官報資料版 平成15年7月16日




                  ▽政府開発援助(ODA)白書のあらまし………外 務 省

                  ▽平成十四年度平均家計収支………………………総 務 省

                  ▽毎月勤労統計調査(四月)………………………厚生労働省

                  ▽労働力調査(四月等結果)………………………総 務 省











政府開発援助(ODA)白書のあらまし


外 務 省


第T部 激変する国際社会におけるわが国ODAの展開

第一章 二十一世紀の主要課題としての開発問題

 過去数十年の国際社会の努力により、途上国の開発問題は、多くの面で良い方向に向かっている。しかし、依然として、途上国は多くの困難に直面しており、特に、グローバル化や二〇〇一年九月十一日の米国同時多発テロを契機に、国際社会の開発問題への関心が高まっている。

第一節 開発援助を巡る新たな潮流

(1) 開発問題への国際的関心の高まり
 グローバル化の進展の中で、格差が拡大し、貧困が深刻化している。また、環境問題や感染症など地球規模の問題も依然として深刻である。国際社会は、このような問題に対処することの重要性を再認識している。また、冷戦後、紛争が頻発しており、開発援助は、人道支援や平和の定着と国づくりのためのさらなる役割を期待されている。

(2) 国際社会による取組の強化
 九〇年代を通じて、日本は世界のODAを量的に支えてきたが、先進諸国全体をみるとODAが停滞し、いわゆる「援助疲れ」といわれた時期が続いていた。しかし、以上のような種々の要因が重なり、二〇〇二年に入り欧米において開発援助を大幅に増大させようとする顕著な動きがみられる。
(イ) 欧米主要援助国におけるODAの増額の動き
 二〇〇二年三月に、米国は、二〇〇四年から二〇〇六年にかけて現在のODA額(年間約百億ドル)を年々増額し、最終年度において五十億ドルまで増額とすると表明した。同時期にEU諸国もEU全体で二〇〇六年までにODAの対GNI比を現在の〇・三三%から〇・三九%に引き上げると発表した。
(ロ) ミレニアム開発目標(MDGs)の設定
 国際社会では、開発目標の共有と新たな開発戦略の構築が進展した。特に、ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)は、人類の将来の繁栄に向けた基礎的条件を整える重要な国際目標として、貧困削減、基礎教育、保健医療、ジェンダー、子ども、環境などについて明確な量的目標と達成期限を定めたものである。
(ハ) 開発戦略を巡る新たな潮流
 国際社会は、同時に開発戦略にも進展を見せた。すなわち、支援が真に実効性の高いものとなるために、途上国自身の主体性(オーナーシップ)と、当該国の実情に即した支援内容が重要であるということである。
 九八年十月のIMF・世界銀行年次総会では、途上国のマクロ経済政策と構造的、社会的、人間的な側面のバランスのとれた発展を同時に達成する必要があるとの認識から、これに基づくアプローチとして「包括的開発の枠組み」(CDF)が提唱された。具体的には、貧困削減と持続可能な開発のためには、適切なマクロ経済政策だけでなく、構造的側面(しっかりと組織された政府、市場経済に不可欠な法律・司法制度、監督の行き届いた金融システム、社会的弱者の保護)、人的側面(教育制度の整備、保健・人口問題への対応)、物理的側面(上下水、エネルギー、交通・通信インフラの整備、地球環境・文化の保護)、特定分野における戦略(地方・農村開発、都市開発、民間セクター開発)についても同等に検討する包括的な枠組みが必要というものである。
 このCDFの考え方に基づき、現在、貧困削減戦略文書(PRSP)が最貧国を中心に策定されている。PRSPは、九九年九月のIMF・世界銀行年次総会時の一連の会議において、債務削減・国際開発協会(IDA)の融資供与のために、重債務貧困国及びIDA対象国に対して作成が要請されることが決定されたものである。その後、PRSPは途上国の開発問題全般に係わる援助協調のための手段として使われるようになっている。
(ニ) わが国の考え方〜経済成長を通じた貧困削減
 わが国は、貧困削減をはじめとする国際的に共有された開発目標の達成のために最大限の努力を行っている。同時に、わが国は、東アジアの経験にかんがみて、持続的な貧困削減を実現するためには、経済成長を通じた貧困削減を図っていくことも重要だと考えている。具体的には、貧困削減を進める上でも、教育や保健医療といった社会セクターに対する支援のみならず、経済基盤整備、法制度整備、人材育成といった経済セクターに対する支援を通じた貿易・投資の促進、民間セクターの育成及び技術移転を促進し、その国の経済成長を積極的に支援する必要があると考えている。その際、途上国の状況は国ごとに大きく異なるため、特定の国や地域に適用されているアプローチを画一的に他の国や地域に適用することは必ずしも適当ではない。すなわち、それぞれの国、地域の事情に対応する多様な手段による取組が必要になると考えている。

第二節 開発に関する一連の国際会議

 二〇〇二年には、開発資金国際会議(三月)、G8カナナスキス・サミット(六月)、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)(八〜九月)といった国際会議が相次いで開催され、開発が主要議題の一つとなった。

(1) 主要な国際会議の成果
 一連の会議では、開発問題を包括的にとらえて国際社会が協調して目指すべき二十一世紀の開発のあり方が精力的に議論された。その結果、二十一世紀の開発問題への国際社会の取組について一定の方向性が与えられたと考えられる。以下、三つの主な会議の概要と成果を説明する。
 開発資金国際会議では、「モンテレイ合意」が採択された。この中では、国内資金、ODA、債務救済、投資、貿易等あらゆる手段を通じた開発資金の確保の必要性が確認された。
 G8カナナスキス・サミットでは、特にアフリカについて真剣な議論が行われ、「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)に対するG8の支援と協力の基礎となる「G8アフリカ行動計画」が採択された。この中では、「援助の選択的実施」の考え方が盛り込まれたほか、教育についても、途上国、先進国の双方が取るべき対応を示した報告書として「万人のための教育への新たな焦点」がG8首脳に提出された。
 持続可能な開発に関する世界首脳会議は、世界各国の首脳や国際機関の長が多数参加した過去最大規模の会議となった。成果としては、衛生についてミレニアム開発目標(MDGs)の一つである安全な飲み水の確保に付随する新たな目標(「二〇一五年までに基本的な衛生施設を利用できない人々の割合を半減する」等)が盛り込まれた「実施計画」が採択された。
 また、この会議では、各国が自発的に、国際機関やNGO等と協力して持続可能な開発に資するプロジェクトを発表し、それが「約束文書」としてとりまとめられ、会議の公式成果物として採択された。わが国は、十分野で二十九のプロジェクトを登録し、その分野は、教育・保健、貿易・投資、農業・食糧、エネルギー、環境、気候変動、森林、生物多様性、水、科学技術と多岐にわたっている。

(2) 主要な論点
 以上の会議において繰り返し議論されたのが以下における問題であり、開発に関する国際的な議論の場においても主要な論点となっている。

ミレニアム開発目標(MDGs)の達成
 一連の国際会議の合意文書では、繰り返しMDGsが国際社会共通の目標であることが確認された。MDGsの達成に向けてまず必要となるのは、達成状況のモニタリングと途上国における統計整備である。
 第二に、MDGsの達成に向けた具体的戦略に関する研究である。そして第三に、世界中の人々がMDGsに対する理解と支持を深め、達成に向けて、様々な組織や団体が自発的に幅広い連携を行うことを確保することがさらに必要である。そのため、国連は国連開発計画(UNDP)を中心に「ミレニアム・キャンペーン」を行うこととしている。

