官報資料版 平成1026





環境白書のあらまし


―平成9年度 環境の状況に関する年次報告―


環 境 庁


 平成十年版環境白書(「平成九年度環境の状況に関する年次報告」及び「平成十年度において講じようとする環境の保全に関する施策」)が、六月五日の閣議で決定の後、国会に提出され、公表された。
 白書のあらましは、次のとおりである。

<第1部> 総 説

―二十一世紀に向けた循環型社会の構築のために―

<序 章> 京都会議から見据えた二十一世紀の地球

<第1節> 地球温暖化防止京都会議の成果とこれからの対応

▽京都会議の開催まで
 人間の活動により発生する二酸化炭素(CO2)などが原因となって、地球の気温が急激に上昇(温暖化)し、深刻な影響を与えることが徐々に明らかとなったことから、各国の交渉により、一九九二年、気候変動枠組条約が採択された。
 しかし、この条約における先進国の約束は努力目標に過ぎず、また、二〇〇〇年以降の具体的取組についても決められていなかった。そこで、一九九五年、先進国における温室効果ガスの排出量の具体的な削減目標を設けるなどのための新たな国際的約束をとりまとめることとなった。
 その交渉では、多くの点について各国の主張が対立したが、一九九七年(平成九年)十二月、京都で開催された地球温暖化防止京都会議において、長く難航した協議の末、「京都議定書」が採択された。
▽京都会議から見えてきた二十一世紀への課題
 京都会議の成果から展望すると、今後、排出量の急増が予想される途上国が、早い段階でCO2の排出量を抑えていくためには、先進国は、途上国への支援とともに、自らがCO2の排出量を削減し、CO2の排出を抑えつつ生活水準を向上させることが可能なことを示す必要がある。
 このためには、従来の我々の経済や社会のシステムの根本を問い直し、二十一世紀において目指すべき経済社会システムの姿を明確にすることが不可欠である(第1表参照)。

<第2節> 大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却

▽現代の先進国社会の限界
 現代の先進国社会では、人間の活動規模が急激に拡大したことから、地球温暖化問題が生じるとともに、食糧や水資源、森林資源、生物種に地球規模で大きな影響を与えつつある。
 この原因は、化石燃料や資源を短期間のうちに大量に使い、自然生態系の中で分解できる量をはるかに超えた大量の廃棄物を発生させ、環境への負荷を与えていることにある。
 これを避けるためには、@人間の活動によって生じる物質を適切に循環させ、環境への負荷を少なくするとともに、A自然からの恵みを受けて初めて人間活動を行うことができることを踏まえ、自然界のメカニズムを理解し、自然と人間とが共生できるよう、人間活動を自然と調和させるような、「循環」と「共生」を基本とした経済社会システムに変えていくことが必要である。
▽経済社会システムを変えていくために
 地球温暖化問題のような我々の日常の生活や事業活動自体が原因となっている問題については、現代の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムをつくる根本となっている我々の価値観が変わる必要がある。
 技術や制度をつくり出す主体である我々の価値観が変わるならば、技術や制度を変える契機となるだろう。逆に、新しい価値観が多くの人たちに共有されるためには、新しい価値観を支える様々な制度や技術の変革、教育の充実や、ライフスタイルを変えるための技術開発などを同時に進めていくことが必要である。

<第1章> 循環型経済社会への動き

<第1節> 廃棄物・リサイクルにおける循環型への取組

▽廃棄物処理をめぐる今日の問題状況
<マテリアルバランスにみる一方通行社会>
 我が国における物質の利用状況をマテリアルバランス(物質収支)でみてみると、平成八年における我が国の経済活動に投入された資源の量は、二十億一千万トンである。また、再利用された量は二億三千万トンであり、再生利用率は一〇%のみであり、循環性が低く、資源採取から廃棄に向かう一方通行の流れであることが分かる。
 また、マテリアルバランスの新たな蓄積は主には土木建築物などであるが、耐用年数等が経過した時点で膨大な廃棄物となっていくことが読み取りうることから、再生利用の流れを今から太くしていくことが、将来的な環境負荷の低減にもつながると考えられる(第1図参照)。
<産業廃棄物処理の問題>
 産業廃棄物処理の問題は、不法投棄をはじめとする(産業)廃棄物問題=産業廃棄物処理業者の問題といったイメージが強いが、実際には、排出事業者の適正処理のためのコスト負担意識の弱さに帰因する不法投棄や、排出不適正処理が大部分である。
 このため、排出事業者の企業活動等における事業経費に廃棄物の処理コストが適正に組み込まれ、市場のメカニズムを通じて、適正処理のためのコストが社会に適切に負担されるようにしていくことが、不法投棄や不適正処理の問題を解決していくための一つの鍵であると考えられる。
<廃棄物処理とダイオキシン問題>
 近年、廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による環境汚染が、全国的に大きな問題となっている。我が国におけるダイオキシン類の総排出量の九割以上は、廃棄物焼却施設から排出されているという推計もあり、最も広く行われている焼却処理について、適正な処理を確保する観点から改善が必要であり、新たな処理技術の開発も進められてきている。
▽廃棄物処理に関する規制強化の動き
<シュレッダーダストの最終処分の規制強化>
 シュレッダーダストは、埋立処分に伴う安定型最終処分場からの有害物質による地下水汚染等が問題となったため、平成七年四月から管理型の最終処分場で処理することが義務付けられた。
<廃棄物処理法の改正>
 廃棄物の処理をめぐる様々な問題を踏まえ、国民の廃棄物処理に対する信頼性の回復と廃棄物の適正な処理を確保するため、
 ア 廃棄物の減量化・リサイクルの推進
 イ 廃棄物処理に関する信頼性・安全性の向上
 ウ 不法投棄対策
を三本柱として、平成九年六月に廃棄物処理法の改正が行われた。
<ダイオキシン類に関する規制強化>
 社会問題化しているダイオキシン類に対し、その排出等の規制強化を図るため、大気汚染防止法施行令の一部改正等を行い、ダイオキシン類を指定物質とし、廃棄物焼却施設等についてダイオキシン類の指定物質抑制基準を定めるとともに、廃棄物処理法施行令等の一部を改正し、排出ガス処理設備の基準の強化等の構造・維持管理基準の強化等を行った。
<規制強化と処理・リサイクルコスト>
 生活環境の保全の観点からのより高度な廃棄物処理が求められ、これにかかる費用も高くなるが、適正処理には多大なコストがかかるという意識が、事業活動の見直しを促す契機の一つとなるとも考えられる。
 排出事業者のコスト意識の広がりは、適正処理を行う廃棄物処理業者への適正費用の還流につながり、循環型産業システムの形成に当たっての一つの基礎となっていくと考えられる。
▽循環の輪をつくり、つなぐ動き
 ―循環型社会へ向けた取組―
<動脈産業による廃棄物のリサイクル>
 製鉄産業では、廃プラスチックを高炉での鉄鉱石の還元剤として活用することに取り組み始め、セメント産業でも、産業廃棄物の多くのものを原料や燃料として利用してきている。
 このような動きは、最終処分として埋め立てられていた廃棄物が、原料や燃料として大量に活用されることを促すことによって、最終処分や天然資源採取に伴う環境負荷の低減を図ることも可能になることから、取組の一層の拡充が期待される。
<地域社会における新たな取組>
 市町村の廃棄物処理をはじめ、同様の方法を採る産業廃棄物処理などの現場においては、ダイオキシン類対策としての焼却方法の適正化や処理施設の集約化・大型化、適正な最終処分の確保などが近年の大きな課題となっており、市町村域を越えた広域処理によって行う必要がますます高まっている。
 さらに、ダイオキシン類の低減対策にも資することから、廃棄物固形燃料(RDF)化、溶融固化やガス化溶融などの新技術の導入も広がっていくと考えられる。これらの動きは、従来の焼却−埋立の処理システムの転換を促す契機にもなりうるものである。
<循環型経済社会の形成に向けて>
 さらに、モノの流れの全体を国内外を含めて捉え、適切な役割分担の下、その利用から廃棄に伴う環境負荷を総合的に低減するための循環型社会の形成に向けて、今後、広範な国民的議論を進めていく必要がある。

