官報資料版 平成1029





平成10年度


農  業  観  測


農 林 水 産 省


 農林水産省は、農林水産統計観測審議会(農業観測部会)の答申を得て、去る六月五日に「平成十年度農業観測」を公表した。その概要は次のとおりである。なお、生産見通しについては平年作を前提としており、見通しの増減、騰落幅については、表の用語で記述している。

T 農業経済

1 国内経済

 我が国経済の動向をみると、平成五年十月を底に景気回復局面に入ったものの、七年央には、急激な円高やアメリカ経済の減速等により、一時足踏み状態となった。八年度は、景気は緩やかな回復を続けたものの、九年度に入ると、需要面では、個人消費は、かけ込み需要の反動減、可処分所得の伸び悩み、金融機関や企業の破綻、倒産が相次いだこと等から家計の景況感が悪化し、低調な動きとなった。住宅建設は、このところおおむね横ばいで推移しているものの、依然弱い動きが続いている。設備投資は、頭打ち傾向が顕著になっている。鉱工業は、在庫調整圧力の強い状況が続き、生産・出荷は減少傾向にある。
 雇用情勢は、生産の減少や企業の収益環境の悪化に伴う雇用調整等により、完全失業率が既往最高となるなど、さらに厳しさが増している。物価は、弱含みで推移している。堅調な増加を続けてきた国際収支は、このところのアジア経済の減速等により、伸びは鈍化している。
 このように、我が国経済は、在庫調整圧力の高まりや生産、雇用者数の減少など、最終需要の停滞の影響が実体経済全体にまで及んでおり、景気は停滞し、一層厳しさを増している。

2 農業経済

(1) 食料消費第1図参照
 一人当たり実質食料費支出(全世帯)の動向を総務庁「家計調査」でみると、九年度は、景気の停滞や経済の先行き不透明感等から消費支出全体が低調に推移するなかで、食料費支出は一・三%減少した。
 内訳をみると、穀類は、米類の減少により二・七%減少した。副食品は、調理食品が引き続き堅調なものの、野菜・海藻等が三年ぶりに減少したことから、一〇%減少した。し好食品は、果物が増加したものの、酒類が減少したことから一・五%減少した。外食は、〇・九%減少した。
 なお、月次動向をみると、九年三月には、貯蔵性が比較的高い穀類、し好食品を中心に消費税率引上げ前のかけ込み需要増がみられたが、四月にはその反動減がみられた。八月までは、前半が腸管出血性大腸菌O一五七による食中毒の影響で低調であったこともあり徐々に回復する傾向がみられたが、景気停滞感が強まった秋以降は、減少幅が拡大する傾向にあり、特に、十年三月は前年のかけ込み需要増の反動も加わり、かなり減少した。
 食料品の小売動向を百貨店、チェーンストアの販売額でみると、四年度以降はともに前年度を下回って推移するなど低迷しており、九年度は、それぞれ、〇・七%減、二・六%減となっている。
 国民経済計算ベースでみた食料消費(実質飲食等支出:「家計の目的別最終消費支出」のうち「食料・飲料・煙草」の実質値)は、九年度はわずかに減少したとみられる。
 十年度の食料消費(実質飲食等支出)は、景気停滞のもとで、消費支出全体が低調な動きとなっていること等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<外食、中食の動向>
 食料消費の外部化、サービス化により急速に拡大してきた外食は、近年、既存店の一店舗当たりの売上げ高が下回っていることもあり、伸び率が鈍化している。
 六年は、昭和五十一年以来初のマイナスとなったが、七年には景気回復を受けて増加に転じ、八年は、大手外食企業の大量の新規出店増などにより三・一%増加した。九年は、飲食主体部門、集団給食部門の伸びはわずかであったものの、飲食店が四・六%増加したことから、二・五%増加となった。
 なお、昨年後半以降の景気停滞感の強まりのもとで、一部に外食支出を控える傾向もみられ、家計調査によれば、一人当たりの外食の実質消費支出は、九年十二月以降、前年を下回っている。
 一方、持ち帰り弁当やそう菜等の中食の市場規模は、食の簡便化等に対応して着実に増加しており、八年は四・〇%増加し、九年は八・〇%増加した。
 このような外食、調理食品の動向を、「家計調査」によって世帯主の年齢階層別の実質消費支出でみると、外食では、最近、年齢階層間での消費格差が平準化する傾向にあり、全階層で平均的に支出されるようになっている。また、調理食品では、全階層で増加しているが、特に最近では、高年齢層での増加が大きくなっている。
 外食や中食の店舗、売場では、持ち帰りコーナーの設置、有機農産物等を取り入れた独自メニューの開発や、そう菜売場の充実、単身者用・小家族用の少量パック化等に力を入れるとともに、競争が一層激化してきた最近では、簡便性、割安感だけでなく、商品の質を向上させ、安全、安心に配慮した商品の開発にも力を入れている。

(2) 農業生産要素
 ア 農業就業人口
 農業就業人口は、一貫して減少と高齢化の傾向が続いており、九年度は一・六%減少した。年齢階層別にみると、十五〜四十四歳層で七・四%減、四十五〜五十四歳層で二・二%増、五十五〜六十四歳層で四・六%減となっている。これらにより、六十四歳以下層は、三・七%減、六十五歳以上層では一・五%増となっており、高齢化がさらに進行している。
 なお、新たに就農する若い担い手の動向をみると、近年、わずかな増加傾向にあり、新規学卒就農者と三十九歳以下のUターン就農者の合計は、二年の四千三百人を底に増加しており、八年は八千五百人となった。
 十年度の農業就業人口は、引き続き新規就農者が増加するとみられるものの、高齢者の離農を中心とする減少が新規就農者による増加を上回るとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。
 イ 耕地面積
 耕地面積は、減少傾向にあり、九年(八月一日現在)は、三千百二十ヘクタールの拡張面積に対し、人為かい廃面積が四万七千七百ヘクタールとなったことから、前年比〇・九%減の四百九十四万九千ヘクタールとなった。
 人為かい廃面積の内訳をみると、耕作放棄等の面積は八・四%増の二万四千四百ヘクタール、非農林業用途(工場用地、道路鉄道用地、宅地等)への転用面積は、宅地等、工場用地向けが減少したものの、道路鉄道用地が増加したことから、二・三%減の二万八百ヘクタールとなった。
 十年の耕地面積は、耕作放棄等の面積が増加傾向にあること、非農林業用途等への転用が見込まれること等から、わずかに減少すると見込まれる。

(3) 農産物供給
 ア 国内農業生産(第2図参照
 九年度の農業生産の動向を数量指数でみると、一%程度増加したとみられる。
 主な品目別についてみると、米は、作況指数の低下、作付面積の減少により、三%程度減少したとみられる。麦類は、小麦が増加したこと等から、八%程度増加したとみられる。大豆は、「やや良」であった前年産の作柄に比べ二%程度減少したとみられる。野菜は、夏秋野菜がやや減少したとみられること等から、二%程度減少したとみられる。果実は、みかん、りんご等が、おおむね天候に恵まれて着果、肥大とも良好であったこと等により、一五%程度増加したとみられる。花きでは、各品目とも収穫量が増加したとみられることから、三%程度増加したとみられる。
 畜産物は、七年度以降、堅調な価格を背景に豚がわずかに増加したとみられるものの、肉用牛、生乳、ブロイラー等、他の品目がいずれもわずかないしやや減少したとみられることから、全体では一%程度減少したとみられる。
 十年度の農業生産は、全体ではやや減少すると見込まれる。
 品目別にみると、米は、生産調整目標面積が大幅に増加したことから、かなりの程度減少、麦類は、小麦がやや増加するとみられることから、やや増加すると見込まれる。大豆は、作付面積がかなりの程度増加するとみられることから、かなりの程度増加、野菜は、夏秋野菜がわずかに増加するとみられるものの、春野菜がわずかに減少するとみられること等から、ほぼ前年度並みと見込まれる。果実は、みかん、りんご等が減少するとみられることから、かなりの程度減少、花きは、切花類がわずかに増加し、鉢もの類、花壇用苗もの類がともにかなりの程度増加するとみられること等から、やや増加するものと見込まれる。これらの結果、耕種生産は、やや減少すると見込まれる。
 畜産物は、生乳がわずかに増加、豚がほぼ前年度並みになるとみられるものの、肉用牛等が減少するとみられること等から、全体ではほぼ前年度並みになると見込まれる。
 イ 農産物輸入(第3図参照
 農産物輸入の動向を数量指数でみると、近年は、輸入自由化、関税率の引下げの影響等に加えて、消費者や量販店等、実需者のニーズに合った形態で輸入されつつあることから、鳥獣肉類・その調整品、野菜・その調製品、果実・その調製品を中心に増加傾向にある。
 九年度は、消費の低迷や、円安に伴う輸入価格の上昇等から、全体では二・五%減少した。
 品目別にみると、穀物では、米は、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づくミニマム・アクセス分が二割程度増加したものの、とうもろこしがわずかに減少し、小麦が減少したことから、四・一%減少した。果実・その調製品では、生鮮果実が、オレンジ、グレープフルーツの減少によりわずかに減少し、果実調製品がりんご果汁等の減少によりやや減少し、全体では四・五%減少した。野菜・その調製品では、冷凍野菜がわずかに増加したものの、生鮮野菜がかなりの程度減少したことから、全体では〇・六%減少した。
 鳥獣肉類・その調製品では、牛肉が需要の回復により増加しているものの、豚肉は台湾産の輸入禁止等により、鶏肉は国内価格の下落等により、それぞれ減少したことから、全体では八・九%減少した。一方、酪農品・鳥卵は、堅調な乳製品需要等から四・五%増加した。
 十年度は、全体では、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
 品目別にみると、米はミニマム・アクセス分として、かなり大きく増加するとみられる。小麦は消費量が前年度並みないしわずかに増加するとみられるものの、国内生産がやや増加するとみられることから、ほぼ前年度並みと見込まれる。大豆は、需要がわずかに減少するとみられること、国産出回り量が増加すること等から、やや減少すると見込まれる。
 鳥獣肉類・その調製品は、鶏肉がほぼ前年度並みとみられるものの、牛肉が国内生産量の減少等により、豚肉が冷蔵品輸入の回復等により、それぞれ増加するとみられることから、全体では、わずかないしやや増加すると見込まれる。酪農品・鳥卵は、堅調な乳製品需要等から、わずかに増加すると見込まれる。

