官報資料版 平成1019





通信白書のあらまし


郵 政 省


 郵政省は、通信白書(平成十年通信に関する現状報告)を五月二十六日の閣議報告後に公表した。
 今回の白書では、「デジタルネットワーク社会の幕開け〜変わりゆくライフスタイル〜」と題する特集を組んでいる。本特集では、急速に普及しつつあるインターネット、携帯電話、CSデジタル放送等のメディアが、仕事、趣味・娯楽、学習などの生活場面に与える影響を分析している。
 また、情報リテラシーの日米比較等も実施し、「多様な選択」と「自由な参加」の機会が提供され、「個性の発揮」できる、より豊かで開かれた「デジタルネットワーク社会」の実現に向けた課題を提示している。
 このほか、白書では、情報通信の現状分析や、情報通信産業の日米比較、サイバービジネスの定性分析、都道府県の地域情報化の分析などを取り上げている。
 通信白書のあらましは、次のとおりである。

<第1章> デジタルネットワーク社会の幕開け〜変わりゆくライフスタイル〜

<第1節> 情報化の動向

一 情報通信ネットワークにおけるデジタル化の進展
 情報通信ネットワークのデジタル化が急速に進展しつつある背景には、デジタル情報処理を可能とするデジタル機器の発展がある。こうしたデジタル技術の発展に伴い、様々な社会経済活動を、情報通信ネットワーク上で行うことが可能となっている。

二 数値で見る家庭の情報化
 我が国の家庭における情報化の進展を、情報入手のための手段の多様化及び情報入手のための支出費用の二つの側面からとらえ、情報装備指標及び情報支出指標という二つの指標を作成すると、昭和六十一年から平成八年にかけて、いずれも大きく伸びている。

三 情報通信メディアの普及予測
 インターネットの利用者数は、「インターネットビジネスに関する研究会」(郵政省)の報告によれば、一九九七年の一千百五十五万人から二〇〇五年には四千百三十六万人と三・六倍に拡大する見込みである。

<第2節> 生活と通信

一 生活の変化と情報通信メディアの利用
 (一) 情報通信メディアの利用と生活の変化
 「情報通信と生活に関するアンケート」(注1)(以下「生活調査」という。)によれば、情報通信メディアの利用者は、睡眠時間及び余暇時間が減少し、仕事時間が増加する傾向にあり、また、家計支出において通信費用及び情報の価値をより強く意識している。
 (注1) ファクシミリ、携帯電話、PHS、インターネット、パソコン通信、CS放送及びケーブルテレビの保有者及び加入者を対象に、情報通信メディアの利用状況による生活の変化について、九年十二月から十年一月にかけて、郵政省が実施したアンケート。
 (二) 情報通信メディアの生活各分野への影響
 「生活調査」により、情報通信メディアが生活の各分野に与える影響について分析すると、@ファクシミリ、PHS及びインターネットといったメディアは家族・友人関係やコミュニティ活動に、Aインターネット、パソコン通信及び携帯電話といったメディアは仕事時間、仕事の在り方に、Bインターネット、パソコン通信、CS放送及びケーブルテレビといったメディアは趣味・娯楽に、それぞれ影響を与えている(第1表参照)。

二 家族・友人関係と新しいコミュニティ活動
 情報通信ネットワークの発達により、時間、空間を問わずに誰とでも情報交換ができるようになることから、@家族・友人関係の絆がさらに強まり、A社会的関心を同じくする者どうしの新たな人的ネットワークが構築され、Bボランティア活動団体相互のつながりが強化されるとともに、ボランティア団体の活動そのものが活発化するなどの効用が生じている。
 一方、今後の課題としては、ネットワークに参加するための情報通信機器・ネットワークに対する情報リテラシーの向上や通信料等の費用負担軽減が挙げられる。

三 仕 事
 仕事分野に情報通信メディアが普及することにより、@仕事の効率化、生産性の向上、A通勤時間の削減、地方勤務・在宅勤務の増加などによる「ゆとり」の創出、B自動車交通量の減少による環境浄化、C高齢者、障害者雇用の促進などの効用がある。
 一方、映像伝送速度が遅い(インターネット)、パソコンの重量が重い(モバイルワーク)、通信料金が高いなどハード面に課題が見られる。また、新しい勤労者管理の在り方などを確立する必要がある。

四 趣味・娯楽
 様々な新しいメディアの出現と、既存メディアの新しい活用により、趣味・娯楽の世界は多種・多様化してきた。放送チャンネルの多様化により、番組選択の幅が広がり、専門的な視聴ニーズにもこたえることができるようになった。
 また、インターネットを用いて、多様な情報を取得することが可能となり、趣味・娯楽分野における選択の幅が広がるとともに、個人の情報発信の機会が生まれ、人的交流の輪も広がっている。
 一方、CS放送、ケーブルテレビでは、番組内容の不足や高料金等の課題に、インターネットではセキュリティ及びプライバシーの保護、通信料金の低廉化及び伝送速度の改善等の課題に取り組む必要がある。

五 消 費(ショッピング)
 インターネットショッピングは、女性の利用意向が高いこともあり、今後着実に拡大を続け、場所や時間に左右されず、安価な商品を購入することが可能になるなど、消費者に大きなメリットをもたらすものと期待されている。
 一方、今後、インターネットショッピングが普及していくために、まず必要となるのはパソコンやインターネットの操作能力の向上であり、さらに決済手段の信頼性の確保、プライバシー保護等、利用のための環境整備が求められている。

六 学 習
 授業にコンピュータを利用したり、遠隔授業を行うことによって、学習における選択肢の多様化及びネットワークを介した学習機会の増大が期待される。
 また、初等中等教育におけるインターネットを活用した授業は、情報リテラシーのかん養に役立つとともに、地域間の情報格差を解消し、全国どこでも様々な情報を活用した教育を受けることが可能となる。
 一方、回線速度の高速化、回線の信頼性の確保、回線使用料の低廉化等が必要である。また、初等中等教育では、インターネット利用の際の有害情報の排除が重要な課題となっている。

