官報資料版 平成15年12月10日




                  ▽平成十五年版厚生労働白書のあらまし………厚生労働省

                  ▽労働力調査(八月)……………………………総 務 省

                  ▽月例経済報告(十一月)………………………内 閣 府

                  ▽家計収支(八月)………………………………総 務 省











平成15年版


厚生労働白書のあらまし


―活力ある高齢者像と世代間の新たな関係の構築―


厚生労働省


1 平成十五年版厚生労働白書の主題

 平成十五年版厚生労働白書が去る八月一日に閣議に報告され、公表された。今回の白書は、「活力ある高齢者像と世代間の新たな関係の構築」をテーマとした。
 現代の高齢者は、公衆衛生や医療技術の進歩により、過去に比べ長い期間を健康に過ごすことが可能になっているが、いかにこの長い期間を介護等の不安がなく、いきいきと過ごすことができるかが課題となっている。一方、現役世代は、核家族化や地域のつながりの希薄化など家族をとりまく環境が変化する中で、子育て等にさまざまな課題を抱えるようになっている。
 そこで、平成十五年版厚生労働白書では、活力ある高齢者像と世代間の新たな関係の構築を探ることとした。その結果、
 @高齢者の方々については、過去と比べれば経済面などで恵まれてきている反面、人間関係は希薄であり、生きがいのための社会活動や就業の機会も十分とはいえないこと
 A現役世代は子どもとふれあう時間もないほど仕事が多忙であり、子育てや出生等にも影響を及ぼしている可能性があることなど
を明らかにしている。
 厚生労働省としては、このような結果を踏まえ、
 @高齢者や若年者にはもっと雇用機会が確保され、子育て世代にはもう少しゆったりとした働き方ができるような「世代間ワークシェアリング」の実現
 A介護、子育て、世代間交流等での高齢者の地域福祉活動の促進
により、高齢者自身の生きがいを高めるとともに、子育て等現役世代が抱える問題の軽減に資するような世代間の新たな支え合いの仕組みを築いていくことが重要だと考えている。

2 平成十五年版厚生労働白書の概要

第1部の概要

序章 高齢者・現役世代を含めた環境変化と分析の視点

【序章の要点】
・末子結婚後二十年という長くなった期間をいかにいきいきと過ごせるかが高齢者にとって重要である。
・こうした高齢者の活力を現役世代が子育て等で抱える問題の解決に活かしていく方策を探ることが本白書の主題である。

 我が国における男女の平均的な生涯を三世代にわたってみてみると、定年退職や末子結婚後の期間が長期化している。一九七一年生まれのいわゆる団塊ジュニアの世代では、末子結婚後の期間が男性で約十七年、女性で約二十七年にもなる見込みで(第1図参照)、これらの長い年月をいわば「第二の現役期」としていきいきと過ごせるかどうかは、現在の高齢者のみならず、やがて高齢者になるすべての年齢層にとっても大きな関心事である。
 また、現在五十歳代後半にさしかかっている「団塊の世代」が後期高齢者に移行するまでの二十年弱の間は、前期高齢者などの相対的に元気な層が増大していくことが見込まれており、活力ある高齢者像が求められている。
 一方、現役世代は家族形成という大事な局面において、仕事が忙しくて家庭を顧みる余裕もない上に、核家族化や地域のつながりの希薄化の下で、子育てに対する支えが不足し子育て等でさまざまな問題を抱えるようになっている。こうした中、高齢者の活力を現役世代の抱える問題の解決に活かしていくことができれば、高齢者自身の生きがいにつながると同時に「世代間の新たな支え合いの構図」を描いていくことができるのではないだろうか。

第1章 高齢者をとりまく現状・課題

【第1章の要点】
・高齢者の経済状況は相対的に改善しており、健康に対する意識も高いが、都市部・被用者・男性を中心に地域とのつながりが希薄である例が目立つ。
・高齢者の就労、社会貢献活動への参加は健康・生きがいづくりにつながっている。
・介護保険制度の施行後、介護サービス利用量は全体として大幅に増加している。今後は、個々人の尊厳が尊重され、残っている能力が最大限に発揮されるよう「個別ケア」が重要となる。

