官報資料版 平成11年5月12日




                  ▽農業白書のあらまし……………………………農林水産省

                  ▽毎月勤労統計調査(一月分結果速報)………労 働 省











農業白書のあらまし


―平成10年度 農業の動向に関する年次報告―


農林水産省


 「平成十年度農業の動向に関する年次報告」(農業白書)は、平成十一年四月十六日、閣議決定のうえ、国会に提出、公表された。
 平成十年度農業白書は、食料・農業・農村に関する三本の特集テーマ(U〜W章)のもとに、食料・農業・農村をめぐる課題等を整理しつつ、新たな基本法の必要性や農政改革大綱のもとでの政策展開に対する国民の理解が一層深まるような内容とすることとした。
 また、農業・農村に対する国民の理解と認識が深まるとともに、より多くの農業者にとって励みとなるよう、農業者自らの創意工夫によりいきいきと農業経営を展開している事例を数多く紹介した<本あらましでは省略>。
 本報告のあらましは、次のとおりである。

<第T章> 平成九〜十年度の農業経済と我が国の主要農畜産物の需給動向

第一節 経済の動向と農業経済

 (一) 内外経済の動向
 平成九年度の我が国経済は、実質GDPの伸びがマイナス〇・四%と昭和四十九年以来、二十三年ぶりのマイナス成長となった。十年度に入っても(四〜十二月期)、景気は低迷状態が続き、きわめて厳しい状況にある。

 (二) 平成九年度を中心とした農業経済
 平成九年の農業生産(指数)は、米や野菜、肉用牛、ブロイラー等の品目で減少したものの、麦類、果実、豚等の増加により、前年に比べ〇・四%上昇した。
 農業総産出額(概算)は四・七%減少の九兆八千三百十六億円、生産農業所得(概算)は一一・四%減少の三兆九千三百四十三億円となった。
 販売農家一戸当たりの農業所得は前年より一三・三%減少し、百二十万三千円となった。農外所得及び年金・被贈等の収入は増加したものの、農業所得の落ち込みをカバーするには至らず、農家総所得は一・六%減少し八百七十九万六千円となった。

 (三) 農協事業、食品産業の動向
 農協の合併大型化が進み、平成九年度末の総合農協数は二千六組合と、前年度に比べ二百七十八組合の減少となった。正組合員は四万人減少し五百三十九万人となった。事業利益は、販売事業、購買事業の取扱高が減少したことに加え、支払共済金が大幅に増加したこと等もあり、六百四十三億円(五一・九%減)となった。
 食品工業は、生産指数、出荷指数とも平成九年以降マイナスで推移している。食品流通業は、卸売業、小売業ともに販売額が減少した。順調な成長を示してきた外食産業の市場規模の伸びは鈍化した。一方、料理品小売業(中食業等)は、五・五%増とかなりの伸びを示した。

第二節 農業の生産性と農家の生活水準

 平成九年の農業の物的労働生産性は、七年を一〇〇とする指数で一〇三の水準となった。また、農業の製造業に対する比較生産性は、二六・三%と前年に比べ一・二ポイントの低下となった。
 農業者と製造業の就業者一人一日当たりの所得を比較すると、農業所得(販売農家)は製造業賃金(常用労働者五〜二十九人)の四二・〇%の水準となった。
 農家と勤労者世帯の家計費を比較すると、販売農家の世帯員一人当たり家計費は百二十九万円で、就業者数の違い(販売農家二・四九人、勤労者世帯一・六六人)はあるものの、勤労者世帯を一四・二%上回っている。
 自立経営農家(下限農業所得六百十三万円/戸)の販売農家全体に占めるシェアは、戸数で五%、耕地面積及び農業専従者数で二割、農業粗生産額で三割となった。

第三節 我が国の主要農畜産物の需給動向等

 (一) 米
 米需給の大幅な緩和により平成九年十月末の国産米在庫量は、適正備蓄水準の上限である二百万トンを大幅に超える三百五十二万トンとなった。こうした状況のもとで、九年十一月に定められた新たな米政策大綱に基づく対策が講じられた結果、需給バランスは回復傾向に転じつつある。
 十年産米の作柄は、作況指数九八の「やや不良」、生産量は八百九十六万トンとなった。
 増大した自主流通米の在庫量を減らし、市場の安定を図る観点から、政府米の販売については、自主流通米の販売との連携を図ってきた。この結果、平成十米穀年度の自主流通米の販売は前年度より大幅に拡大した。
 平成十年度の生産調整実施見込面積は九十五万四千ヘクタール、生産調整対象水田面積に対する実施率は九九%となっている。転作の内訳をみると、大豆、麦類、飼料作物等の一般作物は、重点的な推進が図られたことから大きく伸長している。

 (二) 主要畑作物
 麦類は、近年、転作による作付けが増加しており、全体の作付面積・収量ともに微増傾向にある。また、一戸当たりの麦作付規模も徐々に拡大してきている。
 国内産麦は、ほとんどが政府を経由して流通しているため、実需者のニーズが生産者に伝わりにくく、需要と生産に大幅なミスマッチが生じている。このような状況を打開するため、民間流通への移行等を内容とする「新たな麦政策大綱」を決定した。
 大豆の近年の生産量は生産調整規模の動向等により大きく変動している。また、作付規模が極めて零細なことから安定生産と均質化が重要な課題となっている。
 平成十年産の秋冬野菜は八月下旬からの集中豪雨、台風等の影響により葉菜類を中心に高値で推移した。このため、野菜供給安定基金がキャベツの売渡し、緊急輸入等を行うなど、供給量確保の措置を講じた。

