▽家計収支(十月)……………………………総 務 省
平成14年版
第1部 障害者対策に関する新長期計画の十年を振り返って
はじめに
政府は、昭和五十五年三月、内閣総理大臣を本部長とする国際障害者年推進本部を設置し、今後の障害者対策について検討を重ね、昭和五十七年三月に「障害者対策に関する長期計画」として発表した。昭和五十六年の「国際障害者年」とそれに続く「国連・障害者の十年」において、「障害者対策に関する長期計画」に基づく施策の推進等により、保健医療、福祉、教育、雇用等の分野において着実な進展がみられた。
一方、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、平成四年の第四十八回総会において国連「障害者施策に関する世界行動計画」を一層推進するための域内協力の強化を目的とする「アジア太平洋障害者の十年」を決議した。
平成五年一月、「国連・障害者の十年」終了後の長期的な障害者対策の在り方を検討していた中央心身障害者対策協議会は、「『国連・障害者の十年』以降の障害者対策の在り方について」を取りまとめた。政府は、障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等に対応する観点から、この意見書を踏まえ平成五年三月、十年間にわたる施策の基本的方向を示す「障害者対策に関する新長期計画」を策定した。
今回の白書では、平成五年の新長期計画策定以降のおよそ十年間における障害者施策の総合的な取組について概説することとした。
1 障害者対策に関する新長期計画の策定
○ 「国連・障害者の十年」の終了後も障害者対策を一層発展させるために、平成五年からおよそ十年間の施策の基本方向と具体的方策を明らかにした「障害者対策に関する新長期計画」(以下「新長期計画」という)を平成五年三月に策定した。
○ 新長期計画では、「リハビリテーション」と「ノーマライゼーション」を理念に掲げ、「完全参加と平等」の目標に向けて「障害者の主体性・自主性の確立」「すべての人の参加によるすべての人のための平等な社会づくり」そして「障害の重度化及び障害者の高齢化への対応」等を重点施策に掲げている。これらの理念や重点施策は障害者プランをはじめとするその後の障害者施策の基本となっている。
○ 新長期計画では、「障害者を取り巻く社会環境には、交通機関、建築物等における物理的な障壁、資格制限等による制度的な障壁、点字や手話サービスの欠如による文化・情報面の障壁、障害者を庇護されるべき存在ととらえる等の意識上の障壁」の「四つの障壁」があると指摘しており、それらの障壁の除去に向け各種施策を計画的に推進することとしている。
(1) 物理的な障壁
・ 障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加していく上で、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくことが重要であるとの認識に立ち、総合的かつ計画的なまちづくりを積極的に支援してきた。
・ 官庁施設のバリアフリー化推進については、昭和四十八年度以降、肢体不自由者用トイレの設置、スロープの設置等所要の措置を講じてきた。
・ 不特定多数の者が利用する建築物については、平成六年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(いわゆるハートビル法)が制定された。
・ 公共交通機関に関しても、平成十二年に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(いわゆる交通バリアフリー法)が制定された。
・ 物理的な空間・環境におけるバリアフリーへの取組は着実に進んでいるといえる。
(2) 制度的な障壁
・ 各種の資格試験や免許制度では欠格事由が設けられており、障害のあることを理由に資格・免許等の付与を制限したり、特定の業務への従事等を制限・禁止していたものも少なくなかった。
・ 平成十一年八月に、障害者施策推進本部において、平成十四年度までに対象となる六十三制度すべての見直しを終了することを決定した。
・ 平成十三年六月、障害者施策推進本部において、「障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」の申合せが行われた。
(3) 文化・情報面での障壁
・ 高度情報化社会の進展する中、発信される情報は視覚及び聴覚で得るものがほとんどであり、視覚・聴覚障害者にとって情報を入手することは非常に困難な状況にある。
・ こういった文化・情報面の障壁の除去は、テープ・点字書籍等による情報の提供、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」に基づく字幕番組等への助成などによって推進している。
(4) 意識上の障壁
・ 国民に広く障害のある人についての関心と理解を深めるため、障害者基本法に定められた障害者の日(十二月九日)等の集中的な広報啓発活動を国、地方公共団体及び民間団体を挙げて実施するとともに、学校教育においても交流教育の実施等社会福祉についての正しい理解を深めるための指導等を行っている。
・ 平成十三年度に実施された「障害者に関する世論調査」では、障害のある人が身近で普通に生活しているのが当たり前であるというノーマライゼーションの考え方を肯定する者の割合が八〇%を超える結果が出ている一方、ノーマライゼーションという言葉を聞いたことがあると答えた者の割合が二一・七%と、低い周知度にとどまっている。
2 障害者基本法の制定
○ 「障害者基本法」が平成五年に制定され、精神障害者が身体障害者や知的障害者と並んで法の対象に位置付けられた。
○ 施策の総合化、計画的推進を図るため、国に障害者のための施策に関する基本計画の策定が義務付けられ、既に策定されていた「新長期計画」が、国の「障害者基本計画」とされた。
○ 都道府県や市町村に対しても、障害者計画策定の努力義務を課した。
○ 平成十三年度末現在、計画を策定した市町村は全体の八割強に達する一方、小規模市町村において立ち遅れがみられる。
3 障害者プランの策定
