官報資料版 平成1016




                 ▽ 建設白書のあらまし…………………………………………建 設 省

                 ▽ 消費者物価指数の動向(東京都区部七月中旬速報値)……総 務 庁

                 ▽ 毎月勤労統計調査(六月分結果速報)……………………労 働 省

                 ▽ 六月分家計収支………………………………………………総 務 庁










建設白書のあらまし


―平成10年 国土建設の現況―


建 設 省


 「平成十年国土建設の現況」(建設白書)は、去る七月十四日の閣議に配布の後、公表された。
 白書のあらましは、次のとおりである。

◇      ◇     ◇

 平成九年度は、公共投資についての周辺環境が短期間で大きく変化した年であった。
 まず、少子・高齢化等の社会経済情勢の変化の中で、将来世代の国民負担を適正なものとして持続的な発展を確保しようということから、財政構造改革が実施された。これに伴い、集中改革期間中の投資額削減や各種の中期整備計画の見直し、さらには財政投融資の改革が次々と打ち出された。
 さらに、経済情勢の悪化に伴い、平成九年十一月以来、二度にわたって経済対策が取りまとめられ、規制緩和を中心に施策が講じられた。平成十年四月の総合経済対策では、財政構造改革法が一部改正されることとなるとともに、公共事業の追加を含む所要の補正予算の編成が行われた。
 このような中で、公共投資について様々な議論が展開された。
 今回の白書では、公共投資を担当する立場から、これまでの取組を振り返りつつ、社会経済情勢の変化に対して、今後どのような基本的なスタンスに立って対応していくのかを改めて考えることとした。

<第1章> 次世代に向けて

 現在、経済社会においては、少子・高齢化、国際化、情報化、地球温暖化、バブル崩壊やその後の景気低迷など、様々な変化が生じている。こうした状況の変化は、その影響の不確実性も手伝って悲観的に捉えられ、社会の閉塞感につながっている感がある。
 また、経済社会活動の基盤を支えてきた住宅・社会資本についても、少子・高齢化による投資余力の減少、バブルの影響による土地住宅市場の問題などの状況変化に対応した課題を抱えている。住宅・社会資本に関する行政についても、自らの役割を再認識した上で、多様化するニーズへ的確に対応していくことが求められている。
 このような様々な社会経済情勢の変化を背景として、国民の意識や活動・生活様式にも新たな潮流がみられる。
 こうした新たな潮流をヒントに、次世代を素描すると、今後は、
 @ 経済活動を中心としたライフスタイルばかりでなく、多様な交流を通じて独自のライフスタイルや文化を追求創造する社会
 A 人間中心の活動にばかりでなく、自然との共生に心の豊かさを見いだす社会
 B 国際的な経済活動を指向する一方で、地域循環型の経済活動に自分のやりがいを見いだす社会
へと移行する可能性があると考えられる。

<第2章> 次世代へ手渡す住宅・社会資本

<第1節> 次世代において期待される住宅・社会資本の役割

 次世代の社会は、予想不可能な部分が大きい。したがって、住宅・社会資本にも、それを見越した次世代の多様な可能性を受け止められるようなものが必要である。そう考えると、住宅・社会資本には、これまでのように画一的な目標を設定し、施設整備を通じて社会経済活動を誘導していくものから、多様化するニーズを尊重し、その発現を多様な手法によって支えていくものへと役割の変化が求められる。
 次節以下では、個別の政策課題について、この点を考えてみた。

