官報資料版 平成14年9月11日




                  ▽高齢社会白書のあらまし………………内 閣 府

                  ▽消費動向調査(六月)…………………内 閣 府

                  ▽消費者物価指数の動向(七月)………総 務 省











高齢社会白書のあらまし


平成十三年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告平成十四年度において講じようとする高齢社会対策


内 閣 府


 高齢社会白書は、高齢社会対策基本法に基づき、政府が毎年国会に提出するものである。「平成十四年版高齢社会白書」は、「平成十三年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」及び「平成十四年度において講じようとする高齢社会対策」の二つから成っており、去る六月十四日、閣議決定され、同日国会に提出された。
 白書のあらましは次のとおりである。

平成十三年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告

第1章 高齢社会対策の方向

 第一次ベビーブーム世代が高齢期を迎える平成二十七年、六十五歳以上人口は現在より一千百万人も多い三千三百万人に達し、高齢化率も二六・〇%と国民の四人に一人を超えている。我が国がいよいよ本格的な高齢社会に移行することを踏まえ、十三年十二月、新しい高齢社会対策大綱が閣議決定された。新大綱では、旧来の画一的な高齢者像を見直すことなどを基本姿勢に掲げ、横断的課題として、多様なライフスタイルを可能にする高齢期の自立支援などを取り上げている。
 本章では、高齢者の生活や意識の多様性を明らかにし、活動的な高齢者、一人暮らし高齢者、要介護等の高齢者という三つのタイプの高齢者の視点から、分野横断的に求められる施策を概観し、高齢社会の将来像を展望する。

第1節 高齢者の多様性

○ 高齢者は、所得や貯蓄は平均でみれば現役世代と遜色なく、持ち家率は現役世代よりもむしろ高い。健康状況は現役世代に比べれば劣るというものの、およそ四人に三人は健康上の問題で日常生活に影響はない。およそ二割は労働力として活動しており、半分はグループ活動に参加しており、およそ七割がボランティア活動に参加意欲を持っている。子供夫婦との同居はおよそ三割で、成人子と同居していない高齢者が半数、意識としても子や孫との同居を望む者は四割程度である(第1図第2図参照)。
○ 多くの高齢者は、自立した活動的な生活を送っている。今後、ベビーブーム世代が高齢期を迎えるにつれ、このような高齢者が更に増加していくことが予想される。
○ しかし、高齢者の姿は多様であり、活動的な高齢者が増加する一方で、介護を要する寝たきりや痴呆等の高齢者も、数としては今後増加することが予想される。また、日常的な相互支援機能を担う同居家族のいない、一人暮らしの高齢者が今後割合としても増加することが予想されている。

第2節 活動的な高齢者

(現状)
○ 活動的な高齢者の家族形態は多様であるが、多くは子供とは別居し、夫婦で暮らしている。しかし、将来的には子供と同居を希望して、そのために住居の建替え等を考えている者もいる。また、家族や親族の中では話し相手などのほか、孫の世話や老親の介護など上下の世代への支援の役割を担っている者もいる。
○ 経済的には比較的恵まれている者が多く、資産を子孫に残すより自分のために活用したいと思っている者も少なくない。
○ 健康状況も良く、働いている者も多く、健康のためにも、七十歳代まで、あるいは元気ならいつまでも働く方がよいと思っている者も多い。働いている者も多いが、年齢などが合わなくて希望しても働けない者もいる。
○ ボランティア活動などへの参加意欲も高く、実際に参加している者も多いが、家庭の事情などのほか、同好の友人がいない、気軽に参加できる活動が少ないなどの理由で参加していない者もいる。

(施策の方向)
○ 多様な家族構成等に応じて、子や孫の世代との同居、隣居等のための住宅の建設や増改築を融資制度の活用等により促進する。
○ 貯蓄等の金融資産を活用できるよう、金融商品等の開発を促進、投資教育などの機会を充実する。また、土地家屋などの資産を活用できるよう、中古住宅市場などの環境整備を行う。
○ 判断能力が低下しても資産を活用して尊厳を持った暮らしを続けられるよう、任意成年後見制度の普及を図る。
○ 一方、高齢者の中には現役の者に比べて経済的に恵まれている者も見受けられることにかんがみ、税や社会保障などでの一律の優遇措置について見直しを行う。
○ 生活習慣の見直しによる主体的な健康づくりを支援する。
○ 定年の引上げや継続雇用制度の導入について啓発・指導を行う。また、多様な働き方や地域社会への参画を促進するため、臨時的・短期的な就業機会を提供するシルバー人材センター事業を推進するとともに、高齢者の起業を援助する。募集・採用における年齢制限を緩和するよう、事業主に対する啓発・指導を行う。
○ より若い時期から職場以外にも友人等を得られるよう、働き方の多様化・柔軟化、労働時間の短縮に取り組むとともに、退職後にボランティア活動に参加するためのきっかけづくりを進める。活動の受け皿として、ボランティア活動の養成・研修や拠点確保、NPO法人制度の普及・活用等を進める。

(将来像)
○ 高齢者も、年齢によって就労が制限されることなく、希望すればいつまでも様々な形で働き続けることができる。負担能力のある高齢者は負担することによって、社会保障制度等がより世間で公平な持続可能なものとなっている。
○ また、若いうちから仕事以外にも地域などに友人を持ち、その友人や地域の人たちの誘いで退職後はNPO活動などにも参加し、若い世代とも交流しながら、仕事や子育てに忙しい世代に代わって地域社会を支える中心的役割を果たしている人も多い。
○ 家族形態は多様であるが、ほとんどの人がそれぞれの形で家族と交流し、家族の中で役割を担っている。家族や友人などと運動や栄養などの健康的な生活習慣を楽しむために専門家の支援も受けられ、また、より高齢になったときにも安心してゆとりある生活ができるよう、貯蓄や住宅などの資産を活用することもできる。