○ 平成七年十二月、内閣総理大臣を本部長とする障害者対策推進本部において「障害者プラン−ノーマライゼーション七か年戦略」が決定され、新長期計画の具体化を図るための重点施策実施計画と位置付けられた。
○ 障害者プランの特色は、第一に、数値目標の設定等施策の具体的目標を内容に盛り込んだ点が挙げられる。
○ 第二は、次の七つの視点から総合的、横断的に取り組み、関係省庁が連携協力して障害のある人のための施策を効果的に推進していくという点である。
・地域で共に生活するために
・社会的自立を促進するために
・バリアフリー化を促進するために
・生活の質(QOL)の向上を目指して
・安全な暮らしを確保するために
・心のバリアを取り除くために
・我が国にふさわしい国際協力・国際交流を
○ 第三は、地域社会の中で、施策の効果的・効率的な推進を図っていくために、障害者関係施設の総合的利用の促進等を図るとの考え方を盛り込んだ点である。
○ 第四は、進ちょく状況の定期的なフォローアップと社会経済状況の変化等に対応したプランの見直しを明示している点である。
○ 障害者プランは、分野によっては一部立ち遅れがみられるものの、全般的にはおおむね順調に進められている。
4 障害者の自立及び社会参加支援
○ 平成五年十二月、国連は「障害者の機会均等化に関する標準規則」(以下「標準規則」という)を採択した。この標準規則の目的は、障害のある人がそれぞれの社会の市民として、その他の人々と同じ権利と義務を行使できることを確保することである。
○ 同年制定された障害者基本法にも、「障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する」という条文が法律の目的として盛り込まれ、この目的に向けて、障害のある人の自立と社会参加を支援するための施策を推進してきた。
5 精神障害者施策の推進
○ 従来、精神障害者に対しては、「精神衛生法」という保健医療対策の枠組みの中で施策が行われ、昭和四十五年制定の「心身障害者対策基本法」(障害者基本法の前身)においても、医療を必要とする精神障害者は、心身障害者に含まれないという解釈がなされてきた。
○ 国際障害者年以降のノーマライゼーションの理念の普及などを踏まえ、昭和六十二年に公布された精神保健法では福祉的施策としての社会復帰施設の設置が盛り込まれた。
○ 平成五年六月には、「精神病院から社会復帰施設へ、そして社会復帰施設から地域社会へ」とのテーマの下、精神保健法の改正が行われた。
○ 平成五年十二月には、「障害者基本法」で、精神障害者が障害者として明確に位置付けられた。
○ 平成七年には、法律名を「精神保健法」から「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)に改め、精神障害者保健福祉手帳制度の創設など精神保健と精神障害者福祉を総合的に実施していくための制度が整えられた。
○ 平成十一年には、精神障害者の人権に配慮した医療の確保、精神障害者の保健福祉の充実等を目的として精神保健福祉法を改正し、精神医療審査会の機能強化、社会復帰施設・在宅福祉事業の拡充を図った。
6 障害者保健福祉施策の見直し
○ 平成十一年一月の「今後の障害保健福祉施策の在り方について」の意見具申を踏まえ、社会福祉事業法等と併せて身体障害者福祉法等の法律を改正する「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」が、第百四十七回通常国会に提出され可決・成立した。この改正において、
@ 障害者福祉サービスの利用方法を現在の措置制度から、市町村が利用者に対し支援費を支給する方式(利用制度)への変更
A 知的障害者及び在宅の障害児福祉に関する福祉事務の都道府県から市町村への委譲
B 身体障害者生活訓練等事業、知的障害者デイサービス事業など障害者の地域生活を支援するための事業の法定化
などを行うこととなった。
7 障害者の権利擁護
○ 障害のある人に係る権利についての国際的な動向は、昭和四十六年に国連総会決議で「精神薄弱者の権利宣言」、昭和五十年には「障害者の権利宣言」がなされ、各国において障害者問題への取組が積極的に行われることとなった。我が国においても、障害や疾病等を理由とする不当な差別を禁止する人権擁護法案が第百五十四回国会(常会)に提出された。
○ 我が国の社会福祉制度は、措置制度から契約制度へ変わりつつある。その中で、利用者と事業者の対等な関係を構築し、利用者が自らサービスを選択・決定し、自己責任の下にサービスを利用できるよう、障害のある人に関する制度についても見直しや新たな制度の展開が求められている。
○ 判断能力が不十分であるため、福祉サービスを十分に活用できないといった問題や、身の回りのことや金銭管理ができないなど地域での生活が困難な事例がみられてきたため、平成十一年度から「地域福祉権利擁護事業」が創設された。
○ 平成十二年四月からは、判断能力の不十分な成年者等の法定後見制度として後見・保佐・補助制度がスタートした。
今後の動向等
○ 新長期計画の策定により平成五年以降、様々な分野において各種施策が着実に進展した。しかし、障害のある人が地域社会で自立し、社会参加していくには、依然として様々な障壁がある。今後ともこれらの改善に向けたバリアフリー化の推進が必要となる。
○ 平成十三年一月六日の中央省庁再編を機に、内閣に内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官を副本部長、他のすべての国務大臣を本部員とする「障害者施策推進本部」が設置され、関連施策の総合的かつ効果的な推進を図ることとした。
○ 平成十四年二月、障害者施策推進本部において、平成十五年度を初年度とする障害者基本計画を策定するとともに、新障害者基本計画の前期重点施策実施計画として、現行「障害者プラン」に替わる新たな障害者プランを策定することを決定した。策定に当たって、障害のある人等関係者の意見を広く聴取するため、平成十四年六月から内閣官房長官の主宰による「新しい障害者基本計画に関する懇談会」を開催している。
