官報資料版 平成10





全国の公害苦情の実態


―平成八年度公害苦情調査結果報告書の概要―


公害等調整委員会事務局


 平成八年四月から九年三月までの一年間において、全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口に寄せられた公害苦情の件数や処理状況などを「平成八年度公害苦情調査結果報告書」としてとりまとめ公表したので、その概要を紹介する。
 住民から寄せられる公害苦情は、その多くが紛争の前段階ないし初期段階としての性格を有し、また、健康と生活環境に関する相談という側面をも併せもっており、これらの公害苦情を通して公害被害の現状と国民の公害に対する関心の度合いを知ることができる。

第一 公害苦情の受付状況

一 公害苦情件数の概況
<全国の公害苦情は約六万二千三百件>
 平成八年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた公害苦情の件数は六万二千三百十五件で、前年度に比べて九百五十一件(一・五%)増加した。

二 公害の種類別苦情件数
<典型七公害の苦情が約七割>
 平成八年度の公害苦情(六万二千三百十五件)のうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる「典型七公害」の苦情件数は四万五千三百七十八件(全公害苦情件数の七二・八%)で、前年度に比べて二千六百七十七件(六・三%)増加した。
 また、廃棄物の不法投棄、害虫等の発生、動物の死骸放置、ふん・尿の害、火災の危険、電波障害、土砂の散乱、土砂の流出、光害、日照、通風障害などのいわゆる「典型七公害以外」の平成八年度の苦情件数は一万六千九百三十七件(同二七・二%)で、前年度に比べて一千七百二十六件(九・二%)減少した。
 (一) 典型七公害の種類別苦情件数
<騒音、大気汚染、悪臭の順>
 典型七公害の苦情件数を種類別にみると、騒音が一万四千二百八十一件(典型七公害苦情件数の三一・五%)と最も多く、次いで、大気汚染が一万九百六十一件(同二四・二%)、悪臭が一万八百三十九件(同二三・九%)、水質汚濁が七千百六十八件(同一五・八%)、振動が一千八百七十七件(同四・一%)、土壌汚染が二百二十九件(同〇・五%)、地盤沈下が二十三件(同〇・一%)となっている。
 また、前年度に比べて、大気汚染(九百四十八件、九・五%)、騒音(七百八十九件、五・八%)、悪臭(七百八件、七・〇%)、水質汚濁(四百五件、六・〇%)及び土壌汚染(十六件、七・五%)が増加し、一方、振動(百八十三件、八・九%)及び地盤沈下(六件、二〇・七%)が減少した。
 典型七公害の種類別苦情件数の推移は、昭和五十二年度以降、順位の変動がなかったが、平成八年度に初めて、悪臭と大気汚染の順位が入れ替わった。近年、大気汚染のシェアは増大傾向となっている(第1表第1図参照)。
 (二) 典型七公害以外の種類別苦情件数
<廃棄物の不法投棄が約四分の一>
 典型七公害以外の苦情件数を種類別にみると、廃棄物の不法投棄が四千九十五件(典型七公害以外の苦情件数の二四・二%)と最も多く、次いで、害虫等の発生が二千二百三十三件(同一三・二%)、動物の死骸放置が一千七百件(同一〇・〇%)、ふん・尿の害が六百三十五件(同三・七%)、火災の危険が五百九十四件(同三・五%)、電波障害が三百五十一件(同二・一%)、土砂の散乱が百九十六件(同一・二%)、土砂の流出が百三十三件(同〇・八%)などとなっている。
 廃棄物の不法投棄に対する苦情件数の内訳をみると、一般廃棄物が二千三百四件(廃棄物の不法投棄に対する苦情件数の五六・三%)、産業廃棄物が一千七百九十一件(同四三・七%)となっている(第2表参照)。

