官報資料版 平成1124




                 ▽ 消防白書のあらまし…………………………………………消 防 庁

                 ▽ 消費者物価指数の動向(東京都区部十二月中旬速報値)…総 務 庁

                 ▽ 労働力調査(平成十年十一月結果の概要)………………総 務 庁

                 ▽ 税金365日 所得税の確定申告は正しくお早めに……国 税 庁










消防白書のあらまし


消 防 庁


 消防庁では、平成十年十二月十五日の閣議に「平成十年版消防白書」を報告し、公表した。
 「消防白書」は、火災その他の実態と消防に関する施策の現状について、国民へ周知することを目的として、消防庁が毎年閣議の了解を経て公表しているものである。昭和二十九年十一月に「わが国の火災の実態と消防の現状」と題して作成したことに始まり、昭和四十一年版から表題を「消防白書」に改め現在に至っている。

<第1章> 災害の現況と課題

<平成九年中の総出火件数は六万一千八百八十九件、「放火」が「たばこ」を抜いて第一位、総損害額は一千七百六十九億円、「たばこ」による火災の損害額が依然として第一位>

 (1) 火災の概要
 平成九年中の出火件数は六万一千八百八十九件で、前年の六万四千六十六件と比べ二千百七十七件減少している。
 出火件数を火災種別でみると、その増減状況は、建物火災が二百三十七件、林野火災が五百七十三件、船舶火災が十九件、その他火災が一千六百十九件それぞれ減少している。一方、車両火災は二百七十件、航空機火災は一件それぞれ増加している。
 四季別にみると、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生しており、春季と冬季で総出火件数の五七・一%を占めている(第1表第2表第3表参照)。

 (2) 出火原因
 出火原因別の出火件数は「放火」が七千二百二十二件で、前年の六千七百三十二件と比べ四百九十件増加しており、四年ぶりで第一位となっている。
 また、「放火の疑い」によるものは五千六百五十四件(第四位)で、前年と比べ二百七十六件増加し、「放火」及び「放火の疑い」は合わせて一万二千八百七十六件で、前年と比べ七百六十六件増加している。
 なお、第二位は「たばこ」の六千九百六件で、前年と比べ二百十五件減少している。また、このほかの原因については、第三位が「こんろ」の五千八百九十三件、第五位が「たき火」の四千四百三十件、第六位が「火遊び」の二千七百二十七件で、前年と比較すると「たき火」は一千六十九件減少しているが、「こんろ」及び「火遊び」はそれぞれ三十八件、二十五件増加している(第1図参照)。

 (3) 損害額
 平成九年中の火災による損害額は一千七百六十九億円で、前年の一千七百十三億円と比べ五十六億円増加している。
 また、火災一件当たりでは、二百八十六万円で、前年と比べ十八万円増加している。

 (4) 出火原因別損害額
 出火原因別の損害額をみると、「たばこ」による火災の損害額が百五十億二千三百六十五万円で、前年の百五十五億二千六十三万円と比べ四億九千六百九十八万円減少しているものの、依然として第一位となっている。
 次に「放火」が百二十五億九千八百九十八万円と、前年と比べ十九億八千二百四十七万円増加しており、また、「放火の疑い」によるものを合わせると二百四十二億五千八百三十六万円となり、前年と比べ四十六億七千十八万円増加している。

 (5) 建物火災
 建物火災は総数三万四千五百十九件で、一日当たり九十五件発生し、十五分に一件の割合で出火していることになる。

 (6) 建物火災の出火原因
 建物火災の主な出火原因は、「こんろ」によるものが五千八百三十件と最も多く、次いで、「たばこ」の三千八百三十七件、「放火」の三千五百六十一件の順となっている。
 「こんろ」による火災のうち四千二百八十件が、「消し忘れ」によるものであり、また、着火物としては、動植物油(天ぷら油等)が四千二百八十四件となっている(第2図参照)。

 (7) 火災の動向
 この十年間の火災の動向をみると、出火件数は、平成六年以降六万件を超える水準で推移しているが、火災による死者は、平成六年以降、増加傾向を示している(第3図参照)。

<平成九年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)のうち、六十五歳以上の高齢者の死者数は四百九十九人(五四・一%)>

 (1) 火災による死者の概要
 平成九年中の火災による死者数は二千九十五人で、前年の一千九百七十八人と比べ百十七人増加している。
 一日当たりの火災による死者数は、五・七人で、前年の五・四人と比べ〇・三人増加している。なお、放火自殺者数は七百七十四人で、前年と比べ六十三人増加している。

 (2) 住宅火災による死者数
 住宅火災による死者一千百六十五人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添え及び放火殺人(以下「放火自殺者等」という。)二百四十二人を除く失火等による死者は九百二十三人となっており、前年の死者八百九十人と比べ三十三人増加している。
 また、このうち六十五歳以上の高齢者は四百九十九人と半数を超えている。
 住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別に人口十万人当たりの死者発生数をみると、年齢が高くなるに従って死者発生数も著しく増加しており、八十一歳以上の階層では、最も低い十六歳から二十歳の階層と比べ約七十倍となっている(第4図参照)。

<平成九年中の火災以外の災害について>

 (1) 危険物施設等災害
 平成九年中の危険物施設における火災発生件数は百五十五件で、前年の百四十四件と比べ十一件増加している。
 危険物運搬中の火災の発生件数は十一件で、死者はなく、負傷者は二人となっている。

 (2) 石油コンビナート災害
 平成九年中に石油コンビナート等特別防災区域内で発生した災害の件数は七十六件で、前年の九十三件と比べ十七件減少している。

 (3) 林野火災
 平成九年中の林野火災の件数は三千七百六十六件で、前年の四千三百三十九件と比べ五百七十三件減少している。
 一方、焼損面積は三千百二十四ヘクタールで、前年の二千四百二十ヘクタールと比べ七百四ヘクタール、損害額は三十五億六千七百八十万円で、前年の十五億一千四百八十五万円と比べ二十億五千二百九十五万円、それぞれ増加している。
 例年、林野火災は春先を中心に発生している。平成九年も三月に八百八件と最も多く発生しており、一月から五月までの間に、年間の七三・二%の火災が集中して発生している。