開発資金の確保
 一連の会議で資金の問題が活発に議論されたように、MDGsの達成には現在の援助総額をはるかに超える資金が必要とされている。そのため、途上国の国内資金やODAのみならず、海外直接投資等の民間資金や貿易などのあらゆる資金を動員することの重要性が確認された。
 ただし、民間資本の投資先は、インフラ分野、とりわけ通信、エネルギー分野など、利益が期待できる分野に偏りがちである。この点、教育、保健などのいわゆる社会セクター分野の支援や、道路・港湾など採算が合いにくいインフラ分野などの支援に対しては、より公共性、政策性の高いODAが依然重要である。
 したがって、ODAの途上国開発における役割を考える際には、途上国に対する資金全体の流れや貿易などの世界経済全体の動きの中で考えていくことも大切である。

債務問題
 二〇〇二年時点でIMF及び世界銀行によりアフリカを中心に四十二か国が重債務貧困国(HIPCs: Heavily Indebted Poor Countries)と認定されている。
 途上国の発展を妨げる債務負担は、人道的にも国際社会の平和と安定の確保の観点からも見過ごすことのできない問題であり、国際社会は、従来の取組に加え、九九年、HIPC諸国の債務を持続可能なレベルにまで低減することを目標とした「拡大HIPCイニシアティブ」を承認した。同イニシアティブでは、ODA債権については六七%から一〇〇%削減に、適格な非ODA債権については八〇%から原則九〇%削減にそれぞれ削減幅が拡大されるといった合意がなされた。

援助の効率化
 開発に関する国際的な議論の場では、援助吸収能力が極めて限られている途上国において、いかに援助効果を高めていくかとの観点から様々な問題提起がなされている。例えば、英、オランダ、北欧諸国などは、コモン・ファンドや財政支援といった新しい手法とともに、支援を行うすべての援助国の手続きを抜本的に見直すべきとの主張をしている。
 これに対して、わが国や米、仏、独などは、従来のプロジェクト型援助は有効であり、個々のプロジェクト型援助と全体の計画との整合性を高め、それぞれの途上国の特性に応じてプロジェクト援助やコモン・ファンドを含む多様な援助形態を適切に組み合わせていくことが重要であるとの考えに立っている。
 もっとも、援助の現場では、これらの国々が自国の主張に固執しているわけではなく、協調の努力が行われている。現在、多くの援助国や国際機関が依然としてプロジェクト型援助を行っている一方、わが国も、途上国側の十分なアカウンタビリティが確保されており、適切かつ効果的と考えられるような場合には、コモン・ファンドへの参加や財政支援を行っている。

良い統治(グッド・ガバナンス)
 良い統治は、途上国の開発を効果的・効率的に進める上で不可欠なものであり、また、開発の結果得られた「成長の果実」(富)が、貧困層も含めて国内に公正に再分配されるためにも必要なものであると考えられている。
 一連の会議では、良い統治を巡り、つまり、先進国側と途上国側との間で、「援助が先か、良い統治が先か」を巡って、議論が紛糾した。

援助の選択的実施
 G8カナナスキス・サミットの過程で、最も大きな議論を生んだ論点の一つが「援助の選択的実施」の問題である。こうした考え方が出てきた背景には、国家に良い統治が確保されていなければ効果的な活用がなされないといった反省と、このような先進国側の明示的な方針は、途上国側の改革を促し得るといった理由がある。
 他方、こうしたアプローチに問題があることも指摘されている。援助が効果的に使われるか否かは、いくつかの指標のみで常に機械的に判断できるものではなく、結局は国ごと、分野ごとにケースバイケースで考慮しなければならないからである。

官民パートナーシップ(PPP:Public−Private Partnership)の進展
 開発における官民の連携が、活発に行われるようになっている。この背景には、まずNGOをはじめとした市民社会が、援助の担い手としてますます重要な役割を果たすようになり、NGOが国際的な場で存在感を増していること、また、ODAをはじめとした公的な開発資金が伸び悩む中、NGOを含む民間資金の動員が重視されるようになっていることがある。
 これらに加え、最近は、民間の貿易・投資が開発に果たす役割の重要性への認識が高まっており、その担い手である民間企業と政府が、いかにパートナーシップを形成して開発を進めていくかが大きな課題となっている。

(3) わが国の対応
 わが国をはじめ国際社会にとって今後の最も重要な課題の一つは、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向け一連の会議における合意を着実に実施に移すことである。そのためには、国際社会全体が、それぞれの合意に関し、具体的戦略を検討することが必要であろう。わが国も主要援助国として、途上国の開発をODAにより支援するとともに、国際社会における議論に積極的に参加していく方針である。

援助の重点化・優先順位付けの明確化
 わが国は、ODA大綱、中期政策等に従い、経済成長を通じた貧困削減に重点を置き、経済・社会インフラ整備、人材育成・知的支援、地球規模問題への取組などを積極的に行ってきた。同時に最近では、国際的な援助に関する動向も踏まえつつ、平和の定着、国際的な開発目標などに関してイニシアティブを策定・公表している。

援助のさらなる効率化
 わが国は、より効果的に開発を進めるには、被援助国政府のオーナーシップの下、援助国や国際機関との間で、密接な情報共有と意見交換を行い、各自の支援計画と被援助国の開発政策との間に整合性を確保することが重要であると考えている。
 また、援助がより高い効果を生むために、わが国はより精緻な国別援助計画を策定し、政策対話を強化すべく様々な努力をしており、同時に、事前、中間、事後に至る一貫した評価の確立にも努めている。

ODAの適正な事業規模の確保
 いかに援助の効率化を図ったとしても、MDGsをはじめとした開発目標を達成するためには、ODAの適正な事業規模の確保が欠かせない。わが国は九一年より二〇〇〇年まで十年にわたり世界最大のODA供与国であり続け、その間、平均して年約百二十億ドルのODAを供与してきた。厳しい経済・財政状況を背景に、国民のODAに対する見方もあり、ODA予算は過去五年間で二〇%以上減少した。二〇〇一年には米国にODA供与額世界第一位の座を譲ったものの、依然としてわが国は世界最大級のODA供与国であり、途上国や国際機関のわが国ODAへの期待には極めて高いものがある。また、国際貢献に際し、軍事的手段を使うことに一定の制約のあるわが国にとって、ODAは、最も重要な外交手段の一つであり、緒方貞子前国連高等弁務官が表現しているように、ODAは「国の品格」である。政府としては、今後も、厳しい経済・財政事情を十分踏まえつつ、わが国ODAについて国内の理解を得られるよう、さらに努力をしていく考えである。

債務問題への取組
 債務問題については、債務救済が貧困削減につながることを確保しつつ、拡大HIPCイニシアティブを迅速かつ着実に実施に移していくことが重要である。わが国は、同イニシアティブの下、G8諸国中最大の貢献を行っており、今後、同イニシアティブを進めていく上では、バランスのとれた対応を取る必要があると考えている。なお、わが国は、二〇〇二年十二月、ODA改革の一環として、二〇〇三年度より、わが国の債務救済の方式を、途上国の事務負担の軽減、債務削減等に向けた債務国の努力を国際的にモニタリングする仕組みの進展等を踏まえ、従来の債務救済無償の供与による債務救済に代えて、円借款の債権を放棄する方式を導入することを決定した。

市場アクセスの改善と貿易関連技術支援を通じた貿易・投資の活性化
 わが国は、従来途上国の開発においてODAのみならず、貿易、投資などあらゆる資金の動員が必要であり、途上国が持続可能な貧困削減を達成するためには、自らの手で貿易、投資を通じた経済成長を果たすことが重要であると主張してきた。この点、わが国は、とりわけ市場アクセスの拡大による途上国の貿易の活性化に向けた努力に努めている。

