官報資料版 平成101125




                 ▽ 我が国の文教施策のあらまし………………………………文 部 省

                 ▽ 税金365日 個人事業者の消費税の各種届出書は……国 税 庁










我が国の文教施策のあらまし


心と体の健康とスポーツ


 平成10年度「我が国の文教施策」(教育白書)は、平成10年10月30日の閣議に報告され、同日公表された。

文 部 省


教育改革の動向

 来るべき二十一世紀において、我が国が活力ある国家として発展し、科学技術創造立国、文化立国を目指していくためには、あらゆる社会システムの基盤となる教育の役割が極めて重要である。
 教育改革は政府の「六大改革」の一つとして位置付けられ、文部省では、特に次のような視点で様々な改革に取り組んでいる。
 @ 知育偏重の風潮や知識詰め込み型の教育を改め、正義感や倫理観などの豊かな人間性をはぐくむ教育を重視するとともに、権利や自由の主張のみでなく、これに伴う義務や責任についても十分に自覚させること
 A 戦後の行き過ぎた平等主義から脱却し、子どもたち一人一人の個性・能力を尊重した教育へと転換を図ること
 B 科学技術創造立国を目指して、基礎研究や先端科学技術の水準を一層向上させること
 こうした基本的な考え方に立ち、文部省では、平成九年一月に教育改革の課題やスケジュールを明らかにした「教育改革プログラム」を策定し、九年八月、十年四月と必要な改訂を行いつつ、このプログラムに基づき、制度改正に向けた取組や関係施策の充実、審議会等における審議の促進などに取り組んでいくこととしている。
 さらに、文部省においては、教育改革を推進するに当たって、省庁再編、規制緩和、地方分権、情報公開、特殊法人の改革などの行政改革や、財政構造改革及び経済構造改革などと連携を図ることに留意しつつ、具体的な施策を展開している。

<第T部> 心と体の健康とスポーツ

はじめに

 我々の生活を取り巻く社会の状況を見ると、心身の健康の保持増進を図り、生涯にわたって活力に満ちた健康的な生活を営んでいく観点から、健康に関する学習やスポーツに求められる役割が大きくなり、その重要性はますます高まってきている。また、健康に関する学習やスポーツの振興について、国や地方公共団体が積極的に取り組むことは当然であるが、本来、個人や家庭がそれぞれ主体的に健康に関する学習やスポーツに取り組むことが重要である。

<第1章> これからの健康とスポーツ

<第1節> 基本的な考え方

1 健康の保持増進とスポーツ
 (1) 健康に関する学習の意義
 心身の健康の保持増進を図るためには、疾病予防やストレス解消を図ることはもちろん、調和のとれた生活習慣、健康の価値の認識及び自分自身を大切にする態度、健康に良くないことを自ら断つことのできる実践的能力などを身につける必要がある。そのためには、健康に関する学習により、日常的に健康に関する正しい知識・理解を持ち、生涯にわたり健康にとって必要なことがらを実践していくという習慣を付けていくことが、何よりも大切である。
 (2) スポーツの意義
 スポーツは、体を動かすという人間の本源的な欲求にこたえるとともに、爽快感、達成感等の精神的充足を与え、健康の保持増進、体力の向上にも寄与するものである。また、スポーツは人間の可能性の極限を追求する面も有しており、トップレベルのスポーツは、人々にスポーツへの関心や意欲を喚起し、広く夢や感動を与えてくれる。
 都市化や生活の利便化等の社会環境の変化、仕事中心から生活重視へという国民の意識や価値観の変化の中で、心身ともに健全な生活を営む上でのスポーツの重要性は、今後ますます高まるものと考えられる(第1図参照)。

2 現代の社会状況と健康に関する学習、スポーツ
 (1) 我々の生活を取り巻く社会状況の変化
 我々は、現在、様々な社会状況の変化に直面している。
 まず少子高齢化の問題があり、社会保障分野における現役世代の負担増や、労働力人口の減少・高齢化による経済成長の制約等のおそれが指摘されている。また、科学技術の高度化、情報化等の進展は、国民に恩恵をもたらす反面、精神的なストレスの増大、日常生活における体を動かす機会の減少など、心身両面にわたる健康上の問題を生み出しつつある。さらに家庭では、食生活などの基本的な生活習慣にも変化が生じつつある。
 その一方、学校週五日制の実施、年間労働時間の短縮等による自由時間の増大、生活重視への意識の変化などにより、新たなライフスタイルの構築も求められている。
 (2) 健康、体力やスポーツに関する国民の意識
 平成九年十月に総理府が実施した「体力・スポーツに関する世論調査」(以下「体力・スポーツに関する世論調査」という。)では、現在の健康状態について「大いに健康」であると答えた人の割合は、昭和六十年調査と比較すると一〇%近く減少している。
 その一方、健康や体力に注意を払っている人の割合は七七・〇%と、この二十年で最も高くなっている。なお過去一年間に運動やスポーツを行った人の方が、行わなかった人に比べて、肉体的疲労、精神的ストレスなど感じた人の割合が少なく、スポーツがこれらに及ぼす効果を考えることができる(第2図参照)。
 (3) 今後の健康に関する学習、スポーツの在り方
 一九八六年、世界保健機構(WHO)のオタワ憲章において、「人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」である「ヘルスプロモーション」という考え方が提言された。健康に関する学習とスポーツは、このヘルスプロモーションの理念を実践する最も基本的なものである。
 また、平成九年九月の保健体育審議会答申で指摘されているように、今後、国、地方公共団体は、@国民が生涯にわたる心身の健康の保持増進に必要な知識、能力、態度及び習慣を身につけることができる適切な教育・学習の機会・場の提供、A国民が日常生活の中にスポーツを豊かに取り入れることができる生涯スポーツ社会の実現に向けた環境の整備、Bスポーツについての関心を喚起し、国民に夢と活力を与える競技スポーツの振興、の三点を柱として施策を展開することが必要である。
 特に、スポーツの振興に関しては、そのための十分な財源の確保とともに、国として基本的な計画を定めていくことが重要な課題となっている。

<第2節> 心身の健康と学習

1 健康に関する学習の現代的課題
 我々を取り巻く社会状況が大きく変化している中で、新たに健康の保持増進の観点から取り組むべき様々な健康課題が指摘されているが、とりわけ、児童生徒については、薬物乱用、性の逸脱行動、生活習慣病の兆候などの健康に関する新たな課題が深刻化している。
 こうした健康に関する現代的課題の多くは、社会の複雑化等に伴うストレスや不安感の高まりなどを要因とした、心の健康問題とも大きく関わっていると考えられる。

2 健康に関する学習への国民のニーズ
 健康に関する学習は、学校における指導をはじめとして、家庭及び地域社会の生活を通じて行われる必要がある。
 学校では、子どもの発達段階に応じて健康に関する教育を実施しており、国民が生涯にわたって健康に関する学習を行っていくための基盤として重要な役割と意義を持っている。また、家庭は子どもの発達にとって基盤となる場であり、子どもに運動や健康に関する基本的な生活習慣を身につけさせる役割を担っている。さらに、地域社会には健康に関して生涯にわたって学習に取り組む場として重要な役割が期待されている。

3 健康に関する学習の振興施策の方向
 国、地方公共団体においては、学校における健康教育の充実を図るとともに、家庭、地域における健康に関する学習の支援に努めていくことが求められる。
 学校においては、健康的な生活行動の実践を促す教育指導面の充実を一層図るとともに、学校内の専門性を有する教職員や学校外の専門家を十分活用していくことも重要である。家庭においては、子どもたちの健康課題について、保護者に配慮を一層促すとともに、子どもの健康に関する学習など、保護者自身の生涯学習への取組を支援することが重要である。地域社会においては、地域住民の主体性や自主性を尊重し、多様なニーズを的確に把握して学習機会を提供することなどが重要である。

