官報資料版 平成





防災白書のあらまし


平成9年版防災白書(「防災に関してとった措置の概況」及び「平成9年度において実施すべ
き防災に関する計画」)が、6月10日に閣議決定され、同日付けで国会に報告された。      

国 土 庁


<第1部> 災害の状況と対策


<第1章> 我が国の災害の状況

1 国土と災害
  ―災害を受けやすい国土―
 (1) 自然災害による死者・行方不明者の状況
 平成五年には北海道南西沖地震災害や八月豪雨等による土砂災害など、大規模な災害が重なったり、大きな被害が発生している。さらに、平成七年には阪神・淡路大震災により、死者・行方不明者六千四百人を超す戦後最大の被害が発生している(第1図参照)。
 (2) 自然災害による施設関係等の被害の状況
 平成七年に発生した自然災害による被害のうちで、政府及び政府関係機関等がその施策として災害復旧等に関与している施設関係等の被害額は約五兆九千三百九十三億円に達した。
 このうち、阪神・淡路大震災による施設関係等の被害額は、約四兆六千五百四十六億円に上る。

<第2章> 我が国の災害対策の現況と課題

1 阪神・淡路大震災以降の主な取組み
 我が国においては、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護するため、災害対策基本法により防災に関する体制及び必要な災害対策の基本が定められ、国、地方公共団体等は、以下に述べるように、総合的かつ計画的な防災行政の推進に取り組んでいる。
 特に、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、防災施策の新たな展開を図ってきているところであるが、具体的な体制整備の内容はおおむね次のとおりである。
 第一に、防災基本計画を改訂し、災害の種類別に体系構成し、具体的かつ実践的な内容となるよう災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興の各段階ごとに実施すべき措置等を規定した。
 第二に、災害対策基本法を二回にわたり改正し、緊急災害対策本部の設置要件の緩和及び組織の強化、非常災害対策本部設置の迅速化(閣議を経ずに設置)、災害時の交通の規制に関する措置の拡充等を行った。
 第三に、首都直下型大規模地震等の発生時の内閣の初動体制を整備するため、内閣総理大臣の職務代行、参集場所等について閣僚懇談会で申し合わせた。
 第四に、大規模災害発生時の第一次情報収集体制の強化、中央防災無線網の都道府県への拡充、ヘリTV画像情報伝達体制の整備、地震防災情報システム(DIS)の開発等、情報収集体制の整備を行った。
 第五に、自衛隊の自主派遣の運用方針の明確化と派遣要請手続の簡素化、広域緊急援助隊及び緊急消防援助隊の創設等、救援体制の整備を行った。
 こうした施策の推進により、災害対策に万全を期せる体制の整備に努めてきている。

2 防災関係予算
 平成七年度における防災関係予算は、総計約七兆五千三百九十四億円である。
 内訳は、科学技術の研究が約一千五十九億円、災害予防が約一兆二千八十一億円、国土保全が約二兆五千二百九十四億円、災害復旧等が約三兆六千九百六十億円である。
 平成七年度は阪神・淡路大震災対策のための補正予算措置により、前年度から大幅に増大している。
 なお、平成八年度当初予算における防災に関して実施すべき計画における予算は、第1表のとおりである。

3 震災対策
 阪神・淡路大震災の経験にかんがみ、平成七年七月には地震防災対策特別措置法が施行されたほか、防災基本計画が改訂され、新たに震災対策編が設けられるなど、震災対策の充実が図られている。
 @ 地震に関する調査研究の推進
 従来から、地震予知のための観測研究を実施している。
 さらに、阪神・淡路大震災を契機に、地震に関する調査研究の推進のための体制の整備等を目的とした地震防災対策特別措置法に基づき、地震調査研究推進本部が新たに総理府に設置された。
 A 即時情報の活用
 地震災害の発生時には、被害規模を早期に把握し、各種応急対策を迅速かつ円滑に実施する必要がある。このため国土庁の「地震防災情報システム(DIS)」をはじめ、各種のシステム等が各機関において整備されている。
 B 都市防災化の推進
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、都市防災構造化の推進や既存施設の耐震性の確保が進められている。
 都市防災構造化としては、
 (a) 緊急輸送手段の整備
 (b) 避難地、避難路の確保及び整備
 (c) 都市の不燃化等の推進
 (d) ライフライン機能の確保
 (e) 防災拠点の整備
が推進されている。
 構造物・施設等の耐震性を確保するため、施設ごとの耐震基準の見直し及び、耐震性の十分でない既存施設の耐震改修が進められている。
 また、地方公共団体は、地震防災対策特別措置法に基づく地震防災緊急事業五箇年計画等を積極的に作成し、それに基づく事業の推進を図っている。
 東海地域においては、「大規模地震対策特別措置法」や「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」等に基づき、引き続き地震予知を前提とする対策が講じられている。
 南関東地域においては、「南関東地域震災応急対策活動要領」や「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」に基づき、引き続き対策が推進されている。

4 その他の災害対策
 風水害対策、火山災害対策等について、平成七年七月の防災基本計画の改訂において災害別に対策編を策定し、これに基づいて各種対策を実施している。
 風水害対策としては、被害を未然に防止し又は軽減するとの観点から、@気象観測の充実と迅速な予報・警報等の発表、A治山・治水対策の推進、B土砂災害の防止、等が重要な課題であり、対策が計画的に進められている。
 火山災害対策では、@火山観測研究体制の整備、A活動火山対策特別措置法等に基づく対策、等を推進している。
 また、雪害対策、海上災害対策、原子力施設等の防災対策等を実施している。

