「平成九年度中小企業の動向に関する年次報告」は、以下の四部から構成されている。
まず第一部では、平成九年度における中小企業の景気動向について分析している。特に、低迷する我が国の中小企業の景気動向について、規模別、業種別、地域別に概観するとともに、経営動向、設備投資動向等について分析し、中小企業の雇用動向についても概観している。
また、最近の中小企業の景気動向の特徴として、業種間、規模間格差とともに企業間格差が明確化していることを指摘し、この背景にある我が国の経済構造の変化やグローバリゼーションの進展等の構造要因の影響を分析している。
第二部では、最近の中小企業を巡る環境の変化について分析している。国境を越えて人、モノ、金等の経営資源が自由に移動する大競争時代となり、また経済構造改革が進展する今日、我が国の中小企業を巡る環境の変化には著しいものがある。ここでは特に、グローバリゼーションの進展等を背景とする企業間関係の変化や需要動向の変化、情報化・サービス産業化の進展、流通構造の変化等、中小企業に大きな影響を与えている構造の変化を概観している。
一方、急激なモータリゼーションの進展、消費者ニーズ・行動の変化等、環境が変化する中で変容をとげる中心市街地と小売商業の現状を分析するとともに、経済構造が変化する中で停滞感を有する地域の産業集積について分析している。
さらに、金融ビッグバンの進展等の制度環境の変化や、エネルギー・地球環境問題の高まりが中小企業に与える影響について分析している。
第三部では、我が国及び欧米諸国における中小企業と中小企業政策の変遷について検討している。
戦後における中小企業と中小企業政策の変遷を、中小企業政策の基礎が形成された「復興期」(一九四五年〜五四年)、我が国経済が飛躍的に成長し、中小企業と大企業の諸格差が縮小の方向に向かった「高度成長期」(一九五五年〜七二年)、第一次石油危機を契機として安定成長の時代となり、中小企業政策が多様な展開を見せた「安定成長期」(一九七三年〜八四年)、プラザ合意以降の大きな環境変化の中で中小企業政策が一層多様化する「転換期」(一九八五年〜現在)の四時期に区分し、各々時代ごとの特徴を述べている。
また、諸外国における中小企業と中小企業政策の変遷を、米国、EU、英国、ドイツ、フランス、イタリアについて概観している。そして、以上の観点を踏まえ、主として各国の中小企業政策の共通点等について指摘している。
第四部では、中小企業にとって重要であると考えられる今後の課題と対応について検討している。
「創業と企業成長」の観点からは、企業が生まれ、成長することの基本的な重要性を認識し、中小企業の創業や新分野への進出、事業転換等が求められていること等を指摘している。
「中小企業の創造的革新」の観点からは、中小企業の経営力の強化に焦点を当て、財務体質強化の必要性、ネットワークの活用、熟練技術・技能の維持強化、流通機能の革新等が求められること等を指摘している。
「独立した中小企業の育成」の観点からは、企業間の関係が変化し、また中小企業間の格差が拡大する中で、中小企業にとって今後、市場での評価が一層重要になると考えられること等を指摘している。
「地域経済活性化への貢献」の観点からは、中小企業にとって商業集積や産業集積が重要な意義を有すること、これらの活性化が望まれること等を指摘している。
「我が国中小企業のグローバリゼーション」の観点からは、事業活動の国際化が進展する我が国の中小企業の課題と対応等について検討している。
<第一部> 中小企業の景気動向分析
平成九年度の中小企業の景気動向は、我が国経済において消費税率の引上げに伴う駆け込み需要の反動減が予想以上に大きかったこと、民間金融機関の相次ぐ破綻等により、消費者や企業の我が国経済の先行きに対する信頼感が低下する等、一層厳しさを増す中で、総じて低迷状態で推移した(第1図参照)。
さらに、金融ビッグバンの本格化を控え、金融機関の貸し渋りの深刻化が懸念されている(第2図参照)。
生産面では大企業との格差が拡大するとともに、これまで比較的堅調であった機械関連業種も低迷している。
このような厳しい状況の中で製造業、非製造業ともに同一業種内の企業間格差が明確化している(第3図参照)。
なお、格差が拡大した要因としては、新分野への進出・新製品の開発に取り組んできたこと等が挙げられる。
一方、雇用面では、近年、規模別雇用構造に変化が見られている。また、企業規模にかかわらず、高齢者については過剰感が強く、若年層については不足感が強くなっている(第4図参照)。
<第二部> 中小企業を巡る環境変化
一 経済構造変化の進展
