官報資料版 平成1010




                 ▽ 経済白書のあらまし…………………………………………経済企画庁

                 ▽ 統計からみた我が国の高齢者………………………………総 務 庁

                 ▽ 消費者物価指数の動向(東京都区部八月中旬速報値)……総 務 庁

                 ▽ 税金365日 租税史料館オープン
                    (租税史料の収集にご協力を)……………………………国 税 庁










経済白書のあらまし


―創造的発展への基礎固め―


経 済 企 画 庁


 平成十年度「年次経済報告(経済白書)」が去る七月十七日の閣議に報告された。
 白書のあらましは、次のとおりである。
 本経済白書では、景気が緩やかな回復から停滞状態に至ったことを示した後、日本経済が抱える種々の構造問題を検討し、経済構造改革、金融システム改革等による創造的発展への基礎固めの必要性を説いている。
 日本経済は、一九九七年度当初からの消費税率引上げや駆け込み需要の反動減に伴う景気の減速から、夏には緩やかながら立ち直りつつあった。しかし、秋からの大手金融機関の破綻等による金融システムへの信頼低下や、アジア経済・通貨危機による不安心理によって悪化し、現在、景気は停滞を続け、厳しさを増している。年末に家計需要の落ち込みと、金融機関の貸出態度の慎重化もあって生じた設備投資の鈍化に始まった景気減速は、徐々に経済の諸方面に及び、生産や雇用も厳しい状況となっている。
 これに対して、財政面から有効需要を拡大する措置、金融システム安定化のための措置、日本経済の足腰を強め活力を回復させる措置等がとられた。心配された年度末にかけての金融システムの不安定化は回避され、また、アジアの為替・経済の動揺は一応収まりつつある。しかし、なお日本経済は停滞状態を続けている。
 国際的にみても、日本の景気減速がアジアの混乱の原因とは言えないが、内外需の拡大を通じた日本の景気回復は、アジア製品の輸入拡大にも資するものである。
 昨年の経済白書では、景気は「民間需要主導の自律的回復過程への移行を終えつつある」としていたが、その後、景気は逆に減速に向かった。また、今回の景気減速を含め、バブル崩壊による不況以降、日本経済は低成長を続けてきた。その間、為替レートの変動、金融システム不安等により、何回かの短期的調整を余儀なくされた。景気を浮揚するためとられた累次の経済対策も、経済を民間需要主導の自律的な安定成長軌道に乗せるには至らなかった。
 低成長が続いた背景には、次の問題がある。
 第一に、家計や企業の長期的な先行き不透明感が広がっていることである。財政収支の悪化と将来の負担増等への懸念、将来の産業・就業構造変化への不透明感、あるいは日本型システム、特に企業システムや雇用慣行等の将来への見通し難等が、国民の積極的行動を抑制している。昨年の駆け込み需要反動減の影響については、ある程度織り込んではいたが、実際は予想より大きかった。
 第二に、バブル後遺症の影響が依然として残っていることである。企業や金融機関は毀損した財務の建て直しに営業収益をつぎ込まざるをえず、金融仲介チャネルはリスクマネーの供給に躊躇し、また、不動産市場は停滞して、不動産の有効活用が阻害されている。昨年秋からの金融システム不安の拡大や、貸出態度の慎重化の背景にあるバブル後遺症の調整の遅れについても、影響は大きく現われた。政府・日銀の安定化策で金融システム不安は落ち着いたが、長期的な資産圧縮や収益改善への要請から、「貸し渋り」問題は依然残っている。
 第三に、中期的な日本経済の潜在生産能力の伸びが減速していることである。九〇年代に入っての設備投資の落ち込みや、生産性の伸びの鈍化によるものであるが、これによって企業の予想成長率も低下し、積極的な投資活動を控えるようになった。
 こうした状況では、需要面からの景気対策だけでは、景気の下支え効果は発揮するものの、民間の積極的投資を引き出すことは難しく、したがって自律的回復につながりにくい。
 現下の厳しい経済情勢では、内需刺激策はとられなければならないが、これを民間需要中心の持続的回復につなげていくためには、経済構造改革を同時に進めることが必要であり、今回の経済対策はそうした認識に立ったものである。
 第一に、公的部門の長期的展望を明らかにすることで、人々の不安感を払拭する必要がある。歳出削減を中心とする財政構造改革、社会保障の合理化の道筋を示し信頼を得ることで、高齢社会での経済活力の低下や負担増への懸念にこたえるべきである。短期に緊急避難的な調整や迂回は必要になるとしても、原則を崩すべきではない。
 第二に、バランスシート調整の促進である。特に資金面からの経済の大動脈である金融システムの構造改革と不良債権の処理は必須条件であり、そのための不動産流動化等の枠組みの整備、さらに金融機関自身のリストラも必要である。
 第三に、潜在生産能力の伸びを高めるための政策である。生産性が向上し、投資が活発化するためには、民間部門の積極的な経済活動への阻害要因を除去し、さらにインセンティブを高めるため、規制緩和等の経済構造改革、公正で透明な税制へ向けた検討、金融システム改革等が不可欠である。
 今回の改革は痛みを伴うものであるが、日本の今後の経済発展にとって必須のものであり、これなしには当面の回復の本格化もありえないことを銘記すべきである。こうした政府の政策に呼応して、民間部門による新たな事業機会、就業機会への積極的挑戦が望まれる。

<第1章> 景気停滞が長びく日本経済

<はじめに・景気の停滞が続く日本経済(第1節)>
 一九九七年度は、自律回復過程への復帰が挫折して景気が足踏みし、停滞状態になった年である。税負担増やある程度の駆け込み需要の反動により、「九七年度前半は景気の足取りが緩やかになる」ことは、政府の経済見通しでも織り込んでいたが、影響は予想以上に大きく、特に九六年度末の駆け込み需要とその反動減は大きかった。その後回復に向かったが、テンポは緩慢だった。さらに、秋口から生じた株価の下落、複数の金融機関の破綻による金融システムへの信頼の低下等が、家計や企業の心理を悪化させ、回復を頓挫させた。アジア通貨・経済混乱も加わった。
 こうして景気は停滞を続け、厳しさを増している。年末に家計需要の落ち込みと設備投資の鈍化から始まった景気減速は、徐々に経済の諸方面に及び、生産や雇用も厳しい状況となっている。九八年度に入ってもこの状況が続いている。
 景気動向が昨年の政府の予想以上に厳しくなったのには、次のような三つの要因があった。
 第一は、消費税率引上げによる駆け込み需要の反動減及び消費税率引上げ、特別減税の終了等の影響が長引いたことである。今回の負担増の家計消費への影響は織り込んでいたが、七〜九月期には回復に転じたものの、テンポが遅かった。
 第二は、バブル後遺症である企業や金融機関のバランスシート調整の遅れの問題である。この問題は、経営基盤の弱い金融機関の破綻の要因になっている面もある。また、不良債権問題等により、金融システムへの信頼性の問題が生じており、日本版ビッグバンを控えていることから、金融機関は、収益性や健全性の向上のための見直しを進めている。金融機関は、資産構成の健全化や収益性改善のために貸出抑制に向かわざるをえず、これが、いわゆる「貸し渋り」問題として実体経済に影響を及ぼしている。政府・日銀の安定化策で金融システム不安は落ち着いたが、金融機関の貸出態度には依然として慎重さがみられる状況である。
 第三は、アジアの混乱である。これは各国が通貨のドル・ペッグへの固執や短期資本流入によるバブル的状況を放置したことが主因である。内外需の拡大を通じた日本の景気回復は、アジア製品の輸入拡大にも資するものである。
 景気回復期にみられる好循環は再び断ち切られ、放置すれば悪循環に陥る可能性も指摘されていた。そこで、九七年秋から景気の下支えと金融システム安定化のための対策がとられ、特に九八年度に入って過去最大規模の「総合経済対策」がとられ、景気を下支えし、上向かせようとしている。これが民需中心の持続的な回復につながっていくためには、同時にとられている規制緩和等の経済構造改革、公正で透明な税制へ向けた検討、金融システム改革等を通じ、国民や企業の意欲が十分に生かされるようになることが必要である。民間部門が、積極的に新たな投資機会に挑戦するようになることを期待したい。