<第3節> 生涯にわたるスポーツライフの実現

1 生涯スポーツの意義
 スポーツは多様な意義を有しているが、特に近年、都市化、生活の利便化などの影響を受けて運動不足に陥りやすい生活環境となっていることから、スポーツにより体を動かすことが日常の生活に不可欠である。
 今後生活の質が求められる時代にあって、青少年への教育、生きがいづくり等にも大きな役割を果たすスポーツの意義はますます増していくものであり、我が国も、スポーツを気軽に楽しめるような社会、すなわち生涯スポーツ社会を目指していくことが必要である。

2 生涯スポーツへの国民の期待
 「体力・スポーツに関する世論調査」によると、我が国においては六〇%以上の人が運動不足を感じており、八〇%以上の人が今後行いたい運動があるという結果が出ている。これらの結果からも分かるように、現在、我が国では、スポーツを行いたい人と実際に継続的に行っている人との隔たりが大きく、スポーツを行いたいと思ってはいるが、必ずしも十分にスポーツを行っていない人が多いという状況にある。

3 生涯スポーツ振興施策の方向
 生涯スポーツの振興の方向としては、多くの人人に運動を行う習慣を形成すること、また、多様化しているスポーツのニーズに対応してだれもが気軽にスポーツに親しめるようにすることである。
 運動を行う習慣を形成するためには、青少年期に素晴らしいスポーツ体験を経験することが重要であり、その意味から、学校における体育の授業や運動部活動等のスポーツ経験は大きな役割を果たしている。
 また、だれもがスポーツに親しめるようにするためには、@スポーツ施設の整備、A地域住民がスポーツに参加しやすい組織の育成・定着、B各種スポーツの振興事業の実施、Cスポーツ指導者の養成・活用、といった視点からの施策を推進することにより、人々が継続的にスポーツを行える環境の整備に努める必要がある。
 さらに、ライフスタイルを見直し、スポーツを行う時間的余裕を創出することも、生涯スポーツ社会の実現に当たって不可欠である。

<第4節> トップレベルのスポーツの振興

1 競技スポーツの意義
 競技スポーツは、競技水準の向上を主たる目的として行われるものであり、自己の可能性の追求や極限への挑戦といった最高度の競技性を求めていく視点に立ったスポーツの楽しみ方と言える。選手たちの極限へのひたむきな挑戦、その結果として生まれる記録は、見る人すべてに大きな夢と感動を与えるとともに、国民、特に、次代を担う青少年のスポーツに対する興味や意欲をかき立て、我が国におけるスポーツの普及・振興、青少年の健全育成に大いに寄与している。

2 競技スポーツへの国民の期待
 オリンピックや日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会(二〇〇二年)など、各種の国際競技大会が開催される中にあって、日本選手の国際舞台における活躍に大きな期待が寄せられている。「体力・スポーツに関する世論調査」でも、国際大会での日本選手の活躍に関心があると答えた人の割合は七九・三%に達している(第3図参照)。また、国際大会で日本選手が活躍するために公的援助を行うことについては、必要であると答えた人の割合は七八・八%となっており、国民の多くが競技力向上のための公的支援の必要性を認めている。

3 競技スポーツの振興施策の方向
 競技スポーツの振興に当たっては、まず、競技スポーツの目的である競技力の向上を図っていくことが不可欠である。また、世界共通の文化として諸外国との相互理解や国際親善の推進に寄与する性格を考慮し、国際競技大会の開催をはじめとする各種スポーツ交流を推進していくことが求められる。さらに、人々に夢と感動を与え、スポーツの振興・普及に寄与する「見るスポーツ」としての側面や「支えるスポーツ(スポーツを支える活動)」としてのスポーツボランティア活動などにも着目し、競技スポーツの振興を図っていく必要がある。

<第5節> スポーツ振興投票制度の創設

1 スポーツ関係予算の現状
 我が国のスポーツ関係予算は、現下の厳しい財政状況の中でここ数年百七十〜百八十億円で推移している。
 平成二年十二月に日本体育・学校健康センターに「スポーツ振興基金」が設置され、この基金により、十年度までに、二千二百八十五人及び一千九百四十一団体に対して約八十一億七千万円の助成がなされてきており、我が国のスポーツ振興に大きな役割を果たしている。なお、近年の景気後退により、民間からの寄附金額の伸び悩みや金利低下による助成金額の目減りなどの課題も生じている。

2 スポーツ振興投票
 (1) スポーツ振興投票の目指すもの
 このようなスポーツ予算の現状を踏まえ、「生涯スポーツ社会」を築くとともに、世界で活躍できるトップレベルの選手を育てることを目指し、豊かなスポーツ環境を整備するための新たな財源確保策として、「スポーツ議員連盟」により提案されたのが「スポーツ振興投票制度」、いわゆる「スポーツ振興くじ(サッカーくじ)」である。この制度は、平成十年五月に議員立法として成立した「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」により創設され、十二年度に発売の開始が予定されている。
 (2) スポーツ振興投票の仕組み
 スポーツ振興くじの具体的な投票方法は今後決められるが、「スポーツ議員連盟」の構想では、例えば十三試合で予想した場合の一等の当選確率は約百六十万分の一であるなど、過度に射倖心をあおらない仕組みとされている。
 売上金は、五〇%以下が当せん金として当せん者に払い戻され、一五%以下が経費に充てられ、残りが収益となる。この収益のうち、三分の一は国庫に納付され、残りの三分の二はスポーツ振興のための助成金に充てることとされている(第4図参照)。
 なお、スポーツ振興くじでは、青少年への好ましくない影響を懸念する声にこたえて、十九歳未満の人による購入等の禁止、文部大臣の停止命令などの制度が設けられている。

<第2章> 健康教育の充実のために

<第1節> 教科等における指導

 学校における健康教育は、生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎を培うという観点から、児童生徒の発達段階に応じ、「体育、保健体育」等の各教科はもとより、「道徳」、「特別活動」など教育活動全体を通じて実施されている。
 平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、文部省では、教科「体育、保健体育」の内容の改善を図り、新たに小学校三年生から保健の内容を指導することとし、自らの健康を適切に管理し、心の健康の保持増進、望ましい食習慣の形成、生活習慣病の予防、薬物乱用防止などの課題に適切に対処できるように、学習指導要領の改訂を行うこととしている。

<第2節> 心の健康問題への対応

1 児童生徒の心の健康状態
 いらいらしたり、むしゃくしゃしたりすることが「日常的によくある」と回答した割合は、小学六年生、中学三年生、高校三年生のいずれにおいても約二割となっている。また、学校段階が上がるにつれて、不安を感じることが「日常的によくある」と回答した割合は高くなっている(第5図第6図参照)。

2 児童生徒の保健室利用状況
 平成八年度に「保健室登校」をしている児童生徒がいる学校の割合については、中学校及び高等学校において、平成二年度より、それぞれ一三・九%、一一・三%も増えている(第7図参照)。

3 教科における指導
 平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、文部省では、学習指導要領の改訂を行い、心の健康に関する指導の充実を図ることとしている。

4 健康相談活動(ヘルスカウンセリング)の充実
 薬物乱用、性の逸脱行動、いじめ、不登校などの心の健康問題に関する現代的課題の深刻化を考えると、養護教諭の健康相談活動(ヘルスカウンセリング)はますます重要となってきている。
 このため、養護教諭の現職研修の実施、養成カリキュラムの改善を図るとともに、三年以上の勤務経験を持つ養護教諭が、勤務する学校で「保健」の授業を担当することができるようになった。