七 医療・福祉
<遠隔医療と在宅医療>
 遠隔医療が可能となることで、医療の地域間格差を是正し、患者の無駄な搬送を避けるなどの医療の効率化が図られる。また、在宅医療により、通院の労力から解放され、健康で安心して暮らせる生活が実現する。さらに、より専門的な分野の医師からの診療を得ることが可能となり、場合によっては海外の医師からの診療も可能となる。
 一方、遠隔医療では、より鮮明な画像をより早く伝送するための通信インフラの整備、画像を送受信する機器の解像度や操作性の向上が不可欠となっているほか、患者のプライバシー保護や患者情報の保護が必要である。
<高齢者・障害者福祉>
 テレビ電話やパソコン通信、インターネットを活用することにより、高齢者や障害者の自立が進み、生活の質が向上するものと期待される。また、社会活動への参加を促進させることが可能となる。
 一方、ハード及びソフトとも、わかりやすさ、見やすさ、聞きやすさ、使いやすさに考慮し、高齢者・障害者が扱えるデザインや技術の開発、また、困ったときに気軽に質問ができるサポート体制の充実も必要である。

八 地方行政サービス
 情報システムを活用することにより、住民が情報提供や行政手続を受ける上での時間的な制約や、利用場所に関する制約を解消し、住民の利便性の向上につながる。特に、ワンストップ行政サービスは、身近な場所で各種の申請手続等を一括して行えるなど、効果が高い。また、今後は、情報システムが行政参画の手段として有力になると考えられる。
 一方、住民サービスの向上に向けて、インターネット等のネットワークの活用を推進するためには、本人確認や個人情報保護などの技術開発のほか、ネットワーク利用に即した法制度の整備を行う必要がある。また、自治体においても、端末の所有状況・情報リテラシーの有無により住民の享受できるサービスに差が生じないよう、街頭端末の設置、機器の操作性の改善等に配意することが重要である。
 さらに、自治体職員の情報リテラシーの向上を図るとともに、住民サービスを念頭においた行政内部の情報化を進めることも必要である。

<第3節> 情報リテラシー

一 情報リテラシー
 (一) 情報リテラシーの定義
 情報リテラシーの定義には、情報機器の操作などに関する観点から定義する場合(狭義)と、操作能力に加えて、情報を取り扱う上での理解、さらには情報及び情報手段を主体的に選択し、収集活用するための能力と意欲まで加えて定義する場合(広義)とがある。
 白書においては、情報リテラシーを広義として、さらに、使用できる機器のレベルに応じて、@情報基礎リテラシー、APCリテラシー(パーソナルコンピュータ活用能力)、Bネットワークリテラシー(インターネットなどのネットワーク活用能力)の三層としてとらえ、日米においてアンケート(注2)を行った。
 (注2) 情報リテラシーについて、九年十二月から十年一月にかけて、日米両国の住民各六百名を対象に、郵政省が実施した電話によるアンケート。設問は、@情報基礎リテラシー(八項目)、APCリテラシー(七項目)及びBネットワークリテラシー(三項目、ただしPCリテラシーの設問に含む。)の計十五項目からなる。
 (二) 情報リテラシーの日米比較
<得点分布の状況>
 アンケートの結果、情報リテラシー全体では、十五点満点の平均点は、日本八・二九点に対して米国八・九七点で、米国の方が〇・六八点高くなっている。
<情報リテラシーの階層別分析>
 各階層の比較では、情報基礎リテラシーにおいては、顕著な日米格差は見られないが、PCリテラシー、ネットワークリテラシーとなるにつれて各属性における日米格差が拡大し、米国優位となっている。この中で特に目立つ傾向は、十代及び性別間における日米格差である(第2表参照)。
<日米格差の要因>
 PCリテラシーについて、日米で顕著な格差が生じた原因の一つとして、キーボードの操作能力の有無が考えられる。また、PCリテラシー及びネットワークリテラシーについて、日米格差に影響を及ぼしている要因の一つとして、家庭へのインターネット普及率の相違が考えられる。
 十代におけるネットワークリテラシーの格差については、公立学校におけるインターネット接続率の格差と家庭でのインターネット普及率の格差が相乗して、大きな格差を生む要因になったと考えられる。
 また、女性における格差については、日本の女性がパソコンに慣れ親しむ機会が不十分であることを反映したと考えられる(第1図参照)。
 (三) 日本の情報リテラシー分析
<属性による分析>
 年齢別については、一番高い二十代の九・七三点と一番低い六十代の六・二二点との間で三・五一点という大幅な格差が生じている。
 性別については、男性の九・〇二点に比べ女性は七・二九点にとどまっている。
<国内格差の要因>
 国内で最も顕著な格差は、年代別の格差である。情報リテラシーは、二十代を頂点にその後低くなる傾向にあり、特に五十代から六十代にかけてかなり低下している。このことは、情報リテラシーが就労機会と密接に関係していることを示唆しており、六十代では過去において情報リテラシーを向上させる機会がなかったものと思われる。
 もう一つ特筆すべき格差は、男女間の格差であり、日本固有の問題として、女性の社会進出の状況が不十分であることが原因と考えられる。
 (四) 日本における情報リテラシー政策
 @ 我が国では、タイプライターの使用という習慣がなかったことから、キーボードの操作能力が低く、これがパソコンへの接触を遠ざける一因になっていると考えられる。また、情報リテラシーの向上を図るために、インターネット等のネットワークへの接続を図ることが大切である。
 A 青少年に関しては、学校教育における情報リテラシー教育、特に米国との格差が大きいネットワークリテラシーに関する教育を充実させる必要がある。
 B 高齢者に関しては、郵便局、公民館、図書館等の身近なコミュニティにおける施設を中心に、パソコンをはじめとする情報通信機器を自由に利用できる環境を整備するべきである。
 C 女性に関しては、家庭におけるネットワーク接続率を高めることにより、ネットワークを利用できる環境を整備すべきである。その際には、ショッピング等の女性利用者向けアプリケーションの充実を図ることも必要である。