<低調だった家計消費(第2節)>
 個人消費は、駆け込み需要の反動減で四〜六月期に大きく落ち込んだ後、七〜九月期には緩やかながら立ち直りがみられたが、秋になって金融システム不安等から家計の景況感が悪化し、消費性向が低下し、消費は再び減少した。九八年に入って雇用環境が厳しさを増した影響が雇用者所得に出て、消費は低調な動きが続いている。ただし、金融システム不安の落ち着きや特別減税の実施もあり、消費性向は持ち直しの動きがみられる(第1図参照)。

<低水準の続く住宅建設(第3節)>
 駆け込み需要で九六年に極めて高い水準になった住宅建設は、その後急減し、現在も低水準にある。単に反動減だけでなく、金利低下や取得価格の低下といった住宅取得能力の改善要因が長期間続いたため一巡したこと、将来所得への不透明感が反映しており、しばらく低調な動きが続くであろう。
 住宅への潜在ニーズは、住み替え需要が高まりつつある。セカンドハウスの取得促進や居住用財産買い替え時の譲渡損失控除制度の創設等の措置がとられているが、さらに根本的な措置として、中古住宅市場の整備、定期借家権導入を含む借地借家法の改正等により、供給阻害要因が取り除かれる必要がある。

<減少する生産と企業収益(第4節)>
 九七年度に入って、国内最終需要の停滞に加え、秋口より外需も次第に伸びが鈍化し、在庫が積み上がって鉱工業生産は弱含みになっていった。秋頃には、耐久消費財では一時的に在庫調整が進んだが、生産財では耐久消費財の減産等の影響から在庫が積み上がった。さらに秋以降の消費の一段の低下によって、耐久消費財等も再び在庫調整を余儀なくされ、生産は減少傾向となっている。
 企業は減収減益基調が続いている。しかし、製造業大企業を中心にコスト削減に成功し、九七年度に過去最高益をあげた企業も少なくない。一層の効率化や財務改善によって、新たな事業機会に挑戦できるリスク対応力を養うことが企業に求められる(第2図参照)。

<弱含む設備投資(第5節)>
 設備投資は、九七年度の後半に減速し始め、現在は弱含みといえる状況にある。
 九〇年代前半の資本ストック調整は、バブル期の過剰かつ非効率な投資の結果積み上がった資本ストックを削減するとともに、予想成長率の低下に対応して、資本ストックの伸びを落とすという二重の調整過程であって、設備投資は大幅な減少が続いた。これに比べると、今回の設備調整は、景気動向を反映した通常の減速とみられるが、企業の将来成長予想が一段と下がれば、それに見合った資本ストックとなるまで再度大幅な調整の過程が始まるわけである。
 設備投資の面から景気が回復軌道に乗るためには、民間部門の将来コンフィデンスの回復、不動産流動化を通じた不良債権問題の解決と不動産建築投資の回復等、構造的対策の進展が必須条件である(第3図参照)。

<厳しさを増す雇用情勢(第6節)>
 雇用情勢は、厳しさを増している。九七年には前年比一%程度増加していた雇用者数は、九八年二月以降、前年を下回っており、完全失業率は上昇し、九八年四月には四・一%と既往最高となっている。
 雇用情勢の厳しさは賃金の鈍化につながり、実質雇用者所得は減少し、雇用不安とあいまって家計消費へのマイナス効果が出ている。
 九六年後半には、バブル崩壊後の雇用調整はほぼ終了したが、景気の停滞が長びいているため、最近は再び企業の雇用過剰感が高まっている。企業の将来成長予想がさらに下がり、本格的な雇用調整局面に入ることを回避するためにも、企業の景況感の改善等による雇用情勢の改善が不可欠である。労働者が他産業でも通用する技術・技能の修得に努めることも必要であり、個人を主体とした職業能力開発も重要となろう(第4図参照)。

<弱含む卸売物価(第7節)>
 卸売物価は、弱含み局面に入ってきた。国内卸売物価は、需給の緩みや原油等輸入物価の低下、技術進歩や規制緩和等による生産性の上昇等があいまって低下している。消費者物価は、医療保険制度改正に伴う診察料の上昇が上昇要因になっているが、全体として上昇率が低下している(第5図参照)。

<国際経済(第8節)>
 外需は景気下支えの役割を果たしていたが、九七年度後半からのアジア経済・通貨の混乱の影響、九八年に入ってからの対米輸出の頭打ちで、景気押し上げ要因でなくなっていった。しかし、輸入価格の低下のため、貿易・サービス収支は黒字が拡大している(第6図参照)。

<金融・資本市場の大幅変動と金融政策(第9節)>
 九七年の大手金融機関の破綻は、景気の減速や、不良債権問題等を背景に、経営の悪化していた金融機関に対する金融・資本市場の信認が低下したことも要因の一つと考えられる。
 金融システムの不安定性の強まる中で、日本銀行は、金融緩和基調を維持し、景気の下支えと金融システムの維持に力を発揮した。バランスシートの悪化している金融機関や企業は、低金利が維持されているうちに思い切った経営改善、不良債権処理等を行う必要がある。

<財政政策と経済対策(第10節)>
 九七年度には、九五年度から先行実施されている所得税等の恒久減税と一体のものとして法定されていた消費税率の引上げが行われ、また、当時の経済事情等を踏まえた結果、特別減税は実施しないこととされるとともに、十一月には「財政構造改革の推進に関する特別措置法」が成立した。
 しかし、九七年秋以降の経済・金融情勢に対応し、各種の経済構造改革や金融システム安定化策とともに、財政面からも特別減税、九七年度補正予算、九八年度公共事業等の前倒し執行、さらに四月には過去最大規模の「総合経済対策」が決定された。
 今次の財政面からの措置は、単なる需要面からの景気刺激策というだけでなく、経済構造改革や不良債権処理等を通じて、日本経済の供給サイドを強化し、また国民の先行き不透明感の払拭を同時に狙ったものである。
 なお、財政構造改革法は一部修正されたが、財政構造改革の基本的骨格は堅持されており、財政運営の将来展望を明らかにするのに資すると考えられる。

<今後の回復に向けて(第11節)>
 本年四月以降、昨年秋の金融システム不安のときのような著しい先行き不透明感は薄れ、昨年秋以来低下した消費性向が回復に向かう兆しがみられる等、家計の景況感は下げ止まる動きがある。他方、雇用者所得の低迷もあって、消費は低調に推移している。
 このため九七年末から九八年度初にかけて各種財政・金融措置がとられ、特に四月の「総合経済対策」は過去最大規模であり、実施後一年間で二%程度名目経済成長率を押し上げると試算される。減税が実施され、公共工事が本格的に出てくれば、所得の増加が国民にも実感され、景況感が上向いてくると考えられる。
 これが民間需要中心の持続的な回復につながっていくよう、政策面では金融システムを安定化させ不良債権処理を促進する施策、そして規制撤廃・緩和等によって日本経済の体質を強化し、経済活動へのインセンティブを高めて民間部門の積極的行動を促すための構造改革措置施策等が同時にとられている。金融政策は著しい緩和基調を続け、変革を金融面から支えている。
 こうした機会の拡大が積極的に活用されれば、内需刺激効果が持続的成長につながろう。不良債権問題の処理に金融機関が本格的に取り組み、企業がチャンスを生かすことが期待される。このためにも、日本経済が抱える諸問題について解決の見通しを国民に示すこと等を通じ、国民の長期的な展望を開くことが重要である。