5 非常災害時における児童生徒の心の健康管理
 平成七年度及び八年度に被災地における子どもたちの心の健康に関する調査を行い、その調査結果を基礎として、九年度に「非常災害時における子どもの心のケアのために」を作成し、各学校等に配布した。

<第3節> 薬物乱用防止に関する指導の充実

1 児童生徒の覚せい剤等の薬物乱用の状況
 近年、児童生徒の薬物乱用の実態は、極めて憂慮すべき状況にある。平成九年に覚せい剤事犯で検挙された少年は、中学生四十三人、高校生二百十九人となっている。高校生の覚せい剤事犯検挙者数は、七、八年とも対前年比で倍増しており、九年は横ばいであったが、一方で、中学生の覚せい剤事犯検挙者数が九年は対前年比で倍増するなど、薬物乱用の低年齢化が進行している(第8図参照)。

2 政府における薬物乱用対策の取組
 平成九年一月、政府は、最近の薬物乱用事犯の増加を考慮し、薬物乱用対策について、内閣に内閣総理大臣を本部長、文部大臣等を副本部長とする薬物乱用対策推進本部を設置した。同本部は、国内における長期的な総合計画として、平成十年五月、中・高校生を中心に薬物乱用の危険性を啓発し、青少年の薬物乱用傾向を阻止することを目標の一つとする「薬物乱用防止五か年戦略」を策定した。

3 薬物乱用防止五か年戦略に基づく文部省の取組
 (1) 教科等における指導
 平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、学習指導要領の改訂を行い、薬物乱用防止に関する指導の充実を図ることとしている。
 (2) 研修会の充実
 平成九年度から、薬物乱用防止担当教員を対象とした中央研修会及び都道府県研修会を開催するなど、教員の資質の向上を図っている。
 (3) 児童生徒用教材及び教師用指導資料の作成
 文部省では、生徒用教育教材については、平成九年度に、中学生用、高校生用パンフレットを作成・配布するとともに、高校生用ビデオを作成し、全国の高等学校に配布した。
 教師用指導資料については、平成九年度に、中学校、高等学校用に薬物乱用防止に関する指導資料を作成し、配布した。
 (4) 薬物乱用防止教室の開催の促進
 文部省では、警察庁及び厚生省と連携し、警察職員や麻薬取締官OB等の専門家を活用した「薬物乱用防止教室」の開催を促進するため、「薬物乱用防止五か年戦略」を受けて、平成十年度以降は、全中学校・高等学校での毎年開催を推進していくこととしている。
 (5) 都道府県教育委員会等に対する指導
 薬物乱用防止五か年戦略の策定等を受けて、平成十年六月に、「全中学・高校における薬物乱用防止教室の毎年開催」などについて各都道府県教育委員会等に対し通知を出した。
 (6) 薬物乱用防止教育支援体制整備・活用モデル事業
 平成十年度から、都道府県教育委員会(教育センター等)を中心に、警察職員、薬剤師等による委員会を組織し、教材の開発、指導資料の作成、外部指導者の活用方法など、学校での薬物乱用防止教育に対する支援体制の在り方について実践研究を実施している。
 (7) PTA及び青少年関係団体等との連携
 文部省では、PTA及び青少年関係団体等に対して、薬物乱用防止教育の充実・協力などを図るよう要請するとともに、密接に連携・協力していくこととしている。

4 諸外国における薬物乱用防止教育
 (1) アメリカ
 連邦政府は一九九八年の薬物対策総合戦略の目標として五つを公表したが、その第一の目標に青少年に対する薬物乱用防止教育の充実を掲げており、年間の薬物関連予算百五十九億七千七百万ドルの一一・〇%にあたる十七億六千万ドルを薬物乱用防止教育に支出している。
 (2) イギリス
 イギリス政府は一九九五年「Tackling Drugs Together」と題する白書を発表し、薬物乱用防止に関する新しい総合対策を打ち出した。特に、青少年に対しては、教育を通じて薬物乱用防止を図ることと、違法薬物が簡単に入手できるような社会環境を改善することを目標として掲げた。
 (3) フランス
 フランスでは一九八〇年から首相を委員長とし、すべての大臣を委員とする「薬物乱用防止対策委員会」が内閣に設置され、各省の連携により薬物乱用防止施策が立案・実行されている。薬物乱用防止対策は、@違法薬物の取り締まり(薬物供給の低減)、A薬物乱用防止(予防教育による薬物需要の低減)、B薬物依存症の治療、の三つが施策の柱とされており、学校における薬物乱用防止教育は前記Aの中心に位置付けられている。

<第4節> 性教育、エイズ教育の充実

1 性の逸脱行為による補導状況
 警察庁の調べによると、平成九年中に性の逸脱行為で補導された女子の生徒は、中学生一千二百五十七人、高校生二千四十人となっており、女子の生徒・学生全体で三千四百二人となっている。

2 性教育の充実
 性教育の推進のため、@教師用指導資料の作成、A学校保健担当教員や養護教諭対象の研修会における性教育の研修、などの施策を推進している。また、平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、学習指導要領の改訂を行い、性教育の充実を図ることとしている。

3 エイズ教育の充実
 エイズ教育の推進のため、@小・中・高校生用エイズ教育教材の作成、A教職員対象の研修会等の開催、B地域におけるエイズ教育推進のための実践研究、Cエイズ教育に関する情報ネットワークの整備、などの施策を推進している。

<第5節> 「食」に関する指導の充実

1 児童生徒の食生活の現状
 自分の健康のために食事に気を付けていると回答した小学校六年生、中学校三年生及び高校三年生の割合は、四〇〜五〇%である(第9図参照)。

2 「食」に関する指導の充実
 (1) 教科等における指導
 平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、学習指導要領の改訂を行い、「食」に関する指導について、教科「体育、保健体育」はもちろん、教科「家庭、技術・家庭」などの各教科、「特別活動」及び「総合的な学習の時間」を含めた学校教育全体を通じて充実を図ることとしている。
 (2) モデル的な取組の推進
 文部省では、学校内での「食」に関する指導の推進体制づくりや家庭・地域との連携についての実践的研究を行うためのモデル事業を実施している。また、モデル事業により得られた成果をもとに、教員や学校栄養職員等が「食」に関する指導に取り組むための指針となるよう「栄養教育カリキュラム開発のための調査研究」を実施している。
 (3) 「食」に関する指導の充実の徹底
 平成十年六月に、教科等において、学校の自主的判断により、「食」に関する専門家である学校栄養職員の積極的な参画・協力を得て、学校栄養職員と担当教諭がティームを組んで指導を行ったり、特別非常勤講師として学校栄養職員が「食」に関する指導を行うなど創意工夫を加え、効果的な指導を行うよう、都道府県教育委員会等に対して通知した。
 (4) 学校栄養職員の資質の向上
 新規採用学校栄養職員や、経験年数が五年及び十年(又は二十年)の学校栄養職員を対象に研修を実施し、学校栄養職員の資質の向上に努めている。

