官報資料版 平成15年11月5日




                  ▽青少年白書のあらまし……………内 閣 府

                  ▽毎月勤労統計調査(七月)………厚生労働省

                  ▽家計収支(七月)…………………総 務 省

                  ▽月例経済報告(十月)……………内 閣 府











青少年白書のあらまし


―青少年の現状と施策―


内 閣 府


 平成十五年版青少年白書は、平成十五年六月二十四日に閣議で配布され、閣議終了後に公表された。
 青少年白書は、青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介、理解を得るという趣旨から昭和三十一年以来刊行しており、今回が四十五回目の発行である。
 平成十五年版は、第一部「青少年の現状」、第二部「青少年に関する国の施策」及び「参考資料」という構成になっている。
 第一部では、青少年の現状について、最新の各種統計資料に基づき紹介し、第二部では、青少年に関する国の施策について、平成十四年度の取組を中心に記述している。また、参考資料として、青少年行政関連の各種資料を採録している。
 以下では、本白書の概要について紹介する。

第一部 青少年の現状

第一章 青少年の人口

(青少年人口の現状と推移)
 我が国の総人口は、平成十四年十月一日現在の推計人口によれば一億二千七百四十三万五千人であり、このうち、青少年(〇〜二十四歳)の人口は三千三百三十万八千人で、総人口の二六・一%を占めている。これを男女別にみると、男子は一千七百六万六千人、女子は一千六百二十四万二千人で、男子が女子を八十二万四千人上回っており、女子百人に対して男子百五・一人となっている。
 青少年人口は、昭和三十年以降ほぼ一貫して減少しており、総人口に占める青少年人口の割合も、三十年には五二・五%と過半数を占めていたが、五十年には四〇%を切り、その後も減少を続けている(第1図参照)。
(青少年人口の動態)
 出生率(人口一千人当たりの出生数)は、戦前はおおむね三十台を記録していたが、平成十三年には九・三となった。
 平均初婚年齢は、平成十三年では、夫二九・〇歳、妻二七・二歳となっており、夫妻の平均初婚年齢の差は縮小傾向にある。
(青少年人口の地域分布)
 青少年人口の地方別分布状況を平成十四年十月一日現在の推計人口でみると、南関東の一都三県(東京、埼玉、千葉、神奈川)が八百七十一万八千人で、全国の青少年人口の二六・二%を占めている。また、青少年人口が二百万人を超えている都道府県は東京、神奈川及び大阪であり、全体的に都市部に青少年人口が集中している。

第二章 青少年の健康と安全

(青少年の健康)
 乳児死亡率(出生一千人当たりの生後一年未満の死亡数)は、大正末期まで百五十を超えていたが、現在では世界でも有数の低率国となり、平成十三年は三・一となっている。
 六〜十一歳の体力水準は、男女ともに加齢に伴い急激でほぼ直線的な向上傾向を示し、この傾向は、十四歳ごろまで続くが、その後、男子では十七歳まで向上傾向を示すのに対して、女子では、ほぼ停滞傾向を示している。なお、走・跳・投及び握力の年次推移の傾向をみると、ほとんどの年齢段階でいずれの能力も低下傾向にあることがうかがえる。
 核家族化や女性の社会進出等の影響により、幼児の食生活にも変化がみられ、最近は小児期から肥満など生活習慣病の予防のための健康な食習慣の形成とともに、食を通じた家族形成や人間性の育成についての重要性が指摘されてきている。また、最近の青少年期における食生活の問題として、欠食の習慣化が挙げられる。
 平成十四年度における児童生徒の被患率の高い疾病・異常をみると、被患率の最も高いものは「むし歯」で、むし歯のある者(処置完了者も含む。)の割合は、中学校男子を除きすべての学校種で七〇%を超えている。次に高いものは「裸眼視力一・〇未満の者」であり、学校段階が進むにつれて高くなっている。
(青少年の安全)
 平成十三年に不慮の事故により死亡した青少年(〇〜二十四歳)の数は三千二百十一人となっており、〇〜二十四歳の全死亡数の二六・二%を占めている。各年齢階層とも不慮の事故による死亡割合は高いが、特に十五〜十九歳では、全死亡数の約半数(四三・二%)となっている。不慮の事故の内訳では、交通事故が最も多くなっている。また、乳児では食物を詰まらせて、あるいはベッドの中などでの不慮の窒息死が多く、幼児では浴槽などでの溺死が多くなっている。
 平成十四年度の学校等の管理下における児童生徒等の災害について、災害共済給付(医療費、障害見舞金又は死亡見舞金の支給)の状況でみると、加入者一千八百五十万四千三百七十二人に対し、負傷・疾病百六十七万九千八百八件、障害六百九件、死亡九十五件、合計百六十八万五百十二件となっている。
 平成十三年に発生した労働災害による休業四日以上の死傷者数は十四万百四十九人であり、このうち満二十歳未満の労働者の死傷者数は四千七十四人で、全死傷者の二・九%となっている。満二十歳未満の労働者の死傷者数を業種別にみると、製造業で一千二百三十七人(業種合計の三〇・四%)、建設業で八百六十六人(同二一・三%)が被災しており、災害の過半数がこれらの業種において発生している。
(犯罪や虐待による被害の状況)
 平成十四年中に少年が被害者となった刑法犯の認知件数は四十万六千五百十九件で、前年に比べ三千九百八十八件(一・〇%)減少した。罪種別にみると、凶悪犯被害が二千百三十八件、粗暴犯被害が二万四千七件で、前年に比べ凶悪犯は百十九件(五・九%)増加し、粗暴犯は一千百九十三件(四・七%)減少した(第1表参照)。
 少年が被害者となった刑法犯の認知件数の総数及び凶悪犯の被害件数は、平成十四年は総数が減少したものの近年はおおむね増加傾向にあり(第2図参照)、少年の性犯罪(強姦及び強制わいせつ)被害が六千九百三件(前年比五件(〇・〇一%))に増加するなど、少年の犯罪被害の深刻化がうかがわれる。
 また、平成十四年中、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ法」という。)違反、児童福祉法違反、青少年保護育成条例違反等の福祉犯の被害者となった少年は七千三百六十四人で、前年に比べ七百八十九人(九・七%)減少した。学職別では、高校生が二千四百六十九人(三三・五%)と最も多く、無職少年二千百十八人(二八・八%)、中学生一千八百六十二人(二五・三%)等となっている。なお、平成十一年十一月に施行された児童買春・児童ポルノ法に係る被害者となった少年は、平成十四年中一千六百九十人である。
 平成十四年中、「出会い系サイト」を利用した犯罪の被害に遭った少年は一千三百十七人で、前年に比べ七百十九人(一二〇・二%)増加した。罪種別では、児童買春・児童ポルノ法違反が七百四十人(五六・二%)と最も多く、次いで青少年保護育成条例違反となっている。また、殺人、強姦等の凶悪犯罪の被害に遭った少年は四十二人で、統計を取り始めた十二年の七・〇倍に急増している。
 近年、児童虐待が大きな社会問題となっており、全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談の処理件数は、逐年増加傾向にあり、平成十三年度は二万三千二百七十四件となっている。虐待の内容では、身体的虐待が約五割と一番多く、次いでネグレクトが約四割、心理的虐待、性的虐待の順となっている。被虐待児童の年齢構成をみると、〇歳〜就学年齢以前の乳幼児が全体の半数を占めており、虐待が早期から始まっていることを示している。
 なお、平成十四年中に警察が検挙した児童虐待事件は百七十二件であり、検挙人員は百八十四人であった。被害児童は百七十九人であり、そのうち三十九人(二一・八%)は死亡していた。

