官報資料版 平成1021





消防白書のあらまし


消 防 庁


 消防庁では、平成九年十二月十二日の閣議に「平成九年版消防白書」を報告し、公表した。
 「消防白書」は、火災その他の実態と消防に関する施策の現状について国民へ周知することを目的として、消防庁が毎年閣議の了解を経て公表しているものであり、昭和二十九年十一月に「わが国の火災の実態と消防の現状」と題して作成したことに始まり、昭和四十一年版から表題を「消防白書」に改め現在に至っている。

<第1章> 災害の現況と課題


<平成八年中の総出火件数は六万四千六十六件、「たばこ」による火災が件数及び損害額のいずれにおいても、第一位>

 (1) 火災の概要
 平成八年中の総出火件数は六万四千六十六件(前年六万二千九百十三件)で、平成五年以降おおむね増加傾向を示している。
 また、出火件数を火災種別でみると、その増減状況は、建物火災が二百十七件、林野火災が二百六十七件、車両火災が百九十三件、船舶火災が十八件、航空機火災が二件、その他火災が四百五十六件、それぞれ増加している。
 四季別にみると、低温・低湿で、しかも火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生しており、春季と冬季で総出火件数の六〇・三%を占めている(第1表第2表第3表参照)。

 (2) 出火原因
 出火原因別の出火件数は、「たばこ」による火災が七千百二十一件で、第一位となっているが、前年と比べ五十五件減少している。
 なお、第二位は「放火」で、六千七百三十二件と前年より五百六十三件増加しており、また、「放火の疑い」によるものは五千三百七十八件で、第五位となっており、前年に比べ二百四十二件増加し、「放火」及び「放火の疑い」は合わせて一万二千百十件で、平成四年以降一万件を超えている。
 また、このほかの原因については、第三位が「こんろ」の五千八百五十五件、第四位が「たき火」の五千四百九十九件、第六位が「火遊び」の二千七百二件で、前年と比較すると、「こんろ」による火災は二百五十四件増加しているが、「たき火」及び「火遊び」はそれぞれ六十三件、六十四件減少している。

 (3) 損害額
 平成八年中の火災による損害額は一千七百十三億円であり、前年(一千九百三十八億円、うち二百四十二億円は阪神・淡路大震災によるもの)に比べて二百二十五億円減少している。
 また、一日当たりでは、約四億六千八百万円(前年約五億三千百万円)となっている。

 (4) 出火原因別損害額
 出火原因別の損害額をみると、「たばこ」が百五十五億二千六十三万円と、前年より二億八千七百十五万円(一・九%)増加しており、昨年に続いて第一位となった。
 次に、「放火」による火災の損害額は百六億一千六百五十一万円で、前年より十九億五千三百九十九万円(一五・五%)減少した。また、「放火の疑い」によるものを合わせると百九十五億八千八百十八万円となり、前年より四十億五千百五十三万円(一七・一%)減少している。

 (5) 建物火災
 建物火災は総数三万四千七百五十六件で、一日当たり九十五件発生し、十五分に一件の割合で出火していることになる。

 (6) 建物火災の出火原因
 建物火災の主な出火原因は、「こんろ」によるものが五千七百七十八件と最も多く、次いで、「たばこ」の三千八百二十二件、「放火」の三千二百九十三件の順となっており、「こんろ」による火災のうち四千二百九十七件(七四・四%)が、「消し忘れ」によるものである(第1図参照)。

 (7) 火災の動向
 この十年間の火災の動向をみると、出火件数は、平成五年以降おおむね増加傾向を示している。
 なお、平成七年中の数値が大きいものは、阪神・淡路大震災(建物焼損床面積八十三万四千六百六十三平方メートル、火災損害額二百四十一億六千二百万円、死者五百五十九人)によるものである(第2図参照)。

<平成八年中の住宅火災による死者数一千百二十二人のうち、六十五歳以上の高齢者の死者数は四百九十八人(五六・〇%)>

 (1) 火災による死者の概要
 平成八年中の火災による死者数は一千九百七十八人で、前年(二千三百五十六人、うち五百五十九人は阪神・淡路大震災によるもの)に比べ三百七十八人減少している。
 一日当たりの火災による死者数は、五・四人で、前年(六・五人)に比べ一・一人の減少となっている。
 なお、放火自殺者は七百十一人で、前年より百七十五人増加している。