<第3章> 平成八年度に発生した主要な災害とその対策

1 地 震
 平成八年度に発生した主な地震としては、次の地震が挙げられる。
 @ 秋田・宮城県境を震源とする地震(平成八年八月)
 八月八日、マグニチュード5・9の地震が発生し、秋田県栗駒町で震度5を観測した。八月三十日までに五千六百六十六回の地震を観測した。
 A 伊豆半島東方沖群発地震(平成八年十月)
 十月十五日頃から地震が群発し始め、三十一日までに静岡県伊東市鎌田で観測した総地震回数は五千八百六十九回であった。
 B 伊豆半島東方沖群発地震(平成九年三月)
 平成九年三月三日から地震が群発し始め、七日には約二千回の地震を記録した。
 この群発地震では震度5弱(三月三日、五日、七日)を計三回観測した。
 軽傷者三名、住家の一部破損六十五棟のほか、道路被害、崖くずれ等が発生した。
 政府は、三月四日十時から災害対策関係省庁連絡会議を開催し、地震活動の状況や関係省庁の対応状況について情報交換を行うとともに、今後の連携を密にしていくことを確認した。
 C 愛知県東部を震源とする地震(平成九年三月)
 平成九年三月十六日、愛知県東部を震源とするマグニチュード5・8の地震が発生し、愛知県豊橋市で震度5強を記録した。
 軽傷者四名、住家の一部破損二棟のほか、道路の落石等の被害が発生した。
 D 鹿児島県薩摩地方を震源とする地震(平成九年三月)
 平成九年三月二十六日、鹿児島県薩摩地方を震源とするマグニチュード6・3の地震が発生した。この地震に始まった活動は、三月三十一日までに三百七十四回の地震を観測した。その後、四月以降も余震活動が続いている。
 平成九年三月三十一日現在、重傷者一名、軽傷者三十名、住家被害は全壊二棟、半壊六棟、一部破損一千九百九十九棟、非住家二百二十四棟に被害を受けたほか、道路橋梁等にも被害が発生している。

2 十二・六蒲原沢土石流災害
 新潟県と長野県の境界、蒲原沢(姫川支流)で、平成八年十二月六日十時三十分頃、土石流が発生した。
 治山工事及び下流の建設省関係の工事に従事していた作業員が巻き込まれ、死者十三人、行方不明者一人、負傷者八人の人的被害となった。
 関係機関においては、緊密な連携の下、捜索活動等を実施した。
 建設省、林野庁及び長野県の要請を受け、(社)砂防学会は十二・六蒲原沢土石流災害調査委員会を十二月十七日に設置し、今回の土石流の発生原因、今回の土石流に関する予知・予測、施設の被災原因等の検討が行われている。

3 ナホトカ号海難・流出油災害
 平成九年一月二日、隠岐島近海でロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の船首部が折損、後部側が沈没し、船首部が漂流、乗組員一人が死亡した。
 この事故により、C重油約六千二百四十キロリットル(推定)が流出するとともに、船首部は約二千八百キロリットル(推定)のC重油が残存したまま漂流し、福井県三国町沿岸に着底した。流出した重油は、一月八日に一部が沿岸に漂着した。重油の漂着は、二月末までに一府八県に及んでいる。
 政府は、連携して対応に当たるために「関係省庁連絡会議」を開催し、さらに、運輸大臣を本部長とする「ナホトカ号海難・流出油災害対策本部」、内閣官房長官が主宰する「ナホトカ号流出油災害対策関係閣僚会議」を設置した。
 船首部については、二月二十五日までに残存していた重油の抜き取りが終了した。
 海上浮流油については、処理剤の散布、油回収船による回収等を実施したが、油の高粘度化のため、ひしゃくによる回収作業に依存することが大きかった。
 沿岸に漂着した油については、関係地方公共団体が中心となり、関係機関や民間ボランティアの協力を得て、ひしゃく、ヘラ、バケツ等により回収作業を実施した。
 政府は各種のプロジェクトチーム、委員会を設置し、事故再発防止対策、流出油防除対策、海洋汚染防止国際協力体制の構築等について検討を行っている。

<第4章> 阪神・淡路大震災の災害復興対策

1 復興に向けての取組み
 (1) 取組体制
 平成八年二月、今後の復興の課題に適切に対応するため、推進体制の充実が行われた。
 (2) 住宅対策の実施
 国は、「被災者住宅対策等について」を策定し、@公営住宅の確保等、A公営住宅家賃負担の軽減、B恒久住宅への円滑な移転の支援等、のための対策を行うこととしている。
 (3) 生活支援対策の実施
 国は、被災地において様々な特別措置を講じ、社会福祉分野の諸制度を可能な限り活用して、被災者の生活再建を支援してきた。
 今後、神戸市等地元地方公共団体が作成した生活再建支援プランに対して、国としても、できる限りの支援を行っていくこととしている。
 (4) 産業復興対策の実施
 被災地の産業復興対策は、金融上の支援措置、税制上の特例措置、民活法等の活用による産業基盤整備の支援措置、工場等制限法の運用緩和をはじめとする各種規制緩和措置など、種々の支援策を実施してきており、今後とも、地元地方公共団体とも緊密に連携、協力して、きめ細かな支援策を実施することとしている。
 (5) 予算措置
 国は、平成六年度、七年度において事業費で約八兆円、国費で約三兆三千八百億円に上る経費を予算措置してきた。
 平成八年度は当初予算において国費で二千八百八十五億円、補正予算において、二千九百四十五億円の阪神・淡路大震災復興対策費が計上された。
 また、平成九年度予算においても、引き続き、住宅対策、市街地整備、港湾整備等の公共事業をはじめ、様々な復興関係経費が盛り込まれている。
 (6) 今後の課題
 政府としては、以下の復興に向けての取組みに対し、地元地方公共団体等と緊密な連携を図りながら、全力を挙げて支援していくこととしている。

2 復旧・復興の状況
 阪神・淡路地区の復旧・復興状況は以下のとおりである。
 (1) 生活の再建
 @ がれき処理状況(平成九年二月末現在)
 兵庫県下の建物等の解体進捗率は九九・〇%、処分率は九六・〇%
 A 住宅再建の状況(平成九年三月一日現在)
 兵庫県における公的供給住宅の整備状況
 計画戸数         七万七千戸   
 用地確保ができた戸数  約六万六千五百戸 
                 (八六%)
 着工された戸数     約四万五千六百戸 
                 (五九%)
 B 雇用の安定
 平成八年十一月の有効求人倍率は四か月ぶりに上昇に転じ、引き続き上昇傾向にあるが、希望職種や年齢条件面において求人・求職のミスマッチがみられるなど、就職環境は依然厳しい状況である。
 (2) インフラ施設の復旧・復興状況
 神戸港の港湾施設は、予定どおり平成八年度内に港湾機能を回復できることとなった。神戸港の利用状況も、平成六年の実績と比較し、八年度には、貨物量は約八割、入港隻数及び貿易額では九割を超える状況にまで回復してきた。
 道路は順次復旧し、ポートアイランドと六甲アイランドを結ぶハーバーハイウェイは、平成八年八月二十四日に全面開通した。阪神高速3号神戸線は、平成八年九月三十日に全線(月見山〜武庫川間二七・七キロメートル)が開通した。
 (3) 経済復興の状況
 総合的に判断して、被災地の経済は、震災に伴う大きな落ち込みから全体としては緩やかに回復しつつあるものの、引き続き、業種、分野によっては依然として厳しい状況が続いている。