<第4節> サービスが抱える問題

一 ネットワークサービスを安心して利用できる環境の整備
 郵政省では、九年八月から「高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会」を開催してきた。そして、十年三月に次のとおり報告書を取りまとめた。
 (一) 個人情報保護
 個人情報の保護は、ネットワーク利用に対する信頼性を高めるための環境整備の重要な要素であり、今後、包括的な個人情報保護法の検討・マーク付与制度等による民間の自主的な個人情報保護の取組の促進など、保護対策の充実を図っていくことが必要である。
 (二) 無権限アクセス対策
 無権限アクセスについては、禁止するための法制度整備の検討、不正アクセス防止の実効性を確保するためのセキュリティ技術の開発・普及の推進が今後の課題である。
 (三) 苦情処理体制の整備
 今後の苦情処理・相談の方向性としては、単に被害を受けた利用者の苦情の解決にとどまらず、一般の利用者からの建設的な意見を受け付け、政策の決定過程に利用者が参加できる道を拓く必要がある。また、そのためには利用者が情報通信の発展に主体的に参加できるよう、情報提供を積極的に行うべきである。
 (四) 電子商取引の実現
 利用者から信頼される電子商取引の実現のためには、電気通信事業者の果たす役割が大きい。ネットワークの安全性・信頼性の観点からは、電気通信事業者による「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」の遵守の促進及びインターネット高信頼化技術の活用が必要となる。
 また、データ不到達等により発生する損害について、取引当事者と電気通信事業者とがどのように損害を負担すべきかについて検討を進めていく必要がある。

二 インターネット上の情報流通
 郵政省では、電気通信事業者の責任範囲の明確化などの情報流通に関するルールを作成するため、九年十月から「電気通信サービスにおける情報通信ルールに関する研究会」を開催し、九年十二月に報告書「インターネット上の情報流通ルールについて」をまとめた。
 本報告書では、情報流通ルールの具体的な在り方として、自己責任の原則の確認、違法な情報発信に対する現行法の適用、プロバイダによる自主的対応、発信者情報開示(匿名性の制限)の検討、受信者の選択を可能とする技術的手段の活用などを挙げている。

三 視聴者政策の推進
 (一) 我が国の放送分野における視聴者保護政策に関する取組
 近年、青少年による凶悪な事件の発生等により、テレビ番組の暴力シーンの青少年への影響が問われていることから、今後、郵政省では放送分野における視聴者保護政策について調査研究会を開催する予定である。
 本調査研究会では、米国のVチップ等、諸外国の取組に関する調査、放送分野における視聴者保護政策の課題の抽出等を行い、その方策等について検討を行うこととしている。
 (二) 放送番組審議機関に関する制度整備
 郵政省では、放送番組審議機関の活性化を図るため、放送法及び有線テレビジョン放送法の改正を行った(九年十月施行)。
 (三) 放送と視聴覚機能に関する検討会
 九年十二月、アニメーション番組を見ていた視聴者が、体調の異常を訴える事例が発生した。そこで、郵政省では「放送と視聴覚機能に関する検討会」を開催し、放送番組の視聴的効果・生理的効果等について幅広く検討を行い、十年六月に報告書を取りまとめた。

<第5節> デジタルネットワーク社会の実現に向けて

一 課題への対応
 (一) 誰でもがネットワークサービスを利用することができる環境の整備
<情報通信インフラ整備>
 加入者系光ファイバ網と放送インフラ(衛星放送、地上放送及びケーブルテレビ)のデジタル化を進めるために、郵政省では、光ファイバ網の全国整備を二〇一〇年を念頭において早期に実施することを目標とし、二〇〇五年への前倒しに向け努力することとしている。
 また、全放送メディアのデジタル化についても、二〇〇〇年の実現を目標に政策を推進している。
<公共分野への情報通信アプリケーションの導入>
 教育、医療・福祉、行政等の公共分野に各種アプリケーションの導入を進める必要があることから、郵政省では、地方公共団体が地域の特性を反映し、公共アプリケーションの開発・普及を主導していくにあたって、先進的な公共アプリケーションの整備等を支援することとしている。
<情報リテラシーの向上>
 郵政省では、学校におけるインターネット活用の促進等、情報リテラシー向上のための施策を行うこととしている。
<端末のマンマシン・インターフェースの改善>
 誰もが情報通信サービスの恩恵を享受するためには、情報リテラシーの向上とともに、使いやすく、安価な端末の普及が必要である。このため、郵政省では、@高齢者・障害者等を含む一般利用者が簡単に高度な情報通信サービスを利用できるよう端末機器の開発・普及を促進し、Aサービスの多様化に柔軟に対応できるような端末機器の共用化を推進することとしている。
 (二) ネットワークサービスを安心して利用することができる環境の整備
 郵政省では、個人情報保護、無権限アクセスへの対応、情報流通ルールの整備、苦情処理体制の整備など、電子商取引等のサービスを安心して享受できるようにするための検討を行っている。

二 デジタルネットワーク社会の実現(真の豊かさの獲得)
 ネットワークサービスを利用するための環境整備を進めることにより、「デジタルネットワーク社会」が到来しつつある。「デジタルネットワーク社会」においては、人的ネットワークが広がり、ユニバーサルサービスを実現することができる。また、「多様な選択」と「自由な参加」の機会が提供され、「個性の発揮」できる真の意味の豊かさを獲得できる。

<第2章> 平成九年情報通信の現況

<第1節> 情報通信産業の現状

一 成長を続ける情報通信産業
 (一) 情報通信産業の実質国内生産額の動向
 我が国の情報通信産業の実質国内生産額は、八年には百兆円を突破して百三兆三千億円(全産業に占めるシェアは一一・四%)となった。また、五年から八年の間の年平均成長率は六・四二%で、同期間の全産業の年平均成長率(一・六八%)を大きく上回っている。
 (二) 情報通信産業の設備投資額の動向
 情報通信産業の設備投資額は、四年度から六年度まで漸減傾向をたどった後、七年度から大きく増加し、八年度には十一兆一千億円(対前年度比一兆六千億円増)と、初めて十兆円を超えた。
 また、情報通信産業の設備投資が、全産業の設備投資に占めるシェアは、八年度には一四・五%となっている。

二 情報通信産業に関する日米比較
 (一) 名目GDPの動向
 米国における八年の情報通信産業の名目GDPは、六千億ドル(一ドル=百十一円として六十六兆六千億円)となり、我が国の約一・五倍の規模になっている。また、五年から八年までの年平均成長率も五・七三%と、我が国に比べ高い伸びを示している。
 (二) 情報通信産業構造の日米比較分析
 情報通信産業に属する部門の名目GDPに占めるシェアと、二年から八年までの年平均成長率を日米比較すると、名目GDPに占めるシェアにおいては、我が国は「通信機器」等の製造業部門、米国は「情報サービス」等のサービス業部門が、相対的に大きくなっている。
 一方、成長率においては、ほとんどの部門で米国の成長率が高くなっているが、「電気通信」では、我が国が優位に立っている(第2図参照)。
 (三) 情報化投資の動向
 民間企業設備投資に占める情報化投資の比率を見ると、我が国においては二年から八年の期間で七・七ポイント上昇し、八年には一〇%を超えて一四・一%に達したが、米国においては同期間に一九・九ポイント上昇し、八年には三三・八%に達している。