 (2) 住宅火災における死者数
 住宅火災による死者一千百二十二人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添え及び放火殺人(以下「放火自殺者等」という。)二百三十二人を除く失火等による死者は八百九十人となっており、前年(死者九百三十九人、うち阪神・淡路大震災による死者は二十九人)に比べて減少した。
 また、このうち六十五歳以上の高齢者は四百九十八人(五六・〇%)と半数を超えている。
 住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別に人口十万人当たりの死者発生数をみると、年齢が高くなるに従って死者発生数も著しく増加しており、八十一歳以上の階層では、最も低い二十一〜二十五歳の階層と比べて約五十九倍となっている(第3図参照)。

<平成八年中の火災以外の災害について>

 (1) 危険物施設等災害
 平成八年中の危険物施設における火災の発生件数は百四十四件で、阪神・淡路大震災等の影響のあった前年の百四十件(阪神・淡路大震災によるもの六件(すべて類焼)を含む。)より増加している。
 危険物運搬中の火災の発生件数は十七件となっている。

 (2) 石油コンビナート災害
 平成八年中に石油コンビナート等特別防災区域内で発生した災害の件数は九十三件で、阪神・淡路大震災等の影響のあった前年の四百五十六件と比較すると、三百六十三件減少しているが、地震による災害を除くと二十六件の増加となっている。

 (3) 林野火災
 平成八年中の林野火災の件数は四千三百三十九件(前年四千七十二件)、焼損面積は二千四百二十ヘクタール(同二千十六ヘクタール)、損害額は十五億一千四百八十五万円(同六億七千七百二十八万円)であり、件数、焼損面積、損害額とも前年より増加している。
 例年、林野火災は春先を中心に発生しており、平成八年も四月に一千百八十一件と最も多く発生しており、一月から五月までの間に、年間の七七%の火災が集中して発生している。

 (4) 風水害
 平成八年は全国的に降水量が平年を下回り、特に東日本の太平洋側の地方や西日本の少雨が顕著であった。また、台風の発生数、上陸数、接近数はいずれも平年を下回った。しかしながら、風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害は前年に比べて多く、死者八十四人(前年四十一人)、負傷者四百七十五人(同二百一人)であった。
 住家被害については全壊三十九棟(前年百四十八棟)、半壊二百十六棟(同二百二十七棟)、一部損壊一万四千四百八十七棟(同二千九百四十三棟)となっている(第4図参照)。

 (5) 火山災害
 火山災害については、平成八年三月、北海道駒ヶ岳が五十四年ぶりに噴火し、また、十一月には雌阿寒岳で八年ぶりに噴火が発生した。昭和三十年以降、噴火が恒常化している桜島は、三月までは活発であったが、四月以降はおおむね穏やかな状態であった。
 なお、平成七年十月、二百五十七年ぶりに噴火した九重山については、平成八年に入ってもごく微量の降灰が確認されている。また、平成二年から始まった噴火活動により死者・行方不明者四十四人の被害を出した雲仙岳については、平成八年六月三日、長崎県や島原市、深江町など五市町が災害対策本部を廃止し、同年六月四日には消防庁の災害対策本部及び政府の非常災害対策本部も廃止となっているが、引き続き島原市の一部において警戒区域が設定され、長崎県、島原市では警戒のための二十四時間体制が継続されている。
 平成八年中の火山情報は、八火山において、計十八回の臨時火山情報が発表されている。

