官報資料版 平成14年10月9日




                  ▽通商白書のあらまし………………………………………………経済産業省

                  ▽第百五十四回国会で審議された法律案・条約の一覧表………内閣官房

                  ▽家計収支(六月)…………………………………………………総 務 省











平成14年版


通商白書のあらまし


―東アジアの発展と日本の針路―


経済産業省


第1章 グローバリゼーションの中での東アジア経済の変容とこれからの日本

第1節 グローバリゼーションの進展下における東アジア経済の発展

1 経済水準格差の拡大と収束
 グローバリゼーションの進展がみられた過去約二世紀の間に、世界各国の経済水準格差は拡大したが、先進国を中心としたグローバリゼーションの動きに参加した国家の間では収束がみられる。これまでの歴史をみてみると、経済水準格差の収束過程においてキャッチアップされるイギリスや米国のような先進諸国は、持続的成長へ向けた種々の改革努力により、自らも引き続き成長を続け、新たな発展段階に進みつつあることがわかる。グローバリゼーションが進展する中で、我が国としては、これら先進諸国の道を範として、いかにして自らの改革努力を通じ、持続的成長につなげていくかが重要である。

2 グローバリゼーションの進展とその背景
 一八二〇年代から第一次世界大戦の前まで(〜一九一四年)の約一世紀にわたり、第一次グローバリゼーション・ブームが到来する。この間グローバリゼーションを推し進めたのは、輸送費の劇的な低下と、イギリスをはじめとする各国による自由貿易体制の確立と維持がもたらした関税障壁の低下等である。
 戦間期を含む二つの世界大戦の時期は、グローバリゼーションの後退期に当たり、移民や貿易・資本の移動を制限する為の種々の障壁が築かれ、経済のブロック化が進展した。
 第二次世界大戦後現在に至る期間は、第二次グローバリゼーション・ブームの時代である。この時代のグローバリゼーションを推し進めているものは、交通・通信手段の飛躍的発展と今日の多角的通商システムの発展や種々の経済連携の動きへとつながる制度面における進歩である。航空機や船舶による輸送手段の発達、世界のすみずみまで行き渡りつつある鉄道網・通信網、IT技術の飛躍的発展は、近年の輸送手段の多様化、通信コストの低下を推し進めている。また戦間期の保護主義・ブロック経済化の背景には国際通商・経済体制の欠如があったとの反省から、戦後それらシステムの構築へ向けた尽力がなされた。これらにより、第三期における財・サービス貿易額や対外直接投資額は急速に伸長してきた。

3 東アジアにおける収束と経済関係の深化
 日本及び東アジア諸国・地域の経済水準は過去何十年かにわたり、基本的に上昇と収束化が進む傾向にある。それら諸国・地域では一人当たりGDPの上昇と収束化のみならず、経済構造の高度化がみられる。こうした収束化の要因の一つに、貿易・投資の両面における域内経済関係の深化が挙げられる。こうした貿易面での緊密化や投資の拡大が、東アジア諸国・地域の、経済構造の高度化と地域間の水平分業を促進し、域内の収束化と高度化に寄与してきた。
 このような域内経済関係の深化を背景として、世界に占める東アジアのGDPシェアは、一九五〇年ごろを歴史的な転換点として上昇する傾向を示してきている。我が国としては、かつての欧米諸国がそうであったように、経済構造改革と自らの変革によって東アジア諸国・地域とともに成長を目指す必要がある。

第2節 我が国の地域経済構造の変化と東アジアにおける経済集積間の競争と連携

1 東アジアにおける経済集積のダイナミズム
 東アジアにおける経済水準の収束化の動きは、経済集積の成長と軌を一にする。経済成長が続く中国では、その沿海部に産業の地理的集中が進んでいる。マレイシア、タイ等においても、有力な経済集積の成長が認められる。
 同時に、経済集積間における競争と連携が進んでいる。生産活動においては、厳しい競争が行われており、都市の位置づけに変化がみられる。
 東アジアにおいては、日系企業をはじめ諸外国の企業が各経済集積に進出しており、これらの企業の活動により、我が国と東アジアの経済集積との連携が進んでいる面もある。こうした連携を背景に、各集積地間の分業が進み、それぞれに特色のある経済集積が形成されてきている。

