官報資料版 平成15年2月5日




                  ▽平成十四年賃金構造基本統計調査結果の概況 ―初任給―………厚生労働省

                  ▽景気予測調査(十一月調査)…………………………………………財 務 省

                  ▽月例経済報告(一月)…………………………………………………内 閣 府

                  ▽消費者物価指数の動向(十二月)……………………………………総 務 省











平成14年版


賃金構造基本統計調査結果の概況


―初任給―


厚生労働省


T 調査の概要

 この調査は、我が国の賃金構造の実態を明らかにするため、毎年六月分の賃金等について実施しているものであり、調査対象は、日本標準産業分類による九大産業(鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業及びサービス業)に属する五人以上の常用労働者を雇用する民営事業所及び十人以上の常用労働者を雇用する公営事業所から抽出した約七万一千事業所である。

 本概況は、このうち十人以上の常用労働者を雇用する民営事業所約五万五千事業所のうち、有効回答を得た約四万三千事業所の中で新規学卒者(平成十四年三月に中学、高校、高専・短大又は大学を卒業した者)を採用した約一万四千事業所の初任給の結果をとりまとめたものである。

 (注) 本調査の初任給は、通常の勤務をした新規学卒者の所定内賃金(所定内労働時間に対して支払われる賃金であって、基本給のほか諸手当が含まれているが、超過労働給与額は含まれていない)から通勤手当を除いたものであり、平成十四年六月末現在で初任給として確定したものである。
 なお、新規学卒者で平成十四年六月末現在実際に雇用されていた者のうち、本年度の初任給が確定した新規学卒者の割合は九五・三%であった。未確定(ベースアップが決まっていない等のため確定していないもの)の四・七%については、今回の集計対象外となっている。

U 結果の概要

1 学歴別にみた初任給

(1) 平成十四年の初任給を高卒以上の学歴別にみると、男女計は大卒十九万五千百円(対前年増減率〇・〇%)、高専・短大卒十六万六千円(同〇・一%増)、高卒十五万四千円(同〇・〇%)となっており、各学歴ともおおむね前年と同水準になっている。
 男女別にみると、男は大卒十九万八千五百円(同〇・一%増)、高専・短大卒十六万九千五百円(同〇・五%減)、高卒十五万七千五百円(同〇・四%減)、女は大卒十八万八千八百円(同〇・一%増)、高専・短大卒十六万四千三百円(同〇・三%増)、高卒十四万八千八百円(同〇・一%増)となっており、男は大卒を除き、高専・短大卒、高卒ともに前年を下回り、女は各学歴ともおおむね前年と同水準であり、高専・短大卒は、他の学歴よりわずかながら増加幅が大きい(第1表第2表第1図参照)。
(2) 初任給の学歴間格差(大卒=一〇〇)を男女別にみると、男は高専・短大卒が八五、高卒が七九、女は高専・短大卒が八七、高卒が七九となっている(第2図参照)。

2 企業規模別にみた初任給

(1) 企業規模別の初任給をみると、男女計は、大卒では大企業(常用労働者一千人以上)と中企業(同百〜九百九十九人)が十九万円台、小企業(同十〜九十九人)が十八万円台、高専・短大卒では各規模とも十六万円台、高卒では各規模とも十五万円台となっている。
 これを男女別にみると、大卒では、男は大企業が二十万円台、中企業と小企業が十九万円台、女は各規模とも十八万円台、高専・短大卒では、男は大企業が十七万円台、中企業と小企業が十六万円台、女は各規模とも十六万円台、高卒では、男は各規模とも十五万円台、女は大企業が十五万円台、中企業と小企業は十四万円台となっている(第3表参照)。
(2) 初任給の企業規模間格差(大企業=一〇〇)をみると、男女ともに各学歴とも規模間で大きな格差はみられない。また、女の大卒及び高専・短大卒では中企業が大企業を上回る傾向が続いている(第4表参照)。

