官報資料版 平成14年10月16日




                  ▽労働経済白書のあらまし………………………………………………………………厚生労働省

                  ▽消費者物価指数の動向(八月)………………………………………………………総 務 省

                  ▽家計調査報告(総世帯・単身世帯)(平成十四年四〜六月期平均速報)………総 務 省

                  ▽リデュース・リユース・リサイクル推進月間………………………………………国 税 庁











労働経済白書のあらまし


厚生労働省


 「平成十四年版労働経済の分析」いわゆる労働経済白書は七月九日に閣議に提出され、公表された。
 白書は九章構成となっており、最近の雇用・失業の動向とその背景について、分析を行った。主なポイントは以下のとおりである。
@近年の雇用情勢の悪化は、生産の変動に対する企業の雇用調整が従来以上に敏感になったというよりも、生産の変動そのものが大きかったことが影響している。
A我が国の失業率は、欧米諸国の失業率が低下傾向にある中で上昇し続けており、特に若年者と男性高齢者の失業率が高くなっている。
B構造的・摩擦的失業の高まりは、公共職業安定所の利用が少ない層におけるミスマッチの拡大を背景としている可能性がある。
C長期失業者がいったん増加すると、それを減らすことが困難になり、失業率が高止まりする可能性がある。
D九〇年代には雇用は主としてサービス業において創出されてきたが、最近では雇用創出率が低下している。

第1章 最近の労働経済の概況

 我が国経済は、二〇〇〇年十月以降、後退に転じ、生産はバブル期前の水準にまで落ち込んだ。
 こうした中、労働市場の状況も厳しさを増した。概観すると、次のとおりである。
(1) 雇用者数は夏頃より急速に減少した(二〇〇一年平均で五千三百六十九万人(前年差十三万人増))。就業者数は年を通じて減少傾向で推移した(二〇〇一年平均で六千四百十二万人(前年差三十四万人減))。なお、自営業主・家族従業者は依然として大幅に減少している(二〇〇一年平均で一千十八万人(前年差五十三万人減))(第1図参照)。
(2) 完全失業率は高水準で推移し、十二月には五・五%となった(第2図参照)。
(3) 新規求人は、年を通じて減少傾向で推移し、新規求人倍率は低下(二〇〇〇年平均一・〇五倍→二〇〇一年平均一・〇一倍)、有効求人倍率は横ばいとなった(二〇〇〇年平均〇・五九倍→二〇〇一年平均〇・五九倍)(第3図参照)。
 二〇〇二年に入り、生産は下げ止まり、所定外労働時間も増加に転じたが、雇用情勢は引き続き厳しい状況が続いている。
 景気の悪化の影響は、賃金面にも表れている。厚生労働省「毎月勤労統計調査」の現金給与総額は二〇〇一年には減少に転じた。内訳をみると、残業時間が減少したため、所定外給与は減少し、賞与等の特別給与も引き続き減少した。また、所定内給与の減少には、一般労働者と比較して賃金の低いパートタイム労働者の影響が考えられる。
 また、物価は、消費者物価が二〇〇一年には三年連続で下落するなど、デフレーションの傾向が鮮明になっている。物価がデフレ傾向となったのは、技術革新や安い輸入品との競争等によりコストが低下したこと、消費が引き続き低迷したこと等によるものと考えられる。
 勤労者家計の消費支出は、二〇〇一年四月の家電リサイクル法施行前の駆け込み需要といった特殊要因もあったが、二〇〇一年には前年比で名目・実質ともに四年連続の減少となった。この要因としては、収入の伸び悩みや消費者心理の慎重化があげられる。

