官報資料版 平成1113




                 ▽ 国民生活白書のあらまし……………………………………経済企画庁

                 ▽ 法人企業動向調査(九月実施調査結果)…………………経済企画庁

                 ▽ 税金365日 税を滞納すると……………………………国 税 庁










国民生活白書のあらまし


「中年」―その不安と希望


経 済 企 画 庁


 平成十年度「国民生活白書」は、昨年十二月四日の閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは次のとおりである(なお一部掲載を省略した節がある)。

はじめに

 人口が増加する時代が終わろうとしている。十九世紀初頭に約三千万人であった日本の人口は、その後二世紀にわたって増加を続け、一九九八年には一億二千六百万人となった。しかし、二〇〇七年前後にピークを迎えると見込まれている。
 総人口の転換に先立つ出生数の転換は、すでに半世紀近く前に極めて急激に起こった。第二次大戦が終わって間もない時期に「ベビーブーム」があり、その直後の一九五〇年代に出生率は急速に低下した。合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む子供の数)は、その十年間に四人台の値から二人程度にまで急減した。人口が大きく増加するような出生率から、人口が増加しないような出生率へと極めて短期間に変わったのである。
 このように出生面の転換があまりに急激であったために、出生率が二人程度にまで低下する前に生まれた世代の人口は、他の世代と比べて数が突出して多く、その後、人口の年齢構成の動きに特別の大きな波動をもたらすようになった。この世代が現在、中年期(四十代、五十代)を迎え、日本の社会の中枢にいる(以下、特に断りのない限り、四十代、五十代を中年世代と呼ぶ)。
 この世代を中心とした日本の人口変動、年齢構成の変化は、社会経済に大きな影響を及ぼしてきている。例えば、人々の仕事をめぐる環境については、年功序列的な雇用慣行に変容を迫っている。
 また、今の中年世代が仕事から引退して高齢者となっていくとき、日本の社会は、世界の歴史の中でも前例をみない、本格的な高齢社会を迎えるため、様々な面での準備が必要になっている。
 近年、生活に不安を感じるとする人が増えており、特に、中年世代までが不安を感じ始めている。前記のような人口の大きな変動に伴う社会経済の変化やそれに伴う生活上のリスク、先行きの不透明さが、その不安の底流にあるとみられる。
 以上のような観点から、本年度の国民生活白書の第T部では、現在、日本の人口の最多数を占める中年世代(四十代、五十代)の生活環境に焦点をあてつつ、前記のような人口の年齢構成の変化が、社会経済、国民生活に与える影響を分析するとともに、そのことをめぐる課題、すなわち、人口構成の変化に対応した制度、慣行をつくりあげていくという課題について考察することとした。
 第U部では、一九九七年度の家計を取り巻く経済社会の動向を概観し、家計の動向を収入、消費、雇用、住宅等の面から分析し、また、中年世代を中心に、世代別の消費構造の特徴等をみる。

<第T部> 人口構成の変化と中年世代

<第1章> 人口構成の変化と世代

<第1節> 人口増加時代の終了と人口の年齢構成の変化

<中年世代人口と若年世代人口の逆転>
 人口が増え続けている間は、子供が最も多く、若年世代(三十代以下)、中年世代(四十代、五十代)と、上の世代ほど人口は少なくなり、働き手(労働力人口)も中年世代より若年世代の方が多い。日本では、人口が増加し続けていた中、若年世代の働き手が多い時代が長く続いてきた。
 しかし、現在に至って、働き手の中で中年世代が最も多いという時代を初めて迎えている(第1図参照)。一九五五年、七五年には、働き手の世代の中でも、若年世代が中年世代を大きく上回っていたが、九五年には中年世代の方が多くなっている。
 中年世代と若年世代の人口比でみると、一九五五年には中年世代一人に対し若年世代が一・六七人、七五年には一・四四人という割合であったが、九五年は同〇・九五人となり、若年世代の割合は、この二十年間に急に減少している。
<中年世代と経済環境の変化>
 一九九〇年代には経済成長率は大きく低下した。経済構造面にも変化がみられ、仕事をめぐる環境にも影響を与えているとみられる。現在の中年世代は、そのような時代に、「やり直し」のききにくい中年期を迎えている。

<第2節> 中年世代と生活の不安、悩み

<高まっている生活の不安と悩み>
 総理府が毎年行っている「国民生活に関する世論調査」によると、近年、生活の面で「悩みや不安を感じている」という人が増えている。
 年代別にみてみると、四十代と五十代の中年世代で特に多い。不安が高まっている要因としては、現在、景気が低迷し、雇用情勢が悪化していることが第一に挙げられる。しかし、より長期的、構造的な要因として、日本が人口面で大きく変化しており、中年世代がその影響を受けていることが、漠然とした不安の底流にあるとみられる。

<第2章> 人口構成の変化と仕事

<第1節> 中年世代と雇用不安、仕事のストレス等

<人員整理の対象となりやすい中高年層>
 常用労働者数に対する一年間に「経営上の都合」により離職した人の割合を年齢別にみてみると、男性では五十代後半以降、女性では四十代後半以降の年齢層において、「経営上の都合」により離職する人の割合が高くなっており、中高年層ほど人員整理の対象となりやすい現状が示されている。
 また、雇用状況は景気変動の影響を受けやすく、中高年層も含め雇用不安を解消するためには、まずは、現在のような景気の低迷から脱出することが急務である。

