官報資料版 平成1015





警察白書のあらまし


国際テロ情勢と警察の取組み


警 察 庁


 平成九年警察白書は、去る九月二日の閣議に報告されて公表された。
 白書のあらましは次のとおりである。

<第1章> 国際テロ情勢と警察の取組み


<第1節> 国際テロ情勢

一 在ペルー日本国大使公邸占拠事件

 (一) 事件の発生
 一九九六年(平成八年)十二月十七日午後八時三十分ころ(日本時間十八日午前十時三十分ころ)、在ぺルー日本国大使公邸(以下「大使公邸」という。)において、ペルー政府関係者、各国の大使その他の外交官、ペルー在住の邦人等多数を招待して開催された天皇誕生日祝賀レセプションに、「トゥパク・アマル革命運動(MRTA)」(以下「MRTA」という。)を名のる左翼テロ組織が、爆発物等を使用して侵入し、大使公邸を占拠する事件が発生した。
 MRTAの指導者ネストル・セルパ・カルトリーニをリーダーとする十四人から成る犯人グループは、手りゅう弾、自動小銃等で武装し、当初、この種の事案では過去最多の約七百人に上る人質をとり、その後四箇月余りにわたって立てこもった。
 事件発生当日、犯人グループは、地元マスコミを通じて犯行声明を出し、その中で、ペルー政府に対し、「収監されているMRTAメンバー全員の釈放」、「中央アマゾン地方までの護送と安全な逃走の保証」、「経済政策の変更」、「『戦争税』の支払」の四項目を要求した。
 我が国政府は、この事件に関し、十二月二十日の閣議において、人命尊重を最優先としつつ、平和裏に解決するよう最大限の努力を行うとともに、ペルー政府が適切な対応を取り得るよう、できる限りの協力を行うことを確認した。
 さらに、内閣総理大臣は、一九九七年(平成九年)一月一日の年頭記者会見において、我が国政府としては、事件発生以来、テロに屈することなく、人命尊重を優先し、事件の平和的解決に向け努力してきたことを改めて明らかにした。
 フジモリ・ペルー大統領は、二十一日、事件後最初のテレビ演説において、MRTAメンバーの釈放を拒否するとともに、犯人グループに人質全員の解放と投降を要求するなど、強硬な姿勢を示した。
 (二) 事件の経過
 ア 事件の長期化
 犯人グループは、事件発生から約二時間後に、人質のうち、女性、高齢者等多数を解放したのに続き、翌十二月十八日にカナダ大使等九人、十九日に日系人等四人、二十日に各国大使等三十九人、二十二日に各国大使等二百二十五人を漸次解放する一方、「収監されているMRTAメンバーの釈放」等を要求した。
 これに対し、フジモリ・ペルー大統領は、犯人グループの要求を一切拒否するとともに、人質に危害を加えた場合には、実力行使も辞さないとする断固とした姿勢を示した。当初は、ペルー政府が犯人グループとの交渉に全く応じなかったため、ミニグ赤十字国際委員会在ペルー代表や、事件発生翌日に解放されたヴィンセント・カナダ大使等が、大使公邸に入り、犯人グループの説得に当たった。
 なお、赤十字国際委員会は、事件発生翌日以降、人道的観点から、飲料水、食料、医薬品等を大使公邸内に運び込むとともに、人質とその家族等との間で交わされる手紙を仲介し、大使公邸と外部との連絡を確保した。
 その後、十二月二十八日、パレルモ・ペルー教育相が、ペルー政府関係者として事件後初めて大使公邸に入り、約三時間半にわたって犯人と交渉を行い、同日、ドミニカ共和国大使等二十人が解放された。
 三十一日には、日本人を含む報道関係者が、正門から大使公邸の中庭、建物内に侵入した上、犯人及び人質へのインタビューを行い、その模様がテレビで放映された。この事案は、結果的に犯人グループにその主張を一方的に宣伝する機会を与えたこととなり、一九九七年(平成九年)一月七日に、日本人報道関係者が大使公邸に侵入した事案とともに、政府において、それぞれ遺憾の意が表明された。
 実質的な交渉が進展しない一方、一月二十二日以降、ペルー当局のヘリコプターが大使公邸上空を低空で威嚇的に旋回したほか、大使公邸周辺に装甲車及び大型スピーカーが配備され、行進曲等が大音響で流された。これに対し、犯人グループは、小銃により威嚇射撃を繰り返すなど、大使公邸周辺は騒然とした雰囲気に包まれた。
 このような状況の中で、人質の安否が懸念されたが、人質の解放も二十六日のペルー警察関係者一人の解放を最後に途絶え、事件終結まで、七十二人の人質が大使公邸に残されることとなった。
 イ 日本・ペルー首脳会談の開催と「予備的対話」の開始
 事態の打開に向け、二月一日、カナダのトロントにおいて、日本・ペルー首脳会談が開催され、今回の事件を国際社会全体が容認し得ないものであるとして、強く非難するとともに、事件の平和的解決と人質の早期全面解放に向けて一層の努力を傾注するとの意思を確認し、ペルー政府とMRTAとの直接対話に先立って「予備的対話」を開始することなどで合意した。
 ペルー政府と犯人側との交渉は、二月十一日以降、ペルー政府の代表、MRTAの代表に加え、ペルーにおける宗教界の指導的立場にあるシプリアーニ大司教、ミニグ赤十字国際委員会在ペルー代表及びヴィンセント大使で構成され、寺田駐メキシコ日本大使がオブザーバーとして参加する第三者機関である「保証人委員会」により、「予備的対話」の形式で行われた。
 交渉の中では、本事件を終結させるための条件が話し合われたが、「収監中のMRTAメンバーの釈放」等の要求について犯人グループが譲歩せず、交渉は難航した。こうした中、三月六日、犯人グループの指導者であるセルパは、大使公邸地下から不審な物音が聞こえるとして、ペルー政府を、武力による大使公邸奪回を計画しているなどと非難し、「予備的対話」の中断を宣言した。
 その後、十二日、「予備的対話」が再開されたものの、十三日以降は、シプリアーニ大司教、ヴィンセント大使及び寺田大使の三者が、事実上の仲介役となり、ペルー政府及び犯人グループと個別に協議することとなったが、交渉はこう着状態に陥った。
 また、犯人グループは、四月二十日、報道機関との無線交信の中で、人質を診断する医師の大使公邸入りを週一回に制限する旨を伝え、長期間の拘束状態にある人質の健康状態等がいよいよ懸念されるに至った。
 (三) 突入作戦の状況
 このような情勢の中、ペルー政府は、四月二十二日午後三時二十三分(日本時間二十三日午前五時二十三分)、軍の特殊部隊約百四十人を大使公邸に突入させた。この結果、人質七十二人のうち、ペルー最高裁判事一人が死亡したが、日本人二十四人を含む残る七十一人は、事件発生から百二十七日目に救出された。一方、銃撃戦の末、ペルー軍の特殊部隊の隊員二人が死亡し、犯人グループは、十四人全員が死亡した。
 これに対し、内閣総理大臣は、二十三日(日本時間)の記者会見において、フジモリ・ペルー大統領等ペルー政府関係者に対して、謝意を表するとともに、フジモリ・ペルー大統領との電話会談の中で、突入の事前連絡がなかったことについて、遺憾だが理解する旨を述べたことを明らかにした。
 一方、フジモリ・ペルー大統領は、二十三日(現地時間)の記者会見において、犯人グループや人質の位置等に関する正確な情報の報告を逐次受け、突入を命令したこと、正門玄関からの突入に対し、セルパを含む犯人グループの五、六人が二階へ向かいつつ反撃し、銃撃戦となったことなど、突入時の様子について、大使公邸の模型を使用しながら説明した。
 さらに、二十六日(現地時間)、日本人報道関係者の取材に答え、突入作戦は、人命の犠牲を避けるため、最もふさわしい時期に迅速に実施する必要があったことから、我が国政府に事前連絡なしで行うことを大統領として決定した旨を述べた。
 (四) 国際社会の対応
 事件の発生から終結に至るまで、国際社会は、MRTAの行動を強く非難するとともに、人質に危害を加えた場合には実力行使も辞さないとして、テロには屈しない姿勢を貫いたペルー政府を終始支持した。
 一九九六年(平成八年)十二月二十七日には、我が国からの関係各国への積極的な働き掛けもあり、「テロリストには譲歩しない」、「人質の即時解放を求める」、「人命救助を優先目的とし、平和的方法で解決するためのペルー政府の努力を支持する」とする「G7/P8議長国声明」が発表された。
 また、フジモリ・ペルー大統領は、一九九七年(平成九年)二月三日にクリントン米国大統領と、また、十日にメージャー英国首相(当時)とそれぞれ会談したが、両首脳ともフジモリ・ペルー大統領の姿勢を支持した。
 (五) 我が国の対応
 事件発生当日の一九九六年(平成八年)十二月十八日(日本時間)、我が国政府は、首相官邸に対策室を設置し、関連情報の収集等に当たり、翌十九日には、内閣総理大臣を本部長とする「在ペルー日本国大使公邸占拠事件対策本部」を設置した。対策本部には、国家公安委員会委員長及び警察庁長官が、それぞれ本部員として指定された。
 警察庁は、事件発生当日、警備局長を長とする連絡室を設置し、以後、二十四時間体制で関係省庁との連絡、各種情報の収集等を行った。また、翌十九日には、警察職員をペルーに派遣し、事件終結に至るまで現地対策本部の要員として、大使公邸周辺の状況把握その他の情報収集、事件終結のための措置に関するペルー当局との協議等に当たらせるとともに、諸外国関係機関との間で、この種の人質事件への対処方策等に関し情報交換を行った。派遣された警察職員のうち東京警察病院の医師二人及び看護婦三人は、最初に現地に到着した医療チームとして、医療支援活動を行った。
 一方、関係都道府県警察においては、ペルー大使館等、国内のペルー関連施設等に不測の事態が発生するおそれがあることから、これらの施設等に対する警戒警備を強化した。
 また、警察は、ペルー軍の特殊部隊が大使公邸に突入した一九九七年(平成九年)四月二十三日、人質が解放されたことを受け、情報収集、現地対策本部の支援及びペルー当局への捜査協力のため、警察職員等をペルーに増派した。現地においては、ペルー当局による大使公邸内の実況見分や現場鑑識活動に対し、資機材を活用して支援したほか、採取資料の整理、分析を行うなど、ペルー当局の捜査に協力した。
 一方、我が国では、警視庁において、解放された日本人人質から事情聴取を行うとともに、ペルー当局から提供された資料の分析を行うなどして、「人質による強要行為等の処罰に関する法律」違反等の事実について捜査を進めている。
 (六) 「リマ症候群」の指摘
 一九九七年(平成九年)四月二十三日、警察チームの一員としてペルーに派遣された精神医学の専門家二人及び犯罪心理を専門とする科学警察研究所の職員一人は、解放された人質のカウンセリングを行うなど、専門的知識、経験を生かして人質の精神状態の安定に資する活動を行った。
 これらの専門家は、ハイジャックその他の人質事件で発生が多数報告されている「ストックホルム症候群」と共通の心理状態が今回の事件でもみられるとともに、「リマ症候群」と呼べる現象が生じたことを指摘している。
 この指摘の中で、「リマ症候群」とは、「犯人が人質に感化され、同一化を望む過程で、犯人が人質の文化を取り入れ、学習し、その結果として、犯人の人質に対する攻撃的態度が緩和されること」であるとし、このような現象は、犯人グループ全員に均質に起きるわけではないことから、犯人グループの内部構造を微妙に変化させ、その結束の危機を招くことがあるとしている。
 今回の事件においては、犯人グループのうち、特に少年又は女性は、初めて接触した日本及び西欧の文明に感化されて憧憬(しょうけい)を感じ、学習したいという意欲を持つに至った一方、人質は教養のある年長者として、その要望にこたえたことが挙げられている。
 立てこもりが長期にわたったことに加え、こうした「リマ症候群」の影響もあって、犯人グループの緊張感が弛(し)緩し、その士気と規律を維持する必要が生じ、犯人グループは、大使公邸内で少年たちが楽しみを見いだせるよう、ペルー人に比較的身近なスポーツであるサッカーを行わせることになった。また、特殊部隊の突入に際し、犯人グループが人質を殺すことにちゅうちょしたと伝えられているが、これについても「リマ症候群」が作用した可能性があるのではないかと指摘している。
 このような観点から、「リマ症候群」は、大使公邸内の人質と犯人グループとの関係に一定の影響を与えたとの見方が示された。
 (七) 事件の教訓
 本事件は、ペルー軍の特殊部隊による大使公邸への突入によって終結したが、今後のテロ対策という観点から多くの教訓を残した。
 第一には、テロ事件を未然に防止し、また、事件発生の際に的確に対処するため、テロ組織の動向等に関する国内外における情報収集、分析の強化の必要性が痛感されたことである。在外公館については、その情報収集体制、警備体制の強化が強く叫ばれている。
 第二は、国内において同種の事案が発生した場合に、いかに対処するかという点であり、警察の特殊部隊(SAT)の充実強化等を含めたテロ対策の見直しを図ることが急務となっている。特に、特殊部隊(SAT)について、実戦的な訓練の徹底等による事案対処能力の向上、有事即応体制の強化等は喫緊の課題といえる。
 第三に、本事件のような国外におけるテロ事件の発生等に常時備える必要性であり、事態発生時に、テロ対策の専門家チームを直ちに展開し、各国治安当局との連携、迅速かつ的確な情報収集、捜査支援活動等を行うための体制の確立が求められている。
 また、本事件におけるテロリストや人質の心理状態等に関する分析をも踏まえ、平素から、関係機関と情報交換等を行いつつ、この種の事件の捜査手法や犯人との交渉方法等に関する調査、研究を行う必要がある。
 第四に、テロ対策における国際協力の重要性が改めて確認されたことである。今後も、国際会議等へ積極的に参加するとともに、中南米諸国等を含めた各国関係機関との一層の協力関係を構築し、国際協力の促進に寄与していくことが求められている。
 第五に、テロ対策に関する法制度の問題である。今回の事件の経緯を踏まえ、より有効に対応し得る法制の研究を進める必要がある。
 警察では、こうした本事件の教訓を踏まえ、今後、各種のテロ対策を推進することとしている(なお、今後のテロ対策については、<第2節>三「我が国の今後のテロ対策」参照)。

