官報資料版 平成1013





漁業白書のあらまし


―平成9年度 漁業の動向に関する年次報告―


水 産 庁


 沿岸漁業等振興法第七条に基づいて、政府が国会に提出する「平成九年度漁業の動向に関する年次報告」及び「平成十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」(いわゆる「漁業白書」)は、去る四月十七日の閣議決定を経て、第百四十二回国会(常会)に提出、公表された。
 「平成九年度漁業の動向に関する年次報告」は、二部構成になっている。
 第一部「漁業の動向に関する報告書」は、昭和三十年代以降の漁業生産構造の変遷と漁業経営の現状について詳細に分析、検討を行ったほか、主として平成八年以降の我が国の水産物需給や我が国漁業をめぐる国際情勢、漁業振興と地域活性化のための課題等について、可能な限り最近時まで記述し、今後の我が国漁業の進むべき方向を探ろうとしたものである。
 第二部「沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」は、平成九年度に政府が沿岸漁業等について講じた我が国周辺水域の漁業振興、漁業経営対策、漁業生産基盤の整備等の施策を記述したものである。
 また、「平成十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」は、政府が平成十年度において、沿岸漁業等について講じようとする施策を記述したものである。
 以下、「平成九年度漁業の動向に関する年次報告」の第一部「漁業の動向に関する報告書」のあらましを紹介する。

 はじめに

 四方を海に囲まれた我が国において、古来、漁業は、水産資源を海洋から食卓へ供給する唯一の産業として発達し、国民に対する動物性たんぱく質の供給産業として、健康的で豊かな食生活を実現する上で重要な役割を果たしてきた。
 一方、世界の人口が増加を続ける中で、食料供給における漁業の役割は、従来にも増して重要なものとなってきており、我が国としても、持続的な漁業を推進していくことが必要である。
 しかしながら、近年、我が国の漁業生産量は、周辺水域における資源水準の低迷、環境や生態系の保全等、新たな視点に立った国際漁場の規制強化等を背景として、減少傾向にある。また、漁業就業者の減少と高齢化が依然として進行していることから、将来における漁業生産力や漁村地域の活力の低下が懸念されている。
 平成八年においては、漁業生産量の減少傾向が弱まり、漁業経営の収支がやや回復したものの、我が国の漁業生産をめぐる環境には、依然として厳しいものがある。
 こうした中で、我が国は、平成八年七月に「国連海洋法条約」を締結し、九年以降、新たな漁業管理制度の下、資源の適切な管理と有効利用に取り組むこととなり、新たな制度を効果的に運用しながら漁業経営の安定化を図ることが、喫緊の課題となっている。
 「平成九年度漁業の動向に関する年次報告」は、以上のような基本認識を踏まえ、主として八年以降の我が国漁業の動向を分析し、今後の進むべき方向を探ろうとしたものである。

T 漁業生産構造の変遷と漁業経営の現状

 漁業生産の動向

 我が国の漁業生産量は、戦後着実に増加し、昭和四十七年には一千万トンを超え、さらに、五十九年には一千二百八十二万トンとなり、史上最高を記録した。その後、六十年代まで一千二百万トン台を維持したが、平成元年以降、減少に転じ、三年には二十年ぶりに一千万トン台を下回るなど、一貫して減少し、近年の漁業生産量は、昭和四十年代前半の水準となっている。
 平成八年における我が国の漁業生産量は、前年に比べ一%減少し七百四十一万七千トンとなり、元年以降、八年連続の減少となった。これは、さば類、するめいか等が増加したものの、まいわしが三十四万二千トン減少したことに加え、まぐろ類、さんま、かつお等が減少したためである。
 漁業生産額(捕鯨業を含む。)は、二%減の二兆一千九百五十三億円となった。

 (一) 主要魚種の資源と生産の動向
 我が国の周辺水域は、寒暖両流が交錯し、多くの魚介類が生息しており、高い生産力を有している。しかしながら、近年、我が国周辺水域における主要魚種の資源状態は、人工種苗放流の効果等によって高水準を維持している魚種もあるが、全般的には中位又は低位水準で、横ばい又は減少傾向にある。
 特に、まいわしは、資源量の変動が大きい魚種で、昭和三十年代後半から四十年代後半にかけて資源は極めて低位の水準にあり、四十年の生産量は九千トンと戦後最低を記録した。その後、資源は急速に増加し、六十三年の生産量は史上最高の四百四十九万トンを記録した。しかしながら、六十三年以降、資源への新たな加入が著しく低い状況が続いており、資源は再び減少し、生産量も一貫して減少が続いている。
 現在の資源は、低位水準で減少傾向にあり、平成八年の生産量は三十二万トンと、最大時の十四分の一となり、昭和五十三年以来、十八年間連続して魚種別生産量の第一位であったまいわしは、第六位に転落した。

 (二) 漁業部門別の生産動向
 遠洋漁業の生産量は、昭和四十八年に三百九十九万トンを記録したが、国際漁場の規制強化等を背景に、近年減少傾向となり、平成八年は、前年に比べ一一%減少し八十一万七千トンとなった。生産額は、五%減の二千六百十九億円となった。
 沖合漁業は、昭和五十九年に六百九十六万トンを記録したが、まいわしの生産量の減少とともに急速に減少した。平成八年は、前年並みの三百二十五万六千トンとなった。生産額は、五%減の五千三百億円となった。
 海面養殖業を除く沿岸漁業の生産量は、近年減少傾向にあるが、平成七年及び八年は、しろざけ等の増加により増加した。八年は、前年に比べ四%増加し百九十万一千トンとなった。生産額は、一%減の六千七百八億円となった。
 海面養殖業は、計画的かつ安定的な生産が可能であるという特性を活かして着実に発展を続けてきたが、近年やや頭打ちで、平成八年は、前年に比べ三%減少し百二十七万六千トンとなった。生産額は、二%減の五千六百五十四億円となった(第1図参照)。

