官報資料版 平成1126





総務庁年次報告書のあらまし


総 務 庁


 総務庁では、行政改革や総務庁の施策の動向を明らかにし、国民の理解と協力を得るため、昭和六十年から年次報告書を毎年刊行している。その十三回目に当たる平成九年版の報告書を十月三十一日の閣議で配布の上、公表した。
 報告書は、トピックス、第1部、第2部、第3部及び資料編の五つの部分から構成されている。
 トピックスでは、行政改革や総務庁の施策のうち、この一年の主な話題十七項目を、写真や図表を入れてビジュアルにまとめている。
 第1部では、「戦後の行政の再点検と今後の行政の展望」というテーマで特集を組み、戦後五十年余りの間、行政が社会経済情勢の変化にどのように対応してきたか、また、今後の行政の在り方について概観している。
 第2部の「行政改革の推進」では、内閣総理大臣により六つの改革の一つと位置づけられた行政改革について記述している。
 第3部の「総務庁の多様な施策の推進」では、総務庁の行っている様々な施策について記述している。
 資料編には、行政改革や総務庁の施策に関係する最近の閣議決定、調査結果等を収録した。
 以下、その概要を紹介する。

≪トピックス≫(〔 〕は副題)

○今世紀中に思い切った行政改革を実施(トピックス参照)〔行政改革プログラムの決定〕
○中央省庁の再編〔行政改革会議の活動〕
○特殊法人のディスクロージャーの推進〔行政監察機能の発揮〕
○市民にとって望ましい行政苦情救済制度を目指して〔行政苦情救済・オンブズマン 大阪フォーラムの開催〕
○新たな人事管理システムの構築を目指して〔公務員制度調査会の発足〕
○規制緩和、情報公開、官民活動分担の見直しの推進〔行政改革委員会の意見の提出〕
○政治的リーダーシップの発揮〔規制緩和推進計画の再改定〕
○地方分権推進委員会の勧告〔地方分権推進の動向〕
○研究活動の活性化のために〔一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律の制定〕
○統計で働く姿を見つめよう〔平成九年十月一日 就業構造基本調査の実施〕
○私の街 あなたの街 くらべてみよう 全国の物価〔平成九年十一月二十日 全国物価統計調査の実施〕
○高度情報通信社会に向けた青少年育成の方向〔第十四期青少年問題審議会意見具申〕
○非行等問題行動への取組の強化〔青少年対策推進要綱の改正等について〕
○北方領土問題を理解してもらうために〔ビデオ作成及びレーザーディスク装置設置〕
○交通事故死者数が九年ぶりに一万人を下回る〔第六次交通安全基本計画の推進〕
○パソコン画面から見る高齢社会〔高齢社会に関する情報提供〕
○同和問題の早期解決に向けた今後の方策について〔地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部改正〕

<第1部> 戦後の行政の再点検と今後の行政の展望


 我が国は今、二十一世紀を間近に控え、重大な歴史の岐路に差し掛かっている。取り分け、戦後の復興期からこれまでの間、一定の意味と役割を持っていた行政の制度・政策体系・運営の中には、社会経済情勢の変化への対応に遅れ、肥大化、硬直化して、新たな発展と適応への障害となりつつあるものも見受けられる。
 この間、社会経済情勢の変化により、新たな行政需要が幾度となく発生し、政府はその都度、それらへの対応に全力で取り組んできた。しかし、政府の役割の拡大に伴い、一方で、行政全体が膨張したり、非効率になるなどの問題も現れた。そこで、それらを政府全体の問題としてとらえ、行政全体を改革することにより総合的に対処する必要性が認識されるようになった。こうした認識は時代を経るごとにその重要性が強調されるようになり、行政改革の内容にも歴史的な積み重ねが見られた。
 第1部では、こうした行政改革の歴史的な積み重ねを重視しつつ、戦後五十年余りの行政の様々な活動について、社会経済情勢の変化の下でその時々の行政需要にどのように対応してきたかを振り返ることとする。

<第1章> 社会経済情勢の変化に伴う行政の役割の変化第1図参照

 第1章では、戦後から今日までを四つの時代区分、すなわち終戦年の一九四五年から五〇年代前半頃までの戦後復興期、五〇年代後半頃から七三年までの高度成長期、七四年から八〇年代前半頃までの安定成長期、そして八〇年代後半頃から始まる新たな環境の変化の時代ごとに、社会経済情勢の変化の下で、その時々の行政需要にどのように対応してきたかを振り返ることとする。

<第1節> 戦後復興期

 終戦直後の我が国は、政治、経済、社会等のあらゆる面において極めて急激かつ大幅な改革を相次いで実施し、行政内部においても、新しい諸制度を早急に軌道に乗せた。行政改革の面では、行政整理により行政組織の規模の圧縮が進展した時期でもあった。
 政府はポツダム宣言の受諾後、日本国憲法の制定等を通じて徹底した民主主義体制を確立した。行政制度及び機構についても、日本国憲法の趣旨に沿って、内務省の廃止、公正取引委員会等の設置等の民主的な改革が次々と行われた。
 しかし、こうした戦後の改革は、行政改革とはいえ、敗戦による統治構造の変化を含む社会経済の激しい変化に伴うものであって、特に連合国による占領下ではGHQ(連合国軍総司令部)の強い指導によるものであり、民主的な時代における現代の行政改革とは異なるものであった。

<第2節> 高度成長期

 我が国では、一九五〇年に勃発した朝鮮戦争を契機として経済の急激な発展が始まり、五〇年代後半頃からいわゆる高度成長の段階に入ると、経済の自立と社会福祉の実現を目指して、行政の重点に大きな変化が見られるようになった。
 このような情勢の下に、この時代の行政改革は、行政組織の規模の圧縮のみでなく、行政組織、運営の改善に着目し、能率的な行政機構の編成、行政事務の管理の改革に重点を向けようとした点にこの時代の特色が現れている。
 一九六一年には、行政を改善し、行政の国民に対する奉仕の向上を図るため、行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度及び行政運営の改善に関する基本事項を調査審議することを目的とした臨時行政調査会(第一次臨調)が設置された。六七年には、一省庁一局削減が閣議決定された。

<第3節> 安定成長期

 その後、石油危機の到来とともに高度成長期が終焉した。このような経済成長の鈍化という背景事情の下で、高度成長期に経済の成長と国民の豊かさを実現するために行われた諸制度の改善、行政機構の拡大等が、人口の高齢化の進展ともあいまって、財政危機を招く一因となった。
 こうした中で、財政再建という難問に対しては行政の守備範囲の見直しが不可欠であり、国の施策の必要性について既存の制度・施策の根本に立ち返った検討が行われた。
 一九八一年には、国の財政の硬直化、破綻に対して、行政改革による徹底した歳出削減努力が必要だという強い認識が生まれ、第二次臨時行政調査会(第二次臨調)が設置されることとなった。

