官報資料版 平成10





交通安全白書のあらまし


―交通事故の状況及び交通安全施策の現況―


総 務 庁


 交通安全対策基本法(昭四十五法一一〇)第十三条の規定に基づき、政府が国会に報告する「交通事故の状況及び交通安全施策の現況等に関する年次報告」(平成十年版交通安全白書)が、六月二日の閣議決定を経て第百四十二回国会に提出された。
 今回の白書は昭和四十六年に第一回の報告がなされて以来二十八回目のものであり、その構成は次のとおりとなっている。
 本冊の『平成九年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況』では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、近年の交通事故の状況と平成九年度中の交通安全施策の実施状況をまとめて記述し、それとともに近年の交通事故の状況にかんがみ、道路交通では死傷者数が最も多い年齢層である若者に焦点を合わせ「若者の交通事故の状況とその対策」、鉄軌道交通では最近の重大事故に焦点を合わせ「重大事故の発生と交通安全対策」、海上交通では海難事故が最も多くなったプレジャーボートに焦点を合わせ「プレジャーボート等の事故の増加と交通安全対策」として重点的に記述している。
 分冊の『平成十年度において実施すべき交通安全施策に関する計画』では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに平成十年度の交通安全施策の実施計画について記述している。
 本冊の概要は次のとおりである。

<第1編> 陸上交通

<第1部> 道路交通

<第1章> 道路交通事故の動向

近年の道路交通事故の状況

 我が国における道路交通事故による死傷者数は、モータリゼーションの進展に伴い、昭和四十五年に至るまで年とともに増加し、同年には死者数一万六千七百六十五人、負傷者数九十八万一千九十六人を記録し、史上最悪の状況に至った。
 このため、交通安全の確保は焦眉の社会問題となり、国を挙げてその対策に取り組むべく制定された交通安全対策基本法に基づき、昭和四十六年度から五か年ごとの交通安全基本計画が作成された。
 同計画に基づき、交通安全施設の一層の整備を始めとする各般の交通安全対策を総合的かつ強力に推進した結果、交通事故死者数を昭和五十四年は八千四百六十六人、五十五年は八千七百六十人に抑え、第一次及び第二次の計画の目標をほぼ達成することができた。
 しかしながら、その後、交通事故死者数は緩やかながら増勢に転じ、昭和五十七年に九千人を、六十三年には一万人を突破するという状況に至り、第三次、四次及び五次の計画の目標を達成することはできなかった。
 第六次交通安全基本計画(計画期間:平成八〜十二年度)では、交通事故の実態に十分対応した総合的な交通安全対策を積極的に推進し、年間の交通事故死者数を平成九年までに一万人以下とし、さらに、十二年までに九千人以下とすることを目標としているが、九年の交通事故死者数は八年に続き一万人を下回り、第六次交通安全基本計画の第一段階の目標を達成することができた(第1図参照)。
 交通事故死者数を人口十万人当たりでみると、昭和四十五年にピーク(一六・二人)を記録したが、四十六年以降減少に転じ、五十四年には七・三人にまで減少した。以後徐々に増加し、六十三年以降は八人台から九人台で推移していたが、平成九年は七・六人と八年に引き続き七人台となった。
 また、自動車一万台当たりの交通事故死者数及び自動車一億走行台キロ当たりの交通事故死者数については、昭和五十年代半ばまで順調に減少してきたが、その後は漸減傾向が続いている(第2図参照)。

平成九年中の道路交通事故の状況

1 概 況
 平成九年の交通事故(人身事故に限る。以下同じ。)発生件数は七十八万三百九十九件で、これによる死者数は九千六百四十人、負傷者数は九十五万八千九百二十五人であった。
 死者数は、平成八年より三百二人減少し、二年連続一万人を下回ったものの、発生件数は五年連続で過去最悪の記録を更新し、負傷者数は三年連続で九十万人台となるなど、依然厳しい状況にある。

2 交通死亡事故の特徴
 平成九年の交通事故死者数は、前年に比較して、自転車乗用中を除くすべての状態で減少したが、特に、歩行中の死者数の減少、若者の自動二輪車乗車中の死者数の減少、自動車乗車中の死者数の減少が著しい。これは、シートベルトの着用率の向上、道路交通環境の整備、交通安全教育の推進、車両の安全性の向上などの交通安全施策の効果によるものと考えられる。
 (1) 年齢層別交通事故死者数
 平成九年中の交通事故死者数を年齢層別にみると、十六〜二十四歳の若者(二千二十六人)及び六十五歳以上の高齢者(三千百五十二人)が多く、この二つの年齢層で全交通事故死者数の五三・七%を占めている(第3図参照)。
 (2) 状態別交通事故死者数
 平成九年中の交通事故死者数を状態別にみると、自動車乗車中が最も多く、全死者数の四四・一%を占めている。前年と比べると、自転車乗用中(十三人増)を除き減少しており、特に、歩行中(百五十一人減)が大幅に減少している(第4図参照)。
 (3) 状態別・年齢層別の交通事故死者数
 平成九年中の状態別の交通事故死者数を年齢層別にみると、以下のような特徴がみられる。
 @ 若者の自動車乗車中については、平成四年以降減少傾向にあり、七年はいったん増加したが、九年は、八年に続いて減少した。若者の自動二輪車乗車中については、六年にいったん増加したが、その後三年連続して減少した(第5図参照)。
 A 高齢者については、高齢運転者の増加を背景に、自動車乗車中が増加を続け、平成九年は、三年連続して自転車乗用中を上回り、歩行中に次ぐ多さとなった。歩行中は、七年に最多となっていたが、二年連続して減少した(第6図参照)。
 (4) シートベルト着用の有無別死者数
 自動車乗車中の死者のうち、シートベルト非着用の死者数は二千六百九十六人で、前年より三百三人減少した。十六〜二十四歳の若者の非着用死者数は、全非着用死者数の三一・五%を占めているが、前年より七十四人減少した。昭和六十一年十一月から一般道路における自動車前席乗員にシートベルトの着用が義務付けられた。シートベルト着用調査によれば、近年、横ばい状態にあった着用率が、平成六年から上昇傾向にある(第7図第8図参照)。