 漁業生産構造の変化

 (一) 漁業経営体及び漁業就業者の動向
 漁業経営体は、昭和三十九年の約三十万を頂点として、年々減少を続けており、平成八年は、前年に比べ二%減少し十六万となった。このうち、全経営体の九五%を占める沿岸漁業経営体は、前年に比べ二%減少し十五万二千となった。
 一方、中小漁業経営体は、前年に比べ三%減少し七千七百となった。
 漁業就業者は、昭和二十八年の約八十万人を頂点として、減少傾向が続いており、平成八年は、前年に比べ五%減少し、三十万人を割り込み、二十八万七千人となった。
 これを漁業部門別にみると、沖合・遠洋漁業就業者の減少が著しく、八%減少し四万三千人、沿岸漁業就業者は、四%減少し二十四万四千人となった。
 また、男子漁業就業者について、十五歳から五歳ごとの年齢階層別に就業人口をみると、全階層を通じて六十五歳以上の階層が最も多く、全体の二五%(約六万人)となっており、高齢化が顕著となっている。また、六十歳以上の割合も前年より二ポイント上昇し、初めて六十歳以上の漁業就業者が四〇%を超えた。

 (二) 漁業生産性の動向
 近年の漁業生産体制は、対象魚種の資源の動向はもとより、魚価の動向、漁業経営費の増大等、経営に関わる諸問題に加えて、就業者の減少と高齢化、後継者不足等、労働力の問題とも密接に関連していることから、縮小・再編が進んでいる。このため、近年、漁労体数は減少傾向にある。
 近年の漁業の生産性をみると、一漁労体当たりの漁獲能力は向上しているものの、沿岸漁業では、漁獲対象魚種の資源が低位水準であるために、顕著な物的生産性の向上がみられない状況にある。
 また、近年、沿岸漁業の生産を担う漁業経営体は、高齢化や後継者不足等により、一貫して減少しており、さらに、今後の漁業就業者の高齢化等により、生産性の高い漁業経営体が大幅に減少した場合、生産力の低下が懸念される。
 沖合漁業の物的生産性は、一時期の低迷を脱し、やや回復傾向にあるものの、対象魚種の資源水準が低位水準であるため、顕著な伸びはみられない。
 一方、付加価値生産性は、伸びている業種が多いものの、経営収支をみると、業種によっては、漁業収入の伸び悩み、雇用労賃の増大等もみられ、漁獲能力向上のための漁労装置、運航装置等の導入による設備投資等が、結果的に現状においては過大となり、多大の固定債務をかかえる経営体が多くなっている。

 漁業経営の現状

 (一) 沿岸漁業の経営
 平成八年の沿岸漁船漁業の経営状況をみると、漁獲量が前年に比べ六%増加したため、漁業収入は、四年ぶりに前年を上回り、四%増加した。これは、いか釣り漁業、船びき網漁業等において漁獲量が増加したためである。
 一方、漁業支出は、油費が四%増加したことに加え、漁具費等が増加したため一%増加した。
 この結果、漁業所得は、五年ぶりに前年を上回り六%増加して二百五十二万円となった。
 平成八年度の海面養殖業漁家の漁業所得は、真珠母貝養殖業漁家及びほたてがい養殖業漁家では前年を下回ったものの、他の養殖業漁家では前年を上回ったため、前年に比べ大幅に増加した。
 平成八年の漁家(十トン未満の漁船漁家、小型定置網漁家及び海面養殖業漁家)の平均所得は、海面養殖業の漁家所得が大幅に増加したことに加え、沿岸漁船漁業の漁家所得も増加したため、前年に比べ七%増加し六百九十六万円となり、戦後を通じて名目では最高となった。
 一世帯当たりの漁家所得と全国勤労者世帯所得を比較すると、昭和三十八年当時には、両者は拮抗していたが、四十年代から六十年代にかけて、漁家所得は、漁業所得の伸びとともに増加し、全国勤労者世帯所得を上回って推移した(第2図参照)。それ以降、漁業所得の低迷に伴い、漁家所得は、全国勤労者世帯所得を下回ったが、平成八年には、再び漁家所得が上回った。
 しかしながら、一般的に、漁家世帯は、勤労者世帯に比べて世帯員が多く、世帯員一人当たりの所得でみた場合、昭和四十年代後半から五十年代前半を除き、勤労者世帯を下回って推移している。

 (二) 中小・大規模漁業の経営
 平成八年度の中小漁業の一経営体当たりの漁業収入は、一億一千八百十万円、漁業経営費は、一億一千八百五十万円となった。この結果、漁業利益はマイナス四十万円となり、五年連続の赤字となった。赤字幅は前年度に比べて大幅に縮小したものの、中小漁業の経営は、依然として厳しい状況にある。
 平成八年度の経営体の資産及び負債・資本の財務内容について、前年度と比較してみると、資金運用方では、総資産は三%増えているものの、流動資産のうちの預貯金、固定資産のうちの漁業用有形固定資産額は変わっていない。資金調達方では、負債のうち長期・短期合わせた借入金が三%増えている。
 総資本に対する自己資本の比率は、前年度に比べ横ばいであるものの、近年、一桁台で推移している。
 さらに、売上高に占める借入金の比率をみる売上高対借入金比率は、平成七年度に比べ若干低下したものの、借入金が売上高を上回っている。
 このように、中小漁業経営体は、自己資本比率が低迷する中で借入金による資金運用が多く、財務内容は、依然としてぜい弱であり、経営は不安定な状況にある。
 大規模漁業会社では、漁労部門の一部の維持を図りながら、食品全般に関する総合製造販売業として、事業内容の再構築が進展している。

