官報資料版 平成14年9月25日




                  ▽製造基盤白書のあらまし……………………経済産業省
                                      厚生労働省
                                      文部科学省

                  ▽労働経済動向調査(五月)…………………厚生労働省

                  ▽平成十四年四〜六月期平均家計収支………総 務 省











製造基盤白書のあらまし


経済産業省

厚生労働省

文部科学省

T 製造基盤白書とは

 「製造基盤白書」とは、ものづくり基盤技術振興基本法(平成十一年三月成立、六月施行)に基づき、政府が毎年ものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告書を、国会に提出するものである。
 平成十三年度白書は平成十四年六月十一日に閣議決定され、国会に報告された。

U 平成十三年度白書の概要

1 経済のグローバル化と我が国の製造業
(1) 製造業は、経済成長の牽引力、加工貿易立国・科学技術創造立国の基盤であり、国内に雇用機会を提供するものである。しかし、経済のグローバル化の中で、中国をはじめとする東アジアとの競合、海外進出・国内生産拠点の空洞化の懸念などの問題に直面している。
(2) 今後、我が国の製造業が競争力を維持・強化するためには、
 ・他国に一歩先んじた技術・製品を生み出す技術開発力の強化
 ・技術開発の成果を知的財産として保護、活用する体制の確保
 ・国内において多品種・少量の需要に対し短納期で生産・供給する効率的な事業手法の確立
 等の課題が存在する。
  また、鉄鋼産業・化学産業・工作機械産業・自動車産業・繊維産業・情報通信機器産業等業種別にみた展望と課題についても分析している。
(3) 二十一世紀を担う元気な企業によって始まっている、課題克服に向けた具体的な取組事例を紹介している。
(4) グローバル化が大きな影響を及ぼしている中小製造業・産業集積についても、経営革新、技術開発力の強化、地域における産学官連携の強化等の課題が存在する(具体的事例を紹介)。

2 ものづくり労働者の確保等の現状と課題
(1) 製造業においては、海外生産比率の上昇等に伴い就業者数が減少するとともに、高齢化が進んでおり、製品の高付加価値化に対応できる人材の育成や高度熟練技能の継承が重要な問題となっている。
(2) 国際競争が激化し生産拠点の海外移転が進展する中で、ものづくり労働者に求められる能力が高度化・多様化しており、それに対応してものづくり労働者の職業能力の開発・向上を図ることが重要な課題である(具体的事例を紹介)。
(3) ものづくり労働者の職業能力が生涯にわたって段階的かつ継続的に開発・向上されることを促進するため、その職業能力を的確に評価できる制度の整備を進めることが重要な課題である。

3 ものづくり基盤技術に係る学習の現状と課題
(1) 我が国製造業の直面する諸課題に対しては、「知」の源泉である大学と産業界が相互に啓発しあう新しいパートナーシップを構築することが不可欠である。そのためには、大学等公的研究機関における質の高い基礎研究の推進及び産学連携の推進が重要である。
 また、ものづくり基盤技術を支える創造性に富んだ人材育成のため、
(2) 学校教育においては、
 @ 専門高校、大学の理工系学部、高等専門学校等において、ものづくりに関する実践的な教育を行うほか、インターンシップを推進している。
 A 学習指導要領に基づき、主に関係教科の中で、ものづくりに関する知識や技術の指導を実施するとともに、科学技術・理科教育を振興している(具体的事例を紹介)。
(3) 生涯学習においては、
 @ 科学館、公民館、博物館における行事の実施、学校開放等、様々な場においてものづくりをはじめとする各種の学習機会を提供している。
 A 専修学校においても、実践的な職業教育、専門的な技術教育を実施するなど、多様な学習機会を提供している(具体的事例を紹介)。

第1部 我が国のものづくり基盤技術の現状と課題

第1章 経済のグローバル化と我が国の製造業

(1) 経済のグローバル化と我が国製造業の現状

 製造業は、今後の我が国経済の発展にとって重要な役割を果たすものであるが、我が国が世界経済との結びつきを強める中で、その経営環境は大きく変化しつつあり、様々な問題に直面している。
○ 製造業は、経済成長の牽引力であるとともに、加工貿易立国や科学技術創造立国としての基盤であり、国内に雇用機会を提供するものである(第1表第1図第2図第3図参照)。
○ しかしながら、我が国が世界経済との結びつきを強める中で、製造業の経営環境は大きく変化しつつあり、中国をはじめとする東アジアとの競合や、海外進出・国内生産拠点の空洞化の懸念など、様々な問題に直面している(第4図第5図第6図参照)。