2 我が国の産業構造の転換と経済集積の変化
 我が国の産業構造の変化は、地域経済構造の変化と軌を一にする。我が国は、戦後二度にわたる産業構造、地域経済構造の転換を経験し、現在戦後三度目のサイクルに入りつつあると考えられる。二度目のサイクル以降は、経済活動の移転は日本国内にとどまらず、東アジアを中心とする海外にも及んだ。こうした動きは、同地域における経済集積の成長を促進する効果をもたらした。
 第二期・第三期における日本企業の海外展開に伴い、我が国の地域経済構造と東アジアとの関係にも変化がみられる。最近では、日本の大都市に立地する産業についてNIEsの競争力が高まりつつあり、こうした産業は日本の競争力が高いという図式は、NIEsとの間ではなくなりつつある。他方、中国との関係においては、この図式が維持・強化されている。すなわち、中国は、これまでのところは日本の地方都市に立地する産業を中心とした発展を遂げてきていると考えられる。
・NIEsとの関係
 負の相関(左肩上がりの傾向線)が水平方向へと変化→NIEsとの補完関係が代替関係へ変化
・中国との関係
 負の相関(左肩上がりの傾向線)がより顕著な傾向へと変化→中国との補完関係が維持・強化

3 我が国の経済集積の特徴と経済集積間の連携
 我が国の経済集積の特徴として、高い水準にある多様性が挙げられる。すなわち、単一的な産業群の集積ではなく、大都市を中心に数多くの産業、企業が集積し多様な経済圏を形成している。さらに、多様性の水準が上昇傾向にあることも特徴的である。こうした高い多様性は、異業種間の知識波及の促進や、産業構造の転換の際における持続的な成長に貢献すると考えられる。他方、東アジアの経済集積は、これまでのところ産業の特化を強めながら成長を続けていると考えられる。
 また、我が国は東アジアに近接しており、発展する東アジアの各経済集積に対して、欧米諸国等に比べてその関係を深めやすい空間的位置にある。
 このように東アジアにおいて最も先進的な経済構造を持つ我が国は、発展段階の面でも空間的位置の面でも、東アジアの経済集積と連携を進めることができる恵まれた地位にある。我が国は、多様性の利益を重視した魅力ある経済集積を実現し、東アジアの経済集積と連携を図ることが求められている。

第3節 先進国におけるサービス産業の発展

 先進諸国では、いずれの国でも経済活動や雇用に占めるサービス産業の比率が高まる「サービス経済化」が進展している。このうち、サービス部門の発展が著しい米国の例をみると、狭義のサービス業、中でも@これまで企業が内製化していたサービス部門がアウトソーシングされたもの(事業所向けサービス)、A従来は家計労働に内包されていたサービス部門がアウトソーシングされたもの(ヘルスケアサービス)の寄与によるところが大きい。前者については製造業等におけるアウトソーシングの進展や非正規雇用の拡大が背景にあると思われる。一方、我が国でもバブル経済期までは事業所向けサービスの伸びが高かったが、長引く不況により、近年サービス業の雇用吸収力には停滞感がみられる。こうした状況下でも、医療及び社会福祉関連サービスは高齢化の進展とそれに伴う介護サービスに対するニーズの高さを背景に雇用を拡大している。
 サービス経済化が進展していくことに対して、我が国ではとりわけ製造業の比率が縮小することをもって「モノづくり」のよき伝統が失われることを懸念する向きもある。しかしながら、@米国経済の再生が単にサービス産業の発展というよりは、製造業とサービス産業の相互依存関係の深化によりなされたものであること、A製造業においても加工・組立よりも収益性が高い販売、アフターサービスといった部門に経営資源の重点を移す「サービス産業化」が進展していること等を勘案すれば、製造業とサービス産業とはトレード・オフの関係にあるわけではなく、両者を区別して議論する必要性は相対的に薄れつつあると考えられる。
 技術進歩が一段と進み、専門分野での効率性の追求が一層なされる今日において、我が国経済が今後とも活力を失わず成長していくためには、従来我が国の強みであった製造業における生産技術面、販売戦略面での優位性を活かしながら「選択と集中」を進め、分化・発展してきたサービス産業と強力なネットワークを組むことが求められる。また、我が国のサービス産業も単なる国内製造業等へのサービス提供者にとどまることなく、世界の企業、国民をユーザーとして、国際的展開を図ることが望まれる。

