官報資料版 平成1127




                 ▽ 障害者白書のあらまし………………………………………総 理 府

                 ▽ 今年の新成人は百七十万人…………………………………総 務 庁

                 ▽ 消費者物価指数の動向(東京都区部十一月中旬速報値)…総 務 庁










障害者白書のあらまし


―「情報バリアフリー」社会の構築に向けて―


総 理 府


 この「障害者白書」は、障害者基本法(平成五年改正公布)第九条に基づき、「障害者のために講じた施策の概況に関する報告書」として、平成六年から毎年政府が作成し、国会に提出している年次報告である。
 「平成九年度障害者のために講じた施策の概況に関する報告書」は十二月一日の閣議を経て国会提出の後、「障害者の日」である十二月九日に平成十年版「障害者白書」として公表している。
<平成十年版障害者白書の特徴>
 近年における著しい情報通信技術の発達とその普及、特にインターネット等のネットワークの世界的な拡大は、障害のある人にとって必要な情報の入手や発信の可能性を大きく切り拓き、社会参加を促進する上で重要な役割を果たす可能性を持ったものと考えられる。しかし、情報通信機器やシステムは必ずしも障害のある人にとって使いやすいものとなっていないことも現実である。
 こうした観点から、平成十年版障害者白書の第1部では、障害のある人と情報通信との関係をテーマに、「情報バリアフリー社会の構築に向けて」という副題で、障害のある人が高度情報社会の様々な利便を享受できるようにするための方策として進められている各種の研究や技術開発、障害のある人の福祉の増進のために行われている情報通信分野における施策・サービス等の現状を取りまとめ、一層の研究開発の推進等の課題を述べ、今後の議論への糧となることを期待している。
 また第2部では、平成九年度を中心とした障害者施策の取組状況について、各施策分野ごとの取組の状況を取りまとめている。

<第1部> 障害のある人の可能性を拓く情報通信
 ―「情報バリアフリー」社会の構築に向けて―

<第1章> 障害のある人と情報通信

 近年における情報通信機器やシステムの発達と一般への普及には、目覚ましいものがある。情報通信機器は、家庭へも普及し国民の間に広まっている。特に、インターネット等のネットワークの普及は注目されるべきである。
 障害のある人は、障害のない人と同じコミュニケーション手段を利用することが困難な場合が多く、「情報の障壁」が存在している。これまでも、この障壁を取り除くため、各種の福祉機器等が開発され、その普及への努力がなされ、行政機関等でも対応策を講じてきたが、いまだ十分ではなく、障害のある人は社会の中で「情報弱者」であるということができる。
 情報通信機器やシステムの発達と普及は、このような「情報の障壁」を持つ「情報弱者」である障害のある人にとっても情報の取得や発信を容易にし、社会参加の機会を拡大する可能性を持っている。特に障害のある人とサービスを提供する行政等との間の情報交換を確保する上で、システムの役割は大いに期待できるが、現状では、その利用は必ずしも進んでいない。
 現在の情報通信機器やシステムは、障害のない人にも必ずしも使いやすいものとはなっておらず、障害のある人が利用するには、様々な隘路が存在する。このような隘路は新しい「情報の障壁」となって、社会的・経済的な格差を生み出すおそれさえある。
 このため、障害のある人にも使いやすい情報通信機器やシステムを開発・普及することが必要である。この場合、障害のある人の情報入手の方法は、障害の種別に応じて様々であるとともに、障害の程度によっても異なっているので、障害の特性に応じた教育訓練の実施や障害のある人の多様性に対応した情報通信機器やシステムの開発などの環境整備にきめ細かく配慮し、「情報バリアフリー」社会を実現することが重要である。

<第2章> 「情報バリアフリー」社会の構築に向けた政府等の動き

 情報化社会の進展に伴い、障害のある人にとっても使いやすいものとするための取組は、昭和六十年代から各種の計画や研究会等で指摘され、この実現のための指針・ガイドラインが策定されている。

<第1節> 障害のある人に配慮した情報通信の在り方に関する研究・提言等

(1) 障害者等対応情報機器開発普及推進委員会
 平成元年に設置された「障害者等対応情報機器開発普及推進委員会」は、平成二年に「情報処理機器アクセシビリティ指針」を公表し、さらに平成七年にはこれを改定した「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」を策定した。
 この指針は告示されており、現在ではこの指針に基づいて、様々な障害者支援機能が開発・商品化され流通している。
(2) 経済構造の変革と創造のための行動計画
 平成九年に閣議決定されたこの行動計画では、医療・福祉関連分野と情報通信関連分野において、「障害者や高齢者が扱いやすい情報通信機器の開発・普及を図る」「情報通信の利用に関するバリアフリー化を推進するために、情報アクセスに関するガイドラインの策定を推進する」「高齢者・障害者のため機能代行・支援通信システム技術の研究開発を推進する」等の具体的な行動計画が策定されている。
(3) 情報通信二十一世紀ビジョン
 平成九年の電気通信審議会答申「情報通信二十一世紀ビジョン」は、情報化が進む中で、これに対応できない人や高齢者・障害者等の「情報弱者」とその他の人々との間に個人間の情報格差が発生しており、こうした格差が社会的・経済的格差につながるおそれもあるため、すべての人が情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」な環境整備が必要であると指摘している。
(4) ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会
 平成十年に出されたこの研究会報告書では、情報通信システムが障害のある人や高齢者の自立と社会参加の促進、各種のサービス提供の高度化等に極めて有意義であるが、情報通信機器やシステムが障害のある人等にとって自ら円滑に利用できるようになっていないことが問題であるとし、「情報バリアフリー」環境を実現することの必要性を指摘している。

<第2節> 情報バリアフリーを実現するためのガイドライン等の作成

(1) 障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針
 平成七年に告示したこの指針では、コンピュータを利用する上で発生する主な障壁を想定した上で、それらの障壁を乗り越え、障害のある人等が容易に情報処理機器を利用できるようにするため、キーボード、スイッチ、ディスプレイ、プリンタ等の入出力手段を改良し、特殊な入出力装置の接続を容易にすること等によって、機器操作上の障壁を可能な限り克服・軽減し、使いやすさを向上させることを目的として、具体的な改善項目をガイドラインとして設定している。
(2) 保健医療福祉分野における情報化実施指針
 平成七年に策定されたこの指針は、保健医療福祉分野全体の情報化を進めることが、各種のサービスを向上させる上で有用であるという観点から、障害のある人に関して、その社会参加と自立を確保する上で、情報機器やシステムが果たす役割が大きいとし、障害のある人が利用できる情報関連技術・機器等の開発・普及、情報ネットワークや放送サービスの整備・充実が必要であると指摘している。
(3) 電気通信設備の機能に関するガイドラインの作成
 前記の「ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会」において、高齢者や障害のある人自身による情報通信の円滑な利用を実現するため、ユニバーサルデザイン(すべての人が使えるようにデザインするという考え方)の概念の普及・定着を図るという観点から、電気通信のアクセシビリティ(使いやすさ)を確保するため、電気通信設備の機能の基準を示す「電気通信設備のアクセシビリティ指針」を策定した。
(4) 標準化の推進
 平成十年、日本工業標準化調査会は、「高齢者・障害者に配慮した標準化政策の在り方に関する建議」を提出し、急速に進歩を続ける情報技術を障害のある人等が容易に利用できるようにすることが、障害のある人等の社会参加の促進にとって重要であり、このため障害のある人等に配慮した情報技術(インターフェース等)の標準化を検討すべきであるとしている。
(5) 海外の動き
 国際標準化機構(ISO)においては、障害のある人等の持つニーズについての問題を課題として取り上げ、今後この分野での国際ガイドラインづくりが議論されることとなっている。
 また米国では、平成十年(一九九八年)、建築・輸送障壁適合委員会において、電気通信法アクセシビリティに関する指針を公表、施行しており、電気通信設備及び電気通信端末についての利用可能性と容易性及び互換性を確保するのに必要な入力、出力などの機能についての要件を定めている。