(4) 農産物価格
 ア 農産物生産者価格
 農産物生産者価格は、八年度は、作柄の良かった米に加え、生育が順調であった野菜、花き等、大部分の品目で下落したものの、入荷量が大幅に減少した果実、国内生産が減少した畜産物等の上昇により、全体では前年度並みとなった。
 九年度は、全体では五・七%下落している。主要品目別にみると、米は、需給緩和傾向を反映し、引き続き九・〇%とかなりの程度下落した。野菜は、夏以降、前年度が安値であったこと、入荷量が減少したこと等により八・九%上昇した。果実は、全般に豊作となり出回り量がかなり増加したことから、全体では三二・七%と大幅に下落した。花きは、出回り量は増加したものの、需要が堅調なことから、三・五%上昇した。畜産物は、生乳が〇・七%上昇し、肉畜がほぼ前年度並みとなったものの、鶏卵が需要の低迷等により五・八%下落したこと等から、全体では〇・五%下落した。
 十年度の農産物生産者価格は、全体ではわずかに上回ると見込まれる。
 耕種作物についてみると、野菜は、春野菜で前年産を上回るものの、夏秋野菜で下回ること等から、ほぼ前年度並みと見込まれ、果実は、みかん、りんごがいずれも安値となった前年度に比べ大幅に上回るとみられること等から、全体では大幅に上回ると見込まれる。花きは出回り量が増加するとみられること等から、わずかに下回ると見込まれる。これらのこと等から、耕種作物全体ではわずかに上回ると見込まれる。
 また、畜産物については、生乳がほぼ前年度並みとみられるものの、鶏卵が需要の低迷等から、ややないしかなりの程度下回り、肉畜も前年度並みないしわずかに下回るとみられることから、全体ではわずかに下回ると見込まれる。
 イ 食料品消費者価格
 食料品の消費者価格を、総務庁「消費者物価指数」でみると、八年度は米類、野菜・海藻、飲料等が下落したものの、鶏卵、魚介類、果物等が上昇したことから、全体では〇・四%上昇した。
 九年度は、消費税率の引上げもあり二・二%上昇した。主な項目についてみると、穀類は、パン等が上昇したものの、米類が下落したため前年度並みとなった。副食品は、魚介類、肉類、生鮮野菜等の上昇により三・三%上昇した。し好食品は、飲料等が上昇したものの、生鮮果実がかなり下落したことから〇・二%下落した。外食は三・一%上昇した。
 十年度の食料品消費者価格は、畜産物がわずかに下回り、野菜はほぼ前年度並みとなり、果実は大幅な安値となった前年度に比べ大幅に上回るとみられる。また、調理食品等については、わずかに上回るとみられる。
 以上のこと等から、全体では、わずかに上回ると見込まれる。

(5) 農業生産額第4図参照
 九年度の農業生産額は、農業生産数量が一%程度増加したとみられるものの、農産物生産者価格が、米や果実の下落等により六%程度下回ったとみられることから、五%程度減少し、十一兆円程度になったとみられる。
 十年度の農業生産額は、農産物生産者価格がわずかに上回るとみられるものの、農業生産数量が米、果実等の減少によりやや減少するとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。
 一方、中間投入額は、農業生産資材の農家購入価格がほぼ前年度並みになるとみられるものの、投入量がやや減少するとみられることから、やや減少すると見込まれる。また、固定資本減耗は、わずかに減少すると見込まれる。
 これらの結果、農業純生産はわずかに減少すると見込まれる。

U 農産物

1 穀物及び特産物

(1) 米
<消 費>
 米の一人一年当たり消費量は減少傾向で推移しており、七年度は、五年産の不作の影響等により六年度に減少した需要の一部が回復したことから二・三%増となったものの、八年度は猛暑の影響等により、〇・七%減の六七・三キログラムとなった。
 九年度の動向を米消費世帯一人当たり消費量でみると、一・七%減少した。また、「家計調査」による九年度の弁当類の購入金額は引き続き増加しており、家計の米消費支出において、炊飯済み米飯の購入のウェイトが引き続き高まりつつあるとみられる。
 十米穀年度(九年十一月〜十年十月)の主食用等の米の需要量は、「米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画」によれば、主食用等需要量は九百六十五万トン、加工用等需要量は七十九万トンと見込まれている。また、十年産米が主として消費される十一米穀年度については、主食用等需要量は九百六十万トンと見込まれている。
<供 給>
 九年産の水陸稲作付面積は、一・二%減の百九十五万三千ヘクタール、また水稲の作況指数は百二の「やや良」となった。
 この結果、九年産の水陸稲の収穫量は、前年産を三・一%下回る一千二万五千トンとなった。
 十年産の水陸稲作付面積は、生産調整目標面積が九十六万三千ヘクタールとなったことから、かなりの程度減少すると見込まれる。水陸稲の収穫量については、作付面積の減少等により、かなりの程度減少すると見込まれる。
 なお、前記の基本計画において、十年産米の生産量は、八百九十八万トンとされた。また、十会計年度における外国産米の輸入量は六十八万玄米トンとされた。

(2) 麦
<消 費>
 近年の小麦の消費量は、六百三十〜六百四十万トンで推移しており、一人一年当たりの供給純食料ベースでは三十二〜三十三キログラムとなっている。九年度の小麦加工品の一人当たり購入数量は、パン類が〇・四%の減少、めん類が〇・七%の増加となり、めん類の中では生めん・スパゲッティー、即席めんが増加した。
 十年度の小麦の消費量は、小麦加工品の消費が前年に引き続きわずかに伸びていることから、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
<供 給>
 麦類(四麦計)の作付面積は、元年産をピークに転作麦を中心に減少傾向にあったが、八年産は転作麦の増加からわずかに増加した。九年産は転作麦が四・七%増となったが、畑作麦、水田裏作麦が減少したため、全体では〇・三%減の二十一万四千九百ヘクタールとなった。小麦は〇・六%減少の十五万七千五百ヘクタールとなった。
 麦類の収穫量は、小麦、六条大麦が増加し、二条大麦、裸麦が減少し、全体では七・七%増の七十六万六千二百トンとなった。小麦は、主産地の北海道での収穫期の降雨等により、作況指数九十七の「やや不良」となったが、作況指数八十の「不良」となった前年産に比べ一九・九%増の五十七万三千トンとなった。
 十年産麦類の作付面積は、小麦がやや増加、二条大麦がかなりの程度減少、六条大麦が大幅に増加、裸麦がわずかに増加し、四麦計ではわずかに増加すると見込まれる。収穫量は、作付面積が増加すること、作柄の悪かった前年産と比べて単収がやや増加するとみられることから、やや増加すると見込まれる。
 十年の小麦の輸入量は、消費量がほぼ前年並みないしわずかに増加すると見込まれるが、国内産収穫量がやや増加すると見込まれることから、ほぼ前年並みと見込まれる。

(3) 大 豆
<消 費>
 大豆の需要量は、五年以降は四百七十〜四百八十万トン程度で推移しており、九年は、二・四%増加し、約四百八十三万トンとなった。
 十年は、食品用需要が、納豆、豆腐の需要が引き続き堅調であるとみられること等からわずかに増加するとみられるものの、製油用需要がわずかに減少するとみられることから、全体では需要量はわずかに減少すると見込まれる。
<供 給>
 作付面積は、九年産は一・七%増の八万三千二百ヘクタールとなった。収穫量は、北海道が低温・日照不足で不良となったこと等から、二・四%減の十四万四千六百トンとなった。
 十年産大豆の作付面積は、十年産の米の生産調整目標面積が大幅に増加したことから、かなりの程度増加し、収穫量は、かなりの程度増加すると見込まれる。十年の輸入量は、やや減少すると見込まれる。

(4) 茶
<消 費>
 緑茶の消費量は、近年ほぼ横ばいで推移していたが、健康飲料としての効能が注目されるようになり、九年は二・九%増加した。
 十年の緑茶の消費量は、引き続き消費者の健康志向により需要が拡大し、茶系飲料の消費が伸びるとみられること等から、わずかに増加すると見込まれる。
<供 給>
 九年の全国の荒茶生産量は一番茶の増加、二番茶の減少等から、全体では二・八%増の九万一千二百トンとなった。
 十年産の荒茶生産量は、栽培面積が減少するものの、冬期間の気象条件に恵まれたこと等から、わずかに増加すると見込まれる。十年の緑茶の輸入量は、かなりの程度減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年産の荒茶価格は、一番から四番茶まで前年をかなり大きくないし大幅に下回った。十年産の荒茶価格は、ほぼ前年産並みと見込まれる。

2 野 菜

(1) 最近の需給動向
<消 費>
 野菜の八年度の消費量(国内消費仕向量)は、国内生産がほぼ前年度並みとなったものの、輸入がわずかに減少したことから、〇・九%減の一千七百七万八千トンとなり、一人一年当たりの供給純食料は一・二%減の一四・二キログラムとなった。
 九年度の動向を家計消費でみると、一人一か月当たりの購入数量は、価格が前年を上回ったことから三・〇%減少した。
<生 産>
 野菜の作付延べ面積は、六十年代から減少傾向にあり、八年産は、葉茎菜類が前年産並みとなったものの、だいこんをはじめとして根菜類が減少したこと等から、一・四%減の五十五万六千八百ヘクタールとなった。九年産は、主産県の動向等から推計すると、葉茎菜類をはじめ前年に安値となった夏秋野菜を中心として春野菜、秋冬野菜が引き続き減少したことから、全体としてはわずかに減少したとみられる。また、十年産は、夏秋野菜がほぼ前年産並みないしはわずかに減少し、春野菜や秋冬野菜がわずかに減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
 野菜の作付面積がすう勢的に減少している全体的な要因としては、野菜作の収益性は他作物に比べて比較的高いものの、農家の高齢化の進行、機械化の遅れ等による労働時間の長さや労働の過重感があげられる。さらに、秋冬露地野菜、夏秋果菜類については、消費者のし好の変化、多品目少量摂取化、加工、半加工品の輸入の増加による影響等があるとみられる。
 野菜の生産量は、近年、作付面積の減少に伴いわずかながら減少傾向で推移しているが、八年産は春野菜が減少したものの、夏秋野菜が増加したこと等から、前年産並みの一千四百六十万トン(主要五十品目)となった。九年産について主産県の動向からみると、春野菜はおおむね天候に恵まれたことから、わずかに増加し、夏秋野菜は、北日本、東日本での低温と日照不足や北海道の低温、西日本の長雨等の影響から、やや減少したとみられる。秋冬野菜は、作付面積がわずかに減少したことから、わずかに減少したとみられる。
 たまねぎは、都府県産がわずかに増加したものの、北海道産はやや減少したとみられることから、ほぼ前年産並みと見込まれる。以上の結果、九年産全体の収穫量はわずかに減少したとみられる。
 十年産は、夏秋野菜とたまねぎがわずかに増加するとみられるものの、春野菜がわずかに減少するとみられることから、全体ではほぼ前年産並みと見込まれる。
 野菜の輸入量は、近年増加傾向にあるが、八年はたまねぎ等の生鮮野菜が国産の作柄が比較的良かったこと等から一一・一%減となり、全体では七年ぶりの減少となる二・七%減の百八十万トンとなった。九年の動向をみると、冷凍野菜が二・一%増となったものの、生鮮野菜が九・〇%減、塩蔵野菜が一三・三%減となったことから、野菜全体の輸入量は、四・七%減の百七十二万トンとなった。
<価 格>
 九年産の野菜の卸売価格は、全体では六・六%高の二百十一円/キログラムとなった。季節区分別にみると、春野菜は二・六%安、夏秋野菜は七・六%高、秋冬野菜は一三・一%高、たまねぎは三・七%高となった。
 十年産については、春野菜はやや上回り、夏秋野菜はわずかに下回り、秋冬野菜は前年産並みないしわずかに下回り、たまねぎはわずかに下回ると見込まれる。これらの結果、全体としてはほぼ前年産並みと見込まれる。