第2章 国際収支構造の変化と日本経済

第1節 日本の国際収支の動向

1 二〇〇一年の経常収支動向とその特徴
 二〇〇一年の経常収支黒字は前年から一七・三%縮小し十兆六千五百二十三億円となった。これは所得収支黒字が大幅に拡大したものの、世界経済の減速を受けて輸出が減少し貿易収支黒字が大幅に縮小したことによる。
 これまでの経常収支黒字の縮小は、国内景気拡大局面において輸入が増加し貿易収支黒字が縮小することにより生じていた。今回はこれまでの局面と異なり、国内景気の減速により輸入の伸びが鈍化する一方、世界経済の減速により輸出が大幅に減少したことから貿易収支黒字及び経常収支黒字の縮小につながった。

2 経常収支の項目別動向及び資本収支の動向
 二〇〇一年の貿易収支黒字は輸出の減少を主要因として縮小した。これにより日本の国際競争力が構造的に衰えたのではないかとの懸念もある。しかし、輸出の減少及び貿易収支の黒字縮小は日本だけにみられたわけではなく、世界経済の減速を背景として東アジアの多くの国等でもみられた事象である。
 サービス収支は赤字で推移しており、その背景には旅行収支の大幅赤字がある。他方、特許等使用料収支については近年技術輸出の増加を背景に受取額が拡大し、収支は赤字縮小傾向にある。
 所得収支黒字は対外資産の累積を背景に一九九〇年代以降拡大傾向を強め、貿易収支に匹敵する規模となった。
 日本の資本収支は赤字(資本流出)を継続している。対内直接投資、対外直接投資ともに大規模なM&Aの増加を背景に最近は拡大しているが、日本の対内直接投資は経済規模との関係でも小さく対外直接投資を大幅に下回っている。

第2節 経常収支変動の評価

1 日本経済とISバランスの動向
 マクロ経済的観点からは、対外バランスである経常収支は国内の貯蓄と投資の差額(ISバランス)を表し、貯蓄投資行動や人口構成の変化及び財政収支の変動等の中長期的要因を反映している。過去、日本のISバランスは家計部門が貯蓄超過、法人部門は投資超過で推移してきた。家計部門の貯蓄率は高度経済成長期以降、高水準ながらも緩やかに低下する一方、企業部門は設備投資の減退等を反映し近年は貯蓄超過となっている。この結果、民間部門では一九九〇年代以降貯蓄超過幅が拡大基調にある。これに対し、政府部門では税収の低迷や社会保障費用の支払増もあり財政赤字が一九九〇年代前半には拡大したが、近年は財政赤字が縮小傾向にあり、政府部門の投資超過幅は拡大から縮小へと変化した。これらの結果、一国全体のISバランスには、現時点では明確な変化はみられない。

2 経常収支の変動に関する視点
 日本の最近の経常収支黒字の変動は、世界経済の減速による輸出鈍化等の短期的要因に大きく起因している。
 しかし、日本の経常収支黒字の変動は長期的にはISバランス、特に投資の動向によりもたらされる部分も大きい。国内投資の活性化は経常収支黒字の縮小につながるが、経済の成長及び活性化の維持により安定的な資本流入が保たれ得る。逆に国内投資の不活性化は経常収支黒字の拡大につながるものの、経済の活力が失われれば国際競争力にも懸念が生じる。したがって、日本経済のあり方を考えるに当たっては、経常収支黒字の変動、特にその短期的変動を過度に重視せず、投資及び経済の活性化や日本経済への信認の維持に重点を置くべきである。