<第2章> 若者の交通事故の状況とその対策

 今の若者は、我が国のモータリゼーションが進展し、家庭に浸透してきた時期に育ってきた世代であり、自動車は若者の日常生活において、極めて身近なものとなっている。
 また、近年の運転免許取得状況をみると、大半の者が人生の若い時期に免許を取得していることがうかがえる。言い換えると、我が国の交通社会には、逐年、新たに多くの若者が運転者として参入してきていることを示しているものといえる。
 若者(十六〜二十四歳)の交通事故死者数は、高齢者(六十五歳以上)に次いで多く、負傷者数は、他の年齢層と比べて突出した第一位となっている。また、若者が第一当事者となっている事故件数は、交通事故件数、死亡事故件数ともに最も多く、若者は被害者としてだけではなく、事故の原因者としても交通事故に関与する度合いが高い。
 若者の交通事故を減少させることは、若者のみならず我が国の交通社会全体の死傷者数を一層減少させることにつながっていくと考えられる。また、少子・高齢化の進展により、今後生産年齢人口の減少が見込まれているが、一方で、交通事故死が若者世代の死亡原因の第一位となっていることから、若者の交通事故を減少させることは広く社会的にも重要な課題である。

1 若者の交通事故の状況
 (1) 若者と交通社会
 若者の免許保有率は、十六〜十九歳が三〇%前後、二十〜二十四歳が八三%前後でここ数年推移しており、若者の大半が二十歳代前半までに免許を取得している。
 平成六年に総務庁が実施した意識調査から、高校生は、原動機付自転車免許と自動二輪車免許について各々約二割が取得を希望している。一方、普通免許については八割以上が取得を希望しており、そのうち八割以上が二十歳頃までに取得したいとしている。
 一方で、交通事故死が若者の死亡原因の第一位となっている(第二位は自殺)。
 (2) 若者の交通事故の状況
 若者(十六〜二十四歳)の交通事故死者数は、減少傾向にあるものの、平成九年は、二千二十六人(全交通事故死者数に占める割合は二一・〇%)と、高齢者に次いで多く、負傷者数は、ここ数年横ばいであるものの、九年は二十四万四千二百三十人(全交通事故負傷者数に占める割合は二五・五%)と年齢層別では突出した第一位となっている。
 平成九年における状態別の死者数では、自動車乗車中が五七・七%(一千百六十八人)と最も多い。また、状態別死者数の占める割合は、十六〜十九歳では、二輪車乗車中(原付を含む。)が四七・四%と自動車乗車中(四四・三%)を上回っているが、二十〜二十四歳では自動車乗車中が六八・六%と二輪車乗車中(二五・三%)より圧倒的に高い。
 男女別の死者数では、男性が八一・五%(一千六百五十二人)と、男性が占める割合が圧倒的に高くなっている。
 交通事故及び死亡事故とも若者が第一当事者となった事故は三割弱を占め、突出した第一位であり、若者の事故の原因者としての関わりが高くなっている(第9図第10図参照)。
 また、第一当事者が自動車等(自動車、自動二輪、原付)となっている死亡事故件数の運転免許取得者一万人当たりの値をみると、若者は二・六件と突出した第一位であり、全年齢層の一・二件に対して二倍以上の値となっている。
 若者が第一当事者である死亡事故の主な特徴としては、@事故類型別にみると、全年齢層に比べ、車両単独事故の割合が高く、人対車両事故の割合が低い(第11図参照)、A曜日別にみると、全年齢層と比較して土曜日と日曜日の占める割合が高い(第12図参照)、B時間帯別にみると、夜間、特に深夜から早朝にかけて発生した事故の割合が高い。この傾向は、自動車と自動二輪車について明確であるが、原動機付自転車については、夕方から夜にかけて若干多くなっているものの、時間帯による差はそれほど大きくない(第13図参照)、C自動車等運転中の法令違反別にみると、全年齢層と比較して最高速度違反による事故が圧倒的に多い(第14図参照)等が挙げられる。
 以上のことから、若者の交通事故死者の特徴としては、自動二輪車乗車中の死者が近年著しく減少していること、男性の占める割合が著しく高いことが挙げられ、また、事故の特徴としては、事故の原因者としての関わりが多いこと、車両単独事故の割合が高いこと、週末の事故が多いこと、夜間の事故が多いこと、最高速度違反による事故が多いことなどが挙げられる。