<第3章> 障害のある人に配慮した情報通信機器・システムの研究開発等

 政府では、各省庁におかれている研究所等において研究開発を進めるとともに、民間事業者の行う研究開発を促進するための助成措置を講じている。

<第1節> 研究開発等の推進

(1) 障害のある人のためのコミュニケーション機器の開発
 厚生省国立身体障害者リハビリテーションセンターでは、情報を入手したり、自分の意思を伝達したりすることが困難な人のための各種コミュニケーション支援機器を開発している。
(2) 汎用・福祉型情報端末の研究開発
 郵政省通信総合研究所では、障害のある人を含め誰にでも使いやすい情報端末技術として「ユニバーサル端末技術の研究開発」を実施している。
(3) 障害者対応マルチメディアシステムの研究開発
 通商産業省工業技術院では、視覚障害者のグラフィカル・ユーザー・インターフェース(絵等を画面表示に使うことにより、利用者が直感的に操作等を理解できるようにしたコンピュータの利用者操作環境)やマルチメディア情報へのアクセスを支援するシステムの研究開発を行っている。
(4) 障害者・高齢者・介護者用情報通信システム 実現のための研究開発
 通信・放送機構小石川リサーチセンターでは、現段階において収益性が見込めないため、民間での研究開発が十分に行われない障害者・高齢者・介護者用情報通信システムを実現するために必要な研究開発を行っている。
(5) 情報バリアフリー型通信・放送システムの研究開発
 郵政省では、障害のある人の様々な障害に対応できる情報バリアフリー型通信・放送システムの研究開発を行っている。
(6) 地方公共団体と協力した研究開発
 郵政省では、障害のある人等の使いやすいインターネットの利用環境を実現するため、金沢市において障害のある人等も容易に利用可能なインターネットの実証実験を行った。

<第2節> 民間事業者等への助成等

(1) 高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成金
 この助成金は、障害のある人等の情報通信の利用を促進し、これらの人々が安心して暮らせるとともに、社会参加を果たすことができる環境を実現するための通信・放送サービスの開発に必要な通信・放送技術の研究開発を支援する目的で、平成九年度から交付されている。
(2) 高齢者・障害者支援型情報システム開発事業
 障害のある人等にとって使いやすい情報システムや、障害のある人等の固有のニーズに対応する情報システムの技術開発を行う技術・アイデアを有するものを支援するため、平成十年度補正予算において、「高齢者・障害者支援型情報システム開発事業」が実施された。
(3) その他の助成措置
 前記のほか、厚生科学研究に関する補助金や(財)テクノエイド協会の助成事業により、障害のある人に関わる情報文化支援のための研究開発が行われている。

<第4章> 情報通信機器・システムを活用した各生活分野での支援施策の状況

<第1節> 情報提供の充実

(1) TAOホームページ
 身体障害者向けに、インターネットを利用し、通信・放送機構のホームページを通じて「障害者向け行政情報」「通信・放送サービス情報」等を提供している。
(2) 障害者情報ネットワーク(ノーマネット)等
 (財)日本障害者リハビリテーション協会は、障害のある人の社会参加に役立つ各種情報を提供するとともに、障害のある人の情報交換の場を提供する「障害者情報ネットワーク」(ノーマネット)を運営している。
 また、同協会ではインターネットで「障害保健福祉研究情報」を提供している。
(3) 点字情報ネットワーク事業等
 従来、点字図書館や点字出版施設、聴覚障害者情報提供施設においては、点字刊行物、盲人用の録音物、聴覚障害者用字幕(手話)入りビデオカセットの貸し出し等の情報サービスに取り組んできたが、近年、全国の点字図書館等で利用できる「点字情報ネットワーク事業」など、情報通信機器を活用したサービスの向上に努めている。

<第2節> 就学支援施策

(1) 盲学校点字情報ネットワーク
 副教材や学習参考書等、盲学校の教育活動の改善に必要な点字情報を全国盲学校の共有財産とするため、「盲学校点字情報ネットワークシステム」に、平成十年三月末現在で六十五盲学校が加盟している。
(2) マルチメディアを活用した教育
 病院内に設置されている小・中学校の病弱・身体虚弱特殊学級と当該学級設置校相互を通信回線で接続し、大型テレビ等を設置し、双方が一体となった授業等を行うために必要な設備の購入と効果的な活用方法に関する研究開発を行う「へき地学校高度情報通信設備(マルチメディア)活用方法研究開発事業」を実施している。

<第3節> 就労支援施策

(1) テレワークの実験等
 日本障害者雇用促進協会では、企業が積極的にテレワークを導入することが、障害のある人の雇用を進める上で効果的であると考えられることから、その有効性を検証するため、(社)日本アビリティーズ協会ほかに委託して研究を行った。
(2) 情報バリアフリー・テレワークセンター施設整備事業
 障害のある人が障害のない人と同様の環境で作業等が行えるよう、障害のある人に配慮した情報通信システム等を設置した、情報バリアフリー・テレワークセンター施設の整備を行うこととしている。
(3) テレワーク促進税制の創設
 障害のある人の就労機会の拡大等に資することが期待されているテレワークを普及するため、平成十年度税制改正において、固定資産税を軽減する「テレワーク促進税制」が認められた。

<第4節> 交通・移動支援施策

(1) 障害のある人の安全な道路交通を支援するシステムの整備
 障害のある人の安全な道路交通を支援するため、道路を安全に横断するための視覚障害者用信号機や弱者感応式信号機、障害のある人が安全に運転できるための光ビーコンや交通情報板等の整備を推進するとともに、新交通管理システムの一環として、障害のある人の安全を確保する安全運転支援システム(DSSS)の実用化に向けた研究開発を推進している。
(2) 交通機関施設内での移動制約者支援システム等の研究開発
 障害のある人の円滑な移動を確保するため、駅等の交通ターミナルにおけるエレベーター等の施設の情報提供の様式、種類、略記号等を定め、交通事業者がガイドマップを作成する上での指針として「モデルガイドマップ」を作成し、その情報提供がインターネットを通じて行われている。
 また、駅等の転落防止策として、携帯型誘導案内システムの開発等を行うこととしている。
(3) 障害のある人を含めた歩行者支援に関する研究
 従来進めてきた高度道路交通システムを包含した、障害のある人や高齢者等を含む歩行者の移動を支援するための情報提供システムの研究開発を行っている。

<第5節> 生活の安全確保システムの推進

(1) FAX一一〇番
 障害のある人のため、緊急通報をファックスによって受け付ける「FAX一一〇番」を全国で設置している。
(2) 消防機関との緊急通報システムの整備等
 障害のある人等、災害弱者からの火災・救急要請に対応するため「災害弱者消防緊急通報システムモデル事業」を実施している。

<第6節> 地方公共団体における支援施策

 地方公共団体では、障害のある人への情報提供の充実を図るため、ホームページ等を活用したサービス等が実施されている。障害のある人が情報通信システムを十分活用して社会参加を果たせるよう地方公共団体が支援する施策は確実に普及しているが、今後とも各種の研究開発の成果を取り入れるとともに、事業を支えるボランティア等の養成の確保が望まれる。

