<第1章> 国際軍事情勢
<第1節> 国際軍事情勢概観
1 国際軍事情勢全般
○ 冷戦終結後、世界的規模の武力紛争が生起する可能性は低下したが、複雑で多様な地域紛争が発生し、また、大量破壊兵器(核・生物・化学兵器)などの移転・拡散の増大が強く懸念されている。このように、国際情勢は、依然として不透明・不確実な要素をはらんでいる。
○ これに対し、国連の活動や米露及び欧州における軍備管理・軍縮の動きなど、国際関係の一層の安定化を図るためのさまざまな取組が進展している。
○ さらに、地域的な平和と安全を確保するため、欧州などで地域的な安全保障の枠組みの活用や、多国間・二国間の対話の拡大の動きが活発化している。
2 複雑で多様な地域紛争
○ 武力紛争として、コンゴー、ルワンダ、ブルンディ、アフガニスタン、カンボディアなどで内戦がみられた。
○ 中東では、中東和平交渉の一定の前進はみられたものの、現在は停滞しており、また、イラクが国連による大量破壊兵器などの査察を拒否する問題などが生じた。
○ インド、パキスタンは、本年五月に、国際社会の批判にもかかわらず、相次いで核実験を行い、南アジア地域の安全保障への影響のみならず、国際社会における大量破壊兵器などの不拡散のための取組などに対して、深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。
3 兵器の移転・拡散
近年、一部の途上国では、大量破壊兵器や弾道ミサイルを含む兵器の取得・開発が進められており、このような兵器の移転・拡散問題への対応が、国際社会の抱える緊急の課題となっている。
4 軍事科学技術のすう勢
軍事科学技術の進歩による著しい変革の可能性が生じ、技術的優位を確保することの重要性がこれまで以上に増大しており、今後の国際軍事情勢を考えるに当たっては、このような動向についても考慮する必要がある。
<第2節> 欧米諸国及びロシアの国防政策
欧米主要国及びロシアは、軍事力の再編・合理化を進めるとともに、地域紛争など多様な事態への対応能力を確保するため、積極的な努力を行っている。
1 米 国
四年ごとの国防計画の見直し(QDR)に基づく戦力再編が行われている。QDRの検討結果を初めて反映した九九年度予算案において、調達費が増加に転じるなどの変化がみられる。
2 ロシア
○ 軍再編の遅れが指摘されている。独立国家共同体(CIS)諸国との関係強化を図っている。北大西洋条約機構(NATO)の拡大への反対姿勢とNATOとの協力へ向けた動きなどがみられる。
○ 流動的な国内情勢とあいまってロシア軍の今後の動向は、引き続き注意深く見極める必要がある。
3 欧州諸国
戦力の再編・合理化を進め、近年、国防費は抑制されている。国連平和維持活動(PKO)への参加や多国籍軍の派遣により、国際的な平和の維持・管理のための活動を積極的に推進している。
<第3節> 国際社会の安定化のための努力
1 国際連合などの対応
○ 国連によるPKOは、規模が拡大し、新たな取組も実施されてきたが、能力的な限界が認識されつつあり、また、財政問題など検討すべき課題も多く存在している。
○ 大量破壊兵器やミサイルの移転・拡散を防止する体制(包括的核実験禁止条約(CTBT)、化学兵器禁止条約(CWC)や生物兵器禁止条約(BWC)、ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)など)を強化・拡充する努力のほか、通常兵器及び関連汎用品・技術に関する輸出管理に向けた動き(ワッセナー・アレンジメントなど)もみられる。
2 米露及び欧州における各国の対応
○ 米露間で、第二次戦略兵器削減条約(STARTU)など、核兵器の削減を目指す動きがみられるほか、欧州の通常兵器の削減について、欧州通常戦力(CFE)条約などが締結されている。
○ 欧州では、NATO、西欧同盟(WEU)、欧州安全保障・協力機構(OSCE)などの従来から存在している機構を強化、相互補完する方向が模索されている。WEU強化のような欧州の主体性強化への動きの一方で、欧州の安全保障では依然NATOが中心的な役割を果たしている。
<第4節> アジア太平洋地域の軍事情勢
1 全般情勢
○ 冷戦終結後、アジア太平洋地域では、極東ロシア軍の量的削減などの変化がみられるものの、依然として大規模な軍事力が存在する中で、多くの国々が経済力の拡大などに伴い、軍事力の拡充・近代化に努めてきており、また、領土問題などが未解決のまま存在するなど、依然として不透明・不確実な要素が残っている。
○ これに対して、この地域では、米国を中心とする二国間の同盟・友好関係と、これに基づく米軍の存在が地域の平和と安定に重要な役割を果たしているところであるが、近年、地域的な安全保障に関する対話の努力もみられる(第1図参照)。
2 朝鮮半島
北朝鮮は、経済不振が深刻であるにもかかわらず、軍事力の近代化、即応体制の維持に努めており、その動向には引き続き細心の注意が必要である。核兵器開発疑惑もあるため、ミサイル開発の動向が強く懸念されており、朝鮮半島での平和体制を追求する四者会合の今後の進展が注目される。
3 極東ロシア軍
極東ロシア軍は、依然として大規模かつ近代化された戦力が蓄積された状態にあり、その一部につき更新、近代化されている。他方で、その規模は縮小傾向にあり、訓練などの活動は依然として低調とみられている。極東ロシア軍の将来像については、ロシア軍とロシア国内の流動的な情勢とあいまって明確でなく、引き続き注目していく必要がある。
4 中 国
軍事力について、量から質への転換を企図している。軍事力の近代化は、中国が経済建設を当面の最重要課題としていることなどから、漸進的に進むものとみられるが、核戦力や海・空軍力の近代化の推進、海洋における活動範囲の拡大などについて、今後とも注目していく必要がある。
5 東南アジア
通貨・金融危機に見舞われ、軍事力の近代化に遅滞がみえ始めている。インドネシアでは大規模な暴動・デモが発生し、本年五月、スハルト大統領が辞任した。
6 アジア太平洋地域の米軍
QDRにも明記されたように、約十万人の兵力の維持を表明している。
7 各国の安定化努力
欧州における軍備管理・軍縮などのような動きこそみられないが、近年、二国間の軍事交流などの機会の増加や、地域的な安全保障に関する多国間の対話の努力(ASEAN地域フォーラム(ARF)など)が行われている。
<第2章> 我が国の防衛政策
<第1節> 我が国防衛の基本的考え方
1 我が国の安全保障
我が国の安全保障のためには、外交や内政の分野の努力のみならず、自らの防衛努力と日米安全保障体制の堅持が必要である。
2 憲法と自衛権
○ 日本国憲法は、主権国家としての我が国固有の自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは認められている。
○ 自衛権の発動は、いわゆる自衛権発動の三要件(@我が国に対する急迫不正の侵害があること、Aこの場合に、これを排除するために他の適当な手段がないこと、B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと)に該当する場合に限られ、また、集団的自衛権の行使は憲法上許されない。
3 防衛政策の基本
○ 国防の基本方針において、平和への努力の推進などによる安全保障基盤の確立や、効率的な防衛力の整備と日米安保体制を基調とすることを掲げている。
○ その他の基本政策として、専守防衛、非核三原則の堅持、文民統制の確保などがある。
<第2節> 防衛力の意義と役割
1 我が国の防衛力の意義と役割
○ 防衛力は侵略を未然に防止し、万一侵略を受けた場合は、これを排除する機能を有する。
○ 我が国は防衛力整備の基本的考え方として、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」を取り入れている。
○ また、我が国の防衛力は、侵略の未然防止と万一侵略を受けた場合の排除を主な役割としつつ、大規模災害などの事態に備えるとともに、より安定した安全保障環境の構築に向けた取組の中で、適時適切に役割を担っていくことも必要である。
2 陸上防衛力
陸上防衛力は、侵攻部隊を排除する最終的な力であり、柔軟性や強靱性などの特性を有しており、我が国に着上陸侵攻した部隊の排除などを任務とする。
3 海上防衛力
海上防衛力は、海洋を主な活動の舞台とし、機動性、柔軟性、多目的性、国際性といった特性を有しており、侵攻部隊の阻止や海上交通の保護などを任務とする。
4 航空防衛力
航空防衛力は、広大な空間を活動の舞台とし、即応性、機動性、柔軟性という特性を有しており、防空作戦や陸海侵攻部隊の阻止などを任務とする。
<第3節> 日米安全保障体制
1 日米安全保障体制の意義
○ 我が国は米国との二国間の同盟関係を継続し、その抑止力を機能させることで、適切な防衛力の保持と合わせて、我が国の安全を確保する。日米安保体制は、我が国の安全を確保するため引き続き必要不可欠である。
○ 日米安保体制を基調とする日米両国間の緊密な協力関係は、米国の関与や米軍の展開を確保する基盤となっており、米国と地域諸国との同盟・友好関係とあいまって、我が国周辺地域の平和と安定を確保するために重要な役割を果たしている。
○ 日米安保体制を基調とする日米協力関係は、我が国の外交の基盤として、国連などの行う諸活動への協力など、国際社会の平和と安定への積極的取組に資する。
2 日米安全保障共同宣言
○ 日米安保条約を基調とする日米同盟関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域で安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した上で、我が国防衛のための効果的な枠組みは、日米両国間の緊密な防衛協力であることや、米国が約十万人の前方展開兵力を維持することなどを改めて確認した。