近年、我が国経済は海外各国との相互依存関係をますます深めつつあり、大企業のみならず、中小企業を取り巻く経営環境にも国際化が進んでいる。グローバリゼーションが進展する中で、国内下請分業構造の流動化、国際分業の進展等、企業間関係の変化が進んでいる(第5図参照)。
一方、近年の企業における情報化は、高速通信網の発達、パソコン等の情報関連機器の機能・操作性の向上等を背景に、単なる事務処理の合理化・省力化を目的とするものから、情報ネットワークを中心としたより高度な情報化に取り組むことで、企業の経営全般の革新につなげていくものに移っている。
このような中で、情報化の進展は企業規模別に格差が見られ、今後、この格差がますます拡大するのではないかと懸念されている。
また、流通業に関する我が国の流通構造の特徴としては、従来から「小売業の零細・過多性」、「卸売機構の多段階制」が指摘されてきたが、現在、流通業を取り巻くダイナミックな環境の変化とともに、これらの特徴にも変化が生じつつある。
二 地域経済の変容
我が国の中小小売業は、これまで、人の往来が集中する都市部の盛り場や、公共交通機関の利用者を見込める駅前、徒歩での購買に便利な近隣の住宅街等の、いわゆる中心市街地に形成されてきた。しかし、近年のモータリゼーションの進展等を背景に、公共、業務、居住等の種々の都市機能の郊外展開が進展する中で、旧来の多くの中心市街地では、都市機能の空洞化が問題視されている(第6図参照)。
また、小売店舗や商品に対する消費者ニーズの変化についても、ライフスタイルの変容とともに進展している。
一方、製造業については、製造業者は広く全国に存在するものの、その分布は一様ではなく、集中立地して生産活動を行っている地域が各地に見られる。これら地域は、産業集積とよばれ、我が国のモノづくりを支えている。しかしながら、近年、これら産業集積の機能低下が懸念されているとともに、産業集積の分散・広域化の傾向が見られている。
三 制度環境変化等の進展
我が国においては経済・社会の変化に対応するために、金融システム改革が進められており、「日本版ビッグバン」との言葉に代表される大きな変革期を迎えている。
金融システム改革の進展による金融環境の変化は、金融機関からの借入れに資金調達の多くを依存する中小企業にとっては、脅威とチャンスの両面を生じさせるものと考えられる。
<第三部> 内外の中小企業と中小企業政策の変遷
今日において、我が国と欧米主要国(米、EU、英、仏等)の中小企業政策は、不利な経営環境に置かれた中小企業の自助努力に対する助成といった観点を有すること等、多くの共通点が見られる。
具体的には、技術開発や人材育成、コンサルティング等を通じた経営資源の強化等のソフト支援、そして創業等を通じた市場活性化のための支援等に共通性が見られ、市場経済に活力を与える存在としての中小企業を見据えた支援策として実施されている(第1表参照)。
<第四部> 中小企業の課題と対応
一 創業と企業成長
今後、我が国の中小企業には、創業活動や新規市場への進出・事業転換等、一層の企業家精神の発揮が求められている。中小企業においては、新分野への進出、業種転換を図った企業は、これらを行っていない企業に比べ出荷額、付加価値額が伸長している。また、中小事業所の雇用の二三・一%、付加価値額の二一・五%が過去十年間に開業した事業所によって生み出されている。
このような中、我が国の全産業の開廃業率(農林漁業を除く)の推移を見ると、近年においては開廃業率ともに低下傾向にあり、また廃業率が開業率を上回る逆転現象は、平成元年〜三年以降依然として続いている(第7図参照)。
一方、米国では我が国より開廃業率ともにかなり高くなっている(第8図参照)。
さらに、我が国の中小企業における創業者の創業当時の年齢を時系列的に見ると、近年になるに従って創業年齢の高齢化が見られている(第9図参照)。
一方、成長志向の高い中小企業に対しては、今後、資金の供給源を多様化していく等の環境整備が求められ、このためにはベンチャーキャピタルはもとより、個人の資産家層の投資の円滑化が図られることが必要である。
このような中、我が国においても現状において、エンジェル該当者が一五%程度存在している。エンジェルの創業間もない企業への投資への関心としては、キャピタルゲインを得ることばかりでなく、企業の成長に寄与していきたいといった意識が見られるが、今後、こうしたエンジェルの投資を活発化していくためには、企業情報等の公開のための取組が望まれている。
二 中小企業の創造的革新