第1節 高齢者のいる世帯の状況、高齢者の生活実態等

1 高齢者のいる世帯の状況
 この約二十年間に高齢者の子どもとの同居率はほぼ一貫して低下している。二〇〇二年には子どもと同居していない高齢者は、一千百七十九万人、一人暮らしの高齢者は三百四十一万人と、この十年でそれぞれ二倍近くに増えている。こうした高齢者のみの世帯が増加している背景には、第2図のように「子どもが近くにいれば別居でもよい」と考える等子どもとの同居を必ずしも望まない高齢者が増加していることが考えられる。所得の低い高齢者ほど同居志向が高い傾向にあることから、同居意識の変化の背景には、年金の充実等による高齢者の経済的自立が考えられる。

2 高齢者の生活実態等
 高齢者の経済状況では、再分配後の高齢者世帯平均所得が全世帯平均所得の約六四%(一九九八年)にまで上昇するなど世代間の経済格差は改善されている。
 また、日本人の平均寿命は世界最高水準に達しており、本格的な人生八十年時代が始まっている。健康で活動的に過ごすことのできる期間に着目した「健康寿命」でみても、六十歳以降に健康で過ごせる期間は男性一七・一年、女性二〇・七年と世界保健機関(WHO)加盟国中第一位となっており、現在の高齢者は過去と比べ、健康的にも経済的にも恵まれてきている。
 一方、高齢者が友人、近所の人や親戚と会ったり出掛けたりする頻度をみると、女性の方が他人との付き合いが活発であり、かつ、男女の差は拡大してきている(第3図参照)。また、地域別では都市部でお茶や食事を一緒にしたり、相談をしたりといった比較的深い付き合いが少なくなっており、職業別では自営・家族従業者で近所付き合いの程度は比較的密接である一方、被用者では、全般的に無職の者よりも近所付き合いの程度が希薄になっている。近所付き合いの程度を諸外国と比較すると、我が国では、友人や近所の人と話をしない傾向が大きく、ほとんど付き合いのない男性の割合は三割を超えている。
 しかし、高齢期になって仕事を引退するような年齢になると、地域や友人との交流など、仕事ではなく他の場面で生きがいを積極的に求めようとする傾向もみることができ、高齢期にいきいきとした生活を送るためには、仕事を引退する前から引退後を考える必要があるといえる。

第2節 いきいきとした「第二の現役期」のための条件

1 高齢者の就業・社会参加と生きがい・健康との関わり
 社会的活動に参加している高齢者の六割がその目的の一つを「生きがいを持つため」とし、四割が「心身の健康のため」としている。高齢男性の就業状況と喫煙、問題飲酒、健康診断未受診等の望ましくない生活習慣の保有率との関係をみると、非就労者の方が就労者よりもこうした望ましくない生活習慣の保有率が明らかに高くなっているなど高齢者の就業・社会参加は生きがい、健康づくりに大きく寄与している。

2 高齢者の就業について
 しかし、昨今の経済情勢の悪化により雇用機会が限られていることなどから高齢者の労働力率の低下がみられ、就業を希望していたが「適当な仕事が見つからなかった」ため就業できなかった者の割合が増えているなど、高齢者の高い就業意欲は十分に活かされていないのが現状である(第4図参照)。

3 高齢者のボランティアその他の社会的活動への参加について
 高齢者の社会参加のうち、ボランティアやその他の社会的活動への参加についても、高齢者の参加意欲は高く、ボランティア活動に従事する者の年齢別割合をみると、六十歳代以上が五一・七%と過半数を占めている。女性は主婦層を中心として四十歳代前後から、男性は定年退職後からボランティア活動を始める場合が多く、六十歳代以上に占める男性の割合はほぼ三分の一となっている。しかし男性については、定年退職後にボランティア活動に従事したいという希望があるものの、一般的には、会社勤めをしている間には地域との交流がほとんどない層が多いために、退職した後にどのようにしてボランティア活動を行っていいか分からない場合が多いという指摘もある。
 こうしたことから、高齢者の社会参加意欲を十分に活かすためには、
 @年齢にかかわりなく、各人の有する能力が明確かつ公正な基準で評価され、雇用・処遇されるための賃金・人事制度や採用・退職に関わる条件整備を行うこと
 A若い時を含め、個人の生涯におけるそれぞれの段階に応じた多様な働き方の確立や、複線型の人生設計が可能となるように従来の働き方そのものを見直すこと
 B地域のボランティア活動に参加するきっかけを提供するとともに、これまで培った知識・経験を活かしてボランティア活動に従事することを支援する取組
が重要だといえる。