○ 平成十四年度は、「アジア太平洋障害者の十年」の最終年にも当たることから、平成十四年五月に開催されたESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)総会において、我が国の主唱により、「アジア太平洋障害者の十年」を更に十年延長する決議が採択された。これを受けて、平成十四年十月には、滋賀県大津市でESCAPハイレベル政府間会合が開催され、「アジア太平洋障害者の十年」の評価がなされるとともに、新しい「十年」の行動計画である「びわこミレニアム・フレームワーク」が採択された。
第2部 平成十三年度を中心とした障害者施策の取組
平成十三年度を中心に障害者のために講じた施策を、「相互の理解と交流」「社会へ向けた自立の基盤づくり」「日々の暮らしの基盤づくり」「住みよい環境の基盤づくり」の四つの視点に立ってまとめている。
※ 講じた主要な施策等は、平成十三年度の新規施策等を中心に記述している。
T 障害者施策の総合的取組
○ 平成十四年二月の障害者施策推進本部において、平成十五年からの新しい「障害者基本計画」及び「障害者プラン」の策定を進めることが了承された。
○ 障害者に係る欠格条項の見直しが推進された。
U 相互の理解と交流(施策を推進する上で前提となる「心の壁」の除去のための啓発広報等)
1 啓発広報等
○ 「障害者の日」「障害者週間」等における各種行事や学校教育における指導、さらには、地域住民等のボランティア活動の振興等を通じ、障害のある人に対する国民の理解を促進している。
【講じた主な施策等】
@ 平成十三年十二月九日の「障害者の日・記念の集い」において、「心の輪を広げる体験作文・ポスター」の内閣総理大臣表彰、講演、歌唱等を実施した。
A 平成十三年度、市民活動団体の評価に関する調査や、NPOを支援・育成する中間支援組織の現状と課題に関する調査を実施した。
B 平成十三年度「全国ボランティアフェスティバル」を神奈川県で開催した。
2 国際協力
○ 機材供与等の無償資金協力、研修員の受入れや専門家派遣等の技術協力、民間レベルにおける草の根交流等に対する支援を行っている。
【講じた主な施策等】
@ 平成十三年度、草の根無償資金協力によりインドにおける障害者のための教育・職業訓練施設建設計画等六十五件の援助を実施した。
A 平成十三年度、国際協力事業団(JICA)を通じて、障害者リハビリテーション指導者コース等十一の研修コースを実施した。
B 平成十三年十一月から五年間の予定で、中国においてリハビリテーション専門職養成プロジェクトを実施している。
C NGO事業補助金により、九か国において八団体、十事業の障害者関連事業に対し補助金を交付している。
V 社会へ向けた自立の基盤づくり(障害のある人が社会的に自立するために必要な教育・育成、雇用・就業等)
1 障害のある子の教育・育成
○ 学校教育においては、障害のある児童生徒等が、その能力を最大限に伸ばし、自立し社会参加するための基盤を培うため、一人ひとりの障害の種類、程度等に応じた教育を行っている。
○ 健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、障害の程度に応じ適切な療育を実施するため、地域、福祉施設における体制を整備している。
【講じた主な施策等】
@ 国が定める盲・聾(ろう)・養護学校への就学の基準について医学や科学技術等の進歩等を踏まえて見直すとともに、就学事務について手続の弾力化を図るため、平成十四年四月に学校教育法施行令の改正を行った。
A 平成十三年度から、従来、特殊教育の対象となっていた子どもに加え、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等を含め、特別な教育的支援が必要な子どもへの教育的対応等についての調査研究協力者会議を設置して検討を行い、平成十四年十月に中間報告を取りまとめた。
B 障害児通園(デイサービス)事業、短期入所(ショートステイ)事業、訪問介護(ホームヘルプサービス)事業等を実施している。
2 雇用・就労の促進施策
○ 「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、民間企業、国、地方公共団体に対し、一定の割合以上の身体障害者又は知的障害者の雇用を義務付けている(第1表参照)。
○ 法定雇用率の達成を目指し、未達成事業主等に対する達成指導等、雇用率達成事業主に対する障害者雇用調整金等の支給を行っている。
○ 重度身体障害者又は重度知的障害者に対する第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成、一般の就業が困難な者に関する授産施設等の整備や、日帰り介護(デイサービス事業)の実施等を行った。
○ 障害者職業センター等における職業リハビリテーション技術の開発及び普及、職業リハビリテーションサービスの提供等を行っている。
【講じた主な施策等】
○ ジョブコーチ(職場適応援助者)の援助技術及び養成方法の検討のため、平成十二年度及び十三年度にパイロット事業を実施している。
3 障害のある人の生活を豊かにするためのスポーツ、レクリエーション及び文化活動の振興
○ 障害のある人のスポーツを振興するため、障害者スポーツ支援基金による、障害者スポーツ指導者の養成や国際大会への派遣、各障害者スポーツ競技団体が行う全国大会の開催等への助成や、スポーツ振興基金による、スポーツ団体への助成等を実施している。
【講じた主な施策等】
@ 平成十四年三月にソルトレークシティ(アメリカ)で開催されたパラリンピック冬季競技大会に過去最大の総勢七十六人の選手団を派遣した。
A 平成十三年度は、以下の障害者スポーツ大会が開催された(第2表参照)。
なお、平成十三年度においては、身体障害者と知的障害者の全国大会を統合して全国障害者スポーツ大会とし、その第一回大会が宮城県において開催された。
W 日々の暮らしの基盤づくり(障害のある人が日常生活の質を確保するために必要な保健・医療、福祉等)
1 生活安定のための施策
○ 障害のある人に対する所得保障として、年金制度において障害基礎年金や障害厚生(共済)年金を支給するとともに、特に重度の障害のある人を対象とする特別障害者手当を支給している。