第三章 青少年の教育

(学校教育人口)
 我が国における幼稚園から大学までの全学校の在学者数、いわゆる学校教育人口は、平成十四年五月一日現在二千九十七万二千人(男子一千八十六万八千人、女子一千十万四千人)となっており、総人口の一六・五%を占めている。
 在学者数の推移を学校種別にみると、小学校の児童数は、第二次ベビーブームに生まれた者の就学がピークを越えた昭和五十七年度以降減少し続けている。中学校の生徒数は、五十年度以降、五十四年度を除き増加していたが、六十二年度から減少に転じている。高等学校の生徒数は、平成元年度に過去最高となったが、その後は減少し続けている。幼稚園の園児数は、昭和五十三年度に過去最高となり、その後は六十三年度を除き減少し続けていたが、平成十四年度は増加している。また、大学の学生数は、昭和五十八年度以降増加し続け、平成十四年度には過去最高となった。短期大学の学生数は、平成五年度には過去最高となったが、その後は減少に転じている(第3図参照)。高等専門学校の学生数は、昭和五十四年度以後平成八年度まで増加し続け、いったん減少に転じたが、十一年度以降は増加し十四年度には過去最高となった。専修学校の生徒数は、平成四年度に過去最高となった後、十二年度まで減少していたが、十三年度に増加に転じている。各種学校の生徒数は、昭和四十四年度以後減少し続けている。
 小学校第一学年児童数に対する幼稚園修了者数の比率(いわゆる就園率)の推移をみると、昭和二十三年度の七・三%から年々上昇を続け、四十四年度に五〇%、四十八年度に六〇%を超え更に上昇を続け、五十四年度から五十六年度まで過去最高の六四・四%となったが、平成五年度以降は年々低下してきている。
 中学校卒業者のうち高等学校、高等専門学校等に進学した者(過年度中学校卒業者は含まない)の占める比率の推移をみると、昭和二十九年度に五〇%を超えてから年々上昇を続け、四十五年度には八〇%を、また、四十九年度には九〇%を超えた。平成五年度以降は九六%台で推移しており、十四年度は九七・〇%(男子九六・五%、女子九七・五%)となっている。
 また、大学・短期大学への進学率(当該年度の大学学部・短期大学本科への入学者数をその三年前の中学校卒業者で除した比率)は平成十四年度四八・六%となった。これを男女別にみると、男子四八・八%(大学四七・〇%、短期大学一・八%)、女子四八・五%(大学三三・八%、短期大学一四・七%)であり、女子の進学率は平成元年度以降十一年度まで男子を上回っていたが、十二年度以降は男子を下回った。

第四章 青少年の労働

(青少年労働力人口)
 平成十四年(年平均)の十五〜二十九歳の青少年人口は二千四百七十九万人で、このうち一千四百八十八万人(六〇・〇%)が労働力人口(十五歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの)である。総労働力人口(六千六百八十九万人)に占める青少年労働力人口の割合は二二・二%となっている。
(青少年の就業状況)
 平成十四年(年平均)の十五〜二十九歳の青少年就業者数は一千三百六十一万人で、前年と比べ七十一万人減少している。就業者総数(六千三百三十万人)に占める青少年就業者数の割合は二一・五%(前年の割合は二二・三%)である。
(青少年の失業状況)
 平成十四年(年平均)の十五〜二十九歳の青少年の失業者数は百二十五万人で、失業率は、十五〜十九歳が一二・八%、二十〜二十四歳が九・三%、二十五〜二十九歳が七・一%となっており、前年と比べると、十五〜十九歳で〇・六ポイント、二十〜二十四歳で〇・三ポイント、二十五〜二十九歳では〇・四ポイント上昇している。特に、近年で失業率が最も低い平成二年との比較では、全年齢の失業率が三・三ポイントの上昇であるのに対し、青少年では十五〜十九歳で六・二ポイント、二十〜二十四歳で五・六ポイント、二十五〜二十九歳で四・四ポイント上昇と高い水準で推移している。
(離職状況)
 平成十三年中に事業所規模五人以上の事業所から離職した三十歳未満の青少年労働者は二百九十五万五千人(男子百二十七万六千人、女子百六十七万九千人)となっており、離職率をみると、二六・一%(男子二〇・三%、女子三三・四%)で全労働者の離職率一六・九%(男子一三・九%、女子二一・六%)より高くなっている。これらの青少年労働者の離職理由についてみると、「個人的な理由」が男子七八・七%、女子八四・一%と最も高くなっている。
 新規学校卒業者の在職期間別離職率をみると、就職後一年間の離職率は、平成十三年三月卒業者の場合、中学校卒業者で四九・八%(男子四九・八%、女子四九・五%)、高等学校卒業者で二五・七%(男子二四・三%、女子二七・四%)となっている。また、十一年三月卒業者の離職状況により就職後三年間の動きをみると、中学校卒業者の離職率は一年目四五・四%、二年目一四・三%(累計五九・七%)、三年目八・八%(同六八・五%)となっており、高等学校卒業者では一年目二四・〇%、二年目一四・六%(同三八・六%)、三年目九・六%(同四八・三%)となっている。すなわち、中学校卒業者、高等学校卒業者のいずれも就職後一年目に離職する者の割合が高く、特に中学校卒業者については、四割を超えている。また、就職後三年間で、中学校卒業者では就職者全体の七割近くが離職し、高等学校卒業者でも五割近くが離職している。