<第2節> 人口の変化と中年世代の処遇

<六十歳以上の定年制を採用する企業は増加>
 人口面の変化の一つは、平均寿命が伸びてきたことである。これは中高年齢者の健康、体力の改善を反映したものであり、それだけ長く働くことができるようになってきた。それとともに、さらに従業員の就業期間を延長する必要が生じ、六十歳以上の定年制を採用する企業が増え、定年年齢も高くなってきた。
<管理職の比率は増加したが、平均部下数は大幅に減少>
 全常用労働者数に占める管理職(本節では部長及び課長)の割合を大企業についてみると、一九八二年から九二年までは増加し、九二年から九七年にかけて四十代においては低下しているものの、五十代においては若干増加している。これは、特に大企業において中年層の割合が増し、その処遇のために管理職ポストを増加させたためと考えられる。
<大企業で変化してきている年功賃金>
 日本的雇用慣行の特徴の一つである「年功賃金」が変化しているといわれており、このことが労働者、特に若い時には実際の貢献よりも低い賃金で過ごし、これから「後払い賃金」を受け取ろうとしていたともいわれている中年層の不安となっている。
 男性・標準労働者(学校卒業後、直ちに現在勤めている企業に就職し、その後も引き続き勤務している労働者のこと)の賃金の上昇をいわゆる年功賃金カーブでみると、従来日本的な雇用慣行が典型的であり、賃金カーブの傾斜の程度が顕著であった大企業の中年層で、賃金は相対的に低下傾向にある(第2図参照)。
 一方、もともと年功賃金カーブの傾斜が緩やかな小企業では、明確な変化はみられない。
<賃金の伸びが最も低かった「団塊の世代」>
 年齢別に男性(全産業、企業規模・学歴計)の実質賃金の伸び率を一九八一年から五年ごとにみると、いずれの時期においても、「団塊の世代」に当たる年齢層の伸び率は他の世代に比べて低く、特に九一年から九六年にかけての伸び率はマイナスとなっている。
 人口の多い世代の賃金は概して伸びが低い傾向がある。これは、日本のように年功序列的な処遇が行われ、年齢によって役割が決まっているような職場が多い場合、人口の多い年齢層では、その需給バランスの面から他の年齢層ほどに賃金が伸びない可能性があることを示している。

<第3節> 高年齢者の雇用とその課題

<六十歳を境に雇用環境が急変する日本>
 年齢別の失業率を国際比較してみると、日本の失業率は総じて低い水準にあるが、特徴的なのは二十〜五十九歳の水準に比べ六十〜六十四歳の水準が極めて高いことである。年齢計の平均失業率と六十〜六十四歳の失業率との比率をみると、日本は二・五倍にもなっており、倍率は最も大きい。
 また、六十歳を境にした賃金の低下も日本では大きい。アメリカ、イギリスと比較してみると、データの制約上、年齢の幅をすべてそろえることはできないが、アメリカ、イギリスと比べて日本は六十歳になった場合の賃金の低下率が大きい。
<健康、体力面での就業の可能性>
 労働省「高年齢者就業実態調査」によると、今後二年間に高齢者雇用を増やす予定がないと答えた事業所の理由としては、「高年齢者に適した仕事がないから」が最も多くなっているものの、高年齢者の体力・健康面に不安を抱いている企業の割合も高く、高年齢者の体力面に対する企業側の不安感が根強くある。しかし平均余命が伸びた現在の高年齢者は、平成八年版国民生活白書で述べているように、体力的にはこの二十五年程度の間に四歳ほど若返っており、仕事をする能力も高まっていると思われる。
 しかし、「若年・中年層で人手は充足できるから」と考える企業が多いなど、これまでのところ、企業側の基本はあくまでも若年人口による労働力確保・補充であり、人手不足の状況が強まって初めて高年齢者の雇用に向かうというのが現状である。
<減少していく若年人口と高年齢者の雇用>
 日本の二十代と六十代の人口の増減をみてみると、二十代の人口は一九九五年まで増加し、二〇〇〇年にかけてやや減少した後、その後は急速に減少するものと予想される。
 その一方で、六十代の人口は増加の一途をたどり、二〇〇五年以降は二十代の人口を上回ることが予想されている。
 今後は若年人口による労働力の確保が従来よりも難しくなることが予想され、そのことは高年齢者にとっては追い風となる。そのような追い風を活かせるよう、高年齢者の就業環境の整備は急務となっている。
<「生涯現役社会」の方向へ>
 平均寿命が伸び、健康、体力面で就業可能な年齢が高くなってきた今日、引退年齢を引き上げてより長く働くというのは、自然なことである。もちろん、個人によってはより早期の引退を選択することもあり得るだろう。人生において、いつ仕事を離れ、いつ余暇を楽しみ、いつ学ぶかといった問題には、多様な選択肢が用意されているべきであろう。これまで、日本での働き方は必ずしもそのようにはなっていなかった。それは、中途採用市場が十分に発達しておらず、また年齢によって立場、役割が決まりやすい人事体系となっているなど、その意味で「硬直的」であった。
 今後は、高年齢者が急増することをも契機として、こうした状況を変え、長期的には、年齢による就業上の制約の少ない、いわば「生涯現役社会」の方向へ向かうべきであろう。

<第4節> 雇用慣行と企業、個人の変化

 人口面の変化は、長期雇用・勤続の慣行、意識等にも影響を与える可能性があると考えられる。まず、人口の変化に伴う年功賃金の変化は、個人にとっては同一の企業に長くとどまる利点を減じ、その魅力を弱めるものであって、転職志向を高める方向に働くものである。
 また、マクロ的にもそのような方向に影響する力が働くとみられる。日本では、従来、新規学卒者が新たな成長分野に多く就職することにより、当該分野が成長していく上で必要な労働力が確保されてきた。すなわち、経済成長に伴う産業構造等の変化に対応する労働力構成の変化は、これまでは主に新規学卒の配分を通じて行われてきた。
 しかし、今後、新規学卒者が減少していくと、そのような産業構造等の必要な変化、成長分野への必要な労働力の供給は、既存の労働力の移動に依存する部分が大きくなる。そのことは需給関係の変化を通じて、個々の勤労者にとっては、転職に有利な条件を生むことになろう。
 一方、企業の成長が鈍化する中で働き手の中高年齢化が進むことは、企業にとっては年功賃金からの変化を促し、賃金と生産性のより直接的な関係を重視する能力主義的な賃金体系を導入する誘因ともなり得るであろう。また、中途で会社を変わる人が増えるとすれば、賃金と生産性の関係は、年功賃金にみられるような長期的な対応ではなく、より短期的な対応が求められやすくなるだろう。
 転職が従来ほど不利でなくなることも、勤労者にとっては社外でも通用するような能力、いわば「ポータブル」な能力を身につける誘因、自己啓発への誘因を高めることにつながるものである。
<賃金制度の切り換えは、若年層ほど「好ましい」とする割合が増加>
 年功序列的な雇用慣行や長期雇用に対する意識が、特に若年層の男性において変化が生じることに伴い、個人にも新しい働き方が求められる。それは企業に依存することをやめ、自己啓発等により、これまで勤めてきた会社の外でも通用するような技術、技能を身につけることであり、それは個人にとっては雇用に関するリスクを小さくすることである。
 総理府の一九八二年、九五年の世論調査により、年功賃金中心の賃金制度から、個人の能力を中心とする賃金制度に切り換えることについて、意識の変化をみると、「好ましい傾向だと思う」と答えた割合は、男女年齢別にみていずれも増加しており、九五年は男女とも若年層ほど能力中心の賃金制度に好意的である。
 今後は、個人としても、自ら職業能力を身につけて、一つの企業に過度に依存しなくてもすむようにすることが求められており、そのことは仕事におけるリスクを低め、不安を取り除くことにもなる。そのような個人の変化に対し、職業能力再開発の機会を高め、職業紹介機能等を整備して、個人の努力を支援していく必要がある。それは、職業生活において、いわば「やり直しのききやすい」社会を築いていくことでもある。

