官報資料版 平成15年2月26日




                  ▽消防白書のあらまし……………………………………………………………消 防 庁

                  ▽消費者物価指数の平成十五年一月における品目の見直しについて………総 務 省

                  ▽消費者物価指数の動向(一月)………………………………………………総 務 省

                  ▽消費動向調査(十二月)………………………………………………………内 閣 府











消防白書のあらまし


消 防 庁


 消防庁は、平成十四年十二月十七日の閣議に「平成十四年版消防白書」を報告し、公表した。
 「消防白書」は、火災、その他の災害の実態、消防防災行政の現状と課題等について、国民に広く周知することを目的として、昭和三十年十一月に「わが国の火災の実態と消防の現状」として作成したことに始まり、毎年、閣議に報告し、公表している。

<特 集> 新たな火災予防対策の推進−新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえて−

 平成十三年九月一日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災では、四十四人もの方の尊い命が奪われた。特集では、この新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえた再発防止のための取組みを紹介するとともに、@違反是正の徹底、A防火管理の徹底、B避難・安全基準の強化等を柱とした消防法令改正のポイント等を解説している。

第一節 新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓

 新宿区歌舞伎町ビル火災では、@物品や可燃物の存置、防火管理者の未選任や消防計画の未作成などの防火管理の不備、A自動火災報知設備が作動しなかったこと等による初期対応の遅れ、B直通階段が屋内に一つしかないビルの構造、C存置された物品等による防火戸の閉鎖障害などが大惨事となった主な要因とされた。

第二節 再発防止に向けた取組み

1 新宿区歌舞伎町ビル火災直後の取組み
(1) 全国一斉立入検査の実施
 消防庁では、火災発生二日後の九月三日、全国の消防機関に対し、今回火災を起こした小規模雑居ビルと類似のビルの一斉立入検査を行い、その結果、消防法令違反等の防火安全上の不備が確認された場合には、必要な是正措置を講じるよう求めた。この一斉立入検査の結果、検査対象とした八千四百七の小規模雑居ビルのうち、何らかの消防法令違反があるものが実に九〇%を超えるなどの事実が判明した。
(2) 小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会及び消防審議会
 小規模雑居ビル火災について講ずべき防火安全対策について集中的に検討を進めるとともに、消防庁長官から消防審議会に対し諮問を行い、平成十三年十二月二十六日に「小規模雑居ビルの防火安全対策に関する答申」を受けた。
(3) 警察、建築、衛生部局等の関係機関との連携の強化
 火災直後に、小規模雑居ビルにおける防火安全に関係する省庁からなる「小規模雑居ビル防火安全対策連絡協議会」を設置し、関係省庁の連携強化を図った。これを踏まえ、地方公共団体においても、連絡協議会等の設置等を通じ、関係行政機関相互の連携体制の強化が図られている。

2 制度改正のポイント
(1) 違反是正の徹底〜行政指導中心から法令に基づく違反是正の徹底へ〜
 消防法令改正により消防機関による立入検査制限等の見直し(時間制限の廃止、事前通告の廃止及び証票提示の相手方の拡大)、消防機関による措置命令等の発動要件の明確化・具体化及び消防吏員による措置命令権限の拡大が図られ、小規模雑居ビル等に対するより迅速で効果的な違反是正の実施が可能となるとともに、消防機関が措置命令等を発した場合の情報提供のためのしくみが設けられた。また、各消防機関の的確・効率的な立入検査の実施や迅速・的確な違反是正の推進に資するよう消防庁が「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を作成し、全国の消防機関等に配布するとともに、それらの内容について、消防機関の予防職員に対する講習等を通じ周知徹底を図っている。
(2) 防火管理の徹底〜民間能力の活用等による「防火対象物の定期点検報告制度」の創設等〜
 防火対象物の定期点検報告制度が、優良防火対象物に対する特例認定制度を含む形で創設(平成十五年十月一日施行)され、一定の防火対象物の管理権原者は、一年に一度、一定の火災予防に関する専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)に、防火管理の状況等の火災予防上必要な事項を点検させ、これを消防機関に報告することとされた。また、これらの防火対象物のうち、三年以上消防法令等に違反したことがないなど優良に防火管理を行っていると認められる防火対象物については、防火対象物の定期点検報告の義務を免除する特例認定を受けることができることとされた。これにより、点検の結果、防火対象物の点検事項がその基準に適合している防火対象物には「防火基準点検済証」を、また、三年以上優良に防火管理を行っている旨認定を受けた防火対象物には「防火優良認定証」を、それぞれ表示することができることとされた。
 また、共同管理している防火対象物に関する防火管理の責任の明確化や防火管理講習の充実が図られるとともに、消防用設備等の点検報告制度の対象の拡大が図られた。
(3) 避難・安全基準の強化
 防火対象物における火災の早期発見・報知や迅速な避難の重要性が改めて明らかになったことから、避難上必要な施設や防火戸に係る管理の強化、自動火災報知設備の設置対象の拡大等が図られた。また、新たな形態の防火対象物の出現に対応する観点から消防法令における用途区分の見直しが行われた。
(4) 罰則の強化
 消防法令違反の抑止力の程度を勘案するとともに、消防法と同様に人の生命、身体を保護法益としている他法律との均衡等も考慮しつつ、措置命令違反等に対する罰則の強化が図られた。また、行為者のほか法人も罰する両罰規定の整備が行われ、その罰金を最高一億円とすることとされた。
(5) その他
 ア 消防機関は、防火対象物の実態を把握するため、関係のある官公署の保有する情報を収集し、その協力を要請することができるようになり、適切な違反処理等がより効果的・効率的に進められるようになった。
 イ 小規模雑居ビルの防火安全上のポイントを記載したリーフレットを作成し、配布するなど、小規模雑居ビル関係者及び国民の防火安全意識の啓発に活用している。