 (6) 震災対策
 〔阪神・淡路大震災〕
 ア 災害の概要
 平成七年一月十七日、午前五時四十六分頃、兵庫県淡路島北部で、震源の深さ十六キロメートル、マグニチュード七・二の地震が発生した。
 本地震では、東北地方南部から九州にかけての広い範囲で有感となり、その被害は二府十五県に及び、平成八年十二月二十六日現在で、人的被害は死者六千四百二十五人、行方不明者二人、負傷者四万三千七百七十二人、住家被害は全壊十一万四百五十七棟、半壊十四万七千四百三十三棟、避難者は最大で三十一万人を超えるものとなった(第4表参照)。
 また、地震により二百八十五件の火災が発生し、焼損棟数七千四百八十三棟、焼損床面積八十三万四千六百六十三平方メートルとなっている。
 イ 消防機関・消防庁等の活動
 @ 地震発生から平成七年三月末までに、四十一都道府県、四百五十一消防本部、延べ七千六百二隊、車両七千六百二十八台、約三万二千四百人の消防職員による広域応援活動が行われた。
   また、地方公共団体の防災機関による生活関連物資の提供や応急活動等のため、延べ約十九万六千人の応援活動が行われた。
 A 消防団については、被災地周辺からの応援も含め、延べ七万一千人以上が消火活動や救援活動に従事した。
 B 地震発生直後から自主防災組織による消火活動や応急活動が行われている。
 C ボランティア活動については、発災直後から多くのボランティアが被災地に駆けつけ、物資の仕分け、避難所の運営、炊き出し、医療介護、運送、通訳等、様々な分野で重要な役割を担った。
 D 消防庁では直ちに関係府県に対し、適切な対応と被害状況について報告を行うよう連絡し、情報収集を開始するとともに、消防広域応援や被災者保護のための生活関連物資の支援調整、人的応援の調整、被災者の公営住宅等への受入れ斡旋等の活動を行った。
 ウ 震災を踏まえて講じた措置
 @ 大規模災害時において、被災都道府県知事からの要請を待ついとまがないと認められるような場合等においても、迅速な消防広域応援が確保できるよう、消防組織法の一部改正を行った。
 A 災害時における交通規制に関する措置の拡充等、国及び地方公共団体の防災体制の強化等について、災害対策基本法の一部改正を行った。
 B 地震防災緊急事業五箇年計画の策定及び国の財政上の特別措置等を定めた地震防災対策特別措置法が制定された。
 C 防災機関の初動体制の充実など、防災基本計画の修正や自治省・消防庁防災業務計画の修正を行うとともに、地域防災計画の見直しを要請した。
 D 被災した消防防災施設の早期復旧を図るとともに、大規模災害に対応できる全国的な消防防災体制の整備を促進する観点から、画像伝送システム、ヘリコプターテレビ電送システム、震度情報ネットワークシステムなどの情報収集・伝達体制の整備、耐震性貯水槽等、多様な水利の整備等のための補助金や、地方単独事業による防災基盤整備のための緊急防災基盤整備事業の創設などにより、財政支援措置の拡充等を行った。
 E 緊急消防援助隊の創設、航空消防防災体制の強化、防災拠点の整備、広域応援協定の締結など防災体制の充実強化を推進した。
 〔平成八年中の地震災害〕
 平成八年中に発生した有感地震は一千百六十四回で、前年(一千九百二回)より大幅に減少している。

 (7) 特殊災害
 @ 原子力事故としては、平成七年十二月八日に使用前検査中の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏洩し、火災が発生した事故や、平成九年三月十一日に動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故がある。
 A 船舶火災としては、平成八年四月九日に大阪港内に停泊中のパナマ船籍「エバートラスト号」のエンジン部分から出火し、死者一人、負傷者二人を出す火災が発生した。
 B 海上における油の流出災害としては、平成九年一月二日に日本海沿岸の各地に大きな被害を生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海難・流出油災害のほか、七月二日には東京湾においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。
 C 航空機事故では、平成八年六月十三日に福岡空港において、ガルーダ・インドネシア航空機が離陸時にオーバーランして大破炎上し、死者三人、負傷者百九人を出す事故があった。

<第2章> 消防防災の組織と活動


<人口の九九・七%を常備消防がカバー。消防団員数は減少傾向、高齢化も進む>

 (1) 常備消防機関
 平成九年四月一日現在、消防本部は九百二十三本部、消防署は一千六百五十四署、出張所は三千二百二十四所、消防職員は十五万六百二十六人となっており、前年と比較して、消防本部は常備化が図られたことにより一本部増加したが、広域化が進められたことにより三本部減少したため二本部減少し、また、消防署は十八署増加し、消防職員は一千六百三十七人増加している(第5表参照)。

 (2) 常備化の現況
 平成九年四月一日現在、消防本部及び消防署の常備化市町村は、三千百十六市町村となり、常備化率は市町村数で九六・四%(市は一〇〇%、町村は九五・四%)に達し、人口の九九・七%が常備消防にカバーされている。

 (3) 消防団
 消防団は、常備化が進展してきた今日においても、地域の消防防災に果たす役割は依然として重要である。
 平成九年四月一日現在、消防団は三千六百四十一団、消防団員数は九十六万八千八十一人であり、ほとんど全ての市町村に設けられている。
 団員数は減少傾向にあり、十年前の昭和六十二年四月一日現在に比べて四万九千七百二十六人(四・九%)減少している。この間、女性消防団員数は六千三百七十人増加し、七千五百九十五人となっている。
 また、消防団員の平均年齢は三六・二歳(前年より〇・一歳増)となっており、その高齢化が進んでいる。

 (4) 消防職団員の活動状況
 平成八年中における全国の消防職団員の活動状況をみると、火災等(火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。ただし救急業務を除く。)への出動回数は八十八万三千二百五十六回で、出動延べ人員では九百七十万八千七百七十四人である。また、一日当たりの出動回数は二千四百十三回で、三十六秒に一回の割合で出動したことになる。
 火災等への出動回数をその出動形態別にみると、特別警戒が二一・九%で最も多く、次いで火災出動が一三・二%となっている。

 (5) 教育訓練体制
 複雑・多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防大学校や都道府県等の消防学校における消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要であり、その充実強化に努めている。