<第2章> 成長力回復のための構造改革

<はじめに>
 累次の経済対策にもかかわらず、自律的安定成長過程への移行が成功しなかった一因は、九〇年代に入って日本の中期的な潜在生産能力の伸びが低下し、それに伴って企業や家計の期待成長率も低下して、リスクをとるような投資活動が出にくくなり、景気対策も波及効果が中断されやすくなったためと考えられる。
 潜在生産能力の伸びの低下には、九〇年代前半の設備投資の低迷というやや短期的な動きも寄与しているが、産業の生産性の伸びの長期的低下も寄与している。これが回復するためには、生産性が高まることが重要である。そのためには新しい技術を体化し、新しい需要を開拓するような投資が行われなくてはならない。
 問題は、こうしたリスクをとる行動を制約するような構造的要因があることである。これらは戦後の日本に長く存在していたものであるが、九〇年代に入って、弊害がさらに顕在化してきた。
 一つは、公的規制等の制度要因である。二つは、金融システムがリスクマネーを十分供給できない金融市場要因である。三つは、企業の運営や意思決定メカニズムの制度疲労、すなわち企業組織要因である。
 以上の問題を改善し、経済構成員の積極的行動を呼び覚まして、潜在生産能力の伸びを回復させるためには、機会の平等、自己責任、情報開示、ルール重視を大原則とする、市場メカニズムと自由な競争に立脚した制度や企業システムへの改革が急務である。
 第一は、経済構造改革であり、特に経済効果の大きい分野での競争促進が望ましい。この中には、官民の役割分担を変更し、民間部門の参入を促進するための規制緩和や情報開示が含まれる。また、公正で透明な税制へ向けた検討等によって、国民や企業の意欲が十分に生かされるようにすることも重要である。
 第二は、金融システムの改革である。その中でも、リスクマネーの供給については、中小企業や新規開業のための資金調達が円滑化するような、資金仲介チャネルの複線化が望ましい。
 第三に、民間部門の内部での企業システムの変革である。日本的な長期的・暗黙的契約関係は、関係者間の事前のコンセンサスが得られる時代には有効に機能したとしても、それが不可能な時代には、自由な発想と競争によってのみ企業や産業の発展が可能となる。また、モノ作り的な分野では、雇用者への企業内訓練、部品供給企業への技術移転等により、メリットを発揮しており、そうした利点は存続すると考えられる。
 一方、情報、ソフトウェア、ネットワーク等の分野では、自由な発想と高度の専門性が要求され、競争力の源泉となるのは、最適な資源を組み合わせていく柔軟性である。こうして、従来からの企業内、企業間、企業と金融機関の間等での長期的契約関係も、不合理な部分は見直されていくことになろう。
 以上のような構造改革は、片方で規制緩和等では痛みを伴うものであるが、潜在的な需要や技術革新の機会の強い分野では、新たなビジネス機会や新規需要を呼ぶことによって、短期の景気回復にも貢献すると考えられる。供給サイドの刺激、強化を伴って初めて、短期的な需要刺激策による経済回復が中長期的な経済活性化につながるのである。

<低下した潜在生産能力の伸び(第1節)>
 九〇年代を通じて経済成長率は低かった。これには需要の伸びが緩慢だったこととともに、生産能力の伸びが低下したこと、すなわち潜在生産能力の伸びが低下傾向にあることが原因である。生産能力の伸びの低下には、バブル崩壊後の設備投資の減少による資本ストックの伸びの鈍化や労働投入量の頭打ち傾向とともに、構造的問題によって生産性の伸びが抑えられていることが寄与している。
 生産性を引き上げ、資本ストックの伸びを確保するような供給サイドの政策を進める必要がある(第7図参照)。

<規制改革はじめ構造改革の必要性(第2節)>
 生産性を高め、潜在生産能力の伸びを高めるには、相対的に生産性の低い部門で生産性を高めることが有効な方策の一つである。
 我が国のように生産性の低い部門が存在することは、潜在的に生産性が高まる余地が十分あることを示し、経済の新たな活力の源泉となりうる。生産性を改善し、経済構成員の積極的行動を呼び覚まして、潜在生産能力の伸びを回復させるには、市場メカニズムと自由な競争を基本とした制度や、民間システムへの改革が急務である。
 構造改革の第一は、規制の撤廃・緩和等によって技術革新、生産性上昇、事業機会の拡大や新規需要の開拓等を促し、経済の発展基盤を構築することである。エネルギー分野等の経済全体に高コストや制約を課している可能性がある分野等では、規制の改革が急務であり、電気通信のような当該分野での効率性の向上や技術革新が経済全体に波及して活用されることが期待される分野では、規制等の制度の間断ない見直しが求められている。
 第二は、高齢化、個性化、グローバル化等、経済社会全体の大きな長期的トレンドからみて今後重要性を一層増す分野で、効率性を改善し、社会的コストの上昇を最小限にとどめるための改革である。人口の高齢化に伴う医療・介護サービスの一層の効率化、グローバル化に伴う金融システムの一層の自由化等が政策課題である。

<資本コストの引き下げ等による経済活動へのインセンティブ強化(第3節)>
 従来、日本の資本コストは、金利や自己資本調達コストが低いことによって、諸外国と比較して低い水準にある。特に最近は著しい低金利が、日本の資本コストを低めている。しかし、資本移動がさらに自由になるにつれて、内外金融・資本市場間の裁定がさらに働くようになり、長期的には資本コストのうち市場で決まる部分は、国際間で平準化されていき、税制等の格差が残るとの指摘がある。
 供給サイドの強化には、税制のあり方の見直しが必要不可欠であり、法人課税の軽減が既に行われ、今後も法人実効税率を国際的な水準にするよう、さらに検討が行われることが決まっている。個人所得課税についても検討が行われることが決まっている(第8図第9図参照)。

<金融システムによるリスクマネーの供給と企業の新規開業(第4節)>
 銀行等の金融機関のリスクマネー供給能力は、期待成長率の鈍化、融資先の売上げ等の変動リスクの増大、企業や金融機関における不良資産、不良債権問題等によって低下している。中小企業、新規開業企業の資金調達チャネルの多様化が望ましい。
 特に、ベンチャー企業や既存企業による新規開業活動は、我が国の経済構造改革の原動力ともなるべきものである。ベンチャー企業が、より早い段階で、新規株式公開による資金調達という選択肢を選べるよう、直接金融の厚みが増すことが必要である。
 もちろん、新規開業の活発化には、間接金融の役割も極めて重要である。
 いずれにせよ、新規企業であれ、既存企業であれ、「成長」部門を一気に伸ばすことが重要であり、そのために必要な資金をいかに円滑に手当できるシステムを構築できるかが現在問われていると言えよう。

<企業システムの変革(第5節)>
 戦後日本の産業社会においては、株式持ち合いやメインバンクに代表される日本的金融システム、長期継続的取引関係に代表される企業間関係、終身雇用・年功序列型賃金・企業別労働組合に代表される雇用慣行、の三つの要素が相互に影響し合う日本的経営システムの存在が指摘されてきた。
 しかし、優良企業のメインバンク離れの結果、八〇年代後半に「企業経営規律の空白期」が生じ、低コストの資本調達が可能だったこともあって、結果的に収益率の低い案件への投資が行われ、九〇年代の日本経済に「ガバナンス不況」をもたらし、現下の経済の停滞にまで及んでいる、との指摘がある(最近は、金融機関の貸出態度の慎重化で、融資の中心がメインバンクに戻ってしまったと言われる)。
 株主重視の経営を行うことは、新たな企業統治構造を構築する上で不可避である。従来は企業の資産・負債の情報開示が十分でなく、しかも非効率的な経営を行っても、投資家がその改善のために十分な影響力を行使することができなかったために、株式投資のリスクプレミアムが高まり、株価の下落、資本コストの上昇を招いた可能性がある。こうした問題を解決するため、現在価値を考慮した会計基準や連結決算を中心とする会計制度の充実が不可欠である(第10図参照)。

<労働力需給のミスマッチの拡大により、重要性が増す労働市場の機能(第6節)>
 産業・就業構造変化や情報・技術革新の進展等により、労働力需給のミスマッチが拡大している。また、企業は、競争の激化や成長率の低下によって経営環境が厳しくなり、営業リスクがこれまで以上に大きくなる状況に柔軟に対応するため、戦略的な事業の再構築や企業間提携・合併等を行えるようなシステムに変わらざるをえない。その際、重要な条件は、雇用の柔軟性である。
 このため有料職業紹介事業や労働者派遣事業等、民間の労働力需給調整に関わる雇用労働分野の制度の見直しが行われており、これらの事業の発展が予想される。労働者も長期雇用を前提とするだけでなく、労働移動の可能性を視野に入れる必要があり、自発的な職業能力開発の重要性が高まる。
 一方、賃金体系や各種制度により、労働者にとって転職に伴うコストは大きく、一企業にとどまる行動が、個々の雇用者にとって合理的な構造となっている場合が多い。
 政府としては、労働移動に対応した制度の整備を進める必要がある(第11図参照)。

