官報資料版 平成16年1月21日




                  ▽独占禁止白書のあらまし……………………公正取引委員会

                  ▽毎月勤労統計調査(九月)…………………厚生労働省

                  ▽平成十五年七〜九月期平均家計収支………総 務 省











独占禁止白書のあらまし


公正取引委員会


 公正取引委員会は、平成十五年十月七日、平成十四年度年次報告書を国会に提出した。
 当委員会は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)第四十四条第一項の規定に基づき、内閣総理大臣を経由して、国会に対して同法の施行状況を報告している。年次報告書には、同法の特別法である下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)及び不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という)の施行状況に係る報告も含まれている。
 以下、平成十四年度年次報告の要旨を紹介する。

第1章 独占禁止法制等の動き

1 独占禁止法の改正
(1) 公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律による独占禁止法の改正
 公正取引委員会の位置付けについては、平成十三年六月に閣議決定した「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」等において、「よりふさわしい体制に移行することを検討する」としていたところであるが、中央省庁等再編後の状況の変化等を踏まえ、内閣府設置法に基づいて公正取引委員会を置くこととし、また、公正取引委員会は内閣総理大臣の所轄に属するものとするとともに、これに伴う関係法律についての所要の規定の整備を行うことを内容とする公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律が、平成十五年四月二日に成立、同月九日に公布・施行された(平成十五年法律第二十三号)。
(2) 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律による独占禁止法の改正
 株式会社等の経営手段の多様化及び経営の合理化を図る商法等の一部を改正する法律の施行に伴い、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案が第百五十四回国会に提出された。同法案は業務執行を担当する執行役の創設を伴う独占禁止法の所要の改正(第二条第三項の定義規定に執行役を追加)を含むものであるところ、平成十四年五月二十二日に成立、同月二十九日に公布、平成十五年四月一日(ただし一部改正規定については平成十四年七月一日)に施行された(平成十四年法律第四十五号)。
(3) 証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備のための関係法律の整備等に関する法律に伴う独占禁止法の改正
 決済の迅速化、確実化をはじめとする証券市場の整備のため、所要の措置を講ずる必要があることから、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案が第百五十四回国会に提出された。同法案は振替社債等の供託手続の整備に伴う独占禁止法の所要の改正(第六十二条、第六十三条第一項及び第六十八条における有価証券に振替社債等が含まれる旨を追加)を含むものであるところ、平成十四年六月五日に成立、同月十二日に公布、平成十五年一月六日に施行された(平成十四年法律第六十五号)。
(4) 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律に伴う独占禁止法の改正
 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案が第百五十四回国会に提出された。同法案は行政手続の電子化に伴う独占禁止法の所要の改正(独占禁止法又は公正取引委員会規則の規定により書類の送達により処分通知等を行うこととしているものについては、処分通知等の相手方がオンラインによる送達を希望する場合を除き、書類の送達によらなければならないこと及び書類の送達を行った際に作成する送達報告書に代えて、電子ファイルに記録することを義務付けることを内容とする第六十九条の五の新設)を含むものであるところ、平成十四年十二月六日に成立、同月十三日に公布、平成十五年二月三日に施行された(平成十四年法律第百五十一号)。

2 下請法の一部改正
 近年の経済のサービス化・ソフト化の進展に伴い、役務(サービス)に係る下請取引についても取引の公正化を図ることが重要な課題となっていることを踏まえ、役務に係る下請取引を対象に追加する等を内容とする改正法が、平成十五年六月十二日に成立、同月十八日に公布、施行日は一部を除き平成十六年四月一日とされた(平成十五年法律第八十七号)。同法の内容は次のとおりである。
ア 情報成果物の作成、役務の提供及び金型の製造に係る下請取引を下請法の対象に追加した(改正法第二条)。
イ 委託内容が確定しない取引に対応するため、製造委託等に係る親事業者の書面の公布時期に係る規定を整備した(改正法第三条)。
ウ 親事業者が行ってはならない行為に、自己の指定する役務の利用の強制、不当なやり直し等を追加した(改正法第四条)。
エ 同法に違反した親事業者に対して、再発防止措置を講じることなど「その他必要な措置をとるべきこと」を勧告できることとし、また違反事業者に対する勧告を公表できることとした(改正法第七条)。
オ 書面の交付義務違反及び書類等の作成・保存義務等違反に係る罪並びに検査忌避等に係る罪の罰金の上限額を五十万円に引き上げることとした(改正法第十条、及び十一条)。

3 景品表示法の一部改正
 最近における商品又は役務の取引に関する表示をめぐる状況にかんがみ、公正な競争の確保による一般消費者の利益の一層の保護を図るため、合理的な根拠なく著しい優良性を示す不当表示に対する効果的な規制方法の新設、都道府県知事による執行力の強化等を内容とする不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律が、平成十五年五月十六日に成立、同月二十三日に公布された。施行日は公布の日から起算して一か月を経過した日(合理的な根拠なく著しい優良性を示す不当表示の効果的な規制方法を定めた第四条第二項関係の規定については、公布の日から起算して六か月を経過した日)とされた(平成十五年法律第四十五号)。同法の内容は、次のとおりである。
ア 公正取引委員会は、景品表示法第四条第一項第一号に違反する表示か否かを判断するために必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、当該資料が提出されないときは当該表示を同号に違反する表示とみなすこととした(改正法第四条)。
イ 事件処理迅速化のため排除命令の告示手続の廃止を行い、排除命令は排除命令書の謄本を送達することにより行うこととした(改正法第六条)。
ウ 都道府県知事が指示できる事項として、違反行為再発防止のために必要な事項等を追加し、指示は、違反行為が既になくなっている場合にもすることができることとした(改正法第九条の二)。
エ 都道府県知事による事業者等に対する報告徴収、立入検査等に関し、罰金の上限額を五十万円に引き上げることとした(改正法第十二条)。

4 独占禁止法改正に伴う政令の制定・改正
(1) 公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令
 公正取引委員会を内閣府の外局に移行させるための関係法律の整備に関する法律の施行に伴い、行政機関職員定員令、行政機関職員定員令の一部を改正する政令、検察庁法施行令、内閣法制局設置法施行令、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律施行令、行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令及び総務省組織令について、所要の規定の整備を行った(平成十五年四月九日公布・施行)(平成十五年政令第二百一号)。
(2) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令の制定
 大規模会社の株式保有総額の制限の廃止、事業支配力の過度集中規制の整備、金融会社の議決権保有制限の対象範囲の縮減等を内容とする私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成十四年法律第四十七号)(以下平成十四年独占禁止法改正法という)を平成十四年十一月二十八日から施行することとした(平成十四年十月二日公布・施行)(平成十四年政令第三百四号)。
(3) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令の一部改正
 平成十四年独占禁止法改正法において、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立等を禁止していた第九条は、他の国内の会社の株式を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等を禁止するものに改められ、会社及び子会社の総資産の合計額が政令で定める金額を超える場合に当該会社及び子会社の事業に関する報告書等の提出が義務付けられたところ、報告書等提出の基準となる額を、@持株会社については六千億円、A銀行業、保険業又は証券業を営む会社(持株会社を除く)については八兆円、B一般事業会社(@及びA以外の会社)については二兆円とした(平成十四年十月二日公布、同年十一月二十八日施行)(平成十四年政令第三百五号)。

5 その他の所管法令の改正
 平成十四年独占禁止法改正法による独占禁止法の改正に伴い、公正取引委員会事務総局経済取引局の所掌事務から承認の規定を削除すること、同局企業結合課の所掌事務の持株会社に係る規定を会社に係る規定に改めること、同課の所掌事務から株式の取得又は保有の認可及び承認の規定を削除すること等、独占禁止法施行令の一部を改正する政令(前記平成十四年政令第三百五号)の附則により公正取引委員会事務総局組織令の改正が行われた。

