官報資料版 平成15年8月6日




                  ▽循環型社会白書のあらまし………環 境 省

                  ▽労働力調査(五月)………………総 務 省

                  ▽月例経済報告(七月)……………内 閣 府











循環型社会白書のあらまし


―循環型社会への道筋―


環 境 省


 循環型社会白書は、循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第一一〇号)第十四条に基づき、毎年政府が国会に報告しているものです。
 今回の白書(平成十五年版循環型社会白書)は平成十三年に第一回の報告がなされてから三回目のものであり、その構成は次のとおりです。
 白書では、「平成十四年度循環型社会の形成の状況に関する年次報告」として、循環資源の発生、循環的利用及び処分の状況並びに平成十四年度に政府が循環型社会の形成に関して講じた施策の状況を記述しています。また、「平成十五年度において講じようとする循環型社会の形成に関する施策」として、循環資源の発生、循環的利用及び処分の状況を考慮して平成十五年度に講じようとする施策について記述しています。
 循環型社会白書の概要は次のとおりです。

序章 循環型社会への道筋―「循環型社会形成推進基本計画」について―

第1節 はじめに

1 循環型社会形成推進基本法について
 大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会の在り方や国民のライフスタイルを見直し、社会における物質循環を確保することにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷の低減が図られた「循環型社会」を形成するため、平成十二年六月に循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)が公布され、平成十三年一月に施行されました。

2 循環型社会形成推進基本計画について
 循環型社会基本法では、政府において、循環型社会の形成に関する基本的な計画として、循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)を定めることとされています。国は、法律の期限を半年以上前倒しして、平成十五年三月十四日に循環型社会基本計画を閣議決定・国会報告しました。

3 循環型社会基本計画の構成
 循環型社会基本計画では、第1章で現状と課題を分析し、第2章で我が国が目指す循環型社会のイメージを示しています。また、第3章で循環型社会に向けた具体的な数値目標を設定しています。次に、第4章及び第5章では、この目標を達成するための国及び各主体の取組を挙げています。最後に、第6章で本計画の点検・見直しなどの留意事項を示し、さらに具体的な取組に関する工程表を示しています。

4 現状と課題
 循環型社会基本計画の第1章では「現状と課題」として、我が国が二十世紀を通じて物質的な豊かさを得た一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会活動によって様々な環境問題が生じてきたことを記述しています。
 このような課題を解決するため、資源を効率的に利用していく循環を基調とする社会経済システムを構築するとともに、不法投棄などの廃棄物問題を解決していくことにより、天然資源の消費を抑制し環境への負荷を低減する「循環型社会」の形成を図っていく必要があります。

第2節 目指すべき社会の姿

1 循環型社会のイメージ―三つのシナリオ―
 ひとえに循環型社会といっても、その言葉から具体的にイメージする社会は様々です。昨年の循環型社会白書では、循環型社会のイメージとして三つのシナリオを示しました。シナリオAは「技術開発推進型シナリオ」で極めて高度な工業化社会となり、廃棄物等は品目別に収集され、高度化した静脈物流システムにより集積され、廃棄物発電などのサーマルリサイクルも活発化します。シナリオBは「ライフスタイル変革型シナリオ」で生活のペースをスローダウンし、家の手入れや家庭菜園などの園芸を行ったり、ものを修理しつつ大事に使う生産的消費者へ変化し、また地域活動への参加、地産地消といった小さな経済で充足感を得る社会となります。シナリオCは「環境産業発展型シナリオ」で環境効率性が高く、産業の高次化が進展します。環境産業の発展により経済成長もしながら、そのような産業が供給する環境配慮型製品やサービスにより暮らしの面でも環境負荷が低減します。
 このように多様なイメージのある循環型社会について、循環型社会基本計画の第2章では「循環型社会のイメージ」として、「循環型社会」を国民に分かりやすく理解してもらうため、具体的な姿を示しました。

2 自然の循環を取り戻すための経済社会の循環の実現
 自然界における環境は大気・水・土壌・生物等の間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保つことにより成り立っています。このような環境の中で、私たちが生活する経済社会の中での循環が実現することは、自然界における循環を取り戻すことにつながります。
 具体的には、私たちの社会の営みは自然界の環境が保たれることを前提としており、自然界の物質循環や生態系の微妙な均衡を壊すような資源の大量採取や廃棄物等の大量廃棄を行うことは許されません。したがって、資源を有効に活用し、豊かな環境の恵みを享受できる社会を築いていく必要があります。

3 暮らしに対する意識と行動の変化
 暮らしについては、地域で採れたものを地域で循環して利用していくことや良いものを大事に長く使うことで、自然と共生したいわゆる「スロー」なライフスタイルが定着していくことを挙げています。そして、我が国社会が二十世紀後半に形成した「ワンウェイ型ライフスタイル」は「循環」を基調としたスタイル(リデュース(発生抑制)・リユース(再使用)・リサイクル(再生利用)を推進するリ・スタイル(Re−Style))に転換されていきます。
 例えば、給食サービス会社のE社では、競技場でのデポジット制によるリユースカップを導入しました。

4 ものづくりなどに対する意識と行動の変化
 ものづくりやサービスについては、リサイクルしやすい設計の製品や詰め替え型の製品、修理やリース・レンタルなど環境へ配慮したサービスが普及することを挙げています。
 例えば、電器製品を扱うT社では、「もの」ではなく「機能」を提供するサービスとして、全自動洗濯機・オーブン付き電子レンジ・テレビ・2ドア冷凍冷蔵庫の四製品をまとめてレンタルする事業を始めました。

5 循環型社会形成へ向けた各主体の活動の活発化・システムの高度化
 循環型社会の基盤となる各主体の活動の活発化や廃棄物処理・リサイクル関係の情報・人材や施設などソフト及びハード面の整備が進むことなどを挙げています。
 循環型社会の形成には、法律・条例の制定・施行や施設整備などを行う国・都道府県・市町村のみならず、国民、NPO・NGO、事業者らがパートナーシップに基づき活動することにより、地域の特色に応じた取組が推進され、美しい街並みや風景、温かい地域コミュニティーや地域独自の文化が醸成されていくことになります。
 また、循環型社会形成の前提となる廃棄物問題の解決に向けて、先端技術を用いた廃棄物等のリサイクル・処理施設、総合的な静脈物流システム、不法投棄の未然防止・取締体制、廃棄物等に関する情報基盤などが整備されます。

第3節 定量的な目標の設定

1 数値目標の設定
 循環型社会の形成を目指して、廃棄物等の発生抑制、適正なリユース・リサイクルの推進、適正な処分を図っていくための総合的目標は、これまで設定されておらず、平成十二年十二月に策定された環境基本計画において「循環型社会の形成の推進に向けて、循環型社会推進基本計画に、施策の具体的な目標として、数値目標を盛り込み、その効果を客観的に把握できるようにすることが必要」と指摘されています。
 循環型社会基本法の目的である「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保」の達成のため、上位目標として「天然資源の消費抑制と環境負荷の低減を図る循環型社会の形成」を、中位目標として「適正なリデュース・リユース・リサイクル(3R)と処分の推進」を、さらに具体的な施策となる下位目標として「主要個別製品ごとの回収・リサイクル・処分等の促進」を設定します。
 具体的には、循環型社会基本計画の第3章において「循環型社会の形成のための数値目標」として、平成二十二年度を目標年次として、循環型社会の達成度合を把握するための物質フローに関する目標(マクロ)と、循環型社会へ向けた各主体の施策・取組を測るための目標(ミクロ)を設定しています。

2 物質フロー目標
 我が国の物質フローをみると、約二十一億トンの年間総物質投入量のうち蓄積(ストック)が約十一億トンであるのに対し、廃棄物等の発生が約六億トン、エネルギー消費が約四億トンであり、廃棄物・リサイクル問題、地球温暖化問題が我が国社会の構造的・根本的な問題であることがみて取れます。
 循環型社会基本計画では、物質フローの「入口」、「出口」、「循環」に関する指標に目標を設定することとしました。
 「入口」については、国内総生産額(GDP)を天然資源等投入量で除した「資源生産性」を指標としました。この「資源生産性」は、産業や人々の生活がいかにものを有効に利用しているか(より少ない資源でどれだけ大きな豊かさを生み出しているか)を総合的に表す指標と言えます。
 「出口」については、廃棄物の最終処分場のひっ迫という喫緊の課題に直結した指標である「最終処分量」(廃棄物の埋立量)を指標としました。
 「循環」については、再使用・再生利用等の対策に直接関わる指標として「循環利用率」を指標としました。この「循環利用率」は、社会に投入される資源のうち、どれだけ循環資源(再使用・再生利用された資源)が投入されているかを表す指標と言えます。
 目標値を設定した三つの指標値は、それぞれ独立に決まるのではなく、お互いに影響を及ぼし合いながら決まっています。
 こうしたことから三つの指標に目標を設定するに当たっては、それぞれの目標値が互いに整合的になるように配慮する必要があります。目標値設定の作業においては三つの数値目標のほか、関連する変数を用いて前記のような相互依存関係を表す物質フローのモデルを作成しました。そして、技術革新や財・サービスの需要構造の変化に関する過去のトレンドを踏まえつつ、廃棄物等の循環的利用について最大限の努力により本計画に基づく取組を進めた場合に達成可能な水準として目標を定めたものです。
 実際の計画では、このような試算結果を踏まえ物質フローに関する数値目標を次のとおりとしました。


 (循環型社会基本計画第3章第1節「物質フロー指標に関する目標」より抜粋)

 1 「入口」:資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)
  資源生産性を平成二十二年度において約三十九万円/トンとすることを目標とします(平成二年度《約二十一万円/トン》からおおむね倍増、平成十二年度《約二十八万円/トン》からおおむね四割向上)。

 2 「循環」:循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))
  循環利用率を平成二十二年度において、約一四%とすることを目標とします(平成二年度《約八%》からおおむね八割向上、平成十二年度《約一〇%》からおおむね四割向上)。

 3 「出口」:最終処分量
  最終処分量を平成二十二年度において、約二千八百万トンとすることを目標とします(平成二年度《約一千百万トン》からおおむね七五%減、平成十二年度《約五千六百万トン》からおおむね半減)。

