官報資料版 平成1119





国民生活白書のあらまし


働く女性―新しい社会システムを求めて


経 済 企 画 庁


 平成九年度「国民生活白書」は去る十一月四日の閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは次のとおりである。

はじめに

 女性の職場進出がめざましい。かつての農業社会では、女性は身近なところで生産のために働き、かつ家庭内の家事労働も引き受けていた。その後、工業化とともにサラリーマン化が進んだが、サラリーマン世帯の妻の多くは、家事労働に専念する専業主婦となった。しかし、経済のサービス化などの経済社会環境の変化の中で、サラリーマン世帯の妻も社会で収入を得て働き出すようになった。その割合は一九八八年には、半数を超えた。
 その動きは、世界的に起こっている。もはや後戻りすることのない大きな流れであるといえよう。
 その流れは社会経済を、また国民生活の姿を広範、多岐にわたって変えている。女性が働く企業の現場をみると、従業員の多くが男性であることを前提とした従来型の雇用慣行が変容を迫られている。家庭生活の面では、女性が専業主婦でなくなることにより、家庭内の仕事の分担などで新しい対応が必要とされるようになってきている。また、未婚率の上昇や少子化の進展といった問題も指摘されている。
 教育の現場にも影響が及んでいる。女性の職場進出という社会の大きな動きは、女子高等教育に対するニーズを変え、高等教育機関にも新たな対応を迫っている。また、女性の高学歴化自体が、女性の職場進出を促進し、社会を変えていく大きな力となっている。
 さらに、経済社会全体に関わる問題として、女性は、二十一世紀の本格的な高齢社会を支える貴重な労働力であるとの認識が高まってきている。
 しかし、大きな変化が新たに起こる時には、社会システムの変化が追いつかないことも多い。女性が働くという新しい動きの中で、社会制度・慣行に多くの問題点が残されていることも確かである。
 本年度の白書第T部では、女性の職場進出とその国民生活、社会制度・慣行との関わりについて分析した。
 第U部では、一九九六年度の家計を取り巻く経済社会の動向を概観し、家計の動向を収入、消費、雇用、住宅投資等の観点から分析した。また、九〇年代前半の「バブル」崩壊後の家計の消費行動、資産保有行動について、八〇年代末の「バブル」時代との比較をも踏まえて分析した。そこでは特に、第T部で取り上げた外で働く女性の動向に重点を置いた。

<第T部> 女性が働く社会


<第1章> 社会で働き出している女性

<第1節> 女性就業者の増加
 かつて農業や自営業が主流であった時代には、多くの女性が家族従業者として生産労働に従事していたが、産業構造が農業から工業、サービス業へと変化するのに伴い、就業形態も給与所得者であるサラリーマンが主流となった。サラリーマン世帯の妻は、主に家事労働に従事する「専業主婦」が多かったが、サラリーマン世帯の妻も社会で収入を得て働くことが多くなってきた(第1図参照)。
 働く女性が増えた背景には、サービス経済化の進展、女性の高学歴化や家庭電化製品の普及による家事労働の負担の軽減、女性が働くことへの社会の意識の変化などがある。
 また、サラリーマン世帯の妻も働くようになってきたことは、日本だけでなく世界的にもみられることであり、女性の職場進出は押しとどめることのできない大きな流れであるとみられる。

<第2節> 時代の変化と女性就業
<パートタイム労働、既婚女性の就業が増加>
 一九七〇年代半ば以降の労働力率は、男性が低下を続ける一方で、女性は上昇に転じた。その特徴として、女性が労働力としてとどまる期間の長期化と、短時間の雇用者、いわゆるパートタイマーを中心とする既婚の雇用者の増加とがある。
 また、配偶者のいる女性の労働力率は、七五年には四五%であったのが、八五年には五一%と半数を超えた。とりわけ、サラリーマンの妻で雇用者として働いている割合は大幅に上昇し、九六年には専業主婦数を上回っている。
<住宅費、教育費の増大や家事負担の一層の軽減の影響>
 パートタイマー増加の理由としては、子供の教育の重要性に対する認識や、住生活の向上への欲求の高まり、そのための費用を女性が働いて賄おうとするようになったこと、電子レンジや電気洗濯機等の家庭電化製品の普及、紙おむつやベビーフード等の普及、外食産業や惣菜産業等の発達による食事づくりの簡便化などにより、家事の負担が一層軽減され、働くための時間的な余裕も生まれたこと、家事、育児との両立が容易であるような短時間の勤務で、かつ通勤の容易な身近な場所での職が求められたということがある。
<増えてきた仕事中心の女性>
 八〇年代半ば以降、企業の中でも専門職や管理職となる女性が増えたが、それ以上に特徴的なことは、医師や弁護士など、専門職や資格職として働く女性が増加したことである。

<第3節> 先進各国とも上昇している女性労働力率
<各国とも増える女性就業者>
 各国の女性の労働力率の推移をみると、一九七〇年代後半以降、サービス経済化の進展、家庭電化製品の普及、女性の社会参加への運動の高まりなどを背景に、テンポに差はあるものの各国とも上昇している。
<増加するパートタイムで働く女性>
 女性の年齢別の労働力率については、出産・育児期に当たる二十歳代後半から三十歳代前半の労働力率が他の年代に比べて低いため、グラフを描くとM字型になるM字カーブがその特徴として従来から指摘されてきたが、国際的にみると、二十歳代後半以上の女性労働力率の上昇により、M字カーブはほとんどの国で消失し、日本は残っている数少ない先進国の一つとなった。
 さらに、働き方としては、アメリカやスウェーデン以外の国では、パートタイマーの比率が増加している。特に中高年女性については、各国ともパートタイマーの比率は高い。

