官報資料版 平成1015




貯蓄と負債の動向


―平成九年貯蓄動向調査の結果―


総 務 庁


 総務庁統計局では、三月十八日に平成九年貯蓄動向調査の結果を公表した。その概要は以下のとおりである。
 貯蓄動向調査は、家計調査に附帯して昭和三十三年以降毎年実施しているもので、全国の二人以上の一般世帯(農林漁家世帯及び単身世帯を除く。)から抽出した約六千二百世帯を対象に、毎年十二月三十一日現在における貯蓄及び負債の状況を調査している。
 この調査でいう「貯蓄」には、郵便局・銀行・その他の金融機関への預貯金のほか、生命保険・簡易保険・積立型損害保険の掛金(掛け捨ての保険を除く。)、有価証券(株式、債券、信託等)、社内預金などを含んでいる。

◇貯蓄の動向

<勤労者世帯の貯蓄は一千二百五十万円、前年に比べて二・三%の減少>
 平成九年十二月末における勤労者世帯の一世帯平均の貯蓄現在高は一千二百五十万円となっており、前年に比べて二・三%の減少となった。貯蓄現在高の対前年増加率は、景気の低迷の中で平成六年に〇・一%の微減となり、七年は二・二%、八年は一・四%と増加が続いたが、九年は二・三%の減少に転じた。
 一方、年間収入は七百七十九万円で、対前年増加率は〇・三%の減少となっており、貯蓄現在高の減少率が年間収入の減少率を上回っている。この結果、貯蓄年収比(貯蓄現在高の年間収入に対する比)は一六〇・五%となり、前年に比べて三・三ポイント低下した(第1図第1表参照)。

<全世帯の貯蓄は一千六百三十五万円、前年に比べて一・三%の減少>
 勤労者世帯と勤労者以外の世帯(個人営業世帯、法人経営者世帯、自由業者世帯、無職世帯等)を合わせた全世帯の一世帯平均の貯蓄現在高は一千六百三十五万円で、前年に比べて一・三%の減少となった。全世帯の貯蓄現在高の対前年増加率は、平成五年に二・五%の減少となったものの、六年は六・三%、七年は〇・七%、八年は三・二%の増加が続いたが、九年は一・三%の減少に転じた。
 また、年間収入は七百五十五万円で、対前年増加率は〇・〇%と調査開始以来初めて減少した平成八年から横ばいとなった。この結果、全世帯の貯蓄年収比は二一六・六%で、前年に比べて二・八ポイント低下した(第1表参照)。

<勤労者世帯の六七・二%が平均貯蓄現在高以下>
 勤労者世帯について貯蓄現在高階級別(標準級間隔二百万円)の世帯分布をみると、平均値一千二百五十万円を下回る世帯が全体の六七・二%を占め、貯蓄の低い方に偏った分布となっている。
 また、世帯全体を二分する貯蓄現在高の中位数は八百三十二万円、世帯が最も多い貯蓄現在高階級は「四百万円以上〜六百万円未満」であり、最頻値は四百六十九万円となっている。
 なお、前年に比べ平均値は二十九万円、中位数は二十二万円、共に減少となっている(第2図参照)。

<貯蓄現在高の世帯間格差は、前年に比べて〇・四ポイント縮小>
 勤労者世帯について貯蓄現在高の世帯間格差を四分位分散係数でみると、平成九年は五七・〇%となり、前年に比べて〇・四ポイント縮小した。
 貯蓄現在高の四分位分散係数の推移をみると、昭和三十五年には七〇%以上であったが、三十年代後半から四十年代にかけて縮小傾向を示し、五十二年には五五・五%となった。その後はおおむね五〇%台後半で推移し、平成七年には六〇%台となったものの、八年以降は再び五〇%台になっている(第3図参照)。

<通貨性預貯金が七・二%の増加、定期性預貯金が三・〇%の減少>
 勤労者世帯について貯蓄現在高を貯蓄の種類別にみると、定期性預貯金五百五十四万円、生命保険など四百二十万円、通貨性預貯金百十二万円、有価証券百十万円、金融機関外への貯蓄(社内預金など)五十三万円などとなっている。
 これらの対前年増加率をみると、通貨性預貯金が七・二%、生命保険などが一・四%とそれぞれ増加しているのに対し、有価証券は一八・一%、定期性預貯金が三・〇%、金融機関外が一・三%とそれぞれ減少した。
 なお、平均貯蓄現在高の対前年増加率(二・三%減)への貯蓄の種類別の寄与度をみると、通貨性預貯金が〇・六増、生命保険などが〇・五増、定期性預貯金が一・三減、有価証券が一・九減などとなっている。
 預貯金について金融機関別にみると、通貨性預貯金のうち郵便局は二十五万円、銀行は七十万円、その他は十八万円で、前年に比べそれぞれ二二・七%、三・六%、一・七%増加した。
 また、定期性預貯金のうち郵便局は二百九万円、銀行は二百四十六万円、その他は九十九万円で、前年に比べ郵便局は八・六%増加したのに対し、銀行は七・八%、その他は一一・六%とそれぞれ減少している(第2表参照)。