<第5章> 今後の課題

 高度情報社会の利便をすべての人が享受するためには、障害のある人等が情報通信機器やシステムを利用する際の障壁を取り除いた「情報バリアフリー」な社会環境を実現することが重要である。これまでも様々な努力が行われてきたが、今後一層の取組が必要な課題もある。
(1) 障害の特性に対応した機器やシステムの開発と供給
 何よりも大切なことは、情報通信機器やシステムを障害のある人を含め誰にでも使いやすくすることである。このためには、製品開発の段階から「情報バリアフリー」への配慮が行われるよう各種の指針やガイドラインを機器製造事業者やシステムサービス事業者等に普及・浸透させることが必要である。さらに、障害特性に応じて、機器の操作等を支援する技術の研究開発と普及を行う必要がある。このためには、障害のある人の情報通信や情報通信機器・システムに対するニーズをきめ細かく把握することが必要である。
(2) 標準化の推進
 機器やシステムの仕様の標準化については、国際的標準化の検討が始められている。標準化が進められることにより、障害のある人のために開発された特別の機器等を一般的・標準的な機器等と接続し、また、特別の手続きを使わずに他の機器との情報交換ができるなど、障害のある人の情報通信利用の環境が大きく改善されることが期待される。
(3) 情報提供の強化
 障害のある人が情報通信を利用して様々な情報を取得できるようインターネット等を利用して各種の情報発信が行われているが、こうした情報を量的に拡大するとともに、研究開発の成果や障害のある人に対応した製品情報など、情報の質的な向上が必要である。
(4) 障害のある人の社会参加を支援する情報通信システムの開発と普及
 情報通信技術は、障害により移動に制約を受ける人々の安全確保に大きな役割を果たすことができる。このため、視覚障害者用信号機や弱者感応式信号機の改善、安全運転支援システム(DSSS)の早期実用化が必要である。
 またAHS(走行支援道路システム)等のITS(高度道路交通システム)アプリケーションとの互換性・汎用性を考慮した上で、障害者等への情報提供システムの開発を推進していくことが必要である。
(5) コミュニケーション支援の充実
 障害のある人の情報通信の利用を推進するに当たっては、機器などの活用支援や基礎的コミュニケーションを支援する点訳奉仕員、手話奉仕員、手話通訳者、要約筆記奉仕員等の養成と、その指導者の育成を図ることが重要である。

<第2部> 平成九年度を中心とした障害者施策の取組

 平成九年度に障害者のために講じた施策を、「相互の理解と交流」「社会へ向けた自立の基盤づくり」「日々の暮らしの基盤づくり」「住みよい環境の基盤づくり」の四つの視点に立ってまとめている。

<第1章> 相互の理解と交流(施策を推進する上で前提となる「心の壁」を除去するための啓発広報等)

<第1節> 障害のある人に対する理解を深めるための啓発広報等

(1) 啓発広報
 「障害者の日」「人権週間」「障害者雇用促進月間」「障害者週間」等を設定し、各種の行事を実施するとともに、「障害者の日」を中心とするテレビ、新聞等マスメディアを活用した啓発広報等を行っている。
 平成九年度は、「アジア太平洋障害者の十年」の中間年に当たることから、中間年記念芸術祭「アジアの風」を開催した。さらに例年の「障害者の日・記念の集い」に、皇太子同妃両殿下のご臨席を賜り、お言葉を頂戴するとともに、障害者の福祉の向上に顕著な功績のあった個人・団体の内閣総理大臣表彰を行った。また、政府が実施している施策の進捗状況について広報することも重要であることから、各種計画の実施状況等について公表している。
(2) 福祉に関する教育
 都道府県における市民会議や福祉展の開催、児童を対象とした福祉教育等の実施のほか、平成六年度に創設した「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」において、啓発普及事業等の取組への支援を行った。
 学校教育においては、障害のある児童生徒等に対する理解と認識を深めるため、教員等を対象とした講習会の開催、指導資料の作成・配布等を行った。
(3) 地域住民等のボランティア活動
@ 生涯学習振興の観点から人々のボランティア活動を推進するため、都道府県教育委員会や生涯学習推進センターを拠点に、生涯学習ボランティアセンターの開設、ボランティア団体やその活動の情報収集・提供と相談事業、「活動の場」の開発等、ボランティア活動の支援・推進を図った。
  また、平成十年度から新たに市町村域において、公民館等の地域の身近な施設を拠点としたボランティア活動のコーディネートシステムの在り方に関する研究開発を行うこととした。
A 学校におけるボランティア教育としては、ボランティア体験活動等、様々な体験活動・学習機会を与えるための実践研究として、「ボランティア体験モデル推進事業」等を実施した。
  また、ボランティア教育の在り方について、小・中・高等学校の教員等で構成する研究協議会の開催等を行った。
B 地域におけるボランティア活動の振興のため、都道府県、市町村のボランティアセンターにおいて、情報誌の発行、入門講座の開催、相談、登録、あっせん等の事業、活動を推進するリーダーやコーディネーターの養成等の事業を実施する等、地域において活動したい人が、(いつでも、どこでも、誰でも)気軽に(楽しく)参加できる枠組みづくりに努めているほか、ボランティアセンターの施設整備等への支援を行った。
  また、法人格の付与等を通じて、ボランティア活動をはじめとする市民活動を促進することを目的とした特定非営利活動促進法(NPO法)が成立し、平成十年十二月一日から施行されることとなった。

<第2節> 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力

 我が国は、国際社会の一員として、障害のある人に対する各施策分野において、我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に努める必要がある。
 我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術、経験などを、政府開発援助(ODA)や民間援助団体(NGO)などを通じ、開発途上国の障害者施策に役立たせることの意義は大きく、「政府開発援助大綱」においても、政府開発援助を効果的に実現するための方策として、「子供、障害者、高齢者等社会的弱者に十分配慮する。」ことを掲げている。
 障害者施策の各分野においては、援助を行うに当たり、援助対象国の実態や要請内容を十分把握し、その国の文化を尊重しながら要請に柔軟に対応することが大切であり、我が国は、援助対象国との密接な政策対話等を通じ、様々な援助ニーズにきめ細かく対応するよう努めている。
 平成九年度においては、インドネシアに対する無償資金協力及び有償資金協力として、障害者職業リハビリテーションセンターの建設・修復等の協力を行っているほか、草の根無償資金協力により、南アフリカにおける身体障害者のための職業訓練施設に対する機材供与等、五十三件の障害者関連の援助をNGO、地方公共団体等を対象に実施した。
 また、障害者関連分野において、国際協力事業団(JICA)を通じての研修員受入れや青年海外協力隊員及び専門家の派遣等を行っている。
 そのほか、NGO事業補助金により、平成九年度に十四か国において十五団体、二十四事業の障害者関連事業に対し、補助金を交付した。
 さらに、我が国は、援助対象国への直接的な援助のほか、国連等国際機関を通じた協力も行っている。例えば、国連障害者基金、日本・ESCAP協力基金、オンコセルカ症(河川盲目症)基金、ユネスコへの拠出を通じ、これら機関の活動を支援している。

<第2章> 社会へ向けた自立の基盤づくり(障害のある人が社会的に自立するために必要な教育・育成、雇用・就業等)

