官報資料版 平成15年9月3日




                  ▽交通安全白書のあらまし…………内 閣 府

                  ▽労働力調査(六月等結果)………総 務 省

                  ▽消費動向調査(六月)……………内 閣 府

                  ▽月例経済報告(八月)……………内 閣 府











交通安全白書のあらまし


―交通事故の状況及び交通安全施策の現況―


内 閣 府


 交通安全白書は、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第一一〇号)第十三条に基づき、毎年政府が国会に報告しているものである。
 今回の白書(平成十四年版交通安全白書)は昭和四十六年に第一回の報告がなされて以来三十三回目のものであり、その構成は次のとおりとなっている。
 本冊の「平成十四年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、近年の交通事故の状況と平成十四年度中の交通安全施策の実施状況を記述している。
 分冊の「平成十五年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、平成十五年度の交通安全施策の実施計画について記述している。
 本冊の概要は次のとおりである。

<第1編> 陸上交通

<第1部> 道路交通

<第1章> 道路交通事故の動向

道路交通事故の長期的推移等

1 道路交通事故の長期的推移
 道路交通事故死者数は、昭和四十五年に史上最悪の一万六千七百六十五人を記録した。このため、同年に交通安全対策基本法が制定され、同法に基づき四十六年度以降、交通安全基本計画を五年ごとに策定し、交通安全対策を総合的・計画的に推進してきた。
 交通事故死者数は、四十六年以降着実に減少を続け、五十四年には八千四百六十六人にまで減少した。しかし、その後増勢に転じ、五十七年以降九千人台を続けた後、六十三年から八年連続して一万人を超えていたが、平成七年を境に減少傾向となり、八年には一万人を下回った。
 平成十四年の死者数は八千三百二十六人と過去最悪の昭和四十五年の死者数を半減した。また、発生件数は九十三万六千七百二十一件、死傷者数は百十七万六千百八十一人であった(第1図参照)。

2 死者数の減少と今後の方向性
 平成十四年中の死者数は八千三百二十六人と、第七次交通安全基本計画の目標(十七年までに八千四百六十六人以下とする)を二年度目で達成した。
 今後も交通安全基本計画に基づく諸施策を一層強力に推進するとともに、平成十五年三月二十七日に交通対策本部で決定された「本格的な高齢社会への移行に向けた総合的な高齢者交通安全対策について」に基づく高齢者対策を総合的に推進することが必要である。

平成十四年中の道路交通事故の状況

1 概況
 平成十四年の交通事故の発生件数は九十三万六千七百二十一件で、これによる死者数は八千三百二十六人、負傷者数は百十六万七千八百五十五人であった。
 死者数は過去最悪の昭和四十五年の死者数の半数以下となったほか、事故発生件数及び負傷者数も十二年ぶりに減少した。

2 年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、十年連続で六十五歳以上の高齢者(三千百四十四人、三七・八%)が最も多く、次に十六〜二十四歳の若者(一千三百十六人、一五・八%)となっており、この二つの年齢層で全交通事故死者数の五三・六%を占めている(第2図参照)。
 負傷者数は、十六〜二十四歳の若者(二十四万九千九百二人)が最も多く、全負傷者数の二一・四%を占めている。また、前年と比較して十六〜二十四歳、二十五〜二十九歳、四十〜四十九歳が特に減少し、六十五歳以上、三十〜三十九歳が特に増加している。

3 状態別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、自動車乗車中が三千四百三十八人と最も多く、全死者数の四一・三%を占めている(第3図参照)。
 負傷者数は、自動車乗車中が七十二万一千百三十七人と最も多く、全負傷者数の六一・七%を占めている。

4 シートベルト着用の有無別死者数
 自動車乗車中の死傷者についてシートベルト着用者率(死傷者数中のシートベルトを着用している者の割合)をみると、平成五年以降上昇しており、十四年では八七・二%となっている。
 着用者の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、非着用者の致死率の約十一分の一である(第4図参照)。

5 チャイルドシート着用の有無別死者数
 六歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は三十五人であり、車両大破事故を除いた死者十五人のチャイルドシート着用の有無は、着用三人、非着用は十二人であった。

6 第一当事者の交通死亡事故発生件数
 自動車運転者が第一当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう)となった死亡事故件数は減少傾向で推移しているが、これを運転者の年齢別にみると、六十五歳以上の高齢者は、平成十四年には元年の二・九七倍となっている。

<第2章> 道路交通安全施策の現況

1 交通安全施設等整備事業の推進
 平成十四年度は、交通安全施設等整備事業七箇年計画の最終年度として、次のような事業を実施した。
 @ 事故多発地点のうち緊急度の高い箇所について、交差点改良等を重点的に実施した。また、中央帯等の整備、危険性が高い場所等への信号機の設置、既存の信号機の集中制御化、系統化等の高度化、道路標識の高輝度化・大型化・可変化等を推進するとともに、キロポスト(地点標)、高速走行抑止システム、夜間事故防止対策として道路照明・視線誘導標等の整備を推進した。
 A 高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道、音響信号機等を整備するとともに、交通結節点におけるエレベーターの設置等を推進した。
 また、高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備、通学路、通園路の整備を図るとともに、道路空間と一体になって交通安全施設と同様に機能する歩行者用通路や交通広場等の整備を推進した。
 B 青信号で進行する歩行者と自動車との交錯をできるだけ少なくした「歩車分離式信号」を、全国百の交差点においてモデル運用を行い、その結果を踏まえ導入・運用の指針を制定した。

