官報資料版 平成1022





厚生白書のあらまし


少子社会を考える

―子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会を―

厚 生 省


T 平成十年版厚生白書の主題は「少子社会を考える」

 平成十年版厚生白書が去る六月十二日に閣議報告された。今回の白書は「少子社会を考える」を主題に取り上げている。
 二十世紀後半、日本は豊かさを目指して走り続けてきたが、その間、出生率は下がり続けた。日本は、結婚や子育てに「夢」を持てない社会になっているのではないかと考えられる。
 また、二十一世紀の第2四半世紀(人口二割減少、高齢化率三割)を見通し、そこに向けてどのような社会をつくろうとするのかが、今、問われている。ここで、大切なのは、人口が減少し続ける二十一世紀の日本に、「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会」をどのようにつくっていくか、ではないかと考えられる。
 少子化の要因への政策的対応の中核は、固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正と、育児と仕事の両立に向けた子育て支援であり、これらは着実に推進されることが必要である。と同時に、少子化の要因を生んでいる社会状況を更に掘り下げて考えてみれば、出生率の低下は、二十世紀後半の経済成長の過程で進行した雇用者化、居住空間の郊外化などがいわば行き着くところまで行き着き、多くの国民の生活や社会の形が画一的・固定的になり過ぎた結果、結婚や子育ての魅力がなくなり、その負担感が増してきたところに、根本原因があるのではないかと考えられる。
 とすれば、出生率の回復を目指し「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会」をつくる取組みとは、いろいろな役割を持つ自立した個人が、相互に結びつき、支え合い、「家庭、地域、職場、学校」といった生活に深く関わる場に多様な形で関わっていけるような社会をつくることではないかと考えられる。
 言い換えれば、現在、社会の至るところにみられ始めた多様化・流動化の動きを活かし、個人の自立を基本にした「多様性と連帯の社会」をつくることが求められるのではないかと考えられる。
 このため、今回の白書では、少子化が進行した二十世紀後半、特に最後の四半世紀を振り返るとともに、「子どもを産み育てることに夢を持てる社会」を形づくる自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族、自立した個人が連帯し支え合える地域、多様性のある生き方と調和する職場や学校の姿を展望してみることをねらいとした。

U 平成十年版厚生白書の特徴

 今回の厚生白書は、次の五つの特徴を持っている。
 第一に、「人口問題に関する調査研究」「人口政策に関する企画調整」という観点から初めてまとめた厚生白書であり、また、少子社会について正面から考えた政府としての初めての白書であるということである。
 第二に、昨年十月の人口問題審議会報告書を踏まえ、少子化を生んでいる社会状況を更に深く掘り下げ、家族、地域、職場、学校という生活に深く関わる場について幅広く分析し、将来を展望したものであるということである。
 第三に、国民的議論を行っていただくための問題提起型白書であるということである。これは少子社会について、厚生省としての説明責任を果たすものである。
 第四に、事実のみでなく、問題提起のため、あえて仮説を記述し、民間の調査研究なども含め、関連の資料や文献をできるだけ幅広く収集掲載した(図表二百五十六点、昨年版百四十三点の約一・八倍)ことである。
 第五に、実際の、多様な家族の形、地域や職場、学校における新たな取組みに関する具体的事例を囲み(コラム)として、豊富に紹介したことである。

V 平成十年版厚生白書の概要

<第一部> 少子社会を考える

 厚生白書の第一部は、毎年異なる話題について、重点的な解説を行っている部分である。今回は「少子社会を考える」を主題に、@人口減少社会の到来と少子化への対応、A自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族、B自立した個人が連帯し支え合える地域、C多様な生き方と調和する職場や学校、D子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会について記述している。

<第一章> 人口減少社会の到来と少子化への対応

 第一章では、人口減少社会の到来、少子化の要因とそれを巡る社会状況、少子化の要因等への対応について記述している。
 一九九六(平成八)年の合計特殊出生率は一・四三である。二十一世紀初頭、我が国の人口は減少に転じ、以後二十一世紀を通して減少を続け、二一〇〇(平成百十二)年には約六千七百万人、老年人口割合は二十一世紀半ばまで上昇を続け、二〇五〇(平成六十二)年には三二・三%まで上昇すると見込まれている(第1図参照)。
 少子化がもたらす経済面の影響として、労働力人口の減少、経済成長を制約するおそれ、現役世代の負担の増大、そして、現役世代の手取り所得の低迷が予想される。
 また、少子化がもたらす社会面の影響として、家族の形態の多様化が予想されるとともに、子どもの健全な成長への影響、住民に対する基礎的なサービスの提供等について懸念される。
 少子化がもたらすマイナスの影響をできるだけ少なくするために、人口成長を前提として組み立てられてきたこれまでの社会の様々な枠組みを、新たな時代に適合したものへと早急に組み換えることが求められている。
 しかし、第二次ベビーブームの団塊ジュニア世代が後期高齢期に入る二十一世紀半ばを視野に入れると、人口減少社会の姿は、相当深刻な状況が予想されるといわざるを得ない。
 戦後の出生率安定期(一九五〇年代半ば〜一九七〇年代半ば)は、総人口の増加、経済の高度成長、雇用者化、日本型雇用慣行の普及、郊外住宅地の形成、核家族化・専業主婦化の進行、高等教育の普遍化など、社会が一定の方向へ急激に変化した時代であった。
 一九七〇年代半ばごろの日本は、「男は仕事、女は家庭」という男女の固定的役割分業が最も徹底された社会だった(第2図参照)。
 この時期の若い女性にとって、サラリーマンと結婚し、煩わしい近所付き合いもなく、仕えるべき舅・姑もいない、郊外のこぎれいな住宅団地での専業主婦生活は夢であった。しかし、夢の郊外住宅団地での専業主婦生活の現実は、決してバラ色ではなく、子どもが小さい間は、アパートの一室で育児書を片手に一日中一人で乳幼児と向き合うという状況が、妻たちの孤独感、負担感を生み、子どもが学校に上がるようになると、子どもの教育が、妻の時間と関心を受け止めるようになった。そして、子育て終了後の四十歳代後半の妻たちは、役割を失い、喪失感に悩むようになった。役割分業型家庭生活の中で、女性には漠たる不満が生まれ、それが一つには既婚女性のパート(非常勤)就労、カルチャーセンターや生協活動などにつながり、もう一つには未婚女性たちの結婚先延ばし、晩婚化の進行につながったのではないかと考えられる。
 このように、団塊の世代に続く昭和三十年代生まれの女性たちにとって、郊外専業主婦生活は、それだけでは「夢」ではあり得なくなった。生活のために結婚しなければならないという制約から解放され、「付加価値のある結婚生活」をさせてくれる相手をじっくり選ぶことが可能となったことが、晩婚化につながっていったと考えられる。
 晩婚化が進んでいった一九八〇年代後半以降、雇用者化、居住空間の郊外化などが更に進行した。雇用者化が進んだ職場においては、家庭よりも仕事を優先させることを求める企業風土が維持され、夫の子育て支援は期待できない状況にあった。また、生活空間の郊外化の中で、地域社会は子育て支援の力に乏しく、兄弟姉妹による子育ての相互支援機能も失われ、子育ての負担が母親に集中してかかる状況は一層進行していた。仕事と家事・育児の両立を志向する女性には極めて負担が重く、専業主婦にとっても一人で終日子育てに追われ、自分の時間を持つことが困難な「優雅」なものではないという結婚の現実があった。
 さらに、学(校)歴偏重社会は、母親にも大きな負担をもたらした。昭和四十年代生まれの女性たちにとって、結婚は、夢や希望の感じられるものではなくなってきた。豊かさを享受してきたこの世代にとって、「豊かで居心地の良い結婚生活」を確信できない結婚にはなかなか踏み切れない。この世代は、「結婚は個人の自由」といいながら、「いずれは結婚したい」という気持ち自体はあるが、結婚に対し、積極的な夢や希望を見いだせないまま、自由気ままな未婚の「今」を楽しみ、結婚を先送りすることで、晩婚化が進んでいるのではないかと考えられる。
 人口減少社会の深刻さを軽減するために出生率回復を目指した取組みをするかどうかは、最終的には国民の選択である。そして、出生率回復を目指す取組みとは、結婚や子育てに個人が夢を持てる社会をつくることにほかならない。このような取組みにより、今後、出生率が回復するとしても、それが生産労働力人口として反映されるのは、おおむね二十一世紀の第2四半世紀からである。
 少子化への対応に取り組むのならば、その対応は今から始めなければならない。ただし、出生率回復を目指した取組みをするとしても、妊娠・出産に関する個人の自己決定権を制約したり、個人の生き方の多様性を損ねてはならない(第3図参照)。
 男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会とは、多様な価値観を持つ男女が、それぞれの生き方を尊重し合い、従来の固定的な役割分業にとらわれることなく、共に子育てに責任を持ちながらその喜びも分かち合うような新しい家族像を基本に据え、そのような家庭を形成・運営する個人を、地域、職場、学校、更には社会全体で支援していくような社会なのではないかと考えられる。そのためには、画一性・固定性から多様性・流動性へと大きく移行し始めた変化や改革の動きを、このような社会をつくる方向へと活かしていくことが大切なのではないかと考えられる。
 このような観点から、次章以下では、幅広く、家族、地域、職場、学校の新たな姿を、近年の変化や改革の動きも踏まえ、展望している。