第3節 一人暮らし高齢者

(現状)
○ 一人暮らしの高齢者は経済的に豊かな者がいる一方で、特に女性を中心に経済状況が良くない者も多い。他の高齢者に比べて賃貸住宅に住む者が多いが、賃貸住宅では居住水準が不十分で構造や設備に問題がある場合も少なくない。民間賃貸住宅では、入居を断られることもある。
○ 他の高齢者に比べてより高齢の者が多いこともあって、健康状況が良くない者がやや多くなっている。就業や社会活動への参加は他の高齢者に比べて少なく、近所付き合いも少ない。相談相手や緊急時の連絡先として隣近所の人を頼る割合は高い。
○ 外出は徒歩が多く、自分や家族の運転する自動車の利用が少ない。その分、他の高齢者に比べてバスやタクシーの利用が多くなっている。

(施策の方向)
○ 高齢期になっても就労所得を得、また、適正な額の年金を得られるよう、生涯を通じて雇用における男女の均等な機会及び待遇の確保、職業生活と家庭生活の両立支援、女性のニーズに対応した職業紹介や職業訓練、農林漁業経営への女性の参画を促進する。また、就業など個人のライフスタイルの選択によって不合理な取扱いが生じないよう、公的年金制度の見直しを進める。
○ 日常的な生活支援や緊急時の連絡・支援のための地域でのネットワークづくりの普及を進め、高齢者への周知を図る。また、生活支援サービスの提供を行う高齢者向け住宅の供給、生活支援施設を併設した公共賃貸住宅団地、家族以外の血縁に基づかない共同居住などに対応した住宅の供給を促進する。
○ 高齢者が使いやすいように配慮した優良な賃貸住宅の供給を促進する。高齢者の入居を受け入れる民間賃貸住宅を都道府県知事などに登録し、その住宅については滞納家賃を債務保証することによって、大家の不安を解消し、登録を促進する。
○ 近所付き合いや社会参加の促進のための環境整備を図る。きめ細かなサービスが地域の実情に応じて提供されるよう、地域福祉を推進する。このため、市町村による地域福祉計画の策定を支援する。

(将来像)
○ 生涯を通じて女性の職業能力開発の機会が増え、職業生活と家庭生活の両立や子育て後の適正な待遇での再就職が容易になることにより、賃金や被用者年金への加入期間の男女間格差が少なくなる。また、働き方の違いなどによる年金制度上の不合理な取扱いが生じなくなる。これらにより、低所得の一人暮らしの女性高齢者の経済状況は改善される。
○ 賃貸住宅も高齢者に配慮した構造設備のものが増え、民間賃貸住宅でも入居拒否に遭うことはなくなり、生活支援サービスが付設された高齢者向け住宅に住む、気の合った友人と一緒に住む等、多様な住まい方が選択できるようになる。
○ 労働時間や通勤時間の短縮により、就労している若い時期から地域の人たちと付き合いを続ける人も多く、また、高齢期になって地域での様々な交流活動に参加して新しい友人を得る人も多い。外出などの日常的な支援や緊急時の連絡ネットワークも整備されていることにより、安心して地域で暮らすことができる。

第4節 要介護等の高齢者

(現状)
○ 要介護者等の家族形態は一人暮らしから三世代同居まで多様であるが、要介護度の重い者は三世代同居に多い。主に介護している家族は女性が多く、高齢者も少なくない。また、要介護度の重い高齢者を介護している家族の中には、ほとんど終日介護に当たり、健康状況も良くない者もいる。介護者の負担が重いために施設入所を希望する者もいる。また、要介護者に対して憎しみを感じたり、虐待につながる場合もある。
○ サービスの利用状況は様々であるが、サービスへの満足度は比較的高い。サービスに対する苦情には、質や管理者等の対応に対するものが多い。
○ 住宅設備や道路等の地域の状況は、多くの場合、要介護者等の利用に配慮したものになっていない。健康・体力に自信がないと、学習・社会活動にも参加しにくい。

(施策の方向)
○ 「今後五か年間の高齢者保健福祉施策の方向(ゴールドプラン21)」(計画期間:平成十二〜十六年度)に基づき、訪問介護や通所介護などの在宅サービス、介護施設やケアハウスを計画的に整備する。
○ 介護保険制度の普及定着を進める。
○ ケアマネジャー、ホームヘルパー等の養成、研修を充実し、事業者の情報公開等を進める。痴呆介護に関する研究、専門職の養成、研究・研修のためのネットワークづくりを進める。特別養護老人ホームの全室個室化・ユニットケア化を進めるとともに、介護施設における身体拘束廃止に向けた取組を推進する。
○ 虐待や財産権の侵害について、成年後見制度や権利擁護事業の普及を図るとともに、高齢者の人権に関する啓発、人権相談や人権侵犯事件の調査・処理を通じ、その予防や被害の救済を進める。
○ 住宅設計指針の普及、融資制度の活用等により、要介護者が生活しやすい住宅の供給を促進する。ユニバーサルデザインの生活用品等の研究開発を促進する。道路、駅、車両、病院、劇場、官庁施設等をすべての人が利用しやすいものにしていく。また、情報通信技術を活用した在宅の学習・社会参加や健康管理システムの研究開発を促進する。

(将来像)
○ 手すりの設置、段差の解消など、高齢者に適した住宅が整備され、自宅内で転倒して骨折することは少なくなる。様々な生活用品は、安全でだれにでも使いやすいものとなっている。また、訪問介護や通所介護などの良質なサービスを利用することにより、要介護者等の生活の質が改善され、介護する家族の負担も軽減される。
○ 施設で生活する場合でも個室があり、小規模ユニットでのケアがなされ、身体拘束は廃止されることにより、自宅での生活に近い生活を送ることができる。痴呆介護についての研究も進み、痴呆等がある場合でも適切な介護を受けられるようになる。
○ 家族の負担の軽減、介護従事者の研修、高齢者の人権に関する意識の向上などにより、虐待や財産権の侵害なども少なくなり、また、人権侵犯があった場合の救済も速やかに行われるようになる。
○ また、道路等も、歩道の幅が広がり、段差が改善されるなど、要介護等の高齢者も利用しやすいものとなり、要介護等の状態になっても外出し、地域の人たちと触れ合い、生活を楽しむことができるようになる。また、情報通信機器を活用して、外出しなくても、健康チェックなどの医療サービスを受けたり、友人と交流したり、様々な活動に参加したりできるようになる。