三 情報通信産業の成長が経済全体に与えたインパクト
 二年から八年にかけて、情報通信産業の生産額は二十二兆七千億円増加している。さらに、情報通信産業の生産増による情報通信産業以外の産業への波及額も七兆三千億円あり、合計額は三十兆円となった。同期間の全産業における生産増加額は四十四兆六千億円であり、情報通信産業はその六七・三%を占めている(第3図参照)。

<第2節> 情報通信経済の動向

一 事業者数の動向
 事業者数については、ケーブルテレビ事業者の新規参入により、第一種電気通信事業者の顕著な増加が見られた。

二 電気通信事業者の経営動向等
 (一) 経営動向
 八年度の第一種電気通信事業者全体の電気通信事業営業収益は、十兆二千八百十一億円(対前年度比一六・七%増)であった。その内訳を見ると、国内第一種電気通信事業者は九兆八千百四十億円(同一六・〇%増)、国際第一種電気通信事業者は四千六百七十億円(同三五・四%増)であった。
 (二) 設備投資動向
 電気通信事業者の八年度の設備投資実績額は、四兆三千六百八十三億円(対前年度実績額比二四・六%増)となった。九年度の設備投資修正計画額については、全産業が四十四兆八千百二十七億円(同三・〇%増)、製造業が十五兆六千二百九十三億円(同五・七%増)、非製造業が三十兆五千三百五十七億円(同一・七%増)であるが、電気通信事業者は四兆四千九百九十五億円(同三・〇%増)となっている。

三 放送事業者の経営動向等
 (一) 経営動向
 八年度の日本放送協会(NHK)の経営状況(一般勘定)については、事業収入は五千八百七十六億円(対前年度比二・八%増)で、このうち受信料は五千七百十四億円(同五・〇%増)であった。一方、事業支出は五千八百五十三億円(同二・九%増)であり、事業収支差金は二十二億円の黒字となった。
 八年度の民間放送事業者全体の経営状況については、地上系民間放送事業者百九十三社、放送衛星及び通信衛星を利用する衛星系民間放送事業者五十八社の営業収益の合計は、二兆五千五百八十一億円(同八・五%増)と大きく増加した。
 八年度の自主放送を行うケーブルテレビ事業者(営利目的のもの)全体の経営状況については、営業収益は二千百三十億円(同八九・三%増)、営業費用は二千百九十五億円(同八三・七%増)、経常損失は百六億円となり、損失額は昨年度に比べ減少している。
 (二) 設備投資動向
 放送事業者全体の八年度の設備投資実績額は、五千五百八億円(対前年度実績額比七八・三%増)であった。また、九年度の設備投資修正計画額は二千九百二十五億円(同四六・九%減)で、平年並みとなっている。

四 郵便の経営動向等
 八年度の郵便事業の経営状況については、収益全体は二兆三千三百六十二億円(対前年度比二・二%増)であった。一方、新郵便番号制の導入のための準備経費の増加等により、費用は二兆二千四百十九億円(同三・六%増)であり、郵便事業利益は九百四十三億円(同二一・七%減)となった。

<第3節> 情報通信サービスの動向

 情報通信サービスの動向を、国内情報通信と国際情報通信のそれぞれについて概観する(第4図参照)。

一 電気通信サービスの動向
 (一) 電話サービス
<国内電話サービス>
 九年九月末現在、NTTの加入電話契約数は六千百二十四万契約(対前年同期比〇・五%減)で、戦後初めて減少した。一方、新第一種電気通信事業者のうち、新長距離系三社の市外電話サービス契約数は三千六百八十万契約(同八・二%増)となっている。
<国際電話サービス>
 八年度における国際電話サービスの発着信合計時間数は、三十二億二千九百七十万分(対前年度比九・四%増)となっている。
<新電話サービス>
 発信者番号通知サービスは、電話をかけてきた相手の電話番号が、電話を受けた人の電話機に表示されるサービスである。九年一月からNTTにより、横浜市(神奈川県)、名古屋市(愛知県)及び福岡市(福岡県)の三都市で試験サービスが開始されていたが、十年二月から、全国で本格提供が開始された。
 (二) 移動通信サービス
 九年九月末現在、携帯・自動車電話サービスの総契約数は、二千六百八万契約(対前年同期比七〇・四%増)と加入電話と比べて大幅に伸びている。PHSサービスの総契約数は、七百七万契約(同七八・四%増)と爆発的に増加しているが、それ以降の半年間は四・八%減と伸び悩んでいる。無線呼出しサービスの総契約数は、八百九十八万契約(同一五・五%減)と大幅に減少している。
 (三) 専用サービス
 国内の高速デジタル伝送サービスの総回線数は、九年九月末現在、十六万三千四百七十七回線(対前年同期比六七・七%増)と高い伸びを示している。
 一方、国際専用回線サービスの総提供回線数は、八年度末現在、一千七百七十一回線(対前年度末比四・七%増)となっている。
 (四) ISDNサービス
 国内のISDNサービスの回線数は、九年九月末現在、基本インターフェースが百七十万一千四十四回線(対前年同期比一二八・六%増)、一次群速度インターフェースが二万七千九百九十七回線(同一〇二・九%増)と爆発的に伸びている。
 一方、国際ISDNサービスの総契約回線数は、八年度末現在、一万六百四十七回線である。
 (五) インターネットサービス
 インターネットに接続されるホストコンピュータ数は、米ネットワーク・ウィザーズ社の公表によると、一九九八年一月現在、全世界では約二千九百六十七万台(対前年同期比八三・八%増)で、我が国は約百十七万台である。

二 放送サービスの動向
<契約者数の推移>
 九年十二月現在、NHKの受信契約総数は約三千六百二十万九千契約で、このうち一般受信契約数(衛星契約を除く。)は約二千七百五十八万六千契約(対前年同期比〇・六%減)となっている。
 BS放送の九年十二月現在の受信契約数は、NHKが約八百六十二万三千契約(同八・二%増)、日本衛星放送(株)(JSB)が約二百三十六万二千契約(同五・〇%増)、衛星デジタル音楽放送(株)(SDAB)が約十二万三千契約(同八・八%増)となっている。CSデジタル放送の受信契約数は、八年六月の放送開始以来大きく増加し、約五十三万三千契約(同二四三・九%増)に達している。
 自主放送を行っているケーブルテレビの受信契約数については、八年度末現在、加入世帯数が五百万世帯(対前年度末比三七・五%増)で、普及率が一〇%を超えるなど顕著な伸びを示している。