<第4節> 新たな環境への適応

 高度成長期、安定成長期を経て一九八〇年代後半には、我が国は世界のトップレベルの経済力を備えるに至った。同時に、人口の高齢化、国民の意識・価値観の多様化、情報化、国際化が急速に進展し、我が国の社会経済をめぐる環境は大きく変化した。そのような中で起こったバブルの発生と崩壊は、我が国社会経済に内在する構造的な諸問題を一挙に顕在化させることになった。
 このような変化の下、行政には、公正さと透明性が強く要請されるようになった。また、社会経済の抜本的改革の必要性が強く認識されるようになり、行政に対し二十一世紀にふさわしい新たな社会経済システムの創造を目指して、改革を推進する役割とそれ自身の改革が求められるようになった。
 このような観点から、行政改革は、国民一人一人が将来に夢や目標を抱き、創造性とチャレンジ精神を存分に発揮でき、世界の人々と分かち合える価値を作り出すことのできる社会を創造するため、財政構造改革、経済構造改革、金融システム改革、社会保障構造改革、教育改革とともに六つの改革の一つとして進められている。

<第2章> 社会経済情勢を踏まえた今後の行政の展望第2図参照

 第2章では、第1章の歴史的経緯と今後の社会経済情勢の流れを踏まえつつ、今後の行政の在り方について概観する。

1 自主性・自立性の尊重
 戦後五十年余りが経過して、民間の創造力と活力が向上し、消費者も生産者も経済的基盤とともに豊富な知識や判断力を備えてきている。一方、ポスト・キャッチアップの時代に入る中で、社会経済における基本的ニーズのかなりの部分が充足され、行政は目指すべき方向を容易に知る方法がなくなっている。また、民間の創造力・活力が向上したこと、世界的な規模での競争が行われるようになったこと等により、市場原理が機能する環境が整い始めている。
 このようなことから、今後は、個人、地域等の選択と責任に比重を置いた多様で創造的な社会経済システムへ向けて、社会経済の各分野にわたる制度や仕組みの変革が進められなければならない。このためには、「官から民へ」「国から地方へ」という理念に基づく改革を一層加速し、行政の担うべき分野や事業を厳密に選別していくことが急務である。

2 国民本位
 民主主義社会においては、主権は国民にあり、行政は国民からの負託に基づいて、市場の失敗を補完するために活動を代行する存在である。しかし、行政機関の場合、質の高いサービスの提供によって自らの利潤や報酬を高めようという意欲が発生しにくいこと等のため、負託者である国民のコントロールが有効に機能しないおそれがある。これを回避するには、行政活動の運営に当たって、それが公共サービスを利用する人々のために行われるべきものであり、利用者である国民の最終的な判断にゆだねられるという原則に立つべきである。

3 説明責任の徹底と評価の充実
 国民の行政への参加意識の高揚に伴い、透明で公正な行政への要請が強まり、国民から政策決定の根拠やプロセスの説明を求められるようになる。また、政策執行についても、その結果を一層厳しく問われることになる。
 したがって、今後、行政を推進するに当たっては、アカウンタビリティ(説明責任)を徹底し、行政は、国民に対して、事前・事後の両面で、その活動の内容や行政が関与する理由を説明する責任を負っていることを強く認識する必要がある。

4 国際的視点の重視
 人類の将来には、地球規模の諸課題として、人口・安全・環境・エネルギー・食糧・貧困・難民・人権等にかかわる諸問題が存在しており、我が国に対して、国際的地位の向上に応じた責務を主体的かつ積極的に果たしていくことの期待が高まっている。
 また、このような問題に対応するため、各国の政策分野間を横断する国際的な共通ルールの重要性が高まっている。

<第2部> 行政改革の推進


<第1章> 行政改革総論

1 行政を取り巻く環境と行政改革の必要性
 急速な少子化・高齢化、危機的な財政の状況、国際的な大競争時代への突入、不祥事の発生による信頼の失墜など、行政を取り巻く環境は極めて厳しい状況にある。
 二十一世紀の到来を目前に控えた今日、二十一世紀に求められる行政の機能を問い直した上で、それにふさわしい国民本位の行政体制をつくるために行政改革を行う必要が従来以上に高まっている。二十一世紀に向けて再び活力ある社会を作るとともに、国際社会の一員としての主体的役割を積極的に果たしていくため、改革は待ったなしの段階に至っている。

2 六つの改革における行政改革の位置づけ
 内閣は、行政改革、経済構造改革、金融システム改革、社会保障構造改革、財政構造改革、教育改革の六つの改革を内閣の最重要課題として位置づけている。中でも行政改革は、対象のスコープが広く、これを進めることが他の改革の促進につながる面もあることから、他の五つの改革と密接不可分の関係にあるといえる。また、変革と創造を実現するという内閣の政策スローガンを実現するためには、政府自らの改革を率先して行うことが不可欠であり、その意味で真っ先に取り組まなければならないものである。

3 行政改革プログラムの決定
 政府は、行政を取り巻く環境、最重要課題としての行政改革の位置づけを踏まえ、行政改革を進めていくための基本方針として、平成八年十二月二十五日に、対象期間を原則今世紀中とする「行政改革プログラム」を閣議決定した。

4 現在進められている行政改革の特徴
 現在の行政改革で取り組んでいる課題は、@「中央省庁の再編」、A根本的な発想の転換による「規制緩和の推進」、B「地方分権の推進」等、これまでの行政改革の中では必ずしも十分な取組が行われなかった行政システムの基本・根幹に当たる事項を多く含んでいる。
 また、昨年十一月、総理を会長とし、行政改革担当大臣・総務庁長官を会長代理とする「行政改革会議」が発足した。政府は、行政改革を計画的に進めるため、行政改革プログラムの策定、規制緩和推進計画の再改定にみられるように、行政改革の諸課題についてタイムスケジュールを明示して推進している。