3 産業別にみた初任給

(1) 主要産業別の初任給をみると、男女計は大卒と高専・短大卒では製造業が高く、それぞれ二十万円、十六万九千二百円、高卒では建設業が高く、十六万三千五百円となっている。一方、低いのは、各学歴とも金融・保険業で、大卒十八万三千二百円、高専・短大卒十五万一千九百円、高卒十四万一千円となっている。
 これを男女別に特徴をみると、大卒では、男女とも製造業が、それぞれ二十万一千三百円、十九万五千円と高く、金融・保険業が、それぞれ十八万七千九百円、十七万九千円と低くなっている。高専・短大卒の女では、卸売・小売業,飲食店が十六万六千四百円と高く、金融・保険業が十五万一千五百円と低くなっている。また、高卒の男では、建設業が十六万四千四百円と高くなっている(第5表参照)。
(2) 初任給の産業間格差(製造業=一〇〇)をみると、男では、大卒よりも高卒で産業間格差が大きく、女でもわずかながらその傾向がみられる(第6表参照)。

4 初任給の分布

 初任給の分布をみると、男女計は、大卒では十九万、二十万円台で五〇・一%、高専・短大卒では十五万〜十七万円台で六五・一%、高卒では十五万、十六万円台で五二・三%となっている。
 これを男女別にみると、大卒では、男は十九万、二十万円台に五六・九%と集中し、女は十七万〜二十万円台に七四・八%と広く分布している。高専・短大卒では、男女とも十五万〜十七万円台に、それぞれ六七・三%、六四・〇%、高卒では、男女とも十五万円台に、それぞれ三〇・三%、二九・七%と集中している。このような状況から、男より女のほうがやや散らばりが大きいといえる(第7表参照)。





言葉の履歴書


かまくら

 「かまくらや 子らの白息 湯気(ゆげ)めきて」は俳人香西(こうざい)照雄の作。「小正月」と呼ばれる旧暦一月十五日の農村行事はいろいろありますが、よく知られているのは秋田県横手地方に伝わる「かまくら」で、現在では二月に行われています。
 子どもたちが雪の洞(ほら)を作って奥に水神を祭り、十四日の夜から火を囲んで餅を焼いて食べたり、甘酒を温めて飲んだりします。十五日の朝になると洞の前で火を焚(た)き、畑を荒らす害鳥を追い払って豊作を願う「鳥追い歌」を歌う祭りです。
 「かまくら」の語源は神庫(かみくら)とする説がありますが、「かまくらの鳥追いは、頭切って塩つけて……」という鳥追い歌の文句から、かまくら祭りの名が生まれたとされています。
 東北や信州で行われる「鳥追い」も「かまくら」に似た小正月の行事。川端康成の小説『雪国』に出てくるのは越後湯沢の鳥追い祭りで「子供等は雪の堂の屋根に上って押し合い揉(も)み合い鳥追いの歌を歌う」とあります。この二つは、同系の民俗行事であることが分かります。




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景気予測調査


―平成十四年十一月調査―


財 務 省


<はじめに>

 財務省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百二十万社のうち約一万二千社を対象として、四半期ごとに財務省景気予測調査を実施している。
 以下は、平成十四年十一月に実施した第七十九回調査結果の概要である。今回の調査では一万八百八十三社を対象とし、八千八百五十八社(回収率八一・三%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

◇景況第1図第1表参照

 平成十四年十〜十二月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
 先行き十五年一〜三月期を全産業でみると、大企業は「上昇」超に転じる見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。
 先行き十五年四〜六月期を全産業でみると、大企業は引き続き「上昇」超の見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。

◇売上高第2表参照

 平成十四年度下期の売上高は、全産業合計で横ばい見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収見込み、中小企業は減収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、窯業・土石製品、船舶製造・修理などが減収となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具などが増収となり、全体では〇・九%の増収見込みとなっている。
 非製造業では、卸売・小売、不動産などが増収となるものの、建設、事業所サービスなどが減収となり、全体では〇・四%の減収見込みとなっている。
 十四年度通期の売上高は、全産業合計で前年比一・二%の減収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は減収見込み、中堅企業は増収見込みとなっている。
 業種別にみると、製造業では、輸送用機械器具、精密機械器具などが増収となるものの、電気機械器具、衣服・その他の繊維製品などが減収となり、全体では〇・七%の減収見込みとなっている。
 非製造業では、映画・娯楽、不動産などが増収となるものの、建設、卸売・小売などが減収となり、全体では一・四%の減収見込みとなっている。