三 公害の発生源別苦情件数
<発生源は製造業、建設業、空地の順>
 公害の発生源別苦情件数は、製造業が一万三百八十八件(全公害苦情件数の一六・七%)と最も多く、次いで、建設業が一万百九十一件(同一六・四%)、空地が六千四百六十九件(同一〇・四%)、サービス業が六千三百四十二件(同一〇・二%)、家庭生活が五千六百二十件(同九・〇%)、「卸売・小売業、飲食店」が四千五百九十四件(同七・四%)、農業が四千二百七十五件(同六・九%)、道路が三千五十件(同四・九%)、運輸・通信業が一千百五十九件(同一・九%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、建設業(六百九十七件、七・三%)、製造業(五百八十九件、六・〇%)、家庭生活(四百六十四件、九・〇%)、サービス業(三百二十六件、五・四%)、「卸売・小売業、飲食店」(二百八十三件、六・六%)、農業(二百八十二件、七・一%)などが増加し、一方、空地(一千四十五件、一三・九%)、道路(六百六十九件、一八・〇%)などが減少した。
 なお、発生源の種類別苦情件数の推移をみると、製造業が依然第一位を占めているものの減少基調にあり、建設業とほぼ拮抗する傾向が平成七年度以降示されている(第3表参照)。
 (一) 典型七公害の発生源別苦情件数
<典型七公害では製造業、建設業、サービス業の順>
 典型七公害の発生源別苦情件数は、製造業が九千八百九十七件(典型七公害の苦情件数の二一・八%)と最も多く、次いで、建設業が八千九百六件(同一九・六%)、サービス業が五千六百三件(同一二・三%)、「卸売・小売業、飲食店」が四千二百九十一件(同九・五%)、家庭生活が三千九百五十四件(同八・七%)、農業が三千三百九件(同七・三%)、運輸・通信業が一千六十六件(同二・三%)、道路が九百六十九件(同二・一%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、建設業(六百十四件、七・四%)、製造業(五百三十九件、五・八%)、家庭生活(四百九十八件、一四・四%)、サービス業(三百十件、五・九%)、農業(二百六十三件、八・六%)、「卸売・小売業、飲食店」(二百六十三件、六・五%)、空地(六十九件、一五・一%)などが増加し、一方、「神社、寺院等」(十四件、一二・二%)、電気・ガス・熱供給・水道業(十三件、五・六%)などが減少した(第4表参照)。
 ア 騒音の発生源別苦情件数
<騒音では建設業、製造業の順>
 騒音の発生源別苦情件数は、建設業が三千六百九十九件(騒音苦情件数の二五・九%)と最も多く、次いで、製造業が三千八十九件(同二一・六%)、「卸売・小売業、飲食店」が二千三百二十四件(同一六・三%)、サービス業が一千七百二十八件(同一二・一%)、家庭生活が一千五十九件(同七・四%)などとなっている。
 このうち、建設業では総合工事業が二千三百三十四件(同一六・三%)、製造業では鉄鋼・非鉄金属・金属製品製造業が九百八十四件(同六・九%)、「卸売・小売業、飲食店」では飲食店が一千四百十五件(同九・九%)、サービス業では娯楽業が四百二十九件(同三・〇%)などと、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、製造業(二百八十一件、一〇・〇%)、建設業(二百八十件、八・二%)、運輸・通信業(八十八件、二〇・〇%)などが増加し、一方、家庭生活(十九件、一・八%)、空地(十件、一六・九%)などが減少した(第4表参照)。
 イ 大気汚染の発生源別苦情件数
<大気汚染では建設業、製造業の順>
 大気汚染の発生源別苦情件数は、建設業が三千百六十四件(大気汚染苦情件数の二八・九%)と最も多く、次いで、製造業が二千五百二十六件(同二三・〇%)、サービス業が一千八百二十五件(同一六・六%)、「卸売・小売業、飲食店」が六百一件(同五・五%)などとなっている。
 このうち、建設業では総合工事業が一千二百六十九件(同一一・六%)、製造業では木材・木製品製造業が七百五件(同六・四%)、サービス業では廃棄物処理業が七百三十七件(同六・七%)と、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、製造業(二百九件、九・〇%)、建設業(二百二件、六・八%)、サービス業(百七十九件、一〇・九%)、家庭生活(百三十七件、三二・〇%)、「卸売・小売業、飲食店」(百四件、二〇・九%)、空地(六十二件、二六・五%)などが増加し、一方、運輸・通信業(三十一件、一一・六%)、鉱業(十四件、一七・九%)、事務所(七件、九・七%)などが減少した(第4表参照)。
 ウ 悪臭の発生源別苦情件数
<悪臭では製造業、農業の順>
 悪臭の発生源別苦情件数は、製造業が二千三百八十九件(悪臭苦情件数の二二・〇%)と最も多く、次いで、農業が一千七百九十五件(同一六・六%)、家庭生活が一千五百九十八件(同一四・七%)、サービス業が一千百七十四件(同一〇・八%)、「卸売・小売業、飲食店」が八百九件(同七・五%)などとなっている。
 このうち、製造業では「食料品、飲料等製造業」が六百八十七件(同六・三%)、農業では畜産・養蚕農業が一千二件(同九・二%)、サービス業では廃棄物処理業が三百八十八件(同三・六%)などと、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、家庭生活(二百五十七件、一九・二%)、「卸売・小売業、飲食店」(百十五件、一六・六%)、農業(百五件、六・二%)、建設業(九十二件、一七・七%)などが増加し、一方、電気・ガス・熱供給・水道業(十八件、一五・八%)などが減少した(第4表参照)。
 エ 水質汚濁の発生源別苦情件数
<水質汚濁では製造業、サービス業の順>
 水質汚濁の発生源別苦情件数は、製造業が一千五百七十六件(水質汚濁苦情件数の二二・〇%)と最も多く、次いで、サービス業が七百四十二件(同一〇・四%)、家庭生活が七百五件(同九・八%)、農業が五百六十五件(同七・九%)、「卸売・小売業、飲食店」が五百四件(同七・〇%)などとなっている。
 このうち、製造業では「食料品、飲料等製造業」が六百七十七件(同九・四%)、サービス業では廃棄物処理業が百五十一件(同二・一%)、農業では畜産・養蚕農業が三百九十八件(同五・六%)と、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、家庭生活(百三十一件、二二・八%)、農業(七十六件、一五・五%)、建設業(七十四件、二二・六%)、サービス業(五十五件、八・〇%)などが増加し、一方、鉱業(十三件、二二・〇%)などが減少した。
 なお、いずれの発生源とも特定できない苦情が一千五百七十六件(同二二・〇%)と約二割を占めているが、これは、水質汚濁公害の発生源の特定が難しいことを示している(第4表参照)。
 オ 振動の発生源別苦情件数
<振動では建設業、製造業の順>
 振動の発生源別苦情件数は、建設業が九百九十五件(振動苦情件数の五三・〇%)と最も多く、次いで、製造業が二百七十五件(同一四・七%)、道路が二百五十六件(同一三・六%)、サービス業が九十六件(同五・一%)などとなっている。
 このうち、建設業では総合工事業が五百八十九件(同三一・四%)、製造業では鉄鋼・非鉄金属・金属製品製造業が百十八件(同六・三%)などと、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、鉱業(十件、一六六・七%)などが増加し、一方、道路(七十二件、二二・〇%)、運輸・通信業(六十一件、四三・六%)、製造業(三十一件、一〇・一%)、建設業(二十二件、二・二%)などが減少した(第4表参照)。
 カ 土壌汚染の発生源別苦情件数
<土壌汚染では製造業、サービス業の順>
 土壌汚染の発生源別苦情件数は、製造業が四十二件(土壌汚染苦情件数の一八・三%)と最も多く、次いで、サービス業が三十五件(同一五・三%)、建設業が三十一件(同一三・五%)、農業が二十八件(同一二・二%)、家庭生活が十六件(同七・〇%)などとなっている。
 このうち、製造業では鉄鋼・非鉄金属・金属製品製造業が十二件(同五・二%)、サービス業では廃棄物処理業が十三件(同五・七%)、建設業では総合工事業が十二件(同五・二%)などと、それぞれ最も多くなっている。
 また、前年度に比べて、農業(十四件、一〇〇・〇%)、製造業(八件、二三・五%)、運輸・通信業(五件、一〇〇・〇%)などが増加し、一方、建設業(八件、二〇・五%)、鉱業(四件、一〇〇・〇%)などが減少した(第4表参照)。
 キ 地盤沈下の発生源別苦情件数
<地盤沈下では建設業、サービス業の順>
 地盤沈下の苦情件数を発生源別にみると、建設業が四件(地盤沈下苦情件数の一七・四%)、サービス業が三件(同一三・〇%)、農業、「運輸・通信業」及び道路が各二件(八・七%)などとなっている(第4表参照)。
 (二) 典型七公害以外の発生源別苦情件数
<典型七公害以外では空地、道路の順>
 典型七公害以外の発生源別苦情件数は、空地が五千九百四十四件(典型七公害以外の苦情件数の三五・一%)と最も多く、次いで、道路が二千八十一件(同一二・三%)、家庭生活が一千六百六十六件(同九・八%)、建設業が一千二百八十五件(同七・六%)、農業が九百六十六件(同五・七%)、サービス業が七百三十九件(同四・四%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、建設業(八十三件、六・九%)、製造業(五十件、一一・三%)などが増加し、一方、空地(一千百十四件、一五・八%)、道路(六百七十件、二四・四%)、家庭生活(三十四件、二・〇%)などが減少した(第4表参照)。

四 被害の発生地域別苦情件数
<住居地域に多い被害>
 被害の発生地域別苦情件数は、都市計画法による都市計画区域が五万五千八百七十三件(全公害苦情件数の八九・七%)、都市計画区域以外の地域が六千四百四十二件(同一〇・三%)となっている。
 さらに、都市計画法による都市計画区域の苦情件数を用途地域別にみると、住居地域(第一種・第二種住居専用地域を含む。)が二万六千六百五十九件(同四二・八%)と最も多く、次いで、市街化調整区域が九千五百六十二件(同一五・三%)、準工業地域が五千七百六十五件(同九・三%)、その他の地域(用途地域未線引きの区域をいう。)が四千九百九十六件(同八・〇%)、商業地域が三千四百九十一件(同五・六%)、工業・工業専用地域が二千九百三件(同四・七%)、近隣商業地域が二千四百九十七件(同四・〇%)となっている(第2図参照)。

五 被害の種類別苦情件数
<被害の約八割が感覚的・心理的被害>
 被害の種類別苦情件数は、感覚的・心理的被害が四万八千六百十七件(全公害苦情件数の七八・〇%)と最も多く、次いで、健康被害が二千八百七十四件(同四・六%)、財産被害が二千四百三十件(同三・九%)、動・植物被害が一千七百八十六件(同二・九%)などとなっている。

六 受付機関別の苦情件数
<市町村の受付が九割>
 受付機関別の苦情件数は、市町村が五万六千九十七件(全公害苦情件数の九〇・〇%)、都道府県(出先及び附属機関を含む。)が六千二百十八件(同一〇・〇%)となっている。
 このうち、市町村では市が四万六千四百九十八件(同七四・六%)、町村が九千五百九十九件(同一五・四%)となっており、さらに、市では大都市(東京都特別区及び政令指定都市)が一万一千四百五十五件(同一八・四%)、その他の市が三万五千四十三件(同五六・二%)となっている。