第五章 青少年の非行等問題行動

(刑法犯少年)
 過去十年間に警察に検挙された非行少年の数の推移は、次のとおりである(第2表参照)。
 平成十四年の刑法犯少年は十四万一千七百七十五人(前年比三千百二十一人増(二・三%増))、刑法犯少年の人口比(同年齢層の人口一千人当たりの検挙人員をいう。)は一六・七(〇・七増)となった。また、刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は四〇・八%で、前年に比べ一・八ポイント減少した。
 刑法犯で検挙した人員・人口比の推移を現行少年法が施行された昭和二十四年以降についてみると、第4図のとおりである。
 刑法犯少年を包括罪種別にみると、窃盗犯が最も多く、次いで占有離脱物横領の順となっている。
 刑法犯のうちでも初発型非行(万引き、自転車盗、オートバイ盗、占有離脱物横領)は、単純な動機から安易に行われることが多いと考えられるが、これらは、粗暴犯や薬物乱用等の本格的な非行の入口ともなり、ゆるがせにできない。平成十四年の刑法犯少年のうち初発型非行で検挙した者の数は十万二千百三十四人で、刑法犯少年総数に占める割合は七二・〇%(一・四ポイント増)となっている。また、街頭犯罪(当分の間、ひったくり、路上強盗、車上ねらい、オートバイ盗、部品盗、自動車盗、自転車盗及び自動販売機荒しの八罪種をいう)の成人を含めた総検挙人員に占める少年の割合については、平成九年以降七割前後で推移しているが、十四年は六九・四%を占め、依然として高水準にある。
 刑法犯少年を年齢別にみると、十六歳が最も多く、次に十五歳、十四歳の順となっており、十四歳から十六歳までの低年齢層で刑法犯少年全体の六四・六%を占めている。
 刑法犯少年を学職別にみると、高校生が六万九百四十七人(四三・〇%)で最も多く、次いで中学生が三万八千十二人(二六・八%)となっている。
 刑法犯少年を男女別にみると、男子が十万七千百四十八人、女子が三万四千六百二十七人であり、前年に比べ、男子は一千五百三十七人(一・五%)、女子は一千五百八十四人(四・八%)それぞれ増加した。また、総数に占める女子の割合は、二四・四%と前年を〇・六ポイント上回った。
(道路交通法違反等)
 平成十四年に交通事故に係る業務上(重)過失致死傷で検挙された少年は四万百三十七人で、前年に比べ八十一人(〇・二〇%)減少した。
 平成十四年に道路交通法違反のうち、無免許、最高速度超過などの車両の運転に関する違反で検挙された少年は五十七万六百二十四人で、前年に比べ四万二百十六人(六・六%)減少した。
(問題行動の諸形態)
 平成十四年に覚せい剤事犯で検挙した少年は七百四十五人、シンナー等の乱用で検挙した少年は二千七百五十一人で、前年に比べいずれも減少した。一方、大麻事犯で検挙した犯罪少年は百九十人で、前年に比べ十四人(八・〇%)増加した。少年の薬物事犯のうちでは、シンナー等の乱用が依然として大半を占めている。
 平成十四年に凶悪犯で検挙した刑法犯少年は一千九百八十六人で、前年に比べ百四十一人(六・六%)減少した。罪種別にみると、強盗が一千五百八十六人と最も多いが、前年に比べ八十四人(五・〇%)減少した。また、殺人の検挙人員は、前年に比べ十九人(一九・二%)、強姦の検挙人員は二十五人(九・八%)それぞれ減少した。
 平成十四年に粗暴犯で検挙した刑法犯少年は一万五千九百五十四人で、前年に比べ二千四百六十二人(一三・四%)減少した。罪種別では、傷害による検挙人員が九千百四十人で最も多い。
 平成十四年に刑法犯で検挙した暴走族少年は三千三百八十二人で、前年に比べ五百五十八人(一四・二%)減少した。その罪種別検挙状況をみると、窃盗、傷害が高い比率を占めている。また少年のみによる強盗の検挙件数に占める共犯事件や集団事件の割合の推移をみると、共犯事件、集団事件ともに増加傾向にあり、平成十四年は共犯事件が七一・二%、集団事件が四三・八%を占めている。
 平成十三年度においては、いじめは、小学校においては一一・八%、中学校においては四〇・一%、高等学校においては二五・三%、盲・聾(ろう)・養護学校においては五・三%の学校でみられた。また、全公立小・中・高等学校及び盲・聾・養護学校を通じた一校当たりの発生件数は〇・六件となっている。いじめの発生件数を学年別にみると、小学校から学年が進むにつれて多くなり、中学一年生で最も多くなる。その後は学年が進むにつれて減少している。平成十三年度に発生したいじめのうち、小学校で約八七%、中学校で約八七%、高等学校で約九二%、盲・聾・養護学校では約九一%が同年度中に解消している。
 なお、平成十四年に警察が取り扱ったいじめに起因する事件の件数は九十四件、検挙・補導した少年(犯罪少年及び触法少年)は二百二十五人で、前年に比べ件数で十六件(一四・五%)、検挙・補導人員で六十三人(二一・九%)減少した。
 平成十三年度において、学校内で発生した暴力行為は、小学校では全学校の二・二%に当たる五百三十二校において一千四百六十五件、中学校では全学校の三三・七%に当たる三千五百十六校において二万五千七百六十九件、高等学校では全学校の四六・二%に当たる一千九百十四校において五千八百九十六件となっている。また、学校外で発生した暴力行為は、小学校では全学校の〇・五%に当たる百十五校において百六十五件、中学校では全学校の一九・〇%に当たる一千九百七十八校において三千六百十九件、高等学校では全学校の二三・〇%に当たる九百五十四校において一千三百十七件となっている。
 なお、平成十四年に警察が取り扱った校内暴力事件の事件数は六百七十五件で、前年に比べ百七十三件(二〇・四%)減少した。そのうち教師に対する暴力事件は四百十三件で、前年に比べ五十七件(一二・一%)減少した。
 平成十四年に性の逸脱行為・被害で補導・保護された少年は四千六百十五人で、前年に比べ二百六十一人(六・〇%)増加した。学職別にみると、高校生三九・三%、中学生三〇・九%、次いで無職少年が二一・八%等となっており、中・高校生の割合が七〇・二%を占めている。これを動機別にみると、「遊ぶ金が欲しくて」が四一・二%と最も多くなっている。
 平成十四年に少年相談や補導活動等を通じて警察が認知した少年による家庭内暴力の件数は一千二百九十一件で、前年に比べ二件(〇・二%)減少した。これを対象別にみると、母親に対するものが五八・九%と最も多く、次いで家財道具等一六・一%、同居の親族九・二%等となっている。
 平成十四年に警察が補導した不良行為少年(非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、家出等を行って警察に補導された二十歳未満の者)は百十二万二千二百三十三人で、これを態様別にみると、喫煙(四二・八%)や深夜はいかい(四二・四%)が多数を占めている。
 平成十三年度間に三十日以上学校を欠席した不登校児童生徒数は、小学生二万六千五百十一人、中学生十一万二千二百十一人で前年度間に比べ小学生は〇・五%増加、中学生は四・〇%増加となっている(第3表参照)。
 平成十四年に警察により発見、保護された家出少年は二万三千八百十五人で、前年に比べ二千四百十七人(九・二%)減少した。これを学職別にみると、中学生が全体の四〇・五%を占めて最も多く、次いで高校生が多くなっている。男女別にみると、女子が五七・三%を占め男子を上回っている。
 平成十三年に警察が把握した少年の自殺者は五百八十六人で、前年に比べ十二人(二・〇%)減少した。これを学職別にみると、高校生が最も多く、男女別にみると、男子が女子と比べて多くなっている。

