官報資料版 平成1018





青少年白書のあらまし


―青少年問題の現状と対策―


総 務 庁


 「平成九年度版青少年白書」は、平成十年一月十三日の閣議で配布され、閣議終了後に公表された。
 「青少年白書」は、青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介し、その理解を得るという趣旨から、昭和三十一年以来刊行しており、今回の刊行は四十回目である。
 本白書は、三部から構成されている。
 第1部では、本年度は「高度情報通信社会と青少年」と題した特集を組んでいる。近年の高度な情報通信技術の普及が、青少年を取り巻く環境にも大きな影響を生じさせるものと考えられる中で、内閣総理大臣の諮問機関である青少年問題審議会(以下、「青少審」という。)が「『高度情報通信社会』に向けた青少年育成の基本的方向―青少年の社会参加の拡大とその課題―」(平成九年四月意見具申)(以下、「意見具申」という。)を提出したことを受けて、その後の状況の変化等も踏まえ、意見具申の内容を紹介するとともに、今後の施策の方向性について考察を加えている。
 第2部では、平成九年十二月の時点での最新の各種統計資料に基づいて、青少年の現状について記述している。
 また、第3部では、青少年に関する国の施策について、平成八年度から九年度前半にかけての期間を中心に記述している。

<第1部> 高度情報通信社会と青少年


<第1章> 情報通信をめぐる現状

 (一) インターネットの普及
 インターネットに接続されるホスト・コンピュータの数は、平成九年一月現在、全世界で約一千六百十五万台あり、我が国には約七十三万台ある(第1図参照)。また、インターネットに接続している国は、百三十か国以上にわたる。
 日本国内のインターネット利用者は、平成九年二月現在で約五百七十二万人と推計されている。利用者はこの一年間でほぼ倍増しており、中でも男性の若・中年層を中心に普及している。
 (二) コミュニケーションの変化
 新たな情報通信技術を活用したコミュニケーション手段は、対面や電話の場合とは異なり、相手との年齢・世代の差や性別、職業、社会的地位の違いなどを比較的意識することなく、人と対面する際の気詰まりなどもあまり感じないでコミュニケーションを図ることができるという特徴を持っている。
 このため、より抵抗感なく、気軽に他の人々と知り合うきっかけを与え、また、その関係を維持していくことも容易になると考えられる。さらに、身体的な障害や地理的な条件などによるコミュニケーション上の様々なハンディキャップを克服するのに役立つという側面も持っている。
 こうした特徴を持つ新しいコミュニケーション手段が日常生活に浸透するにつれて、より多くの人々に社会に積極的に参加する機会が、より平等に与えられるようになると期待される。
 青少年が偏狭でなく、しなやかな考えを持ち、また、社会のルールをわきまえ、責任を持って行動できる人間に成長する過程で、周囲の社会に向けて積極的に参加し、それを通じて様々なことを経験できるような活動を促すことは、極めて重要である。
 この意味で、新たな情報通信技術のもたらすコミュニケーションの変化は、青少年育成の上で大きな価値を持つといえる。

<第2章> 青少年と情報通信

 青少年が情報化の進展をどのように感じ、接しているのかについて、いくつかの調査結果から考察した。
 (一) 青少年の意識
 平成八年に総務庁青少年対策本部が行った「第三回情報化社会と青少年に関する調査」によると、情報化のプラス面について、親の世代が仕事や趣味などに直結する事柄を指摘しているのに対し、青少年は、将来的な発展の可能性に期待する事柄を指摘している。
 一方、マイナス面については、情報化がもたらす新たな格差やプライバシーの問題など、親、青少年とも同じような危惧を抱いていることがうかがわれる(第2図第3図参照)。
 また、コンピュータやパソコンに対するイメージについては、青少年には「使うことは楽しい」という印象を持つ者が多く、情報化の進展や情報機器の進歩による明るい未来を思い描いていることの現れであるとも考えられる。
 (二) 青少年のコミュニケーション
 青少年と親友や友人グループとの関係をみると、親友にも気を使い、一歩引いたところで友達付き合いをしている姿がうかがわれる(第4図参照)。
 次に、コミュニケーションの手段となる情報通信機器の所有状況及びその活用状況についてみる。
 ポケベルや携帯電話などについては、高校生では手軽な通信・コミュニケーション手段として大きな位置を占めてきている一方で、小・中学生では日常的な利用までには至っていない。ただし、将来使いたいと考えている小・中学生は多いようである。
 また、インターネットやパソコン通信についても、小・中学生による日常的な利用者はわずかであるが、将来的な利用の意向を持つ者は多い。さらに、現在利用している小・中学生についてみると、学校の授業が大きな役割を果たしている一方で、自発的に活用している者もかなりいることが分かる(第1表参照)。
 さらに、小・中学生のインターネット、パソコン通信の利用環境等についてみると、一般に、小・中学生の周辺に機器や指導者などの環境が整ってきている。その一方で、学校に対する調査結果によると、指導に際して様々な課題があるとするところが多い(第5図参照)。
 単に、子供たちをパソコンやインターネットに慣れ、親しませ、利用のきっかけを作るだけでなく、これらを使いこなすためのコンピュータ・リテラシーを身に付けさせるためには、量的な整備のみならず、質的な面も含め、今後、青少年が日常的に新たなコミュニケーション手段を利用できるよう環境整備を一層進めていく必要がある。