3 経常収支水準の評価と経済の活性化
 経常収支の黒字縮小に対し懸念する向きもあるが、各国の動向をみても経常収支の水準と、失業率及び国際競争力の間に明確な関係はみられない。将来の経済発展のためには、経済成長の源泉となる投資の活性化を図り、対内投資を引き付けるための国内経済環境の整備に努め、日本経済に対する国際的信認や評価を高めることが重要である。

第3節 日本経済の発展と今後の国際収支

1 経済の発展段階と国際収支
 一般に一国の経済発展と国際収支構造の変化を歴史的にたどると、未成熟債務国から成熟債務国、債務返済国、未成熟債権国、成熟債権国、債権取崩国への発展段階がみられるとの指摘がなされている。
 日本の国際収支構造もこの発展段階説に沿った変遷をたどっている。貿易サービス収支が縮小しつつある一方、所得収支黒字及び対外純資産が拡大している現在の日本は、かつてのイギリスや米国のような成熟債権国へと移行する段階にあるとも考えられる。

2 経常収支の中長期的見通しと日本の課題
 日本が成熟債権国への移行段階にあると考えれば、当面経常収支黒字の縮小は問題視すべきことではない。しかし成熟債権国となったとしても経済の活力を保つことは重要であり、国際競争力の維持、サービス産業の発展、日本企業の内外投資活動の活性化等が求められる。経済活性化や国際競争力の向上によって日本経済に対する国際的な信認及び評価を維持することができなければ、円滑な資本流入の実現も困難となる。
 このため第一に、国際競争力ある輸出品を将来にわたって生み出し続けることが重要である。日本の輸出はこれまで輸出品目の構成を変化させつつ伸び続けており、日本の産業は常に新分野の輸出品を生み出す一方、汎用品等については海外展開を図ってきた。
 第二に、サービス面でも次代を担う国際競争力を持つ産業の誕生や育成が必要である。
 第三に、将来にわたって安定的な所得収入を得るため、世界の諸産業の収益構造の変化や収益率等の把握を通じ、対外資産の健全な運用や積極的な投資活動が求められる。
 第四に、海外はもとより国内企業にとっても魅力的な対内投資環境の整備、すなわち国内制度改革が望まれる。
 以上のような新しい収入源を次々に生み出し続けることが必要であり、その環境整備としての経済構造改革の推進や、経済全体に行きわたるイノベーションの促進が重要である。

第3章 産業構造調整の円滑化

第1節 労働市場の柔軟性向上

1 労働移動円滑化の重要性
 グローバリゼーションが進展する中で、今後我が国が持続的成長を享受していくためには、産業構造を高度化させていく必要がある。産業構造の高度化には、@イノベーションを促進し、新規産業創出を目指す、A変化に対し柔軟に構造調整を行っていく、という二つの側面がある。このうち、後者において特に重要なポイントとして、産業間で労働者の移動をいかに円滑に行うか、という点が挙げられる。
 諸外国における雇用面での構造調整を歴史的にみると、労働市場の柔軟性を高めることに重点を置くアングロ・サクソン型と、厳しい解雇制限、手厚い失業給付等を特徴とする大陸欧州型とに大別される。これらの国々の労働政策がもたらした効果は、アングロ・サクソン型の政策を採る国で一九九〇年代に構造的失業率が低下したことに顕著に現れている。また、従来、労働市場の硬直性が指摘されてきた大陸欧州型諸国においても、EUレベルでの雇用戦略の策定やそれに伴う加盟国の雇用政策の変化等がみられる。
 アングロ・サクソン型の政策を採る国々では、労働市場の柔軟性を高めるための取組みとして、米国でリストラクチャリングによる人件費の変動費化が、イギリスで労働時間規制の弾力化、女性保護規制の段階的撤廃等が進められた。一方、これらの国々、さらには大陸欧州型の政策を採る国でも、労働市場の柔軟性を高めることと併せて、教育水準の向上、雇用者の再教育等、雇用の質を高めるための取組みがなされている。

