▽家計収支(十二月)………………………………総 務 省
平成14年度
第一部 新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第一章 我が国の初等中等教育の改革の歩みと今後の課題
戦後、日本国憲法の下で、教育基本法や学校教育法などの法令が体系的に整備され、小学校六年、中学校三年、高等学校三年、大学四年のいわゆる「六・三・三・四制」を採用した新しい学校制度が発足しました。制度の下、九年の義務教育の定着、高等学校教育の拡大、心身に障害のある児童生徒への教育機会の整備、幼稚園の整備が進められ、教育機会の拡大がなされました。一方、教育の量的な拡大とともに、経済の高度成長に伴う所得水準の向上や急速な都市化などによって社会が大きく変貌する中で、教育課程の基準である学習指導要領の改訂や教職員数の計画的整備、教員給与の改善が進められ、教育の質的な改善も進められました。さらに、昭和五十年代中頃からは、子どもの問題行動が社会的に大きな関心を集めるとともに、過熱化する受験競争の緩和が教育上の大きな課題となり、内閣総理大臣の下に設けられた臨時教育審議会において、教育改革に関する答申が出され、これを受けて、個性重視、生涯学習社会への移行、時代や社会の変化への対応などの様々な改革が進められました。平成十二年には、内閣総理大臣の下に、教育改革国民会議が設けられ、人間性豊かな日本人の育成、一人一人の才能を伸ばし、創造性に富む人間の育成、新しい時代にふさわしい学校づくりの観点から具体的な提言が行われました。
これらの提言を踏まえ、文部科学省は、特に、@学校教育の基本をしっかりと確認する、A時代や社会の変化に適切に対応する、B画一性から創造性へ、個性と能力を最大限に伸ばす教育を進める、C学校においても保護者、住民等に対する説明責任を十分に果たすとともに、教育委員会が地域に根ざした主体的かつ積極的な教育行政を展開する、という観点から、学校教育の改革を進めることとしています。
第二章 確かな学力の向上を目指して
文部科学省は、初等中等教育においては、学校に通っている間にすべての教育を完結させようとする考え方を採るのではなく、子どもたちに社会生活を営む上で必要な基礎・基本をしっかりと身に付けさせ、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力等まで含めた真の意味での学力をはぐくみ、生涯にわたって主体的に学び続け、問題を解決していくことができるようにする必要があると考え、このような学力を「確かな学力」と呼び、その育成のための施策を展開しています。
我が国の子どもたちの学力の現状をみてみると、全体として子どもたちの学習状態はおおむね良好だが、@学習内容を十分理解できていない子どもが少なくない、A高いレベルの学力を持つ子どもの割合が国際的にみて高くない、B勉強は大切だと認識しているが必ずしも好きではないという傾向がある、C学ぶ習慣が身についていない、D自然体験、社会体験など子どもの学びを支える体験が不足していることなどの問題点が明らかになっています。
文部科学省では、これらを踏まえ、子どもたちに「確かな学力」をはぐくむことを目指し、平成十四年四月から全国の小・中学校で、@教育内容の厳選、A選択学習の幅の拡大、B個に応じた指導の充実、C総合的な学習の時間の新設などを改訂の主な内容とする新しい学習指導要領を実施しています。また、新しい学習指導要領では、子どもの学習状況を適切に評価し、指導に活かしていくために、学習指導要領に示す目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)を一層重視することにしました。
また、文部科学省においては、各学校における「確かな学力」の向上のための取組の参考となるよう、平成十四年一月に「学びのすすめ」を公表するとともに、@個に応じた指導の充実、A学習意欲の向上に向けた取組、B「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想の策定、C情報活用能力の育成等、各学校の取組を支援するための様々な施策に取り組んでいます。
文部科学省では、これまで約十年に一度のサイクルで学習指導要領の改訂を行ってきましたが、今後は社会の激しい変化に機動的に対応する観点から、@継続的に行う全国的な学力調査の結果、A学校教育に関する意識調査の結果、B教育課程に関する研究開発の成果、C諸外国の教育課程についての比較分析などの実証的なデータの充実に努め、常設化した教育課程に関する審議会において、所要の改善を機動的に行うこととしています。
第三章 豊かな心の育成に向けて
中央教育審議会の答申においては、「生きる力」の核となる豊かな人間性を、@美しいものや自然に感動する心などの柔らかな感性、A正義感や公正さを重んじる心、B生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観、C他人を思いやる心や社会貢献の精神、D自立心・自己抑制力、責任感、E他者との共生や異質なものへの寛容などの感性や心であるとしています。
文部科学省においては、子どもたちの豊かな心をはぐくむために、心に響く道徳教育の充実や学校内外での多様な体験活動の促進を図るとともに、児童生徒の問題行動等に対応した教育相談体制の充実や、子どもたちを有害環境から守るための施策等を積極的に推進しています。
道徳教育については、新しい学習指導要領で、善悪の判断・郷土を愛することなどの内容の充実や、体験活動を活かすなどの改善を図るとともに、子どもたちが身につける道徳の内容をわかりやすく表した「心のノート」を作成・配布したり、地域の人材や多様な専門分野の社会人を「心のせんせい」として学校に配置するなどの施策を進めています。
また、子どもに想像力や考える習慣を身につけ、豊かな感性や思いやりの心をはぐくむため、「朝の読書」や読み聞かせなどの取組を一層普及させることや学校図書館の蔵書の充実など、読書活動の推進を図ることとしています。
その他、人権を尊重する心、自然や文化などを愛し大切にする心の育成、特別活動を通じた人間関係の確立などに取り組んでいます。
体験活動については、子どもたちが自然体験や社会体験などを行う場や機会を増やし、豊かな心やたくましさを育てるために、学校、家庭、地域が一体となってそれぞれの教育機能を発揮していくことが重要です。文部科学省では、「豊かな体験活動推進事業」を実施し、他校のモデルとなる先駆的な取組について協議会の開催や事例集の作成を通じて広く全国に普及し、すべての小・中・高等学校等における豊かな体験活動の円滑な展開を目指しています。また、教員の体験活動研修の推進、高等学校における生徒の自主的なボランティア活動の単位認定、職場体験・インターンシップ(就業体験)等の推進、放課後や週末の学校施設の開放、廃校の活用の促進等に取り組んでいます。