<第3章> 高度情報通信社会に向けた行政の取組

 高度情報通信社会に向けた、青少年を支援する取組のうち、主なものについて紹介するとともに、米国などの諸外国の状況についても記述している。
 (一) 学校間のコンピュータ・ネットワーク
 文部省と通商産業省が協力して、初等中等教育にコンピュータ・ネットワークを利用・活用するネットワーク利用環境提供事業(百校プロジェクト。平成六〜八年度実施)、高度ネットワーク利用教育実証事業(新百校プロジェクト。平成九年度から実施)及び文部省の協力の下、日本電信電話株式会社などが学校におけるマルチメディア環境の整備を支援する、こねっと・プラン(平成八〜九年度に実施)などの取組がある。
 (二) 青少年の交流、情報発信
 関係省庁や都道府県などにより、マルチメディア国際交流推進研究指定校の指定、テレビ会議システムやインターネットを通じた海外の姉妹校との学校間交流などの取組が行われている。
 また、インターネットやテレビ会議システムを用いて、内閣総理大臣と子供たちが対話するイベントや、子供たち自らが情報発信をする活動も行われている。
 (三) 学習支援、青少年への情報発信、相談事業への活用
 関係省庁等において、映像教材の提供、テレビ会議システムによる遠隔授業、学校間交流の導入による学習支援などの取組が行われている。
 また、国の機関や地方公共団体において、パソコン通信等によるいじめに関する相談や情報提供も行われるなど、相談事業にも活用されている。
 (四) 情報発信、情報提供、広報・啓発活動への活用
 関係省庁では、それぞれ、インターネット上のホームページにおいて、各種事業等の広報を行っている。特に総務庁では、国際交流事業に参加する青年の募集を行っている。
 また、関係省庁では、情報化に関する知識の啓蒙・普及を図るための青少年の啓発や、青少年育成関係者への青少年教育や家庭教育などに関する情報の提供等も行っている。
 (五) 情報基盤等の環境整備、指導者の養成
 諸学校において教育用コンピュータの整備が行われるとともに、博物館、科学館、学生職業センター等においても、情報提供に必要な機器の整備等が行われている。また、国立大学等における学内LAN、衛星通信を利用した国立大学間の情報通信ネットワークなど、各種のネットワークの整備も進められている。
 このほか、情報教育に対応した指導者等の育成や、ソフトウェアの整備などの取組も行われている。
 (六) 諸外国の状況
 米国では、ゴア副大統領が提唱した「情報スーパーハイウェイ構想」の下、インターネットのための環境整備が進められている。また、公的な取組とは別に、「ネットデイ'96」など、環境整備に関する民間主導の取組も多くみられる。
 また、シンガポールやマレイシアでは、情報通信産業の振興のための国家的なプロジェクトや計画を実施している。

