一 定住人口の都心回帰のきざしと、従業者の都心からの分散
首都圏での特筆すべき人口の動向として、定住人口の都心回帰のきざしが見られるようになったことが注目される。
昭和二十八年以来、一貫して人口の減少が続いていた中央区の人口が、平成九年中に四十五年ぶりに増加に転じた(第1図参照)。
また、人口の移動をみても、東京都区部では昭和三十八年以来、三十四年ぶりに転入超過となったことに加え、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)への転入超過が平成七年から増加する方向に転じている。
これは、近年の地価の低下傾向により、都心部においても、住宅価格の低下に伴い取得能力が高まったことや、国や地方公共団体の積極的な定住者増加対策が、効果を及ぼしたものと推測される。
また、平成二年から七年にかけて特別区でみると、同期間中の従業者のシェアは低下している一方で、多摩地区や近隣三県の従業者数は伸びており、一定の分散傾向が見られる(第1表参照)。
しかしながら、面積で首都圏の一・七%に過ぎない都区部に、首都圏全体の三分の一以上の従業者が勤務しており、なお集中は高い。
二 依然として深刻な過密の状況
(一) 通勤時間の長時間化(第2図参照)
都心三区への通勤・通学時間は、平成二〜七年の間に九十分以上要する人の割合が二・五%増加する一方、一時間以内は一・五%減少し、全体の平均時間は長時間化している。
(二) 通勤、道路混雑(第3図参照)
鉄道の混雑率は、新線建設や輸送力増強、信号制御技術の進歩等により、緩和しつつあるが、地下鉄の混雑率の国際比較を見てみると、なお東京は他の大都市より圧倒的に高い。
また、道路混雑についても、環状道路の整備や立体交差化によって改善された箇所もあるが、首都高速道路都心環状線や、その流入路線のように、いまだに混雑が著しい路線も多い。
(三) 低い居住水準(第4図参照)
東京圏の最低居住水準未満の世帯は、全国に比べて著しく高い。
このような過密に伴う諸問題を解決するには、都市部の低・未利用地を有効に活用して、低廉で良質な住宅供給を図り、都心居住を引き続き進めるとともに、業務核都市を始めとする首都圏周辺部の中核都市に対して、都区部からの業務機能等の分散を進めることにより、職住近接のバランスのとれた多極多圏域型の圏域構造へ誘導していくことが重要である。
三 廃棄物処分の広域化
東京圏における一般廃棄物の最終処分量は、約七割が東京湾への埋立てにより処理されており、累積埋立処分量の増加とともに、残余容量が減少している(第5図参照)。
また、廃棄物の流動を見ると、一般廃棄物の排出先は、東北、北陸、中国地方等にまで及んでおり、産業廃棄物については、首都圏内では東京都から近隣県への流出が多く、さらに都近隣県から首都圏外への流動が生じている(第6図参照)。
前記のように廃棄物の処理・処分が広域化していることから、この問題は都県を越えて広域的に検討すべき課題と位置づける必要があり、国と関係地方公共団体とが協力して、広域的かつ中期的な視点から取り組んでいかなければならない。
また、東京湾等における埋立処分の残余容量の減少のスピードと、今後も当分は埋立処分を必要とする廃棄物が大量に発生することは避けられないと推測されることを考慮すると、早急に関係者間の調整を図り、廃棄物の発生抑制、首都圏内におけるリサイクル機能の充実、溶融等、高度処理技術の導入、処分能力の拡大等を図る必要がある。
四 各圏域で進行する高齢化
首都圏の高齢化の状況は、おおむね次の三つのタイプに分けて考えられ、それぞれその特徴を正確に把握し、これに応じたきめ細かな対応をとることが必要である(第7図参照)。
▽東京圏中心部、先行ニュータウン地域〔おおむね三十五キロメートル以内〕
<地域特性>
居住者が高齢化することにより、高齢化が進んでいくという傾向が見られ、その進展のスピードは速い。しかも、次代の高齢者である団塊の世代も多数居住している状況にある。
<施策の方向性>
例えば児童・生徒の減少に伴って生じている余裕教室等を、社会福祉施設として活用する等、既存公共施設を高齢者福祉施設に活用したり、高等教育機関において生涯学習のニーズに対応するなど、既存施設の有効活用を図ることが必要である。
▽周辺部の新たに開発されつつある地域〔おおむね三十五〜六十五キロメートル〕
<地域特性>
人口増加率が高く、高齢化のスピードは緩やかであるが、人口増の対応に追われ、高齢者に配慮された移動手段の確保などに支障が見られる地域も多い。
<施策の方向性>
現在の団塊の世代の高齢化や、東京圏中心部からの高齢者の流入を見据え、高齢者福祉施設を充実させるとともに、高齢者の広域的活動のために、交通施設のバリアフリー化や、高齢者が身近で就業できるための場づくりが必要である。
▽都心から比較的距離のある地域〔おおむね六十五キロメートル以遠〕
<地域特性>
中核都市圏以外の人口規模が小さく、かつ減少傾向にあるため、既に高齢化がかなり進んでいる地域が多い。
<施策の方向性>
大学教育レベルの高い知識・技術を習得するといった高齢者の高度なニーズへ対応するため、中核都市を中心とした広域連携を行い、施設、施策の充実を図ることが必要である。
五 平成九年度に実施された施策
@ 交通網の整備状況
平成九年度には、長野行き新幹線(北陸新幹線)と東京湾アクアラインという二つのビッグプロジェクトの完成を見たほか、営団地下鉄南北線の溜池山王〜四ツ谷間及び都営地下鉄十二号線の新宿〜練馬間が開通するなど、交通網の整備に大きな進展があった(第8図、第9図参照)。
A 国土庁の施策
首都圏整備にあたっては、新たな全国総合開発計画に掲げられている多軸型国土構造への転換による国土の均衡ある発展等、全国的視野に立った国土整備の考え方を踏まえて推進する。
<新しい首都圏基本計画の策定>
変貌する経済社会状況を的確に捉え、二十一世紀の首都圏のビジョンとそれを実現するための政策体系を明らかにすることを目的として、平成六年十二月に開催された国土審議会首都圏整備特別委員会において、内閣総理大臣から首都圏整備の基本方針についての諮問が行われた。
現在、国土審議会首都圏整備特別委員会計画部会において、次期首都圏基本計画の策定に向けた審議が行われており、平成十年夏頃に調査検討報告が行われる予定である。
<業務核都市の整備>