三 郵便サービスの動向
<取扱数の推移>
 九年度の郵便物数については、内国は二百五十六億通(個)(対前年度比一・一%増)、国際は四億三千九百九十四万通(個)(同二・三%増)となっている。

<第4節> 通信料金の動向

 電気通信の価格の推移について、「物価指数月報」(日本銀行)における企業向けサービス価格指数により、二年の価格指数の総平均を一〇〇として概観する。
 九年十〜十二月平均の指数を見ると、総平均が一〇三・四で三・四ポイント上昇しているのに対して、国内電気通信については、指数が八六・六であり、一三・四ポイント低下している。一方、国際電気通信については、指数は八一・二であり、一八・八ポイント低下している。

<第5節> 電波利用の動向

 八年度末現在の無線局数は、約二千九百二十一万局(対前年度末比六八・七%増)である。
 八年度の無線局数の増加は、七年度と同様、携帯・自動車電話加入局の大幅な増加(同一〇四・六%増)によるものである。

<第6節> 情報流通センサス

一 全国の情報流通の動向
 八年度の各情報流通量について、昭和六十一年度を基準として指数化し、十年間の推移を見ると、原発信情報量、発信情報量の伸びが大きく、それぞれ昭和六十一年度の四・二三倍、三・一一倍となっている。
 昭和六十一年度からの十年間の年平均伸び率は、原発信情報量が一五・五%、発信情報量が一二・〇%、選択可能情報量が七・四%、消費可能情報量が五・七%、消費情報量が六・三%であり、全情報量とも、同期間の実質GDPの伸び(年平均三・一%)を上回っている(第5図参照)。
 消費情報量の伸びは、七年度以降、消費可能情報量を上回っている。これは、原発信から消費まで情報量に変化のない電気通信系パーソナルメディア、特にデータ伝送等の伝送容量の大きいメディアが、インターネット等ネットワーク化の進展により急増していることが要因である。

二 地域の情報流通の動向
 八年度における各都道府県別の発信情報量のシェアを見ると、東京都のシェアが二〇・四%と突出しており、二位の大阪府(シェア七・三%)の二・八倍となっている。また、各都道府県の一人当たりの選択可能情報量を見ると、一位山梨県(全都道府県平均の一・八〇倍)、二位長野県(同一・五七倍)の順となっている。山梨県、長野県は昭和六十一年度と比較した一人当たり選択可能情報量の伸びが大きい県でもあり(山梨県三・五八倍、長野県三・〇七倍)、両県の特徴としてケーブルテレビの普及が進んでいることが挙げられる。

<第7節> 情報通信と社会経済構造の変革

一 産業の情報化
 (一) サイバービジネスの現状と課題
<市場規模及び店舗数の推移>
 我が国におけるサイバービジネスの市場規模は、九年度(十年一月)には約八百十八億円で、一年間で約二・八七倍の成長を遂げている。なお、「インターネットビジネスに関する研究会」(郵政省)の報告によると、二〇〇五年には一兆一千億円に達するものと予想される。
<経営動向>
 サイバービジネス事業者の売上高の推移を見ると、全体の半数近く(四五・九%)の事業者において前年と比較して売上が増加し、一七・二%の事業者において前年の倍以上に売上が伸長した。
 一方、前年と比較して売上が減少した事業者の割合は八・六%にとどまり、サイバービジネス事業者の売上は着実に伸びている。
<サイバービジネスの普及条件>
 サイバービジネスを普及させるために必要と考えている条件について、サイバービジネス事業者は、消費者がパソコンやインターネットを使いこなすことができるようになることなどを、一方、消費者は、信頼できる決済手段が利用できることなどを上位に挙げており、両者の間での意識の差が顕著である。
 (二) インターネット関連市場の現状
 「インターネットビジネスに関する研究会」(郵政省)の報告によれば、インターネット関連市場の市場規模は、九年度には二兆七千億円に達している。

二 地域の情報化
 (一) 条件不利地域の情報化
 過疎地域、山村地域、離島地域、豪雪地帯などの市町村においては、「緊急通報システム」、「行政窓口オンラインサービス」、「防災情報提供システム」などのアプリケーションが多く運用されている。
 これらの地域では、情報通信ネットワークを用いた行政サービスの利用意向及び必要性について、住民は行政事務や医療・福祉サービスを、一方、地方自治体はすべての地域で医療・福祉関連のアプリケーションを上位に挙げている。
 (二) 都道府県の地域情報化
 都道府県の情報化の取組状況について、アンケートを基に行政の情報化、住民サービスの情報化及び情報化政策に分けて分析を行った。
 この三つの項目ごとに点数化して情報化指標を作成すると、@行政の情報化については全般的に高得点の県が多い、A住民サービスの情報化については平均点付近に集中している、B情報化政策の情報化については全般的に低得点の都道府県が多い、という傾向が見られる。
 これらの三つの指標を合計した総合指標は、岐阜県、大阪府、京都府の順に高得点となっている(第6図参照)。

<第8節> 海外の動向

 各国政府の動向を受け、世界的規模で情報通信産業の再編が進みつつある。
 国際電気通信分野では、各国の主要通信事業者の間で相互連携(キャリア・アライアンス)等の動きが活発化している。世界的なメディア産業では、国際競争市場での優位を確保するため、グローバルな提携や買収・合併が行われている。

<第3章> 情報通信政策の動向

<第1節> 高度情報通信社会の実現に向けた政府の取組

 九年九月、高度情報通信社会推進本部は、電子商取引の本格的な普及の実現に向けて電子商取引等検討部会を設置し、現行制度・ルールの明確化、整備等を必要とする課題などについて検討を行い、十年六月に報告を取りまとめた。