2 保健・医療施策
○ 障害の予防、早期発見のため、妊産婦に対する健康診査、先天性代謝異常等検査、乳幼児健康診査等を実施するとともに、周産期医療の確保のため、周産期集中治療管理室等の整備や、国立大学附属病院における周産母子センターの整備等を推進している。
○ 医療・リハビリテーションについては、身体障害を軽減もしくは除去するための更生医療及び育成医療の給付を行うほか、国立大学附属病院におけるリハビリテーション部等の整備、国立病院・療養所における進行性筋ジストロフィー児(者)等の入院治療を行った。
○ 精神保健福祉施策としては、措置入院患者に対する医療費公費負担や、在宅の精神障害者に対する精神科デイケア事業等を実施するとともに、精神保健福祉相談員による精神保健福祉相談、保健婦による訪問指導を実施している。
【講じた主な施策等】
○ 平成十四年三月、国立成育医療センターが発足した。
3 日常生活支援のための福祉施策
○ 障害のある人の地域における自立した生活を支援するため、訪問介護員(ホームヘルパー)の派遣及び短期入所(ショートステイ)事業を実施している。
○ 整備の遅れている授産施設、身体障害者療護施設及び知的障害者更生施設の重点的整備を進めるとともに、施設の有する様々な機能を地域に開放する観点から、施設の地域利用を推進している。
【講じた主な施策等】
○ 平成十三年度、情報通信技術の利用機会や活用能力の格差是正の観点から、「障害者情報バリアフリー化支援事業」を創設した。
4 専門職の確保
○ 社会福祉士、介護福祉士等の養成、各種リハビリテーション専門職員の養成訓練等福祉分野における人材を養成している。
○ 医師、看護師を含めた医療分野の人材の育成、資質の向上のため、リハビリテーションに関する教育の充実を図っている。
5 福祉機器の研究開発・普及、事業者の標準化
○ 福祉用具産業の健全な発展を支援するため、研究開発の推進、標準化や評価基盤の整備等産業の基盤整備を推進している。
○ 経済産業省や国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所において研究開発を実施している。また、NEDOや(財)テクノエイド協会等においても研究開発に対する助成等を実施している。
○ 福祉用具の公的給付として、補装具(義肢、装具、車いす等)と日常生活用具(浴槽、特殊便器、点字タイプライター等)の給付等を実施している。
○ 情報バリアフリー型通信・放送システムなど、障害のある人等のための情報通信システムの実用化に資する研究開発を実施している。
【講じた主な施策等】
@ 平成十三年度から、障害のある人等が自由に市街地を移動できるように支援するためのシステムの研究開発を開始し、平成十三年度は、研究のためのインフラを整備した。
A 平成十三年、「視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列」等についてJIS(日本工業規格)を制定した。
X 住みよい環境の基盤づくり(障害のある人が仕事や日常の外出等を自由にできるようにするために必要なまちづくり、住宅確保、移動・交通、情報提供、防犯・防災対策等)
1 障害のある人の住みよいまちづくりのための施策
○ 障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加できるよう、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくため、計画的な福祉のまちづくりや幅の広い歩道やエレベーター等の整備、障害のある人等の利用に配慮した建築物の整備等を図っている。
○ 平成十二年十一月に施行された高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)に基づき「移動の円滑化の促進に関する基本方針」を策定し、バリアフリー化を総合的かつ計画的に推進している。
○ 農山漁村地域において広幅員の歩道の整備等を実施している。
○ 共生のまち推進事業の活用等により、地方公共団体が行うユニバーサルデザインによるまちづくりに対して支援を行っている。
○ 都市計画における総合的な福祉のまちづくりの取組として、障害のある人に配慮した道路、公園等の都市施設の整備や土地区画整理事業や市街地再開発事業などの面的な都市整備を着実に進めるとともに、中心市街地等における社会福祉施設の適正かつ計画的な立地を推進している。
○ 建築物が障害のある人等に配慮したものとなるよう、官庁施設のバリアフリー化を進めるとともに民間建築物については融資等により誘導を行っている。
【講じた主な施策等】
○ 平成十三年度から、市街地再開発事業等において、ユニバーサルデザインに配慮した共同便所を補助対象に追加するなど補助を拡充している。
○ 平成十三年度を初年度とする第八期住宅建設五箇年計画において、身体機能の低下や障害が生じた場合にも、そのまま住み続けることができる住宅の供給等を図ることとした。
○ 設計、設備の面で障害のある人に配慮した住宅の供給を行うほか、公営住宅、公団賃貸住宅において障害者世帯に対する募集時の当選率の優遇等を実施している。また、公営住宅等の建替や市街地再開発事業等において住宅と社会福祉施設等との合築・併設を推進している。
○ 住宅金融公庫等は、障害のある人等に配慮した住宅等について、最優遇金利を適用しているほか、障害のある人等が同居する比較的規模の大きな住宅については融資額の増額を行っている。
○ 公園の園路の幅員と勾配の工夫、縁石の切下げ、手すりの設置、ゆったりトイレの整備等障害のある人の利用に配慮した公園施設を整備したほか、有料国営公園の身体に障害のある人等に対する入園料金等の免除を実施している。また、障害のある人等に配慮した堤防・護岸の緩傾斜化等の河川・海岸整備、港湾緑地におけるスロープ等の設置を行った。
○ 障害のある人が安全かつ身体的負担の少ない方法で公共交通機関を利用して移動できるよう公共交通機関のバリアフリー化を推進している。また、平成十三年八月、交通バリアフリー法に定められた旅客施設を対象に、ユニバーサルデザインの考え方に配慮した「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」を策定した。