6 独占禁止法と他の経済法令等の調整
(1) 法令調整
 公正取引委員会は、関係行政機関が経済法令の制定又は改正を行おうとする際に、独占禁止法の適用除外や競争制限的効果をもたらすおそれのある規定を設けるなどの場合には、その企画・立案の段階で、独占禁止法及び競争政策との調整を図っている。
 公正取引委員会が平成十四年度において調整を行った主なものは、次のとおりである。
ア 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する等の法律案
 新規参入事業者と既存事業者との公正な競争条件を確保するとの観点から所要の調整を行った。なお、本法律案は、第百五十六回国会に提出され、平成十五年六月十一日に成立した。
イ 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案
 独占禁止法の目的に基づく新規参入の促進や一般消費者の利益の確保を図るとの観点から、本法律案について所要の調整を行った。なお、本法律案は、第百五十六回国会に提出され、平成十五年七月七日に成立した。
(2) 行政調整
 公正取引委員会は、関係行政機関が特定の政策的必要性から行う行政措置等について、当該措置等が独占禁止法及び競争政策上の問題を生じないよう、当該行政機関と調整を行うこととしている。
 平成十四年度において調整を行った主なものは、次のとおりである。
ア 投資信託の申込手数料に係る行政調整
 公正取引委員会は、金融庁に対し、具体的な手数料の金額又は料率を目論見書に記載する方法が、販売会社の弾力的な手数料の設定の妨げになっているおそれがある旨を指摘した。金融庁は公正取引委員会の指摘を踏まえ、投資信託の申込手数料の目論見書への記載方法につき、金額又は料率の上限のみの記載に一本化するための関係府令の改正を検討することとし、改正までの暫定的な措置として、投資信託会社を会員とする団体に対し、上限のみの記載に一本化することが望ましい旨を会員に周知するよう指導した。
イ 地方公共団体の公共入札における地元企業優先発注・地元産品優先使用に係る相談について、独占禁止法及び競争政策の観点から所要の調整を行った。

7 独占禁止法の措置体系及び独占・寡占規制の見直し
 公正取引委員会は独占禁止法の措置体系全体の在り方についての検討を行うため、独占禁止法研究会を開催しているところ、より専門的かつ集中的な検討を行うため、同研究会の下に措置体系見直し検討部会を開催している。
 また、同研究会は、独占・寡占規制の見直しについても検討を行うこととし、より専門的かつ集中的な検討を行うため、平成十五年六月以降、同研究会の下に独占・寡占規制見直し検討部会を開催している。

第2章 入札談合等関与行為防止法の制定・施行等

1 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律
 与党三党においてプロジェクトチームが設置され、官公需分野における競争の促進や予算執行の適正化を目指し入札談合等関与行為の防止のための新法制定の検討が進められた結果、与党三党の議員立法として入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律案が第百五十四回通常国会に提出され、同法律案は七月二十四日に成立し、同月三十一日に公布、施行日は平成十五年一月六日とされた(平成十四年法律第百一号)。
 その具体的な内容は、以下のとおりである。
ア 入札談合等関与行為があると認める場合の公正取引委員会から各省各庁の長等に対する必要な改善措置の要求、該要求を受けた各省各庁の長等による調査の実施・必要な改善措置の検討、調査結果等の公表等の措置について規定された。
イ 各省各庁の長等による当該行為を行った職員に対する損害賠償請求・懲戒事由の調査について規定された。
ウ 入札談合等関与行為の防止に向けた関係行政機関相互の連携・協力、本法運用上の地方公共団体等の自主的な努力への配慮等について規定された。
 なお、平成十五年一月三十日に排除勧告を行った岩見沢市発注の建設工事入札談合事件において、岩見沢市職員の入札談合等関与行為が認められたため、同法に基づき、岩見沢市長に対し改善措置要求を行った。

2 入札談合防止への取組
(1) 発注機関との連絡・協力について
 公正取引委員会は、従来から積極的に入札談合の摘発に努めているほか、平成六年七月に「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表し、入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるかについて明らかにすることによって、入札談合防止の徹底を図っている。
 また、入札談合の未然防止を徹底するためには、発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から、独占禁止法違反の可能性のある行為に関し、発注官庁等から公正取引委員会に対し情報が円滑に提供されるよう、各発注官庁等において、公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官として各省庁の会計課長等が指名されている。
 公正取引委員会は、連絡担当官との連絡・協力体制を一層緊密なものとするため、平成五年度以降、「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」を開催しており、平成十四年度においては、国の本省庁等の連絡担当官会議を九月三十日に開催するとともに、国の地方支分部局等の連絡担当官会議を全国九か所で開催した。
 また、公正取引委員会は、平成六年度以降、中央官庁又は地方公共団体が実施する調達担当者等に対する研修会の講師の派遣及び資料の提供等の協力を行うとともに、公団・事業団等の調達担当者に対する研修会を開催している。平成十四年度においては、七月に成立した入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の周知の必要性を踏まえ、関係省庁とも連携して同法を解説したリーフレット等を作成・配布するとともに、従来、原則として隔年度で実施されてきた地方自治体の研修会と公団・事業団等の調達担当者に対する研修会を全国九か所において開催した。
(2) 入札談合防止に向けた国・地方公共団体における入札・契約制度改革の取組について
 公正取引委員会は、今後の入札談合の未然防止策に関する企画・立案に資することを目的として、特に公共工事の入札・契約を対象とした独自の取組を行っている地方自治体を中心に、施策の導入背景・問題意識、施策の内容、施策の実施状況・評価等についてヒアリング調査を行い、その結果を中心に、国及び地方公共団体の入札・契約制度改革の状況及び入札・契約制度改革に対する考え方について報告書をまとめ、これを平成十四年六月二十七日に公表した。

第3章 違反被疑事件の審査及び処理

1 違反被疑事件の審査及び処理の状況
 公正取引委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、独占禁止法に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。
 審査事件のうち必要なものについては独占禁止法第四十六条の規定に基づく権限を行使して審査を行い、違反する事実があると認められたときは、排除措置を採るよう勧告し(第四十八条第一項及び第二項)、若しくは審判手続を開始し(第四十九条第一項)、又は違反行為がなくなってから一年を経過しているため、勧告を行うことができないが、課徴金納付命令の対象となる場合には、同命令を行っている(第四十八条の二)。
 なお、相手方が勧告を応諾した場合には勧告審決(第四十八条第四項)、その他の場合は審判手続を経て同意審決(第五十三条の三)又は審判審決(第五十四条)を行っている。相手方が課徴金納付命令に対して不服を申し立て審判手続の開始を請求した場合には、審判手続が開始され、同命令は審判手続に移行する(第四十九条第二項及び第三項)。
 また、勧告等の法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、違反の疑いがあるときは、関係事業者に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導している。さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。
 平成十四年度における審査件数(小売業における不当廉売事案で迅速処理したものを除く)は、前年度からの繰越しとなっていたもの三十七件、年度内に新規に着手したもの百十一件、合計百四十八件であり、このうち本年度内に処理した件数は百八件である。
 百八件の内訳は、勧告等の法的措置三十七件、警告十七件、注意四十九件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったもの五件となっている(第1表参照)。

2 課徴金
 平成十四年度においては、五百九十九件、総額六十二億八千四百九十七万円の課徴金の納付を命じた。なお、平成十四年度に課徴金の納付を命じた五百九十九件のうち、三十八件について審判開始請求があり、これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計十九億五千九十七万円の課徴金納付命令が審判手続に移行した。

3 告発
 平成十五年七月二日、東京都発注に係る水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限していた行為について、愛知時計電気株式会社等四社及びこれら四社の同水道メーターの受注業務に従事していた者等五名が独占禁止法に違反する犯罪を行ったものと思料して、検事総長に告発した(東京高等検察庁は同年七月二十三日起訴)。

第4章 審判及び訴訟

1 審判
 平成十四年度における審判件数は、平成十三年度から引き継いだもの六十一件、平成十四年度中に審判開始決定を行ったもの三十件の合計九十一件(うち、六十七件は手続を併合)であり、平成十四年度中に、八件(うち、審判審決一件、課徴金の納付を命ずる審決七件)について審決を行った。平成十四年度末現在において審判手続係属中の事件は八十三件である。