 (三) 畜産物
 畜産物の需要量は総体的に横ばいで推移している。また、国内生産量は全般的に減少傾向にある。一方、輸入量をみると、牛肉は狂牛病等の影響等から減少した八年度に対して九年度は回復傾向にあるが、豚肉は九年三月の口蹄疫の発生による台湾産の輸入禁止措置により前年比二一・七%と大幅な減少となった。
 近年、微減傾向が続いている自給飼料生産については、飼料基盤の強化による生産コストの低減にとどまらず、農地の有効利用や食料自給率の向上等様々な意義を有しており、今後、生産拡大に向けた取組みが必要となっている。
 酪農・乳業の健全で持続的な発展を図るため、市場実勢を反映した適正な価格形成の実現と酪農経営の安定の確保、ゆとりある生産性の高い酪農経営の実現、乳業の再編・合理化等を目指す「新たな酪農・乳業対策大綱」が十一年三月に取りまとめられた。

 (四) 内外価格差
 平成九年における我が国(東京)の食料品の小売価格は、海外主要都市に比べて一〜二割程度の割高となっている。しかし、近年、円安のほか、生産・流通段階でのコストの低下努力等により価格差は縮小傾向で推移してきている。
 生鮮食品や加工食品の生産段階と流通段階の経費の比率は、日米間でほぼ同じであり、同程度の内外価格差が発生している。また、生鮮食品は小売価格に対する流通経費の比率が大きい。
 我が国においては、輸送経費や流通加工経費のほか、多頻度小口配送等といった消費者の購買行動への対応も流通コストを引き上げる要因となっている。
 我が国の場合、各産業に共通する人件費、地価、エネルギー価格等が諸外国に比べて割高であり、内外価格差の縮小のためには農業とともに関連産業全体においてコスト低減に向けた努力が必要である。

第四節 諸外国の農政及び農業の動向

 (一) 世界の農政の流れ
 一九八〇年代に入って、補助金付輸出競争の激化や農業関係の財政支出の増加を背景に、価格支持等農業保護政策の改革議論が浮上してきた。UR交渉やOECDでの議論を通じて、各国の農業政策は、直接支払い等それぞれの国の実状を踏まえた手法により、農家の経営安定や農業の有する多面的機能の強化等を図りながら、市場原理に沿った農業・貿易を目指す方向へと転換してきている。

 (二) 最近の諸外国の動き
 米国では、穀物価格の低下による農家経済への影響に対処するため、余剰小麦の援助向け買上げ、緊急農家財政救済法の制定、九九年度予算への農家救済予算(五十九億八千万ドル)の計上等の措置を実施している。
 EUは、価格支持の引下げ等、九二年の共通農業政策(CAP)改革をさらに押し進める改革案に合意した。また、フランスでは、農業の有する多面的機能等を重視する新農業基本法を検討中である。

 (三) 最近のWTO等の動き
 我が国はこれまで、農産物純輸入国の立場から、あらゆる機会を通じて、農業の有する多面的機能や食料安全保障の重要性、輸入国と輸出国との権利・義務のバランスの確保等を主張してきている。WTO次期農業交渉においても、こうした点が十分確保できるよう対応していくことが必要である。また、「農政改革大綱」に即して具体化される施策が、国際規律のもとで正当に位置付けられるよう努力していくことも重要である。
 一九九八年十一月、APEC閣僚会議が開催され、早期自主的分野別自由化(EVSL)に関し、林産物・水産物等優先九分野の関税措置については、WTOに議論の場が移行することとなった。

 (四) 米の特例措置の関税措置への切換え
 米の関税化の特例措置は、実施期間中に関税措置に切り換えると、それ以降のミニマム・アクセス数量の増加が半分に抑えられること、きわめて少数の国しか適用していない関税化の特例措置に固執した場合、二〇〇〇年初から開始されるWTO次期農業交渉において、連携を図るべき関係諸国の理解を得られなくなる恐れがあること等の理由により、十一年四月一日から関税措置への切換えを行うことが決定された(第1図参照)。

<第U章> 食料の安定供給確保

第一節 世界の食料需給構造

 (一) 世界の穀物需給の動向
 世界の穀物需給をみると、主要輸出国で財政負担を軽減するために在庫水準の圧縮を図ったこと等により、九〇年代の在庫水準は低下傾向で推移し、九五〜九六年度の在庫率は一四・五%と過去最低の水準であった。その後、アジア地域での需要の低迷や主要生産国の豊作等により需給はやや緩和傾向で推移したが、在庫率は依然として低水準で推移している。

 (二) 短期的な不安定さを増している世界の食料需給
 世界の農産物貿易は、生産量に占める輸出の割合が小さく、また、少数の国・地域に輸出国が集中する構造となっていること等から、そもそも不安定な側面を有している。
 最近では、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の影響とみられる異常気象、かんがい施設の整備の遅れや維持・管理の不全等により、インドネシアやバングラデシュでは九八年度の米輸入量が急増した。
 主要輸出国において穀物の在庫水準が圧縮されてきていることや、異常気象による農業生産の変動の可能性が高まっていることから、今後は、世界の食料需給は短期的な不安定性が増大すると見込まれている。
 特に米は、主要穀物の中では貿易率が低く国際市場も小さいことから、米の生産国における生産の変動が世界市場に与えるインパクトが相対的に大きい。
 WTO農業協定は、輸入国と輸出国との間の権利・義務についてバランスを欠いたものとなっているだけでなく、食料の安定的な供給の確保への配慮が十分なされているとはいい難い内容となっている。