第3節 高齢者介護問題への対応の現状と課題

1 要介護者をとりまく現状等
 六十五歳以上の要介護者等と同居している主たる介護者の高齢化が進み、女性で四分の一程度、男性では四割以上が七十歳以上となっている(第5図参照)。
 主たる介護者の介護時間は「ほとんど終日介護」という回答が二〜三割となっており、介護に関する負担の大きさがうかがわれる。

2 介護保険制度の施行状況等
 こうした中、介護保険サービスの利用量・提供事業者数は大きな伸びをみせており、二〇〇二(平成十四)年十二月時点で居宅サービス利用者は約百九十四万人、施設サービス利用者は約七十一万人となっている。事業者数の増加割合が大きいのは痴呆対応型共同生活介護(以下「痴呆性高齢者グループホーム」という)で、制度施行前の十倍に迫る増加率となっている。
 制度施行前と比べた現在の制度に対する評価では、「家族の介護負担が軽くなった」が全体の四割となっているが、サービスの質やメニューに対する積極的な評価は全体の一割程度である。今後、制度施行後五年を目途として、介護保険制度全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき必要な見直し等の措置が講ぜられることとされている。見直しにあたっては、被保険者の範囲、保険給付の内容及び水準、保険料のあり方などに加え、介護サービス量の増大やそれに伴う費用の増大への対応など、制度の長期的な安定の確保が課題であると考えられる。

3 介護保険の枠を超えて:介護予防、生活支援等に関する取組
 高齢者が要介護状態になることを予防するためのサービス(介護予防)や、高齢者の生活を支えるために必要なサービス(生活支援)等も、介護保険制度と同様に重要である。こうしたサービスを促進するため、市町村等においてさまざまな事業を地域の実情に応じて効果的に実施できるような体制がつくられるとともに、厚生労働省としても財政的な支援等を行っている。また、自主的な地域社会での支え合い等を行う主体としてNPO法人や地域の自治会組織等が重要な役割を果たしているが、その役割はさらに大きくなるものと考えられる。今後は、一人暮らし高齢者が病気になった場合等のための緊急通報体制の整備、住宅改修の普及等を通じた自宅における居住環境の向上、公共施設におけるバリアフリー(障壁除去)化の推進等が重要である。

4 高齢者介護やその他関連分野に関わる今後の課題
 高齢者介護においては、サービス利用者が可能な限りその希望に沿って、在宅に近い環境の中で生活を送ることができるようにすることを視野に入れ、「集団処遇」ではない「個別ケア」の必要性が指摘されている。こうした「個別ケア」のためには、「痴呆性高齢者グループホーム」や「小規模生活単位型特養」といった介護施設の形態が重要となってくるが、同時に「自立支援」の考え方を具体的な介護サービスのあり方に活かしていくことも大きな課題である。
 これらの課題に対応するため、厚生労働省としては、
 @入居者個々人と向き合うことのできる介護者の養成
 A痴呆性高齢者グループホームについては、他のサービスに先駆けたサービス内容等に係る外部評価事業の促進
等の取組を促進する。

第2章 子どもをとりまく現状・課題

【第2章の要点】
・地域別にみた夫婦の労働時間・通勤時間、三世代同居比率等と出生率とは関連性が高く、これらの要因が家庭や地域の子育て力に影響している可能性がある。
・子育てに係る問題には、「親」として育つ機会の不足・母親の孤立等が影響している。
・こうした問題の改善のためには、最も労働時間が長い子育て世代の働き方の見直しや、地域における幅広い子育て支援の仕組みを整えていくことが重要である。

第1節 子どもをとりまく環境の変化

1 子どもの数が減少している状況とその背景
 合計特殊出生率は、二〇〇二(平成十四)年には、一・三二と戦後最低の水準を更新している。
 こうした出生率の低下の要因としては、一九七五〜一九八〇(昭和五十〜五十五)年、一九八〇〜一九九〇(昭和五十五〜平成二)年については結婚を先送りにする層や結婚しない層の増加によるところがほとんどであったが、直近の十年間(一九九〇〜二〇〇〇(平成二〜十二))年では結婚した夫婦が一生の間に生む子どもの数の減少が出生率の低下に寄与する率が六割と大幅にのびてきている。