<第2節> 循環型経済社会を目指した産業システムの試み

▽循環型産業システムに向けての実践
<廃棄物ゼロを目指すゼロエミッション構想が意味するもの>
 「無限で劣化しない地球」から「有限で劣化する地球」への社会的な意識の変化などを背景に、「ゼロエミッション」という考え方がでてきている。
 これは、一産業では自社内等で発生する廃棄物を極力最小化し、再資源化してもなお発生する廃棄物を、他の産業と連携することによって、適切なリサイクルの確立を図っていこうとするものである。
<ゼロエミッション工業団地等>
 環境事業団では、個々の企業では資源循環に向けた対策等を進めることが困難な中小企業を対象として、その集団化を図り、循環型社会の構成員としての企業団地の実現を支援する新たな建設譲渡事業としての環境共生型企業団地=「ゼロエミッション団地」事業を行うこととしている。
 他に埼玉県での彩の国倍プラント化計画や、山梨県での国母工業団地での取組がある。
▽循環型産業システムのモデル提示
 ―北九州市の取組―
<循環型の産業システム>
 ゼロエミッションを目指し、循環型経済社会を構築していくためには、廃棄物・リサイクル対策の新たな展開として、従来の産業システムを、廃棄物処理・リサイクル産業の健全な組込によって、動脈産業と静脈産業が適切な循環の輪において結合し、一体化した循環型の産業システムへ転換していく必要がある。
<環境産業都市づくりに向けた動き>
 北九州市では、かつての産業公害の克服に取り組んだ実績基盤を活かし、循環型経済社会づくりのモデルを提示するために、「環境産業振興のための技術開発、実証研究」を中心として、「教育・基礎研究基盤整備」と「環境国際協力の推進」を合わせた総合的な施策を展開し、市民等の社会的受容性に配慮しつつ、地域の産業構造の資源循環型へのダイナミックな転換を目指している。
<北九州市のエコタウンプランを踏まえた取組>
 〔第2図〕のコンセプトに基づいて、以下の事業を中心に施策を展開することとし、環境産業の集積拠点を構築する場として、港湾等、物流のための施設が充実し、アジアに向けた資源物流の国際展開にも対応が可能な「響灘地区」を活用することとしている。
 ア 総合環境コンビナート
 九州全域及び周辺地方までも含む広域地域を対象として想定し、収集運搬には、響灘地区の条件を活かした船舶や鉄道等の大量輸送機関の活用による広域的な物流システムを組み込んだ総合リサイクル事業の展開が考えられている。
 この事業の最初のプロジェクトとして、叶シ日本ペットボトルリサイクル(第三セクター)が平成十年度から操業を開始することとしている。
 また、家電メーカー数社が総合環境コンビナート内で「廃家電リサイクル施設」の共同設置に向けた研究会を設立し、OA機器のリサイクルもその対象とすることや、そのほか、廃自動車、廃プラスチックのリサイクルの検討が進められている。
 イ 実証研究センター
 廃棄物の処理・リサイクル技術の有用性や安全性の確認、再生物化の実験や安全性の確認などの調査研究を行うこととし、これらは密接に関連することから、実証研究施設を集積し、福岡大学の「資源循環・環境制御システム研究所」を中核施設として、広く共同研究できる研究・研修施設や情報処理施設を併設していくこととしている。
<産学官連携による取組>
 高度処理やリサイクルの最大組込などは、新たな環境保全の産業化の芽ともいえる。この動きを事業化するためには、種々の実証試験の成果などを基にした環境政策の方向付けが重要な支援になると考えられる。併せて、地域内外の産業界の参画により、地域の産業構造をつくり変えていくことも必要であり、産業界、研究機関、行政の連携が必要不可欠である。