 今後の課題は以下のとおりです。
@天然資源等投入量などの内訳について
 天然資源等投入量については、土石などの非金属鉱物系資源が太宗を占めており、その増減が全体に与える影響が大きいこと、持続的利用が可能となるよう環境に適切に配慮して収集等されたバイオマス系資源の増加は望ましいことなどから、種別ごとの内訳の動向を観察していく必要があると考えられます。このため、天然資源等投入量などの内訳(国内外別の化石系・金属系・非金属鉱物系・バイオマス系資源別の値)を計測していくこととしています。
A国際的な循環について
 経済のグローバル化に伴う国際的な循環については、環境規制が十分に整備されていない国への廃棄物等の輸出が結果的に現地での環境破壊を招くというおそれがあり、国際的にも関心が高まっています。国内の問題を海外に転嫁するようなこととならないよう、廃棄物等の輸出入量について計測し、国内的な循環と国際的な循環を概観していくこととしています。
B隠れたフローについて
 資源採取等に伴い目的の資源以外に採取・採掘されるか又は廃棄物などとして排出される物質を「隠れたフロー」と呼びます。この隠れたフローについては、国内では約十億九千万トン(資源採取量約十一億二千万トンの〇・九七倍)、国外では約二十八億三千万トン(資源採取量約七億二千万トンの三・九倍)の計三十九億二千万トンも生じているとの推計もありますが、現時点で詳細なデータが不足しており、今後、検討していくこととしています。
C3Rに関する指標について
 一般に個別品目のリサイクル率として用いられている指標は、品目ごとによって定義が異なっています。例えば、PETは分別収集量/生産量、ガラス瓶はカレット使用量/びん生産量、スチール缶は回収重量/消費量、アルミ缶は再生利用量/消費量、紙は回収量/古紙発生量あるいは古紙利用量/紙生産量などがリサイクル率として呼ばれることがあります。このため個別品目ごとの物質フローの把握、共通の計算方法によるリデュース率・リユース率・リサイクル率といった3Rに関する指標について、今後、検討していくこととしています。
 また、物質フローに関する国際的動向としては、日米欧の調査研究機関の共同研究により、各国の物質フローを比較したレポートが、世界資源研究所(WRI:World Resource Institute)から刊行されています。また、他の諸外国における研究として、欧州統計局(EUROSTAT)では物質フローを実施するためのガイドブックを刊行しています。さらに、OECDは環境と経済の分離度を示す「デカップリング指標」に関するレポートを完成させ、公表しています。この中では物質利用を表す指標として「資源生産性」が示されています。
 資源生産性について現在の値を国際比較すると、我が国は各国と比較しても高い水準にあります。国際的にも資源生産性の向上の重要性が認識される中、我が国としては、この国際的な「強み」を本計画に基づき更に伸ばしていくこととしています。
 また、資源生産性はGDP/天然資源等投入量で表されますので、仮にGDP(豊かさ)を二倍にし、天然資源等の投入量(環境負荷)を二分の一とすると、資源生産性は四倍になります。これを「ファクター4」と呼びます。循環型社会基本計画に定めた資源生産性の目標は、二〇一〇(平成二十二)年に一九九〇(平成二)年の値のおおむね倍増となりますので、この間で「ファクター2」を目指す目標と言えます。

3 取組目標
 我が国の社会の構造を測る物質フロー目標は達成状況を測るものであり、具体的にどのような取組を行うことで循環型社会が達成されるのかは明確ではありません。そのため具体的な取組を明らかにする取組目標を設定することとしました。つまり、物質フロー目標が我が国の循環型社会への到達度を測る数値目標とすれば、取組目標は循環型社会の達成のための手段に関する数値目標と言えます。
 具体的には、循環型社会の形成に向けた国民・企業等の参加度及び取組の進展度を測るため、@国民の意識や取組への参加等に関する指標、A国民や事業者の廃棄物の削減への取組に関する指標、B循環型社会ビジネスの推進・育成に関するグリーン購入、環境経営、市場拡大・育成に関する指標について目標を設定することとしました。


 (循環型社会基本計画第3章第2節「取組指標に関する目標」より抜粋)

 1 循環型社会形成に向けた意識・行動の変化
  アンケート調査結果として、約九〇%の人たちが廃棄物の減量化や循環利用、グリーン購入の意識を持ち、約五〇%の人たちがこれらについて具体的に行動するようになることを目標とします。

 今後、世論調査などのアンケート調査を実施することにより、これらの目標の達成状況を把握していきます。


 (循環型社会基本計画第3章第2節「取組指標に関する目標」より抜粋)

 2 廃棄物等の減量化
 (1) 一般廃棄物の減量化
  一人一日当たりに家庭から排出するごみの量(資源回収されるものを除く。)を平成十二年度比で約二〇%減に、一日当たりに事業所から排出するごみの量(資源回収されるものを除く。)を平成十二年度比で約二〇%減とすることを目標とします。

 日々の暮らしにおいて最も身近なごみに関する取組としては、実際に捨てるごみを減らすこと、いわば「ごみのダイエット」です。このため、国民が具体的に取り組むために分かりやすい目標として、一人一日当たりのごみの排出量を二〇%削減していくことを掲げました。


 (循環型社会基本計画第3章第2節「取組指標に関する目標」より抜粋)

 2 廃棄物等の減量化
 (2) 産業廃棄物の減量化
  産業廃棄物の最終処分量を平成二年度比で約七五%減とすることを目標とします。

 (社)日本経済団体連合会(日本経団連)では、自主的な目標として三十二業種からの産業廃棄物最終処分量(埋立量)を平成二十二年度に平成二年度比で七五%減とすることとしています。本計画では、このような先進的な取組を踏まえ、日本経団連のみならず産業界全体で同レベルの水準を目指した取組が進むことを期待し、具体的には平成二年度における産業廃棄物の最終処分量(約八千九百万トン)を約七五%削減することを目標として設定しました。


 (循環型社会基本計画第3章第2節「取組指標に関する目標」より抜粋)

 3 循環型社会ビジネスの推進
 (1) グリーン購入の推進
  アンケート調査結果として、すべての地方公共団体、上場企業(東京、大阪及び名古屋証券取引所一部及び二部上場企業)の約五〇%及び非上場企業(従業員五百人以上の非上場企業及び事業所)の約三〇%が組織的にグリーン購入を実施するようになることを目標とします。

 (2) 環境経営の推進
  アンケート調査結果として、上場企業の約五〇%及び非上場企業の約三〇%が環境報告書を公表し、環境会計を実施するようになることを目標とします。

 環境省のアンケート調査(「グリーン購入に関するアンケート調査」(平成十四年、N=二一四四)、「平成十三年度環境にやさしい企業行動調査」(平成十四年、N=一二九一:上場企業、一六〇七:非上場企業))では、平成十三年度の実績が地方公共団体で約二四%、上場企業で約一五%、非上場企業で約一二%となっていますが、グリーン購入という取組が始まったのが最近であることから過去の推移(トレンド)等のデータが不足しているため、今般の目標設定では現状の約二倍以上という目標水準を設定しました。
 また、循環型社会の形成において重要な役割を果たす事業者の取組として、環境に配慮された事業活動が行われていくことが重要です。これについては、環境経営の推進として、上場企業の約五〇%、非上場企業の約三〇%が環境報告書の公表及び環境会計を実施することを目標としました。環境省のアンケート調査結果(「平成十三年度環境にやさしい企業行動調査」:前記)をみると、環境報告書については上場企業の約三〇%、非上場企業の約一二%が公表、環境会計については上場企業の約二三%、非上場企業の約一二%が実施しており、これもグリーン購入の目標と同様に、現状を踏まえて設定しました。


 (循環型社会基本計画第3章第2節「取組指標に関する目標」より抜粋)

 3 循環型社会ビジネスの推進
 (3) 循環型社会ビジネス市場の拡大
  循環型社会ビジネスの市場規模及び雇用規模を平成九年比でそれぞれ二倍にすることを目標とします。

 循環型社会の形成が進み成長が見込まれる環境ビジネスのうちの廃棄物・リサイクル分野(循環型社会ビジネス)の市場規模は、環境庁の調査結果(「わが国のエコビジネスの市場規模の推計結果について」(平成十二年))では平成九年で約十二兆円で、我が国のGDPの約二・三%を占めると推計されています。また、雇用規模については同じく平成九年で約三十二万人と推計されます。
 循環型社会基本計画では、環境と経済が統合された循環型社会の形成に向けて、意欲的な目標として市場規模及び雇用規模をそれぞれ二倍とすることとしました。

第4節 各主体の取組

1 国の取組
 循環型社会基本計画の第4章では「国の取組」として、各種法制度の着実な施行、各主体の行動の基盤づくりや自らも事業者・消費者として率先的取組を行っていくことなどを記述しています。
(1) 法的基盤の整備
 平成十二年の循環型社会基本法の制定と一体的に、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)が改正され、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法:再生資源の利用の促進に関する法律の改正)、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が成立しました。
 さらに、平成十四年七月には使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)が成立し、既存の容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)などと併せて、循環型社会の形成に向けた取組を推進する法的基盤が整備されつつあります。
 循環型社会の形成に向けて、今後、これらの法律の着実な施行と見直しを進めるとともに、必要に応じ新たな措置を講じていきます。
(2) その他の取組
 法制度以外の取組として第4章では、第一に「自然界における物質循環の確保」として、バイオマスなどの活用の促進、再生可能エネルギーの積極的な利活用の推進、森林整備などの自然環境の保全、第二に「ライフスタイルの変革」として、環境教育・環境学習の推進、NPO・NGO等の民間活動の支援、情報提供・広報活動の充実、第三に「循環型社会ビジネスの振興」として、グリーン購入や規格化の推進、経済的手法や環境管理システムなどに関する調査の実施、事業者等の民間活動の支援、設計・生産工程に関する技術開発の推進、第四に「安全で安心な廃棄物等の循環的利用と処分の実現」として、適正な循環的利用・処分の推進、排出者責任及び拡大生産者責任の考え方に基づく対策の推進、不法投棄対策の推進、第五に「循環型社会を支えるための基盤整備」として安全で適正な廃棄物処理施設の整備、廃棄物等に関する情報の整備、循環的利用・処分工程に関する技術開発の推進、人材育成・地域の取組への支援などを挙げています。
 これらの取組を推進するための経費は、平成十五年度で約三千五百億円(下水道事業費補助など内数で計上している経費は除く)を計上しています。

2 各主体の取組
 循環型社会基本計画の第5章では「各主体の果たす役割」として、国民、NPO・NGO、事業者、地方公共団体がそれぞれの役割を果たすことが重要であることなどを記述しています。
 具体的には、「国民」は、自らも廃棄物等の排出者であり、環境への負荷を与えていることを自覚するとともに、循環型社会の形成に向けて使い捨て製品の使用自粛、再生品やレンタル・リース制度の利用など環境への負荷の少ないグリーン製品・サービスの選択、ごみの減量化・リサイクルのための分別などに取り組むことが期待されます。
 また「NPO・NGO」は、循環型社会の形成に資する活動を行うとともに、各主体の活動のつなぎ手として地域住民のライフスタイルの見直しへの支援、環境教育・環境学習や啓発活動の実施を行っていくことが期待されます。
 さらに「事業者」は、廃棄物等の排出者としての自覚を持って行動することは当然ですが、さらに環境に配慮して使い捨て製品の製造販売や過剰包装の自粛、拡大生産者責任を踏まえた製品の長寿命化や再生資源等の環境負荷の低減に資する原材料等の利用、使用済製品の引き取りや適正な循環的利用及び処分の実施、環境ラベルや環境報告書などによる消費者への情報提供などを推進していくことが期待されます。
 最後に「地方公共団体」は、循環型社会の形成に向けた法・条例の着実な施行や廃棄物等の適正な循環的利用及び処分を実施するのみならず、地域における循環型社会基本計画を策定することなどにより各地で循環型社会の形成が積極的に推進されていくためのコーディネーターとしての役割が期待されます。