3 学校給食の充実
 (1) 学校給食の現状
 平成九年五月現在で、全国で約一千百六十四万人の幼児児童生徒が学校給食を受けている。
 (2) 米飯給食
 平成九年度の米飯給食の平均実施回数は、週二・七回に達している。
 (3) 食事内容の充実等
 各学校では、郷土や姉妹都市の料理を給食の献立に活用したり、児童生徒が複数の食品や料理の中から栄養のバランスを考え、自分の身体に応じて適切に食品や料理を選ぶバイキング方式等による選択給食が導入され、食事の内容や方法の多様化が図られている。
 (4) 学校給食における衛生管理体制の充実
 平成九年度の学校給食では、八年度に大きな被害をもたらした腸管出血性大腸菌O157による食中毒は発生しなかったが、サルモネラ等の食中毒により、十都県にわたって約三千八百人の有症者が発生した。
 文部省では、平成十年度には、衛生管理強化の観点から、引き続き学校給食施設のドライシステム化など施設面の改善充実と学校栄養職員に対する研修の充実等を図るとともに、新たに、衛生管理の専門家を学校給食調理場に派遣し、施設設備や調理過程等の問題点の指摘や改善方法の指導を行う事業を実施することとしている。

<第6節> 学校安全の充実

1 児童生徒の災害・事故の状況
 平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災では、児童生徒を含む多くの人々が命を落としている。また、児童生徒を取り巻く交通環境も厳しく、児童生徒の交通事故死者数はここ数年わずかながら減少しているものの、平成九年は、小学生百二人、中学生五十一人、高校生三百九人となっている。

2 防災教育の充実
 文部省では、防災教育・災害時の心の健康に関する研修会を開催するとともに、幼児用、小学生用及び中・高校生用の防災教育教材映画を作成し、各都道府県の視聴覚ライブラリーに配布した。平成九年度には、教師用の防災教育のための参考資料及び高校生用の防災教育教材(パンフレット)を作成・配布した。また、平成十年七月の教育課程審議会答申を受けて、学習指導要領の改訂を行い、防災教育の充実を図ることとしている。

3 交通安全教育の充実
 学校では、教科「保健体育」等で自他の生命尊重を基本とした交通安全教育の充実が図られている。また、文部省では、交通安全教育指導者中央研修会及び都道府県研修会、応急処置研修を実施している。さらに、平成六年度からは、二輪車の実技指導を含めた交通安全の充実を図る観点から、高等学校を指定し、実践的な研究を行っている。

<第3章> 生涯にわたるスポーツライフの実現のために

<第1節> 国民の体力・運動能力とスポーツ活動への関心

1 児童生徒の体力・運動能力とスポーツ活動への関心
 近年の児童生徒については、日常生活における身体活動の機会や場の減少などに伴い、基礎的な体力や運動能力が長期的に低下する傾向にある。また、最近、運動に興味を持ち、活発に運動している人とそうでない人とに二極化しているとの指摘もなされている。児童生徒の運動部・スポーツクラブへの加入状況については、小学生では五六%、中学生では六六%以上、高校生では三八%となっている。高校生の場合は、「加入していたが現在は加入していない」人が三五%となっており、一旦加入した人が受験など何らかの事情でやめていることがわかる。

2 壮年の体力とスポーツへの関心
 壮年期の体力について、過去のデータと比較してみると、年齢段階によって差異はあるが昭和五十九年度ごろまでは緩やかな向上傾向を示していたものの、それ以後は、ほとんどの年齢段階で停滞又はわずかな低下傾向がうかがえる。一方、スポーツの関心を見てみると、七割以上の国民が行ってみたいスポーツがあるにもかかわらず、四割近くの国民は過去一年間、特に何のスポーツも行っていないという現状がある。

<第2節> 生涯にわたるスポーツライフの基礎としての学校体育

1 「体育、保健体育」の改善に向けて
 児童生徒の体力・運動能力の低下傾向や日常における身体活動の機会の減少、あるいは運動に興味を持ち、活発に運動する人とそうでない人とに二極化している現状、さらには生活習慣の乱れ、日常生活におけるストレスが増大している状況などを踏まえ、生涯にわたるスポーツライフの基礎を獲得し、健康な生活習慣を身に付けていくための「体育、保健体育」の重要性は、従前にも増して高まっている。
 (1) 「体育・保健体育」の教育課程の現状
 現行学習指導要領では、教科「体育・保健体育」は、児童生徒が自ら進んで運動に親しむ習慣を身に付け、自発的・自主的に運動を実践できるようになることを目指している。
 (2) 「体育、保健体育」の教育課程の改善
 文部省では、平成十年七月の教育課程審議会答申の趣旨を踏まえ、完全学校週五日制の下で、各学校がゆとりのある教育内容を展開し、一人一人の子どもたちに「生きる力」を育成するため、新しい教育課程について検討を進めている。
 今回の教育課程の改善では、児童生徒の体力・運動能力などの現状から、生涯にわたってスポーツを行っていく資質・能力や、健康な生活習慣を身に付ける取組に重点を置くこととしている。特に、心と体をより一体としてとらえて健全な成長を促すことが重要であるという考え方から、体育と保健をより一層関連させて指導することとしている。
 (ア) 運動に親しむ資質や能力の育成
 多様な運動に触れてその楽しさや喜びを味わったり、自分に合った運動を選択するなど、一人一人の能力・適性を伸ばすことに重点を置くよう指導内容の改善充実を図るとともに、「全員が同じ能力を身に付ける」ことよりも、本人の能力・適性に応じた課題を達成していくことを重視するよう指導を改善することとしている。また、児童生徒が自ら主体的に運動に取り組むことができるようにするため、学校や地域の実態に応じて運動内容を一層弾力的に取り扱うことができるようにする。
 (イ) 体力の向上
 児童生徒の体力が低下している現状や、完全学校週五日制が実施されることを踏まえ、授業においては、基礎的な体力つくりを行う中で、体力の高め方を学び、発達段階ごとに重点を置いた活動をすることができるようにする。
 (ウ) 「体ほぐし」
 児童生徒の体力・運動能力の低下や活発に運動する人とそうでない人との二極化の傾向は、児童生徒の生育環境の変化、特に、遊びなどによる基本的な身体活動の体験の減少や、日常的に精神的なストレスを抱えていることなどに大きな要因があると考えられている。
 このため、新たに、@体への気付き、A体の調整、B仲間との交流、をねらいとする「体ほぐし」(仮称)を、運動に親しむ資質・能力、体力の向上の基盤として実施することとする。「体ほぐし」は、記録や難しい技への挑戦、競争での勝利などを目指すものではなく、運動そのものの心地よさや、心も体も解放されることを体験させようとするものである。

2 他の教科等で行われる体育的活動
 たくましく生きるための健康や体力を育成するためには、教科「体育、保健体育」だけに限らず、特別活動や「総合的な学習の時間」など、学校教育の様々な場面での取組が必要である。

3 運動部活動の充実
 (1) 運動部活動の意義
 運動部活動は、生徒のスポーツ活動と人間形成を支援するものであることはもとより、その適切な運営は、生徒の明るい学校生活を一層保障するとともに、生徒や保護者の学校への信頼感をより高め、さらには学校との一体感の醸成にもつながるものである。
 文部省が平成八年に実施した「中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査」においても、中・高等学校の生徒、保護者、教員の九割以上が「運動部活動は生徒の将来のために役立つ」と答えている(第1表参照)。
 (2) 今後の部活動運営の在り方
 今後の運動部活動の運営に当たっては、児童生徒数の減少に伴う複数校による合同の活動、活動内容の多様化、児童生徒のバランスの取れた生活や成長への適切な配慮、地域スポーツとの連携の促進などについて検討していく必要がある。