◇経常損益第3表参照

 平成十四年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比一八・三%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、食料品が減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では三六・五%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、電気、ガス・水道、その他のサービスなどが減益となるものの、不動産、卸売・小売などが増益となり、全体では一〇・五%の増益見込みとなっている。
 十四年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一一・六%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益見込みとなっている。
 業種別にみると、製造業では、出版・印刷、非鉄金属などが減益となるものの、電気機械器具、衣服・その他の繊維製品などが増益となり、全体では三一・七%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、建設、事業所サービスなどが減益となるものの、卸売・小売、運輸・通信などが増益となり、全体では三・六%の増益見込みとなっている。

◇中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における平成十四年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で二・八%減、除く場合(以下「除く」という)で〇・五%増の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で七・六%ポイントの上方修正、「除く」で五・一%ポイントの上方修正となっている。
 十四年十二月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は「過大」超となっている。
 先行きについては、全産業でみると「過大」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売製(商)品在庫

 平成十四年十二月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超で推移するものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

◇中小企業の仕入れ価格

 平成十四年十〜十二月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業は「上昇」超、卸売業、小売業は「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業は「上昇」超で推移するものの、卸売業、小売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売価格

 平成十四年十〜十二月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇雇用第5表参照

 平成十四年十二月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 十四年十〜十二月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「増加」超となっている。
 先行きについては、大企業、中堅企業は「増加」超で推移する見通し、中小企業は十五年一〜三月期に「減少」超に転じる見通しとなっている。
 十四年十〜十二月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇企業金融第6表参照

 平成十四年十〜十二月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「きびしい」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 十四年十〜十二月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「悪化」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 十四年十二月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
 業種別にみると、製造業では、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」、中小企業は「国内販売体制、営業力の強化」の順となっている。非製造業では、いずれの規模においても「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。




歳時記


雪まろげ

 「雪まろげ」とは、雪を丸く固め雪の上を転がしていき、かたまりを大きくしていく遊びのことです。「雪ころがし」「雪丸め」などともいいます。
 君火をたけ よきもの見せん 雪まろげ
                   芭蕉
 暗くなって、雪まろげをしていた子どもたちがみんな引き上げたあとに、いくつもの雪の玉が残っているのを指して、「よきもの見せん」と言ったのでしょうか。雪まろげにはしゃいだ子どもたちの去ったあとの静けさが、伝わってくるような句です。
 雪まろげして作ったものを二段に重ねて、木炭やたどんで目や口を付けると「雪だるま」になります。このほか、糸の先に木炭などを付けて雪を付着させて、雪のかたまりを大きくしていく「雪釣」という昔からの遊びもあります。
 雪を丸く軽めに固めて、雪合戦をするのも、雪国の子どもたちの楽しみの一つです。
 靴紐(ひも)を むすぶ間もくる 雪つぶて
                     中村汀女
 子どもたちが、いたずらっぽい表情で、雪が降っている寒いなかでも元気に遊んでいる様子が伝わってきます。




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月例経済報告(一月)


―景気は、引き続き一部に持ち直しの動きがみられるものの、このところ弱含んでいる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、引き続き一部に持ち直しの動きがみられるものの、このところ弱含んでいる。
 ・企業収益は改善しており、設備投資は下げ止まりつつある。
 ・雇用情勢は、求人が増加傾向にあるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 ・個人消費は、横ばいで推移している。
 ・輸出は横ばいとなっている一方、生産は弱含んでいる。
 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、世界経済の先行き懸念や我が国の株価の低迷などにより、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(政策の基本的態度)