児童生徒の問題行動等については、わかる授業、楽しい学校の実現、教員の資質能力の向上、教育相談体制の充実、学校・家庭・地域・関係機関の連携、安心して通える学校づくりと出席停止制度の改善、不登校の子どもたちへの柔軟な対応等に取り組んでいます。
さらに、有害情報から子どもを守るため、政府全体で取組を行うとともに、情報活用能力の育成を図ったり、情報モラルの必要性を理解させるなどの取組を行っています。
第四章 信頼される学校づくりに向けて
学校教育の充実は、教員の資質能力に負うところが大きいと言えます。文部科学省では、養成、採用、研修の各段階を通じて、関連施策の体系的な推進を行っています。
教員養成については、現場の課題に適切に対処できるなどの力量を養うため、平成十年に大学等における教員養成カリキュラムの見直しを行いました。教員採用については、学力試験のみならず、人物評価を重視する方向での採用選考方法の改善や、条件附採用期間制度を運用して教員としての適格性を見極めるといった各都道府県教育委員会等の取組を促進しています。教員研修については、初任者研修をはじめとする各種研修の充実や大学院修学休業制度の整備を図るとともに、平成十五年度より「十年経験者研修」を実施することとしています。
さらに、教員の実績を評価し、やる気と能力に応じた処遇をするため、優秀な教員に対する表彰制度とそれに連動した特別昇給等を実施するための調査研究を全国で進めています。
また、文部科学省では、いわゆる「指導力不足教員」について、指導・研修体制を整えるとともに、分限制度を的確に運用する人事管理システム作りを促進するための調査研究事業を実施するとともに、児童生徒に対する指導が不適切であること等の要件に該当する者を、教員以外の職に異動できるようにする法改正、また、懲戒免職処分を受けた教員の教員免許状の失効及び取上げに関する措置を強化する法改正を行うなどの取組を行っています。
また、教員免許状を有しなくても、社会人や地域住民が教壇に立つことができる「特別非常勤講師制度」や、教員免許状を有しない社会人に対して特別免許状を授与する「特別免許状制度」を整備するとともに、全国の学校で社会人を活用する「学校いきいきプラン」などを展開しています。さらに、民間人の校長・教頭への登用を行えるよう、資格要件を緩和しています。
保護者や地域に信頼される学校づくりを進めるために、学校運営の状況について自己評価を行い、保護者等に学校の情報を積極的に提供することや、保護者や地域住民に意見を求める学校評議員制度を活用することを通じて、学校としての説明責任を果たすための取組を進めています。
さらに、地域に根ざした主体的かつ積極的な教育行政を展開するために、教育委員に保護者が含まれるように努める、教育委員会会議を原則公開にする、教育行政に関する相談窓口を明示する等を法律に規定するなどの施策を行っています。
教育の地方分権を推進し、児童生徒の実態に応じた学校教育の充実を図るため、学級編制や教職員配置の弾力化を進め、義務教育費国庫負担制度等の見直しなどを行っています。
学校教育の多様化・弾力化を進めるため、総合学科の設置や中高一貫教育の推進、新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究なども行っています。
公立学校施設については、現在の耐震設計基準ができる昭和五十六年以前に建築された建物が老朽化し、順次改築が必要な時期を迎えており、建物の老朽化による問題を避けるために、改築・改修・補強を行っていく必要があります。これまでに、大地震の発生等に伴って、地震防災対策のための法改正等が行われ、学校施設の改築や補強事業の国の補助率の引き上げ等が行われてきています。文部科学省は、中・長期的な視点にたって計画的に公立学校施設の整備を進めていくことができるよう、市町村などの取組を支援しています。
学校における危機管理と安全管理を徹底するため、学校安全及び児童生徒の心の健康問題への対応(「心のケア」)の充実に総合的に取り組む「子ども安心プロジェクト」を実施するなど、学校の安全対策の充実に取り組むとともに、学校における安全教育を充実するために、学校安全参考資料「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」を作成し、各都道府県・市町村教育委員会に配布する等の取組を行っています。
第五章 諸外国の初等中等教育改革
経済活動の国際競争が激しさを増し、情報革命が急速に進展する二十一世紀社会のめまぐるしい変化の中で、欧米やアジアの諸国も、国の将来を切り拓く人材を育てる教育改革に取り組んでいます。諸外国とも、学力を第一の重要な問題と捉えており、その学力問題に取り組む手法や目標は国によって違いがありますが、「基礎基本の確実な修得」とその上に立った「個性や創造性の伸長」を追求していることには変わりがありません。
また、いずれの国でも心の教育の面で学校にかかる期待は高まっており、公民教育やボランティア活動の導入・強化などを通じて社会性や道徳性を育てていこうとしています。
学校運営については、多くの国に共通して、一定の共通基準の下に学校の自主的な取組を認め、その結果を問いかけるアカウンタビリティ(教育の結果に対する責任)が重視されてきています。
アメリカでは、州が教育の責任を負うのが基本ですが、昨今では、連邦主導が強まり、この下で、学力向上を最大の目標として教育スタンダードの制定や共通テストの実施など、共通の方向で各州の改革が進められています。また、「よきアメリカ市民を育てる」「教育の場である学校の安全性を確保する」という二つの理由から徳育の面についても学校に対する期待が大きくなってきています。また、アカウンタビリティ政策の実施、学校選択制度の拡大、教員の待遇の改善、教員免許の更新制度の導入・更新要件の厳格化などが行われています。
イギリスでは、一九八〇年代半ばに教育水準の向上を第一の目標として教育改革が始まり、「全国共通カリキュラム」が導入され、「全国テスト」が実施されています。学校教育では宗教教育及び社会の規範意識などを育てる公民教育が行われ、「人格形成・社会性の発達・健康教育」が教科横断的に実施されているほか、スクールカウンセラーの配置がなされています。また、アカウンタビリティ政策がとられ、学校監査の強化、親の学校選択権の拡大、教員への能力給導入、初等学校低学年における三十人を上限とする学級編制基準の設定などの取組が進められています。