<第2章> 新時代に対応できる簡素で効率的な行政の実現

<中央省庁改革>
 中央省庁の再編については、平成八年十月三十一日に与党三党でまとめられた「新しい政権に向けての三党政策合意」において、「総理の強力なリーダーシップのもと、民間人を中心とした総理直属機関を設置し、省庁の機能別再編・統合」を行い、「総理直属機関設置後、一年以内に成案を得る。直ちに法案化作業に入り、十年の通常国会に提出し成立を期す」こととされた。これを受け政府は、八年十一月二十一日に、「行政改革会議」を発足させた。
 行政改革会議は、@二十一世紀における国家機能の在り方、それを踏まえたA中央省庁の再編の在り方及びB官邸の機能強化策という三つの課題について検討し、発足後一年以内に成案を得ることとして精力的な審議を行っている。
 政府としては、平成十年の通常国会に所要の法案を提出し、成立を期すとともに、法案成立後、関係法律の整備など新体制への移行に必要な準備を行い、遅くとも五年以内、できれば二〇〇一年一月一日に新体制への移行を開始することとしている。
<行政組織等の合理化等>
 行政機構については、従来から既存の機構の簡素効率化に努めるとともに、その新設に当たっても、スクラップ・アンド・ビルドの原則等により膨張抑制の方針を堅持しており、平成九年度には、厚生省医薬安全局の設置(薬務局の廃止)などを行った。
 また、国家公務員の定員については、総定員法とその下における定員削減計画の実施及び各年度の増員要求・審査を通じて、社会経済情勢の変化に伴い行政需要が複雑多様化している中で、政府全体としての定員の縮減を図ってきた。
 平成九年度においても、第九次定員削減計画に基づいて定員削減を実施する等により、二千二百十九人の縮減措置を講ずることとしている。
<特殊法人等の整理合理化>
 特殊法人については、平成七年に、政府は、十六の法人を八法人に統合し、五法人を廃止、民営化する閣議決定を行った。第百三十六回及び第百四十回国会には統廃合等の対象二十一法人のうち十五法人の統廃合、民営化等について各々法律案を提出し、すべて成立している。
 さらに、平成九年五月二十八日、与党から政府に対し、十一法人について廃止を含めた整理合理化方針の申入れが行われ、政府はこれを受け、同年六月六日に「特殊法人等の整理合理化について」の閣議決定を行った。
 これに続き、平成九年九月十日には、いわゆる政策金融機関の整理合理化についての与党合意がなされ、政府はこれを受け、同月二十四日に「特殊法人等の整理合理化について」の閣議決定を行った。
<行政監察・行政相談の展開>
(行政監察の役割)
 行政監察は、政府部内の自己改善機能として、国の行政全般について業務の実態と問題点を調査し、改善方策を関係行政機関に勧告するものである。行政に大きな変革が求められる中、行政の制度・運営の評価・改善機能を担う行政監察機能を最大限に発揮するとともに、その機能のより一層の充実・強化を図ることにより、「国民の立場に立った行政の具体的改革・改善」を推進していくことが重要である。
(中央計画監察等)
 総務庁では、政府の重要行政課題の解決の促進等を図るため、中期行政監察等、予定テーマを策定し、計画的に監察を行ってきたところであるが、平成九年度からは、「行政改革プログラム」に基づき新たに行政監察プログラム(九年度〜十一年度)を策定し、@現業、特殊法人等の事業見直し・経営合理化及び公益法人の運営適正化、A歳出削減、経費の効率的使用の観点からの各種施策・事業の見直しに重点を置いて計画的に監察を実施することとしている。
(行政相談の展開)
 総務庁では、国の行政全般について苦情や意見・要望を受け付け、公正・中立な立場から必要なあっせんを行い、その解決や実現の促進を図るとともに、それらを行政の制度及び運営の改善に反映させることを目的として行政相談を行っている。
 平成八年度における行政苦情事案等の処理件数は約四万四千件となっており、分野別にみると道路、交通安全、環境衛生などを始めとして国の行政全般に広く及んでいる。
<人事管理>
(人事管理システムの見直し)
 社会経済の一層の複雑化・高度化、勤労者の就業意識の変化、民間部門における人事管理の見直し等が進む中、公務員制度についても新時代に対応する改革を積極的に進める必要がある。
 このような観点から、総務庁では、国民の信頼を確保しつつ、行政の総合性の確保、公務の活性化、職務の専門性の強化等の諸課題に応えうる人事管理システムを構築するため、現行の国家公務員に関する制度とその運用の在り方について全般的な見直しを行うことを目的として、平成九年四月に公務員制度調査会を設置した。
 同調査会では、これからの時代に対応した人事管理システムの構築に向けて幅広い検討が行われているところであり、今後の人事管理システムの在り方の基本的方向について平成十年度中に答申を行う予定である。

<第3章> 国民の主体性が生かされる行政の実現

<規制緩和の推進>
 規制緩和は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていくために、積極的に推進していかなければならない重要な課題である。
(規制緩和推進計画の再改定)
 政府は、平成七年に閣議決定を行った「規制緩和推進計画」に基づき、八年三月二十九日に一回目の改定を、また、九年三月二十八日に二回目の改定を行った。
 再改定計画は、@経済的規制については原則自由、社会的規制については必要最小限、A事前規制型の行政から事後チェック型の行政に転換という基本的な考え方の下に、十二分野二千八百二十三事項の措置を盛り込んでいる。
<地方分権の推進>
 国と地方公共団体は、連携して国全体としての行政を遂行しており、行政改革を推進するに当たっては、国・地方を通ずる行政が最も合理的かつ効率的に機能するよう、国と地方の機能分担等の在り方を見直すことが極めて重要である。
 地方分権推進委員会は、平成八年十二月二十日に、機関委任事務制度の廃止を中心とする第一次勧告等を、九年七月八日に、機関委任事務制度の廃止に伴う事務の区分と国の関与の在り方等についての第二次勧告を、同年九月二日に、地方事務官制度に関連する事務等についての第三次勧告を、同年十月九日には、国の関与の基準と従前の団体(委任)事務の取扱い等についての第四次勧告を内閣総理大臣に提出した。
 政府としては、これらの勧告を受け、平成十年の通常国会が終了するまでのできるだけ早い時期に地方分権推進計画を作成し、地方分権を総合的かつ計画的に推進することとしている。

<第4章> 国民に開かれた信頼される行政の実現

<情報公開の推進等>
(情報公開法制の確立に向けて)
 行政情報公開の推進は、国民に開かれた信頼される行政を実現するための政府の重要な課題である。政府は、行政情報公開制度についての本格的な調査審議を行政改革委員会において行うこととし、同委員会は、平成八年十二月十六日、内閣総理大臣に「情報公開法制の確立に関する意見」を提出した。
 政府は、この意見具申を受けて、「行政改革プログラム」において、「行政改革委員会意見を最大限に尊重し、できる限り早期に法律案をまとめるべく作業を進め、平成九年度内に所要の法律案の国会提出を図る」ことを決定した。総務庁は、この決定を受け、直ちに、情報公開法制定準備室を設け、立案作業に着手し、現在、条文化の作業、行政情報の公開・非公開を定めている既存法律との調整や情報公開に対応した政府全体の文書管理の在り方等についての調査・検討に取り組んでいるところである。
(特殊法人のディスクロージャー)
 特殊法人のディスクロージャー(財務内容等の公開)は、業務内容や財政基盤の両面にわたって公共性を有する特殊法人の事業活動に対する国民の理解を深め、信頼の確保を図るためにも重要な課題である。
 行政監察結果に基づく勧告(平成八年十二月二十四日)に沿って、「行政改革プログラム」において@特殊法人の財務内容等に関する書類の作成・公開の推進のための法案を提出すること、A事業報告書及び附属説明書類に記載すべき事項や財務諸表等の開示期間を最低五年間とすることが閣議決定され(八年十二月二十五日)、第百四十回国会に「特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律案」が提出され、九年六月二十四日に公布・施行された。
<行政及び公務員に対する信頼回復>
 官庁綱紀の厳正な保持は、行政の公正な執行を確保し、行政及び公務員に対する国民の信頼を維持する上で最も基本となるものである。平成八年においては、行政の責任ある地位を占める者の不祥事により、行政及び公務員に対する信頼が損なわれたことを厳しく受け止め、同年十二月十九日の事務次官等会議において、「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」の申合せを行い、各省庁は、これに基づき、公務員倫理規程を制定した。
 また、退職手当について、同手当を支給する前に、その者の在職期間中の行為について犯罪があると思料するに至った場合等に、その支給を一時差し止めることができる制度を新設するとともに、期末・勤勉手当についてもほぼ同様の一時差止め・不支給制度を新設することを内容とする国家公務員退職手当法等の一部を改正する法案を国会に提出し、同法は平成九年六月四日に公布され、同年七月一日より施行された。