(2) 春野菜(主要出回り時期四〜六月)
<生 産>
 春野菜の作付面積は、近年緩やかな減少傾向にあるが、九年産の作付面積については、キャベツ、はくさいが、八年産の価格が軟調だったこと等により、それぞれやや減少したことをはじめとして、ほとんどの品目で前年産並みないしわずかに減少したため、全体では〇・九%減少したとみられる。収穫量は、根菜類はおおむね天候に恵まれてやや増加し、葉茎菜類はわずかに増加し、果菜類ではほぼ前年産並みないしわずかに増加したとみられることから、全体では二・三%増加したとみられる。
 十年産の作付面積は、果菜類がわずかに減少するものの、葉茎菜類が前年産並みないしわずかに増加するとみられることから、全体では前年産並みないしわずかに減少すると見込まれる。収穫量は、にんじん、はくさい、レタス、きゅうり及びなすは、作柄が良好であった前年産に比べて減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年産春野菜の卸売価格については、一部の品目で前年産の安値の反動で高値となったものの、春先に秋冬野菜の安値の影響を受けたこと、おおむね天候が良く生育が順調であったことから、全体では二・六%安の二百七円/キログラムとなった。
 十年産は、入荷量が、作柄が良好であった前年産に比べわずかに減少するとみられること、前年産の卸売価格が前々年産に引き続き軟調であったこと等から、やや上回ると見込まれる。

(3) 夏秋野菜(主要出回り時期七〜十月)
<生 産>
 九年産夏秋野菜の作付面積は、はくさい、ねぎが増加したものの、根菜類や前年産が安値であったレタス等を中心に多くの品目で減少したことから、全体では、三・〇%減少した。収穫量は、おおむね天候に恵まれ生育が順調であったねぎ、ピーマンが増加したものの、にんじん、キャベツ、レタス等が、作付面積の減少や五月の北日本での低温等の天候不良により減少したことから、全体では、三・九%減少した。
 十年産の夏秋野菜の作付面積は、根菜類は、にんじんがわずかに減少すること等から、前年産並みないしわずかに減少するとみられ、葉茎菜類は、はくさいがわずかに減少するものの、レタス、ねぎがわずかに増加するとみられること等から、全体では、前年産並みないしわずかに増加するとみられる。収穫量は、だいこんの増加により根菜類がわずかに増加するとみられること等により、前年産並みないしわずかに増加すると見込まれる。
<価 格>
 九年産夏秋野菜の卸売価格は、作付面積の減少や天候不順等により、重量野菜の入荷量が減少したこと、前年産の価格が、腸管出血性大腸菌O一五七の影響で安値であったこと等から、七・六%高の二百十二円/キログラムとなった。
 十年産の卸売価格は、入荷量が前年産並みないしわずかに増加するとみられることから、わずかに下回ると見込まれる。

(4) 秋冬野菜(主要出回り時期十一月〜翌年三月)
<生 産>
 九年産秋冬野菜の作付面積をみると、消費構造の変化、労働力不足等により、はくさい、だいこん、にんじん等が減少し、全体では二・二%減少したとみられる。収穫量は、作付面積が減少したとみられることや、前年産の根菜類、葉茎菜類の作柄が比較的良かったことから、二・八%減少したとみられる。
 十年産秋冬野菜の作付面積は、消費構造の変化や労働力不足等から近年は作付面積がわずかずつ減少してきていること等から、だいこん、はくさい等の重量野菜を中心に、わずかに減少すると見込まれる。収穫量は、作付面積がわずかに減少するとみられるものの、前年産の作柄が悪かったことから、前年産並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年産秋冬野菜の卸売価格は、年内は二・八%安となった。しかし、年明け以降は関東地方を中心とした一月の大雪や西日本の低温の影響により、葉茎菜類、果菜類をはじめとして多くの品目で入荷量が減少したことから二六・〇%高となり、期間全体では一三・二%高の二百十四円/キログラムとなった。
 十年産は、入荷量が前年産並みないしわずかに減少するとみられるものの、前年産が堅調な価格であったことから、前年産並みないしわずかに下回ると見込まれる。

(5) たまねぎ
<生 産>
 たまねぎの作付面積は、四年産の価格低迷により五年産以降は減少傾向にあったが、八年産以降は北海道産が増加に転じたことから下げ止まり、九年産は、〇・二%増の二万七千三百ヘクタールとなった。収穫量は、九年産は、北海道産が夏季の少雨等でやや減少したものの、都府県産はおおむね天候に恵まれてやや増加したことから、全体では、ほぼ前年産並みとなった。
 十年産たまねぎの作付面積は、北海道産がわずかに増加するとみられるものの、都府県産がやや減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
 収穫量は、都府県産はやや減少すると見込まれ、北海道産はかなりの程度増加すると見込まれることから、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
<価 格>
 九年産たまねぎの卸売価格は、上期は、作柄がおおむね良好となり入荷量が増加したことから、一〇・七%安となり、下期は北海道産が小玉傾向となり入荷量が減少したことから二〇・〇%高となり、全体では三・七%高の八十五円/キログラムとなった。
 十年産は、上期は、前年産が比較的安値であったこと、入荷量がやや減少するとみられることから、かなりの程度上回ると見込まれる。下期は、入荷量がかなりの程度増加するとみられることから、かなりの程度下回ると見込まれる。年間を通じては、わずかに下回ると見込まれる。

3 果 実

(1) 最近の需給動向
 果実の一人一年当たりの供給純食料は、果汁等加工品の増加により、増加傾向にあったが、七年度は四・九%の減少、八年度も四・七%減少した。生食消費量(生鮮果実の購入数量)は、近年ほぼ横ばいで推移しており、九年度は出回りの増加、購入単価の下落等により、二・七%増となった。
 果実の栽培面積は、減少が続いており、九年は二・一%減の三十万一千二百ヘクタールとなった。
 果実の収穫量は、栽培面積の減少等により、減少傾向にあるものの、九年産はおおむね天候に恵まれて果実の着果、肥大とも良好であったこと等により、みかん、りんご、なし、かきなど主要な品目は、ほぼすべてが前年産を上回る豊作となったことから、全体では一五%程度増加したとみられる。十年産は、前年産が豊作であったみかん、りんご等が減少するとみられ、全体ではかなりの程度減少すると見込まれる。
 生鮮果実の輸入量は、九年度はバナナが五・六%増となったが、オレンジが五・五%減、グレープフルーツが八・六%減となったこと等から、全体では〇・五%減となった。果汁の輸入量は、九年度はオレンジ果汁は増加したものの、りんご果汁、パインアップル果汁、グレープフルーツ果汁等が減少したため、全体では九・七%減となった。
 国産果実の卸売価格は、九年度は全般に豊作となり、入荷量が七・一%増とかなり増加したこと等から大幅な下落が続き、この結果、一九・七%安の二百八十九円/キログラムとなった。特に秋以降は、後に出回る品目ほど下落の幅が大きくなり、全体の価格を引き下げた。

(2) みかん
<消 費>
 みかんの一人当たりの消費量は、近年減少傾向にあるが、九年産の生食消費量(購入数量)は、豊作によって大幅に増加した。また、加工仕向量も収穫量の大幅増に伴い、相当量が果汁に仕向けられたこと等から、大幅に増加したとみられる。十年産は、生産量がかなり大きく減少するとみられること、価格も大幅に上回るとみられること等から、生食消費量、加工仕向量ともにかなり大きく減少すると見込まれる。
<生 産>
 結果樹面積は、高齢化による廃園、他果樹への転換等から、引き続き減少しており、九年産は二・四%減の六万二千ヘクタールとなった。収穫量は、単収が減少傾向にあるなか、九年産は前年産の大幅な単収減少に伴う樹体内の養分蓄積等により、開花・着果数が大幅に増加したことと、おおむね天候に恵まれ、果実の肥大も良好であったこと等により、三四・七%増の百五十五万三千トンとなった。
 十年産は、結果樹面積がわずかに減少するとみられること、単収が前年産の豊作等により、樹体内の養分が減少しているとみられること並びに結果母枝数が減少していること等により、かなり大きく減少するとみられることから、収穫量はかなり大きく減少すると見込まれる。
<価 格>
 主要出回り時期(十月〜翌年三月)における卸売価格は、入荷量の増減、品質の良否等から、隔年ごとに大きく変動する傾向にある。九年産は入荷量が大幅に増加したことに加え、景気の停滞感により消費が鈍化したこと等により、五三・一%安の百二十八円/キログラムときわめて安値になった。
 十年産は、入荷量が大きく減少するとみられることから、大幅に上回ると見込まれる。

(3) 晩かん類
<消 費>
 晩かん類の消費量は、ほぼ横ばいで推移しており、九年産の生食消費量については、収穫量の増加から、前年に比べてわずかに増加している。
 十年産は、購入単価が、大幅に下落した前年に比べ上回るとみられること等から、わずかに減少すると見込まれる。
<生 産>
 結果樹面積は、他のかんきつ類への転換等により、減少傾向にある。九年産の収穫量は、いよかんが四%の減少、ネーブルオレンジが三%減少、はっさくがほぼ前年産並み、なつみかんが一一%増加するとみられ、全体ではほぼ前年並みになるとみられる。十年産は、結果樹面積はやや減少し、単収はやや増加すると見込まれ、収穫量は、いよかんはやや増加、なつみかんはかなり減少、はっさく及びネーブルオレンジはほぼ前年並みになるとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 主要出回り時期における卸売価格は、九年産はみかん、りんご等が大幅に下落している影響等を受け、いよかん、なつみかん、はっさく、ネーブルオレンジのいずれも下落している。
 十年産は、晩かん類の価格に影響を及ぼすみかんの価格が大幅に上回るとみられること、入荷量が前年産よりやや減少するとみられること等により、いよかん、なつみかん、はっさく、ネーブルオレンジのいずれも安値であった前年産に比べ、大幅に上回ると見込まれる。