○ 日米同盟関係の信頼性を高める上で重要な柱となる具体的な分野での協力(政策協議、「日米防衛協力のための指針」の見直し、装備・技術分野での相互交流など)を進めていく。
<第4節> 防衛計画の大綱
1 大綱が前提としている国際情勢
我が国周辺地域では、依然として大規模な軍事力が存在するとともに、その拡充・近代化など不透明・不確実な要素が残っている。一方、国家間の協調関係を深め、地域の安定を図ろうとする動きがみられる。また、日米間の緊密な協力関係は、我が国の安全及び国際社会の安定を図る上で引き続き重要な役割を果たしていくものと考えられる。
2 我が国の安全保障と防衛力の役割
○ 基盤的防衛力構想を基本的に踏襲するとともに、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進める。
○ 日米安保体制の重要性を再確認している。
○ 防衛力の役割として、我が国の防衛、大規模災害など各種の事態への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献を掲げている。
3 我が国が保有すべき防衛力の内容
○ 陸・海・空各自衛隊の体制を明示し、基幹となる部隊や主要装備の具体的な規模を示している。
○ 陸・海・空各自衛隊が保有すべき態勢(侵略事態などに対応するための態勢、災害救援などの態勢、国際平和協力業務などの実施の態勢など)を示している。
○ 防衛力の適切な弾力性を確保することとしている。
4 防衛力の整備、維持及び運用における留意事項
中長期的な見通しの下での適切な経費配分、効率的な調達補給態勢の整備への配意、技術研究開発の態勢の充実に努めることなどが述べられている。
<第3章> 自衛隊の多様な役割と対応
<第1節> 防衛力の整備と新たな体制への移行
1 中期防衛力整備計画の策定
○ 防衛大綱に従い、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化や、弾力性の確保、日米安保体制の信頼性向上などの六つの柱を基本に防衛力を整備することを方針とする。
○ 期間中の基幹部隊の見直しなどについて目標を示している。また、空中給油機能や弾道ミサイル防衛などを検討課題としている。必要経費の総額は二十五兆一千五百億円程度をめどとしている。
2 中期防衛力整備計画の見直し
○ 危機的な財政事情を踏まえ、新たな防衛力の水準への円滑な移行に配意し、大綱に定める防衛力の水準を全体として適切に維持しつつ、より緩やかな形で防衛力整備を進める必要があるとの判断に基づき、中期防衛力整備計画(中期防)の見直しを一年前倒しして実施した。
○ 見直しにより必要経費の総額は二十四兆二千三百億円程度とされた。また、中期防に定める正面装備の調達を一部(戦車、護衛艦、支援戦闘機など)見送ることとした。
3 自衛隊の新たな体制への移行
○ 陸・海・空各自衛隊の基幹部隊について見直しを進めている(師団の旅団への改編、護衛隊の一部廃止など)。
○ また、統合幕僚会議の機能の充実(出動時以外で必要な場合における指揮命令の基本などに関する長官の補佐など)のための法改正を実施した。
○ 即応予備自衛官が師団の改編などに合わせて導入されるとともに、海上自衛隊の整備補給体制の見直しを行う。
○ さらに、取得改革の具体化方策(ライフサイクルコストの抑制のための諸方策など)がまとめられた。
4 平成十年度の防衛力整備
○ 装備の更新、組織の改編のほか、教育訓練や研究開発などに関する諸施策を実施した。
○ 防衛関係費は、財政構造改革を受けて、さまざまな節減措置を講じつつ、最小限必要な事業を盛り込むことを基本として編成され、SACO関係経費を除いて前年度比〇・三%減の四兆九千二百九十億円となっている。その中で、自衛隊の維持運営や教育訓練などについては、種々の工夫により支障が生じないように努め、隊員施策などについては、事業量を抑制する中で優先順位に従い推進に努めたところである(第1表参照)。
<第2節> 我が国の防衛
1 自衛隊は、平素から主要海峡などでの警戒監視や対領空侵犯措置などを実施している。
2 自衛隊は、侵略事態においては、次のような作戦を実施する。その際、米軍は自衛隊の行う作戦を支援・補完する。
@ 防空のための作戦
航空自衛隊が主体となる全般的な防空と、陸・海・空各自衛隊が各々の基地や部隊を守る個別的な防空を実施する。
A 周辺海域の防衛と海上交通の安全を確保するための作戦
洋上での哨戒や護衛、港湾・海峡の防備などの各種作戦の累積効果により、敵の進出の阻止及び兵力の漸減などを通じて、海上交通の安全を確保する。
B 着上陸侵攻に対処するための作戦
敵の侵攻に対し努めて前方で対処し、これを早期に撃破するため、洋上、海岸地域及び内陸の各段階において対処する。
<第3節> 大規模災害などへの対応
1 自衛隊の行う災害派遣の仕組み
災害派遣の形態(要請による派遣や自主派遣など)や派遣時の活動及び権限(阪神・淡路大震災後に拡大)、地震防災派遣のための態勢などを説明している。
2 災害派遣の実施状況
昨年度の主な災害派遣などを紹介している(東京湾や青森県での重油流出事故、鹿児島県での土石流への対応、地震に関する情報の収集、救急患者の輸送など)。
<第4節> 防衛力を支える基盤
1 防衛生産・技術基盤の維持
○ 防衛生産・技術基盤の維持は、適切な防衛力の整備のほかに、抑止力や外国からの装備導入時の交渉力などの観点からも重要である。
○ 厳しい財政事情の下、防衛産業では効率化・合理化を推進しているが、健全で効率的な防衛生産・技術基盤を維持するためにも、防衛庁としても効率的な調達補給態勢の整備に努め、装備品などの整備の効果的な実施を図っている。
○ 質の高い防衛技術水準を維持するため、ライフサイクルコストの抑制に十分配意した研究開発を推進するとともに、技術実証型研究を含む各種研究を行っている。
2 人材の育成など
○ 人材を確保するため、募集のための施策のみならず、任用制度の改善や処遇改善などについて幅広く検討し、所要の施策を実施している。
また、任務の国際化と多様化や、軍事技術の高度化などに対応して、必要な知識や感覚を持った人材の育成に努めている。
○ 研究活動の活性化のため、任期付研究員制度を導入した。
<第5節> 緊急事態への対応など
防衛庁及び関係省庁において、我が国への侵略や緊急事態などが生起した場合に採られるべき措置や適用法令について、幾つかの研究が行われている。一方、国防以外の緊急事態に際し、必要な措置について総合調整を行う内閣危機管理監が設置され、防衛庁も平素から緊密な連携を図っていくこととしている。
1 緊急事態対応策の検討
内閣総理大臣の指示で検討を開始し、@在外邦人などの保護、A大量避難民対策、B沿岸・重要施設の警備など、C対米協力措置(施設・区域面での協力や米軍への後方支援)などの項目について検討、研究が進められている。
2 有事のための体制
有事法制の研究として、防衛庁所管の法令及び他省庁所管の法令についての問題点の整理はおおむね終了したと考えているが、所管省庁が明確でない事項に関する法令については、政府全体として取り組むべき性格のものである。
防衛庁としては、有事法制については、研究にとどまらず、その結果に基づいて法制が整備されることが望ましいと考えているが、法制化するか否かという問題は、高度の政治判断に係るものであり、国会における議論などを踏まえて対応すべきものと考えている。
3 国民生活を維持するための施策
武力紛争などの発生に備えた資源やエネルギーなどの備蓄や、有事における物資の海上輸送の在り方の研究が必要である。
<第4章> より安定した安全保障環境構築への取組
<第1節> 我が国の考え方
○ 我が国の平和と安全を確保するためには、適切な防衛力の保持と日米安保体制を堅持する一方で、国際社会において安定した安全保障環境を構築するための努力も重要である。
○ 国際社会の安定化のために、国際平和協力業務などや安全保障対話・防衛交流、軍備管理・軍縮が実施されており、我が国としてもこれらに積極的に取り組んでいる。
<第2節> 国際平和協力業務など
1 国際平和協力業務
○ 自衛隊の部隊等は、国際平和協力業務のうち、任務に支障を生じない限度において、医療、輸送、通信などの業務を実施することとなっている。
なお、自衛隊の部隊等による、いわゆる平和維持隊本体業務については、別途法律で定める日までの間は実施しないこととされている。
○ これまでの国際平和協力業務の教訓・反省を踏まえて対応策を講じるとともに、武器の使用などに係る国際平和協力法の改正が行われた。
○ また、国際平和協力業務の本来任務化は、国民世論などをも踏まえつつ慎重に検討していくべき問題であり、組織の在り方に関する議論については、具体的な必要性を精査した上で慎重に検討する必要がある(第2図参照)。
○ 自衛隊は、ゴラン高原に五次にわたって部隊を派遣して輸送などの業務に従事し、国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)司令官や関係国から高い評価を得ている。
2 国際緊急援助活動
自衛隊は、国際緊急援助活動として、医療や空輸などの活動を実施できる態勢を保持している。
<第3節> 安全保障対話・防衛交流
1 安全保障対話・防衛交流の意義
○ アジア太平洋地域において、二国間の対話や交流が活発化する一方、多国間の安保対話の試みが定着している。このような情勢の下、防衛庁としては、国家間の信頼関係を増進し、より安定した安全保障環境の構築を図る上で、安保対話・防衛交流を最近一層重視している。防衛当局間の関係の構築・強化は、その性格などを考慮すれば、国家間の信頼関係を増進し、ひいては国際社会の平和と安定に大きな意味を持つ。
