官報資料版 平成14年11月20日




                  ▽厚生労働白書のあらまし………厚生労働省

                  ▽景気予測調査(八月)…………財 務 省

                  ▽家計収支(八月)………………総 務 省











厚生労働白書のあらまし


現役世代の生活像―経済的側面を中心として―


厚生労働省


T 平成十四年版厚生労働白書の主題

 平成十四年版厚生労働白書が、去る九月十日に閣議に報告され、公表された。
 今回の白書は、「現役世代の生活像 −経済的側面を中心として−」と題し、我が国の経済社会の主要な担い手である現役世代に焦点を当てたものとしている。
 今日の我が国は、急速な少子化の進展と平均寿命の伸長により高齢化率が上昇しているのみならず、生産年齢人口内部での年齢構成の変化や生産年齢人口そのものの減少といった人口構造の大きな変動期を迎えている。これらに加えて、国際競争の激化、サービス経済化の進展等に伴う経済・産業構造の大きな変化は、生産年齢人口、すなわち我が国の現役世代をとりまく社会経済環境に大きな影響を与えるようになってきている。
 このような中、今後とも、社会経済のあらゆる場面において中心となっていくのは現役世代であり、現役世代が将来に対して明るい展望を抱くことができるようにすることは、我が国の大きな課題である。
 そこで、今回の白書では、現役世代に焦点を当て、その経済的側面を中心として働き方や所得水準について分析を行うとともに、今後の方向性について考察を行うこととした。
 分析の結果は、主に次の三点となっている。
 第一に、年功賃金については、若い世代ほど年齢上昇に伴う賃金上昇率は小さくなっているが、経済成長の鈍化による影響を取り除いてみると、世代間の変化は小さく、年功賃金の変化には経済成長の鈍化が大きく影響している。
 第二に、従来型の拘束度が高い正社員や自由度が高い非正社員といった働き方だけではなく、例えば短時間正社員のような柔軟で多様な働き方を求める潜在的なニーズが高い。
 第三に、二十歳から三十歳代の若い世代では、未婚・既婚、親との同居関係など世帯形態によって実質的な所得水準が大きく異なるとともに、四十歳前後までと五十歳代以降の生活水準の格差が拡大している。
 このような分析結果を踏まえ、厚生労働省としては、現役世代が将来に希望を持っていきいきと働き、生活水準の向上を実感することができるような社会を築いていくことが重要であると考えている。

U 平成十四年版厚生労働白書の概要

【第一部の概要】

 平成十四年版厚生労働白書は二部構成となっており、第一部では、「現役世代の生活像 −経済的側面を中心として−」というテーマ部分を記述している。

第一部 現役世代の生活像−経済的側面を中心として−

第一章 人口構造の変化と現役世代

 第一章では、現役世代をとりまく社会経済環境に影響を与える要因として、人口構造の変化を概観している。

一 我が国における人口の年齢構成の変化
 我が国における人口の年齢構成は大きく変化してきており、一般に「働き手」とされる生産年齢人口(十五〜六十四歳人口)は、一九九五(平成七)年をピークに減少に転じ、今後更に減少していくことが見込まれている。一方、老年人口(六十五歳以上人口)が総人口に占める割合については、二〇五〇(平成六十二)年には、およそ四〇%となることが見込まれている。また、老年人口内部、生産年齢人口内部においても高齢化が進行している(第1図参照)。

二 人口の年齢構成の変化の背景
 一般に、一国の経済社会が発展するにつれて、人口は、多産多死から、多産少死を経て、少産少死へと変化し、人口総数の増減もなく、各年齢の人口数も不変の安定的な状態へと変化することが「人口転換」として経験的に知られている。
 我が国においても一九七五年ごろまではおおむねこの過程を経験してきたが、その後、この流れとは全く異なる動きをとるようになり、特に出生率の大幅な低下とそうした低い水準が二十年以上も続いていることは大きな特徴となっている。
 我が国人口の年齢構成の大きな変動の背景は、急速な「多産」から「少産」への移行により出生率が急激に低下した後も出生率が安定せずに低下が続く中、一九六五(昭和四十)年以降の急速な中高年死亡率の改善により、世界的な長寿を達成することができたことによるものと考えられる。