第5節 まとめ

1 計画の効果的実施
 循環型社会基本計画の第6章では「計画の効果的実施」について定めています。具体的には、本計画はこれから毎年、中央環境審議会において進捗状況を点検し、その結果を循環型社会白書により公表していくこととしています。さらに、本計画については、目標の達成状況や社会情勢の変化などを勘案して、五年後に見直しを行うこととしています。

2 持続可能な生産・消費形態への転換―真に豊かな社会へ向けて―
 ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議(UNCED、いわゆる「地球サミット」)から十年目に当たる二〇〇二(平成十四)年八〜九月に「ヨハネスブルク・サミット」が南アフリカ共和国のヨハネスブルクにおいて開催され、「ヨハネスブルク・サミット実施計画」が合意されました。
 この実施計画において、各国は、持続可能な生産・消費形態への転換を加速するための十年間の計画を策定することとなりました。この実施計画を踏まえ、我が国においては、この循環型社会基本計画を持続可能な生産・消費形態への転換を加速するための十年間の計画にも当たるものと位置づけました。
 循環型社会基本計画で定めた「資源生産性」の目標などについては国際的にも先進性のあるものです。また、この目標の基礎となる物質フローに関する研究分野については、OECDなどの場において我が国がリードしてきた分野でもあります。我が国としては、国際的にも、循環型社会の形成に関する取組を積極的にアピールするとともに、ヨハネスブルク・サミット実施計画にある持続可能な生産・消費形態への転換について先導的役割を果たしていく考えです。
 平成十五年四月二十五日〜二十七日にフランスのパリで開催されたG8環境大臣会合において取りまとめられた合意文書では、我が国より、持続可能な生産・消費形態への転換に向けて「資源生産性」について各国で共同研究を開始することを提案しました。このような取組が進めば、将来的には、我が国が循環型社会基本計画で定めたように、各国が「資源生産性」に関する目標を設定することも考えられます。
 二十一世紀の社会は、環境への取組が経済を豊かにし、経済への取組が環境を豊かにするという環境と経済の統合が重要となります。真の豊かさが実感できる「循環型社会の道筋」を我が国だけに留まらせず、広く世界へとつなげていきたいと思います。

第1章 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の状況

第1節 我が国の物質フロー

1 我が国の物質フロー
(1) 我が国の物質収支の概観と問題点
 我が国の物質フロー(平成十二年度)を概観すると、二十一億三千万トンの総物質投入量があり、その半分程度の十億八千万トンが建物や社会インフラなどの形で蓄積されています。また一億三千万トンが製品等の形で輸出され、四億二千万トンがエネルギー消費、六億トンが廃棄物等という形態で環境中に排出されています。循環利用されるのは二億二千万トンです。これは、総物質投入量の一割にすぎません。
 我が国の物質収支の特徴をみると、@「総物質投入量」が高水準、A「資源採取量」が高水準、B資源、製品等の流入量と流出量がアンバランス、C「循環利用量」の水準が低い、D廃棄物等の発生量が高水準、Eエネルギー消費が高水準、F「資源採取」に伴って生じる「隠れたフロー」が多い、といった課題が挙げられます。
 また、国内では、十億九千万トン(採取(十一億二千万トン)の〇・九七倍)、諸外国では、二十八億三千万トン(採取(七億二千万トン)の三・九倍)の計三十九億二千万トンの隠れたフローが生じていると推計されており、これは全体でみると、資源採取量の二倍強と膨大な量になります。環境効率性の点からみれば、資源浪費型とも言えるこのような経済社会活動の在り方を見直し、必要以上の資源採取をしないことや採取方法の工夫などを通じて、循環型社会の形成に向けて、この隠れたフローを可能な限り低減していくことが必要不可欠です。
(2) 我が国における循環的な利用の概観
 平成十二年度における我が国の循環的な利用の現状をみると、一年間に六億トンの廃棄物等が排出され、そのうち二億二千万トンが再使用、再生利用などにより循環利用され、二億四千万トンが焼却・脱水などにより減量化されています。この結果、五千七百万トンが最終処分されています。
 廃棄物等として排出された量は、平成十二年度では六億トンです。このうち、一般廃棄物(ごみ(五千五百万トン)及びし尿等(三千万トン)の合計量)が八千五百万トン、産業廃棄物が四億六百万トン、その他の副産物・不要物が一億九百万トンでした。国民一人当たりでは四・七トン、GDP(国内総生産)百万円当たりでは一・二トンの廃棄物等が発生していることになります。
 我が国で発生する循環資源の循環利用の特徴を、循環資源の素材構成に着目して分けた四つの区分ごとにまとめてみました。
 家畜ふん尿、下水道業や製造業などにおいて水処理の際に発生する有機性の汚泥、建設現場や、木製品製造業の製造工程から発生する木くず、家庭から発生する厨芥類などのバイオマス系循環資源は、焼却や脱水による減量の割合が高いことが特徴として挙げられます。循環利用の拡大及び最終処分の削減に向けては、農業分野での肥料、飼料としての受入れの拡大と、残さの焼却等による減量処理の徹底などが考えられます。
 建設現場から発生するがれき類や、鉄鋼業、非鉄金属業、鋳物業から発生する鉱さい、建設現場、浄水場などから発生する無機汚泥、家庭、飲食店などから出るガラスびんなどの非金属鉱物系(土石系)循環資源は、約六割弱が循環利用にされている反面、最終処分される割合も比較的高いことが特徴として挙げられます。循環的な利用の拡大及び最終処分の削減に向けては、路盤材、骨材、セメント原料等の土木建築資材としての受入れの拡大などが考えられます。
 建設現場から発生する解体くず、鉄鋼業、非鉄金属業から発生する金属くず、機械器具製造業から発生する加工金属くず、及び金属缶や家電などの使用済製品などの金属系循環資源は、循環利用される割合が非常に高いことが特徴となっています。循環利用の拡大及び最終処分の削減に向けては、これまで比較的循環利用が行われていなかった使用済製品中の金属類の回収・再資源化の徹底などが考えられます。
 各種製造業から発生する廃油や、プラスチック製品製造業、機械器具製造業から発生するプラスチック加工くず、家庭や各種産業などから発生する使用済プラスチック製品などの化石系循環資源は、焼却による減量の割合が高いことが特徴として挙げられます。循環利用の拡大及び最終処分の削減に向けては、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)や、「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)を契機として、使用済製品の回収及びその再資源化技術の開発が一層促進されることなどが考えられます。

2 廃棄物の排出量
(1) 一般廃棄物(ごみ)の処理の状況
 平成十二年度の一般廃棄物の総排出量は約五千二百三十六万トンとなっています。これは東京ドーム百四十一杯分に相当します。国民一人当たりだと一日に約一・一キログラム排出することになります。
 リサイクル率は、平成二年度の五・三%から平成十二年度の一四・三%に大きく増加しています。最終処分場に埋め立てられる量は一千五十一万トン(平成十一年度一千八十七万トン)であり、こちらも年々減少しています。
(2) 産業廃棄物の処理の状況
 平成十二年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約四億六百万トンとなっています。
 そのうち再生利用された量が約一億八千四百万トン(全体の四五%)、中間処理により減量化された量が約一億七千七百万トン(四四%)、最終処分された量が約四千五百万トン(一一%)となっています。

3 循環的な利用の現状
 容器包装、家電製品、建設廃棄物、食品廃棄物、自動車、パソコン、繊維製品など個別の製品ごとに循環的な利用状況を示しています。製品ごとに循環的な利用が進んでいることが分かります。

第2節 一般廃棄物

1 一般廃棄物(ごみ)
 一般廃棄物の総排出量及び一人一日当たりの排出量は、第二次石油危機の昭和五十四年度以降に減少傾向がみられたものの、昭和六十年度前後からバブル経済とともに急激に増加し、平成二年度から平成十二年度にかけてはほぼ横ばい傾向が続いています。
 一般廃棄物に係るごみ処理事業経費については平成十二年度で二兆三千七百八億円であり、国民一人当たりに換算すると、一万八千七百円となり、ここ数年は横ばいとなっています。
 また、ごみ焼却施設からの余熱の有効な利用については、ごみ発電をはじめ、施設内の暖房・給湯、温水プール、老人施設等社会福祉施設への温水・熱供給、地域暖房への供給等がありますが、施設内の暖房・給湯が最も普及しています。このうち、平成十二年度末において、稼働若しくは建設中のごみ焼却施設のうち、発電を行っている施設は二百三十三に上ります。

2 一般廃棄物(し尿)
 し尿処理人口の推移をみると、浄化槽人口がほぼ横ばいの推移であるのに対し、下水道人口(七千百二十二万人)の増加により、これらを合わせた水洗化人口(一億五百七十三万人)は年々増加しています。平成十三年度末の浄化槽の設置基数は八百八十二万基(平成十二年度八百七十八万基)で、増加傾向が続いています。
 平成十二年の浄化槽法改正によって、新設時の合併処理浄化槽の設置が義務付けられるとともに、既設単独処理浄化槽の設置者は、合併処理浄化槽への設置替えに努力しなければならなくなりました。
 平成十二年度の実績では、し尿及び浄化槽汚泥三千百十万キロリットルはし尿処理施設又は下水道投入によって、その九三・四%(二千九百四十五万キロリットル)が処理されています。また、海洋投入処分量は、百五十万キロリットルと計画処理量の四・八%を占めていますが、その割合は年々わずかずつ減少しています。なお、海洋投入処分については、平成十四年二月より現に海洋投入処分を行っている者に対して五年間の経過措置を設けた上で禁止されました。

第3節 産業廃棄物

1 産業廃棄物
 平成二年度以降の排出量の状況をみると、四億トン前後で大きな変化はなく、バブル経済の崩壊後はほぼ横ばいとなっています。産業廃棄物処理施設に係る新規の許可件数は焼却施設及び最終処分場共に年々減少しています。特に平成九年の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の改正後は、許可件数が激減しており、最終処分場の残余年数の減少に大きく影響しています。

2 大都市圏における産業廃棄物の広域移動
 首都圏などの大都市圏では、土地利用の高度化や環境問題等に起因して、焼却炉などの中間処理施設や最終処分場を確保することが難しくなっています。そのため、廃棄物をその地域の中で処理することが難しく、一般廃棄物も産業廃棄物も、その多くが都府県域を越えて運搬され処分されています。
 平成十二年度に首都圏の都県において中間処理又は最終処分のために都県外に搬出された産業廃棄物の量は一千七十八万トンで、このうち半分以上の五百六十六万トンが東京都から搬出されています。また、首都圏から他の圏域へ流出している量は、前記のうち百四十二万トンとなっています。

