官報資料版 平成14年12月11日




                  ▽独占禁止白書のあらまし…………公正取引委員会

                  ▽毎月勤労統計調査(九月)………厚生労働省

                  ▽労働力調査(八月結果)…………総 務 省











独占禁止白書のあらまし


公正取引委員会


はじめに

 公正取引委員会は、平成十四年九月二十七日、平成十三年度年次報告書を国会に提出した。
 当委員会は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)第四十四条第一項の規定に基づき、内閣総理大臣を経由して、国会に対して同法の施行状況を報告している。年次報告書には、同法の特別法である下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)及び不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という)の施行状況に係る報告も含まれている。
 以下、平成十三年度年次報告の要旨を紹介する。

第1章 独占禁止法制の動き

1 独占禁止法の改正
(1) 独占禁止法の一部を改正する法律(大規模会社の株式保有総額の制限の廃止、法人等に対する罰金の上限額の引上げ等)
 最近における経済情勢等にかんがみ、公正かつ自由な競争の促進による国民経済の一層の発展に資するよう、大規模会社の株式保有総額の制限の廃止等、書類の送達規定等についての規定の整備及び法人等に対する罰金の上限額の引上げを内容とする独占禁止法改正法は、平成十四年五月二十二日に成立し、同月二十九日に公布された。施行日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日(書類の送達規定等についての規定の整備及び法人等に対する罰金の上限額の引上げに関しては、公布の日から起算して一月を経過した日)とされた。同法の内容は、次のとおりである。
ア 会社による株式保有の制限に関する改正
(ア) 事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立の禁止等(改正法第九条)
 事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立等を禁止していたものを、他の国内の会社の株式を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等を禁止することとした。
 また、一定の規模を超える会社は、事業年度ごとに当該会社及びその子会社の事業に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならないこととするとともに、新たに設立された一定の規模を超える会社は、その設立の後にその旨を公正取引委員会に届け出なければならないこととした。
(イ) 大規模会社の株式保有総額の制限の廃止(改正法第九条の二)
 資本の額が三百五十億円以上又は純資産の額が一千四百億円以上の金融業以外の事業を営む株式会社が、自己の資本の額に相当する額又は純資産の額に相当する額のいずれか多い額を超えて他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することを禁止する規定を廃止した。
(ウ) 会社の株式保有の制限に係る報告書の提出義務(改正法第十条)
 一定の規模を超える他の会社の総株主の議決権に占める保有する株式に係る議決権の割合が一定の数値を超えることとなる場合において、当該株式に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない一定の規模を超える会社として金融会社を加えることとし、銀行又は保険会社が非金融会社(銀行又は保険会社その他公正取引委員会規則で定める会社以外の会社をいう。以下同じ)の株式を保有する場合及び証券会社が業務として株式を保有する場合を除くこととした。
(エ) 銀行及び保険会社の議決権保有の制限(改正法第十一条)
 金融会社が他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五(保険会社は百分の十)を超えて保有することを禁止していたものを、銀行又は保険会社が非金融会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五(保険会社は百分の十)を超えて保有することを禁止することとした。
 また、銀行又は保険会社に係る議決権保有制限の対象から除外される議決権保有について、次に掲げる場合を加えることとした。
a 非金融会社が利益以外をもってする自己の株式の取得を行ったことにより、その総株主の議決権に占める保有する議決権の割合が増加した場合
b 金銭又は有価証券の信託に係る信託財産として議決権を保有する場合について、委託者若しくは受益者が議決権を行使すること又は議決権の行使について受託者に指図を行うことができる場合以外の場合
c 一定の要件を満たした民法第六百六十七条第一項に規定する組合契約によって成立する組合の組合員となり、組合財産として議決権を保有する場合
d 非金融会社の事業活動を拘束するおそれがない場合として公正取引委員会規則で定める場合
イ 書類の送達規定等についての規定の整備及び法人等に対する罰金の上限額の引上げに関する改正
(ア) 書類の送達規定の整備(改正法第六十九条の二、第六十九条の三、第六十九条の四等)
 書類の送達について、民事訴訟法第百八条(外国における送達)等の規定を新たに準用するとともに、送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合等において、公正取引委員会が公示送達をすることができることとした。
 また、送達すべき書類は、独占禁止法に規定するもののほか、公正取引委員会規則で定めることとした。
(イ) 既往の違反行為に対する措置規定の対象行為の追加(改正法第七条、第八条の二等)
 違反行為が既になくなっている場合において、当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる違反行為として、第六条並びに第八条第一項第二号及び第三号の規定に違反する行為を追加することとした。
(ウ) 法人等に対する罰金の上限額の引上げ(改正法第九十五条)
 私的独占、不当な取引制限等の違反について、法人等に対する罰金の上限額を五億円に引き上げることとした。
(2) 商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律による独占禁止法の改正
 いわゆる金庫株の解禁に関し商法等の規定の整備を行うこと等を内容とする商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴い、証券取引法その他の関係法律の規定を整備するとともに、所要の経過措置を定める必要があるため、商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案が平成十三年五月の第百五十一回国会に提出された。同法案は、単元株制度の創設等に伴う独占禁止法の所要の改正(親子会社関係の規定の株式から議決権への改正)を含むものであるところ、平成十三年六月二十二日可決・成立した(平成十三年六月二十九日公布、同年十月一日施行)。
(3) 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律による独占禁止法の改正
 種類株式制度の見直し、会社関係書類の電子化等を内容とする商法等の一部を改正する法律の施行に伴い、非訟事件手続法その他の関係法律の規定を整備するとともに、所要の経過措置を定める必要があるため、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案が第百五十三回国会に提出された。同法案は、新株予約権制度の新設、種類株式制度の見直しに伴う独占禁止法の所要の改正(第十条第二項の基準、第十一条の規制基準の株式から議決権への変更等)を含むものであるところ、平成十三年十一月二十一日可決・成立した(平成十三年十一月二十八日公布、平成十四年四月一日施行)。

2 独占禁止法改正に伴う政令の改正
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部改正
 種類株式制度の見直し等を内容とする商法等の改正に伴い、独占禁止法においても、第十条第二項の株式に関する報告書を提出しなければならない会社の範囲を定める基準が株式から議決権に変更されたところ、同項の規定により独占禁止法施行令に委任されている当該範囲を定める複数の数値について、「発行済の株式の総数に占める株式所有会社の取得し、又は所有する株式の数の割合」から、「総株主の議決権に占める株式所有会社の取得し、又は所有する株式に係る議決権の割合」に改正された(平成十三年三月二十五日公布、平成十四年四月一日施行)。

3 その他の所管法令の改正
公正取引委員会事務総局組織令の改正
(1) 独占禁止法第十一条の規制対象の変更に伴う経済取引局企業結合課の所掌事務の整備を内容とする公正取引委員会事務総局組織令の改正が行われた(平成十四年政令第七十五号。平成十四年三月二十九日公布、同年四月一日施行)。
(2) 官房に置かれる参事官を廃止し、審査局に審査管理官一人を新設することを内容とする公正取引委員会事務総局組織令の改正が行われた(平成十四年四月一日公布、同日施行)。