NGO等とのパートナーシップの強化
 わが国は、また、国際会議の場や援助の現場におけるNGO等とのパートナーシップの強化に努力している。援助の現場では、わが国政府は、緊急人道危機など迅速に支援活動を開始する必要がある場合やきめ細かい援助の実施にNGOが果たす役割の重要性が高まっていることから、様々な形でNGOとの協力を深めている。具体的には、外務省、財務省、国際協力事業団(JICA)、国際協力銀行(JBIC)がそれぞれNGOとの定期協議会の場を持っているほか、NGOの活動環境を整備するため、NGO相談員を国内各地に配置するといった取組を行っている。

第二章 戦略を持ったわが国のODAの展開

 ここでは、わが国ODAの全体的特徴を俯瞰した後、地域別のODA戦略について解説し、さらにODAの一層の活用が期待される平和構築分野(平和の定着と国づくり)での取組について説明している。また、わが国が重視する人間の安全保障の推進やMDGs達成に向けた努力、さらに、ますます重要性を増している国際連携の強化についても併せてわが国の取組の現状を説明している。

第一節 わが国ODAの全体像

基本的なODA政策の枠組み
 わが国は、九二年、政府開発援助大綱(ODA大綱)を策定・公表した。そこには、人道主義、相互依存、環境保全、平和国家としての使命を掲げるとともに、途上国の自助努力支援を基本とし、途上国の健全な経済発展を実現するためにODAを実施することを基本理念とすることが掲げられている。
 また、九九年、政府は中期政策(ODA中期政策)を策定・公表した。ここでは、経済成長等を通じた貧困削減を開発援助の主たる目的とし、貧困対策や社会開発分野及び人材育成や地球規模問題等への支援を重点課題の第一に掲げ、また、九六年のDAC新開発戦略、人間の安全保障の視点の重視、国民参加型の協力の推進、紛争・災害と開発等の新たな要素を加えた。さらに、そうした基本政策の下に、わが国は、国別援助計画や分野・課題別政策イニシアティブを順次策定している。
 なお、外務省は、二〇〇二年十二月、ODA改革の一環として、また内外の情勢の変化を踏まえ、ODA大綱の見直しを行うことを発表した。

地域別・分野別・形態別実績からみたわが国ODAの特徴
 わが国は、地域的にはアジアを、開発戦略としては経済成長を通じた貧困削減と人・制度づくりを重視した援助を実施している。二〇〇一年の実績では、二国間ODAの約六割がアジア地域に振り向けられている。
 また、分野別実績では、円借款を中心とした経済インフラ及びサービスが最大のシェアを占めているが(三四・九%)、最近の国際社会における貧困問題への直接支援の機運の高まりも踏まえて、わが国は、保健や教育といった社会セクターの支援を強化し、経済・社会両セクターに対する支援に重点を置いたODAを実施している。
 援助形態別の実績をみると、二国間ODAが中心となっており、その援助形態の内訳は、無償資金協力が約四分の一で、残り四分の三を技術協力と政府貸付等がほぼ二分している。

第二節 アジアを中心に世界に展開するわが国ODA

(1) 東アジア諸国への総合的な協力
 わが国は、歴史的、地理的な関係のみならず、政治・経済両面においても、密接な相互依存関係を有する東アジア地域を重視し、ODAによる経済インフラ整備等を通じた民間投資や貿易の活性化を図るなどODAと投資・貿易が連携した経済協力を進めることで同地域の目覚ましい発展に貢献してきた。一方で、著しい経済成長を大きな要因として、中国に対するODAを見直す動きもみられている。
 二〇〇二年一月、小泉総理はASEAN諸国を訪問し、二十一世紀のわが国とASEAN諸国とが目指すべき関係を「率直なパートナー」と表現し、一層の経済連携と地域協力を進めていく方針を明らかにした。
(イ) 対中国ODAの新たな方向
 わが国の対中ODAは、中国経済・社会の発展に大きく貢献してきた。しかし、わが国の厳しい経済・財政事情や中国の国力増大、すなわち、経済力・軍事力の向上やビジネスの競争相手としての存在感の増大といった変化を背景に、対中ODAに対する批判もある。外務省は二〇〇〇年七月に「二十一世紀に向けた対中経済協力のあり方に関する懇談会」を設置し、様々な提言を受けた。同様に、与党内でも「中国に対する経済援助及び協力の総括と指針」が出され、政府はこれらを踏まえて、二〇〇一年十月、「対中国経済協力計画」を策定し、新たな対中ODAの方針を打ち出した。今後とも、「対中国経済協力計画」に沿って、国民の支持と理解を得られる対中ODAを実施していく考えである。
(ロ) 経済連携、政策支援の強化
 東南アジア地域は九七年の経済・金融危機を受けて、高度成長型の成長戦略からより安定的で危機に強い経済・社会体制の構築に取り組んでいる。わが国としては、ODAを積極的に活用してこれらを支援するとともに、東アジアにおける経済連携強化等を十分考慮する必要がある。
 ASEAN諸国においては、加盟国間の経済格差が広がっていることから、わが国は各国の実状に応じてきめ細かい対応をしている。ASEAN自身も、格差是正と、地域的競争力の向上が急務であると認識しており、二〇〇〇年十一月、ASEAN統合イニシアティブ(IAI)を打ち出している。わが国としては、IAIの進展を歓迎し、IAIプロジェクトへできる限りの支援を行うことを表明した。
 また、メコン地域開発の推進により、流域諸国間の関係強化と、流域に所在するASEAN新規加盟国の経済水準の底上げを通じたASEAN内部の格差是正、ひいてはASEANの統合強化や日・ASEAN包括的経済連携構想にも好ましい環境が作られることが期待される。わが国は、他の主要ドナーと協力して開発を推進していく考えである。
 また、わが国が実施する政策支援とは、相手国の経済政策や制度づくりを支援することを最大の目的としたものであり、支援を通じた相手国の政策立案能力の向上とともに、その成果が相手国の主要政策に反映されることが期待されている。
(ハ) 東アジア開発イニシアティブ(IDEA)
 IDEAは、東アジア地域の地域開発協力を構築し、併せて東アジアの開発モデルを世界に発信していくことをも意図したものである。二〇〇二年八月には、東京で第一回IDEA閣僚会合が開催され、各国よりわが国ODAに対する感謝の意が示された。また、わが国はヨハネスブルグ・サミットの機会に、IDEAに関するシンポジウムを主催した。そこでは、ODAを活用し、経済インフラ整備に努めながら貿易・投資との連携を深めてきた成長志向の東アジアの開発手法が、アフリカ政府関係者からも注目された。

(2) 国際的関心の高まるアフリカ問題
 アフリカ諸国は、二〇〇二年、地域の政治的・経済的統合をより強化するためアフリカ統一機構
(OAU)からアフリカ連合(AU)へ移行し、紛争予防・解決と開発を最大の目標に掲げて、「アフリカ開発のための新たなパートナーシップ」(NEPAD)を策定した。NEPADは、グローバル化の中で周縁化と低開発からアフリカを救出しようとするアフリカ人自身の決意を原動力としており、わが国としても、アフリカ諸国自身のイニシアティブであるNEPADを支えていく。このためわが国は、二〇〇三年九月末に、第三回アフリカ開発会議(TICADV)を開催する予定である。