2 若者の交通安全対策
 (1) 高等学校における交通安全教育の充実
 昭和五十七年に(社)全国高等学校PTA連合会が「免許を取らない」、「乗らない」、「買わない」のいわゆる「三ない運動」を特別決議し、全国的に運動を展開した。しかし、平成元年に政府の交通対策本部は「二輪車の事故防止に関する総合対策について」を決定し、「三ない運動」を行っている学校においても、交通安全教育・指導の積極的な推進を図ることとされた。
 また、平成九年には、(社)全国高等学校PTA連合会が「三ない運動」の新たな展開を宣言し、「三ない運動」を推進するとともに、地域の実態及び学校の実情から二輪車の安全運転に関する効果的な在り方について検討し、交通安全指導を計画的に行うよう努めている。
 文部省では、各都道府県ごとに高等学校一校を「二輪車研究指定校」に指定し、実技指導を含めた実践的な調査研究を行う等、高等学校における二輪車に関する交通安全教育の充実を図っている。
 (2) 運転免許取得前の高校生の年代に対する交通安全教育の推進
 高校生の年代の若者は、二輪車の免許取得可能な年齢であるとともに、普通免許取得可能な年齢の直前の年代であることから、これらの者への交通安全教育は特に重要である。
 総務庁では、「免許取得前の若者に対する交通安全教育の在り方に関する検討会」を開催した。同検討会では、@免許取得時教育及び取得後教育の再教育と並んで、若者が免許を取得する以前から免許取得を前提とした交通安全教育が必要、A若者が交通社会に運転者として参加することを前提に、「交通社会を安全に生き抜く知恵や態度を育む」という立場に立った交通安全教育が必要、B学校、家庭及び地域が一体となって、相互の情報交換や連携協力を図ることが必要といった提言を取りまとめた。
 総務庁では、この提言を受けて「免許取得前の若者に対する交通安全教育モデル事業」を実施し、その結果を踏まえ、今後も更に具体的かつ効果的な指導方法の開発及びその推進方策について検討を重ね、参加・体験・実践型教育の一層の普及・拡充の推進を図っている。
 (3) 運転免許取得時の交通安全教育の充実
 平成九年に新たに運転免許を取得した者のうち、若者が八八・〇%を占めている。また、運転免許(原付、小特、第二種を除く。)を新たに取得した者のうち、指定自動車教習所を卒業した者は九三・四%を占めていることから、指定教習所における教習は、若者の初心運転者教育の中核をなすものとなっている。
 警察では指定自動車教習所に対する指導監督を徹底し、教習体制の充実に努めている。また、道路交通法の改正により、平成六年から普通自動車の教習カリキュラムに危険予測教習、高速教習、応急救護処置教習等を導入し、さらに、八年から指定自動車教習所において、大型自動二輪車に係る教習及び技能検定制度を導入したことから、大型自動二輪車及び普通自動二輪車の新たな教習カリキュラムを導入するなど、常に教習内容の見直し及び充実強化に努めている。
 (4) 運転免許取得後の交通安全教育の充実
 運転免許取得後の経過年数の短い者、特に若者が死亡事故を引き起こしている場合が多いことから、平成元年の道路交通法改正により初心運転者期間制度が創設され、若者に対する安全運転意識の向上が図られている。
 また、二輪免許交付時講習として、主に二輪免許を新規取得した若者を対象に、優れた技能を有する白バイ隊員等を講師として安全運転講習を行っている。
 総務庁では、安全運転意識の向上とそれを実践する態度の涵養を図るのに効果的な運転実技等再教育として、「四輪車安全運転実技教育事業」を実施し、これらの実績を踏まえ、更に具体的かつ効果的な指導方法の開発及びその推進方策について検討を重ね、参加・体験・実践型教育の普及の推進を図っている。また、「二輪車の事故防止に関する総合対策について」に基づき、全国的な二輪車事故防止キャンペーンを展開するとともに、主に若者を対象とした二輪車事故防止イベントを実施している。
 (5) 暴走族対策の推進
 若者の交通死亡事故は無謀運転に起因するものが多いことから、悪質性・危険性の高い違反に重点を置いた効果的な指導取締りを積極的に行っており、中でも、ほとんど若者で構成される暴走族への対策は重要なものの一つである。
 暴走族に対しては、警察の総合力による取締りの徹底・強化により暴走行為そのものを封じ込めるとともに、暴走族グループの解体、個別指導等による暴走族からの離脱、中学校及び高等学校が警察等と連携して、個別指導等による暴走族への加入の防止、各都道府県における関係機関・団体等からなる暴走族対策会議を中心とした地域ぐるみの暴走族追放の諸活動等を推進している。
 (6) 交通安全に関する普及・啓発活動の推進
 シートベルトの着用を促進するため、シートベルトコンビンサー等を活用した体験型講習会等を全国各地で開催する等、シートベルトの安全効果を実感できるような啓発活動を展開している。
 また、二輪運転者、特に原動機付自転車の運転者に対するヘルメットの着用徹底を図るため、運転実技指導等を通じ、着用意識の高揚を推進している。特に、「バイクの日」(八月十九日)前後の時期を中心に、二輪車の安全な利用を促進するための全国キャンペーン等の広報啓発活動を展開しており、その一環として総務庁では、同日、バイクフォーラムを開催している。
 (7) 車両の安全対策の推進
 運輸技術審議会の答申を受け、高速ブレーキ試験及び耐フェード試験の導入等、ブレーキに係る基準を強化するとともに、前面衝突試験、側面衝突試験を乗用車等に対し義務付けた。二輪車については、高速ブレーキ試験及び耐フェード試験の導入等、ブレーキに係る基準を強化するとともに、被視認性の向上を図るため、エンジン始動時に前照灯を自動的に点灯させることを義務付けた。
 また、安全性が格段に高い先進安全自動車(ASV)の開発推進に取り組んでおり、二輪車についても、二十一世紀初頭には統合システムを搭載したASVの実現化を目指し、研究開発を推進している。
 さらに、より安全な自動車の普及や自動車ユーザー等の安全意識の向上を図るため、装置の整備状況、前面衝突安全性能等を掲載した「自動車安全情報」を公表している。
 (8) 道路交通環境の整備
 高速道路等の道路ネットワークの体系的な整備とともに、一般道路について、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき、事故多発地点緊急対策事業やコミュニティ・ゾーン形成事業などを推進している。無謀運転が行われやすい場所については、効果的な交通規制を実施するとともに、高速走行抑止システムや対向車接近表示システムの整備を推進している。
 また、二輪車の安全かつ円滑な走行に配意した交通規制として、交差点における二段停止線、原動機付自転車の二段階右折の導入、自動二輪車専用通行帯の設置を実施している。