(4) りんご
<消 費>
 りんごの一人当たり消費量は、最近は供給純食料ベースで伸び悩んでおり、生食消費量も減少傾向にある。九年産(九〜三月)は豊作のみかんとの競合等で需要が伸び悩み五・二%減となったが、加工仕向量は、収穫量の増加と単価の下落から、増加するとみられる。十年産の生食消費量、加工仕向量は、収穫量がわずかないしやや減少すること、購入単価が前年を上回るとみられること等から、ともにわずかないしやや減少すると見込まれる。
<生 産>
 結果樹面積は、毎年わずかに減少しており、九年産は、一・三%減の四万六千六百ヘクタールとなった。収穫量は、おおむね天候に恵まれて開花期が早まったこと、開花・着果数も多かったこと等により単収が増加したことから、一〇・四%増の九十九万三千百トンとなった。品種別にはふじが一五・〇%増、つがるが一三・二%増、王林が六・一%増、ジョナゴールドが九・四%増となり、一方、デリシャス系は面積減少により一六・五%減となった。十年産は結果樹面積はわずかに減少し、単収も前年産に比べてわずかに減少するとみられることから、収穫量はわずかないしやや減少すると見込まれる。品種別には、つがる、王林、ジョナゴールドはほぼ前年産並み、ふじがわずかに減少、デリシャス系は大幅に減少すると見込まれる。
<価 格>
 主要出回り時期(九月〜翌年五月)の卸売価格は、九年産(九〜三月)は、豊作となったつがるの出回りが前年産貯蔵ふじの出回りと競合したこと、みかんの価格下落によって市況全体が冷え込んだこと等により、二五・六%安の百九十二円/キログラムと大幅な安値となっている。十年産は、入荷量がわずかないしやや減少するとみられることから、安値となった前年産を大幅に上回ると見込まれる。

(5) な し
<消 費>
 なしの生食消費量は、ほぼ横ばいで推移しており、九年産は〇・四%増加した。十年産については、購入単価が上回るとみられること等から、やや減少すると見込まれる。
<生 産>
 収穫量は、結果樹面積が一〇%減少したものの、単収が天候に恵まれて九・〇%増加したことから、七・八%増の四十二万七千八百トンとなった。十年産は、結果樹面積がわずかに減少し、単収は肥大が良好であった前年産よりもやや減少するとみられることから、収穫量はやや減少すると見込まれる。
<価 格>
 主要出回り時期(七〜十一月)における卸売価格は、九年産は、前進出荷を伴う入荷量の増加等により五・五%安の二百九十一円/キログラムとなった。十年産は、入荷量の減少等により安値であった前年産をかなりの程度上回ると見込まれる。

(6) ぶどう
<消 費>
 ぶどうの生食消費量は、横ばいないし減少傾向で推移しており、九年産は一〇%減少した。十年産についても生食消費量、加工仕向量ともにややないしかなりの程度減少すると見込まれる。
<生 産>
 収穫量は、九年産は結果樹面積が減少したものの、単収の増加により二・五%増の二十五万九百トンとなった。十年産は、結果樹面積がわずかに減少、単収がやや減少するとみられることから、ややないしかなりの程度減少すると見込まれる。
<価 格>
 主要出回り時期(六〜十一月)における卸売価格は、入荷量が増加したこと等から、九年産は八・一%安の六百四十五円/キログラムとなった。十年産は、入荷量が減少すること等から、かなりの程度上回ると見込まれる。

4 花 き

(1) 最近の需給動向
 切花の家計消費は、近年伸び悩んでいる一方で、鉢もの類や花壇用苗もの類は、ガーデニングの流行等により比較的堅調であるとみられる。
 九年産の花きの生産量は、球根類はわずかに減少、切花類はわずかに増加、鉢もの類はかなりの程度増加、花壇用苗もの類はかなり大きく増加し、全体ではやや増加したとみられる。
 最近の花きの輸入量は、植物の葉・枝、挿し穂・接ぎ穂は増加が続いているが、切花は二年連続で減少し、球根は九年は伸び悩んでいる。
 九年度の卸売価格は、切花類は一・七%高、鉢もの類は六・九%安、花壇用苗もの類は一・七%高となった。

(2) 切花類
<消 費>
 切花の消費は、近年、景気停滞の影響等により、伸び悩んでいる。九年度は、年度前半が前年を上回って推移したものの、秋以降は下回ったため、全体ではほぼ前年度並みとなった。十年度は、すう勢的な伸び悩み、景気停滞感の強まり等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<生 産>
 出荷量は、作付面積の増加、規模拡大や産地化等の取組から、十年産もわずかに増加すると見込まれる。十年度の輸入量は、国内需給が緩和基調で推移するとみられること等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 卸売価格は、消費が前年度並みないしわずかに減少するとみられること、入荷量がわずかに増加するとみられることから、わずかに下回ると見込まれる。

(3) 鉢もの類等
<生 産>
 鉢もの類の収穫面積は、各品目において堅調な需要を背景に増加傾向にあり、全般的な小鉢化等によって単収も増加し、出荷量も増加している。十年産は、規模拡大等により、収穫面積がやや増加し、単収も引き続き増加するとみられることから、出荷量はかなりの程度増加すると見込まれる。
<価 格>
 卸売価格は、入荷量の増加や小鉢化等により、下落傾向にある。十年度は入荷量は増加し、卸売価格はややないしかなりの程度下回ると見込まれる。また、花壇用苗もの類は、入荷量がかなりの程度増加するものの、公共施設用に加え家庭用需要も堅調なことから、卸売価格はほぼ前年度並みになると見込まれる。

5 畜産物

(1) 最近の需給動向
<消 費>
 近年(六十三年以降)の畜産物の消費量を一人一年当たりの供給純食料でみると、豚肉を除き総じて増加傾向で推移してきたものの、八年度は、顕著な伸びを続けてきた牛肉が、狂牛病問題、腸管出血性大腸菌O一五七による食中毒の影響等により、かなりの程度減少した。九年度は、牛肉が回復傾向となり、牛乳・乳製品がほぼ前年度並みとなったとみられるものの、豚肉、鶏肉、鶏卵は景気の低迷等もあり、わずかに減少したとみられる。
<供 給>
 最近の畜産物の国内生産量は、飼養戸数の減少等を反映して、全体としては減少傾向で推移してきた。九年度は、豚肉が、七年度以降の堅調な卸売価格等を背景にわずかに増加したものの、他の品目は前年度並みないし減少した。
 一方、畜産物の輸入量は、需要の増加、国内生産量の減少等により、総じて増加傾向で推移してきた。しかし、九年度は、需要の増加を反映して、牛肉、乳製品は増加したものの、他の品目は、需要低迷や円安傾向等から減少した。
<価 格>
 近年の畜産物の卸売価格は、輸入量の増加、消費の伸びの鈍化等により、総じて低下傾向で推移してきた。八年度は、国内生産量の減少等から、生乳を除き上昇したが、九年度は、牛肉、生乳を除き、需要の低迷等から下落した。

(2) 牛 肉
<消 費>
 近年増加傾向で推移してきた牛肉の一人一年当たり消費量は、八年度は、イギリスの狂牛病問題、腸管出血性大腸菌O一五七による食中毒の影響等により減少したものの、九年度は回復し三・八%増の八・〇キログラムとなった。十年度は、最近の景気低迷の影響もあり、家計消費は、ほぼ前年度並みになるとみられる。
 一方、加工・外食等消費は、景気低迷の影響もあるとみられるものの、調理食品等の需要が比較的堅調であるとみられること等により、前年度並みないしわずかに増加するとみられることから、全体では、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
<供 給>
 成牛の枝肉生産量は、七年度以降減少傾向となっており、九年度は、三・二%減の五十二万八千五百トン(部分肉ベース:三十七万トン)となった。
 十年度の成牛と畜頭数は、おおむねこの時期に出荷を迎えるとみられる子牛の生産動向等からみると、肉用種はやや減少するとみられ、乳用種はわずかに減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。また、成牛の枝肉生産量は、こうした成牛と畜頭数の動向から、わずかに減少すると見込まれる。
 また、牛肉の輸入量は、八年度は輸入牛肉需要の減退等から減少したが、九年度は、需要の回復や国内生産量の減少等から七・八%増の六十五万九千トンとなった。
 十年度の牛肉の輸入量は、消費量が前年度並みないしわずかに増加するとみられるなか、国内生産量がわずかに減少するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。このうち冷凍品は、やや増加すると見込まれ、冷蔵品は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
<価 格>
 牛枝肉の卸売価格(省令規格)は、近年、低下傾向で推移してきたが、八年度以降は、国産品需要の強まり等から上昇しており、九年度は、国内生産量の減少等から、三・八%高の一千百九十四円/キログラムとなった。
 十年度の牛枝肉の卸売価格(省令規格)は、国内生産量がわずかに減少するとみられるものの、輸入量がわずかに増加するとみられること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 豚 肉
<消 費>
 豚肉の一人一年当たり消費量は、近年、ほぼ横ばいで推移しているものの、九年度は、牛肉消費の回復、年度当初の小売価格の上昇等から、二・七%減の一一・三キログラムとなった。
 九年度の豚肉の消費量は、前年度が牛肉消費の減退等から堅調であったこと、小売価格の上昇から需要が弱まったこと等から、前年度を下回ったものの、近年の傾向としてはほぼ横ばいとなっている。こうしたことから、十年度の豚肉の家計消費は、ほぼ前年度並みになるとみられる。また、加工・外食等消費は、減少傾向で推移してきた加工品向け需要が回復しつつあること等もあり、ほぼ前年度並みになるとみられることから、全体でもほぼ前年度並みになると見込まれる。
<供 給>
 豚枝肉の生産量は、近年、減少傾向で推移してきたものの、九年度は、七年度以降の堅調な卸売価格等を背景に、子取り用めす豚頭数が回復傾向となったこと等を反映して、二・〇%増の百二十八万八千トン(部分肉ベース:九十万一千六百トン)となった。
 最近の肉豚と畜頭数は、わずかに増加しているものの、子取り用めす豚の飼養動向等からみて、十年度の肉豚と畜頭数はほぼ前年度並みになると見込まれる。また、豚枝肉の生産量は、こうしたと畜頭数の動向から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 また、豚肉の輸入量は、国内生産量の減少等から増加傾向で推移してきたものの、九年度は、台湾産の輸入禁止等から、二二・〇%減の五十一万七千五百トンとなった。
 十年度の豚肉の輸入量は、消費量、国内生産量ともにほぼ前年度並みとみられるなかで、期首在庫量は高水準であった前年度に比べ低い水準にあること、台湾からの輸入禁止後大きく減少していた冷蔵品輸入は、他の輸入先国からの輸入増により減少率が縮小傾向にあること等から、やや増加すると見込まれる。
<価 格>
 豚枝肉の卸売価格(省令規格)は、九年度は、輸入量は減少したものの、消費量の減少や国内生産量の回復等から、〇・八%安の四百八十五円/キログラムとなった。
 十年度の豚枝肉の卸売価格(省令規格)は、消費量、国内生産量ともにほぼ前年度並みとみられるなか、輸入量がやや増加するとみられること等から、わずかに下回ると見込まれる。