<第2節> 高度情報通信社会の構築に向けた情報通信政策の推進

<情報通信二十一世紀ビジョン>
 郵政省では、九年二月、電気通信審議会に対し、二十一世紀初頭(二〇一〇年)に向けて推進すべき情報通信高度化のための総合的な政策と、これにより実現可能な未来像を提示することにより、長期的展望に立脚した情報通信政策を確立するため諮問を行い、九年六月、「情報通信二十一世紀ビジョン―二十一世紀に向けて推進すべき情報通信政策と実現可能な未来像―」と題する答申を受けた。
<通信・放送の融合と展開>
 郵政省では、八年十月から「通信・放送の融合と展開を考える懇談会」を開催し、九年六月、中間取りまとめを行った。
 さらに、サイバー社会の出現とその意義について考察を加えるとともに、プライバシーの保護やネットワーク上の不正行為への対応などのサイバー社会に向けて整備すべき課題について整理を行い、十年五月、最終報告を取りまとめた。
<地域情報化プログラムの推進>
 郵政省では、八年十月から、二十一世紀を展望した「高度情報通信社会構築に向けた地域情報化推進方策についての調査研究会」を開催し、九年五月、最終報告を取りまとめた。

<第3節> 第二次情報通信改革に向けた電気通信行政の推進

<NTTの在り方>
 郵政省は、八年三月の閣議決定「規制緩和推進計画の改定について」に基づき、NTTの在り方について検討を進めてきたが、八年十二月、NTTを再編成する方針を定めた。
 この方針に基づいて必要な調整を進め、九年六月、日本電信電話株式会社法(NTT法)の改正を行った。
<接続政策の推進>
 郵政省では、「接続の基本的ルールの在り方について」(電気通信審議会答申、八年十二月)を踏まえ、円滑な接続の実現により、利用者の利便の確保及び競争の促進を図るため、電気通信事業法の改正(九年六月)を行い、「電気通信事業法施行規則」の改正等、関係省令の整備を行った後、九年十一月に施行した。
<規制緩和の推進>
 郵政省では、九年十一月、「二十一世紀を切り開く緊急経済対策」の一環として規制緩和を行ったほか、国際公専公の完全自由化等を認めた。
<成層圏無線プラットフォーム(スカイネット計画)>
 成層圏無線プラットフォームとは、高度二十キロメートル程度の成層圏に通信機材を搭載した飛行船を滞空させ、通信・放送等の情報通信を利用するものである。
 郵政省は、八年十二月から「成層圏無線中継システムの実用化に向けた調査研究会」を開催してきたが、九年五月に成層圏無線中継システムの実現の可能性を確認し、開発・導入に向けた技術的課題及び開発指針を明示する報告書を取りまとめた。
 この報告を受け、郵政省は、十年度から科学技術庁と連携して、本システムの研究開発に着手した。
<電気通信利用の利用者保護対策>
 パソコン通信やインターネット上におけるわいせつ情報、他人を誹謗中傷又は差別する情報、詐欺的情報等の違法・有害情報の流通に対しては、サービスの提供者である電気通信事業者に対する苦情が多発しており、このような場合における事業者の対応及び責任の在り方が問題となっている。
 このため、郵政省では、電気通信事業者の責任範囲の明確化等の情報流通に関するルールを作成するため、九年十月から「電気通信サービスにおける情報流通ルールに関する研究会」を開催し、九年十二月に報告書「インターネット上の情報流通ルールについて」を取りまとめた。
<電波利用における人体防護の在り方>
 郵政省は、携帯電話等の移動体通信の急速な普及に伴い、無線局から発射される電波が人体に与える影響に関しての疑問や不安に適切にこたえるため、「電波利用における人体の防護指針」(電気通信技術審議会答申、二年六月)をより具体化するとともに、八年十一月に「電波利用における人体防護の在り方」について電気通信技術審議会に諮問を行い、九年四月に答申を得た。

<第4節> 放送政策の推進

<放送のデジタル化の推進>
 国民に最も身近なメディアである地上放送については、郵政省では、地上デジタル放送が二〇〇〇年以前に開始できるよう、放送方式、チャンネルプランの策定、制度整備等を進めることとしている。
 また、放送衛星(BS)を利用した放送について、郵政省では、BS―後発機による二〇〇〇年のデジタル放送開始に向け、九年十月に委託放送業務への参入希望に関するヒアリングを行った。また、十年二月に電気通信技術審議会からの答申を受けて、BS放送の放送方式を策定し、同月に電波監理審議会に放送普及基本計画の変更等の制度整備について諮問した。十年度には、これらを受け、放送事業者選定を行うこととしている。
<放送の健全な発達に向けた取組>
 八年十二月に取りまとめられた「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」報告を受け、郵政省では、多チャンネル化の進展等に対応し、放送の健全な発達に資することを目的として、九年五月、放送法及び有線テレビジョン放送法を改正し、放送番組審議機関に関する制度整備を行った。
<放送ソフトの振興>
 郵政省では、放送の多チャンネル化、グローバル化の進展を踏まえ、八年九月から「放送ソフトの振興に関する調査研究会」を開催した。そして制作会社等における制作資金調達の円滑化、放送ソフト制作の活性化方策、海外への流通や他メディアへの活用を含む放送ソフトの多元的利用の促進方策等について検討を行い、九年五月に最終報告が取りまとめられた。

<第5節> 郵便局ネットワークの活用の推進

<郵便局ビジョン二〇一〇の策定>
 郵政省は、九年二月、郵政審議会に「二十一世紀を展望した郵便局ネットワーク及びそのサービスの在り方並びにその実現のために講ずべき方策」について諮問し、同年六月、「郵便局ビジョン二〇一〇 国民共有の生活インフラ―情報・安心・交流の拠点へ」と題する答申を受けた。
 本答申では、@郵便局を「全国どこでも、国民誰もが利用できる国民共有の生活インフラ」ととらえ、A二十一世紀の郵便局を地域社会の中で「情報・安心・交流の拠点」として位置づけ、その上でB郵便局ネットワークの行政、民間、地域社会ヘの開放・活用等について、各般にわたる郵便局改革の提言が行われている。

<第6節> 情報通信のグローバル化に対応した国際政策の推進

 九年六月、米国のデンヴァーにおいて、第二十三回主要国首脳会議(デンヴァー・サミット)が開催された。情報通信分野について、情報技術製品及び基本電気通信サービス貿易に関する自由化合意を支持すること、電子商取引の発展に必要な環境の整備に向け取り組むべきこと等が、七か国声明に明記された。
 また、コンピュータ及び電気通信技術を用いた国際組織犯罪及びテロリズムへの対処、電子・コンピュータインフラへのテロ攻撃抑止のための手段の開発等が、八か国宣言で言及された。