2 子育てを行う親をとりまく環境の地域による違い
 正社員として働く有配偶男性に占める長時間労働者の割合と合計特殊出生率の関係を地域別にみてみると、長時間労働者比率の高い地域ほど出生率が低いという逆相関関係がみられる(第6図参照)。また、未就学児のいる父親の平日の帰宅時間帯を地域別にみても、南関東では二十三時〜翌朝三時が二割を占め、父親が平日子どもと一緒に過ごす時間が少ないなど労働時間の長さが子育てに大きな負担となっている状況がうかがえる(第7図参照)。
 また、地域別に三世代同居比率と合計特殊出生率との関係をみると、南関東、北海道、近畿など三世代同居比率の低い地域ほど出生率も低いという順相関関係がみられる(第8図参照)。三世代同居世帯では、核家族世帯よりも祖父母が普段の保育に関わる割合が高いなど、子育てに協力している度合いが高くなっている。これらのことから、南関東や近畿など大都市を抱える地域で特に低出生率であることの背景として、父母の長時間労働や三世代同居比率の低下などが影響している可能性が示された。子育ての支え手が周りにいるかどうか、男性を含めて家庭生活と調和できる働き方が可能かどうか等が子育てを行う親をとりまく環境として重要な意味を持っているといえる。

第2節 子どもの育ちの現状と課題

1 子育て・子育ちの現状
 ここ二十年で、育児でイライラすることが多い母親は、一割から三割まで増加してきている。育児不安が高まってきている背景の一つとして、現在の母親達が自らの子ども時代を少産少死時代に過ごした世代であり、親になるまで乳幼児の世話をしたことがなかった母親が約三分の二を占めるなど、過去と比べ実際の子どもとの接触経験や育児経験が不足し、親として育つ機会が不足していることが考えられる(第9図参照)。
 * 育児不安とは、育児行為の中で一時的あるいは瞬間的に生ずる疑問や心配ではなく、持続し蓄積された不安をいう。育児不安の現れ方は、育児への自信のなさ、心配、困惑、母親としての不適格感、子どもへの否定的な感情といった心理的なものから、攻撃性、衝動性を伴う行動までさまざまなものがあり、既に一九七〇年代には報告がされている。
 また、より親密な近所付き合いがある母親は付き合いのない母親に比べて子育てを楽しいと感じている者が多く、辛いと感じる者は少なくなっている。地域の人間関係が希薄化する中で、これまで近所付き合いが多かった「子どもを持つ女性」においても付き合いが減少しており、育児不安の一因になっていると考えられる。
 また、夫婦の育児分担について、夫:妻が五:五を希望する者が男性でも最も多くなっているが、現実には二:八や三:七とする者が過半数を超えている。父親の子育てへの関わりが十分でない理由として夫婦が挙げるものは、「仕事が忙しすぎる」が最も多くなっており、子育て世代の仕事負担が家庭の子育て力低下の一因となっていることが考えられる。ただ、母親では父親の非協力・無理解を理由として挙げる者も三割に上っており、夫婦の間に子育てについて認識の格差がみられることも母親の孤立の背景にあると考えられる(第10図参照)。
 こうした育児不安の高まりや児童虐待への関心の高まりを背景に、全国の児童相談所において処理する児童虐待相談は年々増加し、二〇〇一年度は二万三千二百七十四件と前年度の一・三倍となっている。

2 子どもの育ちにおける課題
 子どもの育ちにおいても、この十年間で交友関係が狭くなるとともに、生活時間が夜型化するなど生活習慣の乱れが進んできており、子どもの心身の育ちにさまざまな影響を及ぼしている。
 これらのことを踏まえると、家庭、地域の子育て力を早急に回復、補完する必要があるといえ、そのためには、
 @高齢者との世代間交流も含めて子育て期の親子が集まるひろば事業など地域における親の育ちを支援する仕組みを整えるとともに、子ども達が早い時期から幼い子どもと親しむ機会をつくり、未来の「親」を育てる取組を推進していくこと
 A育児不安や子どもの生活習慣の変化の背景には、地域社会の人間関係の変質のほか、子育て期の親が家族と食事をともにすることもままならないほど仕事と生活のバランスを欠いた働き方をしていることの影響がうかがわれ、こうした親たちの働き方を見直す必要があること
が課題となっている。

第3章 企業や地域で活躍する高齢者像・現役世代との関係

【第3章の要点】
・高齢者・若年層は雇用機会が不足している。一方、壮年層では週六十時間以上労働者が四分の一となっている。「世代間ワークシェアリング」や人生の局面に応じた柔軟な働き方に向けた条件整備や企業の取組が必要である。
・介護、子育て、世代間交流などの地域活動への高齢者の参加も活発化している。
・こうした高齢者の就業や社会参加は、高齢者自身の生きがいとともに、現役世代が抱える子育て等の問題の軽減にも役立つ。今後、このような「世代間の新たな支え合いの仕組み」が重要である。