第2章 高齢化の状況

第1節 高齢化の状況

(高齢化の現状と推移)
○ 六十五歳以上の高齢者人口は、平成十三年十月一日現在、二千二百八十七万人であり、総人口(一億二千七百二十九万人)に占める割合(高齢化率)は一八・〇%となっている。このうち、前期高齢者(六十五〜七十四歳)人口は一千三百三十四万人、後期高齢者(七十五歳以上)人口は九百五十三万人となっている(第1表参照)。
○ 高齢者人口は平成三十二(二〇二〇)年まで急速に増加し、その後はおおむね安定的に推移する一方、総人口が減少に転ずることから、高齢化率は上昇を続け、二十七(二〇一五)年には二六・〇%、六十二(二〇五〇)年には三五・七%に達すると見込まれている。また、前期高齢者人口は二十七(二〇一五)年をピークに減少に転ずる一方、後期高齢者人口は三十二(二〇二〇)年には前期高齢者人口を上回ると見込まれており、後期高齢者の占める割合は一層大きなものとなるとみられる(第3図参照)。

(地域別にみた高齢化)
○ 都道府県別の高齢化率は、三大都市圏で低く、それ以外の地域で高い。平成十二年現在、最も高い島根県で二四・八%、最も低い埼玉県で一二・八%となっている。今後、高齢化率はすべての都道府県で上昇し、三十七年には、最も高い秋田県で三三・八%、最も低い滋賀県でも二二・八%に達すると見込まれている。
○ 高齢化率による市区町村の分布は、昭和五十五年、六十年には高齢化率一〇〜一五%未満を中心に集中していたが、平成十二年には、高齢化率二〇〜二五%未満が最も多く、分布の広がりも大きくなっている。

(高齢化の要因)
○ 我が国の平均寿命は戦後大幅に伸び、平成十二年には男性七七・七二年、女性八四・六〇年となっている。また、六十五歳時の平均余命は、男性一七・五四年、女性が二二・四二年となっており、男女とも高齢期が長くなっている。
○ 出生の状況をみると、合計特殊出生率は第一次ベビーブーム以降急速に低下して昭和三十一年に二・二二となり、五十年に一・九一と二・〇〇を下回った。平成十二年現在一・三六であり、過去最低水準にとどまっている。

(高齢化の影響)
○ 平成十三年の六十五歳以上の労働力人口は四百九十二万人であり、労働力人口総数の七・三%を占めている。今後労働力人口総数が減少に転ずる中、労働力人口の高齢化は一層進展していくものと見込まれる。
○ 年金・医療・福祉における社会保障給付をみると、平成十一年度は七十五兆四百十七億円であり、国民所得に占める割合は、昭和四十五年度の五・八%から一九・六%に上昇している。

(高齢化の国際的動向)
○ 世界の高齢化率は、二〇〇〇(平成十二)年の六・九%から二〇五〇(六十二)年には一五・六%まで上昇するものと見込まれており、今後半世紀で高齢化が急速に進展する。
○ 先進諸国の高齢化率を比較すると、我が国は一九八〇年代までは下位、九〇年代にはほぼ中位であったが、二十一世紀初頭には最も高い水準となることが見込まれている。

第2節 高齢者の状況

(高齢者と家族)
○ 六十五歳以上の者のいる世帯数は一千五百六十五万世帯であり、全世帯(四千五百五十五万世帯)の三四・四%を占めている。内訳は、「単独世帯」三百八万世帯(一九・七%)、「夫婦のみの世帯」四百二十三万世帯(二七・一%)、「親と未婚の子のみの世帯」二百二十七万世帯(一四・五%)、「三世代世帯」四百十四万世帯(二六・五%)であり、三世代世帯の割合が低下し、単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている。
○ 高齢者の子との同居率は、平成十二年現在、四九・一%となっており、低下傾向にある。

(高齢者の経済生活)
○ 高齢者世帯の年間所得(平成十一年の平均所得)は三百二十八万九千円となっており、全世帯平均(六百二十六万円)の半分程度にすぎないが、世帯人員一人当たりでみると、高齢者世帯の平均世帯人員が少ないことから、二百十八万七千円となり、全世帯平均(二百十九万八千円)との間に大きな差はみられなくなる。
○ 高齢者の就業状況は、男性の場合、就業者の割合は六十〜六十四歳で六六・五%、六十五〜六十九歳で五一・六%となっている。また、六十〜六十四歳の不就業者(三三・五%)のうち五割以上、六十五〜六十九歳の不就業者(四八・四%)のうち四割近くの者が、就業を希望している。
 女性の就業者の割合は、六十〜六十四歳で四一・五%、六十五〜六十九歳で二八・七%となっている。不就業者でも、六十〜六十四歳の不就業者(五八・五%)の三割以上、六十五〜六十九歳の不就業者(七一・三%)の二割以上が就業を希望している。

(高齢者の健康・福祉)
○ 高齢者の健康状態について、平成十年における六十五歳以上の高齢者(入院者を除く)の有訴者率(人口一千人当たりの病気やけが等で自覚症状のある者の数)は五三〇・三である。日常生活に影響のある六十五歳以上の高齢者(健康上の問題で、日常生活の動作・外出・仕事・家事・学業・運動・スポーツ等に影響のある者。入院者、一か月以上の就床者を除く)の割合は、高齢者人口一千人当たり二〇三・三となっている。
○ 六十五歳以上の在宅の要介護者(洗面・歯磨き、着替え、食事、排せつ、入浴、歩行のいずれか一つでも何らかの介助を必要とする者)の数は百万四千人、六十五歳以上人口一千人当たりの割合は四八・七となっている。また、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設における六十五歳以上の在所者数は、それぞれ二十九万二千人、二十一万一千人、九万八千人(六十五歳以上人口一千人当たりそれぞれ一三・三、九・六、四・五)となっている。