第4節 廃棄物関連情報

1 最終処分場の残余容量と残余年数の推移
 平成十二年度末の一般廃棄物の最終処分場は二千七十七施設であり、その残余容量は一億五千七百二十万立方メートルと前年より四・四%減少し、また残余年数は全国平均で一二・二年分でした。
 平成十二年度末の産業廃棄物の最終処分場の残余容量は一億七千六百九万立方メートルで前年より七百八十五万立方メートル減少し、また残余年数は全国平均で三・九年分でした。
 産業廃棄物の最終処分場については、排出者責任の原則によって民間事業者による施設の整備を基本として推進しつつ、これらの整備状況を踏まえ、内陸部や海面において必要と認められる容量を公共関与による安全かつ適正な施設整備で確保することも進めていく必要があります。

2 不法投棄の現状
 産業廃棄物については依然として不法投棄等の不適正処理の件数が多く、そのことが産業廃棄物処理全体に対する国民の信頼を失わせる大きな要因となっています。全国の不法投棄の状況をみると、投棄量についてはここ数年四十万トン前後で推移していましたが、平成十三年度は約二十四万トンと大幅に減少しました。一方、投棄件数は一千百五十件と増加しており、引き続き不法投棄対策を強化することが必要な状況にあります。
 不法投棄された産業廃棄物の種類についてみると、投棄件数では、がれき類、木くずなどの建設廃棄物が全体の約六九%、次いで廃プラスチック類が一〇%を占めています。また、投棄量については、建設廃棄物が全体の約七二%、次いで、廃プラスチック、汚泥がそれぞれ八%を占めています。
 不法投棄の実行者の内訳を件数でみると、排出事業者によるものが全体の約四三%を占め、無許可業者が約一五%、許可処理業者が約六%となっているほか、投棄実行者が判明していない不法投棄が約三四%となっています。また、投棄量でみた場合、排出事業者によるものが約五一%、無許可業者によるものが約一九%となっているほか、約一九%について投棄者が判明していません。
 平成十三年度の不法投棄の全体件数の約六八%、投棄量の約五九%が十三年度中に原状回復に着手されており、その実施者の内訳をみると、投棄実行者によるものが投棄件数にして約四六%、投棄量にして約五〇%を占めています。また、平成十三年度中に原状回復に着手されていない事案のうち、投棄者不明等であるものが、投棄件数で約一七%、投棄量で約一四%を占めています。
 平成十四年中に廃棄物処理法違反で警察が検挙した件数は三千三百八十三件であり、このうち産業廃棄物事犯が一千三百十四件(三八・八%)を占めています。また、産業廃棄物事犯における不法投棄事犯は六百八十二件(五一・九%)でした。

3 特別管理廃棄物
 廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理廃棄物(特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物)として指定しています。特別管理廃棄物については、その処理を委託する場合は特別な業の許可を持った業者に行うことが必要となっています。
 平成十四年の廃棄物処理法施行令の一部を改正し、従来対象としていた廃棄物焼却炉からの廃棄物に加え、ダイオキシン類対策特別措置法の特定施設において生じた廃棄物で、ダイオキシン類を基準値(燃えがら、汚泥、ばいじんについては三ng−TEQ/g、廃酸、廃アルカリについては百pg−TEQ/L)以上含むものについても、特別管理廃棄物に追加しました。

4 ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理体制の構築
 平成十三年六月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)の制定及び「環境事業団法」の一部改正を行い、国は費用負担能力の小さい中小企業による処理を円滑に進めるための助成等を行う基金(PCB廃棄物処理基金)の創設や、環境事業団を活用した拠点的な処理施設整備の推進など、PCB廃棄物の処理体制の構築に向けた施策を実施し、今後、平成二十八年までにPCB廃棄物の処理を終えることとしています。
 PCB特措法等により、国は環境事業団を活用した拠点的な広域処理施設の立地を進めています。平成十三年十一月に北九州市におけるPCB廃棄物処理事業を環境省が事業認可し、さらにこれまでに愛知県豊田市、東京都、大阪市及び北海道室蘭市における事業について事業認可を行いました。今後、これらの地域における早期の事業の具体化に努めます。

5 ダイオキシン類の排出抑制
 平成十一年三月三十日に開催されたダイオキシン対策関係閣僚会議において「ダイオキシン対策推進基本指針」が策定され、政府一体となってダイオキシン類の排出量を大幅に下げるなどの各種対策を鋭意推進することとされました。特に、この基本指針に基づき、平成十四年度までにダイオキシン類の排出総量を平成九年に比べて「約九割削減」することとされました。
 平成十一年七月十二日には、「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立しました。
 平成十二年九月二十二日には、同法に基づく「我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシン類の量を削減するための計画」において削減目標量が設定され、毎年ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)を整備することとされています。同インベントリーによると、ダイオキシン類の排出量は年々減少し、平成十三年は平成九年から約七八%減少しました。

6 BSE廃棄物処理
 平成十三年九月に我が国初のBSE(牛海綿状脳症)の患畜が発生したことから、異常プリオンが含まれるおそれのある特定危険部位や過去全頭検査がなされていなかった時期に製造された肉骨粉の処理が大きな社会問題になりました。
 BSE対策として農林水産省によって肉骨粉の飼料及び肥料としての使用が全面禁止され、また焼却処理することが決定されたことを受けて、環境省では、平成十三年十月十二日に廃棄物処理法施行令を改正して、食肉処理場から出る牛の脳、せき髄などの臓器や骨等の動物系の固形不要物を産業廃棄物に指定するとともに、肉骨粉については、その処理の円滑化に係る地方公共団体への要請や技術的な情報提供を引き続き行うとともに、肉骨粉の再生利用が図られるよう廃棄物処理法に基づく再生利用認定を平成十三年度から平成十四年度にかけて三十二件行ってきました。これらにより、平成十四年六月以降、全国の肉骨粉の処理量が生産量を上回っています。

7 有害廃棄物の越境移動
 経済活動がグローバル化し、日常生活の様々な分野に至るまで相互依存が極めて高い現代の国際社会にあって、循環型社会を形成するためには、有害廃棄物の不法輸出入の防止などについても国際的に連携をとりつつ適切に対処することが必要です。
 我が国では、地球環境の保全に資する観点から早期にバーゼル条約に加入することが必要であるとの認識のもと、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)が、バーゼル条約の国内対応法として平成四年十二月に制定、公布されると同時に、廃棄物処理法が国内処理の原則を盛り込んで改正され、平成五年九月にバーゼル条約に加入しました。この条約は同年十二月から我が国について発効し、同月、バーゼル法も施行されました。
 また、バーゼル条約の制度の趣旨やバーゼル法等の周知を図り、不適切な輸出入を防止するためのバーゼル法等説明会を全国各地で税関等の協力を得て開催するとともに、環境省・経済産業省において輸出入に関する事前相談を行っています。

第2章 循環型社会の形成に向けた国の取組

第1節 施策の基本理念

1 排出者責任
 廃棄物の処理に伴う環境への負荷の低減に関しては、その一義的な責任を排出者が負わなければなりません。排出者責任とは、廃棄物等を排出する者が、その適正処理に関する責任を負うべきであるとの考え方であり、廃棄物・リサイクル対策の基本的な原則の一つです。具体的には、廃棄物を排出する際に分別すること、事業者がその廃棄物の処理を自ら行うこと等が挙げられます。
 廃棄物の処理に伴う環境への負荷の原因者はその廃棄物の排出者であることから、排出者が廃棄物の処理に伴う環境負荷低減の責任を負うという考え方は合理的であると考えられます。この考え方の根本は、いわゆる汚染者負担の原則にあります。
 この排出者責任の考え方については、今後とも、その徹底を図らなければなりません。また、国民も排出者としての責務を免れるものではなく、その役割を積極的に果たしていく必要があります。

2 拡大生産者責任
 拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)とは、生産者が、その生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適切なリユース・リサイクルや処分に一定の責任(物理的または財政的責任)を負うという考え方です。そうすることで、生産者に対して、廃棄されにくい、またはリユースやリサイクルがしやすい製品を開発・生産するようにインセンティブを与えようというものです。廃棄物等の量が多く、しかも、それらのリユースやリサイクルが難しいことが問題になっている今日、拡大生産者責任はそれらを克服するために重要な考え方の一つとなっています。二〇〇二(平成十四)年十二月には、東京にてEPRの経済学に関するワークショップがOECDと日本政府の主催で行われました。二日間のワークショップには、十三か国から約五十人の専門家と政府関係者が出席し、EPRを具体化した政策手法と他の政策手法との比較やそれらの長短所の定量的な把握の方法についての理論的な議論、我が国の容器包装リサイクル法・家電リサイクル法等やドイツの容器包装回収システム、カナダ・アルバータ州の廃油回収システム、オランダの各種製品に関わる諸制度の実績報告とそれらに関しての議論等が行われました。また、ワークショップの翌日には日本政府主催の一般向けのシンポジウムが開かれ約三百人が参加し、ワークショップの成果が報告されたほか、韓国やオーストラリアのEPR手法やOECD非加盟国である中国やフィリピンの廃棄物政策に関する報告、EPRの責任を課される生産者の立場から企業の対応状況に関する報告、EUの廃家電指令に関する報告などが行われました。

第2節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行状況

1 循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)
 国は平成十五年三月十四日に法律の期限を半年以上前倒しして循環型社会形成推進基本計画を策定しました。今後は計画の着実な実施を行っていくとともに、中央環境審議会で計画のフォローアップを行っていく必要があります。

2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
 平成十三年五月に環境大臣は「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を決定し公表しています。平成十四年度においてもその達成に向けた取組を着実に推進しました。
 また、廃棄物処理施設の整備については、平成十四年度には、廃棄物処理施設整備費のための補助金として、補正予算を含め一千八百五十六億円(うち浄化槽分として百七十億円)の補助を行っており、特に平成十四年度においては、(イ)ダイオキシン対策が講じられたごみ焼却施設整備促進、(ロ)リサイクル対策の推進を講じました。
 また、平成十二年六月の廃棄物処理法の改正において廃棄物処理センター制度の一層の活用を図ることを目的に廃棄物処理センターの指定要件の緩和を行い、平成十四年度には新たに山梨県及び滋賀県の法人を廃棄物処理センターとして指定(計十六法人)し、さらに民間を含め優良な処理施設の整備を支援するため、「産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律」に基づく特定施設として岡山県内の施設を認定しました。また、平成十二年度から新たに創設された産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業に対する補助制度を拡充し、公共が関与して行う産業廃棄物処理施設の一層の整備促進を図りました。
 最終処分場の確保が特に困難となっている大都市圏のうち、近畿圏においては、大阪湾広域臨海環境整備センターが行う広域処理場整備の促進及び埋立ての円滑な実施を図りました。また、首都圏においては、必要な広域処理場の確保に向けて、関係地方公共団体間に働きかけを行うとともに、広域処理場整備に関する全国調査を行いました。
 平成十五年三月には、更なる不適正処理への対応策を措置するとともに、効率的な廃棄物処理を確保するための制度の合理化を講ずるため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案」を第百五十六回国会に提出しました。