3 予防体制の強化
(1) 消防庁の体制強化
 消防庁では、平成十四年四月、防火対象物の防火安全対策を推進するための専任部署として防火安全室を設置し、「違反処理マニュアル」等の作成等を通じて違反是正体制の強化を図るとともに、火災原因調査に係る制度の充実等について検討している。
(2) 消防機関の体制強化
 消防機関における予防体制を強化する観点から、平成十四年度の地方財政計画において予防要員を増員するための経費を見込むこととされた。また、消防庁では、「違反処理マニュアル」等を活用した消防機関に対する研修会の実施・充実や、全国の消防機関が違反処理に当たって活用できるような違反処理事例や消防関係判例等を集めたデータベースの構築等により、予防職員の対応能力の強化を図ることとしている。

<緊急報告> 救急救命士の処置範囲の拡大について

 救急救命士制度は、平成三年に創設され、心肺停止傷病者の救命効果の向上と救急業務の高度化に大きな成果をもたらした。
 制度発足から十年余が経過し、これまでも消防庁をはじめ各方面において救急救命士の処置範囲の拡大の検討が行われてきているが、現在、その拡大の実現に向けて具体的な検討が進められており、これまでの経過と今後の方向を中心に解説している。

◎処置範囲拡大に向けた具体的な動き
 救急救命士の処置範囲の拡大の問題は国民の関心も高く、政府においても、早期に検討を行うこととなり、消防庁としては、本年四月に厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を設置した。

1 「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」中間報告(平成十四年七月)概要
(1) 中間報告では、メディカルコントロールの体制の構築が、救急救命士の処置範囲の拡大の前提条件であるとされるとともに、
 ・医師の具体的な指示なしでの除細動
 ・医師の具体的な指示のもとでの気管挿管及び薬剤投与
 について、基本的方向と検討課題を指摘している。
(2) 消防庁と厚生労働省では、それぞれ専門家の意見の集約を図っており、年末には検討会において最終報告を取りまとめる予定である。

2 メディカルコントロール体制の整備促進
(1) 救急救命士の処置範囲の拡大については、その前提であるメディカルコントロール体制の早期構築が重要である。
(2) 消防庁では厚生労働省と連携して、メディカルコントロール協議会の設置をはじめとする体制の構築を促進するよう都道府県に要請している。

3 更なる救命効果の向上に向けて
(1) バイスタンダー(現場に居合わせた人)による迅速な通報、応急手当、搬送時の救急救命処置、医療機関における専門的治療の各段階で最善の措置が講じられるようにする必要がある。
(2) 救急救命士の処置範囲の拡大の早期実現等更なる救命効果の向上に資するよう取り組んでいく必要がある。

<特別報告> 大規模災害等に備えた地域防災力の向上

 我が国は、大規模な災害が発生しやすい環境にあり、国や地方公共団体の取組みのほか、地域の防災力を高めていく必要があることから、消防団、自主防災組織、NPOなどの連携による地域の防災体制の確立等について解説している。

1 地域密着性と要員動員力を活かした消防団の活動
(1) 消防団は、地域密着性、要員動員力、教育訓練による即時対応力という特性があり、地域防災における役割は重要である。
(2) なお、大都市の消防団では、大規模災害を意識した活動に取り組みはじめており、今後は、どの地域においても、大規模災害等への対応が求められる。消防庁が設置した「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」では、消防団が諸問題に対応するため以下のような具体策を紹介しており、各地域では、これらを参考として多様な選択や取組みを進めていくことが期待される。
 ・団員の一部について、訓練への参加義務を限定するなど弾力的な消防団運営
 ・女性消防隊の育成と連携など、消防団に協力し、裾野を広げる組織との連携
 ・情報通信隊等の機能別組織の導入・優秀団員の表彰など、組織及び団員の活性化
 ・大規模災害時の対応等のためe−ラーニング(パソコンを使い、ネットワークを活用した教育や研修)等の導入などの教育訓練の充実
 ・地域の事業所が設ける自衛消防隊と消防団との連携の促進
 ・市町村・都道府県の職員・郵便局職員等が団員となることの推奨

2 大規模災害時等に備えた住民による自主防災活動
(1) 自主防災組織の育成充実は市町村の責務である。
(2) 自主防災組織の組織率(平成十四年四月現在五九・七%)はいまだ十分とはいえず、活動面でも活動拠点不足、役員の高齢化等の課題がある。
(3) これからの自主防災活動促進の視点として、次の点に留意すべきである。
 ・地域のイベント等を通じて防災意識の向上を図るなど、主体的な防災活動を促す工夫
 ・リーダー等役員に消防職団員経験者等を選任するなど、組織の機能向上のための工夫
 ・情報交換等の場としての連絡協議会の設置など、他の地域の自主防災組織等との連携
 ・婦人防火クラブや福祉ボランティア団体等との連携
(4) 消防庁の自主防災活動支援のため次の取組みを行うこととしている。
 ・住民に対する防災・危機管理教育、e−ラーニングを活用した教育訓練
 ・行政が地域防災力を自ら確認できる総合的な防災体制評価指針の策定
 ・自主防災組織の資機材整備に対する補助金の充実確保、優れた取組みに対する表彰等

