官報資料版 平成108





規制緩和推進の現況


総 務 庁


はじめに

 「規制緩和推進の現況」(いわゆる「規制緩和白書」)は、規制緩和に関する情報を国民に分かりやすい形で提供するため、「規制緩和推進計画」に基づいて発行するもので、去る八月二十六日の閣議に報告の後、公表された。
 本白書は、今回、三回目の発行で、全四章及び資料編から構成されており、主な特色は次のとおりである。
(1) 規制緩和が社会経済にもたらす効果を、@多様で豊かな国民生活の実現、A経済の活性化、B国際整合化などの実現、C国民負担の軽減の四つのカテゴリーに沿って、二十六の事例を示しながら具体的に分かりやすく記述した(第1章第1節)。
(2) 規制緩和の経済的効果のこれまでの実績及び今後の予測について、例えば、一九九〇年度からの利用者メリットが年度平均で約四兆六千億円になることなど、初めて定量分析した結果を記述した(第1章第2節)。
(3) 公的規制の現状、更には規制緩和と許認可等の件数の増減の関係について記述した(第2章第1節)。
(4) 一九九五〜九七年度の三年間の規制緩和推進計画の集大成として、百以上の個別規制緩和事項について、住宅・土地、情報・通信など行政分野別に整理し、これまでの効果や今後期待される効果を盛り込み記述しているほか、本年二月に閣議決定した申請負担軽減対策などについても言及した(第3章第7節及び第8節)。
(5) 規制緩和推進計画が一九九八年三月で終了することを踏まえ、計画期間終了後の規制緩和の進め方についての検討視点を、十二項目に整理・分析して記述した(第4章第2節)。
 本白書のあらましは、以下のとおりである。

<第1章> 規制緩和の効果


<第1節> 規制緩和の進んだ事例

 規制緩和推進計画に基づいて実施され、又は実施が予定されている個別の規制緩和措置によって、どのような効果が現れたか、今後、どのような効果が期待されるかについて、@多様で豊かな国民生活の実現、A経済の活性化、B国際整合化などの実現、C国民負担の軽減の四つのカテゴリーに沿って整理し、二十六の具体的事例について規制緩和の進展状況を記述している。
 主な事例を紹介すると、次のとおりである。
【多様で豊かな国民生活の実現】
 ○良質な中高層都市住宅の供給促進に向けた土地の有効高度利用の促進
  容積率の引上げ、容積率割増制度の創設など
 ○移動体電話市場の活性化
  携帯・自動車電話端末の売切り制の導入、移動体通信料金の認可制から事前届出制への移行など
 ○タクシー事業の規制緩和
  需給調整基準の段階的緩和(二〇〇一年度までに需給調整規制を廃止)、ゾーン運賃制の導入など
 ○医薬品カテゴリーの見直し
  人体に対する作用が比較的緩やかな医薬品について、一般小売店でも購入できるようになる。
 ○教育制度の弾力化
  高校におけるボランティア活動等の学校外活動の単位認定など
【経済の活性化】
 ○電気通信市場の規制緩和
  国内・国際専用線と公衆網との接続、いわゆる「公専公」接続の自由化、過剰設備防止条項の撤廃など
 ○外為業務の自由化
  内外資本取引などの事前許可・届出制の廃止、外国為替公認銀行制度等の廃止など
 ○電気事業における発電部門への参入自由化
  卸電気事業の許可の原則撤廃、電源調達入札制度の導入など
 ○雇用・労働の規制緩和
  有料職業紹介事業の取扱い職業のネガティブリスト化、労働者派遣事業の適用対象業務の追加など
【国際整合化などの実現】
 ○建築基準に係る相互認証の推進
  我が国ツーバイフォー工法の要求性能を満たす建築資材の受入れ、海外試験機関の指定の相互認証など
 ○JIS規格の国際整合化
  日本工業規格(JIS規格)の国際規格への一層の整合化のため、一九九五年度から三年間で約一千規格の国際整合化を実施
【国民負担の軽減】
 ○自動車検査等に係る規制緩和
  車齢が十一年以上の自家用車の車検期間を一年から二年に延長、六か月点検の義務付けや「前整備、後検査」の義務付けの廃止など
 ○通関手続の簡素化・迅速化
  保税地域への執務時間外の貨物搬出入の許可の届出化、輸出入申告時の仕入書の提出省略範囲の拡大など
 ○パスポートの有効期間の延長
  一般旅券の有効期間を五年から十年に延長

<第2節> 規制緩和の経済効果についての定量的分析

 国民全体に広く規制緩和への理解を得ていくためには、規制緩和の経済への影響について、可能な限り定量的に把握し、分かりやすく国民に示していく必要がある。
 経済企画庁の「近年の規制緩和による経済効果の定量的試算」(一九九七年四月)及び「規制緩和などの経済構造改革が経済に与える影響について」(一九九七年六月)により、規制緩和の経済効果のこれまでの実績及び今後の予測についてみると、次のとおりとなっている。

1 これまでの規制緩和による経済効果実績
 (1) 市場への効果(需要効果)
 規制緩和により消費や投資が拡大された効果を需要効果と定義し、特に需要効果が大きい事項のうち、大店法、情報通信、土地・住宅、航空などの各項目による需要効果を試算した。各項目の需要効果を単純合計すると、一九九〇〜九五年度の年度平均で七兆九千億円程度となる(大店法の規制緩和による小規模小売店の売上げへの影響をこれから差し引くと七兆三千億円程度)。
 このうち、大店法関係の効果が最も大きく約四兆五千億円(需要効果全体の約五七%)、次いで、情報通信関係によるものが約二兆三千億円(同約二九%)となっている(第1図参照)。
 (2) 消費者利便への効果(利用者メリット)
 規制緩和が行われない場合の価格水準と、実際の価格水準との差に各年度の需要数量を乗じて金額に換算したものを利用者メリットと定義し、特に利用者メリットが大きいと目される事項のうち、電気通信、酒類販売、化粧品・医薬品、車検、電力などについて利用者メリットを試算した。一九九〇〜九五年度の利用者メリットを単純合計すると、年度平均で約四兆六千億円となる。
 このうち、通話料金の低廉化がみられる電気通信の利用者メリットが最も大きく約一兆二千億円(全体の約二七%)、次いで、電力が約一兆円(同約二一%)となっている(第2図参照)。