○ 二国間の防衛交流は、相手国との相互理解や信頼関係の増進などを目的としており、防衛首脳クラスなどの交流から防衛当局者間の定期協議、部隊間の交流、留学生の交換など、さまざまなレベルで実施されている。
○ 多国間の安保対話は、複数国が一堂に会し、意見交換や協議を通じて信頼関係の増進を図るものである。アジア太平洋地域では、ASEAN地域フォーラム(ARF)が重要だが、そのほかにもさまざまなレベル及び事項について対話の場が設けられている。
2 さまざまな二国間の防衛交流
○ 橋本総理・李鵬首相の相互訪問など、日中関係全般の進展を背景に、日中防衛交流が活発化してきている。本年前半には防衛庁長官と中国国防部長との相互訪問が実現し、防衛交流の促進について合意するとともに、講演や部隊視察を行った。また、陸上幕僚長の訪中のほか、外交・防衛当局間の安保対話や医療分野の交流などが行われている。
○ 二度にわたる日露首脳会談の成果を受けて、日露防衛交流は着実に進展しており、事務次官や統合幕僚会議議長の訪露が実現したほか、防衛当局間の安保対話や艦艇の相互訪問が進められており、捜索・救難に関する共同訓練も計画されている。防衛庁としては、日露関係全般の進展の中で、着実にロシアとの防衛交流を進めていきたいと考えている。
○ 韓国や東南アジア諸国との間では、ハイレベルの交流や定期協議、留学生の交換などの各種の交流が定着している(第3図参照)。
3 深まる多国間の安全保障対話
○ 我が国は、アジア太平洋地域における多国間の安保対話の場であるARFのプロセスに積極的に関与しており、防衛庁も防衛政策などについての文書の提出や職員の派遣など、積極的な関与を行っている。
○ 防衛庁は、各国防衛当局者との情報・意見交換を通じた相互理解を促進するため、自ら主体となってさまざまな対話の機会を設けてきている。
・ アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラム
(防衛庁全体)
・ 国際防衛学セミナー(防衛大学校)
・ アジア・太平洋諸国安全保障セミナー
(防衛研究所)
・ 陸軍兵站実務者交流(MLST)
(陸上自衛隊)
・ アジア・太平洋諸国海軍大学セミナー
(海上自衛隊)
・ 国際航空防衛教育セミナー(航空自衛隊)
など
○ 防衛庁は、各国の政府又は民間主催による多国間の安保対話にも積極的に参加している(日米韓防衛実務者協議、太平洋地域後方補給セミナー、北太平洋安全保障三極フォーラムなど)。
<第4節> 軍備管理・軍縮分野への協力
1 国連軍備登録制度
防衛庁は、毎年、本制度に対し装備品の年間輸出入数量を登録するとともに、装備品の保有数などに関する情報を提供して、より一層の透明性の確保に努めている。
2 軍縮関連条約
○ 化学兵器禁止条約(CWC)について、交渉の場への職員の派遣や、その検証措置を担当する機関への査察局長及び査察員の派遣、陸上自衛隊化学学校への査察の受入れなどを実施している。
○ 生物兵器禁止条約(BWC)の強化に関する交渉に対し、職員を随時派遣するとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関し、所要の情報を提供している。
3 対人地雷に対する国際社会の取組と我が国の対応
対人地雷に対するさまざまな国際社会の取組(特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)の第二議定書の改正、オタワ・プロセスなど)がなされており、昨年十二月には対人地雷全面禁止条約が我が国を含めて署名された。防衛庁は、職員の派遣や情報の提供などにより、積極的に協力してきたが、今後同条約が発効すれば、対人地雷の使用などが禁止されることから、我が国防衛に万全を期するため、代替手段の導入を含む必要な措置を早急に講じるとともに、対人地雷の廃棄の在り方についても検討している。
4 その他
イラクにおける特別委員会(UNSCOM)の監視チームへの職員派遣や、ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)などの会合への職員派遣などを実施している。
<第5章> 日米安全保障体制に関連する諸施策
<第1節> 政策協議・情報交換など
日米両国は、安全保障上の政策協議を各種のレベルで緊密に行うとともに、実務レベルでの情報交換の重要性も一層増大してきている。あらゆる機会とレベルで意思の疎通を図り、情報と認識を共有していくことは、日米安保体制の信頼性の向上に資する。
昨年来の主な政策協議及びその成果は、次のとおりである。
1 日米安全保障協議委員会(SCC)
(昨年九月に実施)
新たな「日米防衛協力のための指針」(新「指針」)について報告を受け、これを了承した。また、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告の着実な実施などについて協議した。
2 防衛庁長官、外務大臣及び米国国防長官による三者会談(本年一月に実施)
新「指針」の下での包括的なメカニズムの構築を了承し、共同作業を開始することとした。また、在日米軍の駐留に関する日本の支援の重要性などについて確認した。
<第2節> 日米防衛協力のための指針(「指針」)の見直し
1 旧「指針」の策定から見直しへ
○ 日米安全保障共同宣言において、日米間の防衛協力関係を一層強化し、日米安保体制の信頼性を向上させるため、旧「指針」の見直しの開始で意見が一致した。
その背景としては、新たな防衛計画の大綱が策定されたことや、旧「指針」に基づく日米共同作業が、自衛隊と米軍の相互理解と信頼性向上のため有益であることが認識されたことなどがあげられる。
○ 旧「指針」の見直し作業は、防衛協力小委員会(SDC)によって行われ、進捗状況報告や中間とりまとめを経て、昨年九月に新「指針」がSCCに報告され、了承された。その過程で、各界各層で活発に議論が行われるとともに、周辺諸国の理解を得るため、政府は新「指針」の目的や内容を説明してきている。
2 新「指針」の目的、基本的な前提及び考え方など
○ 新「指針」は、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することなどを目的としている。
○ 新「指針」及びその下で行われる取組は、日米安保条約などの基本的な枠組みは変更されないこと、日本のすべての行為は、憲法上の制約の範囲内で日本の基本的な方針に従って行われること、日米両国のすべての行為は、国連憲章などの国際条約に合致することなどの基本的な前提及び考え方に従って行われる。
3 新「指針」において定められた協力事項
@ 平素から行う協力
日米両国政府が、日米安保体制を堅持し、各々所要の防衛体制の維持に努めることや、情報交換及び政策協議、安全保障面での種々の協力、日米共同の取組といった分野での協力を充実することなどについて記述している(第4図参照)。
A 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動など
日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合の対応や、日本に対する武力攻撃がなされた場合の対応(基本的考え方、効果的な共同作戦のための諸活動及び必要な事項)について記述している(第5図参照)。
B 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
・ 「周辺事態」は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態は、地理的な概念ではなく、事態の性質に着目したものである。
・ 周辺事態が予想される場合の日米両国政府の対応や、周辺事態への日米両国政府の対応(日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力、米軍の活動に対する日本の支援、運用面における日米協力)について記述している(第6図参照)。
4 新「指針」の下での日米共同の取組
○ 日米両国政府は、共同作業を計画的かつ効率的に進めるため、政府の関係機関が関与する包括的なメカニズムを構築する。同メカニズムにおいては、共同作戦計画及び相互協力計画についての検討や共通の基準及び実施要領の確立のための共同作業を行う。
○ 日米両国政府は、緊急事態において各々の活動に関する調整を行うため、両国の関係機関を含む日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。
<第3節> 新「指針」の実効性を確保するための諸施策
1 新「指針」の下での日米協力の実効性を確保するための閣議決定
昨年九月、新「指針」が日米間で合意されたことを受け、閣議決定により、新「指針」の実効性を確保し、もって我が国の平和と安全を確保するための態勢の充実を図るため、法的側面を含めて、政府全体として検討の上、必要な措置を適切に講ずることとした。
2 実効性を確保するための法整備など
政府は、新「指針」の実効性を確保するために必要な措置についての検討結果の一つとして、周辺事態安全確保法案、日米物品役務相互提供協定を改正する協定案、自衛隊法の一部を改正する法律案について閣議決定の上、国会に提出した。
3 新「指針」の下での日米共同の取組の実施
本年一月の防衛庁長官などの三者会談の際、SCCの構成員が、包括的なメカニズムの構築について了承し、その下で本格的な共同作業を開始することを合意した。また、同時に調整メカニズムを構築するための努力を継続することも決定された。
<第4節> 在日米軍の駐留を円滑にするための施策など
1 在日米軍の駐留に係る経費の負担など
我が国は従来、特別協定の締結などにより、在日米軍駐留経費負担について自主的にできる限り努力してきている。一方、平成十年度予算においては、経費負担の軽減を行ったが、あらゆる機会をとらえて米国に説明し理解を得ている。