<第2節> 創造的な活動を生み出す交流を支えるために

1 創造的な都市のための都市構造再編
 (1) 中心市街地の活性化
 近年問題となっている中心市街地の衰退は、商店街の衰退など経済的側面だけでなく、実は都市のあり方の転換点を象徴する問題でもある。
 高度成長の終焉以来、我が国の人口移動は徐々に沈静化しており、現在は人口のピークが間近に迫る中、成熟した都市型社会へと転換しつつある。
 このような転換の時期を迎え、都市政策の方向を転換し、都市の拡大に対して効率よく対応することに追われるのではなく、都市の中へと目を向け直して、「都市の再構築」を推進すべき時期に立ち至っている。ここで、住民の相互関係が生み出す創造性を尊重する考え方を、政策として取り入れる方向への転換、すなわち都市文化を尊重する考え方が重要になってきている。
 都市の規模が小さい地方都市ほど、中心市街地の衰退は著しい。中心市街地の衰退が著しいといわれている地方都市の実情をみると、九州地方の都市に例をとれば、人口規模三十万人の都市を境に、それより小規模の都市で昼間人口と夜間人口双方が減少しており、業務機能の低下と同時に、居住人口も大きく減少させている姿が浮かび上がる(第1図参照)。
 このような中心市街地の空洞化は、都市の持つ文化的な意味に与える影響が大きい。多様な中小都市を維持し、その創造性を活かすためには、歴史と文化の蓄積装置としての中心市街地の活性化が必要である。世論調査でも、交流や地域情報取得の場や、歴史や文化の蓄積装置としての中心市街地への期待が表れている(第2図参照)。
 こうした中心市街地の活性化に当たっては、「中心市街地における市街地の整備及び商業等の活性化に対する法律」が制定されるなど、様々な施策が打ち出されているが、市町村と住民の主体的な取組と、さらにはNPOの活躍が期待される。
 (2) 都市の少子・高齢化
 従来、少子・高齢化は、どちらかというと過疎地域の問題と捉えられてきた。しかしながら、東京都においては、平成七年において、既に老年人口が年少人口を上回るなど、大都市においても、急速な高齢化と子供の数の減少が進みつつある(第3図参照)。
 大都市周辺には、高度成長期に地方から出てきた人々が多く居住しており、今後、それが急速な高齢化の要因として現れてくることが懸念される。大都市周辺の地方公共団体は、昭和四十年代に整備された周辺部の大規模ニュータウンに典型的にみられるように、今後は急速な少子・高齢化への対応に迫られることとなる。
 高齢者は、投資余力の観点からマクロ経済的に捉えられる場合も、住宅・社会資本の観点から機能的に捉えられる場合も、社会的弱者と位置付けられがちであるが、高齢化は必ずしもマイナスイメージで捉えるべきではない。
 我が国の高齢者の多くは、健康で、資産や自由な時間を持っており、社会参加活動に対する意欲にも強いものがある。また、今後、高齢化が進むにつれて、高齢者の層が厚くなるが、現在の各年齢層の生活時間配分を前提にした場合、高齢化につれて国民の持つ可処分時間の総量は増加していくと考えられる(第4図参照)。
 このような健康で時間も意欲も兼ね備えた高齢者がいきいきと活躍できる社会を創っていくことができれば、我が国の将来についても展望が開ける可能性がある。
 そのため、
 @ 居住に関する選択肢を増やすため、バリアフリー化、福祉施策との連携など、ハード・ソフト両面から施策を推進する。
 A 移動を容易にするため、公共交通機関を整備する。
 B 活動の場を可能な限り提供するため、少子・高齢化に伴う都市構造の再編に際して、高齢者も気軽に楽しめる場を整備する。
ことが重要となっている。