中小企業を巡る環境の変化が厳しさを増す中で、中小企業が自らの経営力を強化する必要性は、従来にも増して高まっている。このような中、中小企業の財務体質の強化が求められており、金融システム改革の進展に伴い、中小企業を巡る新たな資金調達環境の整備とともに、公的金融支援も重要となっている。
中小企業においては、環境の変化に対応すべくノウハウや技術等の経営資源が必要となるが、これらすべてを保有することは困難であろうから、ネットワークを活用した経営が有効であると考えられる。アウトソーシング、地域産業・商業集積活用、異業種交流、産学官連携、アジア大の国際分業等、様々なネットワーキングが望まれる。
一方、我が国の製造業においては、これまで高品質、低コスト、短納期等で国際競争力を発揮してきたが、これらはモノづくり基盤、すなわち、金型、鋳鍛造、メッキなど、我が国の生産活動を支える共通基盤的加工技術・技能の強さに起因するところが大きいと考えられている。現在、モノづくりの現場における機械化、マニュアル化、コンピュータ化が進展しているが、特に中小企業においては、モノづくりを支える熟練技術・技能は今後一層重要性を増していくとともに、その維持強化が求められている(第10図参照)。
中小企業の経営力を強化していく上では、新規事業への参入等、事業運営の円滑化や高コスト構造の是正に資する経済波及効果の高い規制緩和等を引き続き迅速に推進していく必要があろう。高コスト構造の是正についての効果を規模別に比較すると、大企業に比べ中小企業においてより大きな効果を有するものであることが示されている。また、規制緩和への今後の対応については、中小企業においてもビジネスチャンスに結びつけていこうとする意識が半数を超えている。
三 地域経済と中小企業
我が国においては、近年、様々な業態の小売業が創出され、それぞれ差別化を図りつつ消費者ニーズに即応した経営を展開してきているが、中小企業性の高い従来型の「一般商店」や「専門店」は、これらの業態間競争の中で厳しい経営環境に追い込まれている。しかしながら、中小・零細の小売商店は、新業態の創出等の新たな流通変革の担い手としての機能を果たしてきたとともに、ベンチャー精神を備えた多くの起業家を輩出してきたものと考えられ、また、中小小売業の集積である商店街は、新業態小売業の創出等の苗床機能を有してきたものと考えられる(第11図参照)。
そして、中小小売業の成長にとって重要性の高い商店街については、その業種構成について不足業種を誘致していくばかりでなく、同一業種店舗の誘致も効果的であると考えられる。
また、中小小売業を中心とした中心市街地商業集積全体の競争力の強化を図るための方策としては、地元市町村を中心とした行政との協力のもとにまちづくりに取り組んでいくといった、タウンマネージメントの推進が求められている。
一方、製造業における産業集積においては、様々なメリットがある一方で、土地や人件費の高騰等のデメリットも深刻化している。今後においても、モノづくりを支える地域産業集積の活性化が重要と言えよう。このような中、主要取扱製品変更の割合の推移を見ると、産業集積地域は新分野への進出、新製品開発機能がその他地域に比べて高くなっている(第12図参照)。
また、付加価値についても、産業集積地域は付加価値創出機能がその他地域に比べて高くなっている(第13図参照)。そして、より一層の高付加価値化、新分野進出等の積極化等の開発型戦略が求められる。
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平成九年十月一日現在
◇全国人口
一 総人口
〈総人口は平成九年十月一日現在で一億二千六百十七万人、この一年間に三十万人の増加〉
平成九年十月一日現在における我が国の総人口は一億二千六百十七万人で、八年十月から九年九月までの一年間に三十万人(〇・二四%)増加した。
総人口を男女別にみると、男子が六千百八十万人(総人口の四九・〇%)、女子が六千四百三十六万人(同五一・〇%)で、女子が二百五十六万人多くなっている。
総人口の増加率は、第二次ベビーブーム期(昭和四十六〜四十九年)には一・四%前後と高い水準(最高は昭和四十七年の一・四一%)であったが、その後、出生児数の減少により昭和五十二年に一%を、六十二年に〇・五%を下回るなど低下傾向で推移しており、平成六年以降は〇・二%台となっている。
我が国の出生児数は、第二次ベビーブーム期には二百万人を超えていた(最高は昭和四十八年の二百十一万人)が、その後は減少傾向にあり、平成九年は百二十一万人で前年とほぼ同数となっている。一方、平成九年の死亡者数は九十二万人で、前年を二万人上回っている。この結果、自然増加数は二十九万人で、前年を二万人下回った。