2 高度道路交通システムの整備
 最先端の情報通信技術等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率等の向上を実現するため、平成八年に策定したITS全体構想に基づき、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備等を推進している。

3 交通需要マネジメントの推進
 交通容量の拡大策、交通管制の高度化等に加えて、パークアンドライド、情報提供、相乗りの促進、時差通勤・通学、フレックスタイム制の導入等、道路の利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進した。また、平成十三年度より、地域における交通流・量の調整、事業者による交通事業の改善等を行うTDM実証実験に対する認定制度を設け、十四年度は三地域の実証実験を認定した。

4 高齢者に対する交通安全教育
 運転免許証を持たない、老人クラブに加入していない等の高齢者に対し、地方公共団体等と連携して、事故多発路線に居住する高齢者の家庭訪問による個別指導、医師等と連携した交通事故防止のワンポイントアドバイス等地域ぐるみで高齢者の交通安全指導が行われるように努めた。
 また、高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を積極的に促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して「ヒヤリ地図」の作成、高齢運転者の実技講習及び最近普及している電動車いすの安全利用等自主的な交通安全運動を展開できるよう指導・援助を行った。特に、シルバーリーダーについては、参加・体験・実践型の高齢者交通安全教育の継続的な推進役の養成を目的とする「市民参加型の高齢者交通安全学習普及事業」を実施した。さらに、家庭において適切な助言等が行われるよう、交通安全母親活動、世代間交流による交通安全普及啓発活動等の促進に努めた。

5 シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底
 各種交通安全教室、交通安全運動等の機会をとらえ、シートベルトの着用効果、正しい利用方法について広報啓発・指導に努めた。
 また、チャイルドシートについては、しっかり取り付けられていないものも多く見受けられることから、春・秋の全国交通安全運動等の機会に普及促進キャンペーンや産婦人科、幼稚園、保育園等における取付講習会を開催した。

6 運転者教育等の充実
 平成十四年六月の改正道路交通法等の施行により、免許取得機会の拡大等の観点から、大型第二種免許及び普通第二種免許に係る指定自動車教習所における教習及び技能検定制度が導入された。同時に、第二種免許取得者の水準向上の観点から、応急救護処置講習等が義務付けられた。
 また、更新時講習は、優良運転者、一般運転者、違反運転者又は初回更新者の区分に応じて受けることとされ、高齢者講習については、受講対象が七十五歳以上から七十歳以上に拡大された。

7 自動車運送事業者等の行う運行管理の充実
 鉄道事業法等の一部を改正する法律(平十四法七十七)の施行(平成十五年四月)により、貨物自動車運送事業に対する営業区域規制が撤廃されることに対応し、貨物自動車運送事業輸送安全規則等を改正し、運行が長期にわたる場合の点呼の強化等を行った。また、飲酒運転等に対する行政処分基準の強化及び鉄道事業法等の一部を改正する法律の施行に合わせた行政処分基準の強化を行った。

8 自動車アセスメント情報の提供等
 自動車の衝突安全性能等の比較試験の結果、エアバッグ等安全装置の装備状況等の情報、チャイルドシートの安全性比較試験の結果等の情報を提供している。

9 自動車の検査及び点検整備の充実
 平成十四年七月に道路運送車両法の一部を改正することにより、不正改造行為を禁止し、整備命令制度を強化した。

10 リコール制度の充実
 自動車不具合情報ホットラインを活用し、ユーザーからの自動車の不具合情報を幅広く収集し、得られた多数の情報を分析してリコール該当車の早期発見に努める等リコール制度の適正な運用を図るとともに、平成十三年四月より、ユーザーからの不具合情報について国土交通省のホームページで公開し、情報収集の強化に努めている。

11 自動車損害賠償保障制度の充実
 保険会社等による被害者等に対する情報提供の義務付け、紛争処理機関による新たな紛争処理の仕組みの整備など、被害者保護の充実を盛り込んだ自動車損害賠償保障法及び自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部を改正する法律が平成十四年四月一日から施行された。
 さらに、自動車損害賠償保障法施行令等の一部を改正する政令により、平成十四年四月から、介護を要する重度後遺障害者に対する保険金限度額の引上げを行った。

<第2部> 鉄軌道交通

<第1章> 鉄軌道交通事故の動向

 踏切事故防止対策の推進、各種の運転保安設備の整備・充実、制御装置の改善、乗務員等の資質の向上など総合的な安全対策を実施してきた結果、運転事故は、長期にわたり減少傾向にあり、平成十四年の運転事故件数は八百五十一件、運転事故による死傷者数八百十九人(うち死亡者三百四十四人)であった(第5図参照)。
 踏切事故は四百四十八件と運転事故の約半数を占めているが、長期的には減少傾向にある。

<第2章> 鉄軌道交通安全施策の現況

1 線路施設、運転保安設備等の整備
 地方中小鉄道の安全輸送を確保するため、トンネルや橋りょう等の鉄道施設等の現状を総点検し、安全性の観点から評価する事業を実施している。
 また、列車運行の安全確保を図るため、列車集中制御装置(CTC)等の整備を促進するとともに、自動列車停止装置(ATS)未設置路線におけるATSの整備を推進している。