<第5節> 退職金、企業年金をめぐる動き

<転職に不利な退職金支給体系>
 中央労働委員会の調査によって、従業員千人以上の企業における大卒男子(事務・技術職)及び高卒男子(同)の自己都合退職の場合のモデル退職金の支給額(一九九七年)をみると、勤続三十年までは、大卒・高卒とも、退職金は勤続年数とともに累進的に増加している。一方、勤続三十年を超えると、大卒・高卒とも退職金支給額の勤続年数カーブは緩やかになっている。
 このような退職金の支給体系は、勤続年数が三十年程度以内に転職することは、個人にとって不利に働いていることを示している。
<不十分な企業年金のポータビリティ>
 現在の企業年金制度では、ポータビリティ(年金の積立金を転職先企業に移管すること)が十分でないため、若年層、中年層を含めて、より良い仕事を求める個人が転職することが妨げられている可能性もある。つまり、個人が転職する場合、在職していた企業と転職先企業との間に、企業年金のポータビリティが確保されていなければ、これまで積み立てられた企業年金が通算できず、その人が転職しなかった場合に比べて、生涯を通じた退職年金の受給額が少なくなることがある。
<労働者の選択の幅の拡大と自己責任―確定拠出型導入等の企業年金の多様化への課題―>
 従来の確定給付制度と合わせて、新たな確定拠出型年金という新しいシステムを導入して運営する等の方法について検討が各方面で開始されている。
 今後、企業年金の給付設計の多様化が図られれば、個人にとっては、老後の所得保障の選択余地が拡がることになる。しかし、そのことは同時に、老後の生活設計に対して、各人がリスクと責任を負うことが求められるようになることでもあることも認識しなくてはならない。

<第3章> 人口構成の変化と老後

<第2節> 老後の生活資金

<予想を上回って生じた長寿化と少子化>
 現行の公的年金制度は、基本的には、現役世代が引退後の高齢世代の生活を支えるという仕組みになっている。このため、予期しなかったインフレーションが発生したとしても、高齢者の生活水準を確保することが可能となっていた。
 しかしながら、そのような現行の制度では、社会全体での予想を上回る平均寿命の伸びや出生率の低下、その結果生じる人口の高齢化という変化が起こった場合には、給付と負担のあり方を見直す必要性が出てくる。実際に、平均寿命の伸びや出生率の低下は予想を上回って起こってきた。
<老後に備えて貯蓄できる額は後の世代ほど多い>
 所得水準の向上に伴って貯蓄余力が増してきた。貯蓄額は所得額に貯蓄率を乗じたものであるが、所得額が増加してきただけでなく、貯蓄率も長期的には上昇してきた。このため、後の世代ほど老後に向けてより多くの貯蓄ができるようになっている(第3図参照)。
<老後の住み替えによるより豊かな消費生活>
 高齢者は現役世代に比べて多くの金融資産を保有しているが、この差は実物資産については一層顕著である。日本の家計資産の約六割が住宅・宅地等の実物資産で占められているが、住み替え等により、高齢者はこの住宅資産を有効に活用することによって、より豊かな老後の消費生活を送ることが可能になる。
<病気、介護に備えて貯蓄に手をつけない人が多い>
 総務庁「高齢者の経済生活に関する意識調査結果」(一九九六年)によれば、「高齢期において貯蓄を取り崩す場合について、どう考えるか」という問に対して、「貯蓄は病気や介護が必要になった時など、万一の場合以外には取り崩すべきではない」という回答が約半分を占め、最も多い。
 このように、介護をめぐる不安、介護費用に関する心配によって、多くの人は必要以上に貯蓄し、消費を抑えている可能性がある。
<介護費用や介護離職のリスクの分散による消費の拡大>
 介護のための費用も平均的には大きくはないが、いったん介護が長引いた場合には、その費用の大きさは無視できないものとなり得るというように、人によって大きなばらつきがある。仮に個人だけで、費用負担が大きくなり得る可能性に十分備えようとすれば、かなり大きな貯蓄額が必要になるであろう。
 公的介護保険は、こうした多額の費用がかかるリスクを社会全体で受けとめるシステムであり、その導入等が、介護費用の個人負担部分をカバーすることを通じて、必要な貯蓄額を減らし、消費にもプラスの影響を与えることが期待される。
 年間十万人が家族を介護・看護するために離職しており、介護のための離職によって収入が得られなくなる心配があることも、消費を抑えている可能性があると考えられる。公的介護保険の導入等を契機として、介護サービスの利用可能性が高くなれば、このような介護離職を防止しやすくなることを通じて、消費にプラスとなることが期待される。

<第3節> 介護の実態と介護サービスの今後

<不安に比べて少ない要介護者の発生率>
 中年世代は、介護に関する不安が大きい。しかしながら、高齢者全体に占める要介護者の割合は、最も高い八十五歳以上でみても、二〇%程度、八十代前半では一〇・〇%となっている。
<在宅の介護の担い手は主に中高年の女性>
 同居の高齢者を介護している人は、全国で七十三万五千人、そのうち女性が六十万五千人であり、高齢者介護の担い手は、主に中高年の女性となっている。
<民間事業者による介護サービス>
 入浴サービスなど民間を活用しているサービスについてみると、市場を通じてサービスが増加し全体としての規模が大きくなると、ある程度の規模までは、一回当たりの単価は下がっていく(第4図参照)。
 民間事業者のメリットを積極的に活用し、市場を通じての効率的なサービス供給を拡充することによって、多様で、拡大する介護サービス需要への対応を図っていくことも重要である。

<第4章> 高齢社会と消費、ストック(蓄積)

<第1節> 人口構成の変化の消費、流行への影響―牽引力となった「団塊の世代」

<「団塊の世代」と耐久消費財の普及>
 「団塊の世代」前後の世代からは、その前の世代にはなかった消費生活の経験をしている。それは、例えば耐久消費財の面で典型的である。