○ 公共交通ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の設置や障害のある人の利用しやすい車両の導入を推進するため、税制や補助・融資制度による支援等を講じている。
○ 車いす利用者や高齢者など様々な人が安心して通行できるよう、ユニバーサルデザインの概念を導入したガイドラインを策定し、幅の広い歩道等を整備するとともに、既設の歩道等の段差・傾斜・勾配の改善や立体横断施設へのエレベーター・エスカレーター等の設置等によりバリアフリー化を推進している。
○ 住居系地区等におけるコミュニティ・ゾーンの整備、障害のある人等の利用に配慮した信号機等の設置、わかりやすい案内標識の整備、サービスエリア等への障害者用トイレの設置等を行うとともに、携帯情報端末を通じて安全な歩行に必要な情報を提供するPICS(歩行者等支援情報通信システム)等、最先端の情報技術を用いたITSの研究開発の推進を行っている。
○ 「オムニバスタウン構想」を推進し、障害のある人等の交通弱者に配慮したノンステップバス、リフト付きバス等の導入を促進している。
【講じた主な施策等】
@ 平成十三年、「公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」を策定し、対象車両に旅客船等を追加した。
A 平成十三年度には、スロープ付タクシー及び低床式路面電車について税制による支援を講じた。
B 道路交通法の改正(平成十三年六月二十日公布)において、警察官等による身体障害のある歩行者等の保護、身体障害者標識を表示している普通自動車に対する幅寄せなどの禁止が規定された。
C 平成十二年度にトイレ、観光案内所、休憩施設等の観光地のバリアフリー化を実施し、平成十三年度にバリアフリー観光空間整備費補助制度を創設した。
2 障害のある人が安心して生活を送るための施策
○ 情報の収集や情報伝達に大きな社会的不利のある視・聴覚に障害のある人等が、迅速かつ的確に情報を収集し、情報伝達手段を確保できるようにするため、点訳奉仕員、朗読奉仕員、手話奉仕員等の派遣事業や福祉事務所への手話通訳の設置など、各種施策を進めるとともに、字幕放送等放送事業者の積極的な取組を支援している。
○ 視覚障害者の情報取得を支援するため、新聞情報等を対象とした点字情報ネットワークを構築し、テープ・点字書籍等による食生活関連情報の提供等を行うとともに、国政選挙において、点字による候補者名簿等の備付け、政見放送への手話通訳の導入等、障害のある人の投票への配慮を行った。
○ 郵便事業において障害者用各種郵便物に対する郵便料金の減免等、郵便貯金事業においては「郵便貯金の取扱内容の点字通知」や「点字表示のあるATMの設置」等、簡易保険事業においては点字による印字や点字の読み取りができる「点字情報総合装置」の配備、「加入者福祉施設内の点字表示」等各種サービスを実施している。
○ 障害のある人の防犯対策として、FAX一一〇番の導入やFAXネットワークの構築、手話のできる警察官の交番等への配置等を行った。また、警察部内では、手話講習会や障害のある人に対する応接、介護に関する講習会を開催するなど、職員の研修やボランティア活動への参加を支援している。
○ 障害のある人の防災対策として、地方公共団体による防災まちづくり事業や緊急防災基盤整備事業により支援等を行っている。
○ 障害のある人等に対する土砂災害対策等を重点的に実施するとともに、洪水ハザードマップ等によるきめ細かな災害関連情報の提供を推進している。
【講じた主な施策等】
@ 平成十三年四月、新たな住宅防火基本方針を策定した。消防機関等が、訪問介護員(ホームヘルパー)など福祉関係者等と連携し、訪問診断などの防火指導の推進等、それぞれの役割に応じた防火対策を推進した。
A 土砂災害特別警戒区域における災害弱者関連施設等の開発行為を許可制とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」を平成十三年四月に施行した。
◇全世帯の家計
前年同期比でみると、全世帯の消費支出は、平成十二年十〜十二月期、十三年一〜三月期に二期連続の実質増加となった後、四〜六月期以降四期連続の実質減少となったが、十四年四〜六月期、七〜九月期は二期連続の実質増加となった。
また、一人当たりの消費支出は九万五千六百一円で、前年同期に比べ実質三・四%の増加となった。
◇勤労者世帯の家計
前年同期比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年七〜九月期、十〜十二月期に二期連続の実質減少となった後、十四年一〜三月期は実質増加となったが、四〜六月期、七〜九月期は二期連続の実質減少となった。
また、消費支出は、平成十三年一〜三月期に実質増加となった後、四〜六月期以降四期連続の実質減少となったが、十四年四〜六月期、七〜九月期は二期連続の実質増加となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万六千七百二十五円となり、前年同期に比べ、名目二・三%の増加、実質三・二%の増加となった。
◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)
季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前期に比べ実質一・〇%の増加となった。
勤労者世帯の消費支出は前期に比べ実質一・〇%の増加となった。
◇就業状態別の人口
平成十四年十月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百五十五万人、完全失業者は三百六十二万人、非労働力人口は四千二百二十四万人と、前年同月に比べそれぞれ五十万人(〇・八%)減、十万人(二・八%)増、八十万人(一・九%)増となっている。
◇就業者
(1) 就業者