<第4節> 高齢社会と女性労働力
<働き手の割合が減少する時代へ>
 働き手の人口の概数を二十歳から六十四歳までの人口としてとらえ、「生産活動年齢人口」と呼ぶこととし、総人口に占めるその割合の推移をみると、一九五〇年には四九・四%であったのが、九五年には六二・六%になっている。しかし、二十一世紀に入ると、高齢者の急増に伴い、生産活動年齢人口の割合は急速に低下し、二〇一〇年には五九%、二〇二〇年には五五%へ低下すると見込まれている。
<女性労働力の活用>
 このことから、労働力を可能な限り確保し、その減少を最小限にとどめるためにも、女性が社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保され、多様な選択肢の中で自己実現を追求できる社会、女性がその能力を十分に発揮できる社会としていくことが不可欠である。
<見直しを迫られる日本的雇用慣行>
 現在、女性就業者は、日本的雇用慣行の外にいることが多い。日本的雇用慣行が最も典型的である大企業では、女性は少なく、年齢が上がるにつれ、その傾向が強まる。今後、女性の労働力を量的に確保し、かつ質的にも向上させていくためには、現在のように中心的な雇用システムの外側で女性を活用するのでは不十分である。このことは、日本的雇用慣行自体が、女性に開かれたものになるよう見直しを求められていることを示唆していよう。

<第2章> 働く女性と企業

 出産・育児後の女性の活用が十分になされにくいのは、賃金体系による面が大きい。日本の多くの企業の賃金体系は、年功賃金体系であるため、出産・育児等で就業を中断することは、働く女性にとって大きな不利をもたらしているのが現状であろう。

<第1節> 企業で働く女性の現状
<韓国、香港とともに大きい我が国の男女間賃金格差>
 男女間賃金格差は、男女間の勤続年数、役職者の割合、職種、産業の違いなど、様々な要因によって生じているものであるが、日本における状況を時系列でみると、わずかずつではあるが、男女間賃金格差は縮小傾向にある。
 また、国際的な状況をみると、日本はアメリカ、ドイツ、フランスなど欧米諸国と比較して格差が大きい。また、韓国、香港は日本より格差がやや大きい。年齢ごとの賃金格差は、各国とも年齢が上がるほど拡大している(第2図参照)。
<男性との差が大きい我が国の女性の勤続年数>
 平均勤続年数について主要国の状況をみると、日本の女性の勤続年数は八・二年であり、欧米諸国の女性と比較すると、ドイツ、フランスよりは短いものの、アメリカ、イギリスよりは長い。
 また、勤続年数について男女の比率をみると、日本は六三%であり、欧米諸国と比較して男女の格差が大きい。日本における勤続年数の推移をみると、男女とも勤続年数は長期化の傾向がみられる。
<増加傾向にはあるが、まだ多くない女性管理職数>
 女性管理職の状況をみると、一九八〇年には全管理職の二・一%であったが、八六年の「男女雇用機会均等法」の施行を境に増加傾向を強め、九六年には四・五%となっている。このことから、管理職に占める女性の割合は増加傾向にあるが、管理職全体に占める女性の割合はまだ低いことがわかる。
 また、国際的にみると、「管理・監督的職業従事者」全体に占める女性の比率は、日本は八・二%で、アメリカの四二・七%、イギリスの三三・〇%、ドイツの二五・六%などと比較して低い。
<女性の活用に当たっての問題点は勤続年数が短いこと>
 労働省「女子雇用管理基本調査」(一九九五年)により、女性の活用に当たっての問題点を企業の側からみると、最も多いのは「女性の勤続年数が平均的に短い」で、次いで「家庭責任を考慮する必要がある」「一般に女性は職業意識が低い」という順になっている。

<第2節> 女性活用の問題点
 現在のような日本的雇用慣行、特に年功賃金体系の下では、出産・育児等により就業を中断することは多大な金銭的損失をもたらす。その損失額の大きさを、短大卒相当の女性で現在の年功賃金体系が適用されている場合(「平均的なケース」)と専門職の場合(看護婦を例にとる)とで比較するため、就職後、出産・育児などによる就業中断をせず定年退職まで勤務するケースと、結婚後、第一子出産時に退職し、育児が一段落した後に再就職するケースとの賃金格差を試算した。
 その結果をみると、比較に用いたデータや想定が異なるため一概には言えないが、専門職は、出産・育児に伴う就業中断・再就職後の損失が少なく、また再就職も比較的容易であることなどを併せて考えると、女性にとって働きやすい職種である可能性が高い。
<女性は一つの企業にこだわらない「専門家」志向が強い>
 当庁「選好度調査」等によって、望んでいる働き方を男女別、年齢別にみると、男女ともいわゆる「専門家」志向が強いが、特に女性については年齢が低いほど専門性を重視していることがわかる。