2 訴訟
 平成十四年度当初において係属中の審決取消請求事件は五件であったが、このうち、協業組合カンセイによる審決取消請求事件については、平成十五年三月十四日、最高裁判所で原判決を破棄し、東京高等裁判所へ差し戻す旨の判決がされたことにより、平成十四年度末現在東京高等裁判所に係属中である。安藤造園土木株式会社ほか十一名による審決取消請求事件については、平成十四年五月七日、公正取引委員会が原告らからの取下げに同意したことにより、また、更正会社株式会社カンキョー管財人大澤誠による審決取消し請求事件、国際地質株式会社による審決取消請求事件についてはいずれも請求棄却の判決が確定したことにより終了した。
 平成十四年度中に、新たに、岡崎管工株式会社による審決取消請求事件、株式会社オーエヌポートリーによる審決取消請求事件が提起された。このため、平成十四年度末係属中の審決取消請求事件は四件である。

第5章 規制改革・競争政策に関する調査・提言等

 政府は、規制改革を通じた経済の活性化は最重要の課題と位置付け、平成十五年三月二十八日に「規制改革推進三か年計画(再改定)」が閣議決定されたところである。公正取引委員会は、「規制改革推進三か年計画(再改定)」に示された政府として行うこととしている規制改革推進のための施策の趣旨を踏まえ、かつ、競争政策の果たすべき役割の重要性にかんがみ、我が国市場における公正かつ自由な競争を促進するため、独占禁止法違反行為に対して、引き続き、厳正に対処するとともに、規制改革をめぐる調査・提言、消費者政策の推進等を積極的に進めることにより、我が国市場における公正かつ自由な競争を確保・促進するよう取り組んでいくこととしており、その具体的な取組方針を平成十五年三月二十八日に公表した。

1 公益事業分野における規制改革に関する調査・提言等
(1) 政府規制等と競争政策に関する研究会における検討
 平成十四年度においては、五月以降、「政府規制等と競争政策に関する研究会」(座長 岩田規久男 学習院大学教授)を開催し、電気事業分野における競争促進のための環境整備について検討を行い、同研究会が取りまとめた基本的な考え方を「電気事業分野における競争促進のための環境整備」として同年六月に公表した。
 また、同年九月以降、「電気通信事業ワーキンググループ」(座長 岩田規久男 学習院大学教授)を開催し、電気通信分野の制度改革及び競争政策の在り方について検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書「電気通信分野の制度改革及び競争政策の在り方」を同年十一月に公表した。
(2) 「適正な電力取引についての指針」の改定
 公正取引委員会は、通商産業省(当時)と共同して、平成十一年十二月、平成十一年の電力の部分自由化を中心とする制度改革に併せて「適正な電力取引についての指針」を策定し、公表した。
 その後、個別の事例について、独占禁止法に違反する疑いがあるとして審査を行い、独占禁止法上の問題点を指摘するとともに、本指針では想定していなかった事例がみられたことから、平成十三年十一月、「電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方」を作成し、公表した。また、平成十四年六月には、別の事例について、独占禁止法に違反するおそれがあるものとして警告を行っている。
 このような事例及び部分自由化以降、公正取引委員会及び経済産業省に対して申告・相談のあった事例等を踏まえると、現行制度における適正な電力取引の在り方を、電力会社、新規参入者、需要家等の関係者に対して一層具体的かつ明確に示すことが、経営自主性を最大限に発揮できる環境を整備するために重要と考えられる。
 このような観点から、公正取引委員会は、経済産業省と共同して、「適正な電力取引についての指針」の補足・充実を図るため、平成十四年七月、これを改定し公表した。
(3) 「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の改定
 公正取引委員会は、平成十三年十一月、総務省と共同して、電気通信事業分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から、独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を作成し、公表した。
 本指針については、競争環境の変化に対応しつつ、運用事例を積み重ねていくとともに、その蓄積を反映させる形で適宜機動的に見直すこととしており、また、「規制改革推進三か年計画(改定)」(平成十四年三月二十九日閣議決定)及び「e−Japan重点計画−2002」(平成十四年六月十八日IT戦略本部決定)において、平成十四年中に見直しを行う旨が決定されているところ、公正取引委員会は、法運用事例を踏まえた追加等を内容とする本指針の一部改定を総務省と共同して行い、平成十四年十二月、これを公表した。
(4) 電気事業、ガス事業及び電気通信事業の制度改革への取組
ア 電気事業
 平成十四年十月以降、経済産業省の電気事業分科会において、電気事業制度改革の具体的な制度設計について、専門的な立場から検討が行われ、公正取引委員会もこれに参加してきており、同年十一月、同分科会基本問題小委員会において、送電部門の公正性・透明性の確保、電力の卸取引所の枠組み、電力会社による反競争的行為の排除等について、電気事業制度改革の方向性を踏まえ、電気事業分野における競争が有効に機能するための競争政策の観点から検討すべき事項を「電力の制度改革に関する見解」として説明した。
イ ガス事業
 平成十四年九月以降、経済産業省の総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会において、今後のガス事業制度改革の在り方について検討が行われ、公正取引委員会もこれに参加してきたところであり、同年十二月、同部会ガス政策小委員会において、電力、ガスの相互参入に伴う公正な競争を確保するための方策等のガス事業分野における公正かつ自由な競争を確保するための基本的な考え方について説明した。
 また、第百五十六回国会に提出されたガス事業法の一部改正法案について、ガス事業分野における競争を促進する観点から、経済産業省と所要の調整を行ったところであり、今後予定される制度設計の具体化に当たっても、同省と連携していくこととしている。
ウ 電気通信事業
 平成十四年九月以降、総務省の「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」において、電気通信サービスの競争状況を評価するための手法等について検討が行われ、公正取引委員会もこれに参加してきており、独占禁止法における競争評価との関係等について説明した。
 また、第百五十六回国会に提出された電気通信事業法の一部改正法案について、電気通信分野における競争を促進する観点から、総務省と所要の調整を行ったところであり、今後とも同分野における競争促進に当たり、同省と連携していくこととしている。

2 社会的規制分野等における規制改革に関する調査・提言
 公正取引委員会は、平成十三年度に介護保険適用サービス分野における競争状況及び基準認証分野における公益法人改革と競争政策に関する調査を行い、これを公表しており、これらの調査結果や総合規制改革会議の提言を踏まえ、介護、医療及び労働分野を中心に、公正かつ自由な競争を促進する観点から検討を行うため、平成十四年四月以降、政府規制等と競争政策に関する研究会「社会的規制等ワーキンググループ」(座長 井手秀樹 慶應義塾大学教授)を開催し、社会的規制分野の制度改革及び競争政策の在り方について検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書を同年十一月に公表した。

3 独占禁止法適用除外制度
 適用除外制度については、近年、累次の閣議決定等においてその見直しが決定されている。個別法に基づく適用除外制度については、「規制緩和推進計画の改定について」(平成八年三月二十九日閣議決定)を受け、平成九年二月二十一日、二十法律三十五制度について廃止等の措置を採るための「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第百四十回国会に提出され、同年六月十三日可決・成立し、同年七月二十日に施行された。その他の適用除外制度についても、「規制緩和推進三か年計画」(平成十年三月三十一日閣議決定)等に基づき検討が行われ、平成十一年二月十六日、不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止、独占禁止法の適用除外等に関する法律の廃止等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第百四十五回国会に提出され、同年六月十五日に可決・成立し、同年七月二十三日に施行された。
 さらに、「規制緩和推進三か年計画(改定)」(平成十一年三月三十日閣議決定)において、独占禁止法第二十一条(自然独占に固有の行為に関する適用除外制度)について引き続き検討することとされ、同条については規定を削除するとの結論を得たことから、同条の削除等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が平成十二年三月二十一日に第百四十七回国会に提出され、同年五月十二日に可決・成立し、同年六月十九日に施行された。
 これらの措置により、平成七年度末において三十法律八十九制度存在した適用除外制度は、平成十四年度末現在、十五法律二十一制度(再販売価格維持契約制度を含む)まで縮減された。