<第二章> 自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族

 第二章では、近年の家族の変化、結婚、妊娠・出産、夫婦、親子、家族と個人、家族の将来像について記述している。
 夫婦と子どもからなる核家族世帯は、今や家族構成の典型ではなくなりつつある。一方、単独世帯は一貫して増加し続け、四世帯に一世帯は単独世帯である。また、今日、家族に求める役割として情緒機能が重視されてきており、「一番大切に思うもの」は「家族」である。
 結婚については、未婚男女の約九割が「いずれ結婚するつもり」としているものの、平均初婚年齢は上昇し続け、適齢期に対する意識も薄れてきている。また、夫婦同姓の歴史は意外に浅く、百年足らずのことであり、選択的夫婦別姓の導入については、これから結婚を控えた若い年代層で改正容認派が多くなっている。
 妊娠・出産については、十代の中絶が増加している状況は、避妊を含めた性に関する知識の普及の必要性を、既婚女性の中絶が多い状況は、確実な避妊方法の普及の必要性を強く浮かび上がらせている。また、避妊に関する知識の普及や性に関する相談を含め、妊娠・出産に関する教育や相談体制の充実が求められるとともに、リプロダクティヴヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)の概念を踏まえた女性の生涯を通じた健康支援と自己決定の尊重が求められている。
 夫婦については、夫婦の約半数は共働きであるが、子どもの年齢が低い層では片働きが多く、夫の所得が高くなるほど、妻の有業率は下がる。また、妻が常勤(フルタイム)就業で、夫と均等に家計費を負担している場合でも、家事は妻が中心となっており、家庭の日常的な細々とした家計管理責任は、夫と均等に家計費を負担している場合でも主に妻が担っている。夫婦の就業分担、家計費分担が進む中で、決して負担の小さくない家計の管理責任のあり方についても、考えていく必要があるのではないかと考えられる。
 育児についても母親がその大半を担っており、「夫は仕事、妻は家事も育児も仕事も」といった女性が二重、三重に負担を負う状況となっている。戦後の高度経済成長期を通じて、居住空間の郊外化、核家族化が進む中で、母親が一人で子育てに専念することが一般化し、子育てにおける「母性」の果たす役割が過度に強調され、絶対視される中で、「母親は子育てに専念するもの、すべきもの」という社会的規範が広く浸透した。しかし、妊娠・出産・哺乳が母親(女性)に固有の能力であるとしても、例えば、おむつを交換する、ごはんを食べさせる、本を読んで聞かせる、お風呂に入れる、寝かせつけるといった育児の大半は、父親(男性)によっても遂行が可能である(第1表参照)。
 子育てについては専業主婦により高い不安傾向がある。家に閉じこもって、終日子育てに専念する主婦は、子育てについて周囲の支援も受けられず、孤独感の中で、子ども中心の生活を強いられ、自分の時間が持てないなど、ストレスをためやすいためではないかと考えられる。母親が子育てに重圧やストレスを感じながら子どもに接することは、子どもの心身の健全な発達に好ましくないことはいうまでもなく、児童虐待という事態に至ることもある。
 母親と子どもが過度に密着することの弊害もいろいろと指摘されるようになってきている。母親の育児不安を解消するには、できる限り多くの人が子育てに関わる中で、母親自身も過度の子どもとの密着関係を見直すことが必要である。
 これらのことを踏まえれば、三歳児神話(子どもは三歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす)には、少なくとも合理的な根拠は認められない。すなわち、乳幼児期という人生の初期段階は、人間(他者)に対する基本的信頼感を形成する大事な時期であるが、この信頼感は、乳幼児期に母親が常に子どもの側にいなければ形成されないというものではなく、両親が親として子育て責任を果たしていく中で、保育所や地域社会などの支えも受けながら、多くの手と愛情の中で子どもを育むことができれば、それは母親が一人で孤立感の中で子育てするよりも、子どもの健全な発達にとって望ましい、ともいえる。大切なのは育児者によって注がれる愛情の質である。
 今後、子育てについての過剰な期待や責任から、母親を解放していくことが望まれる。そうすることが、結果的には、母親が心にゆとりを持って豊かな愛情で子育てに接することにつながり、よりよい母子関係が築かれることにつながると考えられる。
 父親が子どもと一緒に過ごす時間は短く、存在感も希薄であり、父親の育児参画意識は高まってきてはいるが、仕事が優先されている。今後、子育てに父親が積極的に参画、分担することによって、母親の子育て負担を軽減していくことが望まれる。これは、単に母親の負担を軽減する、ということではなく、「親」として本来果たすべき子育ての役割を担う、ということであり、そのことを通じて、子どもの心身の健全な発達への期待とともに、父親自身が子育ての喜びを味わう機会を取り戻すということである。
 親には、子どもをあるがままに肯定し受容する優しさ、包容性(=母性原理)と子どもに理念や社会の規則を教える厳しさ、規範性(=父性原理)を持って子育てすることが求められる。近時、「父性原理」が欠如しがちであることが、子どもの成長に悪影響を及ぼしているとの指摘がなされ、子育てにおける父親の役割の重要性が叫ばれている。父親も母親もこの両方の原理を持ち得るが、夫婦が共に子育てを担う中で、親として求められる優しさと厳しさという二つの態度を持って子どもと接することが求められる。
 家庭の中で、子どもは勉強してさえいれば後は甘やかされ、社会生活を営む上で当然必要とされるべきことなどを教え込まれず、親から本気で叱られた経験に乏しいことが、叱られるとすぐに「キレてしまう」子どもたちをつくる一因になっているのではないかと考えられる。家庭においては、基本的な生活習慣、善悪の判断能力などのしつけについては、いたずらに学校に依存しようとせず、家庭教育の最も重要な役割のひとつとして、その役割を果たしていくことが期待される。
 親と同居し、親に依存する期間は長期化している。自立しない生き方を許容する風潮は、独立した一個の人間として自らの生き方に責任や希望を持つことのできない人間ばかりをつくり出し、そのような社会に希望は持てないのではないか、と問題視する向きもあるが、他方、個人の生き方の選択の問題であり、親と子の双方が満足であれば、望ましいとの意見もある。
 いずれにせよ、少子・高齢化の進展という社会の変革期にあって、これからの若い世代には、好むと好まざるとにかかわらず「自立」が問われ、結婚前であっても早期に親から自立して生きていく必要に迫られていくのではないかと考えられる。
 家庭内暴力は、母親への家事・育児責任の過度の集中、子どもに対する学業成績による画一的評価など、家族内の特定の者への行き過ぎた役割・期待の集中や、家族間の対等でない関係が招いている側面がある。家族内の特定の個人への過度の負担集中、依存を改め、個人ができる限り自立しつつ、家事・育児などの家族内での責任をバランスよく担うことが、家庭内暴力の予防につながるのではないかと考えられる。
 これまでの被用者保険制度(健康保険制度、厚生年金制度)は、基本的に世帯単位で設計がなされてきた。このような設計は、専業主婦世帯が一般的であったという実態や、家族のあり方に対する社会全体の評価や見方を踏まえて構築されたものであった。社会保障制度の個人単位化には様々な問題があるが、女性の就業が時代の要請となり、また、生き方の多様化が進む中で、世帯単位の色彩を強く持った現行の制度の設計が様々な問題を抱えていることには間違いなく、今後引き続き国民全体でそのあり方についての議論を深めていくことが必要である。
 休日のない家事を担う妻(母親)にとって、家庭は安らぎの場であるとはいえなくなっているのではないかと考えられる。そして、女性が社会進出する一方で、女性の家庭内での責任が何ら軽減されないまま、「男は仕事、女は仕事も家庭も」という新たな男女の役割分業は、女性に一層の負担感をもたらしているのではないかと考えられる。
 一方、行き過ぎた役割分業の下で、家庭を顧みず仕事に没頭する夫(父親)、受験競争に忙しい子どもにとっても、家庭は身の回りの世話を受けるだけの場所になってしまい、お互いの交流のない潤いのないものとなってしまっているのではないかと考えられる。
 個人が家族を得たいという欲求と、仕事や学習、地域参加など様々な活動をしたいという個人としての欲求の実現とを両立させるためには、個人それぞれが自立し、尊重し合い、お互いを思いやるとともに、お互いに過剰な期待や責任を負わせることなく、家族としての責任を分担し合い、支え合う態度が求められる。
 これからの家族を支えるためには、男女が共に家族内での責任を果たすとともに、その喜びを分かち合い、そして就業している者にあっては、職業上の責任との両立を可能とする男女共同参画社会の実現が必要である。また、社会の仕組みを、自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族像に適合するものに改めていく必要に迫られている。