<郵便局の定期性預貯金(一六・七%)及び生命保険など(三三・六%)の割合は、調査開始以来最高、有価証券(八・八%)の割合は、調査開始以来最低>
 勤労者世帯の貯蓄現在高に占める貯蓄の種類別割合は、定期性預貯金が四四・三%と最も高く、次いで生命保険など三三・六%、通貨性預貯金九・〇%、有価証券八・八%、金融機関外四・二%となっている。
 貯蓄の種類別割合の推移をみると、定期性預貯金は平成五年、六年と低下した後、七年は一・〇ポイント上昇したが、八年は〇・五ポイント、九年は〇・三ポイント低下した。定期性預貯金の内訳をみると、郵便局は八年の一五・〇%から九年の一六・七%へ一・七ポイント上昇しているのに対し、銀行は八年の二〇・八%から九年の一九・六%へ一・二ポイント低下している。また、通貨性預貯金は前年に比べ〇・八ポイント上昇した。
 一方、有価証券は平成元年(二三・二%)を境にして減少傾向で推移し、五年は前年に比べてわずかに上昇したものの、六年から再び減少傾向で推移しており、九年は前年に比べ一・七ポイント低下した。また、生命保険などは平成三年以降増加傾向で推移し、七年は〇・二ポイント低下したものの、八年は一・三ポイント、九年は一・二ポイント上昇した。
 この結果、郵便局の定期性預貯金及び生命保険などの割合は調査開始以来最高に、有価証券は調査開始以来最低となった(第3表第4図参照)。

<生命保険が増加、簡易保険は調査開始以来初めて減少>
 勤労者世帯について生命保険などの内訳をみると、生命保険が二百六十六万円、簡易保険が百二十九万円、積立型損害保険が二十五万円となっている。対前年増加率は、それぞれ四・二%増、二・六%減、四・六%減となっている。
 簡易保険が減少となったのは調査開始以来初めてである。
 積立型損害保険は、平成七年、八年と増加を続けていたが、九年は減少に転じた(第2表第5図参照)。

<有価証券はすべての種類で大幅減少>
 勤労者世帯について有価証券の内訳をみると、株式五十一万円、貸付信託・金銭信託二十九万円、債券十四万円、公社債投資信託十万円、株式投資信託五万円となっている。これらの対前年増加率をみると、平成二年以降大幅な減少を続けていた株式は五年に増加となったが、六年以降は減少が続き、九年は一八・一%の大幅な減少となっている。
 また、株式投資信託は三八・八%の減少、公社債投資信託は二七・九%の減少と、それぞれ八年の増加から共に大幅減少に転じた。
 さらに、貸付信託・金銭信託は一二・二%の減少、債券は一一・九%の減少で、それぞれ四年連続、三年連続の減少となった(第2表第6図参照)。

<有価証券の保有率は七年連続低下>
 勤労者世帯について貯蓄の種類別保有率(各種貯蓄を保有する世帯の割合)をみると、生命保険などは九三・二%、通貨性預貯金は八九・一%、定期性預貯金は八四・三%と、いずれも九〇%前後の世帯が保有しているのに対し、有価証券は二三・一%で前年に比べて一・七ポイント低下し、平成二年の三三・二%をピークとして、それ以降減少傾向が続いている。
 有価証券のうち、株式の保有率は前年と同じ一六・八%で、債券は〇・六ポイント低下し、株式投資信託及び貸付信託・金銭信託はいずれも前年に比べ〇・九ポイント低下し、公社債投資信託は一・九ポイント低下した(第4表参照)。