就業者数は六千三百五十五万人と、前年同月に比べ五十万人(〇・八%)の減少となり、十九か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百四十一万人、女性は二千六百十四万人で、前年同月と比べると、男性は二十七万人(〇・七%)減、女性は二十三万人(〇・九%)減となっている。
(2) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百三十六万人、自営業主・家族従業者は九百九十五万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は二十五万人(〇・五%)減、自営業主・家族従業者は十五万人減となり、雇用者は十四か月連続の減少となっている。
雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百九十七万人と、二十七万人(〇・五%)減、十四か月連続の減少
・常 雇…四千五百六十一万人と、六十六万人(一・四%)減、十五か月連続の減少
・臨時雇…六百十七万人と、四十四万人(七・七%)増、十か月連続の増加
・日 雇…百十九万人と、六万人(四・八%)減、二か月ぶりの減少
(3) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百七十一万人と、二十八万人(九・四%)減
○建設業…六百四十二万人と、十三万人(二・〇%)減、二十三か月連続の減少
○製造業…一千百九十九万人と、五十八万人(四・六%)減、十八か月連続の減少
○運輸・通信業…四百二万人と、一万人(〇・二%)増、九か月ぶりの増加
○卸売・小売業,飲食店…一千四百五十三万人と、十二万人(〇・八%)増、十一か月ぶりの増加
○サービス業…一千八百十四万人と、十三万人(〇・七%)増、三十二か月連続の増加
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百二十五万人と、七万人(一・三%)減
○製造業…一千百六万人と、五十四万人(四・七%)減
○運輸・通信業…三百七十九万人と、二万人(〇・五%)減
○卸売・小売業,飲食店…一千二百万人と、七万人(〇・六%)増
○サービス業…一千五百七十万人と、二万人(〇・一%)増
(4) 従業者規模
企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百四十五万人と、九万人(〇・五%)増、三か月ぶりの増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百九十二万人と、四万人(〇・二%)減、四か月ぶりの減少
○五百人以上規模…一千百九十四万人と、三十一万人(二・五%)減、十八か月連続の減少
(5) 就業時間
十月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百四十一万人と、八万人(〇・六%)減少
・うち一〜三十時間未満…一千五十九万人と、七万人(〇・七%)減少
○三十五時間以上…四千七百九十一万人と、四十三万人(〇・九%)減少
・うち四十九時間以上…一千八百九十二万人と、百五十五万人(八・九%)増加
また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・九時間で、前年同月と比べ〇・三時間の増加となっている。
◇完全失業者
(1) 完全失業者数
完全失業者数は三百六十二万人と、前年同月に比べ十万人(二・八%)増となり、十九か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百二十五万人、女性は百三十七万人で、前年同月に比べ、男性は五万人(二・三%)の増加、女性は五万人(三・八%)の増加となっている。
また、世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十八万人と、一万人減少
○世帯主の配偶者…四十九万人と、七万人増加
○その他の家族…百六十万人と、三万人増加
○単身世帯…五十五万人と、一万人増加
(2) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・五%と前月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・九%、女性は五・一%と、前月に比べ男性は〇・一ポイントの上昇、女性は〇・二ポイントの上昇となっている。
男女計の完全失業率は平成十三年十二月と並んで過去最高、男性の完全失業率は過去最高となっている。
(3) 完全失業率(原数値)
完全失業率は五・四%と、前年同月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・七%、女性は五・〇%と、男性は〇・二ポイントの上昇、女性は〇・二ポイントの上昇となっている。
(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…三十五万人(四万人減)、九・九%(〇・八ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…五十七万人(三万人増)、六・二%(〇・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…三十五万人(六万人増)、四・四%(〇・六ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十九万人(一万人増)、四・三%(〇・三ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十九万人(一万人増)、七・一%(〇・二ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…十八万人(同数)、四・五%(〇・二ポイント低下)
・六十〜六十四歳…三十万人(同数)、一〇・五%(〇・四ポイント低下)
○六十五歳以上…十万人(一万人減)、三・二%(〇・三ポイント低下)
[女]