(3) 地域別の援助政策
(イ) 南西アジア
 貧困、人口問題に加え、初等教育普及率の低さや保健医療の未整備、感染症問題など、MDGsに向けて大きな課題を抱える地域であり、わが国としてもこれらの分野を中心に経済協力を進めていく方針である。
(ロ) 中央アジア・コーカサス
 九七年七月、橋本総理(当時)は、ユーラシア外交を提唱し、「シルクロード地域」としての同地域に対する積極的な外交を展開していく方針を表明した。同地域は、わが国にとりエネルギー供給源として期待されている。わが国としては、長期的な視点で、エネルギー分野での協力を強化したい考えである。
(ハ) 中東
 わが国と中東地域は、高い相互依存関係にある。他方、同地域は中東和平など不安定要因を抱えており、わが国としてはODAを通じ、この地域との円滑な通商関係の維持、社会的安定と平和の実現に向けた支援を重点的に行っている。
(ニ) 中南米
 メルコスール(南米南部共同市場)やCARICOM(カリブ共同体)等、地域経済統合が進展すると同時に、ブラジル、メキシコ等、国際社会でグローバルプレーヤーとして活躍する国が登場してきた。域内格差是正のため、これらの国が援助国となる南南協力がみられるが、わが国としてもこれを積極的に支援する。
(ホ) 大洋州
 同地域はわが国の遠洋漁業にとって重要な漁場であり、また海上輸送ルートの要衝になっている。このような事情を踏まえ、わが国は良きパートナーとしてこの地域を支援していく。
(ヘ) 欧州
 わが国は、旧ユーゴスラビア地域の平和の定着と復興、ならびにEU加盟に向けた東欧諸国の取組に対し、実情に応じた適切な支援を実施している。

第三節 平和の定着と国づくりへの協力

 わが国は、二〇〇〇年に発表した「『紛争と開発』に関する日本からの行動―アクション・フロム・ジャパン」において、「紛争予防―緊急人道支援―復旧・復興支援―紛争再発防止と本格的な開発支援」という一連の紛争のサイクルのあらゆる段階で貧困対策や基礎生活分野(BHN)支援、基礎インフラの復旧などを通じて被害の緩和に貢献するためODAによる包括的な支援を行っていくことを表明した。
 さらに、二〇〇二年五月、小泉総理はシドニーにおける政策演説で、コソボ、東ティモール、アフガニスタンといった地域紛争の経験も踏まえ、「紛争に苦しむ国々に対して平和の定着や国づくりのための協力を強化し、国際協力の柱とする」との決意を表明した。

(1) 平和の定着と国づくりとは
 地域紛争の恒久的な解決のためには、紛争の終結前から支援を行い、平和の萌芽を定着させることが重要である。こうした取組として、和平復興会議の開催や和平プロセスの最終段階における正統政府の樹立に向けた選挙の実施などの「和平プロセス」を促進することが挙げられる。わが国は、九六年にカンボジア復旧及び復興に関する閣僚会議や九九年に第一回東ティモール支援国会合を主催したほか、二〇〇二年一月には東京でアフガニスタン復興支援国際会議の開催等に取り組んできた。
 また、紛争終結後の多くの国では、紛争当事者間の和平プロセスの進展と併せて速やかに「安定と治安」が確保される必要がある。同分野のODAとしては、地雷除去支援や地雷被害者への支援を行っているほか、国際機関を通じた支援として元戦闘員の武装解除、動員解除及び市民社会への復帰をコソボ、東ティモール、シエラレオネで、わが国が国連に設置した人間の安全保障基金などを通じて行っている。
 さらにわが国は、近年、緊急人道支援分野への貢献を積極的に行っており、緊急人道支援に際する国連による人道支援の調整機関である国連人道問題調整事務所(OCHA)担当国連事務次長として大島賢三氏を派遣するなどの人的貢献を行っているほか、二国間や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や赤十字国際委員会(ICRC)などの国際機関を通じた緊急人道支援活動を重視し、種々の人道危機に際して人的、資金的貢献を積極的に行っている。

(2) ケース・スタディ
(イ) アフガニスタンにおける「平和の定着構想」
 わが国は、二〇〇二年一月に東京においてアフガニスタン復興支援国際会議を主催し、国際社会より四十五億ドル以上の支援を集めると同時に、わが国自身も向こう二年半で最大五億ドルの支援を表明した。
 アフガニスタンのような紛争を経た国には、人道・復旧・復興の間の継ぎ目のない支援を行うことが重要であり、こうした理由から川口大臣は、二〇〇二年五月に「和平プロセス」、「治安」、「人道・復興支援」を三本の柱とする「平和の定着構想」を発表した。
 とりわけ、わが国は、スムーズな復興開発を可能とするため、元兵士の社会復帰と地雷対策に力を注いでおり、除隊兵士のための職業訓練や雇用促進などの社会復帰支援を行う「平和のための登録(Register for Peace)構想」の提案や、深刻な地雷問題に対して最大の拠出国となっている。
 さらに同時テロ以降、急速に増大する人道支援ニーズに対応するため、これまでにわが国は一億ドル近くの緊急人道支援を実施している。また、難民・避難民向けの雇用創出を目的に、カブール・カンダハルにおいて「復旧及び雇用に係るプログラム」(REAP)を策定・実施したほか、地域総合開発支援策である「緒方イニシアティブ」を実施している。
(ロ) スリランカ和平支援
 スリランカでは、二〇〇二年二月の停戦合意を踏まえて同年九月から始まったスリランカ和平交渉を通じ、同国は本格的な紛争解決に向かいつつある。わが国は平和の定着を具体化するため、同国における和平・復興プロセスを積極的に支援していく考えである。
(ハ) アチェ和平プロセスの促進
 わが国は、インドネシアのアチェにおいても平和の定着に向けODAを活用した取組を始めている。また、東京において、「アチェにおける和平・復興に関する準備会合」を開催し、アチェ問題の平和的解決への強い期待と和平達成後の同地域への復興・開発支援を積極的に行う用意があることを表明した。
(ニ) 平和と安定のためのミンダナオ支援
 わが国は、フィリピンにおいてもミンダナオの平和定着のためODAを活用している。テロ事件や局地紛争、誘拐事件などが発生している状況の中、わが国はミンダナオ地域の貧困の脱却と和平交渉や平和の定着に貢献するため「平和と安定のためのミンダナオ支援パッケージ」に基づき、中長期的な視野に立って持続的な支援を行っていくことを発表した。

第四節 人間の安全保障の推進

 わが国は、人間の安全保障の考え方を外交の重要な視点の一つとしている。その具体例として、人間の安全保障分野における協力を強化すべく、九九年三月に国連に設置した「人間の安全保障基金」が挙げられる。これは、二〇〇二年度までに国連に設置された信託基金の中で、最大規模の累計約二百二十九億円を拠出するものである。
 これからも、わが国は人間の安全保障の考え方に基づいて教育、保健医療、環境、ジェンダー、平和の定着と国づくりといった分野に係わるODAを積極的に推進していく考えである。

第五節 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた努力

 わが国は、MDGs達成のために、貿易・投資の促進、経済インフラ整備、制度構築、人づくり支援等を通じて、途上国の持続的な経済成長を促す支援を行うと同時に、教育、感染症、環境、水と衛生といったMDGsに直接係わる社会セクターへの直接的な支援を強化している。

(1) 教育分野の新たな援助方針
 教育は、「人間開発」の観点のみならず、人づくりが国づくりの基本であるという点で、わが国ODAの重点課題のひとつである。教育はまた、成長と雇用の重要な基盤であり経済成長のためにも重要である。
 特に基礎教育の普及がMDGsにおける主要な目標となっており、二〇〇二年の第五十七回国連総会においては、わが国の働きかけにより、二〇〇五年から十年間を「国連持続可能な開発のための教育の十年」として、教育分野における国際的な取組を強化することが全会一致で採択された。
 また、わが国は、二〇〇二年六月のG8カナナスキス・サミットの機会に、目標達成に困難を抱えている低所得国を支援するため、向こう五年間で教育分野への支援を二千五百億円以上行うとともに、基礎教育分野の重点項目をまとめた「成長のための基礎教育イニシアティブ」(BEGIN)を発表した。