<貯蓄現在高の多い世帯で定期性預貯金及び有価証券の割合が高い>
 勤労者世帯について貯蓄の種類別割合を貯蓄現在高階級別にみると、概して貯蓄現在高の少ない階級の世帯ほど、生命保険など及び通貨性預貯金の割合が高く、貯蓄現在高の多い階級の世帯ほど、定期性預貯金と有価証券の割合が高くなる傾向がある。例えば、貯蓄現在高で世帯が最も多い「四百万円以上〜六百万円未満」を平均値を含む「一千二百万円以上〜一千六百万円未満」の階級と比較すると、通貨性預貯金で四・一ポイント、生命保険などで一五・四ポイント上回っている。
 一方、定期性預貯金で一四・〇ポイント、有価証券で四・〇ポイント下回っている(第5表第7図参照)。

◇負債の動向

<勤労者世帯の負債は四百九十八万円、前年に比べて二・九%の増加、増加率は四年連続で縮小>
 平成九年十二月末における勤労者世帯の一世帯平均の負債現在高は四百九十八万円となっており、前年に比べて二・九%の増加となった。対前年増加率は四年連続で縮小している。負債年収比(負債現在高の年間収入に対する比)は六三・九%となり、前年に比べて一・九ポイント上昇した。
 また、全世帯の一世帯平均の負債現在高は四百九十九万円となっており、前年に比べて二・三%の減少となった。負債年収比は六六・〇%で、前年に比べて一・六ポイント低下している(第6表第1図参照)。

<負債保有率は五〇・八%で、前年と比べ〇・三ポイント低下>
 勤労者世帯のうち負債のある世帯の割合(負債保有率)は五〇・八%となっており、前年と比べ〇・三ポイント低下した。負債保有率は昭和三十年代から五十年代にかけて上昇傾向で推移し、六十年に五六・二%となったが、その後は五〇〜五四%台で、おおむね横ばいで推移している(第6表参照)。

<金融機関のうち公的金融機関からの負債が減少>
 勤労者世帯について一世帯平均負債現在高(四百九十八万円)を借入先別にみると、公的金融機関が二百十八万円(負債現在高の四三・八%を占める。)と最も多く、以下、民間金融機関が百九十三万円(同三八・七%)、社内貸付、親戚・知人などの金融機関外が八十七万円(同一七・五%)となっている。
 これらの対前年増加率をみると、民間金融機関が七・三%、金融機関外が三・一%とそれぞれ増加しているのに対し、公的金融機関は〇・八%と減少に転じた(第7表参照)。

<勤労者世帯の住宅・土地のための負債は四百五十七万円、前年に比べて一・七%の増加、住宅・土地のための負債保有世帯は三三・八%>
 勤労者世帯の負債現在高(四百九十八万円)のうち、住宅・土地のための負債は四百五十七万円で、負債全体の九一・九%を占めており、前年と比べると一・七%の増加となった。
 住宅・土地のための負債を借入先別にみると、金融機関が三百九十万円、金融機関外が六十八万円となっており、それぞれ前年に比べて二・九%の増加、四・六%の減少となった。
 また、勤労者世帯の住宅・土地のための負債保有率は三三・八%となっており、前年に比べて〇・九ポイント低下した(第8表参照)。

<負債保有勤労者世帯の六二・六%が平均負債現在高以下>
 勤労者世帯のうち負債保有世帯(勤労者世帯の五〇・八%を占める。)について、負債現在高階級別(標準級間隔百五十万円)の世帯分布をみると、平均値九百八十万円を下回る世帯が全体の六二・六%を占め、負債現在高の低い方に偏った分布となっている(第8図参照)。

<住宅・土地のための負債保有勤労者世帯の負債は一千三百八十八万円、前年に比べて四・四%の増加>
 平成九年十二月末における住宅・土地のための負債保有勤労者世帯の一世帯平均の負債現在高は一千三百八十八万円となっており、前年に比べて四・四%の増加となった。負債年収比(負債現在高の年間収入に対する比)は一五四・六%となり、前年に比べて七・七ポイント上昇した。
 勤労者世帯の貯蓄と負債の差(貯蓄−負債)をみると、勤労者世帯全体は七百五十二万円と貯蓄超過となっているのに対し、住宅・土地のための負債保有世帯では三百六万円と負債超過となっている。
 なお、住宅・土地のための負債保有世帯では平成七年に負債超過に転じており、八年、九年には負債超過額が更に拡大している(第9表参照)。

<住宅・土地のための負債保有勤労者世帯における住宅・土地のための負債現在高は一千三百五十二万円、前年に比べて四・四%の増加>
 住宅・土地のための負債保有勤労者世帯における住宅・土地のための負債現在高は一千三百五十二万円となっており、前年に比べて四・四%の増加となった。住宅・土地のための負債は、負債現在高全体の九七・四%を占めている(第10表参照)。