平成九年三月末に、川崎市及び厚木市の業務核都市基本構想を承認したことから、基本構想承認済み地域が、千葉、木更津、埼玉中枢都市圏、土浦・つくば・牛久、横浜、八王子・立川、川崎及び厚木の八地域となった。
現在、これら八地域において、このうち四地域を対象に重点目標の策定や都市の個性化など、育成・整備の新たな展開方策の検討を行っている。
<国の行政機関等の移転の推進>
平成七年に国の機関等移転推進連絡会議で取りまとめられた七十六機関十一部隊等についての移転計画に基づいて、平成九年度には、陸上自衛隊武器補給処十条支処(一部)、法務総合研究所、労働福祉事業団が移転し、これを含む二十機関十部隊等の移転が完了した。
また、平成八年三月に着工した、さいたま新都心の合同庁舎等の建設が進められ、平成十一年度には、十七機関が集団的移転を行う予定である。
<筑波研究学園都市の育成整備>
筑波研究学園都市に移転・新設した国の試験研究・教育機関等については、現在四十五機関が業務を行っており、官民合わせて約一万三千人の研究者を擁する世界でも有数の研究開発拠点を形成している。二十一世紀に向けて筑波研究学園都市を科学技術中枢拠点都市として整備するため、平成十年四月に研究学園地区建設計画及び周辺開発地区整備計画の改定を行った。
<工業、大学等の適正配置の推進>
工業等制限区域(既成市街地)においては、平成十年一月三十日に「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」の施行令の改正を行い、制限除外業種の範囲の拡大、工場跡地への立地や研究開発型の開発試作工場等についての制限の緩和を行った。
<首都機能移転に関する検討>
平成七年十二月の「国会等移転調査会報告」、平成八年六月の「国会等の移転に関する法律」の一部改正を受け、平成八年十二月に国会等移転審議会が発足し、内閣総理大臣からの諮問を受けて、国会等の移転先の候補地の選定及びこれに関連する事項について調査審議を行ってきた。このうち移転先候補地の選定については、平成十年一月十六日に、今後詳細な調査を行う調査対象地域の設定、公表が行われた。また、五月には新都市像のイメージ図が公表された。
<大深度地下利用に関する検討>
公共用地の確保が困難となってきている大都市圏において、社会資本の整備を促進するために必要と考えられている大深度地下利用に関する検討については、臨時大深度地下利用調査会が設置され、平成七年十一月から調査審議が行われている。平成九年六月十三日に中間取りまとめが行われ、平成十年五月に答申が取りまとめられた。
目次へ戻る
消費支出(全世帯)は実質五・七%の減少
全世帯の消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月、十月は実質増加となり、十一月以降五か月連続の実質減少となった。
平成十年三月の消費支出は,前年同月における駆け込み需要の反動減もあって大幅な実質減少となった。
◇勤労者世帯の家計
勤労者世帯の実収入は、平成九年九月は実質増加、十月は実質で前年と同水準となり、十一月以降五か月連続の実質減少となった。
消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月は実質増加となり、十月以降六か月連続の実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は三十一万二千七百九十五円で、名目三・八%の減少、実質六・〇%の減少
◇財・サービス区分別の消費支出
財(商品)は、実質九・〇%の減少
<耐久財>実質一二・九%の減少
<半耐久財>実質一六・三%の減少
<非耐久財>実質五・六%の減少
サービスは、実質〇・五%の減少
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・二となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一月二・〇%の上昇、二月二・〇%の上昇、三月二・二%の上昇と推移した後、四月は〇・七%の上昇となり、上昇幅は前月に比べ一・五ポイント縮小。これは、消費税率引上げの影響が一巡したことなどによる。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は一月一・九%の上昇、二月一・七%の上昇、三月一・七%の上昇と推移した後、四月は〇・五%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・六となり、前月に比べ〇・四%の下落。
生鮮魚介は〇・八%の下落。
<値上がり>いか、えびなど
<値下がり>かつお、ぶりなど
生鮮野菜は一・四%の下落。
<値上がり>キャベツ、にんじんなど
<値下がり>きゅうり、レタスなど
生鮮果物は九・九%の下落。
<値上がり>キウイフルーツ、バナナ
<値下がり>いちご、りんご(ふじ)など
(2) 被服及び履物は一〇五・三となり、前月に比べ二・八%の上昇。
衣料は三・六%の上昇。
<値上がり>スカート(夏物)など
(3) 保健医療は一一四・六となり、前月に比べ〇・三%の下落。
保健医療サービスは〇・三%の下落。
<値下がり>診察料
(4) 教育は一〇六・三となり、前月に比べ一・七%の上昇。
授業料等は二・二%の上昇。
<値上がり>私立大学授業料など
(5) 教養娯楽は一〇一・六となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
教養娯楽サービスは一・二%の上昇。
<値上がり>ゴルフプレー料金など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
保健医療サービス(二二・九%上昇)、生鮮野菜(一五・五%上昇)、家賃(〇・七%上昇)、衣料(四・三%上昇)
○下落した主な項目
自動車等関係費(二・六%下落)、家庭用耐久財(七・三%下落)、穀類(三・六%下落)、電気代(三・五%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・九となり、前月と変わらなかった。