 政府は、「改革加速のための総合対応策」を着実に実施している。また、十二月十九日に「平成十五年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議了解したほか、「改革加速プログラム」に基づき編成することとした平成十四年度補正予算を同月二十日に、平成十五年度一般会計予算(概算)を同月二十四日に閣議決定した。これらを一体として切れ目なく運用し、構造改革を更に加速することにより、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指す。
 デフレ克服及び金融システム安定化に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、横ばいで推移している。
 個人消費は、収入面での弱い動きが続くなど家計を取り巻く環境が厳しく推移する中で、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移している。全体的な基調に変化がみられるわけではないものの、これまでみられた一部の業種や支出項目における増加の動きがこのところ緩やかになっている。
 需要側の動向をみると、引き続き底堅さがみられる。消費総合指数は三か月前と比べ増加しているものの、前月比では二か月連続で減少している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、一時的な要因もあり、前月に比べて減少した。また、食料が前年を下回るなど、基礎的な支出項目の増加基調が緩やかになっている。
 販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。チェーンストア販売額は、食料品は引き続き前年を上回ったものの、全体では前年を下回った。百貨店販売額は、気温の低下から衣料品の減少幅が縮小したものの、全体では前年を下回った。新車販売台数は、小型乗用車が引き続き大幅に増加したことから前年を上回ったものの、増加幅は縮小している。家電販売金額は、テレビ等が引き続き増加したものの、パソコンの減少幅が拡大したことから、全体では前年を下回った。旅行は、国内旅行は前年を下回ったものの、海外旅行は米国における同時多発テロ事件の影響もあって昨年大きく減少した反動から、前年を大きく上回った。
 消費者マインドは、持ち直しの動きがみられたが、足元ではやや弱い動きとなっている。

◇設備投資は、下げ止まりつつある。
 設備投資は、平成十三年に入って以降減少が続いてきたが、生産の持ち直し及び企業収益の改善を受けてこのところ下げ止まりつつある。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成十三年一〜三月期以降減少が続いてきたが、このところ次第に減少幅が縮小してきている。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、横ばい基調が続いている。なお、これまで堅調に推移してきたソフトウェア投資は、弱含んでいる。
 設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成十四年前半において底入れしたものとみられることから、次第に底入れに向かうものとみられる。ただし、機械受注の十〜十二月期の見通しにみられる回復力の弱さや、日銀短観の平成十四年度設備投資計画において減少が見込まれていること等を考慮すれば、底入れした後も低調に推移することが見込まれる。

◇住宅建設は、緩やかに減少している。
 平成十三年度の住宅建設は、前年度比三・三%減の百十七万三千戸となり、平成十年度以来三年ぶりに百二十万戸を下回る低い水準となった。平成十四年度に入って、マンションの着工が減少したこと等から、四〜六月期は年率百十八万戸、七〜九月期は年率百十三万戸となり、このところ緩やかに減少している。
 十一月は、貸家、分譲住宅が減少し、年率百十二万一千戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 平成十四年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比一〇・七%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比一〇・〇%減となっている。
 このような状況を反映して、公共投資は、総じて低調に推移している。平成十四年度に入って、今年度に繰り越された平成十三年度第二次補正予算の下支え効果がみられたものの、四〜六月期は引き続き前年を下回り、七〜九月期も前年を下回った。
 十〜十二月期の公共投資については、十月、十一月の公共工事請負金額も前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。
 なお、「改革加速プログラム」(十二月十二日決定)を受けて編成する補正予算においては、構造改革推進型の公共投資等に災害対策費を含め、国費ベースで二兆円程度(事業規模で三兆四千億円程度)の公共投資を計上するなどの予算措置を講じることとしている。

◇輸出は、横ばいとなっている。輸入は、伸びが鈍化している。貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 輸出は、年初来の在庫積み増しの動きに一服感がみられていることなどにより弱含んでいたが、このところ通信機、科学光学機器などが増加しており、全体として横ばいとなっている。地域別にみると、アジア向け輸出は、各品目及び全体としてもおおむね横ばいとなっている。アメリカ向け輸出は、自動車が在庫補充のため大幅に増加したことから、このところ増加している。EU向け輸出は、ユーロ圏において景気の減速を背景に減少してきたが、通信機、科学光学機器などの増加を受け横ばいとなっている。先行きについては、アメリカにおける景気の回復力に底堅さがみられるなど、世界の景気回復に底堅い動きがみられるが、ユーロ圏の景気が減速していることに加えて、中東を巡るリスクが存在することに留意する必要がある。
 輸入は、鉱物性燃料が引き続き増加しているが、生産が弱含んでいることを背景に、全体として伸びが鈍化している。地域別にみると、アジアからの輸入は、IT関連等の機械機器を中心に伸びが鈍化している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、米国西海岸地区における港湾ストライキの影響により振れが激しくなっているものの、基調としてみれば、おおむね横ばい圏内の動きとなっている。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸出数量が横ばいとなる一方、輸入数量の伸びが鈍化していることから、おおむね横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、弱含んでいる。
 鉱工業生産は、輸出の増加や在庫調整の進展・一巡を背景に、昨年に入ってから増加してきたが、輸出が横ばいとなったほか、国内最終需要が弱く、また企業が在庫積み増しに慎重であることから、弱含んでいる。
 今後については、製造工業生産予測調査によると十二月、平成十五年一月とも増加が見込まれているが、国内最終需要の動向やアメリカをはじめとする世界経済の動向には引き続き留意する必要がある。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