<第3節> 環境効率性の高い経済社会システムの実現への手段

▽環境効率性の考え方
 環境効率性とは、財やサービスの生産に伴って発生する環境への負荷に関わる概念である。同じ機能・役割を果たす財やサービスの生産に伴って発生する環境への負荷が小さいほど、環境効率性が高いということになる。
 環境負荷による社会的コストが適切に内部化されれば、財・サービスの生産・消費に伴って発生する環境負荷を削減することが経済的なメリットに結びつくので、市場メカニズムを通じて、環境負荷が削減されることになる。
 環境効率性を向上させるための取組には、製品の製造、使用、廃棄などのライフサイクルの各段階で環境負荷を低減させる取組と、同一の効用を実現する財・サービスの提供方法を見直す取組とがある。経済をサービス化することで、経済活動に悪影響を与えず、環境負荷の削減が進むことが期待できる。
▽ライフサイクルアセスメント
 ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、その製品に関わる原料の採取から製造、使用、廃棄、輸送などすべての段階を通して、投入資源や排出環境負荷及びそれらによる地球や生態系への環境影響を定量的、客観的に評価する手法である。
 このLCAは、商品や製品、サービスなどを利用・使用することによって提供される便益について、環境負荷という観点から、その代替製品、代替サービスを評価するなど、様々な用途で適用することができる。また、環境ラベルの認定基準や環境家計簿の評価基準などとして、LCAの考え方を適用する方向でも検討が進められている。
 今後の課題としては、定量的な測定が不可能な項目を定性的な情報に基づいて評価の対象とすることで、ライフサイクル全体にわたって総合的に評価する手法の検討等がある。
▽環境マネジメントシステム
 事業者が、環境に関する方針などを自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくことを環境マネジメントといい、このための工場や事業場内の体制・手続などを環境マネジメントシステムという。
 環境マネジメントシステムの構築に取り組むことで、環境負荷排出量の削減をはじめ、従業員の環境保全に対する意識が高まり、積極的な環境保全活動の促進など、様々なメリットがもたらされる。
 平成十年三月末現在、我が国でISO一四〇〇一規格を審査登録している事業所等は八百六十一件となっており、製造業のみならず、サービス分野などあらゆる業種で積極的な環境への取組が浸透してきている。
▽PRTR制度
 事業者が、自らの事業活動に伴う環境リスクを認識し、これを適切に管理することを促進するための手法として、OECD等で推奨されているものに、環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)がある。
 PRTRには、政府には排出・移動に関する情報把握と化学物質管理の向上、企業には排出・移動量の把握と適切な自主管理、さらに国民には政策決定への国民参加の基礎、と利害関係者のそれぞれにメリットが考えられる。
 これらのほか、本節では、環境報告書、環境会計、環境ラベル等についても記述している。
▽環境効率性の高い経済社会システムに向かって
 これまでみてきたような様々なツールを用いて、事業者には、その事業活動の中に環境への配慮を織り込んだ、高い環境効率性を実現していくことが期待される。
 環境効率性を向上させていくことについては、OECDにおいても、環境効率性を意識した意思決定を行う上で役立つ指標等の検討が進められている。こうした指標は、環境効率性の改善や環境効率性の高い製品・サービスの選択の際に効果を発揮し、自らの行動をより環境にやさしいものへと変化させていくのに役立つと考えられる。

<第2章> 国土空間からみた循環と共生の地域づくり

<第1節> 自然のメカニズムと人間活動

 国土を構成する要素は、大気・水・土壌・生物等の自然的要素と、経済活動・日常生活等、様々な活動を通じて人間が自然に手を加えたことによる人間的要素に分けられる。
 現在、自然のメカニズムと国土を構成する人間的要素である各種の社会経済活動とが乖離してきている。すなわち、自然のメカニズムが、個々の自然的要素のみに着目して一面的に捉えられ、全体として捉えられにくくなっており、人間の社会経済活動や社会制度等が自然のメカニズムに十分配慮したものとなっていない。
 このような状況の下、自然のメカニズムがある程度完結している、空間的なまとまりである「環境保全の観点からみた圏域」で国土を捉えて、あるべき姿を論じたい(第3図参照)。

<第2節> 国土を構成する自然的要素を基礎とした圏域における取組

▽生態圏を意識した取組
 生態系を健全に保つための様々な野生生物の生息・生育のために必要な、空間的連続性を持ったまとまりとして、「生態圏」を捉える。
 生態圏は、ビオトープのような小規模なものから、流域、半島等の地形的まとまりで捉えられるもの、十の国土区分、また、渡り鳥、森林のような国境を越えるものまで様々なものが想定される。生態圏において、自然のメカニズムと調和する人間活動のあり方を、既存の行政区分や経済体制にとらわれず広い視野で模索することが求められる。
▽流域圏を意識した取組
 流域に関連する水利用地域や、氾濫原からなる水循環に関する一定の地域的なまとまりとして、「流域圏」を捉える。
 流域の自然のメカニズムを尊重して、人間活動を行った事例として、漁協が行う上流域の植林活動にみられるような森、川、海と続く一連の自然のメカニズムを意識した取組、沖縄の赤土保全対策のように流域の土地利用や事業の調整やアメリカのダム開発の見直し等の取組があげられる。
 従来、流域圏における様々な行政施策は、各分野ごとに各種の行政機関が個別に行ってきていた。しかし最近は、兵庫県流域水環境指針の策定など、行政機関の間の連携を試みる取組が始まっている。また、市民、事業者、行政の連携により、流域の環境保全と地域の活性化を図る試みも各地で始まっている。

<第3節> 人間活動を基礎とした圏域における取組

▽生活経済圏を意識した取組
 人間活動を基礎として、自然のメカニズムとの調和を図る上である程度完結した人間活動のまとまりを、「生活経済圏」として捉えることとする。
 「生活経済圏」を構成する要素には、以下のようなものがあげられる。
 まず、自然のメカニズムに調和した自然と人間との共生の歴史等を生かすことである。
 次に、地域の資源を採取、利用し、それを自然のメカニズムを活用しながら地域内で循環させることを社会の中に適切に組み込んでいくことである。
 行政・事業者・市民といった様々な立場、工業・農業という業、都市、農村住居地域等を越えて人々が交流し、共通の認識をつくり、連携・協力していくことが重要である。
 さらに、水やエネルギーを地域内で生産・供給する等の自家生産、自家処理を行えるような身の丈にあった地域づくりが必要である。

<第4節> 自然のメカニズムと人間の活動を調和させる方法

 自然のメカニズムと人間の活動とを調和させるための方策は、以下のように大きく整理できる。
 まず、自然のメカニズムを構成するそれぞれの要素の相互関係を捉え、的確に自然のメカニズムを把握することが重要である。また、自然のメカニズムを分かりやすい形で明確に示すことも必要である。
 また、環境の持つ機能を適切に評価し、その評価を現実の我々の経済活動に組み込むことが必要である。取引が行われていない環境の有する機能の経済評価を行う仮想市場評価法等、様々な研究が行われている。
 次に、自然のメカニズムに沿って人間の活動を行っていく仕組みをつくることが重要である。例えば、土地利用制度等の法制度の中に、環境の配慮を入れていくことや、指針・計画、流域協議会等、様々な主体の参画による取組が考えられる。
 里地は、自然のメカニズムと人間活動の調和を最も抵抗のない形で実現しうる地域であるが、その特性、公益機能を失いつつあるところが多い。そこで、平成十年に里地の環境保全と経済的自立を両立させた地域づくりを支援する「里地ネットワーク」が設立されたが、このような地域づくりの推進が求められる。
 また、人間の活動と自然のメカニズムとの調整を図るための手法として、平成九年六月に成立した環境影響評価法等の仕組みや、行政の様々な意思決定過程に環境配慮を組み込むための手法である戦略的環境アセスメント等が有効である。
 さらに、自然のメカニズムを再度回復する試みも、各地で実施されるようになった。
 以上のように、国土を「圏域」で捉え、それをベースに人間活動を捉えることは、健全で恵み豊かな環境を維持、保全し、恵み豊かな人間の生活を実現するのに有効な手法であろう。
 ここで最も重要なことは、技術、社会資本等のハード、制度、文化、システム等のソフト、さらに我々人間の心と心のつながりであるハートの連携、ハードとソフトとハートの尊重といえよう(第4図参照)。