第二部 青少年に関する国の施策

第一章 青少年行政の総合的かつ計画的な推進

 政府の推進する青少年行政の範囲は多岐にわたり、関係する行政機関は多数に及んでいる。内閣府では、青少年の健全育成に関する事項の企画・立案及び総合調整、関係行政機関の事務の連絡調整等を行っており、「青少年育成施策大綱」の策定等を通じて、青少年行政の総合的な推進に努めるとともに、各種の広報啓発活動や青少年育成国民運動の支援等を行い、国民的な取組の活性化を図っている。
(総合的な施策の推進)
 「国の青少年政策の基本となる計画(青少年プラン(仮称))を策定すべき」との平成十一年七月の青少年問題審議会答申の提言を踏まえ、平成十四年四月から、内閣官房長官の下で「青少年の育成に関する有識者懇談会」を開催し、十五年四月に報告書を取りまとめた。同懇談会の報告書の内容を踏まえ、「青少年育成施策大綱」(青少年プラン(仮称)改め)の策定に向けた作業を進めていくこととしている。
 関係省庁との密接な連携の下に青少年施策を総合的かつ効果的に推進するため、関係省庁の局長クラスの会議である「青少年育成推進会議」及びその下に置かれた課長クラスの各種連絡会議を開催するなど、施策の整合性の確保等を図っている。青少年育成推進会議においては、国の青少年行政の基本的方針等を盛り込んだ「青少年育成推進要綱」の申合せを行っている。また、その時々に特に注目される課題について取組方針の取りまとめ等を行っており、平成十四年十月には、「出会い系サイト」に係る児童買春等の被害を受ける年少者が急増していることを踏まえ、「「出会い系サイト」に係る児童買春等の被害から年少者を守るために当面講ずべき措置」の申合せを行った。
 平成十五年六月には、青少年育成の重要性にかんがみ、政府一体となりより強力に青少年施策を推進していくため、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚により構成される青少年育成推進本部を閣議決定により設置することとしている。
(青少年に関する研究調査)
 青少年の実態、意識、問題点等を究明するため、年度ごとにテーマを定め、大型の全国調査や国際比較調査である「特別研究調査」、青少年の非行防止に資するための「特定課題研究調査」等の研究調査を実施している。
(青少年育成国民運動)
 昭和四十年十一月に政府が国民の総力を結集した青少年健全育成のための運動を提唱したことから始められた青少年育成国民運動(「大人が変われば、子どもも変わる運動」等)に対する支援を行うとともに、毎年七月を「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」、十一月を「全国青少年健全育成強調月間」に定め、諸行事を集中的に実施することにより、青少年健全育成及び非行防止に対する理解を深め、青少年育成国民運動の一層の充実と定着を図っている。

第二章 青少年健全育成事業

(青少年の多様な活動の推進)
 平成十四年度からの完全学校週五日制の実施を契機として、「新子どもプラン」を策定し、関係省庁、民間団体等との連携のもと、地域の人材を活用した子どもの週末等の活動支援やボランティア活動等の奉仕活動・体験活動の総合的な推進を図っている。
 家庭や地域における子どもとのふれあいや話し合いの機会を充実するとともに、その重要性の理解を図るため、「[子どもと話そう]全国キャンペーン」を実施している。また、その一環として「子ども霞が関見学デー」を実施し、子どもたちに広く社会を知る体験活動の機会を提供している。
 平成十四年八月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」の規定に基づいた「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定されたことを受け、子どもの読書活動の推進のため、関連施策の一層の充実を図っていくこととしている。
 学校内外を通じたボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実を図るため、様々な取組を進めている。
 環境基本計画(平成十二年十二月閣議決定)に基づき、学校教育、社会教育その他の多様な場において、環境教育、環境学習等の推進、環境保全の具体的行動の促進や環境に関する情報提供の推進を図るための各般の施策を展開している。
(団体・グループ活動の促進)
 PTA、母親クラブ等の児童生徒の育成団体や、全国的な組織を持つ青少年団体が実施する自然体験活動や奉仕活動をはじめとする様々な体験活動や研究協議会が行う事業等に対して助成を行うとともに、青少年団体の指導者を対象とした研修を行い、団体・グループ活動の促進を図っている。
(文化活動の奨励)
 子どもたちが、文化活動に参加したり、優れた芸術文化や歴史的な文化の所産に触れることにより、豊かな人間性や多様な個性をはぐくむため、学校、地域社会や文化施設等の相互連絡を密にし、学校の内外における文化活動や鑑賞の機会を確保するための施策を実施している。
(体育・スポーツの普及・振興)
 昭和三十九年に政府により広範な国民運動として提唱された体力つくり国民運動を推進するとともに、毎年十月を「体力つくり強調月間」として提唱し、国民一般に健康・体力つくりを呼びかけるなどの運動を展開している。とりわけ、子どもの体力・運動能力は長期的に低下傾向にあることから、平成十四年九月の中央教育審議会答申「子どもの体力向上のための総合的な方策について」を受け、子どもがより一層体を動かすとともに、適切な生活習慣・スポーツ習慣を身に付けるため「体力向上キャンペーン等事業」と「スポーツ・健康手帳の作成・配布等」を行うこととしている。
 また、「体育」・「保健体育」や運動部活動などを通じての学校の体育・スポーツ活動の充実に取り組むとともに、青少年も含めて国民の誰もが生涯の各時期にわたり、いつでもどこでもスポーツに親しむことのできる「生涯スポーツ社会」の実現に向けた取組を進めている。
(健全育成施設の整備、青少年指導者の養成と確保)
 青少年の学習や活動の場となる社会教育施設、スポーツ施設、勤労青少年福祉施設、児童厚生施設、都市公園・自然公園、旅行・観光施設等の整備や学校体育施設の開放を進めるとともに、社会教育指導者、スポーツ指導者、勤労青少年指導者、児童健全育成指導者、農林水産業関係指導者、青少年育成国民運動推進指導員・青少年育成国民運動推進員等の青少年指導者の養成と確保に努めている。

