官報資料版 平成11年4月28日




                  ▽地方財政白書のあらまし………………自 治 省

                  ▽平成十一年地価公示のあらまし………国 土 庁

                  ▽月例経済報告(四月報告)……………経済企画庁












―地方財政の状況―


自 治 省


 「地方財政の状況」(地方財政白書)は、平成十一年三月二十六日の閣議決定を経て、国会に報告された。これは、地方財政法第三十条の二の規定に基づき、内閣が地方財政の状況を明らかにして、毎年国会に報告するものであり、その内容は次の二部構成となっている。
 第一部では、平成九年度地方公共団体の決算を中心として、地方財政の状況を明らかにしている。第二部では、最近の地方財政の動向を要約し、当面する主要な課題について取りまとめている。
 以下、平成九年度の地方公共団体の普通会計決算の状況を中心に、白書のあらましについて紹介する。

<第一部> 平成九年度の地方財政

一 地方財政の役割

 地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口・財政規模等においてそれぞれ異なっており、これに即応して多種多様な行政活動及び財政運営を行っている。このような個々の地方公共団体の財政活動の集合である地方財政は、国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

 (一) 国・地方を通じた財政支出
 国と地方の財政は、密接な関係を保ちながら、ともに国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。そこで、国と地方の財政が担っている役割について、その財政規模と目的別支出からみることとする。
 なお、ここでは、国・地方を通じた財政支出として、国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の十特別会計の純計)と地方(普通会計)の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額を用いる。
 <財政規模
 国と地方の歳出純計額は百四十八兆七千四百七十五億円で、前年度と比べると一・八%減(前年度〇・四%増)となっている。
 歳出純計額の目的別歳出額の構成比の推移は、第1図のとおりであり、平成九年度においては、社会保障関係費が最も大きな割合(二三・六%)を占め、以下、国土保全及び開発費(二〇・一%)、公債費(一七・六%)、教育費(一四・四%)の順となっている。
 なお、公債費の構成比が高い水準にあるのは、昭和五十年度以降の巨額の財源不足、平成四年度以降の経済対策等に対処するため、国・地方を通じて大量の公債が発行されたことによるものである。
 この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が五十二兆三千二百八十億円、地方が九十六兆四千百九十五億円で、前年度と比べると、国が二・五%減(前年度〇・六%増)、地方が一・四%減(前年度〇・三%増)となっている。また、歳出純計額に占める割合は、国が三五・二%、地方が六四・八%となっている。
 <目的別支出
 歳出純計額の目的別及び支出主体別の規模は、第2図のとおりである。これによると、防衛費等のように国のみが行う行政に係るものは別として、公衆衛生、清掃等の衛生費、小学校、中学校、高等学校等の学校教育費、道路整備、都市計画、土地改良等の国土開発費、警察、消防等の司法警察消防費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出されている割合が高いことがわかる。
 なお、公営企業会計を含めた地方財政における、道路、都市計画、環境衛生、厚生福祉、教育文化、上・下水道、交通、病院等の生活環境・福祉・文化機能に係る事業の現状をみると、歳出純計額、普通建設事業費(建設投資額)及び単独事業費に占める割合は、それぞれ七一・八%、七一・八%、七九・四%となっており、地方公共団体は住民生活に密接に関連した社会資本の整備等国民生活の質的向上につながる分野に、公共投資基本計画の割合(計画上六〇%台前半)を上回る費用を支出している。

 (二) 国民経済と地方財政
 政府部門は、国民経済計算上、中央政府、地方政府及び社会保障基金からなっており、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化などの重要な機能を果たしている。そのなかでも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。
 <国内総支出と地方財政
 国民経済において地方政府が果たしている役割を国内総支出(名目ベース。以下同じ。)に占める割合でみると、第3図のとおりである。平成九年度の国内総支出は五百四兆九千八百六十七億円であり、その支出主体別の構成比は、家計部門が六五・二%(前年度六六・五%)、企業部門が一五・六%(同一五・〇%)、政府部門が一七・七%(同一八・〇%)となっており、企業部門の構成比が上昇している。
 政府部門のうち、地方政府及び中央政府が国内総支出に占める割合は、地方政府が一三・一%(同一三・四%)、中央政府が四・三%(同四・四%)となっており、政府部門のなかでも、地方政府の構成比は中央政府の約三倍となっている。
 なお、地方政府のうち普通会計分は五十六兆八千二百七十三億円で、国内総支出の一一・三%(同一一・五%)を占めている。
 <公的支出の状況
 政府部門による平成九年度の公的支出は、八年度に引き続き、公的総資本形成が前年度を下回ったことから、前年度と比べると一・三%減(前年度〇・六%減)の八十九兆三千七百五十二億円となった。また、国内総生産に占める割合も、前年度と比べると〇・三%ポイント低下の一七・七%となっている。
 公的支出の内訳をみると、政府最終消費支出が四十九兆九千十八億円、公的総資本形成(公的総固定資本形成と公的在庫品増加の合計額)が三十九兆四千七百三十四億円となっており、これらを前年度と比べると、政府最終消費支出は二・七%増(前年度一・九%増)、公的総資本形成は六・〇%減(同三・四%減)となっている。
 さらに、公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、第4図のとおりである。中央政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が三・六%増(前年度一・二%増)、公的総資本形成が五・五%減(同五・七%減)で合計〇・九%減(同二・四%減)であり、公的支出に占める中央政府の割合は前年度(二四・三%)より〇・一%ポイント上昇の二四・四%となっている。
 これに対して、地方政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が二・四%増(前年度二・一%増)、公的総資本形成が六・三%減(同二・六%減)で、合計一・六%減(同〇・一%減)であり、公的支出に占める地方政府の割合は、前年度(七四・五%)より〇・三%ポイント低下の七四・二%となっている。
 また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度(七五・〇%)と比べると〇・二%ポイント低下の七四・八%、公的総資本形成においては前年度(七三・八%)と比べると〇・三%ポイント低下の七三・五%となっており、ともに前年度を下回っているが、依然七割を超える額を地方政府が支出している。
 なお、ここでいう公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費のなかで、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引に当たる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費は除かれている。したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と、次に述べる歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。

二 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計及び特別会計によって区分されて経理されているが、各団体の財政事情等により、これらの会計区分は全団体一様ではない。このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。
 以下、平成九年度の地方財政について、普通会計を中心にその状況を述べる。

 (一) 決算規模
 地方公共団体(四十七都道府県、三千二百三十二市町村、二十三特別区、二千二百七十六一部事務組合)の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入九十九兆八千八百七十八億円(前年度百一兆三千五百五億円)、歳出九十七兆六千七百三十八億円(同九十九兆二百六十一億円)で、前年度と比べると歳入一・四%減(前年度〇・〇%増)、歳出一・四%減(同〇・一%増)となっており、歳入、歳出いずれも昭和二十六年度以降、初めて前年度決算額を下回った。
 このように決算規模が前年度決算額を下回ったのは、平成七年度の経済対策に伴う公共投資の追加により、前年度からの繰越事業の額が八年度は比較的大きかったこと等もあり、九年度の普通建設事業費が前年度決算額を下回ったことが主な要因となっている。

 (二) 決算収支
 <実質収支
 実質収支等の状況は、第2表のとおりである。実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)は、一兆八百二十九億円の黒字(前年度一兆五百三十四億円の黒字)で、昭和三十一年度以降黒字となっている。ただし、この実質収支には、東京都が地方消費税の清算のための財源として翌年度に繰り越した額(以下、「東京都の地方消費税清算金相当分」という。)が含まれており、これを除くと、実質収支は一兆二百三十五億円の黒字となる。
 実質収支が赤字である団体数の推移をみると、平成八年度に赤字であった十四団体(十四市町村)のうち八団体(八市町村)が引き続き赤字であり、更に五団体(五市町村)が新たに赤字団体となった。その結果、赤字の団体数は十三団体で、前年度と比べると一団体減少した。
 なお、標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率は、都道府県は前年度と比べると〇・二%ポイント上昇の〇・六%(東京都の地方消費税清算金相当分を除くと、〇・一%ポイント低下の〇・三%)、市町村は〇・一%ポイント低下の二・九%となっている。
 <単年度収支
 単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、三百七億円の黒字(前年度二十四億円の黒字)となっている。ただし、東京都の地方消費税清算金相当分を除くと、二百八十七億円の赤字に転じる。
 これを団体種類別にみると、都道府県は四百二十九億円の黒字(東京都の地方消費税清算金相当分を除くと、百六十五億円の赤字。前年度二十二億円の赤字)、市町村は百二十二億円の赤字(前年度四十六億円の黒字)となっている。
 また、単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた実質単年度収支は、一千五百二十五億円の赤字(東京都の地方消費税清算金相当分を除くと、二千百十九億円の赤字。前年度一千八百八十四億円の黒字)に転じた。
 これを団体種類別にみると、都道府県は二千二百五十一億円の赤字(東京都の地方消費税清算金相当分を除くと、二千八百四十五億円の赤字。前年度一千七十五億円の黒字)、市町村は七百二十六億円の黒字(前年度八百九億円の黒字)となっている。