<第1章> 災害の現況と課題

(1) 火災
 @ 平成十三年中の出火件数は六万三千五百九十一件で、前年の六万二千四百五十四件に比べ一千百三十七件増加している。この十年間の火災の動向をみると、平成六年以降六万件を超えていた出火件数は、平成十年及び十一年には五万件台で推移してきたが、平成十二年以降は再び六万件を超え、増加の傾向にある(第1表第1図参照)。
 A 平成十三年中の出火率(人口一万人当たりの出火件数)は、前年同様、全国平均で五・〇件である。これを都道府県別にみると、最高は山梨県の六・九であり、最低は平成五年以降九年連続して富山県の二・六となっている。
 B 平成十三年中の火災による死者数は二千百九十五人で、前年の二千三十四人に比べ百六十一人増加しており、一日当たりの死者数は六・〇人となっている。
 また、住宅で発生した火災による死者一千百四十二人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添え及び放火殺人による死者を除く失火等による死者は九百二十三人(対前年比十三人減)で、このうち六十五歳以上の高齢者は五百十一人(全体の五五・四%)と半数を超えている。
 C 出火原因は「放火」が八千百二十件で前年に比べ三百三件増加しており、全火災の一二・八%を占め五年連続して第一位となっている。次いで「たばこ」による火災が六千七百六十九件(対前年比百二件減)となっている。
 なお、「放火の疑い」によるものは六千二百八十八件(対前年比二百五十三件増)であり、「放火」及び「放火の疑い」を合わせると一万四千四百八件で、全火災の二二・七%を占めている(第2表参照)。
(2) 危険物施設等における災害
 昭和五十年代中ごろよりおおむね緩やかな減少傾向を示していた危険物施設における事故件数は、平成六年を境にして増加傾向を示している。平成十三年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が百六十九件、漏えいが三百三十四件であり、高い水準で推移している。このうち、漏えい件数については、統計開始以来、過去最高となっている。

(3) 石油コンビナート災害
 平成十三年中に石油コンビナート等特別防災区域の特定事業所で発生した災害の件数は八十六件で、前年(八十二件)と比較すると、四件の増加となっている。全般的な発生件数の傾向は、平成六年以降増加に転じ、依然として発生件数が多い状況にある。

(4) 林野火災
 平成十三年中の林野火災の件数は三千七件(前年二千八百五件)、焼損面積は一千七百七十三ヘクタール(同一千四百五十五ヘクタール)、損害額は十一億二千二十二万円(同七億八百五十万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より増加した。
 例年、春先を中心に発生している林野火災は、平成十三年も、四月に一千五十三件と最も多く発生しており、三月から五月までの間に、年間の六四・三%の火災が集中して発生している。

(5) 風水害
 平成十三年中に発生した台風の数は二十六個と、平年(昭和四十六年から平成十三年)の二六・七個とほぼ同数であった。また、日本列島への上陸数は二個であったが、八月下旬から九月上旬にかけて台風第十一号、第十五号の上陸が相次ぐとともに、台風第十六号が沖縄周辺に長時間停滞するなど、各地に住家の全・半壊や浸水など大きな被害をもたらした。
 風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、ともに前年に比べて増加(一部損壊は減少)し、死者・行方不明者八十八人(前年七十七人)、負傷者九百九十人(同六百一人)、全壊八十六棟(同五十七棟)などとなっている。

(6) 火山災害
 消防庁では、活動火山対策特別措置法に基づき避難施設緊急整備地域に指定された地域や第六次火山噴火予知計画(平成十年八月文部省測地学審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。平成十四年度においては、東京都三宅村のクリーンハウス(退避舎)に対して七億円の助成を行った。
 また、平成十二年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年七月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動等により危険の及ぶ範囲を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害弱者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。

(7) 地震災害
 平成十三年中に震度一以上が観測された地震は一千五百十三回(前年一万七千六百七十六回)で、内震度四以上を記録した地震は三十七回(前年三百五十七回)である。このうち、人的被害を生じた地震は五回発生しており、特に平成十三年三月二十四日の芸予地震(M六・七)では、広島県内で震度六弱を観測し、被害は、広島県、愛媛県などにおいて死者二人、負傷者二百八十八人であった。
 東海地震については、平成十四年四月に新たに地震防災対策強化地域が指定され、同地域は、八都県二百六十三市町村に拡大した。また、東南海・南海地震については、平成十四年七月、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が公布された。これらの地震による被害は、極めて甚大かつ広範囲におよぶものと想定されることから、津波対策や建物の耐震対策の充実、広域的な地震防災体制の確保などの地震防災対策を引き続き充実強化する必要がある。

(8) 特殊災害
 @ 平成十三年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故で消防機関が出場したものの総件数は、一千四百七十一件(対前年比四十八件減)となっている。
 A 平成十三年中に発生した毒物・劇物等による事故で消防機関が出場したものの総件数は、六十八件(対前年比七件増)となっている。
 B 平成十一年九月に発生した茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設における臨界事故等を教訓として原子力災害対策特別措置法が制定され、防災基本計画原子力災害対策編の修正が行われたこと等に伴い、「地域防災計画(原子力災害対策編)作成マニュアル」の見直しや「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部へ通知したところであるが、今後、地域防災計画の作成・見直しの推進、より実践的な原子力防災訓練のあり方の検討等、原子力防災対策に関する消防体制の充実・強化を図っていく。