第三章 家庭に関する施策

(家庭教育の振興)
 平成十四年七月の「今後の家庭教育支援の充実についての懇談会」報告等を踏まえ、子育て講座など家庭教育に関する学習機会の拡充、「子育てサポーター」・「家庭教育アドバイザー」の配置の拡大、相談体制の充実、「家庭教育手帳」・「家庭教育ノート」の作成・配布などを通じて、家庭教育を支援している。
(家庭児童健全育成事業)
 児童相談所をはじめ、家庭児童相談室、児童委員、保健所、児童家庭支援センター、保育所等において、家庭や児童に対する相談・支援活動を行っている。
(社会的援助を必要とする児童・家庭への福祉等)
 養護に欠ける児童の自立の支援や保育に欠ける児童のため、平成十四年度に里親制度の改正を行うとともに、乳児院、児童養護施設、保育所等の整備・充実を図っている。
 児童虐待を防止し、すべての児童の健全な心身の成長、自立を促していくため、発生予防から早期発見・早期対応、保護・支援・アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な支援を講じている。
 母子家庭の福祉対策のための施策、母子保健・小児保健のための施策、障害児の福祉施策等を講じている。

第四章 学校教育に関する施策

(完全学校週五日制の実施)
 学校週五日制は、平成四年九月から月一回、七年四月からは月二回という形で段階的に実施してきたが、学習指導要領の改訂など所要の制度改正を行った上で十四年四月からは完全学校週五日制が実施されている。
(幼児教育の振興)
 平成十三年三月、今後の幼児教育の振興に関する施策の効果的な推進を図るための総合的な実施計画である「幼児教育振興プログラム」を策定し、十三〜十七年度を計画実施期間として、幼稚園の教育活動・教育環境の充実、幼稚園における子育て支援、小学校や保育所との連携などの施策を展開している。
(義務教育の充実)
 平成十四年四月から実施されている新学習指導要領を実施していく上で、「心の教育」の充実と「確かな学力」の向上とを二つの大きな柱として政策を進めている。「心の教育」の充実については、子どもたちが身につける道徳の内容をわかりやすく表した「心のノート」をすべての小・中学生に配布するとともに、地域の人材等を「心のせんせい」として学校に派遣する事業などを展開している。また、各学校における「確かな学力」の向上のための取組の参考となるように、指導に当たっての重点等を取りまとめた「学びのすすめ」を十四年一月に公表するとともに、十五年度からは、@個に応じた指導の充実、A学力の質の向上、B個性や能力の伸長、C英語力・国語力の向上を柱とした「学力向上アクションプラン」に取り組んでいる。
 「e−Japan重点計画」等に基づき、平成十七年度を目標に、すべての教室の授業においてコンピュータやインターネットを活用できる環境を整備することを目指し、教育用コンピュータ整備、インターネットへの接続、教員研修の充実、教育用コンテンツの開発等の施策に取り組んでいる。
 初等中等教育における理科教育については、新学習指導要領においても改善を図るとともに、科学技術・理科教育の充実のための施策を総合的・一体的に推進する「科学技術・理科大好きプラン」を実施している。
 児童生徒の問題行動等に対応するため、スクールカウンセラーの配置の拡充等の取組を行っている。また、「不登校問題に関する調査研究協力者会議」を発足させ、平成十五年三月に今後の不登校への対応の在り方について取りまとめるとともに、十五年度から、不登校への早期対応と、家庭にいる児童生徒についての学校復帰の支援を行う、地域ぐるみのネットワークを整備するための新規事業(「スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)」)を実施している。さらに、十三年七月には、出席停止制度について、要件・手続の明確化、出席停止期間中の児童生徒への学習等の支援を内容とする学校教育法の改正を行い、問題を起こす児童生徒への適切な対応を図ったほか、「サポートチーム等地域支援システムづくり推進事業」を実施するなど、施策の充実に努めている。
 児童生徒の喫煙、飲酒、薬物乱用の問題や性に関する指導、学校歯科保健指導等については、教師用参考資料を作成・配布するとともに、教員に対する研修会等を開催するなど、指導の充実を図っている。
(高等学校教育の改善・充実と中高一貫教育の推進)
 高等学校教育の改善・充実のため、総合学科や単位制高等学校など、新しいタイプの高等学校の設置をはじめとする特色ある学校、学科・コースの設置を推進している。また、多様な科目の開設などにより、生徒の選択を中心としたカリキュラムづくりを進めている。
 平成十一年四月より中高一貫教育の導入が可能となったことを踏まえ、十年度から各都道府県等に対する研究事業の委嘱、「中高一貫教育推進フォーラム」の開催、リーフレットの作成・配布、また十三年度からは、既設の中高一貫教育校を対象とする中高一貫教育開発指定校事業を各都道府県等に委嘱するなど、中高一貫教育の積極的な推進を図っている。
 高校生が学習内容や将来の進路選択等に関連した就業体験を行うことは、高い教育効果が期待されることから、平成十一年度から教育界、産業界の関係者を集め、全国フォーラムを開催するなど、インターンシップの積極的な推進に取り組んでいる。
(障害のある児童生徒一人一人のニーズに応じた教育)
 障害の種類・程度等に応じ、特別の教育課程、少人数の学級編成、特別な配慮の下に作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等により指導が行われている。近年、児童生徒の障害の重度・重複化がみられること、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育的対応が求められることなど、障害のある児童生徒の教育を取り巻く最近の動向を踏まえ、平成十五年三月に取りまとめられた「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の最終報告の提言の実現に向けて施策の充実、制度の検討を行うこととしている。
(高等教育の充実と改革)
 進学率の上昇、学術研究の高度化、国際化・情報化の進展、十八歳人口の減少、社会全体の学習ニーズの高まりなど、様々な状況の変化に直面しており、中央教育審議会大学分科会での審議等を中心に、高等教育の多様化や制度の弾力化など、高等教育改革の推進に取り組んでいる。
(専修学校教育の振興等)
 産業構造の変化や急速な技術革新の進展に伴い、専修学校が果たす社会的役割の重要性を考慮し、専修学校教育の振興を図るため種々の施策を講じている。平成十五年度から、社会が求める即戦力となる人材の養成を図るため、e−ラーニングの活用や学校間の遠隔教育等、緊急に対応すべき課題に迅速に応えるための新しい教育方法等の研究開発を推進する「専修学校先進的教育研究開発事業」を新たに実施する。