 漁業経営の展開

 (一) 漁業生産環境の変遷
 高度経済成長期において、我が国漁業は、技術革新、漁場の外延的拡大等により、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと外延的に発展を続けた。しかしながら、二度にわたる石油危機、諸外国による二百海里水域の設定等により、燃油価格の高騰、海外漁場の喪失、操業コストの高騰等を背景に、我が国漁業は大きな打撃を被り、以後、漁業経営は長期にわたる不振に陥ることとなった。
 一方、我が国経済が安定成長期に入ると、消費者の食生活に対する意識や生活様式の変化を背景として、家庭における水産物需要は停滞傾向に転じたものの、一方で、調理食品や外食における水産物利用が進んだ。しかしながら、底魚類をはじめとする近海漁業資源の低迷、海外漁業の制約等が一層強まる中で、我が国漁業による食用魚介類の供給量は減少傾向となり、この間の円高傾向も加わり、中高級魚介類を中心に水産物輸入がさらに急増するなど、漁業を取り巻く環境は厳しさを増した。
 さらに、近年、我が国の漁業生産量は、さまざまな省力・省エネルギー化機器の開発・導入が進んでいるものの、周辺水域におけるまいわし資源の急激な減少、環境や生態系の保全等、新たな視点に立った国際漁場の規制強化等を背景として、平成元年以降減少傾向にある。こうした中で、我が国は、八年に「国連海洋法条約」を締結し、排他的経済水域を設定するとともに、新たな漁業管理制度を創設し、資源の適切な保存、管理と有効利用に一層取り組むこととなった。
 なお、我が国漁業の発展過程の中で、特色ある漁業地域を形成してきた地域では、漁業及び関連産業の生産活動の低迷、他産業に対する漁業の所得較差の拡大等を背景とした後継者不足や人口の流出等が問題となっているほか、漁業の生産基盤である漁業経営体及び漁業就業者の減少と高齢化等が引き続き進行しており、地域の活力の低下が懸念されている。

 (二) 今後の展開
 現在の我が国漁業において、個々の漁労体の漁獲能力は向上しているものの、物的生産性は、対象魚種の資源状況が低位水準であるために、顕著な向上はみられない。
 今後、排他的経済水域内での新たな漁業管理制度の下で、つくり育てる漁業や資源管理型漁業の推進等により、漁業者が率先して漁場環境の保全及び資源の維持・増大を図りつつ、資源状況に応じた適正な生産体制を確立していくことが不可欠である。
 さらに、経営改善を図るためには、個々の経営体の主体的な取組が重要であり、特に、漁船に対する設備投資の軽減を図るとともに、漁船の小型化、省力・省エネルギー化の推進等により、採算性の向上を図ることが必要である。
 このため、中小漁業構造改善事業等による経営改善に積極的に取り組むとともに、省エネルギー、低コスト化のための技術開発も進める必要がある。加えて、船団規模・操業規模の縮小等を図り、安定した経営が可能な生産構造へ再編成していくことが肝要である。
 また、付加価値生産性の向上を視野に入れて、漁業所得の向上を図っていく必要がある。そのためには、生産から流通に至る段階での鮮度・品質の管理を図るとともに、消費者の要望に合致した漁獲物の供給、販売先の開拓、販売手法の改善等に努めていくことが重要である。
 以上のような取組によって、適切な漁業の生産体制を確立した上で、漁業経営の安定を図ることは、漁業地域における生産活動を活性化させるとともに、漁業及び関連産業を魅力ある産業へ転換していくこととなり、漁業地域の活力の向上にも資するものである。

U 水産物需給の現状

 水産物需給

 平成八年の我が国の水産物需給をみると、総供給量は、前年に比べ六%減少し一千二百六十六万トンとなった。これは、国内生産量、輸入量とも減少したためである。一方、総需要量は、前年に比べ一%減少し一千二百六万トンとなった。これは、輸出量が増加したものの、国内消費量が減少したためである。
 なお、平成八年の魚介類の国内消費仕向量に占める国内生産量の割合(魚介類(飼肥料を除く。)の自給率)は、前年に比べ一ポイント減少し、五八%となった(第3図参照)。

 水産物貿易

 平成八年の水産物輸入は、前年に比べ数量(通関時の形態による重量。以下同じ。)で四%減少し、三百四十五万トンとなり、七年ぶりに前年を下回った(第4図参照)。
 金額では一一%増加し、一兆九千百三十八億円となり、史上最高額を記録した。なお、金額をドルベースでみると、五%減少し百七十六億ドルとなった。
 主な輸入元を国別(地域を含む。以下同じ。)に金額でみると、中国が二千三百六十五億円で総輸入額の一二%を占め、前年の第二位から初めて第一位となった。第二位は、米国で、以下インドネシア、タイ、ロシアの順となり、これら上位五か国で総輸入額の四六%を占めた。
 近年では、特に中国からの輸入の伸びが著しく、うなぎ調製品やほたてがい等の増加により、五年前に比べ数量で約一・五倍、金額で約二倍となった。
 主な品目では、魚粉が、三一%減少し四十一万トンとなったが、数量では引き続き第一位となった。まぐろ・かじき類は、数量で一%、金額で二一%増加し、それぞれ三十一万トン、二千二百四億円となった。えび類は、数量で二%減少したものの、金額では二%増加し、それぞれ三十万トン、三千七百七十二億円となり、引き続き、金額では第一位となった。
 平成八年の水産物輸出は、するめいか、さば等の国内生産の増加や、為替相場の円安傾向等が大きく影響し、前年に比べ、数量で一五%、金額で二一%増加し、それぞれ二十八万トン、一千三百四十億円となった。
 主な輸出先を国別(地域を含む。以下同じ。)に金額でみると、香港、米国、台湾、韓国、スイスの順となっており、これら五か国で全体の六割以上を占めた。