第1節 現役世代も含めた働き方の変化の方向

 一九八〇年代後半以降、我が国の総労働時間は趨勢的に減少してきているが、近年の経済停滞の下で常用雇用者の長時間労働者割合が上昇し、三十歳代では約四分の一が週六十時間以上働いている。一方、高齢層と若年層の仕事時間は短く、過去からの変化をみると、仕事時間の長い年齢層はいっそう長く、短い年齢層はいっそう短くなってきており、世代間の働き方の不均衡が顕著となっている(第11図参照)。
 こうした世代間の働き方の不均衡を改善するためには、壮年層は子育てや家族とのふれあいなどが可能となるようなもう少しゆったりとした働き方ができ、その分、高齢層や若年層にも能力の育成・発揮が可能な雇用機会が確保されるような「世代間ワークシェアリング(仕事の分かち合い)」が望まれる。
 具体的な取組としては、
 @長時間勤務の改善に向け、より効率的な業務の進め方を工夫すること
 A生涯を通じた生活事情に応じ休暇や短時間勤務を選択しやすくするため、支援体制や連携の仕方を工夫すること
 B各人の仕事内容の明確化や評価方法の見直しを図ること
等が考えられる。
 パートタイム就業などの多様な働き方は、世代間ワークシェアリングを進めるためにも重要と考えられるが、同じ仕事内容であっても処遇に格差がある場合も少なくない。このような不合理な処遇格差をそのままにしておくことは、働く意欲の低下を通じて企業活力の低下にも結びつきかねない。
 また、短時間勤務制など柔軟な働き方を実践している実例をみると、限られた時間の中で極力効率的に仕事をこなし、自らの責任を最大限に果たすことが求められており、バランスのとれた働き方は必ずしもすべてにおいて「優しい」働き方というわけではない。働く側も意識を変えていくことが求められている。

第2節 高齢者の活躍の場としての地域福祉活動

 地域福祉活動は、高齢者が地域に積極的に貢献することを通じた「生きがいづくり」になるとともに、地域住民同士の結び付きを強め地域の連携を強固なものとする可能性を持っている。
 高齢者と子どもが「一緒に楽しむ」世代間交流は、高齢者、子どもともに六割前後が参加に積極的であり(第12図参照)、今後、高齢者が中心となって取り組む地域福祉活動においては、子育て支援活動を重点的に行う団体・グループが増加してくるものと思われる。
 高齢者が子育て支援に参加することは、子育てを経験してきた高齢者が、その経験を活かしつつ、自らの孫以外でも世話をしたり、子育ての知恵を若い世代に伝えたりすることが、専業主婦世帯を含めた子育て世帯にとって大きな支援になるとともに、高齢者自身の生きがいづくり、子どもの社会性の育成、高齢者への理解の促進にも資するものと考えられる。
 こうした地域福祉活動を活性化するためには、
 @「きっかけづくり」として、地域の社会福祉協議会等に設置された「ボランティアセンター」による呼びかけや、各種のボランティア講座の開催等の取組を促進すること
 A活動の中核となる人材の育成等を通じて、地域福祉活動全体として連携体制をつくること
 B既にある施設や活動等を有効利用することによって、地域福祉活動を支援すること
等が重要となってくる。




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八月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十五年八月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十五年八月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百六十一万人、完全失業者は三百三十三万人、非労働力人口は四千二百六十四万人と、前年同月に比べそれぞれ十万人(〇・二%)減、二十八万人(七・八%)減、七十七万人(一・八%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百六十一万人と、前年同月に比べ十万人(〇・二%)の減少となり、四か月ぶりに前年同月の水準を下回った。男女別にみると、男性は三千七百四十二万人、女性は二千六百十九万人で、前年同月と比べると、男性は二十一万人(〇・六%)減、女性十一万人(〇・四%)増となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百四十七万人、自営業主・家族従業者は九百八十八万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は十六万人(〇・三%)減、自営業主・家族従業者は三万人増となり、雇用者は四か月ぶりに前年同月の水準を下回った。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百十一万人と、十五万人(〇・三%)減、四か月ぶりの減少
 ・常 雇…四千五百九十三万人と、七万人(〇・二%)減、二か月連続の減少
 ・臨時雇…五百九十六万人と、八万人(一・三%)減、二十か月ぶりの減少
 ・日 雇…百二十二万人と、同数