4 独占禁止法と他の経済法令等の調整
(1) 法令調整
 当委員会は、関係行政機関が特定の政策的必要性から経済法令の制定又は改正を行おうとする際に、これら法令に独占禁止法の適用除外や競争制限的効果をもたらすおそれのある行政庁の処分に係る規定を設けるなどの場合には、その企画・立案の段階で、当該行政機関からの協議を受け、独占禁止法及び競争政策との調整を図っている。
 平成十三年度において調整を行った主なものは、次のとおりである。
○薬事法の一部を改正する法律案
 医薬品・医療機器の分野における科学技術の進展、企業行動の多様化(医薬品等メーカーによる製造委託の増加)等に対応するとともに、規制の国際的整合性を図る等の観点から、厚生労働省は、薬事法の一部改正を立案した。
 本法律案は、@新技術に対応した安全確保措置、A最近の企業行動に合った規制制度への変更、B医療機器のリスクに応じたクラス分類制度の導入等を内容とするものである。
 当委員会は、高リスク医療機器の参入規制、元売業の許可基準、輸入販売の規制、医療機器等の表示規制等に係る規定について、目的に照らして必要最小限の規制とし、特に並行輸入を不当に阻害しないようにとの観点から、所要の調整を行った。
 なお、本法律案は、第百五十四回国会に提出され、平成十四年五月二十二日可決・成立した。
(2) 行政調整
 当委員会は、関係行政機関が特定の政策的必要性から行う行政措置等について、当該措置等が独占禁止法及び競争政策上の問題を生じないよう、当該行政機関と調整を行うこととしている。
 総務省は、電気通信事業法に規定する他人の土地等の使用権に関する協議認可・裁定制度の運用基準として機能するものとして、「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」を策定している。総務省は、超高速インターネットの整備に不可欠な光ファイバー網の整備等を促進する観点から、一束化(電柱を使用する複数の事業者の通信線を、一か所の共架ポイントに束ねて敷設すること)を円滑に進めること等を内容とした同ガイドライン改正案を検討していたところ、当初の改正案では、一束化を希望する事業者が電柱保有者に対し先行敷設事業者の指名等を照会した場合であっても、電柱保有者は、先行敷設事業者の承諾を得られない場合は指名等を通知しなくてもよいこととなっていた。
 当委員会は、電柱・管路等をより開放し、地域通信市場への新規参入の促進を図るとの観点から総務省に対し、当初案では、先行敷設事業者が指名等の通知を承認しないことにより、事実上、先行敷設事業者による一束化の拒否を認め得る事となっていたことから、先行敷設事業者が合理的な理由なく指名等を通知することについての承諾を拒否してはならない旨の規定を盛り込むべきとの趣旨の意見を述べ、所要の調整を行った。
 このほか地方公共団体の公共入札における地元企業優先発注・地元産品優先使用に係る相談について、独占禁止法及び競争政策の観点から所要の調整を行った。

5 独占禁止法研究会における検討
 当委員会は、平成十三年二月以降、独占禁止法における一般集中規制の見直し及び手続規定等の見直しについて検討を行うため、「独占禁止法研究会」(座長:宮澤健一・一橋大学名誉教授)を開催した。また、同研究会は、より専門的かつ集中的な検討を行うため、研究会の下で「一般集中部会」(座長:後藤晃・一橋大学教授)と「手続関係等部会」(座長:根岸哲・神戸大学教授)を開催した。手続関係等部会における検討結果については、同年八月三日、「独占禁止法研究会手続関係等部会報告書」として取りまとめられた。また、一般集中部会における検討結果については、同年十月、同研究会に報告された。
 同研究会は、各部会における検討結果等を踏まえて引き続き検討を行い、同年十月三十一日、「独占禁止法研究会報告書」を取りまとめた。当委員会は、同報告書等を踏まえ、大規模会社の株式保有総額の制限の廃止等、書類の送達規定等についての規定の整備等を内容とする独占禁止法改正法案を取りまとめた。

第2章 二十一世紀にふさわしい競争政策の検討

 我が国の経済社会は、経済のグローバル化、情報通信技術革命(IT革命)等による環境変化の中で、経済の構造改革を進め、民間事業者による自由な活動と創意工夫を通じた競争力ある経済社会を実現するとともに、経済社会の全般にわたる規制改革により事前規制型行政から事後チェック型行政へと行政の在り方を転換することが大きな課題となっている。経済社会の構造転換は、自己責任原則と市場原理に立脚し、国際的にも開かれた公正で自由な経済社会を実現することを通じて達成されるべきであり、そのためには、市場における公正で自由な競争のルールの実現を目指す競争政策が果たすべき役割が極めて重要となっている。
 こうした認識の下、平成十三年五月の第百五十一回国会での小泉内閣総理大臣所信表明演説において、「市場の番人たる公正取引委員会の体制を強化し、二十一世紀にふさわしい競争政策を確立」する旨言及され、また、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成十三年六月閣議決定)において、「公正取引委員会の体制を強化し、その機能を充実させるなど、競争環境の積極的な創造や市場監視の機能・体制を充実させ、競争政策を強力に実施する。」とされる等、競争政策の重要性が指摘される中、当委員会は、「二十一世紀における競争政策のグランド・デザイン」を公表した。
 さらに、当委員会は、二十一世紀にふさわしい競争政策の在り方、それを遂行するために必要な体制・機能等について検討するため、外部の有識者により構成する「二十一世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」(会長:宮澤健一・一橋大学名誉教授)を開催した。同懇談会は、平成十三年六月以降五回の会合を開催し、その検討結果を平成十三年十一月に提言書として取りまとめ、その提言書を当委員会に提出した。

第3章 違反被疑事件の審査及び処理

1 違反被疑事件の審査及び処理の状況
 独占禁止法は、事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること、不公正な取引方法を用いること等を禁止しており(第三条、第十九条ほか)、当委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。
 審査事件のうち必要なものについては独占禁止法第四十六条の規定に基づく権限を行使して審査を行い、違反する事実があると認められたときは、排除措置を採るよう勧告する(第四十八条第一項及び第二項)か、若しくは審判手続を開始し(第四十九条第一項)、又は違反行為がなくなってから一年を経過しているため勧告を行うことができないが、課徴金納付命令の対象となる場合には、同命令を行っている(第四十八条の二)。
 なお、相手方が勧告を応諾した場合には勧告審決(第四十八条第四項)、その他の場合は審判手続を経て同意審決(第五十三条の三)又は審判審決(第五十四条)を行っている。相手方が課徴金納付命令に対して不服を申し立て、審判手続の開始の請求をした場合には、審判手続が開始され、同命令は審判手続に移行する(第四十九条第二項及び第三項)。
 また、勧告等の法的措置(注)を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、違反の疑いがあるときは、関係事業者に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導している。
 さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。
 平成十三年度における審査件数(不当廉売事案で迅速処理したものを除く)は、前年度からの繰越しとなっていたもの三十四件、年度内に新規に着手したもの九十件、合計百二十四件であり、このうち本年度内に処理した件数は八十七件である。
 八十七件の内訳は、勧告等の法的措置三十八件、警告十五件、注意二十六件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったもの八件となっている(第1表参照)。
 (注) 勧告等の法的措置とは、「勧告」及び「勧告を行っていない課徴金納付命令」である。

2 勧告等の法的措置
 平成十三年度は三十八件の法的措置(うち一件は勧告を行わない課徴金納付命令)を行った。三十八件のうち、三件については関係人の一部又は全社について審判手続を開始し、その他については勧告審決を行った(第1表参照)。平成十三年度に法的措置を採った三十八件について違反法条をみると、第三条後段(不当な取引制限)違反三十六件、第十九条(不公正な取引方法)違反二件となっている。

3 課徴金
 課徴金制度は、カルテルによる経済的利得を国が徴収し、違反行為者がそれをそのまま保持し得ないようにすることによって、社会的公正を確保すると同時に、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効を確保するため、行政上の措置として設けられているものである。
 平成十三年度においては、二百八十五件、総額二十九億九百七十三万円の課徴金の納付を命じた。なお、平成十三年度に課徴金の納付を命じた二百八十五件のうち、三十七件について審判開始請求があり、これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計七億一千六十八万円の課徴金納付命令が審判手続に移行した。この結果、平成十三年度の課徴金額は、課徴金の納付を命ずる審決一件を含め、二百四十八件、二十一億九千九百五万円となった(第1表参照)。

第4章 審判及び訴訟

1 審判
 平成十三年度における審判件数は、平成十二年度から引き継いだもの二十二件、平成十三年度中に審判開始決定を行ったもの四十四件の合計六十六件(うち、四十件は手続を併合)であり(第1図参照)、平成十三年度中に、五件(うち、審判審決四件、課徴金納付を命ずる審決一件)について審決を行った。平成十三年度末現在において審判手続係属中の事件は、六十一件となっている。