 (4) 風水害
 平成九年中の年降水量は、東日本・西日本の太平洋側と南西諸島では平年より少なかったが、西日本の日本海側では多かった。また、台風の発生数は平年並みであったが、六月から七月にかけて台風第7号、8号、9号が相次いで上陸、九月には台風第19号が上陸するなど、上陸数、接近数はいずれも平年を上回った。
 しかしながら、風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害は前年に比べて少なく、死者・行方不明者七十一人(前年八十四人)、負傷者三百六人(同四百七十五人)であった。住家被害については全壊百十棟(前年三十九棟)、半壊百十七棟(同二百十六棟)、一部損壊二千二百十八棟(同一万四千四百八十七棟)となっている(第5図参照)。

 (5) 火山災害
 火山災害については、平成九年は、三月と四月に諏訪之瀬島(鹿児島県)が噴火し、八月には、秋田焼山(秋田県)が四十六年ぶりに噴火した。また、昭和三十年以降、噴火が恒常化している桜島(鹿児島県)も、三月以降たびたび噴火を繰り返した。
 なお、平成九年は、九月に安達太良山(福島県)で登山者四人が火口内に滞留していた硫化水素により中毒死し、十一月には阿蘇山(熊本県)で観光客二人が二酸化硫黄により死亡したほか、七月には八甲田山(青森県)の田代平で訓練中の自衛隊員三人が火山性の二酸化炭素により死亡するなど、火山ガスに起因する事故により九人が死亡している。
 平成九年中の火山情報は、二火山において、計四回の臨時火山情報が発表されている。

 (6) 地震災害
 〔阪神・淡路大震災〕
 ア 災害の概要
 平成七年一月十七日、午前五時四十六分頃、兵庫県淡路島北部を震源とする地震(平成七年(一九九五年)兵庫県南部地震)が発生した。
 この地震により、東北地方南部から九州にかけての広い範囲で有感となり、その被害は二府十五県に及び、平成九年十二月二十四日現在で、人的被害は死者六千四百三十人、行方不明者三人、負傷者四万三千七百七十三人、住家被害は全壊十万四千九百棟、半壊十四万四千二百五十六棟、避難者は最大で三十一万人を超えるものとなった(第4表第5表第6表参照)。
 また、地震により二百八十五件の火災が発生し、全体で焼損棟数七千四百八十三棟、焼損床面積八十三万四千六百六十三平方メートルとなっている。
 イ 消防機関・消防庁等の活動
 @ 地震発生から平成七年三月三十一日までに、四十一都道府県、四百五十一消防本部、延べ七千六百二隊、車両七千六百二十八台、約三万二千四百人の消防職員による広域応援活動が行われた。
   また、地方公共団体の防災機関による生活関連物資の提供や応急活動等のため、延べ約十九万六千人の応援活動が行われた。
 A 消防団については、被災地周辺からの応援も含め、延べ七万一千人以上が消火活動や救援活動に従事した。
 B 地震発生直後から自主防災組織による消火活動等の応急活動が行われている。
 C ボランティア活動については、発災直後から多くのボランティアが被災地に駆けつけ、物資の仕分け、避難所の運営、炊き出し、医療介護、運送、通訳等、様々な分野で重要な役割を担った。
 D 消防庁では直ちに関係府県に対し、適切な対応と被害状況について報告を行うよう連絡し、情報収集を開始するとともに、消防広域応援や被災者保護のための生活関連物資の支援調整、人的応援の調整、被災者の公営住宅等への受入れ斡旋等の活動を行った。
 ウ 震災を踏まえて講じた措置
 @ 大規模災害時において、被災都道府県知事からの要請を待ついとまがないと認められるような場合等においても、迅速な消防広域応援が確保できるよう、消防組織法の一部改正を行った。
 A 災害時における交通規制に関する措置の拡充等、国及び地方公共団体の防災体制の強化等について、災害対策基本法の一部改正を行った。
 B 地震防災緊急事業五箇年計画の策定及び国の財政上の特別措置等を定めた地震防災対策特別措置法が制定された。
 C 防災機関の初動体制の充実など、防災基本計画の修正や自治省・消防庁防災業務計画の修正を行うとともに、地域防災計画の見直しを要請した。
 D 被災した消防防災施設の早期復旧を図るとともに、大規模災害に対応できる全国的な消防防災体制の整備を促進する観点から、画像伝送システム、ヘリコプターテレビ電送システム、震度情報ネットワークシステムなどの情報収集・伝達体制の整備、耐震性貯水槽等、多様な水利の整備等のための補助金や、地方単独事業による防災基盤整備のための緊急防災基盤整備事業の創設などにより、財政支援措置の拡充等を行った。
 E 緊急消防援助隊の創設、航空消防防災体制の強化、防災拠点の整備、広域応援協定の締結など、防災体制の充実強化を推進している。
 〔平成九年中の地震災害〕
 平成九年中に発生した地震のうち震度4以上を記録したのは四十回で、前年の三十一回と比べ九回増加している。
 そのうち、三月二十六日から四月九日までの間及び五月十三日、十四日に発生した鹿児島県薩摩地方を震源とする地震では、負傷者百十一人の被害を出した。また、三月十六日に発生した愛知県北東部を震源とする地震では、負傷者四人の被害を出した。

 (7) 特殊災害
 @ 原子力事故としては、平成七年十二月八日に使用前検査中の高速増殖炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏洩し、火災が発生した事故や、平成九年三月十一日に、動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故がある。
 A 海上における油の流出災害としては、平成九年一月二日に、日本海沿岸の各地に大きな被害を生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海難・流出油災害のほか、同年七月二日には、東京湾においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。