二 日本赤軍、「よど号」犯人グループ

 (一) 日本赤軍
 ア 世界各地への分散
 現在、日本赤軍は、奥平(重信)房子をリーダーとして、二十数人で構成されているものとみられる。
 日本赤軍は、イスラエルによるベイルート侵攻が行われた一時期を除き、二十五年以上にわたり、レバノンに本拠を置いて活動してきた。しかしながら、湾岸戦争終結後、中東地域における和平気運の高まりを受けて、一九九三年(平成五年)秋までには、ベカー高原のキャンプを閉鎖するに至った。これは、将来、レバノン、ひいては中東地域において組織を維持することが困難になると判断したものとみられる。
 近年は、メンバーの一部は、引き続きレバノン国内にとどまり、中東における和平プロセスの進行状況を見守りながら組織維持を図ってはいるものの、他のメンバーは中東以外の地域に新たな拠点を構築することを目指し、活動を展開していたことが、日本赤軍の「声明」やメンバーの一連の逮捕によって判明している。
 一九九六年(平成八年)八月末、日本赤軍は、国内支援者に対して発表した「五・三〇声明」の中で、「(パレスチナ)解放闘争はその歩みを続けていますが、闘争の過程では獲得した多くの大切なものを手放さざるを得ませんでした」などとし、パレスチナ解放闘争から一定の距離を置かざるを得ない立場を示した。また、同声明の中で、「私たちにとっては日本国内での闘争、中でも日米安保条約に反対し、日本とアジアの人民の主権のため憲法を守る闘いこそが最も大切です」と主張するなど、日本赤軍のアジア志向に連動した国内における「反安保」、「護憲」運動の高揚を求めるとともに、中南米の状況にも言及し、メキシコ・チアパス州における「サパティスタ国民解放軍」等の民衆運動を高く評価した。
 こうした中で、一九九五年(平成七年)三月、警察は、各国治安機関と連携して、日系ペルー人を装ってルーマニアに潜伏していた浴田由紀子を発見し、同月二十四日に逮捕したのに続き、一九九六年(平成八年)五月には、ペルーに潜伏中の吉村和江を発見し、六月八日に逮捕した。また、同年九月には、ネパールにおいて城崎勉が発見され、身柄を拘束された後、アメリカ合衆国に移送され、現在公判中である。
 このように、日本赤軍が中東以外の地域における新たな拠点の構築を図り、世界各地に分散、潜伏している実態が明らかとなった。
 イ レバノンでの一斉逮捕
 一九九七年(平成九年)二月中旬、レバノン国内に身分を偽って潜伏していた日本赤軍メンバー五人(和光晴生、足立正生、山本萬里子、戸平和夫、岡本公三)が発見され、レバノン当局により身柄を拘束された。その後、五人は旅券偽造、不法入国等の罪で起訴されているが、我が国は、レバノン当局に対し、レバノンにおける司法手続が終了次第、速やかに五人の身柄の引渡しが行われるよう求めている。
 日本赤軍の本拠地ともいえるレバノンにおいて、レバノン当局によりメンバーが検挙されたことは、事実上、日本赤軍が最も重要な拠点を失ったことを意味しており、メンバーの大量検挙と併せて、組織として極めて大きな打撃を受けたものとみられる。
 一九九七年(平成九年)五月末に日本赤軍が国内支援者に対して発表した「五・三〇声明」の中でも、岡本公三ら五人の逮捕に言及し、「一部のレバノン当局者達は経済援助と、賄賂(ろ)の多寡に、アラブの大儀(ママ)を退けました」などとしており、レバノン国内でメンバーが逮捕されたことに、少なからず衝撃を受けていることがうかがわれる。
 相次ぐメンバーの逮捕に加えて、安定した本拠地を喪失した日本赤軍は、当面、組織の立て直し及び新たな活動基盤の構築を最優先課題として取り組むものとみられる。しかし、かつて国際テロ組織を支援してきた各国に方針転換の動きがみられ、また、国際的規模でテロ対策が進んでいる今日、新たな活動拠点をつくることは困難であり、組織の存続自体が脅かされているとみられる。
 このような状況下において、日本赤軍がテロ等を活発に展開することは困難とみられるものの、メンバーの逮捕に対する報復や、依然として組織が健在であることを内外に示し、関係者を鼓舞することを目的として、思い切ったテロを引き起こす危険性も否定できない。
 したがって、日本赤軍の動きを封じ込め、組織の壊滅を図るために、今後とも、関係機関や各国との連携を強化しつつ、逃亡中の国際手配中のメンバー八人の早期発見、逮捕を目指し、より積極的な諸対策を推進する必要がある。
 (二) 「よど号」犯人グループ
 ア 北朝鮮での活動
 現在、「よど号」犯人グループは、小西隆裕を中心に、北朝鮮を本拠地として、投稿等の執筆活動や貿易会社「プロジェクト21」の運営を中心とした経済活動を行う一方、メンバーの子女の国籍取得、メンバー等の帰国実現を優先課題とした活動を行っている。
 「よど号」犯人グループは、従来、我が国政府から無罪の合意を取り付けて帰国する「無罪合意帰国」を主張していたが、最近ではこれを放棄し、人道的見地から無罪で帰国を行う「無罪人道帰国」を主張している。
 帰国実現に向け、同グループは、一九九六年(平成八年)四月、これまで、北朝鮮において、政治活動及びメンバー等の帰国に関する活動の母体としてきた「『日本の自主と団結のために!』の会」を発展的に解消して、「自主日本をめざす会」を発足させるとともに、同会が、三月末に国内で結成された「自主日本の会」の運動に参加する政治団体であることを公表した。また、これとは別に、メンバー及びその子女等の帰国に関する活動を行う大衆組織として、「かりの会」を発足させることを公表した。
 メンバーの子女の帰国問題については、国内支援者が、北朝鮮から出生証明等の書類を預かって帰国し、順次関係自治体に対し戸籍編製の手続を申請しており、一九九六年(平成八年)一月に小西隆裕の二人の子女の戸籍が編製されたのに続いて、一九九七年(平成九年)二月には、故田宮高磨の子女、三月には田中義三の子女の戸籍が、それぞれ編製された。
 イ 追い詰められる「よど号」犯人グループ
 一九九五年(平成七年)十一月三十日、「よど号」犯人グループのリーダーであった田宮高麿が死亡した。その後は、小西隆裕がリーダーとして組織の運営に当たっているが、田宮高麿は一九七〇年(昭和四十五年)のハイジャック事件以来、同グループ内で、すべての面にわたってリーダーシップを発揮してきただけに、同人の死亡は同グループにとって大きなダメージであったとみられる。
 こうした中、一九九六年(平成八年)三月、経済活動を装い、カンボディアに潜伏していたメンバーの田中義三が同地で発見され、タイへ身柄移送された後、偽造米ドルの行使目的所持罪等で同国治安当局に逮捕された。同人は、発見された際、北朝鮮の外交旅券を所持する北朝鮮人三人と行動を共にしていた。
 同人の逮捕に伴い、「よど号」犯人グループは、相次いで抗議声明を発表したが、その中では、同事件に関するタイ、アメリカ合衆国及び我が国の捜査当局等の対応を強く非難したほか、「本事件によって北朝鮮政府に迷惑を掛けた」ことを謝罪するなど、同グループが北朝鮮に対し特別の配意をせざるを得ない立場にあることをうかがわせた。
 また、「よど号」犯人グループは、一九九六年(平成八年)十一月一日付けの機関紙で「岡本夫妻は、一九八八年夏ころ、土砂崩れのため死亡した」とし、メンバーの岡本武とその「妻」の死亡を発表した。事実については確認されていないが、同グループは、これまで国内支援者等に対し「岡本武は北朝鮮の女性と結婚して、我々と離れて暮らしている」と言い続けてきた経緯があり、国内支援者との間に不協和音が生じている。
 相次ぐメンバーの死亡、逮捕等により、現在も北朝鮮にとどまっているメンバーは五人とみられている。

