官報資料版 平成16年2月18日




                  ▽犯罪白書のあらまし…………法 務 省

                  ▽月例経済報告(一月)………内 閣 府











犯罪白書のあらまし


―変貌する凶悪犯罪とその対策―


法 務 省


 平成十五年版の犯罪白書は、去る十一月二十八日閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは、次のとおりである。

<はじめに>

 本白書は、平成十四年を中心とした犯罪の動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに、国民が最も関心を寄せる凶悪犯罪である殺人・強盗に焦点を当て、「変貌する凶悪犯罪とその対策」を特集として取り上げている。
 一般刑法犯(交通関係業過を除く刑法犯をいう。)の認知件数が平成八年から連続して戦後のワースト記録を更新し続け、その増加にいまだ歯止めがかかっていない上、急落した検挙率の回復の歩みは遅い。社会の注目を浴びる凶悪事件が相次いで発生するなど悪質化も目立ち、その影響が少年犯罪にも深く及んでいる。このような犯罪動向の下で、治安に対する国民の意識は、「安全」から「不安」へと大きく変化しつつある。
 犯罪白書は、このような状況を踏まえ、平成十三年には、増加が著しい窃盗等の分析を、十四年には暴力的色彩の強い犯罪の分析を行い、犯罪情勢悪化の要因等を探求してきたが、本年は、犯罪情勢悪化の実相を解明する指標として凶悪犯罪(殺人及び強盗)を選択し、その動向を多角的に検討することとした。
 殺人及び強盗は、件数的には刑法犯の一部を占めているにすぎないが、生命・身体・財産に対する侵害の程度の著しい重大犯罪であって、現実的にも発生した犯罪の中で危険かつ悪質な重大事犯の多くが集約される。その動向は一般刑法犯のそれとは無関係ではあり得ず、また、国民の不安感に及ぼす影響も絶大である。こうした凶悪犯罪を取り上げ、多角的に分析してその実態や背景等を明らかにすることは、犯罪の防止と犯罪者の処遇のためにより効果的な対策を講ずる上で有効である。
 他方、近年、社会の耳目をしょう動させた少年による殺人事件が相次いで発生しており、また、強盗の検挙人員中に占める少年の増加が著しく、特に集団で路上強盗を敢行する事犯が激増している。少年によるこれらの凶悪犯罪の増加が一層治安に対する不安を深刻化させる一因となっていると思われる。凶悪犯罪に走る少年の特質を探り、背景にある問題点等を分析するなどして非行防止及び改善更生に資する資料を提供する必要がある。
 このように、凶悪犯罪の実態・背景等を明らかにして問題点等を分析することは、犯罪防止と犯罪者処遇のための効果的な対策を講ずる上で有効と考えられることから、「変貌する凶悪犯罪とその対策」と題して特集を組んだ次第である。
 本白書の構成は、五編から成り、第一編では、平成十四年の犯罪動向を、第二編では、検察、裁判、矯正及び保護の各段階における成人犯罪者の処遇の実情を、第三編では、犯罪被害者の救済の実情を、第四編では、少年非行の動向と非行少年の処遇を、それぞれ紹介し、第五編では、特集として、「変貌する凶悪犯罪とその対策」について記述している。

<第一編> 平成十四年の犯罪の動向

一 刑法犯の概況第1図第2図第1表参照

1 概説
 平成十四年の刑法犯の認知件数は、三百六十九万三千九百二十八件(前年比三・一%増)、一般刑法犯は二百八十五万四千六十一件(同四・三%増)であり、戦後の最多記録を七年連続で更新した。ただし、その増加のペースは前年比一〇%前後であった十二、十三年に比べると弱まっている。
 十四年の刑法犯の認知件数を罪名別にみると、窃盗(六四・四%)と交通関係業過(二二・七%)が多く両者で全体の約八七%を占める。
 十四年の刑法犯の検挙人員は四年連続で戦後最多を更新し、百二十一万九千五百六十四人となっており、これを罪名別にみると、交通関係業過が最も多く、次いで窃盗となっており、両者で全体の約八六%を占めている。
 十四年の刑法犯の発生率(人口十万人当たりの認知件数)は、二千八百九十九件(前年比八十五件増)と戦後最高水準にあり、一般刑法犯の発生率も前年比九十一件増の二千二百四十件と高水準にある。
 検挙率は近年低下傾向にあり、十四年は前年に比べて若干上昇したものの、刑法犯で三八・八%(〇・〇三ポイント上昇)、一般刑法犯で二〇・八%(〇・九ポイント上昇)となお低い水準にある。

2 窃盗を除く一般刑法犯の動向第3図参照
 平成十四年における窃盗を除く一般刑法犯の認知件数は、四十七万六千五百七十三件(前年比二〇・六%増)、検挙件数は、十八万八千八百九件(同八・二%増)、検挙人員は、十六万七千百五十五人(同六・九%増)である。
 近年、検挙件数、検挙人員は横ばいないしは増加傾向にあるが、認知件数がそれ以上のペースで急激に増加しているため、検挙率が低下して十四年は三九・六%となった。主要罪名についてみると、殺人の認知件数は横ばいないし微増傾向であり、検挙率は九四〜九八%台で安定しているが、強盗、傷害、暴行、脅迫、恐喝、強姦、強制わいせつ、器物損壊、住居侵入といった暴力的色彩の強い九罪種は、ここ数年は認知件数の増加と検挙率の低下が著しく、十四年もほぼ同様の傾向が続いているが、その中では、十三年に五割を割った強盗の検挙率が五一・一%に回復したことが特徴となっている。

3 窃盗の動向第4図参照
 窃盗は、ここ数年、認知件数の急増、検挙率の急落という傾向が続いていたが、平成十四年は、認知件数の増加のペースが弱まり二百三十七万七千四百八十八件(前年比一・六%増)となり、検挙率も前年に比べて若干上昇して一七・〇%(一・三ポイント増)となっている。なお、重要窃盗犯(侵入盗・すり・ひったくり・自動車盗)は窃盗全体の二〇・一%を占め、検挙率は、二八・〇%で窃盗全体よりも高い水準を維持している。重要窃盗犯の中では、侵入盗が三十三万八千二百九十四件、ひったくりが五万二千九百十九件と、それぞれ過去三十年間で最多を記録した。