<第5章> 国民に対する質の高い行政サービスの実現

<申請等に伴う国民負担の軽減>
 政府は、自由民主党行政改革推進本部の申入れを受けて、平成九年二月に「申請負担軽減対策」を決定し、「今世紀中に申請・届出などの行政手続に伴う国民の負担感を半減する」との目標を掲げ、順次重点実施事項を定め、許認可有効期間の倍加・延長、行政庁への申請・届出に求めている「認印」の在り方の見直し等、対策の具体化を推進している。
<行政の情報化>
(行政情報化の総合的・計画的推進)
 行政の情報化は、行政のあらゆる分野への情報通信技術の普遍的な活用とこれに併せた旧来の制度慣行の見直しにより、国民サービスの飛躍的向上と行政運営の質的向上を図るものである。
 政府は、このような観点から、平成六年十二月に「行政情報化推進基本計画」を閣議決定し、行政の情報化を総合的・計画的に推進している。行政の情報化をより一層強力に推進するため、九年七月に「行政情報化推進基本計画改定の基本的な考え方」を取りまとめ、基本計画を九年末を目途に改定することとしている。

<第3部> 総務庁の多様な施策の推進


<第1章> 人事行政の推進

<人事管理運営方針の策定等>
 総務庁では、各省庁等の人事担当課長からなる人事管理官会議などを主宰して、各省庁等との間で緊密な連絡・協力を図るとともに、各省庁の人事管理の統一的な指針となる人事管理運営方針を毎年度策定するなど、人事管理に関する総合調整を行っている。
 平成九年度の人事管理運営方針においては、特に、@昨今の不祥事を踏まえ国民の信頼回復に向けた取組を強く求めるとともに、新たに、A行政をめぐる諸環境の変化に対応した人事管理システムの在り方全般の検討、B国と地方公共団体の人事交流に関する留意事項(ポストの長期固定化に伴う弊害の防止等)について記述している。

<第2章> 恩給行政の推進

<恩給の種類及び受給者数の現況>
 恩給の種類は、本人又は遺族に対して支給される年金恩給及び一時恩給、傷病賜金等の一時金に大別される。
 平成八年度予算における年金恩給の受給者数は約百七十二万人であり、これに係る恩給費の総額は一兆五千三百八十二億円となっている。また、九年度予算における年金恩給の受給者数は約百六十七万人であり、これに係る恩給費の総額は一兆四千八百九億円となっている。

<第3章> 統計行政の推進

<統計行政の新中・長期構想の推進等>
 平成七年三月十日、統計審議会は、総務庁長官に対して、国際化・情報化の進展など社会・経済の大きな変化に統計行政が的確に対応していくための統計行政全般にわたる具体的な指針を示した「統計行政の新中・長期構想」を答申した。
 政府は、同答申の着実な推進を図るため、同年四月に、関係省庁による「統計行政の新中・長期構想推進協議会」を設置し、政府一体となって同構想の推進を図っている。
<平成八年度に実施した主な統計調査>
 総務庁では、国勢調査等の周期調査及び労働力調査等の経常調査の指定統計調査並びに数種類の届出統計調査及び承認統計調査を実施している。

<第4章> 青少年対策の推進

<ビジョンの提示と連携の確保>
 内閣総理大臣の諮問機関である青少年問題審議会は、青少年の健全育成に関する基本的かつ総合的な施策に関する事項について調査審議を重ね、種々の事項について答申及び意見具申を行ってきている。
 平成九年七月二十八日には、第十五期青少年問題審議会が発足し、内閣総理大臣からの「青少年の問題行動への対策を中心とした西暦二〇〇〇年に向けての青少年の育成方策について」の諮問を受け、審議を開始した。
 また、青少年行政を分担して推進している関係省庁とも緊密な連携の下に青少年対策を総合的かつ効果的に推進するため、総務庁では青少年対策推進会議を設置している。

<第5章> 北方領土問題対策の推進

<北方四島との交流>
 旅券・査証なしの相互訪問による北方四島との交流については、平成八年度には、日本側からは、北海道を中心とした訪問団が五回、二百三十四人、また、北方四島交流推進全国会議を中心とした訪問団が三回、百四十人、北海道と北方四島交流推進全国会議の共催で行った青少年の訪問団が一回、四十八人の計九回、四百二十二人が北方四島を訪問した。北方四島側からは、七回、四百二十人の訪問団が北海道根室市や秋田県、和歌山市等を訪問し、相互理解の増進に成果を上げた。

<第6章> 交通安全対策の推進

<交通安全施策の調整・推進>
 平成八年三月十二日に中央交通安全対策会議において、八年度から十二年度までの五年間において国と地方公共団体の講ずべき施策の基本方針を定めた第六次交通安全基本計画が決定された。交通安全基本計画に基づき、国の関係行政機関では、毎年度、その年度において講ずべき施策を定めた交通安全業務計画を作成し、実施している。
 また、地方公共団体においても、それぞれの区域内における長期的計画及び年度ごとの計画を作成し実施している。

<第7章> 高齢社会対策の推進

<高齢社会対策の推進体制>
 平成七年十一月八日、高齢社会対策基本法が成立した。基本法は「公正で活力ある、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される、豊かな社会の構築」を基本理念として明らかにしている。これを受け、八年七月五日に「高齢社会対策大綱」が閣議決定された。今後は、同大綱に基づき、社会全体が支え合う体制の下で、施策の一層の重点化、効率化等を図りつつ、積極的に高齢社会対策に取り組むこととしている。