2 規制緩和が今後の経済に与える効果予測
 (1) 試算の前提
 一九九七年三月に再改定された「規制緩和推進計画」、一九九六年十二月の経済審議会の建議「六分野の経済構造改革」、一九九七年五月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」などに示された具体的な規制緩和方策をできるだけ踏まえながら、金融、情報通信、運輸など八分野を対象に、中期多部門モデルを使用して、規制緩和などの経済構造改革がマクロ経済に及ぼす影響を予測した。
 (2) 試算の結果
ア 一九九八〜二〇〇三年度の実質GDP成長率は、規制緩和などの経済構造改革が実現した場合には、実現しなかった場合に比べて年度平均で〇・九%程度上昇する(第1表参照)。
  なお、経済拡大効果が累積する結果、二〇〇三年度の実質GDPのレベルは、経済構造改革が行われなかった場合に比べ五・八%程度高まる。
イ 消費者物価上昇率は、経済構造改革が実現しなかった場合に比べて年度平均で一・二%程度低下する。
  なお、引下げ効果が累積する結果、二〇〇三年度の消費者物価のレベルは、七・三%程度低下することになる。
ウ 二〇〇三年度の経常収支黒字のGDP比率は、規制緩和などの経済構造改革が実現した場合には、実現しなかった場合に比べて〇・九%程度低下する。
エ 二〇〇三年度の失業率は、規制緩和の推進などにより、構造改革が行われなかった場合に比べて若干ながら高まるが、労働者の保護に十分配慮しつつ雇用・労働分野における規制緩和などを行った場合は、労働力需給調整機能の強化により、失業の増大はおおむね相殺される。

<第2章> 公的規制の現状


<第1節> 公的規制の目的等

1 公的規制とは
 「公的規制」についての法令上の定義はないが、一九九八年十二月の第二次行革審の「公的規制の緩和等に関する答申」は、「公的規制は、一般に、国や地方公共団体が企業・国民の活動に対して特定の政策目的の実現のために関与・介入するものを指す。それは、許認可等の手段による規制を典型とし、その他にも、許認可等に付随して、あるいはそれとは別個に行われる規制的な行政指導や価格支持等の制度的な関与などがある。」と比較的広範囲にとらえている(第3図参照)。
 公的規制は、国民や企業の自由な活動に任せていたのでは、国民生活の安全が損なわれる、産業経済の健全な発展が望めないなどの問題が生ずるおそれがある場合に、公共の福祉に寄与する特定の政策目的を達成するために、一定の活動を禁止したり、活動に先立って行政庁の許可、認可などを得なければならないとするなどの制限を加えたりするものである。
 しかし、このような合理的な必要性があって設けられた規制も、社会経済情勢の変化などに伴って、意義が薄れたり、技術進歩などにより実効性を失ったりする場合が少なくない。
 このようになった規制を放置すると、資源の効率的な配分が妨げられたり、民間部門の創意工夫の意欲を減退させ、その自由な活動を妨げたり、あるいは国民に必要以上の負担や制約を課すなど、本来ないしは当初の目的に反して弊害を生じることとなる。
 したがって、既存の公的規制については、常にその必要性、規制の方法・内容を見直し、不要、あるいは弊害を及ぼすようになった規制については、廃止、緩和を図る必要がある。

2 規制緩和と許認可等の件数との関係
 「規制緩和は進んでいるといいながら、許認可等は減らなかった、又は増加した。」といった指摘があるように、許認可等の件数の増減が規制緩和の進展の指標とされることがある。
 しかし、以下のとおり、規制緩和の進展と許認可等の件数の増減とは、必ずしも相関関係がない。
 ○許認可等の件数は、@根拠法令の項(項に細分されていない場合は条)ごとに一事項として数える、A同一の項のうちに用語の異なる数個の許認可等の根拠が規定されている場合は、異なる用語ごとに一事項として数えるなどの基準により、機械的に数えている。
  これに対し、規制緩和の態様は、@規制の廃止、A規制対象範囲の縮小、B規制基準の緩和、C強い規制から弱い規制への緩和など、様々な態様がある。
 ○許認可等の件数と規制緩和の態様の関係をみると、
@ 許認可等の根拠条項が廃止される場合は、許認可等の数は減少する。
 (例) 一九九六年三月の期限切れをもって、特定石油製品輸入暫定措置法が廃止され、事業者登録など三件の許認可等が減少。
A 許認可等の有効期間の延長、許可を届出とするなどの場合は、規制が緩和されても許認可等の根拠条項は残るため、許認可等の数は変化しない。
 (例) 自家用乗用自動車について、初めて交付する自動車検査証の有効期間を二年から三年に延長(一九八三年施行)したが、自動車の検査という許認可等は残っているため、許認可等の数は変化しない。
B これまで法令で全面的に禁止されていた行為が、特例的に許可を受けることによって可能となる場合は、規制は緩和されるが許可制度が新設され、許認可等の数は増加する。
  また、強い規制(許可など)の一部を届出に緩和した場合は、新たな許認可条項が設けられ、許認可等の数は増加する。
 (例) 従来、日本電信電話公社が独占していた電気通信事業に民間事業者の参入を認めることとし、電気通信事業法が制定(一九八五年施行)された結果、電気通信事業の許可、各種届出など約九十件の許認可等が増加。