3 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)
 平成十三年四月に施行された資源有効利用促進法では、@副産物の発生抑制を行うべき業種(特定省資源業種:鉄鋼業、紙・パルプ製造業等)、A再生資源・再生部品を原材料として利用すべき業種(特定再利用業種:紙製造業、複写機製造業等)、B材料の合理化を行うべき製品(指定省資源化製品:自動車、家電等)、C材料・構造の工夫を行うべき製品(指定再利用促進製品:自動車、家電等)D分別回収を容易にするための表示を行うべき製品(指定表示製品:プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)、E自主回収・再資源化を行うべき製品(指定再資源化製品:パソコン、小形二次電池)、F再生資源として利用できるよう工夫すべき副産物(指定副産物:石炭灰等)を指定し、それぞれに係る事業者に一定の義務付けを行い、事業者の自主的な取組の促進を図りました。

4 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)
 容器包装リサイクル法については、平成九年四月から対象とした品目を中心に、分別収集を実施する市町村数、分別収集量、再商品化量が着実に増加しており、制度の浸透が図られつつあります。とりわけ、ペットボトルの分別収集に取り組む市町村数は急激に増加しており、平成十三年度では既に八割以上(人口カバー率では九割以上)が取り組んでおり、その回収率は四〇・一%に達しています。ペットボトルの生産量と分別収集量の差をもって廃棄量を推し測ると、平成十三年度においては茶系飲料の生産量が大幅に増加したことなどの要因により、ペットボトルの生産量が対前年度比で一一%増と二桁の大きな伸びがみられる中、その廃棄量はほぼ前年度と同水準にとどまりました。
 一方、紙製容器包装及びプラスチック製容器包装については、平成十二年四月から新たに対象品目として追加したものですが、平成十三年度における分別収集量は紙製容器包装が対前年度比で約一・五倍、プラスチック製容器包装が約二倍と大幅な伸びがみられました。しかし、分別収集を実施する市町村の割合は、紙製容器包装が一割強、プラスチック製容器包装が三割強にとどまっており、これら容器包装の分別収集を一層促進することが必要となっています。
 また、容器包装リサイクル法の対象となる容器包装の拡大、市町村の分別収集の進展等に伴い、事業者の負担は、平成九年度が約十七億円だったものが、平成十三年度には約二百八十七億円と大幅に増加し、平成十四年度には約四百九十二億円になると見込まれています。この負担の増加がインセンティブとなって、容器包装の軽量化やリサイクルしやすい設計への変更などの取組が始まりつつあります。

5 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)
 本法は、平成十三年四月一日本格施行されました。
 また、不法投棄対策としては、関係者に対する必要な情報の提供、家電リサイクルプラントにおける見学受入、教育・広報活動を通じて国民の理解を増進するとともに、警察との連携による未然防止や取締りの強化等により、特定家庭用機器廃棄物の排出や収集、運搬時における不法投棄の防止に努めました。
 排出される家電四品目をすべて再商品化することが可能なリサイクルプラントが、現在、全国四十一か所で稼働しています。このリサイクルプラントにおいて、家庭用エアコン及び冷蔵庫に使用されている冷媒フロンを発散しないよう回収した上、鉄、アルミニウム、銅、ガラス、プリント配電盤の貴金属等を回収し、定められたリサイクル率を達成しています。

6 使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)
 平成十四年七月十二日に公布された自動車リサイクル法は、公布後二年六月以内に完全施行されることとされています。平成十六年末頃の完全施行を目指し、平成十四年九月から、産業構造審議会及び中央環境審議会が合同で、同法に基づく新しい自動車リサイクルシステムの詳細に関する各種の検討を進めています。平成十四年十二月には、この検討結果を踏まえ、法の対象外とする自動車の種類等について定めた第一段階の政省令を整備したところです。
 また、同法の円滑な施行開始を図るため、経済産業省及び環境省において、関係事業者や地方公共団体を対象とした説明会の開催や説明・周知用資料の作成、配付などによる理解促進に努めています。

7 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
 平成十二年五月に公布された建設リサイクル法については、平成十四年五月三十日に、建設工事の実施に当たっての分別解体等及び再資源化等の義務付けや、発注者・受注者間の契約手続きの整備に関する部分を含めて完全施行されました。建設リサイクル法の施行に当たっては、事業者等に対する説明会の開催や十月のリサイクル推進月間に合わせ全国一斉パトロールを実施するなど、法の普及啓発などに努めました。また、建設リサイクル法の円滑な施行を図るため、再資源化施設の稼働状況等を提供する「建設副産物情報交換システム」の全国運用を平成十四年春より開始するとともに、建設リサイクルの推進に向けた基本的考え方、目標、具体的施策を定めた「建設リサイクル推進計画二〇〇二」の策定や、建設工事の副産物である建設発生土と建設廃棄物の適正な処理等に係る総合的な対策を発注者及び施工者が適正に実施するために必要な基準を定めた「建設副産物適正処理推進要綱」の改訂を行いました。この他に、平成十四年十二月からダイオキシン規制が強化されたこともあり、木材チップの需要動向や焼却施設の稼働状況等を的確に把握するため、地域ごとにおける建設発生木材の再資源化等の実態調査を行いました。

8 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)
 食品循環資源の再生利用等を促進するため、主務大臣が基本方針を定めることが本法に規定されており、これに基づき平成十三年五月三十日に本基本方針が定められました。基本方針においては、食品循環資源の再生利用等の促進の基本的方向のほか、食品関連事業者の食品循環資源の再生利用等の実施率の目標として、平成十八年度までに二〇%に向上させること等が定められています。
 この方針により、全国の食品関連事業者等により食品廃棄物等の再生利用への様々な取組が始められているところです。また、食品リサイクル法に基づく再生利用事業の登録制度及び再生利用事業計画の認定制度を通して、再生利用事業の進展が今後見込まれています。

9 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)
 「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(基本方針)に基づき、国等の各機関は平成十四年度の調達方針の公表等を行い、これに従って調達を実施しました。調達方針に定められる目標については、各機関ともにグリーン購入に積極的に取り組むために、基本方針の判断の基準を満たす物品等を原則として一〇〇%調達することとしています。
 基本方針に定められる特定調達品目等については、物品等の開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて適宜見直しをすることとしており、平成十五年二月二十八日に二十四品目の追加等の基本方針の変更を閣議決定しました。この中には、自動車の基準への燃料電池自動車の追加、再生樹脂を用いたテント及びシートなどの繊維製品、公共工事については資材のほかコンクリート塊再生処理工法などの追加等が含まれています。

10 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)
 PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を総合的かつ計画的に推進するため、PCB特別措置法に定める「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」の策定を行いました。
 環境事業団を活用したPCB廃棄物の拠点的な広域処理施設の整備については、平成十三年度の北九州市におけるPCB廃棄物処理事業に次いで、愛知県豊田市、東京都、大阪市及び北海道室蘭市におけるPCB廃棄物処理事業について環境大臣が事業実施計画の認可を行い、環境事業団による事業の具体化が進められています。
 また、PCB廃棄物の収集運搬時の安全性を確保するための「PCB廃棄物収集運搬ガイドライン」の策定に向け、検討を進めています。さらに、PCB特別措置法施行規則及び廃棄物処理法施行規則について、PCB廃棄物の譲り渡し及び譲り受けの制限を試験研究を行う等の場合に適用除外とするとともに、廃PCB等の処理方式として新たにプラズマ分解方式を追加するなど所要の改正を行いました。

第3節 循環型社会を形成する基盤整備

1 財政措置等
 「循環型社会形成推進基本法」(循環型社会基本法)では、政府は、循環型社会の形成に関する施策を実施するために必要な財政上の措置等を講じることとしています。国の各府省の予算のうち、循環型社会の形成を推進するための経費は、平成十四年度当初予算額で三千九百八十八億三千万円(下水道事業費補助等、内数で計上している経費は除く)となっています。

2 循環型社会ビジネスの振興
 事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進しました。

3 経済的手法の活用
 多くの人の日常的な活動によって引き起こされている廃棄物問題については、大規模な発生源やある行為の規制を中心とする従来の規制的手法による対応では限界がある面もあります。このため、その対策に当たっては、規制的手法、経済的手法、自主的取組などの多様な政策手段を組み合わせ、適切な活用を図っていくことが必要です。
(1) ごみ(一般廃棄物)処理手数料の徴収
 平成十二年度におけるごみ処理手数料の徴収の状況は、何らかの形で手数料を徴収している市町村の割合は、家庭系ごみ(粗大ごみを除く)で約七一・九%、事業系ごみ(粗大ごみを除く)で約八六・六%となっています。
 平成十二年度における廃棄物処理事業経費に係る歳入の総額(二兆三千五百二十四億円)に占める使用料・手数料(二千九百二十六億円)の割合は、全国平均で一二・四%程度です。
(2) デポジット制度(預託払戻制度)
 我が国では、離島や公園内、観光地などの一定のまとまりのある区域内においてデポジット制度が導入されている事例が見受けられます。
(3) 廃棄物に関する税制等
 平成十二年四月施行の地方分権一括法によって、課税自主権を尊重する観点より法定外目的税の制度が創設されたことなどから、税の導入を検討する動きが各地でみられます。

4 教育及び学習の振興、広報活動の充実、民間活動の支援及び人材の育成
 小中学生の地域における環境活動を支援する「こどもエコクラブ事業」を地方公共団体と連携しつつ実施しました。また、環境保全についての助言・指導を行う人材を確保する「環境カウンセラー事業」を実施したほか、循環型社会形成推進のための活動等の環境保全活動を行うNGO等を支援するため、地球環境パートナーシッププラザにおいて各種情報を提供する一方、政府の出資及び民間の寄付等により環境事業団に設けられた「地球環境基金」により、環境保全活動に対する助成などを行いました。

5 調査の実施・科学技術の振興
 平成十三年三月に閣議決定された第二期科学技術基本計画を踏まえて、平成十三年九月に総合科学技術会議において決定された「分野別推進戦略」では、環境分野で今後五年間に重点的に取り組んでいくべき研究分野の一つとして、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究が選定されました。また、中央環境審議会では、「環境研究・環境技術開発の推進を総合的・戦略的に行うための方策は、いかにあるべきか」について審議し、循環型社会の創造プログラム、循環型社会を支える技術の開発プログラム等の「重点化プログラム」を明らかにした専門委員会中間報告を平成十三年六月に取りまとめました。
 廃棄物処理等科学研究費においては、競争的資金を活用し広く課題を募集し、四十二件の研究事業及び十四件の技術開発事業を実施しました。