 (三) 中長期的にはひっ迫の可能性がある世界の食料需給
 世界の穀物需要は、開発途上国を中心とした人口の増加と所得向上に伴う肉類消費量の拡大により、大幅に増加するものと見込まれる。これに対して、生産面では、需要の増加に見合った食料供給を確保する上で農地の劣化や砂漠化の進展等種々の制約要因が明らかになってきており、世界の食料需給は、中長期的にはひっ迫する可能性がある。

 (四) 我が国の食料・農業分野の国際協力の現状
 開発途上国の食料問題を解決するため、経済力等に応じてできる限りの支援を行うことは、先進国の一員としての我が国の責務である。また、食料・農業分野の国際協力を通じ、世界の食料需給が安定することは、食料の多くを海外に依存する我が国の食料安全保障にもつながるものである。
 我が国は九八年、大規模な米不足が生じたインドネシアに政府米の貸付け等を行うとともに、「緊急食糧支援のための新たな仕組み」を創設した。

第二節 我が国の食料消費の現状と食料の安定供給の確保

 (一) 我が国の食生活の現状
 我が国の食料消費は、供給熱量ベースで約二千六百キロカロリー/人・日と、量的にはほぼ飽和水準に到達したものとみられる。食料の品目別構成の推移をみると、米が減少し、肉類や牛乳・乳製品、油脂類等が増加するなど品目の多様化が進行してきた(第2図参照)。
 我が国の食生活は、昭和四十年代の半ばにはPFC(P:たん白質、F:脂質、C:炭水化物)バランスの良好な「日本型食生活」が形成されたが、近年、食生活の乱れ等による栄養バランスの崩れが問題となってきている。
 今後、望ましい食生活の維持・定着を図るため、「食」に関する適正な情報の積極的な提供や普及啓発活動の推進、家庭や学校等における食教育の充実等が期待される。

 (二) 食料自給率
 我が国の食料自給率は低下を続け、平成九年度の数値は供給熱量ベースで四一%と主要先進国の中で最低の水準となった。自給品目である米の消費が減少する一方で、輸入飼料穀物や輸入油糧種子に依存せざるを得ない畜産物、油脂類の消費が増加したことが自給率低下の大きな要因となっている。
 国内生産の拡大により供給熱量自給率を一%向上させるためには、小麦は平成九年度の国内生産量の約一・七倍、大豆は約三倍の作付面積の拡大が必要である。しかしながら、これらの生産の拡大を図るには、生産コストの低減や実需者ニーズに対応した品質面での改善等相当の努力が必要である。

 (三) 我が国の食料供給力
 現状程度の農地面積のもとで、熱量効率優先の生産転換への取組みが行われた場合、国民に供給できる供給熱量水準の試算値は一千七百六十キロカロリー/人・日、備蓄の放出による供給熱量と合わせて一千九百六十キロカロリー/人・日となり、昭和二十九年当時の供給熱量水準と同程度の確保が可能である。

 (四) 我が国における食料の安定的な輸入を確保するための取組みと食料備蓄
 我が国は、穀物等主要な農産物の八割以上を米国、カナダ、オーストラリアの三か国に依存している。このため、我が国は、食料輸入国の立場から輸出国に対し、安定供給の重要性等について主張するとともに、カナダ及びオーストラリアと二国間で年間取引数量の目標を設けるなどの安定的な輸入確保のための取組みを実施している。
 世界最大の農産物純輸入国である我が国は、異常気象による食料需給のひっ迫や輸入相手国の港湾ストライキ等輸入の短期的な変動に備えるために備蓄の確保が必要である。このため、我が国は、食糧用小麦、飼料穀物、食品用大豆、米についての備蓄制度を整備している。

 (五) 食料の安定供給と食料安全保障の確保のための課題
 国民の必要とする食料の安定供給と不測の事態に対処し得る食料安全保障を確保するためには、国内農業生産を基本に位置付け、優良農地の確保とその有効活用や担い手の育成、農業技術の向上等を通じて可能な限り、その維持・拡大を図ることが重要である。
 食料の安定的な輸入に向けて、輸出国との相互信頼関係の醸成等食料外交の積極的推進や情報収集体制の整備、輸入相手国の多元化等を図るとともに、主要食料等の備蓄制度の適切かつ効率的な管理・運営が必要である。また、輸入の途絶等不測の事態が生じても最低限の食料供給が確保されるよう、危機管理体制の構築が必要である。

 (六) 食料自給率の維持・向上のための課題
 国内農業生産の維持・拡大を図るうえで、関係者の努力喚起と政策推進の指針として、食料自給率の目標を策定し、生産・消費の両サイドから取り組むことが必要である。
 生産者サイドでは、輸入依存度の高い小麦、大豆、飼料作物等主要品目ごとに、生産努力目標の策定やそのための具体的な対応策を検討していくことが必要である。
 消費者サイドでは、食料消費や農産物の供給等食料自給率に関する情報提供、食べ残しや廃棄の削減、主食である米を中心に多様な副食品のバランスの良い摂取等望ましい食生活を実現するための啓発活動等を通じた国民運動を展開することが必要である。