◇三月の全国消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・四となり、前月比は〇・四%の上昇。前年同月比は十二月一・八%の上昇、一月一・八%の上昇、二月一・九%の上昇と推移した後、三月は二・二%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は十二月二・二%の上昇、一月二・〇%の上昇、二月一・八%の上昇と推移した後、三月は一・八%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇三・〇となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
生鮮魚介は一・〇%の上昇。
<値上がり>いか、いわしなど
<値下がり>ぶり、かきなど
生鮮野菜は〇・六%の上昇。
<値上がり>はくさい、だいこんなど
<値下がり>ほうれんそう、えのきだけなど
生鮮果物は一二・一%の上昇。
<値上がり>いちご、みかんなど
<値下がり>りんご(ふじ)、グレープフルーツなど
外食は〇・四%の下落。
<値下がり>ハンバーガーなど
(2) 光熱・水道は一〇二・七となり、前月に比べ〇・二%の下落。
他の光熱は一・九%の下落。
<値下がり>灯油
(3) 被服及び履物は一〇二・三となり、前月に比べ三・六%の上昇。
衣料は七・〇%の上昇。
<値上がり>婦人ブレザーなど
(4) 交通・通信は九八・〇となり、前月に比べ〇・二%の下落。
自動車等関係費は〇・五%の下落。
<値下がり>ガソリン(レギュラー)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
生鮮野菜(二六・八%上昇)、保健医療サービス(二四・四%上昇)、家賃(一・三%上昇)、外食(二・五%上昇)
○下落した主な項目
自動車等関係費(二・二%下落)、穀類(二・二%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・七となり、前月に比べ〇・二%の上昇となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・四となり、前月と変わらなかった。
平成十年四月の十五歳以上人口は、一億七百十四万人(男子:五千二百二万人、女子:五千五百十二万人)となっている。
これを就業状態別にみると、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百二十二万人、非労働力人口は三千八百七十九万人で、前年同月に比べそれぞれ十七万人(〇・二%)増、五十三万人(一・四%)増となっている。
また、労働力人口のうち、就業者は六千五百三十二万人、完全失業者は二百九十万人で、前年同月に比べそれぞれ四十二万人(〇・六%)減、五十九万人(二五・五%)増となっている。
◇就業者
(一) 就業者
就業者数は六千五百三十二万人で、前年同月に比べ四十二万人(〇・六%)減と、三か月連続の減少となっている。男女別にみると、男子は三千八百五十八万人、女子は二千六百七十四万人で、前年同月と比べると、男子は四十五万人(一・二%)の減少、女子は三万人(〇・一%)の増加となっている。
(二) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百五十一万人、自営業主・家族従業者は一千百六十二万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は三十二万人(〇・六%)減と、三か月連続の減少となっている。また、自営業主・家族従業者は十六万人(一・四%)減と、三か月連続の減少となっている。
雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百十七万人で、三十五万人(〇・七%)減少
○常 雇…四千七百三十八万人で、三十四万人(〇・七%)減少
○臨時雇…四百五十九万人で、三万人(〇・七%)増加
○日 雇…百十九万人で、四万人(三・三%)減少
(三) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百五十七万人で、十一万人(三・二%)増加
○建設業…六百六十万人で、十一万人(一・六%)減少
○製造業…一千三百七十三万人で、七十四万人(五・一%)減少
○運輸・通信業…三百九十九万人で、四万人(一・〇%)減少
○卸売・小売業、飲食店…一千四百九十四万人で、九万人(〇・六%)増加
○サービス業…一千六百八十二万人で、三十万人(一・八%)増加
対前年同月増減をみると、「卸売・小売業、飲食店」及びサービス業は前月(それぞれ二十一万人増、五十六万人増)に比べ増加幅が縮小している。農林業は前月の六万人減から増加となっている。建設業は前月(二十七万人減)に比べ減少幅が縮小している。製造業及び運輸・通信業は前月(それぞれ六十五万人減、三万人減)に比べ減少幅が拡大している。
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四十八万人で、二万人(〇・四%)減少
○製造業…一千二百五十四万人で、五十八万人(四・四%)減少
○運輸・通信業…三百七十八万人で、六万人(一・六%)減少
○卸売・小売業、飲食店…一千百九十八万人で、十六万人(一・四%)増加
○サービス業…一千四百二十八万人で、十九万人(一・三%)増加
対前年同月増減をみると、「卸売・小売業、飲食店」及びサービス業は前月(それぞれ二十四万人増、二十七万人増)に比べ増加幅が縮小している。一方、建設業は前月(五万人減)に比べ減少幅が縮小している。製造業及び運輸・通信業は前月(それぞれ五十三万人減、三万人減)に比べ減少幅が拡大している。
(四) 従業者階級
企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百八十一万人で、四十一万人(二・四%)増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百三十七万人で、四十八万人(二・七%)減少
○五百人以上規模…一千二百五十六万人で、二万人(〇・二%)増加
(五) 就業時間
非農林業の従業者(就業者から休業者を除いた者)一人当たりの平均週間就業時間は四〇・一時間で、前年同月と同時間となっている。
このうち、非農林業雇用者についてみると、男子は四三・五時間、女子は三四・三時間で、前年同月に比べ男子は〇・五時間の増加、女子は〇・二時間の減少となっている。