<第三章> 自立した個人が連帯し支え合える地域

 第三章では、地域構造の変化、都市部の地域社会、農村部の地域社会、住民参加と分権型社会、地域の子育て支援について記述している。
 一九五〇年代後半から一九七〇年代前半にかけて、都市の郊外に大規模な住宅地が次々と開発されていった。その郊外住宅地域の姿は、年齢も家族構成も生活様式も極めて似通った住民から成り立ち、人間関係は希薄で、地域社会の共同体意識は低い。地域社会への参加は、専業主婦が中心になっており、雇用者は参加しにくい状況で、地域社会は多様性や厚みがない。
 都市部において、地域社会に共同性(共同体としての意識と支え合い)を取り戻すには、職住を分離するのではなく、できるだけ生活圏にあったまちづくりを進めることが求められる。職住を近接させることによって、地域を、単に寝るためだけに帰るまち(ベッドタウン)ではなく、仕事をし、生活し、子どもを育てるところとする人々が増え、そこへの帰属意識、参加意志が高まることが期待される。このことは、地域社会を多様性ある豊かな厚みのあるものとしていくと考えられる。
 一方、都市中心部でも、居住人口の減少、家内工業や小規模商店の閉鎖などにより、地域社会の共同体意識が低下した。空洞化が進む中心市街地の活性化が必要とされており、実際に、中心市街地の再生の試みも進められている。
 農山村では、過疎化、高齢化が進展する中、伝統的な地域共同体、親族共同体が残存している。また、画一的な個人の生き方や家族のあり方を求める地域風土が根強い。農村部における「結婚難」は、子育ての負担よりも、多様な生き方、家族のあり方を受け入れず、画一的な「農家の嫁」であることを求める地域風土に原因があるのではないかと考えられる。
 「結婚難」のため、一九八〇年代半ばごろから農村部においてアジア地域などの女性との国際結婚が急速に広がり始めた。農村部における国際結婚が一般的に問題があるというわけではないが、日本の若年女性には受け入れられにくい家庭や地域の人間関係を改善することなく、事情に疎い他国の女性に替わりを求めるような形での結婚のあり方は、見直されるべき面があるのではないかと考えられる。
 若年女性が憧れるような農村を実現するため、家庭や地域の人間関係や習慣のあり方を改善することが求められている。また、近年、都市をはじめとした他地域との広域連携や交流が様々に進められる中で、多様な価値観や生き方を受け入れる風土が地域に形成され始めているが、今後、異なる生活の仕方を受け入れ尊重する新しい地域風土の形成が更に進んでいくことが求められる。
 住民参加については、雇用者が急速に増加してきた中で、雇用者には、職場に対する強い帰属意識や通勤時間の長さなどから、地域社会の様々な活動に積極的に参加するための時間と意欲に乏しい人が多いという現状がある。しかし、徐々にではあるが、雇用者の地域活動への参加も始まっている。
 民間団体の非営利活動では、例えば住民参加型在宅福祉サービスにみられるように、公的サービスの提供者と受益者、営利事業者と顧客という関係ではなく、住民が同じ住民としての立場で一緒に取り組むという水平の関係で活動を展開できることが、人間の優しさや創造性を誘い出すといわれている。このような民間団体の非営利活動のあり方は、自立した個人が連帯し支え合える新しい共同性(共同体としての意識と支え合い)を地域に生み出すものとして期待される。また、民間非営利団体の多元主義的な活動は、個人の多様な生き方、家族の多様なあり方を尊重する形での新たな共同性を地域社会に生み出すものとして、大きく期待される。
 地域社会の子育て支援力が増すためには、何よりもまず地域住民が自らの住む地域社会への関心を高めることが重要である。そのため、住民サービスを直接に提供する地方自治体へ住民が関わっていくことが必要である。今まで以上に住民にとって参加する意欲の湧く自治体にするという意味でも、地域のことは地域で決められる分権型社会への転換が求められる。特に、住民に最も近い存在である市町村への権限委譲の推進が重要である。
 就学前の保育サービスの中核は、認可保育所である。サービスの多様化は進んでいるものの、認可保育所以外のサービスは少ない。認可外保育施設は、認可保育所が応えていない多様な需要に対応しているが、質のばらつきが大きい。認可保育所以外の保育サービスは、基本的に利用者の負担により賄われている。
 今後、認可保育所の保育サービスの充実や多様な民間主体の活用によるサービスの多様化が求められる。また、利用者の保育需要が多様化する中で、地域による子育て支援の一層の展開を図るためには、効率性、公平性の観点も踏まえ、保育サービスに対する公的助成がどのようにあるべきかについて、検討することが必要である。
 最近の少年非行の増加・凶悪化の背景としては、社会的環境のみならず、家庭における子育てのあり方も要因と考えられる。少年本人に対する相談支援にとどまらず、関係機関が連携しながら、親をはじめとする家庭に対して総合的な支援を行うことも重要である。相談支援機関においては、単に相談に来るのを待ち構えているばかりでなく、地域に根ざした積極的な子育て相談の実施や情報の提供を行うとともに、相互に十分に連携を図るなど、総合的な相談体制を整備することが必要である。