2 我が国における雇用調整の課題
 バブル経済の崩壊以後、我が国の雇用をめぐる状況は、需要不足と雇用のミスマッチ等を背景に一段と厳しさを増している。こうした中、近年では長期雇用慣行の見直し、非正規社員の増加等、従来の雇用システムに変化の兆しもみられる。
 我が国経済が厳しい雇用情勢から脱し、今後民需中心の自律的回復を果たすためには、@雇用のミスマッチの低減・解消(円滑な労働移動の促進、多様化する就業形態への対応、高い専門性を有する人材の育成)、A失業に伴うリスクを軽減させるセーフティネットの構築を図ることが重要である。

第2節 構造調整円滑化手段としてのセーフガード

1 セーフガードによる調整の位置づけ
 産業構造の調整過程において、予想を超えるような輸入の急増に直面した際には、一定のルールに基づいてセーフガード措置を活用することが国際的に認められている。セーフガード措置の発動は、輸入急増に伴う倒産、失業、あるいはそれらに伴う生産の減少といった社会的な痛みの拡大を一時的に緩和し、産業が構造調整を実現するための猶予期間をもたらす。他方、一般的にセーフガード措置の発動には、消費者、ユーザー企業等の経済主体に対して価格上昇や選択肢の減少等をもたらし、一国の国内総生産に対しても負の影響をもたらすというデメリットが伴う。
 こうしたセーフガード措置の実施に伴う副作用を回避するためには、むしろ常時から、@市場に参加する各経済主体が国内外の市場動向に関する情報収集に努め、輸入動向に関する予見可能性を高めておくこと、更にはA雇用調整施策やイノベーション創出のための取組みを通じて構造調整を早期に実現することにより、セーフガード措置を発動せざるを得ない状況を極力生み出さないことが重要である。

2 セーフガード措置発動時に調整を円滑化するための方策
 セーフガード措置を発動する場合に消費者やユーザー企業が負担する発動コストを最小化するためには、当該産業において可能な限り構造調整を迅速に進展させることが必要である。
 なお、セーフガード措置の発動それ自体は産業構造調整の実現を保証するものではない。米国の鉄鋼産業に対する保護のように、特にセーフガード措置が他の恒常的な保護措置と併用される場合には、自己革新努力を促すための「時限措置」としての有効性が低下するのみならず、必要とされる産業構造調整そのものを遅延させるといった例もみられる。
 したがって、セーフガード措置の発動中に構造調整を実現するためには、あくまで同措置が時限措置として機能することが必要となるほか、各種の構造調整支援策を補完的に実施することが有益な場合もある。諸外国においてはセーフガード措置を発動する際に、@産業間の調整を促進するための支援策(職業訓練・転職斡旋等)、あるいはA当該産業の企業競争力を向上させるための支援プログラム(経営指導等)を必要に応じて補完的に実施するための仕組みが用意されている。同プログラムは労働者に対する一定の所得補償も行っているが、その対象は、職業訓練に参加する意思を表明したものに限定する等、構造調整が確実に実現されるような各種の工夫が講じられている。