<第8章> 地域改善対策の推進

<平成九年経過措置法の制定と今後の取組>
 平成九年経過措置法は、地域改善対策協議会の「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」の意見具申(平成八年五月十七日)を尊重するとともに、八年七月二十六日の「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」の閣議決定に基づいて、これまでの特別対策は九年三月末をもって終了することを基本としつつ、今後五年間に限って一般対策への円滑な移行のための必要最小限の経過措置を講ずるものとして第百四十回国会において成立し、九年三月三十一日に公布され、即日施行された。
 政府としては、今後とも地域改善対策協議会意見具申を基本的な指針としつつ、平成九年経過措置法及び閣議決定に基づき、地域改善対策特定事業の一般対策への円滑な移行や適正化対策等の一層の推進を図ることとしている。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成九年八月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成九年八月分結果の主な特徴点は、次のとおりである。
◇賃金の動き
 八月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十二万四千五百六十八円、前年同月比〇・四%減(規模三十人以上では三十五万六百二十円、前年同月比〇・八%減)であった。
 現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万七千九百十六円、前年同月比一・四%増(同三十一万六千百八十六円、一・五%増)であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万九千百六十五円、前年同月比一・二%増(同二十九万一千三十一円、一・三%増)で、所定外給与は一万八千七百五十一円、前年同月比三・〇%増(同二万五千百五十五円、三・八%増)となっている。
 また、特別に支払われた給与は三万六千六百五十二円、前年同月比一二・三%減(同三万四千四百三十四円、一七・八%減)となっている。
 実質賃金は、二・五%減(同二・九%減)であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、不動産業二・七%増(同二・三%増)、製造業二・三%増(同二・三%増)、サービス業一・九%増(同一・九%増)、卸売・小売業、飲食店一・五%増(同二・九%増)、金融・保険業〇・三%増(同〇・七%減)、電気・ガス・熱供給・水道業〇・二%増(同一・三%増)、建設業〇・一%減(同〇・四%減)、運輸・通信業〇・三%減(同〇・六%減)、鉱業一・二%減(同〇・三%減)であった。
◇労働時間の動き
 八月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一四九・八時間で、 前年同月比二・一%減 (規模三十人以上では一五一・〇時間、 前年同月比一・九%減) であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四〇・〇時間、前年同月比二・三%減(同一三九・二時間、二・二%減)、所定外労働時間は九・八時間、前年同月比一・一%増(同一一・八時間、二・六%増)、季節変動調整済の前月比は〇・三%減(同〇・六%減)であった。
 製造業の所定外労働時間は一三・二時間で、前年同月比四・七%増(同一五・〇時間、四・九%増)、季節変動調整済の前月比は一・二%減(同一・七%減)であった。
◇雇用の動き
 八月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・九%増(規模三十人以上では前年と同水準)、季節変動調整済の前月比は前月と同水準(同前月と同水準)、常用労働者のうち一般労働者では〇・三%増(同〇・四%減)、パートタイム労働者では四・三%増 (同三・一%増) であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、建設業三・六%増(同〇・六%減)、サービス業二・一%増(同一・三%増)、不動産業一・三%増(同〇・三%増)、運輸・通信業一・〇%増(同〇・六%増)、卸売・小売業、飲食店〇・五%増(同〇・一%減)と、これらの産業は前年を上回っているが、製造業〇・四%減(同〇・七%減)、電気・ガス・熱供給・水道業〇・五%減(同〇・九%減)、金融・保険業三・四%減(同四・一%減)、鉱業四・七%減(同一五・三%減)と、前年同月を下回った。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・一%減(同一・三%減)、パートタイム労働者五・二%増(同七・一%増)、卸売・小売業、飲食店では一般労働者〇・一%増(同〇・六%増)、パートタイム労働者一・六%増(同二・一%減)、サービス業では一般労働者一・四%増(同〇・八%増)、パートタイム労働者六・三%増(同四・四%増)となっている。







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消費者物価指数の動向


―東京都区部(八月中旬速報値)・全国(七月)―


総 務 庁


◇八月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・四となり、前月と同水準。前年同月比は五月一・四%の上昇、六月一・八%の上昇、七月一・四%の上昇と推移した後、八月は一・六%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・五となり、前月と同水準。前年同月比は五月から七月までそれぞれ一・六%の上昇で推移した後、八月は一・八%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・二となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  生鮮魚介は一〇・八%の上昇。
   <値上がり>さんま、いかなど
   <値下がり>さけ、さば
  生鮮野菜は三・二%の下落。
   <値上がり>さやえんどう、レタスなど
   <値下がり>キャベツ、きゅうりなど
  生鮮果物は四・三%の下落。
   <値上がり>グレープフルーツ、レモンなど
   <値下がり>ぶどう(デラウェア)、ももなど
(2) 家具・家事用品は九六・二となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  家事用消耗品は二・二%の下落。
   <値下がり>ティシュペーパーなど
(3) 被服及び履物は九九・〇となり、前月に比べ二・四%の下落。
  衣料は三・五%の下落。
   <値下がり>スーツ(夏物)など
(4) 教養娯楽は一〇一・三となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  教養娯楽サービスは〇・六%の上昇。
   <値上がり>宿泊料など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 外食(三・九%上昇)、家賃(〇・八%上昇)、教養娯楽サービス(二・九%上昇)、生鮮魚介(五・五%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮果物(七・一%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・五となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・七となり、前月に比べ〇・二%の上昇となった。

◇七月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・〇となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は四月一・九%の上昇、五月一・九%の上昇、六月二・二%の上昇と推移した後、七月は一・九%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月比は〇・二%の下落。前年同月比は四月二・〇%の上昇、五月二・一%の上昇、六月二・〇%の上昇と推移した後、七月は二・〇%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・〇となり、前月に比べ〇・七%の下落。
  生鮮魚介は〇・八%の下落。
   <値上がり>かれい、あじなど
   <値下がり>いか、かつおなど
  生鮮野菜は五・八%の下落。
   <値上がり>にんじん、ほうれんそうなど
   <値下がり>レタス、なすなど
  生鮮果物は五・四%の下落。
   <値上がり>レモン、グレープフルーツ
   <値下がり>すいか、ぶどう(デラウェア)など
(2) 光熱・水道は一〇五・七となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  電気・ガス代は〇・六%の上昇。
   <値上がり>都市ガス代など
(3) 被服及び履物は一〇二・四となり、前月に比べ三・〇%の下落。
  衣料は三・五%の下落。
   <値下がり>スーツ(夏物)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 家賃(一・五%上昇)、外食(三・三%上昇)、教養娯楽サービス(三・二%上昇)、肉類(五・三%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮野菜(五・五%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・三となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。