(2) HIV/AIDSをはじめとする感染症対策の強化
 わが国は、他のドナーに先駆けて二〇〇〇年のG8九州・沖縄サミットにおいて感染症の重要性を取り上げ、その流れは二〇〇一年の国連エイズ特別総会やG8ジェノバ・サミットにつながり、二〇〇二年一月一日の世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の設立に至っている。
 九四年にわが国は、「人口・エイズに関する地球的規模問題イニシアティブ」(GII)を発表し、当初の予定を大幅に上回る五十億ドルの実績を挙げて達成し、感染症対策において主導的役割を果たす国の一つとなった。さらに、G8九州・沖縄サミットの際、その後継として今後五年間で三十億ドルの貢献を行うという数値目標を含む包括的な感染症対策戦略である沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)を発表し、取組を強化している。これを着実に実施していく。

(3) 持続可能な開発に向けた環境協力
 九二年の国連環境開発会議(UNCED「地球サミット」)において、アジェンダ21が採択され、「持続可能な開発」は、その後の地球環境問題への取組のキーワードとなった。また二〇〇二年九月には、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)が開催され、十年間の間に「持続可能な開発」は経済、社会及び環境の三つの要素からなる開発のための概念として定着した。
 このような世界の流れの中にあって、二〇〇二年八月、わが国はヨハネスブルグ・サミットに先立ち、持続可能な開発のためのわが国の具体的行動として「小泉構想」を表明した。その中では、環境協力の理念・方針と、今後の協力の柱となる行動計画を改めてとりまとめた「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ」(EcoISD)を発表している。

(4) 水と衛生分野における支援の強化
 二〇〇二年九月に開催されたヨハネスブルグ・サミットにおいては、同分野への取組が主要な議論の一つに取り上げられた。本サミットの成果である「実施計画」においては、ミレニアム開発目標(MDGs)に入っていない衛生分野について「基本的な衛生施設を利用することができない人々の割合を二〇一五年までに半減する」との目標が、新たに設定された。
 第三回世界水フォーラムをはじめとして、引き続き二〇〇三年に行われる国際会議でも、水と衛生分野の国際協力は依然重要な議題となる。
 わが国の具体的な取組としては、ヨハネスブルグ・サミットの際に米国と共同で日米水協力イニシアティブ「きれいな水を人々へ」を発表したことがとりわけ挙げられる。今後、第三回水フォーラムやG8エビアン・サミットといった一連の国際会議を視野に入れつつ、このイニシアティブの具体化を図っていく予定である。

第六節 国際連携の推進

 ミレニアム開発目標(MDGs)といった国際的開発目標が共有され、その達成に向けてますます効率的・効果的な援助が求められる今日、被援助国、他の援助国、国際機関、NGOなどあらゆる開発主体との協調と連携の強化が不可欠となっている。
 わが国は、ODAを進めるにあたり、被援助国との政策対話を重視することはもちろん、他の援助国や国際機関との政策対話を通じてより効果的に援助が進められるように努めている。同時に、案件実施にあたっても、他国や国際機関との連携を進めることにより、援助効果を高めるよう努めている。
 さらに、わが国は援助資源の増大にもつながる、より進んだ途上国による他の途上国への協力(南南協力)の推進にも積極的に支援している。

(1) 南南協力の推進
 南南協力には、社会・文化・経済事情や開発段階などが比較的似通った状況にある国々による協力が可能となることから、効果的かつ効率的な協力の実施が可能となる等、様々なメリットがある。わが国は、特にアジアの開発経験をアフリカの実情に合わせて活かし、開発を推進するというアジア・アフリカ協力を積極的に推進している。

(2) 他の援助国との協力
 わが国は、多国間協調のみならず、二国間の援助政策協議を行い、戦略的に重要な地域・国や分野における協調の進め方について、意見交換や政策調整を実施している。最近では、多くの国と共同イニシアティブや共同プロジェクトによる援助協調を実施している。とりわけ、最も緊密に援助協調を行っている米国とは、九月のヨハネスブルグ・サミットの機会に国際的関心を集めている水と衛生分野での協力を開始するため、川口外務大臣とパウエル国務長官は共同で「きれいな水を人々へ」イニシアティブを発表した。

(3) 国際機関との連携
 MDGsをはじめとした国際的な開発目標を達成するためには、開発問題に関して高い専門性を有する国際機関と政策対話や共同プロジェクトを実施することが極めて重要である。わが国は、とりわけ幅広い関係を築いてきた世界銀行、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)との間で、政策対話や事業連携(マルチ・バイ協力)を進めている。
 世界銀行は途上国開発における最大のドナーであるとともに、ドナー間の援助調整に主導的役割を果たしてきた。わが国は第二位の出資国として、世界銀行との協力関係を重視しており、様々な形で関係強化に努めてきた。例えばアフガニスタン復興支援国際会議等のような多数国間国際会議の場において世界銀行と協力し、平成十五年十月にわが国で開催されるアフリカ開発会議(TICADV)についても世界銀行と協力しながら、運営していく方針である。
 UNDPは国連システムにおいて世界最大のネットワークをもち、また毎年「人間開発報告」を発表していることから、援助に関する国際援助潮流の形成に大きな影響力を有している。わが国は、UNDPと、例えばパキスタンゴミ処理改善計画など、多くの共同プロジェクト(いわゆるマルチ・バイ協力)を行ってきており、さらに、UNDPに設置した基金への拠出金を通じて、その活動への支援も行っている。
 UNICEFや世界保健機関(WHO)、UNHCRなど、専門性を有し、現場でのノウハウを併せ持つ国連機関に対して、わが国は協調を重視しハイレベルの政策協議を行うなど、多面的な協力関係を維持している。

第三章 国民の支持と参加の拡大〜さらなるODA改革の推進

第一節 ODAを巡る厳しい国内状況と改革の加速化

 長引く経済不況と財政状況の悪化もあり、国内のODAに対する見方は厳しさを増している。わが国のODA予算は九八年度以降削減の方向にあり、特に二〇〇二年度のODA予算は、前年度比一〇・三%減という大幅な削減となった。一方で、九〇年代に「援助疲れ」を見せていた欧米諸国は、二〇〇二年になって相次いでODAの増額を表明した。
 ODAは国民の税金から成り立っており、実施にあたっては、ODAへの国民の支持と理解を得ることが不可欠である。特に二〇〇二年は、川口外務大臣の就任の際に発表された「開かれた外務省のための10の改革」を皮切りに、透明性、効率性、国民参加をキーワードに様々なODA改革の具体策を発表・実施し、ODAの戦略性を高めるための取組にも着手した。

(1) 「開かれた外務省のための10の改革」と「第二次ODA懇談会」
 「10の改革」にODAが含まれているように、「変える会」における議論、また、それを受けた外務省改革「行動計画」においても、ODA改革は一つの柱となっている。その後二〇〇二年三月には、「第二次ODA改革懇談会」(外務大臣が透明性の確保、効率性の向上、国民参加をキーワードに「国民の心、知力と活力を総結集したODA」、「戦略をもった重点的・効果的なODA」、「ODA実施体制の抜本的な整備」という三つの柱からなるODA改革の具体的方策を最終報告として川口大臣に提出した。

(2) ODA総合戦略会議の発足と「ODA改革・15の具体策」の発表
 第二次ODA改革懇談会「最終報告」の提言を受けて、外務省は、二〇〇二年六月、川口外務大臣を議長とするODA総合戦略会議を立ち上げた。二〇〇二年七月には、できるものから直ちに実施するとの方針の下、第二次ODA改革懇談会最終報告のキーワードでもある「国民参加」、「透明性確保」、「効率性向上」を柱として、@監査、A評価、BNGOとの連携、C人材の発掘・育成・活用、D情報公開と広報の五分野において「ODA改革・15の具体策」を発表した。