三 北朝鮮による国際テロ等

 (一) 北朝鮮による過去の主なテロ事件
 北朝鮮は、朝鮮戦争以降、非武装地帯を挟んで韓国と軍事的対峙(じ)関係にある中、韓国に対する工作活動の一環として、これまでに、「韓国大統領官邸(青瓦台)襲撃未遂事件」(一九六八年)、「ビルマ・ラングーン事件」(一九八三年)、「大韓航空機爆破事件」(一九八七年)等の国際テロ事件を引き起こしている。
 こうしたことなどから、アメリカ合衆国国務省は、依然として、北朝鮮をリビア、イラン等とともに「テロ支援国家( State Sponsors of Terrorism )」の一つに認定している。
 (二) 最近の動向
 一九八七年(昭和六十二年)の「大韓航空機爆破事件」以後、北朝鮮の関与が明らかなテロ事件はみられない。しかし、北朝鮮は、依然として「よど号」犯人グループを保護しており、前記のとおり、一九九六年(平成八年)三月には、同グループ・メンバーの田中義三が、カンボディアにおいて、北朝鮮の外交旅券を所持する北朝鮮人三人と共に行動しているところを発見され、タイへ身柄移送された後、同国治安当局に逮捕された。
 このような情勢の下、警察は、北朝鮮の動向が我が国の治安に及ぼす影響に、引き続き十分な注意を払っている。
 (三) 日本人ら致容疑事案
 「大韓航空機爆破事件」の実行犯である金賢姫は、「北朝鮮において、一九七八年(昭和五十三年)から一九七九年(昭和五十四年)ころに日本からら致されてきた『李恩恵』と称する日本人女性から、日本人化教育を受けた」旨を供述した。
 その後の日本国内での捜査や、警察庁担当官が韓国において直接金賢姫から得た供述等を総合した結果、李恩恵は、埼玉県出身の日本人女性である可能性が極めて高いことが判明した。
 李恩恵ら致容疑事案を含め、北朝鮮による日本人ら致の疑いのある事案は、一九七七年(昭和五十二年)十一月に新潟県の海岸付近で発生した少女行方不明事案、一九七八年(昭和五十三年)七月から八月にかけて福井、新潟、鹿児島各県の海岸付近で発生した一連のアベック行方不明事案等、これまでに少なくとも七件発生しており、これらの事案において北朝鮮にら致された可能性のある行方不明者は、十人に上っている。また、一九七八年(昭和五十三年)八月には、富山県の海岸付近において、ら致が未遂であったとみられる事件が発生している。
 このうち、一九七七年(昭和五十二年)十一月に新潟県の海岸付近で発生した少女行方不明事案については、韓国当局との情報交換を含め、これまでの捜査結果を総合的に検討した結果、一九九七年(平成九年)に至り、北朝鮮によるら致の疑いがあると判断したものである。
 これらのら致の目的については、必ずしも明らかではないが、李恩恵ら致容疑事案、「宇出津(うしづ)事件」、「辛光洙事件」等、これまでの事例から、北朝鮮工作員の日本人化教育や、我が国に潜入した北朝鮮工作員による日本人への成り替わり等がその主要な目的とみられる。
 警察は、これらの北朝鮮によるら致の疑いのある事案については、韓国当局との情報交換を行うなど、国内外の関係機関と連携しつつ、新たな情報の収集、各事案相互の関連性の調査等、所要の捜査を継続している。

四 世界のテロ情勢

 (一) 一九九六年(平成八年)のテロ情勢
 ア テロ事件の発生状況
 一九九五年(平成七年)は、我が国における「地下鉄サリン事件」(三月)、アメリカ合衆国における「オクラホマ連邦政府ビル爆破事件」(四月)等、多数の被害者を出す大規模なテロ事件が発生する一方、中東和平交渉の進展、北アイルランド紛争の長期沈静化等、世界的には従来の紛争地域における和平気運がこれまでになく高まった。
 しかし、一九九六年(平成八年)に入り、中東では、イスラエルにおいて、イスラム原理主義過激派「ハマス」による自爆テロが連続して発生したほか、英国では「暫定アイルランド共和軍(PIRA)」が爆弾テロを再開した。また、サウディ・アラビアにおいては、二年連続して米軍関係施設に対する爆弾テロ事件が発生し、アトランタ・オリンピック開催中のアメリカ合衆国では、「オリンピック百年記念公園爆弾テロ事件」が発生するなど、世界のテロ情勢は、再び緊迫化する様相をみせた。
 アメリカ合衆国国務省が発表した一九九六年(平成八年)の国際テロの発生状況をみると、発生件数は、一九九五年(平成七年)の四百四十件から二百九十六件に減少しているものの、死者数は、一九九五年(平成七年)の百六十三人から三百十一人に増加しており、手段の凶悪化、被害の大規模化の傾向がうかがわれる。
 地域別テロ事件の件数は、ヨーロッパ、中南米、中東が多く、なかでも、ヨーロッパは、全体の四一%を占め最も多くなっている。その理由としては、ドイツにおいて、トルコからの分離独立を主張する左翼テロ組織「クルド労働者党(PKK)」によるテロが多発したことなどが挙げられる。
 テロ事件の種別については、一九九六年(平成八年)は、爆弾によるものが最も多く全体の四〇%(百十六件)を占め、次いで火炎瓶二四%(七十一件)、武装攻撃一三%(三十九件)、放火一〇%(三十一件)、誘拐九%(二十八件)と続いている。
 このような状況の中、十二月、「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」が発生し、世界に衝撃を与えた。
 イ 近年の特徴的傾向
 近年は、「オクラホマ連邦政府ビル爆破事件」(死者百六十八人、負傷者約五百人)、サウディ・アラビアにおける「ダーラン米軍関係施設爆破事件」(死者十九人、負傷者三百人以上)等のように、多数の被害者を出す大規模なテロ事件が頻発しており、一般市民を巻き込む自爆テロや不特定多数の殺傷をねらった無差別テロも顕著である。
 また、これまで戦争においても使用がためらわれていたNBC(核、生物、化学)物質等を使用したテロの脅威も高まっている。生物・化学物質によるテロ行為については、我が国における「地下鉄サリン事件」をはじめとする一連のオウム真理教関連事件により、各国においても既に現実の脅威として認識されるに至っている。
 一方、核物質によるテロ行為も、インターネット等により、核関連情報の入手が容易になっていること、ソ連崩壊に伴い、核関連物質の管理状態が悪化していることなどから、その危険性が高まっていることが指摘されている。
 さらに、高度情報通信ネットワークの国際的広がりに伴い、インターネット等で自らの主張の宣伝や情報交換等を行うなど、各国のテロ組織がこうした情報通信手段を積極的に利用している実態がみられ、将来においては、いわゆるサイバーテロが引き起こされる危険性も指摘されている。
 こうした特徴的傾向にみられる新たな形態のテロは、それが実行された場合、個人の生命、身体はもとより、社会、国家に及ぼす被害は極めて甚大であり、各国においても、早急な対策の検討が迫られている。
 (二) テロ事件の背景
 テロ組織がテロ事件を引き起こす背景は、多種多様であるが、近年の特徴的傾向としては、従来の政治的イデオロギーに代わって、宗教的思想や民族独立の主張を指導原理とするテロの発生が顕著であること、開発途上国において、社会的不平等、貧困等の国内問題等を背景に、先進国の権益等をねらったテロがみられることが挙げられる。

五 我が国への国際テロの脅威

 (一) 我が国に波及するテロの脅威
 国際社会における我が国のプレゼンスが顕著となるのに伴い、我が国の権益や在外邦人へのテロの脅威は近年一層高まっているが、「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」は、こうした脅威の存在を端的に明らかにし、今後も、世界各地の邦人や我が国関連施設が、いつ国際テロの標的となるか分からないという厳しい現実を示した。
 また、我が国には、本国情勢が不安定な外国人も多数滞在しており、外国の紛争事案がテロ事件という形で我が国へ波及することも懸念されるほか、イスラム原理主義過激派が繰り返しテロ活動の対象としてきたアメリカ合衆国関連施設も多数存在しており、中東やアジアを中心として多発しているイスラム原理主義過激派、分離独立主義過激派等による重大テロ事件は、我が国にとっても現実の脅威となっている。
 加えて、近年の相次ぐメンバーの身柄拘束で大きな打撃を受けているとはいえ、過去に数多くのテロ事件を引き起こし、世界各地に展開している日本赤軍は、我が国にとって依然として脅威であり、情勢の変化に危機感を抱き、組織の生き残りを懸けて思い切ったテロ活動に出る危険性も否定できない。
 さらに、北朝鮮については、一九八七年(昭和六十二年)以降、関与が明らかなテロ事件の発生はみられないものの、過去には数多くのテロ事件等を引き起こしており、不透明に推移する朝鮮半島情勢を背景として、その動向には、隣国である我が国としても十分に注意を要する。
 このように、我が国を取り巻く国際テロ情勢は極めて深刻な局面を迎えており、関係各国との連携強化を図りながら、強力なテロ対策を推進していく必要がある。
 (二) 邦人が被害を受けたテロ事件
 「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」のほか、海外に進出した日本企業等や在外邦人がねらわれたテロ事件としては、近年では、一九九一年(平成三年)のトルコにおける「日本航空事務所爆破事件」、同年七月のペルーにおける「国際協力事業団(JICA)農業技術指導員射殺事件」、一九九三年(平成五年)十月のアルジェリアにおける「日本企業社員誘拐未遂事件」、一九九四年(平成六年)九月のコロンビアにおける「日本人牧場主誘拐事件」等がある。

<第2節> テロ対策

一 テロに対する国際的取組み

 (一) 国家間協力の推進
 厳しさを増す国際テロ情勢を背景として、テロ対策については、自国のみでは限界があるとの観点から、近年、サミットや国際連合等の場において活発な討議がなされ、国家間の協力が積極的に進められている。
 (二) サミット・テロ対策閣僚級会合(オタワ)
 一九九五年(平成七年)十二月、同年のハリファクス・サミットでの決定を受け、カナダの首都オタワにおいて、サミット参加国等の治安担当相、外相らが出席して「サミット・テロ対策閣僚級会合(オタワ)」が開催された。
 同会合では、テロ対策は、地球規模で取り組むべき緊急課題であるとの認識に立ち、サミット参加国がリーダーシップを発揮する必要があるとして、「テロ対策に関するオタワ閣僚宣言」が採択された。同宣言は、「あらゆる形態のテロと闘うため国際社会と共に行動することを一致して決意する」として、「国際的及び国内的な法的枠組み」、「テロ行為を防止するための専門的技術と情報の交換」、「大量破壊兵器に関連する新たな脅威」等十三項目から成っている。また、「すべての国に対し、既存のテロ関連条約を二〇〇〇年までに締結すべく努力するよう求める」、「法的相互援助と犯人引渡しを促進する」などの十項目の行動指針を含んでいる。
 また、同会合では、サリンが実際に用いられた「地下鉄サリン事件」に関心が集まり、我が国の国家公安委員会委員長が、オウム真理教関連事件に関する捜査状況等を説明し、「閣僚宣言」の中にも、生物・化学テロに対する我が国の提言が盛り込まれた。
 なお、この提言に基づいて、一九九六年(平成八年)、生物・化学テロ対策に関する専門家会合がパリで開催された。
 (三) 平和創設者サミット
 一九九六年(平成八年)三月、イスラム原理主義過激派「ハマス」による連続自爆テロ事件が発生し、中東情勢の緊張が高まったことを受けて、ムバラク・エジプト大統領とクリントン米国大統領の呼び掛けにより、中東各国、サミット参加国等、二十九箇国と国際機関が参加して、「平和創設者サミット(Sharm-el-Sheikh Summit)」が開催され、我が国からは外務大臣が出席した。
 同サミットでは、中東和平の一層の推進に向けて、各国が一層協力することに加え、テロ活動の阻止と支援の根絶のために努力していく各国の決意が議長声明として発表された。
 我が国も、テロに対して断固として対応すべきこと、和平プロセスの後退があってはならないこと、和平プロセスの継続のためには、経済社会的環境の改善が重要であることなどを強調し、中東和平に対する追加支援を表明するなど、積極的な役割を果たした。また、同月、同会議のフォローアップ会合として、ワシントンにおいて、専門家会合が開かれ、我が国は、パレスチナ警察に対する積極的な支援等を提言した。
 (四) G7/P8テロ対策閣僚級会合(パリ)
 一九九六年(平成八年)六月、リヨン・サミットが開催されたが、同サミットでは、開催直前、サウディ・アラビアにおいて、湾岸諸国への米軍駐留に反発するイスラム原理主義過激派の犯行とも取りざたされている「ダーラン米軍関係施設爆破事件」が発生したことを受け、アメリカ合衆国をはじめとするサミット参加国の強い意向を反映し、「今日のすべての社会及び国家にとってテロが重大な挑戦であるとの信念を一層強めた。我々は、改めて、その犯人又は動機を問わずあらゆる形態及び主張のテロを無条件に非難する」ことを内容とする「テロリズムに関する宣言」が採択された。
 この宣言に基づいて、七月、パリにおいて「G7/P8テロ対策閣僚級会合(パリ)」が開催され、各国から治安担当相、外相等が出席し、我が国からは、国家公安委員会委員長及び外務大臣が出席した。同会合では、テロ対策としての国境管理、文書偽造防止等を内容とする「テロ防止のための国内的措置の採用」及びテロ関連条約の締結の促進、テロリストの資金調達の防止等を内容とする「テロと闘うための国際協力の強化」を柱とする二十五項目の実践的措置が採択された。
 (五) デンヴァー・サミット
 一九九七年(平成九年)六月二十日から二十二日までの間、アメリカ合衆国コロラド州において、G7にロシアを加えた八箇国によるデンヴァー・サミットが開催され、主要議題の一つとしてテロ対策が取り上げられた。
 同会議の席上、内閣総理大臣は、「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」の経験を踏まえ、今後とも、「テロに屈しないとの信念の下に国際社会とともにテロと闘っていく決意」を改めて表明し、また、サミット参加国間の協力強化の必要性、テロ対策における地域協力の重要性を訴え、我が国と東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国とのテロ対策会議を年内に開催する予定であることを明らかにした。また、人質事件に重点を置いたテロ対策を主要議題とするテロ対策専門家会合を開催すべきとの提案を行い、各国の賛同が得られた。
 二十二日には、八箇国の共同による「コミュニケ」が採択され、その中で、「あらゆる形態のテロ行為と闘う決意」が再確認されるとともに、「二〇〇〇年までにすべての国がテロ対策国際条約の締約国となるよう求める」ことが表明された。「コミュニケ」では、我が国の提案を踏まえ、「人質交渉専門家及びテロ対応部隊の能力を強化すること」が明記されたほか、「テロ活動における大量破壊物質使用やコンピュータ・システムへのテロ攻撃の抑止に向けた対策」等が、各国が採るべき措置として盛り込まれた。