2 訴訟
 平成十三年度当初において係属中の審決取消請求事件は三件であったが、このうち、東京海上火災保険株式会社ほか十七名による審決取消請求事件については、平成十三年十一月三十日、東京高等裁判所で一部認容の判決が下された後、当委員会は、上告受理申立てを行い、平成十三年度末現在最高裁判所に係属中である。社団法人観音寺市三豊郡医師会による審決取消請求事件については、平成十三年四月四日、同医師会が取り下げたことにより終了した。
 平成十三年度中に新たに、安藤造園土木株式会社ほか十一名による審決取消請求事件、更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠による審決取消請求事件、国際地質株式会社による審決取消請求事件が提起され、このため、平成十三年度末現在係属中の審決取消請求事件は五件である。

第5章 規制改革・競争政策に関する調査・提言等

 我が国では、社会的・経済的な理由により、参入、設備、数量、価格等に係る事業活動が政府により規制されていたり、独占禁止法の適用が除外されている産業分野がみられる。このような政府規制は、第二次世界大戦後における我が国経済の発展過程において一定の役割を果たしてきたものと考えられるが、社会的・経済的情勢の変化に伴い、当初の必要性が薄れる一方で、効率的経営や企業家精神の発揮の阻害、競争制限的問題を生じさせてきているものも少なくない。
 また、我が国経済は、現在、極めて厳しい環境下にあるが、これを克服し将来に向けて活力ある発展を遂げていくためには、規制改革とそれを通じた経済システムの改革により、我が国経済の構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立った、民間活力が最大限に発揮される創造的な経済社会へ変革していくことが喫緊の課題となっている。
 政府においても、規制改革を通じた経済の活性化は最重要の課題と位置付け、規制改革推進三か年計画の改定が行われ、平成十四年三月二十九日に「規制改革推進三か年計画(改定)」が閣議決定されたところである。当委員会は、「規制改革推進三か年計画(改定)」に示された政府として行うこととしている規制改革推進のための施策の趣旨を踏まえ、かつ、競争政策の果たすべき役割の重要性にかんがみ、我が国市場における公正かつ自由な競争を促進するため、独占禁止法違反行為に対して、引き続き、厳正に対処するとともに、規制改革をめぐる調査・提言、消費者政策の推進等を積極的に進めることにより、我が国市場における公正かつ自由な競争を確保・促進するよう取り組んでいくこととしており、その具体的な取組方針を平成十四年三月二十九日に公表した。

1 公益事業分野等における規制改革・競争政策に関する調査・提言
(1) 政府規制等と競争政策に関する研究会における検討
 当委員会は、従来、競争政策の観点から政府規制制度について中長期的に見直しを行ってきており、昭和六十三年七月以降、政府規制制度の見直し及び関連分野における競争確保・促進政策の検討を行うため、「政府規制等と競争政策に関する研究会」(座長:岩田規久男・学習院大学教授、平成十二年度までの座長は鶴田俊正・専修大学教授)を開催している。
 同研究会は、平成十一年六月以降、公益事業分野について、電気事業、ガス事業、国内航空旅客運送事業及び電気通信事業をモデルとして、新規参入を促進し、新規参入者と既存事業者との公正な競争条件を確保する観点から検討を行ってきた。平成十三年度においては、五月以降、「通信と放送の融合問題検討ワーキンググループ」(座長:井手秀樹・慶應義塾大学教授)を開催し、通信と放送の融合が進展する状況における競争政策について検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書を平成十三年十二月に公表した。
(2) 電気通信事業分野における競争の促進に関する指針の策定
 平成十三年一月六日に施行された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)において、電気通信事業者間の公正な競争の促進に関する規定が設けられるなど、電気通信事業分野における公正かつ自由な競争を促進していくことが、政府全体としての重要な政策課題の一つとなっている。
 このような状況にかんがみ、当委員会は、総務省と共同して、電気通信事業分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から、独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を作成することとした。平成十三年九月十四日に同指針の原案を作成・公表し、関係各方面から広く意見を求め、これを検討・参酌の上、同年十一月三十日に成案を作成・公表した。
(3) 電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方の策定
 当委員会は、中部電力株式会社が特定規模電気事業者の電力小売事業への部分供給による参入を妨害している疑いで審査を行う中で、電力の部分供給について、現行の「適正な電力取引についての指針」では、具体的に想定していないもの等がみられたことから、本件審査の結果を踏まえ、同指針を補足するものとして、「電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方」を作成し、平成十三年十一月に公表した。
 なお、本件審査については、独占禁止法上の問題は認められなかったことから、打切りとなっている。
(4) 電気事業及びガス事業の制度改革への取組
ア 電気事業
 平成十一年の制度改革(電力小売の部分自由化)に係る電気事業法改正法の附則において、三年後の見直しが規定されており、平成十三年十一月から、経済産業省の電気事業分科会において、@自由化範囲の拡大、A託送の中立性確保等の論点が検討されている。当委員会もこれに出席し、競争促進の観点から意見を提出した。
イ ガス事業
 平成十一年の制度改革(ガス小売の部分自由化範囲の拡大)に係るガス事業法改正法の附則において、三年後の見直しが規定されており、平成十三年一月から、経済産業省のガス市場整備基本問題研究会において、@自由化範囲の拡大、A託送の中立性確保等の論点が検討され、平成十四年四月に報告書が公表された。当委員会もこれに出席し、競争促進の観点から意見を提出した。

2 社会的規制分野等における規制改革・競争政策に関する調査・提言
 従来、医療、福祉、労働等の社会的規制分野では、情報の非対称性、平等なサービスの提供等を理由に、市場原理に馴染まないものとされ、サービスの提供主体、サービスの価格、質等について、数多くの規制が温存されてきた。しかし、今後、少子・高齢化、グローバル化、労働市場環境の変化、国民ニーズの多様化等、経済社会環境の変化が急速に進展していることから、こうした分野においても、できる限り競争原理を導入し、より良いサービスをより安価に提供できるようにすることが強く求められている。このような観点から、総合規制改革会議等において、各種の規制改革等の提言が行われている。
 当委員会としても、競争原理が導入される分野において、公正かつ自由な競争を阻害する行為を独占禁止法に基づき排除していくとともに、社会的規制分野の特性や今後の社会・経済環境の変化を踏まえつつ、可能な限り新規参入の促進及び公正かつ自由な競争条件の確保を図る観点から、これらの分野の規制・制度について検討を行っていく必要がある。
 そのため、当委員会においては、介護分野、医療分野、労働分野、公益法人による基準認証等に関する調査を行ってきており(平成十三年度においては、介護分野及び公益法人による基準認証等に関する調査結果を、いずれも平成十四年三月に公表)、これらの調査結果や総合規制改革会議の提言を踏まえ、介護、医療、労働分野を中心に、公正かつ自由な競争を促進する観点から検討を行うため、平成十四年四月以降、政府規制等と競争政策に関する研究会「社会的規制等ワーキンググループ」(座長:井手秀樹・慶應義塾大学教授)を開催しているところであり、同年十月を目途に取りまとめを行うこととしている。