また、非農林業の従業者の総投下労働量は、延べ週間就業時間(平均週間就業時間×従業者総数)で二四・三一億時間となっており、前年同月に比べ〇・二〇億時間(〇・八%)の減少となっている。
(六) 転職希望者
就業者(六千五百三十二万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は五百九十四万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百三十一万人となっており、前年同月に比べそれぞれ四十九万人(九・〇%)増、二十七万人(一三・二%)増となっている。
また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・一%で、前年同月に比べ〇・八ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男女共に九・一%で、前年同月に比べ男子は〇・七ポイントの上昇、女子は〇・九ポイントの上昇となっている。
◇完全失業者
(一) 完全失業者数
完全失業者数は二百九十万人で、前年同月に比べ五十九万人(二五・五%)増加し、比較可能な昭和二十八年以降で最多となっている。男女別にみると、男子は百七十二万人、女子は百十八万人で、前年同月に比べ男子は四十一万人(三一・三%)の増加、女子は十八万人(一八・〇%)の増加となっている。
また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十一万人で、四十一万人増加
○自発的な離職による者…九十八万人で、二万人増加
○学卒未就職者…二十三万人で、六万人増加
○その他の者…六十六万人で、七万人増加
(二) 完全失業率(原数値)
完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・三%で、前年同月に比べ〇・九ポイントの上昇となっている。
男女別にみると、男子は四・三%、女子は四・二%で、前年同月に比べ男子は一・一ポイントの上昇、女子は〇・六ポイントの上昇となっている。
(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
〔男 子〕
○十五〜二十四歳…四十万人(八万人増)、九・一%(二・一ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十四万人(五万人増)、三・九%(〇・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十万人(五万人増)、二・六%(〇・七ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十四万人(六万人増)、二・五%(〇・六ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十七万人(十五万人増)、七・〇%(二・二ポイント上昇)
・五十五〜五十九歳…十三万人(三万人増)、三・三%(〇・七ポイント上昇)
・六十〜六十四歳…三十四万人(十二万人増)、一二・一%(四・二ポイント上昇)
○六十五歳以上…九万人(三万人増)、二・九%(〇・九ポイント上昇)
〔女 子〕
○十五〜二十四歳…三十四万人(三万人増)、八・一%(〇・八ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十四万人(三万人増)、六・一%(〇・三ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十九万人(七万人増)、三・六%(一・三ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十九万人(五万人増)、二・七%(〇・七ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十一万人(二万人増)、二・七%(〇・五ポイント上昇)
○六十五歳以上…一万人(一万人減)、〇・五%(〇・六ポイント低下)
(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十五万人(二十三万人増)、三・一%(〇・八ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…三十六万人(六万人増)、二・四%(〇・四ポイント上昇)
○その他の家族…百二十四万人(十九万人増)、六・七%(〇・九ポイント上昇)
○単身世帯…四十四万人(十一万人増)、五・九%(一・五ポイント上昇)
(五) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率は四・一%で、前月に比べ〇・二ポイント上昇し、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。男女別にみると、男子は四・二%、女子は四・〇%で、前月に比べ男子は〇・三ポイントの上昇、女子は〇・二ポイントの上昇となっている。
全世帯の消費支出は、平成四年度に実質減少に転じ、五年度、六年度と減少幅が拡大した。七年度は実質〇・一%の増加となったが、八年度は再び実質〇・一%の減少となり、九年度も実質二・一%の減少となった。
◇勤労者世帯の家計
勤労者世帯の実収入は、平成七年度、八年度と二年連続して実質増加となったものの、九年度は実質減少となった。
消費支出も、三年ぶりの実質減少となった。
◇勤労者以外の世帯の家計
勤労者以外の世帯の消費支出は二十九万二千八十六円で、名目〇・五%の増加、実質一・七%の減少
◇財・サービス区分別の消費支出
財(商品)は、実質三・一%の減少
<耐久財>実質一〇・八%の減少
<半耐久財>実質五・六%の減少
<非耐久財>実質一・一%の減少
サービスは、実質〇・六%の減少
◇ ◇ ◇
我が国経済
需要面をみると、個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。住宅建設は、おおむね横ばいで推移してきたものの、足元下落するなど依然その水準は低い。設備投資は、弱含んでいる。