<第1節> 障害の特性に応じた教育・育成施策

(1) 障害のある子供に関する教育施策
@ 障害のある児童生徒等については、その能力を最大限に伸ばし、自立し社会参加するための基盤を培うため、障害の種類、程度等に応じた教育を行っているが、平成十年七月の教育課程審議会答申に基づき、特殊教育に関する学習指導要領等の改訂を進めている。
  また、教員の資質の向上を図ることを目的として、平成九年六月にいわゆる介護等体験特例法が成立し、小学校又は中学校教諭の教員免許状を取得するには、盲・聾・養護学校及び社会福祉施設での介護等の体験が義務付けられた。
A 障害のある子供の後期中等教育の機会を確保するため、高等部の訪問教育について、平成十年度からは全都道府県で試行的実施を行う体制が整った。
B 大学入試センターにおいては、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライターによる解答、チェック解答、試験時間の延長などの特別な措置を講じた。
  また、放送大学では、障害のある人も容易に視聴できるよう、平成十年一月二十一日から衛星放送を利用した全国放送を開始した。
C 学校教育終了後及び学校外における学習機会を提供するため、公民館、図書館等の社会教育施設にスロープ、エレベーター等の整備を行うとともに、点字図書、拡大読書機、字幕入りビデオ等の整備や、社会教育施設における学級・講座等において、障害のある人の問題に関する学習機会を提供し、理解の促進を図った。
(2) 障害のある児童に対する育成施策
@ 障害のある児童に対する児童福祉施設での指導訓練のほか、心身障害児通園(デイサービス)事業、短期入所(ショートステイ)事業、訪問介護(ホームヘルプサービス)事業を充実し、障害のある児童の療育について児童相談所、保健所等における相談・指導を実施した。
A 障害の重度化、重複化に対応するため、心身障害児総合通園センターの整備や心身障害児通園施設機能充実試行的事業、重症心身障害児(者)通園事業等を実施した。
B 障害の予防に関する研究二十二課題、療育に関する研究七課題の心身障害研究を実施した。

<第2節> 障害のある人の職業的自立を図るための雇用・就業施策

(1) 身体障害者及び知的障害者の雇用の状況
 我が国においては、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、民間企業、国、地方公共団体は、一定の割合以上、身体障害者を雇用しなければならないこととされている。また、雇用されている知的障害者については、実雇用率を算定するに当たり、身体障害者と同様にカウントすることとされている。
 さらに、平成十年七月一日から一定の割合以上の身体障害者又は知的障害者を雇用しなければならないこととされた。


@ 民間企業のうち、身体障害者雇用率一・六%が適用される一般の民間企業(常用労働者数六十三人以上の規模の企業)における雇用者数(平成九年六月一日現在)は二十五万三十人(前年二十四万七千九百八十二人)、実雇用率一・四七%(前年同様)となっている。
  また、一・九%の雇用率が適用される公団、事業団等の特殊法人(常用労働者五十三人以上規模の法人)については、実雇用率は前年と同率の一・九六%となった。
A 国、地方公共団体のうち、雇用率二・〇%が適用される非現業的機関(各省庁、都道府県、市町村の行政機関等)の雇用者数は四万二千三十七人(前年四万二千九人)、実雇用率二・〇二%(前年二・〇一%)であり、一・九%の雇用率が適用される現業的機関(郵政省、大蔵省造幣局及び印刷局、林野庁、地方公営企業等)の雇用者数は六千百四十四人(前年六千六十八人)、実雇用率二・二五%(前年二・二一%)となっている。
(2) 障害のある人の雇用促進に関する施策
@ 法定雇用率未達成の企業等に対する雇用率達成指導、適正実施の勧告を行い、改善のみられなかった企業に対しては、企業名の公表を前提として特別指導を実施した。
A 身体障害者雇用納付金制度により、雇用率未達成事業主の納付金を財源に、雇用率達成事業主等に調整金及び報奨金を支給した。
B 障害者の雇用の促進を図るため、障害者雇用継続助成金の支給や融資、税制等による事業主の援護措置を行った。
C 障害のある人に対し、職場適応訓練等の就職援護措置を講じた。
D その他、障害の種類に応じたきめ細かな支援施策を講じている。
E 障害者の雇用の促進等に関する法律等の一部改正が行われ、平成十年七月から知的障害者が障害者の雇用率の算定基礎に加えられることとなった。
(3) 障害の重度化に対応した施策
@ 重度身体障害者については、雇用率算定に当たって、一人を二人と算定する等の特例措置を講じているほか、第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成や重度障害者雇用促進プロジェクト事業、地域障害者雇用情報ネットワーク事業などの雇用促進を図るための対策を講じた。
A 一般の就業が困難な者に関する授産施設等の整備を行った。
(4) 職業リハビリテーション施策
@ 公共職業安定所におけるきめ細かな職業相談や職業紹介、障害者職業センター等における職業リハビリテーション技術の開発及び普及、職業リハビリテーションサービスの提供等を行った。
  また、公共職業能力開発施設において、障害のある人を受け入れやすくするために、校舎の入口のスロープや手すり、トイレ等の整備を行った。
A 職業リハビリテーションに携わる専門職員の養成・確保に努めている。

<第3節> 障害のある人の生活を豊かにするためのスポーツ・レクリエーション及び文化活動の振興

(1) スポーツの振興
@ 全国的な身体障害者のスポーツ大会である全国身体障害者スポーツ大会、全国ろうあ者体育大会、高い競技性を持つジャパンパラリンピック競技大会、全国車いす駅伝競走大会等、数多くのスポーツ大会や教室が開催されている。
  知的障害者についても、全国知的障害者スポーツ大会(ゆうあいピック)が開催されているほか、ジャパンパラリンピック競技大会に一部参加するようになった。
A 障害者のスポーツ振興のため、障害の特性に応じて適切な指導ができる障害者スポーツ指導者の養成への支援、グラウンド・ゴルフやインディアカ等のニュースポーツの普及などを行うスポーツ団体の育成支援やスポーツ振興基金においてスポーツ団体のスポーツ事業に対する支援を行っている。
(2) 長野パラリンピック冬季競技大会における活躍
 冬季障害者スポーツ大会の祭典である「長野パラリンピック冬季競技大会」が、平成十年三月五日から三月十四日の十日間にわたり、長野県長野市を中心に開催された。大会では、五競技三十四種目で熱戦が繰り広げられたが、大会史上初めて知的障害者の正式種目としてクロスカントリースキーが実施された。
 日本選手は目覚ましい活躍を見せ、金メダル十二個、銀メダル十六個、銅メダル十三個の合計四十一個のメダルを獲得した。
(3) レクリエーション及び文化活動の振興
 障害のある人にとってのレクリエーションや文化活動は、全国各地で様々な活動が行われており、障害のある人によるコンサートや、聴覚障害、視覚障害のある人でも楽しめる演劇等も盛んに行われるようになってきている。
 また、国民文化祭や全国高等学校総合文化祭においても、障害のある人々・生徒が共に参加している。

<第3章> 日々の暮らしの基盤づくり(障害のある人が日常生活の質を確保するために必要な保健・医療、福祉等)

<第1節> 障害の予防・早期発見・早期治療等のための保健・医療施策

(1) 障害の予防、早期発見及び研究
 障害の原因、予防・早期発見・治療及び療育に関する研究を実施するとともに、妊産婦に対する健康診査、先天性代謝異常等検査、乳幼児健康診査等を実施した。また、周産期医療の確保のため、新生児集中治療管理室、周産期集中治療管理室の整備や、国立大学附属病院の周産母子センターの設置等のほか、総合的な機関として国立成育医療センター(仮称)の整備を進めている。
 さらに、学校及び職場における安全教育や安全対策、地域における妊産婦や新生児・未熟児等に対する訪問指導により、障害の予防に努めている。
(2) 医療・リハビリテーション医療
 障害のある人のための医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。このため、国立大学附属病院においては、リハビリテーション部等の整備、国立療養所では、進行性筋萎縮症及び重症心身障害児の入院治療を行った。また、身体障害を軽減もしくは除去するための更生医療及び育成医療を行った。
 さらに、歩行困難等の重度身体障害者に対するリハビリテーション器具等の利用に関する助言や各種医療制度に関する指導、補装具の給付等を行った。
 平成六年の医療保険制度の改正により、かかりつけ医師による往診や在宅人工呼吸器指導管理等、在宅医療に係る診療報酬の改善を図ったほか、訪問看護ステーションによる訪問看護事業の対象を重度障害者等に拡大した。
(3) 精神保健福祉施策
 精神病院の措置入院患者(約四千八百人)については、公費による医療費負担制度が設けられ、また、外来医療については、約四十八万人を対象として通院医療費の公費負担制度が設けられており、在宅の精神障害者の生活指導等を行う精神科デイケア事業及び精神科ナイトケア事業を実施した。
 保健所においては、精神保健福祉センターや医療機関、社会復帰施設等との連携の下に、精神保健福祉相談員による精神保健福祉相談、保健婦による訪問指導を実施した。
 また、精神保健福祉センターでは、精神保健福祉に関する相談指導や技術援助、知識の普及等の業務を行ったほか、心の健康づくり等の事業を実施した。
 平成七年度には、精神障害者の社会復帰施策の充実、より良い精神医療の確保等を図るため、「精神保健法」を改正し、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」とした。
 さらに、夜間や土日曜でも安心して精神科の救急医療が受けられるよう精神科救急医療体制整備事業を実施した。
(4) 専門従事者の確保
 医師については、卒前、卒後の教育の中でリハビリテーション関係の充実を図り、看護婦については、「精神看護学」や「在宅看護論」を教育課程に加え、資質の高い看護職員の養成に努めることとした。また、理学療法士及び作業療法士の養成施設については、養成力の確保について目標を達成している。
 さらに、精神保健福祉士法及び言語聴覚士法が平成九年十二月に成立し、精神障害者の社会復帰に関する相談・援助を行う精神保健福祉士及び言語機能及び聴覚等に関するリハビリテーションを行う言語聴覚士が、新たに国家資格として誕生した。