<第5章> 近年に発生した主な災害の復興状況

1 雲仙岳噴火災害の復興状況
 平成三年六月三日に大火砕流が発生し、多数の死傷者が生じたことから、政府は、四日に国土庁長官を本部長とする「平成三年(一九九一年)雲仙岳噴火非常災害対策本部」を設置し、二十一分野、百項目に及ぶ被災者等の救済対策を実施してきている。
 噴火活動が沈静化し、災害応急対策がほぼ終了していることから、平成八年六月三日に長崎県及び関係五市町村の災害対策本部、同四日に政府の非常災害対策本部が廃止された。
 しかし、なお実施中の復興事業があること、また、土石流の二次的災害が今後も発生する可能性があること等を踏まえ、関係省庁は、同月四日に雲仙岳災害復興関係省庁連絡会を設置し、密接な連携の下に地域の安全を確保しつつ復興対策を推進していくこととしている。

2 北海道南西沖地震災害の復興状況
 地震発生直後の平成五年七月十三日、政府は、国土庁長官を本部長とする「平成五年(一九九三年)北海道南西沖地震非常災害対策本部」を設置し、恒久的な住宅の確保対策、農林漁業対策や中小企業対策、被災者雇用対策、土木施設復旧事業の推進等、様々な復旧・復興対策を講ずるとともに、被災自治体への必要な指導・支援を行ってきた。
 復旧・復興対策は順調に進捗し、
 @ 災害復旧事業が平成七年度でほぼ完了したこと
 A まちづくり事業についても順調に進展していること
 B 応急仮設住宅の解消の見込みがついたこと
などから、平成八年三月三十一日、政府の非常災害対策本部は廃止された。
 政府においては、引き続き、実施中の防潮堤の建設、まちづくりに関連する復興事業等の円滑な推進を図り、被災地域の振興を支援していくこととしている。

<第6章> 防災知識の普及方策及び防災ボランティアについて

1 これからの防災知識の普及方策
 平成九年二月、国土庁において、都道府県及び政令指定都市における防災広報活動の実態についてアンケート調査を実施した。
 ▽防災知識の普及に当たって重点を置いている災害として、五十九地方公共団体すべてが震災を挙げている。風水害を四十七団体、土砂災害を二十八団体が挙げている(第2図参照)。
 ▽現在、重点を置いている普及方策としては、パンフレット・小冊子・マニュアル(五九%)、講習会・研修会(五八%)、防災フェア(二四%)を挙げる団体が多い(第3図参照)。パンフレット等は、広範囲に普及可能であることに加え、保存性、詳報性などの利点を挙げる団体が多い。
 ▽今後は、講習会・研修会とパンフレット等に重点を置きたいという意見が強い。しかし一方でマルチメディアに代表される新たなメディアの可能性が指摘されており、インターネットの利用を挙げる団体もある。
 ▽調査結果から課題を整理すると、次のような点が挙げられる。
 @ メディア・ミックスなどの活用
 A 災害弱者へのきめ細かい防災広報
 B 防災ボランティア活動
 C 企業防災活動への取組み
 D 新しいツールの活用
 E 事例の紹介等、情報の交換

2 防災とボランティア
 (1) 災害時におけるボランティア活動環境の整備
 防災基本計画の改訂及び災害対策基本法の改正により、国及び地方公共団体の災害時におけるボランティア活動の環境整備について明確に規定された。
 この結果、国や地方公共団体は、従来からの施策を継続するとともに、新たな施策を打ち出すなど、ボランティアの活動環境のより一層の整備に努めている。
 (2) 災害時のボランティア活動に関する今後の課題
 多数のボランティアをまとめるコーディネーターの不足、ボランティアの登録、行政とボランティア団体との連携体制の整備等が課題となっている。
 災害時のボランティアの活動環境を整備するため、引き続き関係各方面における種々の施策を講じるとともに、新たな課題も含め検討を深めていく必要がある。

<第7章> 世界の自然災害と国際防災協力

 我が国の「国際防災十年(IDNDR)」における活動の一環として、平成七年十二月に神戸でアジア防災政策会議が開催された。アジア地域を中心とする二十八か国が参加した(このほか、五か国及びIDNDR事務局からオブザーバーが出席)。
 会議では、国際防災協力の推進に向けて、参加国の共通の認識、見解を取りまとめた「神戸防災宣言」が採択された。
 平成八年十月、「神戸防災宣言」に盛り込まれた「アジア地域における防災センター機能を有するシステムの創設」を主要議題として、アジア地域を中心とする計三十か国の各国の防災専門家(政府の防災担当部局の局長クラス)の参加により、「アジア防災専門家会議」が、東京で開催された。
 本会議では、「アジア地域における防災センター機能を有するシステム」の創設について、以下のことを確認した。
 @ 一九九八年中のシステムの立ちあげを目指す
 A システムの検討と、システム創設後はその運営等について協議するため、関係国の間で「アジア防災協力推進会合」を設ける
 B システムの概要
 C システムの具体的な内容については、アジア防災協力推進会合で検討する
 今後とも、関係各国と連携し、アジアにおける国際防災協力を積極的に推進していくこととしている。