<第4章> 今後の施策の方向性

<第1節> 青少年の情報通信を活用したコミュニケーションに関する課題・問題点

 高度な情報通信技術を活用したコミュニケーションは、様々な共同体に青少年が積極的に参加できる機会の拡大につながり、青少年育成の上で有効である。特に、青少審では、このような手段を用いた物理的な距離や時間を超越したコミュニケーションにより、構成員相互の仮想の共同体を構築することが可能になるであろうとの考え方を示した。
 意見具申においては、これらを「バーチャル・コミュニティ」と呼び、青少年も参加していくことを視野に入れつつ検討がなされた。しかしながら、このバーチャル・コミュニティにおける常識や決まりが、いまだ完全に確立しているとはいえず、青少審では、そういった場に青少年を積極的に参加させるために配慮すべき事項や課題についても検討がなされた。
 ここでは、意見具申の中で指摘された事項を中心にみていく。
 (一) 重層的なコミュニケーション
 新たなコミュニケーションに過度に依存することは、人格形成の上で問題があり、より実感の伴った交流が可能な従来からのコミュニケーション手段を含めた、重層的なコミュニケーションによって、人と人とのパイプを太くする必要がある。
 (二) 実感・体験
 知力・体力・情操の均衡ある発達を促すため、体を鍛える活動及び自然や社会を実際に体験する中で知識を生きた知恵として生かすことのできる活動が、従来に増して重要となる。
 (三) 青少年からの情報発信
 自分の発信した情報が社会から評価されるという経験を容易にするという利点を十分に生かすためには、バーチャル・コミュニティへの参加者には、青少年の発信した内容を公正に評価することが求められる一方、青少年にも、情報発信がもたらす結果について配慮・覚悟することが求められる。
 (四) 安心して参加できる場の確保
 ハッキング、わいせつ情報等の流布等が多数報告される中にあって、既存の法令や取締りの有効性が十分に保障できる状況にはないとの認識から、意見具申では、以下の事項について指摘している。
 @ 指導と助言
 社会における経験を有する周囲の大人が、過剰な干渉によって青少年の自主性を損なわないようにしつつ、適切な指導・助言により、青少年を危険から守るために、青少年とともにバーチャル・コミュニティに参加していくことが有効である。
 A 青少年のためのネットワークの構築
 参加者を児童・生徒に限定したネットワークの中で、青少年が経験を積み、一般のネットワークにおけるコミュニティに参加するために必要な素養を実地で身に付けることも、有効な指導法である。
 B 青少年に配慮した規範の構築
 現在、青少年を含むバーチャル・コミュニティへの参加者の間で、様々なルールやモラルの在り方について、自主的に検討が行われていることを積極的に評価しつつ、こうした規範が、青少年の保護や育成の観点にも配慮したものとなることが望ましい。
 C 参加者の自律
 参加者が共同体の構成員として規範を自ら作ること、これを遵守し自制すること、若年の参加者の活動に対して無関心でないことが重要である。
 (五) インターネット上の有害な情報
 現在、わいせつ情報など青少年に有害な情報等に関して、対処の在り方が様々に議論されている。
 関係業界の事業者等が構成する団体において、ガイドライン案の作成、フィルタリング技術についての研究・開発、有害情報の格付け(レーティング)の基準の策定などの取組が自主的に行われている。また、こうした取組等を踏まえ、関係省庁においても様々な検討がなされている。
 また、諸外国における対応として、アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランスにおける取組についても紹介している。

<第2節> 次代に向けて飛躍する青少年を育成するために

 青少年の健全育成の取組の基本にあるのは、青少年が社会生活のルールを身に付け、各自の個性を発展させることを、国民が様々な立場から促し、助けることにより、次代の社会を担い得る資質と意欲を有した青少年を育成するという目的である。
 青少審では、高度な情報通信技術の普及に伴う社会の変化によって、今後の社会や産業の発展のために、従来とは全く異なる素養を有する青少年が求められるようになる可能性を指摘した。
 また、意見具申では、社会の変化が青少年にもたらす、以前にはなかった活躍の可能性を生かせる人材を育成する努力が必要であることを指摘した。
 現在の若者は、煩わしい人付き合いを避けたがる傾向や、また、社会への関心が低く、消極的な傾向があるといわれる。しかしながら、青少年が新たなコミュニケーション手段によって、自主性と創造力を発揮できる場を見いだすことは、青少年が夢や目標に向かって研鑽を積み、社会にも目を向けつつ活躍していくことにつながるであろう。そのための積極的な取組が、現在、社会を構成する者それぞれに、これまで以上に求められている。

<第2部> 青少年の現状


<第1章> 青少年の人口

 平成八年十月一日現在の青少年人口(〇〜二十四歳)は三千七百七十四万三千人で、総人口の三〇・〇%を占めている(第6図参照)。
 青少年人口は、第二次ベビーブーム期(昭和四十六〜四十九年)に生まれた二十二〜二十五歳の者がそれぞれ二百万人前後で多く、その後は減少傾向が続き、五歳未満では百二十万人程度の水準となっている。

<第2章> 青少年の健康と安全

 栄養状態については、平均的には良好であるが、個々人においては、栄養の過剰摂取や栄養摂取の偏り等の問題が生じてきている。

<第3章> 学校教育

 平成八年五月一日現在の幼稚園から大学までの在学者数は、二千三百三十万人(男子一千二百七万人、女子一千百二十二万人)と、総人口の一七・七%を占めている。
 このうち、小学生は八百十一万人、中学生は四百五十三万人であり、小学生、中学生ともに在学者数は前年度に比べ減少している。また、平成八年度における高等学校、高等専門学校等への進学率は九六・八%(通信制課程(本科)への進学者を含む。)、大学・短期大学への進学率は四六・二%となっている。

<第4章> 労 働

 青少年就業者(十五〜二十九歳)は、平成八年には一千五百四十六万人と、前年と比べ二十八万人増加しており、就業者総数に占める割合は二三・八%である。
 これを産業別にみると、「サービス業」二七・一%、「卸売・小売業、飲食店」二五・九%、「製造業」二一・二%と、これら三産業で全体の四分の三近くを占めている。
 新規学卒の就職者は、中学校卒業者が二万一千八百二十五人、高校卒業者が三十七万七千六百十九人、大学卒業者は三十三万七千八百二十人であり、前年と比べ、中学校及び高校については減少、大学については増加している。
 三十歳未満の青少年労働者の平成八年における離職率は二〇・三%で、全労働者の一三・八%を上回っている。