◇企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、減少している。
 「法人企業統計季報」によると、平成十三年七〜九月期以降、電機機械等の製造業を中心に大幅な減益となっていた企業収益は、平成十四年七〜九月期には、売上高は引き続き減収となったものの、企業のリストラ努力等により増益に転じた。また、日銀短観によると、下期については大幅な増益を見込んでいる。
 企業の業況判断について、日銀短観をみると、中小企業では低い水準にあり、依然厳しさがみられるものの、製造業を中心に緩やかながら、引き続き改善がみられる。先行きについては、若干の悪化を見込んでおり、慎重な見方が出てきている。
 また、十一月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千四百三十五件となるなど、減少している。

◇雇用情勢は、依然として厳しい。求人が増加傾向にあるものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。
 十一月の完全失業率は、前月比〇・二%ポイント低下し、五・三%となった。男女とも失業者数が減少する一方で、女性では雇用者数が増加し、男性では非労働力人口が増加している。完全失業者については、最も多い非自発的な離職による者が微増となる一方、自発的な離職による者は減少した。雇用者数については、十一月は若干増加したものの、基調としては弱含んでいる。
 新規求人数は、十一月は減少したものの、基調としては増加傾向にある。有効求人倍率については、引き続き緩やかに上昇している。製造業の残業時間については、十一月は増加したものの、基調としては増加傾向が弱まっている。
 賃金の動きをみると、定期給与は前月比で横ばいとなったものの、前年同月比では減少が続いており、弱い動きが続いている。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ契約通貨ベース、円ベースともに上昇しているが、足元では、為替の影響により、円ベースでは下落している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電力・都市ガス・水道、電気機器などが下落しているものの、在庫調整の一巡により鉄鋼、パルプ・紙・同製品が上昇しているほか、輸入価格の上昇により石油・石炭製品の上昇幅が拡大している(なお、来月より、国内卸売物価にかえて国内企業物価について判断する予定)。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、一般サービスは横ばいとなっているものの、耐久消費財やその他工業製品の下落などにより一般商品が下落しているほか、公共料金の下落幅が拡大している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢をみると、対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、上昇した。株式相場は、八千円台(日経平均株価)半ばで推移している。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、日本銀行による金融緩和措置を反映して、〇・〇〇一〜〇・〇〇二%で推移した。二、三か月物は、ほぼ横ばいで推移した。長期金利は、二〇〇三年度の国債発行予定額が事前予想の下限となり需給が改善されるなどの市場の見方から、低下した。
 株式相場は、十二月に入り下落が続き、TOPIXは十二月中旬に八九年以降の最安値を再度更新した。その後、十二月下旬から、八千円台(日経平均株価)半ばで推移している。
 対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十二月上旬に百二十五円台まで下落した後、国際政治情勢などを背景に上昇し、十二月末には百十九円台となった。一月入り以降は百十八円台から百二十円台で推移している。対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十一月下旬から十二月上旬にかけて百二十五円台まで下落した。その後は百二十三円台から百二十五円台で推移している。
 マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(十二月日銀当座預金平均残高十九兆八千億円)を背景に、約二割の伸びとなっている(十二月:前年同月比一九・五%)。M+CD(月中平均残高)は、二〇〇二年後半を通じて三%台前半で推移してきたが、十二月には二%台前半となった(十二月速報:前年同月比二・二%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移してきたが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰りの状況は横ばいとなっており、民間債と国債との流通利回りスプレッドはほぼ横ばいで推移している。