4 学校における体育環境の充実
 (1) 教員の資質向上と多様な指導者の活用
 (ア) 指導者としての教員の資質の向上
 文部省では、都道府県教育委員会への助成、実技講習会の開催、教師用指導資料の作成、研究指定校の指定、などを通して「体育、保健体育」に関する教員の資質の向上を図っている。
 (イ) 多様な指導者の活用
 学校体育の充実を図るため、「特別免許状制度」「特別非常勤講師制度」による、外部指導者の「体育、保健体育」の授業やクラブ活動への活用や、運動部活動における外部指導者活用に積極的に取り組む必要がある。
 (2) 学校体育施設の充実
 学校体育施設は、授業はもとより運動部活動の場としても活用されるなど、学校教育を円滑に実施していく上で重要な役割を果たしている。文部省では、学校の設置者である地方公共団体等に対し、運動場、体育館等を整備する事業について補助を行っている。

5 大学における体育・スポーツの充実
 大学における体育・スポーツは、健康や体力の保持増進あるいはスポーツ振興の観点から重要な役割を担っているものであり、各大学がそれぞれの特色を生かしつつ、その充実を図っていく必要がある。

<第3節> 地域スポーツ環境の整備

1 地域スポーツ環境の現状
 (1) 地域におけるスポーツ活動組織の必要性
 スポーツの果たす多様な意義を踏まえると、スポーツ活動組織の中でスポーツを行う方が有効である。特に団体スポーツにおいては、何らかの組織つまりスポーツクラブに入らないと活動を行うことは困難である。日本の場合、スポーツ活動組織の中心となっているのは学校であり、そのため、学校を卒業してしまうと多くの人は組織に所属してスポーツを行っていない。日本のスポーツ実施率が低いのは、このようなことも一因となっている。生涯を通じたスポーツ活動を行うためには、地域におけるスポーツ活動を活発にしていくことが重要であり、そのため地域のスポーツクラブなどスポーツ活動の組織が必要となってくる。
 (2) 地域のスポーツクラブの現況
 我が国にも数多くの地域のスポーツクラブは既に存在している。しかしながら、これらの地域スポーツクラブは、小規模で、ある限られた年齢集団から構成され、単一の種目しか行っていないものがほとんどである。誰もが、どこでも、いつでもスポーツに親しめるような真の生涯スポーツ社会を実現するためには、このような地域のスポーツクラブでは不十分であり、総合型地域スポーツクラブの育成、定着が必要となっている。

2 総合型地域スポーツクラブ
 (1) 総合型地域スポーツクラブの特徴
 総合型地域スポーツクラブとは以下のような特徴を有した地域のスポーツクラブのことである。
 @ 単一のスポーツ種目でなく、複数の種目を行っている。
 A 青少年から高齢者、初心者からトップアスリートまで様々な年齢、技術・技能の保有者が活動している。
 B 活動の拠点となるスポーツ施設、クラブハウスを有している。
 C 質の高い指導者を配置し、個々のスポーツニーズに対応した適切な指導が行われる。
 (2) 総合型地域スポーツクラブの意義
 総合型地域スポーツクラブは、生涯スポーツの拠点であり、以下のような多様な役割を有している。
 @ ライフステージに応じたスポーツ活動が可能となる。
 A 地域のコミュニティ形成に寄与する。
 B 子どもたちの社会教育の場ともなる。
 C 公共スポーツ施設の効率的な利用がなされる。
 D 地域の誇りを醸成する。
 E 運動部活動との連携・協力により、子どもたちに多様なスポーツ環境を提供することが可能となる。
 (3) 各地の総合型地域スポーツクラブ育成の取組
 文部省においては平成七年度より総合型地域スポーツクラブ育成のためのモデル事業を行っており、その事業により総合型地域スポーツクラブが各地に根付き始めている。それ以外にも、(社)日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が百年構想のもとJリーグの各クラブを核として、また、(財)日本体育協会ではスポーツ少年団を核として総合型地域スポーツクラブづくりに取り組んでいる。
 (4) 総合型地域スポーツクラブの育成・定着のための方向
 総合型地域スポーツクラブは、地域住民が自らのスポーツ活動のために自主的に創設するものであるので、基本的には地域住民が主体となってその育成・運営を行うべきものである。特に運営については、その継続性を確保する観点からも、できる限り会員による会費収入あるいはクラブの収益事業によって賄うことが理想である。しかし海外の例にもあるように、クラブの自主的な収入だけで運営していくにはなかなか困難な場合もあり、行政としてもある程度の支援が必要である。

3 スポーツ施設
 (1) スポーツ施設の状況
 我が国の体育・スポーツ施設は全国で二十五万八千か所であり、その六〇%近くは学校体育施設、二五%が公共スポーツ施設である。スポーツ施設については、今後、量的な拡大を更に図っていくことも重要であるが、質の向上を図っていくことも重要である。特に総合型地域スポーツクラブの育成に当たっても不可欠であるクラブハウスをスポーツ施設の中に設置することは必要となってくる。
 (2) 学校体育施設の更なる開放の必要性(共同利用型)
 最も身近なスポーツ施設である学校体育施設を、これまで以上に積極的に地域の住民に開放していくことが重要である。今後、その開放については、これまでの単に地域住民への場の提供という「開放型」から、学校体育施設は地域の共通財産であるという考え方に基づいた「共同利用型」への転換を図っていくことが重要である。

4 スポーツ指導者の養成・活用
 スポーツの潜在的な人口を掘り起こし、さらにスポーツの生活化を図っていく上で、スポーツ指導者の養成・確保は重要な課題であると同時に、国民のスポーツ活動が多様化、高度化している今日、指導者に対するニーズは質量ともに増大している。文部省では、スポーツ指導者の資質の向上のため、各種の研修会・講習会を開催する以外にも、スポーツ団体が行うスポーツ指導者養成事業のうち、一定の水準に達し奨励すべきものを文部大臣が認定する制度がある。この制度によって養成された指導者は約八万人に上っている。また、これらの指導者の有効かつ積極的な活用を図るため、都道府県及び市町村レベルの指導者の登録制度(リーダーバンク)や派遣制度の一層の充実を図るとともに、住民の側からも指導者についての情報が得られるような情報システムを構築する必要がある(第10図参照)。

5 スポーツ事業の実施
 スポーツ大会、スポーツ教室などのスポーツ事業は、スポーツをはじめるきっかけづくりになると同時に、スポーツを続ける上での目標や励みとなるものである。文部省においては、全国スポーツ・レクリエーション祭、生涯スポーツコンベンション、全国アウトドアスポーツフェア、全国マリンスポーツフェア、体育の日の行事などのスポーツイベントを毎年開催している。

6 スポーツ団体の育成・支援
 我が国のスポーツ振興の上でスポーツ団体が果たしてきた役割は大きい。今後は、スポーツ振興基金による全国的な競技団体等の助成などを活用しつつ、生涯スポーツの振興の観点から国民の多様なニーズに対応した各種のスポーツ団体の育成を図っていくこととしている。

7 スポーツサービス
 生涯スポーツ社会の実現に当たって、民間のスポーツ産業の役割も重要なものがあると思われるが、今後、サービスに対する国民の選別が厳しくなる中で、より低廉で良質のスポーツサービスの提供が求められている。
 また、我が国のスポーツ振興を図っていく上で企業の果たす役割は依然として大きいと考えられることから、引き続き、企業がスポーツを支援しやすい条件整備を進めるとともに、従来、競技スポーツに偏りがちだった企業の支援についても、企業自身も地域社会の構成員として、その保有するスポーツ施設や指導者等の資源を地域スポーツの振興に積極的に還元することが望まれる。

<第4節> 諸外国におけるスポーツライフとその環境

1 運動・スポーツに対する意識
 スポーツクラブや団体に加入している人の割合は、カナダ(十五歳以上)では約一五%、スウェーデンは約五〇%、イギリスは一一〜一六%、オーストラリアは約三三%となっている。