二 特別法犯の概況

 平成十四年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は、九十七万六千二百三十二人で前年比三万三千六百十八人減となっている。この減少は道交違反の受理人員の減少によるところが大きい。罪名別では、道路交通法違反が八十六万一千百四十三人(八八・二%)、覚せい剤取締法違反が二万四千八百一人(二・五%)と、両者で特別法犯の九〇%以上を占めている。なお、廃棄物処理法違反は、前年比五百三十人増の四千三百四十一人となっている。道交違反を除く特別刑法犯の構成比をみると、薬物関係が最も高く、以下、保安関係(銃刀法違反等)、外事関係(入管法違反等)の順となっている。

三 各種犯罪の概況

1 交通犯罪
 交通事故の発生件数は、昭和五十三年以降増加傾向にあったが、平成十四年は前年に比べ減少した。負傷者数は、ここ数年は過去最多記録を更新していたが、十四年は前年に比べ減少し、死亡者数は、五年以降減少傾向にあり、十四年も前年より減少した。交通関係業過及び危険運転致死傷の検挙人員は、十二年に戦後初の八十万人を突破し、十四年には八十七万二千六人となった。
 道交違反の送致件数では、交通三悪(飲酒運転、無免許運転、速度超過)が七六・一%を占めている。

2 薬物犯罪
 覚せい剤取締法違反の検挙人員は、昭和二十九年に最初のピークを迎えた後急激に減少したが、四十五年以降再び増加に転じて五十九年には第二次乱用期を迎え、六十三年まで二万人台で推移した。その後、減少したが、平成七年以降、増加傾向に転じて九年には第三次乱用期を迎えた。十四年は前年比六・三%減の一万六千九百六十四人となっている。
 薬物押収量をみると、覚せい剤は前年よりも約二十三キログラム増加し約四百四十二キログラム、大麻は過去最高を記録した十三年よりも減少し約六百二十一キログラムとなり、MDMA等錠剤型合成麻薬は、過去最高の十九万二百八十一錠となった。
 また、麻薬特例法違反に係る没収・追徴金額は、合計で約十五億四千九十五万円である。

3 財政経済犯罪
 税法違反の平成十四年における検察庁新規受理人員は、法人税法違反が二百二十二人(前年比百十四人減)、地方税法が九十三人(同六十四人増)、所得税法が五十人(同四十三人減)、消費税法が十六人(同十四人増)、相続税法が五人(同二人減)となっており、十四年度における脱税額三億円以上の事件は二十六件、五億円以上の事件は十三件となっている。

4 ハイテク犯罪
 ハイテク犯罪の検挙件数は、平成七年以降増加傾向が続いており、十四年は一千三十九件で初めて一千件を超えた。罪名別では、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、次いで詐欺が多く、一方では、インターネットを通じて取引されたけん銃が百十五丁押収されるなどコンピューター・ネットワークの悪用が多様化する傾向もうかがわれる。

5 銃器犯罪
 平成十四年の銃器犯罪は、銃器発砲事件数が前年の二百十五件から百五十八件に、また、これによる死亡者数が三十九人から二十四人に、それぞれ減少した。銃器使用犯罪の検挙件数に占める暴力団以外の者の比率は、四二・三%(前年比〇・一ポイント上昇)であり、押収けん銃に占める真正けん銃の割合は、九〇・四%である。

四 各種の犯罪者による犯罪の動向

1 暴力団犯罪
 暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員をいう。)は、平成八年から増加傾向を示し、十四年末現在の暴力団構成員等は、約八万五千三百人であり、その中でも準構成員が増加傾向にある。
 また、同年における暴力団相互の対立抗争事件の発生回数は、前年比五十三回減の二十八回であり、銃器使用率は、七五・〇%(前年比一二・七ポイント低下)である。
 交通関係業過及び交通関係法令違反を除く暴力団構成員等の検挙人員は、平成元年以降三万人台を推移しており、十四年は、三万八百二十四人(前年比九十三人減)となっている。

2 外国人犯罪
 外国人による一般刑法犯検挙件数・人員をみると、来日外国人以外の外国人では長期減少傾向にある。しかし、来日外国人では、昭和五十五年以降大きく増加しており、検挙人員において平成三年から、また、検挙件数において五年から、来日外国人がその他の外国人を超えている。十四年の来日外国人による一般刑法犯の検挙人員は七千六百九十一人、検挙件数は二万四千二百五十九件であり、特別法犯の送致人員は八千五百二十二人、送致件数は一万四百八十八件である。一般刑法犯の検挙件数では、過去最高を記録した十一年に次ぐ件数を、それ以外はそれぞれ過去最多を記録した。
 十四年における来日外国人の検察庁終局処理人員を罪名別にみると、一般刑法犯では、窃盗(四千二百七十人)、傷害(七百五十三人)、強盗(三百七十二人)の順に多く、道交違反を除く特別刑法犯では、入管法違反(一万三百二十六人)、覚せい剤取締法違反(八百三十人)、大麻取締法違反(二百五十六人)の順に多い。

3 公務員犯罪
 平成十四年の公務員犯罪は、検察庁新規受理人員が、前年比九百三十九人(三・四%)増の二万八千二百五十三人であり、罪名別では、自動車による業務上過失致死傷が八四・四%を占める。
 十四年に起訴された公務員の総数は、前年比六十八人減の三千二百二十二人である。また、十四年の起訴率は一一・六%である。

4 精神障害者の犯罪
 平成十四年における一般刑法犯検挙人員のうち、精神障害者は八百二十人、精神障害の疑いのある者は一千五百三十九人で、両者の一般刑法犯検挙人員に占める比率は〇・六八%である。また、罪名別検挙人員に占める比率をみると、放火の一四・〇%、殺人の八・五%が特に高くなっている。
 平成十四年に検察庁で不起訴処分になった被疑者のうち、精神障害により、心神喪失と認められた者は三百六十人であり、罪名別でみると、殺人(七十人)が最も多く、傷害(六十六人)、放火(五十七人)の順となっている。また、精神障害により、心神耗弱と認められ、不起訴処分となった者は三百四人であり、罪名別では、傷害(六十九人)が最も多い。第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪となった者は一人(強盗)であり、心神耗弱を理由として刑を減軽された者は六十九人であった。これを罪名別にみると、殺人(二十二人)が最も多い。これらの総数七百三十四人を精神障害名別でみると、多い順に、精神分裂病(四百六十五人)、そううつ病(五十八人)、アルコール中毒(四十二人)となっている。