三 地方財源の状況

 (一) 歳入の概況
 歳入純計決算額は九十九兆八千八百七十八億円で、前年度と比べると一・四%減(前年度〇・〇%増)と減少に転じた。
 歳入決算額の主な内訳をみると、第3表のとおりである。
 平成六年度から八年度にかけて行われた特別減税が九年度には実施されなかったこと、地方消費税が導入されたこと等から、地方税は三年連続して増収となった(三・〇%増)。また、地方消費税の導入に伴い消費譲与税が廃止されたこと等により地方譲与税が大幅に減少した(四五・九%減)ものの、地方税、地方交付税(一・四%増)が増加したことから、一般財源は微増となり(〇・七%増)、三年連続して前年度決算額を上回った。
 一方、普通建設事業費が減少したことに伴い、国庫支出金(二・八%減)及び地方債(九・八%減)がそれぞれ二年連続して前年度決算額を下回った。

 (二) 租税及び地方税等の状況
 <租税収入及び租税負担率
 国及び地方公共団体の行政活動に要する経費は、最終的にはその大部分が租税によって賄われている。国税と地方税を合わせ租税として徴収された額は九十一兆七千五百六十二億円で、前年度と比べると一・六%増(前年度一・九%増)となっている。
 国民所得に対する租税総額の割合である租税負担率をみると、昭和五十一年度以降平成二年度まで年々上昇してきたが、その後は、七年度を除いて低下傾向にあり、九年度においては、前年度と比べると〇・四%ポイント上昇したものの、二年度に比べ四・三%ポイント低い二三・五%となった。
 なお、主要な諸外国の租税負担率をみると、アメリカ二六・九%(一九九七暦年計数)、イギリス三九・〇%(一九九六暦年計数)、ドイツ三〇・〇%(同)、フランス三五・一%(同)となっている。
 次に、租税を国税と地方税の別でみると、国税五十五兆六千七億円(〇・七%増)、地方税三十六兆一千五百五十五億円(三・〇%増)といずれも三年連続して増収となった。租税総額に占める国税と地方税の割合は、第5図のとおりであり、国税六〇・六%(前年度六一・一%)、地方税三九・四%(同三八・九%)となっている。また、地方交付税及び地方譲与税を国から地方へ交付した後の租税の実質的な配分割合は国四二・二%(同四三・八%)、地方五七・八%(同五六・二%)となっている。
 <地方税
 地方税の決算額は三十六兆一千五百五十五億円で、前年度と比べると三・〇%増(前年度四・二%増)となっており、三年連続して増収となった。
 このように地方税が前年度決算額を上回ったのは、平成六年度から八年度にかけて行われた特別減税が九年度には実施されなかったこと等から、個人住民税が増収となった(一〇・七%増)ことに加えて、地方消費税が導入されたこと等によるものである。
 歳入総額に占める地方税の割合は、昭和六十三年度(四四・三%)をピークとして、その後低下を続けていたが、平成八年度に上昇に転じ、九年度においては、前年度(三四・六%)と比べると一・六%ポイント上昇の三六・二%と二年連続して上昇した。

 (三) 地方譲与税
 地方譲与税の決算額は一兆八百五億円で、消費譲与税が廃止となったこと等から、前年度と比べると四五・九%減(前年度三・〇%増)と大幅な減少となった。また、歳入総額に占める割合も一・一%(同二・〇%)となった。
 地方譲与税の内訳をみると、消費譲与税相当額が四千九百七十九億円(皆増)、自動車重量譲与税が二千七百三十二億円(一・三%増)、地方道路譲与税が二千六百七十八億円(一・五%減)、航空機燃料譲与税が百五十六億円(二・一%減)、石油ガス譲与税が百四十六億円(三・五%減)及び特別とん譲与税が百十五億円(四・六%増)となっている。

 (四) 地方交付税
 地方交付税の決算額は十七兆一千二百七十六億円で、前年度と比べると一・四%増(前年度四・六%増)となっており、四年連続して前年度決算額を上回っている。その内訳は、普通交付税が十六兆九百九十五億円、特別交付税が一兆二百八十億円となっている。また、歳入総額に占める割合は、平成元年度(一八・〇%)をピークとして、その後は低下傾向にあったが、八年度に上昇に転じ、九年度には一七・一%(前年度一六・七%)となった。
 なお、基準財政需要額は四十四兆四千八百四十七億円(財源不足団体分三十九兆九百十七億円、財源超過団体分五兆三千九百三十一億円)、基準財政収入額は二十九兆二千九百十九億円(財源不足団体分二十二兆九千五百七十億円、財源超過団体分六兆三千三百四十八億円)で、財源不足団体の財源不足額は十六兆一千三百四十六億円、財源超過団体の財源超過額は九千四百十八億円となっている。
 普通交付税の交付状況をみると、不交付団体は、都道府県においては前年度と同じく東京都一団体となっており、市町村においては前年度より二十団体減少の百二十二団体(前年度百四十二団体)となっている。

 (五) 一般財源
 一般財源は、地方税、地方譲与税及び地方交付税の合計額(市町村決算においては、これらに加えて、都道府県から交付される利子割交付金等各種交付金を加えた合計額)であり、決算額は五十四兆三千六百三十六億円で、前年度と比べると〇・七%増(前年度四・三%増)となっており、三年連続して増加した。また、歳入総額に占める割合は、平成元年度(六二・七%)をピークとして、その後低下を続けていたが、八年度に上昇に転じ、九年度は五四・四%(前年度五三・三%)となった。

 (六) 国庫支出金
 国庫支出金の決算額は十四兆三千七百二十四億円で、前年度と比べると二・八%減(前年度二・〇%減)となっており、二年連続して減少した。また、歳入総額に占める割合も一四・四%(同一四・六%)と二年連続して減少した。
 次に、国庫支出金の内訳をみると、普通建設事業費支出金が五兆八千五百二億円で最も大きな割合(国庫支出金全体の四〇・七%)を占め、以下、義務教育費負担金が三兆百九億円(同二〇・九%)、生活保護費負担金が一兆二千三百四十八億円(同八・六%)となっており、以上の支出金等で国庫支出金総額の七〇・二%を占めている。

 (七) 地方債
 地方債の決算額は十四兆七百八十六億円(交付公債の二億円を除く。)で、前年度と比べると九・八%減(前年度八・〇%減)となっており、二年連続して減少した。この結果、地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合)は前年度と比べると一・三%ポイント低下の一四・一%(前年度一五・四%)となり、二年連続して減少した。
 地方債の目的別の発行状況をみると、一般単独事業債が六兆九百四十三億円で最も大きな割合(地方債発行総額の四三・三%)を占め、以下、一般公共事業債が二兆七千八百五十四億円(同一九・八%)、地方消費税の未平年度化による影響に対処するために発行された臨時税収補てん債が一兆三千三百九十一億円(同九・五%)、一般廃棄物処理事業債が四千七百八十億円(同三・四%)、財源対策債が四千五十五億円(同二・九%)の順となっている。
 なお、減収補てん債については、発行額は五千七百三十九億円(前年度四百九十八億円)で前年度と比べると大幅な増となり、地方債発行総額に占める割合も四・一%(前年度〇・三%)で前年度と比べると大幅に上昇している。

四 地方経費の内容

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

 (一) 目的別歳出
 歳出決算額の状況を、行政の目的に従って土木建設(土木費)、教育と文化(教育費)、産業の振興(農林水産業費、商工費)、民生の安定(民生費、労働費)、保健衛生と環境保全(衛生費等)、警察と消防(警察費、消防費)に分けてみると、以下のとおりである。
 歳出純計決算額は九十七兆六千七百三十八億円で、前年度と比べると一・四%減(前年度〇・一%増)と減少に転じた。
 目的別歳出の構成比をみると、第4表のとおりであり、主な目的別歳出の構成比は、土木費(二一・八%)、教育費(一九・二%)、民生費(一三・〇%)、公債費(一〇・六%)、総務費(八・九%)の順となっており、土木費、教育費及び民生費で全体の半分以上を占めている。
 これら項目の伸び率をみると、土木費が五・一%減(前年度二・四%減)、教育費が〇・三%減(同〇・五%増)、民生費が四・三%増(同一・八%増)、公債費が八・六%増(同九・四%増)、総務費が一〇・一%減(同三・三%減)となっており、公債費は引き続き高い伸び率を示している。
 なお、一般財源総額(五十四兆三千六百三十六億円)に占める目的別歳出の割合をみると、教育費が最も大きな割合(二一・二%)を占め、以下、公債費(一五・三%)、土木費(一三・六%)、民生費(一二・五%)の順となっている。