2 保安監査等の実施
 施設、車両、安全管理体制等についての保安監査を効果的かつ機動的に実施するとともに、平成十四年二月にJR鹿児島線で発生した列車衝突事故を踏まえた無閉そく運転時の安全対策について、また、同年十一月の列車と接触し負傷した中学生を救助するため、線路内に立ち入った消防隊員が後続列車と接触し死傷するという事故を踏まえた鉄道災害発生時の緊急体制の再確認と二次災害防止のための安全管理の徹底についても指導した。

3 鉄道事故原因の究明及び未然防止対策の推進
 航空・鉄道事故調査委員会(平成十三年十月一日改組)は、鉄道事故及び鉄道事故の兆候(重大インシデント)を総合的に解析して報告書を作成し、公表している。
 また、鉄道事故等報告規則等に基づいて報告される鉄道事故等の情報を収集整理し、鉄軌道事業者等の関係者で共有することにより、事故の未然防止を図っている。

4 踏切事故防止対策
 踏切道の改良については、踏切道改良促進法(昭三十六法百九十五)及び第七次踏切事故防止総合対策に基づき、踏切道の立体交差化、構造改良及び保安設備の整備を推進している。
 同法により改良すべき踏切道として、平成十三年度末までに踏切道の立体交差化二千九十九箇所、構造改良三千八百九十三箇所及び保安設備の整備二万七千六百十三箇所を指定し、その改良を促進している。また、踏切道の統廃合についても併せて実施している。

<第2編> 海上交通

<第1章> 海難等の動向

 平成十四年中の海難船舶数は二千八百三十七隻、海難による死亡・行方不明者数は百八十三人であった(第6図参照)。
 また、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数は百三十八人であった。
 近年のマリンレジャー活動の活発化に伴い、プレジャーボート等の海難が増加しており、一千百三十六隻と前年に比べ百三十二隻減少したものの、海難船舶隻数全体の四〇%を占めている。
 また、海難による死亡・行方不明者数、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数ともに漁船によるものが最も多く、それぞれ全体の五三%、五九%を占めている。

<第2章> 海上交通安全施策の現況

 @ 第九次港湾整備七箇年計画(平成八〜十四年度)に基づき、開発保全航路、港湾等の整備、港湾の耐震性の強化を行った。また、漁港漁場整備長期計画(平成十四〜十八年度)に基づき、外郭施設等の整備を通じて漁船の安全の確保を図った。
 A 船舶交通のふくそうする海域においては、航路航行義務等特別の交通ルール等を定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行った。このほか、東京湾口航路整備事業等、船舶航行の安全性と海上輸送の効率性を両立させた海上交通環境である海上ハイウェイネットワークを構築するための整備等を行った。
 B 平成十四年四月一日から海図の緯度・経度が日本測地系から世界測地系へ変更となり、乗揚げ海難等が発生する危険性が高まったことから、平成十四年度全国海難防止強調運動においては「船位確認の徹底〜世界測地系海図の適正な使用〜」を重点事項として定め、運動を実施した。
 C 海上人命安全条約(SOLAS条約)において、船舶の航行の安全に係る技術革新等に対応した船舶自動識別装置(AIS)の搭載を始めとする船舶の航海設備等に関する安全基準の大幅な見直しが行われ、平成十四年七月に発効し、我が国も国内法の整備を行うとともに、船舶検査体制の充実に努めた。
 D 国際海事機関(IMO)において、ダブルハル(二重船殻)タンカーの建造を促進することを内容とする海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の改正が行われ、平成十四年九月に発効し、我が国も国内法の整備を行った。
 E 国際安全管理規則(ISMコード)が平成十四年七月から完全適用になったことから、制度の円滑な実施体制の整備等を図るとともに、外国船舶の監督(PSC)を重点・強化した。
 F 漁船等を除く総トン数二十トン未満の船舶(以下「小型船舶」という)を対象に、小型船舶の所有権の公証のための登録に関する制度等について定め、小型船舶の所有者の利便性の向上を図るとともに、小型船舶の放置艇対策を目的とした小型船舶の登録等に関する法律(平十三法百二)が平成十四年四月から施行された。
 G マリンレジャー愛好者に救命胴衣着用の必要性を訴えるため、シンボルマーク(「ウクゾウ」くん)を決定した。
 H 小型船舶の利用者ニーズ等に応えるとともに、小型船舶の航行の安全を図るため、資格区分の再編成、小型船舶の船長が遵守すべき事項の明確化等を内容とした船舶職員法の一部を改正する法律が平成十四年六月に公布(平成十五年六月施行)された。
 I プレジャーボート利用者が、自己責任意識及び安全意識をもってクルージングできる環境整備を進める海道の旅(マリンロード)構想について、東京湾及び周辺海域においてモデル事業を行った。
 J 海上で発生した傷病者の救助に迅速・適切に対応するため、ヘリコプターに同乗し、つり上げ救助、潜水作業及び救急救命処置等を行う機動救難士を福岡航空基地に配置し、人命救助即応体制の充実・強化を図った。また、海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者を減少させるために、救命胴衣の常時着用、携帯電話等の連絡手段の確保、緊急通報用電話番号「一一八番」の有効活用を基本とする自己救命策確保キャンペーンを強力に推進した。

<第3編> 航空交通

<第1章> 航空交通事故の動向

 我が国における民間航空機の事故の発生件数は、ここ数年多少の変動はあるものの、横ばい傾向を示しており、平成十四年の事故件数は三十五件、これに伴う死亡者数は十三人、負傷者数は六十二人であった(第1表参照)。