(2) 我が国製造業が直面する課題

 経済のグローバル化に対応し、我が国の製造業が競争力を維持・強化するためには、他国に一歩先んじた技術及びそれを体化させた製品を生み出す技術開発力を強化し、その成果を知的財産として保護、活用する体制を確保するとともに、国内において多品種少量の需要に対し短納期で生産・供給する効率的な事業手法の確立を図る必要がある。
○ 経営戦略に係る課題
  我が国の製造業の総資本営業利益率(ROA)は低下傾向にあり、欧米の主要企業と比較すると、「経営資源の選択と集中」が遅れ、事業部門、製品の種類が多く収益性が低下している。
 また、我が国の企業は、間接部門の生産性が生産部門に比べて低い、企業規模が小さく経営基盤が弱い等の問題がある(第7図第8図参照)。
○ 産業技術力に係る課題
  情報通信、バイオテクノロジー等将来を担う革新的技術については多くの分野で、米国の優位が指摘されている。民間の研究開発費は趨勢的には増加傾向にあるものの、近年は伸び悩んでいる。
 また、我が国製造業の研究開発の成果は、社内に埋もれ事業化につながっていないケースが多い。この背景として、研究テーマが総花的、自前主義へのこだわりが強く産学連携が不十分といった問題点と並んで、多額の投資を要する実用化研究の段階に上昇していく際の「死の谷」を乗り越えることが困難化しているという課題が存在する(第2表第9図第10図第11図第12図参照)。
○ 知的財産権に係る戦略的対応に係る課題
  我が国企業は、研究開発等の成果である技術や知的財産を戦略的に管理・活用する取組が不十分である。
 この結果、企業がグローバルな事業展開を進める中、模倣品等権利侵害品に市場を奪われる事態や、アジア地域への意図せざる技術流出といった事態が発生している(第13図第14図参照)。
[意図せざる技術流出の事例]
○ 取引先たる東アジアの企業に対して、これまでの「つきあい」等から、その求めに応じ、先端技術に近い技術を供与したところ、キャッチアップされ、海外市場での競合が生じた(素材メーカー)。
○ 東アジアの企業で取引関係のあるところに、プロセス技術の一端を見せた(製品開発上見せざるを得なかった)ところ、その関係会社が当該技術について特許申請した(半導体装置メーカー)。
○ ノウハウの塊である金型の図面、CAD設計データ等を無断流用され、全く同様の部品が東アジアのメーカーから流通している(金型メーカー)。
○ 生産の事業手法に係る課題
  我が国製造業の強みは生産現場にあると言われてきたが、九〇年代に入り欧米の製造業は、各種のアウトソーシングとあわせて事業再構築を進めるとともに、ITを活用した新たな生産技術を積極的に導入し生産性を向上させてきた。また、汎用品分野においては、中国等アジア諸国が低コストを背景に、生産能力を飛躍的に拡大している。このため、我が国製造業においては、企業の組織改革も視野に入れITを戦略的に活用するとともに、製造現場において小ロット・短納期への柔軟な対応や、リードタイムの短縮に資する生産方式の導入、活用を図ることが肝要である(第15図参照)。

(3) 競争力強化に向けた製造産業の挑戦

 我が国の製造産業は、幅広い課題に直面しているものの、二十一世紀の製造業を担う元気な企業によって解決に向けた様々な取組が始まっている。
○ 経営戦略
  製造業の競争力強化のためには、経営資源の選択と集中を一層進めることにより事業活動全般の効率化を図ることが肝要である。また、企業によっては単なる素材の提供にとどまらず、最適解(ソリューション)を提供することや、製品の差別化を進めることにより、競争力強化を図っている。
(具体的事例)
@<企業の枠を超えて事業を統合・再編し、経営資源を成長分野に再配置>
 電力用電線事業を持つA社とB社は、電力用電線の需要減少と同事業の赤字の拡大が見込まれることから、平成十三年に電力用電線部門をそれぞれ本体から切り離し、新会社の下で統合し、生産拠点の集約・再編、重複設備の廃棄を行った。この設備廃棄に伴って発生した余剰人員は、光ファイバー、化合物半導体等の成長分野に配置転換した。
A<液晶用視野角拡大フィルムの分野におけるマテリアルソリューション>
 化学メーカーA社は、他社との競争に敗れ、いったんは液晶パネルフィルム市場から撤退した。しかし、A社の研究陣は、液晶パネルメーカーとの議論を通じ、新しい液晶方式(TFT方式)が必要になる可能性が高いといち早く判断した。液晶パネルメーカーの潜在的なニーズを研究員自ら収集し、地道な研究を四年以上継続するとともに、液晶パネルメーカーの協力も得て、視野角を拡大したフィルムの開発に成功した。
○ 研究開発による技術革新(イノベーション)
  従来は研究活動の成果が円滑に事業化に繋がらない点が課題となるケースが多かったが、近年は、応用研究、開発研究に重点を置きつつ、テーマの絞り込みを重視する企業が増え、欧米と比べ不十分ではあるものの、大学等外部研究機関との産学研究も進みつつある。また、研究開発によって大きな成果が期待される分野において、様々な取組が行われている。
(具体的事例)
@<大学等との共同研究を強化>
 総合化学メーカーA社は、探索的な研究では、外部研究機関へのアウトソーシングは独自研究と比べて二・五倍から三倍程度コスト効率の向上が可能な場合があるとし、海外の大学と材料科学領域で包括的な研究開発提携を行ったのに加え、国内においても、次世代の革新的技術の創成を目的として、大学を中核とした複数の企業との連携を進めている。
A<材料分野における研究開発―次世代モバイル用表示技術(プラスチックを利用した液晶の開発)>
 モバイル機器用液晶画面として、プラスチック基板を用いた液晶ディスプレイが期待されているが、各社が個別に研究開発を推進する場合、投資コストを回収できなくなるおそれがある。そこで、表示デバイス基板のプラスチック化を図る企業が協力し、大学や独立行政法人とも共同して研究を推進することを決定した。政府も共同研究施設の設置を支援し、平成十四年、大学の敷地内で研究施設の建設を開始することとしている。
○ 知的財産権に係る戦略的対応
  費用対効果を重視した知的財産の管理、事業の海外展開戦略に対応した技術管理の徹底、技術流出の防止などが行われている。また、模倣品に対する官民の様々な取組が具体化しつつある。
(具体的事例)
@<コア技術のブラックボックス化>
 製造装置やコア部品を内製化し、現地工場へ持ち込む。ソフトウェアについてはプロテクト化するか、あるいはコードを開示しない。製造装置の制御ノウハウを、基板として装置内に組み込むことにより対応する。
A<従業員によるノウハウ流出防止>
 技術・ノウハウを細分化し全容を知り得る者の数を極力少なくすることで対応する。退職時にノウハウを具体的に特定した上で、当該ノウハウに係る守秘義務を契約上明確化する。人材流出を防ぐためにストックオプション付与で対応する。
B<中国等の模倣品に対する対策>
 日本自動車工業会及び日本ベアリング工業会は、中国にミッションを派遣し、中国政府に権利侵害品の取締の強化を要請した。加えて、平成十四年四月には、官民一体となって権利侵害品対策を実施するための産業界横断的組織として、「国際知的財産保護フォーラム」が発足した。
○ 生産の事業手法における新たな潮流
  商品のリードタイムの短縮、効率的な調達、顧客情報の管理などを目的としたITの活用が行われている。また、中国等アジアにおいて生産能力が強化される中で、国内において多品種少量・高付加価値製品の生産体制を実現する取組が行われている。
(具体的事例)
@<製品開発におけるCAD/CAM/CAEの活用>
 CAD/CAM/CAE(ITを活用した製品設計・試作・製造)の導入は、設計や製造作業を効率化させ、リードタイムを短縮するものである。例えば、九〇年代後半に自動車メーカーは相次いでCAEを導入し、外観デザイン決定から発売まで約三十か月だった日本企業の平均的開発リードタイム(欧米は当時平均四十か月)が、九〇年代末には約二十か月あるいはそれ以下に短縮されるようになった。
 (用語) CAD(Computer Aided Design)は、コンピュータを利用して設計図を作るシステム。CAM(Computer Aided Manufacturing)は、コンピュータを利用して製品を製造するシステムである。
 CAE(Computer Aided Engineering)は、設計から製造、試験までの一連の作業をコンピュータを利用して一元的に管理するシステムである。
 三次元CAD/CAMとは、立体図に基づいたデザイン、製造を意味する。
A<サプライ・チェーン・マネジメント:SCM(Supply Chain Management)の導入>
 SCMは、従来企業の様々な部門が独自に調達、生産等の計画を立てていたのを廃止し、部門間で情報を共有することにより製品の管理を最適化するものであり、商品を無駄なくジャストインタイム方式で供給する事を可能とするものである。
 例えば、アパレル大手A社は、関連する国内六十二メーカーと協力し、週末の店頭での売れ筋情報を即座にフィードバックし、今後の売れ筋を予測して週初に工場へ発注をかけ、次の週末までには店頭へ配送する、という発注から納品まで約一週間でこなす体制を構築した。なお、売上に占める国産繊維製品の比率は七〇%にも上っており、国内繊維産業の一つの方向性を示している。
B<デジタル化と熟練技能>
 熟練技能を分析してデジタル情報に変換することができれば熟練技能を習得できなくとも誰でも利用できるようになるが、熟練技能は完全にデジタル化できるものではなく、デジタル化が容易でない技能は、かえって希少性が高まる。さらに、顧客ニーズ、設計変更等に機動的に対応する上で熟練技能は重要な武器であり、新しい技術開発・商品開発を生み出す源でもある(第16図参照)。
 例えば、A社は業界に先駆けてCAD/CAMを積極的に導入する一方で、CAD/CAMでは対応できない百分の一ミリ単位以下の精巧な仕上げや、最後の人間の目による確認行程は、多数の熟練技能者が手作業で行っており、高度に進化したIT技術と技能が両立していることがA社の強みとなっている。
C<セル生産方式>
 セル生産方式は、少人数の作業者が複数の工程をこなして規模の小さいラインを運営する方式であり、在庫が大幅に削減されるのに加え、作業員一人一人が別の製品を製造することができるため、多品種少量生産に適しているものである。
 例えば、精密機器メーカーA社の複写機工場では、セル生産方式の導入により、中間在庫が従来の二十日から七〜八日分に減少、完成品在庫も従来の二か月から約一か月分へと半減し、結果として中級モデルで四割、高級モデルで三割の生産性向上を果たしている。
D<モジュール化>
 モジュール化は単機能の部品を、共通のインターフェイスの下に組み合わせ、セットメーカーの予定した一定の機能を実現する手法であり、コスト低減、品質の安定化等にメリットがある。IT産業のみならず、昨今では、自動車産業でも部品点数削減等、軽量化等の面からモジュール化が浸透しつつある。
 例えば、自動車メーカーB社では、モジュール化した工程において原価低減効果は約五%、不良発生件数は五分の一、生産性(組立て時間)は一〇%向上したが、一方、技術のブラックボックス化等を懸念する指摘もある。