第2章 失業と就業

 近年、欧米諸国の失業率が低下傾向にある中、我が国の失業率は上昇し続けており、国際的にみても、かつてのように群を抜いて低い水準ということはなくなっている(第4図参照)。このまま日本の失業率が上昇し続ければ、失業率の水準において「並の国」になる可能性がある。
 日本の失業率の特徴は、若年者と男性高齢者の失業率が高い点にある。また、近年、男性の失業率が女性の失業率を上回るようになっているが、この背景には企業の労働需要が一般労働者からパートタイム労働者にシフトしていることがあげられる。若年者については、転職志向の高まりといった意識の変化のみならず、学卒入職時点における就職環境がその後の離職率に影響を与えている可能性がある。
 また、都道府県別の失業率はばらつきがあり、最高の沖縄県(九・四%)と最低の島根県(三・〇%)の失業率の高低格差は三・二倍となっている(第5図参照)。失業率が高いのは、沖縄県や大阪府などで、一方、低いのは島根県、福井県、長野県などである。また、都道府県間における失業率の相対関係は時系列的にみて大きく変化しておらず、バブル崩壊後は総じて上昇傾向にある。
 都道府県別の失業率は、有効求人倍率、就業率、産業構造、若年人口比率の間に相関関係をもっている。しかし、沖縄県や大阪府については特異値となっており、産業・人口構造要因では説明できない固有の要因もあると考えられる。さらに、公共事業と建設業就業者の間には相関関係があり、公共事業の減少は公共事業への依存の高い地方の雇用に大きな影響を与えているといえる。
 就業率(生産年齢人口(十五〜六十四歳)に占める就業者の割合)と失業率には相関関係があり、就業率の高い国は失業率が低い傾向がある。日本の就業率は、国際的に高い方であり、特に男性の就業率は高水準にあるが、女性はあまり高くない。この理由として、高学歴女性の就業率があまり高くないことがあげられる。これは、一度出産等で退職した後、再就職しようとするとき、教育水準の高いことが必ずしも有利に働かず、能力を活かせる職場が少ないという構造的な問題があるからだと考えられる。男性では、就業率の低下と失業率の上昇が同時に起こっており、労働需要の減少が失業増に直結している状況になっている。
 近年、就業率の変動より失業率の変動が大きくなる傾向があり、景気後退期に、これまでと比較すると失業率が上がりやすくなっているといえる。

第3章 ミスマッチと経済変動の雇用への影響

 構造的・摩擦的失業率と需要不足失業率を推計してみると、構造的・摩擦的失業率が一九九〇年代、特にバブル崩壊後に上昇基調にあることがわかる。また、需要不足失業率は、景気後退を背景として、一九九八年と二〇〇一年に大幅に上昇している(第6図参照)。
 公共職業安定所における指標をみると、バブル崩壊後に特に安定所におけるミスマッチが増大しているとはいえない。また、年齢、職業別の求人・求職の分布をみても、バブル崩壊後特にミスマッチが高まっているとはいえない。これらのことから、構造的・摩擦的失業の高まりは、公共職業安定所の利用が少ない層におけるミスマッチの拡大を背景としている可能性がある。
 また、構造的・摩擦的失業率には、推計上の限界があることにも留意が必要である。本来、構造的・摩擦的失業は、経済変動の影響を受けないはずであるが、実際には、経済状況の影響を強く受けている。この背景には、景気状況によって賃金など労働条件面での求人の質が異なることや、失業の長期化によるミスマッチの拡大などが影響している可能性がある。また、構造的・摩擦的失業率の推計方法に起因するものもあり、九七年以降の構造的・摩擦的失業率が過大に推計されているおそれもある。したがって、構造的・摩擦的失業率や需要不足失業率の水準や変化は、ある程度の目安を示すものと考えるべきである。
 求人と求職のミスマッチの生じる理由としては、大きく、職業能力の不一致、情報の不完全性、労働者や企業の選好の三つが考えられる。その解決策を考えた場合、まず、職業能力の不一致に対しては、多様な教育訓練機会の確保のほか、キャリア・コンサルティングの充実や職業能力評価システムの開発などによる職業能力開発の充実が重要である。次に、情報の不完全性に対しては、安定所の機能の充実や労働力需給に関する官民の連携強化のほか、キャリア・コンサルティングの充実や職業能力評価システムの確立など、求職側の職業能力を求人側により正確に伝えるための取組みが重要である。さらに、第三の労働者や企業の選好については、綿密な職業相談のほか、ポジティブ・アクションの推進や年齢制限の緩和に向けた取組みが必要である。
 また、労働投入、雇用の生産に対する弾性値や雇用調整速度はバブル崩壊後に高まっているとはいえない。このことから、近年の雇用情勢の悪化には、生産の変動に対する企業の雇用調整が敏感になったというより、生産の変動そのものが大きかったことが影響していると考えられる。実質成長率を国際比較してみても、七〇年代、八〇年代には、我が国は他国と比べ高い成長率を維持していたが、九〇年代特に九五年以降は、他国と比べ経済成長率がかなり低くなっており、我が国の経済成長が急速に落ち込み、現在では国際的にみても低い水準にあることを示唆している。