(4) 鶏 肉
<消 費>
 鶏肉の一人一年当たり消費量は、わずかな増加傾向で推移してきたものの、九年度は、牛肉消費の回復、景気の低迷等から、一・七%減の一〇・九キログラムとなった。
 十年度の鶏肉の家計消費量は、銘柄鶏肉等の需要が堅調に推移するとみられるものの、一般鶏肉の需要が伸び悩むとみられることから、ほぼ前年度並みになるとみられる。
 一方、加工・外食等消費量は、最近の景気低迷の影響もあり、前年度並みないしわずかに減少するとみられることから、十年度の鶏肉の消費量は、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<供 給>
 鶏肉の生産量は、飼養戸数の減少等を反映して減少傾向となっており、九年度は、消費の低迷等による卸売価格の下落に伴い、生産者による自主的な減産が実施されたこと等から、一・五%減の百二十二万トンとなった。
 十年度の鶏肉の生産量は、需要の低迷等を背景とした生産者による自主的な減産の取組が継続されること等から、わずかに減少すると見込まれる。
 また、鶏肉の輸入量は、近年、増加傾向で推移してきたが、九年度は、需要の低迷、国産品卸売価格の下落等から、九・七%減の四十九万七千九百トンとなった。
 十年度の鶏肉の輸入量(調製品を含む)は、消費量が前年度並みないしわずかに減少するとみられるものの、国内生産量がわずかに減少すると見込まれること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 なお、主要な輸入先国別にみると、輸出競争力が回復傾向にあるタイ産が増加するとみられるものの、他の国は、加工・外食等需要の低迷や円安傾向等から前年度並みないし減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年度のブロイラー正肉の卸売価格(東京)は、需要の低迷等から、「もも肉」は八・一%安の五百六十六円/キログラム、「むね肉」は一二・九%安の二百七十七円/キログラムとなった。
 十年度のブロイラーの正肉卸売価格は、消費量が前年度並みないしわずかに減少するとみられるものの、生産量がわずかに減少するとみられること、輸入量がほぼ前年度並みとみられること等から、需要の低迷等から大きく下落した前年度に比べ、「もも肉」は前年度並みないしわずかに上回ると見込まれる。
 一方、「もも肉」とは相対的に需要の弱い「むね肉」は、生産量がわずかに減少するとみられるものの、加工・外食等消費の低迷もあり、前年度並みないしわずかに下回ると見込まれる。

(5) 牛乳・乳製品
<消 費>
 九年度の飲用牛乳等の消費量は、天候要因等による牛乳消費の低迷等から、一・二%減となった。また、乳製品の消費量は、チーズ等の堅調な需要から、わずかに増加したとみられる。
 十年度の飲用牛乳等の消費量は、乳飲料等の需要が引き続き堅調に推移するとみられるものの、最近の牛乳消費の低迷等もあり、ほぼ前年度並みになると見込まれる。また、乳製品の消費量は、チーズ等が引き続き堅調に推移するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。
<供 給>
 生乳生産量は、九年度は、北海道で一・一%増となったものの、都府県で一・三%減となったことから、全体で〇・三%減の八百六十二万九千トンとなった。用途別の処理量は、消費動向等を反映しており、飲用牛乳等向け処理量は一・二%減、乳製品向け処理量は一・三%増となった。
 十年度の生乳生産量は、比較的堅調な乳製品需要等を背景とした生産者団体による自主的な計画生産の取組等からみて、わずかに増加すると見込まれる。生乳の用途別処理量については、飲用牛乳等向け処理量は、ほぼ前年度並み、乳製品向け処理量は、わずかに増加すると見込まれる。
 また、九年度の乳製品の輸入量は、堅調な需要を背景に二・三%増となった。
 十年度の乳製品の輸入量(生乳換算)は、引き続き乳製品需要が堅調に推移するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。
<価 格>
 九年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、飲用牛乳等向け生乳価格はほぼ前年度並みとみられ、〇・七%上回る八二・五円/キログラムとなった。
 十年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、飲用牛乳等向け生乳の価格の動向いかんによるが、飲用牛乳等向け生乳の価格が現状水準で推移すれば、加工原料乳保証価格が引き下げられたものの、生クリーム等向け生乳の価格が上昇するとみられることから、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(6) 鶏 卵
<消 費>
 鶏卵の一人一年当たりの消費量は、近年、横ばい傾向で推移しており、九年度は、〇・六%減の一七・五キログラムとなった。
 十年度の鶏卵の消費量は、家計消費がほぼ前年度並み、加工・外食等消費が、最近の景気低迷の影響もあり、わずかに減少するとみられることから、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<供 給>
 鶏卵の生産量は、七年度以降、ほぼ横ばい傾向となっており、九年度は、ほぼ前年度並みの二百五十五万九千トンとなった。
 十年度の鶏卵の生産量は、最近のひなえ付け羽数の動向等を反映し、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
 また、鶏卵(卵黄液、卵白粉等)の輸入量は、九年度は、円安傾向等から五・〇%減の十万四千百トンとなった。
 十年度の鶏卵の輸入量は、為替相場が円安傾向で推移していること等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、九年度は、十一月まではおおむね堅調に推移したものの、十二月以降、需要の低迷や出荷量の増加等を反映して大きく下落したことから、年度を通じては四・八%安の百九十一円/キログラムとなった。
 十年度の鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、加工・外食等消費の低迷等から、年度を通じては、ややないしかなりの程度下回ると見込まれる。なお、年度前半は、前年が堅調であったことから、下落率が比較的大きくなるとみられる。

V 農業資材

1 農業資材の動向第5図参照

<需 要>
 九年度の農業資材の需要動向を個別資材別にみると、九年度の農業機械の実質国内向け出荷額は、米価格の低迷及び農業所得の減少等により、農家の投資意欲が減退したとみられること、八年度末に発生した消費税率引上げ前のかけ込み需要の反動がみられること等により、一七・二%減少している。
 九肥料年度(九年七〜十年二月)の化学肥料の国内向け出荷量は、作付延べ面積の減少や単位面積当たり施肥量の減少傾向等から、〇・五%減少している。九農薬年度(八年十月〜九年九月)の農薬出荷量は、軽量化薬剤の普及、作付延べ面積の減少等から、七・一%減少したとみられる。
 九年度の飼料の需要量は、乳用牛では、飼養頭数の減少等を反映して減少したとみられるものの、豚では、と畜頭数の増加を反映して増加したとみられることから、〇・二%増加している。九年度の諸材料の需要量は、やや減少している。九年度(四〜二月)の光熱動力の需要量は、暖冬であった八年度と同様に九年度も暖冬であったこと等から、四・四%減少している。
 これらのことから、九年度の農業資材の需要は、全体ではかなりの程度減少しているとみられる。
 十年度の農業資材の需要は、農家戸数、作付延べ面積及び飼養頭羽数の減少等から、全体ではやや減少すると見込まれる。
<価 格>
 農家が購入する農業生産資材の価格は、全体では四年十月以降、原材料の国際価格の下落や円高等を反映し、前年を下回って推移していたものの、七年十一月以降は、飼料の国際価格が高騰したことや円安傾向等を反映し、前年を上回って推移している。このため、五〜七年度は下落したが、八年度は二・五%上昇し、さらに、九年度は消費税率の引上げもあり二・〇%上昇した。このうち九年度の月次動向をみると、九年七月以降は、わずかながら軟調に推移している。
 資材別に九年度の動向をみると、農機具は二・三%上昇し、肥料は原材料価格の上昇から、四・〇%上昇した。農業薬剤はコスト削減を踏まえ四年連続でメーカー出荷価格が引き下げられたものの、消費税率が引き上げられたことから、一・四%上昇した。飼料は、円安傾向にあること等により、二・一%上昇した。諸材料は二・一%、光熱動力は〇・九%上昇した。
 十年度の農業生産資材の農家購入価格は、作付延べ面積の減少や米の生産調整の拡大等により、農業資材の需給は緩和するとみられるものの、円安に伴う原材料価格の上昇等から、全体では、ほぼ前年度並みと見込まれる。
 農業の交易条件は、六年度以降、米、野菜等の価格低迷により、農産物価格が下落していること、さらに七年十一月以降は、農業生産資材価格が上昇していることから、おおむね悪化傾向で推移しており、九年度は七・四ポイント低下し、四年連続で前年を下回った。
 畜産の交易条件は、七年七〜九月期までは円高等を背景に飼料価格が下落したことから改善されていたが、七年十〜十二月期から八年七〜九月期までは、国際的な飼料価格の高騰により、悪化した。八年十〜十二月期以降は、堅調な国産品需要等により畜産物生産者価格が堅調であったことから改善されていたが、九年度は消費税率引上げもあり二・三ポイント低下した。

2 個別資材

(1) 農業機械
<需 要>
 国産農業機械の出荷額(輸出分を含む)は、農家戸数の減少や作付延べ面積の減少に伴い、おおむね減少傾向にあるが、六、七年度は、農業所得の大幅な上昇や転作の緩和により、農家の農業機械に対する投資意欲が向上したとみられることから、増加した。八年度は、六、七年度に集中した需要の反動や、米の生産調整面積の拡大、米価格の低迷により、農家の農業機械に対する投資意欲が減退したものの、九年に入ると、コンバイン、乾燥機等を中心に、消費税率引上げ前のかけ込み需要が発生したことから、一・七%増加の六千百七十五億円に達し、三年連続で六千億円台となった。
 九年度は米の生産調整面積は据え置かれたものの、消費税率引上げによる前倒し需要の反動に加え、米価格の下落、農産物の価格低迷により、農家の農業機械に対する投資意欲が減退したとみられ、九・六%減の五千五百八十九億円となった。
 輸出額は、八年度は円安が影響したとみられ、一四・六%増の一千百六十一億円となり、九年度は引き続き一七・〇%増の一千三百五十八億円となった。
 一方、輸入額は、八年度は一五・二%増加したものの、九年度は五・九%減の三百一億円となった。
 出荷額及び輸出入額から実質化した国内向け出荷額を推計すると、八年度は〇・六%減少し、九年度は一七・二%減少したとみられる。
 十年度は、低コスト化を目指し、経営規模の拡大を図ろうとする意欲的な農家や組織経営体を中心に、高性能、大型の農業機械や更新用を中心に一定の需要が見込まれる。しかし、九年産米価格が下落していること、十年度の米の生産調整目標面積が大幅に増加すること、九年度の農業所得が稲作収入等の減少の影響でかなりの程度減少していること等により、稲作関連機械を中心に農家の投資意欲が減退するとみられること、六〜七年を中心に稲作関連機械の更新が集中した影響で更新需要が減少するとみられること等から、全体では前年度に比べやや減少すると見込まれる。
<価 格>
 近年の農機具の農家購入価格は、製造コストの上昇等からわずかな上昇はみられるものの、おおむね安定的に推移しており、八年度は〇・七%の上昇となった。九年度は、消費税率引上げの影響もあり、二・三%上回った。
 十年度は、厳しい農業情勢を反映し、十年一〜十二月間の国内メーカー出荷価格が据え置かれたこと等から、ほぼ前年度並みと見込まれる。