<第四章> 多様な生き方と調和する職場や学校

 第四章では、職場、学校とその他の教育の場について記述している。

<第一節 職 場>
 就業構造については、就業者の八割以上は雇用者であるが、雇用者の年齢構成は高齢化している。また、失業率は近年上昇している。背景となる経済社会については、経済の基調は低成長に変化し、従来のような高成長は期待し難い。また、若年労働力が減少し、今後は労働力人口も減少していく。さらに、国際競争が本格化し、情報通信が高度化している。
 日本的雇用慣行(一般に、長期雇用を前提に、新規学卒者一括採用、企業内訓練、年功序列型賃金等により特徴付けられる雇用慣行)は、成長人口、高度成長経済という条件の下、企業・雇用者の双方に利点のあるものとして、戦後の日本の企業に広く普及し定着している。
 日本的雇用慣行は、雇用の長期安定をもたらすという利点がある一方、職場での強い一体感、職場の仕事や人間関係を優先する企業風土をもたらし、日本的雇用慣行の基幹労働力である男性雇用者から、家庭や地域での活動に参加する時間的・心理的ゆとりを失わせた。その結果、女性に子育て負担が集中し、地域社会の人間関係が希薄になるなどの問題が生じているのではないかと考えられる。
 日本的雇用慣行の下で、女性にとって、結婚や子育てのための離職が、その間のみでなく復職後も含めた収入減少につながっている。こうしたことが、未婚率上昇の要因の一つとなっているのではないかと考えられる。
 このように少子化をもたらす要因に関わる諸問題を生んでいるのではないか、と考えられる日本的雇用慣行について、雇用の安定を保障しつつ、自立した個人の生き方とどう調和させるかという観点から問い直す必要があるのではないかと考えられる。
 長期雇用、年功序列という慣行の下、同期横並びで、比較的時間をかけて選抜していく雇用管理が、競争をより長期化させている面があり、こうしたことが、家庭より職場の都合を優先させる企業風土を生み出していると指摘されている。さらに、個人を、個人の業績中心というより、勤務態度や意欲に重点を置いて評価する慣行が、定時を過ぎても帰りにくかったり、有給休暇を取りづらくしたりしている職場の雰囲気を生んでいるとの指摘もある。
 追いつけ型経済の終焉や国際競争の本格化により、集団に協調するだけでなく、個々人の業務遂行における自立性や自己完結性が求められる。
 また、このような状況の下で、職場の都合を最優先する意欲、態度を過度に評価するような雇用管理のあり方については、見直すべき時期である。めりはりのある効率的な働き方を進めるなど、多様な取組みを通じて、職場優先の企業風土を是正することが求められている。
 新規学卒者の一括採用の偏重は、学(校)歴偏重につながりやすく、受験競争を激化させるひとつの誘因となっていると考えられる。また、中途採用枠が十分でないことなどにより、子育てにより、一旦職を離れた後、再就職する場合に、処遇の低い職にしか就けないといった問題も生じている。今後、新規学卒者に偏った採用を見直し、採用時の年齢制限を撤廃し、中途採用枠を拡大していくことが求められる。
 年功序列型賃金制度は、雇用者にとって長期的な生活設計が立てやすいという利点はあるが、転職や子育てのための就業中断の費用を過大にしており、企業も能力のある人材を外部から得にくくしている。また、女性が継続就業しにくい企業風土を生んだり、企業にとって、高齢者の就業の費用を過大にしたりしている面があり、それが女性の長期就業や高齢者の継続就業を阻んでいるというような問題も生じている。年功序列型賃金制度については、年齢による賃金勾配をなだらかにする、業績評価の比重を高めるなど、見直しの必要性が増しているとみられる。
 日本的雇用慣行は、「男は仕事、女は家事・育児」という男女の役割分業に支えられていたものであったため、女性雇用者は排除されがちである。結婚退職や出産退職の慣行など、女性が継続就業しにくい企業風土を生んでいる状況などがみられる(第4図参照)。
 パートタイム労働者は、比較的中高齢の女性に多い。仕事内容において正規従業員と変わらぬ働きをしているパートタイム労働者も増加しているが、労働条件、雇用管理には、改善すべき課題が多々みられる。今後、職務内容や能力に応じた処遇・労働条件の改善が期待される。
 同質な男性中心の職場では、異なった価値観、生活を持ち、それに応じた働き方をする者に配慮し、共に仕事を遂行する風土が形成されておらず、それが男性の間に、女性を同僚として尊重しない意識や、性的な関心・欲求の対象として見る意識を生じさせやすくしている。女性に対する性的嫌がらせ(セクシュアル・ハラスメント)は、このような環境で起きやすいといわれている。
 近年、パートタイム労働、派遣のほか、専門職、地域限定職、短時間勤務正規職など、就業形態が多様化している。就業コースの多様化は、個人の希望に応じて働ける選択肢が増えるという意味において望ましい。また、今後は、就業の内容に応じて適切に処遇されることと、一旦選んだ就業形態が、個人の意欲と能力と生活環境に応じて途中で柔軟に変更できることが重要である。
 就業コースの多様化、変更の柔軟化は、男性中心の職場の風土を変え、暗黙の前提を必ずしも共有していない者たちとも一緒に、円滑に仕事を進めていけるような透明性の高い職場の形成につながると考えられる。その結果、仕事と家庭や地域での活動とも両立できる、個人を尊重する職場風土の形成につながると期待される。

