官報資料版 平成1011





平成9年


科学技術研究調査結果の概要


―我が国の科学技術研究の現況―


総 務 庁


 総務庁統計局では、平成九年科学技術研究調査の結果を公表した。
 この調査は、我が国の科学技術に関する研究活動の状態を調査し、科学技術の振興に必要な基礎資料を得ることを目的として、昭和二十八年以降、毎年四月一日現在で実施している。
 調査の内容は、資本金、売上高、研究関係従事者数、研究費(人件費・有形固定資産購入費等の別、基礎研究・応用研究等の別、製品分野別など)、国際技術交流の状況などである。
 なお、売上高、研究費等の財務事項は、四月一日前の最近の決算日をさかのぼる一年間について調査している。
 平成九年調査は、会社等約一万二千五百、研究機関約一千五百、大学等約二千六百を対象としており、会社等については、資本金十億円以上の会社及び前年調査で研究を実施していた会社は全数調査、それ以外は標本調査で行い、研究機関、大学等については、全数調査で行った。
 また、附帯調査として、エネルギー研究調査(昭和五十二年開始)及びライフサイエンス研究調査(昭和五十七年開始)を同時に実施しており、これら附帯調査の結果数値は、科学技術研究調査結果の内数となっている。
 なお、本年調査から、調査対象産業としてソフトウェア業を追加した。

◇科学技術研究調査


 (1) 研究費
<平成八年度の研究費は引き続き増加>
 平成八年度の我が国の科学技術研究費は十五兆七百九十三億円となり、前年度に比べ三・四%(ソフトウェア業を除く対前年度比)の増加となっているが、伸び率は前年度に比べ低下している。
 研究費の推移をみると、昭和六十一年度には景気後退の影響を受けて三・四%増と大きく伸びが低下した。その後、景気の回復に伴い、増加幅は拡大し、平成元年度及び二年度は一〇%を超える伸びとなったが、景気の調整過程に入った三年度は五・三%増、四年度は一・〇%増と伸びが低下、五年度には調査開始以来初めて対前年度比マイナスを記録し、六年度も〇・八%減と二年連続の減少となったが、七年度は六・〇%増と三年ぶりに増加に転じ、八年度も三・四%増となっている。
 また、実質研究費(平成七年度基準)は十四兆八千九百四十七億円となり、前年度に比べ二・二%の増加となっている(第1図参照)。
 科学技術研究費のうち、自然科学部門についてみると、平成八年度の研究費は十三兆八千四百九億円で、前年度に比べ三・六%の増加となっている。
 研究費全体に占める自然科学部門の研究費の割合は九一・八%で、前年度に比べ〇・二ポイント上昇している。この割合の推移をみると、平成二年度までの拡大傾向から、三年度は横ばい、四年度以降は三年連続の縮小となったが、七年度は拡大に転じ、八年度も引き続き拡大傾向となっている。
<研究費の対国内総生産比は引き続き上昇>
 研究費の国内総生産(GDP)に対する比率は、前年度に比べ〇・〇五ポイント上昇し、調査開始以来最高の三・〇〇%となった。
 この比率の推移をみると、平成二年度まではおおむね研究費の伸びがGDPの伸びを上回っていたため、上昇傾向で推移し、二年度には二・九八%となった。その後、研究費の伸びの低迷から、三年度以降、四年連続で前年度を下回ったが、七年度は五年ぶりに前年度を上回って二・九五%となり、八年度は、三・〇〇%と引き続き上昇している(第2図参照)。

 (2) 研究主体別研究費
<会社等の研究費は高い伸び>
 平成八年度の研究費を研究主体別にみると、会社等が十兆五百八十四億円、対前年度比五・二%増(ソフトウェア業を除く)、研究機関が二兆七十八億円(対前年度比一・一%減)、大学等が三兆百三十一億円(同一・〇%増)となっている(第1表参照)。
 研究主体別に研究費の推移をみると、会社等は、昭和六十年度までの一〇%を超える増加から六十一年度及び六十二年度は景気後退の影響により増加幅は大きく低下した。六十三年度以降は景気回復に伴い再び一〇%を超える高い伸びを示したが、平成三年度は五・一%増と伸びが鈍化し、四年度には一・九%減と減少に転じた。その後、六年度まで三年連続の減少となったが、七年度は四年ぶりに四・六%増となり、八年度は五・二%増と前年度を上回る伸びとなっている。
 研究機関は、昭和六十二年度までは六〜一二%台の比較的高い伸びで推移しており、六十三年度には〇・七%増と伸びが大きく低下したものの、平成元年度以降引き続き四〜九%台の安定した伸びで推移していた。その後、六年度は一・八%減と減少に転じ、七年度は九・〇%増となったものの、八年度は再び減少に転じ、一・一%減となっている。
 大学等は、会社等や研究機関に比べ、各年度における増加の振幅は小さく、比較的安定した動きを示しており、平成五年度までは堅調な増加を続け、その後、六年度は〇・二%減とわずかに減少したが、七年度は八・三%増、八年度は一・〇%増となっている。

 (3) 支出源別研究費
<民間の研究費の割合は増加>
 平成八年度の研究費を支出源別にみると、民間が十一兆九千四十七億円、国・地方公共団体が三兆一千六百六億円となっており、前年度に比べ民間は五・七%(ソフトウェア業を除く)の増加となったが、国・地方公共団体は四・〇%の減少となった。この結果、研究費支出に占める割合は国・地方公共団体が二一・〇%、民間が七八・九%となり、民間の研究費の割合は、前年度に比べ一・九ポイント上昇している(第2表参照)。
 支出源別の割合の推移をみると、民間の研究費の割合は、昭和五十五年度以降は、六十年代前半の円高不況期を除き上昇を続けた後、平成二年度の八二・〇%をピークとして、おおむね低下傾向にあったが、八年度は一・九ポイントの上昇に転じた。