第三節 食料の安定供給を支える食品産業と安全・良質な食料の供給

 (一) 食料の安定供給と食品産業
 食品産業は、農業とともに食料の安定供給にとって大きな役割を果たすとともに、相互に強い依存関係を形成している。しかし、食品産業に対する国産農産物の供給体制は十分ではなく、食品産業と農業との連携の強化が必要である。
 食品産業は、中小企業の比率が高く経営基盤もぜい弱なことから、産学官の連携による技術研究開発への取組み等を促進し、経営体質を強化することが必要である。また、食品残さ等のリサイクルの促進等事業活動に伴う環境負荷の低減を図ることが必要である。
 卸売市場は、効率的な集分荷や公正な価格形成等を担う生鮮流通の拠点として大きな役割を担っている。このため、市場の活性化と関係者の経営体質の強化を図るとともに、市場・品目ごとの実態に即した取引方法の改善等が必要である。
 近年、食品流通業は、中小規模層の再編が進むとともに、消費者のライフスタイルの変化等への対応が遅れた業態が著しく減少している。食品流通業の効率化と活性化のためには、情報化技術の導入等による最適な流通システムの構築等が重要な課題となっている。

 (二) 食品の安全性の確保と品質の向上
 消費者は、食品についての知識・情報不足等の問題もあり、その安全性等に高い関心を持っている。このため、生産から消費の各段階における安全性・品質確保対策の充実とともに、消費段階での情報提供・啓発等の対策が重要である。
 食品製造段階における安全性・品質確保のため、HACCP手法が注目されているが、その導入には事業者に大きな負担を伴うことから、十年七月から導入の促進を図るための支援措置(HACCP手法支援法)を施行した。

 (三) 食品の表示・規格制度の現状と課題
 消費者の適正な商品選択に資するため、国際基準との整合性等に配慮しつつ、原産地表示の拡充をはじめとする食品の表示・規格制度の拡充が必要である。また、有機食品については、コーデックス委員会で定める基準等を勘案しながら、第三者による検査・認証制度の導入が必要となっている。
 遺伝子組換え食品は、従来の農産物と実質的に同じものである場合には区別が困難であるなど、その表示については多くの課題がある。このため、生産・流通等の実態や諸外国の状況を踏まえて、表示のあり方について検討中である。

<第V章> 我が国農業の持続的な発展の追求

第一節 農業労働力と農地の動向

 (一) 農家、農業労働力及び新規就農の動向
 我が国の農業労働力は減少と高齢化が進行するとともに、昭和一けた世代のリタイアの時期が迫るなど、農業の体質は弱体化している。このことは、農業生産の維持・拡大にとって深刻な問題であり、様々な就農ルートを通じた幅広い就農者の確保・育成が重要な課題となっている。
 九年の新規青年就農者は九千七百人と、近年増加傾向にあるものの、我が国の農業を安定的に維持していくには不十分であり、各種支援の充実が必要となっている。

 (二) 耕作放棄の現状と優良農地の確保
 農業の基礎的な資源である農地は、耕作放棄地の発生等により減少傾向にある。耕作放棄は、特に、傾斜地農地が多く、農地の受け手の少ない中山間地域等では深刻である。耕作放棄地の増加は、農業生産の維持のみならず、農業の有する多面的機能の発揮のためにも重大な問題となっている。
 ほ場整備は、農作業の効率化を促進するとともに、耕作条件の不利な地域では、耕作放棄地の発生を防止する効果も発揮している。農地の保全を図るうえで、ほ場整備は有効な手段であり、今後ともその着実な実施が必要である(第3図参照)。
 優良農地を確保するためには、国の基本方針を明確にしたうえで、市町村における具体的な有効利用計画の策定等耕作放棄の解消に向けた取組みの強化と、農業振興地域制度を基幹とする計画的土地利用の徹底、非農業的土地需要への適切な対応が必要である。

 (三) 農地流動化の動向と規模拡大の現状
 平成九年の農地の権利移動面積は過去最大となり、農作業受委託も増加傾向にあるが、土地利用型農業の経営規模拡大による農業構造の変革は、その途上にある。このため、市町村の主体的な取組みにより引き続き農地の流動化を促進し、地域農業の担い手に農地利用を集積していくことが重要な課題となっている。

第二節 多様な担い手の活動とその確保・育成

 (一) 担い手の動向
 地域農業の意欲ある担い手の一つとして期待される認定農業者は増加を続けており、平成十一年二月末の認定者数は全国で十三万二千人となっている。また、大規模農家の相当部分が経営の法人化に積極的であり、近年、農業法人等は耕種部門でも設立数が増加してきている。

 (二) 多様な担い手の活動実態
 地域農業の維持・継続を確保するため、専業的な農業者等意欲ある担い手への施策の集中化を図るほか、集落営農の活用、公的主体による農業生産活動への参画の促進等により、地域の実情に応じた多様な担い手を確保・育成する必要がある。
・認定農業者
 経営感覚に優れた効率的・安定的な農業経営を育成し、専業的な農業者等意欲ある担い手に施策を集中するに当たって、認定農業者等の育成・確保が重要な課題となっている。このため、市町村の農業経営基盤強化促進基本構想の速やかな見直しのもとに、地域の実情に即した多様な担い手像の明確化と、それに対応した施策の整備が必要となっている。
・集落営農
 集落営農は、集落単位で営農の中心的役割を担う専業的な農家と、小規模・兼業・高齢農家等が相互に補完しあいながら営農が行われており、地域の農業生産活動の維持、農地の合理的利用、機械・施設利用の効率化等の面で果たす役割が大きい。また、条件の整ったものについては特定農業法人の設立を進め、地域における農地の一体的な管理を行う主体として育成していく必要がある。
・第三セクター等公的主体の関与
 第三セクター、農地保有合理化法人等公的主体の関与する組織は、農作業受託を通じて個別農家等の農業生産活動を支援・補完するほか、地域によっては農地保全、雇用機会の創出等の様々な公共的な役割を発揮している。
・農業サービス事業体
 農業生産行程の直接的な農作業サービスを提供する組織であり、地域の実情に応じて市町村公社等様々な形態の事業体が個別経営の労働力や機械装備を補完する存在として重要性が増大してきている。