(2) 肥 料
<需 要>
 化学肥料(N、P、K成分換算合計)の需要量(工業用内需を除いた国内向け出荷量)は、作付延べ面積が減少していることに加え、良質米生産に対応して追肥が抑制傾向にあることや、環境保全型農業の進展に伴い、施肥の適正化が行われていること、側条施肥の進展及び肥効調節型肥料の普及により、施肥効率が向上していることなど、全体的に単位面積当たり施肥量が減少していることから、おおむね減少傾向で推移している。八肥料年度(八年七月〜九年六月)は、四・九%減少の百五十六万三千トンとなった。九肥料年度(九年七月〜十年二月)は、夏季の少雨により追肥需要が減少したことから、〇・五%減少している。
 十肥料年度は、米の生産調整面積が大幅に増加すること、作付延べ面積が減少するとみられること、環境への配慮、省力化を背景とした側条施肥の進展や肥効調節型肥料の普及等によって単位面積当たりの施肥量は減少傾向にあること等から、やや減少すると見込まれる。
<価 格>
 化学肥料の主要原材料の国際価格の動向をみると、世界的な肥料需要の増大を背景に、全体的に上昇傾向にある。尿素については下落傾向にあり、特に八年夏以降は、中国の尿素の輸入規制措置等の影響から、急落している。
 次に、輸入価格についてみると、八年、九年は国際価格の上昇に加え、円安が進行したことに伴い、上昇傾向で推移している。
 このような原材料価格の動向等を反映し、肥料のメーカー出荷価格は、八年以降引き上げられており、肥料の農家購入価格は、おおむねこれらのメーカー出荷価格の動きに連動して推移している。八年度は一〇%上昇し、九年度は円安傾向に加え、消費税率の引上げも加わり、四・〇%上昇した。十年度は、原材料の輸入価格が円安傾向にあることから、前年度を大幅に上回って推移すると見込まれることにより、わずかに上昇すると見込まれる。

(3) 農 薬
<需 要>
 農薬の需要は、作付面積の減少に加え、薬剤の高品質化、省力化のための少量散布化傾向等から、出荷量でみると、五農薬年度(四年十月〜五年九月)の四十八万四千トン以降は減少傾向で推移している。八農薬年度は七・〇%減の四十一万七千トンとなった。九農薬年度はいもち病の発生が一部の地域にあったものの、気温、日照時間とも平年並みに推移したことにより、病害虫の発生が全般的に少なかったこと、水田用除草剤の軽量化薬剤(一キロ粒剤、フロアブル剤)がさらに普及したこと、水稲作付面積が減少したこと等から、全体で七・一%減少したとみられる。
 十農薬年度は、病害虫の発生状況にもよるが、水田用除草剤において、従来の薬剤に代わり、製造、流通から利用に至るまで、省力化やコスト低減化が図られる軽量化薬剤の普及が引き続き進むとみられることや、米の生産調整面積が大幅に増加すること等により、水稲除草剤(一発処理剤等)の出荷減も見込まれること、作付延べ面積が減少するとみられること等から、ややないしかなりの程度減少すると見込まれる。
<価 格>
 農薬のメーカー出荷価格は、安全性や環境保全に関する試験研究費等のコスト要因はあるものの、六農薬価格年度(五年十二月〜六年十一月)以降は、原材料価格の低下や厳しい農業経営環境等を反映して前年度を下回っており、八農薬価格年度は一・五%、九農薬価格年度は〇・五%とそれぞれ下落している。
 農薬の農家購入価格は、このようなメーカー出荷価格の動向を反映して推移しており、八年度は一・九%下回った。九年度は四月以降の消費税率の引上げもあり一・四%上回った。
 十農薬年度は、農薬の製造の合理化及び流通の効率化に伴うコスト削減等により、十農薬価格年度のメーカー出荷価格は、ほぼ前年度並みとみられること等から、ほぼ前年度並みと見込まれる。

(4) 飼 料
<需 要>
 飼料の需要量(可消化養分総量ベース)は、わずかな減少傾向で推移してきたが、九年度は、乳用牛での減少、豚での増加等から、全体では〇・二%増の二千六百六十四万トンとなったとみられる。
 十年度の飼料の需要量は、豚での需要が、ほぼ前年度並みとみられるものの、他の畜種用は飼養頭羽数の減少等により、減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
<供 給>
 九年度の配合・混合飼料の生産量は、乳牛用等が減少したものの、肉用牛用、養豚用が増加したこと等から、全体で〇・三%増の二千四百七十六万九千トンとなった。飼料作物の収穫量は、九年は、天候に恵まれたこともあり、一・一%増の三千九百五十四万二千トン(生草収量ベース)となったとみられる。
 十年度の配合・混合飼料の生産量は、養豚用がほぼ前年度並みとみられるものの、飼養頭羽数の減少等により、他の畜種用は減少すると見込まれることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
 十年度の飼料作物の作付面積は、大家畜経営における自給飼料生産基盤拡充等の取組もあり、わずかに増加すると見込まれる。また、単収は、優良品種の普及や栽培管理技術の向上等もあり、やや増加すると見込まれる。こうしたことから、十年度の飼料作物の収穫量はかなりの程度増加すると見込まれる。
 また、粗飼料の輸入量(可消化養分総量ベース)は、近年増加傾向にあり、九年度は一・四%増の百三十万トンとなったとみられる。
 十年度の粗飼料の輸入量は、国内の飼料作物の収穫量の増加が見込まれることに加え、円安傾向により輸入価格が上昇していること等から、やや減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年度の配合飼料の農家購入価格は、飼料穀物の国際価格が高騰した前年度に比べ下落傾向となったものの、円安の進行等を反映して一・四%上回った。
 十年四〜六月期の配合飼料のメーカー出荷価格は、とうもろこしの国際相場が、アジアの経済混乱による需要減や南米産の豊作等により軟調に推移していること、前期に比べ円安が是正されたこと、海上運賃が下落していること等から、引き下げられた。
 このように、最近のメーカー出荷価格は下落しているが、一方で、引き続き、世界のとうもろこし在庫率は低水準にあること、九年度に比べ円安傾向にあること等もあり、十年度の配合飼料の農家購入価格は、前年度並みないしわずかに下回ると見込まれる。
 なお、主要生産地帯の天候、円相場の動向等いかんによっては、とうもろこしの輸入価格の変動もありうるため、今後の動向を注視していく必要がある。

(5) 諸材料
<需 要>
 九年度の諸材料の需要量は、農業用フィルムが野菜作付面積の減少等に伴い七・五%減少し、青果物用段ボール箱が消費税率引上げの影響により三・二%減少したことから、全体ではやや減少したとみられる。
 十年度の農業用フィルムの出荷量は、ハウス等の設置面積が増加傾向にある一方で、マルチ、トンネル栽培面積が減少傾向にあること、張り替え作業の省力化及び廃棄物処理の観点から長期展張性フィルムやポリオレフィンフィルムが普及しつつあること等から、全体ではわずかに減少すると見込まれる。また、十年度の青果物用段ボール箱の需要量(段ボールシートの青果物向け製箱投入量)は、青果物の出荷量が野菜でわずかに減少し、果実でかなりの程度減少するとみられること、小箱の普及も一巡したとみられること等から、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
 これらのこと等から、十年度の諸材料全体の需要量は、わずかに減少すると見込まれる。
<価 格>
 九年度の諸材料の農家購入価格は、農業用フィルムは原材料価格が上昇し、青果物用段ボール箱は原材料価格が下落の傾向にあったが、ともに消費税率の引上げに伴いわずかに上昇したことから、全体では二・一%上回っている。
 十年度は、農業用フィルムの原材料であるポリエチレン樹脂価格は、東南アジアのナフサ需要の増加や円安傾向等により八年末から高い水準にあったが、韓国化学製品の減産によるナフサ需給の緩和や十年四月からの輸入関税特恵枠の新設により輸入ポリエチレン樹脂の増加が見込まれることから、農業用フィルムのメーカー出荷価格はわずかに下回ると見込まれる。
 また、青果物用段ボール箱のメーカー出荷価格は、需要量がわずかに下回るとみられることから、わずかに下回ると見込まれる。
 これらのことから、十年度の諸材料全体の農家購入価格は、わずかに下回ると見込まれる。

(6) 光熱動力
<需 要>
 光熱動力の需要を農林業向け石油製品(灯油、重油、軽油、家庭用を含む)の販売量でみると、九年度は、天候がほぼ順調に推移したこと、暖冬傾向になったこと等から、全体で四・四%減少している。
 十年度は、軽油は、生産調整面積の増加により稲作関連機械の稼働率が下回るとみられることから、減少すると見込まれる。灯油及び重油は、冬季の天候にもよるが、前年度は暖冬で推移したことや、加温施設の増加が見込まれること等により、ともにやや増加すると見込まれることから、全体では、ほぼ前年度並みと見込まれる。
<価 格>
 光熱動力の農家購入価格は、九年度はガソリン価格が引き続き下落しているものの、消費税率の引上げ等により、全体で〇・九%上回った。
 十年度の光熱動力全体の農家購入価格は、石油製品及び電気料金とも原材料である原油等の輸入価格が、円安基調により上昇するとみられること等から、わずかに上回ると見込まれる。

W 海外農産物

1 最近の穀物等の需給及び価格の動向

(1) 近年の穀物等の需給動向
 近年の穀物需給の動向をみると、需要面では、開発途上国を中心とした人口の増加に加え、畜産物消費の増加に伴う飼料需要が増大していること等から、着実に需要量が増加している。最近の需要構造の大きな変化としては、かつて最大の穀物輸入国であった旧ソ連において、社会経済体制の変革に伴う経済的な混乱のなかで畜産業が急速に衰退し、飼料穀物や大豆かすの輸入が激減していること、また、経済的な混乱により、最近では一部で需要低迷がみられるものの、中長期的には畜産物の消費が増加しているアジア諸国において、飼料穀物や大豆等の輸入需要が増大していることがある。
 一方、供給面では、八〇年代の高い在庫水準を背景として、九〇年代に入り、アメリカ、EUでは生産調整による供給管理が実施されていたが、九〇年代半ば以降の需給のひっ迫等から、いずれも生産調整の廃止もしくは縮小の方向が打ち出され、最近では生産量は増加している。
 また、九三年秋以降のとうもろこしの輸出禁止措置により、世界の穀物需給のひっ迫の要因の一つとなった中国においても、九六年以降、生産刺激策がとられたことから生産が拡大し、さらに、潜在的な生産力が高いとみられるアルゼンチンやブラジル等、南アメリカ諸国においても、最近急速に生産が拡大している。
 このようなこともあり、世界の穀物は、四年ぶりに生産量が消費量を上回った前年度に引き続き、九七/九八年度においても生産量が消費量を上回り、期末在庫量についても九五/九六年度を底に回復傾向にある。
 このように、全体の需給としては緩和傾向にあるが、一方で、すう勢的にみて世界の穀物の収穫面積の増加は緩やかなものにとどまっており、また、七〇年代や八〇年代のような単収の著しい増加はみられないことに加え、八八/八九年度のアメリカ中西部の干ばつ、九一/九二年度のアメリカ、旧ソ連の干ばつ、九三/九四年度のアメリカのミシシッピ川流域の洪水、九四/九五年度のオーストラリアの干ばつ、九七/九八年度のインドネシア等におけるエルニーニョ現象によるとみられる干ばつ等、大きな自然災害が近年頻繁に発生していることが、生産の不安定要因となっている。