七 都道府県別の苦情件数
 (一) 都道府県別苦情件数
<東京都、埼玉県、愛知県の順、上位八都府県で全体の約五割>
 都道府県別の苦情件数は、東京都が六千五百十六件(全公害苦情件数の一〇・五%)と最も多く、次いで、埼玉県が五千五百六十四件(同八・九%)、愛知県が四千七百四十六件(同七・六%)、大阪府が四千四百十二件(同七・一%)、兵庫県が二千九百五十六件(同四・七%)、福岡県が二千八百九十七件(同四・六%)、神奈川県が二千八百八十件(同四・六%)、千葉県が二千八百七十九件(同四・六%)などとなっており、上位八都府県の合計で三万二千八百五十件(同五二・七%)と、全体の約五割となっている。
 また、前年度に比べて、東京都(二百五十四件、四・一%)、新潟県(百七十一件、二九・一%)、京都府(百四十八件、一三・四%)、岐阜県(百二十九件、一四・八%)、滋賀県(百二十一件、一〇・三%)、岡山県(百二十一件、一八・八%)など三十都道府県が増加し、福岡県(三百八十八件、一一・八%)、愛知県(二百十九件、四・四%)、沖縄県(百十九件、一七・二%)、群馬県(百四件、八・〇%)など十七県が減少した。
 次に、人口十万人当たりの苦情件数をみると、全国平均は四九・五件で、前年度に比べて〇・六件増加した。また、都道府県別にみると、滋賀県が九九・八件(前年度比八・五件増)と最も多く、次いで、埼玉県が八一・七件(同一・八件減)、栃木県が七七・〇件(同一・六件増)、愛知県が六八・八件(同三・五件減)、宮崎県が六七・四件(同〇・六件減)、香川県が六一・二件(同一一・二件増)、茨城県が五九・八件(同三・六件増)、群馬県が五九・七件(同五・四件減)などとなっている(第3図第5表参照)。
 (二) 典型七公害の都道府県別苦情件数
<典型七公害では東京都、大阪府の順>
 典型七公害の苦情件数を都道府県別にみると、東京都が五千六百九件(典型七公害の苦情件数の一二・四%)と最も多く、次いで、大阪府が三千七百四十八件(同八・三%)、愛知県が三千五百二十四件(同七・八%)、埼玉県が三千七十五件(同六・八%)、神奈川県が二千八百三件(同六・二%)、兵庫県が二千百六十八件(同四・八%)、千葉県が一千八百三十八件(同四・一%)、福岡県が一千六百六十件(同三・七%)などとなっている。
 次に、人口十万人当たりの苦情件数をみると、愛知県が五一・一件(前年度比二・七件増)と最も多く、次いで、滋賀県が四八・五件(同七・八件増)、東京都が四七・六件(同三・〇件増)、栃木県が四六・一件(同八・四件増)、長野県が四五・四件(同一・〇件減)などとなっている。
 (三) 典型七公害の種類別・都道府県別苦情件数
 ア 騒 音
<騒音は東京都、大阪府の順>
 騒音の苦情件数は、東京都が二千九百二十九件(騒音苦情件数の二〇・五%)と最も多く、次いで、大阪府が一千五百四十七件(同一〇・八%)、愛知県が一千百六十二件(同八・一%)、神奈川県が一千百三件(同七・七%)、埼玉県が九百五十九件(同六・七%)などとなっており、上位五都府県の合計で七千七百件(同五三・九%)となっている。
 また、前年度に比べて、東京都(百三十一件、四・七%)、大阪府(百十六件、八・一%)、兵庫県(九十九件、一五・八%)、岐阜県(七十二件、八〇・〇%)、愛知県(五十四件、四・九%)、茨城県(三十四件、一八・一%)など三十六都道府県が増加し、千葉県(五十八件、一〇・二%)、神奈川県(五十三件、四・六%)、宮城県(三十六件、一四・〇%)、宮崎県(三十件、二二・二%)など十一県が減少した。
 イ 大気汚染
<大気汚染は東京都、埼玉県の順>
 大気汚染の苦情件数は、東京都が一千八十件(大気汚染苦情件数の九・九%)と最も多く、次いで、埼玉県が一千二十六件(同九・四%)、愛知県が八百九十六件(同八・二%)、神奈川県が八百八十一件(同八・〇%)、大阪府が八百二十九件(同七・六%)、兵庫県が六百十件(同五・六%)、千葉県が四百五十七件(同四・二%)などとなっており、上位七都府県の合計で五千七百七十九件(同五二・七%)となっている。
 また、前年度に比べて、埼玉県(百五十八件、一八・二%)、東京都(百四十四件、一五・四%)、愛知県(百一件、一二・七%)、神奈川県(九十八件、一二・五%)、群馬県(四十八件、三〇・四%)、茨城県(四十七件、二五・〇%)など三十六都道府県が増加し、兵庫県(百一件、一四・二%)、高知県(三十件、三一・九%)、広島県(二十七件、一三・八%)、宮崎県(十九件、二六・〇%)など十一県が減少した。
 ウ 悪 臭
<悪臭は東京都、愛知県の順>
 悪臭の苦情件数は、東京都が一千四十四件(悪臭苦情件数の九・六%)と最も多く、次いで、愛知県が八百八十八件(同八・二%)、大阪府が七百六十八件(同七・一%)、埼玉県が六百六十六件(同六・一%)、千葉県が五百三十九件(同五・〇%)、神奈川県が四百五十四件(同四・二%)、福岡県が四百十八件(同三・九%)、兵庫県が三百六十四件(同三・四%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、埼玉県(百三件、一八・三%)、京都府(六十九件、二六・三%)、千葉県(六十六件、一四・〇%)、静岡県(五十一件、二七・七%)、愛媛県(五十件、四四・二%)、東京都(四十九件、四・九%)、大分県(四十九件、三八・九%)など三十二都道府県が増加し、神奈川県(九十五件、一七・三%)、兵庫県(五十三件、一二・七%)、宮城県(四十九件、二六・二%)、長野県(二十三件、一一・七%)など十三府県が減少した。
 エ 水質汚濁
<水質汚濁は愛知県、福岡県の順>
 水質汚濁の苦情件数は、愛知県が四百四十八件(水質汚濁苦情件数の六・三%)と最も多く、次いで、福岡県が四百十七件(同五・八%)、大阪府が三百七十八件(同五・三%)、兵庫県が三百二十七件(同四・六%)、長野県が三百十三件(同四・四%)、広島県が二百七十六件(同三・九%)、岐阜県が二百五十六件(同三・六%)、静岡県が二百四十八件(同三・五%)、埼玉県が二百四十三件(同三・四%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、栃木県(九十一件、六五・九%)、新潟県(八十二件、九四・三%)、兵庫県(六十七件、二五・八%)、佐賀県(四十七件、四二・〇%)、岡山県(三十七件、一八・二%)、鹿児島県(三十四件、三一・五%)、滋賀県(三十三件、一六・三%)など二十五都府県が増加し、長野県(四十一件、一一・六%)、高知県(三十一件、三九・二%)、熊本県(二十六件、二一・一%)、山口県(二十件、一八・三%)など十九道県が減少した。
 オ 振 動
<振動は東京都、大阪府の順>
 振動の苦情件数は、東京都が四百三十七件(振動苦情件数の二三・三%)と最も多く、次いで、大阪府が二百二十件(同一一・七%)、神奈川県が百六十五件(同八・八%)、埼玉県が百六十二件(同八・六%)、兵庫県が百三十五件(同七・二%)、愛知県が百十六件(同六・二%)、千葉県が百四件(同五・五%)などとなっており、上位四都府県の合計で九百八十四件(同五二・四%)となっている。
 また、前年度に比べて、埼玉県(四十三件、三六・一%)、静岡県(十一件、七三・三%)、福島県(九件、三〇〇・〇%)、富山県(八件、四〇〇・〇%)、宮崎県(八件、一三三・三%)など二十五県が増加し、大阪府(百二十一件、三五・五%)、兵庫県(九十九件、四二・三%)、神奈川県(二十五件、一三・二%)、茨城県(十二件、四四・四%)など二十一都道府県が減少した。
 カ 土壌汚染
<土壌汚染は千葉県、栃木県の順>
 土壌汚染の苦情件数は、千葉県が二十三件(土壌汚染苦情件数の一〇・〇%)と最も多く、次いで、栃木県が二十二件(同九・六%)、茨城県及び埼玉県が各十八件(同七・九%)、東京都が十四件(同六・一%)、長野県が十三件(同五・七%)、愛知県が十二件(同五・二%)などとなっている。
 また、前年度に比べて、栃木県(十二件、一二〇・〇%)、茨城県(十件、一二五・〇%)、長野県(六件、八五・七%)、東京都(五件、五五・六%)など二十都道県が増加し、千葉県(六件、二〇・七%)、大阪府(六件、六〇・〇%)、福岡県(三件、三七・五%)、宮崎県(三件、四二・九%)、静岡県(三件、七五・〇%)など十八府県が減少した。
 キ 地盤沈下
 地盤沈下の苦情件数は、福岡県が三件(地盤沈下苦情件数の一三・〇%)と最も多く、次いで、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、愛知県、大阪府及び奈良県が各二件(同八・七%)、宮城県、栃木県、群馬県及び埼玉県が各一件(同四・三%)となっており、十三都府県で地盤沈下の苦情を受け付けた。