4 著作物再販制度の取扱いについて
 著作物再販制度については、平成十年三月に、競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが、本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから、著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し、一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
 これに基づき、著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに、国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ、平成十三年三月、次のとおり結論を得るに至ったところであり、現行の再販制度の下で関係業界における運用の弾力化の取組等、著作物の流通についての意見交換を行うため、公正取引委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け、平成十三年十二月に第一回会合、平成十四年六月に第二回会合を開催した。

第6章 法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止

1 法運用の明確化
 独占禁止法違反行為の未然防止を図るとともに、同法の運用を効果的なものとするためには、同法の目的、規制内容及び運用の方針が国内外における事業者や消費者に十分理解され、それが深められていくことが不可欠である。このような観点から、公正取引委員会は、各種の広報活動を行うとともに、事業者及び事業者団体のどのような行為が独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにした各種のガイドラインを策定・公表している。
 平成十四年度においては、「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」を六月に公表した。また、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(昭和五十八年)を四月に、「適正な電力取引についての指針」(平成十一年)を七月に、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成十二年)及び「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を十二月に、それぞれ改定・公表した。

2 知的財産権に係る競争政策上の問題の検討
 近時、インターネットへの高速・常時の接続環境の整備など、情報通信技術の急速な進歩により、音楽、書籍、放送番組、アニメーション等の各種のコンテンツがデジタル化されコンピュータネットワーク等を通じて流通するようになってきており、デジタル化されたコンテンツ(以下「デジタルコンテンツ」という)の市場が今後急速に拡大していくことが予想される。
 デジタルコンテンツに係る市場の形成及び発展のためには、コンテンツの制作、流通、利用の各段階における公正かつ自由な取引環境が確保される必要があり、「e−Japan重点計画−2002」(平成十四年六月十八日IT戦略本部決定)においても、公正取引委員会は、「デジタルコンテンツに関する公正かつ自由な競争を促進するため、デジタルコンテンツの取引等について、競争政策の観点から実態を把握し、二〇〇二年度末を目途に競争政策上の課題と対応について取りまとめる」とされたところである。
 そこで、公正取引委員会は、平成十四年六月から、学識経験者及び実務家からなる「デジタルコンテンツと競争政策に関する研究会」(座長 根岸哲 神戸大学大学院法学研究科教授)を開催し、平成十五年三月、同研究会の報告書を公表した。
 また、公正取引委員会は、新たな分野における特許権の保護の強化について、独占禁止法及び競争政策の観点からの考え方及び対応について検討を行うため、平成十四年三月以降、四回にわたり「新たな分野における特許と競争政策に関する研究会」(座長 稗貫俊文 北海道大学大学院法学研究科教授)を開催し、同研究会が取りまとめた報告書を平成十四年六月に公表した。

第7章 価格の同調的引上げに関する報告の徴収

 平成十四年四月から平成十五年八月現在に至るまで、独占禁止法第十八条の二に規定する価格の同調的引上げに該当すると認めてその引上げ理由の報告を徴収したものは、発泡酒の一件である。

第8章 経済及び事業活動の実態調査

 公正取引委員会は、競争政策の運営に資するため、経済力集中の実態、主要産業の実態等について調査を行っている。平成十四年度においては、独占的状態調査、イノベーション競争と競争政策に関する調査、グローバル化の進展と市場構造に関する調査、大規模小売業者と納入業者との取引に関する実態調査等を行った。

第9章 持株会社・株式保有・役員兼任・合併・分割・営業譲受け等

 独占禁止法第四章は、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第九条)、銀行又は保険会社の議決権保有の制限(第十一条)並びに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式保有・役員兼任・合併・分割・営業譲受け等の禁止並びに届出又は報告義務(第十条及び第十三条から第十六条まで)を規定しており、公正取引委員会は、かかる手続に従い、企業結合審査を行っている。

1 企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針
 公正取引委員会は、事前相談の迅速性及び透明性をより一層高める観点から、平成十四年十二月十一日、「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」を公表し、以下のような点について明確化を図った。その内容は以下のとおりである。
ア 企業結合計画の具体的内容を示す資料が提出された日から、原則として三十日以内に、当事会社に対し、独占禁止法上問題がない旨又は詳細審査が必要な旨(審査対象となる品目・役務及び調査のポイント等を含む)を通知する。
イ その後、詳細審査に必要な資料がすべて提出された日から、原則として九十日以内に、審査結果についてその理由も含め、回答を行う。
  さらに、公正取引委員会の審査結果の透明性を一層高めるため、当該対応方針の公表とともに、詳細審査を行った案件に対する回答内容及び公表内容を拡充する旨の方針を明らかにした。

2 企業・産業再生に係る事案に関する企業結合審査について
 政府は、過剰債務企業が抱える優良な経営資源の再生と過剰供給構造の解消を図るため、平成十四年十二月十九日の産業再生・雇用対策戦略本部決定において、「企業・産業再生に関する基本指針」を定め、企業・産業再生のためにあらゆる政策手段を整合性のある形で採ることとしているところ、同指針において、特に産業活力再生特別措置法の対象となる事案の企業結合審査については、運用指針を定め、関係事業者の協力の下、審査の一層の迅速化等を図ることとされたことを受けて、平成十五年四月九日、公正取引委員会は「企業・産業再生に係る事案に関する企業結合審査について」を新たに策定・公表した。

3 独占禁止法第九条の規定による報告・届出
 平成十四年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第九条第一項及び第二項の規定は、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立・転化を禁止しており、持株会社は、持株会社及びその子会社の総資産合計額が三千億円を超える場合には、@毎事業年度終了後三か月以内に持株会社及び子会社の事業報告書を提出すること(同条第六項)、A持株会社の新設について設立後三十日以内に届け出ること(同条第七項)が義務付けられていた。
 平成十四年独占禁止法改正法による改正後の独占禁止法第九条第一項及び第二項の規定は、他の国内の会社の株式を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立・転化を禁止することとされ、当該会社及び子会社の総資産合計額が、@持株会社については六千億円、A銀行業、保険業又は証券業を営む会社(持株会社を除く)については八兆円、B一般事業会社(@及びA以外の会社)については二兆円を超える場合には、@毎事業年度終了後三か月以内に当該会社及び子会社の事業報告書を提出すること(同条第五項)、A当該会社の新設について設立後三十日以内に届け出ること(同条第六項)が義務付けられた。
 平成十四年度において、改正前の独占禁止法第九条第六項の規定に基づき提出された持株会社の事業報告書の提出件数は十四件であり、同条第七項の規定に基づく持株会社の設立の届出は七件であった。改正後の独占禁止法第九条第五項の規定に基づき提出された会社の事業報告書の提出件数は二件であり、同条第六項の規定に基づく会社の設立の届出はなかった。