 水産物流通と水産物価格

 (一) 水産物流通
 水産物流通においては、市場流通が依然として中心的な役割を果たしているものの、市場外流通として、量販店等と生産者との直接取引、消費者への産地直送等、流通の多様化が進展している。
 近年の産地市場は、国内漁業生産量の減少等に伴い、水揚量も年々減少傾向にあり、平成八年の主要四十二港の産地市場の水揚量は、三百十九万六千トンで、前年に比べ二%減少した。魚種別では、さば類、するめいか等で増加したものの、まいわし、さんま、かつお等が減少した。
 また、近年の産地市場においては、取扱量の減少傾向を通じて、消費地へ出荷する上で十分な数量が確保できない、大きさや品質について均一なものを十分に揃えられない等により、高度化する消費地側からの要求に十分に対応することができず、価格形成の過程での牽制、主導権の行使等、産地側のいわゆる価格形成力の低下が指摘されている。
 このような状況において、今後とも、産地市場がその機能を十分に果たしていくことができるようにするためには、生産者との連携を密にし、均質な水産物の集荷数量の拡大を通じ、高度化する消費地側の要望に積極的に対応していくことが必要である。
 近年、国産・輸入を含め、食材が豊富に出回る中で、大型量販店や外食産業等は、品質、鮮度、数量等の面で商品を安定的に供給していく必要があることから、その仕入元に対して、「四定条件」(定時、定量、定規格、定価格)を強く求める傾向にある。
 また、水産物の仕入れにおける問題点について、国産品、輸入品別にみると、国産品は、価格及び供給の安定性に関する点、輸入品は、情報不足、鮮度及び衛生管理の点をあげている業者が多い。

 (二) 水産物価格
 近年の水産物産地卸売価格指数(平成七年=一〇〇)をみると、平成三年を頂点として六年までは、漸次低下傾向を示したものの、七年には上昇に転じ、八年は前年に比べ五%上昇し一〇四・七となった。このうち、生鮮品は、するめいか、さけ等が低下したものの、ぶり類、さんま、かつお等が上昇したため、二%上昇し、一〇二・三となった。冷凍品は、まかじき等が低下したものの、めばち、きはだ等が上昇したため、一八%と大幅に上昇し一一七・五となった。
 魚介類消費者物価指数(平成七年=一〇〇)をみると、平成五年以降、低下傾向を示したものの、八年は二%上昇し一〇一・九となった。品目別では、塩干魚介類、魚肉ねり製品で低下したものの、生鮮魚介類で上昇した。また、魚種別で上昇率が大きかったのは、いわし、さんま、かつおであった。
 水産物輸入価格指数(平成七年=一〇〇)をみると、平成八年は九%上昇し一〇九・一となった。

 水産加工

 近年の水産加工品の生産動向は、原料供給量の減少等により、減少傾向にある。平成八年の水産加工品の生産動向を主要加工品目別にみると、ねり製品は、消費者の消費動向の変化や製品価格の値上がりに伴う需要の減少により、近年は一貫して減少傾向にあり、八年は前年に比べ一%減少し七十九万トンとなった。冷凍食品は、近年減少傾向にあったが、八年は二%増加し三十七万トンとなり、四年ぶりに増加した。これは、消費者の簡便化志向に伴う水産物調理食品の需要等が増加したためである。
 水産加工業の経営体数は、近年減少傾向にあり、平成八年は前年に比べ四%減少し一万五千となった。
 また、近年の水産食料品製造業の製造品出荷額の推移をみると、平成四年を頂点として、減少傾向にあったが、七年は前年並みの四兆一千三百十八億円となった。
 一方、近年の従業者数は、横ばい傾向にあり、平成七年は二十万九千人となった。
 このように、水産加工業は、小規模の事業所の割合が高く、零細な経営体が多いものの、我が国における漁業生産量の六割以上を利用していることに加え、その製造品出荷額は、我が国における漁業生産額の二倍近くに達しており、水産関連産業の中でも重要な位置を占めている。また、水産業を基幹産業としている地域においては、雇用の場を提供するなど、地域社会の経済活動に重要な役割を果たしている。
 今後とも、食品に対する消費者の要望が多様化・高度化する中で、高鮮度、高品質等を追求した魅力ある製品の開発・供給に努めることで、水産加工業の維持・発展を図っていく必要がある。
 近年、我が国においては、製造物責任法(PL法)の施行や、腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件を契機に、食品の安全性の向上と品質管理の徹底を求める声が、消費者の間で一層高まっている。このような中、食品の衛生上の危害発生の防止と適正な品質を確保するため、原材料、加工、輸送、保管等の工程で管理点を設定し、監視と記録を徹底する製造工程管理方式である危害分析・重要管理点(以下「HACCP」という。)方式が注目されており、同方式の導入は国際的な趨勢となりつつある。
 我が国の水産加工業者の間にも、食品の安全性に対する関心の高まりとともに、EUや米国におけるHACCPによる輸入規制等を背景として、HACCP方式の導入の必要性に対する認識が高まってきている。しかし、同方式の導入に当たっては、新たな設備投資の負担に加え、経営全体の投資計画との調整や、品質・衛生の管理を行い得る人材の適切な配置等を行う必要がある。中小企業が多い我が国の水産加工業界においては、その導入に際し、施設整備だけでなく、HACCP講習会の開催等、指導を含めた支援が不可欠である。