<第3節> 出産・育児、介護等への配慮の状況
<育児休業制度は約六割の事業所で「規定あり」>
 育児休業制度は、一九九一年に法制化され、九五年四月からすべての事業主の義務となっている。労働省「女子雇用管理基本調査」(一九九六年)によると、事業所規模計では、六〇・八%の事業所で就業規則等に規定されている。
<育児休業制度に比べて企業の取り組みが遅れている介護休業制度>
 介護の問題は、今後高齢化が進行していくにつれて、その負担が増大していくと考えられるが、現在は多くの場合、女性が介護に当たっており、女性の就業継続に対し、大きな障害となっていると考えられる。介護休業制度の実施事業所の割合は二三・二%と、育児休業制度と比較してその取り組みは遅れている。

<第4節> パートタイマー、派遣労働者として働く女性
<パートタイマーは「人件費の節約」、契約社員は「専門的業務への対応」のため雇用>
 企業が契約社員、派遣労働者、パートタイマーを雇う理由を、労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」(一九九四年)によりみると、パートタイマーは人件費の節約と業務の繁閑や長時間化への対応のため、契約社員は専門的技術や即戦力を求めるためであり、派遣労働者はその両方の面を持っていることがわかる。
<パートタイマーとして働く理由は「自分の都合の良い時間に働ける」から>
 次に、働く側の理由をみると、パートタイマーの場合は、「自分の都合の良い時間に働ける」「家計の補助・学費等を得るため」「勤務時間や日数を短くしたかった」が多く、契約社員では「専門的な資格技能が生かせる」「自分の都合の良い時間に働ける」「正社員として働ける会社がない」が多い。派遣労働者は両方の面を持っているが、「正社員として働ける会社がない」が他の二つの場合より高くなっている。

<第5節> 女性の能力の活用と企業・社会の利益
<成長産業・成長職業分野を支えてきた女性労働力>
 女性の労働力が経済社会にもたらす利益、あるいは女性を活用しないことの経済社会にとってのコストについても考えてみる。産業については一九八六年から九六年まで、職業については八五年から九五年までの就業者数の増加率と、その中に占める女性比率の増分についての関係をみると、両者とも就業者の増加率が高いほどその中の女性比率の増分も大きいという傾向がある。このことは、女性の労働力が成長分野を支えてきたことを示しているとみることもできる。
 日本経済ではこれまで新卒者ないし若年層が新たな成長分野に多く就職することにより、当該分野が実際に成長していく上で必要な労働力が確保されてきた。しかし、今後は新卒者は減少していくものと予想され、状況は変わっていく。この点で、女性の職場進出がこれまでのように成長分野の拡大を支えていく力となり、ひいては日本経済の成長に引き続き貢献していくことが期待される。

<第3章> 働く女性と家族

 女性の職場進出は、女性が家事を行うとともに外で働くことになるので、様々な問題を生じさせることになった。
 妻が家事に専念し、夫が外で働くという専業主婦を前提とした男女の分業関係は、妻も夫もともに外で働くのであれば変化せざるを得ない。また、女性の経済的自立が容易になり、仕事をやめなければならないという意味での結婚や出産・育児の経済的費用が高まり、女性にとって、結婚により経済的安定が得られることの価値が低下している。外で働くとともに家事を担う女性の不満も、特に育児をめぐって目立っている。少子化はその不満の現れという面をも持つと考えられる。

<第1節> 家族の変化
<家事分担の少ない日本の男性>
 働く女性が増えるにつれ、男女の役割分担に関する意識が変化してきた。実際に男性の側はどう変わってきたのかを、生活時間の変化でみてみる。平日の家事時間は二十六分と、この二十五年間全く変化していないものの、土曜、日曜については、週休二日制の普及などもあって、一九八〇年代後半以降の十年間に土曜が二十七分、日曜が二十三分それぞれ増加している。

<第2節> 女性が働くことと結婚
<女性にとっての結婚の利点の減少>
 従来、女性にとって結婚とは、家族の形成とともに、安定した所得の確保という経済的利益を持つものであったが、女性の経済的地位の向上に伴い、結婚に対する意識も変化してきた。つまり、女性の就業機会、稼得機会の増大等により、独身でいることの利点が相対的に大きくなってきたといえる。
<晩婚化の進行、未婚率の上昇>
 女性にとっての結婚の経済的な利益の減少が、晩婚化(平均初婚年齢の上昇)の進行、未婚率の上昇の原因の一つとなっているとみられる。
 日本における平均初婚年齢の推移を長期的にみると、一九五〇年には男性二五・九歳、女性二三・〇歳であったものが、ほぼ一貫して上昇し、九五年にはそれぞれ二八・五歳、二六・三歳となっている。
 また、二十五〜二十九歳女性の未婚率は、六五年の一九%から九五年の四八%にまで上昇しており、この間、同年齢層の労働力率は四七%から六六%へと高まっている。
 女性の晩婚化には、高学歴化自体がその要因となっていることのほか、価値観の多様化や生活環境、ライフスタイルの変化など様々な要因があり、どの要因がどの程度影響しているか、一概にその強さを判断することはできないが、ここでは働く女性という観点から、賃金との関係について、都道府県別の平均初婚年齢と賃金との関係でみると、賃金が高い地域では、女性の平均初婚年齢も高くなっている(第3図参照)。