八 複合型公害の苦情件数
<複合型公害は全体の約二割、苦情一件当たり平均二・二件の公害>
 公害苦情には、申し立てられる公害の種類が一種類のもの(単独型公害)と、主な公害と併せて関連する一種類若しくは複数の公害(関連公害)が申し立てられるもの(複合型公害)がある。
 単独型及び複合型公害別にみると、単独型公害が五万三百九十八件(全公害苦情件数の八〇・九%)、複合型公害が一万一千九百十七件(同一九・一%)となっている。
 また、複合型公害において、主な公害と関連公害を合わせた延べ苦情件数は二万五千八百六十件(複合型公害の苦情件数の二一七・〇%)となっており、複合型公害においては平均二・一七件の公害の種類が申し立てられている。

第二 公害苦情の処理状況

一 公害苦情の取扱件数
<取扱件数は約七万件で、うち直接処理した苦情は約五万七千三百件>
 平成八年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で取り扱った公害苦情件数は六万九千九百五十二件である。その内訳は、八年度に新たに受け付けた苦情件数が六万二千三百十五件、前年度から繰り越された苦情件数が七千六百三十七件となっている。
 一方、取り扱った苦情の処理状況は、公害苦情相談窓口で直接処理された苦情件数が五万七千三百四十一件、他へ移送された苦情件数が一千八件、翌年度へ繰り越された苦情件数が八千六百七十件などとなっている(第6表参照)。

二 公害苦情の処理率
<処理率は約八割>
 平成八年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で取り扱った苦情件数から他へ移送された苦情件数を除いた件数のうち、同年度内に処理された苦情件数の割合(処理率)は八三・二%である(第6表参照)。

三 苦情申立人の立場別処理件数
<苦情申立ての四分の三が被害者又は家族から>
 苦情の申立人(仲介者)の立場別処理件数は、「被害者又は家族」が四万二千七百三十一件(直接処理件数の七四・五%)と最も多く、次いで、「被害者の代表」が六千七百十八件(同一一・七%)、「公的機関が仲介」したものが二千三百二十四件(同四・一%)、「第三者が仲介」したものが一千二百三十三件(同二・二%)などとなっている。

四 処理に要した期間別処理件数
<一か月以内に約七割を処理>
 苦情の申立てから処理までに要した期間別処理件数は、「一週間以内」が三万一千六百六十九件(直接処理件数の五五・二%)と最も多く、次いで、「一か月以内」が七千七百五十一件(同一三・五%)、「三か月以内」が五千五百十四件(同九・六%)、「六か月以内」が五千七百二十九件(同一〇・〇%)、「一年以内」が二千八百八十九件(同五・〇%)、「一年超」が一千五百五十九件(同二・七%)などとなっている。
 なお、「一週間以内」及び「一か月以内」を合わせると三万九千四百二十件(同六八・七%)となり、直接処理された苦情の約七割が一か月以内に処理されている(第4図参照)。

五 被害の発生態様別処理件数
<一時的・一過性現象が約三割>
 被害の発生態様別処理件数は、「一時的・一過性現象」が一万七千五百九十七件(公害主管課等処理件数(五万六千二百七十二件)の三一・三%)と最も多く、次いで、「経常的な発生」が一万五千二百十三件(同二七・〇%)、「季節的・周期的発生」が八千五百五十件(同一五・二%)、「一定期間の常時発生」が五千四百六十四件(同九・七%)などとなっている。

六 苦情の対象となった時間帯別処理件数
<昼間、時間に無関係、一日中、夜間、朝方の順>
 苦情の対象となった時間帯別処理件数は、「昼間」が一万八千五百二十一件(公害主管課等処理件数の三二・九%)と最も多く、次いで、「時間に無関係」が一万二千三十八件(同二一・四%)、「一日中」が六千六百九十六件(同一一・九%)、「夜間」が四千八百五十九件(同八・六%)、「朝方」が三千百三件(同五・五%)などとなっている。

七 公害発生源の立地と被害者居住の先後関係別処理件数
<「被害者の居住が先」が約二割、「発生源の立地が先」が約一割>
 公害発生源の立地と被害者居住の先後関係別処理件数は、「被害者の居住が先」が一万三千九百五十七件(公害主管課等処理件数の二四・八%)、「発生源の立地が先」が五千九百七十九件(同一〇・六%)、「被害者の居住後に施設、機械を増設」が五百七十七件(同一・〇%)などとなっている。

八 法令との関係別処理件数
<公害規制法令違反は約六千九百件>
 苦情の対象となった事業活動等の法令との関係別処理件数は、次のとおりである。
 公害規制法令との関係では、「法令に違反している」が六千九百四十一件(公害主管課等処理件数の一二・三%)で、「法令に違反していない」が三万百九十八件(同五三・七%)などとなっている。
 また、公害規制法令以外の法令との関係では、「法令に違反している」が五千七百五十四件(同一〇・二%)、「法令に違反していない」が二万七千六百五十四件(同四九・一%)などとなっている。

九 苦情の処理のために行政当局が採った措置別処理件数
<約七割が発生源側に対する行政指導を実施>
 苦情の処理のために行政当局が採った措置別処理件数は、「発生源側に対する行政指導」が三万六千八百八十一件(公害主管課等処理件数の六五・五%)と最も多く、次いで、「原因の調査」が五千九百六十件(同一〇・六%)、「申立人に対する説得」が二千二百二十八件(同四・〇%)、「当事者間の話合い」が二千百八件(同三・七%)などとなっている。

十 文書による勧告・命令等の有無別処理件数
<約一千六百件の苦情につき、行政当局が文書による勧告・命令等を発出>
 苦情の処理のために行政当局により文書による勧告・命令等がなされたかどうかの有無別処理件数は、「文書による勧告・命令等がなされた」が一千五百六十八件(公害主管課等処理件数の二・八%)、「なされなかった」が五万四千七百四件(同九七・二%)となっている。さらに、「文書による勧告・命令等がなされた」場合について、その内容をみると、「文書勧告・命令」が一千三百九十七件(同二・五%)、「その他の措置」が百七十一件(同〇・三%)となっている。

十一 苦情申立人の満足度別処理件数
<満足+一応満足=五〇・〇%、あきらめ+不満=九・八%>
 苦情の処理結果に対する申立人の満足度別処理件数は、「一応満足」が一万八千六百九十七件(公害主管課等処理件数の三三・二%)と最も多く、次いで、「満足」が九千四百三十五件(同一六・八%)、「あきらめ」が三千四百四十九件(同六・一%)、「不満」が二千八十六件(同三・七%)であり、「不明」が二万二千六百五件(同四〇・二%)となっている。
 なお、「満足」及び「一応満足」を合わせた件数と、「あきらめ」及び「不満」を合わせた件数の比は、五対一となっている。