3 独占禁止法適用除外制度
 独占禁止法は、市場における公正かつ自由な競争を促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし、これを達成するために、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等を禁止している。他方、他の政策目的を達成する観点から、特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定等の適用を除外するという適用除外制度が設けられている。
 現行の適用除外制度の多くは、昭和二十年代から三十年代にかけて、産業の育成・強化、国際競争力強化のための企業経営の安定、合理化等を達成するため、各産業分野において創設されてきた。
 しかし、今日の我が国経済は当時とは大きく変化し、世界経済における地位の向上、企業の経営体質の強化、消費生活の多様化等が進んできており、政府規制と同様に適用除外制度の必要性も変化してきている。
 適用除外制度については、近年、累次の閣議決定等においてその見直しが決定されている。個別法に基づく適用除外制度については、「規制緩和推進計画の改定について」(平成八年三月閣議決定)を受け、二十法律三十五制度について廃止等の措置を採るための「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」が平成九年六月十三日に成立し、同年七月二十日に施行された。その他の適用除外制度についても、「規制緩和推進三か年計画」(平成十年三月三十一日閣議決定)等に基づき検討が行われ、不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止、独占禁止法の適用除外等に関する法律の廃止等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」が平成十一年六月十五日に成立し、同年七月二十三日に施行された。
 さらに、「規制緩和推進三か年計画(改定)」(平成十一年三月三十日閣議決定)においては、独占禁止法第二十一条(自然独占に固有の行為に関する適用除外制度)について引き続き検討することとされたが、第二十一条については規定を削除するとの結論を得たことから、同条の削除を含む「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」が平成十二年五月十二日に成立し、同年六月十九日に施行された。
 これらの措置により、平成七年度末において三十法律八十九制度存在した適用除外制度は、平成十三年度末現在、十六法律二十二制度(再販売価格維持契約制度を含む)まで縮減された。

4 著作物再販適用除外制度の取扱いについて
 商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対してその販売価格を指示し、これを遵守させることは、原則として、不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に該当し、独占禁止法第十九条違反に問われるものであるが、同法第二十三条の規定に基づき、著作物を対象とするものについては、例外的に独占禁止法の適用を除外されている(以下、「著作物再販制度」という)。
 著作物再販制度については、同制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに、国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ、平成十三年三月、以下のとおり取り扱うこととした。
(1) 著作物再販制度については、競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきであると考えるが、同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にあることから、現段階において廃止することは行わず、当面存置することが相当であると考える。
(2) 著作物再販制度の下においても、可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって、消費者利益の向上が図られるよう、関係業界に対し、非再販商品の発行・流通の拡大、各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを要請する。
 平成十三年度においては、現行の著作物再販制度の下で関係業界における運用の弾力化の取組等、著作物の流通についての意見交換を行うため、当委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け、平成十三年十二月、第一回会合を開催した。

第6章 法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止

1 法運用の明確化
 独占禁止法違反行為の未然防止を図るとともに、同法の運用を効果的なものとするためには、同法の目的、規制内容及び運用の方針が国内外における事業者や消費者に十分理解され、それが深められていくことが不可欠である。このような観点から、当委員会は、各種の広報活動を行うとともに、事業者及び事業者団体のどのような行為が独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにした各種のガイドラインを策定・公表し、それに基づいて、個々の具体的なケースについて事業者等からの相談に応じている。
 平成十三年度においては、「酒類の不当廉売に関する考え方の明確化について」を四月に、「リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針」を六月に、「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を十月に、「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を十一月に、「ガソリン等の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」を十二月に、それぞれ公表した。また、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(昭和五十八年)の改訂原案を、平成十四年二月に公表した後、同年四月に改訂・公表した。

2 入札談合の防止への取組
 当委員会は、従来、積極的に入札談合の摘発に努めているほか、平成六年七月に「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表し、入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体例を挙げながら明らかにすることによって入札談合防止の徹底を図っている。
 また、入札談合の未然防止を徹底するためには、発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から、独占禁止法違反の可能性のある行為に関し、発注官庁等から当委員会に対し情報が円滑に提供されるよう、各発注官庁等において、公共入札に関する当委員会との連絡担当官として各省庁の会計課長等が指名されている。
 当委員会は、連絡担当官との連絡・協力体制を一層緊密なものとするため、平成五年度以降、「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」を開催しており、平成十三年度においては、国の本省庁等の連絡担当官会議を九月二十八日に開催するとともに、国の地方支分部局等の連絡担当官会議を全国九か所で開催した。
 さらに、当委員会は、平成六年度以降、中央官庁、地方自治体、公団・事業団等の調達担当者に対する研修を実施しており、平成十三年度においては、全国で三十二回の研修会に対して講師の派遣及び資料の提供等の協力を行った。

3 知的財産権に係る競争政策上の問題の検討
 当委員会では、平成十一年七月に「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」を公表し、特許・ノウハウ等の技術取引に関する独占禁止法上の考え方を示しているところである。しかしながら、ソフトウェアについては、@ソフトウェアの取引が重要性を増していること、Aいわゆるネットワーク効果によって市場が独占されやすいものがあること、B不断にバージョンアップが繰り返されるなど通常の財とは異なる特徴を持つこと等から、当委員会は、企業の事業活動において重要性を増しているソフトウェアの取引について、独占禁止法上の考え方の明確化を図るため、学識経験者及び実務家からなる「ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会」(座長:稗貫俊文・北海道大学教授)を開催し、平成十三年三月、本研究会の報告書を公表した。
 また、当委員会は、技術標準に関し、その形成過程及び確立後における競争政策上の問題点を整理し、基本的な考え方について検討を行うため、平成十三年四月以降、三回にわたり「技術標準と競争政策に関する研究会」(座長:稗貫俊文・北海道大学教授)を開催し、同研究会が取りまとめた報告書を平成十四年七月に公表した。

第7章 価格の同調的引上げに関する報告の徴収

 独占禁止法第十八条の二の規定により、年間国内総供給価額が六百億円超で、かつ、上位三社の市場占拠率の合計が七〇%超という市場構造要件を満たす同種の商品又は役務につき、首位事業者を含む二以上の主要事業者(市場占拠率が五%以上であって、上位五位以内である者をいう)が、取引の基準として用いる価格について、三か月以内に、同一又は近似の額又は率の引上げをしたときは、当委員会は、当該主要事業者に対し、当該価格の引上げ理由について報告を求めることができる。
 この規定の運用については、当委員会は、その運用基準を明らかにするとともに、市場構造要件に該当する品目をあらかじめ調査し、これを運用基準別表に掲げ、当該別表が改定されるまでの間、同別表に掲載された品目について価格の同調的引上げの報告徴収を行うこととしている。
 平成十三年度において、独占禁止法第十八条の二に規定する価格の同調的引上げに該当すると認めてその引上げ理由の報告を徴収したものはなかった。

第8章 経済及び事業活動の実態調査

 当委員会は、競争政策の運営に資するため、経済力集中の実態、主要産業の実態等について調査を行っている。平成十三年度においては、独占的状態調査、企業集団の実態調査(第七次調査)、大規模事業会社とグループ経営に関する実態調査、業務提携と企業間競争に関する実態調査、金融機関と企業との取引慣行に関する調査、国内航空旅客運送事業分野における競争状況等に関する調査、フランチャイズ・システムを活用したコンビニエンスストアにおける本部と加盟店との取引に関する実態調査、介護保険適用サービス分野における競争状況に関する調査等を行った。

第9章 持株会社・株式保有・役員兼任・合併・分割・営業譲受け等

 独占禁止法第四章は、持株会社の設立等の制限(第九条)、大規模会社の株式保有総額の制限(第九条の二)、金融会社の株式保有の制限(第十一条)並びに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式保有・役員兼任・合併・分割・営業譲受け等の禁止並びに届出又は報告義務(第十条及び第十三条から第十六条まで)を規定している。
 なお、商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成十三年法律第八十号)による独占禁止法の改正(平成十三年十月一日施行)により、親子会社関係の基準が株式から議決権に改正され(第九条第三項等)、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成十三年法律第百二十九号)による独占禁止法の改正(平成十四年四月一日施行)により、独占禁止法第十条第二項の報告基準や第十一条の規制基準が株式から議決権に改正されており、また、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成十四年法律第四十七号)により、第九条の二の廃止等の改正が行われている。

1 持株会社
 独占禁止法第九条第一項及び第二項の規定では、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立・転化を禁止しており、持株会社は、持株会社及びその子会社の総資産の額(国内の会社の総資産合計額に限る)の合計が三千億円を超える場合には、@毎事業年度終了後三か月以内に持株会社及び子会社の事業報告書を提出すること(同条第六項)、A持株会社の新設について設立後三十日以内に届け出ること(同条第七項)が義務付けられている。
 平成十三年度において、同条第六項に基づき提出された持株会社等の事業報告書の件数は七件であった。また、同条第七項に基づく持株会社の設立の届出は七件であった。