<第3節> 女性が働くことと少子化
<理想の数だけ子供を持てない理由>
 理想の数だけ子供を持てない理由を、結婚している女性について就業(フルタイム)・非就業別、子供の有無別にみると、どの層でも経済的な理由が多くなっているが、実際に子供を持ちながらフルタイムで働いている女性では、「仕事がしたく、育児との両立は困難だから」とする割合が最も多くなっている。女性のフルタイム就業と出産・育児を両立させることは容易ではないことがうかがえる。
<就業と育児の両立のための支援>
 少子化は、長期的には人口の高齢化となって現れる。一方、高齢社会では労働力不足に対処するため、女性労働力の活用が必要となるだろうと言われている。しかし、仮に、女性の就業が少子化を促進してしまうならば、労働力不足を補うために、女性の就業を促進することが少子化を招き、その結果、長期的には一層の労働力不足を引き起こすという一種の悪循環に陥る危険性もある。この悪循環を招かないためには、働く女性が子供を産みやすく、育てることが容易な環境を創っていくことが必要である。
 そこで、特に乳幼児を持った女性が働くことへの支援という観点から、就業している女性の出生行動について分析してみると、「世帯人員数」「二十五〜二十九歳女性一人当たりの保育所定員・利用児童数」が多くなるほど、既婚女性就業者の出生率は高く、逆に「女性賃金」が上がれば出生率は低くなっており、働く女性にとって出産・育児の機会費用が高いほど出生率は低いことが推計される。
 前記三つの指標が六歳未満の乳幼児を持つ女性の有業率に与える影響を分析してみると、「二十五〜二十九歳女性一人当たりの保育所定員・利用児童数」が最も有意に影響を与えていると推計される。また、「世帯人員数」もその数が多いほど、乳幼児を持つ女性の有業率が高いという関係にあることがわかる。
<女性も潜在有業率では欧米型>
 また、年齢別の女性の潜在有業率を実際の労働力率と比較してみると、実際の労働力率を表すグラフは、二十歳代後半から三十歳代の出産・育児期にくぼむというM字型のカーブを描いている。これに対し潜在有業率は、その年齢の女性で就業を希望している人の割合が高いため、M字型のカーブにはならない。このことにも、就業と出産・育児の両立が可能となるような条件が整備され、女性の就業と出産・育児間のトレード・オフの関係(両立することが困難な関係)が弱まれば、二十歳代後半から三十歳代にかけての女性の労働力率が上昇する可能性が示されている。

<第4章> 働く女性と教育

<第1節> 女子の教育と社会の変遷
 戦後になって、男女共学が実現し、短期大学・大学が増設されていくにつれて、高等教育への女子の進学率は急速に高まり、一九八九年には短期大学と大学を合わせた進学率で女子が男子を上回った。また、女子の学部専攻も文学部や家政学部のウェイトが低下し、社会科学系の学部や理工学部のウェイトが高まっている。
 米国においても、女子の高等教育が女性の就業の動きと関わりながら変化してきた。

<第2節> 女子の高等教育に対するニーズの変化
 (1) 就業との関わりを重視する傾向
 女子の高等教育に対するニーズもまた変化してきた。特に、高等教育が大衆化するにつれて、卒業後の就職との関わりが重視される傾向がみられる。
 (2) ニーズの変化に対する高等教育機関の対応
 短大、女子大はともに小規模校で、カリキュラムも共学大学ほど多様でない場合が多いため、最近の女子学生の多様な学習ニーズに十分に対応できていないことが考えられる。こうした状況に対して短大・女子大でも、改革への動きとして自己点検・評価を行い、カリキュラムの改革を行うなどの対応がとられ始めている。

<第3節> 女子の高学歴化と就業
 (1) 学歴別の男女間の賃金格差と労働力率
<高学歴になるほど男女間の賃金格差が小さい日本>
 学歴別に男女間の賃金格差を国際比較すると、我が国では高学歴になるほど男女間の賃金格差が小さくなる傾向にある。
<高い女子教育の「投資効果」>
 個人の視点から教育を「投資」ととらえ、その貨幣的な「収益率」がどのくらいになるかを試算すると、女子の方が男子よりも大きいが、これは女子の学歴間の賃金格差が大きいことが原因となっている。
<低い高学歴女性の労働力率>
 国際的には、高学歴になるほど労働力率が高くなる傾向にある。我が国の高学歴女性の場合、卒業後の就職率は低くないが、一度離職すると再就職する女性が少ないため、高学歴女性の労働力率は、国際的にはかなり低いものとなっている(第4図参照)。
 (2) 日本的雇用システムと高学歴女性
<「ライフコース」についての理想と現実のギャップ>
 高学歴女性の労働力率が高くないことは、高学歴女性は結婚や出産・育児に際して、就業を継続したいと望んでもそれが難しく、また、結婚後に再就職しようとしても、望みに近いような仕事が得られにくいためと思われる。
<高学歴女性が就業しないことは社会的損失>
 高学歴女性が就業を継続しないことや、退職して家庭に入った後に再び就職して能力を発揮することが少ないことは、社会的にも大きな損失といえる。しかも、今後も高学歴女性は一層増加していくと予想され、現状のままであれば、その社会的損失は、さらに大きなものとなっていくと考えられる。