(2) 九七/九八年度の穀物等の需給及び価格の動向第6図参照
<生 産>
 九七/九八年度の穀物等の生産量は、小麦は、カナダ、オーストラリア、EU、アルゼンチン等で減産になるとみられるものの、旧ソ連、中国、東欧、アメリカ等で増産になるとみられることから、四・八%増の六億一千六十九万トンと見込まれており、史上最高の生産量になるとみられる。
 飼料穀物は、旧ソ連、東欧、EU、アルゼンチン等で増産となるとみられるものの、アメリカ、中国、カナダ、南アフリカ、オーストラリア等で減産となるとみられることから、一・二%減の八億九千七百四十八万トンと見込まれている。
 大豆は、アルゼンチンで大幅に増加するのをはじめ、アメリカ、中国、インド、カナダ、ブラジル等の主要生産国ですべて増産になるとみられることから、一五・九%増の一億五千三百六十二万トンと見込まれており、史上最高の生産量になるとみられる。
 米は、インドネシア、日本、フィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、ブラジル等で減産になるとみられるものの、中国、インド、タイ、アメリカ、韓国等で増産になるとみられ、ベトナムではほぼ前年並みとみられることから、全体では〇・一%増の三億八千三十万トンと見込まれており、史上最高の生産量になるとみられている。
<消 費>
 消費量については、小麦は、アメリカでやや減少するものの、生産が回復する旧ソ連及び東欧、食料用消費の高まっているインドや中国で増加するほか、EU等、アメリカを除くほとんどの主要消費国で増加するため、一〇%増の五億八千四百五十万トンになると見込まれる。また、用途別には、天候不良により低品質の小麦が大量に発生したこと等から、飼料用消費の伸び率がその他の消費の伸び率を上回るとみられている。
 飼料穀物は、ブラジル、インドのほか、国内の飼料作物の作柄が良好なサウジアラビア、飼料用小麦の輸入が増加するとみられる韓国等で減少するとみられるものの、畜産需要の増加が続く中国、堅調な畜産需要が見込まれるアメリカ、生産の回復した旧ソ連、東欧のほか、アルゼンチン等で増加するとみられるため、わずかに増加すると見込まれている。なお、通貨の下落や経済の低迷が続いている東南アジア諸国においては、飼料用需要の減少が見込まれている。
 大豆は、中国、西欧諸国及びアメリカをはじめとして世界的に引き続き需要が堅調とみられることから、六・一%増の一億四千四百九十三万トンと見込まれている。
 米は、バングラデシュ、日本、EU等で減少するものの、中国、インド、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、アメリカ等で増加するとみられることから、〇・四%増の三億八千十二万トンと見込まれている。
 以上のことから、穀物全体としては、昨年度に引き続き生産量が消費量を上回ると見込まれる。
<貿 易>
 貿易量については、小麦は、生産量が回復する東欧、生産が増加している中国、前年度に大量に輸入したイラン、輸入税が引き上げられたトルコ等で輸入量が減少するとみられるものの、干ばつで大きな被害を受けた北アフリカ諸国、原油と食糧のバーター取引により輸入が増えるとみられるイラク、域内で低品質の小麦が大量に発生したEU、飼料用を中心に東欧等からの輸入を増やすとみられる韓国等で輸入量が増加するとみられること等から、わずかに増加すると見込まれている。
 飼料穀物は、メキシコで輸入が大幅に増加するとみられるものの、前年度に輸入したモルト用大麦の在庫増により、輸入需要がかなり大きく減少するとみられる中国、飼料用小麦の輸入が増加するとみられる韓国、豚の口蹄疫の発生した台湾、飼料用大麦の輸入量の減少が見込まれるサウジアラビア等で、それぞれ輸入が減少するとみられるため、全体ではかなりの程度減少すると見込まれる。
 大豆は、中国、EUの輸入量が引き続き増加するとみられること、世界的に需要の増加が続いていること等から、八・二%増の三千九百四十四万トンと見込まれる。なお、世界の飼料穀物の輸出に占めるアメリカの比重は、低下するとみられている。
 米は、インドネシアで九八年産メインクロップの作付けの遅れに伴い(生育の遅れが、二か月程度とみられること)、一部で干ばつの被害が発生し、九七年末以降、大量の輸入が行われていること、乾燥した天候により減産が見込まれるフィリピンでも輸入が増加しているほか、イラン等でも輸入が増加するとみられることから、一七・六%増の二千二百十五万トンになると見込まれており、史上最高の貿易量になるとみられている。
<在 庫>
 小麦の期末在庫量は、生産量の増加が消費量の増加を上回るため、二三・七%増加すると見込まれる。在庫率については、四・三ポイント上昇し、二三・四%になると見込まれる。これは、最近四年間で最高の水準である。
 飼料穀物は、生産量が消費量をわずかに上回るため、期末在庫量は三・九%増加するとみられ、在庫率は〇・四ポイント上昇して一四・二%になると見込まれる。特に、アメリカの期末在庫量は、前年度に比べ三五・六%増加すると見込まれている。これは、アルゼンチンにおいて急激な生産量の増加により輸出量が増えたこと等によるものである。
 大豆は、生産の拡大により生産量の増加が消費量の増加を上回るとみられることから、期末在庫量は四四・〇%増加するとみられ、在庫率は四・四ポイント上昇して一六・九%になると見込まれる。
 米は、生産量の増加が消費量の増加を上回るため、期末在庫量は四・〇%増加すると見込まれ、在庫率は、〇・五ポイント上昇し一四・二%になるとみられる。
<価 格>
 九七/九八年度の穀物等の国際価格(シカゴ相場)は、前年度に中国をはじめ、アメリカ、カナダ、EU等で記録的な豊作となったことから、小麦、とうもろこしは九六年夏以降下落傾向が続いており、九七年に入っても、南アメリカ諸国や旧ソ連、中国等で豊作となったこと等から低迷を続け、九八年も低い水準で推移している。大豆については、九六年秋以降下落していたものの、その後は九七年夏頃まで中国の堅調な飼料需要等により上昇していたが、夏以降は乱高下を繰り返しながらも下落傾向となっている。
 米については、国際取引指標となるタイ国貿易取引委員会公表価格(うるち精米、砕米混入率一〇%未満のFOB価格)をみると、九七年当初は、輸出業者等による調達の遅れ、輸出需要の期待等により上昇したが、中国等の豊作で輸出不振となったこと等から四月以降下落し、その後も弱含んでいたものの、九七年末になりエルニーニョ現象の影響を受けているインドネシア、フィリピン等への輸出が順調なため再び上昇したが、九八年に入ってからは、需要の一巡に伴い落ち着いた動きとなっている。

2 個別品目の需給動向の見通し

(1) 小 麦
<生 産>
 九八/九九年度の小麦の生産量は、北半球の春小麦や南半球の小麦の作付けが行われていないため流動的な要素はあるが、EU、北アフリカ諸国は増産の見込みであるものの、中国、アメリカ、カナダ、インド、旧ソ連、東欧、アルゼンチンで減産が見込まれることから、世界全体ではわずかに減少すると見込まれる。
<消費、貿易>
 発展途上国を中心とした人口増加及び経済発展に伴う食生活の高度化による食糧用消費が増加する一方、特に東南アジアを中心として通貨の切下げ等による輸入価格の高騰に伴う消費の減少が見込まれることから、消費量はわずかに増加すると見込まれる。前年度に伸びた飼料用消費は、食糧用消費の伸びを下回るとみられる。
 貿易量は、生産量の増加が見込まれるEUやモロッコ等、北アフリカ諸国で輸入量が減少するとみられるものの、減産が見込まれるブラジルや消費量が伸びているイラン等で輸入量の増加が見込まれること等により、わずかに増加すると見込まれる。
<在庫、価格>
 期末在庫量は、生産量が減少し、消費量が増加するとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。
 価格の動向を小麦の国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九七年は、当初世界的な豊作により弱含んで推移したが、三月下旬以降には大豆等につられて上昇し、四月には九七年産冬小麦についてのアメリカの寒波や西欧の干ばつの懸念、期末在庫率が史上最低となる見通しから上昇した。しかし、五月以降は冬小麦の作柄が回復し、春小麦の作付けの遅れも回復したことから下落した。十月に入り大豆やとうもろこしの価格上昇につられ一時上昇したが、世界の生産量が過去最高水準となる見通しやアジアの経済不振、通貨下落に伴う輸入需要への懸念から下落した。九八年一月には、公表されたアメリカ冬小麦の作付面積が前年をさらに下回る低水準であったため一時上昇したものの、作柄はおおむね良好な状態にあり、十分な供給が確保されていること等からさらに下落基調で推移しており、四月に入り約五年ぶりに二ドル/ブッシェル台となった。
 今後については、九八/九九年度の作付けが確定していないため流動的な要素もあるが、生産量が減少するなかで、消費量は着実に増加し、在庫率が低下するとみられること等から、今後は、弱含みの現在の水準に比べて上向くと見込まれる。