 (二) 性質別歳出
 地方公共団体の経費は、その経済的性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。
 義務的経費は、職員の給与等の人件費のほか、生活保護等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、普通建設事業費が大部分を占めている。
 歳出純計決算額の性質別内訳をみると、第5表のとおりである。
 人件費(一・九%増)、扶助費(六・六%増)、公債費(八・七%増)のすべてが増加したことから、義務的経費が前年度決算額を上回る(四・一%増)一方、普通建設事業費(七・二%減)、災害復旧事業費(三八・七%減)、失業対策事業費(一一・五%減)のすべてが減少したことから、投資的経費が前年度決算額を下回った(八・〇%減)。また、その他の経費は、積立金(二三・四%減)や貸付金(六・三%減)等が減少したことから前年度決算額を下回った(二・三%減)。
 <義務的経費
 義務的経費は、人件費、扶助費及び公債費からなっている。
 義務的経費の決算額は四十三兆三千五百六十九億円で、前年度と比べると四・一%増(前年度四・二%増)となっている。また、義務的経費の歳出総額に占める割合は四四・四%で、前年度と比べると二・三%ポイント上昇となっている。
 義務的経費の内訳をみると、人件費が二十六兆九千二百八十七億円で義務的経費に占める割合は六二・一%(前年度六三・四%)、公債費が十兆二千六百六十億円で二三・七%(同二二・七%)、扶助費が六兆一千六百二十一億円で一四・二%(同一三・九%)となっており、近年は公債費及び扶助費の構成比が上昇する一方、人件費の構成比は低下している。
 (人件費) 人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、委員等報酬、議員報酬手当等からなっている。
 この人件費の決算額は二十六兆九千二百八十七億円で、前年度と比べると一・九%増となり、前年度の伸び率(二・三%増)を〇・四%ポイント下回っている。
 人件費が歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第6図のとおりである。人件費の歳出総額に占める割合は二七・六%で、前年度を〇・九%ポイント上回っているが、昭和四十年度以降において最も高かった昭和五十年度(三六・九%)と比べると、九・三%ポイント下回っている。
 人件費の歳出総額に占める割合を団体種類別にみると、都道府県が市町村立義務教育諸学校教職員の給与を負担していること等から、都道府県(三〇・六%)が、市町村(二一・四%)を上回っている。
 人件費の主な内訳は、職員給が七五・二%を占め、以下、地方公務員共済組合等負担金(一三・三%)、退職金(六・六%)の順となっている。人件費に充当された財源の内訳は、一般財源等が最も大きな割合(八三・六%)を占め、以下、国庫支出金(一二・六%)、使用料・手数料(二・九%)の順となっている。
 (扶助費) 扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、老人、心身障害者等を援助するために要する経費である。
 この扶助費の決算額は六兆一千六百二十一億円であり、前年度と比べると六・六%増(前年度四・七%増)となった。また、扶助費の歳出総額に占める割合は、平成四年度以降上昇しており、九年度も前年度と比べると〇・五%ポイント上昇の六・三%となった。
 扶助費の目的別内訳は、児童福祉費が一兆六千九百四十三億円で最も大きな割合(扶助費総額の二七・五%)を占めており、以下、生活保護費の一兆六千四百九十億円(同二六・八%)、老人福祉費の一兆三千七百三十六億円(同二二・三%)、社会福祉費の一兆百二十二億円(同一六・四%)の順となっている。これら各費目の伸び率をみると、児童福祉費が五・五%増(前年度五・七%増)、生活保護費が五・九%増(同一・九%増)、老人福祉費が八・四%増(同八・八%増)、社会福祉費が八・二%増(同六・八%増)となっている。
 扶助費に充当された財源の内訳をみると、生活保護費負担金及び児童保護費等負担金等の国庫支出金が二兆八千八百十七億円で全体の四六・八%(前年度四七・〇%)と最も大きな割合を占めており、次いで一般財源等が二兆八千三百九十三億円で四六・一%(同四五・八%)となっている。
 (公債費) 公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。
 この公債費の決算額は十兆二千六百六十億円で、前年度と比べると八・七%増(前年度九・六%増)となった。また、歳出総額に占める公債費の割合は、昭和六十年度以降低下してきたが、平成四年度(七・九%)を底に上昇に転じ、九年度においても、前年度と比べると一・〇%ポイント上昇の一〇・五%となった。
 これは、近年、地方税収等の落込みや減税による減収補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により急増した地方債の元利償還金が増加したことによるものである。
 公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が五兆九千百四十五億円で最も大きな割合(五七・六%)を占め、以下、地方債利子が四兆三千二百二十九億円(四二・一%)、一時借入金利子が二百八十六億円(〇・三%)となっている。各費目の伸び率をみると、地方債元金償還金が一三・七%増(前年度一二・四%増)、地方債利子が二・七%増(同六・八%増)となり、その結果、地方債元利償還金としては八・八%増(同九・八%増)となっている。また、一時借入金利子は〇・五%増(同三三・四%減)と増加に転じた。
 公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が九兆四千三十五億円で全体の九一・六%(前年度九一・四%)でその大部分を占めており、使用料、手数料等の特定財源は八千六百二十五億円で八・四%(同八・六%)を占めている。
 <投資的経費
 投資的経費は、道路・橋りょう、公園、学校、公営住宅の建設等社会資本の整備に要する経費であり、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。
 投資的経費の決算額は二十八兆二千五百三十六億円で、前年度と比べると八・〇%減(前年度四・四%減)と二年連続して前年度決算額を下回った。投資的経費の歳出総額に占める割合は二八・九%で、前年度と比べると二・一%ポイント低下となっている。
 投資的経費の内訳をみると、普通建設事業費が九八・二%を占め、以下、災害復旧事業費(一・七%)、失業対策事業費(〇・一%)の順となっている。
 (普通建設事業費) 普通建設事業費は、道路・橋りょう、学校、庁舎等公共又は公用施設の新増設等の建設事業に要する経費である。
 この普通建設事業費の決算額は二十七兆七千四百九十二億円で、前年度と比べると七・二%減(前年度三・九%減)と二年連続して前年度決算額を下回った。
 普通建設事業費の内訳は、単独事業費(五五・七%)、補助事業費(三九・九%)、国直轄事業負担金(四・五%)の順となっている。また、各費目の伸び率をみると、補助事業費、単独事業費及び国直轄事業負担金は、それぞれ七・二%減(前年度五・〇%減)、七・七%減(同二・一%減)、一・四%減(同一四・二%減)と、各費目とも二年連続して前年度決算額を下回った。
 普通建設事業費の目的別内訳は、第7図のとおりであり、土木費が最も大きな割合(五五・八%)を占め、以下、農林水産業費(一五・九%)、教育費(一〇・五%)の順となっている。さらに、これらの費目の内訳別に普通建設事業費に占める割合をみると、土木費のうちの道路橋りょう費(二二・八%)が最も大きく、以下、都市計画費(一五・六%)、河川海岸費(九・三%)、農林水産業費のうちの農地費(八・七%)の順となっている。
 また、これを団体種類別にみると、都道府県においては道路橋りょう費(二六・一%)、河川海岸費(一四・六%)、農地費(一四・四%)、都市計画費(九・四%)、林業費(五・二%)の順となっており、市町村においては都市計画費(二一・八%)、道路橋りょう費(一七・〇%)、清掃費(六・八%)、住宅費(五・八%)、農地費(五・三%)の順となっている。
 補助事業費は、地方公共団体が国からの負担金又は補助金を受けて実施する事業(補助事業)に要する経費である。この決算額は十一兆六百七億円で、前年度と比べると七・二%減(前年度五・〇%減)と二年連続して減少した。
 単独事業は、地方公共団体が国の補助等を受けずに自主的・主体的に地域の実情等に応じて実施する事業であり、住民生活に身近な生活関連施設等の重点的・計画的な整備や地域の特性を活かした個性豊かで魅力ある地域づくりにおいて大きな役割を担っており、地域経済の下支えを図るうえでも重要な機能を果たしている。
 この単独事業費の決算額は十五兆四千五百二十一億円で、前年度と比べると七・七%減(前年度二・一%減)と二年連続して減少した。これを団体種類別にみると、都道府県においては八・〇%減(同〇・九%減)、市町村においては七・二%減(同二・七%減)といずれも減少した。
 普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が四一・四%と最も大きな割合を占めており、以下、一般財源等が二八・七%、国庫支出金が二〇・四%等となっている。これを前年度と比べると、地方債は〇・七%ポイント上昇する一方、一般財源等及び国庫支出金はそれぞれ一・一%ポイント、〇・一%ポイント低下している。
 また、補助事業費及び単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金が五一・三%、地方債が三三・二%、一般財源等が九・七%となっており、単独事業費については、地方債が四五・三%、一般財源等が四二・五%となっている。
 <災害復旧事業費
 災害復旧事業費は、暴風、洪水、地震その他異常な自然現象等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。
 この災害復旧事業費の決算額は四千七百十四億円で、阪神・淡路大震災に係る災害復旧事業が減少したこと等から、前年度と比べると三八・七%減(前年度二〇・一%減)と大幅に減少している。
 災害復旧事業費の目的別内訳の構成比をみると、道路、河川、海岸、港湾、漁港等の公共土木施設関係(災害復旧事業費総額の六四・一%)と農地、農業用施設等の農林水産施設関係(同二一・七%)で全体の八五・七%を占めている。
 さらに、災害復旧事業費に充当された財源の内訳をみると、国庫支出金(災害復旧事業費総額の五九・六%)と地方債(同二五・九%)で全体の八五・五%を占めている。