<第二節 学校とその他の教育の場>
 高等学校・大学等への進学率が上昇する一方、学(校)歴偏重の社会的風潮などの下で、過度の受験競争が生まれ、それは依然として厳しい状況である。過度の受験競争の中で、子どもはゆとりを失い、家庭も子どもに対するしつけやくつろぎなどの機能を喪失している。家庭の中でも、受験競争の中でよい成績を修める方が「よい子」であると評価されるような画一的価値観の浸透は、学校でも家庭でも地域でも、居場所を見いだせない子どもたちの問題にもつながっているとも指摘されている(第5図参照)。
 このような状況の下、中学校・高等学校において、子どもや親がその興味・関心、能力・適性等に応じた教育内容を主体的に選択できるよう、その選択幅を拡大する方向での改革が進められている。
 例えば、高等学校教育における総合学科の創設、選択中心の教育課程の編成、中学校においても、選択教科に充てる授業時数を拡大する方向での教育課程の見直しが行われている。学校教育における選択幅の拡大は、多様性を積極的に評価することで、いじめや登校拒否を生んでいるといわれる同質志向の改善にもつながると考えられる。
 また、就学コースの柔軟化を進める方向での改革も進められている。高等学校においては、過度に学年制に偏った運用を改め、学年を超えて科目履修ができる単位制高等学校の整備が進められている。大学においては編入学・転入学枠や社会人枠の拡大が進められている。
 今後、学校週五日制の完全実施や、しつけ、学校外での巡回指導補導を家庭や地域社会へ返していくことにより、学校を「スリム化」することが求められている。
 学校の「スリム化」が、地域や家庭など学校以外での子どもたちの生活の厚みを増すことにつながるためには、子どもたちがその一員として役割を担い、他の家族と多面的に向かい合えるような家庭、様々な人たちと関わりながら、子どもたちが活動に参加できるような地域社会が必要である。そのためには、生活圏にあったまちづくりが進むとともに、職場中心の企業風土の改善がなされ、親が家庭で子どもたちと多面的に関わることができる時間的・心理的ゆとりを得るとともに、地域に専業主婦だけでなく、雇用者、自営業者などが多様な形で参加していくことが求められよう。

<終 章> 子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会を

 家族内の個人が自立し、それぞれの生き方を尊重する中で、お互いを支え合えるようになれば、家族は潤いの感じられるものとなり、子育てに喜びを感じることのできるものになるだろう。
 また、職場優先の企業風土の是正と多様な働き方の適切な評価により、男性も女性も家庭や地域での生活と両立する働き方ができるようになる。
 地域については、生活圏にあったまちづくりにより、地域社会に新たな共同性(共同体としての意識と支え合い)が生まれると、地域による子育て支援力が増し、親たちの子育ての負担が軽減され、喜びが増していくだろう。
 職場については、職場における新規学卒採用の偏重と年功序列型賃金制度の見直し、学校教育における多様化・流動化の動きによって、就業や就学と子育てが両立する人生をより柔軟に設計できるようになるだろう。
 学校については、過度の受験競争が是正され、親子関係がより多面的なものとなり、教育に対する親の不安感も軽減されるだろう。
 家族、地域、職場、学校がこのようにそれぞれ変わっていくことで、これらが相まって「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持てる社会」の形成につながっていくことが期待される。

<第二部> 主な厚生行政の動き

<第一章> 社会保障の構造改革

<第一節 社会保障構造改革の枠組み>
 少子・高齢化の進行や国民の需要の変化といった社会保障を巡る状況の変化の中での社会保障の役割および課題を指摘するとともに、社会保障の構造改革の必要性とその方向、今後の進め方について記述している。また、社会保障の分野における財政構造改革の取組みについて紹介している。

<第二節 介護保険制度の創設と介護サービスの供給体制の整備>
 国民の老後の最大の不安要因となっている介護の問題に対応するため、昨年十二月に創設された介護保険制度について、創設のねらい・経緯とその概要を詳細に紹介するとともに、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の推進など、介護サービスの供給体制の整備について記述している。

<第三節 二十一世紀に向けての医療制度改革>
 経済基調の変化や医療費の増大により、医療保険財政が大幅な赤字構造となっている中で、医療保険制度と医療提供体制の両面にわたる抜本改革を進める必要性を記述し、その検討状況を紹介している。
 また、平成九年医療保険制度改正や平成十年の国民健康保険法等の一部改正の動向、第三次医療法改正や言語聴覚士法の制定など、医療提供体制を巡る動向、臓器移植法の成立、国立病院・療養所における政策医療の遂行、難病対策について記述している。

<第四節 年金制度改革を目指して>
 公的年金制度を社会経済状況の変化を踏まえつつ長期的に安定したものとするため、給付と負担の適正化など、年金制度全体の見直しが必要であることを記述し、「五つの選択肢」の提示をはじめ、平成十一年度次期財政再計算に向けての年金制度改革に関する検討状況について紹介している。
 また、年金積立金の自主運用に向けての検討、企業年金制度の見直し、年金業務を巡る問題、ドイツとの間の年金協定などについて記述している。

<第五節 社会福祉の基礎構造改革>
 国民の社会福祉に対する需要の増大・多様化に対応するため、社会福祉事業、社会福祉法人など、社会福祉の基礎構造の強化・充実が不可欠であることを記述し、社会福祉事業等のあり方に関する検討会や中央社会福祉審議会における社会福祉の基礎構造改革についての議論を紹介している。
 また、施設整備業務等の再点検に関する実施状況について言及している。

<第六節 障害者保健福祉施策の総合的見直し>
 障害者プランに基づく施策の推進状況について紹介するとともに、精神障害者の社会復帰を支援する専門家の資格制度を設ける精神保健福祉士法の制定、障害者関係三審議会合同企画分科会における身体障害、知的障害、精神障害の三つの施策の総合化の観点からの全般的な検討について記述している。
 また、長野パラリンピック冬季競技大会の開催について紹介している。