三 人口の年齢構成の変化が及ぼす影響
 人口の年齢構成の変化を受け、労働力人口の年齢別構成もより高い年齢階層において増加することが見込まれる。こうした労働力人口の高齢化は、年功賃金等の雇用慣行にも影響を及ぼすとともに、医療、年金等の社会保障分野において現役世代の負担を増加させ、世代間の所得移転を拡大させる要因となる(第2図参照)。

第二章 現役世代の働き方

 第二章では、日本型雇用慣行の変化と働き方の多様化、女性や夫婦の働き方を取り上げ、現役世代の働き方の変化を分析するとともに、今後の方向性について展望している。

第一節 日本型雇用慣行の変化と働き方の多様化

一 年功賃金、長期雇用の動向
 標準労働者の賃金プロファイルを過去と比較すると年齢上昇に伴う賃金上昇率は小さくなっており、また、世代別に実質賃金の年齢プロファイルを比較すると、最近の世代では年齢上昇に伴う実質賃金の上昇率は低い(第3−1図参照)。
 平均勤続年数の推移をみると、年齢計の平均勤続年数は長期化しているが、年齢階級別にみると、定年年齢の引上げ等を背景に五十歳代以降は勤続年数が長期化する一方、三十歳代以下では、転職割合の増加等により勤続年数は短期化している。

二 世代ごとの人口規模や入職時の経済状況が年功賃金等に与える影響
 世代ごとに入職後一定期間における賃金上昇率をみると、新規就職者数が多い世代や不況時に就職した世代の賃金上昇率はおおむね低い傾向にある。
 入職後の経済状況の違いを取り除いた世代別の賃金プロファイルをみると、世代間の変化は小さく、年功賃金の変化には経済成長の鈍化も大きく影響していると考えられる(第3−2図参照)。

三 年功賃金・長期雇用の変化要因
 賃金上昇率が低下する中で従業員の高齢化・高学歴化による賃金上昇効果の占める割合が高くなっており、人件費負担に大きな影響を与えるようになってきている。労働者の年齢構成が高齢化するとともに、高度経済成長期のような成長も期待できない中で、賃金の年齢プロファイルを再び急な傾きとすることは困難であると考えられる。
 企業の意向としては、長期雇用については、年功賃金ほど大きく見直そうという動きはないが、賃金制度の能力主義、成果主義の方向への見直し等に伴い、労働者にとっては勤続長期化に伴うメリットが少なくなり、一社に長期間勤続する状況に変化が生じる可能性がある。

四 変化の背景にある就労者の意識
 年功賃金、終身雇用に関する労働者の意識をみると、いずれも肯定的にとらえる者は過半を占めるが、年功賃金の方が低い値を示しており、いずれについても若年層ほど肯定的にとらえていない。また、同じ会社に勤続することにこだわらない意識や会社との距離を置きつつ、生活を重視する傾向も若年層を中心に高まっている。

五 多様化する働き方
 企業の求める人材ニーズや労働者の意識の変化、昇進機会の減少等を背景に、複線型人事管理制度、限定勤務地制度等新たな人事制度の導入が進み、働き方の選択肢が広がりつつある。
 就業形態の多様化が進み、若年層を中心に非正社員比率が急増している。就業形態の多様化の背景には、会社に強く依存しない働き方を求める労働者の意識変化が影響していると考えられるが、最近の景気低迷による若年層を中心とした非自発的なものもみられる。
 年々増加するいわゆるフリーターについても、その選択理由はさまざまであるが、職業意識が希薄なため、将来の見通しを持たないままフリーターとなった者が相当数存在することは、本人の技能形成、能力開発の面から問題であるだけでなく、経済や社会全体への影響が懸念される。自己責任原則の下で働き方を選択することを基本に据え、主体的に適切な職業選択ができるよう支援を行うことが重要である。
 少子高齢化が進展し、職業生活が長期化する中で、ライフステージに応じて育児や介護のみならず自己啓発、ボランティアなどさまざまな活動に取り組むための休暇、休職制度は、個人が自己実現を図るとともに企業経営においても柔軟な発想、多様な価値観を取り入れていく上で効果的と考えられ、一層普及することが望まれる。