五 諸外国の犯罪動向との対比

 フランス、ドイツ、英国、米国及び日本における二〇〇一年の犯罪について、主要な犯罪、殺人及び窃盗について対比した。主要な犯罪の認知件数は、比較対象国すべてにおいて前年を上回っているが、我が国の認知件数及び発生率は、近年上昇しているものの、他の四か国を大きく下回っている。検挙率はすべての国において低下している。殺人については、我が国は、五か国中、認知件数・発生率ともに最も低く、検挙率は、ドイツとともに九割を超え高い水準を維持している。窃盗については、我が国における検挙率はフランス、英国と同様低下傾向にあるが、認知件数、発生率は五か国中、最も低い。

<第二編> 犯罪者の処遇

一 検察

1 罪名・処理区分別の検察庁終局処理人員第2表参照
 平成十四年における検察庁終局処理人員は、二百二十万四千五百七十八人(前年比〇・七%減)であり、その処理別内訳は、公判請求が六・三%、略式命令請求が三八・八%、起訴猶予が四〇・七%となっている。しかし、刑法犯の公判請求人員は、八年連続して増加しており、特に十一年以降は、対前年比五%以上の増加を続けている。
 また、起訴率は五一・二%、起訴猶予率は四七・四%であった(「起訴率」とは、起訴人員/(起訴人員+不起訴人員)×一〇〇の計算式で得た百分比をいい、「起訴猶予率」とは、起訴猶予人員/(起訴人員+起訴猶予人員)×一〇〇の計算式で得た百分比をいう。)。
 一般刑法犯の起訴率は、五五・四%(前年比一・五ポイント減)、起訴猶予率は、三六・〇%(同一・八ポイント増)で、道交違反を除く特別法違反の起訴率は、七三・五%(同〇・四ポイント増)、起訴猶予率は、二二・八%(同〇・四ポイント減)となっている。
 十四年の終局処理人員を罪名別でみると、道交違反、交通関係業過が多く、次いで、窃盗、横領、傷害の順となっている。

2 検察庁既済事件の逮捕・勾留状況
 平成十四年における検察庁既済事件(交通関係業過及び道交違反を除く。)のうち、被疑者が逮捕された事件の占める比率(身柄率)は三二・三%であった。これを罪名別にみると、身柄率が最も高いのは強盗(七四・五%)であり、以下、強姦(七三・一%)、危険運転致死傷(七二・七%)、覚せい剤取締法違反(六九・七%)、殺人(六九・三%)等の順となっている。身柄事件のうち、検察官が勾留を請求したものの占める比率(勾留請求率)は九四・〇%であり、そのうち裁判官によって勾留が却下されたものは〇・一%であった。

二 裁判

1 通常第一審裁判所の終局処理人員第3表参照
 平成十四年における地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所の通常第一審終局処理人員総数は、八万六千六百三十人(前年比六・三%増)であり、うち有罪は八万六千二百五十九人、無罪は七十人であった。
 このうち、地方裁判所による終局処理人員七万四千百九十二人について罪名別にみると、最も多いのが覚せい剤取締法違反の一万三千二百八十六人(総数の一七・九%)、以下、窃盗九千七百十二人(同一三・一%)、道交違反八千六百二十人(同一一・六%)、過失傷害(業務上過失致死傷を含む。)七千七百八十九人(同一〇・五%)の順となっている。

2 第一審の量刑
 平成十四年における地方裁判所の有期懲役・禁錮の科刑分布状況をみると、刑期が一年以上二年未満の者が四二・八%で最も多く、次いで、二年以上三年以下(二八・三%)、六月以上一年未満(一二・七%)、六月未満(九・〇%)となっている。また、十年を超える有期刑を宣告された者は三百二十一人であった。裁判確定人員について懲役刑の執行猶予率をみると、平成五年以降、六〇%前後で推移しており、十四年は六一・四%であった。
 なお、十四年の死刑言渡し人員は十八人、無期懲役言渡し人員は九十八人であった。死刑言渡し人員を罪名別にみると、殺人十二人、強盗致死(強盗殺人を含む。)六人であり、また、無期懲役言渡し人員は、殺人二十二人、強盗致死傷七十二人、放火三人、強姦等一人となっている。
 そのほかでは、道路交通法改正による罰金額の上限の引上げに伴い、道交違反により二十万円以上の罰金に処された者は、平成十三年がわずか九百六十八人であったのに対し、十四年は十万四千四百五十五人に増加したことが注目される。

三 成人矯正

1 行刑施設の一日平均収容人員の推移
 行刑施設の一日平均収容人員は、平成五年以降増加しており、十四年には、六万七千三百五十四人(前年比六・二%増)となった。そのうち受刑者は五万五千百三十二人(同六・七%増)、未決拘禁者は一万一千六百九十四人(同三・三%増)である。
 十四年末現在の収容率は全体では一〇六・五%、既決拘禁者では一一六・五%となり、本所に限ると、行刑施設の九割弱が定員を超える収容となっている。

2 新受刑者数の推移
 新受刑者数は、平成五年以降増加傾向にあり、十四年は三万二百七十七人(前年比六・四%増)となっている。十四年における新受刑者を罪名別構成比の高い順でみると、男子では、@窃盗(二七・四%)、A覚せい剤取締法違反(二二・二%)、B詐欺(七・一%)、C道路交通法違反(六・八%)、D傷害(六・三%)の順であり、女子では、@覚せい剤取締法違反(四一・八%)、A窃盗(二二・二%)、B詐欺(八・四%)、C殺人(四・三%)、D道路交通法違反(三・七%)の順である。
 近年における新受刑者の動向として、六十歳以上の者の増加が目立つこと(十四年新受刑者の八・六%を占める。)、新受刑者に占める初入者(裁判の確定により初めて行刑施設に入所した者をいう。)の比率が上昇傾向にあること(十四年新受刑者の五〇・九%を占める。)、刑期が二年を超える者の割合が漸増傾向にあることが挙げられる。

3 出所受刑者の再入状況
 平成九年における出所受刑者について、十四年末までの再入状況を出所事由別にみると、満期釈放者の約六割、仮釈放者の約四割が再入している。

四 更生保護

1 仮出獄人員及び仮出獄率
 仮出獄人員は、平成九年以降増加傾向にあり、十四年は一万五千三百十八人(前年比八百九十五人増)となっている。仮出獄率は、昭和五十九年以降五五%台から五八%台で推移しており、平成十四年は五六・一%である。