(3) 「変える会」最終報告と外務省改革「行動計画」
 二月に発足した「変える会」は、二〇〇二年七月に最終報告書を提出し、ODAについては、@無償資金協力の透明性確保、AODA評価の拡充、B円借款の債権放棄に関する説明責任、CODAの選定・実施過程の効率化確保のための具体的提言を行い、また、NGOとの関係について、@NGOとの協力関係強化、ANGO活動を支援する基盤整備等のための具体的施策を提言した。外務省はこの提言を受けて、八月、外務省改革「行動計画」を発表し、これらの諸施策を着実に実施させている。

(4) 対外関係タスクフォース
 岡本行夫内閣参与を座長とする「対外関係タスクフォース」は、「わが国のODA戦略」についてと題する報告を七月に小泉総理に提出した。その報告は、ODAの戦略に関して、わが国のODAを「国益に直結した援助」と「国益に直結するとは言い難いものの国際社会の一員として引き受けるべき応分の負担」とに大別している。

(5) ODA改革:三項目の実施
 二〇〇二年十二月、川口外務大臣より、「ODA改革:三項目の実施」として、ODA大綱の見直し、債務救済方式の見直し、無償資金協力適正実施会議の設置が発表された。

(6) 自民党ODA改革ワーキングチーム
 二〇〇二年九月、自民党政務調査会対外経済協力特別委員会の下に高村正彦元外務大臣を座長とする「ODA改革に関するワーキングチーム」が発足した。このワーキングチームでは、十二月に「ODA改革の具体的方策―国民に理解されるODAを目指して―」がまとめられた。

第二節 ODA政策の立案機能の強化

(1) 関係府省間の連携強化
 政府の予算制度の現状を踏まえると、ODA事業が全体として整合性を保ち、効果的・効率的に実施され、また戦略的ODAを実施するためにも、ODA関係府省間で連携・調整を強化することが重要である。そこで、政府全体のODAの調整については、「中央省庁等改革基本法」で、外務省が調整の中核としての機能を担うこととされた。さらに、被援助国への資金の流れ全体をみていく枠組みとして、二〇〇二年十一月に、外務省、財務省、経済産業省、JICA、JBIC、NEXI(独立行政法人 日本貿易保険)との間で資金協力連絡会議が発足した。

(2) JICAの独立行政法人化
 二〇〇二年の臨時国会で「独立行政法人国際協力機構法」が成立し、これによって二〇〇三年十月一日から、国際協力事業団は解散し、独立行政法人国際協力機構が設立されることに決まった。独立行政法人化後は、JICAの自由裁量を高め、より自律的、効率的な業務実施に努めていくことが期待される。

(3) ODA総合戦略会議
 二〇〇二年三月に公表された「第二次ODA改革懇談会」最終報告を受けて、二〇〇二年六月、外務省はODA総合戦略会議を設置した。この会議は、国別の援助計画、分野別の重点化、他のODAの重点課題について高いレベルで議論することが期待されており、同時に、ODAへの国民参加を具体化し透明性を高めるとともに、ODA調整官庁としての外務省の機能強化を図ることを目的としている。
 具体的な活動としては、@ODA大綱の見直し、A国別援助計画の策定・見直し、BODAを巡る折々の主要課題について議論を行っており、外務省は、関係府省と緊密に連携しながらこの会議の成果をODA政策の企画・立案に十分反映させていく考えである。

第三節 国民参加型援助の推進

(1) NGOや地方公共団体等との連携
 政府は、NGO等による活動の利点とNGOの存在と役割の高まりを認識し、連携強化を外務省主要方針の一つとして揚げた。ほかにも、「ODA改革・15の具体策」や「外務省行動計画」の中では、NGOとの連携強化の具体策として、在外公館とNGOとの定期協議(ODA大使館)の実施等が挙げられている。
 また、NGOの活動を支援するため、九九年度より「NGO活動環境整備支援事業」を開始し、NGOの組織・専門性の向上を図るための諸施策を実施し、さらに、二〇〇二年度には、日本NGO支援無償資金協力(予算額二十億円)を創設した。
 円借款の実施機関であるJBICでは、NGO、地方公共団体等に調査を依頼する「提案型案件形成調査」を二〇〇一年に導入し、さらに二〇〇二年には、「国民参加型援助促進セミナー」を導入し、国民参加の一層の促進に努めている。
 また、二〇〇二年七月には、円借款について、「本邦技術活用条件」を導入した。

(2) 人材の発掘・育成・活用
 (財)国際開発高等教育機構(FASID)は、援助人材を対象とした研修事業や研究者等の海外派遣事業、調査・研究事業等を実施している。技術協力の実施機関であるJICAにおいても、二〇〇一年度に「ジュニア専門員制度」を拡充した。JICAはほかにも、専門家の一般公募制度、民間人材活用制度、青年海外協力隊やシニア海外ボランティア等、国民各層の国際協力への積極的な参加を推進し、民間等外部人材の活用に努めている。

(3) 開発教育
 開発問題への関心を高める開発教育は、子どもたちの国際性を高め、ODAを含む国際協力への理解や促進を促し、国際協力への志を育むことになる。こうした開発教育を推進するために、政府やJICA、JBICは、十年前より各地で開発教育セミナーの開催、小中学校への講師派遣、修学旅行等の受入れ、ホームページを通じた開発教育に関する教材や情報の提供、教員のODA現場の視察、論文コンテストの実施などによる開発教育の普及に努めている。

(4) 情報公開・広報・双方向の対話
 ODA事業を継続する上で不可欠である国民からの理解と支持を得るためには、情報公開及び広報が重要であり、これらは、「ODA改革・15の具体策」の柱の一つになっている。こうした情報公開・広報・双方向の対話を具体的に進めていくために、外務省は、ホームページの拡充、ODAメールマガジンの発行、ODAタウンミーティングの開催、あるいはODA民間モニターの派遣などを実施している。

第四節 ODA事業の各過程における透明性・効率性の向上

(1) 案件選定・調達における透明性の強化
 個々のODA事業に関しては、プロジェクト・サイクルの始め(案件選定段階)から終わり(事後評価)に至るまで、あらゆる段階において透明性を確保し、不正が行われないように努力している。
 まず案件選定の段階においては、円借款の候補案件リスト(ロングリスト)の公表、無償資金協力実施適正会議の開催等を通じて、透明性の向上に努めている。
 また、ODA事業を行う際には、環境・社会面に与える影響を事前に十分にチェックすることが大事である。この点、JBICでは、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」が策定・公表された。JICAにおいても、外務省「行動計画」に従い、またJBICの新環境ガイドラインやNGO等国民各層の意見等を参考にしつつ、環境ガイドラインを改訂中である。
 ODA案件の調達段階においては、入札の際に不正が行われた場合には、当該業者を一定期間ODA事業の入札・契約から排除する仕組みを整備した。

(2) ODA監査の強化
 ODA事業の各段階において、特にODA事業に関係する資金の流れの適正性を確認するプロセスである監査についても、第二次ODA改革懇談会の「最終報告」等で、様々な措置が提言されている。これらを受けて、外務省は、円借款調達手続きの外部専門家によるレビューの対象国の拡大、無償資金協力の第三者機関による監査の導入、抜き打ち監査の導入等を推進している。また、監査結果のフォローアップを行う仕組みを整備している。

(3) ODA評価の拡充
 ODA評価は、@ODAが効果的・効率的に実施されているかを検証すること、A評価結果をフィードバックし、将来のODA政策の質の向上に資すること、B説明責任(アカウンタビリティ)と透明性の下、国民の理解を促進することという三つの目的を持っている。
 評価の実施段階では、評価の客観性を向上させるため、二〇〇二年度より外務省、JICA、JBICが行うすべての事後評価に第三者の視点を取り入れている。また、被援助国の評価能力向上を支援するため、二〇〇二年の十一月には「第二回ODA評価東京ワークショップ」を開催した。