<第2節> 中年世代の経済力の現状と今後

<購買力シェアの大きい現在の中年世代>
 日本の家計支出額、家計所得額いずれについても、中年世代のシェア(割合)は約五割を占めている。
<今後、ますます高まるとみられる高年世代の金融資産、購買力シェア>
 現在の中年世代は、これまで「生産者」として豊富な労働力により経済成長を支えてきたが、今後、この数の多い中年世代が引退していくにつれ、大きな購買力を持った、いわば「純消費者」としての高齢者層が形成され、高齢者の消費市場は極めて大きなものとなっていく。

<第3節> 高齢社会の消費生活に向けた環境整備

<「純消費者」として「市場での投票力」を発揮する高齢者層の登場>
 購買力が大きく、数の多い今の中年世代が高齢者になっていくことは、今後は、高齢者が消費や流行の先端を担うことになり得るということである。
 人口規模が大きい現在の中年世代は、「市場での投票力」を発揮することによって、市場に対して自分達のニーズや好みに合った財やサービスの供給を促すことになるであろう。
<消費者ニーズへの対応―「消費者主権の確立」>
 増加する「純消費者」としての高齢者が、「市場での投票力」を発揮し、よりゆとりある豊かな消費生活を送ることができるようにするためには、これまで以上に「消費者主権の確立」が求められる。
 このためにも、市場において、高齢者のニーズに十分こたえられるよう、財やサービスの供給者の新規参入の自由等が確保され、その市場での競争が促進されるような環境が整備されていることが重要であり、各方面における規制緩和や構造改革の推進が必要である。

<第4節> 少子高齢社会とストック(蓄積)面のゆとり

 少子高齢社会は、労働力人口は減っていくが、一人当たりのストック(蓄積)では豊かな社会である。
 @ 高齢社会における金融資産の活用とその課題
<年齢構成の変化だけで年平均〇・九%増加し得る個人金融資産>
 高齢者の多い社会は生産年齢人口、労働力人口の割合は高くないが、金融資産のストック(蓄積)は大きな社会であるといえる。この点について、世帯主年齢別の保有金融資産額は今と変わらず、その年齢構成のみ変わるという単純な前提で試算すると、日本の一人当たり個人金融資産は、二〇一〇年には一九九五年よりも約一五%多いことになる。これは年平均で約〇・九%の増加ペースに相当する。そして二〇一〇年には、六十歳以上の世帯の金融資産が全体の六割以上を占めることになる。
 このように、高齢社会は、これまでと比べ、「労働力」に対して「資本」の大きな社会であるといえる。この大規模な資本、すなわち、金融資産が有効に活用され、高い収益を生めるような環境を整備することは、社会全体にとっても、中高年世代にとっても利益になる。
 A 少子高齢社会と住宅ストックの利用
<充足しつつある住宅ストック>
 二〇〇〇年以降には、世帯増加数も少なくなり、相続による住宅取得の可能性も高くなると考えられ、今後、長期的には、住宅の需給は緩和していくと予想される。
 これまでのように人口が増え続けてきた社会では、住宅地開発などを行う必要があったが、これからの人口の増えない社会では、新たな宅地開発などを行う必要性が小さくなるということである(第5図参照)。
 このことは、今後住宅を取得しようとする人にとっては、住宅以外の支出により多くの消費を振り向けることができたり、より広い住宅、より質の高い住宅を購入できるようになることであり、その分だけ生涯を通じた実質的な所得が多くなっていることであるともいえる。

<第5章> 中年世代と家族・家庭

<第1節> 中年世代と家庭

<「会社人間」が多いとみられる現在の中年世代>
 生命保険文化センター「就労意識に関する調査」(一九九四年)により、就業者が現在勤めている会社についてどのような考えを持っているかをみると、中年世代では、「会社を信頼して働いている」「会社を誇りに思っている」「会社に忠誠心を持っている」「会社と一体感を持って働いている」「会社のためにはある程度自分を犠牲にしても構わない」との意見を持つ人の割合が高い。

<第3節> 中年世代と子供の教育費負担

<一九七〇年代半ばから上昇を続けた家計の教育費負担>
 家計の教育費負担を家計(勤労者世帯)の消費支出に占める教育費の割合でみると、一九七〇年代初めまでは低下傾向にあったが、その後上昇を続けている。また、合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む子供の数)は、七四年にほぼ人口を増減なく保つために必要な水準(二・〇八)を下回って以来、低下しており、子供一人当たりの教育費は年々大きくなっている可能性がある。
 また、教育費の負担(教育費/消費支出)はアメリカ二・三%(九五年)に対して、日本が四・七%(九五年)と、日本の方が重い。
<中年世代に重い教育費負担>
 教育費負担は特に、中年世代を含む三十五〜五十四歳で重い(第6図参照)。
<大学学費のための負担>
 子供の大学進学への期待は高まっている可能性がある。大学進学のためには、多額の費用がかかり、家計の負担は軽くない。例えば、子供を下宿させながら大学に通わせている場合、国立大学で年間百四十七万円、私立大学では二百十九万円の費用がかかる。特に低所得層の家計にとって、その負担は重くなっている。
 四十五〜五十九歳の家計の教育費(調査期間の関係上、入学金は含まれていない)の負担をみると、子供を自宅から大学に通わせている家庭で、所得が平均未満の家庭では、教育費の負担が極めて重く、特に私立大学に通わせている家計での可処分所得に占める教育費は、およそ二七%にのぼっている。また、これらの家計では、消費性向も一二〇%前後と所得を超えた消費を行っており、その分、貯蓄を取り崩して教育費をまかなっている可能性がある。こうした家庭では、老後のための貯蓄をする余裕がないということでもある。

<第U部> 一九九七年度を中心とした家計の動向と消費構造の変化

<第1章> 最近の家計動向

<家計を取り巻く経済情勢>
 一九九七年度の日本経済をみると、経済成長率は対前年度比〇・七%減と二十三年ぶりのマイナス成長となった。物価は、四月の消費税率引上げ等の影響で、消費者物価は対前年度比二・〇%の上昇、国内卸売物価は同一・〇%の上昇となったが、全体的には安定基調で推移した。
 雇用情勢は、一九九七年度後半以降は厳しさを増しており、有効求人倍率は〇・六九倍、完全失業率は三・五%となった。九八年四〜六月期の完全失業率は四・二%(季節調整値)となり、これまでの最高水準を記録した。
<消費支出の推移>
 消費の動きを国民経済計算の実質家計最終消費支出でみると、一九九七年度は前年度比一・一%減と、九六年度の二・八%増からマイナスに転じた(第7図参照)。
 四半期ごとの動きをみると、まず消費税率引上げによる駆け込み需要の反動減が現れた一九九七年四〜六月期に、前年同期比〇・四%減と大きく落ち込んだ。七〜九月期には緩やかながら回復していたが、秋以降には、金融システム不安等による経済の先行きに対する不透明感から家計消費が低調となり、同〇・九%減(十〜十二月期)、同四・三%減(一〜三月期)と大きく落ち込んだ。