<第3章> ライフスタイルを変えていくために

<第1節> 生活関連の環境負荷の低減

 環境問題の中心課題が、加害者が事業者、被害者が周辺住民という構図であった産業公害から、一人ひとりが被害者であると同時に加害者でもある都市・生活型の環境問題や地球環境問題に移って久しい。「ライフスタイルを変える必要がある」と繰り返し言われるが、一人ひとりの活動からの環境負荷は、実感できないことが多い。
 本章では、生活関連の環境負荷を実効性を持って低減するためには、誰が何をすればよいのかを考察する。
 また、自然と人間との豊かな交流を保つことは、環境基本計画の長期的目標である「共生」の重要な内容であり、こうした側面も含め、環境の観点から望ましい生活とはどういったものかを明らかにすることを試みる。
▽生活関連の環境負荷
 我が国の環境負荷に占める生活関連の大きさ等について、CO2の排出、水質汚濁・水資源使用量、廃棄物を例にとって概観する。
 生活関連の環境負荷の低減を考えるためには、生活者の行動はもちろんのことであるが、それだけではなく、関連する事業者・行政・NGO等、あらゆる主体の行動が織りなす経済社会システム全体を視野に入れる必要がある。
 例えば、事業者については、@生活者に提供する財・サービスをエネルギー効率がよいもの、ゴミになりにくいもの等、発生させる環境負荷の少ないものとすること、A生活者の手元に財・サービスが届く前の時点で、環境負荷の少ない方法で生産・輸送・提供することなどにより、生活関連の環境負荷を低減することができる。
 また、行政については、@都市計画や公共事業など、行政が自ら、あるいは、民間との役割分担の下に計画・整備する道路等の交通体系、下水道等の社会資本をどのようなものにするか、また、A事業者や生活者の行動を規定する(誘導、規制等)様々な制度・社会的ルールをどのようなものにするか、というような行動により、生活関連の環境負荷の程度の影響を与えうる。
 「ライフスタイルを環境に配慮したものに変えていく必要がある」という提起は、生活者だけではなく、事業者や行政にも変化を要求するのである。行政においても、生活関連の環境負荷の低減を目指す場合には、あらゆる施策を環境の観点から見直していく必要があろう。

【生活関連の環境負荷低減方策】

▽生活者が行いうる方策
 我々の日常生活からは、あらゆる場面において環境への負荷が発生しているが、ちょっとした工夫と努力によってこの負荷を減らすことができ、環境問題の解決にも貢献することができる。
 例えばCO2の発生抑制を図る場合、家庭での電気、ガス、灯油、ガソリン、水の消費など、あらゆる場面がCO2を排出する要因になっている。暖房機器や冷房機器、ガス器具を効率的に使う、節電する、リサイクルを進める、自動車の利用を減らす、節水するなど、生活を少し工夫することを積み重ねた場合、CO2の排出量は、平成九年に地球温暖化防止のためのライフスタイル検討会がまとめた試算によれば、一世帯当たり年間約一・二トン減らすことが可能であるとされた。
 これは、平成七年の家庭生活の消費に関連したCO2の一世帯当たり年間排出量が約三・六トンなので、三分の一もの減少が可能であるということになる。
▽事業者が行いうる施策
<事業者の役割>
 製造や流通の段階での環境への負荷を低減するため、製品の原材料を環境負荷の少ないものにするなど、事業者は様々な取組を始めている。
 事業者は、より環境負荷の低い製品や環境負荷の低減に関係するサービスを提供することができるので、我々自身の生活に直接関連する環境負荷の低減に事業者の果たす役割は大きい。事業者の環境配慮行動を支えるためには、社会システムのあり方の変革もまた必要である。
 低公害車などの環境負荷の低い製品の開発は、事業者の持つ技術力に負うところが大きく、事業者自身のイメージアップにもつながることから、積極的に開発に取り組む姿勢がみられる。
 国立環境研究所が実施したアンケートによると、七七・四%の消費者は、環境問題を解決するためメーカーに「廃棄された製品を責任持って回収・処分する」ことを求めているが、メーカーのうち、消費者から期待されていると認識しているのは、三五・三%に過ぎないなど、大きなギャップがある。
 また、消費者は環境問題の解決者を自らの問題として意識しているというよりは、国や事業者が解決する問題と考えている。
▽行政が行いうる施策
<生活関連の環境負荷低減のための総合的な取組>
 本来ライフスタイルは、国民自身が選択し、発展させていくものであり、政府が強制するようなものではない。しかし、ライフスタイルは、「人並みの生活」、つまり社会的に形成された「標準的」な生活水準に影響を受けるものでもある。また、既存の法制度、経済社会の仕組みを前提としたライフスタイルを選択せざるをえない。
 したがって、現在、日常生活が大きな環境への負荷を与えている以上、政府が環境保全に向けた誘導、支援を行っていくことが必要である。
<生活者や事業者の活動への働きかけ>
 ・環境教育・環境学習の推進
 ・経済的手法
<行政の活動の変革>
 個人や事業者への働きかけに加え、環境負荷の少ない社会資本の整備等、行政自身が行う活動を環境に配慮したものとしていくことが必要である。
▽生活者の取組による大きな力
 一人ひとりの取組の積み重ねは、何より尊いものであるが、本来、生活者の持っている力というのは、単に一人ひとりの直接的な取組の合計にとどまるものではない。
 以下に述べるような住民運動や消費者運動、グリーン購入の取組に象徴されるように、生活者の意識や行動の変化は、直接・間接に他の生活者や事業者、行政を動かす。生活者の意識、事業者の活動、行政の政策の変化は、互いに影響を与え合い、各主体の行動をさらに大きく変えていく。
 こうしたプロセスによって、生活者の意識・行動の変化は、最初の小さな動きからは予想もできないような大きなうねりをつくり出し、社会制度や産業構造を変え、新たな価値観に基づく経済社会を創造しうる力をも持っている。
<琵琶湖の富栄養化対策>
 昭和五十二年、赤潮の発生をきっかけに、滋賀県では、合成洗剤の使用をやめ、粉石けんを使おうという運動が高まった。
 一人ひとりの生活者の実際の消費行動(滋賀県は条例検討の条件として、粉石けんの自主的普及五〇%を超えることとしたが、これを達成)と行政・事業者に直接的に働きかける住民運動の両面で、環境保全への姿勢を示したことが大きな力となり、「琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」の制定という行政の対策につながるとともに、事業者をも動かす結果(無リン合成洗剤の発売、粉石けんの製造再開)となった。
▽生活関連の環境負荷に係る各主体の行動の相関
 〔第5図〕は、地球温暖化対策としての家庭内のエネルギー利用に伴うCO2の排出削減という取組を例に、生活者、事業者、行政の各主体の行動やその他の要素がどのように関わり合っているかを示しており、生活関連の環境負荷を低減するためには、あらゆる主体の取組が必要であることが理解できる。
 生活関連の環境負荷低減のための施策を行う際には、各主体が相互に影響を与え合いながら複雑な関連を持っていることを踏まえ、個別の取組の推進、促進を考えるだけではなく、連関を意識した体系だった施策を考えていく必要がある。