<救急出場件数、搬送人員はともに増加(全国で九・四秒に一回救急出動、国民三十九人に一人が救急搬送)。救急隊数及び救急隊員数ともに増加。着実に進む救急の高度化>

 (1) 救急搬送
 平成八年中の救急出場件数は、三百三十七万三千三百九十四件(対前年九万三千三百四十八件増、対前年比二・八%増)、搬送人員は三百二十四万七千百二十九人(同八万二千六百四十六人増、同二・六%増)である(第6表参照)。
 全国で一日平均九千二百十七件(前年八千九百八十六件)、九・四秒(同九・六秒)に一回の割合で救急隊が出場し、国民の三十九人に一人が救急隊によって搬送されたことになる。

 (2) 応急処置の実施状況
 搬送人員のうち、救急隊員が応急処置を行った傷病者は、二百三十九万四千三百五人(搬送人員の七三・七%、前年は六八・二%)であり、前年と比較して、二十三万七千十二人(一一・〇%)増加している。
 なお、救急隊員の行った応急処置の件数五百八十八万二千八百八十三件のうち、「救急隊員の行う応急処置等の基準」の改正(平成三年八月)により拡大された血圧測定、心音・呼吸音聴取、心電図伝送等の応急処置により処置された件数は、三百万三千三百四十一件と前年の約一・四倍となっている。このうち救急救命士が行う心肺機能停止状態に陥った傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は一万五千九百九十六件にのぼり、前年の約一・三倍となっている。

 (3) 実施体制
 平成九年四月一日現在、救急隊は四千四百八十三隊(対前年六十七隊増、対前年比一・五%増)設置されており、全国で五万四千七百四十三人の消防職員が救急隊員として救急業務に従事している。
 また、救急業務実施市町村数は、三千百四十市町村(六百七十市、一千九百五十五町、五百十五村)で、全市町村三千二百三十三のうち九七・一%(前年九六・七%)に当たる市町村で救急業務が実施され、全人口の九九・七%(前年九九・六%)がカバーされている。

 (4) 救急業務の高度化
 平成九年七月一日現在、消防職員関係者の救急救命士の資格を有する者の数は五千五百二十四人(対前年一千三百六十人増)であり、全都道府県の五百五十四消防本部において救急救命士による救急業務が実施されている。
 また、拡大された救急処置を行うために必要な高規格救急自動車は一千四百二十三台(対前年三百四台増)配置されている。

<救助活動件数及び救助人員ともに減少。活動状況は交通事故と火災に係るものが七割強>

 (1) 救助活動件数及び救助人員
 平成八年中の救助活動件数は、三万二千五百七十二件(対前年五百七十七件減)、救助人員は、三万二千八百二十八人(対前年一千四百四十四人減)となっている(第7表参照)。

 (2) 活動状況
 救助活動の状況をみると、交通事故が五二・一%を占め、火災が一九・七%となっている(第8表参照)。

 (3) 実施体制
 平成九年四月一日現在、救助隊を設置しているのは八百六十九消防本部(対前年三本部増)となっており、当該消防本部の構成市町村は二千九百八十六市町村(同三十五市町村増)である。救助隊は一千四百九十三隊設置されており、救助隊員は二万二千九百二十人となっている。一消防本部当たり一・七隊の救助隊が設置され、一隊に一五・四人の救助隊員が配置されていることになる。

<消防・防災ヘリコプターの整備の推進>

 (1) 航空消防防災体制の現況
 ヘリコプターは林野火災や風水害などの災害状況の把握、林野火災における空中消火、山岳等における救助、離島・山間地域等からの重度傷病者の救急搬送等に極めて有効であり、その整備を推進している。
 消防・防災ヘリコプターの保有状況(平成九年四月一日現在)
 消防機関の保有するヘリコプター  二十六機
              (前年度二十六機)
 都道府県の保有するヘリコプター  三十二機
              ( 〃 二十四機)
                計 五十八機
              ( 〃  五十機)

 (2) 航空消防防災体制の課題
 都市化の進展や都市構造の変化等による災害の複雑多様化に備えるとともに、救急業務の一層の高度化を実現し、国民の信頼と期待に応えていくためには、消防・防災ヘリコプターを活用した広域的かつ機動的な消防防災体制を全国的に早急に整備する必要がある。
 全国的な航空消防防災体制を充実強化するためには、消防・防災ヘリコプターの計画的な配置を積極的に推進するとともに、全国に配置されている消防・防災ヘリコプターの整備点検情報、全国各地の離着陸場の情報等をデータベース化するヘリコプター情報システムの適切な運用を図っていく必要がある。