 (4) 性格別研究費
<基礎研究費の支出割合が六年ぶりに低下>
 自然科学に使用した研究費を基礎、応用、開発の三部門の性格別にみると、基礎研究費が一兆九千三百三十一億円(ソフトウェア業を除く対前年度比一・三%減)、応用研究費が三兆三千四百五十二億円(同三・四%増)、開発研究費が八兆四千四百八十一億円(同四・八%増)となっている(第3表参照)。
 性格別研究費の構成比の推移をみると、昭和五十年代以降は、基礎研究費はおおむね低下傾向、応用研究費は横ばい又はわずかな低下傾向、開発研究費は上昇傾向で推移していた。平成三年度以降は、基礎研究費の比率が上昇傾向にあったものの、八年度は六年ぶりに〇・九ポイントの低下となっている。

 (5) 費目別研究費
<有形固定資産購入費が減少>
 研究費を費目別にみると、人件費が六兆九千八百七十五億円(ソフトウェア業を除く対前年度比二・二%増)、原材料費が二兆五千六百四億円(同一〇・六%増)、事務費、通信費、図書費、光熱費などの「その他の経費」が三兆六千六百三十一億円(同六・二%増)と増加を示したのに対し、有形固定資産購入費が一兆八千六百八十三億円(同五・四%減)と減少している。
 費目別研究費の推移をみると、人件費は、平成三年度までは研究関係従事者の持続的増加と給与水準の上昇を背景として、五%を上回る増加を示していたが、四年度には四・七%増となり、五年度以降は四%以下の低い伸びで推移している。
 原材料費は、昭和六十三年度から平成二年度までの一三%台の高い伸びから、三年度は〇・二%増、四年度は三・四%減、五年度は七・五%減と低迷し、六年度以降は〇・七%増、六・六%増、一〇・六%増と堅調な増加となっている。
 有形固定資産購入費は、年により増減にバラツキがみられるものの、平成三年度まではおおむね増加傾向で推移していたが、四年度から六年度は減少している。七年度は一五・五%増と増加に転じたものの、八年度は五・四%の減少となった。
 また、「その他の経費」は平成四年度まで増加が続き、五年度及び六年度は減少したが、七年度以降は再び増加に転じている(第4表参照)。

 (6) 特定目的別研究費
<情報処理研究費が大幅な増加>
 平成八年度の研究費支出のうち、宇宙開発、海洋開発、情報処理、環境の保護の特定目的について支出した研究費をみると、今回新たにソフトウェア業が調査対象となったことから、情報処理が一兆四千百二十億円(ソフトウェア業を除く対前年度比一五・七%増)と大幅に増加している。次いで、環境の保護が三千四百二十二億円(同九・二%増)、海洋開発が八百四十九億円(同〇・七%増)と堅調に増加しているが、宇宙開発は二千四百三十一億円(同九・三%減)と減少している。
 それぞれの特定目的別研究費について、研究費総額に占める割合をみると、宇宙開発は一・六%、海洋開発は〇・六%、情報処理は九・四%、環境の保護は二・三%となっている。
 これらについて、最近の推移をみると、宇宙開発は昭和六十年度以降一・七%前後で推移しているが、平成七年度の一・九%から八年度は一・六%と低下している。
 海洋開発は平成二年度及び三年度に〇・四%まで低下した後、増加傾向で推移し、七年度及び八年度は〇・六%となっている。
 情報処理は平成三年度までは急速に拡大し、三年度には八・七%となったが、四年度及び五年度は情報処理研究費が減少したことにより、四年度七・九%、五年度七・八%と低下した。その後、六年度は横ばい、七年度は七・九%と拡大、八年度は九・四%と更に拡大している。
 また、環境の保護はわずかずつではあるが拡大傾向にあり、平成八年度は二・三%と前年度を〇・一ポイント上回っている(第5表参照)。

 (7) 研究関係従事者数
<研究関係従事者は増加>
 平成九年四月一日現在の研究関係従事者は百一万九千六百人で、前年に比べ〇・二%増(ソフトウェア業を除く対前年比)となっている。
 職種別にみると、研究者が七十四万五千二百人(ソフトウェア業を除く対前年比一・一%増)、研究補助者が八万三千九百人(同二・九%減)、技能者が九万三千九百人(同二・〇%減)、研究事務その他の関係者が九万六千六百人(同一・七%減)となっており、研究者では伸びを示したものの、研究補助者、技能者及び研究事務その他の関係者はいずれも減少している。
<研究者の比率は引き続き上昇>
 研究関係従事者の職種別割合の推移をみると、研究者の割合は昭和五十年代後半以降上昇傾向で推移し、平成九年には七三・一%と研究関係従事者の七割強が研究者となっている。これに対し、研究補助者、技能者の割合は低下傾向で推移し、九年にはそれぞれ八・二%、九・二%となっている。
 また、研究事務その他の関係者の割合は、昭和六十年以降一〇%台で推移していたが、平成七年以降は九・九%、九・七%、九・五%と三年連続低下している。

 (8) 研究本務者数
<研究本務者の女子の比率は引き続き上昇>
 研究者を本務者(所属の組織で研究を主とする者)と兼務者(外部に本務をもつ研究者)に分けてみると、本務者が六十九万五千六百人(研究者に占める割合九三・三%)、兼務者が四万九千六百人(同六・七%)となっている。
 研究本務者を男女別にみると、男子が六十二万八千百人(本務者に占める割合九〇・三%)、女子が六万七千五百人(同九・七%)となっている。
 過去からの推移をみると、女子の研究本務者の伸びは、昭和五十七年以降、男子の研究本務者の伸びを上回って推移している。この結果、女子の本務者全体に占める割合は、五十七年の六・〇%から平成九年には九・七%へと拡大している(第6表参照)。

 (9) 研究本務者一人当たり研究費
<研究本務者一人当たり研究費は微増>
 平成八年度の研究本務者一人当たり研究費(平成八年度の研究費を平成九年四月一日現在の研究本務者で除して算出)は二千百六十八万円で、前年度に比べ二・四%(ソフトウェア業を除く)の増加となっている。
 対前年度比の推移をみると、昭和六十年度までおおむね五〜一〇%台の高い伸びで推移したが、六十一年度から六十三年度は景気後退の影響を受けて伸びが鈍化した。その後、平成元年度から三年度は二〜六%台の伸びで推移したが、四年度から六年度は減少を続けた。しかし、七年度は景気の緩やかな回復に伴い四年ぶりに三・七%増となり、八年度は二・四%増となっている(第3図参照)。