(2) 飼料穀物
<生 産>
 九八/九九年度の世界の飼料穀物の生産量は、北半球で作付けが始まったばかりであり、南半球での作付けは秋以降とかなり先であるため、流動的な要素があるが、EU、旧ソ連、東欧等で減少するとみられるものの、中国においてかなりの程度増加するほか、アメリカ、カナダ等でも増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。品目別では、大麦、ソルガムは減少が見込まれるものの、とうもろこしは増加すると見込まれる。
<消費、貿易>
 アジアでは、インドネシア、マレーシア、タイなどで経済危機による畜産の生産の減少により飼料穀物の需要は減少するとみられるものの、アメリカやカナダ、ブラジル等で畜産の生産増により需要は増加するとみられ、中国でも畜産需要に加えビール用大麦の消費も増えるとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。これらの結果、消費量は史上最高になると見込まれる。貿易量はわずかに増加すると見込まれる。
<在庫、価格>
 期末在庫量は、生産量が消費量を上回るとみられるため、やや増加すると見込まれる。なお、アメリカの期末在庫量は、大幅に増加すると見込まれる。
 とうもろこしの価格動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九七年は、当初、中国の輸出再開やアルゼンチンの豊作の見込みから弱含んでいたが、アメリカの飼料穀物需要の増加の見込み等から、大豆の価格上昇につられて上昇し、三月には三ドル/ブッシェル台に達した。しかし、その後は九七年産の順調な作付け、生育に理想的な天候の推移等から、ほぼ一貫して下落した。七月中旬には、受粉最盛期のアメリカ中西部で天候が乾燥したことから上昇に転じ、十月には、エルニーニョ現象の影響による九八年産の作柄見通しへの懸念、中国の輸出停止の情報等によりさらに上昇したが、アジアの経済不振、通貨下落に伴う輸入需要への影響が懸念され、直近の輸出検証高が前年を下回っていること等から弱含んだ。九八年一月に入り、USDAの需給予測で期末在庫量が下方修正されたため上昇したが、その後はアルゼンチンの豊作見込みや大麦や飼料用小麦の国際価格が米国産とうもろこしより安くなっていることから、再び安値が続いている。
 今後については、期末在庫量が増加するとみられることや、アルゼンチン等の豊作によって輸出競争が激化していること、東南アジアで飼料需要が減少するとみられること等から、前年度の水準を下回って推移すると見込まれる。

(3) 大 豆
<生 産>
 九八/九九年度の世界の大豆の生産量は、北半球で作付けられているところであり、南半球では秋以降に作付けられるため流動的な要素があるが、アルゼンチンでわずかに減少するとみられるものの、アメリカ、ブラジル、中国等でほぼ前年度並みの生産が見込まれ、インド等でかなり大きく増加するとみられることから、史上最高とみられる前年度を上回り、わずかに増加すると見込まれる。
<消費、貿易>
 消費量は、堅調な油脂需要に支えられてやや増加すると見込まれ、貿易量も増加が見込まれる。
<在庫、価格>
 期末在庫量は、生産量が消費量を上回るとみられることから、かなりの程度増加すると見込まれる。
 大豆の価格動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、アメリカ国内の圧砕需要や中国の飼料需要等が堅調なことから九六年十一月以降上昇を始め、九七年三月には八ドル/ブッシェル台に達した。その後、三月のアメリカの在庫量が予想を下回ったためさらに上昇し、五月には中国の買付けの情報等から一時九ドル/ブッシェル台に達した。しかし、九七年産の生育が順調なことや六月末公表の作付面積が予想を上回ったことから下落した。七月には、EUや中国の買付け、アメリカ中西部の乾燥により上昇した。その後、価格が新穀に移行したことから一時下落したが、十月のアメリカ産の輸出量が前年を大きく上回ったことや作付期のブラジルの天候に対する懸念等により再び上昇した。しかし、ブラジルの天候が好転したことやアジアの経済不振に対する懸念から下落し、その後も全般的に天候に恵まれた南アメリカ諸国の豊作見通し等から、九八年三月以降、六ドル/ブッシェル台前半で推移している。
 今後については、在庫量の増加が見込まれるものの、油脂需要に支えられて消費量が増加すると見込まれることから、ほぼ前年度並みで推移すると見込まれる。ただし、秋以降については、九八/九九年度の作付けが確定していないことやエルニーニョ現象の影響、気象動向により流動的であるため、今後の動向を注視する必要がある。





目次へ戻る

税金365日


保  険  と  税


国 税 庁


 国民の多くが加入している保険には、民間の保険会社が扱っている生命保険、損害保険のほか、農業協同組合(JA)等が扱っている各種の共済と、郵便局が窓口となっている簡易保険などがあります。
 これらの保険に加入し保険料を支払った場合は、所得税を計算する際の基礎となる所得金額から支払保険料に応じて一定額が控除されます。また、保険金を受け取った場合は、契約内容などにより、相続税や贈与税あるいは所得税の課税関係が生じる場合があります。
 そこで、保険に関する税金のあらましを説明しましょう。

【生命保険料を支払った場合】

 所得者本人や家族を受取人とする生命保険や簡易保険、生命共済の保険料又は掛金(以下「保険料」といいます。)を支払った場合は、その年中の支払額に応じて、一定額(最高十万円)が「生命保険料控除」として、その年の所得金額から控除されます。
 ただし、保険期間が五年に満たない生命保険契約や生命共済に係る契約で、被保険者が保険期間満了の日に生存している場合など特定の場合に保険金が支払われることになっているものの保険料は、生命保険料控除の対象となりません。
 また、その年に生命保険契約に基づいて受け取った剰余金や割戻金は、支払った保険料から差し引くことになっています。

1 生命保険料控除額の計算

 その年中に支払った保険料を、一定の要件に該当する個人年金保険料と、一般の生命保険料とに区分し、それぞれについて次表により計算した金額を合計した額(最高十万円)が控除額になります。

2 生命保険料控除を受けるための手続

 (1) サラリーマンの場合
 通常、年末調整でこの控除を受けることになりますので、「給与所得者の保険料控除申告書」にその年中に支払った生命保険料の金額などの必要事項を記載して、年末調整までに勤務先に提出してください。

 (2) 事業などを行っている方の場合
 確定申告書に必要事項を記入して確定申告を行うことにより、この控除を受けることになります。
 なお、一般の生命保険料にあっては、支払った保険料が一契約につき年間九千円を超えるものについて、個人年金保険料については、その金額の多少を問わずすべてのものについて、保険会社などの発行する証明書などを添付又は提示することが必要です。

【生命保険金を受け取った場合】

 生命保険契約に基づいて一時金や年金を受け取った場合は、生命保険契約の保険料をだれが負担していたかによって、相続税や贈与税あるいは所得税の課税対象になります。

1 満期保険金を一時に受け取った場合

 (1) 保険料を負担していた人が保険金受取人のとき
 受け取った保険金から負担した保険料を差し引いた金額が、一時所得として所得税の課税対象となります。ただし、一時所得には五十万円の特別控除があり、これを超える額の二分の一に対して税金がかかることになっています。
 なお、一時払養老保険又は一時払損害保険の差益(保険期間が五年以下のものや契約期間が五年超のもので五年以内に解約されたもの)については、受け取るときに一律に二〇%(このうち五%は地方税)の税率での源泉徴収による源泉分離課税となります。

 (2) 保険料を負担していた人以外の人が保険金受取人のとき
 受け取った保険金に対して贈与税がかかります。
 なお、贈与税は、その年一年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から六十万円の基礎控除額を差し引いて計算します。

2 死亡保険金を一時に受け取った場合

 (1) 保険料を負担していた人が死亡したとき
 保険金受取人に相続税がかかります。ただし、保険金受取人が相続人であるときは、相続人の受け取った保険金の合計額のうち、法定相続人の数に五百万円を掛けた金額までが非課税となります。
 なお、相続税は、亡くなった人の「正味の遺産額」が「基礎控除額」〔5 000万円+(1 000万円×法定相続人の数)〕を超える場合に、その超える額に対して課税されます。

 (2) 保険料を負担していた人が保険金受取人のとき
 受け取った保険金から負担していた保険料を控除した金額が、一時所得として所得税の課税対象となります。

 (3) 保険料を負担していた人が保険金受取人でも死亡した人でもないとき
 保険金受取人に贈与税がかかります。

3 満期保険金を年金で受け取る場合

 (1) 保険料を負担していた人が年金の受取人のとき
 毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。

 (2) 保険料を負担していた人以外の人が年金の受取人のとき
 保険金を年金として受給する権利を贈与によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が贈与税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
 なお、(1)及び(2)の雑所得の計算に当たっては、その年に受け取る年金に見合う支払保険料を控除することになっています。

4 死亡保険金を年金で受け取る場合

 (1) 保険料を負担していた人が死亡したとき
 保険金を年金として受給する権利を相続や遺贈によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が相続税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。

 (2) 保険料を負担していた人が年金の受取人のとき
 毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。

 (3) 保険料を負担していた人が年金の受取人でも死亡した人でもないとき
 保険金を年金として受給する権利を贈与によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が贈与税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
 なお、(1)、(2)及び(3)の雑所得の計算に当たっては、その年に受け取る年金に見合う支払保険料を控除することになっています。

5 各種特約に基づく給付金を受け取った場合

 生命保険契約の特約に基づく給付金で、身体の傷害や疾病を原因とする傷害給付金や入院給付金などを受け取った場合は非課税となり、所得税も贈与税もかかりません。
 なお、多額の医療費を支払った場合は、確定申告をすることにより医療費控除が受けられますが、生命保険契約に基づく入院給付金や手術給付金などを受け取っているときは、支払った医療費からこれらの給付金を差し引いて、負担した医療費を計算することになっています。

【損害保険料を支払った場合】

 所得者本人や本人と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している住宅や家財のうち一定のものを保険の目的とする損害保険契約等、又はこれらの人の身体の傷害や入院による医療費の支出に基因して保険金などが支払われる損害保険契約等に基づく保険料や掛金を支払ったときには、保険期間が十年以上で、満期返戻金が支払われる長期損害保険料の場合は最高一万五千円が、それ以外の短期損害保険料の場合は最高三千円が「損害保険料控除」として、その年の所得金額から控除されます。
 なお、長期損害保険料と短期損害保険料とがある場合の控除額は、合計で最高一万五千円です。
 控除を受けるためには、保険会社などの発行する証明書などを添付又は提示することが必要です。
 また、サラリーマンについては、通常、生命保険料を支払った場合と同様に年末調整の際に控除を受けることになりますので、必要事項を記載した「給与所得者の保険料控除申告書」を年末調整までに勤務先に提出してください。

【損害保険金を受け取った場合】

 損害保険金を受け取った場合も、保険料の支払者や支払原因によって課税方法が異なりますが、保険を掛けていた人が建物の焼失や身体の傷害・疾病(死亡を伴わないものに限ります。)を原因として受け取る保険金には原則として課税されません。
 しかし、例えば事業の商品や店舗が火災で焼失した場合、焼失した商品の損害保険金は事業収入(売上げ)になります。また、焼失した店舗の損害保険金は、店舗の損失額を計算する際に差し引くことになります。
 また、偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われる損害保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担したものについては、その保険金のうち、全部又は一部に相続税が課税されます。
〔訂正〕
 本紙7月15日号「第百四十二回国会で審議された法律案・条約の一覧表」に誤りがありました。12ページ、提出番号90の法律案の公布月日は「6・15」ではなく「6・12」でした。お詫びして訂正します。




 
    <8月5日号の主な予定>
 
 ▽交通安全白書のあらまし…………総 務 庁 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



目次へ戻る