2 保護観察事件の受理状況
 平成十四年の保護観察新規受理人員(保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含む。)は、七万五千百九十七人で、このうち、仮出獄者が一万五千三百十八人、保護観察付き執行猶予者が五千三百八十八人となっている。仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者を罪名別にみると、多い順に窃盗、覚せい剤取締法違反であるが、女子においては、覚せい剤取締法違反が最も多い。

3 保護観察中に再処分を受けた者の状況
 平成十四年に保護観察が終了した者のうち、保護観察期間中再度罪を犯しかつ新たな処分を受けた者の占める比率は、仮出獄者が〇・九%(百三十四人)、保護観察付き執行猶予者が三七・二%(一千九百九十九人)となっている。

<第三編> 犯罪被害者の救済

 平成十四年に認知された一般刑法犯の被害者数(被害者が個人である場合)は、二百四十八万六千五十五人(前年比三・三%増)で、人口十万人当たりの被害発生率は、一千九百五十・八人(前年比六十・九人上昇)であり、被害者数、被害発生率ともに九年から増加・上昇が続いている。
 十四年に一般刑法犯により生命・身体に被害を受けた者は、死亡者一千三百六十八人(前年比七十三人減)、重傷者三千六百五十五人(同二百十九人増)、軽傷者四万三千百七人(同二千二百六人増)、全体で四万八千百三十人(同二千三百五十二人増)である。近年、死亡者数は大きく変動していないが、重傷者数及び軽傷者数は、九年から増加を続けている。財産犯(強盗、恐喝、窃盗、詐欺、横領及び遺失物等横領をいう。)による財産上の被害は、被害者数が二百二十一万七千三百七十四人(前年比一・二%増)、被害総額が三千七百五十八億八千万円(同二・五%増)である。強姦の被害者数は、二千三百五十七人(前年比百二十九人増)、九年以降おおむね増加する傾向が続いており、強制わいせつの女子の被害者数も、九千二百二十五人(同百八十一人増)で、十一年以降増加傾向が続いている。

<第四編> 少年非行の動向と非行少年の処遇

一 少年非行の動向と特質

1 少年刑法犯検挙人員第5図参照
 少年刑法犯検挙人員は、昭和二十六年の十六万六千四百三十三人をピークとする第一の波、三十九年の二十三万八千八百三十人をピークとする第二の波、五十八年の三十一万七千四百三十八人をピークとする第三の波という三つの大きな波がみられる。平成八年以降増加していたが、十一、十二年と減少した後、増加に転じ、十四年の少年刑法犯検挙人員は二十万二千四百十七人(前年比一・七%増)となっている。
 また、一般刑法犯少年比(成人及び触法少年を含む全検挙人員に占める少年一般刑法犯検挙人員の比率)は、平成十年以降の成人検挙人員増加に伴って低下しており、十四年には四四・一%(前年比一・九ポイント低下)となった。

2 年齢層別の少年刑法犯検挙人員人口比
 少年一般刑法犯の年齢層(十四歳未満、十四・十五歳、十六・十七歳、十八・十九歳)別人口比は、いずれの年齢層においても、平成八年から三年連続して上昇した後、十一、十二年と低下に転じたものの、十三年はどの年齢層においても再び上昇し、十四年は年少少年が横ばいである以外は、すべての年齢層で上昇した。

3 少年検挙人員の罪名別動向
 平成十四年における少年一般刑法犯の罪名別構成比では、窃盗(六〇・一%)が最も多く、次いで横領(二二・九%)であるが、横領はほとんどが遺失物等横領である。
 凶悪犯の検挙人員をみると、殺人については、平成十年以降、百人を超えて推移していたが、十四年は八十三人となった。強盗については、八年に一千人を超え、九年には一千七百一人と急増した後、おおむね一千六百人台で推移し、十四年は、一千六百十一人となっている。
 共犯事件の比率が最も高いのは、強盗(七一・二%)で、次いで、恐喝(六一・五%)、傷害(四一・七%)の順であり、いずれも、成人の場合の比率(強盗二三・二%、恐喝三八・八%、傷害一一・二%)を大きく上回っている。
 非行少年率は、どの年次の世代についてもおおむね十四歳から十六歳時に高率となり、十七、十八、十九歳と年齢が高くなるにつれて低くなる傾向がみられる。

二 非行少年の処遇

1 少年事件の検察及び裁判
 平成十四年における少年保護事件の家庭裁判所受理人員は、二十八万一千六百三十八人(前年比〇・九%減)で、終局処理人員(業過、危険運転致死傷、道交違反及び虞犯を除く。)は十四万三千二百二十六人である。処理内容別では、審判不開始が七二・六%と最も高く、保護観察(一二・七%)、不処分(一〇・三%)、少年院送致(三・六%)、刑事処分相当としての検察官送致(〇・三%)の順である。

2 少年鑑別所における鑑別
 少年鑑別所新収容人員は、昭和六十年以降平成七年まで減少傾向を示していたが、八年以降に増加に転じ、十三年には、戦後における少年非行の第三の波とされる時期のピークである昭和五十九年の総数を超える数値となり、十四年は、わずかに減少して二万二千七百六十七人(前年比〇・九%減)となったものの、依然として右ピーク時の総数を超えている。

3 少年院における処遇
 平成十四年における少年院新収容者数は五千九百六十二人(前年比〇・八%減)、一日平均収容人員は四千七百九十四人(同〇・三%減)である。十四年における少年院新収容者の非行名別構成比を、男女、年齢層の別にみると、男子では、窃盗の三六・三%が最も高く、次いで道路交通法違反(一二・九%)、傷害(一二・九%)、強盗(一〇・二%)、恐喝(九・一%)の順であり、年齢層が上がるに従って道路交通法違反、恐喝の比率が高くなり、窃盗、傷害の比率は低くなっている。女子では、覚せい剤取締法違反の三二・七%が最も高く、次いで窃盗(一六・四%)、虞犯(一四・八%)、傷害(一一・四%)、強盗(六・七%)の順であり、年齢層が上がるに従って覚せい剤取締法違反の比率が高くなり、虞犯の比率は低くなっている。