二 我が国のテロ対策の現状

 (一) テロリストの検挙及びテロ行為の未然防止に向けた取組み
 警察は、各種テロ対策の徹底を図るため、従来、職員を海外に派遣し、各国治安機関との情報交換や情報収集活動等を積極的に行うなどして、日本赤軍等の国際テロ組織の動向把握に努めている。
 各国でテロ事件を引き起こした日本人テロリスト等に対しては、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて加盟各国に対する国際手配を行っているほか、国際テロリストの動向その他テロ関連情報を加盟国間で交換するなど、情報の共有化に努めている。
 また、国際テロリストの我が国への潜入防止対策のほか、武器、化学物質等、テロの手段となり得るものの不正な輸入を防止するため、海空港において、関係機関との協力の下、水際対策等を積極的に推進している。
 (二) 特殊部隊(SAT)の設置
 警察では、一九七七年(昭和五十二年)九月二十八日に発生した日本赤軍による「ダッカ事件」を契機として、警視庁、大阪府警察に特殊部隊を設置した。昭和五十四年一月二十六日に発生した「三菱銀行北畠支店における人質立てこもり事件」においては、大阪府警察の特殊部隊が、また平成七年六月二十一日に発生した「全日空機ハイジャック事件」においては、北海道警察とともに、現地に派遣された警視庁の特殊部隊が、それぞれ事件解決に貢献した。
 こうした中で、近年の深刻さを増すテロ情勢、銃器情勢等に的確に対応するため、平成八年四月一日、警視庁、大阪府警察に加えて五道県警察に特殊部隊(SAT)を設置した。
 特殊部隊(SAT)は、ハイジャック事件や人質立てこもり事件等の突発重大事案に的確に対処するため、被害関係者の安全を確保しつつ、被疑者を検挙することを主な任務とした高練度の専門部隊であり、全国で計約二百人の部隊員から成っている。
 (三) テロ対策に関する国際支援
 警察庁では、我が国の政府開発援助(ODA)事業の一環として、平成五年以降、開発途上国を中心とした各国のテロ対策実務担当者を招致して、「国際テロセミナー」を開催している。同セミナーでは、我が国において講じているテロ対策、テロ対策装備資機材の活用状況等を紹介するとともに、国際テロ対策についての研究、討議等を通じて、情報・資料の整理、分析、偽造旅券の識別方法等のノウハウの技術移転を積極的に行っている。
 また、テロ事件の捜査技術に関するノウハウの提供を積極的に行うため、平成七年度以降、各国捜査機関に呼び掛けて、国際協力事業団(JICA)の事業の一環として「国際テロ事件捜査セミナー」を開催している。
 さらに、「G7/P8テロ対策閣僚級会合(パリ)」において、我が国が「テロ対策の観点からは開発途上国を加えた各国の協力が極めて重要」との認識を示したことを受け、一九九六年(平成八年)十二月、警察庁は、外務省とともに、東京において「アジア・太平洋地域テロ対策国際協力セミナー」を開催し、この地域での協力関係の推進を図っている。
 (四) 海外における安全対策
 近年、我が国企業の海外拠点や駐在員等がテロ事件等の被害を受けており、海外安全対策に対する関係機関への期待が高まっている。こうした情勢の中、(財)公共政策調査会等は、一九九三年(平成五年)以降、関係機関の協力を得て、バンコク(一九九三年)、マニラ(一九九四年)、香港(一九九五年)において、海外安全対策会議を開催している。
 一九九六年(平成八年)七月には、在インドネシア安全対策連絡協議会、在マレイシア安全対策連絡協議会等とともに、インドネシア及びマレイシアに拠点を持つ我が国の企業を対象にした「第四回海外安全対策会議」(「ジャカルタセミナー」及び「クアラルンプールセミナー」)を開催し、警察庁も、在インドネシア日本国大使館及び在マレイシア日本国大使館等とともに、講師を派遣するなどの協力を行った。
 (五) 国際会議等への積極的な参加
 国際テロ対策に関しては、国連やサミット等において、従来検討されてきた国際協力の内容から大きく踏み込み、具体的かつ幅広い諸対策が検討されるに至っている。また、国際協力の主体についても、サミット参加国のほか、開発途上国をも含んだ、地球規模での協力が進められている。
 我が国警察も、政府の一員として、国際協力の促進に積極的かつ強力に取り組んでいる。
 (六) 法令の整備
 ア サリン等による人身被害の防止に関する法律
 オウム真理教による一連の事件を契機に、平成七年四月、サリン等(サリン及びサリン以上の又はサリンに準ずる強い毒性を有する物質)による人の生命及び身体の被害の防止並びに公共の安全の確保を図ることを目的として、その製造、所持等を禁止するとともに、これを発散させる行為についての罰則及びその発散による被害が発生した場合の措置等を定めた「サリン等による人身被害の防止に関する法律」が制定され、施行された。
 イ 警察法の一部改正
 平成八年六月、警察法の一部が改正され、都道府県警察は、広域組織犯罪等を処理するため、その固有の判断と責任の下に管轄区域外においてその権限を行使することができるようになり、また、警察庁長官が都道府県警察の役割分担等について指示を行うことにより、広域組織犯罪等に対処するための警察の態勢を迅速かつ的確に整備することが可能となっている。

三 我が国の今後のテロ対策

 (一) 情報収集、分析の強化
 警察では、これまでも国内外の国際テロリスト等に関する情報の収集活動を推進しているが、将来テロ行為を行うおそれのある集団の早期発見・把握に一層努めるとともに、より専門的、総合的な情報収集、分析を推進していくこととしている。
 また、在外公館については、その情報収集体制、警備体制の強化が迫られており、警察においても、警備官の派遣等を通じ、現地治安機関との連携の強化、体制の充実等により、在外公館の情報収集体制、警備体制の確立に寄与することが求められている。
 (二) 特殊部隊(SAT)の充実強化
 「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」の教訓を踏まえ、同種の事案が発生した場合にも対処できるよう、特殊部隊(SAT)の体制を充実強化することが焦眉(び)の急となっている。
 特に、テロリストが強力な武器等を備えていることをも想定しつつ、政府関係施設その他の建造物や航空機、車両の占拠等、様々な状況に対応し、部隊が的確な状況把握に基づいて人質救出のための有効な作戦行動をとることができるよう、実戦的な訓練の徹底等により、事案対処能力の向上を図ることや、全国七箇所に設置されている特殊部隊(SAT)の有事即応体制の強化等が緊急の課題となっている。
 (三) テロ防止・捜査体制の強化
 国外におけるテロ等、突発事態に備え、事態発生時に、テロ対策の専門家から成るチームをより迅速に派遣し、現地における我が国対策本部の中核として、現地治安当局との連携、迅速かつ的確な情報収集、各国捜査機関への捜査支援活動等に当たることが求められている。
 また、このチームについては、平素から、関係各機関と情報交換等を行いつつ、国際テロ事件の捜査手法や人質事件における交渉方法及び防止方策に関する調査、研究を行い、事案発生に備える必要がある。
 また、近年、NBCテロ、サイバーテロ等の新しい形態のテロ事件発生の危険性が高まっていることから、この種のテロ事件の防止・捜査体制について早急に検討する必要がある。
 さらに、我が国周辺において、緊急事態発生の際のテロ防止等の観点から、関係機関と連携しつつ、沿岸監視体制の見直しを図ることも急務となっている。
 (四) 国際協力の促進に向けた取組み
 テロ対策においては、国際会議の開催や関係機関の連携を通じた国際協力が極めて重要であり、警察は、我が国政府の一員として、その促進に向け、取組みを一層強化することとしている。デンヴァー・サミットにおいても、我が国が、人質事件に重点を置いたテロ対策を主要議題とするテロ対策専門家会合について提案し、一九九七年(平成九年)秋にもその開催が予定されているが、こうした国際会議に、今後とも積極的に参加することとしている。
 また、特に、アジア・太平洋地域を中心とした諸外国関係機関との一層の連携強化を図るため、アメリカ合衆国、韓国等の担当者との情報交換、ASEANとの協力体制の強化等に努めるほか、「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」で注目された中南米諸国や、国際テロ組織と長年にわたって闘ってきた経験を有する西欧諸国、日本赤軍が拠点として活動してきた中東諸国等とも、情報交換や過去の経験の共有を通じて、一層緊密な協力関係を構築していくこととしている。
 (五) テロ対策のための法制度の研究
 テロ組織等による組織犯罪への対策としては、その資金面に対する規制が効果的であり、一九九六年(平成八年)七月の「G7/P8テロ対策閣僚級会合(パリ)」で採択された二十五項目の実践的措置の中でも、各国に対し、テロリスト及びテロ組織への資金提供を阻止するための措置、テロ活動に関する国際的な資金移動についての情報交換の強化や規制措置の採用の検討が求められている。
 こうした点を踏まえ、警察では、組織犯罪対策の一環として、不正に得られた収益のはく奪に関する法制度及び収益のはく奪を逃れようとする行為の規制を効果的に行うための法制度、その他のテロ対策法制について、諸外国の制度等も勘案しつつ、更に調査研究を進めることとしている。

*     *     *

 テロ活動は、すべての国家と社会に対する重大な挑戦であり、全力を傾注してその未然防止に努めるとともに、テロ事件の発生に際して対応し得る万全の体制を整えることは、国民の安全確保及び国家の危機管理の観点からも、国際社会のテロ対策の一翼を担うという観点からも、国家として果たすべき義務といえる。
 警察においては、これまで述べてきたような現下の緊迫した諸情勢を踏まえ、国際社会の動きとも歩調を合わせつつ、国内外における各種テロ対策を一層強力に推進することとしている。