十二 防止対策実施の有無別処理件数等
 苦情の処理のために防止対策を講じたかどうか、さらに、防止対策を講じたものについての内容は、次のとおりである。
 (一) 防止対策実施の有無別処理件数
<約六割が防止対策を実施>
 苦情の処理のために防止対策を講じたかどうかについては、「講じた」が三万六千五百四十五件(公害主管課等処理件数の六四・九%)、「講じなかった」が九千六百九十八件(同一七・二%)、「不明」が一万二十九件(同一七・八%)となっている。さらに、「防止対策を講じた」場合についての講じた者についてみると、発生源者が三万一千五十一件(同五五・二%)、行政機関が四千百九件(同七・三%)、被害者が四百五十九件(同〇・八%)などとなっている。
 (二) 実施した防止対策の内容別延べ件数
<作業方法の改善等が三三・九%、原因物質の撤去等が二七・五%>
 苦情処理のために講じた防止対策(三つまでの複数回答)の延べ件数は四万二千二百三十二件で、そのうち「作業方法、使用方法の改善」が一万四千三百十四件(防止対策を講じた件数の三三・九%)と最も多く、次いで、「原因物質の撤去、回収、除去」が一万一千六百三十件(同二七・五%)、「機械、施設の改善」が四千二百五十件(同一〇・一%)、「営業・操業停止、行為の中止」が三千六百五十五件(同八・七%)などとなっている。

十三 当事者が調停等の申請手続をした機関別処理件数
<調停・裁判等申請は約百件>
 調停・裁判等の申請手続の有無及び申請機関別処理件数は、「調停・裁判等の申請手続をした」が九十八件(公害主管課等処理件数の〇・二%)、「していない」が四万八千三十九件(同八五・四%)となっている。

第三 公害苦情処理事務担当の職員数

<全国で約一万三千人>
 全国の地方公共団体で公害苦情の処理を担当している職員数は一万三千三十六人である。


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十一月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成九年十一月分結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成九年十一月の十五歳以上人口は、一億六百九十三万人(男子:五千百九十四万人、女子:五千四百九十九万人)となっている。
 これを就業状態別にみると、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千七百五十七万人、非労働力人口は三千九百二十四万人で、前年同月に比べそれぞれ四十八万人(〇・七%)増、四十万人(一・〇%)増となっている。
 また、労働力人口のうち、就業者は六千五百二十九万人、完全失業者は二百二十八万人で、前年同月に比べそれぞれ三十二万人(〇・五%)増、十六万人(七・五%)増となっている。

◇就業者

 (一) 就業者

 就業者数は六千五百二十九万人で、前年同月に比べ三十二万人(〇・五%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(五十二万人増)に比べ縮小している。男女別にみると、男子は三千八百七十九万人、女子は二千六百五十万人で、前年同月と比べると、男子は八万人(〇・二%)の増加、女子は二十四万人(〇・九%)の増加となっている。

 (二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百九十五万人、自営業主・家族従業者は一千百十九万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は四十六万人(〇・九%)増と、前月に引き続き増加し、増加幅は前月(六十一万人増)に比べ縮小している。また、自営業主・家族従業者は十二万人(一・一%)の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百五十七万人で、四十四万人(〇・八%)増加
 ○常 雇…四千七百五十五万人で、二十七万人(〇・六%)増加
 ○臨時雇…四百八十二万人で、十二万人(二・六%)増加
 ○日 雇…百二十万人で、四万人(三・四%)増加

 (三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百十万人で、七万人(二・二%)減少
○建設業…六百六十四万人で、二十六万人(三・八%)減少
○製造業…一千四百三十八万人で、十一万人(〇・八%)減少
○運輸・通信業…四百十五万人で、七万人(一・七%)増加
○卸売・小売業、飲食店…一千四百七十六万人で、四万人(〇・三%)減少
○サービス業…一千六百六十二万人で、六十九万人(四・三%)増加
 対前年同月増減をみると、サービス業は前月(五十四万人増)に比べ増加幅が拡大している。運輸・通信業は前月(十四万人増)に比べ増加幅は縮小している。一方、建設業は昨年七月以来一年四か月ぶりに減少となっている。「卸売・小売業、飲食店」は八月以来三か月ぶりに減少となっている。農林業及び製造業は前月(それぞれ十六万人減、三十万人減)に比べ減少幅が縮小している。
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四十六万人で、十六万人(二・八%)減少
○製造業…一千三百十五万人で、三万人(〇・二%)減少
○運輸・通信業…三百九十五万人で、十万人(二・六%)増加
○卸売・小売業、飲食店…一千百七十五万人で、八万人(〇・七%)減少
○サービス業…一千四百十四万人で、五十五万人(四・〇%)増加
 対前年同月増減をみると、サービス業は前月(五十一万人増)に比べ増加幅が拡大している。運輸・通信業は前月(十二万人増)に比べ増加幅は縮小している。一方、建設業は昨年の十月以来一年一か月ぶりに減少となっている。「卸売・小売業、飲食店」は前月の同数(増減なし)から減少となっている。製造業は前月(二十四万人減)に比べ減少幅が縮小している。

 (四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百五十六万人で、七万人(〇・四%)減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百七十七万人で、七万人(〇・四%)増加
○五百人以上規模…一千二百六十九万人で、三十八万人(三・一%)増加

 (五) 就業時間

 非農林業の従業者(就業者から休業者を除いた者)一人当たりの平均週間就業時間は四一・四時間で、前年同月に比べ二・六時間の減少となっている。
 このうち、非農林業雇用者についてみると、男子は四五・三時間、女子は三五・二時間で、前年同月に比べ男子は二・九時間の減少、女子は二・五時間の減少となっている。
 また、非農林業の従業者の総投下労働量は、延べ週間就業時間(平均週間就業時間×従業者総数)で二五・二九億時間となっており、前年同月に比べ一・四五億時間(五・四%)の減少となっている。

 (六) 転職希望者

 就業者(六千五百二十九万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は五百七十七万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百二十六万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十三万人(二・三%)増、十万人(四・六%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)をみると、男子は八・六%、女子は九・一%で、前年同月に比べ男子は同率、女子は〇・三ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

 (一) 完全失業者数

 完全失業者数は二百二十八万人で、前年同月に比べ十六万人(七・五%)の増加となっている。男女別にみると、男子は百三十六万人、女子は九十二万人で、前年同月に比べ男子は十万人(七・九%)の増加、女子は七万人(八・二%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…五十六万人で、三万人増加
○自発的な離職による者…九十七万人で、十二万人増加
○学卒未就職者…九万人で、一万人増加
○その他の者…六十万人で、八万人増加

 (二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は三・四%で、前年同月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男女共に三・四%で、前年同月に比べ男子は〇・二ポイントの上昇、女子は〇・三ポイントの上昇となっている。
 また、年齢階級別完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
〔男女計〕
 ○十五〜二十四歳……六・〇%で、〇・六ポイント上昇
 ○二十五〜三十四歳…四・二%で、〇・一ポイント上昇
 ○三十五〜四十四歳…二・四%で、前年同月と同率
 ○四十五〜五十四歳…二・一%で、〇・一ポイント上昇
 ○五十五〜六十四歳…四・二%で、〇・七ポイント上昇
 ○六十五歳以上………一・七%で、〇・二ポイント上昇
〔男 子〕
 ○十五〜二十四歳……六・三%で、〇・四ポイント上昇
 ○二十五〜三十四歳…三・二%で、〇・一ポイント低下
 ○三十五〜四十四歳…二・四%で、〇・一ポイント上昇
 ○四十五〜五十四歳…二・一%で、〇・二ポイント上昇
 ○五十五〜六十四歳…五・四%で、一・〇ポイント上昇
 ○六十五歳以上………二・三%で、〇・二ポイント上昇
〔女 子〕
 ○十五〜二十四歳……六・〇%で、一・〇ポイント上昇
 ○二十五〜三十四歳…五・七%で、〇・二ポイント上昇
 ○三十五〜四十四歳…二・四%で、〇・三ポイント低下
 ○四十五〜五十四歳…二・〇%で、前年同月と同率
 ○五十五〜六十四歳…一・九%で、〇・一ポイント低下
 ○六十五歳以上………〇・六%で、前年同月と同率