4 少年受刑者の処遇
 裁判の確定により新たに入所した少年受刑者数(懲役又は禁錮の言渡しを受けた者のうち、第一審判決時二十歳未満の者をいう。)は、昭和二十六年を最後のピークとして平成八年までおおむね減少傾向が続き、その後増加に転じ、十四年には、前年比五八%増の八十七人となった。

5 少年の更生保護
 保護観察処分対象少年の新規受理人員は、平成八年以降増加したが、十一年以降減少傾向にあり、十四年は、前年比一・六%減の四万八千六百四十三人となっている。
 少年院仮退院者は、昭和六十年まで増加した後、平成八年までおおむね減少したが、九年以降増加が続き、十四年は、前年比一・〇%増の五千八百四十八人となっている。
 保護観察処分少年及び少年院仮退院者について、保護観察期間中の再処分率をみると、両者とも、八年まではおおむね低下する傾向にあったが、保護観察処分少年は、九年以降やや上昇傾向にあり、十四年には一九・二%となり、少年院仮退院者では、九年以降上昇・低下を繰り返し、十四年には、前年比〇・九ポイント低下の二四・四%となっている。

<第五編> 変貌する凶悪犯罪とその対策

一 はじめに

 治安悪化の実相を解明するため、暗数が少ないとされる凶悪犯罪(殺人及び強盗)に焦点を当て、「地方裁判所で死刑・無期懲役の求刑がなされた重大事犯の動向に関する特別調査」及び「強盗事件を犯す少年の実態とその問題性に関する特別調査」を全国規模で実施し、統計資料に基づく分析に加え、これらの調査結果を基に、凶悪犯罪の実態と背景・要因等を分析・検討するとともに、対策と課題についても論及した。

二 最近における凶悪犯罪の概況第6図@AB参照

 殺人の認知件数は、平成三年ころから横ばいないし微増傾向にあり、検挙件数と検挙人員に大きな差はなく、単独犯が多い傾向がうかがわれる。強盗の認知件数は、二年から増加傾向に転じ、八年以降急増しており、十四年には七年の三倍に達している。検挙人員が検挙件数を上回る傾向があり、強盗に共犯事件が相当数含まれていることを示している。また、強盗では、ここ数年、侵入強盗、非侵入強盗とも増加傾向にあるが、特に後者、中でも路上強盗の増加傾向が著しく、昼間より夜間の犯行が増加する一方で、重傷率が上昇傾向にある。

三 凶悪犯罪の変化の特質を表す五つのキーワード

 凶悪犯罪の変貌を的確に理解するため、「若年犯罪者の変貌」、「暴力団と外国人犯罪者の変貌」、「社会的背景とその影響」、「犯罪発生の地域的変動」、「女性、未成年者、高齢者の被害の増加」の五つのキーワードに即して分析を進めた。

1 若年犯罪者の変貌第7図参照
 年齢別検挙人員人口比をみると、殺人については、犯罪少年と高年齢層がやや上昇傾向にある。一方、強盗については、若年者、特に犯罪少年の人口比が平成八年以降急激に上昇しており、取り分け十六、十七歳の中間少年層の上昇傾向が顕著である。少年では、路上強盗が増加し、強盗の共犯率は成人に比して高くかつ上昇しており、動機は、遊興費充当/小遣い銭ほしさが大半を占めているほか、学職別でみると無職少年とともに高校生が増加傾向にある。このような背景には、親の指導力低下や無職少年の増加、少年の意識における変化のほか、深夜営業飲食店等の増加等少年を取り巻く環境の変化がある。

2 暴力団と外国人犯罪者の変貌第8図第9図参照
 暴力団関係者による殺人はおおむね減少傾向にある一方で強盗が増加傾向にある。財産犯に関しては、不況を背景に、従来型の恐喝からより安直ないし暴力的な強盗・窃盗の奪取犯等へとシフトする兆しがみられる。
 来日外国人の凶悪犯罪も増加傾向にあり、強盗では、正規滞在者及び不法滞在者による犯行がいずれも増加し、集団化が進む一方で、暴力団との連携事案もみられる。

3 社会的背景とその影響
 無職者や経済的破綻者の増大等の社会的背景が、無職凶悪犯罪者の増加や強盗の動機の変化(生活困窮及び債務返済を動機とするものの増加)に影響を与えていると考えられる。

4 犯罪発生の地域的変動
 最近五年間については、殺人・強盗とも、認知件数・検挙件数・検挙人員のいずれについても人口の多い県が多い傾向にあり、特に強盗の場合、東京及びその周辺の首都圏と大阪への集中ぶりが際立っている。発生率をみると、殺人は高低の分布が全国に分散しているのに対して、強盗は東京及びその周辺と大阪に偏在している。
 過去二十年間における地域的変動をみると、殺人については、各都道府県間の発生率の増減格差は小さいが、強盗については、発生率の増減に大きな格差がある。増加が大きいのは、東京・大阪周辺のベッドタウン地域等であり、東京圏に関しては、発生率の増減におけるドーナツ化現象が生じている。
 来日外国人による殺人は東京が突出しているほか、その周辺に集中している。強盗は、殺人以上に東京が突出して全国の四〇%程度を占めている。

5 女性・未成年者・高齢者の被害の増加第10図@AB参照
 強盗では女性被害者が人数・比率ともに上昇している。未成年者については、未成年人口が減少しているにもかかわらず、強盗の被害者が増加している。高齢者をみると、殺人・強盗ともに被害者数・比率が増加・上昇の兆しを示しており、今後の動向に注意する必要がある。
 凶悪犯罪による高齢者の被害件数が増加している背景としては、@高齢化社会の出現、A高齢者単身(独居)・夫婦のみ世帯の増加、B比較的金融資産を多く保有している高齢者世帯が多くなったことなどが挙げられる。

四 特別調査―最近の強盗事犯少年の実態及びその問題性―

 強盗事犯少年の実態等を明らかにするため、全国の少年鑑別所に平成十四年及び五年に入所した男子少年を対象に特別調査を実施した。

1 共犯・事件のエスカレート化に関する分析(十四年対象者)(第11図参照
 共犯関係と犯行態様の関係をみると、非侵入強盗の共犯率・多数共犯率が目立ち、共犯者数が増えるにつれて被害者を負傷させる程度が進んでいく傾向がみられる。また、事件に関する認識については、強盗事犯少年の半数以上が予想以上にエスカレートしたとの認識を有していた。