 (三) 農業経営の法人化
 農業経営の法人化は、制度資金融資枠の拡大のほか、経営と家計の分離、就業条件の改善等の利点によって、経営者の意識改革、経営の体質強化等を図るうえで有効であり、その育成が重要な課題となっている。
 農業生産法人は、有限会社を中心に増加しており、法人ゆえのメリットを活かしつつ、地域農業の担い手として農業経営を展開している。今後、経営の多角化、優れた人材の確保等を通じた農業生産法人の活性化を図るため、事業・構成員・業務執行役員要件の見直しが課題となっている。
 土地利用型農業については、農政改革大綱において農業生産法人の一形態としての株式会社に限り導入を認めることとした。今後、投機的な農地取得等株式会社形態の導入について指摘されている懸念を払拭するため、農業者、農業団体等の関係者が納得できる形で、所要の措置を講じることが必要である。

 (四) 農家女性の動向
 農業において女性は重要な役割を発揮しているばかりか、家庭においては、家事・育児・老齢者介護等の面での負担が増大している。
 農家女性の役割・地位の明確化、経営参画等を図るうえで有効な家族経営協定を締結している農家が増加しており、その一層の促進が必要となっている。また、女性の農業関連起業活動も増加しており、女性の経済的地位の向上や地域の活性化に貢献していることから、必要な情報の提供、技術研修の実施等の支援が重要な課題となっている。
 農村における農協、農業委員等への女性の社会参画は依然として低水準であり、男女共同参画社会の形成に向けて、地域の方針決定過程等への女性の参画を促進するため、参画目標の設定等の環境整備が必要となっている。
 農村における配偶者問題は、農業経営、農村社会の維持を図るうえで差し迫った問題である。このため、生活環境の改善や農村・都市交流等を通じて、若い女性が農業・農村に魅力を感じられるよう、各種の対策を総合的に推進することが必要となっている。

 (五) 農業の発展を支える技術の開発・普及
 収量の向上及び労働時間の短縮等、農業の発展に当たって技術は大きな役割を発揮してきた。農業技術の一層の充実・強化に向けて、国全体の技術開発の目標等の策定と産学官、普及組織との連携の強化、新たな農政の展開方向に即応した課題の重点化等が必要である。
 技術の移転においては、普及事業が大きな役割を発揮している。今後、担い手の要請に適合した的確な技術・経営指導を行うため、対象者の重点化、試験研究機関等との一層の連携強化、総合的な経営に対する支援活動の展開、普及職員の資質の向上等による事業の見直し等が必要である。

第三節 市場原理の一層の活用と農業経営の安定

 (一) 市場原理の活用が進む米と稲作経営の安定
 自主流通米の入札取引については、需給実勢や品質評価がより的確に反映されるよう、十年産の入札取引から値幅制限方式に代わる新たな入札システムが導入された。この新たな入札システムでは、値幅制限が撤廃され、売り手が銘柄ごとに希望価格を申し出る(前年産最終三回の平均指標価格を上回ってはならない。)などの仕組みとなっている。
 銘柄ごとの需給状況等を反映した価格形成が進展した結果、銘柄間の価格差は拡大してきており、生産地側では、このような市場の動向を踏まえた生産対応が行われてきている。また、米の小売価格についても、自主流通米の入札取引価格の動き等を反映して推移している。
 九年度の稲作所得は、自主流通米価格の低下等により、各階層とも前年度に比べて二〜三割減少した。減収額でみると、一・五〜二・〇ヘクタール層では三十六万円であるのに対し、十ヘクタール以上層では二百二十万円とかなりの金額となっており、稲作所得への依存が高い大規模農家ほど価格変動による影響を大きく受けた(第4図参照)。
 このような状況を踏まえ、平成十年度から、自主流通米の価格下落が稲作経営に及ぼす影響を緩和するため、稲作経営安定対策を実施している。また、本対策の加入意向を規模別にみると、大規模農家ほど加入意向が強く、価格下落のリスク管理の手法として本対策の活用に積極的である。
 稲作経営安定対策の見直し・改善を図る際は、米価格の下落によって大規模な経営ほど大きな影響を受けること等を踏まえ、大規模農家等の担い手層の育成という観点にも十分配慮することが必要である。

 (二) 農産物価格安定制度と農業経営の安定についての課題
 主要な農産物の価格安定制度については、国民の家計と農業経営の安定を図る役割を果たしてきた一方で、実需者ニーズに即した供給を困難にし、国産農産物の需要減少の一因となるなどの問題が生じている。このため、価格政策をより一層市場原理を重視する方向で見直すことが必要である。併せて、著しい価格変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するため、経営安定対策を措置することが必要である。

第四節 農業の自然循環機能の維持増進

 農業生産活動は、自然環境を構成する資源を形成・保全し、資源の持続的な循環利用を可能としており、このような循環機能を発揮させ、併せて環境負荷の低減を図っていくことが重要である。
 国民の環境に対する関心や健康・安全志向の高まりのなかで、環境と調和した持続性の高い農業生産方式に転換していくためには、当該農業生産方式を明確化し、農業者、消費者、行政等が一体となった取組体制の強化を図ることが必要である。
 家畜のふん尿処理に当たっては、一部でその不適切な処理による水道水源の汚染等が問題となっており、適切な堆肥化による有効利用が重要である。このため、地域における指導体制の充実、施設整備の計画的な推進等が必要である。
 農業生産方式が化学肥料にかたよったこと等から農業内部の物質循環が分断されがちである。このため、農業副産物、食品残さ等有機性資源の循環利用システムの構築等が必要となっている。
 地球規模での環境問題に積極的に対応し、農業への影響を最小限にするため、農業分野においても、二酸化炭素、メタン等の温室効果ガス等の排出削減に向けた対応の強化が必要である。
 近年、消費者の安全性への関心の高まりのなかで、ダイオキシン類問題が農産物の取扱いや価格等に多大な影響を及ぼす事例もみられる。ダイオキシン類、内分泌かく乱物質については、関係省庁と十分連携しつつ国産食料の安全性を確保していく観点から、農産物等に含まれるダイオキシン類の実態調査、内分泌かく乱物質の作用機構の解明、的確な情報提供等の取組みの強化が必要である。