第4章 生産性、労働コストと雇用

 日本の労働生産性は、ヨーロッパ諸国とは近い水準にあるが、アメリカと比べると低く、おおむね七〇%程度である(第7図参照)。また、日本の単位労働コストは、全産業では、アメリカ、ヨーロッパ主要国のいずれと比べても二〜三割程度高くなっている。ただし、製造業の単位労働コストを国際比較すると、ドイツ、イギリスとは逆転し、他国と差も縮小している(第8図参照)。このことから、日本において労働生産性が相対的に低く、単位労働コストが高いのは、主として、非貿易財部門の分野であると考えられる。さらに、日本の非貿易財部門の賃金は、貿易財部門(製造業)と比較して相対的に高くなっている。
 日本の製造業の労働生産性は、諸外国と比べても比較的堅調に上昇しており、国内的には、単位労働コストも比較的堅調に減少している。しかし、一九九〇年代前半に円高が進行したことから、米ドルベースでの単位労働コストは低下しているとはいえない。
 以上のような労働生産性・単位労働コストの動きは、九〇年代において、欧米では比較的雇用情勢が良く、日本では厳しいことと対応している。
 また、アジア諸国の技術水準が向上する中で、これまで日本の得意分野であった製造業も、賃金コスト等の差を考慮すると優位に立てなくなっている。製造業の海外生産比率は一九九〇年度の六・四%から二〇〇一年度には一四・三%(見込み)に上昇しており、鉱工業の輸入浸透度も一九九〇年の七・一%から二〇〇一年には一二・九%に上昇している。
 海外生産比率が上昇している要因としては、市場拡大への対応が最も多いものの、ASEANや中国では低廉な労働力確保による競争力強化が多くなっている。労働コストの差につき、製造業の賃金格差を試算すると、日本を一〇〇とした場合、NIES諸国で四〇から五〇、ASEAN諸国でおおむね一〇以下、インド、中国で約一から二となっている。
 海外生産比率の上昇や製品輸入の増加は、製造業の国内就業者数にマイナスの影響を与えている可能性がある。海外生産比率の上昇幅が大きい産業では、おおむね就業者数の減少が大きく、輸入浸透度の上昇幅が大きい産業では、就業者数の減少が大きい。
 さらに、賃金上昇率と失業率の関係(フィリップス曲線)をみると、現在では、失業率が急激に高まっているにもかかわらず、賃金上昇率がそれほど下がっておらず(第9図参照)、賃金が下方硬直的である可能性がある。この背景には、一般労働者ではパート労働者に比べ賃金の下方硬直性が強く、現下のデフレ下においても、賃金調整が行われにくくなっていることがある。このため、デフレ下においては一般労働者の賃金が相対的に上昇していることから、一般労働者の雇用が減少し、パート労働者への労働需要のシフトや失業の増大に結びついている可能性がある。