<第2章> 世代と消費構造

<義務的な支出の多い中年世代>
 二十九歳以下と四十代の最近十年間の消費支出の伸びを寄与度からみてみよう(第8図参照)。
 四十代は、二十九歳以下に比べて消費をあまり切り詰めていないようにみえるが、これは中年世代は一般に子供や親などと同居し、世帯人員が多いことから、若い世代ほどには、食料、衣服など日常品や必需品を切り詰められないためと考えられる。また、「教育」や「その他」の寄与度が二十九歳以下に比べて高いように、中年世代は、ライフステージとして、教育費や仕送り金など、切り詰めることが難しい支出も多い。
 このように、中年世代は若い世代に比べて、義務的な消費に対する支出が多いことが、消費支出の落ち込みを少なくしている可能性がある。

むすび

▽中年世代の不安
 中年世代の不安をはじめ、人々の不安は、仕事や老後の生活に関わる社会のシステム、制度や慣行が、人口の年齢構成の新しい状況にまだ対応していないことによって生じているとみられる。本白書で、人口の年齢構成の変化に対応して、今後、社会として何が課題となり、どのような変化、改革の方向が求められているかを考察したのは、このような観点からである。
▽人口構成の変化と仕事―年齢にとらわれない働き方へ
 職場や働き方、それらを取り巻く社会システム、制度・慣行も労働力の中高年齢化といった人口構成の変化に対応したものにしていく必要がある。従業員の処遇や企業組織内での役割が、年齢によってあまりに強く規定されるようになっていると、当該企業は、従業員の年齢構成の変化による様々なリスクを負うことになり、場合によっては、特定の従業員が負担を負うことになる(例えば、失業する)など、個人にとってもリスクが高まってしまう。年齢と処遇との関係が柔軟であるような仕組みをつくることが、中年層の雇用の安定につながり、長寿化傾向に見合って、働く意欲のある高年齢層の就業の場を確保することにつながるだろう。従来、日本的な雇用慣行の一つの特徴として年功序列的な処遇、年功賃金が指摘されているが、この仕組みも年齢構成の変化に伴い変化してきている。
 同一企業に長く勤めるという長期雇用の慣行も日本の特徴といわれている。しかし、いったん離職した場合に再就職が厳しくなる面がある。実際、多くの人にとって、定年退職後の六十歳以上になった時の就業条件は厳しい。それは、定年までに長く勤めた会社の外でも通用する能力を身につける機会に乏しかったためであるという場合も多い。このような点で、他社でも通用する能力を身につけること、すなわち、職業能力の「ポータビリティ」を確保することは、個人にとってリスクを小さくすることでもある。
 マクロ的な人口の年齢構成の変化、特に、今後、若年労働力人口の大幅な減少が見込まれることは、高年齢者の就業に対して、社会としての期待、要請が高まることをも意味する。この点、日本の高年齢層の就業意欲が高いことは幸運なことであるともいえる。健康の改善等によってより長寿になっている中、従来よりも高年齢まで働くことは、自然なことであり、意欲ある高年齢層が実際に働けるような仕組みをつくっていくことが重要である。
 個人にとって、高齢期も含め、働く年齢、時期を自由に選びやすくなる仕組みが求められている。長期的には、働きたいならば年齢に関係なく働くという、「生涯現役社会」の方向へ向かうべきであろう。
▽老後の生活資金と安心
 現在の中年世代が高齢者になっていく頃には、日本は本格的な高齢社会を迎える。老後の生活に関して個人が感じる不安、リスクとして大きいのは、生活資金との関連で「働けなくなること」のリスク、「長生き」のリスク(いつまで存命するかの不確実さ)であり、また、健康のリスク、身体的に特に生活が自立できず介護を必要とするようになるリスクである。
 かつては、それらの老後のリスクをカバーするのは家族、特に現役世代である子供の役割であった。生活資金については、その後、公的年金と個人の貯蓄の役割に変わってきた。
 日本の公的年金は、将来給付に備えた積み立てを行いつつも、基本的には、年金を受給する引退世代、高齢者世代を現役世代が支える仕組みとなっているため、人口の構成、高齢化の程度によって、その収支が影響を受けやすいものとなっている。実際に、予想以上の出生率の低下や寿命の伸長により、高齢化が予想を上回って進む見込みとなってきたことから、現在、公的年金制度は改革を必要とするようになっている。
 幸いなことに、個人としての老後資金の積み立て、すなわち自助努力としての貯蓄については、所得水準が上昇してきたことに伴い、それを行う余力が大きくなってきている。そのことは、中年世代などこれから高齢化していく世代は、下の現役世代に依存せず、自助努力により、自分達の世代の中で「働けなくなる」リスクや「長生き」のリスクをプールし、分散する力が大きくなってきていることをも意味する。各世代が現役時代に積み立て、下の世代に依存しないようになっていれば、人口の年齢構成の変化によって、老後の生活資金が影響を受けるというリスクは基本的にはない。
▽介護サービス等の拡充
 実際に要介護となる人の割合はさほど高くはない。しかし、多くの人が介護に不安を感じている。この介護に伴うリスクへの備えや実際の介護の負担等を、個人だけで負わなくてもすむよう、社会全体で受けとめる体制を整備することが極めて重要となっている。
 そのことは、個人が介護費用の負担に対する不安、介護離職不安のために無理に消費を抑制しなくてもすむことや、今後の高齢社会でますます貴重となる労働力の確保に貢献することにもなる。
▽老後のより豊かな消費生活へ向けて
 以上のような老後に関わるリスクに対応できる社会システムをつくり上げていけば、今の中年世代が高齢者になっていく頃に迎える今後の本格的な高齢社会は、より楽しく活気に満ちたものとなり、個々人にとっても、高齢期はより実りあるものとなるだろう。
 人口の年齢構成の変化は、消費市場の姿をも変えていく。数の多い現在の中年世代が高齢者となり、仕事から引退して「純消費者」となっていくことに伴い、高齢者の消費市場は巨大なものとなるであろう。その高齢者層のニーズにこたえていくためにも、規制緩和等を通じて経済や金融の分野の構造改革を進め、市場での競争環境を確保することが重要である。そのことは、低廉な財やサービスの提供、選択の幅の拡大等を通じて、高齢者を含め消費者全体に利益をもたらす。
 また、現在の中年世代は、「団塊の世代」のこれまでの歩みにもみられてきたように、消費生活の面でも様々な新しい流行をつくり出し、その前の世代(現在の高齢者)にはなかった新しい経験をしてきた世代である。このことは、今後の高齢者が、新しい高齢消費者として、高齢者文化の創始者となる資質を持ち、新しい高齢社会において変革の推進力となっていくことを期待させる。
▽ストック(蓄積)の豊かな少子高齢社会
 一方、少子高齢社会については、様々な負担や制約の強まりが指摘されることが多い。例えば、マクロ的には、総人口に占める労働力人口の割合が低下することによって、一人当たりの消費可能額が制約され、生活水準の向上が制約されると懸念されている。
 しかし、少子高齢社会は、「労働力」の割合は低下するが、他方で、一人当たりの「資本」が大きくなり、それが「労働力」が少なくなる分を一部代替しながら生産活動を支える社会でもある。それは、今後増えていく高齢者が、多くの貯蓄を持って高齢期を迎えることが期待されるからである。すなわち、「労働力」でなくなる老後に備えて貯蓄を蓄えておくという、個人にとってはごく自然な行動が、その貯蓄を社会が活用することを通じて、生産活動などへの貢献にもなるわけである。この増加する貯蓄、金融資産を有効に活用することが、社会にとっても高齢者にとっても重要である。そのために、金融市場の効率化はもとより、その金融資産が投資される実体経済の活性化が不可欠である。
 また、人口増加が鈍化し、さらには減少に転じていく少子高齢社会は、住宅・土地のストックの面でも余裕の出てくる社会である。それは、マクロ的には、宅地開発のための新たな投資負担が小さくなるためである。
 また、このストック(蓄積)の面で、特に若い世代の得るものは小さくないとみられる。
▽新しい世代への知識、技術・技能ストック等の継承
 生産活動に直接、間接に関わる知識や技術・技能は、世代間で継承され、引き継いだ新しい世代はさらに新しい知識、技術・技能を付け加えて、また次の世代に引き継いでいくということが繰り返されてきた。そのことは経済成長として実を結び、後の世代ほど高い生活水準を享受できるものとなってきた。
 そして、何よりも、今の若年世代や年少世代は、中年世代が先頭にたって切り開き、築き上げてくれた、新しい人口構成に対応した社会システムを継承できる。
▽世界に先例を示す本格的な高齢社会の担い手
 今の中年世代が就職し始めていた一九六〇年、六五年には日本の一人当たり国民所得は、アメリカのそれぞれ六分の一程度、四分の一程度にすぎなかった。その頃から日本は、世界の歴史でもまれにみる高い経済成長を達成し、八〇年代後半には、世界でトップクラスの所得水準に達した。アジアの中で最初に所得面で欧米の水準に到達したのである。その間の成長を支えたのが今の高齢者であり、中年世代である。
 そして、今の中年世代にはもう一つの仕事が待っている。二十一世紀に入ってまもなく、日本は本格的な高齢社会を迎える。世界の歴史に例をみないような、ものすごいテンポで、またものすごい程度まで高齢化が進む中で、その先頭をきって高齢者となっていくのが今の中年世代である。中年世代は、誰も経験のないことを最初に経験する人達であり、それだけに、この世代が今抱えている不安は大きなものであるかもしれない。
 しかし、それは、チャレンジングなことなのではないか。アジアの国に先駆けて、欧米諸国の所得水準に到達するという偉業をなし遂げた、「会社人間」としての日本の中年世代は、「会社人間」をやめた後、今度は、世界に先駆けて高齢社会のモデルをつくるという、極めてチャレンジングな、やりがいのある仕事に挑むチャンスを与えられているのである。