(4) ものづくりに係る中小製造業及び産業集積

 グローバル化が大きな影響を及ぼしている中小製造業・産業集積についても、経営革新、技術開発力の強化、地域における産学官連携の強化等の課題が存在する。
 大企業と比較して、中小企業や産業集積内企業は、資金・人材等の経営資源が小規模であることが多いが、相対的に迅速な意志決定が可能であり、また、外部組織を利用したり企業組合を結成するなどして、経営革新の成果を短期間に挙げることが期待される。
(具体的事例)
@<組合を結成し営業力の強化に成功した協同組合>
 地方の県庁所在都市の印刷会社十一社からなるA協同組合では、顧客の多いエリアで積極的に営業活動を展開しなければ生き残ることは困難と考え、東京に営業所を開設し、共同受注事業の強化に着手した。同組合を構成する十一社がそれぞれ得意の印刷分野を持つため、様々な需要に対応できることをセールスポイントに、地道に営業活動を展開した結果、現在では受注の大半を東京エリアで獲得することに成功した。
 中小製造業・集積内企業の中には、大企業に負けない技術志向を持ち、ものづくり志向を極めた結果、世界的に優れた技術を持つに至った企業もある。
(具体的事例)
@<高度な独自技術で高い競争力をもつ中小企業>
 携帯電話で鮮明な音声・画像を送受信するためには、高周波の電波を発信する極薄(近年は〇・〇一五ミリメートル)の水晶振動子が必要である。従業員数十名規模のA社は、もともとは木型づくりを手がけていたが、それに不可欠な研磨の技術を、水晶振動子を薄く加工する研削盤の開発に応用した。A社はこの研削盤に関する独自技術について特許も取得しており、A社の研削盤は、国内シェア七割を占めるとともに、製品の八割を海外に輸出している。
A<共同して優れた技術・製品開発を行う集積内企業>
 産業集積内に工場を持つ中小加工業者十社は、先端表面加工技術研究会を結成し、共同で製品・技術開発を開始した。メンバーとなる事業者は、いずれも微細加工、樹脂形成、レーザー加工等の分野で優れた技術を持つが、分野を越えて共同して研究開発を行うことで、より優れた技術・製品を開発できる可能性に着目した。既に、医科大学の研究者と共同して医療用機械の開発に着手しており、製品化の目途が付いているところである。
 地域の企業、大学、公的研究機関等による産学官の広域的な人的ネットワークを形成し、地域の特性を活かした技術開発を推進するとともに、新事業の創出を促進することが重要である。
(具体的事例)
@<産業クラスター計画(地域再生・産業集積計画)>
 産業クラスター計画は、政府が地方自治体と共働して、世界市場を目指す企業を対象に、地域経済を支え、世界に通用する新事業が次々と展開され、産業クラスターが形成されていくことを目標としている。そのため、産学官の広域的な人的ネットワークの形成、地域の特性を活かした技術開発の推進、起業家育成施設の整備等を三位一体で進め、さらに、事業化段階において様々な支援策を総合的・効果的に投入する。
 (用語) クラスターとは本来「ぶどうの房」の意。米国ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が地域の競争優位を示す概念として提唱したことで有名。産業クラスターは、特定分野の関連企業、大学等の関連機関等が地域で競争しつつ協力して相乗効果を生み出す状態をいう。
A<知的クラスター>
 我が国が産業競争力を維持し、持続的に経済の発展を遂げてゆくには、大学等に蓄積された「知恵」と「人材」を最大限に活用し、独自の研究・技術開発を促進していくことが必要である。そのため、平成十四年度より、全国十クラスターにおいて、知的創造の拠点たる大学等公的研究機関を核とし、技術分野を特化し、産学官連携施策を集中的に展開し、研究機関や研究開発型企業が集積する研究開発能力の拠点の創成を図る「知的クラスター創成事業」を実施する。