第4章 二十一世紀における我が国の制度構築の課題と魅力ある経済集積の形成

第1節 諸外国におけるイノベーション促進の取組み

 一九九〇年代に入って我が国の経済成長率は低迷し、国際競争力の低下が懸念されている。このような国際競争力低下の懸念を払拭し、我が国が持続的な成長を遂げていくためには、産業構造調整に加えて、イノベーションを促進していくための取組みが求められる。
 イノベーションを促進し、経済成長を実現していくに当たっては、第2節、第3節で述べるように制度と経済集積の二つの要素が重要である。
 「産業空洞化」あるいは国際競争力の低下に係る懸念は、我が国においてのみみられるものではなく、これまで他の先進諸国でも多かれ少なかれ生じてきた。これらの国々では、国際競争力に関する議論が高まった時期には、我が国と同様に景気後退や失業率の上昇といった現象がみられたが、産業競争力強化、教育・職業訓練の充実、地域経済の特性を活かした集積の形成等、国・地方・企業の自立的な取組みを進め、イノベーションを推進することに事態の打開を求めてきた。

第2節 内外一体となった経済政策の目標としての制度改革

1 制度改革を通じたイノベーションの促進
 イノベーションを進めるためには、それを担うべき経済主体のエネルギーを最大限に解き放ち、これらの経済主体が自由な発想で事業を創出し、また新しい展開を行うことを可能としなければならない。経済活動は、その経済主体の活動する社会の一定の制度の上で行われるものであるので、その制度が事業の創出や新展開に適合的かどうかでイノベーションの進展も影響を受ける。
 このような考え方の下に規制改革が繰り返し実施され、それによる需要の掘り起こしや新規産業の創出がなされてきたが、近年は規制改革によって障害を取り除くというだけでなくて、商法、倒産関連法等の企業法制、労働法制、年金制度等、企業活動の基本となるルールそのものをイノベーションに適合的な形に改めていこうという動きがみられる。
 こうした国内諸制度の改革を通じて、我が国産業のイノベーションを促進し、経済の活性化を図ろうとするのが経済構造改革の一つの目標である。

2 イノベーション促進のための内外一体となった経済政策
 近時、モノ、カネ、ヒト、情報といった経済の各要素が国境を越えて移動する中で、各企業はグローバルな観点から経営戦略立案と経営資源配分の最適化を進めている。そこで、各国は、国境を越えた企業活動が障害なく行えるような内外諸制度のバリアフリー化やハーモナイゼーションを進めてきた。また、その内容は、近年、従来の関税や輸入制限の撤廃といった水際のものから、イノベーションを促進するメニューである規制改革、企業法制等、国内の様々な制度の改善にも向かっている。
 我が国も、我が国経済の構造改革と対外経済政策の展開が表裏一体となった「内外一体の経済政策」を進めている。その中でも、我が国におけるイノベーションの活性化を図っていくためには、国内における経済構造改革を進めていく上では対内直接投資を積極的に活用することが、海外における我が国企業の事業展開を支援していく上では知的財産権を保護すること(模倣品・海賊版対策)が、特に重要となっている。

3 東アジアとの経済連携強化と多層的な対外経済政策の推進
 東アジアにおける経済の緊密化が加速する中で、我が国が東アジアの成長要素を取り込んで国内経済の活性化を図っていく観点から、東アジア地域との経済連携を強化する取組みを進める必要性が高まっている。このような対外経済政策を推進していく上での具体的な枠組みは、WTOにおける多国間の取組みを中心としつつ、これを補完するものとして、自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)のような地域、二国間の取組みも活用した多層的なものとなっている。我が国が自由貿易の利益を最大限に享受し、経済の活性化に結び付けていくためには、多層的な枠組みを戦略的かつ柔軟に活用していくことが必要である。

第3節 魅力ある経済集積の形成に向けて

1 海外における経済集積形成の取組み
 グローバリゼーションが進展し、企業が国境を越えて自由に立地選択を行うようになった今日、イノベーションを生み出す母胎としても経済集積への関心が高まっている。
 海外においては魅力ある集積を形成するために様々な試みがなされている。これは、企業や人のフェース・トゥ・フェースの交流を容易にし、集積内の多様な経済主体の様々な活動が新たな企業の結びつきや革新的なビジネスモデル、知の創造を呼び起こす機能を最大限に解放することで、集積のメリットを活かし、イノベーションの温床とするものである。