<第3章> 平成九年度の主な施策等

 第六次交通安全基本計画(計画期間:平成八〜十二年度)に基づいて、特に以下の重点施策等を推進した。
 (1) 交通安全施設等の重点的整備
 平成九年度は、交通安全施設等整備事業七箇年計画の第二年度として、@歩行者等の事故防止のために、平坦性と快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道の整備、住居系地区等において、ゾーン規制等の交通規制とコミュニティ道路等の面的整備を適切に組み合わせて行うコミュニティ・ゾーンの形成を図るほか、信号機の弱者感応化、歩行者感応化等の高性能化、道路照明灯、道路標識等を整備、A通学路における事故防止のために、歩道等の整備を始め、信号機、立体横断施設、道路標識等を整備、B車両の事故防止のために、交通の流れが円滑化されるよう信号機の高度化改良、交差点等の改良や付加車線、中央帯、防護柵、道路反射鏡等を整備するとともに、夜間交通のために、道路照明灯、高速走行抑止システム等を整備、C新交通管理システム(UTMS)としての中央装置や交通情報提供装置を整備するなど、交通管制システム機能の充実・高度化等の事業を実施した。
 (2) 高度情報通信技術等を活用した道路交通システムの整備
 平成八年に関係五省庁が策定した「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」に基づいて、道路交通情報通信システム(VICS)のサービスの全国展開に向けた整備を推進するとともに、新交通管理システム(UTMS)構想に基づく公共車両優先システム(PTPS)の試行、ノンストップ自動料金収受システム(ETC)の実用化に向けた試験運用等を行った。
 (3) 交通需要マネジメント施策等の推進
 「新渋滞対策プログラム」(平成五〜九年度)において、交通容量の拡大策等と併せて、パーク・アンド・ライド、相乗り、フレックスタイムなどの道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る「交通需要マネジメント(TDM)施策」を盛り込んでいる。この施策を実施するための具体的取組として、全国十三都市を総合渋滞対策支援モデル事業実施都市として、施策の導入に向けた試行等への支援を行うとともに、試行結果の紹介や研修等を通じて、交通需要マネジメント施策の全国への普及・啓発を図っている。
 また、都市交通の円滑化、都市の快適性・利便性等に資するために、交通容量の拡大等、交通需要マネジメント施策、マルチモーダル施策を組み合わせて実施する都市圏交通円滑化総合計画について、全国数都市圏において新たに策定・実施するための取組を支援している。
 さらに、人、まち、環境にやさしいバスを中心とした安全で快適なまちづくりを目指すオムニバスタウン構想を推進している。
 (4) 交通安全教育指針の作成
 道路交通法の一部改正により、公安委員会が住民に対する交通安全教育を行うよう努めることとされ、その交通安全教育を効果的かつ適切に行うための指針の作成、公表が規定された。
 (5) 高齢者に対する交通安全教育等の推進
 高齢者の交通安全意識の向上を図っていくため、参加・体験・実践型の交通安全教育として「高齢者交通安全実践促進事業」を実施している。
 (6) 高齢運転者対策の充実
 道路交通法の一部改正により、七十五歳以上の免許更新者は、実際の運転及び運転適性検査等を内容とする高齢者講習を受講することとした。
 また、七十五歳以上の者が運転する普通自動車が、高齢運転者標識をつけているときは、他の車両が幅寄せをしたり、割り込みをしたりすることが禁止された。
 (7) シートベルト着用の徹底
 シートベルト及びチャイルドシートの着用の徹底を図るため、普及啓発活動や各種の広報媒体を通じた積極的な広報活動を実施するとともに、教育・広報等と取締りを組み合わせたステップ方式による効果的な着用推進対策を実施した。
 また、チャイルドシートの適切な使用による乗車中の子供の交通事故被害の軽減について記者発表を行う等の活動を行った。
 (8) 自動車運転中の携帯電話使用に関する広報啓発
 自動車運転中の携帯電話の使用による交通事故については、事故実態調査を踏まえ、「交通の方法に関する教則」に、運転中は携帯電話を使用しないこと、運転する前に電源を切るなどすることを規定する改正を行った。
 また、「移動電話利用マナー委員会」が設置され、全国の事業者が共同して、全国紙への共同広告、マナーブックの配布等のキャンペーンの実施等、携帯電話の使用に関するマナーの啓発を行った。
 (9) 交通安全総点検の実施
 交通安全は、人、道、車の調和を図ることによって確保されるものであり、利用する人の視点に立ってとらえるべき課題であることから、良好な道路交通環境をつくりあげるために、地域の人々や道路利用者の主体的な参加のもとに、「交通安全総点検」を本格的に実施した。
 (10) 先進安全自動車(ASV)の開発支援
 ASV推進検討会を中心に、ASVの実用化に向けての研究開発を推進した。

<第2部> 鉄軌道交通

<第1章> 鉄軌道交通事故の動向

 踏切事故防止対策の推進、各種の運転保安設備の整備・充実、制御装置の改善、乗務員等の資質の向上など、総合的な安全対策を実施してきた結果、運転事故及び踏切事故は、長期にわたり減少傾向が続いており、平成九年の運転事故件数は九百七十四件、運転事故による死者数は三百三十六人であった(第15図参照)。
 事故の種類別の発生件数では、踏切障害四百九十三件(五〇・六%)、人身障害三百八十一件(三九・一%)、道路障害六十七件(六・九%)となっている。

<第2章> 重大事故の発生と交通安全対策

1 重大事故の状況
 重大事故(死傷者十人以上又は脱線車両数十両以上の運転事故)は、ここ五年間は前の五年間に比べ四五・七%減少したが、依然、年間数件程度発生している。
 ここ十年間における重大事故は、五十四件発生しており、事故種類別の構成比でみると、件数が多い順に列車脱線五〇・〇%、列車衝突二二・二%、踏切障害二〇・四%となっている。
 平成九年は、七件の重大事故が発生し、例年に比べ列車衝突事故の割合が高くなっている。具体的には、八月にJR東海の東海道線、弘南鉄道の弘南線、十月にJR東日本の中央線で、多数の負傷者を生じる列車衝突事故が発生した(第1表参照)。

2 重大事故等に対する交通安全対策
 平成九年の列車衝突事故三件は、担当職員による基本的な取扱いが行われなかったことに起因しており、ひとつ間違えば、さらに甚大な被害を生じるおそれのあるものであったことから、運輸大臣より直接全鉄軌道事業者の代表者に対し、担当職員による基本動作の励行の徹底についての緊急指示を行った。
 これを受け、運輸省とJR各社の安全担当部長等で構成される「鉄道保安連絡会議」を開催し、運輸大臣の緊急指示に対する各社の取組状況について検討を行ったほか、同種事故の再発防止に向けて更なる指導の強化を図っている。自動列車停止装置(ATS)が未設置の鉄軌道事業者に対しては、今後とも導入を指導する。
 また、踏切道改良促進法及び第六次踏切事故防止総合対策に基づき、引き続き踏切道の立体交差化、構造改良、踏切保安設備の整備、交通規制、踏切道の整理統合等の施策を推進している。
 一方で、自動車運転者や歩行者等に対し、安全意識の向上等を図るための広報活動等を一層強化する。
 さらに、線路施設、信号保安設備等の整備等を促進するとともに、乗務員の教育訓練の充実、基本動作の徹底、厳正な服務、確実な運転取扱い、適正な運行管理の徹底、ATS及び列車集中制御装置(CTC)の設置・改良等に関して所要の指導を行い、さらに火災対策を講じた施設及び車両の整備を指導している。
 鉄道保安連絡会議においては、事故防止に関する情報交換、検討を行い、同種事故の再発防止に活用している。
 既存の鉄道構造物の耐震性を強化するため、新幹線、輸送量の多い線区で高架橋・橋台及び開削トンネルの中柱の耐震補強工事を行っている。

<第2編> 海上交通

<第1章> 海難の動向

 救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)の隻数は、概して減少傾向にある(台風及び異常気象下のものを除く。)。中でも、漁船、貨物船の海難の減少が顕著である。
 一方、近年の海洋レジャー活動の活発化に伴い、プレジャーボート等の海難の全要救助船舶隻数に占める割合が高くなってきており、平成九年は四〇・五%(六百七十五隻)を占めるに至り、漁船の海難を上回り、最多となった(第16図参照)。
 要救助船舶の乗船者の死亡・行方不明者数は、近年二百人前後で推移してきているが、平成九年は百七十人であった(第17図参照)。