<第2節> 自然とのふれあいを取り込む生活へ

 日常生活等の場で自然と豊かにふれあい、自然と人間との共生を確保することは必要である。また、自然とのふれあいを通じて、自然への畏敬の念や愛情を育むことは、環境負荷の少ない、環境と共生するライフスタイルを構築するきっかけとして大切な要素である。
▽変化した人間と自然との関係
 高度経済成長期以降、国民の多くは自然の恩恵を直接的に意識しない生活スタイルを続けてきた。より豊かな生活を目指して進めてきた経済成長は、物質的豊かさをもたらしたが、自然と人間との関係を遠ざけた。
 終戦直後に、我が国の就業者の約半数を占めていた第一次産業就業者は、現在は約六%に過ぎず、急速なサラリーマン化により三大都市圏へ人口が集中した。また、自然の脅威を克服する努力が、安全な生活や経済発展を可能にした一方、自然に対する意識を希薄なものにしてしまった(第6図参照)。
▽自然とのふれあいを生活の中へ
<自然公園を利用したふれあいの推進>
 我が国の自然公園は、すぐれた自然を有しており、ふれあいの場、環境学習の場としての利用を積極的に推進する必要がある。自然公園では、より原生的な、人の意思で制御できない自然の世界にふれることで、人間性を回復し、代替性のない感動や喜びを体験することが可能である。
 また、自然公園は、原生自然を含む微妙なバランスの上に成り立っている地域であるため、環境容量を考慮に入れた持続可能な利用の仕方が必要である。
 さらに、最近では、その地域の自然環境を損なわず、地域の自然や文化を学び、ふれあう旅行の形態(エコツーリズム)が注目されている。現在、我が国でも自然解説指導者の役割が重要視されており、活動の場も広がっているが、現状では数が十分とはいえず、人材の育成が必要である。
<身近な自然とのふれあい>
 余暇活動以外にも、日常生活の中で身近な自然を感じ、ふれあうことのできる機会を確保することが重要である。身近な自然が残る場所は多くが民有地であり、自然環境保全法等の対象外で、改変した方が経済的に有利なため、地主だけで維持していくことは不可能である。そこで、行政や地域住民、民間団体等の様々な主体が連携して、身近な自然を管理していこうという動きがある。体験的に自然とふれあうことは、自然への豊かな感受性を育て、環境保全意識が芽生える重要なきっかけとなる。

<第3節> 「循環」と「共生」を実現するライフスタイル

▽今後のライフスタイルの方向性
 生活者は、環境について学習すること又は自然とふれあうこと等により、自然環境の恵み、豊かさを享受し、同時に、自らの行動と環境への影響を認識し、自らの行動と自然との関係を認識する。そして、生活者は、日々の生活の中で、自らが排出する様々な環境負荷を低減させるとともに、経済や社会の仕組みが環境に配慮したものとなるよう企業や行政に働きかけていく。これは、環境基本計画でいう「循環」と「共生」を実現する今後のライフスタイルの方向性に沿うものといえる。
 「循環」と「共生」のライフスタイルは、様々な形のものが想定されるが、現段階で考えられる一つの形を、第2章で論じた生活経済圏を基にイメージした。