<第2章> 消防防災の組織と活動

(1) 消防体制
 @ 平成十四年四月一日現在、消防本部が九百本部、消防署が一千六百九十署、消防職員が十五万四千四百八十七人となっており、前年と比較すると市町村合併と広域再編が進められたこと等により、消防本部は四本部減少し、消防署は三署増加し、消防職員は五百三十五人増加している(第3表参照)。
 A 平成十四年四月一日現在、常備化市町村は、三千百五十八市町村となり、常備化率は市町村数で九八・一%(市は一〇〇%、町村は九七・六%)に達し、人口の九九・八%が常備消防によりカバーされている。
 B 管轄人口十万人未満の消防本部が全体の約三分の二を占めており、小規模消防本部の広域再編など組織面での消防の対応力の強化を推進する必要がある。
 消防庁においては、平成六年九月に消防の広域化を進めるための基本計画の作成を都道府県に要請した。さらに、平成十三年三月には「消防広域化基本計画の見直しに関する指針」を策定し、市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を一層推進している。
 C 消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っている。常備市町村においても初期消火、残火処理等を行っているほか、大規模災害時には、災害防ぎょのため多数の要員を必要とすることから、多数の消防団員が活躍している。
 平成十四年四月一日現在、消防団は三千六百二十七団、消防団員は九十三万七千百六十九人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設けられている。団員数は減少傾向にあり、十年前の平成四年四月一日現在に比べ四万九千八百二十七人(五・〇%)減少しているが、この間、女性消防団員数は八千二百三十四人増えて一万一千五百九十七人となっている。
 また、消防団員の平均年齢は三七・一歳となっている。
 D 消防団は、近年の社会経済情勢の変化の影響を受けて、団員数の減少、サラリーマン団員の増加等の課題に直面しており、消防団の充実強化を一層推進することが緊急の課題となっている。このため、消防団の施設・装備の充実強化、消防団への青年層・女性層の加入の促進、消防団員の処遇の改善と活動表彰、消防団シンポジウムの実施、新時代に即した消防団のあり方に関する検討などの措置等を引き続き実施していく必要がある。

(2) 消防職団員の活動
 @ 平成十三年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他)への出動回数は八十八万五千五百十回で、出動延べ人員は一千万五千六百四十六人となっており、火災等への一日当たりの出動回数は二千四百二十六回、三十六秒に一回の割合で出動したことになる。
 このうち、消防団員の火災等への出動回数は二十六万二百八十一回、出動延べ人員は五百十三万九千人となっている。
 A 平成十三年における消防団員の活動状況をみると、三月二十四日に発生した広島県安芸灘を震源とする芸予地震、七月から九月にかけての梅雨前線や台風による風水害等の大規模な災害に出動し、住民の避難誘導、危険箇所等の警戒巡視、行方不明者の捜索、土のう積み等の活動を行い、被害の拡大を防いだ。
 また、林野火災においても、迅速に十分な消防力を投入し被害を最小限に抑えるため、多数の団員が出動し、鎮圧や延焼防止等に当たった。
 B ワールドカップサッカー大会が平成十四年五月三十一日から六月三十日まで開催された。
 消防庁においては、開催競技場を管轄する消防本部や関係地方公共団体等との連絡調整を円滑に実施するため「消防関係連絡会議」を、テロ対策の万全を期するため「テロ対策本部担当部長会議」をそれぞれ開催するとともに、全都道府県の代表的な消防本部に対し、生物剤・化学剤を使用したテロ災害への対処に必要な資機材を貸与した。さらに、大会実施期間中を中心に、「消防庁ワールドカップサッカー大会警戒本部」を設置し、各消防本部における消防・救急警戒の支援を行った。
 また、開催競技場を管轄する十消防本部においては、各地域の特性を勘案して策定した対応計画に基づき、事故・災害の発生に備え万全の体制をとった結果、競技場やその周辺において、重大な事故や火災等は発生しなかった。

(3) 救急体制
 @ 平成十三年中の救急業務の実施状況は、四百三十九万九千百九十五件(ヘリコプターによる件数を含む。)で、前年の四百十八万四千百二十一件に比べ、二十一万五千七十四件増加している。
 また、救急自動車による搬送人員は四百十九万八百九十七人で、前年の三百九十九万七千九百四十二人に比べ十九万二千九百五十五人増加している(第4表参照)。
 なお、救急自動車による出場件数は、全国で一日平均一万二千四十八件(前年一万一千四百二十八件)であり、七・二秒(前年七・六秒)に一回の割合で救急隊が出場し、国民の三十人に一人(前年三十二人に一人)が救急隊によって搬送されたことになる。
 A 平成十三年中の救急自動車による搬送人員のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は、三百九十八万六千九百七十一人(搬送人員の九五・一%、前年は八八・九%)であり、前年に比較し、四十三万二千八百十一人(一二・二%)増加している。
 なお、平成三年八月の「救急隊員の行う応急処置等の基準」の改正により拡大された応急処置等の件数は、八百九万八百十七件と前年の約一・一倍となっており、このうち救急救命士が行う心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は、三万九千四百五十七件にのぼり、前年の約七・三%増となっている。
 B 平成十四年四月一日現在、救急隊は全国で四千五百九十六隊設置されており、前年の四千五百六十三隊に比べ、三十三隊の増となっており、また、救急隊員は五万七千五百十五人で前年の五万六千五百五十七人に比べ、九百五十八人の増となっている。
 C 平成十四年四月一日現在、消防職員のうち救急救命士資格を有する者の数は、一万二千六十八人で、このうち一万八百二十三人が八百六十二消防本部で、救急救命士として救急業務に従事している。
 また、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は、全国で三千六十二台が配置されている。
(4) 救助体制
 @ 平成十三年中の救助活動件数は四万九千二百七十一件で、前年の四万六千百四件に比べ三千百六十七件増、救助人員は五万一千三百十七人で、前年の五万三千二百四十七人に比べ一千九百三十人の減となっている(第5表参照)。
 なお、事故種別の救助活動件数は、交通事故が全体の四五・三%を占め、次いで建物等による事故が一九・九%となっている。
 A 平成十四年四月一日現在、救助隊は全国で一千四百八十八隊設置されており、救助隊員は二万三千六百四十五人となっている。
 B 平成十三年九月十一日の米国同時多発テロ事件発生後、新たなテロ事件が国外のみならず国内においても発生する可能性が否定できない状況を踏まえ、平成十三年度第一次補正予算において、テロ災害に対応するための消防資機材を購入し、各都道府県の代表的な消防本部に対して無償貸与を実施するなど消防本部の対処能力の強化を図るとともに、地方公共団体における危機管理体制の構築、警察、自衛隊等の関係機関との連携強化及び消防機関における危機管理教育訓練の充実強化などの取組みを実施した。