<経済構造改革の実現のために(第7節)>
 経済構造改革は、長い目でみて避けて通ることはできないものであるが、痛みを伴う。この痛みを対症療法的に和らげようとすれば、改革そのものを挫折させてしまう場合も出てくる。
 経済構造改革が、雇用へ悪影響を与えるのではないかとの懸念が示されることがあるが、雇用については、新たな就業の拡大、新しい労働力の移動に対応したセーフティネットとしての労働市場の整備を講じていくべきである。
 また、倒産等にみまわれた事業主に対する社会的受容度を高め、市場での再挑戦の機会を拡大していくべきである。
 改革によって市場メカニズムが発揮されることは、市場参加者に自己責任での意思決定を強いるものである。したがって、その前提として、機会の平等、自己責任、情報開示、ルール重視が大原則となる。特に情報開示は、市場経済社会のもっとも基本的なインフラである(第12図参照)。

<第3章> 各種構造改革下の経済政策

<はじめに>
 九〇年代に入って、累次の財政拡大策や金融緩和政策がとられたにもかかわらず、結果として経済の自律的回復が定着せず、裁量政策の有効性が議論になっている。需要面を刺激しようとする政策が、短期的効果だけでなく持続的回復に結びつくためには、需要追加が企業や家計の将来予想を改善し、投資行動を誘発する必要がある。
 マクロの財政政策の効果がバブル崩壊後顕在化しなかった理由として、第一に、潜在生産能力の伸びの低下、資産価格の下落や企業・金融機関のバランスシート問題などの影響によって民間需要が抑えられ、財政刺激策の波及効果が中断して政策効果が相殺された可能性がある。
 第二に、限界消費性向の低下や限界輸入性向の上昇で、財政乗数が低下した可能性は否定できない。
 第三に、財政赤字が無視しえない大きさになってきたことで、人々の財政赤字についての意識が深まり、財政赤字に対して家計の行動が慎重になってきた可能性がある。
 金融緩和政策についても、企業の資本コストの軽減や、企業・金融機関の財務改善を通じて景気へのプラス効果を持ったはずであるが、資産価格下落の影響が残り、そして期待成長率の低い中では、効果は十分発揮されていない可能性がある。
 銀行部門全体の不良債権額に関しては、金融機関が不良債権等に関する情報開示を正しく行っていないのではないかといった疑念もみられることが、金融システムの安定性に対する不透明感が払拭されない一つの背景となっている。
 各金融機関のこれまでの不良債権の償却は、間接償却といった、いわば「帳簿上の処理」が中心であった。不良債権問題の抜本的解決のためには、債権債務関係を整理し、債権回収を進めることが重要であり、このためには、担保不動産の売買や有効利用が促進される必要があり、不動産市場の改善・活性化が重要である。
 景気回復を妨げた要因の一つに、金融機関の貸出態度の慎重化があった。株価の下落が評価損計上による収益減や、含み益減少を通じ、自己資本比率を押し下げる要因となり、早期是正措置の導入を控えた銀行は、貸出に極めて慎重になった。また、地価の下落が不動産担保金融を制約したことも響いている。
 金融システム安定化のための各種政策もあって、さしあたり九八年三月期は乗り切ったが、財務内容を改善し、収益性を高めようとする金融機関の貸出態度の厳しさは続いている。
 九八年度には、景気の著しい停滞から脱し、アジア経済の回復にも貢献するため、過去最大規模の「総合経済対策」が取りまとめられた。この対策は、すでに決定され実施に移されている、規制緩和等の経済構造改革、特別減税や、法人税・有価証券取引税・土地関係税制の減税、金融システム改革、金融システム安定化策等とあいまって効果を発揮すると考える。
 このように、現在とられている政策は、一方で供給サイドから経済体質を強化し、民間の自由な活動の機会を広げるとともに、他方で需要面から緊急措置をとるのであって、単に需要面の刺激策と考えるべきではない。

<裁量的財政政策の有効性(第1節)>
 九二年度から九五年度にかけて、事業規模総額六十兆円を超える財政面からの景気対策がとられた。これらは景気を下支えする効果はあったが、結局、自律的な景気回復は定着しなかった。
 これは第一に、バブル後遺症で期待成長率が下がっている中で、設備投資への波及が弱まる等、民間部門での回復の好循環メカニズムが弱まったことによる。
 第二に、家計の限界消費性向の低下や、内需の輸入への漏れの増加で、乗数効果が低下している可能性も否定できないことである。
 第三に、財政赤字に対する認識が高まって、赤字拡大に対して家計の行動が慎重になってきた可能性である。
 このほか、景気が悪化してから裁量的財政政策をとるまでの時間の遅れが指摘されるが、この点は九〇年代に特に長びいてはいない。
 現下の経済状況に対応するため、財政措置を含む経済対策が必要とされたが、財政構造改革法に従って財政赤字を着実に削減していく必要がある(第13図第1表参照)。

<金融政策の有効性(第2節)>
 現在、金利は歴史的低水準にある。低金利による企業のキャッシュフローの増加は、長期債務の調整圧力を軽減し、設備投資を増加させた一面もあった。しかし、金融機関のバランスシート調整が本格的に進展したとは言い難い。
 金融緩和の効果は、金利低下を通じる直接効果とともに、地価、株価等の資産価格へのプラスの影響を通じた効果があるが、九〇年代は、この波及経路の一部が妨げられていた。
 マネーサプライのGDPに対する先行関係は、八〇年代には弱まっていたが、九〇年代に入って3四半期程度の先行関係が復活しつつある。長期的にも、振れを伴いながらも安定的な均衡関係(共和分関係)にある(第14図参照)。

<金融システムの安定化とバランスシートの改善(第3節)>
 銀行部門全体の不良債権額は、金額が大きいことと、実態がつかめないことが、金融システムの安定性に対する不確実性を高めている。金融機関の資産内容等の企業実態と情報開示にかい離がある可能性があると、銀行部門全体の資金調達コストを押し上げてしまう。
 各金融機関のこれまでの不良債権の償却は、間接償却が中心であり、かつ、担保保全分の回収に至っていないかなりの額の不良債権がバランスシート上に残存している。現実にキャッシュフローを回復し、資産を再稼働させる段階に進むためには、担保不動産の売買や有効利用が促進される必要があり、不動産市場の改善・活性化が重要である(第2表参照)。

<公的金融を巡る諸問題(第4節)>
 九一年以降の今回の金融緩和期には、民間金融機関の貸出の伸び率が低下を続ける一方、政府系金融機関の伸び率が高まっていた年もあった。特に九七年度には、民間金融機関のいわゆる「貸し渋り」への対応として、公的金融機関による新たな融資制度の創設等の措置がとられた。
 資金調達の面では、財政投融資の出口の所要資金量と入口の資金量が切り離されること等の問題点も指摘されていることから、財投債や財投機関債によって必要な額を能動的に調達することが検討されている。
 財投機関債の場合、それぞれの機関がその財務について市場の評価を受けることにより、経営の効率化が促されることが期待されるが、これに関して、「暗黙の政府保証」の有無が重要になり、実施にあたっては、財投機関債発行法人等についての破綻及びその処理の仕組みの法的整備、補給金の取り扱い、ディスクロージャーの取り扱いといった点に関し、市場の評価が適切に行われるための条件整備を進めておく必要がある(第15図参照)。

<不動産の流動化(第5節)>
 不動産市場の現状をみると、不動産の有効な利用が十分行われず、国民経済的に損失になっているとともに、景気回復にも足かせになっている。また、土地流動化が進まないことによる金融機関のバランスシート改善への制約、それによる金融システムへの影響が現われている。
 九七年秋から九八年の「総合経済対策」にかけて、一連の土地流動化のための土地利用規制緩和、不動産の証券化促進のための措置、税制面の措置等が決定されている。これらの措置が、不動産市場を活性化することが期待される(第16図参照)。