<第2章> 航空交通安全施策の現況

 @ 第七次空港整備七箇年計画(平成八〜十四年度)に基づき、空港、航空保安施設等の整備を計画的に推進した。
 A 洋上空域における航空交通の安全性、効率性及び航空交通容量の拡大を図るため、衛星を利用した新たな航空通信・航法・管制システムの整備を推進しており、平成十四年度は運輸多目的衛星新T・U号機及び新T号機打ち上げ用ロケットの製造等を推進するとともに、新U号機打ち上げ用ロケットの製造等に着手した。
 B 増加が予想される航空交通を安全かつ効率的に処理するために、航空交通がふくそうしている空域において、広域航法(RNAV)を利用した経路の本格導入に着手した。
 C 平成十三年五月の小型航空機とヘリコプターが空中衝突した事故を受け、地方航空局の運航審査官を増員し、航空機使用事業者に対する監視を強化した。
 D 平成十三年一月に発生した日本航空九〇七便の事故等を踏まえ、着席中のシートベルトの常時着用の徹底を政府広報等を通じて国民に呼びかけた。また、航空機衝突防止装置の回避指示が表示された場合に乗務員がとるべき措置について指針を定め、運航者に周知したほか、操縦室用音声記録装置等の装備要件を改めた。




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六月の雇用・失業の動向


―労働力調査平成十五年六月等結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十五年六月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千四百十一万人、完全失業者は三百六十一万人、非労働力人口は四千百九十万人と、前年同月に比べそれぞれ三十八万人(〇・六%)増、七万人(一・九%)減、十万人(〇・二%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千四百十一万人と、前年同月に比べ三十八万人(〇・六%)の増加となり、二か月連続で前年同月の水準を上回った。男女別にみると、男性は三千七百四十七万人、女性は二千六百六十四万人で、前年同月と比べると、男性は一万人(〇・〇%)減、女性は三十九万人(一・五%)増となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百七十三万人、自営業主・家族従業者は一千十一万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は二十五万人(〇・五%)増、自営業主・家族従業者は十三万人増となり、雇用者は二か月連続で前年同月の水準を上回った。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百三十万人と、二十七万人(〇・五%)増、二か月連続の増加
 ・常 雇…四千六百八万人と、三十一万人(〇・七%)増、二か月連続の増加
 ・臨時雇…六百八万人と、六万人(一・〇%)増、十八か月連続の増加
 ・日 雇…百十三万人と、十一万人(八・九%)減、四か月ぶりの減少

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百二十二万人と、十一万人(三・五%)増加
○建設業…五百九十一万人と、三万人(〇・五%)減少
○製造業…一千百八十二万人と、四十一万人(三・四%)減少
○運輸業…三百二十九万人と、三万人(〇・九%)増加
○卸売・小売業…一千百五十六万人と、三万人(〇・三%)増加
○飲食店,宿泊業…三百三十九万人と、十三万人(三・七%)減少
○医療,福祉…五百九万人と、四十万人(八・五%)増加
○サービス業…八百五十四万人と、十六万人(一・九%)増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百七十三万人と、十六万人(三・三%)減少
○製造業…一千百一万人と、三十六万人(三・二%)減少
○運輸業…三百七万人と、同数
○卸売・小売業…九百九十六万人と、八万人(〇・八%)増加
○飲食店,宿泊業…二百五十五万人と、九万人(三・四%)減少
○医療,福祉…四百七十五万人と、四十二万人(九・七%)増加
○サービス業…六百八十三万人と、十二万人(一・八%)増加
(注) 日本標準産業分類の改訂に伴い、平成十五年一月結果の公表以降、新産業分類で表章している。

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百三万人と、四十万人(二・三%)減、二か月ぶりの減少
○三十〜四百九十九人規模…一千八百七万人と、八万人(〇・四%)増、六か月ぶりの増加
○五百人以上規模…一千二百十七万人と、二十五万人(二・一%)増、六か月連続の増加

(5) 就業時間

 六月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百四十五万人と、四万人(〇・三%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…一千七十七万人と、八万人(〇・七%)増加
○三十五時間以上…四千八百三十九万人と、四十七万人(一・〇%)増加
 ・うち四十九時間以上…一千九百二万人と、三十四万人(一・八%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・八時間で、前年同月と比べ〇・一時間の増加となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百六十一万人と、前年同月に比べ七万人(一・九%)減となり、四か月ぶりに前年同月の水準を下回った。男女別にみると、男性は二百二十七万人、女性は百三十四万人で、前年同月に比べ、男性は五万人(二・三%)の増加、女性は十一万人(七・六%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○定年等…四十二万人と、四万人増加
○勤め先都合…百十七万人と、一万人増加
○自己都合…百十四万人と、三万人減少
○学卒未就職…二十二万人と、同数
○新たに収入が必要…三十八万人と、三万人減少
○その他…二十四万人と、五万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・三%と前月に比べ〇・一%の低下となっている。男女別にみると、男性は五・七%、女性は四・八%と、前月に比べ男性は〇・一ポイントの上昇、女性は〇・三ポイントの低下となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・三%と、前年同月に比べ〇・二ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は五・七%、女性は四・八%と、男性は〇・一ポイントの上昇、女性は〇・四ポイントの低下となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十三万人(二万人増)、一二・二%(一・一ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十七万人(一万人増)、六・二%(〇・一ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…三十万人(一万人増)、三・八%(〇・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十八万人(二万人増)、四・三%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…五十万人(二万人減)、七・一%(〇・七ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…二十二万人(二万人減)、五・三%(〇・八ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(同数)、九・九%(〇・二ポイント低下)
○六十五歳以上…十万人(一万人増)、三・〇%(〇・一ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十万人(二万人減)、八・八%(〇・四ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十二万人(七万人減)、六・六%(一・三ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十四万人(同数)、四・四%(〇・二ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…十八万人(四万人減)、二・八%(〇・五ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十六万人(一万人減)、三・六%(〇・四ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…八万人(一万人減)、二・九%(〇・五ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…八万人(同数)、四・八%(同率)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・〇%(〇・五ポイント上昇)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数