(5) 航空消防防災体制
 @ 消防・防災ヘリコプターは救急搬送や救助、林野火災等の消防活動に大きな成果を挙げているほか、震災時においては、その高速性・機動性を発揮し、消防・防災面で大きな役割を担うことが期待されており、その整備を促進している。
 A 平成十四年四月一日現在の消防・防災ヘリコプターの配備状況は、次のとおりとなっている。

  消防機関保有ヘリコプター 二十七機
  都道府県保有ヘリコプター 四十一機
      合  計     六十八機

 B なお、消防・防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成十三年中の出動実績は、火災出動一千二百一件、救急出動一千六百六十八件、救助出動一千百九十六件等となっている。

(6) 国と地方公共団体の防災体制
 @ 消防庁においては、消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。
 A 地域防災計画は、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。また、阪神・淡路大震災以降、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、平成十四年四月一日までに二千二百八団体(六八%)が完了している。
 B 消防庁では、地方公共団体に対し、自衛隊等の防災関係機関とも連携の上、住民の参加のもとに、総合的かつ実践的な防災訓練を実施し、災害時に実際に適切な行動ができるか検証するよう要請している。
 平成十三年度においては、都道府県が延べ二百六十三回の防災訓練を実施したほか、市区町村においても延べ六千七百九十二回の防災訓練が実施された。

(7) 広域消防応援
 @ 消防の相互応援に関する協定の締結数は、平成十四年四月一日現在、三千九十四である。
 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定を結んでいる。
 また、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防・防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している。
 平成十三年中には、消防庁長官の求めに応じて、三十二件の消防広域航空応援が実施された。
 A 平成十四年四月一日現在、都道府県間の広域防災応援に関しては全国で合計二十二の協定が締結されており、また、広域防災応援協定を有する市町村数は二千二百八十九団体となっている。
 B 緊急消防援助隊の部隊編成について、平成十三年一月から、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、特殊災害部隊、航空部隊、水上部隊を新設し、八部隊体制となった。平成十四年四月現在では、二千二十八部隊(隊員数約二万九千人)の体制となっている。

(8) 消防防災の情報化の推進
 @ 災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網の整備による通信ルートの多ルート化を推進するほか、市町村における同報系無線(住民連絡用)及び地域防災無線(地域相互通信用)等について高機能化等を図りながら整備を推進している。更に、通信施設及び非常電源設備の耐震化を推進するとともに、消防・救急無線のデジタル化についても、円滑かつ速やかな移行が図られるよう、鋭意、取り組んでいる。
 A 消防防災に係る情報をデータベース化して地方公共団体との間で共有化するための「防災情報システム」や、地震発生時の被害を推計するための「簡易型地震被害想定システム」の整備・活用を図るとともに、緊急消防援助隊の広域応援活動を支援するための「緊急支援情報システム」を構築し、引き続きその充実を図っている。

<第3章> 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり

(1) 防火防災意識の高揚
 家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心をもつとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識をもち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。消防庁では、年間を通じてテレビ放送を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋二回の「全国火災予防運動」、「危険物安全週間」(六月の第二週)、「防災とボランティア週間」(一月十五日から二十一日)、「防災週間」(八月三十日から九月五日)、「一一九番の日」(十一月九日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。

(2) 住民等の自主防災活動
 大規模災害時には、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識のもとに、組織的に自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。
 平成十四年四月一日現在では、全国三千二百四十一市区町村のうち、二千五百二十五市区町村で十万四千五百三十九の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対し組織されている地域の世帯数の割合)は、五九・七%となっている。

(3) 災害に強い安全なまちづくり
 災害に強い地域づくりを推進するため、消防庁では、消防施設等整備費補助金や防災基盤整備事業等により、消防車両や消防・防災ヘリコプター、防災情報通信施設、耐震性貯水槽等の整備を促進している。