第5章 事業再構築と人員削減

 過去二年間のうちに希望退職の募集・解雇という直接的な人員削減を実施した企業の割合は、一九九四年から二〇〇〇年の六年間で高まっており(一九九四年一一・七%→二〇〇〇年一七・七%)、特に一千人以上規模の大企業で直接的な人員削減を行った企業の割合の上昇が大きい(一九九四年八・五%→二〇〇〇年二四・三%)。また、個別の企業における一般労働者とパート労働者の雇用の増減についてみると、一般労働者の雇用を減少させる傾向が強く、一般労働者の方がパート労働者よりも雇用の調整弁となっているようにみえる。
 このように、近年、希望退職の募集や解雇といった直接的な人員削減を行う企業の割合は増えてきているが、人員削減を実施した(実施する)理由をみると、七割以上の企業が、現在または将来の重大な経営上の困難に対応することを理由としている(第10図参照)。また、重大な経営上の困難に対応するための人員削減(「不可避型リストラ」)では、直接的な人員削減が多い一方で、それ以外の人員削減(「収益調整型リストラ」、「戦略型リストラ」)では、直接的な人員削減の割合がかなり低くなっている。以上のことから、人員削減は主に景気状況の影響を受けて行われており、コーポレートガバナンスや企業の雇用戦略が大きく変化していることが理由であるとは必ずしもいえない。
 希望退職や早期退職優遇制度の実施にあたっては、七割の企業が年齢について適用基準や制限を設けており、その六割近くが四十五〜五十四歳以上を下限年齢としている。また、実施時の措置内容では、ほぼすべての企業で退職金の割増を行っている。希望退職への応募状況では、ほぼ予定どおり、予定以上とする企業が四分の三にのぼっており、希望退職等を実施した企業ではおおむね期待した効果を得られていることがわかる。
 人員削減による企業への影響をみると、従業員の士気の低下や従業員の労働時間の増加、優秀な人材の流出というマイナスの影響をあげる企業が多くなっているが、その一方で、従業員の生産性の向上も多くなっている(第11図参照)。
 また、人員削減を行う理由別に人員削減の影響をみてみると、総じて人員削減によるマイナスの影響は不可避型リストラで強く、プラスの影響は収益調整型リストラや戦略型リストラで多い。これには、直接的な人員削減が、不可避型リストラで多く、収益調整型リストラや戦略型リストラで少ないことが強く影響していると考えられる。つまり、人員削減による影響と直接的な人員削減の実施の有無には相関がある可能性を示唆していると考えられる。

第6章 長期化する失業

 最近の失業の特徴として、長期失業者が増加していることがあげられる。ここ十年間で長期失業者数は七十万人程度増加しており、人数で四倍、率でも三倍に増加している(第12図参照)。国際的には、日本の長期失業率は依然として低いものの、二〇〇〇年にはアメリカ、カナダを上回り、イギリスとほぼ同水準となっている。
 長期失業者の属性をみると、半数が男性の若年又は高年齢者となっている。十年前と比べると、特に若年の長期失業者の増加(約五倍)が顕著となっている。また、学歴別では、七七%が中等教育(高卒)以下となっている。
 長期失業者八十万人のうち、六三%の者が本人の収入がない状態である。ただし、失業者世帯でみた場合、家族の賃金・給料などで収入がある者が大半であり、世帯全体の中で生活が支えられているといえる。しかしながら、失業者世帯の家計の状況は厳しい。失業者世帯の家計の状況を勤労者世帯と比較すると、収入水準が大きく低下するのに対して、消費支出の差はかなり小さい。失業者世帯では、失業前の生活水準を維持するために、相当程度、貯蓄等の取り崩しを行っていることから、失業の長期化は家計を圧迫するものと考えられる。
 さらに、フロー分析法(失業者が失業状態から脱する確率から求める)により失業期間を計測してみると、九〇年代に長期化しており、二〇〇一年には全体で四・三か月、男性五・六か月、女性三・一か月となっている(第13図参照)。一方、直接計測法(失業者にその失業期間を聞くことから求める)により中途失業期間(調査時点における失業期間)をみると、中位数はおおむね増加傾向で推移しており二〇〇一年八月には五・三か月となっており、また年齢が上がるにつれて長期化している。いずれにしても、失業期間が長期化している。この背景には景気が停滞していることがあるが、一方で、求職者側からみると就職への緊要度も影響している可能性もある。
 長期失業者がいったん増加すると、それを減らすことが困難になり、失業率が高止まりする可能性があり(履歴現象)、一九八〇年代に欧州で失業率が高水準で高止まった背景も、この現象であるといわれる。履歴現象が生じるメカニズムについては、@失業による技能低下、A既存雇用者の労使交渉力が考えられるが、日本においてその点が妥当するかは、必ずしも明確ではない。しかしながら就職率(離脱率)が失業期間の長期化に伴い低下していることから、失業期間が長期化する前に就職促進を進めていくことが重要である。