2 多様で豊かな地域を創るための連携
 バブル経済の崩壊後、これまでの大都市指向の生活・雇用形態から、地元に根ざした「地域循環型」の経済・ライフスタイルが定着する傾向が見受けられる。
 我が国の人口移動についてみると、平成四年から都道府県内移動者数は増加しているのに対し、同時期に都道府県間移動者数は減少している(第5図参照)。ちょうどこの時期、高卒者の県内就職率や分譲住宅等の着工戸数が増加しており、地元で就職し、地元で家を持とうとする地元指向の動きが起こっていると考えられる(第6図参照)。
 また、事業所統計により事務所における従業者数の増加率を大都市圏と地方圏で比べると、バブル崩壊後(平成三年から八年の期間)では、地方圏の方が伸びが大きくなっている。さらに、地元に根ざした企業であると考えられる単独事務所(その場所以外に同一経営の本所・本社・本店や支所・支社・支店を持たない事務所)の従業者の寄与分に限ってみると、その差はよりはっきりする(第7図参照)。
 また、国土庁が主催して東京で開催された「ふるさと探しフェア’98」において、来場者にアンケートしたところ、「地方で仕事をしたい」と回答した人が三八%にのぼっており、「UJIターンをするとしたら」という問いに対して、「今までのキャリアを活かして、もしくは新しい仕事を見つけて、仕事にやりがいを感じたい」としている人が相当な割合にのぼっている。
 これらの点から、これまでの大都市指向から、地元に定着しようとするライフスタイルが、近年根付きつつあるといえるのではないかと思われる。その背景として、バブル経済の崩壊により、かえって心の豊かさや自然、文化などを求める価値観が復権し始めたことがあると推測される。
 また、従来、地方が圧倒的に不利だった情報収集が、インターネットの普及などにより克服されつつあり、地方にいても充実した活動の機会が得られつつあること、また、逆に国際化・情報化の中で、企業を取り巻く環境の変化が著しく加速し、企業で働く人々が、安定した帰属意識や充足感を得られなくなってきたことなどが考えられる。
 地域循環型の経済・ライフスタイルをさらに分析するため、地方圏の人口三十万人以下の都市圏について分析を行うと、昭和五十年代までは、この規模の地方都市圏の盛衰は、「高度成長」や「地方の時代」など、その時代の大きな流れが概ね決定していた。しかし、昭和六十年代以降、個別の都市圏で成長にバラツキが生じている。
 順調に成長している都市圏(T型)では、都市圏内の交流も活発であり、核都市と周辺部との適切な機能分担や相互補完によって、都市圏全体を発展させることが重要であることを示唆している(第8図第9図第1表第10図参照)。
 また、地方圏への公共投資は、投資のなされた地域のみならず、大都市圏を含む広い範囲の地域に対して効果を及ぼしている。
 例えば、東京都中央卸売市場に入荷する野菜の送出地は、高速道路の整備につれて近年ますます遠隔化しており、地方圏の道路整備は、大都市にも大きなメリットをもたらしている。また、東京都民が使用する水の七〇%は、他の県で建設されたダムに依存しており、東京などの大都市圏の生活の最も基本的な部分は、地方圏で整備された社会資本によって支えられている。
 このように、大都市圏と地方圏は、相互依存関係が強く、公共投資の効果を画一的に投資の場所等で分けて議論することは困難である。

<第3節> 自然との共生を目指した活動を支えるために

1 生態系への負荷軽減と生態系との調和
 われわれが生活する人間社会は、昔から様々な活動によって自然へ作用を及ぼしてきた。自然はこれを生態系というシステムの中で処理し、われわれも生態系の一部として、自然と共生する生活を営んできた。しかし、自然へ及ぼす作用が過度になってくると、生態系システムそのものに影響を及ぼし、大気汚染や水質汚濁など、生態系のシステムでは処理しきれない状況が現れた。
 これらの問題に対し、人間社会は、原因物質の除去や排出停止などの対症療法的な処置により、人間社会への悪影響を最小限にするように取り組んできた。また、自然の回復・尊重への取組が行われてきたが、その場合にも、あくまでも人間活動にとって有益であり、好ましい自然状態をつくるということであったケースも多くあった。
 しかし、このような人間中心の取組の結果、生態系が徐々に変化し、この変化が環境ホルモン問題をはじめとして、人間社会に対しても大きな影響を及ぼし始めている。また、現在、地球温暖化問題など原因が普遍的で人間活動と密接不可分な問題も出現してきており、これまでの人間中心の取組は再考を迫られている。
 今後は、従来の社会システムを見直し、資源の有効活用による環境への負荷軽減だけでなく、「循環」の考え方を再認識し、生態系との調和の中で社会経済活動を見直すことが求められる。