<第2章> プレジャーボート等の事故の増加と交通安全対策

1 プレジャーボート等の海難の発生状況
 プレジャーボート等の海難は、海洋レジャー活動の活発化、モーターボート・ヨット等の増加(平成四年度末三十七万一千隻→八年度末四十二万七千隻)等に伴って年々増加しており、九年には海難隻数で初めて漁船を抜き第一位となった。
 平成九年の海難の発生状況を船型別でみると、モーターボート四百六十三隻(六八・六%)、ヨット九十二隻(一三・六%)、遊漁船四十八隻(七・一%)、水上オートバイ四十六隻(六・八%)、手漕ぎボート二十六隻(三・九%)となっており、五年前と比較するとモーターボートが増加している。
 次に海難原因別でみると、機関取扱不良百五十四隻(二二・八%)、見張り不十分百六隻(一五・七%)、操船不適切八十隻(一一・九%)、気象・海象不注意七十一隻(一〇・五%)等の人為的要因に起因するものが八〇・一%を占めている。漁船と比較して、気象・海象不注意、機関取扱不良などの割合が高く、運航のための初歩的知識や技能の不足がうかがえる。

2 プレジャーボート等に対する交通安全施策の状況
 プレジャーボートの安全な活動拠点となるマリーナ、漁港におけるフィッシャリーナ等の整備を推進している。また、巡視船艇・航空機等による救助体制の強化、民間海難救助体制の整備の推進等により、救助体制の充実強化を図っている。
 事故等の情報が迅速かつ的確に入手できるように、海洋レジャー用無線機の普及、船舶電話、衛星船舶電話等の緊急通報体制の確立を図っている。
 また、プレジャーボート等の船体形状、使用形態等の多様化に対応し、小型船舶の安全基準の整備及び検査体制の整備を図っている。
 さらに、海洋レジャー愛好者に対し、海上交通ルールの周知、気象・海象情報の的確な把握、その他の安全運航のための基本的事項の励行等の指導を行うとともに、民間団体の自主的な安全活動を積極的に支援している。
 一方、海洋レジャーの安全等に資する海洋情報等の収集・管理・提供体制の整備及びその情報提供の充実強化を図っている。

<第3章> 海上交通事故に対する主な交通安全対策

 港湾及び漁港の防波堤、航路、泊地、係留施設等の整備を進めるとともに、開発保全航路、避難港及び航路標識等の整備を推進している。
 港湾及び漁港の耐震性の強化としては、耐震強化岸壁の整備、防災拠点の整備、輸送施設の整備等を行っている。
 輻輳海域においては、特別の交通ルールを定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行っている。また、海図・水路書誌等の整備及び水路通報、気象情報等の充実を図っている。
 船舶の航行に関する安全管理体制を確立するための国際安全管理規則(ISMコード)が、海上人命安全条約(SOLAS条約)の改正により強制化されたことから、国内法令の整備を行い、船舶の安全管理審査体制の整備充実を図っている。
 外国船舶に対するポートステートコントロール(旗国政府による監督だけでなく、寄港国による監督)については、監督範囲・内容の拡充、専従監督要員の配置など、その充実強化を図っている。
 また、ナホトカ号の大規模油流出事故の原因が船体の老朽化であったことなどから、船体構造の健全性に関する国際的なポートステートコントロール強化のため、検査報告書記載事項の追加及び通報制度の改善を国際海事機構(IMO)に提案し、一部実施されることとなった。

<第3編> 航空交通

<第1章> 航空交通事故の動向

 近年、民間航空機の事故発生件数は、航空輸送が急速に拡大する中でほぼ横ばいの状況にある。
 平成九年中の事故発生件数は三十件、死傷者数は六十二人(うち死者数二十八人)となっている(第2表参照)。

<第2章> 航空交通安全施策の現況

 第七次空港整備七箇年計画(計画期間:平成八〜十四年度)に基づき、空港、航空保安施設等の整備を計画的に推進している。
 空港、航空保安施設の耐震性の強化については、既存施設の耐震補強(庁舎等の点検・改修等)及び管制施設の多重化(管制機能の代替・非常用レーダー等の整備)等を推進した。
 また、航空機乗組員等の資質の向上、運航管理体制の強化、航空機整備体制の充実等、定期航空の運航の安全対策の充実強化に取り組んでいる。
 小型航空機については、その事故を防止するため、法令及び安全関係諸規程の遵守、無理のない飛行計画による運航の実施、的確な気象情報の把握、操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導している。
 スカイレジャーについては、愛好者に対する安全知識の普及や技能の向上訓練等について、関係航空団体を指導するとともに、「優良スカイレジャーエリア認定制度」の推進等により安全確保を図っている。


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月例経済報告(七月報告)


経 済 企 画 庁


 概 観

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。住宅建設は、低水準での推移が続いている。設備投資は、弱い動きとなっている。
 十年一〜三月期(速報)の実質国内総生産は、前期比一・三%減(年率五・三%減)となり、うち内需寄与度はマイナス一・〇%となった。
 産業面をみると、最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、鉱工業生産は、減少傾向にある。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。
 雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が四%台と既往最高水準で推移するなど更に厳しさが増している。
 輸出は、アジア向けが減少していることから、やや弱含んでいる。輸入は、弱含んでいる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、六月は、月初の百三十九円台から一時百四十六円台まで下落し、その後一時百三十六円台まで上昇したが、月末には百四十円台となった。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、六月はおおむね横ばいで推移した後、月末にやや上昇した。長期金利は、六月はやや上昇した。株式相場は、六月は月央にかけて下落した後、上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、五月は前年同月比三・八%増となった。
 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、九七年十〜十二月期前期比年率三・七%増の後、九八年一〜三月期は同五・四%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少しているものの引き続き高水準にある。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。六月の長期金利(三十年物国債)は、総じて低下した。六月の株価(ダウ平均)は、上下したが、総じてやや上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の減少から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、拡大している。
 国際金融市場の六月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した。
 国際商品市況の六月の動きをみると、初旬から中旬にかけて弱含みで推移した後、価格を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、供給過剰懸念等から弱含みとなり、OPECは下旬の総会で追加減産を合意した。