 (三) その他の経費
 その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、積立金、投資及び出資金、貸付金、繰出金並びに前年度繰上充用金があり、その決算額は二十六兆六百三十三億円で、前年度と比べると二・三%減(前年度〇・七%減)と二年連続の減少となった。
 また、これらの経費の歳出総額に対する割合をみると、物件費が七・八%(前年度七・五%)、補助費等が六・三%(同六・一%)、貸付金が六・〇%(同六・三%)、繰出金が三・二%(同三・二%)、積立金が一・六%(同二・〇%)等となっている。

五 財政構造の弾力性

 (一) 経常収支比率
 財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。
 この経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税等のように毎年度経常的に収入される一般財源)に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。
 平成九年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合を除く加重平均)は、前年度と比べると二・六%ポイント上昇の八七・四%で、八年連続の上昇となった。これは、第一次石油危機後で最も高かった昭和五十年度(八六・六%)を上回る水準である。また、その内訳をみると、人件費が四〇・五%(前年度四〇・〇%)、公債費が一七・三%(同一六・〇%)等となっている。
 なお、平成九年度における地方消費税の未平年度化による影響額を補てんするために発行された臨時税収補てん債の発行額を経常一般財源に加えた場合の経常収支比率を求めると、八五・三%となる。
 近年の経常収支比率の推移をみると、第6表のとおり、平成元年度には六九・八%まで低下した経常収支比率は、その後上昇に転じ、特に、地方税が減収に転じた四年度以降は急激に上昇し、公債費負担の増加等ともあいまって、六年度以降は八〇%を超える水準となっている。
 経常収支比率の段階別分布状況をみると、経常収支比率が七五%以上の団体数は、都道府県においては四十六団体(前年度四十四団体)、特別区及び一部事務組合を除く市町村においては全体の約八割を占める二千五百七十一団体(同二千三百九十九団体)となるなど、個別の団体においても財政構造の硬直化が進んでいる状況にある。

 (二) 公債費負担比率及び起債制限比率
 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費のなかでも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性を判断する場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費の状況を把握するための指標として、公債費負担比率及び起債制限比率が用いられている。
 平成九年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると一・二%ポイント上昇の一五・二%で、六年連続の上昇となった。これは、第一次石油危機後で最も高かった昭和六十年度(一四・三%)を上回る水準である。
 公債費負担比率の段階別分布状況は、第7表のとおりである。一般的に警戒ラインとされる公債費負担比率が一五%以上の団体数は、都道府県においては六六・〇%を占める三十一団体(前年度十九団体)、特別区及び一部事務組合を除く市町村においては全体の五六・四%を占める一千八百二十二団体(同一千六百三十一団体)であり、合わせて全団体の五六・五%を占める一千八百五十三団体(同一千六百五十団体)が一五%以上となっており、公債費負担比率が高い団体数が増加している状況にある。
 起債制限比率は、地方債元利償還金に充当された一般財源のうち地方交付税が措置されたものを除き、地方債元利償還金が標準財政規模に対しどの程度の割合となっているかをみるものである。
 平成九年度の起債制限比率(一部事務組合を除く加重平均)は、第8表のとおりであり、前年度と比べると〇・二%ポイント上昇の一〇・四%と、六年連続して上昇している。

六 将来にわたる財政負担

 (一) 地方債現在高
 平成九年度末における地方債現在高は百十一兆四千九百六十四億円で、前年度末と比べると七・九%増(前年度一一・三%増)となった。
 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、昭和五十年度末では歳入総額の〇・四四倍、一般財源総額の〇・八八倍であったが、地方税収等の落込みや減税による減収補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことから、平成四年度以降急増し、九年度末には歳入総額の一・一二倍、一般財源総額の二・〇五倍となっている。
 なお、標準財政規模に対する比率では、前年度と比べると七・六%ポイント上昇の二〇六・八%の水準にまで増大している。
 地方債現在高を目的別にみると、一般単独事業債が最も大きな割合(四〇・二%)を占め、以下、一般公共事業債(一四・一%)、義務教育施設整備事業債(五・一%)、公営住宅建設事業債(四・五%)、減税補てん債(四・二%)の順となっている。

 (二) 債務負担行為額
 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成九年度末では十七兆三千三百八十六億円であり、前年度末と比べると〇・七%増(前年度一・四%減)となった。
 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、土地の購入に係るものが増加する(二・七%増)一方、製造・工事の請負に係るものが減少した(一・八%減)こと等から、物件の購入等に係るものはほぼ横ばい(〇・一%増)となり、また、債務保証又は損失補償に係るものは増加した(一八・三%増)。

 (三) 積立金現在高
 平成九年度末における積立金現在高は十六兆四千七百三十六億円で、前年度末と比べると一兆二千八百四十五億円減(七・二%減)となっており、最近の厳しい財政事情を反映し、五年連続して減少している。また、標準財政規模に対する比率は、前年度と比べると三・六%ポイント低下の三〇・六%となっている。
 積立金現在高の内訳をみると、財政調整基金は三兆三千三十三億円で八・五%減、減債基金は四兆三百八十六億円で一一・四%減、その他特定目的基金は九兆一千三百十六億円で四・八%減となった。

 (四) 将来にわたる実質的な財政負担
 地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担は百十二兆三千六百十五億円で、前年度末と比べると九・三%増(前年度一一・七%増)となった。
 なお、標準財政規模に対する比率では、前年度と比べると一〇・二%ポイント上昇の二〇八・四%にまで増大しており、また、名目国内総生産に対する割合では、前年度と比べると一・九%ポイント上昇の二二・三%にまで増大している。

 (五) 普通会計が負担すべき借入金残高
 交付税特別会計借入金残高のうち地方財政全体で負担することとなるものと企業債残高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第8図のとおりである。これをみると、近年の地方税収等の落込みや平成四年度以降の数次にわたる経済対策に加え、六年度以降は、減税等の財源を借入金に依存したこと等から、普通会計が負担すべき借入金残高は急増しており、九年度末には、前年度末と比べると七・六%増(前年度一一・五%増)の百四十九兆六千七百三十億円にまで増大している。また、その内訳は、地方債現在高が百十一兆四千九百六十四億円、交付税特別会計借入金残高が十五兆二千百三十七億円、企業債残高のうち普通会計が負担することとなるものが二十二兆九千六百二十九億円となっている。
 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の標準財政規模に対する比率は、前年度と比べると九・四%ポイント上昇の二七七・六%にまで増大しており、また、名目国内総生産に対する割合は、二・〇%ポイント上昇の二九・六%となっている。

七 地方公共団体のグループ別財政状況

 地方公共団体の財政構造は、自然的・歴史的条件、産業構造、人口等によって異なっており、決算規模をはじめ、歳入・歳出構造、各種財政指標をみても、その団体特有の特徴を示している。したがって、財政分析においては、地方財政全体の分析に加えて、財政構造が類似した団体ごとにグループ化し、そのグループごとに分析を加えることも重要である。
 そこで、道府県については財政力指数段階別に、また、市町村については団体規模別(大都市、中核市、中都市、小都市及び町村)にグループ化を行い、分析することとする。
 なお、ここでは道府県の財政力指数別財政状況について紹介し、市町村の規模別財政状況については省略する。