2 我が国における魅力ある経済集積の形成に向けた課題
 東アジア域内においても、数多くの生産拠点が生まれてきているばかりか、研究開発拠点の形成に向けた改革が次々と進められつつある中、我が国でも集積のメリットを高めていくことによってイノベーションの活性化を行っていく必要がある。そのためには、@大学を中心とした知識集約的なネットワークを構築すること、A都市のアメニティ機能を高めてクリエイティブな人材を惹きつけること、B地域の特性を活かした技術や産業の育成を進めていくこと等が重要になっている。





 十月の気象

気象庁 

 十月上旬までは、九月後半から日本付近に停滞する秋雨前線の影響により、東日本を中心にぐずついた天気が続きます。
 その後、中旬になると、移動性高気圧と低気圧が日本付近を交互に通過するようになり、一転して天気は数日の周期で変わります。移動性高気圧は、大陸から乾燥した空気を運んできて、スポーツや行楽に適したさわやかな秋晴れをもたらします。
◇霜降
 二十三日ごろは、二十四節気の一つである霜降(そうこう)にあたります。霜降は、「霜が降るほど寒い季節となる」という意味です。
 秋の晴天の夜には、地表の熱が宇宙空間に放出される放射冷却現象により、気温が著しく低下することがあります。十月上旬ごろには北海道の内陸部で初霜が観測され、十月下旬ごろには東北から中部にかけて初霜が観測されるようになります。
◇紅葉前線
 気温が下がると、木々は水分や養分を運ぶ枝と葉の間にある管を閉じ、緑色の色素に代わって黄色や赤色の色素が葉の表面に浮き出すようになります。これが紅葉の始まりです。各地の紅葉が始まった同じ日を線で結び、紅葉の進み具合を表したものを紅葉前線と呼んでいます。
 イロハカエデの紅葉前線は、日本列島の北から南へ約五十日間かけて縦断します。
◇初冠雪
 夏を過ぎて初めて麓から見た山頂が、積雪で白くなることを初冠雪といいます。
◇台風
 台風は、八〜九月にかけて日本に最も影響を与えますが、十月にも大型で強い台風の来襲があります。
 昭和五十四(一九七九)年十月十四〜二十日には、台風第二十号が沖縄付近を通り、紀伊半島に上陸、本州を縦断し太平洋に抜けた後、北海道に再上陸しました。この台風により、全国で死者・行方不明者百十一人、住家損壊七千五百二十三棟、住家浸水三万七千四百五十棟などの被害がありました。
 最近では、平成十(一九九八)年十月十三〜二十日に台風第十号が鹿児島県に上陸、四国と中国を通過し日本海に抜けました。この台風と前線による大雨により、全国で死者・行方不明者十三人、住家損壊七百六十五棟、住家浸水一万二千五百四十八棟などの被害がありました。
 十月もまだ台風災害に対する備えが必要ですので、台風情報に注意してください。






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第154回国会で審議された法律案・条約の一覧表


内閣官房




























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消費支出(全世帯)は実質二・八%の増加


―平成十四年六月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十四年四月に実質増加となった後、五月は実質減少となったが、六月は実質増加となった。
 また、一人当たりの消費支出は九万一千二百四十四円で、前年同月に比べ実質三・八%の増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年十二月に実質減少となった後、十四年一月以降三か月連続の実質増加となったが、四月以降三か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十四年四月に実質増加となった後、五月は実質減少となったが、六月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万五百十六円となり、前年同月に比べ、名目一・四%の増加、実質二・二%の増加となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質三・〇%の増加となった。
 勤労者世帯の消費支出は、前月に比べ二・二%の増加となった。














    <10月16日号の主な予定>

 ▽労働経済白書のあらまし………………………………………………………………厚生労働省 

 ▽消費者物価指数の動向(八月)………………………………………………………総 務 省 

 ▽家計調査報告(総世帯・単身世帯)(平成十四年四〜六月期平均速報)………総 務 省 




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