<防災体制及び消防広域応援体制の強化>

 (1) 国と地方公共団体の防災体制
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害対策基本法の改正や防災基本計画の修正、消防庁の防災体制の強化、地域防災計画の見直し等が進められている。
 また、地域住民の参加を得た防災訓練を推進している。

 (2) 広域応援体制
 大規模災害に際し、地方公共団体の区域を越えて、適切に対応できるよう、広域航空消防応援体制の整備、緊急消防援助隊の災害対応力の充実強化など、消防の広域応援体制の強化を推進している。
 また、都道府県の広域防災応援に関して、全国全てのブロックで広域応援協定の締結・見直しがなされている。

<消防防災通信ネットワークの強化>

 (1) 消防防災通信ネットワーク
 災害時に迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくほか、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくことが極めて重要である。
 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網及び市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網が構築されている。

 (2) 防災情報システム
 広域的な対応が重視される今日の防災対策においては、迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠である。
 このため、消防庁では、震度情報などの緊急情報を迅速に伝達するほか、緊急消防援助隊や消防・防災ヘリコプターの出動可能状況、非常物資の備蓄等広域応援の対応力の状況、地域防災計画、消防防災統計など消防防災に係る情報をデータベース化するとともに、全国的なネットワーク化を図り、消防庁と地方公共団体等との間で、これらの情報を共有化できる防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。

<第3章> 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり


<防火防災意識の高揚と自主防災活動>

 (1) 防火防災意識の高揚
 平成八年中の火災を原因別にみると、失火が全体の六六・七%を占めていること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については、地域住民の日ごろからの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会を作るためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。
 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日ごろから自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。

 (2) 自主防災活動
 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。
 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道管等が寸断され、また、消防機関等の活動は著しく制限されることが予想される。
 このような状況下では、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出救護、応急手当、給食給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。
 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報の収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。
 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。

<第4章> 規制緩和への対応


<規制緩和推進計画に対する消防庁の対応>

 国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、公的規制の緩和が大きな課題となっている。
 消防庁としては、安全性の確保に十分配慮しながら、「規制緩和推進計画」に定められた各措置の着実な推進を図るなど、適切に対処していくこととしている。

<第5章> 国際協力の推進と地球環境の保全


<消防における国際協力・国際交流。地球環境の保全の一環としてのハロン消火剤の使用抑制の推進>

 (1) 国際協力・国際交流
 消防庁では、国際協力事業団と協力して、開発途上にあるアジア諸国等の消防職員を対象とした消防行政管理者研修をはじめとする集団研修のほか、諸外国からの個別研修員の受入れ、消防における技術指導のための専門家の派遣を実施している。

 (2) 国際消防救助隊
 海外で大災害が発生した場合に、消防庁長官の要請により国際消防救助隊が派遣されることになっており、平成八年十月二十八日(現地時間十月二十七日)に、エジプト・アラブ共和国のカイロ郊外のへリオポリスで発生したビル崩壊事故に際し、九名の国際消防救助隊員が派遣された。

 (3) 地球環境の保全
 ハロン消火剤については、第四回モントリオール議定書において、平成六年一月一日までに生産等を全廃することなどが決定された。
 平成五年七月に関係業界による「ハロンバンク推進協議会」が設立され、同協議会において、ハロンの回収、再生及び再利用を効率的かつ的確に行うことにより、地球環境の保全に寄与することとしている。
 このため、地球環境の保全の一環として、ハロン消火剤の使用抑制を図っている。

<第6章> 消防の科学技術の研究


<消防の科学技術の研究>

 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっている。このため、社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行っている。
 そのほか、国際間あるいは産学官の協力を図るため、外国の研究機関、国内の大学あるいは企業との共同研究を積極的に進めている。