2 株式保有
(1) 大規模会社の株式保有
 独占禁止法第九条の二第一項の規定に基づき、大規模会社(金融業以外で資本金三百五十億円以上又は純資産千四百億円以上の株式会社〔持株会社たる株式会社を除く〕)は、自己の資本金又は純資産のいずれか多い額を超えて国内の会社の株式を保有してはならないこととされているが、大規模会社が、外国会社等と共同出資により設立した会社の株式をあらかじめ当委員会の認可を受けて保有する場合(同項第七号)又はやむを得ない事情により国内の会社の株式をあらかじめ当委員会の承認を受けて保有する場合(同項第十一号)等におけるこれらの株式の保有については、同項の規定が適用されないこととされている。
 平成十三年度において、当委員会が同項第七号の規定により認可したもの及び同項第十一号の規定により承認したものは、いずれもなかった。
(2) 会社の株式保有
 独占禁止法第十条第二項及び第三項の規定では、総資産が二十億円を超えかつ総資産合計額(当該会社の総資産並びに親会社及び子会社の総資産の合計額。以下同じ)が百億円を超える会社が、総資産が十億円を超える国内の会社又は国内売上高(国内の営業所の売上高及び国内の子会社の売上高の合計額。以下同じ)が十億円を超える外国会社の株式を一〇%、二五%又は五〇%を超えて取得し、又は所有することとなる場合には、この比率を超えることとなった日から三十日以内に、当委員会に株式所有報告書を提出しなければならないこととされている。
 平成十三年度において、当委員会に提出された会社の株式所有報告書の件数は、八百九十八件であり、うち外国会社によるものは五十一件であった。
(3) 金融会社の株式保有
 独占禁止法第十一条第一項の規定に基づき、金融会社は、国内の会社の株式をその発行済株式総数の百分の五(保険業を営む会社にあっては、百分の十)を超えて保有してはならないこととされているが、金融会社があらかじめ当委員会の認可を受けた場合には、同項の規定が適用されないこととされている。
 平成十三年度において、当委員会が認可した金融会社の株式の保有件数は三百五十一件であった。このうち、同条第一項ただし書の規定に基づくものは三百三十三件(銀行に係るもの二百三十三件、証券会社に係るもの三十一件、保険会社に係るもの六十三件、外国会社に係るもの六件)、同条第二項の規定に基づくものは十八件(銀行に係るもの十四件、証券会社に係るもの四件)であった。

3 合併・分割・営業譲受け等
 一定の規模を超える会社が、合併、分割又は営業譲受け等を行う場合には、それぞれ独占禁止法第十五条第二項及び第三項、第十五条の二第二項、第三項及び第五項又は第十六条第二項及び第三項の規定により、当委員会に届け出なければならないこととされている(ただし、親子会社間及び兄弟会社間の合併、分割及び営業譲受け等については届出が不要である)。
 平成十三年度において、届出を受理した件数は、合併の届出は百二十七件、分割の届出は二十件、営業譲受け等の届出は百九十五件であった。
 なお、平成十三年度に届出を受理したもののうち、独占禁止法第十五条第一項、第十五条の二第一項及び第十六条第一項の規定に違反するとして、同法第十七条の二第一項の規定に基づき排除措置を採ったものはなかった。

第10章 不公正な取引方法の指定及び運用

 独占禁止法は、不公正な取引方法の規制として第十九条において事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しているほか、事業者及び事業者団体が不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的契約を締結すること、事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること、会社及び会社以外の者が不公正な取引方法により株式を取得し又は所有すること、会社が不公正な取引方法により役員の兼任を強制すること、会社が不公正な取引方法により合併すること等の行為を禁止している(第六条、第八条第一項、第十条第一項、第十三条第二項、第十四条、第十五条第一項及び第十六条第一項)。
 不公正な取引方法として規制される行為の具体的内容は、当委員会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第二条第九項、第七十二条)。
 不公正な取引方法に関しては、前記規定に違反する事件の処理のほか、不公正な取引方法の指定に関する調査、不公正な取引方法の防止のための指導業務等がある。また、不公正な取引方法に関する事業者からの相談に積極的に応じることにより違反行為の未然防止に努めている。
 「規制改革推進三か年計画(改定)」(平成十四年三月二十九日閣議決定)においては、規制改革とともに競争政策の積極的展開を図るための措置が盛り込まれている。
 当委員会は、この閣議決定等を踏まえて、独占禁止法違反行為に対する厳正な対処、規制改革の推進についての競争政策の観点からの調査・提言等を行っているところである。また、規制改革後の市場における公正な競争秩序の確保が重要となっており、中小事業者等に不当な不利益を与える不当廉売、優越的地位の濫用等の不公正な取引方法や、消費者の適正な選択を妨げる不当表示等に対し、厳正かつ積極的に対処することとしている。

1 不当廉売に対する取組
 小売業における不当廉売規制の考え方については、昭和五十九年に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を公表しているところであるが、規制改革が進展している中で、独占禁止法違反行為の未然防止を図る観点から、酒類の取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成十二年十一月及び平成十三年四月に、ガソリンの取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成十三年十二月に公表した。
 また、平成十三年度において、酒類販売業者一名、石油販売業者二名に対し、その販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し、周辺地域に所在する他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められたことから、それぞれ警告を行った。また、不当廉売につながるおそれがあるとして二千六百二十四件(酒類二千四百九十四件、石油製品八十六件、家電製品三件、その他四十一件)の注意を行った。
 さらに、「電子政府」構築に向けた情報システムの調達に際して実施された官公庁の入札における、極端な安値による応札行為について、平成十三年度において、二件の警告を行った。

2 優越的地位の濫用に対する取組
 金融機関と融資先企業との取引慣行について、優越的地位の濫用の規制の観点から実態調査を行い、調査結果を平成十三年七月に公表した。また、調査結果を踏まえて、全国銀行協会及び全国信用金庫協会に対し、独占禁止法上の考え方を説明し、傘下金融機関に対する周知徹底を要請した。
 また、フランチャイズ・システムを活用したコンビニエンスストアにおける本部と加盟店との取引に関する実態調査を行い、調査結果を平成十三年十月に公表した。そして、昭和五十八年に策定・公表した「フランチャイズ・システムにおける独占禁止法上の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)について、その後のフランチャイズ・システムを活用した事業活動の増大やコンビニエンスストアの実態調査、総合規制改革会議の答申等を踏まえて見直すこととし、平成十四年二月に改訂原案を公表し、関係各方面から広く意見を求め、寄せられた意見を踏まえ、同年四月に改訂フランチャイズ・ガイドラインを策定・公表した。
 さらに、繊維製品に係る取引の適正化に資するため、繊維業界から提出された取引慣行についての具体的事例を参考に、平成十三年九月に「繊維製品に係る取引における優越的地位の濫用行為に関し下請法又は独占禁止法上問題となる事例」を取りまとめ公表するとともに、繊維製品に係る製造、卸、小売における主要な関係団体に対してこの内容を傘下の事業者に周知徹底するよう要請した。
 また、同事例について、全国各地(十会場)において繊維業界向けに講習会を開催し、周知徹底を図った。

第11章 事業者団体

 我が国には事業者団体が多数存在し、政府等の公的機関との連絡、会員間の親睦活動、国内市場の調査、広報宣伝活動等、多彩な活動を行っている。
 これらの活動には競争を活発化させる側面があるものの、事業者団体は事業者としての共通の利益の増進を図ることを目的とする主として同業者の結合体であることから、事業者団体を通じた競争制限的行為が行われやすい側面もある。
 このため、独占禁止法第八条は、事業者団体による競争の実質的な制限、一定の事業分野における事業者の数の制限、構成事業者の機能又は活動の不当な制限、事業者に不公正な取引方法を用いさせること等の行為を禁止するとともに(同条第一項)、事業者団体に対して、その成立、変更及び解散の届出義務を課している(同条第二項〜第四項)。