<第W章> 農村の振興と農業の有する多面的機能の発揮

第一節 中山間地域を含む農村地域の現状

 (一) 農村人口、農業集落及び地域資源の動向
 全国で約十四万に及ぶ農業集落は、非農家戸数が急増し混住化が進展するなど、大きく変容してきている。特に、中山間地域では多くの地域で深刻な過疎化が進行しているばかりか、人口の減少による集落のまとまりの困難さ等の理由によって、全国で一・六%の集落が過去に消滅しており、一・二%の集落が今後消滅するものと見込まれている。
 農業集落や農業生産の変化に伴い、農業集落の社会単位としての機能である自治機能、農業生産に関する機能、地域資源の管理保全機能及び生活の相互扶助機能といった、いわゆる集落機能についても変化が起きている。各機能の弱体化の程度は混住化の進む市町村ほど大きく、特に、混住化により社会コミュニティー的機能の低下傾向が顕著である(第5図参照)。
 農業集落における農業や農家の役割は、依然として大きなものがあり、水田の水利用に伴う秩序等を基軸に、集落内の各農家間において緊密な連携をとりつつ、集落ぐるみで地域農業や農村の文化を伝承しようとする動きもみられる。

 (二) 地域社会の担い手と高齢者の農業・農村における役割
 集落の混住化が進むなか、農村の文化の伝承、集落行事の遂行等集落機能を維持していくためには、非農家や女性、高齢者を含め地域が一体となった活性化への取組みが重要である。
 農村地域では、高齢者が地域の担い手として重要な役割を果たしており、生涯現役として元気に活躍できるよう、高齢者の活動と役割を明確にし、支援することが必要である。また、農村では、要介護者のいる世帯割合も大都市等に比べて高率であり、高齢者を地域ぐるみで支えるため、介護ボランティアの人材・組織の育成・支援等高齢者福祉の充実に向けたより一層の取組みの推進が必要となっている。

第二節 農業の有する多面的機能

 (一) 多面的機能の評価
 食料の安定供給機能のほか、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、文化の伝承等農業の有する多面的機能に対する国民の関心は高まる傾向にある。農業の有する多面的機能の全国レベルの評価額は六兆九千億円に達するものと試算されており、これらの機能が正しく理解され、適正に評価されるよう情報提供や啓発活動が必要となっている。

 (二) 多面的機能の重要性とその十分な発揮に向けた取組み
 中山間地域等は農業の営みを通じ、国土の保全、水源のかん養等の多面的機能を発揮し、下流域の都市住民をはじめとする国民の生命・財産を守るという、いわば防波堤としての役割を発揮している。しかし、中山間地域等では、生産条件の不利な地域が多く、耕作放棄地が著しく増加しており、その機能の低下が懸念されている。耕作放棄地が増加すると、土壌侵食量が増加し、土砂崩壊発生の危険度が高くなる。急峻な山地や急流が多い我が国では、特に中山間地域等における適切な農業生産活動を通じて国土の保全等の多面的機能を維持・発揮していくことが重要な課題となっている。
 近年、地方自治体では、多面的機能の維持・発揮の重要性に基づき、各機能に対する様々な支援・助成を行うとともに、耕作放棄地の増加に伴い多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等に対して、平坦地とのコスト格差等を補填するなどの助成を行う動きが拡大してきている。
 国としても、中山間地域等において、耕作放棄の発生を防止し、多面的機能を確保するという観点から直接支払いを導入することとし、十二年度からの実現に向けた具体的検討を行っている。

第三節 中山間地域等における活性化の取組み

 (一) 中山間地域等における様々な資源の活用と活性化の取組み
 中山間地域は、耕地面積、農業就業人口等で全国の約四割を占めている。また、今後とも食料の生産に加えて多面的機能を十分に発揮させるため、健全な農業生産活動を維持・確保しつつ、集落の再編等も視野に入れた定住の促進と地域社会の維持・発展を図ることが重要な課題となっている。
 中山間地域の農業生産は、水稲を基幹としつつも、畜産のウェイトが比較的高い。特に、豚及びブロイラーについては、会社等の形態による大規模飼養が相当の比率を占めることが特徴的である。
 中山間地域は概して耕作条件等で恵まれない面があるが、夏期における冷涼な気候、日中と夜間の気温差等を利用して特殊な作型の栽培や高品質の農作物が生産できる可能性を有する。中山間地域ではこうした条件等を活かし、特色ある農業生産や農産物の加工・販売等により高付加価値型、高収益型農業を地域ごとに確立するため、地域特産品の認証事業の推進等による支援が必要となっている。
 中山間地域に賦存する地域資源は多種多様であり、これを利用して、農業生産ばかりでなく、地場産業の育成等多彩な活性化への取組みによる雇用機会の確保と定住の促進を進めることが重要な課題となっている。