 (10) 会社等研究費
<会社等の研究費は引き続き増加>
 平成八年度の会社等における研究費は十兆五百八十四億円で、前年度に比べ五・二%増(ソフトウェア業を除く対前年度比)となっている。
 研究費の最近の動きをみると、四年度の一・九%減、五年度の五・三%減、六年度の〇・八%減と、三年連続の減少から、七年度の四・六%増となり、八年度は五・二%増と引き続き増加となっている。
 会社等から特殊法人を除いた会社の研究費十兆二百六十六億円を資本金階級別にみると、資本金百億円以上の会社が七兆三千七百八十五億円(会社の研究費全体の七三・四%)、十〜百億円が一兆四千九百六十一億円(同一四・九%)、一〜十億円が七千三億円(同七・〇%)、一億円未満が四千五百十七億円(同四・五%)となっている。
 
 (11) 産業別研究費
<農林水産業、建設業、製造業の産業で増加>
 平成八年度の研究費を産業大分類別にみると、製造業が九兆二千六百三十二億円(会社等研究費に占める割合九二・一%)と最も多く、次いで、運輸・通信・公益業が三千六百二十九億円(同三・六%)、建設業が二千二百四十五億円(同二・二%)、鉱業が二百十七億円(同〇・二%)、農林水産業が九十億円(同〇・一%)となっており、新たに調査対象となったソフトウェア業は一千七百七十二億円(同一・八%)となっている。
 これを前年度と比較してみると、農林水産業(対前年度比二・七%増)、建設業(同九・九%増)、製造業(同五・六%増)が増加しているのに対し、鉱業(同五・二%減)、運輸・通信・公益業(同五・九%減)は減少している。
<電気機械工業、化学工業、輸送用機械工業で会社等研究費の六五・五%>
 製造業の研究費を産業中分類別にみると、電気機械工業が三兆四千九百三十六億円(会社等研究費に占める割合三四・七%)と最も多く、次いで、化学工業が一兆五千九百三十三億円(同一五・八%)、輸送用機械工業が一兆五千百十二億円(同一五・〇%)となっており、この上位三産業で会社等研究費の六五・五%を占めている。
 なお、新たに調査対象となったソフトウェア業を除くと、前記三産業の研究費は、会社等研究費の六六・八%を占めている。
 主な産業について研究費の対前年度比をみると、金属製品工業(二五・一%増)、プラスチック製品工業(一四・七%増)、輸送用機械工業(一一・〇%増)が一〇%を超える大幅な増加となっているほか、窯業(六・九%増)、機械工業(四・〇%増)、電気機械工業(六・七%増)は四〜六%台の増加となっており、化学工業(二・五%増)、精密機械工業(三・一%増)も増加している。
 特に産業小分類でみると、通信・電子・電気計測器工業及び自動車工業の研究費はそれぞれ一千五百九十六億円(対前年度比七・一%増)、一千四百六十二億円(同一二・五%増)と大幅に増加しており、この二つの産業の増加額だけで、ソフトウェア業を除いた会社等の研究費全体の増加額四千八百五十四億円の六三・〇%を占めている。

 (12) 売上高に対する研究費の比率
<売上高比率は引き続き上昇>
 研究を実施している会社の平成八年度の売上高に対する研究費の比率(売上高比率)は二・七七%となっている。
 この比率の推移をみると、昭和五十九年度以降上昇を続け、平成四年度には研究費が減少に転じたものの、売上高がそれを上回る減少を示したことから、売上高比率は引き続き上昇した。その後、五年度は売上高が前年度に引き続き減少したが、研究費の減少がそれを上回ったため、前年度に比べ〇・〇七ポイント低下、六年度は売上高が増加に転じたが、研究費が引き続き減少したことから、前年度に比べ〇・〇四ポイント低下と二年連続の低下となり、七年度は研究費の伸びが売上高の伸びを上回ったため〇・〇一ポイント上昇し、八年度は引き続き〇・〇四ポイント上昇している。
<売上高比率はソフトウェア業で高い>
 平成八年度の売上高比率を主な産業別にみると、ソフトウェア業が九・八三%で最も高く、次いで、電気機械工業が五・八一%、精密機械工業が五・七四%、化学工業が五・一五%、輸送用機械工業が三・五九%、ゴム製品工業が三・三六%、機械工業が三・二六%などとなっており、また、化学工業の中の医薬品工業が引き続き八・一一%と高い割合を示している。
 これを前年度と比較してみると、売上高比率が上昇しているのは、精密機械工業(〇・五八ポイント上昇)、輸送用機械工業(〇・二五ポイント上昇)、窯業(〇・一二ポイント上昇)などである。
 一方、売上高比率が低下しているのは、繊維工業(〇・三二ポイント低下)、プラスチック製品工業(〇・一六ポイント低下)、化学工業(〇・一五ポイント低下)、非鉄金属工業(〇・一四ポイント低下)などとなっている。