<第2節> 許認可等の現状

 ○許認可等の実態の統一的把握
 総務庁では、一九八五年以来、十一回にわたり許認可等の実態の統一的把握を行い、この結果を取りまとめて公表している。
 許認可等の件数は、一九八五年の第一回把握時点の一万五十四件から第十一回把握時点(一九九六年三月末)までに九百二十九件増加(二千四百九十八件減少、三千四百二十七件増加)し、一万九百八十三件となっている(第4図参照)。
 許認可等の件数は、第九回及び第十回の把握時点において二年連続減少したが、第十一回において三年ぶりに増加した。第十一回は、第十回に比べ五百四十五件増加、三百二十二件減少し、差引き二百二十三件の増加となっている。
 第十一回の把握において増加した許認可等について、その理由をみると、@社会の要請や国際条約に基づいて規制を強化したことによるもの九十八件、A規制緩和を推進するため、従来禁止又は制限されていた行為について規制を緩和し、一定の条件下で一定の行為を行えるようにしたことによるものが三百十四件、その他が百三十三件となっている。
 ○許認可等の内訳
 第十一回の把握時点における一万九百八十三件の許認可等を、所管省庁別にみると、第2表のとおりとなっている。
 また、用語別にその内訳をみると、許可、認可、免許など比較的強い規制とされているものが四千三百五十八件(三九・七%)、認定、検査、登録など中間の規制が一千三百八十六件(一二・六%)、届出、報告など比較的弱い規制とされているものが四千七百九十九件(四三・七%)となっている。
 さらに、許認可等をその規定されている法律、政令などの別にみると、法律により規定されているものが七千九百六十四件(七二・五%)と全体の七割を占め、次いで、府省令・規則によるもの二千二百四十六件(二〇・四%)、政令によるもの四百二件(三・七%)、告示によるもの三百七十一件(三・四%)となっている。


<第3章> 規制緩和の推進状況


<第1節> 規制緩和推進計画策定前の取組

 規制緩和は、一九六七年に最初の許認可等の一括整理法による整理が行われて以来、許認可等の整理として実施されてきた。
 第二次臨調(一九八一〜八三年)では、主として国民負担の軽減や行政事務の簡素合理化、民間活力の助長などの観点から、また、第一次行革審(一九八三〜八六年)では、民間活力の発揮・推進等の観点から、それぞれ許認可等についての指摘がなされている。
 第二次行革審(一九八七〜八九年)以降は、これらに加えて、国民生活の質的向上、産業構造の転換、市場アクセスの改善、新規事業の拡大、内外価格差の縮小などの観点が重視されてきており、一九九三年九月の経済対策閣僚会議決定「緊急経済対策」、一九九四年二月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」及び同年七月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」にも、こうした観点に基づく規制緩和措置が盛り込まれている。

<第2・3節> 規制緩和推進計画の策定、改定及び再改定

1 規制緩和推進計画の策定
 一九九三年十月の第三次行革審の「最終答申」において、「政府は、現在進めつつある許認可等の整理の成果をも踏まえ、規制緩和に関する中期的かつ総合的なアクション・プランを策定する。」とされ、その後、一九九四年二月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」において、五年を期間とする「規制緩和推進計画」を策定することとされた。
 このような経過を経て、一九九五年三月に「規制緩和推進計画について」が閣議決定された。その内容は、規制緩和の目的、基本指針、計画の推進方法などに加え、@住宅・土地等、A情報・通信、B流通等、C基準・認証・輸入等、D金融・証券・保険など十一分野にわたる一千九十一事項の個別の規制緩和措置が盛り込まれた。
 なお、計画は、急激な為替レートの変動が我が国経済の先行きに悪影響を及ぼすおそれに対処するため、一九九五年四月の経済対策閣僚会議決定「緊急円高・経済対策」において、一九九七年度までの三か年計画として実施期間を短縮し、前倒し実施することとされた。

2 規制緩和推進計画の改定
 規制緩和推進計画においては、計画を「毎年末までに見直し、毎年度末までに改定する」こととし、一九九六年三月に一回目の計画改定が行われた。
 計画の改定に当たっては、まず各省庁において、行政改革委員会の意見を最大限に尊重し、内外の意見・要望を踏まえながら、新たな規制緩和方策を積極的に盛り込むとともに、既定計画に記載された事項についても、極力、実施時期の前倒し、実施時期の明確化及び実施内容の具体化を図った。
 また、改定作業の最終調整の段階において、関係閣僚や与党行政改革プロジェクトチームの座長などからなる「規制緩和推進のための閣僚懇談会」を開催して意見の調整を図るなどの取組が行われた。
 このような経過を経て、改定計画は、新規五百六十九事項を含め、十一分野にわたる一千七百九十七事項の個別の規制緩和措置を盛り込み、一九九六年三月に行政改革推進本部の決定を経て、閣議決定された。

3 規制緩和推進計画の再改定
 再改定計画は、新規八百九十事項を含め、新たに「教育」分野を加えた十二分野にわたる二千八百二十三事項の個別の規制緩和措置を盛り込み、一九九七年三月に行政改革推進本部の決定を経て、閣議決定された。
 再改定に当たっては、次のような取組が行われた。
@ 各省庁や内閣内政審議室及び総務庁行政管理局において、広く内外から規制緩和に関する意見・要望を受け付け、これらについては関係省庁に検討を要請するとともに、一九九六年十二月に公表した。
A 意見・要望の聴取の一環として、一九九六年十一月に行政改革推進本部を開催し、内閣総理大臣を始め全閣僚が内外の七団体から意見・要望を聴取した。
B 各省庁は、内外からの意見・要望や一九九六年十二月に内閣総理大臣に提出された行政改革委員会の意見を検討し、一九九七年一月までに検討状況の中間公表を行った。
C さらに、一九九七年二月には、意見・要望に対する各省庁の検討状況の中間公表を受けて、内外七団体からの意見・要望を聴取する行政改革推進本部を開催した。
D 事務的に調整のつかない事項については、一九九七年三月に総務庁長官と関係八閣僚との折衝を行い、実施時期の前倒し、実施内容の明確化を図るなど、政治的リーダーシップによる取組が行われた。
E なお、内外の意見・要望に対し、現行の制度・運用を維持するものについては、各省庁がその理由、根拠を明確にし、一九九七年四月に総務庁がまとめて公表した。 (第4節は略)

<第5節> 行政改革委員会の活動

 行政改革委員会は、規制緩和その他政府の行政改革の実施状況の監視等を行う機関として、一九九四年十二月に法律に基づいて三年の時限で設置された。同委員会は、規制緩和について専門的に調査、検討を行う規制緩和小委員会を設置している。
 同委員会は、政府の規制緩和推進計画の改定作業に合わせ、これまで二回にわたり「規制緩和に関する意見」を内閣総理大臣に提出しており、政府は、いずれの意見も最大限に尊重し、その内容を全面的に取り入れて、規制緩和推進計画の改定及び再改定を行った。
 規制緩和小委員会においては、検討の過程をオープンにし、広く国民の議論を呼び起こすため、「論点公開」と「公開ディスカッション」を実施している。また、委員・参与が全国各地に出向いて、規制緩和に関する理解の促進と意見交換を目的とした「規制緩和フォーラム」を開催している。