<第7節> 二十一世紀に向けた技術開発・標準化の推進

<情報通信研究開発基本計画(第二版)>
 郵政省では、八年九月、電気通信技術審議会に対し、「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」の諮問を行い、九年四月、「情報通信研究開発基本計画(第二版)―明日を拓く情報通信技術―」と題する答申を受けた。

<第8節> 宇宙通信政策の推進

<技術試験衛星[型(ETS―[)の開発>
 携帯端末による移動体衛星通信や移動体マルチメディア衛星放送の実現に必要な技術の開発を目的とした技術試験衛星[型(ETS―[)について、十四年度の打上げに向けて十年度から開発に着手した。

<第9節> 安全な社会づくりを目指す防災対策の推進

 郵政省では、災害時の支援活動として、@救助郵便物の料金免除、A被災者が差し出す郵便物の料金免除、B災害ボランティア口座での寄附金配分、C被災者あて災害義援金の振替料金免除、D被災者への郵便葉書等の無償交付、E貯金・保険の非常取扱いを行っているが、このほかにも必要に応じて、携帯電話の貸し出し等、様々な施策を実施している。

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原子力白書のあらまし


原 子 力 委 員 会


 平成十年版「原子力白書」は、平成十年六月十九日の閣議に報告され、同日公表された。

<第1章> 国民の信頼回復に向けて

 一九五〇年代半ばに始まった我が国の原子力開発利用は、四十年余りを経た今日、我が国の発電電力量の約三分の一をまかなうまでに成長し、非エネルギー分野においても、医療分野をはじめとして、国民生活の身近なところにまでその応用が広がり、着実な成果をあげています。
 資源に恵まれない我が国は、エネルギーの安定確保と資源の有効利用のために、原子力開発の当初から、一貫して安全確保を大前提に、核燃料サイクルの確立を基軸においた原子力政策を進めており、この原子力政策の基本的な考え方の重要性は、今日に至るまで変わっていません。
 一方、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)の開催など、地球温暖化問題の顕在化、グローバリゼーションの進展、廃棄物問題等への取り組みの具体化など、原子力を取り巻く内外の諸情勢が変化し、また「もんじゅ」事故以来、原子力に対する国民の信頼回復に取り組む最中、一九九七年三月、動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設アスファルト固化処理施設において、火災爆発事故が発生しました。
 この火災爆発事故及びこれに続く動燃の一連の不適切な対応によって、国民の批判の目は、単に動燃という一機関にとどまらず、原子力開発利用全体に対する不安感や不信感となって、核燃料サイクルを中心とする原子力政策そのものにも向けられました。
 原子力行政に対する国民の信頼感が損なわれ、今我が国の原子力政策の在り方が改めて問われています。原子力行政への信頼感をいかに回復し、原子力開発利用に対する国民の理解と協力を得つつ、次なるステップにどう進むべきかについて、この一年余りの原子力開発利用を巡る動向を振り返りつつ、考えてみます。

1 原子力開発利用を巡る動向

 (1) 核燃料サイクル関連施策の動向
 原子力委員会では、一九九七年一月に、プルサーマル、使用済燃料の管理、バックエンド対策、高速増殖炉の開発について具体的な施策を示しました。これを踏まえ、同年二月に「当面の核燃料サイクルの推進について」が閣議了解されました。これまで、それぞれの施策について一定の進展がみられますが、引き続き国民の理解と協力を得て、国と事業者が一体となった取り組みが必要です。


 (2) 地球温暖化問題とCOP3
 発電過程で温室効果ガスを発生しない原子力エネルギーは、地球温暖化防止に重要な役割を果たします。
 一九九七年十二月に京都で行われたCOP3において合意された温室効果ガスの我が国の削減目標を達成するためにも、原子力の果たす役割の重要性を考えていくことが大切です。

2 動燃問題と動燃改革

 (1) アスファルト固化処理施設火災爆発事故とその後の不適切な対応
 一九九七年三月、動燃東海事業所において発生した火災爆発事故は、その後の不適切な対応が重なったこともあり、国民の原子力に対する不信感が高まりました。
 (2) 動燃改革への取組
 「動燃改革検討委員会」では、動燃の事業を抜本的に見直すとともに、経営の刷新を図り、新法人として解体的に再出発すべきとして、動燃改革の基本的方向を取りまとめました。
 これに基づいて動燃改革法案が国会で審議、成立し、現在、動燃において、意識改革や安全性の向上などの取り組みが実施されるとともに、一九九八年十月の「核燃料サイクル開発機構」への改組に向けた作業が進められています。
 (3) 動燃改革への原子力委員会の対応
 原子力委員会は、原子力への国民の信頼回復はもとより、核燃料サイクル開発機構の運営にかかる原子力委員会の責務の重大さを認識し、機構の業務の基本方針策定に主体的に取り組むこととしています(第1表参照)。

3 原子力開発利用に対する国民の不安と不信

 (1) 国民の不安と不信の構造
 国民の原子力に対する不安感、不信感の背景には、技術的「安全」と意識としての「安心」の乖離、閉鎖的体質に対する不信感、原子力政策の未解決の諸問題に対する疑問や不安などがあげられます。
 これらを解消するためにも、原子力関係者は常に国民的な視点を見失わないことが重要です。
 (2) 国民の信頼回復に向けた取組
 国においては、情報公開をはじめ、原子力政策の策定過程における透明性の向上に努めるとともに、様々な場を通じて国民との対話を進め、原子力に対する国民の信頼回復に努めています。

4 今、原子力政策に求められているもの―ともに考える原子力―

 原子力委員会は、原子力を取り巻く状況の変化を踏まえ、将来の原子力開発利用の全体ビジョンの構築を念頭に、当面の政策課題に取り組むとともに、新円卓会議の開催など、原子力に対する国民の理解と協力の促進に向けて取り組んでいきます。

<第2章> 国内外の原子力開発利用の状況

1 動燃改革について

 一九九五年十二月の「もんじゅ」事故以降の動燃の一連の事故及びその後の不適切な対応により、原子力に対する国民の不安感、不信感が高まりました。
 このため、科学技術庁は、動燃を抜本的に改革することとし、一九九七年四月から「動燃改革検討委員会」において、動燃改革の基本的考え方について検討を行うとともに、その検討結果を受けて、「新法人作業部会」において、改革の具体的な検討を行いました。
 この結果、動燃は新法人として解体的に再出発させることとされ、一九九八年五月、動燃を核燃料サイクル開発機構に改組するための法律が成立しました。
 また、これらの取り組みと並行して、科学技術庁や動燃において、自己改革が推進されています(第1図参照)。