<第2部> 平成七年度において防災に関してとった措置の概況


1 法令の整備等
 阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、我が国の防災関係法制度の充実・強化を図るため、二回にわたり災害対策基本法を改正したほか、地震防災対策特別措置法の制定、消防組織法の改正、建築物耐震改修法の制定、自衛隊法施行令の改正等を行った。
 また、我が国の防災に関する総合的かつ長期的な計画である防災基本計画を改訂したほか、地震に関する調査研究の一元的な推進を図るための地震調査研究推進本部の設置などを行った。

2 科学技術の研究
 各研究機関においては、国費約一千五十九億円をもって、震災に関する研究(地震に関する調査研究、震災対策一般の研究)、風水害に関する研究(土砂災害に関する研究、大型降雨実験等)、火山災害に関する研究(火山噴火予知等に関する研究等)、雪害に関する研究(降積雪対策技術、雪崩等に関する研究)、火災及び危険物災害等に関する研究(建築物の防火対策、爆発防止等に関する研究)等の各般にわたる科学技術の研究、開発に努めた。

3 災害予防
 地震観測、気象観測、消防、水防等について防災施設等の整備を図るとともに、大都市震災に対処するため防災拠点等の整備等を推進した。特に、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、災害発生時の情報収集・連絡体制の強化を図るため、初動体制の充実強化、中央防災無線網の拡充整備、地震防災情報システムの整備、立川災害対策本部予備施設の整備等を推進した。
 また、災害対策の計画の樹立に資するための各種点検・調査等を行ったほか、防災週間を中心に防災フェア等の開催、総合防災訓練等を実施した。
 これらの対策に要した国費は約一兆二千八十一億円、融資実行額は約一千七百五十三億円であった。

4 国土保全
 防災上緊急を要する地域に重点を置き、河川事業、ダム事業、砂防事業、急傾斜地崩壊対策事業、治山事業、海岸保全事業、農地防災事業、災害関連事業、地盤沈下対策事業、下水道事業等を国費約二兆五千二百九十四億円をもって実施した。

5 災害復旧等
 (1) 災害応急対策
 阪神・淡路大震災に対しては、引き続き、被災者の救助・救援活動等を実施するとともに、応急仮設住宅の建設、各種税制・融資施策、地方公共団体に対する特別の財政措置等により、被災者の救済、被災地の再建を強力に推進した。
 また、その他の平成七年度に発生した災害に対して、警察、自衛隊、海上保安庁、消防等による被害情報の収集や危険地の警戒、被災者の避難誘導・救護等の活動の実施、災害救助法の適用、災害弔慰金の支給、税制上の措置、激甚災害の指定等、各種援助措置を講じた。
 (2) 災害復旧事業
 公共土木施設災害復旧事業は、直轄事業については二か年、補助事業については三か年で復旧するという基本方針に基づき、平成六年災害の直轄事業及び平成五年災害の補助事業を完了した。
 農林水産業施設災害復旧事業は、直轄事業については二か年、補助事業については三か年で復旧するという基本方針に基づき、平成六年災害の直轄事業及び平成五年災害の補助事業を完了した。
 その他の災害復旧についても、それぞれ所要の復旧を行った。
 また、阪神・淡路大震災により大きな被害を受けたインフラやライフライン関連施設について、引き続き復旧事業を実施した。
 (3) 財政金融措置
 災害復旧に必要な資金の円滑化を図るため、国民金融公庫、住宅金融公庫等からの融資、災害保険金の支払い並びに地方交付税及び地方債による措置など財政金融上の措置を講じた。
 (4) 災害復興対策
 阪神・淡路大震災の被災地の一日も早い復興に向けて、生活の再建、経済の復興、安全な地域づくり等を基本的課題とし、各般の施策を推進した。
 このほか、雲仙岳噴火災害及び北海道南西沖地震災害に対する措置も講じた。
 これらの災害復旧等に要した国費は約三兆六千九百六十億円、融資実行額は約一兆五千百七十八億円であった。

6 平成七年度における防災関係予算額等
 平成七年度における防災関係予算額等は、第2表のとおりである。

<第3部> 平成九年度において実施すべき防災に関する計画


1 防災に関する科学技術の研究の推進
 科学技術の研究については、震災、風水害、火山災害、雪害、火災、危険物災害等、各種災害に対処するため、地震に関する調査研究、火山噴火の予知に関する研究、各種災害の発生機構・防止対策等に関する研究、構造物の安全性に関する研究等を推進する。

2 災害予防の強化
 災害予防については、教育訓練、指導啓発等に努めるとともに、地震観測施設、気象業務施設、火山観測施設、消防施設、通信施設その他の防災施設設備、防災資機材の充実等を図り、併せて、石油コンビナート災害等その他の危険物災害対策及び原子力防災対策の強化、豪雪地帯対策の推進、災害危険地住宅の移転、防災拠点施設の整備等の災害予防事業を推進する。




3 国土保全の推進
 国土保全については、基幹大河川、浸水被害が頻発している中小河川、緊急度の高い危険地等に重点を置いて治山治水事業の一層の推進を図るほか、急傾斜地崩壊対策事業、海岸保全事業、農地防災事業、地盤沈下対策事業等、各般の施策を推進する。

4 災害応急対策及び災害復旧・復興の迅速適切化
 災害応急対策については、災害時に迅速かつ適切な救助活動、被災者への支援対策等が実施できる防災体制等の確立に努めるとともに、災害が発生した場合には、災害の態様等に応じて非常災害対策本部等を設置して、必要な応急対策を講ずる。
 災害復旧事業については、直轄事業については原則として二か年で復旧を完了させる方針に基づき、平成八年災害の復旧事業はこれを完了させ、補助事業については原則として三か年で復旧を完了させる方針に基づき、平成七年災害の復旧事業はこれを完了させ、平成八年災害の復旧事業費を計上して復旧事業の迅速かつ効果的な施行を図るほか、災害融資等に必要な金融措置を講じ、復旧資金等の調達の円滑化を図る。
 さらに、阪神・淡路大震災について、被災地の一日も早い本格的な復興に向けて、生活の再建、経済の復興、安全な地域づくり等の諸課題に関する取組みの推進を図る。

5 平成九年度における防災関係予算額等
 平成九年度における防災関係予算額等は、第3表のとおりである。







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平成八年十月一日現在


 我が国の人口(推計)