四 海外経済

◇世界の景気は、ユーロ圏で減速しているものの、回復に底堅い動きがみられる。
 世界の景気は、ユーロ圏で減速しているものの、回復に底堅い動きがみられる。
 アメリカでは、景気の回復力に底堅さがみられる。個人消費の伸びは持ち直している。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に持ち直しに向けた動きがみられる。生産は横ばいとなっている。雇用は減少している。物価は安定している。
 アジアをみると、景気は回復しているものの、一部で回復が緩やかになっている。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国、タイでは、景気は拡大している。台湾、マレイシアでは、景気は緩やかに回復している。シンガポールでは、景気の回復は一層緩やかになっている。
 ヨーロッパをみると、@ユーロ圏では、景気は減速している。ドイツでは景気は弱い状態となっている。フランスでは景気は減速している。Aイギリスでは、景気は回復の動きが続いているものの、企業景況感は悪化している。
 金融情勢をみると、アメリカの株価は、十二月は下落基調で推移したが、一月上旬に製造業景況感が改善したことや景気刺激策への期待等から上昇した。アメリカの長期金利、ドルとも、十二月は弱含んで推移したが、株価の上昇等から一月上旬は強含んだ。
 原油価格は、イラク情勢の緊迫化に加え、ベネズエラのゼネストの長期化から大幅に上昇した。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十二月中旬速報値)・全国(十一月)―


総 務 省


◇十二月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1)総合指数は平成十二年を一〇〇として九七・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は〇・三%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降三年四か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2)生鮮食品を除く総合指数は九七・八となり、前月と同水準。前年同月比は〇・七%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降三年三か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1)食料は九八・八となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  生鮮魚介は一・〇%の下落。
   <値上がり> たこ、さばなど
   <値下がり> あじ、かれいなど
  生鮮野菜は六・〇%の下落。
   <値上がり> キャベツ、きゅうりなど
   <値下がり> トマト、ブロッコリーなど
  生鮮果物は〇・九%の下落。
   <値上がり> かき
   <値下がり> りんご、みかんなど
(2)住居は九七・〇となり、前月に比べ〇・一%の下落。
  設備修繕・維持が〇・二%の下落。
   <値下がり> 水道工事費など
(3)家具・家事用品は九〇・九となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  家庭用耐久財が一・五%の下落。
   <値下がり> 電気冷蔵庫など
(4)被服及び履物は九九・三となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  衣料が〇・六%の下落。
   <値下がり> 婦人コートなど
(5)交通・通信は九八・五となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  交通が〇・五%の上昇。
   <値上がり> 航空運賃など
(6)教養娯楽は九四・七となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  教養娯楽サービスが一・二%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(一・一%下落)、電気代(六・一%下落)、教養娯楽用耐久財(一三・一%下落)、家庭用耐久財(九・〇%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇十一月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1)総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・三となり、前月と同水準。前年同月比は〇・四%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降三年三か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2)生鮮食品を除く総合指数は九八・二となり、前月と同水準。前年同月比は〇・八%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降三年二か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1)食料は九八・八となり、前月に比べ〇・一%の上昇。
  生鮮魚介は〇・四%の下落。
   <値上がり> まぐろ、さばなど
   <値下がり> かき、かれいなど
  生鮮野菜は六・五%の上昇。
   <値上がり> きゅうり、トマトなど
   <値下がり> はくさい、ほうれんそうなど
  生鮮果物は七・一%の下落。
   <値上がり> グレープフルーツ、オレンジなど
   <値下がり> みかん、かきなど
(2)教養娯楽は九三・八となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  教養娯楽サービスが〇・九%の下落。
   <値下がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 電気代(五・〇%下落)、教養娯楽用耐久財(一三・八%下落)、衣料(三・二%下落)、家庭用耐久財(七・三%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。





















    <2月12日号の主な予定>

 ▽全国の公害苦情の実態調整委員会………公害等調整委員会事務局




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