<第6節> 行政監察機能の発揮

 総務庁行政監察局では、従来から、規制緩和の推進に積極的に取り組んできており、省庁横断的な視点から規制緩和を推進するものとして、@規制行政に関する基本調査、A規制緩和に関する調査(行革委員会依頼調査)及びB規制緩和のフォローアップ調査を実施しているほか、施策別の行政監察においても、規制緩和の観点を踏まえつつ、実施している。
 一九九二年度以降に実施した勧告等において指摘した規制緩和事項は延べ二百九十九事項あり、このうち再改定計画に取り上げられた事項は、@省庁横断的な行政監察・調査で指摘した百十五事項のすべて、A施策別の行政監察・調査で指摘した百八十四事項のうち百四事項、計二百十九事項となっている。
 また、再改定計画に取り上げられた二百十九事項のうち、九十九事項が措置済みで、百二十事項が措置予定であるなど、行政監察において指摘した事項は着実に措置されている。

<第7節> 再改定規制緩和推進計画の概要

1 本文の概要
 (1) 目 的
 再改定された規制緩和推進計画は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていくことを基本に、
@ 消費者の多様なニーズに対応した選択の幅の拡大、内外価格差の縮小等による国民生活の質の向上
A 内需の拡大や輸入の促進、事業機会の拡大等による国際的調和の実現
B 素材・仕様・規格を詳細に指定する基準から性能基準への移行、申請・届出の電子化・ペーパーレス化等による国民負担の軽減、行政事務の簡素化
を図るなどの観点から、規制緩和を計画的に推進
 (2) 基本的考え方
@ 経済的規制については、原則自由・規制は例外的な場合のみ、社会的規制については、本来の政策目的に沿って必要最小限
A 外為法の改正にみられるような、事前規制型の行政から事後チェック型の行政への転換
 (3) 審議会等の結論早期化
 審議会等の結論を得る必要があるものについては、審議会等の審議が隠れ蓑とか時間稼ぎと批判されることのないよう、審議会等の結論を原則として平成九年九月末までに得ることなど、早期化を図ることを基本とする。
 (4) 申請負担軽減対策
 申請・届出に際しての国民の負担の大幅な軽減を図るため、有効期間の倍化・延長などを内容とする「申請負担軽減対策」(平成九年二月閣議決定)の指針を具体化する措置を盛り込んだ。
 (5) 規制の新設審査
@ 規制の新設に当たっては、原則としてその規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すこととする。
A 法律により規制を新設するものについては、各省庁は、その趣旨、目的に照らして適当としないものを除き、一定期間経過後の見直し条項を盛り込む。見直しの結果、その制度・運用を維持するものは、その必要性、根拠を明確にする。
B 各省庁は、規制の新設に当たっては、規制の必要性、期待される効果、予想される国民の負担等について検討し、検討結果を、見直し条項を付したもの及び見直し条項に基づく見直しの結果とともに、公表する。
 (6) 公正な競争のための競争政策の積極的展開
 独占禁止法違反行為に対する厳正・積極的な対処など、競争政策を積極的に展開する。

2 個別の規制緩和措置の概要
 再改定計画においては、改定計画における@住宅・土地、A情報・通信、B流通等、C運輸、D基準・認証・輸入、E金融・証券・保険などの十一分野に、新たに「教育」分野を加えた十二分野にわたり、新規の八百九十事項を含め、全体で二千八百二十三事項の規制緩和措置を盛り込んでいる(第3表参照)。

3 独占禁止法適用除外制度の見直し
 独占禁止法の適用除外制度は、事業者や事業者団体が行う価格、数量、取引先などの事業活動の制限に関するカルテルなどについて、例外的に一定の要件の下に独占禁止法の適用を除外するものである。
 適用除外制度は、我が国の経済基盤が脆弱であった戦後から一九五〇年代に、産業の育成、国際競争力の強化のための政策課題に対応するため創設されたが、今日の経済社会情勢は制度創設時の情勢とは大きく異なり、制度の必要性・有効性も変化してきており、その見直しが必要となってきている。
 適用除外制度は、大別して、@独占禁止法自体に基づくもの(不況カルテルなど)、A適用除外法に基づくもの、B個別の法律に基づくものがあり、このうち、Bについては、一九九七年の通常国会に二十法律三十五制度について、廃止を含む措置をとるための一括整理法案を提出し、六月に成立、七月に施行された。
 また、@及びAについては、再改定計画において、「適用除外となる行為及び団体の全範囲について、制度自体の廃止を含めて見直し、平成九年度末までに具体的結論を得る。この際、適用除外法については、法そのものの廃止を含めて抜本的見直しを行う。」こととされた。
 これを受けて、政府は、一九九七年六月から「独占禁止法適用除外制度見直しに係る関係省庁等連絡会議」において、独占禁止法などに基づく適用除外制度の見直しについて検討を開始したところである。

<第8節> 申請の負担感の半減に向けて

 政府は、「行政改革プログラム」(一九九六年十二月閣議決定)や与党の申入れを受けて、「今世紀中に申請・届出などの行政手続に伴う国民の負担感を半減」することを目標として、一九九七年二月に「申請負担軽減対策」を閣議決定した。
 その対策の具体化の第一弾が、許認可有効期間の倍化・延長であり、食品営業の許可(現行四年以上を五年以上に延長)や薬局の許可(現行の三年を倍化)など約百二十事項について、有効期間の倍化・延長を決定し、再改定規制緩和推進計画に盛り込んだ。
 さらに、第二弾として、本年七月に策定した「押印見直しガイドライン」(事務次官等会議申合せ)に基づき、@記名に認印の押印を求めている場合は、原則として記名のみでよいこととする、又はできる限り署名でもよいこととする選択制を導入する、A署名に認印の押印を求めている場合は、原則として署名のみでよいことにするとの基本方針の下、見直しを実施し、その結果を取りまとめることとしている。