(高齢者と社会・地域)
○ 高齢者の近所の人たちとの交流について、「ほとんどない」が二五・五%、「ほとんど毎日」が二一・〇%となっている。特に男性は「ほとんどない」が三一・五%となっており、三人に一人が近所の人たちとの交流を持っていない。
○ 高齢者の五二・六%が何らかのグループ活動に参加している。具体的には「町内会・自治会活動」二四・七%、「趣味活動」一八・一%、「健康維持のための活動」一四・〇%、「社会福祉活動」八・七%の順となっている。

(高齢者の住生活)
○ 高齢者の住宅について、高齢単身主世帯の七〇・八%、高齢夫婦主世帯の七六・六%が誘導居住水準(「住宅建設五箇年計画」における、住宅ストックの質の向上を誘導する上での指針)を満たしている。このうち、借家に住む世帯では、高齢単身主世帯で四一・一%、高齢夫婦主世帯で三四・〇%の世帯が水準を満たすにとどまっている。
○ 高齢者向けに必要な住宅の構造・設備の改造希望について、「特にない」は五四・一%にとどまっており、半数近くが改造を希望している。改造の内容は、「手すりを設置したい」二〇・九%、「住宅内の段差をなくしたい」一九・六%、「浴槽を入りやすいものに取り替えたい」一一・〇%、「浴室に暖房装置をつけたい」八・六%、「玄関から道路までの段差を解消したい」八・四%などとなっている。

(高齢者の生活環境)
○ 高齢者が「現在住んでいる地域で不便に思ったり、気になったりすること」についてみると、「医院や病院への通院に不便」一二・〇%、「日常の買い物に不便」一一・六%、「交通機関が高齢者には使いにくい」九・五%、「交通事故にあいそうで心配」八・二%、「近隣道路が整備されていない」七・〇%などとなっている。

(高齢者と安全)
○ 高齢者の交通安全に関して、六十五歳以上の高齢者の交通事故死者数をみると、三千二百十六人で、交通事故死者全体の三六・八%を占めている。交通事故死者数は、平成四年までは十六〜二十四歳の若者が多かったが、五年に高齢者が若者の死者数を上回り、その後も高齢者の割合の増加と若者の割合の低下が続いている。
○ 高齢者と犯罪、災害に関し、六十五歳以上の高齢者の犯罪による被害の状況を刑法犯被害認知件数でみると、平成十二年は十八万四千六百三十八件で、全被害認知件数の八・六%を占めている。
 また、六十五歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く)は平成十二年で六百四十六人であり、全死者数の約半分を占めている。

第3章 高齢社会対策の実施の状況

第1節 高齢社会対策の基本的枠組み

○ 我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法(平成七年法律第一二九号)に基づいている。
○ 高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、委員には閣僚が任命されており、高齢社会対策に関する重要事項の審議等が行われている。
○ 高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。
○ 平成八年七月に最初の高齢社会対策大綱が策定されてから五年が経過し、経済社会情勢も変化したことから、十三年十二月二十八日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、新しい高齢社会対策大綱が閣議決定された。

第2節 高齢社会対策関係予算

○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進という広範な施策にわたり、着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると、平成十三年度においては十一兆二千三百九十八億円となっている。
 これを各分野別にみると、就業・所得五兆四千八百八十四億円、健康・福祉五兆五千八百六十二億円、学習・社会参加三百五十六億円、生活環境三百二十九億円、調査研究等の推進九百六十八億円となっている。