<第5章> 非行その他の問題行動

 刑法犯少年(十四〜十九歳)は、平成八年には十三万三千五百八十一人(前年比七千三百三十二人増)であり、昭和六十三年以来、八年ぶりに増加した(第2表参照)。
 これを罪種別にみると、万引き、オートバイ盗などの窃盗犯が全体の六三・九%を占め最も多く、年齢別にみると、十四〜十六歳の低年齢層が六六・三%を占めている。
 平成八年度では、いじめの発生件数は七年度より減少しており、小学校では約二七%、中学校では約五二%、高等学校では約三六%の学校でみられた(第3表参照)。
 また、登校拒否児童・生徒は年々増加しており、平成八年度には三十日以上学校を欠席した登校拒否児童生徒数は、小学生一万九千四百九十八人(全児童生徒数の〇・二四%)、中学生七万四千八百五十三人(同一・六五%)に上っている。

<第3部> 青少年に関する国の施策


<第1章> 総合的な施策の推進

 青少年に関する総合的な施策を推進するため、総務庁では、次の施策を実施している。
 青少審(内閣総理大臣の諮問機関)は、広く青少年の健全育成に関する基本的かつ総合的な事項について、答申及び意見具申を行ってきており,平成九年四月には「『高度情報通信社会』に向けた青少年育成の基本的方向―青少年の社会参加の拡大とその課題―」を提言した。同年七月には第十五期青少審が発足し、青少年の非行等問題行動の深刻化を背景に、内閣総理大臣から「青少年の問題行動への対策を中心とした西暦二〇〇〇年に向けての青少年育成方策について」諮問を受け、様々な角度からの検討を始めている。
 また、青少年対策推進会議において青少年対策推進要綱を申し合わせるなど、関係省庁との緊密な連携の下に、青少年対策を総合的に推進している。
 特に、平成九年七月の会議では、「当面特に取り組むべき課題」として、「青少年の薬物乱用対策の推進」、「凶悪・粗暴な非行の増加への対策」、「深刻ないじめ問題への対応の推進」、「青少年の性の逸脱行為等への対策」の四点を掲げるなど、諸情勢の変化に対応した要綱の改正を行った。
 そのほか、青少年の実態・意識等を究明するための研究調査、青少年の健全育成、非行防止のための諸施策と国民運動に対する援助、体力つくり国民運動の推進などを行っている。

<第2章> 青少年健全育成事業

 @ 青少年を対象とする学級・講座、青少年団体指導者研修、ボランティア活動振興事業、自然生活体験推進事業、母親クラブ等に対する援助を行っている。
 A 地域におけるスポーツ活動の振興等を図るため、学校体育大会、地域スポーツ活動に対する援助を行っている。
 B 国立オリンピック記念青少年総合センター、青年の家、少年自然の家、各種体育施設、勤労青少年ホーム、児童館等の施設整備を図るほか、都市公園、観光レクリエーション地区、レクリエーションの森等の野外施設の整備を図っている。
 C 社会教育主事や各種施設の指導員等の青少年指導者の養成、研修を行っている。

<第3章> 家庭に関する施策

 @ 家庭の教育機能の充実を目的に、家庭教育学級、家庭教育地域交流事業等に援助を行っている。
 A 児童相談所、家庭児童相談室等において、家庭や児童に対する相談援助活動を行っている。
 B 社会的援助を必要とする児童・家庭に対する福祉向上のため、乳児院、養護施設、保育所等を整備するなど、母子家庭の福祉対策を講じている。また、心身障害児の福祉対策等を講じている。
 C 妊産婦健康診査、未熟児対策、乳幼児健康診査等の母子保健対策を講じている。
 D 少子化の進行、夫婦共稼ぎ家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下など、児童をめぐる環境が大きく変化したことに伴い、平成九年六月に児童福祉法が大幅に改正され、十年四月一日から施行されることとなった。

<第4章> 学校教育に関する施策

 @ 学校週五日制は、平成四年度の二学期から、諸学校において、毎月の第二土曜日を休業日として月一回、七年度からは新たに毎月の第四土曜日を休業日として、月二回実施されている。
 A 平成九年八月に、文部大臣から「幼児期からの心の教育の在り方について」諮問が行われたことを受け、中央教育審議会で検討が行われている。
 B いじめや登校拒否といった児童・生徒の問題行動等に対し、教育相談体制の充実等を図っている。
 C 総合学科の設置、単位制高校の設置、高等学校入学者選抜における選抜方法の多様化・選抜尺度の多元化など、高等学校教育の個性化・多様化を図っている。
 D 特殊教育を充実するため、盲・聾・養護学校の高等部の充実整備・訪問教育の実施、交流教育及び早期教育相談の充実などを図っている。
 E 平成九年六月に「大学の教員等の任期に関する法律」が成立したことなどを受け、各大学において、組織運営の活性化が図られている。
 F 海外の日本人学校等への教員派遣、帰国子女の高等学校への入学・編入学機会の拡大など、海外子女教育・帰国子女教育等の充実を図っている。