 (13) 国際技術交流(技術貿易)
<技術輸出の件数及び受取額とも大幅増加>
 平成八年度における会社等の技術貿易(諸外国との特許、ノウハウなどの技術の提供及び受入れ)についてみると、技術輸出は、件数が一万三千百九十四件、受取額が七千三十億円で、前年度に比べ件数では四千百二十一件(ソフトウェア業を除く対前年度比四五・三%増)の増加、受取額も一千四百十億円(同二五・〇%増)の増加となっている。
 また、技術輸入は、件数が七千六百五十九件、支払額が四千五百十二億円で、前年度に比べ、それぞれ五十三件(同四・四%減)の減少、五百九十五億円(同一二・八%増)の増加となっている。
 この結果、受取額が支払額を二千五百十九億円上回り、受取額超過は前年度よりも更に拡大している。技術輸出の一件当たりの受取額は五千三百二十八万円(平成七年度六千百九十五万円)、技術輸入の一件当たりの支払額は五千八百九十一万円(同五千七十九万円)となっている。
 支払額に対する受取額の倍率(技術貿易収支比率)の推移をみると、昭和四十六年度から次第に上昇し、五十九年度には〇・九七となった。その後は平成四年度まではおおむね一・〇〇を下回る水準で推移したが、五年度には受取額が堅調な伸びを示したのに加え、支払額が大幅に減少したことから一・一〇となり、六年度以降も、支払額の増加よりも受取額の増加が大きいことから上昇を続け、八年度は一・五六となっている(第7表参照)。
<受取額、支払額とも三産業に集中>
 技術貿易額を主な産業別にみると、受取額では、電気機械工業が二千三百三十三億円と最も多く、次いで、輸送用機械工業が二千百十億円、化学工業が九百五十一億円となっている。
 一方、支払額は電気機械工業が二千二百二十三億円、化学工業が六百九十八億円、輸送用機械工業が四百二十五億円となっており、これら三産業で受取額、支払額のそれぞれ七七%、七四%を占めている。
 この三産業について、受取額、支払額を前年度と比較してみると、受取額では、化学工業、輸送用機械工業及び電気機械工業がそれぞれ三二・〇%増、二八・七%増、八・五%増と増加し、支払額では、輸送用機械工業、電気機械工業及び化学工業がそれぞれ三〇・八%増、一一・三%増、五・五%増と増加している。
 なお、ソフトウェア業は受取額が三億円、支払額が九十一億円となっている。
<技術輸入はアメリカ合衆国が七割を占める>
 技術貿易額を相手国先別にみると、受取額、支払額ともアメリカ合衆国が最も多く、受取額は二千八十二億円(受取額全体に占める割合二九・六%)、支払額は三千二百八十五億円(支払額全体に占める割合七二・八%)となっている。
 このほか、受取額の多いのは中国が八百七十一億円(受取額全体に占める割合一二・四%)[うち台湾が四百二億円(同五・七%)]、韓国が六百九十六億円(同九・九%)、タイが五百十三億円(同七・三%)、イギリスが四百五十九億円(同六・五%)、シンガポールが四百八億円(同五・八%)、マレーシアが三百九十八億円(同五・七%)などとなっており、近隣のアジア諸国からの受取額が多くなっている。
 また、支払額はアメリカ合衆国が七割を占めるが、このほかではドイツが二百四十八億円(支払額全体に占める割合五・五%)、オランダが二百四十二億円(同五・四%)、フランスが二百一億円(同四・五%)、スイスが百七十三億円(同三・八%)など、ヨーロッパ諸国で多くなっている。
 地域別にみると、受取額ではアジアが三千四百五十四億円(受取額全体に占める割合四九・一%、ソフトウェア業を除く対前年度比二二・三%増)で最も多く、次いで北アメリカが二千三百五十五億円(同三三・五%、同三六・一%増)、ヨーロッパが一千七十億円(同一五・二%、同一三・四%増)となっている。
 一方、支払額は、北アメリカが三千三百五億円(支払額全体に占める割合七三・三%、ソフトウェア業を除く対前年度比一五・五%増)で最も多く、次いでヨーロッパが一千百六十一億円(同二五・七%、同四・七%増)となっている(第4図参照)。

◇エネルギー研究調査


 (1) 研究費
<エネルギー研究費は堅調な伸び>
 平成八年度のエネルギー研究費は一兆一千六百八十一億円で、前年度に比べ四・五%の増加となっており、前年度に引き続き堅調な伸びを維持している(第8表参照)。
 過去からの推移をみると、昭和六十一年度に科学技術研究費全体の増加率を上回る伸びを示した後は、平成二年度までは、毎年研究費全体の伸びを下回る伸びにとどまっていたが、三年度及び四年度は研究費全体の伸びを上回り、五年度及び六年度は研究費全体が前年度比減少となる中で、わずかではあるが増加を示していた。七年度及び八年度は研究費全体の伸びをわずかに下回る増加となっている。
 この結果、科学技術研究費全体に占めるエネルギー研究費の割合は、平成二年度の七・〇%を底に上昇に転じ、六年度には七・八%となったが、七年度は七・八%と横ばい、八年度は七・七%と六年ぶりに減少となっている。

 (2) 研究主体別研究費
<エネルギー研究費はすべての研究主体で増加>
 平成八年度のエネルギー研究費を研究主体別にみると、会社等が三千九百七十九億円(対前年度比五・三%増)、研究機関が七千六十二億円(同四・三%増)、大学等が六百三十九億円(同一・六%増)となり、すべての研究主体で増加となっている。

 (3) 研究テーマ別研究費
<化石エネルギー研究費及び省エネルギー研究費が大幅な増加>
 平成八年度のエネルギー研究費を研究テーマ別にみると、原子力エネルギー研究費が五千八十八億円(対前年度比三・九%減)、省エネルギー研究費が四千七百六十八億円(同一三・八%増)、化石エネルギー研究費が一千百二十億円(同一六・七%増)、自然エネルギー研究費が四百十八億円(同二・四%減)となっており、化石エネルギー研究費及び省エネルギー研究費が大幅な増加となっている。
 エネルギー研究費の九四・五%を占める会社等と研究機関について、前年度からの動きをみると、会社等では化石エネルギー研究費(同四九・九%増)、省エネルギー研究費(同一〇・一%増)、自然エネルギー研究費(同四・五%増)が増加しているのに対し、原子力エネルギー研究費(同二五・六%減)、その他のエネルギー研究費(同一四・一%減)は減少している。
 また、研究機関では省エネルギー研究費(同一八・一%増)、その他のエネルギー研究費(同八・三%増)が増加しているのに対し、化石エネルギー研究費(同一四・六%減)、自然エネルギー研究費(同一二・六%減)がいずれも大幅な減少となっている。
<会社等のエネルギー研究費は三産業に集中>
 会社等のエネルギー研究費を主な産業別にみると、輸送用機械工業が一千三百七十二億円、電気機械工業が九百七十八億円、運輸・通信・公益業が六百五十七億円となっており、これら三産業でエネルギー研究費全体の七五・六%を占めている。
 前年度からの動きをみると、鉄鋼業が三〇・九%増、輸送用機械工業が二九・四%増、運輸・通信・公益業が一二・一%増、機械工業が一〇・一%増と大幅な増加となっている一方、非鉄金属工業が五七・三%減、建設業が二二・三%減と大幅な減少となっている。
 また、各産業別の研究テーマ別研究費をみると、化学工業、鉄鋼業、機械工業、電気機械工業、輸送用機械工業では省エネルギー研究費、建設業、非鉄金属工業では原子力エネルギー研究費、石油製品・石炭製品工業、運輸・通信・公益業では化石エネルギー研究費の割合が大きくなっている。