第2章 ものづくり労働者の確保等の現状と課題

(1) ものづくり労働者の雇用の現状

 製造業においては、海外生産比率の上昇等に伴い就業者数が減少するとともに、高齢化が進んでおり、製品の高付加価値化に対応できる人材の育成や、高度熟練技能の継承が重要な課題となっている。
○ 平成十三年の労働市場は初頭から悪化している。ITの不振や輸出の減少に伴う景気の落ち込みのほか、職業能力のミスマッチがその要因である(第17図参照)。
○ 製造業の雇用情勢は特に厳しく、雇用者は平成十年から四年連続して減少している。第三次産業の雇用者が前年比増加で推移しているのと対照的な動きとなっている(第3表参照)。
○ 製造業の雇用調整を方法別にみると、「残業規制」や「配置転換」の方法で行われることが多いが、平成十三年七〜九月期には「希望退職者の募集、解雇」が大きく上昇するなど、雇用調整の方法が変化してきている(第18図参照)。
○ 海外生産比率や製品輸入が大きく増加している業種ではおおむね就業者数の減少率が大きくなっており、国際的な経済活動の活発化が雇用に悪影響を及ぼすおそれがある(第19図第20図参照)。
○ 製造業の就業者のうち三十歳未満の者の割合は低下傾向にある一方、五十五歳以上が増加傾向にあり、高齢化が進展している(第4表参照)。

(2) ものづくり労働者の職業能力開発

 国際競争が激化し生産拠点の海外移転が進展する中で、ものづくり労働者に求められる能力が高度化・多様化しており、それに対応してものづくり労働者の職業能力の開発・向上を図ることが重要な課題となっている。
○ 製造業企業の教育訓練の実施状況についてみると、概して企業規模が小さいほど低い水準となっている(第21図参照)。
○ 労働移動の増加等により、企業主導の能力開発だけでは限界が生じてきていることから、労働者の自発的な職業能力開発の必要性が増してきているが、「忙しくて自己啓発の余裕がない」「費用がかかりすぎる」等が問題点として挙げられている(第22図参照)。
○ 国際化の下でコスト競争が激化し、量産分野を中心として生産拠点の海外移転が進展している。国内の生産は、ニーズの多様化に対応し多品種少量生産にシフトするとともに、高付加価値化に取り組んでいる。これに伴い、
 ・多数の機械を操作できる多能工型技能者
 ・生産の変化に対応して仕事と人の配置などを適切に行えるマネジメント能力を備えたマネージャー型技能者
 ・生産のあり方を体得した技能者
 ・高度熟練技能者
の重要性が増加している。企業や公共職業能力開発施設においては、それに対応した人材の育成に努めている(第23図参照)。
(具体的事例)
@<多能工型技能者の能力開発>
 A社は海外との競争が激化した九〇年代半ばから、生産性を上昇させるために「自己完結方式・一人生産方式」に取り組んでいる。例えば、金物加工では、ある一人の技能者を取り囲むように機械をコの字型に並べ、技能者はその機械をすべて使って様々な製品を作る。
 このような生産方式に対応できる技能者の育成の際には、技能者本人とグループリーダーとの話し合いにより個々人の技能マップが作成され、それをもとにリーダーが作成したOJTの課題設定シートに則り、チーム内のベテラン技能者または他チームの適当な技能者の下で計画的にOJTが行われる。
A<マネージャー型技能者の能力開発>
 D社では本社の技能研修センターが中心になって、技能系リーダーを養成するためのマネジメント能力養成コースを開設している。対象は一定水準以上の人事評価を受けている班長レベルの技能者であり三か月間現場を離れて工場改善、販売実習、情報技術などを学ぶ。また、同社では高度な技能者について生産ラインから離れ改善業務等のスタッフ的な仕事を担当するエキスパート職が導入され、技能職のキャリア・コースの複線化を進めている。
B<実践技術者の育成>
 職業能力開発大学校では、機械に関し専門性を有する者が電子、情報に関する科目を習得することによって、生産設備の省力化システムを構築・運用できるようになることを目指すなど、技術と技能の双方に通じた生産現場の実践技術者を育成している。
○ 熟練技能の継承は多くの企業の課題となっており、OJTの強化、指導者の養成等により若年の育成に努力している(第24図参照)。