六 雇用慣行の変化と働き方の多様化
 経済成長が鈍化するとともに、企業をとりまく環境は多様化、複雑化していることから、企業経営においてもより多様な価値観、発想を取り入れていく柔軟性の高いシステムが求められており、これは、働く側の自律性重視の流れ、価値観や就業意識の多様化とも方向性が合致している。
 高度経済成長期のような成長が見込まれず、労働者の年齢構成もかつてのような若い状況には戻らない中で、企業をとりまく環境や労働者の意識等を踏まえると、年功賃金や長期雇用慣行の下にあるかつての典型的なタイプの労働者の割合は減少し、仕事や労働者のタイプに応じた働き方が広がってくるものと考えられる。
 今後、多様な働き方の選択肢を整備するとともに、働きに応じた公正な評価・処遇を確立し、個々の労働者が主体的にキャリア形成を図りつつ働き方を選択できるような環境整備を社会全体として進めていくことが必要である。

第二節 変わりつつある女性や夫婦の働き方

一 女性の働き方の変化
 夫が雇用者である世帯の妻の就業状況をみると、一九五五年には妻が専業主婦の世帯が七四・九%を占めていたが、その後女性の労働市場進出等が進み、一九九〇年代には妻も雇用者である共働き世帯の割合が専業主婦世帯の割合を上回った。
 世代別に年齢階級別の女性労働力率の変化をみると、団塊の世代を含む一九四六〜五〇年生まれの世代は、結婚後、専業主婦となる者が多く、二十五〜二十九歳の労働力率は四二・七%と前後の世代と比較して最もM字型の底が深い。その後、晩婚化に伴う二十五〜二十九歳層の未婚者割合の増加や二十五〜二十九歳層の有配偶者の労働力率上昇等を背景に、一九五六〜六〇年生まれの世代以降、M字型カーブの底は三十〜三十四歳層にシフトしている(第4図参照)。

二 基幹的・専門的な労働力として働く女性の増加
 就業意識の高まりや高学歴化を反映して、役職者につく女性や専門的・技術的職業に就く女性も増加し、平均勤続年数も長期化している。年齢階級別大卒者割合を世代別にみると、従来、年齢上昇とともに低下傾向にあったが、新しい世代では、二十五〜二十九歳層から三十歳代にかけて大卒者割合は同水準を保っており、高学歴女性が就業を継続する割合が高まっている(第5図参照)。

三 パートタイム労働者の動向
 女性雇用者の伸びにはパートタイム労働者の増加が大きく寄与している。世代別に過去十年間の女性雇用者の増減をみると、団塊の世代を含む一九四七〜五六年生まれでは雇用者全体の伸びのうち七割近くをパートタイム労働者が占め、一九五七〜六六年生まれではパートタイム労働者が増加する一方、その他の雇用者数は減少しており、パートタイム労働者による就業が中高年女性の雇用を支えていることがわかる。また、パートタイム労働者の増加に伴い、正社員と比べ責任の重さ等の違いはあるにしても、基幹的な役割を担うパートタイム労働者が増大している。
 「短時間のパート」については、働く側からみても家庭生活との両立等の観点から自発的に選択される割合が高いが、パートタイム労働者全体の三割を占める「その他のパート」については、正社員として働ける会社がなかったため選択した者の割合が「短時間のパート」より高く、正社員を希望しながらやむなく短時間就労している者や会社都合等で短時間就労している者の割合は、バブル崩壊以降、趨勢的に上昇している。
 こうした正社員の雇用機会が不足し非自発的なパートタイム労働者が増加している背景には、正社員とパートタイム労働者の処遇の差によるコストの違いがあると考えられる。パートタイム労働者と正社員の賃金格差は拡大傾向にあり(第6図参照)、勤続年数別賃金カーブにも顕著な差がみられる。