第7章 過剰雇用と潜在失業

 我が国において、失業者とは、@仕事がなくて調査期間中に少しも仕事をしなかった、A仕事があればすぐに就くことができる、B仕事を探す活動や事業を始める準備をしていたの三つの条件を満たす者と定義されており、ILO(国際労働機関)が定める基準に沿ったものとなっている。ただし、ILOが定める基準に準拠した定義をとる国の間にも若干の相違がある(第1表参照)。
 雇用情勢の厳しさは、失業だけをみていても十分には分からない面もある。こうした観点から、しばしば、過剰雇用や潜在失業の存在が指摘され、これらの存在は雇用情勢をみる上で参考になる。しかし、その一方で、その把握には限界があることも事実である。
 過剰雇用については、民間のシンクタンク等から様々な推計が出ているが、推計方法や、推計期間の取り方によって大きく異なる。仮に雇用調整関数(実際の雇用量等と生産量との関係を示す関数)から過剰雇用者数を試算すると、百十三万人あるいは五十二万人となるなど推計期間の取り方で幅がある。いずれにしても過剰雇用の計測を客観的に行うことは事実上不可能であり、推計結果は参考程度にとどめるべきである。
 企業が過剰雇用を抱える理由として、日本の労働市場が柔軟性に欠け、解雇等をしにくい状況にあるためとの議論がある。しかしながら、人材育成にかかる費用などが解雇に伴い埋没費用となること、従業員の企業に対するモラールが低下することなど企業側にもマイナスの面があり、過剰雇用を抱えることは経済合理性にかなっている面がある。
 また、失業の実態をみるには、仕事に就きたいと思っているが適当な仕事がないという理由から、仕事を探すことをやめる潜在失業を考慮することが重要との議論がある(第2表参照)。日本は国際的にみて潜在失業が多いとの推計結果があるが、景気が良い時にも一定数の潜在失業が存在していること、その多くが比較的緊要度の低いものであることに留意が必要である。景気の良い時にも潜在失業は相当数存在していることを考えると、潜在失業というよりも潜在的に就業意欲を持った「潜在労働力」といった方が適切であり、失業問題というよりも就業促進対策の範疇と考えられる。

第8章 雇用の創出と喪失

 我が国の産業構造は、一九五〇年代半ばより工業化が進展し、一九七三年の石油ショックまでの高度成長期を通して製造業のウェイトが高まった。第一次石油ショック後は、製造業に代わりサービス業を中心とする第三次産業のウェイトが高まった(第3表参照)。また、職種面ではホワイトカラー化が進展し、就業形態面ではパートタイム労働者・アルバイト・派遣労働者が増加している。
 このような産業・就業構造の変化に伴い、新規開業による雇用創出や廃業による雇用喪失が生じている。全産業では、新規開業による雇用創出と、廃業による雇用喪失がかなり安定的に推移しているのに対し、既存企業における雇用の増減は変動幅が大きくなっている。産業別にみると、サービス業等では新規開業による雇用創出が廃業による雇用喪失を上回っており、製造業や建設業では廃業による雇用喪失が開業による雇用創出を上回っている。また、国際的にみると、我が国の開廃業率は低い水準にあるといえる。
 開業については、資金調達や人材・ノウハウの不足といった問題が阻害要因になっていると考えられる。資金調達について、開業費用の平均額をみると、一九九一年度で一千四百四十万円、二〇〇〇年度で一千五百三十七万円となっており、高止まり傾向がみられる。
 最近では、新規開業者の中高年齢化が進展しており(第14図参照)、その背景には、中高年を対象とした雇用削減があると考えられる。リストラされた中高年にとって起業は彼らの経験、能力、人脈を活かす有力な選択肢であり、同時に雇用創出にもつながることから、中高年の新規開業の支援は重要な課題である。
 サービス業については、雇用創出産業として期待が寄せられているが、バブル崩壊後、雇用創出率が低下し、雇用喪失率が上昇した結果、雇用創出力が低下している。個別の業種をみると、情報サービス業を中心とする企業サービス関連業種は八〇年代に雇用創出が高かったが、九〇年代には低下している。個人サービス関連の業種も、雇用創出率はバブル期には高まっていたが、その後低下している。一方、医療福祉関連の業種では、雇用創出率はそれほど高くないものの、雇用喪失率が相対的に低く、雇用者は堅調に増加している。特に、個人サービス関連業種や医療福祉関連業種の雇用創出の増大のためには、現在低調である個人消費を増大させ、個人サービス関連市場の規模を拡大させることが必要である。
 また、現下の厳しい雇用情勢の中、雇用の維持・創出という観点からワークシェアリングへの社会的関心が高まっている。少子高齢化の進展や勤労者の価値観の変化が進む中、多様な働き方の実現手法の一つとしてワークシェアリングを位置付ける動きもある。