<第9節> 規制緩和と行政手続法

 行政手続法(平成五年法律第八十八号)は、ほとんどの行政分野にわたる処分・届出及び行政指導を対象とした共通的な手続ルールを定めた一般法であり、行政指導を含め規制行政の運営についての抜本的な改善を目指したもので、規制緩和の推進と密接な関係がある。
 具体的には、同法は、許認可等を求める申請手続について、申請に対する審査開始義務(第七条)、審査基準及び標準処理期間の設定・公表(第五条・第六条)のルールを定めている。これらのルールにより、国民は申請を行えば、法令に基づきあらかじめ公にされた基準に従って審査を受け、また、あらかじめ公にされた期間を目安に処理され、その結果の通知を受けられることになり、国民の負担軽減に寄与するものとなっている。
 また、申請手続に関連して行われる行政指導について、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明した場合において、申請者の権利行使を妨げないようにすること(第三十二条)を定めている。
 なお、総務庁が実施している行政手続法施行状況調査の結果を、国の行政機関についてみると、一九九六年三月末現在、許認可等の申請に対する処分四千六百十三種類の中で、審査基準設定済みのものが四千百十五種類(八九%)、標準処理期間設定済みのものが三千五百五十二種類(七七%)となっている。

<第10節> 世界との関わり

 経済のグローバル化に対応する観点からの行政改革の必要性が高まっており、特に規制緩和は、経済社会を国際的に開かれたものとする観点からも必要であり、主要各国では、精力的に取り組んでいる。
 OECDでは、加盟各国における公的規制の質と透明性の向上が一層重要な問題になるとの認識から、積極的な取組を促している。
 規制緩和推進計画でも国際化対応を目的に掲げるとともに、計画の改定、再改定に当たっては、アメリカ、EUなど海外の国、団体から寄せられた意見・要望を踏まえて見直しを行った。
 また、規制緩和の進め方や個別事項をめぐって国際対話を行うケースが増えており、各国首脳との会談の際の経済問題における重要テーマとして取り上げられるほか、@アメリカやEUのように一対一で我が国と対話するもの、AOECD、APEC、WTOのように多国間グループの中で対話を行うものなど多様な形態がある。
 規制緩和が各国の法制度などによって事情が異なることに留意しつつ、各国共通の視点となる点は可能な限り参考にしていくことが必要である。

<第4章> 規制緩和の今後に向けて


<第1節> 計画のフォローアップの実施

 一九九六年三月に改定された規制緩和推進計画における一千七百九十七の個別事項について、一九九七年三月末現在における各省庁の改善措置状況をみると、一千六百三十五事項(九一%)については、法令の改正など何らかの改善措置が講じられており、総体として着実な推進が図られている。
 また、再改定された規制緩和推進計画において、計画を「積極的に推進するとともに、その実施状況に関するフォローアップを行う。これに当たり、行政監察機能を積極的に活用する。」とされたことを踏まえ、一九九七年度においても総務庁行政監察局が「規制緩和のフォローアップ調査」を実施することとしている。

<第2節> 今後の取組

1 今後の規制緩和の進め方の検討視点
 規制緩和推進計画の計画期間は、一九九五年度から一九九七年度までの三か年であり、一九九八年三月で終了する。計画期間終了後の規制緩和の進め方については、行政改革全体の進め方との関係を考えながら検討を進め、年内に結論を得ることとしている。
 今後の規制緩和の進め方を検討するに当たっては、以下の視点を踏まえて行う必要がある。
@ 現行計画は、全行政分野にわたり大小の事項を網羅的に盛り込んでいるが、分野ごとに進めていくのか、現行計画のようにすべての行政分野をカバーした形で進めていくことが有効か。
A 仮に計画を作成することとした場合、計画に期限を定めることが適切か、それとも恒常的なスキームとしていくことが適切か。
B 現行の計画は、各分野の重点事項を特に明示する方式をとっていないが、重点事項を示して進めるやり方は有効か否か。
C 規制緩和の最終目標を可能な限り示していく必要性が増しているのではないか。
D 広く内外の意見を聴取・把握して透明性を確保しつつ、年一回改定するという現行計画のスキームについて内外の評価は高いが、同様のスキームによる透明性確保に代わり得る方法はあるか。
E 行政改革委員会の設置期限(本年十二月)到来後、規制緩和の実施状況を監視する機関・機能を設置する必要性があるのか。あるとすれば、どのような形が望ましいか。
F 政治的リーダーシップは十分に発揮される仕組みとなっているか。計画の改定過程における閣僚懇談会や閣僚折衝などの成果を踏まえ検討する必要がある。
G 規制緩和の推進に当たって、審議会が隠れ蓑や時間稼ぎと批判されずに、どのような有効な役割を果たすことができるか。
H 規制緩和と官民の役割分担との関係に留意する必要がある。
I 国と地方の関係にも留意する必要がある。
J 規制緩和は、国民や企業の自己責任・自己規律を一層強く求めることになり、その判断を行うに当たっての情報提供・公開が一層重要になる。政府が、制定に向けて取り組んでいる情報公開法制が、こうした観点から規制緩和を促進する意味を有することにも留意する必要がある。
K 行政手続法は規制緩和の推進に重要な意義を有しており、その普及、活用に政府の努力も必要であるが、それにも増して、国民の側における活用マインドの向上が望まれるのではないか。

2 規制緩和進展の及ぼす影響とそれへの取組
 規制緩和の推進は、我が国経済社会を市場原理や自己責任原則に基づいた自由なものにし、産業構造の大きな変革をもたらす重要な課題であるが、一方、規制緩和のマイナス面として、雇用面への影響、中小企業の事業活動に対する影響、不当表示などに対する消費者の適正な商品選択の問題など、いわゆる規制緩和の「影の部分」の影響も否定できない。
 これらの問題に対しては、@雇用・労働分野における規制緩和による雇用機会の拡大努力、A公正取引委員会を中心とした規制緩和後の市場の公正な競争秩序の維持の確保に向けた取組などを、より積極的に行っていくことが必要である。
 また、これらの施策を実行してもなお残るマイナス面の影響については、個別の事情に即し、例えば、中小企業者に対する対策の充実や雇用機会の確保、地域住民の生活への配慮など、規制緩和の推進や競争政策の展開とは別の観点からの政策努力を払いつつ、進めていく必要がある。