産業面をみると、最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、鉱工業生産は、減少傾向にある。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、一層厳しさが増している。
雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が既往最高の四%台となるなど更に厳しさが増している。
輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ頭打ちとなっている。輸入は、やや弱含んでいる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸入物価の下落もあって、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、五月は、月初の百三十三円台から下落し、百三十九円台となった。
物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。
最近の金融情勢をみると、短期金利は、五月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、五月はやや低下した。株式相場は、五月はおおむね横ばいで推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、四月は前年同月比三・五%増となった。
海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、九七年十〜十二月期前期比年率三・七%増の後、九八年一〜三月期は同四・八%増(速報値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。五月の長期金利(三十年物国債)は、やや上下したが、総じて低下した。五月の株価(ダウ平均)は、やや上下し、五月十三日には最高値を更新したが、月末にかけて下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定基調である。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、安定している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、拡大している。
国際金融市場の五月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて増価した。
国際商品市況の五月の動きをみると、弱含みでの推移となった。五月の原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意の思惑に左右されたが、実行性が問われ、全体としてやや強含みで推移した。
我が国経済の最近の動向をみると、輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ頭打ちとなっている。設備投資は、弱含んでいる。個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。住宅建設は、おおむね横ばいで推移してきたものの、足元下落するなど依然その水準は低い。このように最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、生産は減少傾向にある。雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が既往最高の四%台となるなど更に厳しさが増している。また、民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。昨年末以来の経済の先行きに対する著しい不透明感には落ち着く兆しもみられるものの、最終需要の停滞が生産や雇用等実体経済全体に及ぼす影響が強まっており、景気は停滞し、一層厳しさを増している。
このような厳しい経済の現況に対応し、政府は、四月二十四日に決定した総事業費十六兆円超の過去最大規模の「総合経済対策」の着実な実施を図ることとする。また、現下の雇用情勢に対応するため、六月二日、産業構造転換・雇用対策本部を開催し、当面の対処方針を取りまとめた。
1 国内需要
―個人消費は低調に推移―
個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。
家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で三月五・七%減の後、四月は二・一%減(前月比三・五%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比〇・五%減、勤労者以外の世帯では同五・一%減となった。形態別にみると、非耐久財は増加し、サービス等は減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比一・六%減、勤労者世帯では同〇・二%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で一月六・九%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で三月一三・六%減の後、四月は〇・五%減(前月比二・一%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で三月一八・四%減の後、四月八・一%増となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で三月一〇・七%減の後、四月一・八%増となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で五月は〇・四%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で四月は〇・六%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、三月は前年同月比で国内旅行が二・八%減、海外旅行は一四・八%減となった。
賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で三月〇・六%増の後、四月(速報)は〇・五%減(事業所規模三十人以上では同〇・二%減)となり、うち所定外給与は、四月(速報)は同八・二%減(事業所規模三十人以上では同八・七%減)となった。実質賃金は、前年同月比で三月一・七%減の後、四月(速報)は〇・七%減(事業所規模三十人以上では同〇・五%減)となった。
住宅建設は、おおむね横ばいで推移してきたものの、足元下落するなど依然その水準は低い。
新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で三月一・三%減(前年同月比一一・九%減)となった後、四月は五・七%減(前年同月比一六・一%減)の十万三千戸(年率百二十四万戸)となった。四月の着工床面積(季節調整値)は、前月比六・八%減(前年同月比一六・二%減)となった。四月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比五・八%減(前年同月比一〇・四%減)、貸家は同〇・一%増(同一四・四%減)、分譲住宅は同一〇・四%減(同二六・九%減)となっている。
設備投資は、弱含んでいる。
当庁「法人企業動向調査」(十年三月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で九年十〜十二月期(実績)二・八%減(うち製造業四・四%増、非製造業五・八%減)の後、十年一〜三月期(実績見込み)は三・〇%減(同一・四%減、同四・五%減)となっている。また、十年四〜六月期(修正計画)は、前期比で一・五%減(うち製造業〇・二%減、非製造業二・三%減)、十年七〜九月期(計画)は一・六%増(同〇・四%増、同二・三%増)と見込まれている。
なお、年度計画では、前年度比で九年度(実績見込み)〇・九%増(うち製造業八・〇%増、非製造業二・六%減)の後、十年度(計画)は四・五%減(同七・一%減、同三・〇%減)となっている。
先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で二月は一一・三%減(前年同月比一七・九%減)の後、三月は九・五%増(同一・四%増)となり、全体として弱含みで推移している。
なお、当庁「機械受注調査(見通し)」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、四〜六月期(見通し)は前期比で八・一%減(前年同期比一四・六%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、このところおおむね横ばいで推移してきたが、四月は前月比二三・五%減(前年同月比一一・三%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比三三・一%減(前年同月比二六・〇%減)、非製造業は同二一・一%減(同六・七%減)となった。
公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で二月一一・八%増の後、三月は一・八%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で三月五・八%減の後、四月は二・七%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で三月六・〇%減の後、四月は三八・四%減となった。
2 生産雇用
―更に厳しさが増す雇用情勢―
鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は高水準にあり、生産・出荷は、減少傾向にある。
鉱工業生産は、前月比で三月二・三%減の後、四月(速報)は、輸送機械、化学等が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、一・一%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で五月は機械、化学等により〇・四%増の後、六月は化学、機械等により一・五%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で三月一・四%減の後、四月(速報)は、非耐久消費財、耐久消費財が増加したものの、建設財、生産財等が減少したことから、二・八%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で三月〇・四%減の後、四月(速報)は、鉄鋼、輸送機械等が減少したものの、電気機械、石油・石炭製品等が増加したことから、〇・五%増となった。また、四月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一一六・三と前月を三・四ポイント上回った。
主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は四月は減少し、在庫は増加した。一般機械では、生産は四月は減少し、在庫は三か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は三か月連続で減少し、在庫は二か月連続で減少した。
第三次産業活動の動向をみると、一〜三月期は前期比〇・四%減と2四半期連続で減少し、低調に推移している。
雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が既往最高の四%台となるなど更に厳しさが増している。