<第2章> 消防防災の組織と活動

<人口の九九・七%を常備消防がカバー。消防団員数は減少傾向、高齢化も進む>

 (1) 常備消防機関
 平成十年四月一日現在、消防本部九百二十本部、消防署一千六百六十二署、出張所三千二百三十二所、消防職員十五万一千七百三人となっており、前年と比較して広域化が進められたことにより三本部減少し、消防署は八署増加し、消防職員は一千七十七人増加している(第7表参照)。

 (2) 常備化の現況
 平成十年四月一日現在、消防本部及び消防署の常備化市町村は、三千百三十市町村となり、常備化率は市町村数で九六・八%(市は一〇〇%、町村は九六・〇%)に達し、人口の九九・七%が常備消防にカバーされている。

 (3) 消防団
 消防団は、常備化が進展してきた今日においても、地域の消防防災に果たす役割は依然として重要である。
 平成十年四月一日現在、消防団は三千六百四十三団、消防団員数は九十六万二千六百二十五人であり、ほとんどすべての市町村に設けられている。団員数は減少傾向にあり、十年前の昭和六十三年四月一日現在に比べ四万六千三百七十三人(四・六%)減少している。この間、女性消防団員数は七千二百六十人増加し、八千四百八十五人となっている。
 また、消防団員の平均年齢は三六・四歳(前年より〇・二歳増)となっており、その高齢化が進んでいる。

<消防職団員の火災等への出動回数は増加(全国で三十五秒に一回出動)>

 (1) 平成九年中の消防職団員の活動状況
 平成九年中における全国の消防職団員の活動状況をみると、火災等(火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。ただし救急業務を除く。)への出動回数は八十九万四百三十四回で、出動延べ人員では九百六十五万四千九百三十四人である。
 また、一日当たりの出動回数は二千四百四十一回で、三十五秒に一回の割合で出動したことになる。
 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は二十六万九百十一回、出動延べ人員は五百六十二万六千二百十八人となっており、火災において初期消火、残火処理に当たるほか、多数の要員を必要とする風水害等においても、多くの消防団員が出動したことになる。

 (2) 平成十年の風水害時の活動状況
 平成十年八月上旬豪雨(八月三日から七日)、八月末豪雨(八月二十六日から三十一日)、台風第5号、台風第7号、8号、九月二十三日から二十五日の大雨による災害において、延べ約五万六千人の消防職員と延べ約二十一万六千人の消防団員が活動している。

<救急出場件数、搬送人員はともに増加(全国で九・一秒に一回救急出場、国民三十八人に一人が救急搬送)。救急隊数及び救急隊員数ともに増加。着実に進む救急の高度化>

 (1) 救急搬送
 平成九年中の救急出場件数は三百四十七万六千五百四件で、前年の三百三十七万三千三百九十四件と比べ十万三千百十件増加している。
 また、救急搬送人員は三百三十四万二千二百八十人で、前年の三百二十四万七千百二十九人と比べ九万五千百五十一人増加している(第8表参照)。
 全国で一日平均九千五百二十五件(前年九千二百十七件)、九・一秒(同九・四秒)に一回の割合で救急隊が出場し、国民の三十八人に一人が救急隊によって搬送されたことになる。

 (2) 応急処置の実施状況
 搬送人員のうち、救急隊員が応急処置を行った傷病者は、二百六十四万三千百七十九人(搬送人員の七九・一%、前年は七三・七%)であり、前年に比べ二十四万八千八百七十四人(一〇・四%)増加している。
 なお、救急隊員の行った応急処置の件数六百九十九万八千百九十九件のうち、「救急隊員の行う応急処置等の基準」の改正(平成三年八月)により拡大された、血圧測定、心音・呼吸音聴取、心電図伝送等の応急処置により処置された件数は、四百一万四千七百六件と、前年の約一・三倍となっている。このうち救急救命士が行う心肺機能停止状態に陥った傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は二万一千六百六十件にのぼり、前年の約一・四倍となっている。

 (3) 実施体制
 平成十年四月一日現在、救急隊は四千五百十五隊で、前年の四千四百八十三隊と比べ三十二隊の増となっている。また、救急隊員は五万五千四百十人で、前年の五万四千七百四十三人と比べ六百六十七人の増となっている。
 救急業務実施市町村数は、三千百五十市町村(六百七十市、一千九百六十二町、五百十八村)で、全市町村の九七・四%(前年九七・一%)、全人口の九九・八%(同九九・七%)がカバーされている。

 (4) 救急業務の高度化
 平成十年七月一日現在、消防職員関係者の救急救命士の資格を有する者の数は六千九百二十人であり(対前年一千三百九十六人増)、六百六十六消防本部において、救急救命士による救急業務が実施されている。
 また、拡大された救急処置を行うために必要な高規格救急自動車は一千七百七十台(対前年三百四十七台増)配置されている。

<救助活動件数及び救助人員ともに増加。活動状況は交通事故と火災に係るものが約七割>

 (1) 救助活動件数及び救助人員
 平成九年中の救助活動件数は、三万五千五十件で、前年の三万二千五百七十二件と比べ二千四百七十八件の増、救助人員は三万五千百五人で、前年の三万二千八百二十八人と比べ二千二百七十七人の増となっている(第9表参照)。

 (2) 活動状況
 救助活動の状況をみると、交通事故が五〇・一%を占め、火災が一九・三%となっている(第10表参照)。

 (3) 実施体制
 平成十年四月一日現在、救助隊を設置しているのは八百七十五消防本部(対前年六本部増)となっており、当該消防本部の構成市町村は三千十八市町村(同三十二市町村増)である。救助隊は一千五百九隊設置されており、救助隊員は二万三千四百二十二人となっている。一消防本部当たり一・七隊の救助隊が設置され、一隊に一五・五人の救助隊員が配置されていることになる。