(3) ものづくり労働者の職業能力の評価・職場環境

 ものづくり労働者の職業能力が生涯にわたって段階的かつ継続的に開発・向上されることを促進するため、その職業能力を的確に評価できる制度の整備を進めることが重要な課題となっている。
○ 技能検定はものづくり労働者の能力開発・評価に大きな役割を果たしており、仕事に対するプロ意識の高揚、従業員の能力開発意欲の喚起、教育訓練目標の明確化などに貢献している。昇格・昇進などの処遇を決める際、技能検定の合格を考慮している企業も多い(第5表参照)。
○ 製造業の大手企業において、技能検定の検定職種が現業系職種を網羅している割合は平均で約六割である。職業能力のミスマッチ解消等のため、現在評価制度がない分野についても労働者の知識・技能を適切に評価できるようにすることが課題となっている。
○ ものづくり労働者のキャリアの諸段階に応じて、技能検定、高度熟練技能者認定制度、卓越した技能者表彰制度(現代の名工)等の社会的な評価の仕組みを通じ、高度の熟練技能形成を促進している(第25図参照)。
○ 製造業の労働者に同世代の人と比較した現在の仕事や生活の評価を尋ねると、「仕事のやりがいが大きい」と評価する人が多い一方で、「収入が少ない」、「社会的地位が低い」と評価している人が相対的に多い(第26図参照)。

第3章 ものづくり基盤技術に係る学習の現状と課題

(1) 経済のグローバル化に対応した教育・研究の推進

 我が国製造業の直面する諸課題に対しては、「知」の源泉である大学と産業界が相互に啓発しあう新しいパートナーシップを構築することが不可欠である。
○ 製造業の競争力強化のためには、技術革新が肝要であり、大学等公的研究機関における技術革新の源泉となる質の高い基礎研究の推進が重要である。
○ 新産業の創出を促進し、製造業の国際競争力を高めるためには、産学連携の推進が重要である。
○ 日本の大学がより一層活力に富み、国際競争力のあるものになるよう、大学の構造改革を推進していく(第27図第6表参照)。
(具体的事例)
@<産学連携の実績>
○ 平成十二年度において、企業等と国立大学等の共同研究は、約四千件(十年前の約三・九倍)、国立大学等における企業等からの受託研究は約六千四百件であった(十年前の約二・九倍)。
○ 大学等技術移転促進法(通称)に基づき実施計画を承認された技術移転機関(TLO)は、平成十四年一月現在で全国で二十六機関である。

(2) 学校教育におけるものづくり教育の現状

 初等中等教育においては、専門高校において実践的な教育を行うとともに、体験的な学習等により、児童・生徒のものづくりに対する興味・関心を高めることが重要である。また、高等教育においては、ものづくりに関する実践的な教育の充実等を図ることが重要である。
 初等中等教育においては、
○ 工業高校等の専門高校を中心に実践的な教育を行うとともに、インターンシップを推進している(第28図参照)。
○ 学習指導要領に基づき、「総合的な学習の時間」を含めた各教科等において、ものづくりなどの体験的な学習を積極的に実施している。
○ 科学技術・理科教育を振興している(第29図参照)。
(具体的事例)
@<高等学校におけるインターンシップの実施例>
 三重県立桑名工業高校では、二年生全員が五日間にわたるインターンシップを実施した。生徒は、働くことや職業に対する見方・考え方等についての理解を深めるなど、大きな成果をあげている。また、受け入れ企業側からは、会社の活性化につながる、これを機会に優秀な生徒が地元に留まってくれれば、との感想が寄せられている。
〔高等学校におけるインターンシップ実施率〕(平成十二年度)
 公立高校全体 三一・九%
 工業高校   五九・九%
A<各教科におけるものづくり教育の例>
・小学校段階
 「理科」モーターなどの道具作り
 「図画工作」材料や用具などを使った工作
・中学校段階
 「理科」身近な物質を用いた電池の製作
 「美術」工芸の制作
 「技術・家庭」木材加工、金属加工等
・高等学校段階
 (普通教育)
 「理科」プラスチック等の材料の構造や性質を探究
 「芸術」工芸のデザインや制作などの創造活動
 (専門教育)
 「工業」ものづくりに必要とされている基礎的・基本的な知識・技術の習得等
B<理科におけるものづくりの事例>
 山梨県甲府市立相川小学校では、四年生の理科において、電気のはたらきを学習した後、発展的な学習として、レモンや備長炭などで電池をつくり、モーターを回したりした。子どもたちは、身近な素材から電池がつくれることに驚き、探究心をふくらませることができた。
 高等教育においては、大学の理工系学部、高等専門学校や専門学校などの高等教育機関で、ものづくりを中心に据えた実践的な教育を実施するとともにインターンシップを推進している。また、社会人を対象とした学習機会の拡充を図る(第28図第30図第31図参照)。
(具体的事例)
@<創造的なものづくり教育の実践事例>
 東京工業大学では、「たたら製鉄」として、レンガで反応炉を築き、掃除機を利用した送風機を回し、砂鉄と木炭を交互に挿入して実際に鉄を作っている。また、できた鋼から日本刀作成と同じ工法を経て包丁を作ることにより、ものづくりの楽しさを体得させている。
A<大学におけるインターンシップの実施例>
 金沢大学工学部では、三年次に「学外技術体験講習」を開設し、企業等において設計・製造等の実務を一〜二週間体験するインターンシップを実施している。
〔高等教育におけるインターンシップ実施率〕(平成十二年度)
 大学     三三・五%
 短期大学   二一・一%
 高等専門学校 八三・九%
B<大学等体験入学事業の事例>
 明石工業高等専門学校では、平成七年度より体験入学事業を行っており、平成十三年度は、県内の中学生、保護者七百三名を対象に、工作機械を使用したものづくり体験、設計製図の体験、航空写真の分析、建築設計や都市計画などの体験授業を行った。