2 動機・手口の着想等に関する分析(五年対象者と十四年対象者との比較)
 五年対象者と十四年対象者を比較すると、犯行場面における最関心事としては、金品奪取を挙げる者が増えており、その動機としては「遊興費ほしさ」「簡単に金品が手に入るのならほしい」の割合が増えている。犯行手口の着想については、共犯では「友人・先輩・共犯者から聞いた」、単独犯では「マスコミ報道や本などにヒントを得た」の割合が増えている。

3 環境とのかかわり等に関する分析(十四年対象者)(第12図第13図参照
 家族関係では、十四年対象者の六割は何らかの問題を抱えているほか、保護者の指導力については、「放任」の多さが目立っている。学校や社会への適応状況が悪く、世間については無関心ないし疎外感を抱いている者が半数を超えるなど、現実の社会から浮遊していると感じている少年が多い。また、「将来のことはあまり考えていない」者が四割近くいる。

4 資質の特徴に関する分析(十四年対象者)
 強盗事犯少年の多くが、集団場面では気分のままに行動し慎重な行動選択が困難であること、身近な人以外の立場を考えていないこと、手段を選ばずにその時々の物欲を満たそうとする傾向を有することがうかがえる。しかしながら、暴力に快感を覚えるような著しい攻撃性を有する少年は比較的少ない。

5 最近の強盗事犯少年の問題性
 強盗事犯少年の問題性を要約すると、@その多くが、暴力に対する抵抗感が乏しく、思考や行動が短絡的で、他人への思いやりに欠ける、集団場面では慎重な行動選択が困難で、集団の一員として手段を選ばずにその時々の欲望を満たそうとする傾向が強いことがうかがわれること、A家庭は、表面的には問題がないように映るものの、実は放任する保護者が多く、家庭機能が十分に働いていないこと、B社会の一員としての自覚に欠け、学校・職場その他社会不適応状況下にあること、が挙げられる。

五 特別調査―重大な凶悪事犯の近年の動向―

 平成十年から十四年の間に、全国の地方裁判所において、死刑又は無期懲役求刑がなされた殺人及び強盗の事件(重大事犯)のうち、前記期間内に第一審判決のなされたものについて、特別調査を実施した。調査対象とした被告人数は、殺人群が百六人、強盗群が二百九十五人であり、事件数は、殺人群八十九件、強盗群二百二十二件である。

1 行為者属性による分析
 犯行時の年齢をみると、未成年者・二十歳代の若年層が、殺人群で二三・六%、強盗群で二八・八%となっており、三十〜五十歳代はいずれも七割弱である。若年者による重大犯罪を概観すると、取り立てて落ち度のない被害者に対し、集団の力を背景に激しい暴行や、リンチを加え、ついには殺害に至るという「エスカレート型犯罪」と呼ぶべき類型が認められた。中高年の犯罪者には、用意周到な完全犯罪志向の犯罪類型が散見される。また、外国人のみ、ないしは外国人と日本人の共犯による事件は二十六件を数え、来日外国人強窃盗団と暴力団が連携する事件もみられ、常習性の強い職業的強盗団の暗躍や連続強盗強姦犯の存在も認められた。

2 動機・背景分析
 強盗の動機は、「生活費・送金資金のため」が最も多く、次いで、「遊興費のため」、「借財返済資金のため」、「債務を免れるため」となっており、借金がらみの動機が一般の強盗の場合に比して多い。
 そのほか、「窃盗から強盗への移行型犯罪」とでも呼ぶべき類型が四十八件認められた。

3 行為・態様分析
 犯行の時間帯をみると、殺人は、夜間を中心とした時間に六五・六%が集中しているのに対し、強盗では日中と夜間がほぼ同程度の割合となっている。強盗の犯行場所は、七割近くが屋内犯行であり、就寝前に侵入する「上がり込み強盗」や「その他の屋内での強盗」が多くなっている。手口の面では、睡眠導入剤をはじめとする薬物の悪用や、護身用具であるはずのスタンガン、催涙スプレーの悪用などが注目される。

4 犯行の広域化
 車両等を用いて移動しつつ犯罪を行う事例がみられるなど、広域化している。

5 被害者からみた分析
 重大事犯における死亡・重傷被害については、殺人・強盗一般の場合と比べ、女性比がやや高いといえる。また、強盗では、高齢の独居世帯がねらわれた事件が三十四件あった。重大事犯のうち、強盗について被害者と被告人の面識率は、六割を超えていることが注目される。

六 凶悪犯罪の刑事処分と処遇の実情

1 検察と裁判
 殺人、強盗とも嫌疑が十分に認められればほぼ九割以上が公判請求されており、公判請求人員は、近年、殺人がやや増加、強盗が急増している。科刑状況は殺人、強盗とも重罰化が進んでいる。少年に対する家庭裁判所の終局処理状況をみると、殺人、強盗とも、少年院送致が増加傾向にあるなど、全体として保護処分の厳格化傾向がみられる。

2 矯正施設における処遇
 強盗について新受刑者数が増加傾向にあり、新受刑者をみると、初入者、L級受刑者、来日外国人の数が増加傾向にある。少年院新収容者では、殺人・強盗とも長期処遇対象者が増加傾向にある。

3 更生保護
 保護観察処分及び少年院仮退院後の保護観察対象者に関する新規受理人員の推移をみると、強盗については近年いずれも急増している。仮出獄後の保護観察対象者及び保護観察付き執行猶予者の新規受理人員をみると、殺人ではともに減少傾向、強盗ではともに増加傾向にある。

七 まとめ

1 変貌する凶悪犯罪の特質と背景・要因
 強盗犯罪の実相に関し、その変動の特質は以下の五点に集約される。
 (1) 少年を中心とした路上強盗の増加
 背景には、深夜営業店舗等の増加に伴う市民の深夜外出機会の増加、家庭の指導力低下、就業の困難化、少年の意識の変化等の事情がある。
 (2) 成人を中心とした屋内強盗の増加
 背景には、不況による無職者の増加、経済的破綻者の増大、生活困窮・債務返済を動機とする犯行の増加等の事情がある。
 (3) 暴力団と来日外国人強盗犯の増加
 暴力団による恐喝に代わる金品獲得手段としての強盗の増加、正規滞在者と不法滞在者の犯行の増加と強窃盗団の登場等がみられる。
 (4) 大都市圏への集中と近隣地域への拡散の兆候
 (5) 被害の増加と深刻化(重傷率の上昇と女性・未成年者・高齢者等の被害者の増加)
 背景として、エスカレートしやすく共感性の乏しい少年や来日外国人等による荒っぽい犯行の増加等がみられる。