労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、三月〇・五八倍の後、四月〇・五五倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、三月〇・九二倍の後、四月〇・九六倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、四月は前年同月比〇・六%減(前年同月差三十二万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、三月前年同月比〇・五%増(季節調整済前月比〇・一%減)の後、四月(速報)は同〇・三%増(同〇・二%減)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・二%減)、産業別には製造業では同〇・八%減となった。四月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差十七万人増の二百八十一万人、完全失業率(同)は、三月三・九%の後、四月四・一%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では三月前年同月比一三・九%減(季節調整済前月比三・四%減)の後、四月(速報)は同一七・一%減(同二・六%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一七・一%減)。
また、労働省「労働経済動向調査」(五月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施する事業所割合は、一〜三月期は製造業を中心に急上昇した。
企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、一層厳しさが増している。
大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(三月調査、季節調整値)でみると、売上高、経常利益の見通し(ともに「増加」−「減少」)は、十年四〜六月期は「減少」超幅が拡大した。また、企業経営者の景気見通し(業界景気の見通し、「上昇」−「下降」)は十年四〜六月期は「下降」超幅が拡大した。
また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(三月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、十年一〜三月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、十年一〜三月期は「悪化」超幅が拡大した。
企業倒産の状況をみると、件数は、このところ前年の水準を大きく上回る傾向にある。
銀行取引停止処分者件数は、四月は一千二百三十八件で前年同月比二六・三%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で三三・二%、卸売業で二五・四%の増加となった。
3 国際収支
―輸出はこのところ頭打ち―
輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ頭打ちとなっている。
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で三月四・四%減の後、四月は四・五%増(前年同月比一・三%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が減少した。同じく地域別にみると、アジア、中南米等が減少した。
輸入は、やや弱含んでいる。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で三月六・一%増の後、四月は四・一%減(前年同月比四・〇%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)、鉱物性燃料等は減少した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が減少した。
通関収支差(季節調整値)は、三月に九千五億円の黒字の後、四月は一兆二千二百七十一億円の黒字となった。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸入物価の下落もあって、増加傾向にある。
三月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が縮小し、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、七千四百七十五億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小したことに加え、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅も拡大したため、その黒字幅は縮小し、一兆一千百六十億円となった。投資収支(原数値)は、一兆六千百九十三億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、二兆十六億円の赤字となった。
五月末の外貨準備高は、前月比十二億ドル増加して二千七十億ドルとなった。
外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、五月は、月初の百三十三円台から下落し、百三十九円台となった。一方、対マルク相場(インターバンク十七時時点)は、五月は、月初の七十四円台から下落し、月末はおおむね七十七円台で推移した。
4 物 価
―国内卸売物価は弱含みで推移―
国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。
四月の国内卸売物価は、加工食品(炭酸飲料)等が上昇したものの、電気機器(ルームエアコン)等が下落したことから、前月比〇・三%の下落(前年同月比二・三%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比一・二%の上昇(前年同月比〇・八%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比〇・四%の上昇(前年同月比八・〇%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比保合い(前年同月比二・七%の下落)となった。
五月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬、中旬ともに保合い、輸出物価は上旬が〇・七%の上昇、中旬が〇・六%の上昇、輸入物価は上旬が〇・六%の上昇、中旬が〇・五%の上昇、総合卸売物価は上旬が〇・一%の上昇、中旬が〇・二%の上昇となっている。
企業向けサービス価格は、四月は前年同月比〇・一%の下落(前月比保合い)となった。