 (一) 道府県の財政力指数別財政状況
 道府県のグループ化は、財政力指数が〇・八以上一・〇未満の団体をBグループ(以下「B」という。)、〇・五以上〇・八未満の団体をBグループ(以下「B」という。)、〇・四以上〇・五未満の団体をCグループ(以下「C」という。)、〇・三以上〇・四未満の団体をDグループ(以下「D」という。)、〇・三未満の団体をEグループ(以下「E」という。)とし、それぞれのグループの財政構造等の分析を行っている。なお、東京都についてはB〜Eの各グループから除いている。
 <決算規模等
 一団体当たり平均の歳入歳出決算額、人口(住民基本台帳登載人口)一人当たり平均の歳入歳出決算額、実質収支比率をみると、人口一人当たり平均の決算額は、歳入については、Bが二十五万八千円、Bが三十三万四千円、Cが四十八万七千円、Dが五十五万二千円、Eが六十一万二千円となり、歳出については、Bが二十五万六千円、Bが三十二万九千円、Cが四十七万九千円、Dが五十四万円、Eが六十万円となっており、財政力指数が低いほど歳入歳出決算額が総じて大きくなっている。
 また、実質収支比率は、Bが〇・三%、Bが〇・四%、Cが〇・四%、Dが〇・五%、Eが〇・四%となっており、財政力指数による違いは比較的小さなものとなっている。
 <歳 入
 歳入決算額の主な内訳は、第9図のとおりである。
 地方公共団体が自主的・主体的な財政運営を行ううえで重要な財源である地方税の構成比は、Bが四八・四%、Bが三〇・一%、Cが二一・一%、Dが一五・五%、Eが一二・三%となっており、構成比が最も高いBが最も比率が低いEの約四倍となるなど財政力指数によって大きな差が存在する。
 一方、財源調整を目的とする地方交付税の構成比は、地方税とは逆に、E(三〇・四%)、D(二六・一%)、C(二三・〇%)、B(一六・〇%)、B(一・九%)の順となっている。この結果、一般財源の構成比は、Bが五一・三%、Bが四七・〇%、Cが四四・九%、Dが四二・三%、Eが四三・三%となっており、財政力指数による違いは比較的小さなものとなっている。
 <歳 出
 性質別歳出決算額の主な内訳について、それぞれのグループごとに構成比の大きい項目をみると、B及びBにおいては人件費、普通建設事業費、公債費の順、C、D及びEにおいては普通建設事業費、人件費、公債費の順となっている。また、B及びBにおいては、人件費の構成比が他のグループと比べて高くなる一方、普通建設事業費の構成比が低くなっている。
 <財政構造の弾力性
 経常収支比率は、B(一〇六・〇%)、B(九〇・七%)、D(八七・六%)、C(八六・四%)、E(八五・四%)の順となっており、財政力指数が高いほど経常収支比率が高い傾向がある。
 次に、公債費負担比率は、C(一八・二%)、D(一七・七%)、E(一七・六%)、B(一四・一%)、B(一二・一%)の順となっており、B及びBの公債費負担比率が他のグループと比べて低くなっている。
 また、起債制限比率は、C(一二・一%)、E(一一・九%)、D(一一・三%)、B(九・六%)、B(八・〇%)の順となっており、B及びBの比率が他のグループと比べて低くなっている。
 <将来にわたる実質的な財政負担
 将来にわたる実質的な財政負担の標準財政規模に対する比率は、Bが二六八・八%、Bが二三六・二%、Cが二四七・三%、Dが二五五・七%、Eが二一九・五%となっている。

<第二部> 最近の地方財政の状況と課題

 平成九年度の地方財政は、第一部でみたように、依然として厳しい状況となっている。
 これを普通会計を中心に具体的にみると、第一に、一般財源は法人関係二税の減収等から微増にとどまるとともに、歳入総額に占める割合は依然低い水準となっている。また、地方債についても、その発行額は前年度決算を下回ったものの、地方消費税の未平年度化に伴う影響及び地方財源の不足に対処するための地方債が増発されたこと等から、歳入に占める割合(地方債依存度)は依然高い水準で推移している。
 第二に、地方債現在高が引き続き増大する一方で、積立金現在高が五年連続して減少した結果、将来にわたる実質的な財政負担額は引き続き増大し、その規模も平成九年度末には標準財政規模の二倍を超える百十二兆円となった。また、同様に、普通会計が負担すべき借入金残高も、平成九年度末では百五十兆円となっており、平成十一年度末には百七十六兆円まで増大する見込みである。
 第三に、財政構造の弾力性を示す経常収支比率、公債費負担比率等の指標は、一般財源が微増にとどまる一方で、地方債現在高の増嵩を受けて公債費が増加したこと等から引き続き上昇している。また、個別の団体をみても、経常収支比率が七五%以上である団体が全体の約八割、公債費負担比率一五%以上である団体が全体の六割弱を占めており、個別の地方公共団体においても財政構造の硬直化が懸念される状況となっている。
 以上のように、地方財政は極めて厳しい状況に直面しているが、一方で、今後とも財政需要は増大することが見込まれている。すなわち、地方公共団体は、地方分権の推進に伴い、地域における行政を自主的かつ総合的に広く担うことが求められており、高齢化社会に向けた総合的な地域福祉施策や生活関連社会資本の整備、さらには、当面の緊急の課題である経済再生への対応等重要な政策課題に係る財政需要がますます増大することが考えられる。
 したがって、地方財政においては、厳しい財政状況のなか、これら増大する地方公共団体の役割と財政需要に応えるため、地方財政の置かれている厳しい状況及び今後の地方行政の役割を十分認識したうえで、地方財政の健全化と地方分権の推進に応じた行財政基盤の整備を図りつつ、二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会に努めることが喫緊の課題となっている。

 (一) 地方財政の健全化と行政改革の徹底
 現下の極めて厳しい地方財政の状況をかんがみると、地方財政にとって中長期的な財政構造改革は必須の課題であり、地方公共団体においては、引き続き、歳出の効率化・重点化を図り、財政体質の健全化に努めることが急務となっている。
 また、こうした財政健全化に加え、住民ニーズの高度化・多様化等に適切に対処し、地方分権の時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立するために、地方公共団体においては、「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」(平成九年十一月十四日付け自治事務次官通知)に沿って、住民の一層の理解と協力の下、独自の工夫を講じるとともに、限られた財源・人的資源の重点的な配分、全体としての一層の簡素効率化を旨として行財政運営全般にわたる改革を主体的かつ積極的に進めていくことが求められている。

 (二) 地方分権と行財政基盤整備の推進
 我が国社会経済を取り巻く環境が急速に変貌し、従来の中央集権型行政システムでは新たな時代の要請に対して的確に対応することが困難となるなか、地方分権を進め、国と地方公共団体とが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性・自立性を高めることを通じて、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することが求められている。

 (三) 二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会づくり
 地域の総合的な行政主体である地方公共団体が、厳しい財政状況のなか、我が国が直面している少子・高齢化の進展、経済構造の変化等様々な分野における構造的な変化に対応していくためには、財政の健全化と行政改革の徹底、地方分権とそれに対応した行財政基盤の整備を図りつつ、分権型社会を実現するための条件を整備し地域活力を創出するとともに、安心して生活できる社会づくり、個性豊かで魅力ある地域づくりのための地域政策課題に積極的に対応し、二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会づくりを進めていく必要がある。

 (四) 社会資本の計画的な整備
 社会資本の整備に当たっては、国と地方の適切な役割分担を踏まえつつ、地方の自主的・自立的判断に委ねることにより、地域のニーズを踏まえた効率的な整備が進められるよう図るとともに、地方公共団体においては、地域の総合的な政策主体として長期的なビジョンに基づき、地方単独事業などにより、地域の特性に応じた個性豊かな社会資本の整備を実施することが求められている。
 また、国において所要の財源の確保を図る一方で、各地方公共団体においても、適正な施設水準に十分配意しつつ、地域の実情に即して、生活関連基盤の整備や地域経済の振興等に必要な事業を選択し、重点的・計画的な事業の実施に努めることが必要である。

 (五) 地方公営企業の経営基盤の強化等
 地方公営企業の平成九年度の決算の状況をみると、地方公営企業の経営状況は、その多くが黒字経営であり、また、前年度に比べ収支が改善されたものが見られる一方で、事業間に差異はあるが、不良債務額が増加しているなど全体として引き続き厳しい状況となった。
 地方公営企業は住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしてきたが、将来にわたってその本来の目的である公共の福祉を増進していくためには、次の諸点に留意しつつ、規制緩和の進展、地方分権の推進等地方公営企業を取り巻く環境の変化に適切に対応し、経営基盤の一層の強化を図る必要がある。
 主要な課題については以下のとおりである。
 @ 地方財政の健全化と行政改革の徹底
 A 地方分権と行財政基盤整備の推進
 B 二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会づくり
 C 社会資本の計画的な整備
 D 地方公営企業の経営基盤の強化等

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地価公示のあらまし


国 土 庁


 平成十一年地価公示は、三月二十六日付けの官報で土地鑑定委員会公示として行われた。地価公示制度の概要並びに平成十一年地価公示の実施状況及び地価の状況は次のとおりである。

第一 地価公示制度の概要

 地価公示は、土地鑑定委員会が毎年一回標準地の正常な価格を公示し、一般の土地の取引価格に対して指標を与えるとともに、公共事業用地の取得価格算定の規準とされ、また、国土利用計画法に基づく土地取引の規制における土地価格算定の規準とされる等により、適正な地価の形成に寄与することを目的としている。

一 対象区域

 地価公示は、総理府令で定める都市計画区域において実施することとされている(地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号。以下「法」という。)第二条第一項)。