<第4章> 規制改革への対応

 国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっており、消防庁としては、安全性の確保に十分配慮しながら、「規制改革推進三か年計画(改定)」に定められた各措置を着実に実施するなど、社会的要請に対応した規制改革等の一層の推進を図っていくこととしている。
 また、「構造改革特区推進のためのプログラム」の決定を受けて、消防庁としては、特区制度創設の趣旨にかんがみつつ、火災予防又は防災の観点からの安全性の確保に十分配慮しながら、プログラムに盛り込まれた各措置の実現に向けて対応することとしている。

<第5章> 国際的課題への対応

(1) 国際協力・国際交流
 消防庁では、国際協力事業団等を通じて、開発途上諸国の消防防災職員を対象とした集団研修、開発途上諸国への消防防災専門家の派遣、中国・北京消防訓練センター等に対するプロジェクト方式技術協力、海外の消防防災行政に携わる幹部職員との交流セミナー、日韓消防行政セミナーの開催などの消防防災分野における国際協力・国際交流を推進している。

(2) 国際消防救助隊
 海外で大規模災害が発生し、被災国政府等から要請があった場合には、消防庁長官から市町村への要請により「国際消防救助隊」が派遣され人命救助活動や支援活動を行うこととされており、平成十四年度の登録消防本部・隊員数は、六十二消防本部五百九十九人体制となっている。
 なお、国際消防救助隊の派遣実績は、これまでのところ計十一回となっている。

(3) 基準・認証制度の国際化への対応
 ISO(国際標準化機構)/TC21(消防器具)専門委員会において消防用機械器具等の国際規格の策定作業が行われており、我が国としてもISO/TC21協議会を設置し、積極的に活動に参加している。

(4) 地球環境の保全
 地球環境の保全に寄与することを目的として、ハロン消火剤のクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)の明確化等、使用抑制対策等に取り組んでいる。また、消火器と防炎物品のリサイクル等に取り組んでいる。

<第6章> 消防防災の科学技術の研究・開発

 災害が複雑多様化する中、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、総合科学技術会議の定める科学技術基本計画及び消防庁に設置された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。
 これらの研究・開発の中心となっている消防研究所は、我が国唯一の消防防災に関する総合的な研究機関として、基盤的な研究を継続的に実施するとともに、社会的・行政的要請の高い「災害対応への情報化の促進」「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」「消火・救急・救助活動の技術の高度化」「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の四つの研究領域については、重点的に研究費を配分して研究を実施している。

<第7章> 今後の消防防災行政の方向

 我が国は、これまで幾多の災害を経験してきており、近年においても、新宿区歌舞伎町ビル火災、鳥取県西部地震や芸予地震等の地震災害、三宅島や有珠山における火山災害、JCOの原子力事故災害など、多種多様な火災・地震等の災害が発生している。
 一方、救急については、高齢化の進展等に伴い増大する心筋梗塞や脳卒中等の搬送患者の救命率を一層高めるため、救急救命士の処置範囲の拡大が強く求められている。
 また、平成七年の阪神・淡路大震災は約六千四百人の犠牲者と約十兆円の物的損害をもたらしたが、今後、広域かつ激甚な被害が想定される大規模地震として、現在、東海地震がいつ発生してもおかしくない状況とされてきているほか、東南海・南海地震、南関東地域直下の地震などの発生のおそれが指摘されている。
 さらに、米国の同時多発テロの発生などもあり、安全・安心に対する国民の関心は一層の高まりを見せている。
 火災・災害の危険性が高い我が国においては、それらから国民の生命、身体及び財産を保護すること等を目的とする消防防災行政は、地域において経済や福祉、教育・文化などの充実・発展を図る上での基盤をなすものであり、国・地方を通じた最も基本的で、かつ、重要な責務の一つである。このような点を十分に踏まえながら、国と地方公共団体が、適切な役割分担の下に国民が安全・安心に暮らすことができる地域社会を構築し、複雑多様化する火災・災害等に的確に対処していく必要がある。

◎火災予防対策等の推進
 ○小規模雑居ビル等に対する防火安全の確保
 ○住宅防火など火災予防対策の推進
 ○規制改革の理念に沿った安全対策の推進
 ○危険物施設等の安全確保
◎救急救命等の充実・高度化
 ○救急業務の高度化の推進
 ○応急手当の普及
 ○救助業務及びヘリコプターの活用の推進
◎大規模災害等への対応
 ○大規模災害対策の充実
 ○特殊災害対策の充実
 ○テロ災害対策の充実
 ○武力攻撃事態における国民保護のあり方の検討
◎防災・危機管理に関わる組織、人材、情報通信基盤の整備・充実
 ○地方公共団体の防災・危機管理に係る組織体制の整備の推進
 ○消防防災に係る教育・研修体制の構築等
 ○IT革命に対応した消防防災分野における情報化の促進
 ○消防防災に係る科学技術の高度化
◎自治体消防の強化と広域緊急対応体制の整備
 ○消防力の整備充実
 ○消防団の充実強化等
 ○通常の消防防災事務に係る執行体制の強化
 ○大規模・特殊災害等の発生時における国及び都道府県の役割の充実強化