フランスでは、一九八〇年代末から教育水準の引上げと教育規模の拡大を目指す改革が始まり、新教育基本法が制定され、初等中等教育の各段階では子どもの能力に応じた弾力的な編成を可能にする教育課程の改革が行われました。さらに、公民教育の充実や、学力不振や校内暴力の問題が大きい地区を「優先教育地区」に指定するなどの取組が行われています。学校運営については、一九六〇〜一九七〇年代に小学校では「学校評議会」、中学・高校では「管理評議会」が創設され、保護者や生徒の学校運営への参加が促進されています。教員については、教員養成制度の改革や、教員を補佐する「学校教育補助員」の雇用などが行われています。
ドイツでは、従来、各州が独自に教育政策を決定していましたが、一九九〇年代末から、学力向上に向けた改革論議が全国規模で広がり、全国的な教育スタンダードの設定や学力テストの実施などを中心とする学力向上策が発表されました。徳育の重要性も強調され、宗教の授業が学校教育における徳育の中心的役割を担っています。また、すべての州でスクールカウンセラーが配置されているほか、州政府は、青少年がボランティア活動に積極的に参加することを奨励しています。また、学校運営への親、生徒の参加・協力を保証する学校会議等の体制整備が進められています。
中国では、一九八〇年代半ばから「優れた人材の育成」を目的に教育改革に取り組んでいます。現在では、九年制義務教育の全国実施が基本的に達成され、教育水準の向上に改革の重点を移しつつあります。教育水準の向上の基本的な考え方は「子どもの持つ様々な資質を全面的に」のばそうとする「資質教育」で、特に「創造性」「実践能力」の育成が重点とされています。
中国の教育では「徳・知・体の全面発達」を理想としていますが、「徳」については、単に道徳のみならず、社会主義に根ざした思想や世界観、政治信念などを含んでおり、学校教育では特に重要な教育活動として扱われています。教員の確保については、優秀教員を表彰するなどして地位向上を図ったり、一般公務員の水準を下回らない給与水準を規定する等、処遇改善をするとともに、「契約任期制」による能力主義や、教員に研修を義務づける「継続教育プロジェクト」の実施等、資質能力の向上を図っています。
韓国では、一九八〇年代後半に「自主的、創造的、道徳的」人間の育成を目指して教育改革が始まり、学校の自主・自立性の確立、生徒を中心にした教育、生活体験の重視などの改革を進めています。また、しつけや人格形成、思想・政治面の教育を含む徳育「仁性教育」が重視されています。学校運営については、学校の自主性・自立性を確立するため、保護者や地域住民が参加する「学校運営委員会」が設けられ、学校運営の審議を行っています。また、小・中学校で三十五人以下の学級規模とすることを目指して教員配置計画が立てられています。
第二部 文教・科学技術施策の動向と展開
序章 教育改革の推進
我が国の教育は、第二次大戦後、機会均等の理念を実現し、国民の教育水準を高め、経済社会の発展の原動力となるなど、様々な成果を上げてきました。しかし、現在、学校におけるいじめ、不登校などが社会的に問題となり、青少年の間での「公」を軽視する傾向、行き過ぎた平等主義による子どもの個性・能力に応じた教育の不十分さ、教育制度が時代や社会の進展から取り残されつつあることなどの問題が指摘されるなど、教育に対する信頼が大きく揺らいでいます。このような状況に対応するため、文部科学省では、教育改革国民会議の提案を踏まえ、今後の教育改革の取組の全体像を示し、具体的な主要施策や課題、取組予定を明らかにする「二十一世紀教育新生プラン」を取りまとめ、平成十三年度、十四年度の通常国会において、教育改革に関連する法律を成立させるとともに、教育改革を着実に推進するため、所要の予算措置を行っています。
また、新しい時代にふさわしい教育基本法と教育施策を総合的かつ計画的に推進するための教育振興基本計画については、平成十三年十一月に中央教育審議会に諮問され、十四年十一月に中間報告が提出されました。
第一章 生涯学習社会の実現へ
「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される」ような生涯学習社会の構築を目指していくことは重要な課題です。
このため、文部科学省は、公民館、図書館など地域における社会教育施設の活性化、高機能化や、市町村が行う学級・講座などへの助成を行うとともに、放送大学の整備・充実、専修学校の振興、大学入学資格検定制度の改善・充実、高等教育における学習機会の拡大など、多様で総合的な学習機会の拡充に取り組んでいます。
さらに、心豊かな日本人の育成を目指し、青少年の奉仕活動・体験活動の推進を図るため、全国的に推進体制の整備を進めるとともに社会的気運の醸成に取り組んでいます。
また、完全学校週五日制の下で、地域で子どもを育てる環境を整備するため、「新子どもプラン」を策定し、関係省庁とも連携した子どもの多彩な体験活動の機会と場の充実を行っています。
すべての教育の出発点である家庭教育の拡充を図るため、家庭教育に関する学習機会や情報の提供、相談体制の整備、地域で子育てを支援する体制の整備などに取り組んでいます。
さらに、男女共同参画社会の形成に向け、学習活動の充実等を推進しています。
また、急速に進行している少子化に対応するため、地域で子どもを育てる教育環境の整備や教育に伴う経済的負担の軽減といった観点から、少子化に対応した教育施策の推進に取り組んでいます。
第二章 初等中等教育の一層の充実のために
文部科学省においては、基礎学力を向上させ「生きる力」をはぐくむ教育を目指し、完全学校週五日制と新しい学習指導要領のねらいの実現のための諸施策の実施に取り組むとともに、道徳教育・体験活動の充実、環境教育の推進、豊かな科学的素養の育成、読書指導・学校図書館の充実、国旗・国歌の指導などに取り組んでいます。また、深刻な状況が続いている暴力行為、いじめ、不登校等の解消を目指し、各種施策を総合的に推進しています。
さらに、魅力ある高等学校づくりのために、総合学科や単位制高等学校の設置など高等学校教育の個性化・多様化を進め、入学者選抜等の改善を行うとともに、中高一貫教育を推進しています。
また、進路指導の改善、幼児期にふさわしい教育の推進、障害のある児童生徒の一人一人のニーズに応じた教育、人権教育の推進、より良い教科書のための制度の充実・改善、魅力ある優れた教員の確保、安全で快適な学校施設の整備と教材の整備などを行い、初等中等教育の一層の充実のための様々な取組を進めています。
第三章 高等教育の多様な発展のために
文部科学省においては、現在、積極的に大学改革に取り組んでおり、教育研究の質の向上、多様な学習需要への対応、組織運営体制の整備、大学の質の保証に係る新たなシステムの構築、国立大学の再編・統合、国立大学の法人化、第三者評価に基づく競争原理の導入などを進めているところです。今後も、中央教育審議会の答申を踏まえ、大学等が一層主体的・機動的に質の高い教育研究活動を展開できるような改革を推進していくこととしています。