第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得
○ 平成十三年度からは、「総合的雇用環境整備推進事業(ジャンプ65推進事業)」を実施し、高年齢者雇用アドバイザー活動を中心とした定年の引上げ、継続雇用制度の導入・改善等による六十五歳までの雇用の確保を図る事業主に対して相談・援助を行っている(第4図参照)。
○ 公務部門においては、高齢者雇用を推進するため、平成十三年四月から、国家公務員及び地方公務員の定年退職者等を対象として、六十五歳までの在職を可能とすること(上限年齢については、経過措置として六十一歳から三年に一歳ずつ段階的に引上げ)や短時間勤務の制度を設けること等を内容とする新たな再任用制度を導入した。
○ 定年、解雇等によって解職が予定されている高年齢者等のうち、離職後再就職を希望する者について、一定の再就職援助措置を講じた事業主に対して助成する在職者求職活動支援助成金を支給するとともに、企業グループ内の中高年齢者を受け入れる事業主に対して助成する移動高年齢者等雇用安定助成金を創設した(平成十三年十二月)。
○ 平成十三年四月の雇用対策法の改正により、事業主の募集・採用における年齢制限緩和の努力義務が規定された(同年十月施行)。あわせて、この規定に事業主が適切に対応するための指針を策定した。
○ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、当該社会における雇用システムの在り方や採用から退職までの条件整備の在り方について幅広く意見交換を行うことを目的として、「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」を平成十三年四月から開催している。
○ 平成十三年四月、職業能力開発促進法が改正され、労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力開発を促進することとされた(十三年十月施行)。
 また、同年五月には「第七次職業能力開発基本計画」(計画期間:十三〜十七年度)を策定し、職業能力のミスマッチの拡大に対応する観点から、労働市場が的確に機能するためのインフラストラクチャーの整備等を推進することとした。
 平成十三年度は、法改正及び同計画等に基づき、キャリア形成促進助成金の創設、雇用・能力開発機構都道府県センターにキャリア形成支援コーナーが設置された。また、教育訓練給付制度について、大学・大学院の講座について指定拡大を図るなど、多様な教育訓練機会の確保、創出に努めるとともに、適切な職業能力評価システムや、情報提供システム等の構築に向け研究を推進した。
○ 平成十三年十一月に、時間外労働の制限等を内容とする育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律が成立したところであり、労働者の仕事と育児・介護との両立を支援する施策を推進している。また、公務部門においては、国家公務員、地方公務員について、関係法律の一部改正により、育児休業等の対象となる子の年齢を三歳未満に引き上げること等の措置を講じた。
○ 年金制度においては、少なくとも五年に一度、年金財政の将来見通しを見直す「財政再計算」を行うこととされており、将来にわたって持続可能で安心できる制度を確立するため、平成十六年までに行うこととなっている次期財政再計算に向けて、十四年一月より、社会保障審議会年金部会において、制度全般にわたる検討を開始した。
○ 平成十二年平均の全国消費者物価指数が十年平均を下回ったことから、本来ならば十三年四月からの年金の額等を引き下げるべきところを、十三年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律に基づき、十三年度の特例として、国民年金法による年金の額等を据え置く措置を講じた。
○ 農業者年金制度については、農業の担い手確保及び年金財政の長期的安定を図るため、平成十三年六月に、加入要件の緩和や積立方式への移行等を内容とする農業者年金基金法の一部改正が行われた(十四年一月施行)。
○ 女性と年金を巡る問題に関して、平成十二年七月より、「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」において幅広い観点から検討を進め、十三年十二月に、標準的な年金(モデル年金)の考え方、短時間労働者等に対する厚生年金適用等六つの具体的な課題について基本的な考え方と今後議論を進めるべき論点を整理した報告書をとりまとめた。
○ 「公的年金制度の一元化の推進について」(平成十三年三月閣議決定)にのっとり、十三年六月、農林漁業団体職員共済組合を厚生年金保険に統合することを内容とする厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律が成立した(十四年四月施行)。
○ 確定給付型の企業年金等に加え、国民の自助努力を支援するための新たな選択肢として、拠出した掛金額とその運用収益との合計額を基に給付額が決定される「確定拠出年金」を導入する確定拠出年金法が平成十三年六月に成立した(同年十月施行)。
○ 平成十三年六月に、確定給付型の企業年金について、その受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、その統一的な枠組みを定めた確定給付企業年金法が成立した(十四年四月施行)。

2 健康・福祉
○ 平成十四年三月には、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るために必要な措置を講じることを内容とする健康増進法案を第百五十四回国会に提出した。
○ 平成十三年十月には、高齢者を対象としてインフルエンザの予防接種を行うことを内容とする、予防接種法の一部改正が行われた(同年十一月施行)。
○ 介護保険制度については、施行二年目を迎え、平成十三年十月からは高齢者の保険料の本来額での徴収を開始するなど、全体として着実な実施を図っている。また、短期入所サービスを利用しやすくするため、十四年一月から同サービスと訪問通所サービスの支給限度額を一本化して、同じ支給限度額の中で両サービスのいずれでも利用できるようにするなど、運用面での改善措置を講じている。
○ 地方公共団体における介護保険事業計画等の状況を踏まえ、「ゴールドプラン21」に基づき、要介護高齢者の需要に応じた良質な介護サービス基盤の計画的な整備を進めている。また、今後急増が見込まれている痴呆性高齢者の支援対策等を推進している。
○ 特別養護老人ホーム等において身体拘束の廃止が実現されるよう、現場の意識改革や、ケアの向上などを目指した「身体拘束ゼロ作戦」を進めており、介護現場での使用を念頭においた「身体拘束ゼロへの手引き」の普及を図る等の施策を展開している。
○ 高齢者の医療費の患者一部負担については、高齢者の経済的地位の向上に応じて適切な負担とすることとしており、平成十三年一月より、一月当たりの上限を設けつつ、定率一割負担制を導入しているところである。
○ 平成十三年十一月には政府・与党社会保障改革協議会において、医療制度を構成する保健医療システム、診療報酬体系、医療保険制度等について基本的な視点や将来方向を示した「医療制度改革大綱」が決定され、これに基づき、十四年三月、健康保険法等の一部を改正する法律案を第百五十四回国会に提出した。
○ 平成十三年七月に閣議決定された「仕事と子育ての両立支援策の方針について」においては、「待機児童ゼロ作戦」として、十六年度までにあわせて十五万人の受入れ児童数の増大を図ることとした。
○ 児童手当については、平成十三年六月からは、扶養する親等の所得制限を大幅に緩和し、支給率をおおむね八五%に引き上げることにより、支給対象児童の拡充を図った。
○ 「幼児教育振興プログラム」に基づき、幼稚園における子育て支援を推進するため、総合的な実践研究の実施や子育て相談の推進等を図っている。また、預かり保育を実施する幼稚園に対する助成の充実を図るとともに、保護者負担の軽減を図るための幼稚園就園奨励費補助について、同時就園の第二子、第三子以降に係る減免単価の引上げを行うなど、保護者や地域の多様な保育ニーズに対応した子育て支援施策を講じている。
○ 家庭教育についても、社会教育法の一部を改正し、家庭教育の向上のための社会教育行政における体制の整備を図るとともに、子育てやしつけに関して悩みや不安を持つ保護者が地域で気軽に相談できる体制を整備するなど家庭教育を支援する施策の充実を図っている。