<消防・防災ヘリコプターの整備の推進>

 (1) 航空消防防災体制の現況
 ヘリコプターは林野火災や風水害などの災害状況の把握、林野火災における空中消火、山岳等における救助、離島・山間地域等からの重度傷病者の救急搬送等に極めて有効であり、その整備を推進している。
 〔消防・防災ヘリコプターの保有状況〕
        (平成十年 四月一日現在)
 消防機関の保有するヘリコプター二十六機
            (前年度二十六機)
 都道府県の保有するヘリコプター三十七機
            ( 〃 三十二機)
              計 六十三機
            ( 〃 五十八機)

 (2) 航空消防防災体制の課題
 都市化の進展や都市構造の変化等による災害の複雑多様化に備えるとともに、救急業務の一層の高度化を実現し、国民の信頼と期待に応えていくためには、消防・防災ヘリコプターを活用した広域的かつ機動的な消防防災体制を、全国的に早急に整備する必要がある。
 全国的な航空消防防災体制を充実強化するためには、消防・防災ヘリコプターの計画的な配置を積極的に推進するとともに、全国に配置されている消防・防災ヘリコプターの整備点検情報、全国各地の離着陸場のデータ等をデータベース化するヘリコプター情報システムの適切な運用を図っていく必要がある。

<防災体制及び消防広域応援体制の強化>

 (1) 国と地方公共団体の防災体制
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害対策基本法の改正や防災基本計画の修正、消防庁の防災体制の強化、地域防災計画の見直し等が進められている。
 また、地域住民の参加を得た防災訓練の実施を推進している。

 (2) 広域応援体制
 大規模災害に際し、地方公共団体の区域を越えて、機動的、効果的に対応できるよう広域航空消防応援体制の整備、緊急消防援助隊の災害対応力の充実強化など、消防の広域応援体制の強化を推進している。
 また、都道府県の広域防災応援に関して、全国すべてのブロックで広域応援協定の締結・見直しが行われている。

<消防防災通信ネットワークの強化>

 (1) 消防防災通信ネットワーク
 災害時に、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくほか、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくことが極めて重要である。
 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網及び市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網が構築されている。

 (2) 防災情報システム
 広域的な対応が重視される今日の防災対策においては、迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠である。
 このため、消防庁では、震度情報などの緊急情報を迅速に伝達するほか、緊急消防援助隊や消防・防災ヘリコプターの出動可能状況、非常物資の備蓄等、広域応援の対応力の状況、地域防災計画、消防防災統計など消防防災に係る情報をデータベース化するとともに、全国的なネットワーク化を図り、消防庁と地方公共団体等との間で、これらの情報を共有化できる防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。

<第3章> 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり

<防火防災意識の高揚と自主防災活動>

 (1) 防火防災意識の高揚
 平成九年中の火災を原因別にみると、失火が全体の六五・〇%を占めていること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については、地域住民の日ごろからの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。
 そのため、家庭、職場を問わず、国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日ごろから自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。

 (2) 自主防災活動
 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制の整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。
 特に、大規模災害時には、電話は不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道管等は寸断され、消防機関等の活動は著しく制限されることが予想される。このような状況下では、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出救護、応急手当、給食給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。
 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。
 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。

<第4章> 規制緩和への対応

<規制緩和推進計画に対する消防庁の対応>

 国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、公的規制の緩和が大きな課題となっている。
 消防庁としては、安全性の確保に十分配慮しながら、「規制緩和推進三か年計画」に定められた各措置の着実な推進を図るなど、適切に対処していくこととしている。

<第5章> 国際協力の推進と地球環境の保全

<消防における国際協力・国際交流。地球環境の保全の一環としてのハロン消火剤等の使用抑制の推進>

 (1) 国際協力・国際交流
 消防庁では、国際協力事業団と協力して、開発途上にあるアジア諸国等の消防職員を対象とした消防行政管理者研修をはじめとする集団研修のほか、諸外国からの個別研修員の受入れ、消防における技術指導のための専門家の派遣を実施している。

 (2) 国際消防救助隊
 海外で大災害が発生した場合に、消防庁長官の要請により国際消防救助隊が派遣されることになっており、平成九年十月二十二日に、インドネシア共和国での森林火災のため、二十九人の隊員と消防ヘリコプター二機からなる国際消防救助隊を派遣した。

 (3) 地球環境の保全
 ハロン消火剤については、第四回モントリオール議定書において、平成六年一月一日までに生産等を全廃することなどが決定された。
 平成五年七月に関係業界による「ハロンバンク推進協議会」が設立され、同協議会において、ハロンの管理、回収、再利用を効率的かつ的確に行うことにより、地球環境の保全に寄与することとしている。
 このため、地球環境の保全の一環として、ハロン消火剤の使用抑制を図っている。

<第6章> 消防の科学技術の研究

<消防の科学技術の研究>

 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっている。このため、社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行っている。
 そのほか、国際間あるいは産学官の協力を図るため、外国の研究機関、国内の大学あるいは企業との共同研究を積極的に進めている。