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百九十二万人と、四万人(一・四%)増加
○建設業…五百九十二万人と、二十八万人(四・五%)減少
○製造業…一千百九十三万人と、十四万人(一・二%)減少
○運輸業…三百十三万人と、十万人(三・一%)減少
○卸売・小売業…一千百三十八万人と、十七万人(一・五%)増加
○飲食店,宿泊業…三百五十四万人と、九万人(二・五%)減少
○医療,福祉…五百万人と、二十三万人(四・八%)増加
○サービス業…八百三十六万人と、三万人(〇・四%)増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百八十五万人と、十九万人(三・八%)減少
○製造業…一千百八万人と、六万人(〇・五%)減少
○運輸業…二百九十四万人と、十二万人(三・九%)減少
○卸売・小売業…九百七十万人と、九万人(〇・九%)増加
○飲食店,宿泊業…二百六十六万人と、九万人(三・三%)減少
○医療,福祉…四百六十八万人と、二十四万人(五・四%)増加
○サービス業…六百七十四万人と、三万人(〇・四%)減少
(注) 日本標準産業分類の改訂に伴い、平成十五年一月結果の公表以降、新産業分類で表章している。

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千六百九十五万人と、十八万人(一・一%)減、三か月連続の減少
○三十〜四百九十九人規模…一千八百二万人と、二万人(〇・一%)減、二か月連続の減少
○五百人以上規模…一千二百四万人と、十四万人(一・二%)増、八か月連続の増加

(5) 就業時間

 八月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百七十七万人と、二十八万人(一・九%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…一千七十二万人と、五万人(〇・五%)増加
○三十五時間以上…四千七百三十四万人と、二十九万人(〇・六%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千八百三十二万人と、四十七万人(二・六%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・六時間で、前年同月に比べ〇・一時間の増加となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百三十三万人と、前年同月に比べ二十八万人(七・八%)減となり、三か月連続で前年同月の水準を下回った。男女別にみると、男性は二百一万人、女性は百三十二万人で、前年同月に比べ、男性は二十万人(九・〇%)の減少、女性は八万人(五・七%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十七万人と、三万人増加
○勤め先都合…九十七万人と、十四万人減少
○自己都合…百十万人と、十九万人減少
○学卒未就職…十九万人と、二万人増加
○新たに収入が必要…三十九万人と、三万人増加
○その他…二十七万人と、二万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・一%と前月に比べ〇・二ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は五・三%、女性は四・八%と、前月に比べ男性は〇・二ポイントの低下、女性は〇・一ポイントの低下となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・〇%と、前年同月に比べ〇・四ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は五・一%、女性は四・八%と、男性は〇・四ポイントの低下、女性は〇・三ポイントの低下となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十二万人(一万人減)、一二・〇%(〇・七ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十万人(五万人減)、五・五%(〇・五ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十六万人(三万人減)、三・三%(〇・四ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…三十四万人(七万人減)、三・九%(〇・六ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…四十万人(四万人減)、五・七%(〇・九ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…十八万人(二万人減)、四・三%(〇・七ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…二十二万人(二万人減)、七・七%(一・二ポイント低下)
○六十五歳以上…九万人(二万人増)、二・九%(〇・七ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…二十六万人(五万人減)、七・九%(一・一ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十三万人(二万人減)、七・〇%(〇・四ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十五万人(二万人増)、四・六%(〇・二ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十九万人(五万人減)、三・〇%(〇・六ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十六万人(同数)、三・六%(〇・二ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…十万人(一万人増)、三・七%(〇・二ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…六万人(一万人減)、三・五%(〇・七ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・〇%(〇・一ポイント低下)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数

 世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十三万人と、十万人減少
○世帯主の配偶者…四十六万人と、三万人増加
○その他の家族…百五十五万人と、十七万人減少
○単身世帯…四十九万人と、三万人減少












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月例経済報告(十一月)


―景気は、持ち直している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、持ち直している。
 ・設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
 ・輸出は持ち直し基調にあり、生産は持ち直している。
 ・個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。
 ・雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 先行きについては、アメリカ経済等が回復する中で、景気の上向きの動きが続くものと見込まれる。一方、今後の株価・為替レートなどの動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。
 政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

 平成十五年七〜九月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、公的固定資本形成がマイナスに寄与した一方、民間企業設備、民間住宅投資、財貨・サービスの純輸出(輸出−輸入)がプラスに寄与したことなどから、前期比で〇・六%増(年率二・二%増)となった。また、名目GDPの成長率は、前期比で〇・〇%減となった。