<第5章> 職場に関する施策

 @ 新規学卒者の円滑な就職に資するため、学校等との緊密な連携の下に、職業安定機関において職業指導、職業紹介を行っている。
 A 就職協定の廃止に伴い、新たな求人秩序を確立するための取組を行っている。
 B 勤労青少年の福祉向上のため、「勤労青少年の日」を中心とした啓発活動、勤労青少年のクラブ活動の促進等を図っている。
 C 青少年の多様な適性等に応じた職業能力の開発を進めるため、民間企業における計画的な職業開発の機会の確保と、公共職業訓練の効率的な実施を促進している。
 D 農山漁村における後継者の育成確保を図るため、青少年を対象とする新農業者大学校の設置と農村青少年活動の促進等を図っている。

<第6章> 社会環境の整備に関する施策

 @ 青少年を取り巻く社会環境のうち、テレクラやブルセラショップ等の青少年の健全な育成に有害であると認められるものについては、関係業界による自主規制、環境浄化活動等、住民の地域活動、各種法律及び青少年保護育成条例を通じて、それぞれ対応策を講じている。
 A 青少年の基本的人権が尊重されるとともに、青少年自らが正しい人権意識を身に付けられるよう、様々な啓発活動を行っている。
 B 児童・生徒に対する交通安全教育、運転免許保有者に対する安全運転実技教育等、青少年の事故防止対策に努めている。

<第7章> 少年の非行防止と非行少年の処遇

 @ 少年の非行防止のため、各種月間等を通じて広報啓発活動を推進している。
 A 少年補導センター、防犯協会、母の会等の地域における非行防止組織の活動を促進している。
 B 近年の薬物乱用問題の深刻な状況を踏まえ、平成九年一月に内閣に設置された薬物乱用対策本部において、同年四月に青少年の薬物乱用問題に対する緊急対策が決定された。これを踏まえて、関係省庁の連携の下、学校教育の充実、広報啓発活動の徹底、乱用少年に対する取締り・処遇、調査・研究の実施など、関係施策の充実が図られている。
 C 警察の少年係、少年補導職員等を中心に非行少年等の街頭補導を行い、また、ヤングテレホン・コーナー等の名称で電話による相談業務を行っている。
 D 非行少年を健全に育成することを目指して、警察、検察庁、家庭裁判所等、多くの機関が、それぞれの段階に応じた処遇を行っている。

<第8章> 国際交流に関する施策

 @ 総務庁では、国際青年育成交流、日本・中国青年親善交流、日本・韓国青年親善交流、世界青年の船、東南アジア青年の船、アジア太平洋青年招へい、国際青年の村等の交流事業を行っている。
 A 青年海外協力隊については、平成九年七月末現在、五十九か国の開発途上国に、二千二百九十二名の隊員が派遣されている。
 B 留学生の交流を推進するため、外国人留学生の受入体制の一層の整備を行うとともに、日本人学生の海外留学等に係る施策を進めている。
 C 外国語教育の充実や地域レベルでの交流の推進を図るため、語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)において、平成九年度には、二十五か国から約五千三百五十名の外国青年を招致した。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十二月中旬速報値)・全国(十一月)―


総 務 庁


◇十二月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・六となり、前月比は〇・二%の下落。前年同月比は九月二・二%の上昇、十月二・四%の上昇、十一月二・〇%の上昇と推移した後、十二月は一・七%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は九月二・三%の上昇、十月二・二%の上昇、十一月二・二%の上昇と推移した後、十二月は二・二%の上昇となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・一となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  生鮮魚介は二・六%の上昇。
   <値上がり>さけ、いかなど
   <値下がり>かき、まぐろなど
  生鮮野菜は〇・七%の下落。
   <値上がり>きゅうり、レタスなど
   <値下がり>はくさい、トマトなど
  生鮮果物は七・七%の下落。
   <値上がり>キウイフルーツ、オレンジ
   <値下がり>りんご(ふじ)、みかんなど
  外食は〇・八%の下落。
   <値下がり>ハンバーガーなど
(2) 家具・家事用品は九四・五となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  家事用消耗品は一・五%の下落。
   <値下がり>洗濯用洗剤など
(3) 教養娯楽は一〇〇・八となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  教養娯楽サービスは〇・七%の下落。
   <値下がり>宿泊料など
(4) 諸雑費は一〇三・四となり、前月に比べ〇・三%の上昇。
  身の回り用品は一・一%の上昇。
   <値上がり>旅行用カバンなど