<社会資本形成の効率性(第6節)>
 中期的な財政構造改革の中で必要な社会資本整備を進めるためには、社会資本形成の効率性を高めていく必要がある。
 第一に、社会資本プロジェクトに費用対効果分析を活用した事業評価を行うべきである。その際には、客観性・透明性の確保にも配慮する必要がある。
 第二に、公共事業のコストや効率性の問題が指摘されており、財政構造改革の中で、事業の効率化により、同じ金額で実質的な事業量を高めるべきである。
 第三に、公共事業の入札・契約制度の改善等、公共事業の市場の改革を進めるべきである。
 第四に、公共投資配分の硬直性がつとに指摘されているが、二十一世紀を見据えて豊かで活力のある経済社会の構築に向けて真に必要となる分野への重点的な配分が重要である。
 第五に、民間の高い技術力、経営力と資金力の活用による社会資本整備を追求すべきである(第3表参照)。

おわりに

 今回の景気後退を含め、バブル崩壊による不況以降、日本経済は低成長を続け、何回かの短期的調整を余儀なくされた。累次の景気対策がとられたが、結果的に低成長からは脱却できず、現在、景気は停滞状態を示している。
 こうした低成長と最近の景気停滞から脱却するには、将来への不確実性を克服し、揺らいでいる家計や企業の先行きへの信頼感を立て直すことが必要条件である。
 また、現代は企業や資本が自由に国を選ぶ時代である。個人にとってと同様、資本にとっても居心地のよい経済をつくっていかないと、その経済は発展のための原動力を失って停滞し、「空洞化」と呼ばれるような状況にも陥りかねない。企業にとっても、個人にとっても、資本にとっても魅力的な経済をつくっていくことが、経済の持続的な発展をも可能にするのである。
 こうした観点から、次のような分野での積極的な対応が不可欠である。
 第一は、当面の景気の先行きへの不透明性の克服である。過去最大規模の内需拡大策が、経済の先行き不透明感を払拭し、景気を回復に転じさせると期待している。生産活動が上向き、雇用情勢も回復に向かえば、家計や企業も回復を実感することができよう。
 第二は、長期的な成長力を高めるための構造改革である。企業のみる予想成長率は低下を続けているが、期待成長率の低下が積極的投資を手控えさせれば、現実の成長可能性をさらに下げてしまう。経済の供給サイドを強化し、長期的な成長可能性を高めるための構造改革が行われなければならない。情報通信分野をはじめとする広範な規制撤廃・緩和、公正・透明で国民や企業の意欲が引き出せるような所得課税・法人課税の検討、科学技術の振興、ベンチャー育成や中小企業対策等である。今回の需要拡大策は、こうした構造改革と同時並行的に実施されているが、これによって民間の積極的活動が出て初めて、景気の上向きを民間需要中心の持続的な回復プロセスにつなげることができる。
 第三は、バブル後遺症による不確実性の克服のための不良債権問題解決と金融システム改革である。主として建設業や不動産業をはじめとする企業や金融機関は、毀損した財務の建て直しのため、本来、生産的投資に回るべき営業利益をつぎ込まざるをえず、金融仲介チャネルはリスクマネーの供給に躊躇し、不動産市場は停滞して、不動産の有効利用が阻害されている。特に金融機関には、財務改善と収益性向上の要請から、貸出態度の慎重化がみられる。今後も不良債権問題・不良資産問題そのものの解決と金融システムの大改革に向けて根本治療がなされなければならない。政府は、担保不動産の流動化と土地の有効利用のための政策をとっているが、金融機関自らもリストラと財務改善を一日も早く行う必要がある。
 第四は、今後の産業・就業構造変化への不確実性の克服と日本的経済システムの自己改革である。日本の長期安定的な雇用関係や取引関係は、モノ作りの分野では、企業内訓練や部品供給企業への技術移転等で大きな成功を収めたが、情報、ソフトウェア、ネットワーク等の分野では、自由な発想と高度の専門性が要求され、競争力の根源となるのは、最適な資源を組み合わせていく柔軟性である。
 また、企業経営自身も、ROA(総資産利益率)、ROE(株主資本利益率)を高めるような、効率的かつ透明性の高い経営システムをつくり上げていかなければならない。これらは民間部門の問題であるが、政府は規制緩和等の構造改革、ビジネス創出の場の確保、労働市場の需給調整機能等で変革をサポートしなければならない。
 第五は、我が国金融システムの改革である。従来、我が国の金融システムは、リスク回避型の間接金融中心のシステムであった。本源的な資金供給者である家計部門は、リスク回避的に資産選択を行い、資金調達者である企業もメインバンク中心に間接金融機関に依存してきた。また、金融仲介機関は不動産担保融資を重視しており、結果的に企業や事業の将来性等を評価する能力の向上にとって、マイナス要因となっていた可能性がある。今後、我が国の金融システムが成長性の高い分野に必要な資金を供給していくためには、直接金融と間接金融の有機的な組み合わせによって、多様な資金が多様なチャネルを通じて円滑に供給されるシステムが不可欠になる。
 このためにも金融システムの改革(日本版ビッグバン)を成功させなければならない。すなわち、投資家が適切なリスクとリターンの組み合わせを選べるよう、また企業が各種の資金供給チャネルを選択できるよう、効率的かつ公正な金融・資本市場をつくっていくこと、そして情報が十分開示された透明なシステムとすることが、今後の日本経済の発展にとってカギとなる。
 第六は、長期的な経済社会の変化に対する不確実性の克服のための制度改革である。特に、高齢社会での社会保障制度の安定性や、将来の財政収支を確保するための将来展望を明らかにしなければならない。年金・医療等については、効率化、負担適正化等の改革と、その結果としての将来の給付・負担のシナリオが開示されなければならない。昨年十一月に成立した「財政構造改革法」により、明確な財政赤字削減目標を設定しておくことが、将来の不確実性の払拭に不可欠であり、財政構造改革の重要性は変わらない。
 戦後の日本経済発展の主役は、リスクを恐れず事業機会を開拓してきた企業家、経営者と労働者であった。しかし今、日本経済全体としてチャンスに挑戦しようとするより、危険回避と現状維持への志向が強いようにみえる。企業システムや制度・規制等が、失敗したときの罰則のわりには成功への報酬を十分提供していないことが、その背景にある可能性があり、日本的システムの「制度疲労」と言える。
 しかし、景気の停滞した九七年度にも過去最高益を記録した企業が多くあったように、さまざまな自己変革とリスクテイクによって、高い業績をあげている企業や個人は少なくなく、日本経済を新たな発展に導く原動力は失われていない。政府も規制緩和、税制改革等によって、リスクをとる経済活動の成果が十分報われるような制度改革を行わなければならない。
 以上述べたさまざまな不確実性は、従来は大いに成功し、当然の前提と考えてきた経済や産業を取り巻く枠組みが、大幅に、時には突然に変質し、新たな枠組みが見えてこないことにある。過去にモノ作り部門で成功した日本的企業・雇用システムが、今後の成長分野で機能しにくくなり、世界の成長センターであり続けるはずだったアジア太平洋経済が突然に調整過程に入り、安定的で国際競争力も群を抜いていたはずの金融システムが変身を余儀なくされている。
 しかし、従来のやり方が立ち行かなくなったと広く認識されて初めてシステムの変革が進むという面がある。米英では七〇年代にスタグフレーションが進行する中、政府、国民が一体となって、改革を進めたことが繁栄をもたらした。日本でも第一次石油危機のとき、それまでの高度成長の大前提であった、安くて豊富な資源・エネルギーという条件が崩れて不透明感が広がり、悲観論が横溢したが、実際には企業部門の血の出るような産業調整と省エネ投資によって、マクロの安定成長と省資源・省エネ・環境保全型の産業構造をつくりあげることができた。
 九〇年代の停滞も、後から振り返ってみれば、二十一世紀の創造的発展に向けての自己変革の時期であったということになるよう、政府の構造改革推進と民間部門の積極的行動が期待される。