<第7章> 今後の消防防災行政の方向


<今後の消防防災行政の方向>

 我が国は、これまで幾多の災害を経験してきているが、特に最近、戦後最大の被害をもたらした阪神・淡路大震災をはじめ、地下鉄サリン事件、蒲原沢土石流災害、鹿児島県出水市土石流災害、ナホトカ号海難・流出油災害など、住民の安全を脅かす災害が相次いでいる。
 このため、国民の防災に関する関心はかつてない程の高まりをみせているところであり、災害に強い安全なまちづくりを推進し、総合的な災害対応力を強化することが強く求められている。
 そのためには、防災・災害対策行政において、第一次的な役割を担っている地方公共団体が、安全で安心な地域社会づくりに向けその使命を十分果たしていくことができるよう、今後とも各般の施策を強力に展開して、消防防災行政を推進していくことが必要である。
 具体的には、地域防災計画の抜本的な見直しをはじめ、地域の防災機能を高めるための基盤整備の推進、自主的な防災体制の強化、消防防災の広域的な応援体制の強化、防災情報通信体制の強化などに積極的に取り組むとともに、技術革新の成果なども取り入れながら、消防防災体制の充実強化を図っていくことが必要である。
 また、平成十年三月には、現在の自治体消防制度が発足してから五十周年を迎えることから、消防庁としては、この大きな節目の年を今後の消防防災行政の発展につなげることができるよう、平成八年度においては、消防のたどってきた半世紀の道筋を踏まえ、これから予想される社会経済の変化、技術開発の進展、消防・防災のあるべき姿、指針などを視野にとらえ、「二十一世紀の消防―消防の新たなる展開」を募集テーマとして、論文や映像、イラスト等の募集を行った。この募集に対し、総計九百三十四点にのぼる応募があり、最優秀賞一作品、優秀賞八作品、入選十七作品を選定した。
 また、これまで半世紀の消防のたどってきた道筋を踏まえつつ、広く国民の声を聞き、今後の消防のあり方について考えるため、「二十一世紀の消防を考える会」を発足させ、将来の消防について国民が求めるものを整理するとともに、実用化が期待される消防関係新技術についての予測調査を行い、今後の消防行政に反映させることとしている。
 平成九年度においては、科学技術研究・開発に関する表彰制度を創設することとし、七月以降、各地方公共団体、消防関係団体等と連携して、全国七か所で「自治体消防五十年全国縦断シンポジウム」を開催するとともに、平成十年三月七日には、全国の消防関係者が一堂に会して「自治体消防制度五十周年記念式典」を実施することとしている。
 なお、平成十年度には「国際消防防災展'98in東京」を東京ビッグサイト・国際展示場(有明)で開催(平成十年六月四日〜七日)することとしている。
 これらの取組の成果を今後の消防防災行政の推進に十分に活かしていくことが重要である。
 なお、第7章で取り上げた項目は、次のとおりである。
 ○大規模災害対策の推進
 ○消防防災通信ネットワークの高度化
 ○消防力の充実強化
 ○消防団の充実強化
 ○救急・救助体制の充実強化
 ○航空消防防災体制の整備
 ○防火安全対策の推進
 ○危険物施設等の安全の確保と特殊災害対策の推進
 ○規制緩和と国際化等への対応
 また、本文とは別に十五点の「囲み記事」を記述している。
 その項目内容は、次のとおりである。
 @ 新技術の導入による一号消火栓の操作性向上
 A 緊急通報システム
 B アウトドアには、危険がいっぱい〜危険物の取扱いには気をつけて〜
 C 平成九年三月 大規模林野火災について
 D 阪神・淡路大震災とトイレ問題
 E ナホトカ号海難・流出油災害
 F 林野火災における懸命な消火活動(山梨県勝沼町消防団)
 G 消防大学校における新たなカリキュラム
 H 応急手当の救命効果
 I ビル火災でのヘリコプターによるつり上げ救助活動(名古屋市消防局)
 J 蒲原沢土石流災害―緊急消防援助隊の出動―
 K 防災まちづくり大賞
 L 国際消防救助隊の活動
 M ハロンバンクについて
 N 特殊小型はしご車について





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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十一月中旬速報値)・全国(十月)―


総 務 庁


◇十一月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・八となり、前月比は〇・七%の下落。前年同月比は八月一・六%の上昇、九月二・二%の上昇、十月二・四%の上昇と推移した後、十一月は二・〇%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・三となり、前月と同水準。前年同月比は八月一・八%の上昇、九月二・三%の上昇、十月二・二%の上昇と推移した後、十一月は二・二%の上昇となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・五となり、前月に比べ二・三%の下落。
  生鮮魚介は〇・三%の下落。
   <値上がり>まぐろ、さけなど
   <値下がり>いか、かきなど
  生鮮野菜は二〇・三%の下落。
   <値上がり>トマト、なすなど
   <値下がり>ほうれんそう、はくさいなど
  生鮮果物は一七・四%の下落。
   <値下がり>みかん、かきなど
(2) 家具・家事用品は九四・八となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  家事用消耗品は一・一%の下落。
   <値下がり>柔軟仕上剤など
(3) 被服及び履物は一〇六・八となり、前月に比べ〇・三%の上昇。
  衣料は一・四%の上昇。
   <値上がり>婦人オーバーなど
(4) 教養娯楽は一〇一・二となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  教養娯楽サービスは〇・六%の下落。
   <値下がり>宿泊料

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二四・九%上昇)、外食(三・八%上昇)、衣料(五・二%上昇)、家賃(〇・七%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮果物(一二・一%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・九となり、前月に比べ〇・三%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月と変わらなかった。