なお、平成九年の入国者数は一千七百九十七万人、出国者数は一千七百九十六万人で、五年ぶりに一万人ながら社会増加となった(第1表参照)。
二 年齢別人口
(一) 人口ピラミッドはひょうたん型
我が国の人口ピラミッドは、各時代の社会情勢を背景とする出生・死亡の状況を反映し、第1図のようになっている。
この人口ピラミッドは、近年、出生児数が第二次ベビーブーム期をピークとして、減少傾向にあることを反映し、すそが狭まった「ひょうたん型」となっている。
なお、平成九年十月一日現在における、明治生まれの人口は百七十八万人、大正生まれの人口は一千三十七万人、昭和生まれの人口は一億三百四十八万人、平成生まれの人口は一千五十三万人となり、このうち平成生まれの人口は、前年より百十九万人増加して一千万人を超え、大正生まれより多くなった。
総人口に占める各年代生まれの人口の割合は、それぞれ一・四%、八・二%、八二・〇%、八・四%となっている。
また、戦後生まれの人口は八千五百三十九万人で、総人口の六七・七%となっている。
(二) 年少人口を上回った老年人口
平成九年十月一日現在の総人口を年齢三区分別にみると、年少人口(〇〜十四歳)は一千九百三十七万人で前年より三十二万人の減少、生産年齢人口(十五〜六十四歳)は八千七百四万人で十二万人の減少、老年人口(六十五歳以上)は一千九百七十六万人で七十四万人の増加となった。この三区分別人口のうち、老年人口は初めて年少人口を上回っている。
なお、年少人口と老年人口のこの一年間の推移をみると、平成八年十月一日現在では年少人口(一千九百六十九万人)が老年人口(一千九百二万人)を六十七万人上回っていたが、その後、月を追うごとに差は小さくなり、九年六月一日現在では逆転している(第2図参照)。
(三) 一〇%を超えた七十歳以上人口
年齢三区分別人口の割合は、年少人口が一五・三%、生産年齢人口が六九・〇%、老年人口が一五・七%で、前年に比べ、年少人口と生産年齢人口がそれぞれ〇・三ポイント低下し、老年人口が〇・六ポイント上昇している。年少人口と老年人口の割合の差は年々縮小していたが、平成九年は逆転して老年人口が〇・四ポイント上回った。
年齢三区分別人口の割合の推移をみると、年少人口の割合は昭和五十年(二四・三%)から低下を続けている。生産年齢人口の割合は、昭和五十七年(六七・五%)から上昇を続けていたが、平成四年(六九・八%)をピークに、五年から低下している。
一方、老年人口の割合は昭和二十七年(五・〇%)以降上昇が続いており、平成九年(一五・七%)はこれまでの最高となっている。
なお、老年人口のうち、七十歳以上人口は一〇・三%で、初めて総人口の一割に達している。また、七十五歳以上の「後期老年人口」も、これまでの五%台から六%台になっている(第2表参照)。
(四) 老年化指数は一〇〇を上回り一〇二・〇
年齢構造指数についてみると、生産年齢人口に対する年少人口の比率(年少人口指数)は二二・二、老年人口の比率(老年人口指数)は二二・七となっている。
年少人口指数は昭和五十二年以降低下を続けているのに対し、老年人口指数は三十八年以降上昇を続けており、平成九年は、前年と比べ、年少人口指数が〇・四ポイントの低下、老年人口指数が〇・九ポイントの上昇となった。この結果、生産年齢人口に対する子どもと高齢者の人口の比率(従属人口指数)は〇・五ポイントの上昇となった。
また、子どもに対する高齢者の比率(老年化指数)は一〇二・〇となり、初めて一〇〇を超えた。この老年化指数は、平成元年に六〇・〇を超えた後、毎年ほぼ五ポイントの上昇を続けている(第2表参照)。
(五) 各国に比べ低い年少人口の割合、高い老年化指数
我が国の人口の年齢構造を各国と比べてみると、調査年次に相違はあるものの、年少人口の割合はイタリアと並んで低い水準にあり、老年人口はヨーロッパ諸国と同水準で、生産年齢人口は欧米諸国よりやや高い水準になっている。
また、老年化指数は、イタリアに次いで高い水準になっている(第3表参照)。
◇都道府県別人口
一 人 口
(一) 大都市のある十一都道府県で全国人口の二分の一
平成九年十月一日現在における都道府県別の人口は、東京都の一千百八十一万人を最高に、大阪府(八百八十万人)、神奈川県(八百三十三万人)、愛知県(六百九十三万人)、埼玉県(六百八十五万人)と続いている。以下、五百万人台が三道県、四百万人台と三百万人台が各一県、二百万人台が十府県、百万人台が二十県、百万人未満が七県となっている。上位五都府県の順位は、昭和五十八年以降、変わっていない。