2 対策と課題
 (1) 防犯面での対策と課題
 街頭緊急通報装置(スーパー防犯灯)の設置、パトロール強化・犯罪に関する情報の市民への提供等の施策の充実に加え、官民連携した防犯活動の更なる充実・発展が重要である。
 (2) 検挙・捜査面での対策と課題
 迅速・的確な検挙と徹底した捜査による事案の真相解明が不可欠である。少年犯罪については、早期かつ的確な対処が重要である。暴力団及び外国人による犯罪については、銃器の取締り、収益剥奪を活用した組織の弱体化、捜査情報の集積と共有化、不法入国者等を水際で阻止する対策が重要である。
 (3) 処罰面での対策と課題
 悪質重大な事案に対しては、被害者感情にも十分配慮しつつ厳しい量刑で臨むことが必要である。
 (4) 矯正及び更生保護における対策と課題
 矯正施設では、被害者の視点を取り入れた教育の実施、罪の意識を覚せいさせる指導等地道な処遇の充実が、また、更生保護の分野においては、学校や地域社会等との協力関係の維持拡大が重要である。
 (5) 刑事司法関係以外での対策と課題
 少年犯罪に対しては、家庭、学校、地域社会が関係機関と協力すること、また、薬物、手錠、催涙スプレー等犯罪に悪用されがちな物品の拡散に留意することが必要である。

3 結語―凶悪犯罪の少ない住み良い社会を求めて―
 現下の犯罪情勢に適切に対応するためには、出入国・在留管理体制を含む刑事司法関係諸機関の人的・物的体制の整備等、刑事司法の充実を図ることが何よりも重要である。次に、しつけと教育の問題が重要であり、少年の心身に悪影響を与える児童虐待や配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)についても、その防止を図る必要がある。さらに、地域社会の絆の復活と社会環境の整備も重要である。刑事司法関係諸機関、関係官庁、家庭・学校・職場・地域社会等すべての組織・個人が、お互いの垣根を越えて一致協力し、凶悪犯罪を防止する努力を続けていくことが肝要である。




二月の気象


 二月は北の地方ではまだ冬本番ですが、南の地方からは春の訪れを告げる便りが届き始めます。

◇最深積雪
 北の地方では、二月は一月に負けず劣らず厳しい冬の顔を見せます。北海道から北陸の日本海側で比較的雪の多い気象官署の最深積雪は一月よりも二月の値が大きくなって二月の最深積雪がその冬の最深積雪になることが多くあります。豪雪で有名な新潟県高田(上越市)の場合も冬の最深積雪の極値は三百七十七センチメートルで一九四五年二月に記録しています。
 一九六五年以降の高田の二月の最深積雪を見てみると、一九八〇年代後半から最深積雪の値が顕著に減少していることがわかります。平均で比べると、一九六五〜一九八六年は百六十四センチメートル、一九八七〜二〇〇三年は八十四センチメートルと、約半分になっています。また、東日本の十二月〜翌年二月までの平均気温の平年偏差からの変化を見てみると、一九八七年以降は、一九九六年を除くと平年並みか高く推移しています。
 最深積雪の減少と冬平均気温の上昇は、ともに一九八七年以降にその傾向が顕著に現れています。このように短期間で気候の状態が変化する現象は「気候ジャンプ」と呼ばれ、現在活発に研究されています。

◇梅の開花
 二月は春の訪れを待ち望む月であり、梅の開花の知らせは春一番と同様に春の到来が近いことを期待させます。梅の開花の観測は、生物に及ぼす気象の影響や季節の遅れ進みなどを知るために気象庁が行っている生物季節観測の一つです(開花とは対象とする植物の花が数輪咲いた状態をいいます)。梅の開花は南国から始まって次第に北上していきます。例年ですと、関東地方では一月中旬に房総半島で開花が始まり、東京は一月下旬、水戸は二月上旬、前橋は二月中旬と北上します。
 梅で有名な水戸を例にとって梅の開花日の遅れ進みの変化を見てみます。梅の開花の平年(一九七一〜二〇〇〇年の平均)日である二月二日からの遅れ進みを見てみると、一九五三年の観測開始以来の最早日は十二月二十六日(一九九八年開花日)、最晩日は三月九日(一九八四年開花日)となっています。次第に梅の開花が早くなる傾向が見られ、最近では一月に開花する年も増えてきています。
(気象庁資料から転載)




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月例経済報告(一月)


―景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している。
 ・輸出、生産ともに増加している。
 ・企業収益は改善が続いている。設備投資は増加している。
 ・個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
 ・雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 先行きについては、世界経済が回復する中で、日本の景気回復が続くと見込まれる。一方、為替レートなどの動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。一月十九日に、「平成十六年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」及び「構造改革と経済財政の中期展望―二〇〇三年度改定」を閣議決定し、平成十六年度予算案を国会に提出した。
 政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
 個人消費は、持ち直しの動きがみられる。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、消費者マインドの持ち直しが続いていることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、十一月は前月に比べて減少したが、三か月連続して増加した後の減少であり、基調としては持ち直しの動きがみられる。
 個別の指標について十一月の動きをみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べてやや減少した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、前月から減少したが、これは高めに推移した気温の影響により冬物衣料が伸び悩んだことなどによるものである。家電販売金額は、気温の影響により暖房関連器具が落ち込んだことから前年を下回ったが、DVDや薄型テレビなどの売れ行きは引き続き好調である。新車販売台数は、十一月は前年を大きく下回ったが、十二月は増加した。旅行は、前年比減少幅がやや拡大したが、回復基調にある。
 先行きについては、家計の所得環境が改善していけば、個人消費の回復が期待される。