1 事業者団体の届出状況
 平成十三年度において、独占禁止法第八条第二項から第四項までの規定に基づく事業者団体からの届出件数は、成立届百五十一件、変更届一千四百九十五件、解散届九十七件、合計一千七百四十三件であった。
 届出件数は、平成五年度以降二千件前後で推移していたが、平成十年度に、変更届出の増加に伴い、全体の届出件数が大幅に増加した。その後、千六百件台にまで減少していたが、平成十三年度においては再び増加した。
 また、平成十三年度までに当委員会に対し成立届出をし、かつ、解散届出をしていない事業者団体は、全体で一万五千六百八団体となっている。

2 協同組合の届出状況
 中小企業等協同組合法(以下「中協法」という)に基づいて設立された事業協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」という)は、当該組合が同法第七条第一項各号の一に該当するものである限り、独占禁止法第二十二条第一号の要件を備える組合とみなされ(中協法第七条第一項)、他の所要の要件を充足している場合には、その行為について原則として独占禁止法の適用が除外されている。
 しかしながら、資本の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業者については一億円)を超え、かつ、常時使用する従業員の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業者については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については百人)を超える大規模な事業者を組合員に含む場合には、その協同組合が独占禁止法第二十二条第一号の要件を備えているかどうかを判断する権限が当委員会に与えられており(中協法第七条第二項)、これらの協同組合に対しては、当該組合員が加入している旨を当委員会に届け出る義務が課されている(中協法第七条第三項)。
 平成十三年度における中協法第七条第三項の規定に基づく届出件数は、二百九十七件であった。また、平成十三年度までに当委員会に対し、届出があった組合数は、全体で四千六百四十五組合となっている。

第12章 下請法に関する業務

 下請法では、親事業者が下請事業者に物品の製造又は修理を委託する場合、親事業者に対し下請事業者への発注書面の交付(第三条)並びに下請取引に関する書類の作成及びその二年間の保存(第五条)を義務付けているほか、親事業者が、@委託した給付の受領拒否(第四条第一項第一号)、A下請代金の支払遅延(同項第二号)、B下請代金の減額(同項第三号)、C返品(同項第四号)、D買いたたき(同項第五号)、E物品等の購入強制(同項第六号)、F有償支給原材料等の対価の早期決済(同条第二項第一号)、G割引困難な手形の交付(同項第二号)などの行為を行った場合には、当委員会は、その親事業者に対し、当該行為を取りやめ、下請事業者が被った不利益の原状回復措置等を講じるよう勧告する旨を定めている。
1 違反事件の処理
 下請取引の性格上、下請事業者からの下請法違反被疑事実についての申告が期待できないため、当委員会では、中小企業庁の協力を得て、主として製造業を営む親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するほか、特定の業種・事業者について特別調査を実施することにより、違反行為の発見に努めている。
 これらの調査の結果、違反行為が認められた親事業者に対しては、その行為を取りやめさせるほか、下請事業者が被った不利益の原状回復措置等を講じさせている。
 平成十三年度において、新規に発生した下請法違反被疑事件は一千三百六十七件である。このうち、書面調査により職権探知したものは一千三百八件であり、下請事業者からの申告によるものは五十九件(新規発生件数全体の四・三%)である。
 また、平成十三年度において、当委員会が下請法違反被疑事件を処理した件数は、一千三百五十八件であり、このうち、一千三百十四件(処理件数全体の九六・八%)について違反行為又は違反のおそれのある行為が認められたため、三件について同法第七条の規定に基づき勧告を行い、一千三百十一件について警告の措置を採った(第2表参照)。
 なお、下請法違反を行った親事業者に対しては、違反行為の改善及び違反行為の再発防止のために、社内研修、監査等により社内体制を整備するよう指導した。

2 違反行為の態様別件数
 平成十三年度において措置した下請法違反事件を違反行為態様別にみると、手続規定違反が一千二百三十四件(違反行為態様別件数全体の五六・四%)となっている。このうち、発注時に下請代金の額、支払方法等を記載した書面を交付していない、又は交付していても記載すべき事項が不備のもの(第三条違反)が一千六十七件(手続規定違反件数全体の八六・五%)となっている。
 また、実体規定違反は、九百五十四件(違反行為態様別件数全体の四三・六%)となっており、このうち、下請代金の支払遅延(第四条第一項第二号違反)が三百三十五件(実体規定違反件数全体の三五・一%)、手形期間が百二十日(繊維業の場合は九十日)を超える長期手形等の割引困難な手形の交付(第四条第二項第二号違反)が二百二十五件(同二三・六%)、下請代金の減額(第四条第一項第三号違反)が百六十八件(同一七・六%)となっている(第2表参照)。
 下請代金の支払遅延については、平成十三年度中に、親事業者十九社により総額二千三百三万円の遅延利息が下請事業者百八十二社に支払われており、減額が認められた事件については、親事業者四十七社により総額二億六十六万円が下請事業者四百九十二社に返還されている。

第13章 景品表示法に関する業務

 景品表示法は、不当な顧客の誘引を防止するため、景品類の提供について、必要と認められる場合に、公正取引委員会告示により、景品類の最高額、総額、種類、提供の方法等について制限又は禁止し(第三条)、また、商品又は役務の品質、規格その他の内容又は価格その他の取引条件について一般消費者に誤認される不当な表示を禁止している(第四条)。これらの規定に違反する行為に対し、当委員会は排除命令を、都道府県知事は指示を行い、これを是正させることができる(第六条及び第九条の二)。
 さらに、公正競争規約の制度が設けられており、事業者又は事業者団体は、過大な景品類の提供や不当な表示を防止し、一般消費者への適切な情報提供を行うため、一定の自主的なルールを当委員会の認定を受けて設定することができる(第十条)。

1 違反事件の処理
 平成十三年度において当委員会で違反事件として処理した事件のうち、排除命令を行ったものは、表示関係十件(平成十二年度は三件)であり、警告を行ったものは、景品関係百二十二件、表示関係二百五十七件の合計三百七十九件である(第3表参照)。
 平成十三年度の景品事件の特徴として、懸賞景品事件が過半を占め、自動車、海外旅行等、高額の景品が提供される事件がみられた。また、表示事件の特徴として、食肉の原産国の不当表示事件、健康・環境志向や高齢者向けサービスの分野に係る不当表示事件がみられたほか、依然として不当な二重価格表示事件も多くみられた。

2 排除命令
 平成十三年度においては、不当表示事件として、化粧品販売業者による化粧品の効能・効果の不当表示、中古自動車の走行距離数の不当表示、スーパーマーケットによる不当な二重価格表示、電球形蛍光ランプの明るさの不当表示、食肉の原産国等の不当表示及び観光土産品(菓子類)の原材料等の不当表示について、それぞれ排除命令を行った。

3 公正競争規約制度
 公正競争規約(以下「規約」という)は、事業者又は事業者団体が、景品表示法第十条の規定に基づき、景品類又は表示に関する事項について、当委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保するために自主的に設定するルールである。平成十四年三月末現在における規約の件数は、景品関係四十七件、表示関係七十件、合計百十七件となっている
 また、食肉の不当表示問題を契機として、一般消費者の食品表示への不信感が拡大している状況に対応するため、食肉卸売業者及び小売業者における適正表示確保等の在り方について早急に検討を開始するよう関係団体に要請するとともに、要請を受けた全国食肉公正取引協議会と食肉卸売業者等との合同検討会議などにおける卸売段階における適正表示の自主ルールとしての公正競争規約の設定に向けた事業者団体の適正表示への取組についても積極的に支援を行った。

第14章 消費者取引に関する業務

 近年、消費者ニーズの多様化、経済のサービス化・国際化など、消費者を取り巻く経済社会情勢は大きく変化してきており、また、規制緩和の進展に伴い、消費者への適切な情報提供を推進し、消費者の適正な商品選択を確保していくことが重要な課題となっている。このことから、当委員会は、独占禁止法や景品表示法を厳正に運用し、違反事件の排除に努めるほか、消費者の関心の高い商品や電子商取引などの新しい分野における市場調査を積極的に行うことにより、公正かつ自由な競争を促進し、消費者取引の適正化に努めている。