 世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…百万人と、一万人増加
○世帯主の配偶者…四十万人と、四万人減少
○その他の家族…百六十九万人と、同数
○単身世帯…五十二万人と、四万人減少

(6) 地域別完全失業率

 平成十五年四〜六月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…六・二%(〇・六ポイント上昇)
東 北…五・七%(〇・七ポイント低下)
南関東…五・二%(〇・五ポイント低下)
北関東・甲信…五・一%(〇・五ポイント上昇)
北 陸…四・三%(〇・四ポイント上昇)
東 海…四・二%(〇・二ポイント低下)
近 畿…七・〇%(〇・二ポイント上昇)
中 国…四・八%(〇・五ポイント上昇)
四 国…五・八%(〇・六ポイント上昇)
九 州…六・六%(〇・三ポイント上昇)














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消費動向調査


―平成十五年六月実施調査結果―


内 閣 府


 消費動向調査は、消費者の意識の変化、サービス等の支出、主要耐久消費財等の購入状況等を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とすることを目的としている。調査対象は全国の一般世帯(単身世帯及び外国人世帯を除く)約三千四百万世帯で、そのうち約五千四十世帯を抽出して四半期ごとに調査している。また、三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十五年六月に実施した調査結果の概要である。

一 調査世帯の特性

 平成十五年六月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五三・〇歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七六・四%となっている。また、有効回答率は一〇〇%(有効回答世帯数は五千四十世帯)となっている。

二 消費者の意識

(1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
  平成十五年六月の消費者態度指数は、「雇用環境」に関する意識が改善したほか、「暮らし向き」、「耐久消費財の買い時判断」、「収入の増え方」及び「物価の上がり方」に関する意識のすべての項目が改善したため、前期差一・二ポイント上昇の三七・三となった(第1図参照)。
(2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について平成十五年六月の動向を前期差でみると、「雇用環境」に関する意識(二・三ポイント上昇)、「暮らし向き」に関する意識(一・〇ポイント上昇)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(〇・七ポイント上昇)、「収入の増え方」に関する意識(〇・三ポイント上昇)及び「物価の上がり方」に関する意識(〇・三ポイント上昇)といずれも改善を示した(第1表参照)。

三 サービス等の支出予定(季節調整値)

 平成十五年七〜九月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出DI)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
(1) 高額ファッション関連支出DIは、マイナスが続いており、前期が「マイナス一〇・七%」のところ、今期は「マイナス一〇・九%」となっている。
(2) 学習塾等補習教育費DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が「六・四%」のところ、今期は「六・二%」となっている。
(3) けいこ事等の月謝類DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が「一・九%」のところ、今期は「〇・七%」となっている。
(4) スポーツ活動費DIは、このところマイナスが続いており、前期が「マイナス二・六%」のところ、今期は「マイナス二・〇%」となっている。
(5) コンサート等の入場料DIは、このところマイナスとなっており、前期が「マイナス二・九%」のところ、今期は「マイナス二・〇%」となっている。
(6) 遊園地等娯楽費DIは、マイナスが続いており、前期が「マイナス一五・九%」のところ、今期は「マイナス一三・七%」となっている。
(7) レストラン等外食費DIは、マイナスが続いており、前期が「マイナス二六・〇%」のところ、今期は「マイナス二三・九%」となっている。
(8) 家事代行サービスDIは、おおむね安定した動きが続いており、前期が「マイナス二・一%」のところ、今期は「マイナス二・四%」となっている。

四 旅行の実績・予定(季節調整値)

(1) 国内旅行
  平成十五年四〜六月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で〇・三ポイント低下し三三・二%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で〇・一人増加し三・〇人となった。
  十五年七〜九月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十五年四〜六月期計画(以下「前期計画」)差で横ばいの三〇・一%、その平均人数は、前期計画差で〇・一人増加し三・〇人となっている。
(2) 海外旅行
  平成十五年四〜六月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で二・九ポイント低下し二・二%となった。その平均人数は、前期差で〇・一人増加し一・七人となった。
  十五年七〜九月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で一・一ポイント低下し二・三%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの一・八人となっている。

(参 考)

一 消費者意識指標(季節調整値)(レジャー時間、資産価値)

 平成十五年六月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・一ポイント低下し三九・三となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で二・五ポイント上昇し三六・八となった。

二 主要耐久消費財等の購入状況品目別購入世帯割合の動き(原数値)

 平成十五年四〜六月期実績は、三十品目中十四品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十四品目が減少した。なお、二品目が横ばいとなった。
 十五年七〜九月期実績見込みは、三十品目中十三品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十一品目が減少している。なお、六品目が横ばいとなっている(第2表参照)。