第9章 労働移動と転職

 我が国の労働移動率(一年間に就職・離職・転職した人が雇用者数に占める割合)をみると、一九六〇年代から七〇年代前半まで高水準であったが、一九七三年の第一次石油ショック後経済成長率が低下するとともに労働移動は少なくなっている。バブル期に若干増加したものの、バブル崩壊後は再び低水準となり、一九九四年を底に労働移動は増加傾向にある(第15図参照)。
 転職入職率(在職者に占める転職入職者の割合)も労働移動率と同じような動きをしている。転職入職率をパートと一般労働者についてみると、一般労働者では安定的に推移しているのに対し、パート労働者の転職入職率は一般労働者に比べて高く、上昇傾向にあり、全体の転職入職率の上昇にも寄与しているといえる。
 また、勤続年数は、長期化している。この理由として、五十歳以上の中高年層で勤続年数が長くなっていること、勤続年数の長い中高年層が雇用者全体に占める割合が高くなっていることがある。
 転職希望は若年者を中心として長期的に高まっているが、実際の転職は景気動向に大きく左右されるほか、就業形態の多様化や経済のサービス化にも影響されると考えられる。
 産業構造の変化の背景には、産業間における労働者の流出・流入の変化がある。産業間における労働者の流出・流入の変化については新規学卒者の果たす役割が大きくなっている。転職については前に従事していた産業と同じ産業に移動する傾向があるが、これは、転職する場合、労働者が知識や技能を役立てようとするからである。
 一方、地域別の労働移動の状況をみると、減少傾向にある(第16図参照)。
 転職後の賃金や転職までに要する期間の短さという点で、どういった人が転職に成功したかについてみると、専門的な知識や能力をもっている者は、その能力を活かすことで転職に成功する可能性が高くなるが、中高年にとっては転職の成功は難しくなっている。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(八月中旬速報値)・全国(七月)―