四 新しい働き方の模索
 就業形態の多様化が進む中で、「基幹的な業務を担い、拘束性の高い」フルタイム正社員か「補助的なパート等の非正社員」かの二者択一ではなく、フルタイム正社員より一週間の所定労働時間は短いが、フルタイム正社員と同様の役割、責任を担い、同様の能力評価や賃金決定方式の適用を受ける短時間正社員制度が新しい働き方の一つとして注目されている。現在フルタイム正社員で働く女性で短時間正社員を好ましい働き方と考える者は三割弱を占めている。

五 夫婦の働き方の変化
 妻の就業状況および所得階級別分布を時系列でみると、夫の被扶養者として補助的に働く者と本格的に働く者の二極化の傾向がみられる。
 夫の所得と妻の就業の関係をみると、おおむね夫の所得が高いほど妻の無業割合が高くなる傾向にあるが、以前と比べるとその関連性は弱くなっている。また、夫婦とも高所得である割合が上昇するなど配偶者の収入と夫婦単位の働き方の関係は多様化している。
 子どものいる夫婦の働き方の現状と理想を比較すると、実際は双方フルタイムの共働きや片働きをしている者にも、一方がフルタイムで他方がパートの共働きや双方パートの共働きへの志向がみられる(第7−1図第7−2図参照)。また、若い年齢層ほど夫が家事に参画する傾向がみられ、また、夫の家事・育児の遂行頻度はいずれの年齢層においても上昇傾向にある。さらに、若い男性ほど家庭や地域活動と仕事を両立させる生き方や家庭を重視する生き方を支持している。

六 今後の女性や夫婦の働き方
 女性の就労理由や就労パターンがさまざまなものとなっている中、女性がその能力を十分発揮できるよう環境を整備することが重要な課題であるとともに、夫婦の働き方についてもさまざまなニーズや志向に応じて選択を行うことができる環境を整備することが必要である。

第三節 これからの働き方の変化と対応

 個々の労働者が主体的に働き方を選択できるような環境整備を社会全体として進めていく必要があり、今後は従来型の拘束度が高い正社員か自由度の高い非正社員かといった二者択一ではなく、ある程度基幹的な仕事をフルタイムや短時間で行う働き方などの多様な選択肢を整備するとともに、働きに応じた公正な処遇を確立することが重要である。
 賃金制度は能力主義、成果主義の方向に変化しつつあるが、評価制度に対する不安もかなりみられるところであり、職務の明確化を図った上で、その遂行の能力、成果を客観的に評価する納得性の高いシステムを構築するとともに、時間当たり賃金の考え方を今まで以上に取り入れるなど働き方相互の間の公正な処遇を図るための取組みを労使において推進していくことが必要である。
 働き方の選択肢については、育児・介護などライフサイクルに応じて節目節目で選択・変更できる仕組みとすることが必要である。また、自己啓発やボランティアなどさまざまな活動に取り組むため一定の期間仕事を離れることのできる仕組みを拡大することも望まれる。
 行政としては、労使とともに多様な働き方に見合った公正な処遇のあり方およびその推進方策の検討を進めるほか、働き方に中立な制度の構築のため社会保険適用のあり方について検討を進めることも必要である。