 (4) 研究関係従事者数
<研究本務者は微増>
 平成九年四月一日現在のエネルギー研究にかかわる研究関係従事者は四万三千四百人で、前年に比べ一・〇%の減少となっている。
 研究主体別にみると、会社等が一万六千四百人(対前年比一・六%増)、研究機関が二万一千六百人(同三・二%減)、大学等が五千四百人(同〇・一%減)となり、会社等は増加しているが、研究機関及び大学等では減少している。
 また、研究関係従事者のうち研究本務者は二万五千二百人で、前年に比べ〇・一%の増加となっている。
 研究主体別にみると、会社等が一万一千三百人(対前年比一・三%増)、研究機関が九千九百人(同一・五%減)、大学等が三千九百人(同〇・三%増)と研究機関は減少となっているが、会社等及び大学等では増加している。

 (5) 研究本務者一人当たり研究費
<一人当たり研究費は各研究主体とも増加>
 平成八年度の研究本務者一人当たり研究費は四千六百四十万円で、前年度に比べ四・四%の増加となっている。
 研究主体別にみると、会社等が三千五百六万円(対前年度比三・九%増)、研究機関が七千百四十五万円(同五・八%増)、大学等が一千六百二十二万円(同一・三%増)といずれも増加となっている。
 研究テーマ別にみると、原子力エネルギー研究が七千百七十九万円(対前年度比二・三%減)、化石エネルギー研究が四千九百七十四万円(同三・五%減)、省エネルギー研究が三千六百二十七万円(同一六・〇%増)、自然エネルギー研究が二千三百七十二万円(同三・九%増)となっており、省エネルギー研究と自然エネルギー研究が増加となっている。

◇ライフサイエンス研究調査


 (1) 研究費
<科学技術研究費全体に占めるライフサイエンス研究費は六年ぶりに減少>
 平成八年度のライフサイエンス研究費は一兆七千九百八十六億円で、前年度に比べ二・八%の増加となっている(第9表参照)。
 過去からの推移をみると、昭和六十二年度から平成二年度までは一〇%前後の高い伸びで推移していたが、三年度から五年度は伸びにやや低下がみられた。その後、六年度は調査を開始した昭和五十六年度以来初めて前年度を下回ったが、七年度は六・八%増と増加に転じ、八年度も二・八%増となっている。
 これを科学技術研究費全体の伸びと比較してみると、平成三年度から五年度までは全体の研究費が伸び悩みを示す中、ライフサイエンス研究費は堅調な伸びを続けていたが、六年度には前年度比がそれぞれ減少したものの、ライフサイエンス研究費の減少幅が研究費全体の減少幅を下回った。七年度もライフサイエンス研究費が全体の研究費を上回る伸びを示していたが、八年度は逆に全体の研究費の伸びがライフサイエンス研究費の伸びを上回っている。
 この結果、科学技術研究費全体に占めるライフサイエンス研究費の割合は、平成二年度の一〇・三%を底に上昇に転じ、七年度には一二・一%まで上昇したが、八年度は一一・九%と六年ぶりに減少となっている。

 (2) 研究主体別研究費
<大学等のライフサイエンス研究費が十二年ぶりに減少>
 平成八年度のライフサイエンス研究費を研究主体別にみると、会社等が八千六百七十六億円(対前年度比四・八%増)、研究機関が二千七百五十九億円(同四・四%増)、大学等が六千五百五十一億円(同〇・四%減)となっている。伸び率を前年度と比較してみると、会社等では前年度の伸びを上回る増加、研究機関では前年度の伸びを下回るものの引き続き増加となっているが、大学等では昭和五十九年度以来十二年ぶりに減少に転じている。

 (3) 研究目的別研究費
<環境保全研究費が引き続き高い伸び>
 平成八年度のライフサイエンス研究費を主な研究目的別にみると、保健・医療に関する研究開発が一兆一千七百十六億円(対前年度比三・九%増)、生命現象全般及び生物機能の解明が二千三百七十五億円(同二・六%増)、食糧資源の確保に関する研究開発が一千三百六十八億円(同二・一%増)、環境保全に関する研究開発が一千八十四億円(同八・一%増)、生物及びその機能の鉱工業利用に関する研究開発が六百七十四億円(同一・五%減)などとなっている。
 最近の動きをみると、環境保全に関する研究開発が減少に転じることなく高い伸びを続けている。
<化学工業が約八割を占める会社等のライフサイエンス研究費>
 会社等のライフサイエンス研究費を主な産業別にみると、化学工業が六千八百七十三億円で七九・二%と約八割を占めており、次いで多い食品工業(七百六十一億円)を大きく引き離している。
 前年度からの動きをみると、機械工業が三一・四%増、窯業が三〇・七%増、輸送用機械工業が一一・七%増と大幅な増加となっている一方、電気機械工業が一八・八%減、精密機械工業が一七・三%減と大幅な減少となっている。
 また、各産業の研究目的別研究費をみると、食品工業、繊維工業、化学工業、窯業、電気機械工業、精密機械工業、その他の工業では保健・医療に関する研究開発、機械工業、輸送用機械工業では環境保全に関する研究開発の割合が大きくなっている。
<遺伝子組換え研究費は堅調な伸び>
 ライフサイエンス研究費のうち、遺伝子組換えの研究に使用した研究費は一千二百九十五億円で、前年度に比べ五・二%の増加となっている。
 過去からの推移をみると、平成元年度までの一〇%を超える高い伸びが、二年度には二・九%増と大きく低下したが、以後は上昇し、五年度には一九・一%増と高い伸びを示した。六年度は〇・八%減と減少となったものの、七年度は再び大幅な増加となり、八年度も堅調な伸びとなっている。