<第4章> 環境の現状

 今日の環境問題の多くは、私たちの通常の社会経済活動による環境への負荷に起因し、その影響は、地球環境や将来の世代まで及ぶ状況となりつつある。こうした状況は、地球の温暖化、都市の大気汚染、水質汚濁、廃棄物の増大等の問題となって現れている。
▽地球温暖化
 地球温暖化の問題とは、人為的影響により温室効果ガスの濃度が上昇し、地表の温度が上昇する結果、気候、生態系等に大きな影響を及ぼすものである。温室効果ガスの温室効果への寄与度は、CO2が六四%を占め、CO2対策が急務となっている。
 温暖化の徴候は、平均気温の上昇、海面水位の上昇という形で現れており、今後も、気象、生態系等に様々な影響を及ぼすおそれがある。
▽オゾン層の破壊
 オゾン層破壊の問題とは、クロロフルオロカーボン(CFC)等が成層圏で分解されて生じる塩素原子等によりオゾン層が破壊され、有害な紫外線の地上への到達量が増加し、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすものである。
 南極上空では、毎年、南極の春にあたる時期に成層圏のオゾンが著しく少なくなる「オゾンホール」と呼ばれる現象が起きている。一九九七年も、最大規模であった過去五年と同程度のオゾンホールが確認された。しかし、南極ではCFC等の大気中濃度の増加率は低下し始めており、CFC等に由来する対流圏中の塩素等の濃度は、一九九五年に減少に転じたことが確認されている(第7図参照)。
▽酸性雨
 酸性雨とは、硫黄酸化物や窒素酸化物等の大気汚染物質を取り込んで生じる酸性度の高い雨や雪等のことである。
 酸性雨のために、湖沼、河川等が酸性化し魚類に影響を与えたり、土壌が酸性化し森林に影響を与えたり、文化財への沈着がその崩壊を招くことが懸念されている。
▽窒素酸化物等、大気汚染物質による汚染の現状
 我が国の大気汚染の状況は、二酸化硫黄、一酸化炭素については近年は良好な状況だが、二酸化窒素、浮遊粒子状物質については、大都市地域を中心に環境基準の達成状況は低水準で推移している。
▽騒音・振動・悪臭・ヒートアイランド・光害等の生活環境に係る問題
 騒音・振動・悪臭は、主に人の感覚に関わる問題であるため、生活環境を保全する上で重要な課題となっている。それぞれの苦情件数は全体的に年々減少しているが、各種公害苦情件数の中では大きな比重を占め、発生源も多様化している。
 このほか、首都圏などの大都市では、地面の大部分がアスファルト等に覆われているため、水分の蒸発による温度の低下がなく、夜間に気温が下がらない「ヒートアイランド」と呼ばれる現象や、必要以上の照明により、夜間星が見えにくくなったり、生態系への影響が懸念される「光害」と呼ばれる現象が起きている。
▽水質汚濁の現状
 水質汚濁に係る環境基準の達成率は、河川については、渇水の影響で低下した平成六年から引き続き改善しつつある。しかし、湖沼・内湾などの閉鎖性水域では、依然として達成率は低い状況である。
 我が国の水質汚濁は、工場、事業場排水に関しては、排水規制の強化等の措置が効果を現している。一方、生活排水は、下水道や合併処理浄化槽の整備が十分でなく、対策が遅れている。特に集水域の都市化が進んでいる湖沼では、下水道の整備等が人口の増加に追いつかず、排出負荷量のうち生活排水の占める割合が大きくなっている。
▽土壌汚染・地盤沈下
 土壌の汚染は、いったん生じると農作物や地下水等に長期にわたって影響を与える蓄積性の汚染であり、改善が困難である。農用地の汚染については、汚染の検出面積七千百四十ヘクタールに対し、対策事業の完了面積は五千四百十ヘクタールであった。
 市街地土壌の汚染については、工場跡地等の再利用で土地改変に伴って土壌調査が行われ、土壌中から重金属が検出される例等が頻出している。
 地盤沈下は、地下水取水制限等により、長期的には沈静化に向かっている。しかし、平成八年度の年間四センチメートル以上の地盤沈下地域の面積は、平成七年度の〇・五平方キロメートル未満から二十二平方キロメートルへと大幅に増加した。
▽自然環境の現状
 我が国には、自然植生や植林地等、何らかの植生で覆われている地域は全国土の九二・五%ある。そのうち森林は、国土の六七・一%を占めている。この割合は海外と比較しても高い水準であるが、国土全体では自然性の高い緑は限られた地域に残されているのが現状である。
 また、湖沼、河川、海岸等について自然状況の調査を行ったが、いずれも人工化が進行していることが明らかになった。これらの自然環境は、生態系に重要な役割を果たすものもある。自然環境の人工的改変は、不可逆のものであり、慎重に行われなければならない。
▽海外自然環境の現状
 森林は世界の陸地の約四分の一を占め、CO2の吸収、地熱の放射、水バランスの調整等に重要な役割を果たし、生物多様性の保全のためにも大切な機能を持っている。近年の熱帯林の急速な減少は、森林資源の枯渇のみならず、生息する生物種の減少をもまねいている。
 砂漠化の問題は、気候的要因と人為的要因により発生している。アフリカのサヘル地方等では、過放牧や周期を短くした移動式耕作等により、砂漠化が進行している。UNEP(国連環境計画)によると、世界には六十一億ヘクタール以上の乾燥地が存在し、地球の陸地の四〇%近くを占めている。
▽日本の野生生物種の現状
 我が国には、気候的、地理的、地形的条件により、亜熱帯から亜寒帯まで広がる多様な生態系が存在している。環境庁では、鳥獣の保護繁殖のため、必要な地域に鳥獣保護区の設定等を行っている。
 また、我が国では、緊急に保護を要する動植物の種の選定調査を実施し、「日本の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)」を発行している。平成九年にレッドデータブックのカテゴリーが改訂され、既存の分類による種も徐々に新しいカテゴリーに移行している。
 これらによれば、我が国に生息する哺乳類の約七%、鳥類の約八%、爬虫類の約一九%、両生類の約二二%、汽水・淡水魚の約一一%が存続を脅かされている種とされている。
▽内分泌攪乱物質(環境ホルモン)について
 平成八年度の魚類に関する化学物質環境調査結果では、調査対象の七物質のうち四物質が検出された。この中には、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の疑いがあるものも含まれていた。
 内分泌攪乱物質は、細胞内に入り込んで、正常なホルモンが結合すべき受容体に結合し、遺伝子に誤った指令を出す。これが、発育・生殖機能の異常、精子数の減少、乳がん、卵巣がん等の誘発につながるのではないかと疑われている。
 内分泌攪乱物質は、従来の化学物質の安全基準である発がん性とは異なった仕組みで人体に影響するため、早急に科学的研究に基づく事実関係の究明に努めなければならない。
▽生物多様性の保全
 今日の種の絶滅は、地球の歴史始まって以来の速さで進行している。このため、種の絶滅は、地球環境問題の一つとして捉えられ、「ワシントン条約」「ラムサール条約」等で国際的な取組が行われている。
 また、地球上の生物の多様性を包括的に保全するための国際条約として、「生物の多様性に関する条約」が締結されている。これを受け、我が国は生物多様性国家戦略を策定した。この中では、生物多様性の現状を把握し、生物多様性の保全と持続可能な利用のための長期的目標を定めている。

むすび

 環境基本法(平成五年十一月制定)に基づいて閣議決定された環境基本計画では、経済社会システムやライフスタイルを根本的に変える必要性とその方向について、現在の経済社会を持続可能なものに変革していく理念や戦略を含み込んだ長期的な目標として「循環」と「共生」を掲げている。
 本年の環境白書では、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムやその基本としてのライフスタイルの限界を超えて、二十一世紀の経済社会の基調に据えるべき目標としてのこの「循環」と「共生」を具体化していく方向に動き始めている様々な事例の中に、これらの目標のその豊かな可能性を明らかにしていくこと、それらの一層の充実化や明確化の方途を探っていくことなどを意図した。これらを通じ、「循環」と「共生」を具体化していく二十一世紀の社会のあり方を展望し、現状の問題性を浮かび上がらせようとした。
 現実に動きつつある様々な取組の中に、二十一世紀に向けた「循環」と「共生」を基調に据えた新たな経済社会の胎動を感じ取ることができれば、この白書の意図の一端は果たし得たといえる。
 経済社会システムやライフスタイルを変えていくことは、様々な困難や痛みを伴い、いまだ緒についたばかりである。しかし、ささやかながらも小さな希望の芽がいろいろな形で現れてきている。これらの地域的かつ個性的な取組に注目し、積極的な評価を与え、それらを経済社会システム全体の中につないでいき、より広い視野から冷静な洞察力を持って二十一世紀への変革の方向を描くべき時期に来ているのではないだろうか。