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法人企業動向調査


―平成十年九月実施調査結果―


経 済 企 画 庁


◇調査要領

 本調査は、資本金一億円以上の全営利法人を対象として、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通し並びに設備投資に関連する海外直接投資動向を調査したものである。
 調査対象:調査は、原則として国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金又は出資額が一億円以上の全営利法人(約三万七千八百社)から、経済企画庁が定める方法により選定した四千五百二十八社を対象とした。
 調査時点:平成十年九月二十五日
 調査方法:調査は、調査法人の自計申告により行った。
 なお、資本金又は出資額が百億円以上の営利法人については、原則として全数調査、百億円未満の営利法人については、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
 有効回答率:調査対象法人四千五百二十八社のうち、有効回答法人四千二百三十五社、有効回答率九三・五%
〔利用上の注意〕
(1) 今期三か月の判断とは、平成十年四〜六月期と比較した場合の十年七〜九月期の判断、来期三か月の見通しとは、十年七〜九月期と比較した場合の十年十〜十二月期の見通し、再来期三か月の見通しとは、十年十〜十二月期と比較した場合の十一年一〜三月期の見通しである。ただし、在庫水準と生産設備については、それぞれの調査期間における判断と見通しである。
(2) 判断指標(BSI)とは、「上昇(強くなる・増加・過大)の割合−下降(弱くなる・減少・不足)の割合」である。
(3) 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事進捗ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
(4) 季節調整法は、センサス局法U、X‐11で算出した。
(5) 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
(6) 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社、JR関係七社及び電源開発(株)を調査対象に加えるとともに、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社については、六十年四〜六月期、JR関係七社については、六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
(7) 平成元年六月調査より消費税を除くベースで調査した。
(8) 平成十年六月調査より、以下のとおり産業分類の見直しを行い、昭和五十九年六月調査に遡及して集計を行った。
 @ 「造船」を「その他の輸送用機械」に合併。
 A 「印刷・出版」を「その他の製造業」に合併。
 B 「卸売・小売業、飲食店」の内訳を廃止し、「卸売業」と「小売業、飲食店」に分割。
 C 「運輸・通信業」の内訳を廃止し、「運輸業」と「通信業」に分割。
 D 「電力業」と「ガス業」を合併し、「電力・ガス業」とする。
 E 「サービス業」を「サービス業(除くリース業)」と「リース業」に分割。
 F 製造業を素材型、加工型に分類。