大学院については、近年の学術研究の進展、急速な技術革新、社会・経済の高度化・複雑化などの変化に伴い、大学院に対する期待が高まっており、多様な形で教育研究の一層の高度化・活性化が図られるよう、改善を行っています。平成十四年八月には、中央教育審議会において、法科大学院を含む専門職大学院の設置が提言され、同年十一月に必要な法改正が行われたところです。
また、社会に開かれた高等教育に向けた取組、理工系人材の養成、医療人育成、人権教育の推進など、高等教育の質的水準の向上に向けた取組を進めています。さらに、大学入学者選抜の改善、高等教育機関の多様な展開、育英奨学事業の充実、就職指導の充実など、高等教育の多様な発展のための様々な取組も進めています。
第四章 私立学校の振興のために
私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献しています。
このため、国は、私立学校の振興を重要な政策課題として位置づけ、@経常費補助を中心とする私学助成事業、A日本私立学校振興・共済事業団における貸付事業、B税制上の特例措置などの施策をはじめとする振興方策を講じています。特に、私立学校の特色ある教育研究に対する補助の重点化、私立学校のIT化に対応した補助の充実、私立学校施設の高度化・高機能化などを推進し、私立学校の教育研究条件の維持向上及び私立学校に在学する学生生徒等の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、その経営の健全性を高めることとしています。
第五章 科学技術・学術政策の総合的推進
文部科学省では、科学技術基本法及び科学技術基本計画に基づいて、我が国の科学水準の向上を図り、科学技術の振興を図るため、科学技術政策研究所による調査研究や各府省の経費の見積り方針の調整、科学技術白書による施策の報告、科学技術の現状把握のための調査・公表、科学技術振興調整費の配分・活用など様々な取組を行っています。
また、大学等で行われる学術研究について、研究費の充実、若手研究者の養成・確保、研究機関や研究基盤の整備、産学連携や国際交流の推進、特色ある世界水準の研究の重点的な推進など積極的な振興を図っています。
また、文部科学大臣の諮問に応じて様々な調査審議等を行う科学技術・学術審議会を設け、その審議を受けて科学技術・学術の振興のための諸施策を講じています。
第六章 研究開発の戦略的重点化
文部科学省では、科学研究費補助金等の研究費を充実するとともに、大学等における独創的・先駆的な研究を推進するなど、基礎研究の推進に取り組んでいます。
一方、国家的・社会的課題に対応した研究開発分野として、@生物が営む生命現象の複雑かつ精緻なメカニズムを解明する科学であるとともに、その成果を医療、環境、農林水産業等の様々な分野に応用できる科学技術であるライフサイエンス分野をはじめ、A急速に進展しており、高度情報化社会の構築と情報通信産業やハイテク産業の拡大に直結する情報通信分野、B地球温暖化等の解明に向け、観測から予測・解明までを有機的・体系的に結びつけた研究開発を推進している環境分野、C広範な科学技術分野の飛躍的な発展の基盤を支える重要分野であるものとして期待されるナノテクノロジー・材料分野など、その発展が国民生活の向上に大きく寄与する各分野について、戦略的に研究開発を進め、それぞれの分野で大きな成果を上げています。
また、@人類の知的資産の拡大に寄与するだけでなく、社会経済基盤の拡充や先端技術の開拓にも大きく貢献する研究・開発・利用を推進する宇宙分野、A供給安定性・地球環境保全等に優れたエネルギー源であるとともに、二十一世紀の人類の知的フロンティアの開拓と我が国の新産業の創出に貢献する原子力分野、B全地球規模での海洋調査・観測を行うとともに、海洋・極限環境の有用資源を利用するための研究を推進する海洋分野、C我が国の経済力の源泉であり、世界的にも最高水準である製造技術分野、D自然災害から人命・財産を守り、被害の軽減に貢献する地震・防災分野等の様々な分野について、研究開発を進めています。
第七章 科学技術システムの改革
文部科学省においては、競争的資金の改革と拡充による研究者個人の能力が最大限に発揮される研究開発システムの構築、評価における公正さと透明性の確保や評価結果の資源配分への反映などの評価システムの改革等の施策の推進に努めているところです。また、産学官連携の強化や、大学等の研究成果を革新的かつ実用的な技術に育成するなど研究開発成果の社会還元の推進に取り組んでいます。
地域においても、大学、公的研究機関等を核とした関連研究機関や企業等が集積する拠点である「知的クラスター」の創成をはじめ、科学技術振興に資する研究開発の推進や科学技術振興策を審議する審議会等の設置や科学技術政策大綱・指針の策定などが行われており、独自の科学技術振興策のための環境整備が行われています。
また、世界トップレベルの研究者養成を目指して、若手研究者の支援など研究人材養成施策の有機的な連携を図りつつ、その拡充に努めています。また振興分野の機動的な研究人材養成、技術者の養成・確保に努めているところです。
また、施設・設備の整備や知的基盤の整備などの研究開発基盤の整備や、積極的な科学技術活動の国際的な展開にも努めています。
さらに、国民の「科学技術離れ」、「理科離れ」に対応して、「科学技術・理科大好きプラン」を平成十四年度から開始したことをはじめ、国民の科学技術に対する理解の増進を目的とした様々な施策を行っています。
第八章 スポーツの振興と青少年の健全育成に向けて
スポーツは、人生を豊かで、充実したものにする世界共通の人類の文化の一つであり、その振興は明るく豊かで活力に満ちた社会を形成するために、極めて重要です。このため、文部科学省では、平成十二年に策定されたスポーツ振興基本計画の三つの柱である、誰もが身近にスポーツを楽しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向けた地域におけるスポーツ環境の整備、トップレベルの競技者の育成・強化等による我が国の国際競技力の総合的な向上、学校体育・スポーツと生涯スポーツ・競技スポーツの連携の推進を中心に、スポーツの振興を図っています。また、平成十三年より全国販売が開始されたスポーツ振興くじ(toto)を活用したスポーツ振興のための財源確保に努めています。なお、二〇〇二年ワールドカップサッカー大会の支援を行い、国際的にも高い評価を受けました。この大会をきっかけに、日本文化の紹介や日本と韓国のスポーツ交流の拡大などが行われています。