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統計からみた


我 が 国 の 高 齢 者


―敬老の日にちなんで―


総 務 庁


 総務庁統計局では、敬老の日にちなみ、統計からみた我が国の高齢者の姿について取りまとめた。

T 高齢者人口の現状と将来

<六十五歳以上人口は二千四十九万人、総人口の一六・二%>
 平成十年九月十五日現在における我が国の六十五歳以上人口(推計)は二千四十九万人で、総人口の一六・二%を占め、人口、割合とも過去最高となった。
 六十五歳以上人口を男女別にみると、男子は八百五十一万人(男子総人口の一三・七%)、女子は一千百九十八万人(女子総人口の一八・六%)で、女子が男子より三百四十七万人多くなっている。
 なお、女子人口は、六十五歳以上では男子の一・四倍、七十五歳以上では一・九倍、八十五歳以上では二・四倍となっており、高齢になるほど女子の割合が高くなっている(第1表第1図参照)。

<二千万人を超えた六十五歳以上人口>
 六十五歳以上人口は、昭和五十四年に一千三十一万人と一千万人を超え、十二年後の平成三年には一千五百五十八万人と一千五百万人を超えた。さらに、わずか七年後の平成十年には二千四十九万人と二千万人を超えている。なお、二千万人を超えたのは平成十年二月である(第2図第2表参照)。
 総人口に占める六十五歳以上人口の割合の推移をみると、第一回国勢調査が行われた大正九年以降、昭和二十五年ごろまでは五%程度で推移していたが、その後は年を追って上昇し、六十年には総人口の一〇%、平成八年には一五%を超えた。この割合は近年では毎年〇・五ポイント程度上昇しており、平成十年には一六・二%となった(第2表第3図参照)。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、六十五歳以上人口は今後も増加を続け、平成十二年(二〇〇〇年)に二千百八十七万人(総人口に占める割合は一七・二%)となり、二十七年(二〇一五年)には三千百八十八万人(同二五・二%)と、総人口の四人に一人は六十五歳以上になると見込まれている。さらに、第一次ベビーブーム期(昭和二十二年〜二十四年)に生まれた世代が七十歳代になる平成三十二年(二〇二〇年)には三千三百三十四万人、三十三年(二〇二一年)には三千三百三十七万人となり、その後、徐々に減少すると見込まれている(第2表第3図参照)。
 生産年齢人口に対する高齢者の比率(老年人口指数(注))をみると、昭和二十五年の八・三(十五〜六十四歳人口十二人に対し六十五歳以上人口一人)から、四十五年は一〇・三、平成二年は一七・三、七年は二〇・九と次第に上昇し、平成十年は前年を一・三ポイント上回って二三・六(同四・二人に対し一人)となっている(第2表参照)。


<欧米諸国に比較して急速な我が国の人口の高齢化>
 諸外国の総人口に占める六十五歳以上人口の割合をみると、調査年次に相違はあるものの、スウェーデンが一七・四%、イタリアが一七・一%、イギリスが一五・七%、ドイツが一五・七%、フランスが一五・四%などとなっており、我が国の六十五歳以上人口の割合(一六・二%)は、スウェーデン、イタリアに次いで高い水準となっている(第3表参照)。
 六十五歳以上人口の割合が七%(注)から倍の一四%に達した所要年数(倍化年数)をみると、スウェーデンでは八十五年、イギリスでは四十六年、フランスでは百十六年を要しているのに対し、我が国の場合、昭和四十五年(一九七〇年)の七・一%から平成六年(一九九四年)には一四・一%となり、所要年数はわずか二十四年となっている。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の六十五歳以上人口の割合は、今後も上昇を続け、国際的にみても極めて急速な高齢化が予測されている(第4図参照)。
(注) 国連は、六十五歳以上人口(老年人口)の割合が七%を超える国を高齢化人口国とする基準を示している。

U 高齢者の暮らし

<時間にゆとりがある高齢者の生活>
 平成八年社会生活基本調査により、高齢者の一日の生活時間をみると、退職や子供の独立などにより、仕事時間が短く、余暇活動時間が長くなっている。
 余暇活動時間(三次活動時間)をみると、男子は六十歳代後半で八時間十二分、七十歳以上で九時間十七分と、一日の三分の一を超えており、仕事に多くの時間を費やす三十歳代から五十歳代に比べ二時間三十分から四時間程度長くなっている。
 一方、女子は六十歳代後半で六時間五十分、七十歳以上で八時間八分となっており、仕事や家事関連の負担の大きい三十歳代から五十歳代に比べ一時間二十分から三時間程度長くなっている。
 また、男女とも余暇活動時間の約三分の二がテレビ・ラジオなどの在宅型余暇活動時間に充てられているが、男子は趣味・娯楽、スポーツなどの積極的余暇活動時間も、三十歳代から五十歳代に比べ三十分程度長くなっている。
 なお、睡眠時間は、男女とも三十歳代から五十歳代に比べ三十分から一時間三十分程度長くなっている。
 このように高齢者は時間にゆとりのある生活を送っているといえる(第4表参照)。

<「園芸・庭いじり」や「運動としての散歩」を楽しむ高齢者>
 高齢者の余暇活動の状況について、趣味・娯楽の行動者率(一年間に行動した人の割合)をみると、男子は六十歳代後半で八割強、七十歳以上で七割強、女子は六十歳代後半で約八割、七十歳以上で六割強の人が何らかの趣味・娯楽を楽しんでいる。
 また、スポーツの行動者率をみると、男子は六十歳代後半で六割強、七十歳以上で五割強、女子は六十歳代後半で五割強、七十歳以上で約四割の人が何らかのスポーツを楽しんでいる(第5図参照)。
 六十五歳以上の高齢者について、趣味・娯楽の種類別に昭和六十一年と平成八年の行動者率の順位を比べると、男子では一位の「園芸・庭いじり」、二位の「趣味としての読書」に変化はないが、三位は「日曜大工」から「ドライブ」となった。
 また、女子では一位の「園芸・庭いじり」に変化はないが、「趣味としての読書」が三位から二位へ、「演芸・演劇・舞踊鑑賞」が二位から三位となった。なお、最近のガーデニングブームにより、女子で「園芸・庭いじり」を楽しむ割合が高まっている。
 さらに、スポーツの種類別にみると、男女ともほぼ同じ傾向にあるが、ゲートボールを楽しむ割合が低下している(第5表参照)。

V 高齢者の就業状況

<高齢者は四人に一人が労働力人口>
 平成九年の六十五歳以上の高齢者の労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は四百七十五万人、労働力人口比率(注)は二四・二%で、四人に一人が労働力人口となっている。男女別にみると、男子は労働力人口が二百九十八万人、労働力人口比率が三六・七%で、女子はそれぞれ百七十七万人、一五・四%となっている。
 なお、欧米諸国の労働力人口比率をみると、アメリカ(一二・二%)以外はいずれも一〇%を下回っており、我が国は欧米諸国に比べ、男女とも高い水準にあるといえる(第6表参照)。


<高齢就業者の約三割が農林業就業者>
 六十五歳以上の高齢就業者数(四百六十九万人)を産業別にみると、「農林業」が百三十六万人(高齢就業者の二九・〇%)と約三割を占めて最も多く、次いで「サービス業」が百二万人(同二一・七%)、「卸売・小売業、飲食店」が九十三万人(同一九・八%)、「製造業」が六十万人(同一二・八%)などとなっている(第7表参照)。

<高齢就業者では「運輸・通信従事者」、「保安職業従事者」が著しく増加>
 平成七年における全国の六十五歳以上就業者(四百六十五万人)を職業大分類別にみると、「農林漁業作業者」が百四十九万人(六十五歳以上就業者全体の三二・一%)と最も多く、以下、「技能工、採掘・製造・建設作業者及び労務作業者」が九十九万人(同二一・四%)、「販売従事者」が六十五万人(同一四・一%)などとなっている。
 これを平成二年と比べると、「運輸・通信従事者」が九七・一%増と最も増加率が高くなっており、以下、「保安職業従事者」が六五・四%増、「事務従事者」が四五・七%増などとなっている(第8表参照)。