3 学習・社会参加
○ 地域における生涯学習の推進体制の整備については、生涯学習担当部局の設置(平成十三年四月現在全都道府県及び二千七百六十四市町村で設置)、都道府県生涯学習審議会の設置(十三年四月現在三十八都道府県で設置)等を促進している。
 また、生涯学習の機会の提供に係る基盤の整備については、市町村や地域の様々な生涯学習関連機関との連携・協力を図る都道府県の生涯学習推進センターの整備(平成十三年三月現在三十三都道府県、六指定都市で設置)の促進等を行っている。
○ 学校教育に関しては、平成十三年六月、小・中・高等学校等においてボランティア活動など社会奉仕体験活動等の体験活動の充実を図ること等を内容とする学校教育法の一部改正が行われた(同年七月施行)。
○ 生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人特別選抜の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施などを行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを促進している。
○ 放送大学においては、テレビ、ラジオなどのメディアを活用して広く社会人等に大学教育の機会を提供しており、同大学在学者は、六十歳以上が全体の一一・七%、会社員や公務員などの有職者の割合が五二・三%となるなど、その属性は多岐にわたっている。また、放送授業を視聴するための学習センターを全都道府県において整備している(平成十三年度現在五十か所)ほか、高度専門職業人の養成を主とした大学院を十三年四月に開設し、十四年四月から学生を受け入れることとしている。
○ 公民館をはじめ、図書館、博物館、女性教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されており、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている。
○ 平成十三年一月から十四年三月においては、高齢者を含めすべての国民がIT(情報通信技術)基礎技能を習得できるようにすることを目指し、社会教育施設及び学校施設においてIT基礎技能講習を実施した(十三年八月末現在、受講者数百八十九万三千人)。
○ 高齢者自身が社会における役割を見いだし、生きがいを持って積極的に社会に参加できるよう、各種社会環境の条件整備を図るため、地域において、社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている。
○ 中高年層の海外技術協力の一環として、豊富な知識、経験、技術を有し、かつ途上国の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年を海外に派遣するシニア海外ボランティア事業(平成十三年度実績三百三十六名(新規派遣人数))等を行っている。
○ ボランティア活動の基盤の整備については、市区町村、都道府県・指定都市、中央の各段階における社会福祉協議会のボランティアセンターの活動等を支援している。
○ 平成十三年六月には、教育委員会の事務に青少年に対してボランティア活動など社会奉仕体験活動等の体験活動等の機会を提供する事業の実施等の事務を規定することを内容とする社会教育法の一部改正が行われた(同年七月施行)。また、大学や高等学校の入学者選抜においては、ボランティア活動や社会奉仕活動に対し、適切な評価が行われるよう配慮を求めている。
○ 二〇〇一(平成十三)年の「ボランティア国際年」を契機として、ボランティア活動の意義や役割等を広く国民に周知する観点から、シンポジウムや芸術作品展を開催した。
○ 特定非営利活動促進法に基づき、法人格を付与すること等を通じて、ボランティア活動をはじめとしたNPOの活動を促進するための環境整備を図っている。

4 生活環境
○ 「第八期住宅建設五箇年計画」(平成十三年三月閣議決定)に基づき、高齢者等のニーズの多様性等に的確に対応し、加齢等による身体機能の低下や障害が生じた場合にも基本的にそのまま住み続けることができる住宅の供給及び普及、社会福祉施設との併設の推進等の医療・保健・福祉施策との連携の強化並びに住環境の整備により、安定的で質の高い居住の確保を図っている(第5図参照)。
○ 高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づき、平成十三年十月から、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録・閲覧制度、高齢者向けのバリアフリー化された優良な賃貸住宅の供給の促進、終身建物賃貸借制度の創設、持家のバリアフリー化を支援する特別な融資制度の創設等を行い、高齢者の居住の安定確保を図っている。
○ ライフステージに応じた住み替えや買い換えを通じて既存住宅ストックを十二分に活用し得るような市場を整備するため、平成十三年八月、「住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)」を策定し、これに基づき中古住宅市場、住宅リフォーム市場等の環境整備に向けた施策を展開している。
○ 加齢等による身体機能の低下や障害が生じた場合にも、高齢者が安心して住み続けることができるよう、平成十三年八月、「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」(十三年国土交通省告示第一三〇一号)を策定し、その普及を図っている。
○ 高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)に基づき、移動の円滑化の促進に関する基本方針を策定し、高齢者の自立と社会参加の要請に対応するため、高齢者が安全かつ身体的負担の少ない方法で移動できるよう、公共交通機関のバリアフリー化と歩行環境の改善に向けて、様々な施策を講じている。
○ 旅客施設については、平成十三年八月に「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」、車両等については、同年三月に「公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」をそれぞれ策定した。
○ 平成十三年十月には、鉄道関係者による自主的な取組方針として「鉄道における総合的なバリアフリー化の推進に関する行動計画(アクション・プラン)」をとりまとめた。
○ 高齢者等が安全に、安心して通行できる歩行空間の確保のために道路構造令の改正を平成十三年四月に実施し、また、ユニバーサルデザインに配慮した歩行空間の整備のためのガイドラインを策定(同年十一月)する等、高齢者にも配慮した道路構造の基準やガイドラインの充実を図った。
○ 平成十四年三月には、高齢者等が円滑に利用できる特定建築物の建築を一層推進するため、特定建築物のうち一定の用途及び規模のもののバリアフリー対応の義務付けの創設及び努力義務の対象の拡大、容積率特例制度をはじめとする認定建築物に対する支援措置の拡大等を内容とする高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案を第百五十四回国会に提出した。
○ 「第七次交通安全基本計画」(計画期間:平成十三〜十七年度)等に基づき、参加・体験・実践型の交通安全教育の推進、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成、各種の普及啓発活動の推進などにより、高齢者への交通安全意識の普及徹底を図っている。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか、痴呆症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。
○ 消防機関においては、「新たな住宅防火対策の推進について」(平成十三年四月消防庁長官通知)に基づき、高齢者の火災による死者数の大幅な低減を目的とした住宅防火対策を推進している。
○ 高齢者の能力発揮のための高齢者農業活動支援施設等の整備、高齢者の生産・加工活動資金の貸付けなどを行っているほか、都市の高齢者も交えたワークショップの開催等を新たに支援するなど、農村高齢者の自立的活動を促進している。