二 標準地の選定基準

 地価の公示は、相当数の標準地を選定し、その価格について行うこととされているが、標準地は、特に次の点に留意して選定されている。

 (一) 標準地の代表性
 標準地は、市町村(都の特別区及び政令指定都市の区を含む。)の区域内において、適切な近隣地域に分布し、当該区域全体の地価水準をできる限り代表しうるものであること。

 (二) 標準地の中庸性
 標準地は、標準地が選定される近隣地域において土地の利用状況、環境、地積、形状等が中庸のものであること。

 (三) 標準地の安定性
 標準地は、できる限り土地の利用状況が安定した近隣地域にあって、当該地域の一般的用途に適合したものであること。

 (四) 標準地の確定性
 標準地は、土地登記簿、住居表示、建物、地形等によって明確に他の土地と区分され、かつ容易に確認できるものであること。

三 標準地の価格の判定

 公示されるのは、毎年一月一日における標準地の単位面積(一平方メートル)当たりの正常な価格である(法第二条第一項、地価公示法施行規則(昭和四十四年建設省令第五十五号。以下「規則」という。)第一条)。「正常な価格」とは、「土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格」(法第二条第二項)、すなわち、市場性を有する不動産について、合理的な市場で形成されるであろう市場価値を適正に表示する価格、換言すれば、売手にも買手にもかたよらない客観的な価値を表したものである。
 正常な価格の判定は、標準地に建物がある場合や標準地に関して地上権その他土地の使用収益を制限する権利が存する場合には、これらの建物や権利がないものとして(つまり更地として)行われる(法第二条第二項)。
 正常な価格は、土地鑑定委員会が二人以上の不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って判定する(法第二条第一項)。
 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補が標準地の鑑定評価を行う際は、取引事例比較法、収益還元法及び原価法の三手法により求められる価格を勘案して鑑定評価を行うものとされている。

四 標準地の価格等の公示、閲覧措置

 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、標準地の所在及び地番、価格、価格判定の基準日等の諸事項を官報で公示するものとされている(法第六条、規則第四条)。
 また、公示価格その他の公示された事項を記載した書面は、図面とともに、関係市町村(東京都二十三区及び政令指定都市においては区)の事務所(本所)に備えられるほか、三大圏の市区町村及び三大圏以外の人口五万人以上の市の支所、出張所等にも備えられ、だれでも自由に閲覧することができることとなっている。

第二 平成十一年地価公示の実施状況

一 標準地の設定対象区域

 平成十一年地価公示は、平成十一年一月一日現在において、原則として都市計画区域の全域(地価公示法第二条第一項の都市計画区域を定める省令(昭和四十六年建設省令第三号)及び平成十年国土庁告示第九号)を対象として行われた。
 標準地の設定区域は、全国の市街化区域及び市街化調整区域に区分された都市計画区域約五万二千六十一平方キロメートル並びにその他の都市計画区域約四万六千百四十一平方キロメートル計約九万八千二百二平方キロメートルの区域で、対象市区町村は二千三十二(二十三特別区、六百七十市、一千二百三十四町及び百五村)に達している。

二 標準地の設定数

 標準地の設定数は、市街化区域二万四千九百六十三地点、市街化調整区域一千六百九十三地点、その他の都市計画区域四千百四十四地点計三万八百地点で、その密度は、市街化区域では、全国的におおむね約〇・六平方キロメートル当たり一地点、市街化調整区域では約二十三平方キロメートル当たり一地点、その他の都市計画区域では、市の区域については人口規模に応じて設定することとし、町村の区域については二地点は住宅地、一地点は商業地(平均約十一平方キロメートル当たり一地点)の割合となっている。
 これを市街化区域の用途地域別、市街化調整区域及びその他の都市計画区域ごとにみると、次のとおりである。

 (一) 市街化区域
 ア 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域及び第二種住居地域
 標準地の数は、住宅地と宅地見込地を合わせて一万七千六百十三地点で、三大圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)及びブロック中心都市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では、約〇・四平方キロメートル当たり一地点となり、地方圏(三大圏及びブロック中心都市を除く)では、約〇・七平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。
 イ 近隣商業地域、商業地域及び準住居地域
 標準地の数は、商業地四千七百九十八地点で約〇・二平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。
 ウ 準工業地域
 標準地の数は、準工業地一千七百五十一地点で約〇・八平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。
 エ 工業地域及び工業専用地域
 標準地の数は、工業地八百一地点で約二・四平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。

 (二) 市街化調整区域
 ア 宅 地
 標準地の数は、一千六百二十四地点で約二十三平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。
 イ 現況林地
 標準地の数は、六十九地点で三大圏の市街化調整区域内の現況山林、原野について約六十平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。

 (三) その他の都市計画区域
 標準地の数は、住宅地と商業地を合わせて四千百四十四地点で約十一平方キロメートル当たり一地点の割合となっている。

三 標準地の鑑定評価に携わった不動産鑑定士の数

 公示価格の判定は、各標準地について二人の不動産鑑定士の鑑定評価結果を審査調整して行われるものである。平成十一年地価公示においては、二千四百一人の不動産鑑定士が鑑定評価に携わった。

T 全国の概況

 全国の地価は、これまで下落幅が縮小傾向にあったが、昨年一年間では、住宅地・商業地ともに、その幅を拡大した。この傾向は、地方圏よりも大都市圏において大きく、大都市圏の商業地の下落率は再び二桁台となった。
 各圏域ごとの状況を概観すると、大都市圏においては、@住宅地では、すべての地域で下落幅が拡大しており、東京都多摩地域、千葉県、南大阪地域等で大きな下落が見られた。A商業地では、ほとんどの地域で下落幅が拡大しており、千葉県、京都市、名古屋市等で大きな下落が見られた。なお、前回公示で上昇又は横ばいを示した東京都区部都心部の一部の高度商業地では、その多くが引き続き安定基調で推移している。地方圏においては、住宅地は横ばい、商業地についてはやや下落幅が拡大した。
 全国平均の変動率を用途別に見ると、住宅地△三・八%、宅地見込地△二・五%、商業地△八・一%、準工業地△五・〇%、工業地△四・三%、調整区域内宅地△一・六%となっており、いずれの地域も前年より下落幅が拡大した。

U 東京圏の概況

<東京圏の地価は、住宅地は、すべての地域で下落幅が拡大した。商業地は、東京都区部南西部及び千葉市では下落幅が縮小し、それ以外の地域では下落幅が拡大した>
 東京都では、住宅地は、年間一割未満の下落となっている。商業地は、多摩地域では年間一割以上の下落、それ以外の地域では年間一割未満の下落となっている。
 神奈川県では、住宅地、商業地ともに年間一割未満の下落となっている。
 埼玉県及び千葉県では、住宅地は、年間一割未満の下落、商業地は、年間一割以上の下落となっている。

V 大阪圏の概況

<大阪圏の地価は、住宅地は、すべての地域で下落幅が拡大し、特に南大阪ではその傾向が顕著であった。
商業地は、すべての地域で下落幅が拡大した>
 大阪府では、住宅地は、年間一割未満の下落となっている。商業地は、東大阪では年間一割未満の下落、それ以外の地域では年間一割以上の下落となっている。
 兵庫県、京都府及び奈良県では、住宅地は、年間一割未満の下落となっている。商業地は、京都府では年間一割以上の下落、それ以外の地域では年間一割未満の下落となっている。

W 名古屋圏の概況

<名古屋圏の地価は、住宅地は、すべての地域で下落幅が拡大した。商業地は、すべての地域で下落幅が拡大し、特に名古屋市ではその傾向が顕著であった>
 住宅地は、名古屋市、名古屋近接地域及び知多地域では年間一割未満の下落、それ以外の地域ではわずかな下落となっている。商業地は、名古屋市及び三重県では年間一割以上の下落、それ以外の地域では年間一割未満の下落となっている。

X 地方圏の概況

<地方圏の地価は、住宅地は横ばい、商業地についてはやや下落幅が拡大した>
 ブロック中心都市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では、住宅地は、すべての都市で下落幅が拡大し、特に札幌市ではその傾向が顕著であった。商業地は、広島市及び福岡市では下落幅が縮小し、札幌市及び仙台市では下落幅が拡大した。
 三大圏の周辺都市では、住宅地は、甲府市を除くすべての都市で下落幅が拡大し、つくば市等では年間一割未満の下落、宇都宮市等ではわずかな下落となっている。商業地は、ほぼすべての都市で下落幅が拡大し、岐阜市等では年間一割以上の下落、姫路市等では年間一割未満の下落となっている。
 その他の地方中心都市では、住宅地は、半数以上の都市で下落幅が拡大し、岡山市等では年間一割未満の下落、福島市等ではわずかな下落となっているが、北九州市等では横ばいとなっている。商業地は、ほぼすべての都市で下落幅が拡大し、富山市等では年間一割未満の下落、浜松市等では年間一割以上の下落となっている。
