(3) ものづくりに係る生涯学習の現状

 青少年をはじめとする国民の「科学技術離れ」「理科離れ」が指摘されている中、ものづくりに関する学習の機会を様々な場で提供できる体制を整備することが必要である。
 国民の「科学技術離れ」「理科離れ」が指摘されている中、科学館、公民館、博物館における行事の実施や、学校開放、放送大学における各種講座の開設など、様々な場においてものづくりをはじめとした各種の学習機会の提供が行われている(第7表参照)。
(具体的事例)
@<国民の科学技術に対する理解の増進のための取組事例>
○ ロボット創造国際競技大会(ロボフェスタ)
  平成十三年度にはロボット競技、展示、フォーラム等を通じ、青少年をはじめとする国民が、ものづくりの楽しさと最先端の科学技術を体験できる世界初の国際的総合イベント「ロボット創造国際競技大会(ロボフェスタ)二〇〇一」が関西地域及び神奈川県において開催され、約五十六万人の参加が得られた。
○ マルチメディアを活用した取組
  科学技術振興事業団は、「サイエンス・チャンネル」としてCS放送等を通じて国民に科学技術に関する情報を提供するためのテレビ番組の作成や、最新のコンピュータ技術によって仮想的に科学技術を体験できる「バーチャル科学館」の開発を実施した。
○ 大学・研究機関の公開
  研究施設を一般市民に公開し、研究活動の紹介や講演会などを実施する大学の研究所や大学共同機関が多くなっている。例えば、国立天文台においては、青少年を含む一般市民を対象に「天体観望会」を毎月二回実施している。また、東京大学生産技術研究所では、一般公開の中で中高生を対象とした見学コースや産学研究交流の展示を設けるなど、社会に開かれた研究所づくりを推進している。また、平成十三年度の「科学技術週間」においては、全国各地の研究施設や科学館等において、施設の一般公開や実験工作教室、講演会の開催など約八百五十件のイベントが開催された。
○ 子ども科学技術白書
  文部科学省では、児童生徒を対象に科学技術に対する興味を持つきっかけを与えることを目的として、科学技術白書の内容をもとに、平成十一年度以降「子ども科学技術白書」を毎年発行し、都道府県教育委員会、都道府県立図書館、科学館及び総合博物館等に配布している。
A<大学子ども開放プランの例>
 名古屋工業大学において、「ものづくりに挑戦!(未来への体験)」と題し、ワイヤ放電加工機を使用したプレート作りや、普通旋盤を操作してのペーパーウエイト製作、液体窒素を作る実験等を行った。
 中学生が普段触れることができない工作機械に触れる体験をとおして、機械操作の安全を身をもって実感できる機会となった。また、製作や実験を通して工学や「現在の中学校での勉強」の大切さや意味を考える契機となった。
B<国立科学博物館の取組事例>
 小・中学生を対象とした、ガラス工作、ろうそく製作等の実習用のシナリオ・テキスト等、科学に対する興味・関心を増進させるための学習プログラムを開発・実施し、その成果を全国の博物館、公民館、学校等に普及することを図っている。
 専修学校においては、実践的な職業教育や専門的な技術教育等を実施しているほか、社会人の再教育機関としての役割も担っており、ものづくりをはじめとした多様な学習機会を提供している。
(具体的事例)
@<産学連携によるプログラム開発の例>
 産業界のニーズを踏まえた、ニットについての豊富な知識・技術を有する即戦力となる人材を育成するため、ファッション関連企業と専修学校の連携のもと、マーケティングリサーチから製品化まで一貫したニットデザイン企画に係る先進的な教育プログラムの開発を実施している。
A<全国専門学校ロボット競技会>
 平成十三年度に実施された第十回大会においては、自律型ロボット対戦競技と有線型ロボット対戦競技が行われた。前者については、センサー技術と高度なプログラミング技術が、後者については、設計・製作技術が競われた。
B<専修学校開放講座の例>
 新潟コンピュータ専門学校では、小学生高学年程度とその保護者を対象として「音と光に反応する科学作業ロボット製作講座」を実施した。ロボットを組み立てることにより、ものづくりの楽しさや親子のふれあいが体感できたとともに、ICやセンサーの取り付けなどのメカニックな工程により、科学に対する興味・関心を深めることができた。

第2部 平成十三年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策(主な施策)

「ものづくり基盤技術の研究開発及びものづくり基盤産業の育成に関する施策」

○ デジタルマイスタープロジェクトの推進(二十二億三百万円)
  我が国製造業の競争力の維持・強化のため、設計・製造現場に「暗黙知」として存在している熟練者の技能、ノウハウ、経験を科学的に分析することにより「形式知」化し、情報技術(IT)を活用してソフトウェア化、データベース化する手法の開発により、ITと製造技術(MT)が融合した次世代の生産システムを構築するデジタルマイスタープロジェクトを推進した。
○ 中小企業技術革新制度(SBIR)
  平成十年に制定された新事業創出促進法に基づく中小企業技術革新制度(SBIR)により、関係省庁が連携し、新産業の創出につながる新技術開発のための補助金・委託費等について、特定補助金等として指定を行い、中小企業者等に対する特定補助金等の交付に関する支出の目標等を作成し、中小企業者等への支出の機会の増大を図った(平成十三年度の目標額は約百八十億円)。
○ 大学等技術移転促進費補助金(五億円)
  「大学等技術移転促進法」(平成十年八月施行)に基づき、大学等における創造的な研究成果を民間事業者へ移転する事業を行うTLO(技術移転機関)に対して、産業基盤整備基金から助成金の交付を行った。
○ 産業クラスター計画関連の支援策の拡充
  平成十三年度一次補正予算では技術開発支援を中心に二百十二億円、二次補正予算では産業技術総合研究所の施設整備、起業家育成施設の整備に二百七十二億円、合計四百八十四億円を確保し、産業クラスター計画に関連する施策を抜本的に強化した。

「ものづくり労働者の確保等に関する施策」

○ 変化に対応した職業能力開発の展開
  事業の新分野展開や製品の高付加価値化に対応して民間で行われる教育訓練を支援するため、公共職業能力開発施設において実習場や検査機器等の施設設備の貸与や指導員の派遣等を行うとともに、産業界の人材ニーズに応じた高度な職業訓練コース(FA(生産自動化)システム構築技術等)を実施した。
○ 技能検定制度の運用
  民間機関の活用による適正な職業能力評価を促進するため、技能検定制度について、試験業務の委託対象となる民間機関の範囲及び民間機関に行わせることのできる試験業務の範囲を拡大した指定試験機関制度を創設し、二団体を指定試験機関に指定した。
○ 高度熟練技能の活用(二億九千二百万円)
  ものづくり熟練技能者の後継者の育成・確保に資するため、高度熟練技能者を認定(九業種四百七十一人)し、企業における技能者向けの教育・指導や、学校教育等の場における体験学習等に活用されるよう、高度熟練技能者の紹介などを行った。