◇個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。
 個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、消費者マインドが持ち直していることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、九月は前月に比べて増加している。
 個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べてやや増加した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、前月から横ばいとなった。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、天候不順の影響などから前年を下回った。新車販売台数は、秋以降の新型車効果から七か月ぶりに前年を上回った。家電販売金額は、DVDやデジタルカメラなどの売れ行きが好調であることに加え、主力商品であるパソコンに持ち直しの動きがみられていることから、前年を上回った。旅行は、国内旅行は前年を下回った。海外旅行は引き続き前年を下回ったが、減少幅は縮小している。
 先行きについては、家計の所得環境が改善していけば、個人消費にも徐々に持ち直しの動きが出てくるものと期待される。

◇設備投資は、増加している。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成十四年十〜十二月期に持ち直しに転じ、増加基調にある。また、ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
 日銀短観によれば十五年度設備投資計画は三年ぶりに全規模全産業で増加に転じ、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、先行指標をみると、機械受注は足元ではやや弱含んでいるが基調としては持ち直しており、建築工事予定額はおおむね横ばいとなっている。先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 平成十四年度の住宅建設は、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、二年連続で百二十万戸を下回る低い水準となった。
 総戸数は、平成十五年度に入って、一時的な増加と反落があったものの、おおむね横ばいで推移している。九月は、持家、貸家、分譲住宅のすべてが増加し、前月比六・三%増の年率百十二万七千戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向かえば、住宅着工は底固く推移していくことも期待される。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 平成十五年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、公共工事受注額、公共工事請負金額及び大手五十社受注額は、平成十五年七〜九月期も、前期に引き続き、前年を下回った。
 十〜十二月期の公共投資については、十月の公共工事請負金額も前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

◇輸出は、持ち直し基調にある。輸入は、増加が緩やかになっている。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
 輸出は、持ち直し基調にある。地域別にみると、アジア向け輸出は、中国、ASEAN向け輸出が機械機器を中心として持ち直していることから、全体としては緩やかに増加している。アメリカ向け輸出は、輸送用機器が足元で増加しており、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、輸送用機器を中心にこのところ増加している。先行きについては、世界の景気回復に明るさが増していることに伴って、緩やかに増加していくものと考えられるものの、為替レートの動向には引き続き留意する必要がある。
 輸入は、設備投資が増加していること等から、機械機器を中心に緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器を中心に増加している。アメリカからの輸入は、航空機等の機械機器を中心に、減少している。EUからの輸入は、月々の振れが大きくなっているが、基調としては減少している。
 国際収支をみると、輸入数量の増加が緩やかになっている一方、輸出数量が持ち直していることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、持ち直している。
 鉱工業生産は、輸出が持ち直し基調にあることなどから、情報化関連生産財を中心に持ち直している。在庫は低水準となっており、企業は在庫積み増しに慎重になっている。なお、九月中に発生した数件の工場火災は、鉱工業生産全体の大きな減少要因とはならなかった。
 先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるほか、アメリカの景気回復の勢いが増していることから、輸出を通じて生産は持ち直しが続くものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、十月、十一月ともに増加が見込まれている。
 第三次産業活動は、横ばいとなっている。
 また、農業生産の動向をみると、低温、日照不足等の影響により水稲の作況指数(十月十五日現在)は「九〇」と平年を大きく下回っている。

◇企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力や売上高の増加等を背景に、平成十五年四〜六月期においても前年比で増益が続いており、季節調整済前期比でみても増益に転じた。「日銀短観」によると、十五年度は引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、十五年度上期・下期とも前年比二桁の増益見込みである。一方、非製造業は十五年度上期に減益に落ち込むものの、下期には前年比二桁の増益に転じる見込みである。規模別でみると、大企業・中小企業とも増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、製造業では引き続き改善がみられるほか、非製造業でも改善がみられる。先行きについては、全産業で改善が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、九月は、前月と同水準の五・一%となった。七月(完全失業率五・三%)から九月への動きをみると、完全失業者数が減少し、完全失業率が低下したものの、非労働力人口が増加している。
 新規求人数は、増加傾向となっており、有効求人倍率も緩やかに上昇している。また、雇用者数は増加傾向となっているものの、この二か月は減少している。製造業の残業時間については、増加傾向となっている。
 賃金の動きをみると、九月の定期給与は前年同月比、前月比とも増加したものの、基調としては、横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 国内企業物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電気機器などが引き続き下落しているが、堅調な市況を反映して鉄鋼などが上昇しているほか、冷夏による米不作の影響により、農林水産物が上昇している。また、輸入物価(円ベース)は、為替の影響により、下落している。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、前年比下落幅はおおむね横ばいで推移しているが、足元で米類が上昇しており、一般食料工業製品が前年比下落幅を縮小している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移しているが、このところ企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、外食が前年比で上昇している。また、公共料金は、前年比で上昇している。
 なお、国内企業物価・消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまる可能性があることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇為替レートは、このところ百九円前後で推移している。株価は、おおむね一万円台(日経平均株価)で推移している。
 対米ドル円レートは、九月下旬以降大幅に円高となり、十月下旬には一時百七円台となったが、このところ百九円前後で推移している。株価は、十月中旬にかけて上昇し年初来最高値を記録した後、おおむね一万円台(日経平均株価)で推移している。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は横ばいで推移し、このところ一・三%台となっている。企業の資金繰り状況におおむね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドは横ばいとなっている。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一七・四%)が続いている。M+CDは、このところ伸びが低下している。