2 特色ある生涯スポーツ施策
 フランスの指導者資格認定制度、ドイツのゴールデンプラン、ニュージーランドの特定対象層に対するスポーツプログラム開発などは特色ある生涯スポーツ施策である。

<第4章> 国際競技力の向上とスポーツの国際交流の推進

<第1節> 我が国の国際競技力の現状

 競技の観戦などを通じてだれもがその素晴らしさを享受できる競技スポーツは、我が国のスポーツの普及・発展、ひいては活力ある社会の形成に大いに資するものである。しかしながら世界各国の競技水準が向上する中、我が国の国際競技力は長期的・相対的に低下傾向をたどっているものと考えられる。

<第2節> 国際競技力の向上に向けて

1 競技力向上トータルシステムの構築
 保健体育審議会答申(平成九年九月)において、直接的競技力向上策(@一貫指導体制の確立、A施設・設備の整備、Bコーチ・スタッフなどの人材の整備)と側面的な条件整備策(スポーツ医・科学研究の充実など)が一体となった「競技力向上トータルシステム」の構築が提言された。今後、文部省、地方公共団体、中央競技団体等においてこのようなシステムの構築に積極的に取り組む必要がある(第11図参照)。

2 一貫指導体制の確立
 効果的な選手強化のためには、ジュニア期から組織的・計画的に選手を育成していく一貫指導体制の実現が必要である。このため、文部省では(財)日本オリンピック委員会に一貫指導システム構築のためのモデル事業を委嘱している。

3 スポーツ医・科学の成果の活用と選手育成拠点の整備
 文部省では、スポーツ医・科学研究等を行う「国立スポーツ科学センター」の整備を進めているほか、ナショナルトレーニングセンターの在り方について調査研究を行っている。また、都道府県に対する補助事業として「地域における強化拠点整備事業」を実施している。

4 優れた指導者の養成・確保
 文部省では、各競技団体等が実施する競技力向上指導者の養成事業について文部大臣認定制度を設けている。また、「スポーツコーチサミット」の開催や、スポーツ功労特別指導委員の委嘱・派遣を行っている。

5 競技力向上事業への支援
 文部省では、(財)日本体育協会と(財)日本オリンピック委員会の行う競技力向上事業に国庫補助を行っている。また、スポーツ振興基金も各競技団体の事業に助成している。

6 国民体育大会の開催
 国民体育大会は我が国最大の総合競技大会であり、「国民スポーツの祭典」として、我が国のスポーツ振興に大きな役割を果たしている。
 平成十年度は夏季・秋季大会が神奈川県で、冬季大会が北海道・長野県で開催される。

7 文部大臣顕彰制度の実施
 文部省では、我が国のスポーツの振興に特に功績のあった者に対して、その名誉を讃え、更なる研鑽を期待するとともに、スポーツに対する国民の関心を喚起することを目的として文部大臣顕彰を行っている。

8 企業等によるスポーツ支援の活性化
 我が国においてはスポーツと企業は多様な形で関係を有しており、今後とも企業による積極的な支援が望まれる。

<第3節> スポーツによる国際交流の推進

1 国際競技大会の開催
 国際競技大会の開催は、スポーツの振興、国際親善、地域振興に寄与するのみならず、国民、特に青少年に夢や活力を与えるものである。文部省では、国際競技大会の招致・開催に関する関係省庁や(財)日本オリンピック委員会等との連絡調整、準備運営団体の事業計画等に対する指導、助言等を行っている。

2 長野オリンピック冬季競技大会
 長野オリンピック冬季競技大会において、日本選手団は冬季オリンピック史上最高の成績を上げ、国民に大きな夢と感動を与えた。また、(財)長野オリンピック冬季競技大会組織委員会、開催市町村、政府等が協力して準備・運営に取り組んだ結果、大会運営についても国際オリンピック委員会をはじめ関係者から高い評価を受けた。

3 二〇〇二年ワールドカップサッカー大会への支援
 ワールドカップサッカー大会はオリンピックに匹敵する規模と注目度を有する世界最大級のスポーツイベントである。平成十四年に日韓共同で開催される二〇〇二年大会に向けて、政府は関係省庁連絡会議を設置するとともに、十年五月には大会支援のための特別措置法を制定した。

4 幅広いスポーツ交流事業の展開
 スポーツの国際交流は、国際競技大会を中心としたものに加えて、地域住民による各種スポーツ交流など多種多様な形で行われている。文部省では、市町村や(財)日本体育協会、(財)日本オリンピック委員会が実施するスポーツ交流事業に助成を行っている。

<第4節> プロスポーツの振興

1 プロスポーツの意義と支援
 プロスポーツは、スポーツへの興味、関心を深め、その裾野を広げる役割を果たしているほか、スポーツ全体の競技力の向上にも貢献している。平成十年五月には、プロスポーツの果たす重要な役割にかんがみ、国や地方公共団体がスポーツ振興の措置をとるに当たって、プロスポーツ選手の高度な競技技術の活用について適切な配慮に努めることとするようスポーツ振興法の一部が改正された。

2 アマ・プロスポーツの交流
 アマチュアスポーツとプロスポーツの適切な連携・協力を推進することは、我が国のスポーツの振興を図る上で重要であり、文部省では「アマ・プロスポーツ交流会議」を実施している。

<第5節> スポーツへの多様なかかわりの促進

 スポーツは、実際に体を動かしてスポーツを「する」こと以外にも、多様な形でそのスポーツ文化を享受できるものであり、「見るスポーツ」やスポーツボランティア活動などの「支えるスポーツ」の振興は、スポーツの振興にとって重要な課題である。

<第U部> 文教施策の動向と展開

<第1章> 教育改革にかかわる審議会の活動

 文部省の教育改革にかかわる審議会では、様々な角度から教育改革の具体的方策について検討を進めている。
 それらの審議会のうち、中央教育審議会では、「幼児期からの心の教育の在り方について」諮問を受け、平成十年六月に「新しい時代を拓く心を育てるために―次世代を育てる心を失う危機―」と題する答申を取りまとめた。答申の特徴として、@心の教育のために今具体的になすべきことを、社会全体、家庭、地域、学校に対して呼び掛けていること、A日本人としての誇りを持って、創造的で活力ある社会を作っていくため、前向きに取り組んでいく子どもを育てようとすることを基調に置いていること、B家庭におけるしつけの在り方等について具体的に提言していること、C社会全体のモラルの向上に向けての取組を強調していること、D学校の道徳教育の見直し、地域社会での様々な取組について具体的に提言していることが挙げられる。
 また、「今後の地方教育行政の在り方について」諮問を受け、平成十年九月に答申を取りまとめた。答申の主な内容は、@教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方、A教育委員会制度の在り方、B学校の自主性・自律性の確立、C地域の教育機能の向上と地域コミュニティの育成及び地域振興に教育委員会の果たすべき役割についてである。

<第2章> 生涯学習社会の実現に向けて

 学歴社会の弊害の是正、学習需要の拡大及び社会経済の変化を背景として、「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される」ような生涯学習社会の構築を目指していくことは極めて重要である。
 このため、文部省は、学校教育、社会教育、文化、スポーツの振興に関し、生涯学習に資する施策を実施するとともに、関係省庁との連携・協力に努めている。具体的には、生涯学習審議会の答申等に基づき、多様で総合的な学習機会の拡充、学習活動の成果に対する適切な評価と活用、生涯学習の振興の観点からのボランティア活動の支援・推進、生涯学習についての普及・啓発など、生涯学習の振興のための取組を進めている。

