幅に増加したものの、パソコンやエアコンが前年を大きく下回っていることから、全体では前年を下回った。旅行は、国内旅行は前年を大きく下回り、このところ縮小していた海外旅行の前年比減少幅は大きく拡大した。
 消費者マインドは、依然として水準は低いものの、持ち直しの動きがみられる。

◇設備投資は、減少しているものの、先行きについて下げ止まる兆しもみられる。
 設備投資は、生産及び企業収益の減少等を背景に平成十三年に入って以降減少が続いてきた。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成十三年一〜三月期以降減少が続いている。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、平成十三年に入って以降減少が続いていたが、このところ下げ止まりつつある。なお、ソフトウェア投資は、比較的堅調に推移している。
 設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成十三年一〜三月期以降減少基調で推移してきたが、このところ下げ止まりつつあることからみて、次第に下げ止まりに向かうものとみられる。ただし、日銀短観の平成十四年度設備投資計画において減少が見込まれていることなどを考慮すれば、下げ止まった後も低調に推移することが見込まれる。

◇住宅建設は、弱含みとなっている。
 住宅建設は、平成十三年に入り、貸家は増加したものの、これまで堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したこと等から、平成十三年度は、前年度比三・三%減の百十七万三千戸と平成十年度以来三年ぶりに百二十万戸を下回る低い水準となった。
 六月は、前月大幅に増加したこともあり、持家、貸家、分譲住宅のすべてが減少し、年率百十万三千戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

◇公共投資は、このところ平成十三年度第二次補正予算の効果がみられるものの、総じて低調に推移している。
 公共投資は、総じて低調に推移している。平成十四年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比一〇・七%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比一〇・〇%減となっている。
 このような状況の中で、五月の公共工事請負金額、大手五十社受注額は前年を上回るなど、今年度に繰り越された平成十三年度第二次補正予算の下支え効果がみられた。四〜六月期でみると、公共工事請負金額が前年に近い水準となったが、大手五十社受注額とともに引き続き前年を下回った。

◇輸出は、アジア向けを中心に大幅に増加している。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、増加している。
 輸出は、世界的な景気回復を背景に、半導体等電子部品などの電気機器や一般機械が大幅に増加、輸送用機器も堅調に推移しており、全体でも大幅に増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、電気機器、一般機械、輸送用機器を中心に大幅に増加している。アメリカ向け輸出は、電気機器と一般機械を中心に緩やかに増加している。EU向け輸出は、電気機器、輸送用機器を中心に増加している。今後については、世界的な景気回復が、引き続き我が国輸出にとっての増加要因になるとみられるが、世界的な株安やドル安が進展したことによって、世界経済の先行きについて不透明感が一層高まっていることに留意する必要がある。
 輸入は、電気機械などにおける生産の持ち直しの動きを背景に、IT関連など機械機器の輸入が増加しており、全体として緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器の輸入が堅調に推移しており、増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機など機械機器の輸入が増加していることを背景に、増加している。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加している。輸入数量が緩やかに増加する一方で、輸出数量が大幅に増加していることが、黒字幅の拡大に寄与している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、持ち直しの動きがみられる。
 鉱工業生産は、昨年初めから大幅に減少していたが、2四半期連続で増加した。輸出が大幅に増加していることや在庫調整が終了していること等を背景に、生産は、持ち直しの動きがみられる。
 ただし、世界経済の先行き不透明感の高まり等、懸念すべき点もあることには留意する必要がある。なお、製造工業生産予測調査によると七月は増加、八月も増加が見込まれている。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

◇企業収益は、下げ止まりの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に依然厳しさがみられるものの、全体として改善がみられる。倒産件数は、高い水準となっている。
 企業収益は、「法人企業統計季報」によると、平成十三年七〜九月期以降、電機機械などの製造業を中心に大幅な減益となっていた。平成十四年一〜三月期は製造業で減益が続いているものの、非製造業で増益に転じ、全体として減益幅が縮小した。また、日銀短観によると、平成十四年度については、上期はおおむね横ばい、下期は大幅な増益を見込んでいる。
 企業の業況判断について、日銀短観をみると、中小企業を中心に低い水準にあり、依然厳しさがみられるものの、製造業、非製造業ともすべての規模で改善している。先行きについても、中小企業非製造業で若干悪化が見込まれている以外は、改善を見込んでいる。
 また、倒産件数は、東京商工リサーチ調べで六月は一千四百三十九件、四〜六月期では四千七百八十件となるなど、高い水準となっている。