<囲み記事等>
 本文とは別に、トピックな話題等を記述した囲み記事(次に掲げる三十一項目)、第五回全国消防広報コンクールの受賞作品及び消防ポスター等を掲載している。
 ○消子ちゃんプロフィール
 ○放火火災予防対策
 ○危険物施設って何?
 ○セルフスタンドでの安全給油〜静電気による火災の防止〜
 ○石油コンビナート等災害防止法で定める特別防災区域
 ○クリーンハウスとは?(東京都三宅村活動火山避難施設)
 ○ハザードマップを活用した防災体制
 ○東海地域に係る地震防災対策強化地域の指定の経緯等
 ○「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成十四年七月二十六日法律第九十二号)の概要
 ○日本における地震による津波被害〜過去の津波被害に学ぶ〜
 ○津波避難計画の策定
 ○平成十四年度原子力総合防災訓練
 ○大深度地下等における消防隊員の位置特定システムの開発
 ○林野火災における消防団活動例
 ○ワールドカップサッカー大会に関する消防・救急警戒
 ○現場活動と心のケア
 ○消防団地域活動表彰における消防団活動例
 ○火災調査科の設置について
 ○緊急テロ対策特別講習会
 ○全国消防救助技術大会
 ○救急救命士の病院実習
 ○消防・防災ヘリコプターによる救急活動
 ○生物・化学災害に対する消防の対応
 ○地方公共団体における危機管理のあり方シンポジウム
 ○火災報告等オンライン処理システムの開発
 ○携帯電話からの一一九番通報について
 ○フィリップ・トルシエ氏をモデルとした危険物安全週間推進ポスター
 ○婦人防火クラブ
 ○地域防災の担い手をめざした中学教育の取組みと実践
 ○実大規模階段室模型による火災実験
 ○バーチャルリアリティー技術を用いた火災現場の仮想現実体験技術に関する研究




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消費者物価指数の平成十五年一月における品目の見直しについて


総 務 省


 総務省統計局では、平成十五年一月に消費者物価指数の品目の見直しを行った。その概要は次のとおりである。

1 今回の品目の見直し

 消費者物価指数は、世帯の消費構造を的確に反映させるため、また、消費者物価指数の中立性を確保するため、通常、西暦の末尾が0及び5の年に行う五年ごとの基準年の改定にあわせて、採用する品目やウエイトなどを定期的に見直している。
 しかしながら、近年における急速な技術革新を背景に、新たに出現する財やサービスの中には、基準改定の後、次回の基準改定までの間に、急速に普及して家計消費支出上一定のウエイトを占めるに至っていることが明らかなものもある。
 このため、指数の精度維持・向上等の観点から、基準改定間においても、次回基準改定を待たず、これらの財やサービスの価格変動を消費者物価指数に取り込むことを、平成十二年基準改定時に決定したところである。
 今回、平成十二年基準改定(十三年八月)以降の家計調査等の結果に基づき検討したところ、二品目の追加、一品目の変更の必要性が確認されたことから、平成十五年一月において、二品目を追加し、一品目について品目内の変更を行う。
 この結果、平成十二年基準指数に用いる品目数は、平成十五年一月以降、五百九十八品目となる。

2 追加・変更する品目

(1) 品目の追加
 (今回の追加品目)
・パソコン用プリンタ
・インターネット接続料
 (追加品目の選定基準)
@ 普及が著しく、家計消費支出上一定のウエイトを占めるに至っている品目
A 中分類指数の精度の向上及び確保に資する品目
B 円滑な価格取集が可能で、かつ、価格変化を的確に把握できる品目

(2) 品目内の変更
 デジタルカメラについては、普及が著しいものの、家計消費支出上一定のウエイトを占めるには至っていないことなどから、従来から採用しているフィルムカメラとデジタルカメラの価格変動を合成することにより、現行品目「カメラ」の価格指数にデジタルカメラの価格変動を反映させる。
 なお、デジタルカメラの価格変動については、POS情報を用いてヘドニック回帰法により算出する。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(一月中旬速報値)・全国(十二月)―


総 務 省


◇一月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九七・四となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は〇・四%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降三年五か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九七・二となり、前月比は〇・六%の下落。前年同月比は〇・六%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降三年四か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・七となり、前月に比べ〇・七%の上昇。
  生鮮魚介は二・三%の上昇。
   <値上がり> いか、いわしなど
   <値下がり> ぶり、さけなど
  生鮮野菜は五・七%の上昇。
   <値上がり> レタス、ピーマンなど
   <値下がり> はくさい、しめじなど
  生鮮果物は六・五%の上昇。
   <値上がり> みかん、りんごなど
   <値下がり> いちご、キウイフルーツなど
(2) 家具・家事用品は九〇・四となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  室内装備品が一・八%の下落。
   <値下がり> カーペットなど
(3) 被服及び履物は九三・三となり、前月に比べ六・〇%の下落。
  衣料が八・二%の下落。
   <値下がり> 婦人コートなど
(4) 交通・通信は九八・三となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  交通が〇・二%の下落。
   <値下がり> 航空運賃
(5) 教養娯楽は九二・八となり、前月に比べ二・〇%の下落。
  教養娯楽サービスが三・三%の下落。
   <値下がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(一・一%下落)、電気代(五・九%下落)、教養娯楽用耐久財(一一・四%下落)、家庭用耐久財(八・七%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇十二月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・三となり、前月と同水準。前年同月比は〇・三%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降三年四か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・二となり、前月と同水準。前年同月比は〇・七%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降三年三か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・六となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  生鮮魚介は〇・五%の上昇。
   <値上がり> ぶり、えびなど
   <値下がり> いか、かれいなど
  生鮮野菜は三・五%の下落。
   <値上がり> キャベツ、きゅうりなど
   <値下がり> トマト、ブロッコリーなど
  生鮮果物は二・〇%の上昇。
   <値上がり> かき、みかんなど
   <値下がり> りんご、バナナなど
(2) 住居は一〇〇・〇となり、前月に比べ〇・一%の上昇。
  家賃が〇・一%の上昇。
   <値上がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 家具・家事用品は九一・五となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  家庭用耐久財が一・二%の下落。
   <値下がり> 電気洗濯機など
(4) 被服及び履物は九七・四となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  衣料が〇・六%の下落。
   <値下がり> 婦人コートなど
(5) 教養娯楽は九四・三となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  教養娯楽サービスが一・一%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 電気代(五・〇%下落)、教養娯楽用耐久財(一三・九%下落)、家庭用耐久財(八・〇%下落)、衣料(二・四%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。




