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法人企業動向調査


−平成九年六月実施調査結果−


経 済 企 画 庁


◇調査要領

 本調査は、資本金一億円以上の全営利法人を対象として、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通しを調査したものである。
 調査対象:調査は、原則として国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金又は出資額が一億円以上の全営利法人(約三万二千百社)から経済企画庁が定める方法により選定した四千五百五十五社を対象とした。
 調査時点:平成九年六月一日
 調査方法:調査は、調査法人の自計申告により行った。
 なお、資本金又は出資額が五十億円以上の営利法人については、原則として全数調査、五十億円未満の営利法人は、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
 有効回答率:調査対象法人四千五百五十五社のうち、有効回答法人四千三百七十五社、有効回答率九六・〇%
〔利用上の注意〕
 @ 今期三か月の判断とは、平成九年一〜三月期と比較した場合の九年四〜六月期の判断、来期三か月の見通しとは、九年四〜六月期と比較した場合の九年七〜九月期の見通し、再来期三か月の見通しとは、九年七〜九月期と比較した場合の九年十〜十二月期の見通しである。
 なお、季節調整値及び時系列表については、来期三か月の見通し及び再来期三か月の見通しについて掲載している。
 A 判断指標(BSI)とは、「上昇(強くなる・増加)の割合−下降(弱くなる・減少)の割合」である。
 B 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
 C 季節調整の方法は、設備投資(実績、実績見込み、計画U、計画Tの各系列別)及び景気・経営の見通しとも、センサス局法U、]−11で算出。さらに、設備投資の実績見込み、計画U、計画Tは達成率による修正を行った。
 D 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社、JR関係七社及び電源開発鰍調査対象に加えるとともに、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社については六十年四〜六月期、JR関係七社については六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
 E 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
 F 平成元年四〜六月期以降の調査内容は、消費税を除くベースで調査した。

◇概 要

 ○景気見通し(全産業)(第1表第1図参照

・国内景気
 国内景気の判断指標(BSI)は、平成九年四〜六月「マイナス二十二」と一時的に悪化するものの、七〜九月「九」と回復し、十〜十二月「十二」となり、企業経営者の国内景気見通しには引き続き回復感がみられる。
・業界景気
 業界景気の判断指標は、九年四〜六月「マイナス十九」と一時的に悪化するものの、七〜九月「三」と回復し、十〜十二月「五」となり、業界景気見通しには引き続き回復感がみられる。

 ○需要見通し(製造業)(第1表第1図参照

・国内需要
 国内需要の判断指標は、平成九年四〜六月「マイナス二十一」と一時的に悪化するものの、七〜九月「五」と回復し、十〜十二月「三」となり、企業経営者の国内需要見通しには引き続き回復感がみられる。
・海外需要
 海外需要の判断指標は、九年四〜六月「三」の後、七〜九月「四」、十〜十二月「三」となり、海外需要見通しには引き続き回復感がみられる。

 ○自己企業の経営見通し第1表第1図参照

・製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 製品価格の判断指標は、平成九年四〜六月「マイナス十」の後、七〜九月「マイナス七」、十〜十二月「マイナス七」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
・原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 原材料価格の判断指標は、九年四〜六月「十一」の後、七〜九月「八」、十〜十二月「四」となり、原材料価格はやや上昇するものと見込まれている。
・売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)
 売上高の判断指標は、九年四〜六月「マイナス七」と一時的に慎重になるが、七〜九月「十一」と改善し、十〜十二月「十」となり、売上高の見通しは引き続き改善するものと見込まれている。
・経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)
 経常利益の判断指標は、九年四〜六月「マイナス五」と一時的に慎重になるが、七〜九月「七」と改善し、十〜十二月「七」となり、経常利益の見通しは引き続き改善するものと見込まれている。

 ○四半期別設備投資の動向(全産業)(第2表第2図第3表参照

 全産業では、平成九年四〜六月に減少の後、七〜九月、十〜十二月はともに増加の見通しとなっている。
 これを産業別にみると、製造業では、九年四〜六月に減少の後、七〜九月、十〜十二月はともに増加の見通し、非製造業では、九年四〜六月に減少の後、七〜九月は増加、十〜十二月は減少の見通しとなっている。
 また、資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業では、九年四〜六月、七〜九月、十〜十二月のいずれも増加の見通し、一〜十億円の中堅企業では、九年四〜六月に減少の後、七〜九月、十〜十二月はともに増加の見通しとなっている。

 ○生産設備の判断(製造業)(第4表参照

 自己企業の生産設備の判断指標は、平成九年一〜三月「十二」の後、四〜六月「十」となり、過大感が和らいでいる。

 ○在庫水準の判断(製造業)(第5表参照

 完成品在庫水準の判断指標は、平成九年三月末「十五」の後、六月末「十三」となり、過大感が和らいでいる。

一 景気見通し(全産業:季節調整値)

(一) 国内景気

 国内景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年四〜六月「マイナス二十二」と一時的に悪化するものの、七〜九月「九」と回復し、十〜十二月「十二」となり、企業経営者の国内景気見通しには引き続き回復感がみられる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、九年七〜九月には精密機械がマイナス、非鉄金属が「〇」、それ以外(十六業種)はプラス、十〜十二月には精密機械が「〇」、それ以外(十七業種)はプラスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、九年七〜九月には農林漁業、鉱業がマイナス、それ以外(八業種)はプラス、十〜十二月には農林漁業、鉱業が「〇」、それ以外(八業種)はプラスとなっている。

(二) 業界景気

 所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年四〜六月「マイナス十九」と一時的に悪化するものの、七〜九月「三」と回復し、十〜十二月「五」となり、業界景気見通しには引き続き回復感がみられる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では九年七〜九月には窯業・土石、非鉄金属、造船等六業種がマイナス、繊維が「〇」、それ以外(十一業種)はプラス、十〜十二月には鉄鋼、金属製品がマイナス、食料品・飲料、造船が「〇」、それ以外(十四業種)はプラスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、九年七〜九月には卸・小売、電力、サービス等五業種がプラス、それ以外(五業種)はマイナス、十〜十二月には農林漁業、建設、ガスがマイナス、不動産が「〇」、それ以外(六業種)はプラスとなっている。

二 需要見通し(製造業:季節調整値)