 (4) 研究関係従事者数
<研究本務者は引き続き増加傾向>
 平成九年四月一日現在のライフサイエンス研究にかかわる研究関係従事者は十六万五千六百人で、前年に比べ一・〇%の増加となっている。
 研究主体別にみると、会社等が四万八百人(対前年比二・一%減)、研究機関が二万四千八百人(同六・四%増)、大学等が十万人(同一・〇%増)となっている。
 また、研究関係従事者のうち研究本務者は十一万三千百人で、前年に比べ一・〇%の増加となっている。
 研究主体別にみると、会社等が二万七千人(対前年比〇・九%減)、研究機関が一万九百人(同四・三%増)、大学等が七万五千二百人(同一・二%増)と会社等はわずかな減少となっているが、研究機関及び大学等では増加となっている。

 (5) 研究本務者一人当たり研究費
<一人当たり研究費は前年度に続き増加>
 平成八年度の研究本務者一人当たり研究費は一千五百九十万円で、前年度に比べ一・八%の増加となっている。
 研究主体別にみると、会社等が三千二百十四万円(対前年度比五・七%増)、研究機関が二千五百二十八万円(同〇・一%増)、大学等が八百七十一万円(同一・五%減)と大学等は減少しているが、会社等及び研究機関では増加となっている。


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法人企業動向調査


―平成九年十二月実施調査結果―


経 済 企 画 庁


◇調査要領

 本調査は、資本金一億円以上の全営利法人を対象として、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通しを調査したものである。
 調査対象:調査は、原則として国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金又は出資額が一億円以上の全営利法人(約三万二千百社)から経済企画庁が定める方法により選定した四千五百五十五社を対象とした。
 調査時点:平成九年十二月一日
 調査方法:調査は、調査法人の自計申告により行った。
 なお、資本金又は出資額が五十億円以上の営利法人については、原則として全数調査、五十億円未満の営利法人は、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
 有効回答率:調査対象法人四千五百五十五社のうち、有効回答法人四千二百七十四社、有効回答率九三・八%
〔利用上の注意〕
 @ 今期三か月の判断とは、平成九年七〜九月期と比較した場合の九年十〜十二月期の判断、来期三か月の見通しとは、九年十〜十二月期と比較した場合の十年一〜三月期の見通し、再来期三か月の見通しとは、十年一〜三月期と比較した場合の十年四〜六月期の見通しである。
 なお、季節調整値及び時系列表については、来期三か月の見通し及び再来期三か月の見通しについて掲載している。
 A 判断指標(BSI)とは、「上昇(強くなる・増加)の割合−下降(弱くなる・減少)の割合」である。
 B 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
 C 季節調整の方法は、設備投資(実績、実績見込み、計画U、計画Tの各系列別)及び景気・経営の見通しとも、センサス局法U、X―11で算出。更に、設備投資の実績見込み、計画U、計画Tは達成率による修正を行った。
 D 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社、JR関係七社及び電源開発鰍調査対象に加えるとともに、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社については、六十年四〜六月期、JR関係七社については、六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
 E 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
 F 平成元年四〜六月期以降の調査内容は、消費税を除くベースで調査した。

◇概 要

○景気見通し(全産業)(第1表第1図参照

・国内景気
 国内景気の判断指標(BSI)は、平成九年十〜十二月「マイナス二」の後、十年一〜三月「マイナス二十五」、四〜六月「マイナス四」となり、企業経営者の国内景気見通しは、一〜三月は大きく悪化するものの、四〜六月には和らいでいる。
・業界景気
 業界景気の判断指標は、九年十〜十二月「マイナス七」の後、十年一〜三月「マイナス二十」、四〜六月「マイナス八」となり、業界景気見通しは、一〜三月は一時的に悪化するものの、四〜六月にはやや和らいでいる。

○需要見通し(製造業)(第1表第1図参照

・国内需要
 国内需要の判断指標は、平成九年十〜十二月「マイナス五」の後、十年一〜三月「マイナス十八」、四〜六月「マイナス五」となり、企業経営者の国内需要見通しは、一〜三月は一時的に悪化するものの、四〜六月には和らいでいる。
・海外需要
 海外需要の判断指標は、九年十〜十二月「一」の後、十年一〜三月「マイナス四」、四〜六月「マイナス二」となり、海外需要見通しは弱含みとなっている。

○自己企業の経営見通し第1表第1図参照

・製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 製品価格の判断指標は、平成九年十〜十二月「マイナス十」の後、十年一〜三月「マイナス十四」、四〜六月「マイナス十三」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
・原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 原材料価格の判断指標は、九年十〜十二月「五」の後、十年一〜三月「五」、四〜六月「二」となり、原材料価格はやや上昇するものと見込まれている。
・売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)
 売上高の判断指標は、九年十〜十二月「三」の後、十年一〜三月「マイナス一」、四〜六月「マイナス一」となり、売上高の見通しはやや慎重なものとなっている。
・経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)
 経常利益の判断指標は、九年十〜十二月「二」の後、十年一〜三月「マイナス二」、四〜六月「マイナス一」となり、経常利益の見通しはやや慎重なものとなっている。

○四半期別設備投資の動向(全産業)(第2表第2図第3表参照

 全産業では、平成九年十〜十二月、十年一〜三月、四〜六月のいずれも減少の見通しとなっている。これを産業別にみると、製造業では、九年十〜十二月は増加、十年一〜三月、四〜六月はともに減少の見通し、非製造業では、九年十〜十二月、十年一〜三月、四〜六月のいずれも減少の見通しとなっている。
 また、資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業、一〜十億円の中堅企業とも、九年十〜十二月、十年一〜三月、四〜六月のいずれも減少の見通しとなっている。