*     *     *

 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。住宅建設は、低水準での推移が続いている。設備投資は、弱い動きとなっている。輸出は、アジア向けが減少していることから、やや弱含んでいる。このように最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、生産は減少傾向にある。雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が四%台と既往最高水準で推移するなど更に厳しさが増している。また、民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。不良債権問題の解決に向けての枠組みが整ったこともあって、昨年末以来の経済の先行きに対する著しい不透明感には落ち着く兆しもみられるものの、最終需要の停滞が生産や雇用等実体経済全体に及ぼす影響が強まっており、景気は停滞が長引き、引き続き厳しい状況にある。
 このような厳しい経済の現況に対応し、政府は、四月二十四日に決定した総事業費十六兆円超の過去最大規模の「総合経済対策」の着実な実施を図ることとする。また、金融機関等に対し、不良債権の抜本的な処理を促していくなかで、我が国金融の安定と再生を図り、内外の信認を確保し、我が国経済の早期回復に資するため、金融再生トータルプランを取りまとめ、これによって、不良債権問題の解決に向けての枠組みが整うこととなった。さらに、現下の雇用情勢に対応するため、六月二日及び三十日に、産業構造転換・雇用対策本部を開催し、当面の対処方針を取りまとめるとともに、これを推進しているところである。

1 国内需要
―設備投資は、弱い動き―

 実質国内総生産(平成二年基準、速報)の動向をみると、九年十〜十二月期前期比〇・四%減(年率一・五%減)の後、十年一〜三月期は同一・三%減(同五・三%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス一・〇%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス〇・四%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比〇・一%増、民間企業設備投資は同五・一%減、民間住宅は同一・七%増となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比三・八%減、財貨・サービスの輸入は同一・四%減となった。
 個人消費は、消費性向には持ち直しの動きもみられるものの、雇用者所得の低迷もあって、低調に推移している。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で四月二・一%減の後、五月は〇・六%減(前月比〇・五%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比〇・二%増、勤労者以外の世帯では同一・七%減となった。形態別にみると、半耐久財等は増加、サービスは減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比〇・三%減、勤労者世帯では同〇・七%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で三月六・四%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で四月〇・五%減の後、五月は二・〇%減(前月比〇・九%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で四月八・一%増の後、五月〇・七%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で四月一・八%増の後、五月〇・九%増となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で六月は三・六%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で五月は七・四%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、五月は前年同月比で国内旅行が三・三%減、海外旅行は五・八%減となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で四月〇・七%減の後、五月は〇・七%減(事業所規模三十人以上では同一・〇%減)となり、うち所定外給与は、五月は同八・一%減(事業所規模三十人以上では同八・三%減)となった。実質賃金は、前年同月比で四月一・〇%減の後、五月は一・三%減(事業所規模三十人以上では同一・四%減)となった。なお、民間主要企業の春季賃上げ率(労働省調べ)は、二・六六%となり、昨年(二・九〇%)を下回った。
 住宅建設は、低水準での推移が続いている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で四月五・七%減(前年同月比一六・一%減)となった後、五月は一・一%増(前年同月比一七・〇%減)の十万四千戸(年率百二十五万戸)となった。五月の着工床面積(季節調整値)は、前月比四・八%増(前年同月比一七・九%減)となった。五月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比三・五%増(前年同月比一八・六%減)、貸家は同三・九%減(同一三・四%減)、分譲住宅は同一〇・一%増(同一五・二%減)となっている。
 設備投資は、弱い動きとなっている。
 日本銀行「企業短期経済観測調査」(六月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の十年度設備投資計画は、製造業で前年度比二・六%減(三月調査比二・二%上方修正)、非製造業で同〇・六%減(同〇・二%下方修正)となっており、全産業では同一・三%減(同〇・六%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比九・四%減(三月調査比一・六%上方修正)、非製造業で同一四・二%減(同〇・四%上方修正)となり、中小企業では製造業で同二一・七%減(同四・八%上方修正)、非製造業で同一七・九%減(同三・二%上方修正)となっている。
 なお、十年一〜三月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると、前年同期比で五・八%減(うち製造業四・八%増、非製造業一〇・八%減)となった。
 先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で四月は一六・八%減(前年同月比一七・八%減)の後、五月は四・〇%減(同二八・六%減)となり、基調は減少傾向となっている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、おおむね横ばいで推移してきたが、このところ弱含みとなっており、前月比で四月二三・五%減の後、五月は三・六%減(前年同月比三一・〇%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比〇・四%減(前年同月比三二・一%減)、非製造業は同三・六%減(同三〇・六%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で四月四・九%減の後、五月は三一・六%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で五月二四・四%減の後、六月は〇・八%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で四月三八・四%減の後、五月は一五・〇%減となった。実質公的固定資本形成は、九年十〜十二月期に前期比一・八%減の後、十年一〜三月期は同一・九%減となった。また、実質政府最終消費支出は、九年十〜十二月期に前期比一・四%増の後、十年一〜三月期は同〇・六%減となった。