<第7章> 今後の消防防災行政の方向

<今後の消防防災行政の方向>

 平成十年は自治体消防制度が五十周年を迎えた年であり、これを記念して、「自治体消防五十年全国縦断シンポジウム」(平成九年七月〜九月)、「自治体消防制度五十周年記念式典」(平成十年三月七日)、「自治体消防五十年記念国際消防防災展'98in東京」(平成十年六月四日〜七日)等の行事や、「二十一世紀の消防」論文等の募集、「二十一世紀の消防を考える会」の開催などが多彩に行われた。
 我が国の消防は、昭和二十三年三月に消防組織法が施行され、市町村消防の原則に基づく自治体消防が発足して以来、今日まで、歴代の関係者の努力の積み重ねにより、制度、施策、施設、装備等の各般にわたり着実な発展を遂げてきた。
 この結果、自治体消防の活動も火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民生活の基礎となる安全の確保に大きな役割を果たしてきている。
 しかし、その一方で、我が国は、これまで幾多の災害を経験してきている。平成七年一月、戦後最大の被害をもたらした阪神・淡路大震災が発生し、その後も、地下鉄サリン事件、新潟・長野県境の蒲原沢及び鹿児島県出水市における土石流災害、鹿児島県薩摩地方を震源とする地震災害、ナホトカ号及びダイヤモンドグレース号の海難事故による流出油災害など、住民やその生活の安全を脅かす災害等が相次いでいる。
 本年に入っても、震度6弱を記録した岩手県内陸北部を震源とする地震災害、新潟県・福島県・栃木県・高知県など、各地における豪雨や台風による災害などが起きている。
 こうしたことから、災害や事故に対する不断の備えの重要性はますます増大し、国民の消防に寄せる期待は極めて大きなものがある。
 このため、自治体消防五十周年を契機とし、これまでの成果と訓練の上に立って、二十一世紀に向け、消防防災行政において第一次的な役割を担っている地方公共団体が、安全で安心な地域社会づくりに向け、その使命を十分に果たしていくことができるよう、今後とも各般の施策を強力に展開して、消防防災行政の推進及びその体制の充実強化を図っていく必要がある。
 具体的には、総合的な防災対策の推進、高度防災情報通信体制の整備促進、消防力の充実強化と教育訓練の充実等、消防団の充実強化、救急・救助業務の充実強化、総合的な防火安全対策の推進、危険物施設等の安全の確保及び特殊災害対策の充実強化、技術革新等に対応した規制緩和の推進、消防防災技術の高度化・国際協力の推進などに積極的に取り組むことが必要である。
 第7章で取り上げた項目は、次のとおりである。
 ○総合的な防災対策の推進
 ○高度防災情報通信体制の整備促進
 ○消防力の充実強化と教育訓練の充実等
 ○消防団の充実強化
 ○救急・救助業務の充実強化
 ○航空消防防災体制の整備
 ○総合的な防火安全対策の推進
 ○危険物施設の安全の確保及び特殊災害対策の充実強化
 ○技術革新等に対応した規制緩和と国際協力の推進
 なお、本文とは別に十七点の「囲み記事」を記述している。また、第一回全国消防広報コンクールの受賞作品二十点を掲載している。
 「囲み記事」の項目内容は、次のとおりである。
 @ 新技術、新素材の消防用設備等への導入に係る研究
 A 住宅用火災警報器
 B 安全なセルフ給油の実施のために
 C 秋田県鹿角市の地すべり及び土石流災害
 D 消防広域化推進意見交換会を開催
 E 女性消防団員の活躍
 F 消防大学校における新たなカリキュラム
 G 「救急救命士の病院内実習検討委員会」報告書
 H ヘリコプター救急 東京消防庁からの報告
 I 北海道東北ブロック合同訓練―緊急消防援助隊のブロック合同訓練
 J 消防・救急無線のデジタル化
 K 防災用地理情報システム(防災GIS)
 L 防火・防災情報の公開・提供
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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十二月中旬速報値)・全国(十一月)―


総 務 庁


◇十二月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・四となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は九月〇・一%の下落、十月〇・四%の上昇、十一月一・〇%の上昇と推移した後、十二月は〇・七%の上昇となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月と同水準。前年同月比は九月〇・三%の下落、十月〇・二%の下落、十一月〇・二%の下落と推移した後、十二月は〇・一%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇三・六となり、前月に比べ一・一%の下落。
  生鮮魚介は〇・三%の下落。
   <値上がり> たい、ぶりなど
   <値下がり> かれい、かきなど
  生鮮野菜は一一・三%の下落。
   <値上がり> ねぎ、ごぼうなど
   <値下がり> レタス、はくさいなど
  生鮮果物は二・四%の下落。
   <値上がり> みかん、キウイフルーツ
   <値下がり> りんご(ふじ)、バナナなど
(2) 家具・家事用品は九四・四となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・五%の下落。
   <値下がり> 石油ストーブなど
(3) 被服及び履物は一〇六・八となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  衣料は一・〇%の下落。
   <値下がり> 婦人オーバーなど
(4) 交通・通信は九九・七となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  交通は〇・四%の下落。
   <値下がり> 航空運賃
(5) 教養娯楽は一〇〇・七となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  教養娯楽サービスは〇・六%の下落。
   <値下がり> 宿泊料など
(6) 諸雑費は一〇四・九となり、前月に比べ一・二%の上昇。
  たばこは七・八%の上昇。
   <値上がり> たばこなど
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 生鮮野菜(三四・三%上昇)、生鮮果物(三一・八%上昇)、授業料等(二・二%上昇)、上下水道料(四・一%上昇)
○下落した主な項目
 電気代(五・五%下落)、設備修繕・維持(二・六%下落)、自動車等関係費(一・五%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・七となり、前月に比べ〇・三%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。

◇十一月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇三・二となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は八月〇・三%の下落、九月〇・二%の下落、十月〇・二%の上昇と推移した後、十一月は〇・八%の上昇となり、上昇幅は前月に比べ〇・六ポイント拡大。これは、生鮮野菜が前年の価格水準を大幅に上回ったことなどによる。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・五となり、前月と同水準。前年同月比は八月〇・一%の下落、九月〇・五%の下落、十月〇・四%の下落と推移した後、十一月は〇・三%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇五・二となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  生鮮魚介は〇・八%の下落。
   <値上がり> いか、さけなど
   <値下がり> あじ、かれいなど
  生鮮野菜は〇・六%の下落。
   <値上がり> キャベツ、にんじんなど
   <値下がり> ほうれんそう、レタスなど
  生鮮果物は五・七%の下落。
   <値上がり> ぶどう(巨峰)、グレープフルーツなど
   <値下がり> みかん、かきなど
(2) 教養娯楽は一〇〇・七となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  教養娯楽用品は一・二%の上昇。
   <値上がり> 切り花(きく)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
 生鮮野菜(五〇・七%上昇)、生鮮果物(二五・三%上昇)、授業料等(二・一%上昇)、生鮮魚介(三・四%上昇)
○下落した主な項目
 自動車等関係費(二・五%下落)、電気代(五・六%下落)、通信(二・五%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇三・三となり、前月に比べ〇・四%の上昇となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・三となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。