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景気予測調査


―平成十年五月調査―


大 蔵 省


<はじめに>

 大蔵省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百十一万社のうち約一万一千社を対象として、四半期ごとに大蔵省景気予測調査を実施している。
 以下は、平成十年五月に実施した第六十一回調査結果の概要である。今回の調査では一万七百九十四社を対象とし、八千六百七十六社(回収率八〇%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

景 況第1表第1図参照

 十年四〜六月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
 先行きを全産業でみると、いずれの規模においても「下降」超の見通しとなっている。

売上高第2表参照

 十年度上期の売上高は、全産業合計で前年比二・三%の減収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は減収見込み、中堅企業は増収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、食料品などが増収となるものの、輸送用機械器具、電気機械器具などが減収となり、全体では三・五%の減収見込みとなっている。
 非製造業では、映画・娯楽などが増収となるものの、卸売・小売、建設などが減収となり、全体では一・八%の減収見込みとなっている。
 十年度下期の売上高は、全産業合計で前年比一・〇%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収の見通し、中小企業は減収の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、金属製品などが減収となるものの、電気機械器具、食料品などが増収となり、全体では一・三%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、建設などが減収となるものの、卸売・小売、その他のサービスなどが増収となり、全体では〇・九%の増収の見通しとなっている。
 十年度通期の売上高は、全産業合計で前年比〇・六%の減収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は減収の見通し、中堅企業は増収の見通しとなっている。

経常損益第3表参照

 十年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比六・四%の減益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は減益見込み、中堅企業は増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、食料品などが増益となるものの、輸送用機械器具、電気機械器具などが減益となり、全体では一八・三%の減益見込みとなっている。
 非製造業では、不動産などが減益となるものの、卸売・小売、映画・娯楽などが増益となり、全体では四・九%の増益見込みとなっている。
 十年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比八・九%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増益の見通し、中小企業は減益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、その他製造などが減益となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具などが増益となり、全体では九・七%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、建設などが減益となるものの、卸売・小売、運輸・通信などが増益となり、全体では八・四%の増益の見通しとなっている。
 十年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一・八%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増益の見通し、中小企業は減益の見通しとなっている。

中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における十年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で四五・六%減、除く場合(以下「除く」という)で三六・一%減の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で九・六%ポイント、「除く」で二・五%ポイントの下方修正となっている。
 十年六月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は「過大」超となっている。業種別では、製造業では「過大」超幅が拡大し、非製造業では引き続き「不足」超となっている。
 先行きについては、全産業は「過大」超幅が縮小し、十年十二月末に「不足」超に転じる見通しとなっている。業種別では、製造業は「過大」超で推移する見通しとなっており、非製造業は「不足」超で推移する見通しとなっている。

中小企業の販売製(商)品在庫

 十年六月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっているものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

中小企業の仕入れ価格

 十年四〜六月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業は「低下」超に転じ、卸売業は「低下」超幅が拡大している。小売業は「上昇」超となっている。
 先行きについては、製造業は「低下」超幅が縮小する見通しとなっており、卸売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。小売業は七〜九月期に「低下」超に転じる見通しとなっている。

中小企業の販売価格

 十年四〜六月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

雇 用第5表参照

 十年六月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 十年四〜六月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中小企業は製造業を中心に「減少」超となっており、中堅企業は非製造業を中心に「増加」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても、「減少」超で推移する見通しとなっている。
 十年四〜六月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超の見通しとなっている。

企業金融第6表参照

 十年四〜六月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「きびしい」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 十年四〜六月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても引き続き「悪化」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 十年六月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても、「減少」超で推移する見通しとなっている。

中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業では「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業では「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
 業種別にみると、製造業では、いずれの規模においても「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで、大企業、中小企業では「国内販売体制、営業力の強化」、中堅企業では「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」の順となっている。非製造業では、大企業、中堅企業は「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多く、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」をあげる企業が多い。

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六月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十年六月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十年六月の十五歳以上人口は、一億七百二十六万人で、前年同月に比べ六十二万人(〇・六%)の増加となっている。
 これを就業状態別にみると、就業者は六千六百八万人、完全失業者は二百八十四万人、非労働力人口は三千八百二十三万人で、前年同月に比べそれぞれ七十一万人(一・一%)減、五十五万人(二四・〇%)増、七十七万人(二・一%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百九十二万人で、前年同月に比べ十三万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千百万人、完全失業者は二百七十五万人、非労働力人口は二千三百八万人で、前月に比べそれぞれ七十万人(一・一%)減、五十二万人(二三・三%)増、六万人(〇・三%)増となっている。

◇労働力人口

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百九十二万人で、前年同月に比べ十六万人(〇・二%)の減少となっている。男女別にみると、男子は四千六十六万人、女子は二千八百二十六万人で、前年同月と比べると、男子は六万人(〇・一%)の減少、女子は十万人(〇・四%)の減少となっている。

◇就業者

(一) 就業者

 就業者数は六千六百八万人で、前年同月に比べ七十一万人(一・一%)減と、五か月連続の減少となっている。男女別にみると、男子は三千八百九十七万人、女子は二千七百十一万人で、前年同月と比べると、男子は四十三万人(一・一%)減と、六か月連続で減少、女子は二十八万人(一・〇%)減と、平成八年五月以来二年一か月ぶりの減少となっている。

(二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百九十一万人、自営業主・家族従業者は一千二百一万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は四十四万人(〇・八%)減と、五か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十五万人(二・〇%)減と、五か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百六十万人で、四十一万人(〇・八%)減、五か月連続の減少
 ○常 雇…四千七百七十五万人で、四十五万人(〇・九%)減、六か月連続の減少
 ○臨時雇…四百六十九万人で、五万人(一・一%)増、平成八年九月以降二十二か月連続で増加
 ○日 雇…百十五万人で、二万人(一・七%)減、前月の同数(増減なし)から減少