◇十月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇三・一となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は七月一・九%の上昇、八月二・一%の上昇、九月二・四%の上昇と推移した後、十月は二・五%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・九となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は七月二・〇%の上昇、八月二・一%の上昇、九月二・四%の上昇と推移した後、十月は二・四%の上昇となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇三・〇となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  生鮮魚介は〇・六%の下落。
   <値上がり>いか、ぶりなど
   <値下がり>さんま、さけなど
  生鮮野菜は七・五%の上昇。
   <値上がり>しめじ、レタスなど
   <値下がり>ほうれんそう、れんこんなど
  生鮮果物は〇・四%の下落。
   <値上がり>バナナ、オレンジなど
   <値下がり>みかん、なしなど
  穀類は一・七%の下落。
   <値下がり>うるち米など
  酒類は〇・八%の下落。
   <値下がり>ウイスキーなど
  外食は〇・七%の上昇。
   <値上がり>ハンバーガーなど
(2) 家具・家事用品は九七・〇となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  家庭用耐久財は〇・六%の下落。
   <値下がり>電気冷蔵庫など
(3) 被服及び履物は一〇七・五となり、前月に比べ〇・九%の上昇。
  衣料は一・四%の上昇。
   <値上がり>ワンピース(冬物)など
(4) 教養娯楽は一〇一・五となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  教養娯楽サービスは〇・七%の上昇。
   <値上がり>宿泊料など

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二四・四%上昇)、生鮮野菜(一九・九%上昇)、外食(三・四%上昇)、家賃(一・三%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮果物(一二・七%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・七となり、前月に比べ〇・二%の上昇となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・七となり、前月と変わらなかった。

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平成9年


賃金構造基本統計調査

―初 任 給―


労 働 省


T 調査の概要

 この調査は、我が国の賃金構造の実態を明らかにするため、毎年六月分の賃金等について実施しているものである。
 調査対象は、日本標準産業分類による九大産業(鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店、金融・保険業、不動産業及びサービス業)に属する五人以上の常用労働者を雇用する民営事業所及び十人以上の常用労働者を雇用する公営事業所から抽出した約七万二千事業所である。
 平成九年調査のうち、十人以上の常用労働者を雇用する民営事業所に採用された新規学卒者(平成九年三月に中学、高校、高専・短大又は大学を卒業した者)の初任給の結果を取りまとめた。集計対象となったのは約四万八千事業所で、このうち新規学卒者を採用したのは約二万事業所であった。
 (注) 本調査の初任給は、通常の勤務をした新規学卒者の所定内賃金(所定内労働時間に対して支払われる賃金であって、基本給のほか諸手当が含まれている。)から通勤手当を除いたものであり、平成九年六月末現在で確定(ベースアップ後)したものである。なお、確定した者の割合は九五・二%であった。

U 調査結果の概要

1 学歴別にみた初任給

@ 平成九年の初任給を高卒以上の学歴についてみると、
 男性は、
  大    卒 十九万三千九百円(対前年上昇率 〇・四%)
  高専・短大卒 十六万八千九百円(同一・三%)
  高    卒 十五万六千円(同一・〇%)
 女性は、
  大    卒 十八万六千二百円(同一・四%)
  高専・短大卒 十六万一千円(同一・四%)
  高    卒 十四万七千三百円(同〇・八%)
となった。
 対前年上昇率は、男女各学歴とも一%前後となっているが、これを前年の伸びと比較すると、女性の高卒を除き前年をやや上回っている(第1表第2表第1図参照)。
A 大卒を一〇〇として初任給の学歴間格差をみると、男性は高専・短大卒が八七、高卒が八〇、女性は高専・短大卒が八六、高卒が七九となっている。
 学歴間格差の推移をみると、平成六年以降、大卒と高卒との格差は男女ともほぼ横ばい傾向となっている(第2図参照)。

2 企業規模別にみた初任給

@ 企業規模別に初任給の動きをみると、前年に比べ大企業(常用労働者千人以上)で男性の高専・短大卒(〇・七%減少)、高卒(〇・一%減少)及び女性の高卒(〇・九%減少)が減少し、小企業(同十〜九十九人)で男性の高専・短大卒、女性の高卒がそれぞれ二・三%増加したほかは、各学歴、規模とも二%未満の増加となっている(第3表参照)。
A 大企業を一〇〇として初任給の企業規模間格差をみると、男性は、中企業(常用労働者百〜九百九十九人)では九九〜一〇〇と格差はほとんどみられず、小企業では高専・短大卒(一〇三)などで大企業より初任給が高くなっている。
 女性については、これまでやや格差がみられた小企業の高卒で前年の九五から九八となったことにより、中企業で九九〜一〇二、小企業で九八〜九九と各学歴、規模とも格差が小さくなっている(第4表参照)。