第五章 職場に関する施策

(新規学校卒業者の雇用に関する施策)
 新規学校卒業者がその適性と能力に応じた職業選択を行い、良き職業人、社会人として成長できるよう、職業安定機関は、学校等の教育機関及びその他の関係機関との緊密な連携の下に職業指導、職業紹介を行っている。また、高校生を対象としたジュニア・インターンシップを実施するとともに、平成十四年度においては、新規中学校、高等学校卒業者の厳しい雇用状況を踏まえ、未内定者に対する就職支援を行うジョブサポーターを配置し、学校と連携の下、求人開拓やマンツーマンの就職支援の強化を図っている。
 学生等が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行ういわゆるインターンシップについては、平成十三年十二月からインターンシップ受入企業開拓事業を経済団体に委託し実施している。大学等卒業予定者の就職採用活動については、大学側が「大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職について(申合せ)」を、企業側が「新規学卒者の採用・選考に関する企業の倫理憲章」をそれぞれ定め、双方が各大学等・企業へ十分周知し、尊重するというルールで就職・採用活動が行われている。
(勤労青少年の福祉に関する施策)
 勤労青少年の福祉対策は、勤労青少年福祉法、勤労青少年福祉対策基本方針等により、総合的かつ計画的に推進されている。
(青少年労働者の職業能力の開発に関する施策)
 青少年労働者の雇用をめぐっては、@高い失業率、A高水準の未就職卒業者数、B早期離職の増加、Cフリーターの増加等の問題等があり、今後、青少年労働者自体の知識社会への不適応、さらには産業全体が必要な人的資源を確保し得なくなり、ひいては高失業化への大きな懸念があることから、キャリア形成が適切に行えるよう、従来から実施してきた、事業主等が行う教育訓練に対する支援、公共職業訓練の推進、職業能力評価制度の整備を含む、総合的な支援を行っている。
(農山漁村青少年の育成に関する施策)
 農山漁村青少年の育成のためには、都道府県等の行う研修教育をはじめとする各種事業への助成等を行っている。

第六章 社会環境の整備に関する施策

(有害環境の浄化等)
 青少年を取り巻く社会環境のうち、とりわけ青少年の健全な育成に有害であると認められるものについては、関係業界による自主規制、住民の環境浄化の地域活動、風適法(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)や地方公共団体の青少年の保護育成に関する条例等による規制・取締り等の対応策が講じられている。関係業界に対しては、青少年育成推進会議や関係省庁等が自主規制等の要請を行っている。
 児童買春・児童ポルノ法違反や児童福祉法違反等の福祉犯は、少年の心身に有害な影響を及ぼし、健全な育成を著しく阻害することから、その積極的な取締りと被害少年の発見保護に努めている。
 「出会い系サイト」を利用した犯罪については、積極的な取締りに努めるとともに、犯罪被害防止のための広報啓発活動をはじめ、プロバイダやサイト管理者に対し、児童の利用防止のため表示を行うなどの協力要請を行っている。
(青少年の人権擁護)
 青少年の基本的人権が尊重されるような環境をつくるとともに、青少年自らが正しい人権尊重思想を身に付け、心身ともに健全で、有為な社会の一員として育成されるよう、広報啓発活動や人権侵犯事件の調査・処理等の諸施策を講じている。
(青少年の事故防止対策等)
 交通事故、乳幼児の事故、乳児・児童等の犯罪被害、水難・山岳事故といった青少年の事故防止対策や、環境保全対策に努めている。

第七章 少年の非行防止と非行少年の処遇

(少年非行の防止活動)
 少年の非行防止のため、「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」等の各種月間を通じて、青少年の規範意識の醸成や社会環境の浄化を図ることをはじめとした諸施策及び諸活動を集中的に実施している。また、少年補導センター、少年サポートセンター、少年補導員協議会、母の会等の地域における非行防止組織が、それぞれの立場と特性をいかしながら街頭補導、少年相談、有害環境の浄化等の活動を行っている。
(非行少年の処遇)
 非行少年については、その健全な育成を目指して、警察、検察庁、家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、少年刑務所、地方更生保護委員会、保護観察所等の多くの機関が、それぞれの段階に応じた処理、処遇を行っている。
(青少年の覚せい剤等の薬物乱用対策)
 青少年による薬物乱用の根絶を図るため、薬物乱用防止教室の実施、薬物乱用防止教育の充実、広報啓発活動の徹底、取締りの強化等関連施策の充実に努めている。

第八章 国際交流に関する施策

(青少年の国際交流)
 内閣府では、国際青年育成交流事業、日本・中国青年親善交流事業、日本・韓国青年親善交流事業、世界青年の船事業、東南アジア青年の船事業、二十一世紀ルネッサンス青年リーダー招へい事業、国際青年の村事業等の青年国際交流事業を実施している。なお、平成十四年度から社会活動の中核を担う青年リーダーの育成を目標に、「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」を開始した。
 外務省では、海外青年を招へいする事業である短期青年招へい及び長期青年招へい事業を実施するとともに、ASEAN諸国等の青年を招へいする事業である「二十一世紀のための友情計画」を実施している。また、政府ベースの技術協力の一環として、青年海外協力隊派遣事業を実施しており、平成十五年三月末現在、六十六か国に対し二千三百十五名を派遣中である。
 文部科学省では、二十一世紀初頭における十万人の留学生受入れを目指す「留学生受入れ十万人計画」に基づき、渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進している。平成十四年五月一日現在、我が国の留学生受入れ数は九万五千五百五十人となり、本年にも「留学生受入れ十万人計画」が達成される見込みとなり、ポスト十万人計画を含めた新たな留学生政策について検討しているところである。
 我が国における外国語教育の充実を図るとともに、地域レベルでの国際交流の進展を図るため、「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を実施しており、平成十四年度は、世界三十八か国から外国語指導助手、国際交流員及びスポーツ国際交流員として六千二百七十三人の外国青年を招致している。





十一月の気象


 十一月には太平洋高気圧も東の海上に後退し、代わって大陸の高気圧が日本付近に張り出してきます。この大陸の高気圧が移動性高気圧となって日本付近を覆うと暖かく穏やかな「小春日和」となりますが、大陸の高気圧が寒気を伴って優勢になると西高東低の冬型の気圧配置となり、時には季節はずれの大雪となることもあります。十一月は天候の変化や寒暖の変動が大きい季節ですから、山や海へ行楽に出かける際には天気予報や警報・注意報、気象情報などに注意する必要があります。