総 務 庁


 総務庁統計局では、平成八年十月一日現在の推計人口を九年三月二十七日に公表した。
 我が国の人口は、国勢調査によって五年ごとに調査年の十月一日現在の人口の詳細を明らかにしているが、その中間時点においては、国勢調査の人口を基礎として、その後の出生児数、死亡者数、入国者数、出国者数等を加減して、毎月一日現在で「全国、年齢五歳階級、男女別推計人口」を算出している。
 また、毎年十月一日現在で「全国、年齢各歳、男女別推計人口」及び「都道府県、年齢五歳階級、男女別推計人口」を算出している。
 今回、公表したのは、平成八年十月一日現在の「全国、年齢各歳、男女別推計人口」及び「都道府県、年齢五歳階級、男女別推計人口」で、その概要は次のとおりである。

◇全国人口

一 総人口

▽総人口は平成八年十月一日現在で一億二千五百八十六万人、この一年間に二十九万人の増加
 平成八年十月一日現在における我が国の総人口は一億二千五百八十六万人で、七年十月から八年九月までの一年間に二十九万人(〇・二三%)増加した。
 総人口を男女別にみると、男子が六千百六十九万人(総人口の四九・〇%)、女子が六千四百十八万人(同五一・〇%)となっている。
 総人口の増加率は、第二次ベビーブーム期(昭和四十六〜四十九年)には一・四%前後と高い水準(最高は昭和四十七年の一・四一%)であったが、その後、出生児数の減少により昭和五十二年に一%を、六十二年に〇・五%を下回るなど低下傾向で推移しており、平成五年以降は〇・二%台となっている。
 我が国の出生児数は、第二次ベビーブーム期には二百万人を超えていたが、その後は減少傾向にあり、平成八年は前年を二万人下回り百二十万人となっている。一方、平成八年の死亡者数は九十万人で、前年を三万人下回っている。この結果、自然増加数は三十一万人で、前年を一万人上回った。
 なお、平成八年の入国者数は一千七百三十八万人、出国者数は一千七百三十九万人で、一万人の社会減少となった(第1表参照)。

二 年齢別人口

 (一) 人口ピラミッドはひょうたん型
 我が国の人口ピラミッドは、各時代の社会情勢を背景とする出生・死亡の状況を反映し、第1図のようになっている。
 この人口ピラミッドは、近年、出生児数が第二次ベビーブーム期をピークとして、その後、年々減少していることを反映し、すそが狭まった「ひょうたん型」となっている(第1図参照)。
 なお、平成八年十月一日現在における、明治生まれの人口は二百三万人、大正生まれの人口は一千七十四万人、昭和生まれの人口は一億三百七十六万人、平成生まれの人口は九百三十四万人で、総人口に占める割合は、それぞれ一・六%、八・五%、八二・四%、七・四%となっている。
 また、戦後生まれの人口は八千四百二十三万人で、総人口の六六・九%となっている。

 (二) 生産年齢人口は八千七百十六万人、戦後初めて減少
 平成八年十月一日現在の総人口を年齢三区分別にみると、年少人口(〇〜十四歳)は一千九百六十九万人で、前年より三十五万人の減少、生産年齢人口(十五〜六十四歳)は八千七百十六万人で、十万人の減少、老年人口(六十五歳以上)は一千九百二万人で、七十四万人の増加となった。
 この三区分別人口のうち、生産年齢人口は、これまでの増加から減少に転じており、平成八年は戦後初めての減少を記録した。
 年齢三区分別人口の割合は、年少人口が一五・六%、生産年齢人口が六九・三%、老年人口が一五・一%で、前年に比べ、年少人口は〇・四ポイント、生産年齢人口は〇・二ポイントそれぞれ低下し、老年人口は〇・五ポイント上昇している。
 年少人口と老年人口の差は、年々縮小しており、平成八年は、前年より〇・九ポイント縮小し、わずか〇・五ポイントの差と、ほぼ拮抗した状態になっている。
 年齢三区分別人口の割合の推移をみると、年少人口の割合は昭和五十年(二四・三%)から低下を続けている。生産年齢人口の割合は、昭和五十七年(六七・五%)から上昇を続けていたが、平成四年(六九・八%)をピークに低下している。一方、老年人口の割合は昭和二十七年(五・〇%)以降上昇が続いており、平成元年から毎年ほぼ〇・五ポイントの上昇が続き、八年(一五・一%)はこれまでの最高となっている。
 老年人口のうち、七十五歳以上の後期老年人口の割合をみると、平成三年に総人口の五%に達してからも毎年ほぼ〇・二ポイントの上昇が続き、八年は五・九%となっている。この後期老年人口は、近年、老年人口のほぼ四割を占めている。

 (三) 従属人口指数は四四・四、前年より〇・五ポイント上昇
 平成八年十月一日現在の年少人口指数は二二・六、老年人口指数は二一・八、従属人口指数は四四・四となっている。
 年少人口指数は昭和五十二年以降低下を続けているのに対し、老年人口指数は三十八年以降上昇を続けている。
 また、従属人口指数は戦後低下傾向で推移し、平成四年(四三・三)に大正九年(第一回国勢調査)以降の最低を記録したが、その後上昇に転じている。
 平成八年は、前年と比べ、年少人口指数が〇・四ポイントの低下、老年人口指数が〇・九ポイントの上昇、従属人口指数が〇・五ポイントの上昇となった。
 なお、子どもに対する高齢者の比率を示す老年化指数は九六・六となっており、三十人の子どもに対して二十九人の高齢者がいることになる。この老年化指数は、平成元年に六〇・〇を超えた後、毎年ほぼ五ポイントの上昇を続けている(第2表参照)。

 (四) 我が国とドイツはほぼ同じ年齢構造
 我が国の人口の年齢構造を各国と比べてみると、調査年次に相違はあるものの、年少人口の割合はイタリアと並んで低い水準となっており、老年人口の割合はアメリカやカナダより高くヨーロッパ諸国と同程度で、生産年齢人口の割合は欧米主要国に比べやや高い水準にある。また、従属人口指数は主要国と比べて低い水準となっている。
 なお、年齢三区分別の割合全体を通じてみると、我が国とドイツはほぼ同様の年齢構造となっている(第3表参照)。