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二四・九%上昇)、外食(三・九%上昇)、家賃(〇・九%上昇)、衣料(六・一%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮果物(二五・五%下落)、生鮮野菜(四・三%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・八となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月と変わらなかった。

◇十一月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・四となり、前月比は〇・七%の下落。前年同月比は八月二・一%の上昇、九月二・四%の上昇、十月二・五%の上昇と推移した後、十一月は二・一%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は八月二・一%の上昇、九月二・四%の上昇、十月二・四%の上昇と推移した後、十一月は二・二%の上昇となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・八となり、前月に比べ二・一%の下落。
  生鮮魚介は〇・七%の下落。
   <値上がり>さけ、えびなど
   <値下がり>いか、かきなど
  生鮮野菜は一九・六%の下落。
   <値上がり>かぼちゃ、なすなど
   <値下がり>ほうれんそう、はくさいなど
  生鮮果物は一三・八%の下落。
   <値上がり>グレープフルーツ、キウイフルーツなど
   <値下がり>みかん、かきなど
(2) 家具・家事用品は九六・八となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・四%の下落。
   <値下がり>電気冷蔵庫など
(3) 被服及び履物は一〇八・一となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  衣料は一・四%の上昇。
   <値上がり>婦人オーバーなど
(4) 教養娯楽は一〇〇・九となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  教養娯楽用品は一・三%の下落。
   <値下がり>切り花(きく)など

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二四・四%上昇)、外食(三・四%上昇)、家賃(一・二%上昇)、教養娯楽サービス(二・九%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮果物(一五・四%下落)、自動車等関係費(〇・九%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・四となり、前月に比べ〇・三%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・六となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。

◇     ◇     ◇

◇     ◇     ◇














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法人企業の経営動向


法人企業統計 平成九年七〜九月期


大 蔵 省


 この調査は、統計法(昭和二十二年法律第一八号)に基づく指定統計第一一〇号として、我が国における金融・保険業を除く資本金一千万円以上の営利法人を対象に、企業活動の短期動向を把握することを目的として、四半期ごとの仮決算計数を調査しているものである。
 その調査結果については、国民所得統計の推計をはじめ、景気判断等の基礎資料等として広く利用されている。
 なお、本調査は標本調査であり(計数等は、標本法人の調査結果に基づいて調査対象法人全体の推計値を算出したもの)、標本法人は層別無作為抽出法により抽出している。
 今回の調査対象法人数等は次のとおりである。
  調査対象法人 一、一一〇、三九〇社
  標本法人数     二三、六七九社
  回答率         八二・一%
 当調査結果から平成九年七〜九月期の企業の経営動向をみると、売上高については、製造業は、引き続き増収となったものの、非製造業は、減収となったことから、全産業ベースの対前年同期増加率(以下「増加率」という。)は△一・六%となった。営業利益については、製造業は、引き続き増益となる一方、非製造業は、減益となったことから、全産業ベースの増加率は二・四%となった。
 また、経常利益についても、製造業は、引き続き増益となる一方、非製造業は、減益となったことから、全産業ベースの増加率は四・〇%となった。
 一方、設備投資については、製造業、非製造業ともに増加となったことから、全産業ベースの増加率は五・九%となった。

一 売上高と利益の動向第1図第2図参照

 (1) 売上高第1表参照

 売上高は、三百四十四兆九千百七十四億円であり、前年同期(三百五十兆六千八百五十七億円)を五兆七千六百八十三億円下回った。増加率は△一・六%(前期〇・三%)と、15四半期ぶりの減収となった。
 業種別にみると、製造業の売上高は百二兆三千四百八十億円で、増加率は〇・一%(同三・五%)となった。また、非製造業の売上高は二百四十二兆五千六百九十四億円で、増加率は△二・四%(同△一・〇%)となった。
 製造業では、「一般機械」「化学」等が減収となったものの、「電気機械」「食料品」等の業種で増収となった。一方、非製造業では、「運輸・通信業」「サービス業」等が増収となったものの、「卸・小売業」「建設業」等で減収となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百四十四兆七千三百九十五億円で、増加率は二・五%(同三・八%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は五十二兆九千三百四十八億円で、増加率は△一・二%(同△二・〇%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百四十七兆二千四百三十一億円で、増加率は△五・五%(同△一・七%)となった。