児童生徒の心身の健康の保持増進を図り、薬物乱用、性の逸脱行動、生活習慣病の兆候などといった健康に関する課題に対処するため、健康教育の充実に向けた様々な取組を進めています。
子どもたちの社会性や豊かな人間性をはぐくむため、子どもの体験活動の機会の充実を図るための各種施策を実施、子どもの読書活動の推進に関する施策の充実、さらに、平成十三年四月に創設された「子どもゆめ基金」による、民間団体が実施する体験活動等に対する支援を行っています。
また、メディア上の有害情報などから青少年を守る取組なども推進しています。
第九章 文化を大切にする社会の構築に向けて
心豊かで質の高い生活を送り、創造性に富んだ活力ある社会を築いていくために、文化の果たす役割は重要です。このため、「文化芸術振興基本法」、「文化芸術の振興に関する基本的な方針」、文化審議会答申に基づいて、文化芸術の振興に関する施策を進めています。
その主な内容として、平成十四年度に文化芸術創造プラン(新世紀アーツプラン)を創設し、「世界水準の芸術家、世界に羽ばたく新進芸術家、感受性豊かな子どもたち」の育成に向けて支援を行っています。また、芸術文化振興基金による支援、メディア芸術の振興、芸術祭の開催等の芸術創造活動の推進を行うとともに、地方公共団体や地域の芸術団体が行う文化活動への支援やメセナ活動(企業の支援活動)の支援、美術館等の文化施設の運営の充実等を行っています。
また、国宝・重要文化財をはじめとする文化財の保存と活用、伝統文化の保存と次代への継承の支援、国立文化施設の充実、国語施策、宗務行政の推進などに取り組んでいます。
さらに、法律ルールの整備、円滑な流通の促進、国際的課題への対応、著作権教育の充実、司法救済制度の充実の五つの分野を「戦略五分野」として、著作権施策を総合的に展開しています。
第十章 国際化・情報化への対応
近年の国際会議などにおいて、教育が主要課題として取り上げられ、その重要性が確認されているところです。このような国際的な動向を踏まえ、二十一世紀の国際社会の中で主体的に生きる日本人を育成していくための諸施策を充実すること、諸外国の人々とお互いの文化、習慣、価値観などを理解し合い、信頼関係を築いていくために、国際交流を一層推進すること、国際的にも重視されている開発途上国への開発協力を積極的に推進していくこと、科学技術創造立国を目指す我が国が、国際的な交流を通じて科学技術の発展を図るとともに、国際社会が共通して取り組むべき問題の解決に貢献していくこと、などの課題への取組を強化することが必要です。
文部科学省では、国際理解教育、外国語教育、海外子女教育や海外から帰国した児童生徒に対する教育など国際社会に生きる日本人の育成、留学生交流の推進、日本語教育、学生・教員・青少年の交流、スポーツ・文化交流など相互理解を進める国際交流、我が国の知的資源を活用した開発途上国への開発協力の推進などを行っています。
また、IT革命が進む中、文部科学省においては、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の各分野における情報化の積極的な推進のため、様々な施策を講じています。学校教育においては、子どもたちに必要な資質を養うために、新しい学習指導要領においても、情報教育の一層の充実を図ることとし、教育用コンピュータの配置、校内LANの整備、教員研修の実施、教育用コンテンツ(*1)の開発・普及などを行っています。
また、高等教育機関における高度な情報技術者・研究者の養成に努めたり、生涯学習社会の構築に向けて、「エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)」を活用した情報発信を行っています。
さらに、科学技術・学術研究分野の情報化と情報通信分野における創造性ある研究開発の推進や文化やスポーツ分野においても、情報技術の活用に取り組んでいます。
*1 コンテンツ
インターネットや電子媒体などにおける情報の内容。
第十一章 新たな時代の文教施設を目指して
文教施設は、小・中学校や図書館、スポーツ・文化施設などの地域のコミュニティの拠点となるものから、最先端の学術研究や高度な人材養成を担う大学・研究機関の施設など、文教施策を展開する基盤として重要な役割を果たすものです。文部科学省では、社会の変化に適切に対応した文教施設づくりを目指し、コミュニティの拠点としての整備、学校施設のバリアフリー(*2)化や安全管理の促進、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の推進、学校施設整備指針などの策定、余裕教室の活用などの取組を進めています。
大学等の施設についても、知的創造活動や知的資産の継承の場であるとの認識から、整備充実に積極的に取り組んでおり、国立大学等の施設については、科学技術創造立国を目指す我が国にとって重要な基盤であることから、世界水準の教育研究成果の確保を目指して「国立大学等施設緊急整備五か年計画」を策定し、整備充実に積極的に取り組んでいます。
*2 バリアフリー
障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的・制度的・心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。
第十二章 防災対策の充実
自然的条件により発生する地震災害、火山災害、風水害など、また、社会・産業の高度化・複雑化・多様化に伴う海上災害、原子力災害などあらゆる災害に対し適切に対処するため、防災行政を総合的・計画的に推進することは、極めて重要です。このため、文部科学省においては、@学校等における児童生徒等の生命・身体の安全を図ること、A教育研究活動の実施を確保すること、B文教施設及び設備並びに研究開発機関等の施設及び設備の防護・復旧に万全を期すること、C防災に関する研究開発等の効率化と強化を図ること、D原子力災害の発生及び拡大を防止し、原子力災害の復旧を図ること、E被災者の救援活動に関し、的確な連携、協力を行うこと、の観点を基本とし、防災対策の充実に努めています。
第十三章 行政改革等の推進
特殊法人等改革、公益法人改革、規制改革、構造改革特区、情報公開、政策評価などの行政改革や構造改革については、文部科学省としても教育改革等との密接な関連の下、積極的に推進しているところです。
また、知的財産戦略の推進についても努めています。
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十二月の雇用・失業の動向
◇就業状態別の人口