◇都道府県別人口

一 人 口

 (一) 上位五都府県で全国人口の三分の一、大都市のある十一都道府県では二分の一
 平成八年十月一日現在における都道府県別の人口は、東京都の一千百七十七万人を最高に、大阪府(八百八十万人)、神奈川県(八百二十八万人)、愛知県(六百九十万人)、埼玉県(六百八十一万人)と続いている。以下、五百万人台が三道県、四百万人台と三百万人台が各一県、二百万人台が九府県、百万人台が二十一県、百万人未満が七県となっている。
 上位五都府県の順位は、昭和五十八年以降変わっていない。
 なお、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県及び埼玉県の上位五都府県で、全国人口の三三・八%と三分の一を超えている。
 また、大都市(東京都特別区部及び政令指定都市)を含む十一都道府県では五二・〇%と、全国人口の二分の一強を占めている(第4表参照)。

 (二) 人口減少は十三都県、十年以上連続の人口減少が六県
 平成八年に人口が減少した都道府県は、秋田県、山口県、長崎県、高知県、島根県など十三都県となっている。
 人口減少県の数は、高度経済成長期にあった昭和三十年代中ごろには二十五県前後、その後四十年代にかけては二十県前後になっていた。しかし、昭和四十八年の第一次石油危機以降の不況期、五十三年の第二次石油危機以降の停滞期には、人口減少県は〇ないし一県となっていた。その後、人口減少県の数は、昭和六十一年及び六十二年が十五県、六十三年が二十県、平成元年及び二年が二十二県と増加したが、三年以降は十県台で推移している。
 なお、秋田県、島根県、山口県、愛媛県、高知県及び長崎県の六県では、人口減少が十年以上続いている(第5表参照)。

 (三) 人口増加率は滋賀県の〇・八九%が最高
 平成八年の都道府県別の人口増加率は、滋賀県が〇・八九%で最も高く、埼玉県(〇・七四%)、沖縄県(〇・七三%)と続き、以下、長野県、奈良県及び茨城県の三県が〇・五%台、山梨県、千葉県、神奈川県、愛知県、栃木県及び宮城県の六県が〇・四%台となっている。
 人口増加率が〇・四%を超えているこの十二県について、自然増加率と社会増加率をみると、沖縄県など三県は社会増加率がマイナス(社会減少)となっている。他の九県は自然増加率と社会増加率が共にプラスとなっており、そのうち、滋賀県、奈良県など五県は自然増加率と社会増加率がほぼ同じであるのに対し、長野県は社会増加率の寄与が、埼玉県など三県は自然増加率の寄与が大きくなっている。
 なお、人口が減少している十三県の自然増加率と社会増加率をみると、長崎県、愛媛県など七県は自然増加率がプラスで、社会増加率がマイナスとなっており、秋田県、山口県など六県は自然増加率と社会増加率が共にマイナスとなっている(第2図参照)。

 (四) 自然増加率の最高は沖縄県の〇・七八%
 平成八年の都道府県別の自然増加率をみると、沖縄県が〇・七八%で最も高く、次いで埼玉県、愛知県、神奈川県及び滋賀県の四県が〇・四%台となり、千葉県及び大阪府の二府県が〇・三%台となっている。
 一方、自然増加率が最も低いのは秋田県及び島根県(マイナス〇・一〇%)で、次いで高知県(マイナス〇・〇九%)、山口県(マイナス〇・〇四%)、徳島県(マイナス〇・〇三%)、鳥取県(マイナス〇・〇二%)となっており、これら六県は死亡者数が出生児数を上回ったため、自然増加率がマイナス(自然減少)となっている。
 また、鹿児島県、愛媛県、山形県、香川県、和歌山県、大分県、岩手県、富山県及び新潟県の九県では、自然増加率が〇・一%未満となっている。
 なお、自然増加率は、出生児数の減少により、平成二年に沖縄県が〇・九一%に低下して以降、すべての都道府県で一%未満となり、七年と八年は、沖縄県以外の四十六県では〇・五%以下となっている(第6表参照)。

 (五) 社会増加率は滋賀県、長野県が高く〇・四%台
 平成八年の都道府県別の社会増加率をみると、滋賀県が〇・四八%で最も高く、次いで長野県が〇・四二%で、この二県が〇・四%台となっている。以下、奈良県(〇・二八%)、茨城県(〇・二七%)、埼玉県(〇・二七%)、山梨県(〇・二四%)、三重県(〇・二三%)と続き、東京、大阪の周辺県が上位を占めている。
 なお、社会増加率は昭和六十一年から平成五年までは埼玉県が最も高かったが、六年以降は滋賀県が最も高くなっている。
 一方、社会増加率が最も低いのは長崎県(マイナス〇・三六%)で、以下、大阪府(マイナス〇・二八%)、山口県(マイナス〇・二六%)、広島県及び秋田県(マイナス〇・二〇%)の順となっている。
 なお、大都市のある十一都道府県では、福岡県、宮城県及び千葉県の三県は社会増加率がプラスで、他の八都道府県は社会増加率がマイナス(社会減少)となっている(第7表参照)。

二 年齢別人口

 (一) 老年人口が年少人口を上回るのは三十二都道府県
 平成八年十月一日現在の年少人口(〇〜十四歳)の割合を都道府県別にみると、沖縄県が二一・六%で最も高く、東京都が一二・七%で最も低くなっており、その他の道府県はいずれも一四〜一七%台となっている。この年少人口の割合は、近年の出生児数の減少により、すべての都道府県で低下している。
 また、老年人口(六十五歳以上)の割合をみると、島根県が二二・四%で最も高く、以下、高知県(二一・二%)、山形県(二〇・五%)、秋田県(二〇・四%)、鹿児島県(二〇・三%)となっており、一方、割合が最も低いのは埼玉県(一〇・五%)で、次いで神奈川県(一一・六%)、千葉県(一一・七%)、沖縄県(一二・一%)、愛知県(一二・四%)となっている。この老年人口の割合は、年少人口の割合とは対照的に、すべての都道府県で上昇している。
 この結果、老年人口が年少人口を上回っている都道府県は、平成七年の二十二都県から十道府県の増加となり、八年には三十二都道府県となっている。
 老年人口の割合が、人口高齢化国の国連基準である七%の二倍に当たる一四%を超える都道府県は、十年前の昭和六十一年には五県、五年前の平成三年には二十五県であったが、八年は四十道府県になっている。
 ちなみに、「日本の将来推計人口(平成九年一月推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、我が国の高齢化は今後とも進展し、平成二十二年(二〇一〇年)ころには、老年人口の割合が約二二%に高まると見込んでおり、平成八年における島根県、高知県の老年人口の割合は、十年あまり先の日本全体の割合を示している(第3図参照)。