<住宅・土地のための負債は、民間金融機関からの借入れが前年に続き一〇%以上の増加>
 住宅・土地のための負債保有勤労者世帯における住宅・土地のための負債を借入先別にみると、公的金融機関が六百三十九万円、民間金融機関が五百十二万円、金融機関外が二百万円となっている。
 これらの対前年増加率をみると、民間金融機関が前年の一四・七%増加に続いて一〇・二%の二桁台の増加となっているが、公的金融機関は前年の一・六%に続いて二・二%のわずかな増加となっている。また、金融機関外は前年の二二・七%増から二・二%の減少に転じている(第11表参照)。

<住宅・土地のための負債に対する一年間の返済額は百二十九万円>
 住宅・土地のための負債保有勤労者世帯における一年間の返済総額は百四十四万円で、前年(百四十二万円)に比べて二万円の増加となっている。返済額のうち住宅・土地のための負債に対する返済額は百二十九万円となっており、前年に比べ増減がなかった。
 住宅・土地のための負債に対する一年間の返済額を返済先別にみると、公的金融機関が五十九万円、民間金融機関が四十八万円、金融機関外が二十二万円となっており、前年に比べてそれぞれ、四万円の増加、四万円の減少、一万円の減少となっている(第12表参照)。

◇世帯属性別の貯蓄・負債の状況

<貯蓄現在高の所得階級間格差は三・六倍、前年に比べて〇・六ポイント拡大>
 勤労者世帯について年間収入五分位階級別に貯蓄現在高をみると、所得が高くなるに従って多くなっており、所得の最も低い第T階級が五百八十九万円、所得の最も高い第X階級が二千百四十七万円となっている。
 各所得階級の対前年増加率をみると、第T、第U、第V、第W階級がそれぞれ一四・四%、三・六%、二・六%、三・二%の減少となったのに対し、第X階級が三・二%の増加となった。
 この結果、貯蓄現在高の所得階級間格差(第T階級に対する第X階級の貯蓄現在高の比)は三・六倍となり、前年(三・〇倍)から〇・六ポイント拡大した。貯蓄現在高の所得階級間格差は、平成二年以降三・〇〜三・八で推移しており、元年以前の水準(四倍以上)を下回っている。
 一方、負債現在高をみると、第T階級が百五十三万円であるのに対し、第X階級では八百三十四万円となっており、概して所得が高くなるに従って負債現在高が多くなっている(第13表第14表参照)。

<郵便局の割合の拡大が大きかった第X階級>
 勤労者世帯について年間収入五分位階級別に貯蓄の種類別割合をみると、生命保険など及び通貨性預貯金の割合は所得の低い階級ほど概して高い傾向にあり、生命保険などは第T階級で四〇・四%、第X階級では二九・六%、通貨性預貯金は第T階級で一〇・四%、第X階級では八・一%となっている。有価証券の割合は概して所得の高い階級ほど高く、第T階級で三・一%、第X階級では一三・〇%となっている。また、定期性預貯金の割合は第W階級で四七・九%と最も高く、その他の階級でも四〇%台となっている。
 年間収入五分位階級別の貯蓄の種類別割合を前年と比べると、生命保険などは第T階級で拡大幅が大きいのに対し、定期性預貯金のうち郵便局は第X階級で拡大幅が大きくなっており、第X階級の貯蓄現在高のうち定期性預貯金の郵便局の割合(一七・〇%)は、初めて平均(一六・七%)を上回っている(第15表第9図参照)。

<貯蓄現在高はすべての年齢階級で減少>
 勤労者世帯の貯蓄現在高について世帯主の年齢階級別にみると、年齢が高くなるに従って貯蓄も多くなっており、六十歳以上の世帯は二千百八十三万円で、三十歳未満の世帯の四百三十八万円の約五・〇倍となっている。
 対前年増加率をみると、すべての年齢階級で減少しており、六十歳以上、三十歳代、三十歳未満、五十歳代、四十歳代の世帯の順に減少幅が大きく、それぞれ五・六%、四・八%、二・三%、〇・五%、〇・〇%(二千円減)となっている(第16表第10図参照)。