2 生産雇用
―更に厳しさが増す雇用情勢―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は高水準にあり、生産・出荷は、減少傾向にある。
 鉱工業生産は、前月比で四月一・六%減の後、五月は、化学、プラスチック製品等が増加したものの、一般機械、輸送機械等が減少したことから、二・〇%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で六月は化学、機械等により一・八%増の後、七月は化学、機械等により〇・三%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で四月二・九%減の後、五月は、耐久消費財が増加したものの、資本財、非耐久消費財等が減少したことから、〇・一%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で四月〇・一%増の後、五月は、食料品・たばこ、非鉄金属等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、一・七%減となった。また、五月の鉱工業生産者製品在庫率指数は一一四・四と前月を一・六ポイント下回った。
 主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は二か月連続で減少し、在庫は五月は減少した。輸送機械では、生産は五月は減少し、在庫は二か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は四か月連続で減少し、在庫は三か月連続で減少した。
 雇用情勢をみると、雇用者数が減少し、完全失業率が四%台と既往最高水準で推移するなど更に厳しさが増している。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、四月〇・五五倍の後、五月〇・五三倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、四月〇・九六倍の後、五月〇・九二倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、五月は前年同月比〇・五%減(前年同月差二十七万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、四月前年同月比〇・二%増(季節調整済前月比〇・三%減)の後、五月は同〇・一%増(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・二%減)、産業別には製造業では同一・〇%減となった。五月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差一万人増の二百八十二万人、完全失業率(同)は、四月四・一%の後、五月四・一%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では四月前年同月比一七・一%減(季節調整済前月比二・六%減)の後、五月は同一八・三%減(同〇・七%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一八・〇%減)。
 前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、六月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業、非製造業ともに過剰感に高まりがみられる。
 企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。
 前記「企業短期経済観測調査」(六月調査)によると、主要企業(全産業)では、九年度下期の経常利益は前年同期比一六・四%の減益(除く電力・ガスでは同一八・二%の減益)の後、十年度上期には同二一・四%の減益(除く電力・ガスでは同二一・二%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では九年度下期に前年同期比二一・七%の減益の後、十年度上期には同二三・八%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度下期に前年同期比九・八%の減益の後、十年度上期には同一五・五%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では九年度下期に三・五四%になった後、十年度上期は三・二四%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度下期に一・三九%となった後、十年度上期は一・四三%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超幅が拡大し、非製造業では「悪い」超幅が縮小した。
 また、中小企業の動向を同調査(全国企業)でみると、製造業では、経常利益は九年度下期には前年同期比三三・六%の減益の後、十年度上期には同三四・二%の減益が見込まれている。また非製造業では、九年度下期に前年同期比一四・五%の減益の後、十年度上期には同九・五%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が拡大した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を大きく上回る傾向で推移している。
 銀行取引停止処分者件数は、五月は一千三百五十七件で前年同月比三七・三%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で六八・九%、建設業で四五・五%の増加となった。

3 国際収支
―輸出はやや弱含み―

 輸出は、アジア向けが減少していることから、やや弱含んでいる。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で四月四・五%増の後、五月は〇・七%減(前年同月比三・二%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器、輸送用機器等が減少した。同じく地域別にみると、アジア等が減少した。
 輸入は、弱含んでいる。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で四月四・一%減の後、五月は七・六%減(前年同月比一一・一%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(金属・同製品)、鉱物性燃料等が減少した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が減少した。
 通関収支差(季節調整値)は、四月に一兆二千二百七十一億円の黒字の後、五月は一兆五千七百五十四億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
 四月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したものの、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、六千九百五十億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小したことに加え、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅も拡大したため、その黒字幅は縮小し、八千三百九十四億円となった。投資収支(原数値)は、三兆六千三十五億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、三兆六千百三十七億円の赤字となった。
 六月末の外貨準備高は、前月比十一億ドル減少して二千五十九億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、六月は、月初の百三十九円台から一時百四十六円台まで下落し、その後一時百三十六円台まで上昇したが、月末には百四十円台となった。一方、対マルク相場(インターバンク十七時時点)は、六月は、月初の七十八円台から一時八十円台まで下落し、その後一時七十五円台まで上昇したが、月末には七十七円台となった。

4 物 価
―国内卸売物価は弱含みで推移―

 国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。
 六月の国内卸売物価は、加工食品(清涼飲料類)等が上昇した一方、電気機器(カーオーディオ)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比二・一%の下落)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、六月調査)によると、製品需給バランスは、引き続き緩和傾向にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比二・六%の上昇(前年同月比一〇・四%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比二・三%の上昇(前年同月比二・〇%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・五%の上昇(前年同月比〇・三%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、五月は前年同月比〇・三%の下落(前月比〇・三%の下落)となった。
 商品市況(月末対比)は木材等は上昇したものの、非鉄等の下落により六月は下落した。六月の動きを品目別にみると、合板等は上昇したものの、アルミニウム地金等が下落した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で四月〇・二%の上昇の後、五月は公共料金(広義)の上昇幅の縮小等により保合い(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で四月〇・四%の上昇の後、五月は〇・五%の上昇(前月比〇・三%の上昇)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で五月〇・三%の上昇の後、六月(中旬速報値)は耐久消費財の下落幅の縮小等の一方、一般食料工業製品の下落幅の拡大等があり〇・三%の上昇(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で五月〇・八%の上昇の後、六月(中旬速報値)は〇・四%の上昇(前月比〇・四%の下落)となった。

5 金融財政
―株式相場は、月央にかけて下落した後、上昇―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、六月はおおむね横ばいで推移した後、月末にやや上昇した。長期金利は、六月はやや上昇した。株式相場は、六月は月央にかけて下落した後、上昇した。
 マネーサプライ(M2+CD)は、五月は前年同月比三・八%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、六月はおおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、六月はおおむね横ばいで推移した後、月末にやや上昇した。
 公社債市場をみると、国債流通利回りは、六月はやや上昇した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は六月二日に一・一三〇%となり、史上最低を更新した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、五月は短期は〇・〇〇三%ポイント上昇し、長期は〇・一一九%ポイント低下したことから、総合では〇・〇一四%ポイント低下し一・八五二%となった。
 マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、五月(速報)は三・八%増となった。また、広義流動性は、五月(速報)は二・九%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、六月(速報)は前年同月比二・三%減となった。六月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が六十億円となった。
 また、国内公募事業債の起債実績は一兆四千百三十億円となった。
 前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、六月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いている。
 民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。
 株式市場をみると、日経平均株価は、六月は月央にかけて下落した後、上昇した。

6 海外経済
―アジア、総じて景気後退色強まる―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、九七年十〜十二月期前期比年率三・七%増の後、九八年一〜三月期は同五・四%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少しているものの引き続き高水準にある。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は五月前月差三十万九千人増の後、六月は同二十万五千人増となった。失業率は六月四・五%となった。物価は安定している。五月の消費者物価は前月比〇・三%の上昇、六月の生産者物価(完成財総合)は同〇・一%の低下となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。六月の長期金利(三十年物国債)は、総じて低下した。六月の株価(ダウ平均)は、上下したが、総じてやや上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。一〜三月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率三・九%増、フランス同二・三%増、イギリス同二・二%増となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ五月前月比〇・九%増、フランス四月同〇・五%減、イギリス五月同一・二%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ六月一一・〇%、フランス五月一一・九%、イギリス五月四・八%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる(消費者物価上昇率は、ドイツ六月前年同月比一・二%、フランス五月同一・〇%、イギリス五月同四・二%)。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の減少から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、拡大している。
 国際金融市場の六月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)六月三十日一一三・一、五月末比〇・六%の増価)。内訳をみると、六月三十日現在、対円では五月末比横ばい、対マルクでは同一・三%増価した。
 国際商品市況の六月の動きをみると、初旬から中旬にかけて弱含みで推移した後、価格を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、供給過剰懸念等から弱含みとなり、OPECは下旬の総会で追加減産を合意した。