三 主要耐久消費財の買替え状況

 平成十五年四〜六月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気洗たく機、電気冷蔵庫などは九〜十三年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてパソコン、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、電気冷蔵庫があげられる。




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月例経済報告(八月)


―景気は、おおむね横ばいとなっている。株価やアメリカ経済の動向など、我が国の景気を巡る環境に変化の兆しがみられる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、おおむね横ばいとなっている。株価やアメリカ経済の動向など、我が国の景気を巡る環境に変化の兆しがみられる。
 ・輸出はこのところ弱含みとなっている一方、生産は横ばいとなっている。
 ・企業収益は緩やかな改善が続いており、設備投資は緩やかな持ち直しが続いている。
 ・個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 ・雇用情勢は、依然として厳しいものの、一部に持ち直しの動きがみられる。
 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、今後の株価・長期金利や海外経済の動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。平成十六年度予算編成については、歳出、歳入両面及び質、量両面にわたる改革をさらに加速する。
 政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、低水準ではあるものの、消費者マインドがこのところやや持ち直していることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、六月は前月に比べて増加している。
 個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて増加した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、自動車小売業が減少したことなどから、前月に比べて減少した。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、クリアランスセールの前倒しの効果に加え、低調に推移した四、五月の反動もあって、前月から減少幅が縮小した。新車販売台数は、引き続き減少している。家電販売金額は、主力商品であるパソコンを中心に減少幅が縮小した。六月の旅行は、国内旅行は前年を上回った一方、海外旅行は重症急性呼吸器症候群(SARS)による手控えなどから、引き続き大幅に減少した。
 個人消費の先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、依然として雇用情勢が厳しいことなどから、引き続き留意が必要である。

◇設備投資は、緩やかな持ち直しが続いている。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、緩やかに持ち直している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成十四年十〜十二月期に持ち直しに転じ、平成十五年一〜三月期はやや減少となったものの、緩やかな持ち直し基調にある。なお、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は横ばいとなっている。ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
 先行指標や年度計画をみると、日銀短観によれば製造業の十五年度設備投資は三年ぶりに前年度比増加に転じる計画となっており、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、機械設備投資の先行指標である機械受注は持ち直しており、建設投資の先行指標である建築着工床面積をみるとおおむね横ばいとなっている。先行きについては当面緩慢なものにとどまると見込まれるが、外需をはじめとする最終需要の先行き不透明感が払拭されれば、再び持ち直しの動きを強めるものと見込まれる。

◇住宅建設は、このところ増加している。
 平成十四年度の住宅建設は、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、二年連続で百二十万戸を下回る低い水準となった。
 平成十五年六月の総戸数は、持家が前月と比べ二〇%以上増加したことなどから、前月比八・七%増の年率百二十六万八千戸と、三か月連続の増加となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、消費者の住宅取得マインドが依然弱いことが住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 平成十五年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、公共工事請負金額及び大手五十社受注額は、平成十五年四〜六月期も、前期に引き続き、前年を下回った。

◇輸出は、このところ弱含んでいる。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
 輸出は、このところ弱含んでいる。地域別にみると、アジア向け輸出は、SARSの影響もあり、中国を中心として、このところ減少している。アメリカ向け輸出は、先月の自動車輸出の反動により足元で減少したものの、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、新型車の投入に伴う年初来の自動車輸出の増加が一服したことから、このところ減少している。先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、緩やかに持ち直すものと考えられる。
 輸入は、機械機器を中心に緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、中国、ASEAN、NIEsからの輸入がいずれも緩やかに増加していることから、全体として緩やかに増加している。アメリカからの輸入は、航空機の輸入等の影響により単月の振れが大きくなっているが、基調としては減少している。EUからの輸入は、おおむね横ばいとなっている。
 国際収支をみると、輸出数量がこのところ弱含んでいる一方、輸入数量が緩やかに増加していることに加え、海外旅行客の減少等に伴いサービス収支の赤字幅が縮小していることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、横ばいとなっている。
 鉱工業生産は、年初より弱含んでいたが、情報化関連生産財が堅調に推移していること等により、横ばいとなっている。在庫は低水準にあるものの、外需をはじめとする最終需要の先行きが不透明であること等を背景に、企業は在庫積み増しに慎重になっており、生産の増加にはつながっていない。
 先行きについては、国内最終需要は当面低調に推移することが見込まれるものの、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるほか、今後アメリカ経済等の回復が持続すれば、輸出を通じた生産持ち直しへの動きは次第に強まるものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、七月、八月ともに増加が見込まれている。
 また、第三次産業活動は、横ばいとなっている。