<世帯主が六十歳以上の世帯では、勤労者世帯、無職世帯共に貯蓄現在高の散らばりが大きい>
 世帯主が六十歳以上の一世帯平均の貯蓄現在高は、勤労者世帯(平均年齢六四・一歳)が二千百八十三万円、無職世帯(平均年齢六九・八歳)が二千二百十五万円となっている。
 貯蓄現在高階級別の世帯分布を比べてみると、勤労者世帯、無職世帯共に、三千万円以上の貯蓄を保有する世帯がそれぞれ二三・四%、二六・二%と全体の約四分の一を占めている一方、貯蓄現在高が六百万円未満の世帯もそれぞれ一九・八%、二一・四%と全体の約五分の一を占めており、貯蓄現在高の世帯間の散らばりが大きい(第17表第11図参照)。

<負債現在高は五十歳未満で増加、五十歳以上で減少>
 勤労者世帯について世帯主の年齢階級別に負債現在高をみると、三十歳未満の世帯が二百八十万円、三十歳代の世帯が五百九十四万円、四十歳代の世帯が六百七十五万円と、年齢が高くなるに従って多くなり、この四十歳代をピークとして五十歳代の世帯が四百五万円、六十歳以上の世帯が百三十七万円と少なくなっている。
 負債現在高の対前年増加率をみると、三十歳未満、三十歳代、四十歳代の各年齢層でそれぞれ増加し、五十歳代、六十歳以上は減少している。
 住宅・土地のための負債保有率を前年と比べてみると、三十歳未満、四十歳代の世帯でそれぞれ八・〇ポイント、〇・七ポイント上昇し、それ以外は低下している(第18表第10図参照)。

<住宅・土地のための負債保有勤労者世帯のうち、三十歳代の世帯の負債現在高は一千九百十二万円で最も多い>
 住宅・土地のための負債保有勤労者世帯について負債現在高を世帯主の年齢階級別にみると、三十歳代の世帯が一千九百十二万円と最も多く、以下、年齢が高くなるに従って少なくなっている。
 貯蓄と負債の差(貯蓄−負債)をみると、四十歳代以下の年齢階級でいずれも負債超過となっており、三十歳未満が一千四百六十九万円と最も多くなっている。
 一方、五十歳代以上の年齢階級では貯蓄超過となっており、六十歳以上が七百九十三万円と多くなっている(第19表第12図参照)。

<勤労者以外の世帯の貯蓄現在高は二千二百六十万円、前年に比べて〇・二%の減少>
 勤労者以外の世帯の一世帯平均の貯蓄現在高は二千二百六十万円で、勤労者世帯(一千二百五十万円)と比べると一千十万円多く、約一・八倍の貯蓄を保有している。また、貯蓄年収比は、勤労者世帯が一六〇・五%であるのに対し、勤労者以外の世帯では三一五・六%となっており、勤労者以外の世帯が勤労者世帯の約二・〇倍になっている。
 世帯主の職業別に貯蓄現在高をみると、勤労者世帯では、官公職員世帯が一千五百四十六万円と最も多く、次いで民間職員世帯が一千四百三万円、労務作業者世帯が九百十六万円となっている。また、勤労者以外の世帯では、法人経営者世帯が三千二百五十九万円と最も多く、次いで自由業者世帯が二千二百四十四万円、無職世帯が二千百九十五万円、個人営業世帯が二千八十万円となっている。
 勤労者以外の世帯の貯蓄現在高の対前年増加率は、〇・二%の減少となっている(第20表第13図参照)。

<勤労者以外の世帯の負債現在高は五百万円、前年に比べて九・六%の減少>
 勤労者以外の世帯の一世帯平均の負債現在高は五百万円で、前年に比べて九・六%の減少となっている。
 世帯主の職業別に負債現在高をみると、勤労者世帯では、官公職員世帯が六百二十八万円、民間職員世帯が五百九十万円、労務作業者世帯が三百十八万円となっている。また、勤労者以外の世帯では、自由業者世帯が一千五百六十一万円、法人経営者世帯が一千四十八万円、個人営業世帯が七百八十七万円、無職世帯が七十四万円となっている(第20表参照)。

◇住宅・土地の取得計画と貯蓄

<借家世帯のうち住宅・土地の取得計画のある世帯の割合は一二・八%で、昭和五十一年以降最低>
 勤労者世帯について、住宅・土地の取得計画の有無別世帯割合をみると、借家世帯では、「三年以内に計画のある世帯」の割合は六・七%、「三年以上先に計画のある世帯」の割合は六・一%となっており、前年に比べそれぞれ一・六ポイント、一・五ポイント低下している。
 この結果、「三年以上先に計画のある世帯」の割合は平成七年(六・九%)を下回り、調査結果が比較可能な昭和五十一年以降で最低となった。また、取得計画のある世帯の合計は一二・八%となり、昭和六十年(一四・一%)を下回って最低となった。
 持家世帯では、「三年以内に計画のある世帯」の割合は三・六%、「三年以上先に計画のある世帯」の割合は二・二%となっており、前年に比べそれぞれ〇・五ポイント上昇、〇・八ポイント低下している。
 この結果、「三年以上先に計画のある世帯」の割合は平成六年(二・七%)を下回って調査結果が比較可能な昭和五十一年以降で最低となり、取得計画のある世帯の合計(五・七%)も平成八年(六・一%)を下回って最低となった(第21表第14図参照)。