<第2章> 交通社会の変化に対応する交通警察活動


 〜戦後五十万人を超えた交通事故死者〜

 平成九年三月、運転免許保有者数は七千万人を超えた。今日の社会では、多くの国民にとって、自動車を運転することは日々の生活に欠くことのできないものとなっている。しかしながら、その一方で、国民のだれもが交通事故の被害に遭う危険にさらされていることも事実である。現に、八年中の交通事故による死傷者数は九十万人を超えており、国民の約百三十二人に一人が交通事故の被害を受けたことになる。
 また、自動車交通量の増大は、交通渋滞、交通公害等の問題を深刻化させており、生活環境の悪化という弊害を生じさせている。
 今後、安全で快適な交通社会を構築するためには、これらモータリゼーションの負の側面ともいうべき問題に、より的確に対処していくことが必要である。特に、社会の高齢化が進む中で、高齢者が生き生きと暮らせる活力ある社会を維持するためには、高齢者の安全で自由なモビリティーを確保することが重要な課題となっている。
 他方、高度情報通信技術の発達により、交通管理の高度化が可能となり、このことが、交通事故、交通渋滞等の問題の解決に大きな役割を果たすことも期待される。
 交通警察は、このような社会の変化に対応し、成熟した「くるま社会」を実現することを目指している。

一 第一次交通戦争と第二次交通戦争

 昭和二十一年以降、平成八年までの五十一年間で、交通事故死者の累計は五十万五千七百六十三人となった。
 戦後の車両保有台数及び運転免許保有者数は、増加の一途をたどり、自動車は国民の日常生活に不可欠の移動手段となっている。このような状況を背景として、戦後の交通事故死者数の推移も、昭和二十年代後半から著しい増加傾向を示すようになり、四十五年には一万六千七百六十五人に達し、その状況は「交通戦争」と呼ばれるようになった(第一次交通戦争)。
 その後、交通安全施設の整備等の交通安全対策の充実が図られたことにより、交通事故死者は減少傾向を示し、昭和五十四年には八千四百六十六人と、四十五年に比べてほぼ半減したが、五十年代後半から再び増加し始め、六十三年からは八年連続して一万人を超えるなど、第二次交通戦争と呼ばれる事態となっている。平成八年には、交通事故死者は九千九百四十二人と、九年ぶりに一万人を下回ったものの、交通事故件数は七十七万件を超え、史上最高を記録するなど、現在の交通事故情勢にはなお厳しいものがある。
 昭和四十五年(第一次交通戦争)と平成八年(第二次交通戦争)を比べると、第二次交通戦争には次のような特徴がみられる。
 ○ 高齢者の死者の割合が上昇
 ○ 自動車乗車中の死者の割合が上昇
 ○ 深夜に発生する死亡事故の割合が上昇

二 交通事故死者一万人を下回った平成八年

 (一) 平成八年の交通事故発生状況
 ア 概 況
 平成八年に発生した交通事故は、件数が七十七万一千八十四件(前年比九千二百九十五件(一・二%)増)、死者数が九千九百四十二人(七百三十七人(六・九%)減)、負傷者数が九十四万二千二百三人(一万九千五百二十六人(二・一%)増)であった。死者数は、昭和六十二年以来、九年ぶりに一万人を下回ったが、件数は過去最悪の記録を四年連続して更新した。また、負傷者数も過去最悪であった四十五年の九十八万一千九十六人に迫る状況である。
 なお、平成八年における交通事故発生から三十日以内の交通事故死者数は一万一千六百七十四人(九百九十六人(七・九%)減)であった。
 イ 交通死亡事故の特徴
 平成八年における交通死亡事故の特徴は、次のとおりである。
 ○ 若年者の死者は減少したが、高齢者の自動車乗車中の死者は増加
 ○ 自動二輪車乗車中、原動機付自転車乗車中の死者が減少
 ○ 夜間の交通死亡事故件数が減少
 (二) 交通事故死者減少に向けた平成八年中の警察の取組み
 平成八年には、関係機関の努力や国民の協力により、九年ぶりに交通事故死者が一万人を下回ったが、警察では、交通事故死者数を減らすために、特に次のような施策に重点的に取り組んだ。
 ア 活発な広報啓発活動の推進
 国民が厳しい交通情勢を認識し、交通安全意識を高めることができるようにするため、広報啓発活動を積極的に推進した。特に、自動車乗車中の死者を減少させるためのシートベルトの着用率の向上及び自転車乗用中や歩行中の死者を減少させるための反射材の普及促進に重点を置いたほか、年末期における飲酒運転防止の呼び掛け等、時期に応じた広報啓発活動の推進に努めた。
 また、高速道路における八月中の交通死亡事故件数の四四・七%が、大型貨物自動車に関連するものであったことなどから、大型貨物自動車の指導取締り等の徹底を図るとともに、関係団体に対し、交通事故防止活動への協力を要請した。
 イ 効果的な交通指導取締りの実施
 飲酒運転や著しい速度超過等、死亡事故に直結する悪質な違反、交通事故が多発する交差点における信号無視、一時不停止、歩行者妨害等の違反及び死亡事故となる確率の高い夜間における違反に重点を置いた取締りを行った。
 平成七年と比べると、飲酒運転と最高速度違反(超過速度時速三十キロメートル以上)の取締り件数は、それぞれ二・三%、一〇・二%増加し、信号無視、一時不停止及び歩行者妨害の交差点関連違反の取締り件数は、総数で一一・九%増加するとともに、夜間における取締り件数も三・二%増加した。
 これらの違反に起因する死亡事故の発生状況についてみると、飲酒に起因した死亡事故件数と最高速度違反に起因した死亡事故件数は、それぞれ二一・八%、一三・一%減少し、交差点(その付近を含む。)における交通事故件数は、六・七%減少するとともに、夜間における死亡事故件数も七・五%減少した。
 ウ 交通安全施設等の重点的な整備
 第六次交通安全施設等整備事業五箇年計画の初年度である平成八年度においては、交通事故の分析に基づいて重点的な交通安全施設等の整備を推進した。交通事故のほぼ六割を交差点における事故が占めていることから、信号機の新設及び高度化による交差点事故の防止に努めたほか、増加する高齢者の交通事故を防止するため、道路標識等の大型化、高輝度化による視認性の向上や、高齢歩行者等の快適な歩行空間を確保するためのコミュニティ・ゾーン形成事業等を推進した。
 また、幹線道路における速度超過に起因する交通事故を防止するための高速走行抑止システム及び見通しの悪いカーブにおける衝突事故の防止を図る対向車接近表示システムの整備を行った。

三 今後の対策の方向性

 平成八年の交通事故死者数は、九年ぶりに一万人を下回ったが、自動車保有台数や運転免許保有者数は今後も増加が予想され、また、八年の交通事故件数は史上最高を記録するなど、依然として楽観を許さない現状にある。
 今後、交通事故死者数の減少を図り、安全で快適な交通社会を構築するためには、交通社会の変化に対応した的確な交通警察行政の推進が必要不可欠であり、警察においては、次のような施策を重点として進めていくこととしている。
  ○高齢者に優しい交通社会の実現
 社会の高齢化に対応するため、交通の安全を確保しつつ、高齢者のモビリティーを高め、高齢者に優しい交通社会を実現するための諸施策を推進する。
  ○地域社会の活力を生かす交通警察活動
 住民の交通安全意識を高め、地域社会と警察の連携による交通安全活動を推進するため、地域住民による交通安全活動を支援するための諸施策を推進する。
  ○快適な交通社会の実現
 交通渋滞の解消に積極的に取り組むとともに、環境問題にも十分配慮し、人々が快適に生活できる成熟した「くるま社会」を実現するための諸施策を推進する。
  ○科学技術を活用した交通警察活動
 高度情報通信技術の活用による交通管理の高度化を推進するほか、運転免許証の高機能化についても引き続き検討を行い、科学技術の活用による効果的な交通警察活動の推進に努める。

<第3章> 生活安全の確保と警察活動


 平成八年においても、けん銃の一般社会への拡散、少年による薬物乱用事犯及び来日外国人による薬物密売事犯の激増、ぱちんこプリペイドカードの変造・同行使事犯及び遊技機の不正改造事犯の多発、女子少年のテレホンクラブ等に係る性被害の増加、少年非行の凶悪化、悪質ないじめ事案の発生等、市民生活の安全と平穏を脅かす様々な問題が発生した。また、大型の資産形成事犯や金融関係事犯、悪質な産業廃棄物事犯等が社会問題化している。
 警察では、これらの状況に的確に対応するため、地域住民、企業、自治体等との協働による地域安全活動の強化、地域の「生活安全センター」としての交番の基盤整備等に努め、市民に身近な犯罪・事故の予防活動、犯罪の検挙活動等を行うとともに、けん銃等の摘発及び供給の遮断、薬物乱用の防止、良好な風俗環境の保持、少年の非行防止、正常な経済活動の確保のための諸対策等を強力に推進することとしている。

<第4章> 犯罪情勢と捜査活動等


 平成八年の刑法犯認知件数は百八十一万件を超え、戦後最高を記録した。このような情勢において特に際立ったのは、いわゆるバブル経済の崩壊後の経済情勢を反映した大型の金融・不良債権関連事犯等の不正事案の顕在化及び来日外国人による組織的な犯罪の著しい増加であった。
 このほか、都道府県の境界を越えた犯罪等、犯罪のボーダーレス化も依然として進行しており、犯罪は質的変化を続けている。また、コンピュータ・ネットワークを通じて外部から侵入するハッキング(クラッキング)によるものをはじめ、コンピュータ・ネットワークを手段とする新たな形態の犯罪が問題となっている。
 このような情勢に的確に対応するため、警察では、広域捜査力、専門捜査力、科学捜査力、国際捜査力のそれぞれの強化や、国民協力の確保等の諸施策を講じ、捜査力の充実強化を図るとともに、総合的なネットワーク・セキュリティ対策を推進している。

<第5章> 暴力団総合対策の推進


 暴力団対策法の施行を契機とした暴力団排除気運の高揚と取締りの一層の強化により、暴力団は社会から孤立しつつあるが、暴力団の資金獲得活動は、金融・不良債権関連事犯を多数引き起こすなど、社会経済情勢の変化に対応して巧妙化、多様化してきている。また、覚せい剤等の薬物事犯や、けん銃を使用した凶悪な犯罪を多数引き起こすなど、暴力団は依然として市民社会にとって大きな脅威となっている。
 このような情勢の下、警察は、暴力団を解散、壊滅に追い込むため、総力を挙げて、暴力団犯罪の取締りの強化、暴力団対策法の効果的な運用及び暴力団排除活動の推進を三本の柱とした暴力団総合対策を強力に推進している。
 さらに、最近における暴力団をめぐる情勢にかんがみ、指定暴力団等の業務等に関し行われる暴力的要求行為の防止、準暴力的要求行為の規制等を図るため、平成九年五月、暴力団対策法の一部改正が行われた。

<第6章> 公安の維持


 平成八年は、全国的な反基地運動の盛り上がり、尖閣(せんかく)諸島及び竹島の領有権をめぐる国内運動の激化等、我が国の治安に密接に関連する注目すべき動きがみられたほか、右翼や極左暴力集団による凶悪なテロ・ゲリラ事件が発生した。また、四月には、クリントン米国大統領夫妻が国賓として来日し、これに伴い、大規模な警備が実施された。七年三月三十日に発生した警察庁長官狙撃事件については、事案の重大性にかんがみ、一刻も早く真相を明らかにすべく、鋭意捜査が進められている。
 こうした情勢の中で、オウム真理教は、一連の取締り等により打撃を受けながらも、懸命に組織の生き残りを図った。日本共産党の党員数及び機関紙発行部数は、依然低迷した。また、在日本朝鮮人総聯(れん)合会は、依然不透明に推移する北朝鮮情勢を背景として、我が国の政財官界等に対する諸工作を活発に展開する一方、ロシア、中国は、科学技術情報等を獲得するため、我が国の各界各層に対する諸工作を行った。

<第7章> 災害、事故と警察活動


 平成八年は、トンネルにおける一枚岩崩落事故、土石流災害等、様々な災害及び事故が発生した。警察では、これらの災害及び事故の発生に際して、直ちに体制を確立し、被災者の救助に当たるとともに、被害の未然防止と拡大防止に努めた。
 また、雑踏事故、水難、山岳遭難、レジャースポーツに伴う事故等に対しても、それぞれ関係機関、団体と連携して必要な諸対策を推進した。