2 自然の脅威のリスク管理
 我が国では、むかしから台風や地震をはじめとする自然災害が多く、安全を確保するため国土の安全基盤の整備が進められてきた。こうした努力により、自然災害による人命の損失は減少を続けているが、一方で、自然の中での人間活動が大きくなるにつれて、災害時の想定被害も増大し続けている。
 このように、自然の中で人間活動を捉えた場合、防災についても、自然と調和したあり方が求められる。自然の脅威の発生や拡大に対する人間活動の責任やその引き受け方については、原因者であり最終的に生命・財産の危機にさらされる各人が、自覚して対応していかなければならない。
 また、今後は、ハードの整備を引き続き進める一方、施設の整備だけですべての災害を防ぐことは不可能であるという現実的な認識に基づいて、むしろ災害の発生を想定した上で、被害を最小限に軽減するための施策を予め準備する減災対策が重要であると考えられるようになった。
 このため、ハード面での対策に加えて、災害に関する情報の提供、行政機関間での連携の強化等のソフトの対策を充実させた危機管理型防災対策が展開されている。
 一方、現在、地域の防災活動は低調であるが、今後高齢化が進めば、勤め先を持たない高齢者の増加が予想され、災害に対する備えが不十分な社会ともなりかねない(第11図参照)。
 今後は、一層、地域コミュニティの持つ防災機能を高めていく必要がある。地元住民の自覚により、人的被害を回避できた例としては、平成九年七月に発生した長崎市北陽地区におけるがけ崩れがある。このがけ崩れは、家屋七戸を押し潰す大規模なものであったが、前日から斜面の変状を察知した地区住民が自治会に連絡し、警察、消防と協力しながら周辺住民に避難を呼びかけたため、深夜にもかかわらず速やかな避難が行われ、人的被害を免れることができた。
 この例にみられるように、地域における防災体制の機能は非常に重要であり、行政と住民は相互に情報を交換し、共同作業で防災に当たることが必要である。

<第4節> 自由な経済活動を柔軟に支えるために

 高度成長期に定着した大量生産・大量消費型の経済活動は、現在、成熟型の経済活動へ移行しつつある。今後、行政は、以下のような取組で自由な発想を柔軟に受け止め、多様な経済活動をきめ細かく支援することが重要である。
 @ 既存ストックの基本的な機能の維持と多様な活用
 A 官民の役割分担や規制の見直し
 B 自由な経済活動を阻害する要因(ボトルネック)の解消

1 ストックの活用等による柔軟性の増大
 今後も住宅・社会資本の整備を進め、良好なストックを形成していく必要があることはいうまでもないが、現在既にあるストックをいかに上手に利用していくかは、ストックの蓄積が進むとともに大変重要な問題となっている。
 今後、既存のストックが、多様化する需要に柔軟に対応するためには、@本来の機能を長持ちさせる、A機能を十二分に発揮させる、B潜在的な機能の発掘を図るなどの様々な工夫が必要となる。
 例えば、集合住宅の骨組み部分となる躯体を高耐久のものとし、これと住戸部分を構造的に完全に分離することが考えられる。これにより、住戸部分のみを更新することが容易になるため、建物全体としての長期使用と各住戸の自由なリフォームが達成できる(第12図参照)。
 また、ダムの弾力的管理により、従来に比べてダムに新たな水量を確保し、清流の回復や流況の改善に活用する試みもなされている。
 さらに、外気温に比べて夏期は低く冬期は高い下水熱の特徴を利用して、全国各地で、地域冷暖房やバス停のヒーティングなど、様々な取組が行われている。

2 自由な企業機会の提供
 経済活動の多様な可能性を引き出していくための取組としては、官民の役割分担の見直しや、社会経済情勢の変化に伴う規制の見直しが行われている。
 官民の役割分担の見直しによる企業機会の提供としては、民間活力を利用した社会資本整備手法としてのPFI、建築基準法の改正による建築確認等の民間への開放があげられる。
 また、規制の見直しによる企業機会の提供の例としては、高速自動車国道法等の改正による道路空間を利用した民間事業機会の創出や、建築基準の性能規定化による設計の自由度の拡大があげられる。

3 土地・住宅市場等の活性化
 我が国の都市においては、虫食い地等の低未利用地の整形・集約化等と、これらを活用した再開発を促進することにより、都市を魅力あるものに再構築していくことが重要かつ緊急な課題となっている。
 このため、金融機関の不良債権の処理という財務上の対応にとどまらず、低未利用地を拘束している債権債務関係全体を整序し、これを的確に有効需要の創出に結びつけるための調整や支援の仕組みを整備する必要がある。これを受けて、住宅・都市整備公団の再開発・街づくりへの重点化を行うとともに、民間都市開発機構に都市開発プロモート体制を構築するなどの措置が図られている。

<第5節> 国際的に魅力ある事業環境を支えるために

 国際的な相互依存関係がより一層深まる中で、国際標準化の流れをリードし、国際経済において魅力ある事業環境を創出するためには、@物流の効率化による物流コストの低減、A情報アクセスを確保するための情報通信インフラの整備が重要となる。