<取得計画のある世帯の方が、計画のない世帯よりも貯蓄現在高は多い>
 勤労者世帯について、住宅・土地の取得計画の有無別に借家世帯と持家世帯の貯蓄現在高をみると、いずれも計画のある世帯が、計画のない世帯を上回っている。
 借家世帯でみると、貯蓄現在高は三年以内に計画のある世帯が一千三百五十一万円、計画のない世帯が七百三十二万円となっている。三年以内に計画のある世帯の貯蓄年収比は一八六・九%である。
 持家世帯でみると、貯蓄現在高は三年以内に計画のある世帯が二千三百二十九万円、計画のない世帯が一千四百五十六万円となっている。三年以内に計画のある世帯の貯蓄年収比は二三一・五%である(第21表参照)。

◇財産形成貯蓄の状況

<財産形成貯蓄保有勤労者世帯の財形貯蓄現在高は二百四十六万円、二〇・〇%の世帯が保有>
 財産形成貯蓄保有勤労者世帯の割合(財形貯蓄保有率)は二〇・〇%となっており、前年に比べて一・五ポイント低下した。財形貯蓄保有率は、平成二年の二五・四%がピークであったが、その後、低下傾向を続けている。
 財産形成貯蓄保有勤労者世帯の一世帯平均財形貯蓄現在高は二百四十六万円で、貯蓄全体に占める割合(依存度)は一四・一%となっており、前年に比べて〇・八ポイント上昇した(第22表第15図参照)。

<財形貯蓄の七〇・七%は定期性預貯金>
 財形貯蓄保有勤労者世帯の一世帯平均財形貯蓄現在高(二百四十六万円)の内訳をみると、定期性預貯金が七〇・七%で最も高く、次いで生命保険などが一七・七%、有価証券が一一・六%となっている。
 対前年増加率をみると、定期性預貯金が七・四%の増加、生命保険などが六・四%の増加、有価証券が一〇・七%の減少となっており、全体では四・八%の増加となった(第23表参照)。

<財形貯蓄保有勤労者世帯の財形貯蓄現在高は、世帯主の年齢が高くなるほど多い>
 財形貯蓄保有勤労者世帯について、世帯主の年齢階級別に一世帯平均財形貯蓄現在高をみると、三十歳未満が九十三万円、三十歳代が二百三十九万円、四十歳代が二百四十四万円、五十歳代が二百五十五万円、六十歳以上が三百四十二万円と、世帯主の年齢が高くなるに従って多くなっている。
 財形貯蓄保有率をみると、三十歳代〜五十歳代ではいずれも二〇〜二四%台、三十歳未満で一一・二%、六十歳以上で九・七%となっている(第24表第16図参照)。

<取得計画のある世帯の財形貯蓄保有率は、計画のない世帯より高い>
 勤労者世帯について、借家世帯と持家世帯の住宅・土地の取得計画の有無別に財形貯蓄保有率をみると、いずれも計画のある世帯が計画のない世帯を上回っている。
 借家世帯でみると、財形貯蓄保有率は三年以内に計画のある世帯が四三・七%で、計画のない世帯の一六・〇%に比べ二七・七ポイント上回っている。持家世帯でみると、財形貯蓄保有率は三年以内に計画のある世帯が三三・七%で、計画のない世帯の二〇・一%に比べ一三・六ポイント上回っている(第25表参照)。

◇年金貯蓄の状況

<年金貯蓄保有世帯の年金貯蓄現在高は百八十二万円、前年に比べて六・四%の減少>
 勤労者世帯のうち、年金型貯蓄(生命保険の個人年金保険、簡易保険の年金商品等)を保有している世帯の割合(年金貯蓄保有率)は三一・六%で、約三分の一の世帯が保有している。年金貯蓄保有率は、昭和六十一年以降上昇が続いていたが、平成九年は前年に比べて二・八ポイント低下した。
 勤労者世帯のうち、年金貯蓄保有世帯の一世帯平均年金貯蓄現在高は百八十二万円で、前年に比べて六・四%減少した。また、貯蓄全体に占める割合は一〇・三%となり、前年に比べて〇・八ポイント低下した(第26表第17図参照)。