<第8章> 国際化社会と警察活動


 近年の交通・通信手段等の飛躍的発展に伴い、我が国と諸外国との交流はますます活発化している。
 これに伴い、来日外国人による犯罪が多発しているほか、海外からの薬物、けん銃の流入、日本人の海外における犯罪及び我が国において罪を犯した者が国外へ逃亡する事案も、依然として後を絶たない状況にある。特に、多くの集団密航事件に介在する「蛇頭」等の外国人犯罪組織は、我が国の治安に対する重大な脅威となっている。また、依然約二十八万人の不法残留者が存在し、それらの者による犯罪の発生、不法就労や不法入国を手引きするブローカーの存在、住民とのトラブルの発生等の社会問題が生じている。
 これらの問題に対して、警察は国際捜査力、国際捜査協力を強化するとともに、不法滞在の防止及び取締りに努めている。
 また、諸外国に対して、警察分野に関する協力を目的とした各種セミナーの開催、技術専門家の派遣等を行っており、相手国の治安の向上等に貢献している。

<第9章> 警察活動の基盤と関連する諸活動


 公安委員会制度は、昭和二十九年の現行警察法により設けられたものであり、警察行政の民主的運営、政治的中立性の確保の点で、大きな役割を果たしてきている。
 平成八年中、国家公安委員会は、警察庁から、各種重要事件、事故及び災害の発生状況とこれらに対する警察の取組み、今後の被害者対策の基本方針等、多様な案件について詳細な報告を徴するとともに、委員会としての意思を決定し、それによって警察庁を管理するほか、犯罪捜査共助規則の一部を改正する規則等の国家公安委員会規則を制定するなど、各種法令に基づく権限を適切に行使した。
 また、都道府県公安委員会は、都道府県警察から、日々生起する事件、事故及び災害の発生状況と、これらに対する警察の取組み等について詳細な報告を徴するとともに、委員会としての意思を決定し、それによって都道府県警察を管理するほか、道路交通法をはじめ各種法令に基づく権限を適切に行使した。
 警察では、警察職員の待遇の改善、警察装備の開発、情報通信システムの開発・導入、警察官の職務に協力援助した者等に対する救済、各シンクタンクにおける調査研究活動等に取り組み、警察活動のささえとなる諸活動の充実強化に努めている。
 また、被害者に対する援助のニーズや、被害者の問題に対する社会的関心の高まり、被害者の権利を重視する近年の国際的潮流、捜査活動が被害者に精神的負担等を与えているとの指摘等にかんがみ、平成八年から各種の被害者対策を組織的に推進・強化している。


目次へ戻る

平成九年二月労働力調査


特別調査結果の概要


総 務 庁


 労働力調査特別調査は、毎月の労働力調査を補い、国民の失業及び不完全就業の実態、就業異動の状況など、就業及び不就業の状態を詳細に調査することにより、雇用政策等の基礎資料を得ることを目的としている。
 今回の調査は、平成九年二月末現在〔就業状態については二月末一週間(二月二十二日〜二十八日)〕について、全国の十五歳以上の者約十万人を対象として行った。
 結果の概要は以下のとおりである。

【就業者】第1図第1表参照

第一 雇用者の雇用形態の状況

 一 雇用形態別の構成

 平成九年二月の就業者(六千四百五万人)のうち雇用者は五千三百四十九万人で、前年(平成八年二月。以下同じ。)に比べ百十二万人(二・一%)の増加となっている。
 雇用者を男女別にみると、男子は三千二百四十六万人、女子は二千百三万人で、前年に比べ男子は三十五万人(一・一%)の増加、女子は七十七万人(三・八%)の増加と男女共に増加している。
 雇用者のうち役員を除く者は四千九百六十三万人で、前年に比べ百二十万人(二・五%)の増加となっている。これを雇用形態別にみると、「正規の職員・従業員」が三千八百十二万人、「パート」が六百三十八万人、「アルバイト」が三百七万人、「嘱託・その他」が二百七万人となっている。これを前年と比べると、「正規の職員・従業員」は十二万人(〇・三%)増と、前年(二十一万人増)に引き続き増加しているが、増加幅は縮小している。「パート」は四十四万人(七・四%)増、「アルバイト」は三十一万人(一一・二%)増と、増加幅は前年(それぞれ三十一万人増、十四万人増)に比べ拡大している。また、「嘱託・その他」は三十四万人(一九・七%)増と、前年の三万人減から増加に転じている。
 このようにいずれの雇用形態とも前年に比べ増加しているが、役員を除く雇用者の全増加(百二十万人増)に占める割合(増加寄与率)をみると、「正規の職員・従業員」が一〇・〇%であるのに対し、「パート」が三六・七%、「アルバイト」が二五・八%、「嘱託・その他」が二八・三%と、非正規職員の増加寄与率が約九割を占めている。
 次に、雇用形態別の割合を男女別にみると、男子は「正規の職員・従業員」が八九・五%、「パート」が一・二%、「アルバイト」が五・三%、「嘱託・その他」が四・一%、女子はそれぞれ五八・二%、二九・九%、七・五%、四・三%となっており、男子は約九割が「正規の職員・従業員」であるのに対し、女子は約六割にとどまっている。
 これを前年と比べると、「正規の職員・従業員」の割合は、男子が一・一ポイント、女子が二・〇ポイント低下し、比較できる昭和五十九年以降初めて、男子は九〇%を、女子は六〇%を下回った。一方、「パート」、「アルバイト」及び「嘱託・その他」の割合は、いずれも男女共に上昇している。
 また、「パート」と「アルバイト」を合わせたパート・アルバイト比率をみると、男子が六・四%、女子が三七・四%となっている。前年と比べると、男子が〇・六ポイント、女子が一・四ポイント上昇し、男女共に三年連続の上昇となっている。

 二 年齢階級

 役員を除く雇用者のうち非農林業の者(四千九百三十六万人)について、パート・アルバイト比率を男女・年齢階級別(十五〜二十四歳は在学中の者を除く。)にみると、男子は六十五歳以上が二二・〇%で最も高く、以下、十五〜二十四歳が一一・三%、五十五〜六十四歳が五・六%、二十五〜三十四歳が三・一%、四十五〜五十四歳が一・四%、三十五〜四十四歳が一・三%となっており、高年層と若年層で高くなっている。
 一方、女子は三十五〜四十四歳が四五・一%で最も高く、以下、四十五〜五十四歳が四四・八%、六十五歳以上が四四・四%、五十五〜六十四歳が四二・一%、二十五〜三十四歳が二三・三%、十五〜二十四歳が一九・二%となっており、三十五歳以上の四階級で四割を超えている。
 年齢階級別にパート・アルバイト比率を十年前の昭和六十二年と比べると、男子の六十五歳以上、女子の十五〜二十四歳、五十五〜六十四歳及び六十五歳以上で一〇ポイントを超える上昇となっている。

 三 従業上の地位

 役員を除く雇用者のうち従業者(四千八百九十四万人)について、従業上の地位ごとに雇用形態別の割合をみると、常雇では「正規の職員・従業員」が八六・四%、「パート・アルバイト」が一〇・九%、「嘱託・その他」が二・六%となっており、常雇のうちの一割強が「パート・アルバイト」となっている。
 一方、臨時・日雇では「正規の職員・従業員」が六・三%、「パート・アルバイト」が七八・三%、「嘱託・その他」が一五・四%となっており、「正規の職員・従業員」以外の非正規職員が九割以上(九三・七%)を占めている。
 常雇について雇用形態別の割合を男女別にみると、「正規の職員・従業員」は男子が九五・三%、女子が七一・四%、「パート・アルバイト」はそれぞれ二・三%、二五・六%、「嘱託・その他」はそれぞれ二・五%、二・九%となっており、男子に比べて女子の方が「正規の職員・従業員」の割合が低く、「パート・アルバイト」の割合が高くなっている。

 四 産 業

 役員を除く雇用者(四千九百六十三万人)について、主な産業の雇用形態別割合をみると、「正規の職員・従業員」の割合が最も高いのは運輸・通信業で八七・七%、最も低いのは「卸売・小売業、飲食店」で六〇・七%となっており、「卸売・小売業、飲食店」では「パート・アルバイト」の割合が最も高くなっている。
 産業別のパート・アルバイト比率をみると、「卸売・小売業、飲食店」の三七・一%に次いで、サービス業が一八・九%と高く、以下、製造業が一五・三%、運輸・通信業が九・八%、建設業が七・三%となっている。これを前年と比べると、製造業が〇・九ポイント、「卸売・小売業、飲食店」及びサービス業がともに一・六ポイントの上昇となっている。一方、建設業及び運輸・通信業は、それぞれ〇・五ポイント、一・四ポイントの低下となっている。
 男女別にみると、男子は、「卸売・小売業、飲食店」が一四・三%と一割を超えているものの、他の産業ではいずれも一〇%を下回っており、製造業が三・一%と最も低くなっている。女子は、いずれの産業でも男子に比べパート・アルバイト比率が高くなっており、特に「卸売・小売業、飲食店」が五七・一%と、約六割を占めている。

【就業異動】第2図第2表参照

第二 離職経験者の現在の就業状況

 過去一年間(平成八年三月〜九年二月。以下同じ。)に離職を経験した者(以下「離職経験者」という。)は六百七十四万人で、前年に比べ三十九万人(六・一%)増と、前年の二万人減から増加に転じている。
 男女別にみると、男子は三百四万人、女子は三百六十九万人で、前年に比べ男子は十一万人(三・八%)増、女子は二十七万人(七・九%)増となっており、男子は平成六年から四年連続して増加し、女子は前年の四万人減から増加に転じている。
 離職経験者を現在の就業状態別にみると、就業者が二百九十九万人(離職経験者の四四・四%)、完全失業者が百二十九万人(同一九・一%)、非労働力人口が二百四十六万人(同三六・五%)となっている。前年と比べると、就業者は二十七万人(九・九%)増と、前年(八万人増)に引き続き増加となっている。非労働力人口は十四万人(六・〇%)増と、前年の二十一万人減から増加に転じている。完全失業者は二万人(一・五%)減と、平成二年以来七年ぶりに減少となっている。
 現在の就業状態別の割合を男女別にみると、男子は就業者が五〇・七%、完全失業者が二三・〇%、非労働力人口が二六・三%で、女子はそれぞれ三九・〇%、一六・〇%、四五・〇%となっている。これを前年と比べると、就業者は男女共に上昇し、完全失業者は男女共に低下している。非労働力人口は男子は上昇しているが、女子は低下している。
 なお、就業者の割合は、男女共に二年続けて上昇しており、男子は平成五年以来四年ぶりに五割を超えている。一方、完全失業者の割合は、男子は二年ぶり、女子は三年以来六年ぶりに低下となっている。

第三 新規就業・転職の状況

 一 新規就業者

 就業者(六千四百五万人)のうち、過去一年間に新たに仕事に就いた者(前職のある者のうち平成八年二月以前の離職者を含む。以下「新規就業者」という。)は四百十二万人で、就業者に占める新規就業者の割合(新規就業者比率)は六・四%となっている。
 男女別にみると、男子は新規就業者が百七十七万人で、新規就業者比率が四・六%、女子はそれぞれ二百三十五万人で、九・一%となっており、新規就業者数、新規就業者比率のいずれも女子が男子を上回っている。
 新規就業者比率を前年と比べると、男女共に〇・一ポイント上昇し、男女共に三年連続の上昇となっている。
 新規就業者比率を年齢階級別にみると、学卒者の就業期に該当する十五〜二十四歳が男女共に最も高く、男子が二五・六%、女子が二七・〇%と、男女共に四人に一人が新規就業者となっている。以下、男女共に二十五〜三十四歳から四十五〜五十四歳までは年齢階級が高くなるに従って低くなっているが、男子は定年後の再就職等のため五十五歳以上でやや高くなっている。