6 施設整備
 地域における資源循環型経済社会構築の実現に向けて、ゼロ・エミッション構想推進のため「エコタウン事業」を実施しています。
 それぞれの計画に基づくリサイクル関連施設整備事業等に対するハード面の支援及び環境関連情報提供事業等に関するソフト面での支援を実施しています。
 また、家畜排せつ物等の有効利用を促進するため、たい肥化施設等の環境対策施設の整備を推進しました。

7 環境の保全の支障の防止、除去等
 産業廃棄物の不法投棄対策としては、まず第一に未然防止を図ることが重要です。このため平成十二年の廃棄物処理法の改正によって、排出事業者責任を徹底するため次のような規制強化を行っています。
(1) 産業廃棄物の処分を委託する場合には、最終処分までの適正処理の実施のために必要な措置に努めなければならない旨を規定。
(2) マニフェスト制度を強化し、産業廃棄物の排出時から最終処分までの一貫した把握・管理の義務を規定。
(3) 措置命令を強化し、不適正処理に関与した土地所有者やブローカー、一定要件を満たす場合の排出事業者等を措置命令の対象に規定。
(4) 不法投棄の摘発を迅速に行うための罰則規定の改正と罰則の強化。
 不法投棄の早期発見、拡大防止を図るため、人工衛星による監視システムの技術開発を進めるとともに、携帯情報端末を活用し不法投棄現場の情報を迅速に伝達するためのシステムを全国九ブロックの地方環境対策調査官事務所等に整備しました。また、都道府県等が実施する不法投棄防止のための監視の強化に対し助成を行っています。
 警察では環境を破壊する悪質な行為を環境犯罪ととらえ、特に産業廃棄物の不法投棄事犯等に重点を置いた取締りを推進しています。近年、不法投棄事犯等の取締りを効果的に行うため、すべての都道府県の廃棄物担当部局へ出向等し、廃棄物担当部局と警察の連携強化に努めているほか、循環型社会の形成を根幹から阻害するおそれのある不法投棄等の不法行為の取締りを強化するため、その取締体制の整備等を行っています。
 一方、いったん不法投棄された場合には、その廃棄物によって生活環境保全上の支障が生じないようにすることも重要です。
 不法投棄された廃棄物によって生活環境保全上の支障のおそれがある場合には都道府県知事等は原因者に対して原状回復等の措置を命令することができ、平成十二年度には四十五件(前年度二十九件)の命令が発せられています。原因者が命令を履行しない場合などには、都道府県知事等が代執行として原状回復の措置を行い、それに要した費用を原因者に求償することになります。
 また、不適正処分された産業廃棄物による生活環境保全上の支障の除去を計画的かつ着実に推進するため、平成十五年二月に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法案」を国会に提出しました。この法案は、平成十年六月以前に不適正処分された産業廃棄物による生活環境保全上の支障の除去等を、平成二十四年度までに行うための十年間の時限法で、環境大臣が策定した基本方針に即して都道府県等が実施計画を策定し、実施計画に基づいて支障除去等事業を実施する場合に、その特定支障除去等事業に要する費用について国庫補助を行うとともに、都道府県等の負担分について地方債の起債の特例を認めるものです。

8 その他の政府の取組
 平成十三年六月十四日の都市再生本部決定に基づいて、大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築に向けた取組が開始されました。第一段階のプロジェクトとして、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県)を対象とした検討が行われました。平成十三年七月には、関係七都県市及び関係各省から構成される「首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会」が設置され、平成十四年四月には、七都県市による中長期計画の策定に向けた取りまとめを行いました。この取りまとめでは、国の基本方針より前倒しした廃棄物の減量化目標の設定、臨海部に立地する既存産業の集積や既存インフラの活用を踏まえた廃棄物処理・リサイクル施設の集中立地を行う拠点の形成、環境負荷の小さい効率的な静脈物流システムの構築等を行うこととしています。
 さらに、平成十四年七月には、首都圏に次ぐプロジェクトとして、近畿圏(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県)においても、関係九府県市及び関係各省から構成される「京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会」が設置され、平成十五年三月には、九府県市による中長期計画の策定に向けた取りまとめを行いました。
 平成十三年七月六日に閣議決定された「新総合物流施策大綱」においても、環境問題の深刻化、循環型社会の構築等の社会的課題に対応した物流システムを構築する観点から、地方公共団体とも連携して、今後のリサイクル拠点の配置にも対応しつつ、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築することとされました。そのため生産拠点の状況、リサイクル関連拠点の配置計画、当該拠点間における輸送等の実態把握に努めるとともに、鉄道・海運の活用を含めた効率的な静脈物流システムについての検討を行い、具体化を図ることとしています。
 農業用使用済プラスチック等農業生産資材廃棄物の適正な処理を推進するため、全国段階において、再生品の需要拡大を図るための新規用途開発、普及啓発等を行うとともに、都道府県段階において、関係者の協力体制の確立、処理・減量化計画の策定、排出量を削減するための技術実証、普及啓発等を行いました。
 FRP(ガラス繊維強化プラスチック)船については、数年後には廃船時期を迎えるものが一万隻を超えることが予想されており、また、現在約十四万隻ともいわれる放置艇の沈廃船化を未然に防止する観点から、低廉な廃船処理システムの確立が求められています。
 このため、平成十二年度に開始した「FRP廃船高度リサイクルシステム構築プロジェクト」を平成十四年度においても継続して実施し、経済性に優れ、かつ環境にも配慮したリサイクル技術確立のための総合実証試験及びリサイクルシステム事業化のための検討及び各種情報収集等を行いました。
 環境配慮製品、省エネルギー機器等の普及等を目的として、我が国の標準化機関である日本工業標準調査会(JISC)は平成十四年四月に「環境JISの策定促進のアクションプログラム」を策定し、環境JISの推進に取り組んでいます。
 平成十四年度は、環境JISの推進の一環として、「エコセメント」をはじめとして、シックハウス対策のための規格等、五十三件のJIS制定・改正及び四件のTR(標準情報:準JISとして位置付けられるもの)公表・改正を実施しました。

第4節 循環型社会の形成と地球環境問題

1 廃棄物と温暖化対策
 地球温暖化の原因となる温室効果ガスは、私たちの日常生活や様々な事業活動に伴って排出されます。製品の製造に関わる産業部門、流通に関わる運輸部門、製品を使用する民生部門、焼却等を行う廃棄物部門等において二酸化炭素が排出されます。
 廃棄物分野においては、廃プラスチックや廃油といった化石燃料に由来する廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出が大きな割合を占めていますが、その他にも、厨芥類、紙類等のバイオマス廃棄物を焼却処理をせずに直接埋め立てた場合、二酸化炭素よりも地球温暖化係数の大きなメタンが発生します。また、燃焼温度の低い焼却炉からは一酸化二窒素が発生しています。平成十二年度の廃棄物分野における温室効果ガス排出量は、日本の温室効果ガス総排出量(CO換算で十三億三千万トン)のうちの二・六%を占めています。
 温室効果ガスの排出量を削減するためには、各部門間の関係を踏まえて、効果的な対策を立案していく必要があります。廃棄物の排出抑制や再使用、再生利用及び熱回収といった循環資源の利用を促進することは、一般に化石燃料等の天然資源の消費量の減少及び廃棄物の発生量の減少をもたらすものといえます。
 平成十四年三月に地球温暖化対策推進本部において決定された地球温暖化対策推進大綱では、廃棄物の排出抑制、再使用、再生利用の推進等によって、廃棄物の焼却や直接埋立に起因する温室効果ガスを二〇一〇(平成二十二)年には約六百万トン(CO換算)削減することを目標としています。このほか、大綱では新エネルギー対策として、廃棄物発電は燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効に活用するものであることから、「循環型社会形成推進基本法」の理念及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の「廃棄物減量化目標」との整合性を図りつつ、推進することとしています。
 また、平成十四年六月には新エネルギーの利用を促進するため「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が制定されました。新エネルギー等発電設備は今後とも着実に整備していく必要がありますが、新エネルギー等のうち廃棄物に係る発電設備の設置及び利用が行われる場合には、循環型社会形成推進基本法の基本原則である廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用の進展が阻害されないように行う必要があります。

2 国際的な取組
 有害廃棄物等の輸出入等の規制を適切に実施するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」の的確かつ円滑な施行を推進しています。そのほか「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の適切な施行及び運用により、廃棄物の輸出入の適正な管理を行っています。
 また、開発途上国の自主的な取組を強化するため、政府開発援助(ODA)により産業廃棄物のリサイクル等の処理技術など、循環型社会の形成に資する様々な資金・技術協力を実施しています。
 この他、国際機関との連携も進めています。例えば、OECD(経済協力開発機構)で行われている検討に積極的に参画するとともに、OECDにおけるEPR(拡大生産者責任)検討会への財政的支援を行っています。

第3章 循環型社会の形成に向けた各主体の取組

第1節 国民、民間団体等の取組事例

 NGO等民間団体レベルにおける先進的な取組の一例は以下のとおりです。
 @ 飲料組合や旅館組合の有志が「伊万里『環の里』計画」を策定し、事業者・農業者・学校・行政及び一般家庭が連携して食資源の地域循環型社会構築を目指す「伊万里はちがめプラン」
 A マイバッグ運動の交流と、ごみから環境を考え環境保全活動へ発展させるためにどうしたら良いかを話し合う「全国マイバッグフォーラムin静岡」を開催した「静岡市消費者協会」
 B ISO14001の考え方を手本として、家庭で環境に負荷をかけない暮らし方を提案するイソップ計画マニュアルを作成し、「イソップ家族」の認定などを行っている「34530会(四日市生活創造圏ビジョン推進協働会議)」
 C 岩手の地域特性を活かし地場産業を活性化するための木質バイオマスエネルギー利用を実現させるため、調査研究等の活動を行い、「岩手型木質バイオマス利用の提言」を提案している「岩手・木質バイオマス研究会」
 D 資源の有効利用を図るために、衣類・雑貨リユース・リサイクル事業を行う「WEショップ」を四十四店舗運営し、収益金をアジア諸国の女性の力を高めるために使う活動を行っている「特定非営利活動法人WE21ジャパン」
 E e−メールマガジンやホームページ作りにより「企業市民」として地域コミュニケーションを図り、持続可能な環境学習に取り組んでいる「NEC府中環境管理推進センター」
 F 「環境劇」を通して子供たちに環境問題を伝え、身近な生活の場面で自分たちがどう行動すべきかを子供たちと一緒に考える「アースの会」