 (三) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は三・五%で、比較可能な昭和二十八年以降で最も高い水準が続いている。男女別にみると、男女共に三・五%で、前月に比べ男子は〇・一ポイントの上昇、女子は同率となっている。





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月例経済報告(一月報告)


経 済 企 画 庁


 概 観

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。設備投資は、製造業を中心に緩やかに増加している。
 産業面をみると、鉱工業生産は、弱含んでいる。企業収益は、中小企業では減益が見込まれるなど全体として伸びが低下している。また、企業の業況判断は、厳しさが増している。
 雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。
 輸出は、強含みに推移している。輸入は、おおむね横ばいで推移している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十二月は、月央にかけて百三十一円台まで下落した後、一時百二十七円台まで上昇したが、その後百二十九円台から百三十円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、やや弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十二月はやや上昇した。長期金利は、十二月は一進一退で推移した。株式相場は、十二月は大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、十一月は前年同月比三・二%増となった。
 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、四〜六月期前期比年率三・三%増の後、七〜九月期は同三・一%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小した。十二月の長期金利(三十年物国債)は、上旬に上昇したが、その後は総じて低下した。十二月の株価(ダウ平均)は、下旬にかけ下落したが、月末持ち直した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定しているものの上昇率がやや高まっている。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は減速している。失業率は、横ばいとなっている。物価上昇率は、高まっている。貿易収支は、改善している。なお、韓国ウォンは、十二月に完全変動相場制に移行した後、一時一ドル二千ウォン台に減価した。
 国際金融市場の十二月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した。アジアの通貨は、総じて減価した。
 国際商品市況の十二月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけて弱含みで推移した。十二月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけては弱含み、おおむね十六ドル台後半から十七ドル台前半での推移となった。

*     *     *

 我が国経済の最近の動向をみると、設備投資は製造業を中心に緩やかに増加しており、純輸出は増加傾向にある。他方、個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。こうした需要動向を背景に、生産は弱含んでいる。雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。また、民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。以上のように、景気はこのところ足踏み状態が続いており、家計や企業の景況感は厳しさを増し、個人消費や設備投資にも影響を及ぼしている。
 政府としては、家計や企業の経済の先行きに対する不透明感を払拭し、我が国経済を民間需要中心の自律的な安定成長軌道に乗せていくため、平成九年十一月十八日に決定した「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」を確実に実行に移すとともに、二兆円規模の所得税、個人住民税の特別減税を行うこととし、さらに法人課税、有価証券取引税等の金融・証券関係税制、地価税・土地譲渡益課税等の土地税制等の見直しを行うこととした。また、我が国の金融システムの安定性確保と預金者保護のための諸施策を講じることとした。
 なお、十二月二十日に平成十年度の実質経済成長率を一・九%程度と見込んだ「平成十年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議了解し、さらに十二月二十五日には七十七兆六千七百億円(前年度当初比〇・四%増)の平成十年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。また、平成九年十二月二十四日に「経済構造の変革と創造のための行動計画」のフォローアップを閣議決定した。

1 国内需要
―個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態―

 個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で九月二・六%増の後、十月は一・一%増(前月比一・一%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比〇・一%減、勤労者以外の世帯では同三・九%増となった。形態別にみると、耐久財等は減少し、サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比一・一%増、勤労者世帯では同〇・一%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で七月四・五%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で十月一・一%減の後、十一月は四・七%減となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で十月二・三%減の後、十一月二・一%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で十月三・六%減の後、十一月四・五%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十二月は三・八%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で十一月は一・六%減となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、十一月は前年同月比で国内旅行が一・三%減、海外旅行は三・〇%減となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で十月一・四%増の後、十一月(速報)は一・〇%減(事業所規模三十人以上では同一・二%減)となり、うち所定外給与は、十一月(速報)は同〇・〇%(事業所規模三十人以上では同〇・六%増)となった。実質賃金は、前年同月比で十月一・三%減の後、十一月(速報)は三・一%減(事業所規模三十人以上では同三・四%減)となった。なお、平成九年の民間主要企業の年末一時金妥結額(労働省調べ)は前年比二・八%増(前年は同二・八%増)となった。
 住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で十月二・六%増(前年同月比二五・二%減)となった後、十一月は五・四%減(前年同月比二三・五%減)の十万七千戸(年率百二十九万戸)となった。十一月の着工床面積(季節調整値)は、前月比三・四%減(前年同月比二七・九%減)となった。十一月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比〇・七%増(前年同月比三九・二%減)、貸家は同七・〇%減(同二二・八%減)、分譲住宅は同四・一%減(同三・六%増)となっている。
 設備投資は、製造業を中心に緩やかに増加している。
 日本銀行「企業短期経済観測調査」(十二月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の九年度設備投資計画は、製造業で前年度比九・九%増(九月調査比〇・九%上方修正)、非製造業で同一・三%増(同一・二%下方修正)となっており、全産業では同四・一%増(同〇・四%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比二・九%増(九月調査比一・〇%上方修正)、非製造業で同五・四%減(同〇・二%下方修正)となり、中小企業では、製造業で同三・四%増(同一・〇%上方修正)、非製造業で同一一・〇%減(同二・九%上方修正)となっている。
 なお、九年七〜九月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると、前年同期比で五・九%増(うち製造業一〇・四%増、非製造業三・七%増)となった。
 先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で九月は一二・三%減(前年同月比一・三%増)の後、十月は一六・三%増(同一四・三%減)となり、製造業は底堅く推移しているものの、全体としては弱含みで推移している。民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、前月比で十月一二・〇%減の後、十一月は五・一%増(前年同月比一一・九%増)となった。内訳をみると、製造業は前月比二・三%減(前年同月比一六・三%増)、非製造業は同一五・六%増(同一〇・四%増)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で九月二四・〇%減の後、十月は六・五%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で十月一七・七%減の後、十一月は六・七%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で十月二一・一%減の後、十一月は七・六%減となった。

2 生産雇用
―雇用情勢は、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、弱含んでいる。在庫は十一月は増加した。
 鉱工業生産は、前月比で十月〇・一%増の後、十一月(速報)は、電気機械、輸送機械等が減少したことから、四・一%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で十二月は機械、化学等により一・四%増の後、一月は機械、化学等により四・二%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で十月〇・二%減の後、十一月(速報)は生産財、資本財等が減少したことから、五・三%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で十月〇・五%減の後、十一月(速報)は、輸送機械、電気機械等が減少したものの、化学、鉄鋼等が増加したことから、一・四%増となった。また、十一月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一二三・八と前月を七・五ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は三か月連続で減少し、在庫は二か月連続で減少した。輸送機械では、生産、在庫ともに十一月は減少した。化学では、生産は十一月は減少し、在庫は四か月連続で増加した。
 雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、十月〇・七〇倍の後、十一月〇・六九倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、十月一・一七倍の後、十一月一・一七倍となった。雇用者数は、伸びが鈍化している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、十一月は前年同月比〇・九%増(前年同月差四十六万人増)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、十月前年同月比〇・八%増(季節調整済前月比〇・一%増)の後、十一月(速報)は同一・一%増(同〇・五%増)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・一%増)、産業別には製造業では同〇・四%減となった。十一月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差一万人増の二百三十六万人、完全失業率(同)は、十月三・五%の後、十一月三・五%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では十月前年同月比〇・七%増(季節調整済前月比二・二%減)の後、十一月(速報)は同〇・八%減(同〇・四%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・六%減)。
 前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、十二月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業、非製造業ともに過剰感にやや高まりがみられる。
 企業の動向をみると、企業収益は、中小企業では減益が見込まれるなど全体として伸びが低下している。また、企業の業況判断は、厳しさが増している。
 前記「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、主要企業(全産業)では、九年度上期の経常利益は前年同期比八・四%の増益(除く電力・ガスでは同五・七%の増益)の後、九年度下期には同一・〇%の減益(除く電力・ガスでは同一・五%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では九年度上期に前年同期比一二・四%の増益の後、九年度下期には同三・四%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度上期に前年同期比六・三%の減益の後、九年度下期には同三・一%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では九年度上期に四・〇七%となった後、九年度下期は四・二〇%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度上期に一・六二%となった後、九年度下期は一・五四%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超に転じ、非製造業では「悪い」超幅が拡大した。
 また、中小企業の動向を同調査(全国企業)でみると、製造業では、経常利益は九年度上期には前年同期比二・三%の減益の後、九年度下期には同九・五%の減益が見込まれている。また非製造業では、九年度上期に前年同期比一八・八%の減益の後、九年度下期には同四・四%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業とも「悪い」超幅が拡大した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を上回る傾向にある。
 銀行取引停止処分者件数は、十一月は一千二十九件で前年同月比七・二%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、小売業で二・三%の減少となる一方、建設業で二七・五%、卸売業で八・二%の増加となった。