 もっと暮らしにリターナブルびんを


◇繰り返し何度も使えるリターナブルびんを見直そう
 ガラスびんは洗浄、殺菌して、形を変えずに何度も使える優れものの容器です。ビールびんや一升びん、牛乳びんなどは、使い終わったびんをお店で回収し、業者を通してメーカーに戻してまた使うリターナブルびんです。
 リターナブルびんのシステムは、日本で百年も続いているリサイクルの方法です。かつては容器として使われていたびんすべてがリターナブルびんでしたが、ライフスタイルや消費者の嗜好の多様化などで、今では一度しか使われないワンウェイびんの割合が多くなっています。
 もちろん、ワンウェイびんもリサイクル原料になりますが、リターナブルびんなら何度も使って、使えなくなってからリサイクル原料にできます。リターナブルびんのよさを見直して、もっと利用していきたいものです。

◇分別回収に出すときの注意点
 ワンウェイびんもリターナブルびんも、きちんとリサイクルすれば、何度でも新しいびんに生まれ変わることができます。使い終わったびんは、砕いて「カレット」と呼ばれるガラスびんの原料になります。新しくつくられるガラスびんは、原料の半分以上にカレットが利用されています。
 でも、カレットの中に異物が混じっていたりすると、美しく丈夫なガラスびんがつくれません。ガラスびんのリサイクルをスムーズにするために、分別回収に出すときは、次のようなルールを守りましょう。
 @ 王冠やアルミキャップ、口部の金属シールをはずす
 A びんの中をさっと洗う
 B 混ぜてはいけないもの
  耐熱ガラス、陶磁器・石、乳白色びん、ガラス食器、農薬や劇薬のびん、電球や蛍光灯などのガラス
                                           (環境庁)


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十一月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十年十一月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十年十一月末の十五歳以上人口は、一億七百五十八万人で、前年同月に比べ六十五万人(〇・六%)の増加となっている。
 これを就業状態別にみると、就業者は六千四百八十一万人、完全失業者は二百九十一万人、非労働力人口は三千九百七十六万人で、前年同月に比べそれぞれ四十八万人(〇・七%)減、六十三万人(二七・六%)増、五十二万人(一・三%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百九十四万人で、前年同月に比べ七万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千十八万人、完全失業者は二百七十八万人、非労働力人口は二千三百八十八万人で、前年同月に比べそれぞれ四十六万人(〇・八%)減、五十八万人(二六・四%)増、十九万人(〇・八%)減となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千七百七十二万人で、前年同月に比べ十五万人(〇・二%)の増加となっている。男女別にみると、男性は四千二十五万人、女性は二千七百四十八万人で、前年同月と比べると、男性は十万人(〇・二%)の増加、女性は六万人(〇・二%)の増加となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六二・九%で、前年同月に比べ〇・三ポイントの低下と、十か月連続の低下となっている。

◇就業者

(一) 就業者

 就業者数は六千四百八十一万人で、前年同月に比べ四十八万人(〇・七%)減と、十か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百四十九万人、女性は二千六百三十三万人で、前年同月と比べると、男性は三十万人(〇・八%)減と、十一か月連続で減少、女性は十七万人(〇・六%)減と、六か月連続で減少となっている。

(二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百七十六万人、自営業主・家族従業者は一千九十万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は十九万人(〇・四%)減と、十か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十九万人(二・六%)減と、十か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百三十七万人で、二十万人(〇・四%)減、十か月連続の減少
 ○常 雇…四千七百五万人で、五十万人(一・一%)減、十一か月連続の減少
 ○臨時雇…五百十一万人で、二十九万人(六・〇%)増、平成八年九月以降増加が継続
 ○日 雇…百二十一万人で、一万人(〇・八%)増、四か月連続の増加

(三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百九十九万人で、十一万人(三・五%)減、六か月連続で減少、減少幅は前月(十五万人減)に比べ縮小
○建設業…六百四十七万人で、十七万人(二・六%)減、平成九年十一月以降十三か月連続で減少、減少幅は前月(三十九万人減)に比べ縮小
○製造業…一千三百八十三万人で、五十五万人(三・八%)減、平成九年六月以降十八か月連続で減少、減少幅は前月(六十一万人減)に比べ縮小
○運輸・通信業…四百七万人で、八万人(一・九%)減、六か月連続で減少、減少幅は前月(五万人減)に比べ拡大
○卸売・小売業、飲食店…一千四百六十九万人で、七万人(〇・五%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(二万人減)に比べ拡大
○サービス業…一千六百九十四万人で、三十二万人(一・九%)増、平成八年十月以降増加が継続
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百三十六万人で、十万人(一・八%)減、六か月連続で減少、減少幅は前月(二十二万人減)に比べ縮小
○製造業…一千二百六十八万人で、四十七万人(三・六%)減、平成九年六月以降十八か月連続で減少、減少幅は前月(四十八万人減)に比べ縮小
○運輸・通信業…三百八十九万人で、六万人(一・五%)減、五か月連続で減少、減少幅は前月と同数
○卸売・小売業、飲食店…一千百八十八万人で、十三万人(一・一%)増、五か月連続で増加、増加幅は前月と同数
○サービス業…一千四百三十三万人で、十九万人(一・三%)増、昭和六十年七月以降増加が継続、増加幅は前月(四十八万人増)に比べ縮小