<高齢就業者のほとんどがふだん住んでいる市区町村で従業>
 平成七年における全国の六十五歳以上就業者を従業地別にみると、自宅で従業している人を含み、ふだん住んでいる市区町村(以下、自市区町村という。)で従業している人は、六十五歳以上就業者全体の八五・〇%を占めている。十五歳以上就業者全体と比べると、自宅又は自市区町村内で従業している人の割合が極めて高く、六十五歳以上就業者は、比較的近いところで従業していることがうかがえる(第9表参照)。

W 高齢者世帯の消費と貯蓄

<高齢無職世帯の収入の八五%は社会保障給付>
 二人以上の世帯について、世帯主が六十五歳以上で無職の世帯(平均世帯人員二・三〇人、世帯主の平均年齢七二・〇歳)の平成九年の実収入をみると、一世帯当たり一か月平均二十五万二千百八十円となっている。
 内訳をみると、公的年金などの社会保障給付(二十一万四千四百六円)が実収入の八五・〇%を占めている。
 消費支出は、二十四万二千八百二十五円で、可処分所得(二十三万七百四十七円)を一万二千七十八円上回っており、不足分は貯蓄の取り崩しなどで賄っている(第6図参照)。

<高齢勤労者世帯の主な収入は、世帯主の勤め先収入と社会保障給付>
 世帯主が六十五歳以上の勤労者世帯(世帯主が六十五歳以上の世帯全体の一二・五%の世帯。平均世帯人員二・四六人、世帯主の平均年齢六八・一歳)の平成九年の実収入をみると、一世帯当たり一か月平均四十六万五千九百七十八円となっている。内訳をみると、世帯主の勤め先収入(二十四万八千三十四円)が実収入の五三・二%を、社会保障給付(十六万六千四十円)が三五・六%を占めている。
 可処分所得は四十一万六千百四十八円で、そのうち消費支出は三十一万六千二百四十二円、貯蓄などの黒字は九万九千九百六円となっている(第7図参照)。

<高齢者世帯の貯蓄現在高は有業者世帯で約二千七百万円、無職世帯で約二千二百万円>
 二人以上の世帯について、世帯主が六十五歳以上の世帯の一世帯当たり貯蓄現在高をみると、平成九年十二月三十一日現在で有業者世帯(全世帯から世帯主が無職の世帯を除いたもの)が二千六百八十六万円、無職世帯が二千百六十三万円となっており、これを世帯主が六十五歳未満の世帯の貯蓄現在高一千四百四十二万円と比べると、有業者世帯で約一・九倍、無職世帯で約一・五倍となっている。
 また、内訳を比べると、定期性預貯金が有業者世帯で約二・〇倍、無職世帯で約一・八倍、有価証券が有業者世帯の約二・九倍、無職世帯で約二・二倍となっている(第8図参照)。

<高齢有業者世帯の約三割、高齢無職世帯の四分の一が貯蓄現在高三千万円以上>
 世帯主が六十五歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布をみると、六百万円未満の世帯が有業者世帯で一八・三%、無職世帯で二一・九%を占めている一方、三千万円以上の高額の世帯が有業者世帯で二八・九%、無職世帯で二四・〇%を占めている。
 また、世帯主が六十五歳以上の世帯の貯蓄現在高階級の世帯分布を六十五歳未満の世帯と比べると、有業者世帯、無職世帯とも高額の階級の割合が高くなっている(第9図参照)。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(八月中旬速報値)・全国(七月)―


総 務 庁


◇八月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・四となり、前月と同水準。前年同月比は五月〇・八%の上昇、六月〇・四%の上昇、七月〇・〇%と推移した後、八月は〇・〇%となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・六となり、前月と同水準。前年同月比は五月〇・三%の上昇、六月〇・三%の上昇、七月〇・一%の上昇と推移した後、八月は〇・一%の上昇となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・八となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  生鮮魚介は五・三%の上昇。
   <値上がり> さんま、さけなど
   <値下がり> かつお、えびなど
  生鮮野菜は五・五%の下落。
   <値上がり> ほうれんそう、さやえんどうなど
   <値下がり> なす、トマトなど
  生鮮果物は一・一%の下落。
   <値上がり> バナナ、レモンなど
   <値下がり> もも、ぶどう(巨峰)など
  外食は〇・八%の上昇。
   <値上がり> ハンバーガー
(2) 被服及び履物は一〇一・六となり、前月に比べ一・六%の下落。
  衣料は二・七%の下落。
   <値下がり> スーツ(夏物)など
(3) 交通・通信は一〇〇・二となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  交通は〇・五%の上昇。
   <値上がり> 航空運賃など
(4) 教養娯楽は一〇〇・五となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  教養娯楽サービスは〇・四%の上昇。
   <値上がり> 宿泊料

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二二・九%上昇)、衣料(四・九%上昇)、授業料等(二・二%上昇)、上下水道料(四・一%上昇)
○下落した主な項目
 生鮮野菜(七・一%下落)、電気代(四・八%下落)、教養娯楽サービス(一・四%下落)、穀類(三・七%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・六となり、前月と変わらなかった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・八となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。

◇七月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・九となり、前月比は〇・六%の下落。前年同月比は四月〇・四%の上昇、五月〇・五%の上昇、六月〇・一%の上昇と推移した後、七月は〇・一%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月比は〇・三%の下落。前年同月比は四月〇・二%の上昇、五月〇・〇%、六月〇・〇%と推移した後、七月は〇・一%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇一・五となり、前月に比べ一・三%の下落。
  生鮮魚介は一・六%の下落。
   <値上がり> かれい、えびなど
   <値下がり> いか、かつおなど
  生鮮野菜は九・七%の下落。
   <値上がり> さやえんどう、ほうれんそうなど
   <値下がり> なす、トマトなど
  生鮮果物は一〇・五%の下落。
   <値上がり> レモン、グレープフルーツ
   <値下がり> すいか、メロン(アンデスメロン)など
  外食は〇・五%の下落。
   <値下がり> ハンバーガーなど
(2) 家具・家事用品は九五・五となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・六%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(3) 被服及び履物は一〇三・二となり、前月に比べ三・六%の下落。
  衣料は四・一%の下落。
   <値下がり> スーツ(夏物)など
(4) 教養娯楽は一〇〇・〇となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  教養娯楽サービスは〇・四%の下落。
   <値下がり> ゴルフプレー料金など
(5) 諸雑費は一〇二・五となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  身の回り用品は〇・七%の下落。
   <値下がり> ハンドバッグなど

三 前年同月との比較

○上昇した主な項目
 保健医療サービス(二三・二%上昇)、家賃(〇・五%上昇)、授業料等(二・一%上昇)
○下落した主な項目
 自動車等関係費(三・四%下落)、電気代(五・一%下落)、穀類(三・二%下落)、家庭用耐久財(五・一%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。

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税金365日


租税史料館オープン


(租税史料の収集にご協力を)


国 税 庁


 税務大学校和光校舎内にある租税史料館では、税に関する貴重な史料を収集、保存するとともに、展示等を通じて広く一般の方々に公開しています。また、専門のスタッフが、集められた史料の歴史的考察や租税制度の研究も行っています。
 租税史料館は、昭和四十三年に税務大学校若松町校舎に租税資料室として設置され、本年六月、税務大学校校舎の埼玉県和光市への移転を機に、税に関する歴史的史料の唯一の専門館としてオープンしました。租税史料館では、これまで以上に史料内容の充実を図るとともに、貴重な史料を広く一般の方々へ公開していきます。そのほか、小・中・高校生等の社会科見学や租税教室の開催に便利です。ぜひご利用ください。

【租税史料館の目的】

 租税制度や税務執行は、それぞれの国及び国民固有のものであり、その国の財政・経済・政治の歴史そのものと言っても過言ではありません。その意味において租税に関する歴史的史料を現在に生かし、また、後世に引き継いでいくことは大変重要なことです。租税史料館の目的は、全国各地で個別に保管されている貴重な租税史料の散逸を防ぐため、史料を収集し、その集中管理を行い、租税制度の研究などに活用していくことにあります。
 租税史料が租税史等の研究に広く利用されることにより、その成果が共通の財産として蓄積されていくことにもなります。