 (2) 営業利益第2表参照

 営業利益は、八兆九千五百二十五億円であり、増加率は二・四%(前期一・二%)と、13四半期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の営業利益は三兆七千九百五十二億円で、増加率は七・八%(同一七・八%)となった。また、非製造業の営業利益は、五兆一千五百七十三億円で、増加率は△一・二%(同△七・七%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は五兆二千八百八億円で、増加率は三・七%(同三・一%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は九千二百十九億円で、増加率は△一五・六%(同△一八・九%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二兆七千四百九十八億円で、増加率は七・六%(同三・三%)となった。

 (3) 経常利益第3表参照

 経常利益は、七兆三千五百十七億円であり、前年同期(七兆七百七億円)を二千八百十億円上回り、増加率は四・〇%(前期五・〇%)と、13四半期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の経常利益は三兆四千六百二億円で、増加率は一〇・八%(同二一・一%)となった。また、非製造業の経常利益は三兆八千九百十五億円で、増加率は△一・四%(同△四・九%)となった。
 製造業では、「食料品」等が減益となったものの、「電気機械」「化学」等が増益となった。一方、非製造業では、「サービス業」「電気業」等が増益となったものの、「運輸・通信業」「卸・小売業」等が減益となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆二千百四億円で、増加率は三・六%(同七・三%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は八千三百三十六億円で、増加率は△五・六%(同△一六・五%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二兆三千七十七億円で、増加率は八・七%(同七・〇%)となった。

 (4) 利益率第4表参照

 売上高経常利益率は二・一%で、前年同期(二・〇%)を〇・一ポイント上回った。
 業種別にみると、製造業は三・四%で、前年同期(三・一%)を〇・三ポイント上回り、非製造業は一・六%で、前年同期(一・六%)と同水準となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二・九%(前年同期二・九%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一・六%(同一・六%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一・六%(同一・四%)となった。

二 投資の動向第3図参照

 (1) 設備投資第5表参照

 設備投資額は、十三兆三千八百四十五億円であり、増加率は五・九%(前期六・八%)と、10四半期連続の増加となった。
 業種別にみると、製造業の設備投資額は四兆六千四百五十一億円で、増加率は一〇・四%(同二・一%)の増加となった。一方、非製造業の設備投資額は八兆七千三百九十四億円で、増加率は三・七%(同九・〇%)となった。
 製造業では、「鉄鋼」「石油・石炭製品」等で減少となったものの、「電気機械」「輸送用機械」等の業種で増加となった。一方、非製造業では、「不動産業」「電気業」等で減少となったものの、「運輸・通信業」「サービス業」等で増加となった。
 設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は八兆六十七億円で、増加率は六・二%(同二・三%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は二兆九十四億円、増加率は一・三%(同△一一・五%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆三千六百八十四億円で、増加率は八・二%(同三二・一%)となった。

 (2) 在庫投資第6表参照

 在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、一兆五千三百十一億円であり、前年同期(四千百二十四億円)を一兆一千百八十七億円上回った。
 在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は二千三百十三億円で、前年同期(△三千五百十三億円)を五千八百二十六億円上回った。一方、非製造業の投資額は一兆二千九百九十八億円で、前年同期(七千六百三十七億円)を五千三百六十一億円上回った。
 在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が△六千五百七十三億円(前年同期△七千二百十八億円)、仕掛品が一兆八千百八十九億円(同一兆二千七百二十二億円)、原材料・貯蔵品が三千六百九十五億円(同△一千三百八十億円)となった。
 また、在庫率は一〇・二%であり、前期(一一・一%)を〇・九ポイント下回り、前年同期(一〇・二%)と同水準であった。
 在庫率は、季節的要因により変動(四〜六、十〜十二月期は上昇する期)する傾向がみられる。

三 資金事情第7表参照

 受取手形・売掛金は二百二十三兆七千四百四十一億円で、増加率は二・一%(前期△〇・五%)、支払手形・買掛金は百九十一兆二百九十二億円で、増加率は三・六%(同〇・八%)となった。
 借入金をみると、短期借入金は二百三十兆三千三百六十一億円で、増加率は六・三%(同九・二%)、長期借入金は二百七十四兆七千六百十一億円で、増加率は四・四%(同△〇・五%)となった。
 現金・預金は百十八兆六千六百六十四億円で、増加率は三・五%(同〇・七%)、有価証券は三十九兆一千二百九十九億円で、増加率は一・四%(同五・〇%)となった。
 また、手元流動性は一一・五%であり、前期(一二・七%)を一・二ポイント下回り、前年同期(一一・〇%)を〇・五%上回った。

四 自己資本比率第8表参照

 自己資本比率は二一・四%で、前年同期(二一・五%)を〇・一ポイント下回った。
 自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二九・三%で、前年同期(二八・八%)を〇・五ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は一五・四%で、前年同期(一四・八%)を〇・六ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一四・二%で、前年同期(一四・八%)を〇・六ポイント下回った。

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 なお、次回の調査は平成九年十〜十二月期について実施し、法人からの調査票の提出期限は平成十年二月十日、結果の公表は平成十年三月中旬の予定である。