<第5章> 働く女性と社会システム

<第1節> 出産と育児にかかる制度
 出産休業については、アメリカを除く各国で定められ、所得保障についても各国とも実施されており、それほどの差異はみられない。
 育児休業については、イギリスで導入されておらず、導入されている国の間でも所得保障などの面で状況が異なっている。
 保育制度については、働く母親からは「保育費の負担大・負担の不公平の是正」「早朝保育・延長保育の充実」を望む声が大きいが、実施状況をみると、特に公立保育所で実施率が低い状況にある。我が国を含めて、どの国の保育施設も、女性の社会進出に伴って生じている多様な保育ニーズに必ずしも応えきれていないのが現状であり、今後一層の増加、多様化が予想される保育需要に応えるために、新しい制度の構築を考えていく必要がある。

<第2節> 介護にかかる制度
 我が国の介護休業制度は、欧米諸国と比べても整備されているといえる。ただし、欧米諸国に比べて我が国は老人介護施設の整備が遅れており、家族でなければ十分な介護が行えない状況にある。

<第3節> 公的年金制度
 我が国では一九八五年の改革によって第三号被保険者制度が導入され、女性の年金権が確立されたが、専業主婦や自らの収入の少ない主婦が、保険料を支払うことなく、また夫も保険料を追加負担することなく、老齢基礎年金が受給できるという制度は、保険料を支払っている共働きや独身の女性にとっては不公平であるという指摘がある。
 欧米諸国については、ドイツ、フランスの公的年金制度は、被用者のみが強制加入となる制度である。一方、アメリカ、イギリス、スウェーデンでは我が国と同様、保険料を負担しない配偶者にも年金の受給権を認めているが、これらの国では減額支給であるのに対し、我が国では保険料負担者と同額の年金を受給できるという点で、保険料を負担している配偶者との公平性の問題は大きいといえよう。

<第4節> 税 制
 所得税制については、女性の就労に影響を与えないという中立性の観点から課税単位の問題を考えると、世帯単位よりも個人単位の方が優れている。イギリス、スウェーデンは我が国と同じく個人単位、アメリカ、ドイツは個人と世帯の選択制、フランスは世帯単位となっている。しかし、我が国の配偶者控除等の適用は、就労に対して中立性を損なうのではないかとの指摘がある。

<第5節> 女性の就労と社会システム
 配偶者手当等の雇用慣行的なものも含めた社会システムと女子パートタイマーの就労調整の問題、例えば配偶者自身の所得税の非課税限度額や年金などの社会保険料負担等は、収入を一定額の範囲内に抑えようとする就労抑制的な側面を持つのではないかと考えられる。実際にパートタイマーの年間収入分布をみると、九十〜百万円の階層で最も多くなっている(第5図参照)。
 高齢社会へ向けての社会システムの構築が急務となっている現在、税や社会保障等の制度が女性にとって働くことの制約要因とならないよう、より中立性の視点を重視した検討がなされる必要があろう。

<第U部> 一九九六年度を中心とした家計の動向と消費構造の変化


<第1章> 最近の家計動向

 一九九六年度を中心に、家計を取り巻く経済環境の変化や家計の収入、消費、貯蓄の動向について概観する。
<家計を取り巻く経済情勢>
 九六年度の我が国の経済をみると、経済成長率は二・九%増となった。物価は、国内卸売物価が〇・七%と五年連続の低下、消費者物価は〇・四%の上昇となり、安定基調を維持した。雇用情勢は厳しい状況にあるものの、有効求人倍率は〇・七二倍と幾分持ち直すなど、改善の動きもみられる。
<消費支出の推移>
 消費の動きを国民経済計算の家計最終消費支出(実質)でみると、九五年度は二・九%増と九四年度より伸びが高まった(第6図参照)。
 九六年度について、家計最終消費支出とほぼ同じ動きをする民間最終消費支出でみると、前年度比二・八%増と九五年度とほぼ同じ伸び率であった。九七年一〜三月期は四月からの消費税率引上げを前に前年同期比四・三%増と大きく伸びた。
 これを名目可処分所得要因、消費性向要因及び物価要因に分解してみると、名目可処分所得要因は二・六%のプラスの寄与、消費性向要因は〇・七%のプラスの寄与、物価要因は〇・四%のマイナスの寄与となった。

<第2章> 家計の消費構造と資産等保有状況の変化

 第T部で取り上げたように、外で働く女性が増えてきているが、家計の資産保有状況や消費構造にはどういった変化や特徴があるのか分析する。
<女性単身者で著しい住宅・宅地資産保有者の増加>
 三十歳代の単身者世帯の住宅・宅地資産の平均保有額は、男性が一九八九年の五百六十六万円から九四年の七百九十一万円へ、女性が八九年の四百八十一万円から九四年の八百八十一万円へとそれぞれ大きく増加し、女性が男性よりも多く住宅・宅地資産を保有するようになったことがわかる(第7図参照)。