 水産物消費

 近年の食生活は、共働き世帯や単身世帯の増加等を背景に、家庭での調理を簡便にする「簡便化志向」、食を家庭外に求める「外部化」の傾向がみられる。また、食に対する価値観の多様化等を背景に、鮮度等の品質を重視する「高品質志向」、健康に良い食品や安全な食品を求める「健康志向」や「安全志向」も強まっている。
 近年の一世帯当たりの食料支出額と魚介類支出額の動向をみると、名目額は、食料支出額、魚介類支出額とも平成四年まで増加傾向で推移してきたが、五年以降、減少傾向となっている。また、それぞれの消費者物価指数(平成七年=一〇〇)で実質化した額は、両方とも四年までは、ほぼ横ばいで推移してきたが、五年以降、減少傾向となっている。これに対し、「調理食品」と「外食」の支出額をみると、いずれも食料支出額に占める割合は増加傾向にある。
 一方、平成八年の一人当たりの食料の家計消費支出額をみると、実質、名目ともに前年に比べ二%増加し、四年ぶりに増加した。なお、魚介類支出は、腸管出血性大腸菌O157による食中毒被害の拡大により、生鮮魚介類の支出が前年に比べ五%減少したため、名目で横ばい、実質で二%減少した。また、生鮮魚介類を除く塩干魚介類、魚肉ねり製品等は増加に転じ、堅調に推移している。
 水産物は、良質のたんぱく質、脂質等を多く含んでいるほか、有用な機能性成分をも含んでおり、また、健康的で豊かな食生活の実現といった面からも重要な役割を果たしている。今後とも、水産物消費の更なる拡大を図るためには、引き続き安全性及び鮮度の高い水産物の供給に努めるとともに、水産物の旬、調理方法等の広範な知識の普及・啓発や、水産物の機能性成分の一層の解明等を行いながら、消費者に対して適切な情報を提供していくことが必要である。
 また、農林水産物に対して、食料品の購入に当たって最も重視している点について、消費者アンケートの結果でみると、消費者は、果物を除くすべての農林水産物に対して、「鮮度」を最も重視しており、特に鮮魚に対しては、九割以上が「鮮度」を最も重視しているという結果となっている(第5図参照)。
 このことは、一般に、多くの消費者は、水産物に対して、鮮度の高さが、安全性、食味等にもつながるという意識をもっていることを示唆している。今後とも、消費者に対して、引き続き高鮮度、高品質の水産物を提供していく必要がある。

V 我が国漁業をめぐる内外の情勢

 国際漁場等における我が国漁業

 外国二百海里水域内における我が国漁船の操業は、政府間若しくは民間による協定の締結又は合弁事業により、操業の確保が図られているが、その交渉は、全般的に年々その厳しさを増しており、海外漁業協力財団が実施する協力事業の活用等が一層重要となっている。
 公海においても、水産資源の保存管理措置を強化しようとする動きがみられるほか、野生生物の保護や海洋生態系の保全を求める動き等もあり、国際的な協力体制の下、科学的根拠に基づいた資源の保存・管理体制を確立し、その持続的かつ有効な利用を図っていくことが重要な課題となっている。

 日中・日韓の漁業関係

 我が国周辺水域における水産資源は、近年、総じて低迷しており、資源の維持・管理が喫緊の課題となっている。このため、我が国は、平成八年に「国連海洋法条約」を締結したことを契機に、二百海里水域内の資源管理を図る観点から、漁獲可能量制度を導入した。
 一方、我が国は、昭和四十年(一九六五年)に「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定」を、五十年に「日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定」をそれぞれ締結し、韓国及び中国との漁業秩序を維持してきているが、これらの協定は、十二海里以遠の水域では、漁船が所属する国(旗国)が取締権限を有する、いわゆる旗国主義となっている。このため、現行協定の下では、我が国二百海里水域内であっても、十二海里以遠の水域においては、中国及び韓国の漁業者に対し、我が国の資源管理のための規制を適用することができない状況にある。
 こうした中で、我が国をはじめ、韓国及び中国は、平成八年に「国連海洋法条約」を締結したところであり、日韓間及び日中間において、同条約の趣旨を十分に踏まえた沿岸国主義による新たな漁業協定の早期締結を目指して、八年四月以来、さまざまな段階での協議・意見交換を精力的に重ねてきた。
 この結果、日中間については、平成九年九月、新たな漁業協定に関して実質的な合意に達し、九年十一月に署名が行われ、十年の通常国会での審議を経た後、発効する見通しとなっている。
 日韓間については、現行の漁業協定の改定に向け、平成八年以降、首脳会談をはじめ延べ三十回を超える協議が行われたが、合意に達しなかった。しかしながら、現状のままでは、我が国二百海里水域内の資源管理に重大な支障を来すこととなる。また、日中間の新たな漁業協定に基づいて、今後、中国漁船についても日本漁船と同様に、資源管理のための規制が行われることとなっていることから、韓国漁船のみ何ら規制を受けない状態が続いた場合、日本漁船及び中国漁船とのバランスが著しく損なわれることとなる。
 さらに、我が国周辺水域においては、韓国漁船による現行協定の違反や自主規制措置違反が頻発し、水産資源に対する重大な影響が懸念されているとともに、我が国漁業者の漁具被害も多発しており、我が国漁業者の不満も頂点に達している。
 以上のように、日韓間の新たな漁業秩序の確立は喫緊の課題となっており、我が国は、二百海里水域内の資源管理を、より的確かつ早急に行うため、現行の漁業協定の定める手続に従い、平成十年一月二十三日、韓国政府に対し現行協定を終了させる意思を通告した。
 一方、終了通告後、韓国は、自主規制措置を停止し、北海道沖の自主規制措置が講じられていた水域で操業を行っている(平成十年三月末現在)。なお、現行協定は、終了通告後一年間は有効であることから、「国連海洋法条約」の趣旨を十分に踏まえた新しい漁業協定の早期締結に向けて、引き続き取り組むこととしている。