5 調査研究等の推進
○ 痴呆、悪性新生物(がん)等の高齢期にかかりやすい疾患については、メディカル・フロンティア戦略の一環として研究を推進するとともに、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われており、平成十三年度までに、免疫不全症の治療法開発の進展、アルツハイマー病の早期確定診断法の開発、骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等に関する研究が推進されている。
○ がんについては、平成十三年八月、十五年度以降のがん研究の中長期的な方策についての検討を開始した。
○ テーラーメイド医療(個人に合った副作用のない医療)の実現に不可欠である、個人間での遺伝子の異なる部分の探索については、平成十三年度中に当初の目標の十五万か所の探索を完了した。
○ 医療福祉機器技術に関しては、最先端の産業技術を駆使し、安全性、利便性に優れた機器の研究開発に取り組んでおり、平成十三年度においては、戦略的かつ長期的な観点から日本人の二大死因であるがん・心疾患等の早期発見や適切な治療を推進するための「がん・心疾患等対応高度医療機器プログラム」、視覚機能の回復を果たす「人工視覚システムの研究開発」を新たに実施するとともに、十二年度からの継続十四の研究開発プロジェクトを推進した。
○ ユニバーサルデザインの生活用品、生活基盤、システム等の開発を支援する観点から、個々の人間のレベルでの様々な行動を計測し、理解・蓄積することにより、人間と製品・環境の適合性を客観的に解析し、個々の人間の行動特性に製品・環境を適合させる基盤技術の研究開発を行っている。
○ 医療関係施設と高齢者宅等をケーブルテレビ等で結ぶ在宅健康管理支援システム等のための情報通信施設の整備に対する支援を行った。
○ 高齢者に特有の疾病や生活習慣病の克服に関する研究の充実に資するため、大阪圏等の地域の研究能力を活用し、幹細胞の樹立・提供体制の整備や糖鎖研究等を推進する産学官連携拠点の整備に着手したほか、各種疾患に関する基礎的な研究や、研究成果を臨床研究段階まで橋渡しする研究の促進のために必要な臨床情報の収集及び解析を行うための施設の整備への助成を行った。
○ 高齢者の視点を重視した生活用品等の研究開発を推進するための基盤として、高齢者の加齢による身体機能等の低下状況等についての計測評価手法を確立するとともに、データベースを構築している。
○ 近年の研究開発は、高度化・複雑化し、境界領域、複合領域も拡大していることから、人材の養成、確保、資質の向上及び流動化に努めている。

平成十四年度において講じようとする高齢社会対策

第1 平成十四年度の高齢社会対策

○ 高齢社会対策関係予算
 高齢社会対策を、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
 一般会計予算における平成十四年度の高齢社会対策の関係予算は、十一兆七千三百八十七億円であり、各分野別では、就業・所得五兆六千三百八十七億円、健康・福祉五兆九千百三十一億円、学習・社会参加三百五十五億円、生活環境二百六十三億円、調査研究等の推進一千二百五十一億円となっている。

第2 高齢社会対策の推進

 平成十四年度の主な新規施策を各分野別に挙げれば、次のとおりである。

(1) 就業・所得
○ 高年齢者職業相談室を市区町村の庁舎施設内等に設置し、地域の高齢者福祉政策との密接な連携を図りつつ、職業相談等を行う。
○ 女性や高齢者の雇用及び多様な産業の創出を図るため、女性や高齢者が中心となった市民活動等のビジネス化を後押しするためのモデル事業を開始する。
○ 将来にわたって持続可能で安心できる年金制度を確立するため、平成十六年までに行うこととなっている次期財政再計算に向けて、制度全般にわたる検討を進める。
○ 基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げについて、安定した財源確保のための具体的方策と一体として検討を行う。
○ 老後の所得確保の充実を図るため、平成十三年十月に施行された確定拠出年金及び十四年四月から施行される確定給付企業年金の普及を図る。

(2) 健康・福祉
○ 介護予防・生活支援事業において、近隣者、ボランティア等による痴呆性高齢者の見守りや話し相手のための訪問を行う事業等を、新たに補助対象として追加する。
○ 介護保険制度については、引き続き着実な実施を図るとともに、平成十五年四月からの第二期事業期間に向け、地方公共団体の介護保険事業計画の見直しの支援を行うとともに、介護報酬の見直しについて検討を進める。
○ 介護支援専門員の支援体制の強化を図るとともに、訪問介護員の質的向上及び人材確保を図る。
○ 特別養護老人ホームにおける質の高いサービスを提供していくため、全室個室・ユニットケアを特徴とする新型の特別養護老人ホームの整備を推進する。
○ 高齢者医療制度の改革を推進する。
○ 子育て支援施策として、商店街の空き店舗を活用した保育施設設置・運営に対する支援を行う。

(3) 学習・社会参加
○ 小・中学校においてボランティア活動や高齢者との交流を行うこととした新学習指導要領の円滑な実施に努めるとともに、学校内外を通じた奉仕活動・体験活動の機会の充実を図る。
○ 高齢者教育などの課題について、地域社会全体で解決に取り組むことができるよう、行政とNPO(非営利活動団体)をはじめとする民間団体との連携による地域学習活動に対し補助を行うとともに、放課後や週末における子供の活動支援や高齢者等の幅広い世代とのふれあい交流支援など、都道府県における地域の教育力活性化に向けた総合的な取組を推進する。

(4) 生活環境
○ 交通安全施設等整備事業において採択基準を改正し、歩行空間のバリアフリー化に資する施設整備への補助を充実する。
○ 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律について、一定の用途及び規模の特定建築物についてバリアフリー対応の義務付けの創設及び努力義務の対象の拡大等を内容とする改正法案の成立後は、その周知及び円滑な施行を図る。
○ 高齢農業者等が効果的にIT(情報通信技術)を習得するためのカリキュラム・教材等の開発・実証等を行う。