むすび

▽世界的に起こっている女性の職場進出
 産業構造の長期的な変化に伴い、就業形態は自営業からサラリーマンへとその主流が移ってきた。自営業では、女性は家族従業者として生産労働にも従事することが多かった。それに対し、サラリーマン世帯の妻の多くは、家事労働に専念する専業主婦となった。しかし、サラリーマン世帯の妻も社会で収入を得て働くことが多くなり、一九五五年には、サラリーマン世帯の妻の四分の三は専業主婦であったが、八八年には半数を割った。
 女性が働くようになってきているということは世界的に起こっている。
▽日本的雇用慣行と女性就業
 我が国の男女間の賃金格差や同一企業での勤続年数の格差は、国際的にみてまだ大きい。女性は出産・育児などのために就業を中断せざるを得ないことが多いため、一般に勤続年数は短く、年功賃金体系を特徴とする日本的雇用慣行の下では、男女間の賃金格差となって現れているとみられる。
 女性の勤続年数が短くならざるを得ない場合が多いことが、逆に企業の側の女性活用に対する消極的な姿勢を生んでいる。しかし、そうした姿勢は、女性が職場での経験を通じて能力を伸ばしていく機会をせばめ、それが賃金や昇進にも影響するようになり、ひいては女性の企業での定着志向を弱めて、実際に勤続年数を短くすることとなっている可能性がある。
 そうした中、女性はむしろ日本的雇用の外で進出してきた。
 日本的雇用慣行も、経済成長率の低下や労働力の中高年齢化、経済のグローバル化という環境変化に直面して変わりつつある。若い女性を中心に、賃金体系が能力主義的なものに変わり、日本的雇用慣行が変化していくことが、むしろチャンスの到来であると考える者も出てきている。今後、長期的には労働力人口が減少していくなかで女性を活用しようとすれば、企業は、伝統的な雇用慣行を見直していかざるを得ないであろう。
 一九九〇年代になって日本経済が低めの成長を続けてきたなかで、労働力需給はまだ緩和基調にある。このため、現状では、企業としては、女性を活用することの利点を実感しにくく、したがって、女性をめぐる企業内の慣行を見直す誘因は大きなものとはなっていない面がある。実際に過去においても、女性の活用は、労働力需給が緩和基調で企業に人員過剰感があるような時には、比較的進みにくいという傾向があった。しかし、二十一世紀になってまもなく労働力人口は減少し始めるとみられ、その時期が近づいてくれば人手不足も実感されるようになるであろう。女性が能力を発揮できるような就業環境をできるだけ早めに整備しておくことが、企業にとっても利益となるのではないか。政府としても、経済の持続的な成長を確保し、労働力需給の悪化を招かないような政策運営を行っていくことが必要とされる。
 また、政府として、労働市場における職業情報提供機能、職業相談・紹介機能を強化することも求められている。これは意欲ある女性の就職活動を助けていくことにもなる。有料職業紹介事業については、本年四月に、労働者の保護等にも留意しつつ、その取扱職業の範囲等、制度の見直しを行った。
 また、派遣労働など就業形態の多様化が、女性のニーズともマッチして、女性の就業を促進してきたという面もある。現在、政府は、雇用の安定等に留意しつつ、労働者派遣事業制度の全般的な見直しを検討している。
 さらに、本年六月には、男女雇用機会均等法の改正案が国会で可決された。また、意欲ある女性の採用、登用を結果的に妨げることになっていると従来から指摘されてきた、労働基準法の「女子保護規定」も解消されることとなった。
▽就業と子育ての両立に向けて
 国際的にみて、我が国の家庭での男性の家事分担はまだ少ない。しかしながら、十年前と比べてみると、若干ではあるが男性の家事時間は増えてきている。これは、勤め先の労働時間が短縮したこと等に対応しており、労働時間の短縮等が進み、男性が家事に参加しやすい条件が整えば、女性の負担が軽減され得ることを示唆している。
 政府としても、引き続き、労働時間の短縮を推進するとともに、仕事と家庭生活との調和という観点をも含め、健康で安心して働くことができる環境の形成に資するよう労働時間法制等の見直しを進める必要がある。そのことは、女性の就業を進めること、育児等と両立させることにもつながるものである。
 女性の負担を軽減し、働きやすくするためには、育児や介護について、休業制度の整備、サービス供給体制の整備、特にニーズの多様化への対応を図っていくことが不可欠であろう。それは少子化への対応にもなる。
 第3章の計量的な分析では、女性の経済的な地位の向上は出生率を低下させ得るが、就業と出産の両立を支援する条件が整備されれば、就業女性の出生率を上げ得ること、あるいは育児をしている女性の就業率を上げ得ることが示された。
▽変わる女性の教育
 働く女性の増加に伴って、働く技能を身につけるための実務的な教育も求められるようになってきた。高等教育機関はそうした変化への対応を図り、変貌しつつある。
 我が国では、女性が高等教育を受けることによって得られるようになる賃金の増大額は小さくない。しかし、我が国の女性高学歴者のもう一つの特徴は、結婚や出産・育児でいったん退職すると、再び職場に出ていく場合が多くないことである。このことは、日本的な雇用慣行の下で、仕事をいったん中断すると、就業条件が大きく悪化するという事情なども反映していると思われる。貴重な人的資源を有効に活用しきれていないという点で社会的な損失でもある。
▽高齢社会と女性労働力への期待
 二十一世紀の本格的な高齢社会を支えるものとして、女性の労働力への期待が高まっている。女性の能力を活用できるような社会システムを創り上げていくことは、多くの面で将来の「安心」のための投資でもある。
▽女性が働きやすい社会システムの設計を
 そのためにも、個々の女性が、多様な選択肢の中で自己実現を追求でき、それぞれの能力を十分発揮できるような社会としていく必要がある。しかし、従来の社会システム、特にサラリーマンを取り巻く社会システム、制度・慣行は、「夫が会社に勤め、妻は家庭を守る」という夫婦間の分担、家族形態を前提として創られてきた。それらの中には、サラリーマンの妻が働くことが多くなってきたという現実に合わなくなっているものも出てきている。このような例は、我が国より女性の職場進出が早く始まった国々の多くでも同様にみられる。
 個人のライフスタイルが多様化してきた今日、制度は、その多様な選択に対して中立的である必要がある。制度は、女性の就業意欲、能力向上意欲を阻害するようなものであってはならない。社会保障制度や税制を含め、様々なシステムのあり方もこのような観点からの見直しが必要とされる。この点に関して、国民の間で十分な議論が行われていくことが望まれる。
 新しい動きに対応して、社会システム、制度・慣行を変えていく時には、常にとまどいや抵抗感が伴う。女性が外で働くようになると、伝統的な家族の良さが失われ、また、少子化がさらに進んでしまうのではないかと憂慮する声もあるかもしれない。しかし、女性の職場進出は、偶然に起こったことではない。それは押しとどめることのできない時代の大きな流れであって、この流れを逆転させることは不可能である。このことは、その背景が、経済構造・産業構造の変化や技術の変化などの大きな流れにも根ざしたものであり、それが世界的に起こっている現象であることなどを考慮すれば容易に理解できる。
 個人も、企業も、政府も、今後の生活設計、ビジネスのあり方の設計、政策・制度の設計を、この流れに沿って行っていく必要があろう。