なお、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県及び埼玉県の上位五都府県で全国人口の三三・九%と、三分の一を超えている。また、大都市(東京都特別区部及び政令指定都市)を含む十一都道府県では五二・一%と、全国人口の二分の一強を占めている(第4表参照)。
(二) 人口減少県が前年より増加し十七府県
平成九年に人口が減少したのは、長崎県、秋田県、山口県、島根県、高知県など十七府県となっている。
人口減少県の数は、昭和三十年代中ごろは二十五県前後、三十年代終わりから四十年代にかけては二十道県前後であったが、四十九年から五十六年には〇ないし一県となっていた。その後、人口減少県の数は、昭和六十一年・六十二年が十五都道県、六十三年が二十都道県、平成元年・二年が二十二都道府県と増加したが、三年(十六県)から七年(九都県)までは減少で推移した。しかし、平成八年は増加に転じて十三都県となり、九年は八年より四県増加し十七府県となっている。
なお、秋田県、島根県、山口県、愛媛県、高知県及び長崎県の六県では、人口減少が十二年以上続いている。一方、東京都は、平成四年から減少を続けていたが、八年はわずかな減少にとどまり、九年は増加となった。
(三) 人口増加率は滋賀県の〇・九三%が最高
都道府県別の人口増加率は、滋賀県が〇・九三%で最も高く、以下、沖縄県及び埼玉県が〇・六%台、神奈川県及び愛知県が〇・五%台、千葉県、宮城県、兵庫県及び栃木県の四県が〇・四%台となっている。
人口増加率が〇・四%を超えているこの九県について、自然増加率と社会増加率をみると、沖縄県は社会増加率がマイナス(社会減少)となっている。他の八県は自然増加率と社会増加率が共にプラスとなっており、このうち、滋賀県は社会増加率の寄与が大きく、埼玉県、神奈川県、愛知県及び千葉県の四県は自然増加率の寄与が大きくなっている(第5表参照)。
なお、人口が減少している十七府県の自然増加率と社会増加率をみると、青森県、大阪府、長崎県など十一府県は自然増加率がプラスで、社会増加率がマイナスとなっており、秋田県、島根県、山口県など六県は自然増加率と社会増加率が共にマイナスとなっている(第3図参照)。
(四) 自然増加率の最高は沖縄県の〇・七二%
都道府県別の自然増加率をみると、沖縄県が〇・七二%で最も高く、以下、埼玉県、愛知県及び神奈川県の三県が〇・四%台、滋賀県、千葉県及び大阪府の三府県が〇・三%台となっている。
一方、自然増加率が最も低いのは秋田県のマイナス〇・一六%で、次いで、高知県、島根県、山口県、徳島県、山形県となっており、この六県は、自然増加率がマイナス(自然減少)となっている。また、和歌山県、鹿児島県、岩手県、愛媛県など十県では、自然増加率が〇・〇〜〇・一%未満となっている。
なお、自然増加率は、出生児数の減少により、平成二年に沖縄県が〇・九一%に低下してからすべての都道府県で一%未満となり、七年以降は、沖縄県以外の四十六都道府県では〇・五%以下となっている(第6表参照)。
(五) 社会増加率は滋賀県が最も高く〇・五五%
都道府県別の社会増加率をみると、滋賀県が〇・五五%で最も高く、以下、栃木県及び長野県が〇・二%台、三重県など十一都県が〇・一%台となっている。この社会増加率は、昭和六十一年から平成五年までは埼玉県が最も高かったが、六年以降は滋賀県が最も高くなっている。
一方、社会増加率が最も低いのは長崎県のマイナス〇・四七%で、次いで、大阪府、宮崎県、青森県、佐賀県、秋田県となっている。
なお、大都市のある十一都道府県についてみると、大阪府、広島県、京都府及び北海道の四道府県は社会増加率がマイナス(社会減少)で、他の七都県はプラスとなっている。このうち、兵庫県、東京都、神奈川県及び愛知県は、平成八年のマイナスから九年はプラスに転じている(第7表参照)。
二 年齢別人口
(一) 老年人口が年少人口を上回るのは三十五都道府県
平成九年十月一日現在の年少人口(〇〜十四歳)の割合を都道府県別にみると、沖縄県が二一・〇%で最も高く、東京都が一二・七%で最も低くなっており、その他の道府県は一四〜一七%台となっている。この年少人口の割合は、近年、出生児数の減少により各都道府県とも低下傾向にあり、平成九年は東京都が前年と同率となっているものの、他の四十六道府県では前年より低下している。
また、老年人口(六十五歳以上)の割合をみると、島根県が二三・一%で最も高く、以下、高知県、秋田県、山形県、鹿児島県となっており、九県で二〇%を超えている。一方、割合が最も低いのは埼玉県の一一・〇%で、次いで神奈川県、千葉県、沖縄県及び愛知県の四県が一二%台となっている。この老年人口の割合は、年少人口とは対照的に、すべての都道府県で上昇している。