1 国際化に対応した物流の効率化
 国際的な視点でみた場合、その国で提供される物流サービスの内容やコスト水準は、産業立地競争上、重要な要素の一つとなっている。
 効率的な広域物流ネットワークを形成するためには、道路ネットワークを整備し、空港や港湾を整備すると同時に、これらの連絡を強化することが重要である。我が国の国際空港と高速道路網、あるいは国際港湾と高速道路網の連絡率は、欧米諸国と比較して低く(第2表参照)、今後、ますます国際化する物流の円滑化を図る上で、早急な整備が望まれる。
 また、物流を効率化する観点からは、広域的な連携を支える幹線道路ネットワーク(高規格幹線道路、地域高規格道路など)の整備、車両の大型化に対応した道路整備等が行われている。

2 経済構造改革を進めるための情報通信の高度化
 国際的な大競争時代においては、企業が必要な情報を的確かつ迅速に入手できることが重要である。そのためには、情報通信インフラの整備が欠かせない。
 また、情報通信の高度化は、様々な分野でのニュービジネスの創出をもたらすものであり、ハードインフラのみならず、ソフトインフラの整備も重要となる。
 情報ハードインフラの例としては、公共施設管理用光ファイバー網が、また、情報ソフトインフラの例としては、GIS(地理情報システム)やITS(高度道路交通システム)があり、それぞれ整備が進められている。

<第3章> 新たな住宅・社会資本整備のあり方に向けて

<第1節> 住宅・社会資本をめぐる厳しい批判と取組方針

1 批判とこれまでの取組
 社会経済情勢の変化の中で、近年、住宅・社会資本整備のあり方について様々な観点から厳しい批判がなされるようになった。その焦点となっているのは、公共投資が、将来世代を含めた国民のために便益を生み出すものに対して、透明な手続の下に効率的に向けられているかどうかということである。
 建設省としても従来、透明性・効率性を確保するための取組を行ってきた。
 効率的な事業実施の観点からの取組としては、@公共投資のコスト縮減、A公共事業の重点化、B省庁間の連携等が行われている。また、公共事業の透明性を確保する観点からの取組としては、@費用対効果分析、A事業の採択基準の公表、B大規模公共事業の再評価等が行われている。
 一方、住宅・社会資本整備のあり方についての批判の観点にも展開がみられる。
 当初は効率性や透明性についての行政の説明責任を問う観点からの議論が多かったのが、最近では、説明責任の問題に加え、現在の行政が持つ仕組みでは、利用者である国民のニーズを満足させるサービスを行うことが困難ではないか、というより根本的なところにも議論は及んでいるように思われる。
 こうした状況を受けて、利用者である国民との間のコミュニケーションを積み重ね、多様なニーズを的確に把握するとともに、可能な限り協働のプロセスを取り入れつつ、政策を決定する方向への転換が必要とされている。

2 次世代に向けての住宅・社会資本整備のあり方
 こうした状況の中で、行政には何が求められるのだろうか。
 まず、行政が独自に収集した情報をもとに、自らの基準によりサービス内容を決定するこれまでのやり方では、利用者である国民の満足度を向上させることは困難となってきていることへの認識が必要である。
 さらに、満足度の向上を目指すに当たっては、@行政のみが専門家ではなく、利用者である国民も利用の専門家として経験と能力を発揮しうる分野があること、A利用者である国民は、自らの経験や能力を活かして政策決定に参加することにより、サービスに対する満足度が向上することについての認識が必要である。
 このときに必要な新しい視点は、二つある。
 第一が、「多様な選択肢の視点」であり、可能な選択肢をなるべく多数用意し、その中から最も高い満足度を得られる組み合わせを実現できるようにすることである。
 そして第二が、「双方向性の視点」であり、行政が利用者である国民と意見を十分に交換しながら的確にニーズを把握するとともに、可能な限り政策決定に協働によるプロセスを取り入れることである。
 このような方向に沿って、以下のように既に取組や試みが始められている。課題も多いが、個別具体の成果を積み重ね、着実なものとすることが重要である(第13図参照)。そして建設省では、これら二つの視点を進めるため、以下の施策を行っている。
 まず第一に、行政の透明性・効率性を一層確保するための取組としては、公共工事の入札・契約手続の透明性の一層の向上、公共事業評価システム(新規事業採択時の評価、再評価)の導入、公共工事のコスト縮減と品質確保に向けての取組、財政投融資の改革などの取組が行われている。
 第二に、住宅・社会資本に対する要求が多様化している中で、利用者である国民に多様な選択肢を提示するとともに、その中から最も適当な組み合わせを実現するための取組が求められる。こうした多様な選択肢を用意するための取組としては、PFI等による民間活力の活用、合意形成のための取組としては、地方分権の推進などが行われている。
 第三に、住宅・社会資本を整備するに当たって、国民の多様なニーズに対応していくためには、まず、ニーズの的確な把握が必要である。さらに、「行政が整備し国民が利用する」という考え方を離れて、「行政と国民とが力を合わせて協働作業で整備する」という考えを取り入れることが必要である。的確なニーズの把握への取組としては、PI(パブリックインボルブメント)の導入などが、さらに、行政と利用者である国民との協働による意思決定への取組としては、河川整備計画の策定に関係住民等の意見を反映する手続の導入、社会実験の実施(第14図参照)などが行われている。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(七月中旬速報値)・全国(六月)―