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八月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成九年八月分結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成九年八月の十五歳以上人口は、一億六百六十六万人(男子:五千百八十三万人、女子:五千四百八十三万人)となっている。
 これを就業状態別にみると、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百二十一万人、非労働力人口は三千八百二十九万人で、前年同月に比べそれぞれ五十五万人(〇・八%)増、二十七万人(〇・七%)増となっている。
 また、労働力人口のうち、就業者は六千五百九十万人、完全失業者は二百三十一万人で、前年同月に比べそれぞれ四十八万人(〇・七%)増、七万人(三・一%)増となっている。

◇就業者

 (一) 就業者
 就業者数は六千五百九十万人で、前年同月に比べ四十八万人(〇・七%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(六十万人増)に比べ縮小している。男女別にみると、男子は三千九百一万人、女子は二千六百八十九万人で、前年同月と比べると、男子は十万人(〇・三%)の増加、女子は三十八万人(一・四%)の増加となっている。
 (二) 従業上の地位
 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百七十七万人、自営業主は七百九十二万人、家族従業者は四百三万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は四十七万人(〇・九%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(七十一万人増)に比べ縮小している。また、自営業主は二万人(〇・三%)の減少、家族従業者は二万人(〇・五%)の増加となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百四十二万人で、四十九万人(〇・九%)増加
○常 雇…四千七百五十一万人で、十一万人(〇・二%)増加
○臨時雇…四百七十二万人で、三十一万人(七・〇%)増加
○日 雇…百十九万人で、七万人(六・三%)増加
 (三) 産 業
 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百六十六万人で、二万人(〇・五%)減少
○建設業…七百万人で、十九万人(二・八%)増加
○製造業…一千四百三十五万人で、十七万人(一・二%)減少
○運輸・通信業…四百十五万人で、八万人(二・〇%)増加
○卸売・小売業、飲食店…一千四百六十四万人で、四万人(〇・三%)減少
○サービス業…一千六百四十五万人で、四十八万人(三・〇%)増加
 対前年同月増減をみると、建設業及びサービス業は前月(それぞれ二十八万人増、七十三万人増)に比べ増加幅が縮小している。運輸・通信業は三月以来五か月ぶりに増加となっている。一方、製造業及び「卸売・小売業、飲食店」は前月(それぞれ二十万人減、八万人減)に比べ減少幅が縮小している。
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百七十三万人で、十一万人(二・〇%)増加
○製造業…一千三百一万人で、十五万人(一・一%)減少
○運輸・通信業…三百九十三万人で、八万人(二・一%)増加
○卸売・小売業、飲食店…一千百五十八万人で、七万人(〇・六%)減少
○サービス業…一千四百六万人で、六十万人(四・五%)増加
 対前年同月増減をみると、建設業及びサービス業は前月(それぞれ二十五万人増、七十三万人増)に比べ増加幅が縮小している。運輸・通信業は六か月ぶりに増加となっている。一方、「卸売・小売業、飲食店」は前月(九万人減)に比べ減少幅が縮小している。製造業は前月(十二万人減)に比べ減少幅が拡大している。
 (四) 従業者階級
 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百六十六万人で、九万人(〇・五%)増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百七十七万人で、四十二万人(二・四%)増加
○五百人以上規模…一千二百五十万人で、十四万人(一・一%)減少
 (五) 就業時間
 非農林業の従業者(就業者から休業者を除いた者)一人当たりの平均週間就業時間は四三・一時間で、前年同月に比べ〇・三時間の減少となっている。
 このうち、非農林業雇用者についてみると、男子は四七・一時間、女子は三六・九時間で、前年同月に比べ男子は〇・二時間の減少、女子は〇・四時間の減少となっている。
 また、非農林業の従業者の総投下労働量は、延べ週間就業時間(平均週間就業時間×従業者総数)で二六・二六億時間となっており、前年同月に比べ〇・〇六億時間(〇・二%)の増加となっている。
 (六) 転職希望者
 就業者(六千五百九十万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は五百六十五万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百十八万人となっており、前年同月に比べそれぞれ二十二万人(四・一%)増、十万人(四・八%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)をみると、男子は八・四%、女子は八・八%で、前年同月に比べ男子は〇・二ポイントの上昇、女子は〇・四ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

 (一) 完全失業者数
 完全失業者数は二百三十一万人で、前年同月に比べ七万人(三・一%)の増加となっている。男女別にみると、男子は百三十七万人、女子は九十四万人で、前年同月に比べ男子は二万人(一・五%)の増加、女子は六万人(六・八%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…五十四万人で、十万人減少
○自発的な離職による者…百三万人で、十六万人増加
○学卒未就職者…十二万人で、二万人増加
○その他の者…五十三万人で、一万人増加
 (二) 完全失業率(原数値)
 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は三・四%で、前年同月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男女共に三・四%で、前年同月に比べ男子は同率、女子は〇・二ポイントの上昇となっている。
 また、年齢階級別完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
〔男女計〕
○十五〜二十四歳……六・三%で、〇・三ポイント上昇
○二十五〜三十四歳…四・四%で、〇・七ポイント上昇
○三十五〜四十四歳…二・六%で、〇・一ポイント上昇
○四十五〜五十四歳…一・九%で、〇・二ポイント低下
○五十五〜六十四歳…三・八%で、〇・四ポイント低下
○六十五歳以上………一・二%で、〇・一ポイント低下
〔男 子〕
○十五〜二十四歳……六・八%で、〇・四ポイント上昇
○二十五〜三十四歳…三・七%で、〇・五ポイント上昇
○三十五〜四十四歳…二・三%で、〇・一ポイント上昇
○四十五〜五十四歳…二・一%で、〇・一ポイント低下
○五十五〜六十四歳…四・七%で、〇・六ポイント低下
○六十五歳以上………一・七%で、〇・三ポイント低下
〔女 子〕
○十五〜二十四歳……六・〇%で、〇・二ポイント上昇
○二十五〜三十四歳…五・五%で、〇・六ポイント上昇
○三十五〜四十四歳…三・一%で、〇・三ポイント上昇
○四十五〜五十四歳…一・七%で、〇・三ポイント低下
○五十五〜六十四歳…二・四%で、〇・一ポイント低下
○六十五歳以上………〇・五%で、〇・五ポイント上昇
 (3) 完全失業率(季節調整値)
 季節調整値でみた完全失業率は三・四%で、前月と同率となっている。男女別にみると、男女共に三・四%で、共に前月と同率となっている。







◇     ◇     ◇



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月例経済報告(十一月報告)