<第二章> 健康と安全を守る取組み

<第一節 健康危機管理への取組み>
 国民の生命・健康の安全を脅かす事態に対して健康被害の発生予防、拡大防止、治療等のための対策を講ずる「健康危機管理」への厚生省の取組みについて概観している。

<第二節 新たな感染症対策>
 患者等の人権にも配慮しつつ新しい時代に対応した感染症対策の推進を図る「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案」および「検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案」の内容を紹介するとともに、エイズ、結核、薬剤耐性菌などの新興・再興感染症への対応状況について記述している。
 また、香港で確認された新型インフルエンザA(H5N1)の発生とそれへの対応について記述している。

<第三節 医薬品等の安全確保対策の推進>
 血液製剤によるHIV感染問題への取組みを記述している。エイズ対策の概要とともに、訴訟の提起と和解の成立を踏まえた各種恒久対策、医薬品等の健康被害の再発防止に向けた取組みについて記述している。

<第四節 地域保健体制の再編と健康づくりの推進>
 平成九年四月の地域保健法の全面施行について紹介するとともに、生涯にわたる健康づくりの推進のための取組みとして、健康増進疾病対策中長期計画(健康日本二十一計画(仮称))の策定に向けた取組み、生活習慣病対策やたばこ対策の推進について記述している。

<第五節 食品の安全性の確保と化学物質対策>
 「危害分析に基づく重要管理点(HACCP、ハサップ)方式」の導入、食中毒対策の強化、農薬・動物用医薬品の残留基準値、組換えDNA技術応用食品の安全性、栄養表示基準など食品を巡る新たな問題への対応について紹介するとともに、ダイオキシン類に関する調査研究や、内分泌かく乱物質をはじめとする化学物質の新たな問題について記述している。

<第六節 安全でおいしい水の確保>
 安全で良質な水を確保するための水道原水の水質保全、水道の水質管理やクリプトスポリジウム対策、質の高い水道を目指した水道未普及地域の解消、高度浄水施設の整備促進、直結給水の推進について記述している。そのほか、地震・渇水に強い水道づくりなどについて言及している。

<第七節 大量に排出される廃棄物への取組み>
 改正廃棄物処理法の施行、廃棄物処理基準等の見直し、最終処分場等の処理施設の確保など、廃棄物の適正処理等に向けた取組みについて記述している。
 また、ごみの焼却によって発生するダイオキシン類の削減対策や、容器包装リサイクル法の施行状況、廃電気機器等のリサイクルを促進するための「特定家庭用機器再商品化法案」の概要について紹介するとともに、大都市圏の廃棄物対策、合併処理浄化槽の整備促進についても言及している。

<第三章> 厚生科学・情報化の推進と国際協力等への取組み

<第一節 厚生科学の推進>
 国民の保健医療・福祉・生活衛生等に関わる科学技術である「厚生科学」を振興するための取組みとして、厚生科学研究費補助金、国立試験研究機関における研究について紹介するとともに、研究評価の確立、医薬品・医療機器の研究開発の振興について記述している。

<第二節 情報化の推進>
 情報処理や情報通信技術が進歩する中での情報化の意義について記述するとともに、政府および厚生省における保健医療福祉分野の情報化や行政の情報化の推進状況について、国際的な取組みも含めて紹介している。

<第三節 政策強調と国際協力等の推進>
 橋本内閣総理大臣が提唱した「世界福祉構想」の具体化の一環として、昨年六月の主要国首脳会議(デンバー・サミット)における高齢化や感染症に関する討議、東アジア社会保障行政高級実務者会合の開催、第三回OECD社会保障大臣会議に向けた取組みを紹介している。
 また、WHOとの一層の連携など保健医療分野の国際協力の動向のほか、戦没者慰霊事業の推進、中国残留邦人への援護施策などについて記述している。

<第四章> 新たな厚生行政の枠組みに向けて

<第一節 中央省庁の再編と厚生行政>
 中央省庁の再編に向けての取組みとして、中央省庁等改革基本法案において定められている厚生行政に関する事項を紹介している。

<第二節 地方分権と規制緩和>
 地方分権および規制緩和について、近年の政府全体としての動きとともに、厚生行政における取組みとその方向を記述している。

<第三節 情報公開の推進>
 行政機関の情報公開について、審議会の議事録等の公開など、厚生省における情報公開の取組みを紹介している。




目次へ戻る

法人企業動向調査


―平成十年三月実施調査結果―


経 済 企 画 庁


◇調査要領

 本調査は、資本金一億円以上の全営利法人を対象として、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通しを調査したものである。
 調査対象:調査は、原則として国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金又は出資額が一億円以上の全営利法人(約三万二千百社)から経済企画庁が定める方法により選定した四千五百五十五社を対象とした。
 調査時点:平成十年三月一日
 調査方法:調査は、調査法人の自計申告により行った。
 なお、資本金又は出資額が五十億円以上の営利法人については、原則として全数調査、五十億円未満の営利法人は、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
 有効回答率:調査対象法人四千五百五十五社のうち、有効回答法人四千二百四十九社、有効回答率九三・三%
〔利用上の注意〕
 @ 今期三か月の判断とは平成九年十〜十二月期と比較した場合の十年一〜三月期の判断、来期三か月の見通しとは十年一〜三月期と比較した場合の十年四〜六月期の見通し、再来期三か月の見通しとは十年四〜六月期と比較した場合の十年七〜九月期の見通しである。
 なお、季節調整値及び時系列表については、来期三か月の見通し及び再来期三か月の見通しについて掲載している。
 A 判断指標(BSI)とは「上昇(強くなる・増加)の割合−下降(弱くなる・減少)の割合」である。
 B 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
 C 季節調整の方法は、設備投資(実績、実績見込み、計画U、計画Tの各系列別)及び景気・経営の見通しとも、センサス局法U、X−11で算出。更に、設備投資の実績見込み、計画U、計画Tは達成率による修正を行った。
 D 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社、JR関係七社及び電源開発鰍調査対象に加えるとともに、日本電信電話梶A第二電電鞄剋オ社については六十年四〜六月期、JR関係七社については六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
 E 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
 F 平成元年四〜六月期以降の調査内容は、消費税を除くベースで調査した。

◇概 要

○景気見通し(全産業)(第1表第1図参照

・国内景気
 国内景気の判断指標(BSI)は、平成十年一〜三月「マイナス二十六」の後、四〜六月「マイナス二十六」、七〜九月「マイナス六」となり、企業経営者の国内景気見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。
・業界景気
 業界景気の判断指標は、十年一〜三月「マイナス二十一」の後、四〜六月「マイナス二十五」、七〜九月「マイナス七」となり、業界景気見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。

○需要見通し(製造業)(第1表第1図参照

・国内需要
 国内需要の判断指標は、平成十年一〜三月「マイナス十九」の後、四〜六月「マイナス二十四」、七〜九月「マイナス四」となり、企業経営者の国内需要見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。
・海外需要
 海外需要の判断指標は、十年一〜三月「マイナス五」の後、四〜六月「マイナス八」、七〜九月「マイナス三」となり、海外需要見通しは弱含みとなっている。