<第3章> 初等中等教育の一層の充実のために

 文部省では、「ゆとり」の中で子どもたちに「生きる力」を育成することを目指して、平成十四年度からの実施を目途とした完全学校週五日制の下での新しい初等中等教育の教育内容の在り方について、十年七月に教育課程審議会から答申を得て、教育課程の改善を図っている。
 また、校内暴力、いじめ、不登校などの児童生徒の問題行動については、依然として憂慮すべき状況にある。このため、@家庭・学校・地域社会の連携の推進、A一人一人を大切にし、個性を生かす教育の実現、B教員の資質の向上、C教育相談体制の充実等の施策を総合的に推進している。
 さらに、中央教育審議会や教育課程審議会、理科教育及び産業教育審議会等の答申を踏まえ、高等学校教育の改革や入学者選抜の改善、中高一貫教育の導入のための制度改正、幼稚園運営の弾力化、教科「情報」「福祉」の創設、高等学校段階でのインターンシップの推進など、初等中等教育の充実に努めている。
 一方、教員については、養成・採用・研修の各段階を通じた総合的な方策を図る必要があることから、教員養成審議会第一次答申を踏まえた教育職員免許法の改正など所要の措置を講じている。
 このほか、教育改革の推進を支える教育行政制度についても改革を図る必要があることから、平成十年九月の中央教育審議会の答申を踏まえ、国と地方公共団体の役割分担を見直し、新たな、国、都道府県、市町村の連携協力の仕組みを構築し、また、教育委員会制度とその運用の改善を図るとともに、学校の自主性・自律性を確立するための学校裁量権限の拡大、学校運営組織の整備などについて、法律改正を含めた必要な措置をとることとしている。

<第4章> 高等教育の多様な発展のために

 大学審議会の提言を踏まえ、文部省は諸制度の大綱化、弾力化等を図り、各大学は改革の取組を進めてきたが、大学が国民の期待にこたえるものとなるため、更なる改革が必要である。
 大学審議会は、平成九年十月に「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問を受け、十年六月に、@課題探求能力の育成―教育研究の質の向上、A教育研究システムの柔構造化―大学の自律性の確保、B責任ある意思決定と実行―組織運営体制の整備、C多元的な評価システムの確立―大学の個性化と教育研究の不断の改善、を主な内容とする中間まとめを公表した。その後、引き続き審議が行われ、十年十月に答申が出された。
 文部省では、大学院制度の弾力化や量的拡大などの大学院の充実と改革、カリキュラム改革や学部教育の機能の充実強化、組織運営システムの改革や点検・評価の推進などに取り組んできたが、大学審議会の答申を受けて、今後必要な制度改正等所要の措置をとることとしており、各大学において、積極的な改革の取組が行われることが期待される。
 さらに、大学入学者選抜の改善、生涯学習機能の強化促進、インターンシップの推進及び理工系人材の育成を図るとともに、二十一世紀医学・医療懇談会の三次にわたる報告を踏まえながら、医療人育成施策を推進している。
 このほか、育英奨学事業の充実、学生の就職支援についての各種施策を推進している。

<第5章> 私立学校の振興

 私立学校は、独自の建学の精神に基づく個性豊かな教育研究活動を積極的に展開しており、学校教育の発展に重要な役割を果たしている。
 このため、文部省では、私立学校振興助成法の趣旨に沿って、私学助成や融資事業、税制上の優遇措置などの各種施策を実施している。
 平成十年度については、厳しい財政事情の下、財政構造改革の推進に関する特別措置法により、私立学校に対する経常費補助が前年度と同額とされる中、社会的要請の強い特色ある教育研究に着目した助成の重点化を図りつつ、私立学校教育研究設備・装置等に対する補助を拡充するなど、私学助成の充実を図っている。
 なお、私学振興事業を総合的に実施するため、私立学校教職員共済組合と日本私学振興財団とを統合した日本私立学校振興・共済事業団が平成十年一月に発足した。

<第6章> 社会教育の新たな展開を目指して

 今日の子どもたちを取り巻く状況については、家庭の教育力の低下、地域社会における人間関係の希薄化、暴力や性的な情報の氾濫など多くの憂慮すべき問題が指摘されている。文部省では、こうした状況を踏まえ、家庭教育の重要性を改めて訴えるとともに、社会の大人たちすべてが手を携えて子どもたちを大切にし、心豊かにはぐくんでいく機運を醸成していくため、平成九年八月以降、「子どもと話そう」全国キャンペーンを実施している。
 また、文部省では、中央教育審議会答申を踏まえ、青少年の社会環境の浄化のための取組を進めるとともに、地域における青少年の体験活動の場や機会などの充実を図るとともに、家庭の教育力の低下が指摘されていることから、家庭教育に関する様々な学習機会を提供し、相談体制の充実、普及啓発の推進、母子保健の機会の活用を図り、家庭の教育力の充実を支援している。
 このほか、現代的課題に関する学習機会の提供や男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興を図るとともに、青少年から高齢者まで、学習成果を生かした社会参加の促進のための施策を推進している。さらに、人々の学習活動の拠点となる社会教育施設の活性化・高機能化、学習支援能力の高い専門的職員の育成などの施策を実施している。

<第7章> 学術研究の振興

 我が国が、将来に向けて今後も活力ある豊かな社会を実現し、国際社会において必要な役割を果たしていくためには、科学技術発展の基盤ともなる学術研究を未来への先行投資と位置付け、創造性豊かな世界の最先端の学術研究の振興を図ることが極めて重要である。
 平成八年七月の科学技術基本計画の策定、教育科学技術省が設置されることになるなどの行財政改革の流れ、さらには、大学改革の進展など、学術研究を取り巻く状況の変化を踏まえ、十年一月に学術審議会に対して諮問を行い、研究開発全般を視野に入れた学術研究の位置付けや科学技術発展の基盤としての学術研究の役割等について審議を行っている。
 文部省では、科学研究費補助金の拡充など学術研究を支える研究費や研究設備の充実、若手研究者の養成・確保のため「ポストドクター等一万人支援計画」を推進するなど、総合的な施策を積極的に展開している。
 また、学術情報基盤の整備、地球環境科学や情報学研究などの基礎研究の重点的な推進、学術国際交流の推進を図るとともに、大学と産業界等との連携・協力の推進に努めている。
 このほか、学術研究における評価の充実や国民理解の増進のため、各種施策を推進している。

<第8章> 文化立国の実現に向けて

 文化は、国民生活や社会を支えるものとして極めて重要であり、文化立国の実現は、国を挙げて取り組むべき喫緊の課題となっている。
 文化庁では、文化政策推進会議の報告を踏まえ、平成十年三月に、文化の振興の基本的な指針となる「文化振興マスタープラン」を策定し、「地域子ども文化プラン」の推進をはじめ各種施策の充実に努めている。
 また、国民の美術品を鑑賞する機会の拡大を目的とした「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」の制定、アーツプラン21など芸術創造活動への支援、地域における文化の振興、時代に応じた国語施策の展開、情報化・国際化の進展に対応した著作権制度の改善及び著作権の普及・啓発、宗教法人制度の整備など、様々な施策を進めている。
 文化財保護施策としては、文化財の適切な保存と活用のため、文化財登録制度を推進するなどの施策を展開している。
 このほか、現代舞台芸術振興の拠点となる新国立劇場をはじめとする国立文化施設の整備やアイヌ文化の振興など各種施策の推進に努めている。