第四章 わが国ODAの新たな展開

 わが国のODA予算は九八年以降大幅な減少傾向にあるが、国際的な開発援助の潮流も踏まえ、これからも途上国の開発に主体的に取り組んでいく必要がある。そのためには、限られたODA資金を最大限活用し、より効率的・効果的なODAを行っていく必要がある。使途についても、優先順位付けをより厳しく行い、対象国・分野を一層重点化する取組が求められている。
 このような考えの下、わが国は、引き続きアジア地域に重点を置きつつ、東アジア開発イニシアティブ(IDEA)の下、経済・社会インフラ整備、人材育成・知的支援など従来の取組に加えて、平和構築や人間の安全保障といった分野におけるODAの積極的な活用や、国民参加・顔の見える援助を進めている。
 また、地域紛争の解決を目指したわが国の協力は、先進国・途上国のいずれからも日本独自の取組であるとして高く評価されているだけでなく、フィリピンのアロヨ大統領から「円は剣よりも強し」と称されたように、もはやわが国外交の一つの柱として、今後、ますます重要になってくると考えられる。
 さらに、貧困、教育、保健医療、環境、水と衛生などの分野は「人間の安全保障」の考えにも通じ、かつ、ミレニアム開発目標(MDGs)に含まれている要素である。わが国は、国際的な援助に関する潮流を踏まえつつ、こうした分野への支援に努めていく所存である。
 二〇〇二年十二月、川口外務大臣は、ODAを巡る国内外の新たな展開を念頭に置きつつ、より長期的な展望を見据えたわが国ODAの援助理念をより一層明確にするため、ODA戦略の根幹をなすODA大綱について思い切った見直しを行うことを表明した。見直しにあたっては、特に次の点を重視する。
 人道的見地、国際社会の相互依存関係、環境の保全及び平和国家としての使命等を含めた「普遍的価値」とともに、わが国にとっての安全と繁栄等を加えてODAの基本理念を明確に示す方向で検討する。
 今後ともODAの重点をアジア地域に置きつつ重点化を図るとともに、平和構築分野へのODAの積極的な活用、人間の安全保障、国際的な開発目標等も踏まえて適切な規定を置くこととする。
 ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性を確保するため、「政策立案・実施体制」、「効率的・効果的実施のために必要な事項」及び「政策の立案・実施上配慮すべき点」等の観点に沿って、必要な規定を整理する方向で検討する。

第U部 二〇〇一年度のODA実績

第一章 援助における日本の位置について記述
第二章 ODA中期政策の実施状況について、重点課題別の実施状況や、各地域への援助の現況、援助方法・実施・運用等の留意に関する取組の現況など、個別に記述
第三章 ODA大綱原則の運用状況について事例説明
 (1.中国 2.インド・パキスタン 3.ミャンマー 4.コートジボワール 5.イエメン)
第四章 ODAに関する主な資料
 1.政府開発援助大綱
 2.政府開発援助に関する中期政策
 3.国別援助計画
  (ニカラグア、チュニジア、ザンビアに対する国別援助計画の概要について)
 4.経済協力の仕組み
 5.「第二次ODA改革懇談会」最終報告
  (ほか、ODA関連ホームページアドレス一覧など)

第V部 資料編

第一章 わが国の政府開発援助(ODA)予算
第二章 わが国の政府開発援助(ODA)実績(総論)
第三章 主な事業と関係機関の実績
第四章 諸外国の政府開発援助(ODA)
第五章 参考資料


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消費支出(全世帯)は実質〇・一%の増加


―平成十四年度平均家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年度比でみると、全世帯の消費支出は、平成七年度に実質増加となった後、八年度以降六年連続の実質減少となったが、十四年度は実質増加となった。
 内訳をみると、教育、住居、光熱・水道などが実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年度比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成九年度以降四年連続の実質減少となった後、十三年度は実質増加となったが、十四年度は実質減少となった。
 また、消費支出は、平成五年度、六年度に実質減少となった後、七年度、八年度は実質増加となったが、九年度以降六年連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万一千七百五十九円となり、前年度に比べ、名目〇・五%の増加、実質一・二%の増加となった。












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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十五年四月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十五年四月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 四月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万五千五百三十七円、前年同月比〇・六%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万一円、前年同月比〇・四%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万九百一円、前年同月比〇・七%減、所定外給与は一万九千百円、前年同月比は三・〇%増であった。
 また、特別に支払われた給与は五千五百三十六円、前年同月比は一二・八%減であった。
 実質賃金は、〇・六%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に不動産業二・三%増、製造業一・一%増、金融・保険業〇・六%増、建設業〇・二%減、サービス業〇・九%減、運輸・通信業一・〇%減、卸売・小売業,飲食店一・一%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・九%減、鉱業一三・二%減であった。

◇労働時間の動き

 四月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五六・六時間、前年同月比〇・三%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四六・四時間、前年同月比〇・五%減、所定外労働時間は一〇・二時間、前年同月比四・〇%増、所定外労働時間の季節調整値の前月比は一・三%減であった。
 製造業の所定外労働時間は一五・〇時間、前年同月比一一・一%増、季節調整値の前月比は〇・六%増であった。

◇雇用の動き

 四月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・八%減、常用労働者のうち一般労働者では一・三%減、パートタイム労働者では〇・九%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは鉱業一・七%増、サービス業一・〇%増であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・三%減、卸売・小売業,飲食店〇・六%減、不動産業一・三%減、金融・保険業二・〇%減、建設業二・三%減、製造業二・七%減、電気・ガス・熱供給・水道業三・六%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・九%減、パートタイム労働者二・四%減、卸売・小売業,飲食店では一般労働者一・九%減、パートタイム労働者一・〇%増、サービス業では一般労働者〇・二%減、パートタイム労働者五・三%増であった。











言葉の履歴書


鉄砲水

 「鉄砲を打つ」という言葉は、銃砲を発射することのほか、かつてはウソをつく、ホラを吹く、大言壮語するといった意味にも使われました。
 弾丸を込めずに火薬だけで射撃する「空鉄砲」が、でまかせを意味することもあって、でたらめな話は「鉄砲話」とも呼ばれています。
 しかし、同じ「鉄砲」がついた言葉でも「鉄砲水」となれば、いいかげんな鉄砲話と片づけてしまうわけにはいきません。梅雨の終わりごろ、集中豪雨による山崩れなどで山間部の河水がせきとめられ、堰(せき)が切れるときのようにドーンと奔流する「鉄砲水」の発生をみることがあります。
 これは材木を運ぶ方法の「鉄砲流し」からきたとされる呼び名です。「鉄砲堰」と呼ばれる堰を作って水をせきとめ、大量の材木を集めてから堰を切って、ドーンと下流へ押し流しますが、沿岸を傷つけるため、現在は行われていません。
 人為的な運材法「鉄砲流し」が、自然災害の名称「鉄砲水」を生んだことになるわけです。




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四月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十五年四月等結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十五年四月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百六万人、完全失業者は三百八十五万人、非労働力人口は四千二百四十五万人と、前年同月に比べそれぞれ二十七万人(〇・四%)減、十万人(二・七%)増、五十五万人(一・三%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百六万人と、前年同月に比べ二十七万人(〇・四%)の減少となり、二十五か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百十四万人、女性は二千五百九十二万人で、前年同月と比べると、男性は二十五万人(〇・七%)減、女性は二万人(〇・一%)減となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百十二万人、自営業主・家族従業者は九百七十二万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は六万人(〇・一%)減、自営業主・家族従業者は十九万人減となり、雇用者は二か月ぶりの減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百七十三万人と、五万人(〇・一%)減、二十か月連続の減少
 ・常 雇…四千五百七十二万人と、三十二万人(〇・七%)減、二十一か月連続の減少
 ・臨時雇…五百八十七万人と、十九万人(三・三%)増、十六か月連続の増加
 ・日 雇…百十五万人と、八万人(七・五%)増、二か月連続の増加