総 務 省


◇八月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・一となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は〇・九%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降三年連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・〇となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は〇・九%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年十一か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・五となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  生鮮魚介は四・六%の上昇。
   <値上がり> さんま、いかなど
   <値下がり> まぐろ、えびなど
  生鮮野菜は一・五%の上昇。
   <値上がり> レタス、ねぎなど
   <値下がり> きゅうり、なすなど
  生鮮果物は六・四%の上昇。
   <値上がり> すいか、バナナ
   <値下がり> ぶどう、ももなど
(2) 被服及び履物は九三・〇となり、前月に比べ一・八%の下落。
  シャツ・セーター・下着類が三・二%の下落。
   <値下がり> 婦人Tシャツ(半袖)など
(3) 交通・通信は九九・五となり、前月に比べ〇・九%の上昇。
  交通が二・四%の上昇。
   <値上がり> 航空運賃など
(4) 教養娯楽は九八・一となり、前月に比べ二・五%の上昇。
  教養娯楽サービスが四・二%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(〇・八%下落)、電気代(五・六%下落)、教養娯楽用耐久財(一三・九%下落)、家庭用耐久財(九・三%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇七月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・二となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は〇・八%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年十一か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・三となり、前月比は〇・二%の下落。前年同月比は〇・八%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年十か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・三となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  生鮮魚介は二・八%の下落。
   <値上がり> かれい、あじなど
   <値下がり> かつお、いかなど
  生鮮野菜は一・八%の上昇。
   <値上がり> きゅうり、ほうれんそうなど
   <値下がり> えだまめ、レタスなど
  生鮮果物は一一・三%の下落。
   <値上がり> レモン、キウイフルーツなど
   <値下がり> すいか、さくらんぼなど
(2) 被服及び履物は九四・二となり、前月に比べ三・六%の下落。
  衣料が四・四%の下落。
   <値下がり> 背広服(夏物)など
(3) 教養娯楽は九五・四となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  教養娯楽サービスが一・二%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 教養娯楽用耐久財(一二・四%下落)、衣料(三・六%下落)、家庭用耐久財(七・八%下落)、電気代(二・三%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。




















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家計調査報告(総世帯・単身世帯)


―平成十四年四〜六月期平均速報―


総 務 省


T 平成十四年四〜六月期平均

一 全世帯の家計

 総世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり十万七百六十四円となり、前年同期に比べ、名目一・〇%の増加、実質二・一%の増加となった。
 単身世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり十六万八千二百五十五円となり、前年同期に比べ、名目一・六%の減少、実質〇・五%の減少となった。

二 勤労者世帯の家計

 総世帯の勤労者世帯の実収入は、実質減少となった。また、平均消費性向は、前年同期を上回った。
 消費支出は、実質増加となった。

三 勤労者以外の世帯の家計

 総世帯の勤労者以外の世帯の消費支出は、一人当たり九万九千七百八十八円となり、前年同期に比べ、名目一・五%、実質二・六%の増加となった。

四 財・サービス区分別の支出

 耐久財、半耐久財及び非耐久財が実質増加したため、財(商品)全体では、実質三・三%の増加となった。
 サービスは、実質一・三%の増加となった。












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リデュース・リユース・リサイクル推進月間


国 税 庁


 世界的な重要課題となっている地球環境問題の一つとして廃棄物の問題がクローズアップされています。我々の日常生活と深い関わりを持っている酒類についても、その容器をリサイクルすることによって、よりよい自然環境、地球環境に貢献していく必要があります。
 このリサイクルを推進するためには、産業界、消費者及び行政の各関係者の理解と協力が必要不可欠です。このため国では、毎年十月を「リデュース・リユース・リサイクル推進月間」とし、広範な啓発普及活動を実施しています。
 地球ともっと仲良くなるために、リサイクルを考えながらお酒を楽しむというのも大切なことではないでしょうか。

【酒類容器のリサイクルについて】

 お酒の容器には、ガラスびん、缶(スチール製、アルミ製)、ペットボトルなどがありますが、その容器の素材により、次のようなリサイクルの方法がとられています。

1 ガラスびん
(1) 「回収してそのまま再使用」(リターナブル)
 使用済の容器を回収し、洗浄等を行ったうえ、そのままの形で再使用するのが「リターナブル」です。リターナブル容器の代表としては、ビールびんや一升びんがあります。
 ビールびんは年間約二十八億本が使用され、ほぼ一〇〇%が回収されています。また、一升びんについては年間約四億二千万本が使用され、そのうち、ほぼ九〇%が回収されており、いずれも「リサイクルの優等生」となっています。
 リターナブル容器は、廃棄物の発生抑制及び資源の有効利用の観点から優れているといえますが、近年は、使い捨てのワンウェイのガラスびんや、他素材(紙製容器、缶、ペットボトル等)へのシフトに伴い、減少傾向にあります。
 酒類業界においては、資源の有効利用及び環境問題への取組の一環として、平成四年二月に五百ミリリットル規格統一びん(通称:アールびん)を導入し、リターナブル容器の普及に努力しています。
(2) 「カレットとして、溶かして再利用」
 リターナブルびん以外のガラスびんについては、色別に集められ、カレット(ガラスのくず)化した後、溶かしてガラスびんに再生されます。カレットを利用したガラスびんの製造は、カレットを多く使用すればするほど、けい砂、ソーダ灰、石灰石といった天然の資源を節約できるほか、原料を溶かす時間が短縮できるので、熱エネルギーを節約することができます。
 しかし、カレット化の際、種々の色が混入していたり、耐熱ガラスのように質の違う物が混入していると、再生ガラスの品質が劣化し、使い物にならなくなりますので、排出の際は、タバコの吸殻等の異物を除去し、栓、キャップ等を分離したうえでびんを色別に区分する必要があります。