 世界の水産物需給

 世界の漁業生産量(養殖業を含む。)は、一時横ばい状態にあったが、一九九二年(平成四年)以降増加傾向に転じた(第6図参照)。一九九五年(平成七年)は、前年に比べ二%増加し一億二千七十三万トンとなった。このうち、内水面での魚介類の生産量は、一〇%増加し二千百万トン、海面での魚介類の生産量は、前年並みの九千百九十万トン、藻類の生産量は、一%減少し七百八十一万トンとなった。
 国別にみると、第一位は中国で、一四%増加し二千九百二十四万トンと、世界の漁業生産量の二四%を占めた。我が国は第四位で、一九九四年(平成六年)の三位から順位を落とした。
 また、近年、世界の海面漁獲量が横ばい傾向にある中、養殖業に対する期待が高まっているものの、環境悪化や餌料の供給不足等の問題が顕在化してきている。
 世界の水産物貿易の規模は、おおむね拡大傾向にある。一九九五年(平成七年)の水産物貿易をみると、輸入量は、前年に比べ一%増加し二千百十六万トン、輸入額は、一〇%増加し五百六十億ドルとなった。また、輸出量は、前年並みの二千百七十四万トン、輸出額は、一〇%増加し五百二十億ドルとなった。
 輸入額について、国別にみると、我が国が第一位で全体の三二%を占め、以下米国、フランス、スペイン、ドイツの順となった。
 近年における世界の水産物需給の動向をみると、食用魚介類の需要については、開発途上国における人口増加や、経済成長に伴う生活水準の向上等を背景として、また、非食用水産物については、アジアや欧州の飼料用需要の拡大等により、増加傾向で推移してきている。一方、食用魚介類の供給量は一貫して増加している。また、非食用供給量は、増加傾向で推移してきたが、近年、横ばいとなっている(第7図参照)。
 一方、現在、世界の人口五十七億のうち、八億の人々が慢性的な栄養不足の状態にあるほか、国際収支上の問題から、必要な食料を世界の市場から購入できない、いわゆる「低所得食料不足国(LIFDC)」が八十七か国あり、こうした問題の解消が世界的な課題となっている。さらに、食料安全保障が世界的な課題となっている中で、漁業の貢献が求められており、そのためには、水産資源を持続的かつ合理的に利用していくことが必要となっている。我が国も適切な資源の保存管理措置に立脚した責任ある漁業を推進するとともに、引き続き漁業生産力の維持・強化に努め、国民への水産物の安定供給を図ることが重要である。

 環境問題と我が国漁業

 世界の人口の急激な増加、産業活動の活発化等に伴うオゾン層の破壊、地球温暖化、熱帯林の減少等、地球規模の環境問題が顕在化し、人類を含めた地球上に生息する生物への深刻な影響が懸念されている。特に、オゾン層の破壊による紫外線照射量の増大、地球温暖化による海面の上昇等は、漁業にも直接影響を及ぼすものであることから、今後、これらの地球環境の動向をより的確に把握していくことが重要である。
 漁業は、本来、環境に大きく依拠する産業であり、海洋環境を良好な状態に保全していくことは、漁業の健全かつ持続的な発展を図り、安全な水産物の生産と供給を行っていく上で、極めて重要な課題となっている。こうした中、漁協系統組織等による海浜清掃活動や、漁業者による植林活動も全国的に展開されている。
 また、赤潮、漁場油濁等による被害は依然として後を絶たない状況にあり、今後も引き続き適切な実態の把握を行うとともに、ダイオキシン等の有害化学物質等に係る魚介類汚染の状況については、魚介類汚染の機構解明等に関する調査・研究を進める必要がある。

 漁獲可能量制度

 我が国は、平成八年七月の「国連海洋法条約」締結に際して、「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」を制定し、同法に基づく「漁獲可能量制度」の運用を九年一月から開始している。その対象魚種として、さんま、すけとうだら、まあじ、まいわし、さば類及びずわいがにの六魚種が指定された。また、九年十月には、新たにするめいかが特定海洋生物資源に指定され、十年以降、漁獲可能量制度の対象魚種に加えられることとなった。

W 漁業振興と地域活性化

 水産資源の持続的かつ高度な利用

 我が国周辺水域の水産資源が総じて低水準にある中、適切な漁業管理の実践が不可欠となっている。我が国では、法律制度に基づく公的な漁業管理が行われているが、水産資源は多岐にわたり、地域や魚種ごとにさまざまな漁法が発達していること等から、資源をより効果的に管理するためには、これら公的な漁業管理に加え、漁業者の合意に基づく自主的な漁業管理、いわゆる「資源管理型漁業」の促進を図ることが重要な課題となっている。近年、資源管理型漁業について、全国でさまざまな取組がなされており、一定の成果を上げている事例もある。
 また、栽培漁業の一層の定着化を図っていくためには、種苗生産における経費低減等の効率化を推進し、回遊性が強い魚種については、資源量に見合った種苗放流を継続して、効果の発現に努めるとともに、放流後は地域の漁業実態に応じた適切な育成・管理を行っていく必要がある。さらに、種苗生産現場におけるウイルス性等の疾病防除技術の開発、環境に対応した質の高い種苗の生産技術の開発、種苗放流に際しての生態系への影響調査等も重要となっている。
 さらに、沿岸域の漁場整備については、栽培漁業等との連携を一層強化し、藻場・干潟の維持・保全など、海洋環境や生態系の保全にも配慮した上で、積極的に推進していく必要がある。