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法人企業の経営動向


法人企業統計 平成九年四〜六月期


大 蔵 省


 この調査は、統計法(昭和二十二年法律第一八号)に基づく指定統計第一一〇号として、我が国における金融・保険業を除く資本金一千万円以上の営利法人を対象に、企業活動の短期動向を把握することを目的として、四半期ごとの仮決算計数を調査しているものである。
 その調査結果については、国民所得統計の推計をはじめ、景気判断等の基礎資料等として広く利用されている。
 なお、本調査は標本調査であり(計数等は、標本法人の調査結果に基づいて調査対象法人全体の推計値を算出したもの)、標本法人は層別無作為抽出法により抽出している。
 今回の調査対象法人数等は次のとおりである。
  調査対象法人 一、一一〇、五四七社 
  標本法人数  二四、〇四四社 
  回答率    八一・三% 
 当調査結果から平成九年四〜六月期の企業の経営動向をみると、売上高については、製造業は、引き続き増収となる一方、非製造業は、減収となったことから、全産業ベースの対前年同期増加率(以下「増加率」という。)は〇・三%となった。営業利益についても、製造業は、引き続き増益となる一方、非製造業は、減益となったことから、全産業ベースの増加率は一・二%となった。
 また、経常利益についても、製造業は、引き続き増益となる一方、非製造業は、減益となったことから、全産業ベースの増加率は五・〇%となった。
 一方、設備投資については、製造業、非製造業ともに増加となったことから、全産業ベースの増加率は六・八%となった。

一 売上高と利益の動向第1図第2図参照

 (1) 売上高第1表参照
 売上高は、三百二十一兆五千九百八十六億円であり、前年同期(三百二十兆六千九億円)を九千九百七十七億円上回った。増加率は〇・三%(前期五・一%)と、14四半期連続の増収となった。
 業種別にみると、製造業の売上高は九十八兆一千六百八十一億円で、増加率は三・五%(同八・九%)となった。また、非製造業の売上高は二百二十三兆四千三百五億円で、増加率は△一・〇%(同三・七%)となった。
 製造業では、「一般機械」等が、減収となったものの「電気機械」「食料品」等、多くの業種で増収となった。一方、非製造業では、「運輸・通信業」等が、増収となったものの、「建設業」「卸・小売業」等で減収となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百二十四兆四千百九十七億円で、増加率は三・八%(同四・八%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は四十九兆六千百四十六億円で、増加率は△二・〇%(同九・〇%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百四十七兆五千六百四十三億円で、増加率は△一・七%(同四・一%)となった。
 (2) 営業利益第2表参照
 営業利益は、九兆九千四百六十九億円であり、増加率は一・二%(前期一三・八%)と、12四半期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の営業利益は四兆四百三十三億円で、増加率は一七・八%(同二二・二%)となった。また、非製造業の営業利益は、五兆九千三十六億円で、増加率は△七・七%(同九・〇%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆六千三億円で、増加率は三・一%(同一四・九%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は七千二百四十五億円で、増加率は△一八・九%(同二・六%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は四兆六千二百二十一億円で、増加率は三・三%(同一六・一%)となった。
 (3) 経常利益第3表参照
 経常利益は、八兆九千九百三十九億円であり、前年同期(八兆五千六百三十六億円)を四千三百三億円上回り、増加率は五・〇%(前期一八・二%)と、12四半期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の経常利益は三兆九千六百三十五億円で、増加率は二一・一%(同二二・九%)となった。また、非製造業の経常利益は五兆三百四億円で、増加率は△四・九%(同一五・一%)となった。
 製造業では、「食料品」等が減益となったものの、「電気機械」「輸送用機械」等が増益となった。一方、非製造業では、「サービス業」「不動産業」等が増益となったものの、「建設業」「卸・小売業」等が減益となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三兆九千八十三億円で、増加率は七・三%(同一八・八%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は六千二百七十八億円で、増加率は△一六・五%(同三・〇%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は四兆四千五百七十八億円で、増加率は七・〇%(同二二・三%)となった。
 (4) 利益率第4表参照
 売上高経常利益率は二・八%で、前年同期(二・七%)を〇・一ポイント上回った。
 業種別にみると、製造業は四・〇%で、前年同期(三・五%)を〇・五ポイント上回り、非製造業は二・三%で、前年同期(二・三%)と同水準となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三・一%(前年同期三・〇%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一・三%(同一・五%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三・〇%(同二・八%)となった。