「ものづくり基盤技術に係る学習の振興に関する施策」

○ ものづくり学習振興支援事業(一千四百万円)
  小・中学校等におけるものづくり学習の振興を図るため、ものづくり教育関係者による支援体制の整備などを行う「ものづくり学習振興支援事業」を全国八地域で実施した。
○ 創造教育プログラムの開発・実施(二千四百万円)
  学生が自身のアイディアを活かし、ものづくりを行うことにより創造性を養う創造教育プログラムの開発・実施を主目的とした、大学・高等専門学校における取組を支援した。
○ 高等教育におけるインターンシップの推進(七億二千三百万円)
  インターンシップを実施する大学・高等専門学校に対して、必要となる経費の支援を行った。
○ 科学館活動の支援
  科学館と地域の学校とが連携したものづくりプログラムをはじめとした科学技術、理科教育活動の支援等、ものづくり技術をはじめとした科学技術に対する関心の喚起と理解の増進を図るための各地域の拠点である科学館活動を活性化させるための取組を実施した。
○ 親しむ博物館づくり事業(七千七百万円)
  学校休業土曜日を中心に、青少年が楽しく遊びながら伝統文化、技術等に直接触れ、体験的に理解できる機会を提供するため、参加体験型の展示、ハンズ・オン(触ること、実践すること等)活動を導入するなど、博物館の機能を高度化する先進的な取組を行う三十事業を委嘱し、その成果の普及を図った。
○ 専修学校教育の振興(十四億一千九百万円)
  教育内容の高度化等に取り組む意欲的な専修学校に対し補助を行うとともに、より高い職業能力や企業家精神などを有する人材の育成を図るため、産学連携による教育プログラム等の開発を推進した。




言葉の履歴書


おとぎ話

 秋は読書のシーズン。子ども時代におとぎ話を読んだことのない人はいないでしょう。しかし、「おとぎ話」という言葉の由来は、だれでも知っているとは言えないようです。
 「とぎ」は、お相手をするという意味の古語「とぐ」の名詞形と考えられています。「御伽(おとぎ)」はお相手をして退屈を慰めること。戦国・江戸時代の武家社会では、夜などに主君のそばにはべり、話し相手を務める「御伽衆(おとぎしゆう)」という役職がありました。
 戦国大名の御伽衆は、戦陣で主君が眠ってしまわないように、話し相手役を務めたのが始まりといわれています。
 経験豊かな老臣、僧、医師などが、合戦の物語や体験談を語ったもので、豊臣秀吉の御伽衆、曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)のように、とんち話、おどけ話をするケースもありました。江戸時代には、幼君の遊び相手として「御伽小姓」も生まれています。
 明治時代になって、巌谷小波(いわやさざなみ)が、『日本お伽噺』『世界お伽噺』を刊行し、子ども向きの昔話や童話をさす「おとぎ話」という言葉の意味を定着させました。




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労働経済動向調査


平成十四年五月結果の概況


厚生労働省


T 調査の概要

 労働経済動向調査は、生産、販売活動及びそれに伴う雇用、労働時間など現状と今後の短期的見通しなどを把握するため、全国の建設業、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業及びサービス業に属する常用労働者三十人以上を雇用する民営事業所五千三百五十八事業所を対象として、年四回実施(通信調査方式)しているもので、平成十四年五月一日現在の調査結果である。
 (注) 平成十一年二月の調査から、調査対象産業を従来の五産業に金融・保険業、不動産業を追加し七産業とした。

U 結果の要旨

一 生産・売上、所定外労働時間、雇用
(1) 生産・売上
 《三産業の実績でマイナス幅は縮小》
 生産・売上判断D.I.(平成十四年一〜三月期実績)は、製造業でマイナス六ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス一三ポイント、サービス業でマイナス四ポイントと三産業ともマイナス幅は縮小した。先行きは、十四年四〜六月期実績見込、十四年七〜九月期見込は三産業でマイナスとなっているが、製造業のマイナス幅は縮小する見込となっている(第1表参照)。
(2) 所定外労働時間
 《サービス業の実績でプラスに転じる》
 所定外労働時間判断D.I.(十四年一〜三月期実績)は、製造業でマイナス二ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス四ポイントとマイナス幅は縮小し、サービス業でプラス一ポイントとプラスに転じた。先行きは、十四年四〜六月期実績見込、十四年七〜九月期見込は三産業ともマイナスとなっている(第1表参照)。
(3) 常用雇用
 《製造業、卸売・小売業,飲食店の実績でマイナス幅は縮小》
 常用雇用判断D.I.(十四年一〜三月期実績)は、製造業でマイナス二六ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス一五ポイントとマイナス幅は縮小し、サービス業でマイナス九ポイントとなった。先行きは、十四年四〜六月期実績見込、十四年七〜九月期見込で三産業ともマイナスとなっている(第1表参照)。
(4) パートタイム雇用
 《卸売・小売業,飲食店の実績でマイナス幅は縮小》
 パートタイム雇用判断D.I.(十四年一〜三月期実績)は製造業でマイナス一二ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス二ポイント、サービス業でマイナス一ポイントとなった。先行きは、十四年四〜六月期実績見込で三産業ともマイナスとなり、十四年七〜九月期見込で製造業、サービス業でマイナス、卸売・小売業,飲食店でプラスとなっている(第1表参照)。

二 労働者の過不足状況
(1) 常用労働者
 《過剰感やや弱まる》
 五月現在の常用労働者過不足判断D.I.により、雇用過剰感の動向をみると調査産業計ではマイナス一三ポイントと前期(マイナス一五ポイント)と比べると、過剰感はやや弱まっている。
 産業別には、製造業、運輸・通信業及び卸売・小売業,飲食店で過剰感が弱まっている(第1図参照)。
(2) パートタイム労働者
 《不足感やや強まる》
 五月現在のパートタイム労働者過不足判断D.I.により、雇用過剰感の動向をみると調査産業計ではプラス五ポイントと前期(プラス三ポイント)と比べると、不足感はやや強まっている。
 産業別には、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店及び不動産業で不足感は強まっている。