○十五〜二十四歳…二十五万人(四万人減)、七・六%(〇・八ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十七万人(八万人増)、七・五%(一・二ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十四万人(一万人増)、四・五%(〇・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十四万人(二万人増)、三・六%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十六万人(二万人減)、三・八%(〇・五ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…九万人(同数)、三・五%(〇・一ポイント低下)
・六十〜六十四歳…七万人(二万人減)、四・一%(一・三ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・一%(同率)
(5) 求職理由別完全失業者数
求職理由別完全失業者数は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十六万人
○勤め先都合…百十八万人
○自己都合…百二十三万人
○学卒未就職…十五万人
○新たに収入が必要…四十三万人
○その他…二十六万人
―詳細結果平成十四年七〜九月平均の概要―
◇就業者
(1) 雇用形態別の構成
役員を除く雇用者四千九百七十七万人のうち、正規の職員・従業員が三千四百九十五万人、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員等の非正規の職員・従業員が一千四百八十三万人となっている。
役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は二九・八%となっており、これを男女別にみると、男性は一五・三%、女性は四九・九%と、女性の割合が高くなっている。
(2) 転職者
転職者(就業者のうち過去一年間に離職を経験した者)のうち、転職で収入が減った者は四一・八%、収入が増えた者は三〇・三%となっている。
これを年齢階級別にみると、男性では十五〜二十四歳で収入増の割合が高く、三十五〜四十四歳では収入増と収入減の割合が同率となっているが、そのほかのすべての年齢階級では収入減の割合が収入増の割合を上回っている。
また、女性では十五〜二十四歳を除くすべての年齢階級で収入減の割合が収入増の割合を上回っている。
◇完全失業者
(1) 失業期間
失業期間別に完全失業者の割合をみると、「三か月未満」が三二・九%と最も高く、次いで「一年以上」が二九・五%となっている。
(2) 仕事につけない理由
完全失業者について、仕事につけない理由の割合を年齢階級別にみると、四十五歳以上の各年齢階級では「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が最も高い割合となっており、特に五十五歳以上では五四・四%を占めている。
一方、四十四歳以下の各年齢階級では「希望する種類・内容の仕事がない」の割合が最も高くなっている。
◇非労働力人口
非労働力人口四千二百万人のうち、就業希望者は五百二十万人となっており、これを非求職理由別にみると、「家事・育児のため仕事があっても続けられそうにない」の割合が二七・五%と最も高くなっている。
T 調査の概要
労働経済動向調査は、生産、販売活動及びそれに伴う雇用、労働時間などの現状と今後の短期的見通しなどを把握するため、全国の建設業、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業及びサービス業に属する常用労働者三十人以上を雇用する民営事業所五千三百五十八事業所を対象として、年四回実施(通信調査方式)しているもので、平成十四年十一月一日現在の調査結果である。
(注) 平成十一年二月の調査から、調査対象産業を従来の五産業に金融・保険業、不動産業を追加し七産業とした。
U 結果の要旨
一 生産・売上、所定外労働時間、雇用
(1) 生産・売上
《製造業の実績は引き続きプラス、先行きはマイナス》
生産・売上判断D.I.(平成十四年七〜九月期実績)は、製造業でプラス三ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス四ポイント及びサービス業でマイナス六ポイントとなり、製造業でプラス幅が縮小する一方、サービス業でマイナス幅が縮小した。先行きは、十四年十〜十二月期実績見込、十五年一〜三月期見込は製造業、卸売・小売業,飲食店及びサービス業の三産業でマイナスとなっている(第1表参照)。
(2) 所定外労働時間
《製造業の実績は引き続きプラス、先行きはマイナス》
所定外労働時間判断D.I.(十四年七〜九月期実績)は、製造業でプラス二ポイント、卸売・小売業,飲食店でプラス六ポイント及びサービス業でマイナス二ポイントとなり、卸売・小売業,飲食店でプラスに転じ、製造業でプラス幅が縮小する一方、サービス業でマイナス幅が縮小した。先行きは、十四年十〜十二月期実績見込及び十五年一〜三月期見込は三産業でマイナスとなっている(第1表参照)。
(3) 常用雇用
《三産業とも実績は引き続きマイナス》
常用雇用判断D.I.(十四年七〜九月期実績)は、製造業でマイナス一七ポイント、卸売・小売業,飲食店でマイナス一五ポイント及びサービス業でマイナス九ポイントと三産業ともその幅は縮小した。先行きは、十四年十〜十二月期実績見込は三産業でマイナスとなり、十五年一〜三月期見込は製造業及び卸売・小売業,飲食店でマイナスとなっている(第1表参照)。
(4) パートタイム雇用
《製造業の実績でマイナス幅は縮小》
パートタイム雇用判断D.I.(十四年七〜九月期実績)は、製造業でマイナス四ポイント、卸売・小売業,飲食店で〇ポイント及びサービス業でプラス二ポイントと製造業でマイナス幅は縮小し、サービス業でプラス幅は拡大した。先行きは、十四年十〜十二月期実績見込は製造業及びサービス業でマイナスとなり、十五年一〜三月期見込は製造業及び卸売・小売業,飲食店でマイナスとなっている(第1表参照)。
二 労働者の過不足状況