 活力ある漁村の創造

 (一) 漁業の担い手の育成・確保
 漁村における担い手の確保状況をみると、総じて不十分な状況にある。近年、十五〜二十四歳の若年漁業就業者は、年々減少しており、また、年齢階層別に減少率をみると、全年齢階層を通じて、若年齢層の減少率が最も高く、若年齢層の就業後の漁業離れも顕著となっている。
 今後、漁家の出身者の就業促進のみで担い手を補うことは、難しい状況にあり、漁家出身以外の中で、漁業に取り組もうとする、意欲ある若者を積極的に受け入れる必要がある。
 近年、都市生活者の自然志向の高まり、若年齢者の労働に対する価値観の多様化等を背景として、都市生活者が農村や漁村に就労・生活の場を求めて参入している事例もみられる。このような新規参入者の定着を図るためには、漁業技術や漁業経営技術の習得、住宅の確保等居住環境の整備、地元漁業者との交流等、漁業、生活双方にわたる総合的な支援策を講ずることが必要である。

 (二) 漁村における女性の役割
 現在、漁村において女性は、漁家の補助的労働力のみならず、漁業後継者不足が指摘される中にあって、営漁簿等の記帳や経営分析の講習会への参加等を通じ、漁業経営の全体に参画している場合が多くなっている。また、生産物の直販、一次加工による販売活動を通じ、生産物の付加価値向上に努め、漁家所得の向上にも寄与している。漁村において女性が安定的に就業するためには、漁労作業時における安全性の確保はもとより、報酬等の充実、定休日の設定等の労働環境の整備を図ることが必要である。
 さらに、漁村において女性は、漁業生産の担い手、漁村の魚食文化や伝統文化の継承の担い手として、将来の後継者に対する教育、家族の健康管理等の面でも重要な役割を果たしており、今後とも、女性が十分に能力を発揮でき、かつ、快適な生活が営まれるような環境づくりに努めることが重要である。

 (三) 漁業地域の活性化に向けた取組
 漁業地域は、漁業生産の場であると同時に、新鮮な魚介類、豊かな自然、個性ある伝統文化等、都市にはない貴重な地域資源を有しており、近年、都市化が進展した我が国社会の中にあって、国民の多様な価値観を実現できる場としての期待が高まっている。
 このような中で、漁業地域においては、従来、海水浴客や釣り客を対象とした民宿や遊漁船業の営業が、漁業者により行われてきている。これに加え、近年では、都市住民等を対象とした漁業の体験学習、見学や水産加工場での作業体験が可能な民宿も多くみられるようになってきている。
 一方、現在、漁業就業者の減少と高齢化が進行する中にあって、担い手不足が深刻化しており、漁業地域の活力の低下が懸念されている。このような中、若い漁業者の主体的な意見や行動を取り入れ、各種の地域活動に積極的に参加させることにより、地域の活性化に成果を上げている事例もみられる。また、漁業協同組合婦人部においては、環境保全の重要性を啓発する活動を行っている事例もみられる。
 このように、今後とも、地域の特性に応じた漁業・魚食文化の継承、地域資源の有効活用、都市住民との交流の場の創出により、漁業地域の活性化を図っていくことが重要である。さらに、中小都市との機能分担・提携を図りつつ、自然環境、文化、海等、地域の有する資源を再発見し、その自然環境を積極的に創造し、これを活用した独創的な魅力ある地域づくりが求められている。

 漁業協同組合の組織強化

 漁業協同組合(漁協)は、漁業者の協同組織として、販売事業、購買事業等の経済事業及び信用事業等の実施を通じた水産業の振興及び組合員の福祉の向上、漁業権の管理を中心とした資源や漁場の管理、水産業を核とする漁村地域の活性化等の広範な役割を果たしており、我が国漁業・漁村の発展に大きく貢献してきている。
 新たな海洋秩序の下、漁業が大きな転換期を迎えている中で、水産資源の維持・管理、個別漁業経営の改善、後継者の育成・確保等、漁協の果たすべき役割は一層重要なものとなっている。このため、漁協の合併を通じた組織体制の整備と事業基盤の強化の必要性は、従来にも増して高まっており、合併に向けた取組をこれまで以上に強化していくことが求められている。

 むすび

 以上のような状況を踏まえ、我が国漁業の確固たる基盤を築き、国民に対する水産物の安定供給を確保していくための基本的課題について展望すると、
 @ 我が国周辺水域の高度利用と責任ある漁業の推進
 A 漁業経営の安定と生産体制の合理化
 B 消費者・実需者の要望に対応した流通・加工体制の確立
 C 漁業を核とした魅力ある定住圏づくり
の四つがあげられる。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十年一月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十年一月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 一月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十一万七千七百十円、前年同月比一・一%減であった。
 現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万四千九百三十二円、前年同月比〇・六%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万六千六百四十二円、前年同月比〇・八%増で、所定外給与は一万八千二百九十円、前年同月比は一・九%減となっている。
 また、特別に支払われた給与は三万二千七百七十八円、前年同月比一四・一%減となっている。
 実質賃金は、三・〇%減であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、鉱業二・四%増、製造業一・一%増、サービス業一・〇%増、卸売・小売業、飲食店〇・七%増、運輸・通信業〇・四%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・一%増、金融・保険業〇・三%減、建設業〇・七%減、不動産業一・五%減であった。

◇労働時間の動き

 一月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一四二・二時間、前年同月比〇・八%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一三二・八時間、前年同月比〇・四%減、所定外労働時間は九・四時間、前年同月比三・一%減、季節変動調整済の前月比は〇・五%増であった。
 製造業の所定外労働時間は一一・八時間で前年同月比は六・四%減、季節変動調整済の前月比は〇・三%減であった。