2 在日米軍の施設・区域の安定的な使用の確保
在日米軍の施設・区域の安定的な使用を確保するため、必要な場合には駐留軍用地特措法により、使用権原を取得している。
<第5節> 平素から実施している施策など
1 日米共同訓練
日米共同訓練は、各々の戦術技量の向上や戦術面などの相互理解と意思疎通の促進などの上で有益であり、今後とも各種の共同訓練を積極的に行っていく。
2 日米物品役務相互提供協定
本協定に基づき、共同訓練やPKOなどに際し、自衛隊と米軍は他方の要請により物品又は役務を提供できることとされ、共同訓練に際し相互の提供が行われている。
3 装備・技術面での相互交流
我が国は米国に対し武器技術の供与を行うとともに、両国間では具体的な研究プロジェクトを通じて相互に技術交流の促進を図っている。
<第6章> 国民と防衛
<第1節> 自衛隊と隊員
1 自衛隊の組織と人
○ 自衛隊は、我が国防衛の任務を全うするため、陸・海・空各自衛隊を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、技術研究本部、調達実施本部、防衛施設庁など、さまざまな組織で構成されている。
○ 自衛隊員は、自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官、事務官などからなる。
2 自衛隊の多彩な部隊
○ 日々の国民生活に貢献している部隊として、第一〇一不発弾処理隊(陸上自衛隊)、水中処分隊(海上自衛隊)、千歳管制隊(航空自衛隊)の活動を紹介している。
○ 練度の高い隊員を育成する教育組織として、レンジャー教育(陸上自衛隊)、潜水艦教育訓練隊(海上自衛隊)、F―15及びF―4機種転換操縦課程(航空自衛隊)の活動を紹介している。
3 日々の教育訓練
○ 自衛隊は、「自衛官の心がまえ」に基づき、強い使命感や優れた技術などを有する隊員の育成に努めている。特に、国際化に対応するため、外国語教育の充実などを進めている。また、各自衛隊は、任務の態様などに応じて、各種の訓練を実施している。
○ 自衛隊が教育訓練を行うに当たっては、演習場や訓練海・空域などの制約があり、これに対応するため、米国での訓練などを実施している。
<第2節> 国民生活とのかかわり
1 国民生活への貢献など
自衛隊は、その組織や装備などを活かして、各種の民生協力活動(輸送活動、危険物の処理、運動競技会に対する協力、南極地域観測に対する支援など)を実施している。特に、長野オリンピックやパラリンピックにおいては、競技コースの整備などの協力を行い、大会の円滑な運営を支えた。
2 国民との交流
自衛隊は、国民の理解と関心を深めるため、自衛隊及び防衛に関する広報や、部隊・施設の公開、体験入隊などの活動を実施している。
<第3節> 自衛隊を支える力
1 自衛隊の活動に対する支援・協力
自衛隊の活動に対し、地方公共団体や各種の協力団体によってさまざまな支援・協力がなされており、これらは隊員の士気を高揚し、自衛隊の活動を支えるものである。
2 自衛官の募集・就職援護に対する協力
自衛官の募集や退職自衛官の就職援護に関して、地方公共団体のほか、各種の協力団体や企業などの協力を得ており、今後ともこれらの協力が不可欠である。
3 即応予備自衛官及び予備自衛官の訓練招集に対する協力
即応予備自衛官及び予備自衛官が訓練招集に応じるには、雇用企業などの理解と協力が不可欠であり、防衛庁は即応予備自衛官雇用企業給付金の支給などにより、その理解を深めるよう努めている。
4 部外における自衛官教育に対する協力
隊員に高い資質と能力を身に付けさせるため、部外の教育機関や企業などの協力を得て教育や研修を行っており、今後とも積極的な協力が望まれる。
<第4節> 地域社会と防衛施設
1 防衛施設の現状
防衛施設には広大な土地を要するものが多く、狭い平野部に都市などと競合して存在している場合もある。特に、防衛施設周辺での都市化が進展した結果、その設置や運用が制約されるという問題が大きくなり、また、騒音などの生活環境問題も生じている。
2 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策
政府は、防衛施設と周辺地域との調和を図るため、騒音対策や生活関連施設の整備への助成などの施策を行っている。
3 在日米軍施設・区域に係る諸施策
在日米軍施設・区域の安定的な使用と周辺地域社会の要望との調和を図るため、従来、岩国飛行場滑走路移設事業及び空母艦載機の着陸訓練場の確保に係る施策などを行ってきている。
<第5節> 沖縄に所在する在日米軍施設・区域に係る諸施策
1 在日米軍施設・区域とその整理・統合・縮小への取組
○ 米軍が沖縄に駐留する理由には、歴史的経緯により、駐留の基盤となる基地、練度や即応性の維持・向上に必要な演習場などが県内に現に存在していること、また、米本土などよりも東アジアの各地域に近く、緊急な展開を要する場合に、迅速な対応が可能であるなどの地理上の利点を有することなどが考えられる。
○ 沖縄の復帰後、日米両国は地元の要望の強い事案を中心に、米軍施設・区域の整理・統合・縮小のための努力を継続的に行ってきた(佐藤・ニクソン共同発表、いわゆる沖縄三事案への取組など)。
2 在日米軍施設・区域に係る問題解決に向けての新たな取組
○ SACO設置以後、沖縄の米軍施設・区域に係る問題を解決するため、さまざまな取組が実施されている(沖縄米軍基地問題協議会、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会などにおける取組など)。
○ SACO最終報告の実施状況
・ 普天間飛行場の返還と代替ヘリポートの建設
政府としては、海上ヘリポートは普天間飛行場の返還を実現する方法として最善のものと考えており、県をはじめとする地元の理解が得られるよう粘り強く取り組むこととしている。
・ 安波訓練場の返還
本年四月に日米合同委員会において返還について合意した。
・ 県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の本土への移転
本土五か所の演習場の地元から分散・実施についての理解が得られ、逐次訓練を開始している。
・ 嘉手納飛行場における新たな遮音壁の建設
本年度末の完成に向けて建設工事を行っている。
◇賃金の動き
五月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十九万一千六百十五円、前年同月比は〇・七%減であった。
現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万七千三十二円、前年同月比〇・五%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万九千五百五十八円、前年同月比〇・二%増で、所定外給与は一万七千四百七十四円、前年同月比は八・七%減となっている。
また、特別に支払われた給与は四千五百八十三円、前年同月比一八・八%減となっている。
実質賃金は、一・三%減であった。
産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順に鉱業三・二%増、卸売・小売業、飲食店〇・七%増、サービス業〇・三%増、製造業〇・六%減、運輸・通信業〇・八%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・一%減、金融・保険業一・九%減、不動産業一・九%減、建設業二・〇%減であった。
◇労働時間の動き
五月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五〇・四時間、前年同月比三・七%減であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四一・三時間、前年同月比三・四%減、所定外労働時間は九・一時間、前年同月比九・〇%減、季節調整値は前月比一・三%減であった。
製造業の所定外労働時間は一一・一時間で前年同月比は一九・〇%減、季節調整値は前月比一・五%減であった。
◇雇用の動き
五月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・一%増、常用労働者のうち一般労働者では〇・六%減、パートタイム労働者では三・五%増であった。常用労働者全体の季節調整値は前月比〇・〇%と前月と同水準であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、サービス業二・一%増、運輸・通信業〇・五%増、建設業〇・二%増と、これらの産業は前年を上回っているが、不動産業〇・二%減、卸売・小売業、飲食店〇・七%減、製造業一・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・一%減、鉱業三・〇%減、金融・保険業三・〇%減と、前年同月を下回った。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・三%減、パートタイム労働者一・四%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者一・二%減、パートタイム労働者〇・五%増、サービス業では一般労働者〇・七%増、パートタイム労働者九・二%増となっている。
(1) 売上高(第1表参照)
売上高は、三百五十五兆五千九百四十五億円であり、前年同期(三百八十一兆五千六十七億円)を二十五兆九千百二十二億円下回った。増加率は△六・八%(前期△四・四%)と、三期連続の減収となった。