○自己企業の経営見通し第1表第1図参照

・製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 製品価格の判断指標は、平成十年一〜三月「マイナス十四」の後、四〜六月「マイナス二十」、七〜九月「マイナス十二」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
・原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)
 原材料価格の判断指標は、十年一〜三月「四」の後、四〜六月「マイナス五」、七〜九月「〇」となり、原材料価格はやや弱含みとなっている。
・売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)
 売上高の判断指標は、十年一〜三月「マイナス三」の後、四〜六月「マイナス十一」、七〜九月「マイナス三」となり、売上高の見通しは慎重なものとなっている。
・経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)
 経常利益の判断指標は、十年一〜三月「マイナス三」の後、四〜六月「マイナス十」、七〜九月「マイナス一」となり、経常利益の見通しは慎重なものとなっている。

○四半期別設備投資の動向(全産業)(第2表第2図第3表参照

 全産業では、平成十年一〜三月、四〜六月ともに減少の後、七〜九月は増加の見通しとなっている。
 これを産業別にみると、製造業、非製造業とも、十年一〜三月、四〜六月ともに減少の後、七〜九月は増加の見通しとなっている。
 また、資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業では、十年一〜三月、四〜六月ともに減少の後、七〜九月は増加の見通し、一〜十億円の中堅企業では、十年一〜三月、四〜六月、七〜九月のいずれも減少の見通しとなっている。

○平成十年度設備投資計画の動向第4表参照

 全産業の設備投資の当初計画は、約四十三兆二千億円となり、平成九年度(実績見込み)に比べ四・五%の減少が見込まれている。
 これを産業別にみると、製造業では、約十四兆八千億円となり、七・一%の減少、非製造業では、約二十八兆四千億円となり、三・〇%の減少が見込まれている。
 また、資本金規模別にみると、大企業では、〇・三%の増加、中堅企業では、一三・七%の減少が見込まれている。

○生産設備の判断(製造業)(第5表参照

 自己企業の生産設備の判断指標は、平成九年十〜十二月「十四」の後、十年一〜三月「十八」となり、過大感が増している。

○在庫水準の判断(製造業)(第6表参照

 完成品在庫水準の判断指標は、平成九年十二月末「二十」の後、十年三月末「二十四」となり、過大感が増している。

一 景気見通し(全産業:季節調整値)

 (一) 国内景気

 国内景気の判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成十年一〜三月「マイナス二十六」の後、四〜六月「マイナス二十六」、七〜九月「マイナス六」となり、企業経営者の国内景気見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年四〜六月にはすべての業種でマイナス、七〜九月にはゴム・皮革、造船がプラス、パルプ・紙、金属製品が「〇」、それ以外(十四業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、十年四〜六月に電力がプラス、それ以外(九業種)はマイナス、七〜九月にはすべての業種でマイナスとなっている。

 (二) 業界景気

 所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成十年一〜三月「マイナス二十一」の後、四〜六月「マイナス二十五」、七〜九月「マイナス七」となり、業界景気見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年四〜六月にはすべての業種でマイナス、七〜九月にはパルプ・紙がプラス、それ以外(十七業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(十業種)では、十年四〜六月には電力がプラス、それ以外(九業種)はマイナス、七〜九月にはガスがプラス、それ以外(九業種)はマイナスとなっている。

二 需要見通し(製造業:季節調整値)

 (一) 国内需要

 国内需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成十年一〜三月「マイナス十九」の後、四〜六月「マイナス二十四」、七〜九月「マイナス四」となり、企業経営者の国内需要見通しは、四〜六月は引き続き悪化するものの、七〜九月には和らいでいる。
 業種別にみると、十八業種中、十年四〜六月にはすべての業種でマイナス、七〜九月には石油・石炭、ゴム・皮革、「その他の製造業」がプラス、パルプ・紙が「〇」、それ以外(十四業種)はマイナスとなっている。

 (二) 海外需要

 海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)は、平成十年一〜三月「マイナス五」の後、四〜六月「マイナス八」、七〜九月「マイナス三」となり、海外需要見通しは弱含みとなっている。
 業種別にみると、十八業種中、十年四〜六月にはゴム・皮革、印刷・出版が「〇」、それ以外(十六業種)はマイナス、七〜九月にはゴム・皮革、電気機械、造船等四業種がプラス、金属製品、精密機械が「〇」、それ以外(十二業種)はマイナスとなっている。

三 自己企業の経営見通し(季節調整値)

 (一) 製品価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成十年一〜三月「マイナス十四」の後、四〜六月「マイナス二十」、七〜九月「マイナス十二」となり、製品価格は弱含みに推移するものと見込まれている。
 業種別にみると、二十業種中、十年四〜六月には農林漁業がプラス、それ以外(十九業種)はマイナス、七〜九月には石油・石炭がプラス、「その他の製造業」が「〇」、それ以外(十八業種)はマイナスとなっている。

 (二) 原材料価格(製造業、農林漁業、鉱業)

 自己企業の原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)は、平成十年一〜三月「四」の後、四〜六月「マイナス五」、七〜九月「〇」となり、原材料価格はやや弱含みとなっている。
 業種別にみると、二十業種中、十年四〜六月にはパルプ・紙、「その他の輸送用機械」、農林漁業等六業種がプラス、それ以外(十四業種)はマイナス、七〜九月にはゴム・皮革、電気機械、自動車等七業種がマイナス、「その他の製造業」が「〇」、それ以外(十二業種)はプラスとなっている。

 (三) 売上高(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成十年一〜三月「マイナス三」の後、四〜六月「マイナス十一」、七〜九月「マイナス三」となり、売上高の見通しは慎重なものとなっている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年四〜六月には食料品・飲料、パルプ・紙、石油・石炭がプラス、印刷・出版が「〇」、それ以外(十四業種)はマイナス、七〜九月には食料品・飲料、パルプ・紙、石油・石炭等七業種がプラス、それ以外(十一業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、十年四〜六月にはすべての業種でマイナス、七〜九月にはガスがプラス、それ以外(七業種)はマイナスとなっている。

 (四) 経常利益(全産業:金融保険、不動産を除く)

 自己企業の経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)は、平成十年一〜三月「マイナス三」の後、四〜六月「マイナス十」、七〜九月「マイナス一」となり、経常利益の見通しは慎重なものとなっている。
 業種別にみると、製造業(十八業種)では、十年四〜六月には食料品・飲料、石油・石炭、造船がプラス、それ以外(十五業種)はマイナス、七〜九月には食料品・飲料、パルプ・紙、自動車等五業種がプラス、ゴム・皮革、「その他の製造業」が「〇」、それ以外(十一業種)はマイナスとなっている。
 また、非製造業(八業種)では、十年四〜六月にはすべての業種でマイナス、七〜九月には建設、運輸・通信、サービスがマイナス、鉱業、ガスが「〇」、それ以外(三業種)はプラスとなっている。