◇雇用の動き

 一月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・七%増、季節変動調整済の前月比は〇・〇%で前月と同水準、常用労働者のうち一般労働者では〇・二%増、パートタイム労働者では四・一%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、サービス業二・七%増、建設業二・六%増、運輸・通信業〇・四%増、卸売・小売業、飲食店〇・二%増と、これらの産業は前年を上回っているが、不動産業〇・二%減、製造業〇・五%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・〇%減、金融・保険業三・一%減、鉱業七・三%減と前年同月を下回った。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・〇%減、パートタイム労働者三・五%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者〇・三%減、パートタイム労働者一・五%増、サービス業では一般労働者一・八%増、パートタイム労働者七・六%増となっている。

◇     ◇     ◇

◇     ◇     ◇

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住宅防火対策の推進


 住宅火災における死者(放火自殺者等を除く)は、建物火災による死者の約九割を占めており、そのうち六十五歳以上の高齢者が半数以上となっています。今後の高齢化社会の進展とともに、住宅火災による死者が急増することが懸念されます。
 住宅を火災から守るためには、日ごろからの火災予防の心がけが重要ですが、万が一のために、それをサポートするための住宅用防災機器等を設置することは、とても効果的です。
 そこで、住宅用防災機器等からみた出火防止、火災の早期発見、初期消火、延焼防止の対策について、紹介します。

◇出火防止対策

 火気を使用する器具からの火災の原因は、ほとんどが不適切な取扱いや不注意によるものです。こんろによる火災では、消し忘れによるものが七〇%以上を占めています。
 近年は、技術の向上により、出火防止のため様々な安全装置の付いたものが普及しており、天ぷら油火災を防止する天ぷら油過熱防止装置付き調理器具等は、出火防止に極めて有効です。

◇早期発見対策

 住宅火災では、就寝中に火災に気づかず、結果的に逃げ遅れたり、病気などの理由で逃げようとしても逃げられなかったりしたために死者を出した事例が多く見られます。
 こうした逃げ遅れによる危険などを防止するための住宅用防災機器として、煙や熱を自動的に感知して警報音で知らせる住宅用火災警報器、住宅用自動火災報知設備があります。
 火災に早く気づくことは、避難や消防機関に通報したり、初期消火や近所への助けを求めたりするといった行動を早くとることができることから、住宅用火災警報器等の設置は、住宅火災による死者の大幅な低減に大きく寄与するものと考えられます。
 なお、住宅用火災警報器は、比較的安価であるとともに、ねじや釘などで簡単に取り付けることができます。

◇初期消火対策

 火災による被害を小さくするために、火災を初期段階で消火する消火器は、消火のための基本的な消火機器であり、特に住宅用に開発された消火器は、軽量で、操作がしやすく、家庭に備えておくととても安心です。
 消火器をいざというときに効果的に使うためには、防災訓練等で実際に使用方法の訓練を受けたり、使用期限が切れていないかなど自主的な点検を怠ったりしないことが必要です。
 なお、住宅用消火器は、メンテナンスフリーですが、使用期限が定められており、薬剤の詰め替えは構造上できません。
 住宅用の消火機器としては、消火器のほかに火災による熱を感知して自動的に消火する住宅用スプリンクラー設備、住宅用自動消火装置、天ぷら油消火用簡易装置などがあります。これらの機器は、火災が発生すると自動的に消火を行うことから、取扱い訓練等の必要もなく、高齢者、身体不自由者のいる家庭でも安心です。

◇延焼防止対策

 住宅火災の死者の約三割は、寝具類や衣類などに着火して亡くなっています。こうした危険は、これらの寝具類や衣類などに防炎性能のある物を使用することで、減らすことができます。
 また、火災が発生した際に、急激に火が燃え広がって手に負えなくならないように、カーテン、じゅうたんなど、家庭の燃えやすい繊維製品に防炎性能のある物を使用することは、延焼の拡大を防ぐためにも有効です。
 住宅火災から命を守るため、それぞれの家庭で日ごろから「火の用心」を心がけるとともに、いざというときのために住宅用防災機器などを設置しましょう。(消防庁)

 春の行政相談週間


 毎日の暮らしの中には、国道などの道路や老人保健などの社会福祉、年金、保険などについて国や国の関係機関が行う様々なサービスがあります。
 総務庁では、行政相談制度を設け、このような行政に対する皆さんからの苦情や意見、要望などを受け付け、その解決や実現の促進を図るとともに、それらを行政の制度や運営の改善に反映させています。各省庁の業務のほか、JRやNTT、特殊法人の業務、自治体が国から委任又は補助を受けて行っている業務などが相談の対象となっています。
 この制度をもっと広く知ってもらうため、春と秋に行政相談週間が設けられています。今年の「春の行政相談週間」は、五月十七日(日)から二十三日(土)までです。期間中は、特設行政相談所や巡回相談所、行政相談懇談会なども行われます。この機会に行政に対する皆さんの意見をお寄せください。
 <行政相談の常設窓口>
・管区行政監察局・行政監察事務所
 総務庁の出先機関で、県庁所在地にあります。行政相談課で直接相談を受け付けるほか、行政苦情受付専用電話「行政苦情一一〇番」やファクス、手紙でも相談を受け付けています。
・行政相談委員
 全国の市(区)町村においては、民間有識者の方が委員として委嘱されています。自宅や役場・公民館内の行政相談所などで相談に応じています。
・総合行政相談所
 全国八都市のデパートやスーパーに常設しています。(総務庁)


 
    <5月20日号の主な予定>
 
 ▽地方財政白書のあらまし…………自 治 省 

 ▽消費者物価指数の動向……………総 務 庁 
 



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