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百七十六万人と、二万人(〇・七%)減少
○建設業…五百九十一万人と、三十三万人(五・三%)減少
○製造業…一千百五十四万人と、五十九万人(四・九%)減少
○運輸業…三百三十五万人と、二十五万人(八・一%)増加
○卸売・小売業…一千百三十一万人と、二十七万人(二・三%)減少
○飲食店,宿泊業…三百五十三万人と、四万人(一・一%)減少
○医療,福祉…五百六万人と、三十三万人(七・〇%)増加
○サービス業…八百六十一万人と、二十万人(二・四%)増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百八十万人と、二十四万人(四・八%)減少
○製造業…一千六十五万人と、四十九万人(四・四%)減少
○運輸業…三百二十一万人と、二十六万人(八・八%)増加
○卸売・小売業…九百六十六万人と、二十四万人(二・四%)減少
○飲食店,宿泊業…二百六十三万人と、三万人(一・一%)減少
○医療,福祉…四百七十六万人と、三十五万人(七・九%)増加
○サービス業…六百九十二万人と、四万人(〇・六%)増加
 (注) 日本標準産業分類の改訂に伴い、平成十五年一月結果の公表以降、新産業分類で表章している。

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百三十一万人と、二十一万人(一・二%)減、五か月連続の減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百六十九万人と、五万人(〇・三%)減、四か月連続の減少
○五百人以上規模…一千百八十五万人と、二万人(〇・二%)増、四か月連続の増加

(5) 就業時間

 四月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…二千七十九万人と、四十八万人(二・四%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…一千三百八十六万人と、百二万人(七・九%)増加
○三十五時間以上…四千七十八万人と、九十一万人(二・二%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千五百七十二万人と、十四万人(〇・九%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四〇・〇時間で、前年同月と比べ〇・四時間の減少となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百八十五万人と、前年同月に比べ十万人(二・七%)増となり、二か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百三十三万人、女性は百五十一万人で、前年同月に比べ、男性は六万人(二・六%)の増加、女性は四万人(二・七%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○定年等…四十一万人と、一万人増加
○勤め先都合…百十二万人と、九万人減少
○自己都合…百二十二万人と、十八万人増加
○学卒未就職…三十万人と、四万人増加
○新たに収入が必要…四十七万人と、四万人増加
○その他…二十九万人と、七万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・四%と前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・六%、女性は五・一%と、前月に比べ男性は〇・一ポイントの低下、女性は〇・三ポイントの上昇となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・八%と、前年同月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・九%、女性は五・五%と、男性は〇・二ポイントの上昇、女性は〇・一ポイントの上昇となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…四十六万人(二万人増)、一二・六%(一・〇ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十八万人(三万人増)、六・四%(〇・四ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…三十一万人(四万人増)、三・九%(〇・四%ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十六万人(二万人減)、四・一%(同率)
○五十五〜六十四歳…五十二万人(一万人減)、七・五%(〇・四ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…二十四万人(二万人増)、五・八%(〇・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(三万人減)、一〇・〇%(〇・九ポイント低下)
○六十五歳以上…十万人(同数)、三・二%(〇・一ポイント低下)
[女]
○十五〜二十四歳…三十八万人(二万人増)、一一・三%(一・〇ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十六万人(一万人増)、七・五%(〇・二ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十六万人(三万人増)、四・九%(〇・五ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十一万人(五万人減)、三・三%(〇・六ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十九万人(五万人増)、四・四%(〇・九ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十一万人(三万人増)、四・二%(〇・九ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…八万人(一万人増)、四・八%(〇・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・一%(同率)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数

 世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…百万人と、八万人減少
○世帯主の配偶者…五十一万人と、四万人増加
○その他の家族…百七十八万人と、七万人増加
○単身世帯…五十五万人と、七万人増加

―詳細結果平成十五年一〜三月平均の概要―

◇就業者

(1) 雇用形態別の構成

 役員を除く雇用者四千九百四十一万人のうち、正規の職員・従業員は三千四百四十四万人、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員等の非正規の職員・従業員は一千四百九十六万人となっている。
 役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は三〇・三%となっており、前年同期に比べると、一・六ポイント上昇した。これを男女別にみると、男性は一五・二%、女性は五一・二%と、女性の割合が高くなっている。

(2) 転職者

 転職者(就業者のうち過去一年間に離職を経験した者)のうち、転職で収入が減った者は四一・四%、収入が増えた者は三一・二%となっている。
 これを年齢階級別にみると、男性では三十五歳以上の各年齢階級で収入減の割合が収入増の割合を上回っている。
 また、女性では二十五〜三十四歳と四十五歳以上の各年齢階級で収入減の割合が収入増の割合を上回っている。

◇完全失業者

(1) 失業期間

 失業期間別に完全失業者の割合をみると、「三か月未満」が三四・七%と最も高く、次いで「一年以上」が三一・一%となっている。
 これを前年同期と比べると、「三か月未満」が一・六ポイント低下した。一方、「三〜六か月未満」が〇・五ポイント、「六か月〜一年未満」が〇・四ポイント、「一年以上」が〇・七ポイントそれぞれ上昇し、完全失業者の失業期間の長期化傾向がみられる。

(2) 仕事につけない理由

 完全失業者について、仕事につけない理由の割合を年齢階級別にみると、四十五歳以上の各年齢階級では「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が最も高い割合となっており、特に五十五歳以上では五四・四%を占めている。
 一方、四十四歳以下の各年齢階級では「希望する種類・内容の仕事がない」の割合が最も高くなっている。

◇非労働力人口

 非労働力人口四千三百五十一万人のうち、就業希望者は五百四十四万人となっており、前年同期と比べると十一万人増加している。また、これを非求職理由別にみると、「家事・育児のため仕事があっても続けられそうにない」は百五十一万人と最も多くなっており、前年同月と比べると十一万人増加している。
















暮らしのワンポイント

ガラス製品の利用

夏を涼しく演出する

 暑い夏。でも、目から「涼」を感じることもできます。ガラス製品を利用するのもその一つ。透明感があり、見るからに涼しげなガラス製品を利用して、過ごしやすい夏を演出してみませんか。
 窓辺やサイドボードにガラスの置物や小瓶を並べたり、写真立てをガラス製にかえたりして、インテリアにガラス素材を取り入れると部屋の雰囲気が変わります。
 江戸風鈴や、昔懐かしい球形の金魚鉢など和風のガラス器も涼しさを感じさせてくれます。金魚鉢には、金魚の代わりにビー玉や水中花などを入れてもきれいです。
 食事どきは、ガラス器をテーブルの主役にするだけで夏のインテリア効果は十分です。ポイントは、異なる素材のものと組み合わせること。そうすることで、ガラスの美しさ、涼しさがひきたちます。
 例えば、カップに漆のコースター、グラスに竹細工のマット、クリスタルガラスのサラダボウルの下に色鮮やかな日本手ぬぐいを敷いたりすることで、和風の涼味が楽しめます。洋風にアレンジするなら、アルミ、コルク、素焼きなどの素材と組み合わせれば洗練された涼しさを演出できます。
 美しい細工を施したガラス器は、テーブルウエアに最適ですが、汚れていては台無しです。
 普通に洗っても表面がくもってみえたり、凹凸部分に汚れが見えたりするようなら、酢水にしばらくつけてから柔らかい布やスポンジで軽くこすり、ぬるま湯で洗い流します。こうすれば、ガラス器のくもりも黄ばみもきれいになくなります。
 洗った後のガラス器は、水気を拭き取らず、布の上に伏せて自然乾燥させてください。






    <7月23日号の主な予定>

 ▽食料・農業・農村白書のあらまし……………農林水産省 

 ▽法人企業統計季報(一〜三月期調査)………財 務 省 




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