(三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百六十九万人で、十二万人(三・一%)減、三月以来三か月ぶりの減少
○建設業…六百七十二万人で、二十二万人(三・二%)減、平成九年十一月以降八か月連続で減少、減少幅は前月(四万人減)に比べ拡大
○製造業…一千三百八十一万人で、六十八万人(四・七%)減、平成九年六月以降十三か月連続で減少、減少幅は前月(五十六万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…四百四万人で、二万人(〇・五%)減、前月(五万人増)の増加から再び減少
○卸売・小売業、飲食店…一千四百八十四万人で、十二万人(〇・八%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(六万人減)に比べ拡大
○サービス業…一千七百八万人で、二十九万人(一・七%)増、平成八年十月以降二十一か月連続で増加、増加幅は前月(八万人増)に比べ拡大
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百五十四万人で、十八万人(三・一%)減、前月(四万人増)の増加から再び減少
○製造業…一千二百四十八万人で、六十六万人(五・〇%)減、平成九年六月以降十三か月連続で減少、減少幅は前月(四十六万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…三百八十五万人で、三万人(〇・八%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月(六万人増)に比べ縮小
○卸売・小売業、飲食店…一千百八十二万人で、同数(増減なし)、前月は六万人増
○サービス業…一千四百五十八万人で、二十八万人(二・〇%)増、昭和六十年七月以降増加が継続、増加幅は前月(五万人増)に比べ拡大

(四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百四十七万人で、二十一万人(一・二%)減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百四十八万人で、三十六万人(二・〇%)減少
○五百人以上規模…一千二百九十四万人で、十二万人(〇・九%)増加

(五) 就業時間

 六月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百六十二万人で、五十五万人(四・二%)増加
○三十五時間以上…五千百四十六万人で、百二十一万人(二・三%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・九時間で、前年同月に比べ〇・四時間の減少となっている。

(六) 転職希望者

 就業者(六千六百八万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百四万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百二十九万人となっており、前年同月に比べそれぞれ三十八万人(六・七%)増、十三万人(六・〇%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・一%で、前年同月に比べ〇・六ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男子は八・九%、女子は九・四%で、前年同月に比べ男子は〇・四ポイントの上昇、女子は〇・九ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(一) 完全失業者数

 完全失業者数は二百八十四万人で、前年同月に比べ五十五万人(二四・〇%)増加となっている。男女別にみると、男子は百六十九万人、女子は百十五万人で、前年同月に比べ男子は三十七万人(二八・〇%)の増加、女子は十八万人(一八・六%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十万人で、三十四万人増加
○自発的な離職による者…九十八万人で、九万人増加
○学卒未就職者…十七万人で、四万人増加
○その他の者…六十九万人で、十一万人増加

(二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・一%で、前年同月に比べ〇・八ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男子は四・二%、女子は四・一%で、前年同月に比べ男子は一・〇ポイントの上昇、女子は〇・七ポイントの上昇となっている。

(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 〔男 子〕
○十五〜二十四歳…三十五万人(四万人増)、七・八%(一・一ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十五万人(八万人増)、三・九%(〇・八ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(八万人増)、二・九%(一・〇ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十三万人(一万人増)、二・四%(〇・一ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十三万人(十二万人増)、六・四%(一・八ポイント上昇)
  ・五十五〜五十九歳…十五万人(五万人増)、三・八%(一・二ポイント上昇)
  ・六十〜六十四歳…二十八万人(八万人増)、一〇・〇%(二・九ポイント上昇)
○六十五歳以上…九万人(四万人増)、二・八%(一・二ポイント上昇)
 〔女 子〕
○十五〜二十四歳…二十九万人(二万人増)、七・〇%(〇・七ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十六万人(五万人増)、六・五%(〇・九ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十八万人(三万人増)、三・四%(〇・七ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十七万人(三万人増)、二・四%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十三万人(四万人増)、三・一%(〇・九ポイント上昇)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・〇%(〇・五ポイント上昇)

(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十万人(十九万人増)、二・九%(〇・七ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…三十九万人(十万人増)、二・七%(〇・七ポイント上昇)
○その他の家族…百二十三万人(十九万人増)、六・五%(一・〇ポイント上昇)
○単身世帯…四十一万人(六万人増)、五・一%(〇・七ポイント上昇)

(五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は四・三%で、前月に比べ〇・二ポイント上昇し、昭和二十八年以降で最高となっている。男女別にみると、男子は四・三%で前月と同率で過去最高、女子は四・二%で前月に比べ〇・三ポイント上昇し、過去最高となっている。






 

人と地球にやさしい木のはなし


 国土の約七割を森林が占める我が国では、木で家や家財道具をつくったり、木を燃料として使ったりして、古くから「木の文化」を育んできました。最近は、金属やプラスチックなどの製品が身の回りに多くなっていますが、木の製品の方が人にも環境にもずっとやさしいのです。木の良さをもう一度見直してみませんか。
◇ダニや細菌に強い木
 森林浴で気分がリフレッシュしたという人もいるかと思います。木の香りが心地よい気分にさせてくれることは、経験的に知られています。
 一方、この香りを苦手とするのがダニなどです。ダニは、気管支ぜんそくや鼻炎、皮膚炎などのアレルギーを引き起こす原因になります。赤ちゃんのいる家庭では特に気になりますが、そんな悩みにも木は有効です。木の床はダニにとって住みづらく、カーペットから木の床に改装するだけで、大幅にダニの数を少なくすることができます。
 また、O157や抗生物質の効かない細菌に対し、ヒバなどの木の精油に強い殺菌作用があることが確かめられています。衛生面で気になるところに木を使うのも、ひとつの防衛策といえるでしょう。
 そのほか、木は、湿度調節機能や肌触りの良さなどで、人の暮らしに快適さを提供しています。
◇木は地球環境に負荷が少ない
 木は、地球温暖化の防止という重要な役割も果たしています。それは、温暖化の原因となっている二酸化炭素を光合成で樹木の中に吸収・固定するからです。樹木に固定された二酸化炭素は、伐採された後でも木材として長く大切に使うことにより、貯蔵され続けます。同時に、伐採された跡地に成長の旺盛な若木を植栽することにより、森林の二酸化炭素の吸収能力を活性化させることができます。
 また、木材は、鉄やアルミニウムなどと比較して、製造・加工のために要するエネルギーが小さく、化石燃料の消費量が少なくて済むことから、その利用を推進することにより、二酸化炭素の排出量の抑制に貢献することができます。例えば、人工乾燥木材の製造に必要なエネルギー量は、同じ量の鋼材と比較すると、約百九十分の一程度で済むなど、木材は環境に対する負荷の少ないエコ・マテリアル(環境調和型素材)といえます。
(林野庁)



 
    <9月2日号の主な予定>
 
 ▽防衛白書のあらまし………………防 衛 庁 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



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