 (二) 大都市圏で高い生産年齢人口の割合
 平成八年十月一日現在の生産年齢人口(十五〜六十四歳)の割合を都道府県別にみると、東京都及び神奈川県が七三・七%で最も高く、以下、埼玉県(七三・六%)、千葉県(七二・八%)、大阪府(七二・六%)、愛知県(七一・四%)、京都府(七〇・〇%)となっており、大都市圏の都府県で高くなっている。
 一方、生産年齢人口の割合が最も低いのは島根県の六一・六%で、次いで鹿児島県(六二・四%)、山形県(六三・二%)、鳥取県(六三・四%)、高知県(六三・七%)となっている(第8表参照)。


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平成8年


賃金構造基本統計調査結果の概要


労 働 省


T 調査の概要

 この調査は、我が国の賃金構造の実態を明らかにするため、毎年六月分の賃金等について実施しているものである。調査対象は、日本標準産業分類による九大産業(鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店、金融・保険業、不動産業及びサービス業)に属する五人以上の常用労働者を雇用する民営事業所及び十人以上の常用労働者を雇用する公営事業所であり、調査対象となった事業所数は約七万一千、調査対象労働者数は約百五十五万人であった。
 この度、平成八年調査の十人以上の常用労働者を雇用する民営事業所に関する集計が終了したので、その結果を取りまとめた(集計事業所数は約四万七千、集計労働者数は約百二十六万人であった。)。
 なお、パートタイム労働者と表現したもの以外は、一般労働者についてのものである。

U 調査結果の概要

1 賃金、賃金上昇率

 平成八年の賃金(六月分の所定内給与、以下同じ。)は、男女計で二十九万五千六百円(平均三九・三歳、一一・六年勤続)、対前年上昇率は一・五%と前年に続き一%台の伸びとなった。
 男女別にみると、男子労働者は三十三万四千円(平均四〇・三歳、一三・一年勤続)、同一・二%、女子労働者は二十万九千六百円(平均三六・九歳、八・二年勤続)、同一・六%となった。
 女子パートタイム労働者の一時間当たりの賃金は八百七十円で、前年(八百五十四円)に比べ一・九%の上昇となった(第1表第1図参照)。
 なお、学歴や年齢、勤続年数が変わらなかった場合の賃金上昇率を計算すると、男子〇・五%、女子〇・四%となる(第2表参照)。

2 男子労働者の賃金

(1) 年齢階級別にみた賃金、勤続年数
 男子労働者の賃金を年齢階級別にみると、五十〜五十四歳層の四十二万九千八百円がピークで、二十〜二十四歳層(二十万七百円)の二・一倍となっている。
 対前年上昇率をみると、十八〜十九歳層、二十歳代、四十五〜四十九歳層で一%を下回る伸びとなっているのに対し、他の年齢層では一%台の伸びとなっている(第3表参照)。
 勤続年数は一三・一年となり、前年に比べると〇・二年、この五年間では〇・四年長くなっている。年齢階級別にみると、この五年間では、三十五〜三十九歳層、四十歳代で短くなっているが、二十〜二十四歳層、五十歳代では長くなっている(第3表参照)。
(2) 学歴別にみた賃金
 学歴別にみると、大卒の賃金は三十九万四千五百円(平均三八・一歳、一一・八年勤続)、高専・短大卒では二十九万五千七百円(平均三四・〇歳、九・一年勤続)、高卒三十一万四千円(平均三九・九歳、一三・三年勤続)、中卒三十万二千九百円(平均四九・六歳、一七・二年勤続)となっている。
 二十〜二十四歳層を一〇〇とした学歴別の年齢間格差を前年と比べると、大卒の三十歳代、五十五〜五十九歳層、高卒の五十歳代で、格差が拡大しており、この五年間でみても同一の年齢層で拡大しているが、大卒の四十歳代、五十〜五十四歳層、高卒の三十五〜三十九歳層、四十歳代の年齢層では縮小している(第4表参照)。
 大卒を一〇〇として高卒、中卒との学歴間格差をみると、高卒が八〇、中卒が七七となっている。
 年齢階級別には、二十歳代では格差は小さいが、三十歳代以降では年齢が高くなるに従って学歴間格差が拡大し、賃金がピークとなる五十〜五十四歳層では、高卒七〇、中卒五七となっている。
 この五年間でみると、学歴間格差の変化はみられないが、年齢階級別には、三十歳代では高卒、中卒ともおおむね拡大しているのに対して、五十歳代ではおおむね格差が縮小している(第5表参照)。
(3) 企業規模別にみた賃金
 企業規模別にみると、大企業の賃金は三十八万三千七百円(平均三九・六歳、一六・五年勤続)、中企業で三十二万二千五百円(平均三九・六歳、一二・七年勤続)、小企業で三十万三百円(平均四一・六歳、一〇・五年勤続)となっている。
 大企業を一〇〇として企業規模間格差をみると、中企業が八四、小企業七八となっている。
 企業規模間格差を年齢階級別にみると、中企業、小企業とも若年層では格差が比較的小さいが、三十〜五十四歳までは年齢とともに規模間格差が大きくなり、五十〜五十四歳層では中企業八〇、小企業六八となっている(第6表参照)。
(4) 標準労働者の賃金
 標準労働者(学校卒業後、直ちに就職し、同一企業に継続勤務している者)の賃金について年齢階級別にみると、大卒は五十五〜五十九歳層がピークで、六十六万二千三百円(二十〜二十四歳層の三・一倍)、高卒では五十〜五十四歳層がピークで、五十三万六千八百円(同二・八倍)となっている(第2図参照)。