一 景気見通し(全産業:季節調整値)

(一) 国内景気第1表参照

 企業経営者による国内景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十年四〜六月の「マイナス五十九」の後、七〜九月には「マイナス五十七」とマイナス幅は若干小さくなっているものの、依然として「下降」が「上昇」を大きく上回っている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス三十六」、十一年一〜三月「マイナス十九」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。ただし、前回調査結果と比較すると、回復期待は薄らいでいる。
 産業別にみると、製造業では十年七〜九月「マイナス五十七」、十〜十二月「マイナス三十五」、十一年一〜三月「マイナス十七」となり、非製造業では十年七〜九月「マイナス五十八」、十〜十二月「マイナス三十八」、十一年一〜三月「マイナス二十二」となっている。

(二) 業界景気第2表参照

 所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十年四〜六月の「マイナス五十二」の後、七〜九月には「マイナス五十」とマイナス幅は若干小さくなったものの、依然として「下降」が「上昇」を大きく上回っている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス三十三」、十一年一〜三月「マイナス二十」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。ただし、前回調査結果と比較すると、回復期待は薄らいでいる。
 産業別にみると、製造業では十年七〜九月「マイナス五十二」、十〜十二月「マイナス三十四」、十一年一〜三月「マイナス十八」となり、非製造業では十年七〜九月「マイナス四十九」、十〜十二月「マイナス三十四」、十一年一〜三月「マイナス二十二」となっている。

二 需要・価格関連見通し(季節調整値)

(一) 内外需要(製造業)(第3表参照

 企業経営者による国内需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、平成十年四〜六月の「マイナス五十四」の後、七〜九月には「マイナス五十一」とマイナス幅は若干小さくなったものの、依然として「弱くなる」が「強くなる」を大きく上回っている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス三十三」、十一年一〜三月「マイナス十六」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。
 また、海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、十年四〜六月の「マイナス三十」の後、七〜九月には「マイナス三十三」と「弱くなる」が「強くなる」を大きく上回っている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス二十五」、十一年一〜三月「マイナス十三」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。

(二) 在庫水準(製造業)(第4表参照

 自己企業の原材料在庫水準に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十年九月末には「二十」と六月末の「十九」に引き続き過大感は高い水準となった。しかし、その後の見通しは、十二月末「十四」、十一年三月末「十」となり、過大感は和らいでいる。
 また、完成品在庫水準に関する判断指標をみると、十年九月末には「三十四」と六月末の「三十五」に引き続き過大感は高い水準となった。しかし、その後の見通しは、十二月末「二十四」、十一年三月末「十六」となり、過大感は和らいでいる。

(三) 価格(製造業、農林漁業、鉱業)(第5表参照

 自己企業の原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十年七〜九月は「マイナス九」と前期に比べマイナス幅が縮小したものの、依然として弱含みとなった。その後、十〜十二月「マイナス十」、十一年一〜三月「マイナス五」となり、引き続き弱含みの見通しとなっている。
 また、製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、十年七〜九月は「マイナス三十三」と大幅な下落となった。その後、十〜十二月「マイナス二十三」、十一年一〜三月「マイナス十七」となり、引き続き下落する見通しとなっている。

三 経営見通し(季節調整値)

(一) 売上高(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第6表参照

 自己企業の売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十年四〜六月の「マイナス三十三」の後、七〜九月には「マイナス三十一」とマイナス幅は若干小さくなったものの、依然として慎重になっている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス二十三」、十一年一〜三月「マイナス十一」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。
 産業別にみると、製造業では、十年七〜九月「マイナス三十八」、十〜十二月「マイナス二十六」、十一年一〜三月「マイナス十」となり、非製造業では十年七〜九月「マイナス二十六」、十〜十二月「マイナス二十」、十一年一〜三月「マイナス十三」となっている。

(二) 経常利益(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第7表参照

 経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十年四〜六月の「マイナス三十四」の後、七〜九月も「マイナス三十四」と慎重になっている。
 その後の見通しは、十〜十二月「マイナス二十六」、十一年一〜三月「マイナス十六」となり、悪化の程度は次第に和らいでいる。
 産業別にみると、製造業では十年七〜九月「マイナス四十一」、十〜十二月「マイナス二十九」、十一年一〜三月「マイナス十四」となり、非製造業では、十年七〜九月「マイナス二十八」、十〜十二月「マイナス二十二」、十一年一〜三月「マイナス十六」となっている。

四 生産設備見通し(製造業:季節調整値)(第8表参照

 自己企業の生産設備に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十年四〜六月の「三十」の後、七〜九月には「三十四」となり、生産設備の過剰感はさらに高まった。
 その後の見通しは、十〜十二月「三十二」、十一年一〜三月「三十」と若干低下するが、過大感は引き続き高い水準となっている。

五 設備投資の動向(全産業:原数値)

(一) 半期別動向第9表参照

 設備投資の動向を半期別に前年同期比でみると、平成九年度十〜三月(実績)二・七%減の後、十年度四〜九月(実績見込み)三・一%減、十〜三月(計画)八・七%減の見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業では九年度十〜三月七・一%増の後、十年度四〜九月〇・八%減、十〜三月一四・二%減の見通しとなり、非製造業では九年度十〜三月七・五%減の後、十年度四〜九月四・三%減、十〜三月五・六%減の見通しとなっている。

(二) 資本金規模別動向第10表参照

 資本金規模別に前年同期比でみると、資本金十億円以上の大企業では、平成九年度十〜三月〇・八%増の後、十年度四〜九月〇・一%増、十〜三月六・八%減の見通しとなっている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、九年度十〜三月九・二%減の後、十年度四〜九月九・三%減、十〜三月一二・四%減の見通しとなっている。

(三) 年度の動向

 平成十年度の全産業の設備投資計画(修正計画T)は約四十二兆四千億円となり、九年度(実績)に比べ六・〇%の減少が見込まれている。
 これを、当初計画と比較すると、前年度比は四・二%減から六・〇%減への下方修正となっている。
 産業別にみると、製造業では、約十四兆七千億円と、九年度に比べ七・八%の減少となり、当初計画の前年度比六・八%減から七・八%減への下方修正となっており、非製造業では、約二十七兆七千億円と、九年度に比べ五・〇%の減少となり、当初計画の前年度比二・八%減から五・〇%減への下方修正となっている。
 また、資本金規模別にみると、資本金十億円以上の大企業では、九年度に比べ三・五%の減少が見込まれており、このうち製造業では四・七%の減少、非製造業では二・九%の減少が見込まれている。
 一方、資本金一〜十億円の中堅企業では、一〇・九%の減少が見込まれており、このうち製造業では、一四・四%の減少、非製造業では、九・〇%の減少が見込まれている。