<年金貯蓄保有世帯の年金貯蓄現在高は、六十歳以上が四百五十七万円で最も多い>
 勤労者世帯のうち、年金貯蓄保有世帯の世帯主の年齢階級別に年金貯蓄現在高をみると、三十歳未満が百六万円、三十歳代が七十八万円、四十歳代が百四十三万円、五十歳代が二百三十七万円、六十歳以上が四百五十七万円と、概して世帯主の年齢が高くなるに従って多くなっている。
 勤労者世帯について、世帯主の年齢階級別に年金貯蓄保有率をみると、三十歳未満が一三・三%、三十歳代が二九・七%、四十歳代及び五十歳代が共に三五・九%、六十歳以上が二四・四%となっている(第27表第18図参照)。

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法人企業の経営動向


法人企業統計 平成九年十〜十二月期


大 蔵 省


 この調査は、統計法(昭和二十二年法律第一八号)に基づく指定統計第一一〇号として、我が国における金融・保険業を除く資本金一千万円以上の営利法人を対象に、企業活動の短期動向を把握することを目的として、四半期ごとの仮決算計数を調査しているものである。
 その調査結果については、国民所得統計の推計をはじめ、景気判断等の基礎資料等として広く利用されている。
 なお、本調査は標本調査であり(計数等は、標本法人の調査結果に基づいて調査対象法人全体の推計値を算出したもの)、標本法人は層別無作為抽出法により抽出している。
 今回の調査対象法人数等は、次のとおりである。
  調査対象法人一,一一〇,二八六社 
  標本法人数二三,四七五社 
  回答率八一・〇% 
 当調査結果から平成九年十〜十二月期の企業の経営動向をみると、売上高については、製造業、非製造業とも減収となったことから、全産業ベースの対前年同期増加率(以下「増加率」という。)は△四・四%となった。営業利益については、製造業、非製造業ともに減益となったことから、全産業ベースの増加率は△八・六%となった。
 また、経常利益についても、製造業、非製造業ともに減益となったことから、全産業ベースの増加率は△九・〇%となった。
 一方、設備投資については、製造業、非製造業ともに増加となったことから、全産業ベースの増加率は三・五%となった。

一 売上高と利益の動向第1図第2図参照

 (1) 売上高第1表参照

 売上高は、三百三十八兆三千二百五十億円であり、前年同期(三百五十三兆七千八百八十億円)を十五兆四千六百三十億円下回った。増加率は△四・四%(前期△一・六%)と、二期連続の減収となった。
 業種別にみると、製造業の売上高は百二兆三千九百二十九億円で、増加率は△二・二%(同〇・一%)となった。また、非製造業の売上高は二百三十五兆九千三百二十一億円で、増加率は△五・三%(同△二・四%)となった。
 製造業では、「食料品」「電気機械」等が増収となったものの、「輸送用機械」「一般機械」等の業種で減収となった。一方、非製造業では、「運輸・通信業」「サービス業」等が増収となったものの、「卸・小売業」「建設業」等で減収となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百三十二兆三千三百八十五億円で、増加率は△〇・九%(同二・五%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は五十二兆五千八百二十三億円で、増加率は△五・一%(同△一・二%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百五十三兆四千四十三億円で、増加率は△七・〇%(同△五・五%)となった。

 (2) 営業利益第2表参照

 営業利益は、八兆七千八百七十三億円であり、増加率は△八・六%(前期二・四%)と、十四期ぶりの減益となった。
 業種別にみると、製造業の営業利益は三兆九千百十四億円で、増加率は△一〇・九%(同七・八%)となった。また、非製造業の営業利益は、四兆八千七百六十億円で、増加率は△六・七%(同△一・二%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆四千八百八十三億円で、増加率は△一五・五%(同三・七%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は九千九百二十六億円で、増加率は△一六・八%(同△一五・六%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆三千六十四億円で、増加率は六・五%(同七・六%)となった。