 二 転職者

 就業者(六千四百五万人)のうち過去一年間の離職経験者(以下「転職者」という。)は二百九十九万人で、就業者に占める転職者の割合(転職者比率)は四・七%となっている。
 転職者比率を男女別にみると、男子は四・〇%、女子は五・六%と、女子の方が一・六ポイント高くなっている。前年と比べると、男子は〇・二ポイント、女子は〇・四ポイント上昇し、男女共に三年連続の上昇となっている。
 転職者比率を年齢階級別にみると、男女共に十五〜二十四歳が最も高く、男子が一〇・〇%、女子が一一・四%と、男女共に約一割が転職者となっている。二十五歳以上の年齢階級では、定年後の再就職期に当たる男子の五十五〜六十四歳を除き、男女共に年齢階級が高くなるに従って低くなっている。

 三 転職者の前職の離職理由

 転職者(二百九十九万人)について前職の離職理由を大別してみると、人員整理・会社倒産、定年などの「非自発的理由」による者の割合が二八・八%、より良い条件の仕事を探すなどの「自発的理由」による者の割合が七〇・九%で、前年に比べ「自発的理由」が一・八ポイント上昇している。
 男女別にみると、男子は「非自発的理由」が三五・七%、「自発的理由」が六三・六%、女子はそれぞれ二一・五%、七八・五%となっており、男子の「非自発的理由」の割合が女子に比べ一四・二ポイント高くなっている。また、男女共に二年ぶりに「非自発的理由」の割合が低下し、「自発的理由」の割合が上昇している。
 前職の離職理由を細かくみると、男子は、「より良い条件の仕事を探す」が三〇・五%で最も高く、以下、「人員整理・会社倒産等」と「事業不振など先行き不安」と「その他の勤め先や事業の都合」との合計(以下「人員整理等」という。)が二七・三%、「定年等」が九・一%などとなっている。
 一方、女子は、「より良い条件の仕事を探す」が三六・一%で最も高く、以下、「人員整理等」が二〇・一%、「家事・通学・健康上の理由」が九・〇%などとなっており、男子に比べると、「人員整理等」の割合が低く、「より良い条件の仕事を探す」及び「家事・通学・健康上の理由」の割合が高くなっている。

 四 新規就業者・転職者が現職に就いた方法

 新規就業者及び転職者(七百十一万人)について、現職に就いた方法別の割合をみると、「求人広告・求人情報誌」が三四・三%、「友人・知人の紹介」が二五・七%と、この二つの方法で過半を占め、以下、「公共職安の紹介」が八・七%、「学校の紹介」が七・六%などとなっている。これを前年と比べると、「学校の紹介」、「公共職安の紹介」及び「友人・知人の紹介」はそれぞれ一・一ポイント、一・〇ポイント、〇・四ポイント低下しているのに対し、「求人広告・求人情報誌」は二・二ポイント上昇している。このうち、「求人広告・求人情報誌」の割合は、平成三年以降七年連続して上昇している。
 男女別にみると、男女共に「求人広告・求人情報誌」及び「友人・知人の紹介」の割合がそれぞれ二五%を超えており、特に、女子は「求人広告・求人情報誌」が約四割を占めている。
 年齢階級別にみると、十五〜二十四歳、二十五〜三十四歳及び三十五〜四十四歳の年齢階級では「求人広告・求人情報誌」が最も高く、四十五〜五十四歳では「求人広告・求人情報誌」と「友人・知人の紹介」が同率で高く、五十五歳以上の高年齢層になると「友人・知人の紹介」が最も高くなっている。

【転職希望】第2表参照

第四 就業者の転職希望の状況

 一 転職希望者

 就業者(六千四百五万人)のうち、転職希望者は八百九万人で、前年に比べ七十四万人(一〇・一%)の増加となっている。また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は一二・六%で、前年に比べ〇・九ポイント上昇し、平成元年(一四・五%)以来の高い水準となっている。
 男女別にみると、男子は四百五十八万人、女子は三百五十二万人で、前年に比べ、男子は四十二万人(一〇・一%)の増加、女子は三十三万人(一〇・三%)の増加となっている。また、転職希望者比率は男子が一二・〇%、女子が一三・六%で、前年に比べ男子が一・〇ポイント上昇と三年連続の上昇、女子が〇・九ポイント上昇と二年連続の上昇となっており、男女共に平成元年(男子一三・七%、女子一五・七%)以来の高い水準になっている。

 二 求職活動を行っている転職希望者

 転職希望者(八百九万人)のうち実際に求職活動を行っている者は二百六十一万人で、前年に比べ二十四万人(一〇・一%)の増加となっており、求職活動を行っている転職希望者比率は四・一%で、前年に比べ〇・三ポイント上昇し、比較可能な昭和五十八年以降で最も高い水準となっている。
 男女別にみると、男子が百三十六万人、女子が百二十五万人で、前年に比べ男子は十三万人(一〇・六%)の増加、女子は十一万人(九・六%)の増加となっており、求職活動を行っている転職希望者比率は、男子が三・六%、女子が四・八%で、前年に比べ男女共に〇・三ポイントの上昇となっている。
 求職活動を行っている転職希望者比率を年齢階級別にみると、男女共に十五〜二十四歳が最も高く、男子が八・五%、女子が九・三%となっており、以下、定年後の再就職期に当たる男子の五十五〜六十四歳を除き、年齢階級が高くなるに従って低くなっている。
 また、雇用形態別にみると、「正規の職員・従業員」が三・八%、「パート・アルバイト」が九・三%となっている。

 三 転職希望理由

 転職希望者のうち求職活動を行っている者(二百六十一万人)について、転職希望理由別の割合をみると、「もっと収入を増やしたい」が二九・五%で最も高く、以下、「自分の適性に合った仕事に就きたい」が二二・六%、「時間的・肉体的に負担が大きいから」が一九・五%、「安定した職業に就きたい」が一六・五%となっている。
 これを前年と比べると、「安定した職業に就きたい」及び「時間的・肉体的に負担が大きいから」はそれぞれ〇・五ポイント、〇・一ポイント上昇しているのに対し、「自分の適性に合った仕事に就きたい」は一・五ポイント低下している。「もっと収入を増やしたい」は前年と同率となっている。
 男女別にみると、「もっと収入を増やしたい」の割合は男子の方が高くなっているのに対し、「自分の適性に合った仕事に就きたい」、「安定した職業に就きたい」及び「時間的・肉体的に負担が大きいから」の割合は女子の方が高くなっている。
 年齢階級別にみると、十五〜二十四歳では「自分の適性に合った仕事に就きたい」の割合が最も高く、二十五〜三十四歳、三十五〜四十四歳、四十五〜五十四歳及び五十五〜六十四歳では、「もっと収入を増やしたい」の割合が最も高くなっている。
 雇用形態別にみると、「正規の職員・従業員」では、男子は「もっと収入を増やしたい」が三五・四%で最も高く、女子は「時間的・肉体的に負担が大きいから」が三一・九%で最も高くなっている。
 一方、「パート・アルバイト」では、男子は「安定した職業に就きたい」が四二・三%で最も高く、女子は「もっと収入を増やしたい」が三〇・六%で最も高くなっている。

【完全失業者】第3表第3図参照

第五 完全失業者の状況

 一 失業期間

 完全失業者(二百三十万人)について失業期間別にみると、「三か月未満」が九十六万人(完全失業者の四一・七%)、「三〜六か月未満」が三十九万人(同一七・〇%)、「六か月〜一年未満」が四十六万人(同二〇・〇%)、「一年以上」が四十八万人(同二〇・九%)となっている。失業期間別の割合を前年と比べると、「三か月未満」が〇・三ポイント低下、「三〜六か月未満」が同率、「六か月〜一年未満」が〇・五ポイント低下であるのに対し、「一年以上」は一・三ポイントの上昇となっている。なお、「一年以上」の割合は平成六年から四年連続して上昇している。
 失業期間別の割合を男女別にみると、「三か月未満」の割合は男子が三五・六%、女子が五〇・〇%となっているのに対し、「一年以上」は男子が二七・四%、女子が一一・七%となっており、男子は女子に比べ、失業期間の長い者の割合が高くなっている。

 二 求職理由

 完全失業者(二百三十万人)について求職理由別にみると、「離職したため」に仕事を探している者(以下「離職失業者」という。)が百五十四万人(完全失業者の六七・〇%)、「新たに仕事に就くため」に仕事を探している者(以下「非離職失業者」という。)が七十五万人(同三二・六%)となっている。
 離職失業者の割合を男女別にみると、男子は六七・四%、女子は六七・〇%とほぼ同率となっているが、前年と比べると、男子が二・五ポイント低下しているのに対し、女子は四・四ポイント上昇している。
 なお、非離職失業者の求職理由を細かくみると、「収入を得る必要が生じたから」が一五・二%、「学卒未就職」が三・九%、「余暇ができたから」が三・五%などとなっている。

 三 探している仕事の形態

 完全失業者(二百三十万人)について、探している仕事の形態別の割合をみると、「雇われてする仕事」が八九・一%で最も高く、以下、「自営業」が四・三%、「内職」が〇・九%などとなっている。また、「雇われてする仕事」を雇用形態別にみると、「正規の職員・従業員」が五六・五%、「パート・アルバイトなど」が三二・六%となっている。
 これを前年と比べると、「パート・アルバイトなど」が三・一ポイント上昇しているのに対し、「正規の職員・従業員」、「自営業」及び「内職」はそれぞれ一・五ポイント、〇・六ポイント、〇・四ポイント低下している。
 男女別にみると、男子は「正規の職員・従業員」が六一・五%、「パート・アルバイトなど」が二三・〇%、「自営業」が六・七%で、女子はそれぞれ五〇・〇%、四六・八%、一・一%となっている。これを前年と比べると、男女共「正規の職員・従業員」の割合が低下し、「パート・アルバイトなど」の割合が上昇している。

 四 求職活動の方法

 完全失業者(二百三十万人)の求職活動についてみると、一種類の方法で求職活動を行っている者は百万人(完全失業者の四三・五%)、二種類の方法で行っている者は九十万人(同三九・一%)、三種類以上の方法で行っている者は三十九万人(同一七・〇%)となっており、求職活動を複数の方法で行っている者が半数を上回っている。
 一種類の方法で求職活動を行っている者についてみると、「求人広告・求人情報誌」が五十万人(同二一・七%)で最も多く、次いで「公共職安に申込み」が二十六万人(同一一・三%)となっている。また、二種類の方法で行っている者についてみると、主に「公共職安に申込み」をしていて、他に「求人広告・求人情報誌」でも行っている者が二十三万人(同一〇・〇%)、主に「求人広告・求人情報誌」で行っていて、他に「公共職安に申込み」もしている者が十六万人(同七・〇%)などとなっている。
 なお、求職活動の状況を求職方法の主従と関係なく(複数回答)みると、「求人広告・求人情報誌」が百六十二万人(完全失業者の七〇・四%)、以下、「公共職安に申込み」が百六万人(同四六・一%)、「学校・知人などに紹介依頼」が六十九万人(同三〇・〇%)、「事業所求人に直接応募」が三十七万人(同一六・一%)などとなっており、完全失業者の約七割が「求人広告・求人情報誌」を利用しており、約五割が「公共職安に申込み」をしている。