二 投資の動向第3図参照

 (1) 設備投資第5表参照
 設備投資額は、十一兆四千二百二十六億円であり、増加率は六・八%(前期一三・〇%)と、9四半期連続の増加となった。
 業種別にみると、製造業の設備投資額は三兆五千八百七億円で、増加率は二・一%(同一三・六%)の増加となった。一方、非製造業の設備投資額は七兆八千四百十九億円で、増加率は九・〇%(同一二・七%)となった。
 製造業では、「石油・石炭製品」等で減少となったものの、「輸送用機械」「食料品」等の業種で増加となった。一方、非製造業では、「不動産業」等で減少となったものの、「運輸・通信業」「サービス業」等で増加となった。
 設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は六兆四千六百七十一億円で、増加率は二・三%(同七・二%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆六千八百八十九億円、増加率は△一一・五%(同二〇・九%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆二千六百六十五億円で、増加率は三二・一%(同二六・二%)となった。
 (2) 在庫投資第6表参照
 在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、五兆八千七百六十一億円であり、前年同期(四兆七千五百十四億円)を一兆一千二百四十七億円上回った。
 在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は二兆六千四十七億円で、前年同期(二兆四千百六十九億円)を一千八百七十八億円上回った。一方、非製造業の投資額は三兆二千七百十四億円で、前年同期(二兆三千三百四十五億円)を九千三百六十九億円上回った。
 在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が一兆八千九百七十九億円(前年同期一兆一千三百七十三億円)、仕掛品が四兆六百三十億円(同三兆四千五百七十九億円)、原材料・貯蔵品が△八百四十八億円(一千五百六十三億円)となった。
 また、在庫率は一一・一%であり、前期(八・九%)を二・二ポイント上回り、前年同期(一一・四%)を〇・三ポイント下回った。
 在庫率は、季節的要因により変動(四〜六、十〜十二月期は上昇する期)する傾向がみられる。

三 資金事情第7表参照

 受取手形・売掛金は二百二十三兆九百六十四億円で、増加率は△〇・五%(前期△一・〇%)、支払手形・買掛金は百九十三兆七千七十八億円で、増加率は〇・八%(同△〇・二%)となった。
 借入金をみると、短期借入金は二百二十五兆四千四百九十八億円で、増加率は九・二%(同△九・一%)、長期借入金は二百七十三兆五千十三億円で、増加率は△〇・五%(同△三・五%)となった。
 現金・預金は百十八兆六千七百三十五億円で、増加率は〇・七%(同△一一・八%)、有価証券は四十一兆九千五百二十六億円で、増加率は五・〇%(同△五・六%)となった。
 また、手元流動性は一二・七%であり、前期(一〇・二%)を二・五ポイント上回り、前年同期(一二・五%)を〇・二%上回った。

四 自己資本比率第8表参照

 自己資本比率は二一・二%で、前年同期(二一・五%)を〇・三ポイント下回った。
 自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二九・一%で、前年同期(二八・三%)を〇・八ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は一五・〇%で、前年同期(一四・四%)を〇・六ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一四・二%で、前年同期(一五・八%)を一・六ポイント下回った。

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 なお、次回の調査は平成九年七〜九月期について実施し、法人からの調査票の提出期限は平成九年十一月十日、結果の公表は平成九年十二月中旬の予定である。





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消費支出(全世帯)は実質〇.五%の減少


―平成九年八月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計
 全世帯の消費支出は、平成九年三月に消費税率引上げを控えた駆け込み需要もあって大幅な実質増加となった。四月には前月の反動による需要の低下がみられたこともあって実質減少となり、五月、六月も引き続き実質減少となった後、七月は実質増加となったが、八月は実質減少となった(第1図第2図第1表参照)。
◇勤労者世帯の家計
 勤労者世帯の実収入は、平成八年八月以降十か月連続の実質増加となった後、九年六月は実質減少、七月は大幅な実質増加となり、八月は実質減少となった。
 消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加となったが、八月は実質減少となった(第1図第2表参照)。
◇勤労者以外の世帯の家計
 勤労者以外の世帯の消費支出は二十九万一千六百八十四円で、名目一・四%の増加、実質〇・七%の減少
◇財・サービス区分別の消費支出
 財(商品)は実質〇・一%の減少
  <耐久財>実質四・二%の減少
  <半耐久財>実質四・一%の減少
  <非耐久財>実質一・六%の増加
 サービスは実質二・四%の減少





 
    <11月26日号の主な予定>
 
 ▽総務庁年次報告書のあらまし……総 務 庁 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



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