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消費動向調査


―平成十四年十二月実施調査結果―


内 閣 府


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末にあたる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十四年十二月に実施した調査結果の概要である。

一 調査世帯の特性

 平成十四年十二月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五三・三歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七五・九%となっている。また、有効回答率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十八世帯)となっている。

二 消費者の意識

(1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
  消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「雇用環境」に関する意識が悪化したほか、「暮らし向き」、「耐久消費財の買い時判断」、「収入の増え方」及び「物価の上がり方」に関する意識のすべての項目が悪化したため、前期差一・五ポイント低下の三八・一となった(第1図参照)。
(2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
  各消費者意識指標について平成十四年十二月の動向を前期差でみると、「雇用環境」に関する意識(二・五ポイント低下)、「暮らし向き」に関する意識(一・四ポイント低下)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(一・四ポイント低下)、「収入の増え方」に関する意識(一・二ポイント低下)及び「物価の上がり方」に関する意識(一・〇ポイント低下)のいずれも悪化を示した(第1表参照)。

三 サービス等の支出予定(季節調整値)

 平成十五年一〜三月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出D.I.)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
(1) 高額ファッション関連支出D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス八・六%のところ、今期はマイナス九・二%となっている。
(2) 学習塾等補習教育費D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が五・九%のところ、今期は五・八%となっている。
(3) けいこ事等の月謝類D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が一・四%のところ、今期は一・八%となっている。
(4) スポーツ活動費D.I.は、このところマイナスとなっており、前期がマイナス〇・八%のところ、今期はマイナス一・九%となっている。
(5) コンサート等の入場料D.I.は、プラスに転じていたが、前期が〇・九%のところ、今期はマイナス一・〇%となっている。
(6) 遊園地等娯楽費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス一一・三%のところ、今期はマイナス一三・〇%となっている。
(7) レストラン等外食費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス二〇・三%のところ、今期はマイナス二三・一%となっている。
(8) 家事代行サービスD.I.は、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス二・一%のところ、今期はマイナス一・九%となっている。

四 旅行の実績・予定(季節調整値)

(1) 国内旅行
  平成十四年十〜十二月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で〇・六ポイント低下し三四・一%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で〇・一人増加し三・〇人となった。
 十五年一〜三月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十四年十〜十二月期計画(以下「前期計画」)差で〇・八ポイント上昇し三一・八%、その平均人数は、前期計画差で〇・一人減少し二・八人となっている。
(2) 海外旅行
  平成十四年十〜十二月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で〇・三ポイント上昇し五・一%となった。その平均人数は、前期差で横ばいの一・七人となった。
 十五年一〜三月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・一ポイント低下し四・二%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの一・八人となっている。

(参考)

一 消費者意識指標(季節調整値)(レジャー時間、資産価値)

 平成十四年十二月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・九ポイント低下し四一・〇となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で一・四ポイント低下し三五・八となった。

二 主要耐久消費財等の購入状況・品目別購入世帯割合の動き(原数値)

 平成十四年十〜十二月期実績は、三十品目中十五品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十二品目が減少した。なお、三品目が横ばいとなった。
 十五年一〜三月期実績見込みは、三十品目中十三品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十一品目が減少している。なお、六品目が横ばいとなっている(第2表参照)。

三 主要耐久消費財の買替え状況

 平成十四年十〜十二月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗たく機などは八〜十二年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとして携帯電話、パソコン、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。





言葉の履歴書


ねんねこ

 「ねんねこ」は寝ること、眠ることを意味する幼児語、「ねんね」に接続語「こ」がついたもので、子守歌は「ねんねこ歌」と呼ばれました。
 古くは、狂言の歌謡にも「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこや、目だに覚むれば、ちょちちょち、あわわ」とあります。「目だに」は「目さえ」の意味です。
 また、「ねんねこ、しゃっしゃりませ、寝た子のかわいさ、起きて泣く子の面にくさ……」は、中国地方を中心に歌われてきた子守歌に基づくものでした。
 その「眠らせ歌」の流れは、大正十年(一九二一年)に、北原白秋が作詞した「揺籃(ゆりかご)のうた」にも及んでいます。「揺藍のうたを カナリアが歌うよ ねんねこ ねんねこ ねんねこよ……」。
 また、「ねんねこ」は、「ねんねこ半纏(はんてん)」の略語でもあります。
 幼児を背負うとき、防寒用に上からかぶせて着る、羽織に似た綿入れの上っ張りのこと。高浜虚子の俳句「ねんねこに埋めたる頬(ほお)に櫛(くし)落つる」という情景も、今では見ることが難しくなりました。






    <3月5日号の主な予定>

 ▽平成十四年度学校基本調査…………………………文部科学省 

 ▽平成十四年平均全国消費者物価指数の動向………総 務 省 




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