3 産業別にみた初任給

 主要産業別に初任給をみると、男性は大卒、高卒で建設業が高く、大卒で十九万七千二百円、高卒で十六万二千九百円となっており、高専・短大卒でも建設業は十八万四千三百円と高くなっている。
 女性は、大卒では卸売・小売業、飲食店が十八万八千二百円と高く、次いでサービス業、製造業が、それぞれ十八万八千円、十八万七千九百円となっている。高専・短大卒、高卒では卸売・小売業、飲食店が高く、それぞれ十六万三千三百円、十五万二千五百円となっている。
 製造業を一〇〇とした初任給の産業間格差を産業ごとにみると、男性は、建設業では高専・短大卒が一一〇、高卒が一〇五と高い水準となっている。卸売・小売業、飲食店では高専・短大卒が九八とやや低く、サービス業では、高卒が九六と低くなっている。
 女性は、建設業では大卒が九六と低くなっているが、高専・短大卒、高卒は一〇〇〜一〇一とほぼ同水準となっている。卸売・小売業、飲食店では大卒が一〇〇と同水準となっているが、高専・短大卒が一〇二、高卒が一〇三とやや高くなっている。サービス業では、高卒が九六とやや低くなっている(第5表参照)。

4 地域別にみた初任給

 地域別に初任給をみると、男女とも総じて南関東、東海、京阪神の三地域が高く、男性は、大卒で南関東、京阪神が十九万円台後半、高専・短大卒で三地域とも十七万円台前半、高卒で南関東、京阪神が十六万円台前半となっている。女性は、大卒で南関東が十九万円台前半、高専・短大卒では三地域とも十六万円台、高卒では三地域とも十五万円台となっている。
 一方、低い地域は、男性では大卒で山陰、南九州が十七万円台後半、高専・短大卒で山陰が十五万円台前半、高卒で南九州が十四万円台前半、女性では大卒で山陰が十七万円台前半、高専・短大卒で山陰が十四万円台、高卒で東北、山陰、四国、北九州、南九州が十三万円台後半となっており、総じて山陰、南九州などの地域が低くなっている(第6表参照)。

5 初任給の分布

@ 初任給の分布をみると、男性は、大卒が十九万円台に三六・〇%、二十万円台に二二・二%、十八万円台に一四・二%となっており、十九〜二十万円台が約六割を占めている。高卒では十五万円台に三六・七%、十六万円台に二〇・五%となっている。
 女性は、大卒が十九万円台に二四・八%、十七万円台に一九・九%、十八万円台に一九・二%と十七〜十九万円台に散らばっている。高専・短大卒は十六万円台に二八・一%、十五万円台に二四・〇%、高卒は十五万円台に二九・五%、十四万円台に二八・六%となっている。
A 初任給の散らばりの度合いを示す分散係数をみると、十分位分散係数は、男性は、大卒が〇・〇九、高専・短大卒、高卒がそれぞれ〇・一一となっており、大卒の散らばりは高専・短大卒、高卒より小さい。
 一方、女性は大卒が〇・一二、高専・短大卒が〇・一三、高卒が〇・一二となり、学歴による散らばりの差は少ない(第7表参照)。



 週四十時間労働制の定着に向けて


◇約八割の企業が週四十時間制に

 平成九年四月一日から、一週間の法定労働時間は四十時間となりました。
 すでに八割近い企業で週四十時間労働制が採用されています。すべての企業の経営者の方には、業務の合理化を進めたり、仕事の実態に合った労働時間制を設けたりして、週四十時間労働制を早急に実施していただく必要があります。
 ただし、従業員が九人以下の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業場については、事業規模と業務の性質上、特例措置として引き続き週四十六時間制のままです。詳しくは、労働基準局又は労働基準監督署へお問い合わせください。

◇投資や雇用に助成金を支給

 なお、週四十時間労働制の定着又はさらなる労働時間短縮に取り組む事業主・事業主団体を対象とする、「中小企業労働時間制度改善助成金」及び「事業主団体等労働時間短縮自主点検事業助成金」を設けています。支給手続などの詳細については、次までお問い合わせください。
 ○労働時間短縮支援センター
  〒105 東京都港区芝公園一―七―六
      中退金ビル五階
  社団法人 全国労働基準関係団体連合会内
  TEL〇三―三四三七―一〇二二
  FAX〇三―三四三七―六六〇九
 (労働省)





 
    <1月28日号の主な予定>
 
 ▽我が国の文教施策のあらまし……文 部 省 

 ▽家計収支……………………………総 務 庁 
 



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