<第2節> 障害のある人の生活の質の向上のための福祉施策

(1) 生活安定のための施策
 障害のある人に対する所得保障として、障害基礎年金、障害厚生(共済)年金の制度と、障害による特別の負担に着目し、その負担の軽減を図るために支給される各種手当制度がある。
 我が国の年金制度は、国民皆年金体制が確立され、原則としてすべての国民がいずれかの年金制度に加入することとされているので、被保険者期間中の障害については、障害基礎年金や障害厚生(共済)年金が支給されるほか、国民年金に加入する二十歳より前に発した障害についても障害基礎年金が支給されることから、原則としてすべての成人障害者が年金を受給できることとなっている。また、特に重度の障害のある人を対象とする特別障害者手当等も支給されている。
 これらの年金及び手当については、毎年物価の上昇に合わせて支給額の改定を行う(物価スライド)ほか、少なくとも五年に一度行われる財政再計算の時に、生活水準の向上や賃金の上昇に応じて支給額の改善を行っている。
(2) 福祉サービス
@ 在宅サービス
・ 障害児(者)ができる限り住み慣れた家庭や地域で生活ができるようにするためには、その介護に当たる家族の介護負担を軽減するとともに、障害のある人の自立した生活を支援することが重要である。このため、訪問介護員の派遣及び短期入所(ショートステイ)事業を実施している。
・ 重度の身体障害者が、地域の中で日常生活を自主的に営むことができるように、身体障害者の利用に配慮した身体障害者福祉ホームの整備や公営住宅や福祉ホーム等に住む身体障害者を対象に、専任介護グループによる安定的な介護サービスを提供する身体障害者自立支援事業を行った。
  さらに、知的障害者の地域における自立生活の場を確保し、食事の準備や金銭管理等について世話人を派遣して援助する世話人付き共同生活住居(グループホーム)の増設を図った。
・ 日帰り介護事業については、平成六年度からは、身体障害者療護施設等を併設する適当な施設のない地域においても事業が実施できるよう単独型施設に対する加算制度を導入し、また、知的障害者を対象とする日帰り介護については、重度知的障害者を対象とする重介護型日帰り介護センターの運営を開始しており、平成九年度からは一日の利用定員を五人以上に引き下げた。
・ 在宅の身体障害者の社会参加を促進するために、都道府県・指定都市が実施する「障害者の明るいくらし」促進事業では、平成九年度に、「盲導犬」の育成頭数の増加を図った。
  また、精神障害者が一定期間事業所に通い、対人能力や仕事に対する能力を養うための精神障害者社会適応訓練事業等を実施した。さらに平成八年度から地域で生活する精神障害者の日常生活の支援や、相談への対応、地域交流活動を実施するため、精神障害者地域生活支援事業を実施している。
A 施設サービス
  今日の施設は、入所させるだけではなく、施設が蓄えてきた処遇の知識及び経験あるいは施設の持っている様々な機能を地域で生活している障害のある人が利用できるようにすることが必要であり、そのための事業を行った。
  また、入所者の社会復帰を目的とした施設では、地域生活への移行を促進する措置を講じている。
B 専門職員等の養成確保
  社会福祉士や介護福祉士等の養成、各種リハビリテーション専門職員の養成訓練等、福祉分野における人材確保を図った。
C 精神障害者福祉の法制の整備
  平成七年七月に「精神保健法」を改正して施行された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」により、法の目的や責務規定に、精神障害者の自立と社会参加の促進のために必要な援助を行うという福祉施策の理念が加えられた。
  さらに、同法により、精神障害者保健福祉手帳制度の創設、社会復帰施設や社会適応訓練事業の法定化等、精神障害者に対する施策の枠組みが確立された。
D 精神障害者社会復帰促進センター
  平成五年の精神保健法の改正により、「精神障害者社会復帰促進センター」を設置することとされたことにより、平成六年に同センターが設置され、具体的事例に即した社会復帰の訓練・指導等の研究開発等の事業を実施している。
E 障害による資格制限の見直し
  精神障害者に関わる免許資格等については、栄養士、診療放射線技師、調理師、製菓衛生師等については平成五年に、理容師及び美容師については平成七年に、それぞれ法が改正され、従来の精神障害者であれば一律に取得できないという絶対的欠格事由から相対的欠格事由に改められた。
(3) 福祉機器の研究開発・普及、産業界の取組の推進
@ 福祉用具産業の健全な発展
  福祉用具の役割の増大に伴い、福祉産業の健全な発展を支援するため、研究開発の推進、標準化等の産業基盤整備を進め、良質で安価な福祉用具の供給による利用者の利便性の向上を図っている。
A 研究開発の促進
  国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所では、福祉用具の試験評価と規格化に関する基礎的研究及び情報伝達機器・介護者支援用機器等の研究開発を行っている。
  通商産業省工業技術院では、産業科学技術研究により、傘下の各研究所及び技術研究組合の研究所を活用して最先端の産業技術を駆使し、安全性、利便性に優れ、経済性のある福祉用具等の研究開発に取り組んでいる。
  このほか、(財)テクノエイド協会においても、受託及び助成により研究開発を進めている。
B 標準化の推進
  平成十年一月に、障害のある人等のニーズを考慮した製品及び環境についての標準化活動の在り方を検討するため、日本工業標準調査会標準会議の下に「高齢者・障害者のための標準化特別委員会」を設置し、検討を開始した。
C 評価基盤の整備等
  より優れた福祉用具の普及を推進するには、福祉用具産業の振興を図ることが必要であるため、平成七年度から推進している「福祉用具センター構想」を軸として、福祉用具評価基盤の整備を進めている。
D 専門職員の養成及び確保
  国立身体障害者リハビリテーションセンターにおいて、義肢装具、補聴器、視覚障害者用補装具等の適合判定医師研修会や義肢装具士研修会を実施するとともに、関係行政機関、社会福祉施設、病院等で福祉用具の相談等を担当している専門職員を対象とする福祉機器専門職員研修会を実施した。
E 需要に応じた給付
  福祉用具の公的給付として、補装具と日常生活用具の給付等を行っており、平成九年度は対象品目として、新たに簡易型電動車いす及び歩行時間延長信号機用小型送信機を取り入れた。
F 情報提供の推進
  (財)テクノエイド協会では、福祉用具の製造・販売企業の情報等のデータベースを構築し、社会福祉・医療事業団の保健・福祉情報サービスを通じて情報提供を行った。
(4) 情報通信機器・システムの研究開発・普及等
@ 障害のある人の利用に配慮した情報通信システム等の研究開発等
  情報通信を積極的に利活用することにより、障害のある人の社会活動への参加を促進し、高度な情報通信基盤を活用した豊かで自立した暮らしが可能となるようにしていくことが必要である。
  障害のある人の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発の推進に当たっては、国立研究機関等における研究開発体制の整備及び研究開発の推進を図るとともに、民間事業者等が行う研究開発に対する支援を行うことが重要である。
  国における研究開発では、障害のある人を含めて誰にでも使いやすい情報端末技術を開発するため、障害者・高齢者のための情報通信機器・システムに係る基礎的・汎用的な技術の開発(「手話認識・生成技術」等)や情報通信システムの実用化に資する研究開発(「障害者・高齢者対応通信入力自動設定技術」等)等を行っている。
  また、民間による研究開発に対する支援としては、平成八年度から、高齢者・障害者又はそれらの者の介護をする者の利便を増進する通信・放送サービスを開発する者に対する低利による融資を行っている。平成九年度からは新たに高齢者・障害者向け通信・放送サービスに対する助成制度を創設し、民間による研究開発の支援を行うこととした。
  平成九年十一月から平成十年六月まで、「ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会」を開催し、@普及すべき情報通信システム等の選定及び普及策に関する検討、A高齢者・障害のある人の使用に留意した情報通信利用環境の検討を行った。
  また、障害のある人が障害のない人と同様に電気通信を利用できるようにするため、その利用に配慮した電気通信システムを設置する者に対する低利による融資制度等が設けられており、これにより障害のある人向けの情報通信機器・システム等のより一層の普及が期待されている。
A 「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」に基づく機器の普及
  平成七年に告示された「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」の普及と指針に準拠した機器の普及啓発を目的とし、障害のある人や地方行政機関の担当者等を対象とした説明会等を行った。