第2節 産業界の取組事例―日本経済団体連合会環境自主行動計画―

 我が国の産業界は、日本経団連の呼びかけによって、リサイクルの推進や廃棄物の排出抑制に取り組んでいます。平成九年に日本経団連は環境自主行動計画を策定しており、その際に、併せて廃棄物対策に関する自主行動計画を作成しています。自主行動計画の廃棄物対策分野には三十五業種が参加し、それぞれの業界ごとにリサイクル率、最終処分量などの数値目標並びにその達成のための対策を明らかにしています。さらに、業界ごとの取組の推進状況を毎年定期的にフォローアップすることで、継続的かつより一層積極的に廃棄物対策に取り組んでいることが大きな特徴です。
 平成十三年度の産業廃棄物最終処分量実績は一千九百二十万トンとなり、平成十二年度実績の約四%減となりました。また、この結果、一九九〇年度(平成二年度、基準年)実績の六千百九十三万トンと比較して約七〇%減少していることが明らかになり、産業界の産業廃棄物最終処分量削減に向けた自主的取組の成果が着実に達成されていることが確認されました。

第3節 地方公共団体の取組事例

 地方公共団体は、公的部門の総支出の約四分の三(約六十七兆円、国内総支出の約一三%)を占めるとともに、各地域において大きな社会的経済的影響力を有することから、我が国全体としてグリーン購入を推進する上で、地方公共団体が果たし得る役割は国と並んで大きいものがあります。
 地方公共団体は、循環型社会の形成に関する様々な施策を策定し、及び実施する主体です。地方公共団体が実施する施策は、その区域の自然的社会的条件に応じて実施されるものです。

○平成十五年度において講じようとする循環型社会の形成に関する施策

 循環型社会形成推進基本法に基づいて平成十五年度に実施する予定の施策を、次のような章立てで報告しています。

第1章 概説
第2章 循環型社会の形成に向けた国の取組
 第1節 循環型社会の形成に向けた法制度の施行について
 第2節 循環型社会を形成する基盤整備
 第3節 循環型社会の形成と地球環境問題




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五月の雇用・失業の動向


―労働力調査平成十五年五月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十五年五月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百六十万人、完全失業者は三百七十五万人、非労働力人口は四千二百十四万人と、前年同月に比べそれぞれ四万人(〇・一%)増、同数、三十二万人(〇・八%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百六十万人と、前年同月に比べ四万人(〇・一%)の増加となり、二十六か月ぶりの増加となっている。男女別にみると、男性は三千七百四十二万人、女性は二千六百十九万人で、前年同月と比べると、男性は一万人(〇・〇%)減、女性は六万人(〇・二%)増となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百五十一万人、自営業主・家族従業者は九百八十六万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は三十一万人(〇・六%)増、自営業主・家族従業者は二十一万人減となり、雇用者は二か月ぶりの増加となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百十万人と、三十三万人(〇・六%)増、二十一か月ぶりの増加
 ・常 雇…四千六百一万人と、十六万人(〇・三%)増、二十二か月ぶりの増加
 ・臨時雇…五百九十三万人と、十二万人(二・一%)増、十七か月連続の増加
 ・日 雇…百十六万人と、五万人(四・五%)増、三か月連続の増加

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百七万人と、同数
○建設業…六百三万人と、四万人(〇・七%)減少
○製造業…一千百七十一万人と、二十三万人(一・九%)減少
○運輸業…三百八万人と、十万人(三・一%)減少
○卸売・小売業…一千百四十九万人と、二十二万人(一・九%)減少
○飲食店,宿泊業…三百四十二万人と、十三万人(三・七%)減少
○医療,福祉…五百二十一万人と、四十五万人(九・五%)増加
○サービス業…八百二十三万人と十一万人(一・三%)減少
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百八十九万人と、四万人(〇・八%)減少
○製造業…一千八十八万人と、十七万人(一・五%)減少
○運輸業…二百八十九万人と、十一万人(三・七%)減少
○卸売・小売業…九百八十九万人と、九万人(〇・九%)減少
○飲食店,宿泊業…二百五十五万人と、九万人(三・四%)減少
○医療,福祉…四百八十九万人と、四十七万人(一〇・六%)増加
○サービス業…六百六十二万人と、十五万人(二・二%)減少
 (注) 日本標準産業分類の改訂に伴い、平成十五年一月結果の公表以降、新産業分類で表章している。

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百二十三万人と、八万人(〇・五%)増、六か月ぶりの増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百八十八万人と、三万人(〇・二%)減、五か月連続の減少
○五百人以上規模…一千二百万人と、八万人(〇・七%)増、五か月連続の増加

(5) 就業時間

 五月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百三十四万人と、二十万人(一・四%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…一千五十五万人と、二十五万人(二・四%)増加
○三十五時間以上…四千七百九十五万人と、十六万人(〇・三%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千八百九十八万人と、十二万人(〇・六%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・七時間で、前年同月と比べ〇・一時間の減少となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百七十五万人と、前年同月と同数となっている。男女別にみると、男性は二百二十七万人、女性は百四十八万人で、前年同月に比べ、男性は二万人(〇・九%)の増加、女性は三万人(二・〇%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○定年等…四十万人と、一万人増加
○勤め先都合…百十四万人と、一万人増加
○自己都合…百二十三万人と、二万人増加
○学卒未就職…二十六万人と、二万人増加
○新たに収入が必要…四十三万人と、一万人増加
○その他…二十六万人と、六万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・四%と前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・六%、女性は五・一%と、それぞれ前月と同率となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・六%と、前年同月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・七%、女性は五・三%と、男性は同率、女性は〇・二ポイントの低下となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十五万人(四万人増)、一二・三%(一・二ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十三万人(三万人減)、五・八%(〇・三ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…三十万人(一万人増)、三・八%(〇・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十七万人(一万人増)、四・二%(〇・三ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…五十二万人(二万人減)、七・四%(〇・六ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…二十四万人(二万人増)、五・七%(同率)
 ・六十〜六十四歳…二十七万人(四万人減)、九・六%(一・二ポイント低下)
○六十五歳以上…十万人(一万人増)、三・〇%(〇・一ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十三万人(二万人減)、九・八%(〇・一ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十七万人(同数)、七・六%(同率)
○三十五〜四十四歳…三十万人(五万人増)、五・四%(〇・六ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十万人(七万人減)、三・一%(一・〇ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十七万人(同数)、四・〇%(〇・二ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…十万人(二万人増)、三・七%(〇・五ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…七万人(一万人減)、四・四%(〇・七ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・〇%(〇・五ポイント上昇)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数

 世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…百四万人と、三万人増加
○世帯主の配偶者…四十九万人と、同数
○その他の家族…百六十六万人と、五万人減少
○単身世帯…五十五万人と、一万人増加












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月例経済報告(七月)


―景気は、おおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、おおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる。
 ・輸出は横ばいとなっている中で、生産は弱含んでいる。
 ・企業収益は緩やかな改善が続いており、設備投資は緩やかな持ち直しが続いている。
 ・個人消費は、おおむね横ばいで推移している。雇用情勢は、依然として厳しい。
 ・株価は大幅に回復している。
 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、海外経済の先行きを巡る不透明感や、今後の株価・長期金利の動向に留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、持続的な経済成長を実現するため、六月二十七日、経済活性化、国民の安心の確保、将来世代に責任が持てる財政の確立を目指し、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」を閣議決定した。今後、その早期具体化により、構造改革の更なる強化を図る。
 政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、低水準ではあるものの、消費者マインドの悪化傾向に歯止めがかかっていることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、五月は前月に比べて小幅増加している。
 個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて減少した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、自動車小売業が増加したことなどから、前月に比べて増加した。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、前月から減少幅は縮小したものの、台風等の天候不順の影響もあって、低調な動きが続いている。新車販売台数は、自動車税のグリーン化などの見直しに伴う駆け込み需要の反動などもあって四〜六月を均してみると減少している。家電販売金額は、主力商品であるパソコンが前年を大幅に下回って推移していることから引き続き前年を下回っている。旅行は、国内旅行は引き続き前年を下回った。海外旅行は重症急性呼吸器症候群(SARS)による手控えなどから五月は大幅に減少した。なお、WHOは七月五日に、SARSの感染地域として唯一残っていた台湾の地域指定を解除した。
 個人消費の先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、依然として雇用情勢が厳しいことなどから、引き続き留意が必要である。

◇設備投資は、緩やかな持ち直しが続いている。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、緩やかに持ち直している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成十四年十〜十二月期に持ち直しに転じ、平成十五年一〜三月期はやや減少となったものの、緩やかな持ち直し基調にある。なお、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷の五月までの動きをみると、やや弱含んでいる。ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
 先行指標や年度計画をみると、日銀短観によれば製造業の十五年度設備投資は三年ぶりに前年度比増加に転じる計画となっており、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、機械設備投資の先行指標である機械受注は持ち直しており、建設投資の先行指標である建築着工床面積をみるとおおむね横ばいとなっている。先行きについては当面緩慢なものにとどまると見込まれるが、外需をはじめとする最終需要の先行き不透明感が払拭されれば、再び持ち直しの動きを強めるものと見込まれる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 平成十四年度の住宅建設は、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、二年連続で百二十万戸を下回る低い水準となった。総戸数は、平成十五年二月、三月と二か月連続で減少したが、四月は年率百十六万戸、五月は年率百十六万六千戸と二か月連続で増加した。一方、総床面積をみると、四月までは総戸数と同様の動きをしていたが、五月は減少に転じた。これは、一戸当たり床面積が貸家に比べて広い分譲住宅が減少し、貸家が増加した影響によると考えられる。
 先行きについては、引き続き消費者の住宅取得マインドが低下しており、このことが住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 国の平成十四年度補正予算では、構造改革推進型の公共投資を計上するなどの予算措置を講じたが、補正後の公共投資は、「改革推進公共投資」特別措置を実施した前年度を大きく下回った。また、平成十四年度における地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比一〇・〇%減となっている。平成十五年度の国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、平成十四年度においては、平成十三年度から繰り越された平成十三年度第二次補正予算の下支え効果がみられたものの、公共工事請負金額、公共工事受注額は、平成十四年四〜六月期以降平成十五年一〜三月期まで、前年を下回った。
 平成十五年度に入って、四〜六月期の公共投資については、四月、五月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況などを踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