 (二) 美しく住みよい農村の創造
 農村では上下水道等普及率、し尿衛生処理率が低いなど、社会資本の整備に遅れがみられる。また、中山間地域の農家が望む支援策としては、若い担い手では農業生産基盤の整備、高齢者農家では生活環境の整備に対する要望が上位を占めている。
 農村は農業生産の場であると同時に生活の場でもあり、計画的な土地利用を図りつつ農業生産基盤及び生活環境の一体的な整備を推進し、美しく住みよい農村を創造することが必要である。
 農業・農村における情報化は進みつつあるが、農村を活性化するため、今後さらに、情報通信基盤の整備や中央と地方を結ぶネットワーク等の開発・普及を推進することが必要となっている。

 (三) 農村と都市との交流
 ゆとりと安らぎのある豊かな生活を重視する国民意識の変化を背景に、農村と都市との交流促進への取組みが活発化してきている。しかし、六割以上の都市住民に交流経験があるものの、その内容は観光・レジャー中心にとどまっていることから、都市住民が直接農作業や農村の生活・文化に接する機会を確保すること等により、農村と都市との相互理解を一層深めていくことが重要となっている(第6図参照)。
 グリーン・ツーリズム等農業や農村の生活・文化等の実体験を通した交流への取組みが広がってきており、これが国民運動として定着するようハード・ソフト両面からの整備が必要となっている。また、児童・生徒を対象とした教育的効果に着目した体験交流等による学習機会の充実が必要であり、文部省との連携の基本的方針に沿った各種取組みが開始されている。さらに、都市住民等のニーズに応え、農地の多面的利用を推進する観点から、市民農園の広範な普及に向けた各種支援の充実が必要となっている。
 都市及びその周辺における農業は、生鮮野菜等の生産・供給の場としてはもとより、景観の形成やレクリェーションの場、防災空間の提供といった数多くの役割を果たしており、今後とも都市住民のニーズに対応した発展が図られるよう、適切な振興策が必要である。

むすび

 本報告が、我が国経済社会における食料・農業・農村の役割や位置づけに関する国民の理解の深まりの一助になることを願うものである。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十一年一月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十一年一月分結果の主な特徴点は、次のとおりである(統計数値は、特に断りのない限り事業所規模五人以上に関するもの)。

◇賃金の動き

 一月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十一万二千三百八十七円、前年同月比は二・〇%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万三千七百十三円、前年同月比〇・三%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万六千五百二十円、前年同月比〇・一%増、所定外給与は一万七千百九十三円、前年同月比は六・七%減となっている。
 また、特別に支払われた給与は二万八千六百七十四円、前年同月比一六・五%減となっている。
 実質賃金は、前年同月比二・三%減であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順に運輸・通信業〇・七%増、サービス業〇・三%増、鉱業〇・二%増、製造業〇・〇%、電気・ガス・熱供給・水道業〇・〇%、卸売・小売業、飲食店〇・九%減、建設業一・三%減、金融・保険業一・七%減、不動産業五・五%減であった。

◇労働時間の動き

 一月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一四一・六時間、前年同月比〇・四%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一三二・八時間、前年同月と同水準、所定外労働時間は八・八時間、前年同月比六・三%減、季節調整値は前月比〇・一%減であった。
 製造業の所定外労働時間は一〇・五時間で前年同月比は一一・〇%減、季節調整値は前月比三・二%増であった。

◇雇用の動き

 一月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・四%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・七%減、パートタイム労働者では一・一%増であった。常用労働者全体の季節調整値は前月と同水準となった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは、不動産業二・三%増、サービス業一・三%増、建設業〇・六%増、運輸・通信業〇・一%増であった。前年同月を下回ったものは、卸売・小売業、飲食店〇・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・六%減、製造業二・四%減、金融・保険業三・一%減、鉱業五・八%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・九%減、パートタイム労働者五・六%減、卸売・小売業、飲食店では一般労働者一・四%減、パートタイム労働者一・四%増、サービス業では一般労働者〇・五%増、パートタイム労働者五・二%増となっている。








     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇

 児童福祉週間


 児童福祉週間は、児童福祉の理念の周知を図るとともに、国民の児童に対する理解と認識を深め、児童愛護の責任を自覚するよう強調するため、昭和二十二年にスタートしました。