天ぷら油による火災の防止


 平成八年中に発生した建物火災は、三万四千七百五十六件です。そのうち、天ぷら油などが原因の火災は、四千二百九十三件となっています。
 天ぷら油による火災は、水をかけてしまうなど、消火の対応を誤ると、被害を一層拡大させるおそれがあります。

◇天ぷら油の特性を知る

 市販されている天ぷら油(菜種油、コーン油、大豆油など)は、その温度が発火点(約三百六十〜三百八十℃)以上になれば、火種がなくても発火して燃焼し始めます。
 一般に家庭で使用する油量である〇・五〜一リットル程度の天ぷら油(使用前のもの)を家庭用ガスこんろで加熱すると、約五分で揚げ物に適した温度(約百六十〜二百℃)に達し、そのままの状態で放置しておくと、約十分ほどで異臭とともに白煙が立ち始め、二十〜三十分で発火点に達し、火がつきます。
 また、天ぷらなどに一度使用するなど、鍋に揚げかすなどがある場合には、それが灯心となって、二百℃近くで発火することがあり、加熱し始めてから発火するまでの時間が短くなることがあります。そのため、ちょっと目を離したすきに、火災になってしまう場合もあります。

◇短時間でも離れるときは火を消す

 天ぷら油による火災は、天ぷらを揚げているときに来客や電話、子供の世話などでこんろから離れたときなど、ちょっとした油断が原因で多く発生しています。
 このため、天ぷら油による火災を防止するには、調理油過熱防止付こんろなど、安全装置の付いたものを使用することや、住宅用自動消火装置などを設置することが有効ですが、何よりもこんろにいったん火をつけたら、絶対にその場を離れないことが大切です。
 どうしてもこんろから離れる必要がある場合には、どんなに短い時間であっても、こんろの火を消してから離れる習慣を身に付け、火災を出さないようにしましょう。

◇もし火災が発生したら

 万が一、天ぷら油による火災が発生した場合には、次のような方法で消火を行いましょう。
▽「火には水」という発想で水をかけると、炎が爆発的に拡大し、周囲に油が飛散して大やけどを負うなど、大変危険です。天ぷら油に火がついたときは、絶対に水をかけないでください。
▽炎が小さく(炎の高さ十センチ程度)、油面上をちらちら動き回っているような場合は、慌てずに、まず、こんろの火を止め、鍋の全面を覆うふたをして、空気を遮断することで、消火することができます。ただし、すぐにふたを取ると、再び発火するおそれがありますので、油の温度が十分下がるまで待ちましょう。
▽炎が大きく(炎の高さ二十センチ以上)、安定した状態で油が燃焼しているような場合は、消火器などで消火する方法が最も良い方法です。最近は、住宅に適したものとして開発された小型で軽量の住宅用消火器や、スプレーのように使用するエアゾール式簡易消火具など、簡単に扱うことができるものがありますので、各家庭の台所に一本備えておくと、万が一火災が発生したときに安心です。
 炎を上げている天ぷら鍋を消火器で消火する方法の一例を挙げると、次のとおりです。
 @ 消火器の消火剤が届く範囲内で、やけどなどをするおそれがない位置から消火します。
 ア 安全栓を抜きます。
 イ ノズルを火元に向けます(ノズルのないタイプもあります)。
 ウ レバーを強く握り、消火剤を放射します(このとき、炎に惑わされずに、鍋の中に消火剤が十分入るよう放射します)。
 A 消火剤が放射されると、一瞬炎が大きくなりますが、通常の場合は数秒で完全に消えます。

*        *

 天ぷら油による火災に効果がある消火器は、「油火災用」または「天ぷら油火災適応」と表示されているものです。これ以外のものを使用すると、かえって被害を大きくするおそれがありますので、十分注意してください。
 粉末タイプの消火器の場合は、いったん消火した後でも、消火剤の放出を止めると再着火する場合がありますので、消火器に充填されている消火剤をすべて鍋の中に入れ、油を冷却し、温度を下げる必要があります。
 また、濡れたシーツ、バスタオルなどで鍋を覆い、空気を遮断することにより、消火することもできます。この方法は、かぶせるときに炎でやけどをしたり、誤って鍋をひっくり返したりして、鍋を全面的に覆うことができないこともありますので、十分注意して行う必要があります。
 なお、消火後、安全な状態になってから、ガスの元栓を閉めることも忘れずに行ってください。

◇慌てず落ち着いて行動する

 天ぷら油による火災を防ぐには、未然に防止できるような心がけが大切です。万が一火災が起きた場合には、慌てず落ち着いて対処することが求められます。
 天ぷら油による火災の危険性を十分に認識し、消火器の使い方など、いざというときの行動力を身に付けておきましょう。(消防庁)

 行方不明者捜索強化期間


◇全国に特別相談所を開設

 警察では、毎年、八月又は九月を「行方不明者捜索強化期間」とし、全国各地に「特別相談所(行方不明者をさがす相談所)」を開設して、行方不明者や家出人など、行方のわからない方のご家族からの所在確認や身元確認の相談を受け付けています。
 なお、相談などの費用は無料ですので、積極的にご利用ください。

◇早めの相談で早期発見

 行方不明者などの家族のなかには、相談する方法がわからず悩んでいる方や、警察への相談をためらっている方もいるかと思います。しかし、早い時期に警察に相談すれば、それだけ早く解決できます。
 昨年の強化期間中に警察が受理した相談件数は、約六千五百件でした。そのうち約三五%について、行方不明者の所在や身元が確認されました。

◇プライバシーは厳重に守られます

 相談の内容やプライバシーは厳重に守られますのでご安心ください。
 相談の際は、行方がわからない方の顔写真をお持ちください。また、行方不明になったときの服装や所持品、あるいは血液型など、本人に関する情報を提供してください。
 特別相談所の場所や開設時間など詳しいことは、各都道府県警察本部の鑑識課又は最寄りの警察署、交番等でお尋ねください。(警察庁)


 
    <8月12日号の主な予定>
 
 ▽通商白書のあらまし………………通商産業省 

 ▽労働力調査…………………………総 務 庁 
 



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