(四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百五十八万人で、二万人(〇・一%)増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百五十三万人で、二十四万人(一・四%)減少
○五百人以上規模…一千二百五十九万人で、十万人(〇・八%)減少

(五) 就業時間(注)

 十一月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百四十三万人で、三百六十四万人(二〇・一%)減少
○三十五時間以上…四千九百三十二万人で、三百二十四万人(七・〇%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・九時間で、前年同月に比べ一・五時間の増加となっている。
 (注) 前年同月増減をみる場合、前年の十一月末一週間に「勤労感謝の日」の振り替え休日が含まれていることによる影響があり、注意を要する。

(六) 転職希望者

 就業者(六千四百八十一万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百二十四万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百三十五万人となっており、前年同月に比べそれぞれ四十七万人(八・一%)増、九万人(四・〇%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・六%で、前年同月に比べ〇・八ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・五%、女性は九・八%で、前年同月に比べ男性は〇・九ポイントの上昇、女性は〇・七ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(一) 完全失業者数

 完全失業者数は二百九十一万人で、前年同月に比べ六十三万人(二七・六%)の増加となっている。男女別にみると、男性は百七十六万人、女性は百十五万人で、前年同月に比べ男性は四十万人(二九・四%)の増加、女性は二十三万人(二五・〇%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十二万人で、三十六万人増加
○自発的な離職による者…百二万人で、五万人増加
○学卒未就職者…十二万人で、三万人増加
○その他の者…七十三万人で、十三万人増加

(二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・三%で、前年同月に比べ〇・九ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・四%、女性は四・二%で、前年同月に比べ男性は一・〇ポイントの上昇、女性は〇・八ポイントの上昇となっている。

(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 〔男〕
○十五〜二十四歳…三十四万人(七万人増)、八・〇%(一・七ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十一万人(十三万人増)、四・六%(一・四ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(四万人増)、二・九%(〇・五ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十五万人(五万人増)、二・七%(〇・六ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十三万人(七万人増)、六・四%(一・〇ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十五万人(四万人増)、三・八%(一・〇ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(三万人増)、一〇・一%(一・〇ポイント上昇)
○六十五歳以上…十万人(三万人増)、三・三%(一・〇ポイント上昇)
 〔女〕
○十五〜二十四歳…二十六万人(二万人増)、六・七%(〇・七ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十九万人(八万人増)、六・八%(一・一ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十八万人(五万人増)、三・五%(一・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十九万人(五万人増)、二・八%(〇・八ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十二万人(四万人増)、二・九%(一・〇ポイント上昇)
○六十五歳以上…一万人(同数)、〇・六%(同率)

(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十四万人(二十万人増)、三・一%(〇・八ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…三十八万人(七万人増)、二・六%(〇・五ポイント上昇)
○その他の家族…百二十四万人(二十四万人増)、六・八%(一・三ポイント上昇)
○単身世帯…四十五万人(十二万人増)、五・七%(一・三ポイント上昇)

(五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は四・四%で、前月に比べ〇・一ポイント上昇し、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。男女別にみると、男性は四・五%で、前月に比べ〇・三ポイントの上昇、女性は四・四%で、前月に比べ〇・一ポイント上昇し、男女ともに昭和二十八年以降で最高となっている。





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税金365日


所得税の確定申告は正しくお早めに


国 税 庁


 平成十年分の所得税の確定申告は、二月十六日(火)から始まっています。申告・納付期限は三月十五日(月)です。期限間近になりますと、税務署は大変混雑し、長時間お待ちいただくようなことになりかねません。
 申告書はご自分で書いて、できるだけお早めに提出してください。また、申告書は郵送でも提出できます。

【正しい確定申告を】

 所得税は、自分の所得の状況を最もよく知っている納税者が、税法に従って自ら自分の所得と税額を正しく計算して申告し、納税するという申告納税制度を採用しています。昨年一年間の所得と税額を正しく計算し、お早めに申告と納税を行ってください。
 確定申告をしなければならないのに期限までに申告をしなかったり、誤った申告をしたりしますと、後で不足の税金を納めなければならないのはもちろん、不足税額の一五%又は一〇%(不正な行為があったような場合には四〇%又は三五%)の割合の加算税が課され、更に、延滞税も納めなければならないことになります。

【確定申告をしなければならない場合】

 次のような場合は、確定申告をしなければなりません。
@ 事業をしている場合、不動産収入のある場合、土地や建物を売った場合などで、平成十年中の所得金額の合計額から、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除その他の所得控除の合計額を差し引き、その金額を基に算出した税額が配当控除額と特別減税額を超える場合
A サラリーマンで、給与の年収が二千万円を超える場合、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が二十万円を超える場合など
 また、確定申告をする必要のないサラリーマンでも、雑損控除や医療費控除、住宅取得等特別控除などを受けることができるときは、確定申告をすれば源泉徴収された所得税が還付されることがあります。
 なお、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が二十万円以下であるなどのため、確定申告をする必要のない人でも、還付を受けるために確定申告をする場合には、給与所得や退職所得以外の所得についても併せて申告しなければなりません。

【白色申告者も、収支内訳書の添付を】

 事業所得、不動産所得、山林所得(以下「事業所得等」といいます。)を生ずべき業務を行っている場合(青色申告書を提出する場合を除きます。)は、平成十年分の確定申告書を提出するときに、その年の総収入金額や必要経費の内容を記載した収支内訳書を添付しなければなりません。
 また、平成八年分又は平成九年分の事業所得等の所得金額の合計額が三百万円を超える場合は、記帳をしなければならないことになっており、このような方はもちろんのこと、それ以外の方でも記帳を基に収支内訳書を正しく記載してください。