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月例経済報告(四月報告)


経済企画庁


 概 観

 我が国経済
需要面をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。
 産業面をみると、鉱工業生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、改善の動きがみられるものの厳しい状態が続いている。企業倒産件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。
 雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。
 輸出は、やや減少している。輸入は、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、三月月初の百十九円台から百二十三円台に下落した後、百十七円台まで上昇し、月末にかけて百二十円台に下落した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、三月は大幅に低下した。長期金利は、三月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。株式相場は、三月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M+CD)は、二月は前年同月比三・五%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

 海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九八年七〜九月期前期比年率三・七%増の後、十〜十二月期は同六・〇%増となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。三月の長期金利(三十年物国債)は、月半ばに低下する場面があったが、月を通じては横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬に一時下落したもののその後再び上昇し、月末には一万ドルを突破した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している。物価は、安定している。なお、四月八日に、イングランド銀行はレポ金利を〇・二五%引下げ五・二五%とするとともに、欧州中央銀行はレポ金利を〇・五〇%引下げ二・五〇%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられるものの、失業率は高水準で推移している。貿易収支黒字はここ数か月減少している。
 国際金融市場の三月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬から下旬にかけて総じて減価基調で推移したが、月末には増価する場面があった。
 国際商品市況の三月の動きをみると、月半ばにやや弱含んだが、総じて上昇基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から終始強含みで推移し、月末には十四ドル/バレル台まで回復した。

     *     *     *
 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。輸出は、やや減少している。
 生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。
 雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。
 民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っているが、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は大幅に減少した。一方、金融システム安定化策の進展や金融緩和政策の維持を背景に、金融市場では流動性に対する安心感が広まり、長短金利は低下した。
 以上のように、景気は、民間需要が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが、各種の政策効果に下支えされて、下げ止まりつつある。
 このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。特に、平成十一年度予算の成立に当たって、上半期において公共事業等の積極的な施行を図ること等を三月二十三日に閣議決定した。また、住宅金融公庫金利の引き上げ幅の思い切った圧縮や、中小企業に対する特別保証制度について、今後、必要かつ十分な額の保証枠の追加を行うこととした。

1 国内需要
―住宅建設は、一部に持ち直しの動き―

 個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で一月一・四%増の後、二月は三・八%減(前月比五・三%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比四・一%減、勤労者以外の世帯では同二・九%減となった。形態別にみると、財・サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比三・一%減、勤労者世帯では同三・九%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で一月一・六%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で一月五・三%減の後、二月は三・五%減(前月比〇・五%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で一月一・九%減の後、二月二・六%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で一月四・二%減の後、二月二・九%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で三月は一・七%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で二月は一五・〇%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、二月は前年同月比で国内旅行が三・一%減、海外旅行は七・二%減となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で一月三・四%減の後、二月(速報)は〇・六%減(事業所規模三十人以上では同〇・〇%)となり、うち所定外給与は、二月(速報)は同二・五%減(事業所規模三十人以上では同三・二%減)となった。実質賃金は、前年同月比で一月三・七%減の後、二月(速報)は〇・六%減(事業所規模三十人以上では同〇・〇%)となった。なお、平成十年年末賞与は、前年比二・九%減(前年は同〇・一%減)となった。
 住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で一月〇・七%増(前年同月比一一・二%減)となった後、二月は三・二%増(同九・四%減)の九万九千戸(年率百十九万戸)となった。二月の着工床面積(季節調整値)は、前月比六・二%増(前年同月比五・〇%減)となった。二月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比一七・九%増(前年同月比九・〇%増)、貸家は同八・五%減(同一八・四%減)、分譲住宅は同三・九%減(同一六・八%減)となっている。
 設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(三月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の十年度設備投資計画は、製造業で前年度比一二・二%減(十二月調査比四・四%下方修正)非製造業で同一・〇%減(同二・一%下方修正)となっており、全産業では同五・四%減(同三・〇%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比八・七%減(十二月調査比〇・九%下方修正)、非製造業で同二・三%減(同〇・六%下方修正)となり、中小企業では製造業で同一二・一%減(同六・七%上方修正)、非製造業で同六・一%減(同一・七%上方修正)となっている。
 なお、十年十〜十二月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で一八・七%減(うち製造業一五・九%減、非製造業二〇・〇%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で一月は一・七%減(前年同期比二二・九%減)の後、二月は五・〇%増(同八・九%減)となり、基調は減少傾向となっている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、二月は前月比二二・一%増(前年同月比六・八%減)となったが、弱い動きが続いている。内訳をみると、製造業は前月比二・〇%増(前年同月比四四・二%減)、非製造業は同二七・〇%増(同四・八%増)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で一月一三・九%増の後、二月は三三・五%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で一月〇・〇%増の後、二月は三八・八%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で一月二〇・〇%増の後、二月は二六・〇%増となった。

2 生産雇用
―生産は、下げ止まりつつある―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。
 鉱工業生産は、前月比で一月〇・四%増の後、二月(速報)は、電気機械、パルプ・紙・紙加工品等が増加したものの、化学、一般機械等が減少したことから、〇・六%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で三月は機械、化学等により〇・八%増の後、四月は機械、鉄鋼等により三・三%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で一月一・四%増の後、二月(速報)は、資本財が増加したものの、耐久消費財、生産財等が減少したことから、二・三%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で一月一・八%減の後、二月(速報)は、電気機械、一般機械等が減少したものの、輸送機械、化学等が増加したことから、〇・五%増となった。また、二月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一〇九・八と前月を五・〇ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は二か月連続で増加し、在庫は七か月連続で減少した。一般機械では、生産は二月は減少し、在庫は八か月連続で減少した。化学では、生産は二月は減少し、在庫は増加した。
 雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、一月〇・四九倍の後、二月〇・四九倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、一月〇・九一倍の後、二月〇・八八倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、二月は前年同月比一・三%減(前年同月差七十二万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、一月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・二%増)の後、二月(速報)は同〇・三%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比〇・六%減)、産業別には製造業では同二・一%減となった。二月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差十四万人増の三百十五万人、完全失業率(同)は、一月四・四%の後、二月四・六%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では一月前年同月比一〇・九%減(季節調整済前月比三・七%増)の後、二月(速報)は同八・四%減(同二・七%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比八・八%減)。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(三月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、過剰感にやや高まりがみられる。
 企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、改善の動きがみられるものの厳しい状態が続いている。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(三月調査)で大企業の動向をみると、十年度下期の経常利益は、全産業では前年同期比二四・五%の減益、製造業では同四一・三%の減益、非製造業では同六・九%の減益が見込まれている。十年度下期の売上高経常利益率は、製造業では二・四二%、非製造業では一・九一%と見込まれている。なお、十一年度上期の経常利益見通しは、製造業では減益、非製造業では増益となっている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 また、同調査で中小企業の動向をみると、十年度下期の経常利益は、全産業では前年同期比二三・九%の減益、製造業では同三三・三%の減益、非製造業では同一九・五%の減益が見込まれている。なお、十一年度上期の経常利益見通しは、製造業、非製造業ともに増益となっている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。
 銀行取引停止処分者件数は、二月は五百六十八件で前年同月比四七・七%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で五八・五%、小売業で五五・六%の減少となった。

3 国際収支
―輸出は、やや減少―

 輸出は、やや減少している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、一部仕向先の特殊要因もあって、前月比で一月六・〇%増の後、二月は八・六%減(前年同月比七・三%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、EU等が減少した。
 輸入は、おおむね横ばい状態となっている。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で一月四・三%増の後、航空機輸入等の特殊要因もあって二月八・二%増(前年同月比一一・四%増)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器等)が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、一月に一兆三千二百三十九億円の黒字の後、二月は八千五百八十億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 一月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が拡大したものの、貿易収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、一兆百九十一億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、所得収支の黒字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、一兆三千八百五十九億円となった。投資収支(原数値)は、五千百八十五億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、四千六百七億円の黒字となった。
 三月末の外貨準備高は、前月比十一億ドル増加して二千二百二十五億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、三月月初の百十九円台から百二十三円台に下落した後、百十七円台まで上昇し、月末にかけて百二十円台に下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、三月は月央にかけて百三十円台から百三十三円台で推移したが、その後上昇し、下旬は百二十八円台から百二十九円台で推移した。