業種別にみると、製造業の売上高は百兆八千百六十一億円で、増加率は△七・一%(同△二・二%)となった。また、非製造業の売上高は二百五十四兆七千七百八十五億円で、増加率は△六・七%(同△五・三%)となった。
製造業では、「食料品」等が、増収となったものの、「輸送用機械」「化学」等の業種で減収となった。一方、非製造業では、「運輸・通信業」「サービス業」等が、増収となったものの、「卸・小売業」「建設業」等で減収となった。
資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百五十五兆四千八百二十億円で、増加率は△二・二%(同△〇・九%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は五十四兆七千八百二億円で、増加率は△六・四%(同△五・一%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百四十五兆三千三百二十四億円で、増加率は△一一・四%(同△七・〇%)となった。
(2) 営業利益(第2表参照)
営業利益は、九兆三千八百九十億円であり、増加率は△二三・九%(前期△八・六%)と、二期連続の減益となった。
業種別にみると、製造業の営業利益は三兆七千百五十四億円で、増加率は△二二・五%(同△一〇・九%)となった。また、非製造業の営業利益は、五兆六千七百三十六億円で、増加率は△二四・八%(同△六・七%)となった。
資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆三千二百四十五億円で、増加率は△一九・七%(同△一五・五%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆一千三百七十四億円で、増加率は△二五・三%(同△一六・八%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆九千二百七十一億円で、増加率は△二七・六%(同六・五%)となった。
(3) 経常利益(第3表参照)
経常利益は、七兆七千五百三十九億円であり、前年同期(十兆三千九百三十七億円)を二兆六千三百九十八億円下回り、増加率は△二五・四%(前期△九・〇%)と、二期連続の減益となった。
業種別にみると、製造業の経常利益は三兆三千六百億円で、増加率は△二二・一%(同△八・六%)となった。また、非製造業の経常利益は四兆三千九百三十九億円で、増加率は△二七・七%(同△九・四%)となった。
製造業では、「食料品」等が増益となったものの、「輸送用機械」「電気機械」等で減益となった。一方、非製造業では、「電気業」等が増益となったものの、「卸・小売業」「建設業」等が減益となった。
資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三兆二千百八億円、増加率は△二二・〇%(同△一七・〇%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は九千七百四十億円で、増加率は△二二・〇%(同△一七・八%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆五千六百九十一億円で、増加率は△二九・〇%(同六・三%)となった。
(4) 利益率(第4表参照)
売上高経常利益率は二・二%で、前年同期(二・七%)を〇・五ポイント下回った。
業種別にみると、製造業は三・三%で、前年同期(四・〇%)を〇・七ポイント下回り、非製造業は一・七%で、前年同期(二・二%)を〇・五ポイント下回った。
資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二・一%(前年同期二・六%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一・八%(同二・一%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二・五%(同三・一%)となった。
二 投資の動向(第3図参照)
(1) 設備投資(第5表参照)
設備投資額は、十四兆三百十四億円であり、増加率は△五・八%(前期三・五%)と、12四半期ぶりの減少となった。
業種別にみると、製造業の設備投資額は四兆九千七百四十七億円で、増加率は四・八%(同八・五%)の増加となった。一方、非製造業の設備投資額は九兆五百六十七億円で、増加率は△一〇・八%(同一・四%)となった。
製造業では、「輸送用機械」「化学」等多くの業種で増加となった。一方、非製造業では、「運輸・通信業」「サービス業」等多くの業種で減少となった。
設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は九兆三千百十七億円、増加率は〇・九%(同二・三%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は二兆三百九十三億円、増加率は△九・九%(同六・二%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二兆六千八百四億円で、増加率は△二一・四%(同四・五%)となった。
(2) 在庫投資(第6表参照)
在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、△十三兆二百四十億円であり、前年同期(△十四兆五百二十一億円)を一兆二百八十一億円上回った。
在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は△三兆九百三億円で、前年同期(△二兆七千五百九十億円)を三千三百十三億円下回った。一方、非製造業の投資額は△九兆九千三百三十七億円で、前年同期(△十一兆二千九百三十一億円)を一兆三千五百九十四億円上回った。
在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が△二兆九千六百四億円(前年同期△三兆三千九百八十九億円)、仕掛品が△九兆六千六百七十億円(同△十兆四千三百十九億円)、原材料・貯蔵品が△三千九百六十六億円(同△二千二百十三億円)となった。
また、在庫率は九・三%であり、前期(一〇・九%)を一・六ポイント下回り、前年同期(八・九%)を〇・四ポイント上回った。
在庫率は、季節的要因により変動(四〜六、十〜十二月期は上昇する期)する傾向がみられる。
三 資金事情(第7表参照)
受取手形・売掛金は二百二十九兆六千四百七十二億円で、増加率は△八・二%(前期△三・七%)、支払手形・買掛金は百九十二兆三千七百七十六億円で、増加率は△七・三%(同△一・五%)となった。借入金をみると、短期借入金は二百三十二兆六百三十六億円で、増加率は五・二%(同七・〇%)、長期借入金は二百六十六兆九千三百三十八億円で、増加率は△〇・二%(同一・三%)となった。
現金・預金は百二十一兆一千八百五十二億円で、増加率は四・三%(同七・一%)、有価証券は三十七兆二千百九十五億円で、増加率は△三・六%(同△五・一%)となった。
また、手元流動性は一一・二%であり、前期(一一・七%)を〇・五ポイント下回り、前年同期(一〇・二%)を一・〇ポイント上回った。
四 自己資本比率(第8表参照)
自己資本比率は二一・七%で、前年同期(二一・五%)を〇・二ポイント上回った。
自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は二九・一%で、前年同期(二八・七%)を〇・四ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は一五・八%で、前年同期(一五・〇%)を〇・八ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一四・九%で、前年同期(一五・一%)を〇・二ポイント下回った。
我が国経済 需要面をみると、個人消費は低調である。これは、実質賃金が減少しており、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設も、低水準が続いている。
設備投資は、動きが鈍い。
産業面をみると、最終需要が弱いことを背景に、鉱工業生産は、減少傾向にある。在庫は二か月連続で減少しているものの、依然高水準である。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。
雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数が減少し、非自発的な離職者の増加を中心に完全失業率がこれまでにない高さに上昇した。
輸出は、アジア向けが減少しているため、欧米向けは好調だが、全体としてはやや減少傾向である。輸入は、減少傾向である。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、七月は、月初の百三十八円台から百四十三円台まで下落した。
物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。
最近の金融情勢をみると、短期金利は、七月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、七月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、七月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、六月は前年同月比三・五%増となった。