経 済 企 画 庁


概 観

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減から立ち直りつつあるものの、総じて回復テンポは遅い。住宅建設は、低金利が継続するなか、消費税率引上げに伴う駆け込み需要により大きく増加した反動もあって、弱い動きとなっている。設備投資は、製造業を中心に回復傾向にある。
 産業面をみると、鉱工業生産は、一進一退で推移している。企業収益は、緩やかに改善している。また、企業の業況判断には、厳しさがみられる。
 雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。
 輸出は、強含みに推移している。輸入は、おおむね横ばいで推移している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は、おおむね百二十円台から百二十一円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、やや弱含んでいる。また、消費者物価は、安定している。なお、九月の消費者物価は、医療保険制度改正の影響等によりやや上昇した。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、十月はやや低下した。株式相場は、十月は下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、九月は前年同月比二・八%増となった。
 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、四〜六月期前期比年率三・三%増の後、七〜九月期は同三・五%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資はこのところ伸びに鈍化がみられる。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字は、このところやや拡大している。十月の長期金利(三十年物国債)は、上旬に低下し、中旬に上昇した後、下旬に再び低下した。十月の株価(ダウ平均)は、上旬は総じて上昇したが、中旬、下旬は総じて下落し、特に下旬は大幅に下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに回復しており、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している。物価は安定しているが、イギリスでは上昇率がやや高まってきている。なお、十月九日、ドイツはレポ金利を〇・三%、フランスは市場介入金利を〇・二%、それぞれ引き上げた。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。韓国では、景気は緩やかに減速している。失業率は、低下傾向である。なお、香港で株価が急落したことから、世界的にも株価は不安定な動きとなった。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや強含んで推移していたが、下旬に下落した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬弱含み、下旬は強含みの後、弱含みで推移した。十月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬やや強含むが、その後おおむね弱含みで推移した。下旬にかけてはおおむね十九ドル台での推移となった。

*     *     *

 我が国経済の最近の動向をみると、設備投資は製造業を中心に回復傾向にあり、純輸出は増加傾向にある。他方、個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減から立ち直りつつあるものの、総じて回復テンポは遅い。住宅建設は、低金利が継続するなか、消費税率引上げに伴う駆け込み需要により大きく増加した反動もあって、弱い動きとなっている。こうしたなかで、生産は一進一退で推移している。また、雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。以上のように、民間需要を中心とする景気回復の基調は失われていないものの、企業の景況感に厳しさがみられ、景気はこのところ足踏み状態にある。
 政府は、我が国経済の体質改善を行い、企業や消費者の経済の先行きに対する不透明感を払拭し、我が国経済の回復基調を確実で力強いものとするため、経済構造改革の前倒し等による経済対策を策定することとした。

1 国内需要
―個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減から立ち直りつつあるものの、総じて回復テンポは遅い―

 個人消費は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減から立ち直りつつあるものの、総じて回復テンポは遅い。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で八月〇・五%減の後、九月は二・六%増(前月比〇・九%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比二・五%増、勤労者以外の世帯では同二・八%増となった。形態別にみると、耐久財等は減少し、非耐久財等は増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比二・四%増、勤労者世帯では同二・三%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で七月四・五%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で八月〇・五%減の後、九月は二・七%減となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で八月〇・四%増の後、九月二・三%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で八月二・四%減の後、九月四・三%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十月は一二・二%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で九月は一・〇%減となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、九月は前年同月比で国内旅行が一・〇%増、海外旅行は一・一%増となった。
 当庁「消費動向調査」(九月調査)によると、消費者態度指数は、九年六月に前期差四・四ポイントの上昇となった後、九月には同一・二ポイントの上昇となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で八月一・〇%増の後、九月(速報)は一・一%増(事業所規模三十人以上では同一・四%増)となり、うち所定外給与は、九月(速報)は同一・九%増(事業所規模三十人以上では同二・九%増)となった。実質賃金は、前年同月比で八月一・一%減の後、九月(速報)は一・三%減(事業所規模三十人以上では同一・〇%減)となった。なお、平成九年夏季賞与は、事業所規模五人以上では前年比一・五%増(前年は同一・八%増)となった。
 住宅建設は、低金利が継続するなか、消費税率引上げに伴う駆け込み需要により大きく増加した反動もあって、弱い動きとなっている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で八月五・六%増(前年同月比一七・五%減)となった後、九月は一・七%増(前年同月比二二・二%減)の十一万一千戸(年率百三十三万戸)となった。九月の着工床面積(季節調整値)は、前月比一・六%増(前年同月比二七・八%減)となった。九月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比三・九%減(前年同月比三七・六%減)、貸家は同五・〇%増(同一八・一%減)、分譲住宅は同六・一%減(同五・二%減)となっている。
 設備投資は、製造業を中心に回復傾向にある。
 当庁「法人企業動向調査」(九年九月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で九年四〜六月期(実績)二・一%減(うち製造業〇・六%減、非製造業二・八%減)の後、九年七〜九月期(実績見込み)は一・一%減(同〇・五%増、同一・九%減)となっている。また、九年十〜十二月期(修正計画)は、前期比で二・一%増(うち製造業二・六%増、非製造業二・二%増)、十年一〜三月期(計画)は〇・二%増(同〇・二%増、同〇・五%増)と見込まれている。
 なお、年度計画では、前年度比で八年度(実績)七・八%増(うち製造業一〇・八%増、非製造業六・四%増)の後、九年度(計画)は三・〇%増(同五・七%増、同一・七%増)となっている。
 先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で八月は四・七%減(前年同月比二・七%増)の後、九月は一二・三%減(同一・三%増)となり、製造業は底堅く推移しているものの、全体としては弱含みで推移している。
 なお、当庁「機械受注調査(見通し)」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、十〜十二月期(見通し)は前期比で八・二%増(前年同期比〇・五%減)と見込まれている。民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、前月比で八月一七・六%減の後、九月は二六・八%増(前年同月比三六・五%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比三・六%増(前年同月比一一・二%減)、非製造業は同二六・五%増(同四一・二%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で八月一・三%増の後、九月は二四・〇%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で八月七・四%減の後、九月は一・二%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で八月八・九%減の後、九月は三〇・二%減となった。