4 株式保有
(1) 大規模会社の株式保有
 平成十四年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第九条の二第一項の規定により、大規模会社(金融業以外で資本金三百五十億円以上又は純資産一千四百億円以上の株式会社(持株会社たる株式会社を除く))は、自己の資本金又は純資産のいずれか多い額を超えて国内の会社の株式を保有してはならないこととされていたが(ただし、大規模会社が、外国会社等と共同出資により設立した会社の株式をあらかじめ公正取引委員会の認可を受けて保有する場合(同項第七号)又はやむを得ない事情により国内の会社の株式をあらかじめ公正取引委員会の承認を受けて保有する場合(同項第十一号)等におけるこれらの株式の保有については、同項の規定が適用されないこととされていた)、平成十四年独占禁止法改正法により、第九条の二第一項は廃止された。
 平成十四年度において、平成十四年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第九条の二第一項第七号の規定に基づき認可したもの及び同項第十一号の規定に基づき承認したものは、いずれもなかった。
(2) 会社の株式保有
 独占禁止法第十条第二項及び第三項の規定では、総資産が二十億円を超えかつ総資産合計額(当該会社の総資産並びに親会社及び子会社の総資産の合計額。以下同じ)が百億円を超える会社が、総資産が十億円を超える国内の会社又は国内売上高(国内の営業所の売上高及び国内の子会社の売上高の合計額。以下同じ)が十億円を超える外国会社の株式を一〇%、二五%又は五〇%を超えて取得し、又は所有することとなる場合には、この比率を超えることとなった日から三十日以内に、公正取引委員会に株式所有報告書を提出しなければならないこととされている。
 平成十四年度において、公正取引委員会に提出された会社の株式所有報告書の件数は、八百九十九件であり、うち外国会社によるものは四十八件であった。
(3) 金融会社の議決権保有
 平成十四年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第十一条第一項の規定は、金融会社が他の国内の会社の議決権をその総株主の議決権の百分の五(保険会社は百分の十)を超えて保有してはならないこととされていたが、金融会社があらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合には、同項の規定が適用されないこととされていた。
 平成十四年度において、公正取引委員会が認可した金融会社の議決権保有件数は百三十一件であり、このうち同条第一ただし書の規定に基づくものは百十四件(銀行に係るもの七十七件、証券会社に係るもの十五件、保険会社に係るもの二十二件)、同条第二項の規定に基づくものは十七件(すべて銀行に係るもの)であった。また、同条第一項ただし書の規定に基づく認可件数のうち、外国会社に係るものは七件であったが、同条第二項の規定に基づく認可については、外国会社に係るものはなかった。
 なお、このうち、前記独占禁止法改正後に公正取引委員会が認可した銀行又は保険会社の議決権保有件数は二十六件(すべて銀行に係るもの)であり、同条第一項ただし書の規定に基づくものは十件(すべて銀行に係るもの)、同条第二項の規定に基づくものは十六件であった。

5 合併・分割・営業譲受け等
 一定の規模を超える会社が、合併、分割又は営業譲受け等を行う場合には、それぞれ独占禁止法第十五条第二項及び第三項、第十五条の二第二項、第三項及び第五項又は第十六条第二項及び第三項の規定により、公正取引委員会に届け出なければならないこととされている(ただし、親子会社間及び兄弟会社間の合併、分割及び営業譲受け等については届出が不要である)。
 平成十四年度において、届出を受理した件数は、合併の届出は百十二件、分割の届出は二十一件、営業譲受け等の届出は百九十七件であった。
 なお、平成十四年度に届出を受理したもののうち、独占禁止法第十五条第一項、第十五条の二第一項及び第十六条第一項の規定に違反するとして、同法第十七条の二第一項の規定に基づき排除措置を採ったものはなかった。

第10章 不公正な取引方法の指定及び運用

1 不当廉売に対する取組
 平成十四年度において、酒類販売業者四名に対し、その販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し、又は不当に低い価格で販売し、周辺地域に所在する他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められたことから、それぞれ警告を行った。また、不当廉売につながるおそれがあるとして小売業者に対し一千七件(酒類九百四件、石油製品七十九件、その他二十四件)の注意を行った。
 さらに、「電子政府」構築に向けた情報システムの調達に際して実施された官公庁の入札における、極端な安値による応札行為について、平成十四年度において、一件の警告を行った。

2 優越的地位の濫用規制
 大規模小売業者による優越的地位の濫用行為については、その性格上、取引先納入業者からの情報提供が期待しにくいことを踏まえ、従来から、納入業者からの申告を待たずに、積極的に実態調査を実施してきたところであり、最近では、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成三年七月)に示された違反行為等の有無について、アンケート調査(食料品等の納入業者合計約六千五百社)及びヒアリング調査(アンケート回答納入業者約百社)を実施し、平成十四年十二月に調査結果を取りまとめて公表した。また、フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引において、どのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体的に明らかにするため、昭和五十八年に、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズ・ガイドライン」という)を策定しているところであるが、その後のフランチャイズ・システムを活用した事業活動の増大や各市場におけるその比重の高まり等の変化を踏まえてフランチャイズ・ガイドラインを見直すこととし、平成十四年二月に改定原案を公表し、関係各方面から広く意見を求め、寄せられた意見を踏まえ、同年四月に改定フランチャイズ・ガイドラインを策定・公表した。

第11章 事業者団体

1 事業者団体の届出状況
 平成十四年度において、独占禁止法第八条第二項から第四項までの規定に基づく事業者団体からの届出件数は、成立届百四十六件、変更届一千六百三十六件、解散届百七十四件、合計一千九百五十六件であった。
 届出件数は、平成五年度以降二千件前後で推移していたが、平成十年度に、変更届出の増加に伴い、全体の届出件数が大幅に増加した。その後、一千六百件台にまで減少していたが、平成十三年度に再び増加に転じた。平成十四年度においては、前年度と同様の傾向にあり、その届出件数は平成十年度前の水準にまで増加した。
 また、平成十四年度までに公正取引委員会に対し成立の届出を行い、かつ、解散の届出を行っていない事業者団体数は、全体で一万五千五百八十団体となっている。

2 協同組合の届出状況
 独占禁止法第二十二条は、「小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること」(同条第一号)等同条各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む)の行為について、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合を除き、独占禁止法を適用しない旨を定めている(一定の組合の行為に対する独占禁止法適用除外制度)。
 中小企業等協同組合法(以下「中協法」という)に基づいて設立された事業協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」という)は、その組合員たる事業者が、@資本の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業者については一億円)を超えない法人たる事業者又はA常時使用する従業員の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業者については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については百人)を超えない事業者に該当するものである場合、独占禁止法の適用については、同法第二十二条第一号の要件を備える組合とみなされる(中協法第七条第一項)。
 一方、協同組合が前記@又はA以外の事業者を組合員に含む場合には、その協同組合が独占禁止法第二十二条第一号の要件を備えているかどうかを判断する権限が公正取引委員会に与えられており(中協法第七条第二項)、これらの協同組合に対しては、当該組合員が加入している旨を公正取引委員会に届け出る義務が課されている(中協法第七条第三項)。
 平成十四年度における中協法第七条第三項の規定に基づく届出件数は、三百三十四件であった。また、平成十四年度までに公正取引委員会に対し、届出があった組合数は、全体で四千七百二十三組合となっている。

第12章 下請法に関する業務

1 違反事件の処遇
 平成十四年度において、新規に発生した下請法違反被疑事件は一千四百二十七件である。このうち、書面調査により職権探知したものは一千三百五十七件であり、下請事業者からの申告によるものは七十件(新規発生件数全体の四・九%)である。
 また、平成十四年度において、公正取引委員会が下請法違反被疑事件を処理した件数は、一千四百二十六件であり、このうち、一千三百六十六件(処理件数全体の九五・八%)について違反行為又は違反のおそれのある行為(以下「違反行為等」という)が認められたため、四件について同法第七条の規定に基づき勧告を行い、一千三百六十二件について警告の措置を採るとともに、これら親事業者に対しては、違反行為等の改善及び違反行為等の再発防止のために、社内研修、監査等により社内体制を整備するよう指導した。

2 違反行為の態様別件数
 平成十四年度において措置した下請法違反事件を違反行為等態様別にみると、手続規定違反(第三条又は第五条違反)が一千二百六十二件(違反行為態様別件数全体の五九・一%)となっている。このうち、発注時に下請代金の額、支払方法等を記載した書面を交付していない、又は交付していても記載すべき事項が不備のもの(第三条違反)が一千百二十七件、下請取引に関する書類と一定期間保存していないもの(第五条違反)が百三十五件となっている。
 また、実体規定違反行為等(第四条違反)は、八百七十四件(違反行為態様別件数全体の四〇・九%)となっており、このうち、下請代金の支払遅延(第四条第一項第二号違反)が三百七件、手形期間が百二十日(繊維業の場合は九十日)を超える長期手形等の割引困難なおそれのある手形の交付(同条第二項第二号違反)が二百十件(同二四・〇%)、下請代金の減額(同条第一項第三号違反)が百三十七件(同一七・六%)となっている(第2表参照)。
 下請代金の支払遅延事件においては、平成十四年度中に、親事業者十六社により総額六百五十一万円の遅延利息が下請事業者三百二十七社に支払われており、減額事件においては、親事業者四十四社により総額二億二千百八万円が下請事業者三百六十二社に返還されている。