海外経済 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。ただし、一時的な減速要因から、実質GDPは、一〜三月期前期比年率五・五%増の後、四〜六月期は同一・四%となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。七月の長期金利(三十年物国債)は、総じてやや上昇した。七月の株価(ダウ平均)は、月前半上昇したが、後半は下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の鈍化から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。
国際金融市場の七月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した。
国際商品市況の七月の動きをみると、弱含みの推移となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意を受けて、やや強含みの推移となった。
1 国内需要
―個人消費は低調―
個人消費は、低調である。これは、実質賃金が減少しており、消費者の財布のひもが依然として固いからである。
家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で五月〇・六%減の後、六月は一・〇%減(前月比〇・六%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比一・五%増、勤労者以外の世帯では同五・四%減となった。形態別にみると、耐久財等は増加、サービスは減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比〇・五%減、勤労者世帯では同一・九%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で五月〇・六%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で五月二・〇%減の後、六月は三・七%減(前月比二・五%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で五月〇・七%減の後、六月五・〇%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で五月〇・九%増の後、六月二・〇%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で七月は二・五%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で六月は三・二%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、六月は前年同月比で国内旅行が三・一%減、海外旅行は六・五%減となった。
当庁「消費動向調査」(六月調査)によると、消費者態度指数は、三月に前期差一・九ポイント上昇の後、六月には同二・一ポイントの低下となった。
賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で五月〇・七%減の後、六月(速報)は一・〇%減(事業所規模三十人以上では同一・〇%減)となり、うち所定外給与は、六月(速報)は同九・二%減(事業所規模三十人以上では同九・九%減)となった。実質賃金は、前年同月比で五月一・三%減の後、六月(速報)は〇・九%減(事業所規模三十人以上では同一・〇%減)となった。
住宅建設は、低水準が続いている。
新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で五月一・一%増(前年同月比一七・〇%減)となった後、六月は三・一%減(前年同月比一一・七%減)の十万一千戸(年率百二十一万戸)となった。六月の着工床面積(季節調整値)は、前月比四・七%減(前年同月比一一・三%減)となった。六月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比〇・四%減(前年同月比五・六%減)、貸家は同〇・〇%増(同一二・二%減)、分譲住宅は同八・三%減(同一七・九%減)となっている。
設備投資は、動きが鈍い。
日本銀行「企業短期経済観測調査」(六月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の十年度設備投資計画は、製造業で前年度比二・六%減(三月調査比二・二%上方修正)、非製造業で同〇・六%減(同〇・二%下方修正)となっており、全産業では同一・三%減(同〇・六%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比九・四%減(三月調査比一・六%上方修正)、非製造業で同一四・二%減(同〇・四%上方修正)となり、中小企業では製造業で同二一・七%減(同四・八%上方修正)、非製造業で同一七・九%減(同三・二%上方修正)となっている。
なお、十年一〜三月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると、前年同期比で五・八%減(うち製造業四・八%増、非製造業一〇・八%減)となった。
先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で五月は四・〇%減(前年同月比二八・六%減)の後、六月は五・六%増(同一八・六%減)となり、基調は減少傾向となっている。
なお、当庁「機械受注調査(見通し)」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、七〜九月期(見通し)は前期比で二・一%減(前年同期比二二・一%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、六月は前月比二九・六%増(前年同月比一一・三%増)となったが、このところ弱含み傾向となっている。内訳をみると、製造業は前月比一・〇%増(前年同月比二三・九%減)、非製造業は同三八・〇%増(同二二・九%増)となった。
公的需要関連指標をみると、公共投資については、前倒し執行が促進されているものの、十年度当初予算額や九年度補正予算における積み増し額が前年度に比べて大きく減少していることもあって、着工総工事費は前年を下回る水準で推移している。
公共工事着工総工事費は、前年同月比で五月三一・六%減の後、六月は七・五%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で五月二四・四%減の後、六月は〇・八%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で五月一五・〇%減の後、六月は一四・六%減となった。
2 生産雇用
―更に厳しくなっている雇用情勢―
鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向にある。在庫は二か月連続で減少しているものの、依然高水準である。
鉱工業生産は、前月比で五月二・〇%減の後、六月(速報)は、繊維、パルプ・紙・紙加工品が減少したものの、輸送機械、電気機械等が増加したことから、一・三%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で七月は化学、軽工業等により〇・一%増の後、八月は機械等により〇・四%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で五月〇・一%減の後、六月(速報)は、耐久消費財が減少したものの、生産財、非耐久消費財等が増加したことから、〇・七%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で五月一・七%減の後、六月(速報)は、輸送機械、一般機械等が増加したものの、鉄鋼、窯業・土石製品等が減少したことから、〇・五%減となった。また、六月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一一〇・八と前月を三・六ポイント下回った。
主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産、在庫ともに六月は増加した。電気機械では、生産は六月は増加し、在庫は二か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は六月は増加し、在庫は四か月連続で減少した。
雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数が減少し、非自発的な離職者の増加を中心に完全失業率がこれまでにない高さに上昇した。
労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、五月〇・五三倍の後、六月〇・五一倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、五月〇・九二倍の後、六月〇・八六倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、六月は前年同月比〇・八%減(前年同月差四十四万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、五月前年同月比〇・一%増(季節調整済前月比〇・〇%)の後、六月(速報)は同〇・一%増(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・二%減)、産業別には製造業では同一・三%減となった。六月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差七万人増の二百八十九万人、完全失業率(同)は、五月四・一%の後、六月四・三%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では五月前年同月比一八・三%減(季節調整済前月比〇・七%減)の後、六月(速報)は同一八・九%減(同一・八%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一八・七%減)。