2 缶(スチール製、アルミ製)
 スチール缶及びアルミ缶については、いずれも溶かして再びスチール、アルミとして再生されます。アルミ缶再生の省エネルギー効果は特に優れていて、平成十三年度に回収、再生地金化されたアルミ缶を例にとると、ボーキサイトから新地金を作る場合に比べて、電力量に換算して四十六億五千万キロワット時の節約となります。これは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、栃木県の一都四県一千五百七十九万世帯のおおむね一か月の使用電力に相当するものです。
 平成十三年度における再資源化率は、スチール缶で約八五%、アルミ缶では約八三%となっています。
 缶は、材質ごとに再生されることからスチール製、アルミ製を区分し、タバコの吸殻等の異物を除去し、軽くすすいだ後、つぶして排出することが必要です。

3 ペットボトル
 ペットボトルについては、分別して収集された後、ペットボトル再生処理工場で破砕、洗浄などが行われ、フレークまたはペレットというプラスチック原料等になります。これらは、プラスチック製品、繊維製品などの原材料として利用され、ペットボトル再製品のワイシャツ、カーペット、台所洗剤用容器等、さまざまな物に再利用されています。
 このほか、モノマー化と呼ばれる手法により、繊維やペットボトルなどのポリエステル製品の原料を得る方法もとられています。
 ペットボトルは、そのままの状態では非常にかさばるため、必ずキャップを除去し、軽くすすいだ後、つぶしてから排出することが必要です。

【容器包装リサイクル法について】

 一般廃棄物のうち、容量ベースで約六割を占める容器包装廃棄物についてリサイクルを推進し、廃棄物の減量化と資源の有効利用を図ることを目的として、平成七年六月に、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が制定されました。
 この法律では、「消費者による分別排出 市町村による分別収集 事業者による再商品化(リサイクル)」という、各者の役割分担により新たなリサイクルシステムを構築し、容器包装廃棄物のリサイクルを促進していくことを基本としています。平成九年四月からガラスびん及びペットボトルについて、また、平成十二年四月からは、紙製、プラスチック製の容器、包装についても市町村による分別収集が開始され、事業者の再商品化義務が発生しています。
 消費者の皆さんにも、容器包装廃棄物を排出する際には素材ごとの区別、洗浄、異物除去等に努め、市町村の分別収集に協力していただくことが必要です。

【わたしたちもリサイクルに貢献するために】

 私たち消費者も毎日の生活の中で、次のような点に少し気を配るだけでリサイクル運動に参加することができます。
@ 商品を購入する際には、なるべく簡易包装化のものやリターナブルびんを使用している商品を選ぶなど、廃棄物の排出抑制に努める。
A 容器包装廃棄物を排出する際には、容器包装に表示された別紙の識別マークにより分別し、市町村の分別収集や集団回収等に協力する。
B リサイクル製品(再生紙や再生プラスチック製品等)を積極的に選択し、リサイクル製品全体の需要拡大に貢献する。



    <10月23日号の主な予定>

 ▽青少年白書のあらまし……………内 閣 府 

 ▽毎月勤労統計調査(七月)………厚生労働省 

 ▽労働力調査(七月)………………総 務 省 




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