3 国際収支
―貿易・サービス収支の黒字は増加傾向―

 輸出は、強含みに推移している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で十月一一・五%増の後、十一月は七・八%減(前年同月比三・九%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、一般機械等が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。ただし、ASEANは減少した。
 輸入は、おおむね横ばいで推移している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で十月一・九%減の後、十一月は九・二%減(前年同月比二・六%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)等は減少したが、鉱物性燃料等は増加した。同じく地域別にみると、アジア等が減少したが、中近東等は増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、十月に一兆二千三百七十九億円の黒字の後、十一月は一兆一千四百三十二億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
 十月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大するとともに、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、八千七百八十三億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、一兆三千四百八十六億円となった。投資収支(原数値)は、八千八百二十三億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、九千十五億円の赤字となった。
 十二月末の外貨準備高は、前月比七十五億九千万ドル減少して二千二百七億九千万ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十二月は、月央にかけて百三十一円台まで下落した後、一時百二十七円台まで上昇したが、その後百二十九円台から百三十円台で推移した。一方、対マルク相場(インターバンク十七時時点)は、十二月は、月初の七十二円台から、一時七十一円台まで上昇したが、その後はおおむね七十三円台で推移した。

4 物 価
―国内卸売物価はやや弱含みで推移―

 国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、やや弱含みで推移している。
 十一月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(電子レンジ)等が下落したことから、前月比〇・一%の下落(前年同月比〇・九%の上昇)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、十二月調査)によると、製品需給バランスは、引き続き引緩み方向の動きとなっている。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比一・九%の上昇(前年同月比三・七%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比二・一%の上昇(前年同月比二・八%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・三%の上昇(前年同月比一・四%の上昇)となった。
 十二月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬が〇・一%の上昇、中旬が保合い、輸出物価は上旬が一・〇%の上昇、中旬が〇・四%の上昇、輸入物価は上旬が〇・八%の上昇、中旬が〇・二%の上昇、総合卸売物価は上旬が〇・三%の上昇、中旬が〇・一%の上昇となっている。
 企業向けサービス価格は、十一月は前年同月比一・七%の上昇(前月比〇・一%の下落)となった。
 商品市況(月末対比)は、非鉄等の下落により十二月は下落した。十二月の動きを品目別にみると、すず地金等が下落した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十月二・四%の上昇の後、十一月は個人サービスの上昇幅の縮小等により二・二%の上昇(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で十月二・五%の上昇の後、十一月は二・一%の上昇(前月比〇・七%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十一月二・二%の上昇の後、十二月(中旬速報値)は持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等の一方、一般生鮮商品の上昇幅の縮小等があり二・二%の上昇(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で十一月二・〇%の上昇の後、十二月(中旬速報値)は一・七%の上昇(前月比〇・二%の下落)となった。

5 金融財政
―十年度予算(概算)を閣議決定―

 政府は平成九年十二月二十五日、七十七兆六千七百億円(前年度当初比〇・四%増)の平成十年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十二月はやや上昇した。長期金利は、十二月は一進一退で推移した。株式相場は、十二月は大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、十一月は前年同月比三・二%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、十二月は一時低下したものの、おおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、十二月はやや上昇した。なお、日銀は市場安定のため、潤沢な資金供給を行った。
 公社債市場をみると、国債流通利回りは、十二月は一進一退で推移した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は十二月八日に一・五八五%となり、史上最低を更新した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、十一月は短期は〇・〇九六%低下し、長期は〇・〇六一%低下したことから、総合では前月比で〇・〇八九%低下し一・八一九%となった。
 マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、十一月(速報)は三・二%増となった。また、広義流動性でみると、十一月(速報)は三・二%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、十一月(速報)は前年同月比〇・一%減と前年水準を下回った。十二月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、十二月の国内公募事業債の起債実績は九千三百七十億円となった。
 前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、十二月調査)によると、資金繰り判断の「楽である」超幅は縮小し、手元流動性は横ばいで推移している。また、金融機関の貸出態度の「緩い」超幅は大幅に縮小している。中小企業については、「厳しい」超に転じた。
 民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。
 株式市場をみると、日経平均株価は、十二月は大幅に下落した。

6 海外経済
―韓国、IMF支援の受入れを決定―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、四〜六月期前期比年率三・三%増の後、七〜九月期は同三・一%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は十月前月差二十八万七千人増の後、十一月は同四十万四千人増となった。失業率は十一月四・六%となった。物価は安定している。十一月の消費者物価は前月比〇・一%の上昇、十一月の生産者物価(完成財総合)は同〇・二%の下落となった。十月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小した。十二月の長期金利(三十年物国債)は、上旬に上昇したが、その後は総じて低下した。十二月の株価(ダウ平均)は、下旬にかけ下落したが、月末持ち直した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。七〜九月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率三・二%増、フランス同三・六%増、イギリス同三・四%増となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である(鉱工業生産は、ドイツ十一月前月比〇・三%増、フランス十月同三・三%増、イギリス十月同〇・二%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している(十一月の失業率は、ドイツ一一・八%、フランス一二・四%、イギリス五・一%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定しているものの上昇率がやや高まっている(十一月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比一・九%、フランス同一・三%、イギリス同三・七%)。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は減速している。失業率は、横ばいとなっている。物価上昇率は、高まっている。貿易収支は、改善している。なお、韓国ウォンは、十二月に完全変動相場制に移行した後、一時一ドル二千ウォン台に減価した。
 国際金融市場の十二月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)十二月三十一日一一〇・〇、十一月末比一・八%の増価)。内訳をみると、十二月三十一日現在、対円では十一月末比二・一%増価、対マルクでは同一・八%増価した。アジアの通貨は、総じて減価した。
 国際商品市況の十二月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけて弱含みで推移した。十二月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけては弱含み、おおむね十六ドル台後半から十七ドル台前半での推移となった。


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税金365日


所得税の確定申告は正しくお早めに


国 税 庁


 平成九年分の所得税の確定申告は、二月十六日(月)から始まります。申告・納付期限は三月十六日(月)です。期限間近になりますと、税務署は大変混雑し、長時間お待ちいただくようなことになりかねません。申告書は自分で書いて、できるだけお早めに郵送で提出してください。

【正しい確定申告を】

 所得税は、自分の所得の状況を最もよく知っている納税者が、税法に従って自ら自分の所得と税額を正しく計算して申告し、納税するという申告納税制度を採用しています。昨年一年間の所得と税額を正しく計算し、お早めに申告と納税を行ってください。
 確定申告をしなければならないのに期限までに申告をしなかったり、誤った申告をしたりしますと、後で不足の税金を納めなければならないのはもちろん、不足税額の一五%又は一〇%(不正な行為があったような場合には四〇%又は三五%)の割合の加算税が課され、更に、延滞税も納めなければならないことになります。