1 消費者取引の適正化への取組
(1) 消費者問題への取組について
 当委員会は、「二十一世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」提言書において消費者政策の積極的な推進について提言があったことを踏まえ、競争政策の観点から消費者取引問題に積極的に取り組むために、有識者からなる「消費者取引問題研究会」(座長:落合誠一・東京大学大学院教授)を開催し、@競争政策と消費者政策との関係、A消費者による適正な選択の確保の実現、B実効性ある排除措置・有効な消費者支援措置等について検討している。
(2) 飲用海洋深層水の表示について
 海洋深層水を原料とする商品(飲料水、塩、化粧品等)のうち、比較的市場に多く流通している飲用海洋深層水について、表示の状況を調査し、消費者取引の適正化を図る観点から、表示上の問題点と留意事項を整理し、平成十三年十二月公表した。

2 消費者向け電子商取引への対応
 当委員会は、一般家庭におけるインターネットの急速な普及とともに拡大しつつある消費者向け電子商取引について、健全な発展と消費者取引の適正化を図るとの観点から、「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」の策定・公表を行うとともに、インターネット・サーフ・デイの実施、「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項(原案)」の公表を行った。

3 消費者モニター制度
 消費者モニター制度は、独占禁止法や景品表示法の施行その他当委員会の消費者保護の諸施策の的確な運用に資するため、当委員会の依頼する特定の事項の調査、違反被疑事実の報告、消費者としての体験、見聞等の報告その他当委員会の業務に協力を求めるもので、昭和三十九年度から実施されている。
 平成十三年度においては、二回のアンケート調査を実施し、消費者モニターの意見を聴取した。また、特定の商品についての価格調査を実施し、当該商品の全国における小売価格の実態を把握した。さらに、随時、独占禁止法及び景品表示法の違反被疑事実の報告、意見等を求めたほか、表示連絡会、試買検査会等への代表者の参加により、一般消費者としての意見を求めた。

第15章 国際関係業務

1 独占禁止協力協定
 近年、企業活動の国際化の進展に伴い、執行活動の国際化及び競争当局間協力の強化の必要性が高まっている。
 こうした中、平成十一年十月七日に日本国政府と米国政府の間で「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」が締結されたほか、平成十二年七月十九日に欧州共同体(交渉相手は欧州委員会)との間で競争分野における協力に関する協定の実質的要素について相互理解に達し、今後所要の手続を経て、行政取極として締結する予定である。
 また、我が国は、我が国初の自由貿易協定である、「日・シンガポール新時代経済連携協定」に平成十四年一月十三日に署名した。本協定においては、競争政策分野として、貿易・投資の円滑化に寄与するため、両国が反競争的行為に対応するとともに、両国間の協力を推進していく旨が盛り込まれている。

2 二国間意見交換
 当委員会は、我が国と経済的交流が特に活発である国・地域の競争当局との間で競争政策に関する意見交換を定期的に行っている。
 平成十三年度においては、フランス、イタリア、ロシア、ドイツ、米国及びイギリスの競争当局と意見交換を行った。

3 二国間協議への対応
 日米間の二国間協議に関しては、平成十三年六月三十日に「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ第四回共同現状報告書」が公表され、競争政策に関する事項として、公正取引委員会の独立性、独占禁止法の執行強化、入札談合の排除、規制緩和が進行している産業における競争の促進、公正取引委員会のリソース増強、競争促進のための実態調査が明記された。
 また、同日、両国政府は、新たな経済関係の枠組みである「成長のための日米経済パートナーシップ」の立上げを発表し、競争政策に関しては、同パートナーシップの下の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」において議論が行われることとされた。
 米国政府は、平成十三年十月十四日、「日米規制改革及び競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」を日本政府に提出した。
 同要望書においては、競争政策に関係する要望として、公正取引委員会の独立性と職員数、公正取引委員会の審査能力、独占禁止法執行行為の効果、談合の排除、競争と規制改革に係る取組が挙げられている。当委員会は、作業部会等の場において、これらの要望に対する公正取引委員会の取組等を説明した。
 日EU規制改革対話等その他の二国間協議について、当委員会は、競争政策の観点から、必要に応じ対応している。

4 多国間関係
(1) OECD
ア 競争委員会
 競争委員会(COMP:Competition Committee)では本会合のほか、その下に各種の作業部会を設けて、随時会合を行っている。本会合では、加盟各国の競争政策に関する年次報告が行われているほか、各作業部会の報告書の検討、各加盟国に対する規制制度改革国別審査、その時々の重要問題について討議が行われている。
 平成十三年度においては、三回の本会合が行われた。
イ 消費者政策委員会
 消費者政策委員会(CCP:Committee on Consumer Policy)は、通例年二回本会合を開催するほか、各種の作業部会等を設けて随時会合を行っている。電子商取引等を議題として、平成十三年九月十七日から十八日にかけて第六十一回本会合が、平成十四年三月十三日から十四日にかけて第六十二回本会合が開催された。
(2) WTO
 競争政策が貿易に与える影響及び貿易政策が競争に与える影響の双方の観点から検討を行う貿易と競争政策の相互作用に関する作業部会は、平成十三年九月までに十六回(平成十三年度中には二回)開催された。
 平成十三年十一月、カタル・ドーハにて第四回WTO閣僚会議が行われた。競争に関しては、第五回閣僚会議(二〇〇三年秋予定)において、交渉の方法について明確な合意を図った上で、その後に交渉を開始することとし、それまでの間、貿易と競争の相互作用に関する作業部会において、競争政策に関するコア・プリンシプル(共通原則)の内容等交渉すべき要素について検討するとともに、開発途上国における制度の強化に対する支援の強化を行っていくとの方向が示された。
(3) APEC
ア 個別行動計画(IAP)及び共同行動計画(CAP)の改定
 平成十三年度も、「個別行動計画」の改定を行い、APECメンバーエコノミーに対し我が国の競争法・競争政策に係る最新の情報を提供した。
イ 競争政策・規制緩和ワークショップ
 平成十三年度においては、 中国のシンセンにて、「市場機能の強化」、「大阪行動指針の見直し」、「競争に関する活動の報告」等を議題に議論が行われた。
(4) UNCTAD
 平成十三年度は、七月に「競争法・政策に関する政府間専門家会合」が開催され、各国の競争法・競争政策の進展状況について情報交換を行うとともに、競争当局間の国際協力の必要性や、競争政策と知的財産権の関係などについて議論した。

5 海外の競争当局等に対する技術協力
 近年、開発途上国や市場経済移行国においては、市場経済における競争法・競争政策の重要性が認識されるに従って、既存の競争法制を強化する動きや、新たに競争法制を導入する動きが活発になっている。当委員会は、これら諸国の競争当局等に対し、研修の実施等による技術協力を行っている。

第16章 広報及び相談に関する業務等

 平成十三年度においては、独占禁止法違反に対する勧告・警告・課徴金納付命令、景品表示法違反に対する排除命令、各種研究会報告書の公表、事業者・事業者団体の活動に関する相談事例等二百三十九件について新聞発表を行った。同時に公正取引委員会ホームページ(http://www.jftc.go. jp)にも掲載した。
 また、英文パンフレット「How THE JAPAN FAIR TRADE COMMISSION Ensures A Robust Economy」の作成・配布及び公正取引委員会英文ホームページの更新を行った。そのほか、種々の調査報告書等について在日大使館等からの問い合わせに応じ、説明等を行った。

1 地方有識者との懇談会
 本懇談会は、地方有識者と当委員会の委員長又は委員等との懇談及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広い意見、要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進に資するため、毎年開催しているものである。
 平成十三年度においては、十月二日及び同月四日に、全国九都市(旭川、山形、水戸、松本、富山、大津、岡山、高松及び福岡)において、「二十一世紀における公正取引委員会が担うべき役割」をテーマとする講演会を開催するとともに、当委員会の最近の活動状況等について各地の主要経済団体等の有識者と当委員会の委員との意見交換を行った。