◇輸出入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。
 輸出は、横ばいとなっている。地域別にみると、アジア向け輸出は、このところ減少している。アメリカ向け輸出は、自動車輸出の増加により足元で増加したものの、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、新型車の投入にともなう年初来の自動車輸出の増加が一服したことから、このところ減少している。先行きについては、世界経済が現状のままであるとすると、輸出は当面横ばいで推移する可能性が高いが、アメリカ経済の回復が持続すれば、緩やかに持ち直すものと考えられる。
 輸入は、生産が弱含んでいること等から、全体として横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、NIEs、ASEANからの輸入が横ばいとなっているものの、中国からの輸入が増加していることから、全体としては緩やかに増加している。アメリカからの輸入は、航空機の輸入等の影響により単月の振れが大きくなっているが、基調としては減少している。EUからの輸入は機械機器を中心に減少している。
 国際収支をみると、輸出入数量がともに横ばいとなっていることに加え、原油価格が低下していること、海外旅行客の減少等に伴いサービス収支の赤字幅が縮小していることから、貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、弱含んでいる。
 鉱工業生産は、国内最終需要に力強さがみられず、輸出が横ばいとなっていることを背景に、弱含んでいる。在庫は低水準にあるものの、外需をはじめとする最終需要の先行きが不透明であること等を背景に、企業は在庫積み増しに慎重になっており、生産の増加にはつながっていない。
 先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるものの、国内最終需要は当面低調に推移することが見込まれるほか、アメリカ経済等に関する先行き不透明感を背景に輸出による牽引力もそれほど大きなものとはならないと考えられることから、生産の持ち直しに向けた力は当面弱いものにとどまると見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、六月は増加、七月は減少が見込まれている。
 また、第三次産業活動は、横ばいとなっている。

◇企業収益は、緩やかな改善が続いている。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力等を背景に、平成十五年一〜三月期においても前年比で増益が続いているが、季節調整済前期比では減益に転じ、改善のテンポは緩やかになっている。「日銀短観」によると、平成十四年度は前年比二桁の大幅な増益となり、十五年度も引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、十四年度下期では前年比五割の大幅増益となり、十五年度も二桁の増益見込みである。一方、非製造業は十五年度上期に減益に落ち込むものの、下期には前年比二桁の増益に転じる見込みである。規模別でみると、大企業・中小企業とも十四年度に引き続き十五年度も増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、非製造業では改善に足踏みがみられるものの、製造業では緩やかながら引き続き改善がみられる。先行きについては、全規模全産業でみるとわずかながら改善が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、五月は、前月と同水準の五・四%となった。また、雇用者数は、横ばいで推移している。
 新規求人数は、昨年前半から増加傾向にあったが、このところ、横ばいとなっており、有効求人倍率もおおむね横ばいとなっている。製造業の残業時間についても、横ばいとなっている。企業の雇用過剰感はやや高まった。
 賃金の動きをみると、五月の定期給与は前年同月比、前月比とも増加し、基調としては、横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価は、弱含んでいる。消費者物価は、横ばいとなっている。
 国内企業物価は、弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、鉄鋼などが上昇しているほか、五月の発泡酒に係る酒税増税の影響により加工食品が上昇しているが、他方で電気機器が引き続き下落しているほか、市況の軟化にともなって石油・石炭製品、化学製品などが下落している。また、輸入物価(円ベース)は、五月は原油価格や為替の影響により、下落している。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、石油製品が五月は下落に転じており、全体として前年比下落幅はおおむね横ばいで推移している。他方、一般サービスは、全体として横ばいで推移する中で、個人サービスが下落しているが、この間、企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、七月には外食の一部が上昇しているとみられる。また、公共料金は、前年比で上昇しており、七月にはたばこ税増税の影響もあるとみられる。
 なお、消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまるとみられることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇株式相場は、上昇基調で推移している。長期金利は、上昇した。
 株式相場は、米国株高や企業の業況改善などを背景に上昇基調にあり、年初来高値を更新した。対米ドル円相場は、六月以降、百十七円台から百十九円台で推移している。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は低下傾向で推移してきたが、世界的な金利低下傾向が一巡したとの市場の見方などから上昇し、一・〇%台となった。企業の資金繰り状況は改善し、民間債と国債との流通利回りスプレッドはこのところ縮小している。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一六・三%)が続いている。M+CDは、昨年末以降伸び率は鈍化している。

四 海外経済

◇アジアの一部で景気は拡大しているものの、弱い景気回復が続いている。
 アメリカでは、弱い景気回復が続いている。
 消費者マインドは緩やかな改善傾向を示している。これを背景に、個人消費は緩やかに増加している。またIT関連部門を中心に生産は下げ止まりつつある。
 しかしながら、設備投資は一〜三月期に減少に転じており、資本財受注も減少している。雇用は減少しており、失業率は一九九四年以来の高水準に上昇した。企業部門の弱さから、弱い景気回復が続いている。
 インフレ率は低下傾向にあり、六月二十五日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、昨年十一月以来七か月ぶりにフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準が〇・二五%ポイント引き下げられた。
 先行きについては、企業収益の回復などから設備投資の持ち直しが見込まれることや、減税パッケージが消費や投資を喚起する効果が期待されることなどから、本年後半に成長率が高まる可能性が十分考えられる。一方、投資や雇用の回復の遅れについて懸念も残っている。
 このような景気回復期待等から、企業マインドは改善が続いており、株価も、IT関連を中心に六月以降もおおむね上昇基調が続いている。長期金利は、六月上旬まではインフレ率が低下するとの見方等から低下が続いていたが、その後は景気回復観測等から上昇している。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いているが、韓国、台湾等で減速している。
 中国では、投資、輸出の堅調な増加から景気は拡大しているが、このところ重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で消費、生産の伸びが鈍化した。タイでは、消費、投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費、輸出の伸びの鈍化から景気の拡大は緩やかとなっている。台湾では、投資が鈍化し、SARSの影響もあり消費、生産の伸びが鈍化するなど景気は減速している。韓国では、消費、投資の伸びの鈍化に加えて生産も鈍化しており、景気は減速している。シンガポールでは、消費や生産の伸びの鈍化から景気は減速している。一方、各国・地域ともアメリカ向け輸出は持ち直している。
 なお、SARSについては、このところ新規感染者の発生はなく、流行は終息した。

◇ユーロ圏の景気は弱い状態となっており、イギリスでは、景気は減速している。
 ユーロ圏では、昨年秋以降のユーロ高の影響などから、輸出の減少が続いている。企業マインドの悪化が続く中、生産は横ばいで推移しており、景気は弱い状態となっている。一方で、六月初めの欧州中央銀行(ECB)の利下げなどを背景に、このところ株価は上昇がみられる。ドイツでは、生産や消費の減少が続く中で、インフレ率が低い水準で推移しており、景気後退の懸念がある。フランスでは、内需が緩やかに増加していることから、景気は横ばいとなっている。
 イギリスでは、住宅投資を中心に内需が減少しており、景気は減速している。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、アメリカで株価の上昇基調が続いていることを背景に、アジアやヨーロッパでも主要株価は上昇基調にある。また、長期金利も六月下旬以降、景気回復観測の高まり等から世界的に上昇がみられる。ドルは、六月上旬以降おおむね横ばいで推移している。
 原油価格は、六月上旬に上昇したが、OPEC総会で生産枠据置が決定した後は下落基調で推移した。


八月の気象

◇天気の特徴
 八月は、日本付近が広く太平洋高気圧に覆われるため、晴れて暑い日が多くなります。暑さの指標である夏日(最高気温が二十五度以上の日)や真夏日(最高気温が三十度以上の日)・熱帯夜(夜間の最低気温が二十五度以上)の出現日数が、いずれも最も多い月です。
 また、この時期は地上付近が暑いため、上空に少し冷たい空気が流れ込んでくるだけでも大気の状態が不安定となり雷雲が発達し、局地的に短時間の大雨が発生しやすくなります。
 台風が日本付近に上陸や接近するのが多いのもこの八月です。日本では二〇〇〇年までの三十年間の、年平均の台風の上陸・接近数は一〇・八個で、このうち八月は最も多い三・四個を占めています。台風は、暴風や大雨だけでなく、高波や高潮を発生させる要因ともなります。
 台風が遠く離れた海上にあっても、海岸ではうねりを伴った高波が突然発生することがありますので注意が必要です。

◇台風と熱帯低気圧
 ところで「台風」と「熱帯低気圧」って別ものと思っている方はいませんか?
 「台風」は熱帯低気圧の別称で、最大風速が毎秒一七・二メートル以上の熱帯低気圧を、特に「台風」と呼んでいます。一方、風速がその強さに至らないものは、そのまま「熱帯低気圧」
と呼んでいます。
 台風は、その勢力の目安として最大風速と強風域(風速十五メートル以上の範囲)の大きさで、「強さ」と「大きさ」が区分されています。台風に関する情報では、この「強さ」と「大きさ」を組み合わせて、「大型で強い台風」などの表現をして注意・警戒を呼びかけています。「大型の台風」の場合は、中心から五百キロメートル以上離れていても毎秒十五メートル以上の強風が吹いているわけです。

◇短時間強雨に警戒
 台風による大雨については、過去の災害の記録から防災対策を含めて十分な理解がなされていると思いますが、「熱帯低気圧」による大雨にも十分な注意が必要です。「熱帯低気圧」も台風と同じく暖かく湿った空気を伴っており、活発な積乱雲(雷雲)を発生させ、短時間に大雨をもたらします。一九九九年の八月には、関東地方を通過した「熱帯低気圧」によって一時間五十ミリ以上の非常に激しい雨が降り、神奈川県西部の玄倉(くろくら)川でキャンプをしていた人が水難にあったことは記憶に新しいことです。
 この例にも見られるように、特に山間部の川でのレジャーにおいては、自分の所で雨が降っていなくても、雷鳴で積乱雲の発生を知り、加えて濁った水が流れてくるような場合は、早めの注意・警戒が必要です。また、各地の気象台から発表される気象情報にも十分留意してください。


暮らしのワンポイント

 汗の汚れを手軽に解消

 ちょっと動いても汗が吹き出るこの季節。汗で汚れた衣類をそのたびに洗うのは大変ですが、放っておくと汗くさくなるし、汗じみができることもあります。そこで、こんな方法で手軽に汚れを落としてみましょう。
 外出から帰ったら、汗をかいた衣服はすぐに脱いで裏返し、霧吹きをかけます。全体が湿る程度にかけますが、特にわきの下など汗をかきやすいところにたっぷりと。その後、乾いたタオルで水分を取り、風通しのよいところに干して乾かします。
 汗は水に溶けるので、少々の汗ならこの手入れをしておけば汗くさくなったり汗じみが残ったりする心配はありません。しみがついてしまったときは、レモン半個分のしぼり汁を洗面器一杯の熱い湯に入れ衣類を一晩つけておくときれいに落ちます。
 汗じみができるのを予防する方法もあります。ワイシャツやブラウスを着る前に、わきの下など汗じみができやすいところに水で薄く溶いた洗濯のりを霧吹きで吹きつけておきます。売られているスプレータイプの洗濯のりでもかまいません。のりが汗を吸い取り、洗濯するとのりと一緒にその汚れも洗い落とされるので、跡が残る心配がありません。



    <8月13日号の主な予定>

 ▽国民生活白書のあらまし………………………………内 閣 府 

 ▽平成十四年平均消費者物価地域差指数の概況………総 務 省 




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