◇企業収益は、緩やかな改善が続いている。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力等を背景に、平成十五年一〜三月期においても前年比で増益が続いているが、季節調整済前期比では減益に転じ、改善のテンポは緩やかになっている。「日銀短観」によると、平成十四年度は前年比二桁の大幅な増益となり、十五年度も引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、十四年度下期では前年比五割の大幅増益となり、十五年度も二桁の増益見込みである。一方、非製造業は十五年度上期に減益に落ち込むものの、下期には前年比二桁の増益に転じる見込みである。規模別でみると、大企業・中小企業とも十四年度に引き続き十五年度も増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、非製造業では改善に足踏みがみられるものの、製造業では緩やかながら引き続き改善がみられる。先行きについては、全規模全産業でみるとわずかながら改善が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、一部に持ち直しの動きがみられる。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、六月は、前月比〇・一%ポイント低下し五・三%となった。男女別にみると、男性の失業率が上昇する一方で、女性の失業率が低下している。また、雇用者数は、持ち直している。
 新規求人数は、横ばいとなっていたが、再び増加傾向となっている。有効求人倍率はおおむね横ばいとなっている。製造業の残業時間についても、横ばいとなっている。
 夏季賞与の出足を六月の特別給与でみると、前年を上回っている。一方、定期給与はこのところ横ばいで推移しており、賃金の基調としても、横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価は、弱含んでいる。消費者物価は、横ばいとなっている。
 国内企業物価は、弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、上昇していた鉄鋼が六月は前月比で横ばいとなったほか、電気機器、石油・石炭製品などが引き続き下落している。また、輸入物価(円ベース)は、このところ緩やかに下落してきたが、六月には堅調な原油価格の影響がみられている。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、石油製品が引き続き下落しており、全体として前年比下落幅はおおむね横ばいで推移している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移しているが、このところ企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、七月には外食が下落幅を縮小している。また、公共料金は、前年比で上昇しており、七月にはたばこ税増税の影響がみられている。
 なお、消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまるとみられることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇株価は、四月下旬以降上昇した後、このところ横ばいで推移している。
 株価は、四月下旬以降上昇し七月上旬に年初来最高値を記録した後、おおむね九千円台後半(日経平均株価)で推移している。対米ドル円レートは、六月以降百十七円台から百二十円台で推移している。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は低下傾向で推移してきたが、六月中旬から上昇し、七月中旬以降一%前後で推移している。企業の資金繰り状況は改善しており、民間債と国債との流通利回りスプレッドは低水準で推移している。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一六・三%)が続いている。M+CDは、昨年末以降伸び率は鈍化している。

四 海外経済

◇アメリカの景気回復の勢いは持ち直している。アメリカでは、景気回復の勢いは持ち直しており、企業部門においても回復の動きがみられる。
 マインドは改善傾向にあり、これを背景に消費は緩やかに増加している。また、生産は下げ止まり、設備投資に持ち直しに向けた動きが現れるなど、企業部門においても回復の動きがみられる。また、主要企業の業績が改善傾向にあることなどを受けて、株価はおおむね上昇基調で推移している。
 さらに、今後、減税パッケージが消費や投資を喚起する効果が期待されるなど、年後半に成長率が高まる可能性が十分考えられる。
 一方で、景気回復観測等から、六月中旬以降上昇している長期金利が、今後も上昇を続ければ、住宅や消費にマイナスの影響を与えることなどが懸念される。
 七月中旬に行われたグリーンスパンFRB議長による議会証言では、アメリカ経済が十分に回復するまで、現在の緩和的な金融政策を維持する姿勢が示された。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いているが、韓国等で減速している。
 中国では、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響から、四〜六月期のGDP成長率は鈍化したが、SARSの流行が終息したことから、消費、生産はこのところ回復している。さらに、投資、輸出は堅調な増加が続いており、景気は拡大している。タイでは、消費、投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費、輸出の伸びの鈍化から景気の拡大は緩やかとなっている。台湾では、生産が上向くなど景気に持ち直しの動きがみられる。韓国では、失業率の上昇等による消費者マインドの悪化から消費が弱含んでいる。また、輸出の伸びの鈍化から、企業の設備投資も弱含むなど、景気は減速している。シンガポールでは、生産が減少し四〜六月期のGDP成長率が大幅なマイナスとなるなど、景気は減速している。一方、多くの国・地域で、アメリカ向けをはじめとして輸出は持ち直している。

◇ユーロ圏の景気は弱い状態となっており、イギリスでは、景気は横ばいとなっている。
 ユーロ圏では、昨年秋以降のユーロ高の影響などから、輸出の減少が続いており、生産が弱い動きとなるなど、景気は弱い状態となっている。ドイツでは、生産の減少が続くなか、インフレ率は低い水準で推移しており、景気後退の懸念がある。フランスでは、消費が弱含むなど、景気は横ばいが続くなかで一部に弱い動きがみられる。
 イギリスでは、消費に上向きの動きがみられるなど、景気は横ばいとなっている。他方、生産、投資は弱い動きとなっており、イングランド銀行(BOE)は、七月上旬に政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き下げ、三・五〇%とした。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、アメリカの株価がおおむね上昇基調であるほか、アジア、ヨーロッパでも主要株価はおおむね上昇基調が続いている。また、長期金利も引き続き世界的に上昇がみられる。ドルは、アメリカの景気回復期待等から、七月上旬以降増価基調で推移した。景気減速に対処するため、韓国では七月上旬に、カナダでは七月中旬に利下げが実施された。
 原油価格は、アメリカの原油在庫が減少するとの観測から強含む動きもみられたが、おおむね横ばいで推移した。