 ささえあう 地域のみんなで子育て支援

 児童福祉週間は、毎年五月五日の「こどもの日」を中心に全国的に実施され、平成十一年も五月五日(水)から十一日(火)まで一週間の予定で行われます。ただし、地域の実情によって期間の延長を行うこともできます。
 今年度の児童福祉週間標語は「ささえあう 地域のみんなで 子育て支援」です。平成十年十月一日から二か月間にわたって募集し、全国約三千五百点の応募作品のなかから選ばれました。
 主な運動項目
@児童福祉の理念の普及
 近年、少子化の進行、夫婦共働き家庭の一般化、家庭や地域の子育て機能の低下、児童虐待や少年非行の増加など児童や家庭を取り巻く環境が大きく変化している。このような状況を踏まえ、次代を担う子どもたちの自主性や社会性を最大限に伸ばし、子どもたちが健やかに生まれ育ち、家庭や地域のなかで心豊かに生活する環境づくりが極めて重要な国民的課題であるとの認識を高め、児童福祉の理念の普及に努める。
 子どもの問題は子どもたちに委ねて家庭、学校、地域社会などで行う一日地方議会の開催や、子どもたち自身が企画した行事を催し、これを親をはじめ大人たちも共に参加できるようにすることなどが考えられます。
A家庭における親子のふれあい促進
 さまざまな親子参加型行事への参加などを通じて、親子のふれあい、子どもの夢、将来の希望などについて親子で話し合うことができるような機会を設けるよう、家庭に対して啓発に努めるとともに、必要な機会および情報を積極的に提供する。
 子どもたちに自由に使える時間や居場所を提供し、親子参加型行事を実施することで、親子がさらに話し合うきっかけとなることが期待されます。
B地域ぐるみの児童健全育成活動を促進
 家庭や地域での子育て支援を推進するため、児童館を中心に各種地域団体、ボランティアなどの支援の下に、子ども自身の育つ力を信じ、子どもたちに健全な遊びの機会と場を提供し、子どもたちが仲間の中でもまれる機会や我慢することなどを学ぶ友だち関係の形成や自然とのふれあい、また、高齢者との交流を図る。同時に、ボランティアを養成し、家庭の子育てを支える地域組織活動を促進する。
 児童館がさまざまな地域資源を掘り起こし、友人関係を育み、地域に立地する企業等が主体となった各種ボランティア等の社会参加型活動を実施することが期待されます。
C児童虐待や少年非行などへの適切な対応
 近年、大きな社会問題となっている児童虐待や少年非行の増加に適切に対応するために、児童の置かれている今日的状況を的確に把握し、子どもたちが心身ともに健やかに成長できるよう、それぞれの家庭における子育ての努力とともに、国、都道府県および市町村の行政機関をはじめ、各種児童福祉施設、企業、学校、地域住民、ボランティアなどの緊密な連携と協力体制を整備し、各種の相談機関が幅広く利用されるよう努める。
 人の集まる場所で一日児童相談所を開き、児童の問題を気軽に相談できるようにすることが望まれます。
D母と子の健康づくりの推進
 母性の保護および乳幼児の健康の確保は、生涯を通じた健康づくりの出発点であるとの認識に立って妊産婦および乳幼児の健康診査の受診率の向上や母子保健に関する地域活動の推進に努めるほか、市町村保健センター、母子健康センターなどにおいて妊産婦および乳幼児に関する相談の場を設けるよう努める。
E多様化する保育需要への対応
 女性の就労の増大、就業形態の多様化などに伴う保育需要の増大・多様化に対応して、保育所における低年齢児保育や時間延長型保育などの事業の充実に積極的に努めるとともに、育児講座や地域との交流活動などを通じて地域における子育て支援センターとしての保育所の役割について広報・普及に努める。
 育児不安に対処するため保育所で地域住民参加の交流事業を行い、開かれた保育所としてのPRを進めることが望まれます。
F障害のある児童に対する理解の促進
 障害児の福祉の向上のため、地域住民一人一人が、障害児の地域での生活を支援するため、各種の福祉活動などに積極的に参加することができるよう、充実した地域活動の推進に努める。
 障害のある子どもたちが地域で生活するためには、在宅福祉の充実などライフサイクルに応じた施策の基盤整備をはかることが期待されます。
G児童環境づくりなどに関する広報啓発活動の積極的な推進
 次代を担う子どもたちの自主性や社会性を最大限に伸ばし、子どもたちが健やかに生まれ育つための環境づくりが積極的に推進されるよう、行政のみならず、企業や地域社会の参加の下に、国民一人一人が子どもや家庭さらに地域社会の在り方や男女共同による子育てなどについて考え、社会全体で子育て家庭を支援する広報啓発活動を積極的に推進する。
 特に父親が積極的に育児に参加し、家族が一体となった子育ての環境づくりが重要です。
H児童の権利に関する条約の普及啓発
 平成六年に批准した「児童の権利に関する条約」の普及に努めるとともに開発途上国の子どもたちの健康や栄養などのための国際協力活動を身近な問題としてとらえ、その活動に参加するよう啓発に努める。(厚生省)

 遺言と不動産登記


 大切な財産の一つである不動産の権利を守るために、「不動産登記」という制度があります。不動産の所有者の死亡により相続が開始された場合、権利関係を明らかにして取り引きの安全を図るためにも、相続人による速やかな所有権移転の登記が必要です。被相続人の遺言書があるときは遺言に基づいて相続の登記が行われますが、遺言の内容に不備があると登記することができないケースもあります。遺言によって不動産を相続させることをお考えの方には、証拠力の高い「公正証書遺言」をされることをお勧めします。
●多い自筆証書遺言の不備
 個人が遺言をして死亡した場合には、民法で定められた法定相続に優先して、遺言の内容に従った相続が行われます。しかし、遺言書の内容に不備があるために登記することができず、相続人間のトラブルを招いてしまうというケースも少なくありません。特に、遺言する人が自分で書く「自筆証書遺言」に、その例が多く見られます。
 自筆証書遺言は、遺言をする人が遺言書の全文、日付、氏名を自筆し、捺印しなければなりません。簡単に証書を作成することができる半面、形式に不備がある場合には、無効になるおそれがあります。また文意に不明なところがある場合には、その解釈について争いが生じるおそれもあります。なお、遺言の保管者は、相続の開始を知った後に遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。
●確実な遺言は公正証書で
 遺言をするときは、公正証書によって遺言する方法が確実です。公正証書遺言は、二人以上の証人の立ち会いのもと、法律のプロである公証人により作成されるので、遺言の存在や文意解釈などについての争いを未然に防ぐことが期待できます。また、自筆証書遺言と違い、家庭裁判所の検認を受ける必要はありませんので、直ちに遺言の内容を実現することができます。
 公正証書遺言について詳しくお知りになりたいときは、最寄りの法務局・地方法務局または公証人役場までお問い合わせください。(法務省)



    <5月19日号の主な予定>

 ▽林業白書のあらまし………………………林 野 庁 

 ▽労働力調査(二月分結果の概要)………総 務 庁 




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