3 女子労働者の賃金

(1) 年齢階級別にみた賃金、勤続年数
 女子労働者の賃金を年齢階級別にみると、三十五〜三十九歳層が二十三万四千円とピークになっているが、二十〜二十四歳層(十八万九百円)の一・三倍と年齢間での差はあまりみられない。
 対前年上昇率をみると、三十五〜三十九歳層で三・〇%、五十〜五十四歳層で二・三%となっているほかは、二%未満となっている(第7表参照)。
 勤続年数は八・二年となり、前年に比べると〇・三年、この五年間では〇・八年長くなっている。年齢階級別にみると、この五年間では二十〜二十四歳層以上の各年齢層で長くなっている。
 また、勤続年数二十年以上の長期勤続者の割合は一〇・〇%となり、この五年間で二・三ポイント上昇している(第7表第8表参照)。
(2) 学歴別にみた賃金
 学歴別にみると、大卒の賃金は二十六万八千円(平均三一・三歳、五・八年勤続)、高専・短大卒では二十二万一千九百円(平均三〇・五歳、六・〇年勤続)、高卒二十万二千六百円(平均三七・四歳、八・五年勤続)、中卒十七万六千四百円(平均五一・五歳、一二・四年勤続)となっている。
 二十〜二十四歳層を一〇〇とした学歴別の年齢間格差を前年と比べると、高専・短大卒で四十歳代、五十五〜五十九歳層の年齢層で格差が縮小しており、高卒ではおおむね横ばいとなっている。
 この五年間でみると、高専・短大卒では三十五〜三十九歳層以上の年齢層でおおむね縮小しており、高卒では二十五〜二十九歳層及び四十〜四十四歳層以上の年齢層で縮小している(第9表参照)。
(3) 企業規模別にみた賃金
 企業規模別にみると、大企業の賃金は二十三万四千九百円(平均三四・三歳、九・〇年勤続)、中企業で二十万九千円(平均三六・〇歳、七・八年勤続)、小企業で十九万三千三百円(平均三九・七歳、八・〇年勤続)となっている。
 大企業を一〇〇として企業規模間格差をみると、中企業が八九、小企業八二となっている。企業規模間格差を年齢階級別にみると、おおむね年齢が高くなるほど格差が大きくなり、五十〜五十四歳層では中企業七七、小企業七〇となっている。
 この五年間でみると、大企業との企業規模間格差は中企業、小企業ともほぼ各年齢層とも縮小しており、特に、格差の大きい四十五〜四十九歳層以上の年齢層では、おおむね一〇ポイント以上格差が縮小している(第10表参照)。
(4) 標準労働者の賃金
 標準労働者の賃金について年齢階級別にみると、大卒、高卒では五十五〜五十九歳層がピークで、大卒が五十七万九百円(二十〜二十四歳層の二・八倍)、高卒が四十万八千九百円(同二・三倍)、高専・短大卒では五十〜五十四歳層がピークで、四十七万六百円(同二・六倍)となっている(第3図参照)。

4 女子パートタイム労働者の賃金

(1) 女子パートタイム労働者の一時間当たりの賃金を企業規模別にみると、大企業で八百九十三円、中企業八百八十五円、小企業八百四十円となっている。
 大企業を一〇〇として企業規模間格差をみると、中企業が九九、小企業九四と中企業ではほぼ大企業と同水準となっている。
 これを前年と比べると、中企業ではあまり変化はみられないが、小企業では縮小しており、この五年間では両規模とも縮小している(第11表参照)。
(2) 地域別に一時間当たりの賃金をみると、南関東が九百三十九円と最も高く、次いで京阪神が九百十二円と高いのに対し、南九州が七百二十九円と低くなっている。
 南関東を一〇〇として地域間格差をみると、京阪神が九七と格差が最も小さく、東海、近畿、北関東で九〇〜九四と比較的小さいが、南九州では七八と最も大きくなっており、その他の地域では八二〜八七となっている(第12表参照)。
(3) 女子パートタイム労働者の実労働日数は二〇・〇日となり、前年に比べると〇・二日、この五年間でみると、一・二日短くなっている。
 一日当たりの所定内実労働時間数は五・六時間となり、前年に比べ〇・一時間、この五年間でみても〇・三時間短くなっており、実労働日数、一日当たりの所定内実労働時間数は短縮傾向にある。
 一方、勤続年数は五・〇年となり、前年と変化はないが、この五年間では〇・四年長くなっている(第13表参照)。





不法入国事犯の取締りの強化

 昨今、中国人をはじめとする外国人の我が国への不法入国事犯が急増し、これら不法入国者を含む不法滞在外国人による凶悪犯罪の増加が社会問題化しています。
 このような不法入国事犯のほとんどは、船舶を利用して我が国への密航を図るものです。最近では、国際的な密航ブローカーや日本の暴力団が介入して組織的に貨物船や漁船をチャーターしたり、我が国との貿易に従事する貨物船の船倉やコンテナ等に潜伏したりするなど、その手口は巧妙化しています。
 海上保安庁においては、これまで関係機関と密接に連携をとりながら情報収集体制の強化、情報を入手した場合における巡視船艇・航空機の集中的な投入による監視取締り等を実施してきていますが、昨年以来、日本漁船を瀬取り船として使用する中国人の集団密航が続発し、平成九年に入ってからも、四月二十四日までに三百三十名の不法入国者を検挙しています。
 このような密航事案の急増を踏まえ、本庁に「密航対策室」、各管区海上保安本部に「密航対策本部」を設置し、関係機関との連携を一層強化し、巡視船艇・航空機による二十四時間体制での監視取締りに努めているほか、訪中団を派遣して、中国政府に不法入国の防止を要請したところですが、海運・漁業関係者、沿岸住民の方からの情報により、摘発に至る事例もあることから、不審事象に関する情報提供の依頼を改めてお願いします。(海上保安庁)


 
    <9月10日号の主な予定>
 
 ▽防衛白書のあらまし………………防 衛 庁 

 ▽平成八年人口移動の概況…………総 務 庁 
 



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