総 務 庁


◇七月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・四となり、前月比は〇・八%の下落。前年同月比は四月〇・七%の上昇、五月〇・八%の上昇、六月〇・四%の上昇と推移した後、七月は〇・〇%となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・六となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は四月〇・五%の上昇、五月〇・三%の上昇、六月〇・三%の上昇と推移した後、七月は〇・一%の上昇となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇〇・六となり、前月に比べ一・八%の下落。
  生鮮魚介は二・九%の下落。
   <値上がり>かれい、ぶりなど
   <値下がり>いか、まぐろなど
  生鮮野菜は一〇・二%の下落。
   <値上がり>さやえんどう、ほうれんそうなど
   <値下がり>トマト、さやいんげんなど
  生鮮果物は一〇・七%の下落。
   <値上がり>グレープフルーツ、レモンなど
   <値下がり>すいか、ぶどう(デラウェア)など
  外食は〇・九%の下落。
   <値下がり>ハンバーガーなど
(2) 光熱・水道は一〇二・三となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  電気・ガス代は〇・二%の上昇。
   <値上がり>都市ガス代
(3) 被服及び履物は一〇三・三となり、前月に比べ三・二%の下落。
  衣料は三・六%の下落。
   <値下がり>スーツ(夏物)など
(4) 教養娯楽は一〇〇・一となり、前月に比べ一・一%の下落。
  教養娯楽サービスは一・六%の下落。
   <値下がり>ゴルフプレー料金など
(5) 諸雑費は一〇三・七となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  理美容サービスは〇・五%の上昇。
   <値上がり>パーマネント代など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二二・九%上昇)、衣料(四・〇%上昇)、授業料等(二・二%上昇)、上下水道料(四・一%上昇)
○下落した主な項目
 電気代(四・八%下落)、外食(一・四%下落)、穀類(三・九%下落)、教養娯楽サービス(一・二%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・六となり、前月に比べ〇・四%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・七となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。

◇六月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・五となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は三月二・二%の上昇、四月〇・四%の上昇、五月〇・五%の上昇と推移した後、六月は〇・一%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・三となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は三月一・八%の上昇、四月〇・二%の上昇、五月〇・〇%と推移した後、六月は〇・〇%となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇二・八となり、前月に比べ一・一%の下落。
  生鮮魚介は二・五%の下落。
   <値上がり>かれい、ぶりなど
   <値下がり>かつお、いかなど
  生鮮野菜は一一・六%の下落。
   <値上がり>ばれいしょ、にんじんなど
   <値下がり>キャベツ、きゅうりなど
  生鮮果物は一・九%の上昇。
   <値上がり>バナナ、りんご(ふじ)など
   <値下がり>すいか、メロン(アンデスメロン)など
(2) 家具・家事用品は九五・七となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・二%の下落。
   <値下がり>電気洗濯機(全自動式)など
(3) 交通・通信は九七・三となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  自動車等関係費は〇・二%の下落。
   <値下がり>ガソリン(レギュラー)など
(4) 教養娯楽は一〇〇・三となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  教養娯楽用品は一・七%の下落。
   <値下がり>切り花(カーネーション)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二三・二%上昇)、生鮮野菜(四・六%上昇)、家賃(〇・五%上昇)、授業料等(二・一%上昇)
○下落した主な項目
 自動車等関係費(三・六%下落)、電気代(四・六%下落)、穀類(三・五%下落)、家庭用耐久財(四・八%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・三となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。