【申告書を書くときは】

 申告書を書くときは、「所得税の確定申告の手引き」や「申告書の書きかた」を参考にしてください。「申告書の書きかた」に示されている番号順に記入していくと、所得や税額の計算が簡単にできるようになっています。
 税務署から、申告書用紙が送られている場合は、その用紙で申告してください。
 また、申告書が送られてこない方は、税務署や大方の市町村に申告書用紙や「申告書の書きかた」などが用意してありますのでご利用ください。
 なお、@サラリーマンが、給与所得のほかに不動産所得や雑所得などを申告するときのためには「給与所得のある人の申告書(一般用)の記載例」が、Aサラリーマンで、年末調整を受けた給与以外に所得がなく医療費控除や住宅取得等特別控除などにより源泉徴収された所得税の還付を受ける方のためには、簡単に記載できる「給与所得者の還付申告用の申告書」が税務署に用意してあります。また、申告の必要な所得が公的年金等のみの方のためには、「公的年金等のみの人用の申告書」が用意してありますので、ご利用ください。
 所得や税額の計算の仕方、申告書の書き方などでお分かりにならない点がありましたら、お気軽に最寄りの税務相談室や税務署でお尋ねください。また、確定申告の期間中は、税務署のほかに税理士会や大方の市町村でも相談に応じています。

【特別減税の適用を】

 平成十年分の所得税について特別減税が実施されます。
 この特別減税は、平成十年分所得税の納税者に対して、所得税額から次の金額の合計額(合計額がその人の所得税額を超える場合には、その所得税額が限度)を控除するというものです。
 @ 本 人           三万八千円
 A 控除対象配偶者と扶養親族一人につき
                 一万九千円
 確定申告の際は、特別減税の適用をお忘れないようにお願いします。

【納税は期限内に】

 確定申告による所得税の納期限は、申告期限と同じ三月十五日(月)です。期限内に納税を済ませてください。
 また、振替納税を利用している方は、あらかじめ指定された預貯金口座の残高を確認しておいてください。
 納期限を過ぎますと、未納となっている税額に対し年一四・六%(五月十五日までは年七・三%)の延滞税がかかります。
 なお、一度に納められないときは、確定申告で納めることになる税額の二分の一以上を三月十五日(月)までに納め、残りの税額を五月三十一日(月)まで延納することができます。ただし、延納期間中は、延納する税額に対し年七・三%の利子税がかかります。

【振替納税制度のご利用を】

 所得税の納税の方法に、振替納税の制度があります。この制度を利用すれば、金融機関の預貯金口座から振替によって納税することができますから、手数が少なくて済みます。また、うっかり納期限を忘れてしまうこともなくなり大変便利です。振替納税のご利用をお勧めします。
 新たに振替納税を希望される場合は、預貯金先の金融機関か税務署に、「預貯金口座振替依頼書」を提出してください。

【にせ税理士にご注意】

 納税者の依頼による税務代理、税務書類の作成、税務相談は、税理士でない人は行ってはならないことになっています。ところが、確定申告の時期には、税金の申告手続などを税理士に依頼される方が多いことに便乗して、税理士でない人が申告書の作成などを行うことがあります。このような「にせ税理士」は、法律に違反するだけでなく、依頼した方に迷惑がかかる結果になることが多いのでご注意ください。

 改正保護司法の施行


 保護司と保護司組織の活動の活発化を目的として、平成十年五月、保護司法の一部を改正する法律が成立しました。改正保護司法は、平成十一年四月一日から施行されます。

*       *

 犯罪や非行のない明るいまちを築くには、過去の過ちから立ち直ろうとする人たちを助けていくとともに、その原因となる社会環境を改善することが必要です。
 その実現を目指して行われている更生保護の活動に、全国約五万人の保護司が従事しています。保護司は、保護観察処分を受けた少年や矯正施設から仮釈放を許された人など、非行少年や犯罪者を指導・援助することにより、その更生を手助けするボランティアの人たちです。また、地域のなかで、様々な機関の人たちと連携しながら非行や犯罪の防止のための活動も行っています。
 保護司の活動は、地域住民の安全な生活や福祉に密接にかかわっており、保護司や保護司組織の活動は、多くの地方公共団体の協力を得ながら行われています。保護司法の一部改正は、こうした保護司制度の充実強化を図るために行われました。
 主な改正点は、次のとおりです。

◇保護司会及び保護司会連合会の法定化

 保護司組織は、地域単位や都道府県単位に保護司会や保護司会連合会を組織しています。これらの組織は、保護司が行う保護観察等の活動の支援や保護司研修の実施など重要な機能を担っています。また、地域における犯罪予防活動を主体となって展開するなど、必要不可欠な存在となっています。
 犯罪予防活動などの地域活動は、保護司が個人として企画・実行するというより、地域社会に対応した保護司会がその地域に即した活動を計画し、保護司会に所属する保護司がそれを実行するというのが効果的です。
 今回の改正により、保護司会を法定化するとともに、保護司会が自主的、自発的に計画を立てた活動を保護司の公務として認める仕組みが導入されました。また、都道府県単位の保護司会連合会も法律上の組織として規定されました。

◇地方公共団体の保護司と保護司組織に対する協力規定の新設

 保護司の活動は、犯罪のない地域社会づくりに貢献することから、これまでも地方公共団体から様々な形の支援を受けてきました。
 今回の改正では、地方公共団体が保護司や保護司組織の活動に必要な協力をすることができる旨の規定を置き、その連携が円滑に行われるようにしました。
 ※改正保護司法又は保護司制度についての詳細は、各都道府県の県庁所在地にある保護観察所までお問い合わせください。
 (法務省)


 
    <3月3日号の主な予定>
 
 ▽平成十年平均東京都区部消費者物価指数の動向…………………………………総 務 庁 

 ▽第百四十五回国会内閣が提出を予定している法律案・条約要旨調……………内閣官房 
 



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