○平成九年度設備投資計画の動向第4表参照

 全産業の設備投資計画(修正計画U)は約四十六兆円となり、平成八年度(実績)に比べ二・七%の増加が見込まれている(九年九月調査による修正計画Tでは、三・〇%の増加の見込み)。
 このうち、製造業では、約十五兆九千億円となり、七・八%の増加、非製造業では、約三十兆一千億円となり、〇・二%の増加が見込まれている。
 また、資本金規模別にみると、大企業では、五・一%の増加、中堅企業では、二・〇%の減少が見込まれている。

○生産設備の判断(製造業)(第5表参照

 自己企業の生産設備の判断指標は、平成九年七〜九月「十一」の後、十〜十二月「十四」となり、過大感がやや増している。

○在庫水準の判断(製造業)(第6表参照

 完成品在庫水準の判断指標は、平成九年九月末「十五」の後、十二月末「十九」となり、過大感が増している。

一 景気見通し(全産業:季節調整値)

 (一) 国内景気

 国内景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年十〜十二月「マイナス二」の後、十年一〜三月「マイナス二十五」、四〜六月「マイナス四」となり、企業経営者の国内景気見通しは、一〜三月は大きく悪化するものの、四〜六月には和らいでいる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年一〜三月にはすべての業種でマイナス、四〜六月にはゴム・皮革、造船、印刷・出版等五業種がプラス、「その他の製造業」が「〇」、それ以外(十二業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、十年一〜三月にはすべての業種でマイナス、四〜六月には農林漁業、電力等四業種がプラス、ガスが「〇」、それ以外(五業種)はマイナスとなっている。

 (二) 業界景気

 所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年十〜十二月「マイナス七」の後、十年一〜三月「マイナス二十」、四〜六月「マイナス八」となり、業界景気見通しは、一〜三月は一時的に悪化するものの、四〜六月にはやや和らいでいる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年一〜三月にはすべての業種でマイナス、四〜六月には造船、印刷・出版がプラス、それ以外(十六業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、十年一〜三月、四〜六月ともに電力がプラス、それ以外(九業種)はマイナスとなっている。

二 需要見通し(製造業:季節調整値)

 (一) 国内需要

 国内需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成九年十〜十二月「マイナス五」の後、十年一〜三月「マイナス十八」、四〜六月「マイナス五」となり、企業経営者の国内需要見通しは、一〜三月は一時的に悪化するものの、四〜六月には和らいでいる。
 業種別にみると、十八業種中、十年一〜三月にはすべての業種でマイナス、四〜六月には造船、印刷・出版等四業種がプラス、それ以外(十四業種)はマイナスとなっている。

 (二) 海外需要

 海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成九年十〜十二月「一」、十年一〜三月「マイナス四」、四〜六月「マイナス二」となり、海外需要見通しは弱含みとなっている。
 業種別にみると、十八業種中、十年一〜三月には造船、精密機械、「その他の製造業」等五業種がプラス、ゴム・皮革が「〇」、それ以外(十二業種)はマイナス、四〜六月にはゴム・皮革、造船等四業種がプラス、それ以外(十四業種)はマイナスとなっている。

三 自己企業の経営見通し(季節調整値)

 (一) 製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年十〜十二月「マイナス十」の後、十年一〜三月「マイナス十四」、四〜六月「マイナス十三」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
 業種別にみると、二十業種中、十年一〜三月には食料品・飲料、鉱業がプラス、それ以外(十八業種)はマイナス、四〜六月にはすべての業種でマイナスとなっている。

 (二) 原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成九年十〜十二月「五」の後、十年一〜三月「五」、四〜六月「二」となり、原材料価格はやや上昇するものと見込まれている。
 業種別にみると、二十業種中、十年一〜三月には鉄鋼、電気機械、「その他の製造業」がマイナス、化学が「〇」、それ以外(十六業種)はプラス、四〜六月には鉄鋼、非鉄金属、「その他の輸送用機械」等七業種がマイナス、ゴム・皮革、印刷・出版、「その他の製造業」が「〇」、それ以外(十業種)はプラスとなっている。

 (三) 売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成九年十〜十二月「三」の後、十年一〜三月「マイナス一」、四〜六月「マイナス一」となり、売上高の見通しはやや慎重なものとなっている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年一〜三月には繊維、非鉄金属、造船等九業種がプラス、それ以外(九業種)はマイナス、四〜六月にはパルプ・紙、ゴム・皮革、精密機械等八業種がプラス、それ以外(十業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、十年一〜三月には電力、ガス、サービスがプラス、それ以外(五業種)はマイナス、四〜六月には鉱業、運輸・通信が「〇」、それ以外(六業種)はマイナスとなっている。

 (四) 経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成九年十〜十二月「二」の後、十年一〜三月「マイナス二」、四〜六月「マイナス一」となり、経常利益の見通しはやや慎重なものとなっている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年一〜三月には食料品・飲料、繊維、造船等九業種がプラス、それ以外(九業種)はマイナス、四〜六月には食料品・飲料、パルプ・紙、金属製品等九業種がプラス、それ以外(九業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、十年一〜三月には農林漁業、鉱業がプラス、それ以外(六業種)はマイナス、四〜六月には農林漁業、卸・小売、電力がプラス、それ以外(五業種)はマイナスとなっている。

四 四半期別設備投資の動向(全産業:季節調整値)

 設備投資の動向を四半期別に前期比でみると、全産業では、平成九年七〜九月(実績)一・四%増の後、十〜十二月(実績見込み)三・九%減、十年一〜三月(計画U)二・二%減、四〜六月(計画I)三・七%減の見通しとなっている。
 また、「電力」を除いた全産業では、九年七〜九月二・八%増の後、十〜十二月四・二%減、十年一〜三月二・六%減、四〜六月三・一%減の見通しとなっている。