(一) 国内需要

 国内需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成九年四〜六月「マイナス二十一」と一時的に悪化するものの、七〜九月「五」と回復し、十〜十二月「三」となり、企業経営者の国内需要見通しには引き続き回復感がみられる。
 業種別にみると、十八業種中、九年七〜九月には窯業・土石、非鉄金属、金属製品がマイナス、それ以外(十五業種)はプラス、十〜十二月には「その他の輸送用機械」がマイナス、石油・石炭、鉄鋼が「〇」、それ以外(十五業種)はプラスとなっている。

(二) 海外需要

 海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成九年四〜六月「三」の後、七〜九月「四」、十〜十二月「三」となり、海外需要見通しには引き続き回復感がみられる。
 業種別にみると、十八業種中、九年七〜九月には石油・石炭、精密機械、印刷・出版等四業種がマイナス、繊維、パルプ・紙、一般機械が「〇」、それ以外(十一業種)はプラス、十〜十二月には食料品・飲料、石油・石炭、鉄鋼等五業種がマイナス、窯業・土石が「〇」、それ以外(十二業種)はプラスとなっている。

三 自己企業の経営見通し(季節調整値)

(一) 製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年四〜六月「マイナス十」の後、七〜九月「マイナス七」、十〜十二月「マイナス七」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
 業種別にみると、二十業種中、九年七〜九月には繊維、鉄鋼等四業種がプラス、それ以外(十六業種)はマイナス、十〜十二月には石油・石炭、造船、農林漁業等七業種がプラス、鉱業が「〇」、それ以外(十二業種)はマイナスとなっている。

(二) 原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年四〜六月「十一」の後、七〜九月「八」、十〜十二月「四」となり、原材料価格はやや上昇するものと見込まれている。
 業種別にみると、二十業種中、九年七〜九月には鉱業がマイナス、パルプ・紙、非鉄金属が「〇」、それ以外(十七業種)はプラス、十〜十二月には食料品・飲料、電気機械、自動車等五業種がマイナス、それ以外(十五業種)はプラスとなっている。

(三) 売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成九年四〜六月「マイナス七」と一時的に慎重になるが、七〜九月「十一」と改善し、十〜十二月「十」となり、売上高の見通しは引き続き改善するものと見込まれている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、九年七〜九月には非鉄金属、金属製品がマイナス、自動車が「〇」、それ以外(十五業種)はプラス、十〜十二月には石油・石炭、ゴム・皮革、造船が「〇」、それ以外(十五業種)はプラスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、九年七〜九月には鉱業、建設、電力がマイナス、それ以外(五業種)はプラス、十〜十二月には卸・小売、運輸・通信等四業種がプラス、それ以外(四業種)はマイナスとなっている。

(四) 経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成九年四〜六月「マイナス五」と一時的に慎重になるが、七〜九月「七」と改善し、十〜十二月「七」となり、経常利益の見通しは引き続き改善するものと見込まれている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、九年七〜九月には石油・石炭、金属製品、精密機械がマイナス、パルプ・紙が「〇」、それ以外(十四業種)はプラス、十〜十二月にはパルプ・紙、石油・石炭がマイナス、それ以外(十六業種)はプラスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、九年七〜九月には鉱業、建設、電力がマイナス、それ以外(五業種)はプラス、十〜十二月には農林漁業、卸・小売、運輸・通信がプラス、建設、サービスが「〇」、それ以外(三業種)はマイナスとなっている。

四 四半期別設備投資の動向(全産業:季節調整値)

 設備投資の動向を四半期別に前期比でみると、全産業では、平成九年一〜三月(実績)二・六%増の後、四〜六月(実績見込み)一・七%減、七〜九月(計画U)二・一%増、十〜十二月(計画T)一・六%増の見通しとなっている。
 また、「電力」を除いた全産業では、九年一〜三月二・九%増の後、四〜六月一・七%減、七〜九月二・七%増、十〜十二月一・五%増の見通しとなっている。

(一) 産業別設備投資の動向

 産業別に設備投資の動向を前期比でみると、製造業では、平成九年一〜三月二・九%増の後、四〜六月〇・四%減、七〜九月二・八%増、十〜十二月四・〇%増の見通しとなり、非製造業では、九年一〜三月二・〇%増の後、四〜六月二・六%減、七〜九月二・五%増、十〜十二月〇・二%減の見通しとなっている。
 これを業種別にみると、製造業のうち素材型業種では、繊維、化学が増加の見通しであるほか、パルプ・紙、ゴム・皮革、窯業・土石、鉄鋼、非鉄金属が横ばい、石油・石炭が先行き弱含みの見通しとなっている。
 また、加工型業種では、金属製品、電気機械、自動車、印刷・出版が増加の見通しであるほか、一般機械、造船、「その他の輸送用機械」が横ばい、食料品・飲料、精密機械、「その他の製造業」が一進一退の見通しとなっている。
 一方、非製造業についてみると、農林漁業、鉱業、金融保険、リースが増加の見通しであるほか、建設が横ばい、卸・小売、不動産、運輸・通信、ガス、サービスが一進一退の見通しとなっている。
 なお、電力は横ばいの見通しとなっている。

(二) 資本金規模別設備投資の動向第3表参照

 資本金規模別に設備投資の動向を前期比でみると、資本金十億円以上の大企業では、平成九年一〜三月一・二%減の後、四〜六月一・二%増、七〜九月〇・八%増、十〜十二月二・六%増の見通しとなっている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、九年一〜三月一一・三%増の後、四〜六月七・四%減、七〜九月三・八%増、十〜十二月〇・〇%増の見通しとなっている。

五 生産設備の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における自己企業の生産設備の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年一〜三月「十二」の後、四〜六月「十」となり、過大感が和らいでいる。
 業種別(十八業種)にみると、九年一〜三月には十七業種で、四〜六月には十六業種で過大感を示しているが、このうち、パルプ・紙、石油・石炭、鉄鋼等十一業種では過大感が和らいでいる。