◇雇用情勢は、依然として厳しい。残業時間が増加しているものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。
 六月の完全失業率は、前月比同水準の五・四%となった。完全失業者について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者の増加幅は拡大している。雇用者数については下げ止まっており、六月は前月比で増加した。
 新規求人数は、前月比で減少したものの、基調としては持ち直しつつある。新規求職件数が同時に大幅に減少したため、新規求人倍率は前月比上昇、有効求人倍率は同横ばいとなっている。製造業の残業時間については、生産の動きを反映し六月は横ばいとなったが、引き続き増加傾向にある。
 賃金の動きをみると、定期給与は前月比で若干増加したものの、前年同月比では減少が続いている。また、ボーナスを含む特別給与が前年同月比で減少となり、弱い動きが続いている。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ、契約通貨ベース、円ベースともに上昇している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きをみると、電気機器、電力・都市ガス・水道は下落しているものの、原油高を背景として、石油・石炭製品は上昇している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、一般サービスはほぼ横ばいとなっているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢をみると、株式相場は、下落した。対米ドル円相場は、上昇した後、下落した。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、七月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、〇・〇〇一〜〇・〇〇二%で推移した。二、三か月物は、七月は、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、株価や為替の動向を懸念する市場の見方などから、六月下旬から七月中旬にかけて低下した。その後、金融機関による利益確定売りを見込む市場の見方などを背景に、七月下旬に、上昇した。
 株式相場は、米国株式相場の下落等を背景に、下落した。
 対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、三月下旬に百三十三円台まで下落した後、日米の景気の先行きに対する見方などを背景に七月中旬に百十五円台まで上昇した後、月末は、下落した。対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、六月中下旬にかけて、百十七円台前半から百十九円台前半で推移した後、七月上旬にやや上昇し、その後、百十五円台から百十七円台で推移した。
 マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(七月日銀当座預金平均残高十四兆九千億円)を背景に、高い伸び率となっている(七月:前年同月比二五・一%)。M+CD(月中平均残高)は、このところ、三%台半ばで推移している(六月速報:前年同月比三・四%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移してきたが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰り状況をみるとやや改善の動きがみられ、民間債と国債との流通利回りスプレッドがこのところやや縮小している。

四 海外経済

◇世界の景気は、緩やかに回復しているものの、先行き不透明感が一層高まっている。
 世界の景気は、緩やかに回復しているものの、先行き不透明感が一層高まっている。
 アメリカでは、景気の回復は緩やかになっている。個人消費の伸びは鈍化している。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に下げ止まっている。生産は増加している。雇用は持ち直している。物価は安定している。
 アジアをみると、景気は回復している。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国、タイでは、景気は拡大している。台湾、シンガポール、マレイシアでは、景気は回復している。対米輸出については、韓国、タイ、台湾、シンガポール、マレイシアでこのところ鈍化がみられる。
 ヨーロッパをみると、@ユーロ圏では、景気は持ち直し傾向にある。ドイツでは、景気は持ち直しの動きが弱まっている。フランスでは、景気は持ち直し傾向にある。Aイギリスでは、景気に回復の動きがみられる。
 金融情勢をみると、アメリカの株価は、企業会計不信の高まりや大手通信会社の経営破綻などから、七月は下落基調で推移したが、下旬に企業改革関連法案が議会両院で合意されたことなどから大幅に上昇した。また、その他の主要な株式市場でも株価は同様に推移し、七月下旬には上昇した。ドルは七月中旬まで減価したが、その後米株価の上昇に伴い増価した。アメリカの長期金利は、証券市場における米国債への資金シフト等から低下基調で推移し、七月末には上昇した。カナダでは七月中旬に今年三度目となる利上げを実施した。
 国際商品市況をみると、原油価格は、七月はおおむね横ばいで推移した。
 世界経済の先行きについては、このところの世界的な株安・ドル安や、それに伴うマインドの悪化によって、不透明感が一層高まっている。


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消費支出(全世帯)は実質一・六%の減少


―平成十四年五月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十四年二月、三月に二か月連続の実質減少となった後、四月は実質増加となったが、五月は実質減少となった。
 また、一人当たりの消費支出は、九万一千八百八十一円で、前年同月に比べ実質〇・四%の減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年十二月に実質減少となった後、十四年一月以降三か月連続の実質増加となったが、四月、五月は二か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十四年二月、三月に二か月連続の実質減少となった後、四月は実質増加となったが、五月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万三千百六十二円となり、前年同月に比べ、名目四・一%の減少、実質三・〇%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質三・三%の減少となった。
 勤労者世帯の消費支出は、前月に比べ実質二・五%の減少となった。













    <9月11日号の主な予定>

 ▽高齢社会白書のあらまし………………内 閣 府 

 ▽消費動向調査(六月)…………………内 閣 府 

 ▽消費者物価指数の動向(七月)………総 務 省 




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