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 少額訴訟について

A この間、知人に二十万円ほど貸したのですが、約束の日を過ぎても返してもらえなくて困っています。裁判を起こそうかとも思ったのですが、裁判は時間とお金がかかるというイメージがあって……。
B それなら、今年から始まった少額訴訟という手続を利用することを考えてみてはいかがですか。
  この手続は、比較的少額のお金の支払をめぐるトラブルについて、当事者にとってなるべく少ない負担で簡易迅速に解決することを目的とした簡易裁判所の手続です。何度も裁判所に足を運ぶことなく、原則として、一回の期日で審理を終え、その日のうちに判決を言い渡すこととされています。
A どんな場合に利用できるのですか。
B 三十万円以下のお金の支払を求める場合に、この少額訴訟手続を利用することができます。もっとも、従来からある通常の訴訟手続をとることも、もちろん可能です。
A 少額訴訟には、どのくらいの費用がかかりますか。
B 訴えを起こすときには、裁判所に手数料や書類を送るための郵便切手を納める必要があります。この手数料の額は、請求の額によって決まり、例えば、二十万円の請求なら二千円です。また、証人を調べる場合には、証人に支払う旅費や日当を納める必要があります。
  これらの費用は、最終的には、原則として、裁判に負けた側が負担することになります。
A 少額訴訟の手続は、通常の訴訟手続に比べてどんな特徴があるのですか。
B まず、一回の期日で審理を終えることができるように、当事者は、その期日までに、すべての言い分と証拠(言い分を裏付ける資料)を裁判所に提出しなければなりません。また、証拠は、期日に法廷ですぐに取り調べることができるものに限られます。例えば、当事者が法廷に持参した書類や法廷に来た証人は、証拠として取り調べることができます。
A 証人が期日に法廷に来ることができない場合には、どうすればよいのですか。
B そのような場合にも、当事者が証人の電話番号等を明らかにして尋問の申出をして、裁判所が相当と認めると、法廷に設置したマイクとスピーカー付きの電話会議装置を利用して、法廷にいない証人を電話で尋問することができることもあります。
A 少額訴訟の判決は、通常の判決とは違うのですか。
B 少額訴訟では、判決の言渡しは、原則として、審理の終了後その日のうちに行われます。
  また、通常の訴訟手続では、例えば、原告の請求を認める場合、「被告は、原告に対し、二十万円を支払え。」といった、被告に対してすぐに支払うことを命ずる内容の判決がされます。しかし、被告の経済状態やその他の事情によっては、支払方法等を柔軟に決めた方がより良い解決につながることもあります。そこで、少額訴訟では、裁判所は、原告の請求を認める判決をする場合に、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内で、お金の支払期限を猶予したり、分割払とすることを定めることができ、さらに、これらの定めに従って支払った被告に対しては、訴え提起後の遅延損害金の支払を免除することを定めることもできるようになっています。
A 判決に不服がある場合には、どうすればよいのですか。
B 少額訴訟の判決に対しては、判決をした簡易裁判所に不服(異議)を申し立てることができますが、地方裁判所へ不服申立てをすること(控訴)はできません。また、少額訴訟の判決で定められた支払期限の猶予や分割払の定めについて異議を申し立てることもできません。
  異議が申し立てられた後は、通常の訴訟手続によって裁判が行われますが、その手続によって出された判決に対しては、原則として、不服を申し立てることはできません。
A 原告が少額訴訟を起こしたところ、被告の方が通常の訴訟手続によって裁判を受けたいと思ったときはどうなりますか。
B 被告は、通常の訴訟手続で審理し、裁判してほしいと申し出ることができ、その場合には、通常の訴訟手続により審理されることになります。もっとも、被告が最初の期日に言い分を述べた後、又は言い分を述べなかった場合でもその期日が終わった後は、被告はこの申出をすることができなくなります。
A 分かりました。少額訴訟を利用することも考えてみようと思います。少額訴訟の手続をもっと詳しく知りたいのですが、どうしたらいいですか。
B 最寄りの簡易裁判所の受付で相談に応じています。
  また、簡易裁判所には、少額訴訟の特色を簡単に分かりやすく説明したリーフレットや、空欄を補充することによって比較的簡単に訴状や答弁書という書類を作成できる定型訴状用紙、定型答弁書用紙などが備え付けられています。
  さらに、一部の裁判所では、少額訴訟の手続の流れを分かりやすく解説した手続案内ビデオを見ることもできます。(最高裁判所)




 
    <2月25日号の主な予定>
 
 ▽平成九年平均東京都区部
  消費者物価指数の動向……………総 務 庁 

 ▽第百四十二回国会
  内閣が提出を予定してい
  る法律案・条約要旨調……………内閣官房 
 



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