◇カエデの紅葉
 十一月は山の紅葉が里へ降りてくる時期です。各地の気象台や測候所では生物季節観測として、毎年カエデの紅葉日(木が全体として紅色となり、緑色系統の色がほとんど認められなくなった日)を記録していますが、一九七一年から二〇〇〇年までに観測された平均的な紅葉日の分布をみると、北から南へ紅葉が南下し、また山から里へ紅葉が移る様子が示されています。札幌のカエデの紅葉平年日は十月二十三日、仙台十一月十一日、東京十一月二十八日で、大阪では十二月三日となっています。

◇イチョウ黄葉日と秋の気温の経年変化
 カエデと同様にイチョウも生物季節観測の種目となっています。東京のイチョウ黄葉日と秋(九月〜十一月)平均気温の経年変化をみてみましょう。イチョウの黄葉する日は、各年の気温の高低にほぼ応じて変動している様子がみて取れます。また、この期間のイチョウの黄葉日は遅くなる傾向にあり、これには地球温暖化や都市化等による秋の気温の上昇傾向が影響している可能性があります。カエデでも同じように紅葉が遅くなる傾向がみられます。
(気象庁資料から転載)




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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査平成十五年七月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十五年七月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は四十万千九百四円、前年同月比一・九%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十七万八千七百十六円、前年同月比〇・一%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万六百九十一円、前年同月比〇・一%減、所定外給与は一万八千二十五円、前年同月比は四・六%増であった。
 また、特別に支払われた給与は十二万三千百八十八円、前年同月比は六・二%減であった。
 実質賃金は、一・六%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に不動産業二・九%増、金融・保険業二・二%増、建設業及び製造業〇・八%増、電気・ガス・熱供給・水道業前年同月と同水準、運輸・通信業及びサービス業〇・二%減、卸売・小売業,飲食店〇・七%減、鉱業四・五%減であった。

◇労働時間の動き

 七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十七・六時間、前年同月比〇・四%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十七・八時間、前年同月比〇・七%減、所定外労働時間は九・八時間、前年同月比四・三%増、所定外労働時間の季節調整値の前月比は〇・七%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十四・八時間、前年同月比七・二%増、季節調整値の前月比は一・八%増であった。

◇雇用の動き

 七月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・六%減、常用労働者のうち一般労働者では一・三%減、パートタイム労働者では一・八%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは鉱業一・八%増、サービス業一・〇%増、運輸・通信業〇・三%増であった。前年同月を下回ったものは卸売・小売業,飲食店〇・五%減、不動産業一・二%減、製造業一・九%減、建設業二・五%減、金融・保険業二・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業四・三%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・五%減、パートタイム労働者一・三%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・七%減、パートタイム労働者二・四%増、サービス業では一般労働者〇・五%増、パートタイム労働者三・〇%増であった。











歳時記


カキ

 秋から冬にかけては、なべ物のおいしい季節です。材料がバラエティーに富み、栄養もたっぷりなので、健康食として人気上昇中です。なべを囲めば、なごやかな語らいも楽しめます。
 なべ物の代表格の一つが、カキなべです。すき焼きやトリなべはいつでも食べられますが、カキは英語の月名でRがつかない月、つまり五月から八月の間は食べられないといわれています。この時期、つまり夏にカキを敬遠するのは、産卵期で味が落ちることと、暑いので鮮度を保ちにくいことからきたようです。それだけに、秋はカキが好きな人にとって、待ち遠しい季節です。
 しかし最近は、冷凍物があるので、カキ料理の専門店などでは、夏でもカキを食べさせています。また、東北方面などでは、天然物の夏ガキが食べられます。
 カキは二枚貝の一種ですが、殻はハマグリやアサリとは異なり、二枚の深さが違います。俗にこの貝の一枚を身殻、もう一枚を蓋(ふた)殻と呼んでいます。
 カキをはじめとしたいろいろな水産物が、秋から冬に旬(しゅん)を迎えます。また、秋は、農産物にとっても実りのシーズンです。




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消費支出(全世帯)は実質三・九%の減少


―平成十五年七月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十五年六月に実質増加となった後、七月は実質減少となった。
 内訳をみると、住居、被服及び履物、教育などが実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十四年一月以降三か月連続の実質増加となった後、四月以降十六か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十五年六月に実質増加となった後、七月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万二千六十五円となり、前年同月に比べ、名目〇・三%の減少、実質〇・〇%となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質五・七%の減少となった。
 また、勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質六・九%の減少となった。












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月例経済報告(十月)


―景気は、持ち直しに向けた動きがみられる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。
 ・設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
 ・輸出は持ち直し基調にあり、生産は横ばいとなっている。
 ・個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 ・雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。
 日本銀行においては、金融機関保有株式の買入れ措置を平成十六年九月末まで延長した。また、十月十日、日本銀行当座預金残高の目標値の上限を引き上げ、二十七〜三十二兆円程度とすること等を決定した。政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、消費者マインドがこのところ持ち直していることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、七月に大きく減少した反動もあり、八月は前月に比べて増加している。
 個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて大幅に増加した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、前月に比べて増加した。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、天候不順の影響から減少が続いている。新車販売台数は、引き続き前年を下回った。家電販売金額は、DVDやデジタルカメラなどの売れ行きが好調であることに加え、主力商品であるパソコンに動きがみられたことから、前年を上回った。旅行は、国内旅行は引き続き前年を上回った。海外旅行は引き続き大幅に減少しているが、減少幅は縮小している。
 先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、家計の所得環境が改善していけば、個人消費にも徐々に持ち直しの動きが出てくるものと期待される。