(1) 常用労働者
《過剰感は引き続き弱まる》
十一月現在の常用労働者過不足判断D.I.により、雇用過剰感の動向をみると、調査産業計ではマイナス五ポイントと前期(マイナス九ポイント)に引き続き過剰感が弱まっている。産業別にみると、建設業、製造業及び卸売・小売業,飲食店では過剰感が弱まり、運輸・通信業では不足感が強まっている。なお、不動産業では過剰感が強まっている(第1図参照)。
(2) パートタイム労働者
《不足感強まる》
十一月現在のパートタイム労働者過不足判断D.I.により、雇用過剰感の動向をみると、調査産業計ではプラス八ポイントと前期(プラス五ポイント)と比べると不足感が強まっている。産業別にみると建設業では過剰感が弱まり、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店及び金融・保険業では不足感が強まっている。
三 雇用調整
(1) 実施割合
《引き続き低下》
雇用調整を実施した事業所の割合(十四年七〜九月期実績)は、調査産業計で二五%と前期と比べると二ポイント低下した。産業別にみると、建設業、金融・保険業及びサービス業を除く産業で低下した(第2図参照)。
(2) 実施方法
雇用調整の実施方法は、調査産業計では残業規制一三%の割合が高く、次いで配置転換八%及び出向五%となっている。
四 中途採用
《二期連続で昨年同期に比べ増加》
「中途採用あり」とした事業所割合(十四年七〜九月期実績)は、調査産業計で四七%と前年同期(十三年七〜九月期実績)と比べると三ポイントの上昇となっている。
五 事業の見直しと雇用面での対応
(1) 事業の見直し実施状況
《実施した事業所割合は増加》
過去一年間に事業の見直しを実施した事業所割合は調査産業計で三四%となっている。前年同期と比べると五ポイントの上昇となった。産業別では製造業が四一%と高く、前年同期と比べると建設業、製造業、運輸・通信業及びサービス業で増加している。また、今後一年間に事業の見直しを実施する予定の事業所割合は調査産業計で二五%となっている。
(2) 事業の見直し方法
《組織再編成による管理事務部門の縮小、不採算事業部門の縮小が増加》
過去一年間に事業の見直しを実施した事業所における見直し方法は、「組織再編成による管理事務部門の縮小」及び「不採算事業部門の縮小」各一〇%の割合が高く、次いで「新規部門(市場)への進出」六%となっている。前年同期と比べると「組織再編成による管理事務部門の縮小」で二ポイント、「不採算事業部門の縮小」及び「事業所の地方展開」でそれぞれ一ポイント増加し、その他の方法別では横ばい又は一ポイントの減少となっている。また、今後一年間の実施予定事業所における見直し方法については、調査産業計では「不採算事業部門の縮小」七%の割合となっている。
(3) 事業の見直しに伴う雇用面での対応方法
《希望退職者の募集、解雇等による従業員の削減が増加》
過去一年間に事業の見直しを実施した事業所における雇用面での対応方法は、「配置転換」一四%の割合が高く、次いで「希望退職者の募集、解雇等による従業員の削減」八%、「新規学卒採用の抑制」、「賃金制度の見直し」及び「出向」がそれぞれ七%となっている。前年同期と比べると「希望退職者の募集、解雇等による従業員の削減」で三ポイント、「配置転換」及び「賃金制度の見直し」で二ポイントの増加となっている。また、今後一年間の実施予定事業所における雇用面での対応方法については、「配置転換」一〇%と高い割合になっている。
ユニバーサルデザイン
高齢者や障害者の障壁を取り除く「バリアフリー」から一歩進んで、最近は「ユニバーサルデザイン」という言葉がよく聞かれます。「ユニバーサル」とは「普遍的な、すべての」という意味。ユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、体格などにかかわらず、施設や製品、環境などが、すべての人にとって使いやすく考えられた、人にやさしいデザインのことです。
ユニバーサルデザインには、@だれでも公平に利用できること、A使ううえで自由度が高いこと、B使い方が簡単ですぐ分かること、C必要な情報がすぐに理解できること、Dうっかりミスや危険につながらないデザインであること、E無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること、Fアクセスしやすいスペースと大きさを確保すること、という「七原則」があります。ノンステップバスや建物内の広く段差のない通路から日用品まで、私たちの身近なところにユニバーサルデザインを取り入れたものが増えています。
◇全世帯の家計
前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十四年五月に実質減少となった後、六月以降四か月連続の実質増加となったが、十月は同水準となった。
また、一人当たりの消費支出は九万五千八百九十六円で、前年同月に比べ実質一・五%の増加となった。
◇勤労者世帯の家計
前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年十二月に実質減少となった後、十四年一月以降三か月連続の実質増加となったが、四月以降七か月連続の実質減少となった。
また、消費支出は、平成十四年八月に実質減少となった後、九月は実質増加となったが、十月は実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万四千二百四十八円となり、前年同月に比べ、名目〇・一%の増加、実質一・一%の増加となった。
◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)
季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質二・三%の減少となった。
勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質二・七%の減少となった。
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