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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十年六月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十年六月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は五十万五千九百二十五円、前年同月比は一・〇%減であった。
 現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万九千五百十三円、前年同月比〇・五%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十七万一千九百五十一円、前年同月比〇・一%増で、所定外給与は一万七千五百六十二円、前年同月比は九・二%減となっている。
 また、特別に支払われた給与は二十一万六千四百十二円、前年同月比一・六%減となっている。
 実質賃金は、前年同月比〇・九%減であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順にサービス業〇・八%増、鉱業〇・五%増、卸売・小売業、飲食店〇・一%減、電気・ガス・熱供給・水道業〇・五%減、製造業〇・八%減、運輸・通信業〇・九%減、建設業一・六%減、金融・保険業二・五%減、不動産業三・二%減であった。

◇労働時間の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一六三・〇時間、前年同月比一・一%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一五三・八時間、前年同月比〇・五%減、所定外労働時間は九・二時間、前年同月比九・九%減、季節調整値は前月比二・六%減であった。
 製造業の所定外労働時間は一一・六時間で前年同月比は一八・九%減、季節調整値は前月比一・八%減であった。

◇雇用の動き

 六月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・一%増、常用労働者のうち一般労働者では〇・七%減、パートタイム労働者では三・五%増であった。常用労働者全体の季節調整値は前月比〇・〇%と前月と同水準であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、サービス業二・〇%増、運輸・通信業〇・五%増、建設業〇・四%増と、これらの産業は前年を上回っているが、不動産業〇・四%減、卸売・小売業、飲食店〇・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・一%減、製造業一・三%減、鉱業二・五%減、金融・保険業二・六%減と前年同月を下回った。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・四%減、パートタイム労働者〇・三%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者一・七%減、パートタイム労働者一・八%増、サービス業では一般労働者〇・九%増、パートタイム労働者七・七%増となっている。

◇     ◇     ◇

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消費支出(全世帯)は実質一・〇%の減少


―平成十年六月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年四月以降三か月連続の実質減少となった後、七月は実質増加、八月は実質減少、九月、十月は実質増加となり、十一月以降八か月連続の実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成九年九月は実質増加、十月は実質で前年と同水準となり、十一月以降六か月連続の実質減少となった後、十年五月は実質増加となり、六月は実質減少となった。
 消費支出は、平成九年九月は実質増加となった後、十月以降七か月連続の実質減少となったが、十年五月、六月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、二十六万二千八百三十二円で、名目、実質ともに五・四%の減少

◇財・サービス区分別の消費支出

 財(商品)は、実質二・二%の増加
  <耐久財>実質四四・八%の増加
  <半耐久財>実質一〇・五%の減少
  <非耐久財>実質〇・二%の増加
 サービスは、実質四・五%の減少




 

地震発生時の初期消火


<地震が起きたら>
 「地震だ、火を消せ」の言葉どおり、揺れを感じたら素早く火の始末をします。こんろやストーブなど火元から離れているときに、わざわざ火に近づくのはかえって危険です。このようなときは、揺れが収まってから火の始末をします。
<火災が起きたら>
 初期消火を行うときに最も大切なのが、決して慌てないことです。
 火はいっぺんに燃え広がるわけではありません。少なくとも天井に燃え移るまでには数分かかります。床やカーテン、ふすまなどにまだ火がとどまっているうちに消すのがポイントです。
 燃え広がりを防ぐには、カーテンを引きちぎったり、ふすまを蹴り倒したりする方法もあります。布団で覆ったり、たたいたりなど、周りの物も活用できます。

▽消火器を使うときの注意点

・炎や煙を避けながら、姿勢を低くして消火器のノズルを火元に向ける。
・直接火に消火剤をかけるのではなく、周りから炎を覆うようにかけ、徐々に火元に近づいていって消火する。
 こうした行動は、頭で覚えるものではなく、訓練などを通じて身につけるものです。そのためにも、地域の防災訓練などに進んで参加しましょう。  (消防庁)




 
    <9月24日号の主な予定>
 
 ▽男女共同参画の現状と施策………総 理 府 

 ▽労働力調査…………………………総 務 庁 
 



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