2 独占禁止政策協力委員会議
 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策の運営に資するため、平成十一年度から、独占禁止法や当委員会に対する意見・要望の聴取等を行うための独占禁止政策協力委員制度を設置しており、平成十三年度においては、平成十三年五月三十日から六月一日にかけて全国九都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡及び那覇)において独占禁止政策協力委員会議を開催した。

3 独占禁止法及び関係法令に関する相談
 独占禁止法、下請法、景品表示法その他関係法令に関する一般の質問に対しては、文書又は口頭をもって回答している。また、ホームページ上でも意見等の受付けを行っている。
 また、平成十二年度から申告の処理に関する疑問、苦情等の申出を受け付けるため、官房総務課(地方事務所・支所においては総務課、沖縄総合事務局公正取引室にあっては総務係)に申出受付窓口を設置しており、平成十三年度においても公正取引委員会が指名する委員等をもって構成する審理会において、当該処理が適正であったかどうか点検した。

4 電子政府の実現に向けた取組
 IT化の進展を踏まえて、政府全体で電子政府の実現に向けた取組を行っているところ、当委員会においても、独占禁止法に基づく申請・届出等について、インターネット等を利用したオンライン化を推進し、事業者の負担の軽減及び行政の効率化を図るための取組を行っている。具体的には、当委員会の所管する申請・届出等手続について平成十四年度中にオンライン化を実現することとし、平成十三年度においては、そのための制度の検討及び所要のシステムの検討・一部開発を行った。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査平成十四年九月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十四年九月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 九月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万千八百六十八円、前年同月比一・〇%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十七万八千五百十七円、前年同月比〇・八%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万千百九十三円、前年同月比〇・九%減、所定外給与は一万七千三百二十四円、前年同月比は一・五%増であった。
 また、特別に支払われた給与は三千三百五十一円、前年同月比は一八・三%減であった。
 実質賃金は、〇・一%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に不動産業三・八%増、製造業一・一%増、金融・保険業〇・四%増、運輸・通信業〇・一%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%減、サービス業一・四%減、建設業一・八%減、卸売・小売業,飲食店一・九%減、鉱業九・一%減であった。

◇労働時間の動き

 九月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十一・八時間、前年同月比〇・六%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十二・三時間、前年同月比〇・九%減、所定外労働時間は九・五時間、前年同月比三・八%増、所定外労働時間の季節調整値の前月比は〇・七%減であった。
 製造業の所定外労働時間は十四・二時間、前年同月比一二・七%増、季節調整値の前月比は〇・一%減であった。

◇雇用の動き

 九月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・七%減、常用労働者のうち一般労働者では一・九%減、パートタイム労働者では三・四%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業二・〇%増、不動産業〇・六%増であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・三%減、建設業〇・七%減、卸売・小売業,飲食店〇・九%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・八%減、金融・保険業二・三%減、製造業四・三%減、鉱業八・七%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者四・二%減、パートタイム労働者四・七%減、卸売・小売業,飲食店では一般労働者五・五%減、パートタイム労働者五・七%増、サービス業では一般労働者〇・八%増、パートタイム労働者六・九%増であった。










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八月の雇用・失業の動向


―労働力調査平成十四年八月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十四年八月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百七十一万人、完全失業者は三百六十一万人、非労働力人口は四千百八十七万人と、前年同月に比べそれぞれ七十二万人(一・一%)減、二十五万人(七・四%)増、八十七万人(二・一%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百七十一万人と、前年同月に比べ七十二万人(一・一%)の減少となり、十七か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百六十三万人、女性は二千六百八万人で、前年同月と比べると、男性は四十八万人(一・三%)減、女性は二十四万人(〇・九%)減となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百六十三万人、自営業主・家族従業者は九百八十五万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は九万人(〇・二%)減、自営業主・家族従業者は五十八万人減となり、雇用者は十二か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百二十六万人と、六万人(〇・一%)減、十二か月連続の減少
 ・常 雇…四千六百万人と、四十二万人(〇・九%)減、十三か月連続の減少
 ・臨時雇…六百四万人と、四十万人(七・一%)増、八か月連続の増加
 ・日 雇…百二十二万人と、四万人(三・二%)減、二か月連続の減少

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百八十八万人と、三十三万人(一〇・三%)減
○建設業…六百二十万人と、六万人(一・〇%)減、二十一か月連続の減少
○製造業…一千二百二十三万人と、七十一万人(五・五%)減、十六か月連続の減少
○運輸・通信業…四百五万人と、二十一万人(四・九%)減、七か月連続の減少
○卸売・小売業,飲食店…一千四百十五万人と、四十五万人(三・一%)減、九か月連続の減少
○サービス業…一千八百十七万人と、六十万人(三・四%)増、三十か月連続の増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四万人と、八万人(一・六%)減
○製造業…一千百三十万人と、六十七万人(五・六%)減
○運輸・通信業…三百八十八万人と、十四万人(三・五%)減
○卸売・小売業,飲食店…一千百七十二万人と、二十四万人(二・〇%)減
○サービス業…一千五百八十八万人と、六十一万人(四・〇%)増

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百十三万人と、十五万人(〇・九%)減、三か月ぶりの減少
○三十〜四百九十九人規模…一千八百四万人と、二十三万人(一・三%)増、二か月連続の増加
○五百人以上規模…一千百九十万人と、五十九万人(四・七%)減、十六か月連続の減少

(5) 就業時間

 八月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百四十九万人と、三十四万人(二・三%)減少
 ・うち一〜三十時間未満…一千六十七万人と、十八万人(一・七%)減少
○三十五時間以上…四千七百六十三万人と、五十五万人(一・一%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千七百八十五万人と、三十六万人(二・一%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・五時間で、前年同月と比べ同数となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百六十一万人と、前年同月に比べ二十五万人(七・四%)増となり、十七か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百二十一万人、女性は百四十万人で、前年同月に比べ、男性は十八万人(八・九%)の増加、女性は六万人(四・五%)の増加となっている。
 また、世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十三万人と、五万人増加
○世帯主の配偶者…四十三万人と、四万人減少
○その他の家族…百七十二万人と、二十七万人増加
○単身世帯…五十二万人と、三万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・四%と前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・七%、女性は五・一%と、前月に比べ男性は〇・二ポイントの上昇、女性は〇・一ポイントの低下となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・四%と、前年同月に比べ〇・四ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・五%、女性は五・一%と、男性は〇・四ポイントの上昇、女性は〇・三ポイントの上昇となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十三万人(一万人増)、一一・三%(〇・四ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十五万人(八万人増)、六・〇%(一・〇ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十九万人(同数)、三・七%(同率)
○四十五〜五十四歳…四十一万人(八万人増)、四・五%(一・〇ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十四万人(一万人増)、六・六%(同率)
 ・五十五〜五十九歳…二十万人(二万人増)、五・〇%(〇・三ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十四万人(一万人減)、八・九%(〇・四ポイント低下)
○六十五歳以上…七万人(二万人減)、二・二%(〇・六ポイント低下)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十一万人(一万人増)、九・〇%(〇・七ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十五万人(四万人増)、七・四%(〇・六ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(同数)、四・四%(同率)
○四十五〜五十四歳…二十四万人(三万人増)、三・六%(〇・六ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十六万人(同数)、三・八%(〇・一ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…九万人(同数)、三・五%(〇・一ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…七万人(同数)、四・二%(〇・二ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・一%(〇・六ポイント上昇)

(5) 求職理由別完全失業者数

 求職理由別完全失業者数は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十四万人
○勤め先都合…百十一万人
○自己都合…百二十九万人
○学卒未就職…十七万人
○新たに収入が必要…三十六万人
○その他…二十九万人













    <12月18日号の主な予定>

 ▽平成十三年度体力・運動能力調査の結果………文部科学省 

 ▽法人企業動向調査(九月)………………………内 閣 府 

 ▽天皇誕生日一般参賀について……………………宮 内 庁 




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