 五 主な求職方法

 完全失業者(二百三十万人)の求職活動のうち、主な求職方法別の割合をみると、「求人広告・求人情報誌」が四三・九%で最も高く、以下、「公共職安に申込み」が三〇・〇%、「学校・知人などに紹介依頼」が一〇・九%、「事業所求人に直接応募」が七・四%、「事業開始の準備」が二・六%などとなっている。
 これを前年と比べると、「事業所求人に直接応募」、「公共職安に申込み」及び「求人広告・求人情報誌」がそれぞれ二・〇ポイント、一・九ポイント、〇・一ポイントの上昇となっているのに対し、「学校・知人などに紹介依頼」及び「事業開始の準備」はそれぞれ二・九ポイント、〇・一ポイントの低下となっている。このうち、「求人広告・求人情報誌」の割合を男女別にみると、男子は三八・五%、女子は五二・一%で、前年に比べ男子は二・一ポイント低下しているのに対し、女子は三・七ポイント上昇し、比較可能な昭和五十八年以降で初めて五割を超えた。
 なお、年齢階級別にみると、五十四歳以下の各年齢階級では「求人広告・求人情報誌」の割合が最も高く、特に十五〜二十四歳では約六割(六一・八%)を占めている。これに対し、定年後の再就職期に当たる五十五〜六十四歳では、「公共職安に申込み」が約五割(四五・五%)を占めている。

第六 離職失業者の状況

 一 前職の離職理由

 完全失業者のうち離職失業者(百五十四万人)について、前職の離職理由別にみると、「非自発的理由」による者が六十二万人(離職失業者の四〇・三%)、「自発的理由」による者が九十一万人(同五九・一%)となっており、前年に比べ「非自発的理由」の割合が〇・四ポイント低下している。
 「非自発的理由」の割合の推移をみると、平成二年の三一・三%を底に、三年以降六年の四三・四%まで上昇傾向が続いたが、その後三年連続して低下している。

 二 前職の産業

 離職失業者のうち過去一年間に離職した者(百四万人)について、前職の産業をみると、「卸売・小売業、飲食店」が二十七万人、サービス業が二十五万人、製造業が二十三万人、建設業が十一万人、運輸・通信業が七万人となっている。これを前年と比べると、製造業及びサービス業はそれぞれ二万人の減少、運輸・通信業は同数(増減なし)となっているのに対し、建設業及び「卸売・小売業、飲食店」は、それぞれ一万人の増加となっている。
 また、前職の産業別に離職理由が「非自発的理由」の割合を前年と比べると、製造業及びサービス業は低下、運輸・通信業は同率となっているのに対し、建設業及び「卸売・小売業、飲食店」は上昇となっている。

 三 前職の従業者規模

 過去一年間の離職失業者のうち前職が雇用者であった者(百二万人)について、前職で勤めていた企業の従業者規模階級別にみると、一〜二十九人規模が四十万人(三九・六%)、三十〜四百九十九人規模が三十八万人(三七・六%)、五百人以上規模が二十三万人(二二・八%)となっている。
 これを従業者規模階級別の全雇用者の割合(一〜二十九人規模三六・五%、三十〜四百九十九人規模三七・〇%、五百人以上規模二六・六%)と比較すると、一〜二十九人規模及び三十〜四百九十九人規模では、全雇用者の割合に比べ過去一年間の離職失業者の割合が高くなっているが、五百人以上規模では、過去一年間の離職失業者の割合は低くなっている。

【非労働力人口】

第七 非労働力人口の就業希望の状況

 一 就業希望者

 非労働力人口(三千九百六十八万人)のうち就業希望者は九百七十一万人で、非労働力人口に占める就業希望者の割合(就業希望者比率)は二四・五%となっている。
 男女別にみると、男子は非労働力人口一千百八十三万人のうち就業希望者は二百三十一万人、女子は二千七百八十四万人のうち七百四十万人で、就業希望者比率はそれぞれ一九・五%、二六・六%となっており、就業希望者数、就業希望者比率とも女子が男子を上回っている。ただし、就業希望者数を前年と比べると、男子が十七万人(七・九%)増、女子が十一万人(一・五%)増と、男子の増加幅が女子を上回っている。
 就業希望者について、就業可能時期別の割合をみると、仕事があれば「すぐ就ける」が一六・一%、すぐではないが就くことができる者のうち「二週間以内に就ける」が六・九%、「二週間以内には就けない」が一二・〇%、「就けない、わからない」が六三・七%となっている。
 男女別にみると、男子は「すぐ就ける」が一九・九%、すぐではないが就くことができる者のうち「二週間以内に就ける」が六・九%、「二週間以内には就けない」が九・一%、「就けない、わからない」が六二・三%で、女子はそれぞれ一四・九%、七・〇%、一三・〇%、六四・一%となっている。また、「すぐ就ける」者のうち過去一年間に求職活動を行ったことがある者は、就業希望者の六・三%を占めており、男女別では、男子は六・九%、女子は五・九%と男子の方が高くなっている。

 二 就業希望者の非求職理由

 就業希望者(九百七十一万人)について、非求職理由別の割合をみると、「適当な仕事がありそうにない」が四一・四%、「家事・通学・その他のため続けられそうにない」が三三・〇%などとなっている。このうち「適当な仕事がありそうにない」について、男女別に非求職理由を細かくみると、男子は「自分の知識・能力に合わない」が九・五%で最も高く、次いで「勤務時間等が合わない」が七・四%などとなっており、女子は「勤務時間等が合わない」が二一・五%で最も高く、次いで「近くに仕事がない」が八・一%などとなっている。
 就業可能時期別に非求職理由別の割合をみると、仕事があれば「すぐ就ける」、「二週間以内に就ける」及び「二週間以内には就けない」では「適当な仕事がありそうにない」がそれぞれ七一・二%、六五・七%、五〇・四%と最も高く、五割以上を占めているのに対し、「就けない、わからない」では「家事・通学・その他のため続けられそうにない」が四二・五%で最も高くなっている。

【夫婦の就業】

第八 世帯類型別の就業状況

 一 夫婦の就業状態

 世帯主と親族のみで構成される世帯のうち、「夫婦のみの世帯」、「夫婦と親から成る世帯」、「夫婦と子供から成る世帯」及び「夫婦、子供と親から成る世帯」の四つの典型的な類型の世帯(以下「典型的一般世帯」という。)について、夫婦の就業状態別の割合をみると、夫婦共就業者(以下「夫婦共働き」という。)の世帯の割合は、「夫婦のみの世帯」で三六・五%、「夫婦と親から成る世帯」で五四・一%、「夫婦と子供から成る世帯」で四九・六%、「夫婦、子供と親から成る世帯」で六七・六%となっており、親と同居している世帯で夫婦共働きの割合が高くなっている。
 なお、「典型的一般世帯」全体に占める夫婦共働き世帯の割合は四七・九%で、平成五年以降低下を続けていたが、九年は五年ぶりに上昇に転じている。

 二 「典型的一般世帯」の妻の年齢と夫婦の就業状態

 「典型的一般世帯」の夫婦共働き世帯の割合を妻の年齢階級別にみると、「夫婦のみの世帯」では、妻の年齢が五十四歳以下の四階級で五〇%を超えており、十五〜二十四歳及び二十五〜三十四歳では、四つの世帯類型中最も高くなっている。
 「夫婦のみの世帯」以外の世帯類型で、夫婦共働き世帯の割合が五〇%を超えている妻の年齢階級をみると、「夫婦と親から成る世帯」では二十五〜五十四歳の三階級で、「夫婦と子供から成る世帯」では三十五〜五十四歳の二階級で、「夫婦、子供と親から成る世帯」では三十五〜六十四歳の三階級で、それぞれ五〇%を超えており、中でも「夫婦と親から成る世帯」の四十五〜五十四歳と「夫婦、子供と親から成る世帯」の三十五〜四十四歳及び四十五〜五十四歳では、七割強(それぞれ七一・〇%、七四・一%、七三・四%)が夫婦共働き世帯となっている。

 三 末子の年齢と妻の就業状態

 典型的一般世帯のうち、「夫婦と子供から成る世帯」と「夫婦、子供と親から成る世帯」について、末子の年齢階級別に妻が就業者である世帯の割合(妻の就業率)をみると、両区分の世帯とも、末子の年齢が十五歳未満では、末子の年齢階級が高くなるに従って妻の就業率が高くなる傾向にある。また、両区分の世帯を比較すると、いずれの年齢階級においても、親と同居している世帯の方が妻の就業率は高くなっている。
 次に、妻が非農林業雇用者である世帯で、妻の週間就業時間が三十五時間未満の割合をみると、「夫婦と子供から成る世帯」で五四・六%、「夫婦、子供と親から成る世帯」で三七・八%となっている。これを末子の年齢階級別にみると、いずれの階級においても、親と同居していない世帯の方が、妻の週間就業時間が三十五時間未満の割合が高くなっている。

租税資料の収集にご協力を

 現在、東京都新宿区にある税務大学校若松町校舎に設置されている租税資料室では、税に関する貴重な資料を収集・保管するとともに、それらについての研究を行っています。
 平成十年の埼玉県和光市への校舎移転に伴い、新校舎に併設される租税資料室・展示室の拡充を予定しており、それに向けて資料内容の一層の充実を進めています。
一 税務大学校租税資料室の目的
 租税制度や税務執行はそれぞれの国及び国民固有のものであり、その国の財政・経済・政治の歴史そのものと言っても過言ではありません。その意味において租税に関する歴史的資料を現在に生かし、また、後世に引き継いでいくことはたいへん重要なことです。租税資料室の目的は、全国各地で個別に保管されている貴重な租税資料の散逸を防ぐため、資料を収集し、その集中管理を行い、租税制度の研究などに活用していくことにあります。
 租税資料が租税史等の研究に広く利用されることにより、その成果が共通の財産として蓄積されていくことにもなります。
二 税務大学校租税資料室の活動状況
 @ 税務大学校租税資料室は、昭和四十三年六月に税務大学校若松町校舎に設置されました。
 A 平成九年三月末現在の収蔵点数は約十四万点に及び、その収蔵点数と充実した内容において税に関する資料室としては他に類を見ないものとなっています。
 B 専門の研究スタッフが鋭意、調査・分類・保管作業を行っています。
 C 提供いただいた資料を順次分類整理の上、「租税資料目録」として刊行し、全国の主要大学や公立図書館・資料館等に配布し、研究者や文筆家の考証資料等に有効に活用されています。
 D 学術研究上、特に意義があると認められる資料は、解読・解説を加えて「租税資料叢書」として逐次刊行しています。
 E 展示室を設けて収集した貴重な資料の一部を展示し、一般に公開しています。また、中学生・高校生の租税教室等に、大いに利用されています。
三 「目で見る税務署百年史」の刊行
 昨年十一月に、税務署開庁百年を迎え、「目で見る税務署百年史」を刊行し、また、大蔵省講堂で「税務署創設百年展」を開催しました。この開催に当たっても、皆さんから提供いただいた資料を役立たせています。
四 税務大学校本校校舎移転に伴う資料の充実
 平成十年に、税務大学校本校校舎が埼玉県和光市に移転することに伴い、新校舎に併設される租税資料室・展示室を拡充し、資料内容の一層の充実を図ることとしています。
五 租税資料の収集例
 (一) 行政機関からの提供
  @ 税務官署の建て直し時期に発見された行政文書
  A 定期簿書整理の際の廃棄等予定文書
 (二) 民間からの提供
  @ 江戸時代に庄屋だった入間家から寄贈を受けたもの(入間家庄屋文書)
  A 私立博物館「地券の館」を経営していた小山氏から、「大事に保管してくれるところへ」ということで寄贈を受けたもの
  B 元東大阪税務署長の長田氏のコレクションを、同氏の遺族等の意向により寄贈を受けたもの
  C 山形市の造酒屋から、酒樽の目張り用に買い集めた古文書の寄贈を受けたもの
六 情報提供のお願い
 資料の現物に限らず、「私の町の資料館にはまとまった租税の資料がある」、「税金の資料らしいものを保管している」といった情報も貴重な蓄積資料となりますので、左記までご連絡をお願いします。
七 問い合わせ先
 ▽税務大学校租税資料室
  〒162 東京都新宿区若松町二-二
  пZ三-三三四一-八一七一(代表)
 ▽最寄りの税務署(総務課)
(国税庁)



    <10月22日号の主な予定>

 ▽犯罪白書のあらまし………………法 務 省 

 ▽普通世帯の消費動向調査…………経済企画庁 




目次へ戻る