【確定申告をしなければならない場合】

 次のような場合は、確定申告をしなければなりません。
1 事業をしている場合、不動産収入のある場合、土地や建物を売った場合などで、平成九年中の所得金額の合計額から、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除その他の所得控除の合計額を差し引き、その金額を基に算出した税額が配当控除額を超える場合
2 サラリーマンで、給与の年収が二千万円を超える場合、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が二十万円を超える場合など
 また、確定申告をする必要のないサラリーマンでも、雑損控除や医療費控除、住宅取得等特別控除などを受けることができるときは、確定申告をすれば源泉徴収された所得税が還付されることがあります。
 この還付を受けるための申告書は、二月十五日以前でも提出することができます。申告書はご自分で書いて郵送で提出してください。
 なお、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が二十万円以下であるなどのため、確定申告をする必要のない人でも、還付を受けるために確定申告をする場合には、給与所得や退職所得以外の所得についても併せて申告しなければなりません。

【白色申告者も、収支内訳書の添付を】

 事業所得、不動産所得、山林所得(以下「事業所得等」といいます。)を生ずべき業務を行っている場合(青色申告書を提出する場合を除きます。)は、平成九年分の確定申告書を提出するときに、その年の総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書を添付しなければなりません。
 また、平成七年分又は平成八年分の事業所得等の所得金額の合計額が三百万円を超える場合は、記帳をしなければならないことになっており、このような方はもちろんのこと、それ以外の方でも記帳を基に収支内訳書を正しく記載してください。

【申告書を書くときは】

 申告書を書くときは、「所得税の確定申告の手引き」や「申告書の書きかた」を参考にしてください。「申告書の書きかた」に示されている番号順に記入していくと、所得や税額の計算が簡単にできるようになっています。
 税務署から、申告書用紙が送られている場合は、その用紙で申告してください。
 また、申告書が送られてこない方は、税務署に申告書用紙や「申告書の書きかた」などが用意してありますので、ご利用ください。
 なお、@サラリーマンが、給与所得のほかに不動産所得や雑所得などを申告するときのためには「給与所得のある人の申告書(一般用)の記載例」が、Aサラリーマンで、年末調整を受けた給与以外に所得がなく医療費控除や住宅取得等特別控除などにより源泉徴収された所得税の還付を受ける方のためには、簡単に記載できる「給与所得者の還付申告用の申告書」が税務署に用意してあります。また、申告の必要な所得が公的年金等のみの方のためには、「公的年金等のみの人用の申告書」が用意してありますので、ご利用ください。
 所得や税額の計算の仕方、申告書の書き方などで分からない点がありましたら、お気軽に最寄りの税務相談室や税務署でお尋ねください。また、確定申告の期間中は、税務署のほかに税理士会や大方の市町村でも相談に応じています。

【納税は期限内に】

 確定申告による所得税の納期限は、申告期限と同じ三月十六日(月)です。期限内に納税を済ませてください。
 また、振替納税を利用している方は、あらかじめ指定された預貯金口座の残高を確認しておいてください。
 納期限を過ぎますと、未納となっている税額に対し年一四・六%(五月十六日までは年七・三%)の延滞税がかかります。
 なお、一度に納められないときは、確定申告で納めることになる税額の二分の一以上を三月十六日(月)までに納め、残りの税額を六月一日(月)まで延納することができます。ただし、延納期間中は、延納する税額に対し年七・三%の利子税がかかります。

【振替納税制度のご利用を】

 所得税の納税の方法に、振替納税の制度があります。この制度を利用すれば、金融機関の預貯金口座から振替によって納税することができますから、手数が少なくて済みます。また、うっかり納期限を忘れてしまうこともなくなり、大変便利です。
 振替納税のご利用をお勧めします。
 新たに振替納税を希望される場合は、預貯金先の金融機関か税務署に、「預貯金口座振替依頼書」を提出してください。

【にせ税理士にご注意】

 納税者の依頼による税務代理、税務書類の作成、税務相談は、税理士でない人は行ってはならないことになっています。ところが、確定申告の時期には、税金の申告手続などを税理士に依頼される方が多いことに便乗して、税理士でない人が申告書の作成などを行うことがあります。このような「にせ税理士」は、法律に違反するだけでなく、依頼した方に迷惑がかかる結果になることが多いので、ご注意ください。

消防団活動への参加の呼びかけ


 消防団は、消防本部・消防署(いわゆる常備消防)と同様に、消防組織法という法律に基づいて市町村に設けられている消防機関です。
 消防団は、平成九年四月一日現在、全国で三千六百四十一団が設置されており、九十六万八千八十一名が消防団員として地域の安全を守るために活躍しています。また、この中には、七千名を超える女性消防団員も含まれています。
 消防団は、それぞれの地域の住民によって組織されていますが、この消防団を構成する消防団員の身分は、特別職の地方公務員として位置づけられています。消防団員は、ふだんは本来の職業に就きながら、火災などがあれば、「自分たちの地域は自分たちで守る」という郷土愛護の精神をもっていち早く現場へ駆けつけ、消火活動や救助活動をはじめ、現場付近の警戒、けが人の救護などにあたっています。
 また、消防団は、地震や風水害、林野火災など、多数の動員を必要とする大規模災害では大変重要な戦力になるほか、一人暮らしのお年寄り家庭の防火訪問、火災予防広報活動など、日常におけるきめ細かな消防防災活動を行い、地域における消防防災のリーダーとして活躍しています。
 最近では、平成九年の年明け早々に発生した日本海でのタンカー重油流出事故や七月の鹿児島県出水市で発生した土石流災害などに、多数の消防団員が出動し、消火活動や救助活動などで大活躍しました。
 このように、消防団は、地域の暮らしの安全を守る上で大変重要な役割を果たしており、地域住民の消防団に対する期待は極めて大きいものがあります。
 しかし、その一方で、近年消防団は、社会経済情勢の変化の影響を受けて、いくつかの課題を抱えています。
 第一に、団員数の減少です。団員数は、昭和二十八年当時二百万人以上でしたが、平成二年には百万人を割り込み、減少の一途をたどっています。
 第二は、団員の高齢化です。昭和五十年当時、三十歳未満の団員数は四〇%を超え、四十歳以上の団員数は二〇%に満たなかったのですが、平成九年四月一日現在では三十歳未満の団員数は二六・七%に低下し、逆に四十歳以上の団員数は三〇%を超えており、平均年齢も三十五歳を超えている状況にあります。
 第三は、団員の従事している職業の変化です。かつては農業や自営業に従事する方の占める割合が高かったのですが、社会経済情勢の変化に伴い、現在ではサラリーマンの方の割合が六割を占め、地域によっては平日の昼間の消防力が低下するという問題が生じてきています。
 このような課題に対して、消防庁としては、消防団活動に必要な各種装備や資機材、消防団活動の拠点となる施設などの整備を促進するために市町村へ助成しているほか、消防団員の労苦に報いるため、団員の報酬や出勤手当の改善、団員が消防団活動において万一、負傷した場合などにおいても十分な補償が行えるような制度の充実、企業や事業所に対して消防団活動への理解と協力を呼びかけるなど、様々な施策を推進しているところです。
 団員数の減少、団員の高齢化などに歯止めをかけ、消防団の充実強化を図るためには、ぜひとも青年や女性の皆さんの消防団活動への参加が不可欠です。
 最近、「自分ができることで何か地域のために役に立ちたい」と考えている若い人が増えてきています。消防団では、そのような方々の積極的な参加を心から待っているのです。(消防庁)


 
    <2月12日号の主な予定>
 
 ▽働く女性の実情…………………労 働 省 

 ▽景気予測調査……………………大 蔵 省 
 



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