4 物 価
―国内卸売物価は、弱含みで推移―

 国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。
 三月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(豚肉)等が上昇したものの、化学製品(エチレングリコール)等が下落したことから、前月比〇・二%の下落(前年同月比一・九%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、三月調査)によると、製品需給バランスは、小幅な改善がみられるものの、依然緩んだ状態にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比一・〇%の上昇(前年同月比七・三%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比〇・八%の上昇(前年同月比一〇・三%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の上昇(前年同月比三・四%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、二月は前年同月比一・〇%の下落(前月比保合い)となった。
 商品市況(月末対比)は木材等は上昇したものの、鋼材等の下落により三月は下落した。
 三月の動きを品目別にみると、米つが正角等は上昇したものの、山形鋼等が下落した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で一月〇・一%の下落の後、二月は繊維製品の上昇幅の縮小等の一方、公共料金(広義)の下落幅の縮小等により〇・一%の下落(前月比〇・三%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で一月〇・二%の上昇の後、二月は〇・一%の下落(前月比〇・四%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で二月〇・一%の下落の後、三月(中旬速報値)はその他工業製品の下落幅の拡大等により〇・二%の下落(前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で二月〇・二%の下落の後、三月(中旬速報値)は〇・五%の下落(前月比保合い)となった。

5 金融財政
―長短金利は低下―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、三月は大幅に低下した。長期金利は、三月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。株式相場は、三月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M+CD)は、二月は前年同月比三・五%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、二、三か月物ともに、三月は大幅に低下した。
 公社債市場をみると、国債流通利回りは、三月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、二月は短期は〇・〇四九%ポイント低下し、長期は〇・一五四%ポイント低下したことから、総合では前月比で〇・〇六七%ポイント低下し一・八一〇%となった。
 マネーサプライ(M+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、二月(速報)は三・
五%増となった。また、広義流動性でみると、二月(速報)は三・三%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、二月(速報)は前年同月比四・三%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後一・三%減)となった。三月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が六百六十億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は六千三百億円となった。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(三月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いている。
 また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。
 株式市場をみると、日経平均株価は、三月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。

6 海外経済
―アメリカ、ダウ最高値更新―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九八年七〜九月期前期比年率三・七%増の後、十〜十二月期は同六・〇%増となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は二月前月差に二九・七万人増の後、三月は同四・六万人増となった。失業率は三月四・二%となった。物価は安定している。二月の消費者物価は前年同月比一・六%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同〇・五%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。三月の長期金利(三十年物国債)は、月半ばに低下する場面があったが、月を通じては横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬に一時下落したもののその後再び上昇し、月末には一万ドルを突破した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。九八年十〜十二月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率一・五%減、フランス同二・九%増(速報値)、イギリス同〇・三%増(確定値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している(鉱工業生産は、ドイツ十二月前月比〇・六%増、フランス一月同〇・六%増、イギリス二月同〇・一%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している(二月の失業率は、ドイツ一〇・五%、フランス一一・五%、イギリス四・六%)。物価は、安定している(二月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比〇・二%、フランス同〇・二%、イギリス同二・一%)。なお、四月八日に、イングランド銀行はレポ金利を〇・二五%引下げ五・二五%とするとともに、欧州中央銀行はレポ金利を〇・五〇%引下げ二・五〇%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられるものの、失業率は高水準で推移している。貿易収支黒字はここ数か月減少している。
 国際金融市場の三月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬から下旬にかけて総じて減価基調で推移したが、月末には増価する場面があった(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)三月三十一日現在一〇九・三、二月末比〇・六%の増価)。内訳をみると、三月三十一日現在、対円では二月末比〇・二%減価、対ユーロでは同二・四%増価した。
 国際商品市況の三月の動きをみると、月半ばにやや弱含んだが、総じて上昇基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から終始強含みで推移し、月末には十四ドル/バレル台まで回復した。


 労働保険の年度更新手続きは五月二十日までに

 労働保険の平成十年度分の確定保険料と、平成十一年度分の概算保険料の申告・納付手続き(年度更新手続き)を行っていただく時期になりました。
 各事業主の方は所定の納付書(概算・確定保険料申告書に添付)を添えて、四月一日から五月二十日までの間に保険料を納付していただくようお願いいたします。納付の窓口は、日本銀行の本・支店、代理店などです。
 労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険とを総称した名称です。保険の給付はこの二つの保険制度で別個に行われますが、保険料の徴収は「労働保険」として一体に取り扱われます。事業主は、労働者を一人でも雇っていれば労働保険の加入手続きを行い、保険料を納付しなければなりません(農林水産の事業の一部を除きます)。
 まだ労働保険に加入されていない場合も含めて、手続きについてのご不明な点等については、最寄りの労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)にお尋ねください。
(労働省)


 ふれあい看護体験参加者募集のお知らせ

 五月十二日は「看護の日」です。この日を中心とした看護週間(今年は五月九〜十五日)には、「ふれあい看護体験」が行われ、毎年、多数の方にご参加いただいています。各都道府県の看護協会では、今年も参加者を募集しています。
 一般の方々に医療現場で看護の実務を体験してもらい、病気の苦しみや人の命について理解を深めていただく「ふれあい看護体験」。昨年は全国の二千百四十一施設で実施され、三万七百人が参加しました。
 応募の締め切りは、地域や施設によって異なりますが、おおむね四月末ごろです。詳しくは、各都道府県の看護協会かナースセンターにお問い合わせください。
(厚生省)


 けん銃のない安全な社会を目指して

 ●銃器使用犯罪の発生状況
 昨年(平成十年)の銃器発砲件数は、百五十四件。前年(九年)の百四十八件に比べてやや増加しました。最近の銃器発砲件数は、平成六年(二百四十九件)をピークに減少傾向を示していましたが、平成九年以降、徐々に増加に転じています。
 また、昨年はけん銃を実際に発砲した強盗事件が十一件発生しました。平成四年以降では最多となった前年(十七件)より減少したものの、依然として多発傾向にあります。特に、現金輸送車や金融機関をねらった強盗事件の発生が目立ちました。
 昨年発生した銃器使用事件によって、死者が十九人、負傷者は三十五人出ており、このうち暴力団関係者を除いた一般人は、死者が八人(対前年比一人減)、負傷者が十三人(同三人増)となっています。
 ●銃器の摘発状況
 昨年のけん銃の押収状況は、一千百四丁。このうち五百七十六丁を暴力団関係者から押収しています。
 これまでの警察の取締りや銃刀法の改正によるけん銃事犯の重罰化などにより、暴力団はけん銃など武器の組織的な管理を強めています。その例として、暴力団は摘発を免れるため、人気のない空き家、ビル空室、倉庫などにけん銃を隠すケースが、最近多くなっています。
 また、昨年は暴力団関係者以外の者からも五百二十八丁が押収されており、ガンマニアらによる趣味の領域を逸脱した悪質な改造けん銃等の所持事件や違法な古式銃砲の押収などが目立ちました。
 徐々にではありますが、毎年暴力団以外からのけん銃押収数が増えていること、また、高校生など青少年層の間にも銃器に対する抵抗感が薄れてきている現状を考慮すると、けん銃をめぐる情勢は予断を許さないものといえます。
■違法な銃器を根絶するために
 ◆情報をお寄せください
 けん銃等の銃器に関する情報がありましたら、どんなささいなことでも、警察署、交番、または「けん銃一一〇番」(全国の警察本部に設置されています)にご連絡ください。
 ◆自首減免規定をご存じですか
 けん銃やその弾を提出して自首すれば、その罪が免除されたり、軽くなったりします。
 ◆多くの人が“嫌銃意識”を
 一人でも多くの人に、けん銃を憎み嫌う“嫌銃意識”を持っていただきたいと思います。それが、けん銃のない安全な社会を築くことにつながるのです。
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 銃器対策への、皆さんのご理解とご協力をお願いします。
(警察庁)


 国民生活基礎調査にご協力ください

 国民生活基礎調査は、国民の保健、医療、福祉、所得など生活の基礎的な事項について総合的に把握し、厚生行政の企画・運営に役立てるために行うものです。
 国勢調査区から無作為抽出された約一千地区、五万の世帯を対象に調査員が訪問し、面接聞き取りの形で調査を実施します。対象となった世帯の皆さんには、調査の趣旨をご理解いただき、なにとぞご協力いただきますようお願いいたします。
■調査時期
 世帯票…六月三日(木)
 所得票…七月十五日(木)
■調査事項
 世帯票
 一か月間の家計支出、医療保険の加入状況、傷病の状況、就業の状況、公的年金の加入状況、公的年金の受給状況など
 所得票
 所得の種類金額、課税等の状況、生活意識の状況
(厚生省)


 「みどりの日」「みどりの週間」

 四月二十九日の「みどりの日」は、平成元年に制定された国民の祝日です。
 この日は、みどり豊かなわが国の自然の恩恵に感謝するとともに、一人でも多くの方が自然に親しみ、豊かな心をはぐくむことを趣旨としています。
 また、この四月二十九日を最終日としたみどりの週間(四月二十三〜二十九日)には、毎年全国各地でみどりに親しむさまざまな行事が開催されます。
(総理府)

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    <5月6日号の主な予定>

 ▽平成十年貯蓄動向調査………総 務 庁 

 ▽消費者物価指数の動向………総 務 庁 




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