平成十四年十二月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千二百九十一万人、完全失業者は三百三十一万人、非労働力人口は四千三百万人と、前年同月に比べそれぞれ七十一万人(一・一%)減、六万人(一・八%)減、九十四万人(二・二%)増となっている。
◇就業者
(1) 就業者
就業者数は六千二百九十一万人と、前年同月に比べ七十一万人(一・一%)の減少となり、二十一か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百十五万人、女性は二千五百七十六万人で、前年同月と比べると、男性は四十万人(一・一%)減、女性は三十一万人(一・二%)減となっている。
(2) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百四十八万人、自営業主・家族従業者は 九百十九万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は十三万人(〇・二%)減、自営業主・家族従業者は五十三万人減となり、雇用者は十六か月連続の減少となっている。
雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百八万人と、十四万人(〇・三%)減、十六か月連続の減少
・常 雇…四千五百五十万人と、六十五万人(一・四%)減、十七か月連続の減少
・臨時雇…六百二十八万人と、四十一万人(七・〇%)増、十二か月連続の増加
・日 雇…百三十万人と、九万人(七・四%)増、三か月ぶりの増加
(3) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百三十一万人と、十七万人(六・九%)減
○建設業…六百二十三万人と、九万人(一・五%)増、二十五か月ぶりの増加
○製造業…一千二百八万人と、四十六万人(三・七%)減、二十か月連続の減少
○運輸・通信業…四百十五万人と、九万人(二・二%)増、三か月連続の増加
○卸売・小売業,飲食店…一千四百三十六万人と、六十五万人(四・三%)減、二か月連続の減少
○サービス業…一千八百十二万人と、二十九万人(一・六%)増、三十四か月連続の増加
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百六万人と、三万人(〇・六%)増
○製造業…一千百二十五万人と、四十一万人(三・五%)減
○運輸・通信業…三百九十八万人と、十一万人(二・八%)増
○卸売・小売業,飲食店…一千百九十四万人と、二十四万人(二・〇%)減
○サービス業…一千五百七十五万人と、二十四万人(一・五%)増
(4) 従業者規模
企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百十八万人と、三十九万人(二・二%)減、三か月ぶりの減少
○三十〜四百九十九人規模…一千八百二十万人と、三十三万人(一・八%)増、三か月ぶりの増加
○五百人以上規模…一千百七十七万人と、二十八万人(二・三%)減、二十か月連続の減少
(5) 就業時間
十二月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…二千百九万人と、五十二万人(二・四%)減少
・うち一〜三十時間未満…一千三百七万人と、三十一万人(二・四%)増加
○三十五時間以上…四千二十八万人と、三十四万人(〇・八%)減少
・うち四十九時間以上…一千五百三十七万人と、八十万人(五・五%)増加
また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四〇・二時間で、前年同月と同数となっている。
◇完全失業者
(1) 完全失業者数
完全失業者数は三百三十一万人と、前年同月に比べ六万人(一・八%)減となっている。男女別にみると、男性は二百八万人、女性は百二十三万人で、前年同月に比べ、男性は九万人(四・一%)の減少、女性は三万人(二・五%)の増加となっている。
また、世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…百五万人と、五万人増加
○世帯主の配偶者…四十一万人と、二万人減少
○その他の家族…百四十一万人と、五万人減少
○単身世帯…四十四万人と、三万人減少
(2) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・五%と前月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・六%、女性は五・三%と、前月に比べ男性は同率、女性は〇・四ポイントの上昇となっている。
男女計の完全失業率は平成十三年十二月及び平成十四年十月と並んで過去最高、女性の完全失業率は平成十四年五月と並んで過去最高となっている。
(3) 完全失業率(原数値)
完全失業率は五・〇%と、前年同月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・三%、女性は四・六%と、男性は〇・二ポイントの低下、女性は〇・二ポイントの上昇となっている。
(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…三十二万人(三万人減)、九・三%(〇・四ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十八万人(五万人減)、五・二%(〇・四ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…三十二万人(三万人増)、四・一%(〇・三ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十九万人(三万人減)、四・四%(〇・一ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…四十九万人(同数)、七・二%(〇・三ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…二十三万人(五万人増)、五・七%(一・〇ポイント上昇)
・六十〜六十四歳…二十六万人(五万人減)、九・三%(一・九ポイント低下)
○六十五歳以上…九万人(一万人減)、三・〇%(〇・二ポイント低下)
[女]