四 四半期別設備投資の動向(全産業:季節調整値)

 設備投資の動向を四半期別に前期比でみると、全産業では、平成九年十〜十二月(実績)二・八%減の後、十年一〜三月(実績見込み)三・〇%減、四〜六月(計画U)一・五%減、七〜九月(計画T)一・六%増の見通しとなっている。
 また、「電力」を除いた全産業では、九年十〜十二月三・八%減の後、十年一〜三月二・一%減、四〜六月一・二%減、七〜九月三・一%増の見通しとなっている。

 (一) 産業別設備投資の動向

 産業別に設備投資の動向を前期比でみると、製造業では平成九年十〜十二月四・四%増の後、十年一〜三月一・四%減、四〜六月〇・二%減、七〜九月〇・四%増の見通しとなり、非製造業では九年十〜十二月五・八%減の後、十年一〜三月四・五%減、四〜六月二・三%減、七〜九月二・三%増の見通しとなっている。
 これを業種別にみると、製造業のうち素材型業種では、化学が九年十〜十二月〇・三%増の後、十年一〜三月一一・五%増、四〜六月二・七%減、七〜九月七・六%増の見通しとなり、鉄鋼では九年十〜十二月二一・三%減の後、十年一〜三月七・三%減、四〜六月一一・〇%増、七〜九月〇・五%増の見通しとなっている。
 また、加工型業種では、自動車が九年十〜十二月四・四%減の後、十年一〜三月七・一%減、四〜六月四・三%増、七〜九月一二・八%増の見通しとなり、電気機械では九年十〜十二月五・八%増の後、十年一〜三月二・四%減、四〜六月五・一%増、七〜九月二・五%増の見通しとなっている。
 一方、非製造業についてみると、運輸・通信では九年十〜十二月二・一%減、十年一〜三月四・五%減、四〜六月一・九%増、七〜九月五・八%増の見通しとなり、電力では九年十〜十二月五・八%増、十年一〜三月一〇・八%減、四〜六月一・三%減、七〜九月一八・四%減の見通しとなっている。
 また、サービスでは九年十〜十二月四・四%減、十年一〜三月一九・六%減、四〜六月一二・三%減、七〜九月七・四%減の見通しとなり、リースでは九年十〜十二月四・七%減、十年一〜三月七・四%減、四〜六月一〇・二%増、七〜九月七・〇%増の見通しとなっている。

 (二) 資本金規模別設備投資の動向

 資本金規模別に設備投資の動向を前期比でみると、資本金十億円以上の大企業では、平成九年十〜十二月二・二%減の後、十年一〜三月三・九%減、四〜六月〇・九%減、七〜九月二・四%増の見通しとなっている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、九年十〜十二月四・四%減の後、十年一〜三月一・二%減、四〜六月二・二%減、七〜九月二・〇%減の見通しとなっている。

五 平成十年度設備投資計画の動向(全産業)

 平成十年度の全産業の設備投資計画(当初計画)は、約四十三兆二千億円となり、九年度(実績見込み)に比べ四・五%の減少が見込まれている。
 また、「電力」を除いた全産業では、五・〇%の減少が見込まれている。

 (一) 産業別動向

 平成十年度の設備投資計画の当初計画を産業別にみると、製造業では、約十四兆八千億円となり、九年度に比べ七・一%の減少、非製造業では、約二十八兆四千億円となり、三・〇%の減少が見込まれている。なお、「電力」を除いた非製造業では、約二十四兆円となり、三・七%の減少が見込まれている。
 これを業種別にみると、製造業のうち素材型業種では、鉄鋼は三・三%の増加が見込まれている反面、ゴム・皮革は四四・三%の減少、繊維は三四・六%の減少、石油・石炭は二四・八%の減少、パルプ・紙は二〇・四%の減少、非鉄金属は九・九%の減少、窯業・土石は六・七%の減少、化学は四・三%の減少が見込まれている。
 また、加工型業種では、自動車は三・八%の増加、精密機械は二・一%の増加が見込まれている反面、金属製品は三五・六%の減少、造船は一〇・六%の減少、「その他の輸送用機械」は一〇・一%の減少、「その他の製造業」は一〇・一%の減少、電気機械は七・六%の減少、食料品・飲料は四・八%の減少、印刷・出版は四・六%の減少、一般機械は一・八%の減少が見込まれている。
 一方、非製造業をみると、鉱業は二九・八%の増加、サービスは三・〇%の増加、電力は〇・九%の増加、ガスは〇・八%の増加が見込まれている反面、農林漁業は四三・二%の減少、不動産は一二・七%の減少、建設は一一・六%の減少、運輸・通信は六・七%の減少、卸・小売は五・四%の減少、リースは一・八%の減少、金融保険は〇・七%の減少が見込まれている。

 (二) 資本金規模別計画

 平成十年度の設備投資計画を資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業では、平成九年度に比べ〇・三%の増加が見込まれており、このうち製造業では、六・〇%の減少、非製造業では、三・八%の増加が見込まれている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、一三・七%の減少が見込まれており、このうち製造業では、九・五%の減少、非製造業では、一五・九%の減少が見込まれている。

六 生産設備の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における自己企業の生産設備の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年十〜十二月「十四」の後、十年一〜三月「十八」となり、過大感が増している。
 業種別(十八業種)にみると、鉄鋼、非鉄金属、一般機械等十五業種で過大感が増している。

七 在庫水準の判断(製造業:季節調整値)

 製造業における完成品在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、平成九年十二月末「二十」の後、十年三月末「二十四」となり、過大感が増している。
 業種別(十八業種)にみると、繊維、窯業・土石、鉄鋼、一般機械等十三業種で過大感が増している。
 また、原材料在庫水準の判断指標(BSI:「過大」−「不足」)は、九年十二月末「十」の後、十年三月末「十三」となり、過大感がやや増している。
 業種別にみると、ゴム・皮革、鉄鋼、精密機械等十三業種で過大感が増している。


目次へ戻る

消費支出(全世帯)は実質二・一%の減少


―平成十年四月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月、十月は実質増加となり、十一月以降六か月連続の実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成九年九月は実質増加、十月は実質で前年と同水準となり、十一月以降六か月連続の実質減少となった。
 消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月は実質増加となり、十月以降七か月連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は二十九万一千七百十円で、名目四・八%の減少、実質五・一%の減少

◇財・サービス区分別の消費支出

 財(商品)は、実質一・〇%の減少
  <耐久財> 実質五・一%の減少
  <半耐久財> 実質二・三%の減少
  <非耐久財> 実質〇・一%の増加
 サービスは、実質五・二%の減少






 
    <7月29日号の主な予定>
 
 ▽平成十年度農業観測………………農林水産省 

 ▽労働力調査…………………………総 務 庁 
 



目次へ戻る