 (3) 経常利益第3表参照

 経常利益は、七兆五千五百七十八億円であり、前年同期(八兆三千七十億円)を七千四百九十二億円下回り、増加率は△九・〇%(前期四・〇%)と、十四期ぶりの減益となった。
 業種別にみると、製造業の経常利益は三兆七千七百三十四億円で、増加率は△八・六%(同一〇・八%)となった。また、非製造業の経常利益は三兆七千八百四十三億円で、増加率は△九・四%(同△一・四%)となった。
 製造業では、「食料品」等が増益となったものの、「輸送用機械」「電気機械」等で減益となった。一方、非製造業では、「不動産業」「電気業」等が増益となったものの、「卸・小売業」「建設業」等が減益となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三兆六千三百五十九億円、増加率は△一七・〇%(同三・六%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は八千六百三十二億円で、増加率は△一七・八%(同△五・六%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆五百八十七億円で、増加率は六・三%(同八・七%)となった。

 (4) 利益率第4表参照

 売上高経常利益率は二・二%で、前年同期(二・三%)を〇・一ポイント下回った。
 業種別にみると、製造業は三・七%で、前年同期(三・九%)を〇・二ポイント下回り、非製造業は一・六%で、前年同期(一・七%)を〇・一ポイント下回った。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二・七%(前年同期三・三%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一・六%(同一・九%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二・〇%(同一・七%)となった。

二 投資の動向第3図参照

 (1) 設備投資第5表参照

 設備投資額は、十三兆九百二十七億円であり、増加率は三・五%(前期五・九%)と、11四半期連続の増加となった。
 業種別にみると、製造業の設備投資額は四兆九百八十一億円で、増加率は八・五%(同一〇・四%)の増加となった。一方、非製造業の設備投資額は八兆九千九百四十六億円で、増加率は一・四%(同三・七%)となった。
 製造業では、「石油・石炭製品」「一般機械」等で減少となったものの、「輸送用機械」「化学」等の業種で増加となった。一方、非製造業では、「不動産業」「電気業」等で減少となったものの、「サービス業」「卸・小売業」等で増加となった。
 設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は七兆三千九百八十億円、増加率は二・三%(同六・二%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は二兆一千二百三億円、増加率は六・二%(同一・三%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆五千七百四十四億円で、増加率は四・五%(同八・二%)となった。

 (2) 在庫投資第6表参照

 在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、六兆五千八百九十七億円であり、前年同期(七兆一千百四十四億円)を五千二百四十七億円下回った。
 在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は二兆五百八十一億円で、前年同期(一兆四千三百十五億円)を六千二百六十六億円上回った。一方、非製造業の投資額は四兆五千三百十六億円で、前年同期(五兆六千八百二十八億円)を一兆一千五百十二億円下回った。
 在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が一兆六千二百八十九億円(前年同期一兆五百四十億円)、仕掛品が四兆六千八百八十二億円(同五兆六千六百八十三億円)、原材料・貯蔵品が二千七百二十六億円(同三千九百二十一億円)となった。
 また、在庫率は一〇・九%であり、前期(一〇・二%)を〇・七ポイント上回り、前年同期(一〇・六%)を〇・三ポイント上回った。
 在庫率は、季節的要因により変動(四〜六、十〜十二月期は上昇する期)する傾向がみられる。

三 資金事情第7表参照

 受取手形・売掛金は二百三十一兆七千六百六十六億円で、増加率は△三・七%(前期二・一%)、支払手形・買掛金は二百兆六千八億円で、増加率は△一・五%(同三・六%)となった。
 借入金をみると、短期借入金は二百三十三兆四千百二億円で、増加率は七・〇%(同六・三%)、長期借入金は二百七十八兆五千八百三十億円で、増加率は一・三%(同四・四%)となった。
 現金・預金は百二十二兆五千八百二十五億円で、増加率は七・一%(同三・五%)、有価証券は三十七兆四千六百七十七億円で、増加率は△五・一%(同一・四%)となった。
 また、手元流動性は一一・七%であり、前期(一一・五%)を〇・二ポイント上回り、前年同期(一〇・九%)を〇・八ポイント上回った。

四 自己資本比率第8表参照

 自己資本比率は二一・三%で、前年同期(二一・〇%)を〇・三ポイント上回った。
 自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二九・〇%で、前年同期(二八・五%)を〇・五ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は一五・三%で、前年同期(一四・七%)を〇・六ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一四・六%で、前年同期(一四・三%)を〇・三ポイント上回った。

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 なお、次回の調査は平成十年一〜三月期について実施し、法人からの調査票の提出期限は平成十年五月十日、結果の公表は平成十年六月中旬の予定である。


 
    <4月22日号の主な予定>
 
 ▽平成十年度予算の概要……………大 蔵 省 
  総説/一般会計/特別会計/
  政府関係機関/
  平成十年度財政投融資計画




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