第三章 現役世代の経済状況

 第三章は、現役世代の生活水準について家計を中心に分析している。

第一節 賃金と世帯所得による比較

一 労働者の賃金による比較
 労働者の賃金を二十年前と比べると、全年齢階級で実質賃金は一〇%以上伸びているが、年齢が高くなるほど高学歴化が進んだこともあり伸びが大きくなっている。

二 世帯主年齢と世帯構造
 世帯主の年齢と世帯構造の関係をみると、世帯主が二十九歳以下の層では単独世帯が約七割を占めるとともに、六十歳以上の層では二人世帯、単独世帯の比率が高い。一方、三十歳代から五十歳代では、夫婦と未婚の子のみからなる世帯が最も多い世帯構造となっている。また、三世代世帯は、四十歳代以上の層でいずれも一一〜一四%を占めている。

三 世帯所得による比較
 世帯主の年齢階級ごとに世帯所得をみると、年功的な賃金体系を反映して、世帯主が五十歳代の所得が最も大きい。世帯員一人当たりの所得で比較すると、五十歳代が最も高く、六十歳代以降も高い水準を維持している一方、二十九歳以下は、最も低い。また、世帯所得を世帯員数の平方根で除した所得水準で比較すると、三十歳代では六十歳代や七十歳以上よりも低い水準となっている。
 最近二十年間の世帯主年齢階級ごとに所得の伸び率をみると、四十〜四十九歳、五十〜五十九歳の層では実質で二〇%を超える伸び率となっているが、二十九歳以下と六十歳以上の層の実質伸び率は一〇%を下回っている。また、一人当たり所得の二十年間の推移をみると、世帯主が三十歳以上のすべての層で実質二五%以上の増加となっているのに対し、二十九歳以下の層では、わずかに一〇・三%の伸びにとどまっている。

第二節 現役世代の家計構造(世帯主に着目した比較)

一 家計収支の現状と推移
 家計収支をみると、高齢化の進展等に伴い、非消費支出(税、社会保険料等)の割合が高まっているものの、収入が着実に伸びたことから、可処分所得も収入に近い伸びを示しており、最近の世代ほど豊かな生活を享受している。

二 世帯主年齢でみた家計構造(可処分所得と消費支出額による比較)
 世帯主年齢によって可処分所得、消費支出額を比較すると、四十歳前後までは生活水準の向上が緩やかであるのに対し、四十歳代後半以降大きく向上する傾向がみられ、全世帯平均を上回るのは、世帯主が五十歳以上の層となっている。また、近年の推移をみると、どの年齢区分においても生活水準は向上しているが、年齢が高いほど向上の程度が大きくなっている(第8図参照)。
 (注) 本白書では、各世帯員の実質的な所得水準を比較するため、世帯規模が大きくなるほど追加的に必要となる経費は逓減していく点を考慮して、世帯所得を世帯員数の平方根で除して求めた数値を用いた分析を行
っている。

三 消費支出の内容からみた比較
 消費支出の使途に着目して各世代の特徴をみると、二十歳代から三十歳代では住居費が、四十歳代から五十歳代では教育費が、四十歳代後半から六十歳代前半にかけては小遣い、交際費、仕送り金などが含まれるその他の支出が多くなっている。

第三節 世帯員ごとにみた所得水準の比較

 世帯規模の効果を考慮し、各世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で除したものを各世帯員の実質的な所得水準(等価可処分所得)とみなして年齢階級別に集計すると、一九八六年から一九九二年にかけて上昇傾向にあったものが、その後一九九八年にかけては経済の停滞を反映してほぼ横ばいとなっている。また、個々の世帯員に着目すると、二十歳代の実質的な所得水準は、五十歳代と並んで比較的高い水準にある(第9図参照)。
 二十歳代については、どのような世帯に暮らしているかで実質的な所得水準が大きく異なっており、親等と同居した未婚者の所得水準が高く、結婚等により独立した場合には所得水準が低い(第10図参照)。
 六十五歳以上の世代では、稼得収入等(社会保障給付を除く)は他の世代と比べてかなり低くなっているが、直接税及び社会保険料負担を上回る社会保障給付を得ていることから、実質的な可処分所得の水準は他の世代と比較しても遜色ないものとなっている。
 各世代の実質的な所得水準の格差について、その均等度を測るためジニ係数をみると、五十九歳までは所得水準の高い世代のジニ係数が高くなるという傾向がみられる。一方、六十歳以上では、所得水準は五十歳代に比べて低下するものの、ジニ係数は高くなっており、これには六十歳以上では就業収入の有無が大きく影響していると考えられる。また、ジニ係数を当初所得と可処分所得で比較してみると、公的社会保障給付があることによって、六十歳以上の均等度が大きく改善されている(第11図参照)。