<第4章> 住みよい環境の基盤づくり(障害のある人が仕事や日常の外出等を自由にできるようにするために必要なまちづくり、住宅確保、移動・交通、情報提供、防犯・防災対策等)

<第1節> 障害のある人の住みよいまちづくりのための施策

(1) 福祉のまちづくりの推進
 障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加できるよう、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくため、厚生省では、「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」を、建設省では「人にやさしいまちづくり事業」を推進し、まちづくりに関する総合計画を策定し、幅の広い歩道等の整備やエレベーターやスロープの整備等を図っている。また、建設省では、障害のある人等を含むすべての人々の利用に配慮した住宅・社会資本整備を進めるため、平成六年「生活福祉空間づくり大綱」を策定した。
@ 厚生省及び建設省は、市町村が関係部局の相互連携の下で福祉のまちづくりに主体的に取り組むことを支援するため、計画策定に当たっての視点や配慮事項などを総合的に盛り込んだ手引きを取りまとめて、地方公共団体に通知した。
A 農林水産省においても、厚生担当部局と連携して策定する高齢者・障害者アメニティ計画に基づき、農村地域において障害のある人等が安心して快適に暮らせる生活環境基盤の整備を積極的に進める「農村総合整備事業(高福祉型)」を実施した。
B 地方公共団体における福祉のまちづくりを効果的に進めるため、地域福祉推進特別対策事業等による地方単独事業に対する支援を行った。
(2) 都市計画制度、都市計画事業等による取組
 都市計画における総合的な福祉のまちづくりへの取組として、障害のある人に配慮した道路、公園等の都市施設の整備、土地区画整理事業や市街地再開発などの面的な都市整備を進めるとともに、中心市街地等における社会福祉施設の適正かつ計画的な立地を進めている。
 また、地域のきめ細かな整備を進めるために、歩行支援施設や障害者誘導施設等の整備を補助メニューに含んだ「街並み・まちづくり総合支援事業」を推進している。
(3) 公園、水辺空間等のオープンスペースの整備
@ 公園整備における配慮
  都市公園等の整備に当たっては、公園の園路の幅員と勾配の工夫、縁石の切下げ、手すりの設置、ゆったりトイレの整備等、障害のある人の利用に配慮した公園施設の整備を行ったほか、全国七か所の有料国営公園の身体障害者等に対する入園料金等の免除を行った。
  また、平成六年には、公園・緑化技術五箇年計画を定め、都市公園のバリアフリー化(物理的障壁等の除去)のための設計基準の策定や身体障害者等が運動できる公園施設の開発等を行っている。
A 水辺空間の整備における配慮
  河川、海岸等の水辺空間は、公園同様に、障害のある人にとって、憩いと交流の場を確保するための重要な要素となっているため、河川改修や砂防事業等を通じて、障害のある人や高齢者に配慮した堤防護岸の緩傾斜化、堤防坂路及び親水広場におけるスロープ化等の河川整備等を行った。
B 港湾緑地等における配慮
  港湾緑地等の整備に当たっての、障害のある人等への配慮事項について平成九年度に調査研究を行った。
C 下水道施設の上部利用等の活用
  下水道施設の上部空間を障害のある人にとって親しみやすい公園や下水処理水を利用したせせらぎ等として整備した。
(4) 建築物の構造の改善
@ 官庁施設のバリアフリー化
  官庁施設の整備においては、特に障害のある人の利用が見込まれる公共職業安定所等の窓口業務を行う官署等について、車いす使用者の利用を考慮したスロープ、障害者用トイレの整備等に所要の措置を講じてきた。
  今後は、二十一世紀初頭までに窓口業務を行う官庁施設のすべてについて、障害のある人等に配慮した改修等を実施することとしている。
A 人に優しい建築物整備促進事業
  身体障害者等の利用に配慮したデパート、ホテル等の建築物の整備を促進するため、日本開発銀行等の政府系金融機関による低利融資(ハートフルビルディング整備促進事業)を行った。
B ハートビル法の施行に伴う助成措置
  ハートビル法に基づき、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の廊下、階段等に関する基準を定め、特定建築物の建築主への指導・助言を行うほか、本法に基づき都道府県知事等により認定された優良な建築物(認定建築物)に対して、税制上の特例措置や政府系金融機関による低利融資のほか、エレベーター、幅の広い廊下等の整備に対する補助を行っている。
(5) 住宅整備
@ 障害のある人のニーズに対応するため、第七期住宅建設五箇年計画において、「いきいきとした長寿社会を実現するための環境整備」を基本課題として位置づけ、障害のある人のニーズの多様性に対応し、障害が生じてもそのまま住み続けられる住宅の供給等を図ることとしている。
A 具体的な施策の展開
・ 公営住宅及び公団住宅については、障害者世帯には倍率優遇等の措置を講じている。
・ 障害者向け公営住宅の建設に当たっては、特別の設計等への補助のほか、エレベーター設置への特別の補助を行っている。
・ 地方公共団体、地方住宅供給公社等が、住宅・都市整備公団、民間事業者等の保有する住宅を借り上げ、又は買い上げて障害者世帯に住宅を供給する特定目的借上公共賃貸住宅制度を実施している。
・ 公営住宅においては、障害者世帯向け住宅の建設のほか、新たに建設する住宅について障害や身体機能の低下等に対する配慮を行っている。
・ 住宅金融公庫は、障害のある人が居住するために必要な設備等について、割り増し貸し付けを実施するとともに、身体障害者等に配慮した住宅等については、最優遇金利を適用している。
・ 障害のある人の健やかな住生活を実現するため、障害のある人にも対応した「高齢化対応住宅リフォームマニュアル」を作成し、工務店等への普及を図っているほか、障害のある人の住みやすい住宅増改築等の相談体制の整備、建築関係の専門家が住宅改造にアドバイスする住宅改良ヘルパー制度を実施している。
・ 障害のある人の生活しやすい市街地環境整備のため、社会福祉施設等を合築する事業への補助を行っている。
(6) 移動・交通対策
@ 公共交通機関における各種ガイドライン等に基づく事業者の指導
  公共交通ターミナルや車両の整備・改良等について、各種ガイドライン等に基づいて事業者への指導を行い、鉄道駅のエレベーター、エスカレーターの設置、障害のある人にやさしい車両、バス等の導入等を推進している。
A 障害のある人等の視点に立った連続性のある交通体系の計画的構築及び新しい交通システムの検討
  「高齢者・障害者等のためのモデル交通計画策定調査報告書」を平成八年三月に作成し、これを全国的な高齢者・障害のある人等のための連続性のある交通体系の具体的なモデルケースにしていくこととしている。
  また、我が国に適したライトレールトランジットの在り方について検討を行った。
B 施設整備に対する支援体制の整備
  鉄道駅等におけるエレベーター・エスカレーター等の障害のある人等のための施設整備を対象とした日本開発銀行等による低利融資を行った。
  また、交通エコロジー・モビリティ財団は、鉄道駅等の公共交通ターミナル及び旅客船におけるエレベーター・エスカレーター設置事業等への助成を行った。特に整備が急がれているJR及び民間鉄道の障害者対応型エレベーター・エスカレーター設置事業については、国からも補助を行ったほか、一定の要件の下での法人税の特例措置が創設された。
C 道路交通環境の改善
  車いす利用者や高齢者など様々な人が安心して通行できるよう、幅の広い歩道等を整備するとともに、既設の歩道等の段差・勾配・傾斜の改善や立体横断施設へのスロープの設置等によりバリアフリー化を進め、良好な歩行空間のネットワークとして確保するよう努力している。
  さらに、住宅系地区等におけるコミュニティ・ゾーンの整備、サービスエリア等への障害者用トイレの設置、わかりやすい案内標識の整備等を行っている。
  また、整備するに当たっては、利用者の視点に立って道路交通環境の改善が行われるよう、地域の人々や道路利用者が参加する「交通安全総点検」等を実施している。
D 公共交通機関周辺環境の利便性の向上
  駅等の交通結節点である駅前広場、ペデストリアンデッキ等の整備やエレベーター・エスカレーター等の歩行支援施設等の整備を行った。
E 障害のある人に対する運賃・料金割引等
  鉄道、バス、タクシー、旅客船、航空等の公共交通機関における身体障害者、知的障害者、介護者に対して割引等の措置を講ずるとともに、身体障害者の使用する車両に対し、駐車禁止除外指定車標章を交付した。
F 運転免許取得希望者への配慮
  運転免許試験場にスロープ、エレベーター等を整備することに努めているほか、多くの試験場で身体障害者用試験車両を用意している。また、運転適性相談窓口を設けて、身体障害者の運転適性について豊富な知識を有する試験官を配置している。
G 障害のある人等の旅行促進のための環境整備
  平成八年三月「高齢者・障害者の利用に対応する宿泊施設のモデルガイドライン」を策定し、関係団体を通じて、宿泊施設に周知した。
H 「オムニバスタウン構想」の推進
  平成九年度から、バスを中心とした安全で快適なまちづくりを目指す市町村を警察庁、運輸省及び建設省が連携して支援する「オムニバスタウン構想」を推進し、障害のある人等の交通弱者に配慮したノンステップバス、リフト付きバス等の導入の促進等、バスの利便性の向上を図った。