企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。
前記「企業短期経済観測調査」(六月調査)によると、主要企業(全産業)では、九年度下期の経常利益は前年同期比一六・四%の減益(除く電力・ガスでは同一八・二%の減益)の後、十年度上期には同二一・四%の減益(除く電力・ガスでは同二一・二%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では九年度下期に前年同期比二一・七%の減益の後、十年度上期には同二三・八%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度下期に前年同期比九・八%の減益の後、十年度上期には同一五・五%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では九年度下期に三・五四%になった後、十年度上期は三・二四%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では九年度下期に一・三九%となった後、十年度上期は一・四三%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超幅が拡大し、非製造業では「悪い」超幅が縮小した。
また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(六月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、十年四〜六月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、十年四〜六月期は「悪化」超幅が拡大した。
企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を大きく上回る傾向で推移している。
銀行取引停止処分者件数は、六月は一千百五十六件で前年同月比二二・八%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、サービス業で六・八%の減少となる一方、製造業で四〇・七%、建設業で三〇・九%の増加となった。
3 国際収支
―輸出はやや減少傾向―
輸出は、アジア向けが減少しているため、欧米向けは好調だが、全体としてはやや減少傾向である。
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で五月〇・七%減の後、六月は一・六%減(前年同月比一・〇%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、精密機器、繊維等が減少した。同じく地域別にみると、アジア等が減少した。
輸入は、減少傾向である。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で五月七・六%減の後、六月は九・八%増(前年同月比二・九%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(金属・同製品)、鉱物性燃料等が減少した。同じく地域別にみると、アジア、EU等が減少した。
通関収支差(季節調整値)は、五月に一兆五千七百五十四億円の黒字の後、六月は一兆五百十一億円の黒字となった。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。
五月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したことに加え、サービス収支の赤字幅は縮小したため、その黒字幅は拡大し、一兆九百十九億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したことに加え、所得収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅も縮小したため、その黒字幅は拡大し、一兆五千三億円となった。投資収支(原数値)は、一兆六千九百七十七億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、一兆七千三百一億円の赤字となった。
七月末の外貨準備高は、前月比十六億ドル増加して二千七十五億ドルとなった。
外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、七月は、月初の百三十八円台から百四十三円台まで下落した。一方、対マルク相場(インターバンク十七時時点)は、七月は、月初の七十六円台から八十円台まで下落した。
4 物 価
―国内卸売物価は弱含みで推移―
国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。
六月の国内卸売物価は、加工食品(清涼飲料類)等が上昇した一方、電気機器(カーオーディオ)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比二・一%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比二・六%の上昇(前年同月比一〇・四%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比二・三%の上昇(前年同月比二・〇%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・五%の上昇(前年同月比〇・三%の下落)となった。
七月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬、中旬ともに保合い、輸出物価は上旬が〇・四%の下落、中旬が〇・六%の上昇、輸入物価は上旬が〇・九%の下落、中旬が〇・四%の上昇、総合卸売物価は上旬が〇・一%の下落、中旬が〇・一%の上昇となっている。
企業向けサービス価格は、六月は前年同月比〇・二%の下落(前月比〇・一%の上昇)となった。
商品市況(月末対比)は非鉄等は上昇したものの、鋼材等の下落により七月は下落した。七月の動きを品目別にみると、亜鉛地金等は上昇したものの、薄鋼鈑等が下落した。
消費者物価は、安定している。
全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で五月保合いの後、六月は繊維製品の上昇幅の拡大等の一方、公共料金(広義)の上昇幅の縮小等があり保合い(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で五月〇・五%の上昇の後、六月は〇・一%の上昇(前月比〇・四%の下落)となった。
東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で六月〇・三%の上昇の後、七月(中旬速報値)は外食の下落幅の拡大等により〇・一%の上昇(前月比〇・四%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で六月〇・四%の上昇の後、七月(中旬速報値)は保合い(前月比〇・八%の下落)となった。
5 金融財政
―株式相場は、月初に上昇した後、一進一退で推移―
最近の金融情勢をみると、短期金利は、七月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、七月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、七月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、六月は前年同月比三・五%増となった。
短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、七月はおおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、七月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。
公社債市場をみると、国債流通利回りは、七月はおおむね横ばいで推移した。
国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、六月は短期は〇・〇四五%ポイント上昇し、長期は〇・一二五%ポイント低下したことから、総合では前月比で〇・〇〇三%ポイント上昇し一・八五五%となった。
マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、六月(速報)は三・五%増となった。また、広義流動性でみると、六月(速報)は三・二%増となった。
企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、六月(速報)は前年同月比二・三%減となった。七月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、七月の国内公募事業債の起債実績は一兆百三十億円となった。
民間金融機関は貸出に慎重な態度を変えていない。
株式市場をみると、日経平均株価は、七月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。