第13章 景品表示法に関する業務

1 違反事件の処理
 平成十四年度において公正取引委員会で違反事件として処理した事件のうち、排除命令を行ったものは、表示関係二十二件(平成十三年度は十件)であり、警告を行ったものは、景品関係百五件、表示関係二百九十七件の合計四百二件である(第3表参照)。
 平成十四年度の景品事件の特徴として、懸賞により、自動車、高額現金等の景品が提供される事件がみられた。また、表示事件の特徴として、食肉等の偽装表示事件、健康・環境志向の分野に係る不当表示事件等がみられたほか、不当な価格表示事件が多くみられた。

2 排除命令
 平成十四年度においては、不当表示事件として、食肉、食肉加工食品及びうなぎ蒲焼の偽装表示、著しい痩身効果を標ぼうするいわゆる健康食品の不当表示、ねずみ等の駆除効果を標ぼうする器具の不当表示、眼鏡用レンズの強化加工に関する不当表示、衣料品量販店による不当な二重価格表示、着物販売業者による取引条件の不当表示、茶筌の原産国の不当表示について、それぞれ排除命令を行った。

3 公正競争規約制度
 公正競争規約は、事業者又は事業者団体が、景品表示法第十条の規定に基づき、景品類又は表示に関する事項について、公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保するために自主的に設定するルールである。平成十五年三月末現在における公正競争規約の件数は、景品関係三十九件、表示関係六十二件、計百一件となっている。また、公正取引委員会は、公正取引協議会(規約の運用を目的として、規約に参加する事業者及び事業者団体により結成されているもの。以下「協議会」という)に対し、公正競争規約の適正な運用を図るため、協議会の行う事業の遂行、事業の処理等について指導を行っている。
 平成十四年度においては、協議会が行った公正競争規約の遵守状況調査、商品の試買検査会、審査会等について必要な指導を行った。

第14章 消費者取引に関する業務

1 消費者取引の適正化への取組
(1) 食品表示の適正化への取組
 食肉をはじめとする食品表示に対する消費者の不信感が高まっている状況を踏まえ、食品表示に対する一般消費者の信頼を回復するため、消費者が安心して商品を選択できるよう、食肉業界全体の表示の適正化を推進する観点から、食肉の表示に関する公正競争規約の見直し、関係行政機関との連携体制の強化を図った。
(2) 価格表示ガイドラインの一部改定
 不当な価格表示については、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成十二年六月策定・公表。以下「価格表示ガイドライン」という)において、景品表示法上の考え方が明らかにされているところ、新聞折り込みチラシを中心に、依然として価格表示上の問題があるとの指摘が一般消費者や事業者などから多く寄せられており、その中には、価格表示ガイドライン上、考え方が必ずしも具体的に示されていないものも現れてきた。
 このため、公正取引委員会が行った後記の実態調査及び過去の違反事例を踏まえ、景品表示法上の考え方の明確化を図るため、事例の追加等を内容とする価格表示ガイドラインの一部改定を行い、公表した(平成十四年十二月)。

2 消費者向け電子商取引への対応
 消費者向け電子商取引(以下「BtoC取引」という)について、これまで実施してきた定期的・集中的な監視調査(インターネット・サーフ・デイ)の調査結果、最近のBtoC取引をめぐる環境の変化、インターネットに関する苦情・相談の傾向等を踏まえ、BtoC取引の健全な発展と消費者取引の適正化を図るとの観点から、BtoC取引における表示について景品表示法上の問題点を整理し、具体的な問題事例を例示するとともに、事業者に求められる表示上の留意事項を取りまとめ、公表した。

3 消費者モニター制度
 平成十四年度は、合計一千名を消費者モニターに選定し委嘱し、意見聴取や独占禁止法及び景品表示法の違反被疑事実の報告、意見等を求めたほか、消費者モニターを介して広告物の収集等を行った。

第15章 国際関係業務

1 独占禁止協力協定
 近年、企業活動の国際化の進展に伴い、競争法の執行活動の国際化及び競争当局間協力の強化の必要性が高まっている。
 こうした中、平成十一年十月七日に日本国政府と米国政府の間で「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」が締結されたほか、平成十五年七月十日、同欧州共同体(交渉相手は欧州委員会)との間で「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定」が正式署名された。また、平成十四年六月のカナナスキス・サミットの際に、カナダ政府との間で「競争分野の協力における協定(仮称)」を締結するための交渉を開始することが合意されたことを受け、同年十一月十八日及び十九日に同協定に関するカナダ政府との第一回会合を開催した。その後も、両国政府は、協定締結に向けた作業を継続しているところである。さらに、我が国初の自由貿易協定である、「新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定」が平成十四年十一月に発効した。また、他の東アジア諸国との経済連携協定に向けた検討の場や、メキシコとの経済連携協定の交渉の場においても、競争政策条項に関する議論を行っている。

2 二国間意見交換
 公正取引委員会は、我が国と経済的交流が特に活発である国・地域の競争当局との間で競争政策に関する意見交換を定期的に行っている。平成十四年度においては、EU、米国及び韓国の競争当局と意見交換を行った。

3 二国間協議への対応
 日米間の二国間協議に関しては、平成十四年六月二十五日に「日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両国首脳への第一回報告書」が公表され、競争政策に関する事項として、公正取引委員会の独立性と人員、公正取引委員会の審査能力、独占禁止法執行の有効性、談合対策、競争と規制改革が明記された。
 米国政府は、平成十四年十月二十三日、「日米規制改革及び競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」を日本政府に提出した。
 同要望書においては、競争政策に関係する要望として、公正取引委員会の独立性、公正取引委員会の人的資源、公正取引委員会による執行力の実効性、入札談合への対処措置、競争と規制改革が挙げられている。公正取引委員会は、作業部会等の場において、これらの要望に対する公正取引委員会の取組等を説明した。
 日EU規制改革対話等そのほかの二国間協議について、公正取引委員会は、競争政策の観点から、積極的に対応している。

4 経済連携協定への取組
 近年のグローバル化の進展と並行して、地域貿易協定締結の動きも活発化し、現在、世界の多くの国が地域貿易協定に参加している状況にある。また、特に東アジア地域においては、経済取引の拡大とともに、経済相互依存関係が近年急速に深化し、我が国においても、域内における協力の強化が重要な対外政策の課題となっている。
 競争政策の観点からは、自由化による競争促進効果が損なわれないようにするために、各国が反競争的行為に適切に対応することが不可欠である。このため、公正取引委員会としては、経済連携の枠組みの重要な要素の一つとして、競争政策を積極的に位置付ける方向で、関係省庁等との連携を図りつつ、その枠組みの検討に参画している。
(1) 日本・シンガポール新時代経済連携協定
 我が国初の自由貿易協定の要素を含む経済連携協定である「新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定」が平成十四年一月に署名され、同年十一月に発効した。同協定は「競争」の章を設け、それぞれが反競争的行為に対して適当と認める措置を採ること、反競争的行為の規制の分野において両国が協力することを規定している。
(2) 日本・メキシコ経済連携強化のための協定交渉
 平成十四年七月に産官学による共同研究会の報告書が公表され、自由貿易協定(FTA)の要素を含めた経済連携強化のための協定の締結に向けた作業に早急に着手するよう提言されたことを踏まえ、同年十月末の首脳会談における交渉開始宣言を経て日本・メキシコ経済連携強化のための協定交渉が続けられている。競争政策については、同協定に競争政策に関する規定(条項)を盛り込む方向で検討が進められている。
(3) その他の経済連携強化の枠組みに係る検討
 このほか、我が国が現在経済連携強化の枠組みに係る検討を進めているASEAN、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、韓国との枠組みにおいて、競争政策分野での取組の重要性に係る認識を醸成し、国際協力を推進するための枠組みを構築すべく検討作業に参画している。
(4) 競争法・政策に関する日本とASEAN諸国との非公式協議
 日ASEAN包括的経済連携構想における競争政策の位置付けを検討するために、平成十五年三月、ASEAN諸国の競争関係当局との間で日ASEAN包括的連携及び競争法・政策に関する協議を開催した。同協議では、ASEAN加盟国間で競争的な環境が重要かつ必要であるという共通認識を更に促進するとともに、地域レベルでの協力を強化していく必要性がある等の意見が出され、活動を継続していくこととなった。