2 生産雇用
―雇用情勢は、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、一進一退で推移している。在庫は九月は減少した。
 鉱工業生産は、前月比で八月三・〇%減の後、九月(速報)は電気機械、鉄鋼等が減少したものの、一般機械、輸送機械等が増加したことから、一・六%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で十月は鉄鋼、機械等により〇・三%減の後、十一月は機械、軽工業等により二・六%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で八月二・一%減の後、九月(速報)は資本財が減少したものの、生産財、耐久消費財等が増加したことから、二・一%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で八月〇・四%増の後、九月(速報)は、化学、一般機械等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、〇・三%減となった。また、九月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一一五・六と前月を三・九ポイント下回った。
 主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は九月は増加し、在庫はこのところ増加している。輸送機械では、生産は九月は増加し、在庫は二か月連続で減少した。化学では、生産、在庫ともに二か月連続で増加した。
 農業生産の動向をみると、平成九年産水稲の全国作況指数(十月十五日現在)は、一〇二の「やや良」となっている。
 雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、八月〇・七二倍の後、九月〇・七一倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、八月一・二〇倍の後、九月一・一七倍となった。雇用者数は、伸びが鈍化している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、九月は前年同月比〇・七%増(前年同月差三十六万人増)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、八月前年同月比〇・九%増(季節調整済前月比〇・〇%)の後、九月(速報)は同〇・九%増(同〇・一%増)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・一%増)、産業別には製造業では同〇・四%減となった。九月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差四万人増の二百三十三万人、完全失業率(同)は、八月三・四%の後、九月三・四%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では八月前年同月比五・五%増(季節調整済前月比〇・五%減)の後、九月(速報)は同二・九%増(同一・五%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比四・〇%増)。
 企業の動向をみると、企業収益は、緩やかに改善している。また、企業の業況判断には、厳しさがみられる。
 大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、売上高、経常利益の見通し(ともに「増加」−「減少」)は、九年十〜十二月期は「増加」超幅が縮小した。また、企業経営者の景気見通し(業界景気の見通し、「上昇」−「下降」)は九年十〜十二月期は「下降」超に転じた。
 また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、九年七〜九月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、九年七〜九月期は「悪化」超幅が拡大した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を上回る傾向にある。
 銀行取引停止処分者件数は、九月は九百四十三件で前年同月比九・三%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、サービス業で九・八%の減少となる一方、建設業で二四・一%、卸売業で一四・四%の増加となった。

3 国際収支
―貿易・サービス収支の黒字は増加傾向―

 輸出は、強含みに推移している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で七月三・二%増、八月〇・一%減の後、九月は二・一%減(前年同月比八・五%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、ラテンアメリカ、中近東等が増加した。
 輸入は、おおむね横ばいで推移している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で七月七・三%増、八月八・九%減の後、九月は八・四%増(前年同月比六・七%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が減少し、食料品等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が減少し、アメリカ等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、八月に一兆七百八十億円の黒字の後、九月は七千四百九十六億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
 八月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が拡大したものの、貿易収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、六千七百六十八億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小するとともに、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、一兆二千七十六億円となった。投資収支(原数値)は、五千百八十六億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、五千二百三十九億円の赤字となった。
 十月末の外貨準備高は、前月比二十五億八千万ドル増加して二千二百八十一億五千万ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は、おおむね百二十円台から百二十一円台で推移した。一方、対マルク相場(インターバンク十七時時点)は、十月は、おおむね六十八円台から六十九円台で推移した。

4 物 価
―国内卸売物価はやや弱含み―

 国内卸売物価は、やや弱含んでいる。
 十月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(豚肉)等が下落したほか、電力・都市ガス・水道(電力)も夏季割増料金の終了から下落し、前月比〇・五%の下落(前年同月比一・五%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比〇・一%の上昇(前年同月比一・二%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比保合い(前年同月比二・四%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・三%の下落(前年同月比一・六%の上昇)となった。
 企業向けサービス価格は、九月は前年同月比一・七%の上昇(前月比保合い)となった。
 商品市況(月末対比)は食品等は上昇したものの、非鉄等の下落により十月は下落した。十月の動きを品目別にみると、大豆等は上昇したものの、亜鉛地金等が下落した。
 消費者物価は、安定している。なお、九月は医療保険制度改正の影響等によりやや上昇した。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で八月二・一%の上昇の後、九月は公共料金(広義)の上昇幅の拡大等により二・四%の上昇(前月比〇・八%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で八月二・一%の上昇の後、九月は二・四%の上昇(前月比〇・七%の上昇)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で九月二・三%の上昇の後、十月(中旬速報値)は一般食料工業製品の上昇幅の縮小等により二・二%の上昇(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で九月二・二%の上昇の後、十月(中旬速報値)は二・三%の上昇(前月比〇・二%の上昇)となった。

5 金融財政
―長期金利は史上最低を更新―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、十月はやや低下した。株式相場は、十月は下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、九月は前年同月比二・八%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、二、三か月物ともに、十月はおおむね横ばいで推移した。
 公社債市場をみると、国債流通利回りは、十月はやや低下した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は、十月三十日に一・五九五%となり史上最低を更新した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、九月は短期は〇・〇一七%低下し、長期は〇・一七四%低下したことから、総合では前月比で〇・〇三八%低下し一・八四五%となった。
 マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、九月(速報)は二・八%増となった。また、広義流動性でみると、九月(速報)は三・二%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、九月(速報)は前年同月比〇・五%減と十二か月連続で前年水準を下回った。十月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなる一方、国内公募事業債の起債実績は三千三百三十億円となった。
 株式市場をみると、日経平均株価は、十月は下落した。

6 海外経済
―香港、株価下落―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、四〜六月期前期比年率三・三%増の後、七〜九月期は同三・五%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資はこのところ伸びに鈍化がみられる。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は九月前月差二十六万九千人増の後、十月は同二十八万四千人増となった。失業率は十月四・七%となった。物価は安定している。九月の消費者物価は前月比〇・二%の上昇、九月の生産者物価(完成財総合)は同〇・五%の上昇となった。財の貿易収支赤字は、このところやや拡大している。十月の長期金利(三十年物国債)は、上旬に低下し、中旬に上昇した後、下旬に再び低下した。十月の株価(ダウ平均)は、上旬は総じて上昇したが、中旬、下旬は総じて下落し、特に下旬は大幅に下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに回復しており、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツでは四〜六月期前期比年率四・一%増、フランスでは四〜六月期同四・一%増、イギリスでは七〜九月期同四・〇%増(速報値)となった。鉱工業生産は、回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である(鉱工業生産は、ドイツ九月前月比一・六%減、フランス七・八月同二・八%増、イギリス九月同〇・二%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している(失業率は、ドイツ十月一一・八%、フランス九月一二・五%、イギリス九月五・二%)。物価は安定しているが、イギリスでは上昇率がやや高まってきている(消費者物価上昇率は、ドイツ十月前年同月比一・八%、フランス九月同一・三%、イギリス九月同三・六%)。なお、十月九日、ドイツはレポ金利を〇・三%、フランスは市場介入金利を〇・二%、それぞれ引き上げた。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は緩やかに減速している。失業率は、低下傾向である。物価上昇率は、横ばいである。貿易収支赤字は、改善している。なお、香港で株価が急落したことから、世界的にも株価は不安定な動きとなった。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや強含んで推移していたが、下旬に下落した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)十月三十一日一〇五・二、九月末比〇・七%の減価)。内訳をみると、十月三十一日現在、対円では九月末比横ばい、対マルクでは同二・〇%減価した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬弱含み、下旬は強含みの後、弱含みで推移した。十月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬やや強含むが、その後おおむね弱含みで推移した。下旬にかけてはおおむね十九ドル台での推移となった。


 
    <12月3日号の主な予定>
 
 ▽海上保安白書のあらまし…………海上保安庁 

 ▽景気予測調査………………………大 蔵 省 
 



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