◇設備投資は、増加している。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、増加基調にある。また、ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
 「日銀短観」によれば平成十五年度設備投資計画は三年ぶりに全規模全産業で増加に転じ、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、先行指標をみると、機械受注は基調としては緩やかに増加しており、建築工事予定額はおおむね横ばいとなっている。先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 住宅建設は、平成十五年度に入って、一時的な増加と反落があったものの、おおむね横ばいで推移している。総戸数は、十一月は、持家、貸家、分譲住宅のすべてが減少したことから、前月比七・九%減の年率百十万九千戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向かえば、住宅着工は底堅く推移していくことも期待される。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 平成十五年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、公共工事請負金額は、平成十五年十〜十二月期も、前期に引き続き前年を下回った。先行きについては、平成十六年度一般会計予算案では、公共投資関係費について、前年度比三・三%減としつつ、「平成十六年度予算編成の基本方針」を踏まえ、各事業の目的・成果に踏み込んできめ細かく重点化を図っている。また、平成十六年度地方財政対策では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比九・五%程度減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を図っている。

◇輸出は、増加している。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
 輸出は、増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、中国向けの電気機器を中心として緩やかな増加基調にある。アメリカ向け輸出は、電気機器を中心として、このところ増加している。EU向け輸出は、機械機器を中心にこのところ増加している。先行きについては、世界の景気は着実に回復していることに伴って、増加していくものと考えられるものの、為替レートの動向には引き続き留意する必要がある。
 輸入は、事務用機器等の機械機器が増加基調にあるものの、鉱物性燃料が減少していることから、全体としては横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、事務用機器等の機械機器を中心に緩やかに増加している。アメリカからの輸入は、基調としては減少しているが、十一月は航空機等の機械機器を中心に増加した。EUからの輸入は、月々の振れが大きくなっているが、基調としては横ばいとなっている。
 国際収支をみると、海外旅行客の回復に伴いサービス収支の赤字幅が拡大している一方、輸出数量は増加しており、輸入数量が横ばいになっていることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、増加している。
 鉱工業生産は、増加している。輸出や設備投資の増加などを受けて、情報化関連生産財や資本財を中心として増加の動きに広がりがみられる。在庫は低水準で推移しており、企業は在庫積み増しに慎重になっている。
 先行きについては、世界の景気が着実に回復していることに伴って、輸出を通じた生産の増加が続くものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、十二月は減少、平成十六年一月は増加が見込まれている。
 また、第三次産業活動は、緩やかに増加している。

◇企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力や売上高の増加等を背景に、平成十五年七〜九月期においても前年比で増益が続いており、季節調整済前期比でみても増益が続いている。「日銀短観」によると、十五年度は引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業で前年比二桁の増益見込みであり、非製造業でも増益が見込まれている。規模別でみると、大企業・中小企業とも増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、製造業では引き続き改善がみられるほか、非製造業でも改善がみられる。先行きについては、全産業でやや悪化が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移し、雇用者数がこのところ弱含むなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、十一月は、前月と同水準の五・二%となった。完全失業者が微減となったが、就業者数が減少し、非労働力人口が増加した。
 新規求人数は、増加傾向となっており、有効求人倍率も上昇している。一方、雇用者数はこのところ弱含んでいるが十一月は増加に転じた。製造業の残業時間については、増加傾向となっている。
 賃金の動きをみると、定期給与は基調としては横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 国内企業物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電気機器などが引き続き下落しているが、堅調な市況を反映してパルプ・紙・同製品、鉄鋼、非鉄金属などが上昇している。また、冷夏による米不作の影響により、農林水産物が上昇している。輸入物価(円ベース)は、国際商品市況が堅調に推移しているものの、円高の影響により、緩やかに下落している。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ診療代、米類など一部に物価を押し上げる動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、米類の上昇により、前年比下落幅が縮小している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移している。また、公共料金は、前年比で上昇している。
 なお、国内企業物価・消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を押し上げる要因が一時的なものにとどまる可能性があることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇為替レートは、対米ドルで円高となった。株価は、一万円台(日経平均株価)で推移している。
 対米ドル円レートは、十二月中旬以降円高が進み、このところ百六円台となっている。ユーロレートは対円、対米ドルともに上昇し、対米ドルではユーロ創設以来の高値となっている。株価は、一万円台(日経平均株価)で推移しているが、世界的な株価の上昇等を受け十二月下旬以降上昇傾向にある。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は横ばいで推移し、このところ一・三%前後となっている。企業金融については、企業の資金繰り状況は改善しており、民間債と国債との流通利回りスプレッドは低水準で推移している。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一〇・一%)が続いているが、伸び率は鈍化している。M+CDは、一%台半ばで推移している。

四 海外経済

◇世界の景気は着実に回復している。
 アメリカでは、景気は力強く回復している。
 生産が増加し、企業マインドは高い水準にある。このような中で雇用意欲も改善しており、雇用は持ち直している。これにより、消費者マインドは改善傾向にあり、消費は増加している。
 今後も、消費、設備投資が増加することが期待され、四%前後の高成長が見込まれている。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いており、その他では景気回復の動きが広まっている。
 中国では、消費の堅調な増加や輸出の高い伸びから生産が増加するなど、景気は拡大が続いている。タイでは、消費や投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費や輸出が増加するなど、景気は緩やかに拡大している。台湾では、消費が緩やかに増加し、輸出や生産も増加するなど、景気は回復している。シンガポールでは、輸出や生産が高い伸びとなり、十〜十二月期のGDP成長率が増加するなど、景気は回復している。韓国では、輸出や生産が増加するなど、景気に持ち直しの動きがみられる。

◇ユーロ圏では、景気は持ち直しており、イギリスの景気は回復している。
 ユーロ圏では、景気は持ち直している。世界の景気回復を受けて企業マインドが改善しており、生産・投資の先行きを示す鉱工業受注が持ち直し、生産が横ばいで推移している。ドイツでは、受注の持ち直しから生産が下げ止まり、景気は下げ止まっている。フランスでは、景気は持ち直している。企業マインドが改善する中で生産に持ち直しの動きがみられる。なお、このところユーロは対ドルで増価基調を一層強め、一月中旬には導入以来の最高値となっており、先行きの懸念材料となっている。
 イギリスでは、消費の増加が続いており、景気は回復している。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、世界の主要な株価は、景気が世界的に回復していることなどから上昇基調で推移している。主要国の長期金利は、引き続きおおむね横ばいで推移している。ドルは、アメリカの経常収支赤字が高水準で推移していることなどから減価している。
 原油価格は、需給ひっ迫懸念などから引き続き上昇基調で推移した。





    <2月25日号の主な予定>

 ▽法人企業統計季報(平成十五年七〜九月期調査)………財 務 省 




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