5 多国間関係
(1) OECD
ア 競争委員会
 競争委員会(COMP:Competition Committee)は、OECDに設けられている各種委員会の一つで、平成十三年から現在の名称に変更されたものである。我が国は、昭和三十九年のOECD加盟以来、その活動に参加してきている。競争委員会は、本会合のほか、その下に各種の作業部会を設けて、随時会合を行っている。本会合では、加盟各国の競争政策に関する年次報告が行われているほか、各作業部会の報告書の検討、各加盟国に対する規制制度改革国別審査、その時々の重要問題について討議が行われている。
 平成十四年度においては、三回の本会合が行われた。
イ 消費者政策委員会
 消費者政策委員会(CCP:Committee on Consumer Policy)は、通例年二回本会合を開催するほか、各種の作業部会等を設けて随時会合を行っている。平成十四年度においては、平成十四年十月三日から四日にかけて第六十三回本会合が、平成十四年十一月二十五日から二十六日にかけて第六十四回本会合が開催され、国境を越えた詐欺的・欺瞞的商行為からの消費者保護のためのガイドラインに関する理事会勧告案について検討が行われた。
(2) WTO
 競争政策が貿易に与える影響及び貿易政策が競争に与える影響の双方の観点から検討を行う「貿易と競争政策の相互作用に関する作業部会」は、平成九年七月に第一回が開催され、その後平成十五年二月までに二十一回の作業部会が開催された。
 平成十四年度においては、五回の作業部会が行われた。
(3) APEC
ア 個別行動計画(IAP)及び共同行動計画(CAP)の改定
 平成十四年度も、「個別行動計画」の改定を行い、APECメンバーエコノミーに対し我が国の競争法・競争政策に係る最新の情報を提供した。
イ 競争政策・規制緩和グループ
 平成十四年度においては、メキシコのメリダにて、「ドーハ開発アジェンダへの貢献」、「大阪行動指針の見直し」、「競争に関する活動の報告」等を議題に議論が行われた。
ウ 競争政策に係る研修セミナー
 我が国はタイやベトナム、マレーシアなどの国々と協力して、平成十一年度の閣僚会議で採択された「競争と規制改革を促進するためのAPEC原則」を推進することを目的とした、競争政策に係る研修セミナーを平成十四年度より三年間で五回実施することを予定しており、その第一回の研修セミナーは平成十四年八月にタイのバンコクにおいて、国際機関や学界などの協力を得つつ、APEC十七参加国・地域などから約五十名の参加を得て、成功裡に開催された。
(4) UNCTAD
 平成十四年度においては、七月に「競争法・政策に関する政府間専門家会合」が開催され、各国の競争政策の進展状況について情報交換を行うとともに、合併規制や競争当局と規制当局の関係、技術支援策の作業計画などについて議論した。
(5) ICN
 ICN(International Competition Network)は、競争法執行の手続面及び実体面での修れんを促進することを目的として平成十三年十月に発足した各国競争当局を中心としたネットワークであり、約七十か国が参加している。これまで多国間合併、競争唱導、能力向上等をテーマとして、必要に応じて電話会議を開催するほか、質問票の活用、各国当局が書面により議論すること等を通じて検討が行われてきており、当取引委員会もこれらの活動に積極的に参加している。
 平成十四年度においては、九月に第一回年次総会がイタリア・ナポリで開催され、公正取引委員会もこれに出席した。

6 海外の競争当局等に対する技術支援
 平成十四年度は、アジア諸国等十二か国十二名の競争当局等の中堅職員を主な対象とした研修、中国の競争関連当局の一つにあたる国家工商行政管理局の中堅職員十名を対象とした研修を実施した。

7 海外調査
 平成十四年度においては、米国、EU、その他主要なOECD加盟諸国を中心として、競争当局の政策動向及び議会における競争関係の立法活動等について調査を行い、その内容の分析と紹介に努めた。

8 東アジアとの経済連携強化における競争政策の役割についての提言
 公正取引委員会は、東アジアとの経済連携強化における競争政策の役割等について検討を行うため、平成十四年三月以降、四回にわたり、「独占禁止法国際問題研究会」(座長 後藤晃 東京大学先端経済工学研究センター教授)を開催し、同研究会が取りまとめた報告書を平成十四年九月に公表した。

第16章 広報及び相談に関する業務

1 広報
 公正取引委員会は、必要に応じ、独占禁止法違反事件に対する法的措置、企業結合の事前相談に対する回答、各種ガイドライン、実態調査報告書等について発表を行っており、平成十四年度には、二百六十三件の発表を行った。また特定のテーマについて、新聞等による政府広報を利用した広報を行っている。
 さらに、パンフレットやビデオ等の広報資料を作成し、事業者、一般消費者等に配布等している。加えて公正取引委員会は、我が国独占禁止法の運用状況等を積極的に海外に紹介しており、平成十四年度においては、英文パンフレット「How THE JAPAN FAIR TRADE COMMISSION Ensures A Robust Economy」の作成・配布及び公正取引委員会英文ホームページ(http://www2.jftc.go.jp/e−page/index.htm)の更新を行った。

2 国民への情報提供・国民からの意見聴取
 平成十一年度から、公正取引委員会に対する独占禁止法等の運用や競争政策の運営等に係る意見・要望の聴取等を行うための独占禁止政策協力委員制度を設置しており、平成十四年度には、平成十四年五月二十八日から六月七日にかけて全国十都市において独占禁止政策協力委員会議を開催した。また、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広い意見、要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、昭和四十七年度以降、毎年、地方有識者との懇談会を開催しており、平成十四年度においては、十月一日から十月四日までの間に、全国八都市において、公正取引委員会の最近の活動状況等について、各地の主要経済団体、消費者団体の代表者等の有識者と公正取引委員会委員等との意見交換等を行った。

3 学校教育等を通じた普及
 大学からの要請を受けて、独占禁止法等の講義に講師を派遣して、公正取引委員会の最近の活動状況、実務状況等について講義を行うとともに、大学が実施する公開講座等にも講師を派遣した。また、小・中学校から要請を受けて講師を派遣し、競争の役割等について授業を行った。

4 独占禁止法及び関係法令に関する相談
 独占禁止法、下請法、景品表示法その他関係法令に関する一般の質問に対しては、文書又は口頭にて回答を行っており、ホームページ上でも意見等の受付(アドレス:info@jftc.go.jp)を行っている。
 また、平成十二年度から申告の処理に関する疑問、苦情等の申出を受け付けるため、官房総務課(地方事務所・支所においては総務課、沖縄総合事務局公正取引室にあっては総務係)に申出受付窓口を設置しており、平成十四年度においても公正取引委員会が指名する委員等をもって構成する審理会において、当該処理が適正であったか否かの点検を行った。

第17章 その他の業務

1 政策評価
 公正取引委員会は、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)が施行されたことに伴い、同法に基づき政策評価を実施しているところであり、平成十四年度には「平成十三年度における独占禁止法違反行為に対する措置」について、実績評価方式と総合評価方式による二件の政策評価を実施・公表した。