(5) 調査研究等の推進
○ 高齢期にかかりやすい疾患について、基礎研究の成果を臨床に応用していくための研究を推進する。
○ ゲノム情報を活用した効率的な創薬の実現を目指すプロジェクトを開始するほか、テーラーメイド医療を実現するための基盤整備を行う。
○ 高齢者に特有の疾病等の克服に関する研究の発展に資する生物遺伝資源の戦略的な収集、開発、保存、提供体制を整備する。




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消費動向調査


―平成十四年六月実施調査結果―


内 閣 府


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末に当たる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十四年六月に実施した調査結果の概要である。

一 調査世帯の特性

 平成十四年六月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五三・二歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七五・三%となっている。また、有効回答率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十七世帯)となっている。

二 消費者の意識

(1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「物価の上がり方」に関する意識が悪化したものの、「雇用環境」、「収入の増え方」、「暮らし向き」及び「耐久消費財の買い時判断」に関する意識が改善し、前期差〇・九ポイント上昇の三九・三となった(第1図参照)。
(2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について十四年六月の動向を前期差でみると、「物価の上がり方」に関する意識(三・二ポイント低下)が悪化したものの、「雇用環境」に関する意識(五・八ポイント上昇)、「収入の増え方」に関する意識(一・六ポイント上昇)、「暮らし向き」に関する意識(一・四ポイント上昇)及び「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(〇・九ポイント上昇)が改善を示した(第1表参照)。

三 サービス等の支出予定(季節調整値)

 十四年七〜九月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出D.I.)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
(1) 高額ファッション関連支出D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス一一・四%のところ、今期はマイナス九・一%となっている。
(2) 学習塾等補習教育費D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が六・二%のところ、今期は六・七%となっている。
(3) けいこ事等の月謝類D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が一・三%のところ、今期は〇・七%となっている。
(4) スポーツ活動費D.I.は、このところマイナスとなっており、前期がマイナス〇・九%のところ、今期はマイナス〇・七%となっている。
(5) コンサート等の入場料D.I.は、このところマイナスになっていたが、前期がマイナス一・八%のところ、今期は〇・四%となっている。
(6) 遊園地等娯楽費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス一四・一%のところ、今期はマイナス一〇・五%となっている。
(7) レストラン等外食費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス二三・二%のところ、今期はマイナス一八・九%となっている。
(8) 家事代行サービスD.I.は、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス二・〇%のところ、今期はマイナス一・七%となっている。

四 旅行の実績・予定(季節調整値)

(1) 国内旅行
 十四年四〜六月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で三・七ポイント低下し三二・七%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で横ばいの二・九人となった。
 十四年七〜九月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十四年四〜六月期計画(以下「前期計画」)差で一・三ポイント低下し二九・五%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの二・九人となっている。
(2) 海外旅行
 十四年四〜六月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で〇・五ポイント上昇し四・四%となった。その平均人数は、前期差で〇・一人増加し一・七人となった。
 十四年七〜九月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・一ポイント上昇し三・八%、その平均人数は、前期計画差で〇・二人増加し一・九人となっている。

(参考)

一 消費者意識指標(季節調整値)
(レジャー時間、資産価値)

 十四年六月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・八ポイント上昇し四二・一となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で二・一ポイント上昇し三九・五となった。

二 主要耐久消費財等の購入状況・品目別購入世帯割合の動き(原数値)

 十四年四〜六月期実績は、三十品目中十八品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、十一品目が増加した。なお、一品目が横ばいとなった。
 十四年七〜九月期実績見込みは、三十品目中十一品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、十二品目が増加している。なお、七品目が横ばいとなっている(第2表参照)。

三 主要耐久消費財の買替え状況

 十三年四〜六月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗たく機などは八〜十二年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてパソコン、ビデオカメラ、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(七月中旬速報値)・全国(六月)―


総 務 省


◇七月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九七・八となり、前月比は〇・二%の下落。前年同月比は〇・九%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年十一か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九七・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は一・〇%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年十か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・九となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  生鮮魚介は四・二%の下落。
   <値上がり> あじ、かれいなど
   <値下がり> かつお、いかなど
  生鮮野菜は一・五%の上昇。
   <値上がり> きゅうり、トマトなど
   <値下がり> えだまめ、レタスなど
  生鮮果物は八・四%の下落。
   <値上がり> レモン、キウイフルーツ
   <値下がり> さくらんぼ、すいかなど
(2) 家具・家事用品は九一・八となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  家庭用耐久財が二・二%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(3) 被服及び履物は九四・七となり、前月に比べ三・七%の下落。
  衣料が四・八%の下落。
   <値下がり> 背広服(夏物)など
(4) 教養娯楽は九五・八となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  教養娯楽サービスが〇・五%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(〇・八%下落)、電気代(五・六%下落)、教養娯楽用耐久財(一二・八%下落)、衣料(四・五%下落)、家庭用耐久財(一〇・〇%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇六月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・六となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は〇・七%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年十か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・五となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は〇・八%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年九か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・九となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  生鮮魚介は一・九%の下落。
   <値上がり> かれい、ぶりなど
   <値下がり> いか、かつおなど
  生鮮野菜は〇・七%の下落。
   <値上がり> レタス、キャベツなど
   <値下がり> トマト、きゅうりなど
  生鮮果物は〇・八%の上昇。
   <値上がり> りんご、レモンなど
   <値下がり> すいか、メロンなど
(2) 被服及び履物は九七・七となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  衣料が〇・五%の下落。
   <値下がり> 婦人スーツ(夏物)など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 教養娯楽用耐久財(一三・〇%下落)、家庭用耐久財(七・九%下落)、衣料(三・一%下落)、電気代(二・二%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。





















    <9月18日号の主な予定>

 ▽情報通信白書のあらまし…………総 務 省 

 ▽法人企業動向調査(六月)………内 閣 府 




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