<第9章> 教育・文化・スポーツの国際化に向けて

 国際化に対応した文教施策の展開を図る上で、@二十一世紀の国際社会で主体的に生きる日本人の育成、A教育・学術・文化・スポーツの分野での国際交流の一層の推進、B人づくり等に貢献する国際協力の積極的な推進、の三つの課題への取組を強化することが必要である。
 このため、国際理解教育の推進、外国語教育の充実、海外子女・帰国子女教育の充実を図るとともに、留学生交流の推進、日本語教育の振興、教育・文化・スポーツの国際交流・協力の推進など各種施策を図っている。さらに、国際協力事業団等を通じた開発途上国への協力やユネスコ等の国際機関を通じた国際協力の実施など、国際化に対応した文教施策の展開を図っている。

<第10章> 情報化の進展と教育・学術・文化・スポーツ

 文教分野において、マルチメディアは、時間的・地理的な制約を克服し、多数の人々に多様かつ質の高い学習資源の利用を可能にするとともに、学習者の主体的な学習活動を支援する手段として大いに注目されている。
 文部省では、関係省庁及び民間との連携を図りつつ、ハード面の整備、教育情報の整備・充実、新しいメディアの教育への活用方法の調査研究、人的支援体制の整備等を総合的に進めている。
 具体的には、初等中等教育において、教育課程審議会の答申を踏まえ、各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図るとともに、学校がインターネットに接続できるよう環境整備を進めている。高等教育においては、大学や高等専門学校を衛星通信で結ぶ合同授業等の遠隔教育や専門的人材の養成など各種施策を推進している。また、生涯学習においても、学習情報の提供体制等の整備を進めている。
 さらに、学術情報ネットワークの高度化・高速化や国際接続の拡充、文化情報総合システムの整備・充実、スポーツ分野へのマルチメディアの活用を図るとともに、情報化の進展に対応した著作権の体制整備、制度改善等を推進している。

<第11章> 新たな時代の文教施設を目指して

 文教施設は、様々な文教施策を展開する基盤として極めて重要な役割を果たすものである。
 このため、文部省では、各学校種ごとに「学校施設整備指針」を策定しており、また、文教施設のインテリジェント化の推進、学校施設の複合化、余裕教室の活用、情報化の進展への対応など文教施設の整備充実に努めている。
 また、@環境を考慮した学校施設(エコスクール)の基本的な考え方や推進方策を取りまとめるとともに、これに関するパイロット・モデル事業の実施、Aさらに、児童生徒の健康に与える影響を考慮して学校におけるごみ焼却炉の使用を取り止めるなど、良好な学習環境を保つための取組を行っている。
 一方、二十一世紀に向けた教育・研究環境を創造するため、国立学校施設の整備・充実に積極的に取り組んでいる。

<第12章> 防災対策の充実

 文部省では、地震災害・火山災害・風水害その他の災害に対処するため、文部省防災業務計画に基づき、総合的な防災対策の確立並びに災害予防対策、災害応急対策及び災害復旧・復興にわたる諸施策の総合的かつ円滑な推進を図っている。
 具体的には、@学校等における児童生徒等の生命、身体の安全を図ること、A教育研究活動の実施を確保すること、B文教施設及び設備の防護・復旧に万全を期すること、C災害及び防災に関する科学的研究の推進を図ること、D被災者の救援活動に関し的確な連携・協力を行うこととしている。


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税金365日


個人事業者の消費税の各種届出書は


国 税 庁


 事業者の方は、消費税法に規定されている各種の届出の要件に該当する事実が発生した場合には、その旨を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
 以下、届出が必要なもののうち、主なものを紹介しましょう。

1 消費税課税事業者届出書

 @ 届出が必要な場合
 基準期間(個人事業者の場合は前々年)の課税売上高が三千万円を超えることとなった場合
 A 提出時期
 事由が生じた場合、速やかに提出する。

2 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書

 @ 届出が必要な場合
 基準期間の課税売上高が三千万円以下となった場合
 A 提出時期
 事由が生じた場合、速やかに提出する。

3 消費税課税事業者選択届出書

 @ 届出が必要な場合
 免税事業者(基準期間の課税売上高が三千万円以下である事業者)が課税事業者になることを選択しようとするとき
 A 提出時期
 選択しようとする課税期間の初日の前日まで
 (例:平成十一年分から選択しようとする場合、平成十年十二月三十一日まで)
 (注) いったんこの届出書を提出すると、事業を廃止した場合を除き、二年間はその選択をやめることはできません。

4 消費税課税事業者選択不適用届出書

 @ 届出が必要な場合
 課税事業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとするとき
 A 提出時期
 選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで
 (例:平成十一年分から選択をやめようとする場合、平成十年十二月三十一日まで)

5 消費税簡易課税制度選択届出書

 @ 届出が必要な場合
 基準期間の課税売上高が二億円以下の課税事業者が簡易課税制度を選択しようとするとき
 A 提出時期
 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで
 (例:平成十一年分から選択しようとする場合、平成十年十二月三十一日まで)
 (注) いったんこの届出書を提出すると、事業を廃止した場合を除き、二年間はその選択をやめることはできません。

6 消費税簡易課税制度選択不適用届出書

 @ 届出が必要な場合
 簡易課税制度の選択をやめようとするとき
 A 提出時期
 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで
 (例:平成十一年分から選択をやめようとする場合、平成十年十二月三十一日まで)

7 事業廃止届出書

 @ 届出が必要な場合
 課税事業者が事業を廃止したとき
 A 提出時期
 事由が生じた場合、速やかに提出する。

8 個人事業者の死亡届出書

 @ 届出が必要な場合
 個人の課税事業者が死亡したとき
 A 提出時期
 事由が生じた場合、速やかに提出する。

*       *

 なお、地方消費税は消費税額を基に計算することとされていますから、消費税の届出書と別に地方消費税の届出書を提出する必要はありません。
 消費税の各種届出書については、税務署の窓口で配布しているほか、納税者の方が自由に入手できるように、「タックスアンサー・ホームページ」で公開しています。
 ※タックスアンサー・ホームページアドレス
http://www.netspace.or.jp/^taxanser
 

住宅防火対策の推進(住宅防火診断)


 全国では、毎年およそ二千人の方が火災で命を落としています。そのうちのおよそ半数は、住宅から発生した火災によるものです。
 住宅火災によって亡くなる人のなかでは特に高齢者の割合が高く、平成八年中においては、過半数が六十五歳以上の人で占められています。
 今後、さらに高齢化や核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えることが予想されることから、住宅火災による死者の急増が懸念されています。
 そのため、消防庁では、平成三年に策定した「住宅防火対策推進に係る基本方針」、平成八年に策定した「後期五ヶ年における住宅防火対策のあり方」等に基づいて、高齢者を中心とした住宅防火対策を積極的に推進しています。

◇パソコンを使い「あんしん度」を評価

 その住宅防火対策の一環として実施しているのが、「住宅防火診断」です。現在の家族構成や火気使用設備の管理状況、内装などの不燃化・防炎化、住宅用火災警報器・住宅用消火器などの設置状況などをパソコンに入力することによって、火災による危険性を「あんしん度」という数値で評価します。「あんしん度」とは、「防火対策を何も行っていない場合」と比べて火災による死者を減らすことのできる効果を百分率(%)で表したものです。これを見ることによって、危険を減らすために有効な防火対策を選ぶ目安とすることができます。
 住宅防火診断は、各消防機関が高齢者世帯を中心に無料で行っています。消防署員が各家庭を訪問し、火気管理などの防火チェックを行い、簡単な質問票に記入したり、その場でパソコンを用いたりして、住宅の安全性についてアドバイスします。
 詳しくは、最寄りの消防署などにお問い合わせください。
 (消防庁)


 
    <12月2日号の主な予定>
 
 ▽体力・運動能力調査の結果………文 部 省 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



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