(四) 四半期別動向(季節調整値)

 四半期別の動向を前期比でみると、平成十年四〜六月(実績)の〇・五%増の後、七〜九月(実績見込み)は五・一%の減少となっている。
 産業別にみると、製造業では十年四〜六月の六・四%減の後、七〜九月は二・八%の減少となり、非製造業では十年四〜六月の三・九%増の後、七〜九月は五・九%の減少となっている。

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税金365日


税を滞納すると


国 税 庁


 納税は社会の基本的なルールです。日ごろから納税のための資金手当や納付の期限に十分注意し、期限内に納付されるようお願いします。特に、所得税の予定納税あるいは法人税や消費税及び地方消費税の中間申告については、確定申告とは別にそれぞれ納付の期限が定められていますので、ご注意ください。
 納付の期限を過ぎても納付されない場合には、本税とは別に延滞税を納付しなければなりません。また、財産差押え等の滞納処分を受ける場合があります。
 そこで、消費税及び地方消費税を例にとって中間申告と納付について説明するとともに、納付が困難な場合の納税の猶予及び滞納した場合の滞納処分について説明しましょう。

【消費税及び地方消費税の中間申告・納付】

 消費税及び地方消費税については、前課税期間の確定消費税額が四十八万円を超え、四百万円以下の場合には年一回の中間申告・納付を、前課税期間の確定消費税額が四百万円を超える場合には年三回の中間申告・納付をしていただくことになります。
 税務署では、中間申告をしていただく必要があると認められる課税事業者にそれぞれの中間申告・納付の期限に応じて「消費税及び地方消費税の中間申告書」及び「納付書」をお送りしていますので、定められた期限までに申告と納付をされるようお願いします(納付の期限は申告期限と同じ日です。)。
 なお、お送りした消費税及び地方消費税の中間申告書には、前課税期間の確定消費税額を基に計算した消費税及び地方消費税の中間申告税額があらかじめ記載されています。申告期限までに中間申告書の提出がない場合には、その記載されている消費税額及び地方消費税額が納付すべき額として確定することになりますので、中間申告書を提出されなかった場合でも、その税額を納付の期限までに納付していただくことになります。
 (注)1 地方消費税については、消費税と同一の申告書・納付書により、消費税と併せて同時に税務署に申告・納付することとされています。
    2 個人事業者については、振替納税の制度がありますので、ご利用ください。
    3 合併があった場合には、被合併法人の確定消費税額を加味した上で、中間申告税額を計算することとされていますが、届出の時期等によっては合併前の金額を基礎とした中間申告税額が記載されている場合がありますので、ご確認ください。

【納税の猶予】

 納税者が地震、風水害などの災害を受け、あるいは病気にかかり、又は、売掛金の回収が困難となるなどの事情によって、国税を納付の期限までに納付することができない場合には、一年以内の期間で納税の猶予を申請することができます。
 なお、猶予を受けた期間内に納付することができないやむを得ない理由がある場合には、更に猶予期間の延長(通算して二年が限度)を申請することができます。

【国税を滞納すると】

1 延滞税
 国税を滞納すると、その納付の期限の翌日から納付されるまでの日数に応じ、未納に係る本税の額に年一四・六%(ただし、納付の期限の翌日から二月を経過するまでの期間については年七・三%)の割合を乗じて計算した延滞税を本税に併せて納付しなければなりません。
2 督 促
 納付の期限を過ぎても納付されない場合には、税務署から督促状が送付されます。
 この督促状が発送された日から十日を経過する日までに国税を完納されないときは、滞納処分を受けることになります。
3 滞納処分
 滞納処分とは、納税者が国税を自主的に納付しない場合にこれを強制的に徴収するための手続きをいい、具体的には次の手続きによって行われます。
 @ 財産の差押え
 督促状の送付を受けても納付されない場合には、財産について差押えが行われます。
 差押えがされると、納税者はその財産を処分することができなくなります。差押えの対象となる財産は、土地・建物といった不動産、預金や売掛金といった債権、あるいは動産、有価証券など、多様なものとなっています。
 A 差押財産の公売
 差押えを受けてもなお納付されない場合には、税務署により、差し押さえられた財産が売却(これを「公売」といいます。)され、その売却代金が滞納国税に充当されます。
 なお、差し押さえられた財産が債権の場合には、税務署により直接取立てが行われ、その金銭が滞納国税に充当されます。

【相談はお早めに】

 納付の期限を経過して、納付の相談もなく滞納となったままにしておくと、財産差押え等の滞納処分を受けることとなります。
 早急に最寄りの銀行又は郵便局などで納付を済ませるか、納付できない事情がある場合には、お早めに税務署にご相談ください。

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 チャイルドシートの着用は大人の責任です


 車が万が一衝突した際に、子どもの事故被害を減らす役目を果たすのがチャイルドシートです。チャイルドシートは、事故で死亡する確率を八分の一に減らします。しかし、その着用率は約八%と低いのが現状です(平成十年五月、(社)日本自動車連盟調べ)。
 近年、幼い子どもの自動車乗車中の死傷事故が増えています。危険を予測できない子どもの命は大人が守らなければなりません。シートベルトが大人の命を守るのと同様に、チャイルドシートが子どもの命を守ります。

 チャイルドシート利用のポイント

○体格に合ったチャイルドシートを選ぶ
 乳児用(新生児〜九か月くらい)、幼児用(四か月〜四歳くらい)、ジュニアシート(三〜八歳くらい)の三種類のシートの中から、子どもの成長に合ったものを選びましょう。
○チャイルドシートは後部座席に取り付ける
 エアバッグの付いている自動車の助手席では、安全を十分に確保できないことがあります。
○しっかり固定する
 取扱説明書をよく読み、しっかり取り付けましょう。
○着用を習慣づける
 着用を嫌がらないように、乳児期から習慣づけることが大切です。(総務庁)


 
    <1月20日号の主な予定>
 
 ▽科学技術研究調査結果の概要……総 務 庁 

 ▽毎月勤労統計調査…………………労 働 省 
 



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