◇設備投資は、増加している。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成十四年十〜十二月期に持ち直しに転じ、増加基調にある。また、ソフトウェア投資は、持ち直しの動きがみられる。
 日銀短観によれば十五年度設備投資計画は三年ぶりに全規模全産業で増加に転じ、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、先行指標をみると機械受注は基調としては持ち直しており、建築着工床面積はおおむね横ばいとなっている。先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 平成十四年度の住宅建設は、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、二年連続で百二十万戸を下回る低い水準となった。
 総戸数は、平成十五年度に入って、おおむね横ばいで推移してきたが、六月は一時的に増加して年率百二十六万八千戸となった後、貸家を中心に二か月連続で反落し、八月は年率百六万一千戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向かえば、住宅着工は底堅く推移していくことも期待される。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 平成十五年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、公共工事受注額、公共工事請負金額及び大手五十社受注額は、平成十五年四〜六月期も、前期に引き続き、前年を下回った。
 七〜九月期の公共投資については、七月、八月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。
◇輸出は、持ち直し基調にある。輸入は、増加基調にある。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
 輸出は、このところ船舶等輸送用機器が減少しているものの、基調として持ち直している。地域別にみると、アジア向け輸出は、SARSの影響が終息し、中国、NIEs向け輸出が機械機器を中心として持ち直していることから、全体としては緩やかに増加している。アメリカ向け輸出は、自動車の現地生産の高まりから輸送用機器が足元で減少しているものの、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、輸送用機器が増加しており、下げ止まりつつある。先行きについては、世界の景気回復に明るさが増していることに伴って、緩やかに増加していくものと考えられるものの、最近の為替レートの動向には留意する必要がある。
 輸入は、機械機器や食料等が足元で大きく減少したものの、設備投資が増加していること等から、基調としては増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、足元で鉱物性燃料や繊維製品を中心に減少したものの、基調としては増加している。アメリカからの輸入は、航空機等の機械機器を中心に、このところ減少している。EUからの輸入は、月々の振れが大きくなっているが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。
 国際収支をみると、輸入数量が増加基調にある一方、輸出数量が持ち直し基調にあること、海外旅行客の減少等に伴いサービス収支の赤字幅が縮小していることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、横ばいとなっている。
 鉱工業生産は、情報化関連生産財が堅調に推移しているものの、全体として横ばいとなっている。在庫は低水準となっており、企業は在庫積み増しに慎重になっている。
 先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるほか、アメリカの景気回復の勢いが増していることから、輸出を通じて生産は持ち直しへ向かうものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、九月、十月ともに増加が見込まれている。
 また、第三次産業活動は、横ばいとなっている。
 また、農業生産の動向をみると、低温、日照不足等の影響により水稲の作況指数(九月十五日現在)は「九二」と平年を下回っている。

◇企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力や売上高の増加等を背景に、平成十五年四〜六月期においても前年比で増益が続いており、季節調整済前期比でみても増益に転じた。「日銀短観」によると、十五年度は引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、十五年度上期・下期とも前年比二桁の増益見込みである。一方、非製造業は十五年度上期に減益に落ち込むものの、下期には前年比二桁の増益に転じる見込みである。規模別でみると、大企業・中小企業とも増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、製造業では引き続き改善がみられるほか、非製造業でも改善がみられる。先行きについては、全産業で改善が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、八月は、前月比〇・二%ポイント低下し五・一%となった。失業者数は減少したが、就業者数も減少した。
 新規求人数は、増加傾向となっており、有効求人倍率も緩やかに上昇している。また、雇用者数も増加傾向となっている。製造業の残業時間についても、増加傾向となっている。企業の雇用過剰感は低下傾向にある。
 賃金の動きをみると、八月の定期給与は前年同月比では微減となったものの、前月比では微増となった。また、夏季賞与を六〜八月の特別給与でみると、前年比ほぼ横ばいとなっており、賃金の基調としては、横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 国内企業物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電気機器などが引き続き下落しているが、下落していた石油・石炭製品が七月より上昇に転じているほか、非鉄金属、鉄鋼などが上昇している。また、輸入物価(円ベース)は、堅調な原油価格の影響等により、緩やかに上昇している。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、下落していた石油製品が横ばいとなり、全体として前年比下落幅はおおむね横ばいで推移している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移しているが、このところ企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、八月には外食が前年比上昇に転じている。また、公共料金は、前年比で上昇している。
 なお、国内企業物価・消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまる可能性があることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇為替レートは、対米ドルで円高となった。株価は、おおむね一万円台(日経平均株価)で推移している。
 対米ドル円レートは、八月以降の円高傾向の中で、九月下旬以降一段と円高が進み、百九円台となった。株価は、四月下旬以降上昇し九月中旬に年初来最高値を記録した後、一万円台(日経平均株価)で推移している。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は九月上旬にかけて一・六%台まで上昇したが、その後低下し、一・三%台となった。企業の資金繰り状況におおむね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドはやや拡大している。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一七・九%)が続いている。M+CDは、昨年末以降伸び率が鈍化しているものの、このところやや持ち直している。

四 海外経済

◇アメリカ、中国を中心に、世界の景気回復に明るさが増している。
アメリカでは、景気は着実に回復している。
 減税パッケージの効果により、消費は増加している。また、生産は緩やかに増加し、設備投資が持ち直すなど、企業部門の回復が続いている。生産性上昇率は高く、企業収益を支えている。これらにより、年後半に四%台の高成長を達成するとの見方が一般的となっている。
 一方で、雇用は、このところ持ち直しの動きもみられるものの、失業率は高水準にあり、先行きは不透明となっている。これらを背景に消費者マインドは低下しており、消費の先行き懸念材料となっている。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いているが、韓国の景気は後退している。
 中国では、消費の堅調な増加や生産、投資の高い伸びから景気は拡大が続いている。タイでは、消費、投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費や輸出の弱い動きから景気の拡大はさらに緩やかになっている。台湾では、消費、輸出が増加するなど、景気に持ち直しの動きがみられる。韓国では、消費や設備投資が減少し景気は後退している。シンガポールでは、投資の大幅な減少が続くなど、景気は低迷している。

◇ユーロ圏の景気は弱い状態となっており、イギリスでは、景気に持ち直しの動きがみられる。
 ユーロ圏では、昨年秋以降のユーロ高を原因とする輸出の減少などから、生産は減少傾向にあり、景気は弱い状態となっている。一方で、アメリカの成長率の高まりなどを背景にアメリカ向け輸出が今後増加するとの見通しなどから、企業マインドは改善している。ドイツでは、個人消費が減少しており、景気は後退している。フランスでは、消費が弱含んでおり、生産が減少傾向にあるなど、景気は弱い状態となっている。
 イギリスでは、消費と住宅投資が増加しており、景気に持ち直しの動きがみられる。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、アメリカの株価は、九月下旬にこれまでの急速な株価上昇に対する慎重な見方等から一時弱含んだものの、その後上昇している。アジア、ヨーロッパでも、主要株価は、九月下旬に弱含んだものの、その後上昇している。海外の長期金利は、九月は低下基調で推移したが、十月に入って上昇している。ドルは、九月中旬以降減価基調で推移し、下旬のG7声明で為替レートのさらなる柔軟性が望ましい旨が盛り込まれた。
 原油価格は、九月下旬にかけて下落基調で推移したが、OPEC総会の減産決定を受け上昇した。



    <11月12日号の主な予定>

 ▽通商白書のあらまし…………経済産業省 

 ▽景気予測調査(八月)………財 務 省 




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