○十五〜二十四歳…二十三万人(一万人増)、七・一%(〇・六ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十万人(一万人減)、六・五%(〇・一ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(三万人増)、四・三%(〇・四ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十一万人(一万人減)、三・三%(〇・一ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十五万人(一万人増)、三・六%(〇・一ポイント上昇)
・五十五〜五十九歳…九万人(同数)、三・五%(〇・三ポイント低下)
・六十〜六十四歳…七万人(二万人増)、四・四%(一・二ポイント上昇)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・二%(〇・六ポイント上昇)
(5) 求職理由別完全失業者数
求職理由別完全失業者数は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十八万人
○勤め先都合…百十四万人
○自己都合…百五万人
○学卒未就職…十二万人
○新たに収入が必要…三十五万人
○その他…二十三万人
(6) 地域別完全失業率
平成十四年十〜十二月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…五・七%(〇・一ポイント上昇)
東 北…五・三%(〇・二ポイント上昇)
南関東…五・二%(〇・三ポイント上昇)
北関東・甲信…四・三%(〇・三ポイント低下)
北 陸…四・一%(〇・二ポイント上昇)
東 海…四・一%(〇・四ポイント低下)
近 畿…六・四%(〇・一ポイント上昇)
中 国…四・〇%(〇・四ポイント低下)
四 国…四・八%(〇・八ポイント低下)
九 州…五・八%(〇・一ポイント上昇)
一 労働力人口
就業者と完全失業者を合わせた労働力人口は六千六百八十九万人(男性三千九百五十六万人、女性二千七百三十三万人)と、前年に比べ六十三万人減と四年連続の減少となった。このうち、就業者が八十二万人減、完全失業者が十九万人増となっている。男女別にみると、男性は前年に比べ三十六万人減と五年連続減少となっており、女性は二十七万人減と減少に転じた(第1図参照)。
○労働力人口比率
労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六一・二%となり、前年に比べ〇・八ポイントの低下と、五年連続で低下した(第1表参照)。
男女別にみると、男性は七四・七%で、前年に比べ一・〇ポイント低下した。これを年齢十歳階級別にみると、すべての年齢階級で低下している。
女性は四八・五%で、前年に比べ〇・七ポイント低下した。年齢階級別では、二十五〜三十四歳で上昇、その他の年齢階級では低下している。
二 就業者
就業者数は六千三百三十万人となり、前年に比べ八十二万人減と五年連続の減少となった。減少幅は平成十三年(三十四万人減)に比べ拡大している。男女別にみると、男性は前年に比べ四十七万人減と五年連続で減少となっており、女性も三十五万人の減少となっている(第2図参照)。
(1) 従業上の地位別就業者
就業者を従業上の地位別にみると、自営業主・家族従業者は九百七十五万人と、前年に比べ四十三万人減少しており、就業者に占める自営業主・家族従業者の割合は一五・四%と、前年に比べ〇・五ポイント低下している。
また、雇用者は五千三百三十一万人と前年に比べ三十八万人減少しており、就業者に占める割合は八四・二%と前年に比べ〇・五ポイント上昇している。
雇用者のうち非農林業雇用者は五千二百九十二万人で、三十九万人の減少となっている。
このうち、
・常雇は四千五百七十六万人と、前年に比べ七十三万人減と五年連続の減少
・臨時雇は六百一万人と、三十七万人増と昭和五十一年以降増加が継続
・日雇は百十六万人と、三万人減少
となっている(第3図参照)。
非農林業雇用者に占める常雇の割合は八六・五%となり、前年に比べ〇・七ポイントの低下となった。常雇の割合は平成七年から八年連続の低下となっており、臨時雇・日雇の割合は平成七年から八年連続の上昇となっている。常雇では男性の割合が高く、臨時・日雇では女性の割合が高い。
(2) 産業別就業者
主な産業別就業者数の前年と比べると、サービス業が三十六万人増と引き続き増加したのに対して、製造業は六十二万人減と十年連続減少、建設業は十四万人減と五年連続で減少した。また、運輸・通信業は六万人減、「卸売・小売業,飲食店」は三十五万人減となった。
(3) 企業の従業者規模別雇用者
非農林業の雇用者を企業の従業者規模別(官公を除く)に前年と比べると、一〜二十九人規模が六万人増、三十〜四百九十九人規模が九万人増となる一方、五百人以上規模は六十四万人減と、大幅な減少となった。
三 完全失業者
完全失業者数は三百五十九万人となり、前年に比べ十九万人増加し、十一年連続の増加となった。男女別にみると、男性の完全失業者は二百十九万人と前年に比べ十万人増、女性の完全失業者は百四十万人と前年に比べ九万人増となっている(第4図、第5図参照)。
完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・四%と、前年に比べ〇・四ポイント上昇し、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。男女別では、男性は五・五%、女性は五・一%で、男女ともに過去最高となっている。
男女別の完全失業率は、平成九年に男女とも三・四%となった後、十年以降、男性の完全失業率が女性の完全失業率を上回って推移している(第5図参照)。
(1) 年齢階級別完全失業率
男女別の完全失業率を年齢十歳階級別にみると、男性は十五〜二十四歳が最も高く、次いで五十五〜六十四歳が高い。女性は、十五〜二十四歳が最も高く、次いで二十五〜三十四歳が高くなっている。また、男性では六十五歳以上を除く各年齢階級で、女性では十五〜二十四歳及び六十五歳以上を除く各年齢階級で、比較可能な昭和四十三年以降最高となっている。
(2) 世帯主との続き柄別完全失業率
完全失業率を世帯主との続き柄別にみると、世帯主が四年連続で三%を超え、前年と比べ〇・二ポイント上昇し三・七%となっている。また、他の続き柄のいずれも上昇しており、比較可能な昭和四十三年以降最高となっている(第6図、第7図参照)。
(3) 求職理由別完全失業者
完全失業者を求職理由別にみると、
・「非自発的な離職による者」が百五十一万人、このうち
・「勤め先や事業の都合」により前職を離職した者が百十五万人
・「定年又は雇用契約の満了」により前職を離職した者が三十六万人
・「自発的な離職による者」(自分又は家族の都合により前職を離職)が百十五万人
・「学卒未就職者」(学校を卒業して新たに仕事を探し始めた者)が十八万人
・「その他の者」が七十万人、このうち