商品市況(月末対比)は「その他」等は上昇したものの、鋼材等の下落により五月は下落した。五月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は上昇したものの、厚鋼板等が下落した。
消費者物価は、安定している。
全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で三月一・八%の上昇の後、四月は消費税要因のはく落等により〇・二%の上昇(前月比〇・三%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で三月二・二%の上昇の後、四月は〇・四%の上昇(前月比〇・二%の上昇)となった。
東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で四月〇・五%の上昇の後、五月(中旬速報値)は持家の帰属家賃の上昇幅の縮小等により〇・三%の上昇(前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で四月〇・七%の上昇の後、五月(中旬速報値)は〇・八%の上昇(前月比〇・四%の上昇)となった。
5 金融財政
―長期金利はやや低下―
最近の金融情勢をみると、短期金利は、五月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、五月はやや低下した。株式相場は、五月はおおむね横ばいで推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、四月は前年同月比三・五%増となった。
短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、五月はおおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、五月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。
公社債市場をみると、国債流通利回りは、五月はやや低下した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は五月二十五日に一・二一〇%となり、史上最低を更新した。
国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、四月は短期は〇・〇一三%低下し、長期は〇・一四五%上昇したことから、総合では前月比で〇・〇〇九%低下し一・八六六%となった。
マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、四月(速報)は三・五%増となった。また、広義流動性でみると、四月(速報)は二・四%増となった。
企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、四月(速報)は前年同月比二・五%減となった。五月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、五月の国内公募事業債の起債実績は一兆二千六十億円となった。
民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。
株式市場をみると、日経平均株価は、五月はおおむね横ばいで推移した。
6 海外経済
―アジア経済、総じて減速―
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、九七年十〜十二月期前期比年率三・七%増の後、九八年一〜三月期は同四・八%増(速報値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は三月前月差二万四千人減の後、四月は同二十六万二千人増となった。失業率は四月四・三%となった。物価は安定している。四月の消費者物価は前月比〇・二%の上昇、四月の生産者物価(完成財総合)は同〇・二%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。五月の長期金利(三十年物国債)は、やや上下したが、総じて低下した。五月の株価(ダウ平均)は、やや上下し、五月十三日には最高値を更新したが、月末にかけて下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。一〜三月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率三・九%増、フランス同二・三%増、イギリス同二・〇%増となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ三月前月比〇・八%増、フランス三月同一・八%増、イギリス三月同〇・七%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している(四月の失業率は、ドイツ一一・四%、フランス一一・九%、イギリス四・八%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定基調である(四月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比一・四%、フランス同一・〇%、イギリス同四・〇%)。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、安定している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、拡大している。
国際金融市場の五月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)五月二十九日一一二・四、四月末比一・九%の増価)。内訳をみると、五月二十九日現在、対円では四月末比四・六%増価、対マルクでは同〇・六%減価した。
国際商品市況の五月の動きをみると、弱含みでの推移となった。五月の原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意の思惑に左右されたが、実行性が問われ、全体としてやや強含みで推移した。
|