この結果、老年人口が年少人口を上回っているのは、東京都の周辺県、大阪府とその周辺県、宮城県、愛知県及び沖縄県を除く三十五都道府県となり、前年より三県増加している。この三十五都道府県のうち十三県では老年人口の割合が四ポイント以上、上回っており、特に島根県、高知県及び秋田県の三県では六ポイント以上となっている(第4図参照)。
(二) 大都市を含む都府県で高い生産年齢人口の割合
生産年齢人口(十五〜六十四歳)の割合を都道府県別にみると、埼玉県及び神奈川県が七三・四%で最も高く、以下、東京都、千葉県、大阪府、愛知県となっており、この六都府県で七〇%を超えている。一方、割合が最も低いのは島根県の六一・三%で、次いで鹿児島県、山形県、鳥取県、高知県となっている。
生産年齢人口の割合は、大都市を含む都府県で高く、全国平均を上回っている九都府県のうち、七都府県が大都市を含む県となっている。
なお、生産年齢人口の割合は、沖縄県は前年と同率となっているが、他の四十六都道府県では前年より低下している(第8表参照)。
◇賃金の動き
二月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十九万六百四十七円、前年同月比は〇・〇%で前年と同水準であった。
現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万八千百十三円、前年同月比〇・二%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万九千三百五十二円、前年同月比〇・六%増で、所定外給与は一万八千七百六十一円、前年同月比は四・二%減となっている。
また、特別に支払われた給与は二千五百三十四円、前年同月比一八・七%減となっている。
実質賃金は、一・九%減であった。
産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、鉱業一・〇%増、サービス業〇・八%増、製造業〇・五%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・五%増、卸売・小売業、飲食店〇・四%増、金融・保険業〇・二%減、建設業〇・四%減、不動産業〇・六%減、運輸・通信業一・三%減であった。
◇労働時間の動き
二月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五四・九時間、前年同月比二・二%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四五・〇時間、前年同月比一・九%減、所定外労働時間は九・九時間、前年同月比五・八%減、季節変動調整済の前月比は二・四%減であった。
製造業の所定外労働時間は一三・一時間で前年同月比は一〇・三%減、季節変動調整済の前月比は五・八%減であった。
◇雇用の動き
二月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・六%増、常用労働者のうち一般労働者では〇・一%減、パートタイム労働者では四・八%増であった。常用労働者全体の季節変動調整済の前月比は〇・〇%で前月と同水準であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、サービス業二・五%増、建設業一・九%増、運輸・通信業〇・三%増とこれらの産業は前年を上回っているが、卸売・小売業、飲食店〇・一%減、製造業〇・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業〇・九%減、不動産業一・二%減、金融・保険業二・七%減、鉱業七・八%減と前年同月を下回った。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者〇・九%減、パートタイム労働者二・二%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者〇・四%減、パートタイム労働者〇・八%増、サービス業では一般労働者〇・八%増、パートタイム労働者一一・二%増となっている。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
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