・「収入を得る必要が生じたから」新たに仕事を探し始めた者が四十万人
・「その他」(時間に余裕ができた等)の理由で新たに仕事を探し始めた者が三十万人
となっている。
四 地域別
全国十地域別の平成十四年平均の就業者数及び完全失業率は、次のとおりとなっている。
(1) 就業者数
就業者数は、南関東を除く九地域で、前年に比べ減少している。
(2) 完全失業率
完全失業率及び対前年増減は次のとおりとなっている(第8図参照)。
・北海道…六・〇%(〇・一ポイント上昇)
・東 海…四・一%(同率)
・東 北…五・九%(〇・九ポイント上昇)
・近 畿…六・七%(〇・四ポイント上昇)
・南関東…五・四%(〇・五ポイント上昇)
・中 国…四・三%(〇・一ポイント上昇)
・北関東・甲信…四・四%(〇・三ポイント上昇)
・四 国…五・二%(〇・一ポイント上昇)
・北 陸…四・〇%(〇・一ポイント上昇)
・九 州…六・一%(〇・五ポイント上昇)
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賃金、労働時間、雇用の動き
◇賃金の動き
十二月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は六十三万二千七百五十九円、前年同月比二・四%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万千四百九十二円、前年同月比〇・三%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万二千四百七円、前年同月比〇・八%減、所定外給与は一万九千八十五円、前年同月比は六・五%増であった。
また、特別に支払われた給与は三十五万千二百六十七円、前年同月比は三・九%減であった。
実質賃金は、二・〇%減であった。
きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に不動産業三・一%増、製造業一・三%増、電気・ガス・熱供給・水道業及び運輸・通信業〇・二%増、金融・保険業〇・一%増、卸売・小売業,飲食店〇・一%減、サービス業一・二%減、建設業一・四%減、鉱業一一・三%減であった。
◇労働時間の動き
十二月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十三・五時間、前年同月比〇・一%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十三・三時間、前年同月比〇・五%減、所定外労働時間は十・二時間、前年同月比六・四%増、所定外労働時間の季節調整値の前月比は〇・三%減であった。
製造業の所定外労働時間は十五・〇時間、前年同月比一八・七%増、季節調整値の前月比は〇・八%減であった。
◇雇用の動き
十二月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・六%減、常用労働者のうち一般労働者では一・五%減、パートタイム労働者では二・五%増であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業一・五%増であった。前年同月を下回ったものは卸売・小売業,飲食店〇・二%減、不動産業〇・五%減、建設業〇・七%減、運輸・通信業〇・八%減、金融・保険業一・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・九%減、製造業三・五%減、鉱業六・九%減であった。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者三・六%減、パートタイム労働者二・七%減、卸売・小売業,飲食店では一般労働者四・二%減、パートタイム労働者五・五%増、サービス業では一般労働者〇・八%増、パートタイム労働者四・七%増であった。
一人静
香焚(た)かれ 一人静(ひとりしずか)の 円覚寺 勝村(かつむら) 茂美(しげみ)
一人静は、センリョウ科の多年草で、春、高さ約二十センチメートルほどの一本の茎の先に、白く小さな花が密生して咲きます。日本全土、朝鮮半島、中国東北など、東アジアに広く分布し、低い山や山里に多く見られます。
二人静も同じようなところに分布し、三十センチメートルほどの茎の先に、四枚の楕円形の葉が付き、初夏その中に二本の花穂が出て、白い花を開きます。一人静、二人静とも山道を歩くとひっそりと咲いていることから、この名前が付いたともいわれています。また、別名をヨシノシズカというのは、能の曲名「二人静」に関係があるようです。源義経が愛した静御前を題材にしたもので、吉野の野辺で若菜を摘む菜摘女が、川のほとりで見知らぬ女性に出会ったときから様子がおかしくなり、神職に「自分は静御前である」と言い、宝蔵の中の舞の衣裳を身に着けると、全く同じ姿をした静御前の霊が現れます。
霊は義経が吉野山を落ちのびたときのことなどを物語って舞を舞います。それと一緒に菜摘女も霊と同じ動きをするという話で、いわゆる憑物(つきもの)の能の一つです。
◇全世帯の家計
前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十四年五月に実質減少となった後、六月以降四か月連続の実質増加となり、十月は同水準となったが、十一月、十二月は二か月連続の実質減少となった。
一人当たりの消費支出は十一万一千七百七十五円で、前年同月に比べ実質〇・一%の増加となった。
◇勤労者世帯の家計
前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年十二月に実質減少となった後、十四年一月以降三か月連続の実質増加となったが、四月以降九か月連続の実質減少となった。
また、消費支出は、平成十四年八月に実質減少となった後、九月は実質増加となったが、十月以降三か月連続の実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり三十二万四千百円となり、前年同月に比べ、名目三・六%の増加、実質三・九%の増加となった。
◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)
季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質四・二%の減少となった。
勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質六・一%の減少となった。
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