第四節 家計資産による比較

 世帯主年齢階級別に資産額、貯蓄額をみると、いずれも世帯主年齢の上昇とともに増加している。一方、負債額については、四十歳代が最も多く、三十歳代では貯蓄額を負債額が上回っている。

第五節 現役世代の経済状況〜まとめ〜

 既婚者について年齢と生活水準の関係をみると、四十歳前後までは生活水準の向上は緩やかなものとなっており、四十歳代後半以降向上の度合いが大きくなる傾向にある。また、過去二十年間の推移をみると、若い世代と比べて中高齢期において生活水準の向上が著しく、年齢間の生活水準の格差も広がる傾向にある。

【第二部の概要】

 第二部においては、厚生労働行政の各分野について、平成十三年度の動きを中心に紹介している。


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景気予測調査


―平成十四年八月調査―


財 務 省


<はじめに>

 財務省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百二十万社のうち約一万二千社を対象として、四半期ごとに財務省景気予測調査を実施している。
 以下は、平成十四年八月に実施した第七十八回調査結果の概要である。今回の調査では一万一千百一社を対象とし、八千九百四十六社(回収率八〇・五%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

◇景況第1図第1表参照

 平成十四年七〜九月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
 先行き十四年十〜十二月期を全産業でみると、いずれの規模においても引き続き「下降」超の見通しとなっている。
 先行き十五年一〜三月期を全産業でみると、大企業は「上昇」超に転じる見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。

◇売上高第2表参照

 平成十四年度上期の売上高は、全産業合計で前年比二・五%の減収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業では減収見込み、中堅企業では増収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、輸送用機械器具が増収となるものの、その他の全業種が減収となり、全体では三・九%の減収見込みとなっている。
 非製造業では、映画・娯楽が増収となるものの、卸売・小売、建設などが減収となり、全体では二・〇%の減収見込みとなっている。
 十四年度下期の売上高は、全産業合計で前年比一・五%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、船舶製造・修理、窯業・土石製品などが減収となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増収となり、全体では二・三%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、建設、その他のサービスなどが減収となるものの、卸売・小売、不動産などが増収となり、全体では一・二%の増収の見通しとなっている。
 十四年度通期の売上高は、全産業合計で前年比〇・五%の減収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業では減収の見通し、中堅企業では増収の見通しとなっている。

◇経常損益第3表参照

 平成十四年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比五・一%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業では減益見込み、中堅企業、中小企業では増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、一般機械器具、化学工業などが減益となるものの、電気機械器具、食料品などが増益となり、全体では一三・〇%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、不動産、事業所サービスなどが減益となるものの、卸売・小売、その他のサービスなどが増益となり、全体では一・八%の増益見込みとなっている。
 十四年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比二二・九%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、輸送用機械器具、船舶製造・修理などが減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では五三・四%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、その他のサービス、電気、ガス・水道が減益となるものの、不動産、卸売・小売などが増益となり、全体では一〇・八%の増益の見通しとなっている。
 十四年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一四・五%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。

◇中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における平成十四年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で一〇・四%減、除く場合(以下「除く」という)で四・六%減の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で一・四%ポイントの上方修正、「除く」で五・六%ポイントの上方修正となっている。
 十四年九月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は「過大」超となっている。
 先行きについては、全産業でみると「過大」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売製(商)品在庫