<第2節> 障害のある人が安心して生活を送るための施策

(1) 情報提供
・ 情報の収集や情報伝達に大きな社会的不利のある視・聴覚障害者等が、迅速かつ的確に情報を収集し、情報伝達手段を確保できるようにするため、各種の施策を進めるとともに、放送事業者の積極的な取組を支援している。
・ 都道府県等の行う点字奉仕員、朗読奉仕員、手話奉仕員及び要約筆記奉仕員に対する講習会や派遣事業、福祉事務所への手話通訳の設置を進めている。
・ 視覚障害者の情報取得を支援するため、新聞情報等を対象とした「点字情報ネットワーク事業」、点字図書目録をデータベース化した「点字図書館情報検索体制」等を進めており、平成十年度には、「デジタル音声情報システム」を全国の点字図書館等に導入することとした。
・ 障害のある人の社会参加に役立つ各種情報を収集・提供し、情報交換の場を提供する「障害者情報ネットワーク」及び障害者の保健福祉研究情報を収集・提供する「障害者保健福祉研究情報体制」を構築し、運用している。
・ 国政選挙においては、点字による候補者名簿等の備え付け、投票所へのスロープの設置、政見放送への手話通訳の導入等により、障害のある人の投票への配慮を行っている。
・ 放送サービスにおいては、字幕番組、解説番組等の障害のある人向けの番組を拡大するため、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」「放送法及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律」により、助成や参入負担の軽減を図り、字幕放送等の推進を図っている。
・ 障害のある人にとって欠かせない通信手段である電話については、音量調節機能付電話等の開発や使用料の減免等の措置を行っている。
・ 簡易保険事業においては、平成十年七月から点字による印字や点字の読み取りができる「点字情報総合装置」を配備し、簡易保険のお知らせ等に活用している。
・ 国民生活センターでは、商品比較テストの結果や悪質商法などの生活を取り巻く諸問題についての知識や情報を、テレビ番組において手話放送を行った。
(2) 防犯対策
・ 障害のある人が警察へアクセスする際の困難を除去するため、交番等の玄関前のスロープの設置やFAX一一〇番の導入、FAXネットワークの構築、手話のできる警察官の交番等への配置を行った。
  また、(財)全日本ろうあ連盟が作成した「手話バッジ」を手話のできる警察官等に装着させ、聴覚障害者等の利便を図っている。
・ 障害のある人が犯罪や事故の被害に遭うことの不安感を除くため、パトロール等を通じた困りごと相談や障害のある人の身近な危険に関するニーズの把握、地域安全ニュースの発行等を行った。
・ 警察部内では、手話講習会や障害のある人に対する応接、介護に関する講習会を開催するなど、職員の研修やボランティア活動への参加を支援した。
(3) 防災対策
・ 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成七年十二月に災害対策基本法を改正し、障害のある人、高齢者、乳幼児等、特に配慮を要する者に対する防災上必要な措置に関する事項の実施努力義務を規定した。
・ 地方公共団体が、障害のある人等の災害弱者対策に配慮した施設の整備が行えるように、防災まちづくり事業や緊急防災基盤整備事業により起債を認め、元利償還金の一部について交付税措置を行っている。
・ 各都道府県警察では、障害のある人が入所する施設等への巡回連絡、ミニ広報紙の配布等による防災に関する知識の普及や自主防災組織等の育成による障害のある人に対する支援体制の整備促進に努めた。
・ 消防緊急通報システムによる災害弱者から消防機関への緊急通信体制の一層の充実を図るための調査研究を進めたほか、災害弱者が入所する施設の避難対策の強化等、防火管理の充実について消防機関を指導した。
・ 社会福祉施設等の災害弱者に関連した施設を保全対象に含む危険箇所に係る砂防、地すべり、急傾斜地崩壊対策事業を重点的に推進した。また、激甚な災害を受けた地域における再度災害の防止を図るため、河川事業、砂防事業、地すべり対策事業及び急傾斜地崩壊対策事業を強力に推進した。








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今年の新成人は百七十万人


総 務 庁


 総務庁統計局では、「成人の日」にちなんで、新成人人口を公表した。その概要は次のとおりである。

一 新成人人口は百七十万人、総人口の一・三四%

 この一年間に、新たに成人に達した人口(平成十一年一月十五日現在二十歳の人口)は、推計で百七十万人、総人口一億二千六百五十三万人に占める割合は一・三四%となっている。
 男女別にみると、男性は八十七万人、女性は八十三万人で、男性が四万人多くなっている。