6 海外経済
―アメリカの景気は拡大しており、減速要因は一時的―
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。ただし、一時的な減速要因から、実質GDPは、一〜三月期前期比年率五・五%増の後、四〜六月期は同一・四%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は五月前月差三十万九千人増の後、六月は同二十万五千人増となった。失業率は六月四・五%となった。物価は安定している。六月の消費者物価は前月比〇・一%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同〇・一%の低下となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。七月の長期金利(三十年物国債)は、総じてやや上昇した。七月の株価(ダウ平均)は、月前半上昇したが、後半は下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。実質GDPは、ドイツ一〜三月期前期比年率三・九%増、フランス同二・三%増、イギリス四〜六月期同二・一%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(五月の鉱工業生産は、ドイツ前月比一・〇%増、フランス同〇・六%増、イギリス同一・二%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している(六月の失業率は、ドイツ一一・〇%、フランス一一・八%、イギリス四・八%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる(六月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比一・二%、フランス同一・〇%、イギリス同三・七%)。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の鈍化から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。
国際金融市場の七月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)七月三十一日一一四・九、六月末比一・六%の増価)。内訳をみると、七月三十一日現在、対円では六月末比四・一%増価、対マルクでは同一・八%減価した。
国際商品市況の七月の動きをみると、弱含みの推移となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意を受けて、やや強含みの推移となった。
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消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・二となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は三月二・二%の上昇、四月〇・七%の上昇、五月〇・八%の上昇と推移した後、六月は〇・四%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は三月一・七%の上昇、四月〇・五%の上昇、五月〇・三%の上昇と推移した後、六月は〇・三%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・六となり、前月に比べ一・二%の下落。
生鮮魚介は二・八%の下落。
<値上がり>えび、かれいなど
<値下がり>かつお、いかなど
生鮮野菜は九・四%の下落。
<値上がり>ばれいしょ、にんじんなど
<値下がり>キャベツ、さやえんどうなど
生鮮果物は一・八%の上昇。
<値上がり>バナナ、りんご(ふじ)など
<値下がり>すいか、メロン(アンデスメロン)など
(2) 光熱・水道は一〇二・一となり、前月に比べ一・一%の上昇。
上下水道料は三・九%の上昇。
<値上がり>下水道料
(3) 被服及び履物は一〇六・七となり、前月に比べ〇・五%の下落。
衣料は一・一%の下落。
<値下がり>スカート(夏物)など
(4) 教養娯楽は一〇一・二となり、前月に比べ〇・六%の下落。
教養娯楽用品は二・四%の下落。
<値下がり>切り花(カーネーション)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
保健医療サービス(二二・九%上昇)、衣料(四・七%上昇)、生鮮野菜(四・三%上昇)、授業料等(二・二%上昇)
○下落した主な項目
電気代(四・四%下落)、穀類(三・五%下落)、自動車等関係費(二・二%下落)、家庭用耐久財(四・八%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・〇となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・八となり、前月と変わらなかった。
◇五月の全国消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・九となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は二月一・九%の上昇、三月二・二%の上昇、四月〇・四%の上昇と推移した後、五月は〇・五%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・四となり、前月と同水準。前年同月比は二月一・八%の上昇、三月一・八%の上昇、四月〇・二%の上昇と推移した後、五月は〇・〇%となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇三・九となり、前月に比べ一・〇%の上昇。
生鮮魚介は一・〇%の上昇。
<値上がり>さけ、いかなど
<値下がり>あじ、たいなど
生鮮野菜は七・九%の上昇。
<値上がり>キャベツ、にんじんなど
<値下がり>トマト、きゅうりなど
生鮮果物は九・四%の上昇。
<値上がり>バナナ、りんご(ふじ)など
<値下がり>メロン(プリンスメロン)、なつみかんなど
(2) 被服及び履物は一〇七・一となり、前月に比べ一・〇%の上昇。
衣料は一・八%の上昇。
<値上がり>スーツ(夏物)など
(3) 交通・通信は九七・五となり、前月に比べ〇・四%の下落。
自動車等関係費は〇・七%の下落。
<値下がり>自動車保険料(任意)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
生鮮野菜(二七・〇%上昇)、保健医療サービス(二三・三%上昇)、家賃(〇・七%上昇)、授業料等(二・一%上昇)
○下落した主な項目
自動車等関係費(三・七%下落)、電気代(四・六%下落)、穀類(三・六%下落)、家庭用耐久財(五・〇%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・四となり、前月と変わらなかった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
【公売に参加するには】
1 公売公告について
差押財産を公売する場合には、多くの方々に参加していただくため、公売日の少なくとも十日前までに、その公売を実施する国税局や税務署の掲示板等に、公売される物件の内容、公売の日時・場所等が掲示(公売公告)されます。
また、より広く皆さんに公売の情報をお知らせするために、新聞・住宅情報誌等の刊行物への掲載や、国税局において公売物件の情報誌を作成している場合があります。
詳しいことは、国税局又は税務署の公売担当へ電話等によりお気軽にお問い合わせください。
2 見積価額について
差押財産を公売するときは、国税局長又は税務署長は、あらかじめ公売物件の見積価額を決定します。
入札に当たっては、見積価額以上で行う必要があります。
3 入札に当たり用意するもの
参加者は、入札に当たって次のものを用意する必要があります。
@ 印鑑
A 公売保証金(見積価額のおおむね一〇%)及び買受代金(不動産の場合は一週間後の支払い)相当額の現金又は小切手(銀行振出のもの)
B 委任状(代理人が入札する場合)
(注) 公売物件によって@〜B以外の書類が必要な場合があります。
例:農業委員会が発行する「買受適格証明書」(農地を入札する場合)
4 入札の方法
買受希望者は、定められた入札時間内に、入札価額等の必要事項を記載した入札書を、公売保証金を納付した上で入札箱に投入します。
5 開札と最高価申込者の決定
入札終了後、ただちに開札が行われ、公売物件について見積価額以上で入札した者の中で、最高額をつけた者が最高価申込者に決定されます。
なお、最高価申込者が入札に際して納付した公売保証金は、買受代金に充当することができ、最高価申込者とならなかった入札者の公売保証金は返還されます。
【代金納付と不動産を買い受けたときの権利の移転手続き】
最高価申込者は、買受代金を、動産や有価証券の場合は公売の日に、不動産の場合は公売の日から一週間後に納付する必要があり、納付したときに公売物件を取得しますが、権利の移転については、農地、電話加入権のように関係機関の許可又は承認等がなければその効力が生じないものもあります。
公売物件が不動産である場合の所有権移転手続きは、買受人の請求に基づいて、国税局長又は税務署長が行います。
権利移転に要する手数料は無料ですが、所有権移転登記に必要な登録免許税及び登記嘱託書等の郵送料は、買受人が負担することとなります。
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