2 電子政府の実現に向けた取組
 IT化の進展を踏まえて、政府全体で電子政府の実現に向けた取組を行っているところ、公正取引委員会においても、独占禁止法等に基づく申請・届出等について、インターネット等を利用したオンライン化を推進し、事業者の負担の軽減及び行政の効率化を図るための取組を行っており、平成十四年度中に公正取引委員会の所管する申請・届出等の手続二十二件についてオンライン化を実現した。




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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十五年九月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十五年九月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 九月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万二千二百三十一円、前年同月比〇・四%増であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十七万八千七百三十二円、前年同月比〇・三%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万四百九十七円、前年同月と同水準、所定外給与は一万八千二百三十五円、前年同月比は四・七%増であった。
 また、特別に支払われた給与は三千四百九十九円、前年同月比は〇・一%増であった。
 実質賃金は、〇・六%増であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に建設業一・六%増、金融・保険業一・一%増、卸売・小売業,飲食店〇・八%増、製造業及び不動産業〇・六%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・一%減、サービス業〇・四%減、運輸・通信業〇・六%減、鉱業三・三%減であった。

◇労働時間の動き

 八月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十二・八時間、前年同月比〇・七%増であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十二・九時間、前年同月比〇・七%増、所定外労働時間は九・九時間、前年同月比三・一%増、所定外労働時間の季節調整値の前月比は〇・二%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十五・二時間、前年同月比七・一%増、季節調整値の前月比は〇・七%減であった。

◇雇用の動き

 九月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・五%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では一・六%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは鉱業一・六%増、サービス業一・二%増、運輸・通信業〇・二%増であった。前年同月を下回ったものは卸売・小売業,飲食店〇・九%減、建設業及び不動産業一・二%減、製造業及び金融・保険業一・九%減、電気・ガス・熱供給・水道業三・八%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・四%減、パートタイム労働者一・三%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・〇%減、パートタイム労働者〇・五%増、サービス業では一般労働者〇・六%増、パートタイム労働者四・〇%増であった。










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消費支出(全世帯)は実質一・六%の減少


―平成十五年七〜九月期平均家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同期比でみると、全世帯の消費支出は、平成十四年四〜六月期、七〜九月期に二期連続の実質増加となった後、十〜十二月期以降四期連続の実質減少となった。
 内訳をみると、食料、光熱・水道などが実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同期比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十四年一〜三月期に実質増加となった後、四〜六月期以降六期連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十四年四〜六月期、七〜九月期に二期連続の実質増加となった後、十〜十二月期以降四期連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万四千二百十一円となり、前年同期に比べ、名目〇・九%の減少、実質〇・六%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前期に比べ実質〇・三%の減少となった。
 また、勤労者世帯の消費支出は前期に比べ実質〇・三%の減少となった。












●インターネットでの人権侵害を考える


守りたい ネットのモラル


 さまざまな情報を調べたり、メールで連絡をとったりと、インターネットは私たちの生活に欠かせないものとなりつつあります。一方で、だれでも気軽に情報発信できるインターネットでは、個人のプライバシーに関する情報や差別を助長する情報が掲載されるなど、人権を侵害するような問題が起こっています。いま、公の場であるインターネットでの私たちのモラルが問われています。

◆急速に広がるインターネット
 平成十四年末のわが国におけるインターネット利用者数は六千九百四十二万人。その数は五年前と比べて六倍近くに増えており、携帯端末などを含めると、国民の二人に一人は、なんらかの形でインターネットを利用していると言われています。
 私たちの生活のさまざまな側面での利用が進むインターネット。しかし近年、このインターネットを悪用した人権侵害行為がみられるようになっています。

◆広まったら取り消せない
 私たちの身近なメディアであるインターネットには二つの大きな特徴があります。一つは、一度に大量の情報を送ったり、不特定多数の人が情報を見られるようにしたりすることを、だれでも簡単に行えること。もう一つは、これらをすべて匿名で行えることです。
 インターネットで公開された情報は、見る人の時間や場所などを問わないため、それらは内容にかかわらず、驚くべき早さで拡大します。また、情報を公開する手間がほとんどかからないことから、気軽に情報を流してしまうことも多く、あいまいで、まぎらわしい情報も多くなりがちです。なかには、悪質な意図をもって、うそや差別的な発言などを広めようとする人もいます。
 例えば、事件や事故などが報道されたとき、その関係者についてのプライベートな情報を流すことは、重大な人権侵害に当たります。
 さらに、こうした行為のほとんどは匿名で行われるため、情報の元をたどることが難しく、たとえ誤った内容であっても、それらを訂正したり削除したりすることは大変困難です。

◆その書き込みが人権侵害に
 インターネットで情報を発信する際には、不特定多数の人が、その情報を見るということを、常に意識する必要があります。
 例えば、知人だけで使っているインターネットの掲示板だからといって、メールアドレスや電話番号、住所などといった個人的な情報を書き込んでしまうと、それらは、まったく見知らぬ人からも見ることができる情報となってしまいます。
 こうした行為は、たとえ親切心から出たものであっても、プライバシーの侵害となります。特に、実生活上の連絡先が知られるなどした場合、当人が重大な犯罪に巻き込まれる可能性もあり、大変危険です。
 インターネットは、私たちが実際に暮らす社会と同じ、みんなで作る公の場です。プライベートな情報や人を傷つけるような情報を流すことは、最終的に、自分自身を傷つけるような環境を作り上げることにつながります。
 自らの発言に責任を持つ。人を不快にさせるような言動をしない。情報をうのみにせず、正しい情報を自ら選び取る。こうしたモラルに基づく当たり前のふるまいで、インターネット上での悪質な人権侵害は、確実に減らすことができるのです。

◆まずは管理者に知らせる
 掲示板の書き込みやホームページなど、インターネット上の情報によって人権が侵害された、もしくは、そうした情報を見かけた場合には、まず、それらを管理している人に対し、メールなどを使って、情報の訂正・削除を要請しましょう。同時に、それらを保管しているインターネット接続会社(プロバイダ)にも、問い合わせをして、情報が必要以上に広まることのないように対処することが大切です。
 また、全国の法務局・地方法務局では、こうした問い合わせなどに対するアドバイスを行っています。悪質な情報が広まる前に、早めに相談するようにしましょう。

〜こんな行為が人権侵害に〜

・本人の許可なく住所や電話番号、メールアドレスなどを公開する
・他人を誹謗(ひぼう)中傷するような情報を、一方的に掲載する
・事件や事故などの関係者のプライベートな情報を公開する

■関連ホームページ
・法務省「人権擁護局」
 (http://www.moj.go.jp/JINKEN/)
・法務省「人権教育・啓発に関する基本計画」
 (http://www.moj.go.jp/JINKEN/JINKEN83/)
  (『オンライン広報通信』1月号より掲載)




一月は「食を考える月間」です


 おせち料理や七草がゆなど、一月は地域の特色をいかした食文化に触れる機会が多くなる季節。また、お正月休みの帰省などで家族が集まりやすいこの時期は、郷土料理などを通じて、伝統的な食文化を伝え、「食」について語り合う絶好の機会です。
 こうしたことから、毎年一月は「食を考える月間」として、食の安全・安心や食文化、食生活などについて考えるきっかけとなるような、さまざまなイベントが全国で行われています。
 生涯を通じて健全で安心な食生活を送るためには、「食」に対する正しい知識を得て、望ましい食生活を実践することが欠かせません。こうしたイベントをきっかけとして、食に関して学んだり、考えたりしてみませんか。

■関連ホームページ
・農林水産省「食を考える月間」
 (http://www.maff.go.jp/syoku_kangaeru/top.htm)
・農林水産省「食育関係」
 (http://www.maff.go.jp/syokunou/index.html)
・農林水産省「食料需給関係情報」
 (http://www.kanbou.maff.go.jp/www/anpo/index.htm)
 (『オンライン広報通信』一月号より掲載)






    <1月28日号の主な予定>

 ▽法人企業動向調査(九月)………内 閣 府 




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