四 海外経済

◇アメリカ、中国を中心に、世界の景気回復に明るさがさらに増している。
アメリカでは、景気は力強く回復している。
 七〜九月期の成長率は前期比年率七・二%と十九年振りの高成長となった。これは、消費が二百五十億ドルに上る減税パッケージの効果等により同六・六%増、設備投資が同一一・一%増と高い伸びを示したことによる。また、労働生産性上昇率は引き続き高い伸びとなっている。
 消費はこのところ耐久財を中心に減少したが、基調としては増加傾向にある。雇用が持ち直していることなどから、消費者マインドも改善している。
 設備投資はITに加え、それ以外の分野でも増加し、資本財受注も増加している。また、生産は緩やかに増加している。
 十月下旬に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)では、既に低水準にあるインフレ率の上昇よりも、望ましくないディスインフレの起こる可能性が高いとして、現行の金融緩和政策について、相当程度の期間にわたって維持する方針が再度示された。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いており、また一部に景気持ち直しの動きがみられる。
 中国では、消費や投資が堅調に増加し、輸出の伸びも高いことから景気は拡大が続いている。タイでは、消費や投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費や輸出の弱い動きから景気の拡大は緩やかになっている。台湾では、消費が回復し輸出が増加するなど、景気は持ち直している。シンガポールでは、生産や輸出が上向くなど、景気に持ち直しの動きがみられる。韓国では、消費が低迷し設備投資が減少するなど景気は後退しているものの、中国向けを中心とした輸出の増加等から生産に持ち直しの動きがみられる。

◇ユーロ圏では、景気に持ち直しの動きがみられ、イギリスの景気は持ち直している。
 ユーロ圏では、域内主要国における輸出が改善を示すなど景気に持ち直しの動きがみられる。ドイツでは、アメリカの成長率の高まりなどを背景に、海外からの受注は増加傾向にあり、輸出が持ち直しているなど、景気に下げ止まりの兆しがみられる。七〜九月期の成長率は4四半期ぶりに前期比プラスとなった。フランスでは、輸出に持ち直しの動きがみられ、生産が下げ止まりつつあるなど、景気に持ち直しの動きがみられる。
 イギリスでは、消費が増加しており、景気は持ち直している。イングランド銀行(BOE)は、成長が持ち直し、金融機関の貸出増加が引き続き強いことなどから、十一月上旬に政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き上げ、三・七五%とした。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、アメリカの株価は、好調な企業業績等を受けて、引き続き上昇基調で推移している。アジア、ヨーロッパでも主要な株価は、おおむね上昇基調で推移している。長期金利には、主要国の景気回復等を受けて世界的に上昇がみられる。ドルは十月上旬以降おおむね横ばいで推移している。
 原油価格は、おおむね横ばいで推移したが、冬場に向けて需給がひっ迫するとの観測から強含む動きもみられた。


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消費支出(全世帯)は実質一・〇%の増加


―平成十五年八月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十五年七月に実質減少となった後、八月は実質増加となった。
 内訳をみると、交通・通信、住居などが実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十四年四月以降十七か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十五年七月に実質減少となった後、八月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万四千八百三十一円となり、前年同月に比べ、名目一・二%の減少、実質〇・八%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質四・三%の増加となった。
 また、勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質七・四%の増加となった。













    <12月17日号の主な予定>

 ▽労働経済白書のあらまし………厚生労働省 

 ▽消費動向調査(九月)…………内 閣 府 




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