2 地球温暖化問題と原子力

 地球温暖化問題は、最大の環境問題の一つであり、京都で気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)が開かれるなど、今まさに全世界で活発な議論がなされています。
 二酸化炭素の排出削減を図るためには、省エネの推進による化石燃料の総使用量の削減等と併せて、発電過程において二酸化炭素を排出しない原子力発電の導入促進が重要であり、こうした地球温暖化対策を進めることは、人類社会が地球環境と調和しながら、今後とも持続的な発展を遂げるための我が国の国際的責務といえます(第2図第3図参照)。

3 核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

 原子力の平和利用を円滑に推進していくためには、国際的な核不拡散体制の維持・強化は極めて重要であり、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に基づき、核不拡散へ向けた国際的信頼の確立に努めることが不可欠です。
 我が国は従来から、国際原子力機関(IAEA)と締結した保障措置協定、核物質の防護に関する条約、米国をはじめとする各国との二国間原子力協力協定などに基づいて、核物質すべてについて平和利用を担保するための「保障措置」及び「核物質防護」を実施しています(第2表参照)。

4 原子力安全確保

 原子力の安全確保は、我が国の原子力開発利用の大前提です。我が国の原子力施設の安全性は、国の厳格な安全規制や、事業者及び研究開発機関による安全性向上のための不断の努力によって、国際的にも高い水準に維持されており、優れた安全実績を有しています。

5 情報公開と国民の理解の促進

 原子力に対する不信感・不安感を払拭し、国民の信頼を回復するためには、情報公開や政策決定過程への国民参加の促進などを通じて、信頼性・透明性を高めることが重要です。
 また、国民の理解を深めるために、様々な体験型、参加型の活動を展開しています。
 <インターネットアクセス・ポイント>
  科学技術庁://www. sta. go. jp
  資源エネルギー庁:
        http://www. enecho. go. jp
  げんしろう://sta‐atm.jst. go. jp

6 原子力発電の展開

 我が国及び諸外国の原子力発電の状況を分析するとともに、我が国の原子力発電の将来見通しを示します(第3表第4図参照)。

7 軽水炉体系による原子力発電

 今後の軽水炉技術の開発に当たっては、安全確保を大前提としつつ、設計、運用等の面から技術の高度化を図ることが必要です。
 また、原子力発電の安定性を確保する観点から、天然ウランの安定確保を図ることが重要であり、我が国は、核燃料サイクル全体の自主性を確保する観点から、経済性を考慮しつつ、ウラン濃縮、成型加工などの国内での事業化を推進しています。

8 核燃料サイクルの展開

 我が国は、ウラン資源の有効利用による将来にわたるエネルギーの安定供給の確保、放射性廃棄物による環境への負荷の低減などの観点から、使用済燃料を再処理し、回収されたプルトニウムなどを有効利用する「核燃料サイクル」を原子力政策の基本としており、そのための技術開発を着実に進めています。
 一九九七年一月、原子力委員会は軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)、使用済燃料の管理等、当面の核燃料サイクルの具体的な施策についての決定を行い、同年二月には、これを政府として確認する閣議了解がなされました。
 これに沿って、プルサーマルについて地元をはじめとする国民の理解を得る努力を重ねるとともに、原子力発電所外における使用済燃料の貯蔵について具体的な検討を進めるなどの取り組みを行っています(第4表参照)。

9 バックエンド対策

 放射性廃棄物の処理処分対策と原子力施設の廃止措置対策(これらを「バックエンド対策」といいます。)は、原子力の開発利用を進めていく上で避けては通れない重要な課題であり、原子力発電による便益を享受している現世代として、責任ある対応をしていくことが必要です。
 現在、原子力開発利用長期計画に沿って、計画的かつ積極的にその対策を進めています。

10 原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化

 原子力技術は、核分裂エネルギーを利用した原子力発電への利用以外にも、核融合エネルギー、高温ガス炉による熱供給、舶用動力、放射線利用など、広範な応用範囲をもつものです。
 今後とも、多様化、高度化する原子力のニーズに適切に対応し、基礎から応用まで多様な展開を図っていきます。

11 原子力分野の国際協力

 原子力の平和利用や高水準の原子力安全を確保するためには、国際的な取り組みを推進していくことが重要であり、国際協力の重要性は、今後ともますます増大していくものと考えられます。
 我が国は、米国をはじめ、六か国との間で原子力協力のための二国間協定を締結して、密接な協力関係を構築しているほか、各国との研究開発協力、近隣アジア諸国や開発途上国の原子力開発利用への協力、旧ソ連・東欧諸国における原子力安全や非核化分野における国際協力を積極的に行っています。

12 原子力開発利用の推進基盤

 我が国の原子力に関する開発利用を一層推進していくためには、その担い手となる優秀な人材の養成・確保、資金の確保を図り、各研究開発機関の役割分担の明確化と連携の緊密化、研究活動の活性化に留意しつつ、基礎研究から研究開発の応用段階までを幅広く総合的、計画的に進めることが重要です。

13 原子力産業の展開

 原子力産業は、原子力機器、役務などを供給する原子力供給産業と電気事業者に分けられます。原子力供給産業には、原子炉、機器などを供給する原子力機器供給産業、ウラン濃縮、燃料加工、再処理などを行う核燃料サイクル産業、保守等を行う原子力ソフト・サービス産業などがあり、多種多様な企業群により構成されています。


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消費支出(全世帯)は実質〇・六%の減少


―平成十年五月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月、十月は実質増加となり、十一月以降七か月連続の実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成九年九月は実質増加、十月は実質で前年と同水準となり、十一月以降六か月連続の実質減少となったが、十年五月は実質増加となった。
 消費支出は、平成九年九月は実質増加となった後、十月以降七か月連続の実質減少となったが、十年五月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は二十七万九千七百十七円で、名目一・二%の減少、実質一・七%の減少

◇財・サービス区分別の消費支出

 財(商品)は、実質〇・四%の増加
  <耐 久 財> 実質三・一%の減少
  <半耐久財> 実質一・五%の増加
  <非耐久財> 実質〇・六%の増加
 サービスは、実質〇・四%の減少





 
    <8月26日号の主な予定>
 
 ▽環境白書のあらまし………………環 境 庁 

 ▽消費者物価指数の動向……………総 務 庁 
 



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