 平成十四年九月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっているものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

◇中小企業の仕入れ価格

 平成十四年七〜九月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業は十五年一〜三月期に「上昇」超に転じるものの、卸売業、小売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売価格

 平成十四年七〜九月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇雇用第5表参照

 平成十四年九月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 十四年七〜九月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「増加」超となっている。
 先行きについては、大企業は十四年十〜十二月期に「減少」超になった後、十五年一〜三月期に「増加」超に転じる見通しとなっている。中堅企業、中小企業は「増加」超で推移する見通しとなっている。
 十四年七〜九月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇企業金融第6表参照

 平成十四年七〜九月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「きびしい」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 十四年七〜九月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「悪化」超となっている。
 先行きについては、大企業は十五年一〜三月期に「改善」超に転じるものの、中堅企業、中小企業は引き続き「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 十四年九月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
 業種別にみると、製造業では、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで大企業、中堅企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」、中小企業は「国内販売体制、営業力の強化」の順となっている。非製造業では、いずれの規模においても「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。


暮らしのワンポイント

着物のTPO

季節、場所、目的に合わせて

 普段は洋服でも、お正月や成人式など、「ここぞ」という時に着物を着る人は多いのではないでしょうか。TPOに合わせ、楽しく着物を着こなしましょう。
 フォーマルな洋装と違い、着物は昼夜の使い分けがなく、季節や場所、目的に合わせます。
 未婚女性の晴れ着である振り袖(そで)は、パーティーやお呼ばれなど、華やかな席に着用し、色や柄は華やかなものが選べます。
 留め袖は、女性の第一礼装です。一般的に、黒留め袖は結婚した女性の着物。色留め袖は未婚の女性でも着られるとされています。家紋を入れた黒留め袖は式服として、色留め袖は着る人の個性を生かして、パーティーなどに用います。いずれも式服であることに変わりはありませんので、気つけやコーディネートはきちんと決まりに従いましょう。
 訪問着は、留め袖に次いでフォーマルな着物です。お茶会やパーティーなど、様々な場所で用いられ、デザインも豊富ですが、それだけに、行き先や目的に合わせた選び方をすることが大切です。ホテルやレストランなど、洋風の場所ではモダンなものでもOKですが、茶室や日本庭園などには和風で落ち着いた感じのものを。もちろん、季節にあった柄を選ぶことを忘れずに。
 紬(つむぎ)や小紋は、観劇や買い物など、街着として最も着る機会の多い着物です。紬は長く着られることを念頭におき、飽きのこないシンプルなものを選びましょう。小紋はワンピース感覚で、好みにあったおしゃれなものを。
 男性の着物は、紬やお召しが一般的で、日常着でも外出時や来客時には羽織をつけるのが決まりです。羽織のひもは色物ですが、礼装の場合はすべて白でそろえます。


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消費支出(全世帯)は実質〇・一%の増加


―平成十四年八月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十四年四月に実質増加となった後、五月は実質減少となったが、六月以降三か月連続の実質増加となった。
 また、一人当たりの消費支出は九万四千百七十六円で、前年同月に比べ実質一・三%の増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年十二月に実質減少となった後、十四年一月以降三か月連続の実質増加となったが、四月以降五か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十四年五月に実質減少となった後、六月、七月は二か月連続の実質増加となったが、八月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万七千九百五十三円となり、前年同月に比べ、名目〇・一%の減少、実質〇・九%の増加となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質一・七%の減少となった。
 勤労者世帯の消費支出は、前月に比べ実質二・〇%の減少となった。













    <11月27日号の主な予定>

 ▽警察白書のあらまし………………警 察 庁 

 ▽毎月勤労統計調査(八月)………厚生労働省 

 ▽消費動向調査(九月)……………内 閣 府 




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