六 在庫水準の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における完成品在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年三月末「十五」の後、六月末「十三」となり、過大感が和らいでいる。
 業種別(十八業種)にみると、繊維、石油・石炭、一般機械等九業種では過大感が和らいでいる。
 また、原材料在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、九年三月末「十」の後、六月末「九」となり、過大感がやや和らいでいる。
 業種別にみると、鉄鋼、一般機械、印刷・出版等十二業種では過大感が和らいでいる。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成九年六月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成九年六月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は五十万九千九百六十八円、前年同月比〇・七%増(規模三十人以上では六十二万四千百五十五円、前年同月比一・三%増)であった。
 現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十九万一千五百七円、前年同月比二・一%増(同三十一万九千八百六十四円、二・四%増)であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十七万二千二百五十二円、前年同月比一・九%増(同二十九万三千八百五十九円、二・一%増)で、所定外給与は一万九千二百五十五円、前年同月比四・四%増(同二万六千五円、四・七%増)となっている。
 また、特別に支払われた給与は二十一万八千四百六十一円、前年同月比一・〇%減(同三十万四千二百九十一円、〇・二%増)となっている。
 実質賃金は、一・六%減(同一・一%減)であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、不動産業四・八%増(同二・一%増)、製造業二・八%増(同二・九%増)、電気・ガス・熱供給・水道業二・六%増(同一・八%増)、建設業二・六%増(同〇・九%増)、サービス業一・九%増(同二・一%増)、卸売・小売業、飲食店一・五%増(同五・四%増)、鉱業一・五%増(同一・四%増)、金融・保険業一・四%増(同〇・一%増)、運輸・通信業一・〇%増(同〇・五%増)であった。

◇労働時間の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一六四・九時間、前年同月比については前年と同水準(規模三十人以上では一六五・四時間、前年同月比〇・七%増)であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一五四・七時間、前年同月比〇・二%減(同一五三・〇時間、〇・三%増)、所定外労働時間は一〇・二時間、前年同月比二・〇%増(同一二・四時間、五・一%増)、季節変動調整済の前月比は〇・四%減(同前月と同水準)であった。
 製造業の所定外労働時間は一四・三時間で前年同月比一〇・九%増(同一六・一時間、一一・一%増)、季節変動調整済の前月比は二・一%減(同二・二%減)であった。




◇雇用の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・九%増(規模三十人以上では前年同月比〇・一%増)、季節変動調整済の前月比は前月と同水準(同前月と同水準)、常用労働者のうち一般労働者では〇・五%増(同前年と同水準)、パートタイム労働者では三・六%増(同〇・九%増)であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、建設業四・五%増(同〇・八%増)、サービス業二・三%増(同一・七%増)、運輸・通信業一・二%増(同一・一%増)、不動産業〇・九%増(同〇・四%増)、卸売・小売業、飲食店〇・三%増(同〇・四%減)とこれらの産業は前年を上回っているが、製造業〇・五%減(同〇・八%減)、電気・ガス・熱供給・水道業〇・九%減(同一・三%減)、金融・保険業三・八%減(同四・五%減)、鉱業四・九%減(同一六・五%減)と前年同月を下回った。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者〇・九%減(同一・〇%減)、パートタイム労働者三・五%増(同二・八%増)、卸売・小売業、飲食店では一般労働者〇・六%減(同〇・八%増)、パートタイム労働者二・五%増(同四・二%減)、サービス業では一般労働者一・八%増(同一・三%増)、パートタイム労働者五・四%増(同三・九%増)となっている。

     ◇     ◇     ◇     

適マーク制度の普及と理解の促進


▽「適マーク制度」とは?

 百貨店の入口やホテルのフロントなどで見かけられる「適マーク」。このマークは、旅館、ホテル、劇場、百貨店など、不特定多数の人が出入りする施設を対象に、その対象物を管轄している消防署の職員が、立入検査により一定の点検項目を審査し、防火の基準に適合する防火対象物に対して交付するものです。これを「防火基準適合表示制度」といい、この制度が発足して以来、今年で十六年となります。
 この制度は、防火対象物の防火に関する状況についての情報を広く国民に提供することにより、対象物関係者に、防火に関する認識を高めさせ、また、もし防火安全に関して不備な事項があれば、それを是正させることに大きな効果をあげています。
 現在では、「適マーク」は安全のシンボルマークとして位置づけられており、信頼のある制度として国民に広く定着しています。

▽どのような点検項目を審査しているのか?

 「適マーク制度」の対象としている旅館、ホテル、劇場、百貨店などは、不特定多数の人が出入りする施設であり、もし火災などの災害が発生した場合に、多数の人の生命、身体に危険を及ぼす可能性があります。
 このようなことを踏まえ、「適マーク」を交付しようとする対象物については、次の二十八項目の要件を満たしているかどうかをハード、ソフトの両面から厳しく審査しています。
 @ 防火管理者を選任し、消防訓練、防災教育の実施など、防火管理が適正に維持されているかどうか(十項目)
 A 消防法令に定められた消防用設備などが設置され、適正に維持管理されているかどうか(十項目)
 B 火気使用設備・器具、危険物施設などに関する届出、維持管理が適正に行われているかどうか(五項目)
 C 建築基準法令の防火の基準に適合しているかどうか(三項目)

▽全国でどれだけ交付されているのか?

 平成八年三月三十一日現在、「適マーク制度」の対象物は、全国で五万二千四十一件あり、このうち、立入検査を完了した対象物は五万三十件(調査率九六・一%)で、点検項目の基準に適合し、「適マーク」が交付された対象物は三万六千五十七件(交付率七二・一%)です。さらに、平成二年以降、「適マーク」の基準に二年以上継続して適合している対象物には、そのことを示すための表示である「適継続章」が付されることになり、平成八年三月三十一日現在、この「適継続章」が表示された対象物は二万八千八百四件あります。
 また、既に「適マーク」の交付を受けている対象物であっても、「適マーク」の基準に適合しなくなった場合や、火災が発生した場合などにより適正な維持管理が困難になったことにより、「適マーク」を返還した対象物は、七百三十五件となっています。

▽「適マーク」交付対象物を利用する方へ

 「適マーク」を交付している対象物を管轄している消防署の職員は、定期的に立入検査を実施し、適正な維持管理を長期間保てるよう指導しています。
 「適マーク」は一定の防火基準を満たしていることを表示するものであり、安全のシンボルマークとまでいわれていますが、これらの施設などを利用する場合であっても、万一に備えて避難経路の確認を行うなど、いざというときに我が身を守る術を確認しておくことが大切です。(消防庁) 


 
    <10月15日号の主な予定>
 
 ▽警察白書のあらまし………………警 察 庁 

 ▽労働力調査特別調査結果の概要…総 務 庁 
 



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