 (一) 産業別設備投資の動向

 産業別に設備投資の動向を前期比でみると、製造業では平成九年七〜九月〇・七%増の後、十〜十二月一・九%増、十年一〜三月一・六%減、四〜六月一・〇%減の見通しとなり、非製造業では、九年七〜九月一・五%増の後、十〜十二月六・六%減、十年一〜三月二・〇%減、四〜六月四・九%減の見通しとなっている。
 これを業種別にみると、製造業のうち素材型業種では、化学が九年七〜九月〇・一%増の後、十〜十二月一・六%減、十年一〜三月五・四%増、四〜六月五・九%減の見通しとなり、鉄鋼では九年七〜九月八・六%増の後、十〜十二月一五・一%減、十年一〜三月八・八%減、四〜六月一三・〇%減の見通しとなっている。
 また、加工型業種では、自動車が九年七〜九月一七・六%増の後、十〜十二月一九・一%減、十年一〜三月一一・七%増、四〜六月三・八%減の見通しとなり、電気機械では九年七〜九月八・二%増の後、十〜十二月一二・八%増、十年一〜三月四・一%減、四〜六月一四・七%増の見通しとなっている。
 一方、非製造業についてみると、運輸・通信では九年七〜九月三・六%増、十〜十二月一四・一%減、十年一〜三月一・六%減、四〜六月二・二%減の見通しとなり、電力では九年七〜九月九・八%減、十〜十二月一・五%減、十年一〜三月三・八%増、四〜六月三・〇%減の見通しとなっている。
 また、サービスでは九年七〜九月〇・四%減、十〜十二月七・五%減、十年一〜三月一九・二%減、四〜六月二一・一%減の見通しとなり、リースでは九年七〜九月〇・一%増、十〜十二月〇・九%減、十年一〜三月七・九%増、四〜六月一・二%増の見通しとなっている。

 (二) 資本金規模別設備投資の動向

 資本金規模別に設備投資の動向を前期比でみると、資本金十億円以上の大企業では、平成九年七〜九月〇・七%減の後、十〜十二月三・五%減、十年一〜三月一・二%減、四〜六月一・五%減の見通しとなっている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、九年七〜九月七・九%増の後、十〜十二月五・二%減、十年一〜三月四・〇%減、四〜六月五・四%減の見通しとなっている。

五 平成九年度設備投資計画の動向(全産業)

 平成九年度の全産業の設備投資計画(修正計画U)は、約四十六兆円となり、八年度(実績)に比べ二・七%の増加が見込まれている。
 これを、修正計画T(九年九月調査)と比較すると、前年度比は三・〇%増から二・七%増への下方修正となっている。
 また、「電力」を除いた全産業では、二・八%の増加が見込まれている。

 (一) 産業別動向

 平成九年度の設備投資計画の修正計画Uを産業別にみると、製造業では、約十五兆九千億円と、八年度に比べ七・八%の増加となり、修正計画Tの前年度比五・七%増から七・八%増への上方修正となっている。
 また、非製造業では、約三十兆一千億円と、八年度に比べ〇・二%の増加となり、修正計画Tの前年度比一・七%増から〇・二%増への下方修正となっている。なお、「電力」を除いた非製造業では、約二十五兆五千億円となり、〇・〇%の減少が見込まれている。
 これを業種別にみると、製造業のうち素材型業種では、繊維は三六・一%の増加、非鉄金属は二・三%の増加が見込まれている反面、石油・石炭は二一・四%の減少、パルプ・紙は九・八%の減少、ゴム・皮革は七・六%の減少、窯業・土石は五・一%の減少、鉄鋼は一・一%の減少、化学は〇・八%の減少が見込まれている。
 また、加工型業種では、自動車は三〇・六%の増加、「その他の輸送用機械」は二五・八%の増加、印刷・出版は二一・三%の増加、電気機械は一七・六%の増加、精密機械は七・九%の増加、一般機械は七・五%の増加、金属製品は三・二%の増加、「その他の製造業」は一・七%の増加が見込まれている反面、食料品・飲料は一二・六%の減少、造船は〇・六%の減少が見込まれている。
 一方、非製造業をみると、農林漁業は四八・二%の増加、不動産は一五・七%の増加、金融保険は六・三%の増加、リースは五・九%の増加、ガスは三・九%の増加、運輸・通信は二・四%の増加、電力は一・五%の増加が見込まれている反面、鉱業は二一・〇%の減少、サービスは一六・九%の減少、卸・小売は一〇・七%の減少、建設は一〇・〇%の減少が見込まれている。

 (二) 資本金規模別計画

 平成九年度の設備投資計画を資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業では、八年度に比べ五・一%の増加が見込まれており、このうち製造業では、一〇・一%の増加、非製造業では、二・六%の増加が見込まれている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、二・〇%の減少が見込まれており、このうち製造業では、二・八%の増加、非製造業では、四・二%の減少が見込まれている。

六 生産設備の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における自己企業の生産設備の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年七〜九月「十一」の後、十〜十二月「十四」となり、過大感がやや増している。
 業種別(十八業種)にみると、非鉄金属、自動車、「その他の製造業」等十四業種で過大感が増している。

七 在庫水準の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における完成品在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年九月末「十五」の後、十二月末「十九」となり、過大感が増している。
 業種別(十八業種)にみると、ゴム・皮革、窯業・土石、鉄鋼、「その他の製造業」等十六業種で過大感が増している。
 また、原材料在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、九年九月末「九」の後、十二月末「十」となり、ほぼ横ばいとなっている。
 業種別にみると、石油・石炭、鉄鋼、金属製品等十二業種で過大感が増している。

◇    ◇    ◇



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消費支出(全世帯)は実質四・九%の減少


―平成九年十二月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月、十月は実質増加となり、十一月、十二月は実質減少となった(第1図第2図第1表参照)。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成九年九月は実質増加、十月は実質で前年と同水準となり、十一月、十二月は実質減少となった。
 消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月は実質増加となり、十月以降三か月連続の実質減少となった(第1図第2表参照)。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は三十四万八千九百二十三円で、名目三・八%、実質五・五%の減少

◇財・サービス区分別の消費支出

 財(商品)は実質五・七%の減少
  <耐久財>実質二六・五%の減少
  <半耐久財>実質五・九%の減少
  <非耐久財>実質一・四%の減少
 サービスは実質二・九%の減少






 
    <3月18日号の主な予定>
 
 ▽平成九年平均
  全国消費者物価指数の動向………総 務 庁 

 ▽普通世帯の消費動向調査…………経済企画庁 
 



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