三 雇用調整
(1) 実施割合
 《実績はやや上昇》
 雇用調整を実施した事業所割合(十四年一〜三月期実績)は、調査産業計三一%と、前期と比べると二ポイントの上昇となった。
 産業別にみると、建設業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業及びサービス業で上昇した(第2図参照)。
 今後の雇用調整実施予定事業所割合は、調査産業計では、十四年四〜六月期は二九%、十四年七〜九月期は二五%となっている。
(2) 実施方法
 雇用調整の実施方法は、調査産業計では、残業規制(一六%)、配置転換(一〇%)、希望退職者の募集、解雇(七%)の割合が高く、これらはいずれも前期より増加している。

四 中途採用
 《やや低下》
 「中途採用あり」とした事業所割合(十四年一〜三月期実績)は調査産業計で四三%と前年同期(十三年一〜三月期実績四五%)と比べると二ポイントの低下となった。

五 平成十五年新規学卒者の採用計画等
(1) 採用計画
 《すべての学歴で減少が増加を上回る》
 平成十五年新規学卒者の採用予定者数を十四年の採用者数と比べると、調査産業計ではすべての学歴で「減少」とする事業所割合が「増加」とする事業所割合を上回った。「増加」とする事業所割合を前年結果と比較すると、高校卒、専修学校卒の卸売・小売業,飲食店、専修学校卒の不動産業で上昇し、大学卒(文科系)のサービス業で横ばいとなったほかは、すべての学歴、産業で低下した。
(2) 採用計画の理由
 十五年新規学卒者の採用予定者数を「増加」とする理由(複数回答)を調査産業計で学歴別にみると、高校卒では「年齢等人員構成の適正化」、高専・短大卒及び大学卒(理科系)では「技術革新への対応・研究開発の充実」、大学卒(文科系)では「販売・営業部門の増強」、専修学校卒では「前年は新規学卒者の確保ができなかった」の割合がそれぞれ最も高くなっている。一方、「減少」とする理由(複数回答)は調査産業計で、学歴別にみると「人件費比率の抑制・定員管理の見直し」の割合がすべての学歴とも高くなっている。




九月は健康増進普及月間

健康日本21
生活習慣を見直して、健康な生活を

厚生労働省

 二十一世紀の日本は超高齢社会。現在以上に病気や介護による個人の負担が大きなものになると考えられます。自分の健康を一人一人が管理し、日ごろから健康づくりを実践することは、そうした将来の負担を減らすだけでなく、介護予防につながります。
 「健康日本21」では、九つの分野にそれぞれの達成目標を設定しています。
@栄養・食生活
 栄養・食生活は、健康の基本。目標は、適正な食物の摂取、そのための個人の行動の改善、その行動を支援するための環境づくりです。
A身体活動・運動
 身体活動や運動は、生活習慣病の発生を予防する効果があります。日常生活での身体活動に対する意識や運動習慣の増加が目標です。また、高齢者の方の、積極的な外出や地域活動への参加も併せて目標としています。
B休養・こころの健康づくり
 こころの健康は、生活の質を大きく左右します。目標は、ストレスの低減、睡眠の確保、自殺者の減少です。
Cたばこ
 喫煙は、がんや循環器病など多くの病気や妊娠にも関連した危険因子です。目標は、たばこの健康影響についての十分な知識の普及、未成年者の喫煙防止、分煙、禁煙希望者に対する禁煙支援です。
Dアルコール
 アルコールは、慢性的に摂取し続けると臓器の健康に大きな影響を与えます。目標は、多量飲酒者の減少、未成年の飲酒防止、節度ある適度な飲酒についての知識の普及です。
E歯の健康
 食事や会話を楽しむためにも、歯の健康は重要。目標は、歯の喪失の原因となるう蝕や歯周病の予防、歯の喪失防止などです。
F糖尿病
 日本の糖尿病患者数は、生活習慣と社会の変化に伴って急激に増加しています。また、糖尿病はひとたび発病すると完全な回復は難しく、放置すると重大な合併症を引き起こしかねません。目標は、糖尿病予防のための生活習慣の改善、糖尿病の早期発見と治療の継続です。
G循環器病
 循環器病は、日本の主な死亡原因の一つで、後遺症のために生活を阻害する要因ともなっています。目標は、循環器病の発病を防ぐための生活習慣の改善、その早期発見です。
Hがん
 がんは、日本最大の死亡原因であり、総死亡の約三割を占めています。目標は、がん早期発見のための、がん検診の受診者増加、併せてがんを防ぐための生活習慣の改善です。

   ◇       ◇       ◇

健康日本21がめざすもの
 日本の健康づくり対策として、昭和五十三年からの第一次国民健康づくり対策、昭和六十三年からの第二次国民健康づくり対策に続いて、新たに「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が定められました。これは、二〇一〇年度の達成をめざして、さまざまな分野での目標を提示した健康推進プログラムです。健康寿命の延伸へ向け、健康に関するすべての関係機関・団体などと国民の皆さんが一体となり、効果的・総合的な健康づくり運動を行っていきます。




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消費支出(全世帯)は実質一・一%の増加


―平成十四年四〜六月期平均家計収支―


総 務 省

◇全世帯の家計

 前年同期比でみると、全世帯の消費支出は、平成十二年十〜十二月期、十三年一〜三月期に二期連続の実質増加となった後、四〜六月期以降四期連続の実質減少となったが、十四年四〜六月期は実質増加となった。
 また、一人当たりの消費支出は九万四千五百九十二円で、前年同期に比べ実質二・三%の増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同期比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年七〜九月期、十〜十二月期に二期連続の実質減少となった後、十四年一〜三月期は実質増加となったが、四〜六月期は実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十三年一〜三月期に実質増加となった後、四〜六月期以降四期連続の実質減少となったが、十四年四〜六月期は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万九千百七十四円となり、前年同期に比べ、名目〇・〇%、実質一・一%の増加となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前期に比べ実質〇・三%の増加となった。
 勤労者世帯の消費支出は、実質で前期と同水準となった。













    <10月2日号の主な予定>

 ▽政府開発援助(ODA)白書のあらまし………外 務 省 

 ▽平成十三年事業所・企業統計調査………………総 務 省 




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