二 減少を続ける新成人人口

 新成人人口の推移をみると、第一次ベビーブーム期(昭和二十二年から二十四年)に生まれた人が成人となった昭和四十三年から四十五年にかけて二百四十万人前後、総人口に占める割合は二・四%前後を記録したが、その後減少に転じ、昭和五十三年には百五十二万人と最高値の約三分の二に減少し、総人口の一・三三%となった。
 昭和五十年代後半以降、新成人人口は増加傾向で推移し、第二次ベビーブーム期(昭和四十六年から四十九年)に生まれた人が成人に達した平成四年から七年は、平成六年の二百六万人をピークに二百万人前後(総人口に占める割合は一・六%台)となった。しかし、その後は減少が続き、今年は昨年より四万人少ない百七十万人となっている。
 この新成人人口は、今後も減少を続け、平成十二年(二〇〇〇年)には百六十万人程度となり、十七年(二〇〇五年)には百五十万人を下回り、二十二年(二〇一〇年)以降は百二十万人前後と総人口に占める割合も一%を下回るものと見込まれる。
 (注) 数値は万人単位に四捨五入してあるので、男女の合計は必ずしも総数に一致しない。
     なお、総人口に占める新成人人口の割合は、それぞれ万人単位の数値で算出した。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十一月中旬速報値)・全国(十月)―


総 務 庁


◇十一月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は八月〇・一%の下落、九月〇・一%の下落、十月〇・四%の上昇と推移した後、十一月は一・〇%の上昇となり、上昇幅は前月に比べ〇・六ポイント拡大。これは、生鮮野菜が前年の価格水準を大幅に上回ったことなどによる。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月と同水準。前年同月比は八月〇・一%の上昇、九月〇・三%の下落、十月〇・二%の下落と推移した後、十一月は〇・二%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇四・八となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  生鮮魚介は二・〇%の上昇。
   <値上がり> さけ、いかなど
   <値下がり> あじ、かれいなど
  生鮮野菜は二・六%の下落。
   <値上がり> キャベツ、トマトなど
   <値下がり> ほうれんそう、レタスなど
  生鮮果物は六・〇%の下落。
   <値上がり> ぶどう(巨峰)、グレープフルーツなど
   <値下がり> みかん、かきなど
(2) 諸雑費は一〇三・七となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  身の回り用品は〇・七%の下落。
   <値下がり> ハンドバッグなど
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 生鮮野菜(五一・三%上昇)、生鮮果物(二五・五%上昇)、授業料等(二・二%上昇)、生鮮魚介(三・八%上昇)
○下落した主な項目
 電気代(五・五%下落)、設備修繕・維持(二・三%下落)、外食(〇・八%下落)、自動車等関係費(一・六%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇三・〇となり、前月に比べ〇・四%の上昇となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。

◇十月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇三・三となり、前月比は〇・七%の上昇。前年同月比は七月〇・一%の下落、八月〇・三%の下落、九月〇・二%の下落と推移した後、十月は〇・二%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・五となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は七月〇・一%の下落、八月〇・一%の下落、九月〇・五%の下落と推移した後、十月は〇・四%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇五・五となり、前月に比べ二・四%の上昇。
  生鮮魚介は一・六%の下落。
   <値上がり> あじ、えびなど
   <値下がり> さんま、さけなど
  生鮮野菜は二五・〇%の上昇。
   <値上がり> レタス、ねぎなど
   <値下がり> たまねぎ、れんこんなど
  生鮮果物は一三・二%の上昇。
   <値上がり> なし、ぶどう(巨峰)など
   <値下がり> みかん、バナナなど
(2) 光熱・水道は一〇二・三となり、前月に比べ〇・七%の下落。
  電気・ガス代は〇・八%の下落。
   <値下がり> 電気代など
(3) 被服及び履物は一〇八・一となり、前月に比べ〇・八%の上昇。
  衣料は一・七%の上昇。
   <値上がり> ワンピース(冬物)など
(4) 教養娯楽は一〇〇・五となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  教養娯楽サービスは〇・六%の上昇。
   <値上がり> 宿泊料など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 生鮮野菜(二一・九%上昇)、生鮮果物(一四・五%上昇)、生鮮魚介(三・六%上昇)、授業料等(二・一%上昇)
○下落した主な項目
 自動車等関係費(二・七%下落)、電気代(五・六%下落)、通信(二・六%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・九となり、前月に比べ〇・六%の上昇となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。

◇     ◇     ◇

◇     ◇     ◇

◇     ◇     ◇





冬から始めるスマートな省エネ生活


 一段と冷え込みが厳しくなる二月。でも、寒いからといって、エネルギーの無駄遣いは禁物です。冬の省エネ対策をきっかけに、地球にやさしいライフスタイルを実行しませんか。
◇暖房温度は二十度以下に
 暖房温度は控えめくらいが適温です。まずは、今の室温を少し下げてみましょう。カーテンをしっかりかけて外からの冷気を遮るなどすれば、暖房効果は一層上がります。
◇電気こたつは熱を逃がさないように
 敷布団や上掛けをじょうずに使えば、低めの温度でも暖気の保温がうまくでき、気持ちのいいあったかなこたつになります。
◇お風呂は連続入浴
 お湯がさめないうちに、家族で続けて入りましょう。また、シャワータイムは短めに。食器洗いの給湯温度も低めに設定しましょう。
◇主電源までスイッチを切る
 テレビやエアコンなどの電気製品は、リモコンで電源を切っても電力は消費されています。使わないときは必ず主電源を切り、長期間使用しないときはプラグを抜きましょう。
◇エネルギー消費効率を目安に購入
 転勤や進学などで四月から新生活を始める方―エアコンや冷蔵庫、テレビ、ビデオなどの電気製品を購入するときは、エネルギー消費効率を基準に選んでみてください。「省エネ性能カタログ」などを見ればわかります。(資源エネルギー庁)

恩給・共済年金担保貸付のご案内


 国民金融公庫と沖縄振興開発金融公庫が行う恩給・共済年金担保貸付は、恩給や共済年金などの受給者に対し、その受給権を担保として低利の融資を行う公的な融資制度です。
◇利用できる方
 恩給、共済年金、災害補償年金などを受けている方
◇資金の使いみち
 住宅や教育、レジャーなどの消費資金や事業資金に利用できます。
◇融資額
 二百五十万円以内(ただし、恩給や年金の年額の三年分以内)
◇利 率
 年二・二%の固定金利(平成十一年一月二十七日現在)
◇返済方法など
 受給者に支給される恩給や年金を公庫が代わりに受け取り、返済に充てます。なお、利用中に改めて資金が必要になったときは、融資の限度額以内であれば追加の申し込みもできます。
◇担保・保証人
 融資を受けるには、恩給や共済年金の証書を公庫へ預けるほか、連帯保証人が一名以上必要です。
◇申し込みに必要な書類
 ・借入申込書
 ・恩給や共済年金の証書
 ・支給状態の証明書(総務庁恩給局や各共済組合などが発行するもの)
◇申し込みから融資まで
 原則、申し込みがあった日に審査がありますので、順調に手続きが進めば、申し込みから融資までは五日前後です。
<お問い合わせ先>
 国民金融公庫の各店舗又は次の相談センター
  東 京 03―3270―4649
  名古屋 052―211―4649
  大 阪 06―6536―4649
 沖縄振興開発金融公庫
  本 店 098―867―6618
(大蔵省)

 
    <2月3日号の主な予定>
 
 ▽公益法人に関する年次報告………総 理 府 

 ▽月例経済報告………………………経済企画庁 
 



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