【租税史料館の活動状況】

 @ 平成十年三月末現在の収蔵点数は約十一万点。その収蔵点数と充実した内容において税に関する史料館としては他に類を見ないものとなっています。
 A 専門の研究スタッフが鋭意、調査・分類・保管作業を行っています。
 B 提供いただいた史料を順次分類整理のうえ、「租税資料目録」として刊行し、全国の主要大学や公立図書館・資料館等に配布し、研究者や文筆家の考証資料等に有効に活用されています。
 C 学術研究上、特に意義があると認められる史料は、解読・解説を加えて「租税資料叢書」として逐次刊行しています。
 D 展示室を設けて収集した貴重な史料の一部を展示し、一般に公開しています。また、中学生・高校生等の租税教室等に大いに利用されています。

【租税史料館のご案内】

 二階フロアーの展示室では、壁面の展示ケースに「国税の歴史」を常設展示しています。また、展示室中央では、展示パネルによる特別展示を行います。そのほか、「みみできく税のコーナー」を設けており、戦中・戦後に制作されたSP盤レコード等の音声史料を聴くことができます。
 一階フロアーの説明室では、ビデオプロジェクターを使い史料等の解説を行っていますので、小・中・高校生等の租税教室にもご利用できます。また、一般の方でもタッチパネルで簡単に史料の検索ができます。
▽開館時間:九時三十分〜十六時三十分
▽休館日:土曜日、日曜日、国民の休日、年末年始、館内整理日、特別整理期間(館内整理日及び特別整理期間については、租税史料館までお問い合わせください。)
▽主な交通機関
 ○東武東上線・和光市駅から(約十分)
  ・東武バス:司法研修所循環⇒税務大学校下車
  ・西武バス:大泉学園行き⇒税務大学校下車
 ○西武池袋線・大泉学園駅から(約十五分)
  ・西武バス:和光市駅南口行き⇒税務大学校下車

【租税史料の収集にご協力を】

 租税史料館では、展示室等の拡充に伴い、史料内容の一層の充実を進めています。
 租税史料とは、税務行政の公文書だけに限りません。図書、写真、器具など、人々の暮らしと税との関係が感じられるあらゆるものが大切な史料です。あなたのお近くに眠っていませんか。租税に関する歴史的な史料の提供をお待ちしています。
 また、史料の現物に限らず、「私の町の資料館にまとまった租税の史料がある」、「税金の史料らしいものを保管している」といった情報も貴重な蓄積史料となりますので、ご連絡をお願いします。
<租税史料の収集例>
(1) 行政機関からの提供
 @ 税務官署の建て直し時期に発見された行政文書
 A 定期簿書整理の際の廃棄等予定文書
(2) 民間からの提供
 @ 江戸時代に庄屋だった入間家から寄贈を受けたもの(入間家庄屋文書)
 A 私立博物館「地券の館」を経営していた小山氏から、「大事に保管してくれるところへ」ということで寄贈を受けたもの
 B 元東大阪税務署長の長田氏のコレクションを、同氏の遺族等の意向により寄贈を受けたもの
 C 山形市の造酒屋から、酒樽の目張り用に買い集めた古文書の寄贈を受けたもの
<問い合わせ先>
 租税史料館の見学、お問い合わせは、
 ・税務大学校租税史料館
  〒351-0195 埼玉県和光市南二―三―七
  рO48―460―5300
 又は、最寄りの税務署(総務課)までどうぞ。

 家庭裁判所の家事事件手続について


 全国に五十ある家庭裁判所では、離婚や生活費などの夫婦に関する問題、親権や養育費などの子どもに関する問題をはじめ、遺産分割や遺言などの相続、氏名の変更など戸籍に関する問題などを扱っています(これらを「家事事件」といいます)。
 このように、市民生活に関する身近な問題を扱っている家庭裁判所では、特に法律の知識がない一般の人でも気軽に利用できるよう、さまざまな工夫がされています。

◇家事事件の手続

 家事事件には、事件の種類に応じて、「調停」と「審判」の二つの手続があります。調停は、家庭裁判所が当事者間の話し合いの仲立ちをすることにより、紛争の解決を目指します。審判は、家庭裁判所が当事者の利益や公共の福祉などを総合的に勘案して判断を示すことにより、問題の解決を目指します。
 調停や審判の申し立てをするには、解決してもらいたい事柄や申し立てに至るまでの事情などを書いた申立書と戸籍謄本などの必要書類を家庭裁判所の受付に提出します。受付には定型の申立書用紙と申立書の記入例が備え付けられていて、簡単に作成できるようになっています。

◇家事相談

 家庭に関する問題について、どのように申し立てをすればよいのか分からない人もいるでしょう。家庭裁判所では、そのような人のために「家事相談」を行っています。家庭裁判所で扱うことができるか、扱うことができる場合どこの裁判所にどのような申し立てをすればよいか、どのような書類を準備すればよいかなどについて相談することができます。
 相談時間は一回当たり二十分程度です。費用は無料です(家事相談の実施曜日・日時は、各家庭裁判所で異なります。最寄りの家庭裁判所にお問い合わせください)。

◇家事手続案内サービス

 家事事件の手続について知りたいけれど、仕事などで平日に家庭裁判所まで行くことができないという人には、「家事手続案内サービス」が便利です。
 案内サービスは、家事事件についての手続の概要や必要書類などの情報を音声とファクスで提供するもので、休日や祝日も含め、二十四時間利用できます。ファクスを利用すれば、主な家事事件の申立書の用紙や記載例も入手できます。必要書類などと併せて郵送すれば、家庭裁判所に足を運ぶことなく、申し立ての手続ができます。
 案内サービスが設けられているのは、東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所の二か所ですが、東京、大阪以外に住んでいる人でも利用できます。ただし、他の家庭裁判所と申し立ての手続などが多少異なる場合がありますので、ご注意ください。
<主なサービス項目>
 家庭裁判所の所在地などの一般的な説明/審判や調停の各事件ごとの申し立てに必要な書類などの手続案内/ファクスでの申立用紙の提供
<利用方法>
 ・電話又はファクスから左記のいずれかに電話します。
 ・メッセージに従い、知りたい情報の番号をダイヤル又はプッシュします。
 ・知りたい情報が音声又はファクスで提供されます。
○東京家庭裁判所 03―3503―4355
○大阪家庭裁判所 06―945―0024
 (平成十一年一月一日からは、06―6945―0024)
 なお、家庭裁判所のさまざまな手続については、インターネットでも紹介しています。
○最高裁判所ホームページ・アドレス
http://www.courts.go.jp/
(最高裁判所)

 秋の行政相談週間


 総務庁では、昭和三十年から行政相談を行っています。この制度は、国の行政機関、特殊法人の業務及び地方公共団体が国から委任又は補助を受けて行っている業務について、国民の皆さんの苦情や意見・要望を受け付け、その解決や実現の促進を図るとともに、それらを行政運営の改善に反映させていくことを目的として実施しているものです。
 この制度をより広く活用していただくため、春と秋に行政相談週間が設けられています。今年の秋の行政相談週間は、十月十一日(日)から十七日(土)までです。

◇手紙や電話でも相談を受け付けます

 皆さんから相談をお聞きするのは、地域の行政相談委員(総務庁長官の委嘱を受けた民間の有識者)、管区行政監察局・行政監察事務所の職員などです。
 相談方法は、直接これらの窓口を訪ねていただくほか、手紙や電話、ファクス、インターネットでも受け付けています。管区行政監察局・行政監察事務所などには、行政苦情受付専用電話「行政苦情一一〇番」が設けられています。また、週間中には、デパートなどでの一日合同行政相談所や行政相談委員による巡回行政相談所が設けられますので、お気軽にご利用ください。相談は無料で、内容などの秘密は守られます。(総務庁)


 
    <10月14日号の主な予定>
 
 ▽規制緩和白書のあらまし…………総 務 庁 

 ▽普通世帯の消費動向調査…………経済企画庁 
 



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