オゾン層の現状及び今後の見通しについて

 地上約十キロから五十キロの成層圏と呼ばれる領域にはオゾンが比較的多くあり、オゾン層と呼ばれています。オゾン層のオゾンは太陽からの有害な紫外線を吸収するとともに、成層圏の気温や風に影響を与え、さらには気候にも影響を与えます。このことから、その状況を監視することは、とても重要です。
 気象庁は一九五七年につくばでオゾンの観測を開始しました。現在では、つくばのほか札幌、鹿児島、那覇、南鳥島、それに南極昭和基地でも観測を行っています。国内で長い期間データが存在する札幌、つくば、鹿児島、那覇の四地点の上空のオゾン量(「オゾン全量」といいます)の経年変化は、札幌、つくば、鹿児島の三地点でオゾン全量の減少傾向がみられます。
 一方、南極域の上空では、一九八〇年ごろから春にオゾンの量が大きく減少する「オゾンホール」が現れるようになりました。この減少は、南極昭和基地における長年の観測により発見されました。
 このようなオゾン減少は、いわゆるフロンなど、人為起源のオゾン層破壊物質によるものであることが明らかになっています。オゾン減少は、地上に降り注ぐ紫外線の増加を招き、健康や生態系に悪影響をもたらすと懸念されたことから、条約によって生産や輸出入の規制がなされました。主なオゾン層破壊物質の生産は先進国では一九九六年に禁止されています。しかし、これらの物質は大気中ですぐには分解しないこと、機器類に使用されていたものがその廃棄時に大気中に放出される場合があることなどから、オゾン量の回復には時間がかかります。
 オゾン層破壊物質の今後の規制に係わる政策決定のために、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)は、最近のオゾン層の状況及び今後の見通しに関する科学的知見を集約した「オゾン層破壊の科学アセスメント」を一九八九年以降三〜四年ごとに共同で作成してきました。最新の二〇〇二年版科学アセスメントの作成には、当庁職員を含む世界各国の三百名近い科学者が参加するとともに、気象庁の観測データや解析の成果も多く使われています。
 このアセスメントの中で、オゾン層の現状及び今後の見通しについて、次のように述べています。
・大気中のオゾン層破壊物質の総量は、現在ピークかそれに近い。
・南北両半球の中緯度において、依然としてオゾン層は破壊されている。
・オゾン全量の減少にともなって有害紫外線が増加している。
・モデルによる予測によれば、成層圏のオゾン層破壊物質が予想通り減少すると、南極域の春季のオゾン量は二〇一〇年までには増加に転じ、今世紀中ごろに一九八〇年レベルまで回復する。
 さらに、オゾン層は特に今後十年程度は壊れやすい状態であり、オゾン層破壊物質の規制が守られなければ、オゾン層の回復は遅れる可能性があると指摘しています。
 このようなことから、オゾン層の状況については、今後も注意深く監視していく必要があります。気象庁は、正確な観測につとめ、適宜情報を発信して参ります。
 気象庁のオゾン観測の成果は、毎年の「オゾン層観測報告」、毎月の「オゾン層観測速報」等にとりまとめており、気象庁ホームページや近くの気象台等で閲覧することができます。また、二〇〇二年版科学アセスメントの要旨和訳も気象庁ホームページにて掲載しています。
  (気象庁資料から転載)



 

九月の気象


◇残暑
 暦の上で立秋(八月八日ごろ)を過ぎてからの暑さを残暑といいますが、八月を過ぎ九月になってもまだまだ残暑は厳しいと感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、夜の寝苦しさに関係の深い最低気温の面から、九月の残暑の変化についてみてみましょう。
 一九三一年以降の東京で九月の最低気温が二十五度以上となった日数をみてみると、一九三〇年代までは月に一日程度だった最低気温二十五度以上の日数が、ここ十年ほどの間に大きく増えています。
 長期的にみても、一八七六年に観測を開始してからの東京における九月の気温を調べると、最高気温は過去百年で約一・一度上昇しているのに対し、最低気温は約二・三度も上昇しています。
 これは、都市化の進行により人工の熱が排出され、夜間の冷却効果が働きにくくなっていることが主な原因と考えられています。このように、九月まで厳しい残暑の期間が延びていると感じられるのも、人間活動が気候に影響を与えている一例とみることができます。

◇天候の特徴
 変わりやすいものの代表として「秋の空」がよくあげられます。秋に天気が変わりやすくなる一番の原因は、八月に日本付近を覆っていた太平洋高気圧が徐々に弱まり始め、北から強い偏西風も次第に南下して日本付近に現れることが多くなり、上空の大気の流れが速くなるためです。この速い流れにのって、低気圧や高気圧が短い周期で通過しやすくなり、時には暴風雨をもたらす台風や、強い寒気を伴った低気圧が日本付近を通過し、変化の厳しい気象をもたらします。
 東京の一九五一年から二〇〇二年の、日降水量が一ミリ以上、及び五十ミリ以上の日数の平均値をそれぞれ月別にみてみましょう。雨の日の割合の目安として日降水量一ミリ以上の日数をみると、一番多いのは梅雨期間の六月ですが、次いで多いのは秋雨前線や台風の活動が活発になる九月となっています。更に、大雨の出現頻度の目安として、日降水量が五十ミリ以上の日数をみると、一ミリ以上の日数が一番多い六月が意外に少なく、九月と十月に多くなっています。この傾向は東日本以北にみられ、台風や秋雨前線に加え日本付近を発達しながら通過する低気圧が増えてくるためです。
 このように、秋は大雨が発生しやすく、気象庁が発表する天気予報や気象情報に、特に注意が必要な時期です。
  (気象庁資料から転載)






    <9月10日号の主な予定>

 ▽科学技術白書のあらまし………文部科学省 




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