官報資料版 平成11年5月19日




                  林業白書のあらまし……………………林 野 庁

                  労働力調査(二月結果の概要)………総 務 庁











林業白書のあらまし


―平成10年度 林業の動向に関する年次報告―


林 野 庁


 「平成十年度林業の動向に関する年次報告」と「平成十一年度において講じようとする林業施策」が去る四月十六日、閣議決定の上、国会に提出、公表された。
 今回の報告では、第一部「林業の動向」において、森林・林業の動向と課題を中心に幅広く分析、検討を行っており、特に、木材の利用推進を通じた森林の適切な森林整備の必要性を重点的に取り上げている。
 第二部では、平成十年度において「林業に関して講じた施策」について記述している。
 第一部の概要は次のとおりである。

<基本認識>
 ―健全な森林を二十一世紀に引き継ぐために―

我が国はなぜ世界有数の森林国となり得たか
 我が国は、国土の三分の二が森林に覆われている世界有数の森林国である。我が国にこれだけの森林が育っているのは、恵まれた気候、開発を拒む急峻な地形といった自然条件もさることながら、森林消失の危機に見舞われながらも、森林の保全と造成に取り組んだ先人たちの努力によるところが大きい。
変化に富んだ我が国の森林
 このような先人たちの努力の結果、白神山地や屋久島にみられるような原生的な森林をはじめ、主に木材生産を目的に植えられたスギやヒノキなどの人工林、身近な自然として注目されている里山林など、多様な森林が育っている。
資源が成熟化する中での林業の停滞
 なかでも、森林面積の四割、一千万ヘクタールに及ぶ人工林は、今日、徐々に伐採可能な時期を迎えつつある。
 しかし、これまで森林を守り育ててきた林業は、採算性の悪化、担い手の減少や高齢化などにより停滞している。このような状況下において、森林の管理不足や放置が懸念されるようになってきた。
なぜ林業は停滞しているのか
 我が国の林業は、木材価格の低迷と労働費等経営コストの上昇による採算性の悪化、山村における担い手の減少と高齢化の進行といった問題を抱えており、これらが現在の林業の停滞につながっている。
 加えて、住宅の洋風化の進展や集成材等の需要の増加といった木材需要構造の変化への対応の遅れも、林業の停滞に影響を与えている。
健康に良く環境に優しい木材の利用推進による森林の整備
 木材は、人に優しく環境の保全に貢献し、軽くて丈夫で使いやすいといった優れた性質を備えている。
 さらに、木材は、加工に要するエネルギーが鉄やアルミニウムなどに比べて格段に小さい上に、住宅などに使えば炭素を長期にわたり貯蔵できることから、その効率的な利用は地球温暖化防止に極めて有効である。
 このような多くの優れた性質をもつ木材がより幅広く有効に利用されるようになれば、木材生産を担う林家等による伐採や植林活動、間伐等の手入れが行われて健全で活力の高い森林が維持されることになる。
木材の品質を高めるための取組
 木材は多くの長所をもっている一方で、「腐れ」、「狂い」、「割れ」が生じることがある。このため、十分な乾燥と高次加工化の推進、品質表示と選別の徹底等を行うことが重要である。
二十一世紀の社会と木材利用
 二十一世紀の社会が、環境と調和した循環型社会であり高齢社会であるととらえると、心身の健康に役立ち、その利用が環境保全に貢献するという木材の良さが改めて見直されるべきである。
 国民一人ひとりが森林を大切にし、木材を無駄なく最大限に利用することに心がけることが、人に優しい生活環境と環境と調和した循環型社会を築いていくために必要である。
健全な森林を二十一世紀に引き継ぐために
 先人たちから受け継いだ大切な森林を、より良い形で二十一世紀に引き継いでいくことは、私たちに課せられた使命である。この使命を達成するためには、森林生態系の健全性と活力を維持することを基本として、森林との多様なふれあいの機会を提供するなどにより、国民の十分な理解と参加を得ながら、国民の多様なニーズを満たしていけるような取組が必要である。
 このような考え方の下で、原生的な森林や貴重な動植物の存在する森林は、その保護に努めるとともに、国土の保全や水資源のかん養、生活環境の保全等の上で重要な森林については、求められる機能の種類に応じて、天然力をいかし、あるいは天然力と人為を組み合わせて、適切に保全していくことが必要である。
 また、木材生産を主目的に育てられた人工林は、適切な保育、間伐等を通じて健全で活力ある森林に育て、環境に配慮しつつ循環的に木材を生産していくとともに、洪水等を防止する機能を高めていくことが必要である。

T 木材の利用推進と森林の適切な整備
 ―木材を軸とした循環型社会の構築に向けて―

一 なぜ木材を使うべきなのか

(一) 木材は多くの優れた性質をもっている
ア 木材は人に優しい
 木材は、人の生理面や心理面に良い影響を与えることが知られているほか、調湿作用により、カビや細菌の繁殖も抑え、さらには、抗菌・抗カビ作用、殺ダニ作用、消臭作用等の効果をもつ有用成分を含んでいることから、人の健康に良い影響を及ぼしている(第1表参照)。
 また、木材は目に優しく、音をまろやかにし、衝撃を吸収する能力があるなど、人に優しく作用する性質がある。
イ 木材は環境保全に貢献する
 木材は、再生産が可能な生物資源であり、比較的簡単に再利用(リサイクル)ができ、最終的には、微生物等の働きにより分解されるなど、環境に対する負荷の少ないエコマテリアル(環境調和型素材)である。
 また、木材を住宅や家具等に使うことは、森林が吸収した二酸化炭素をさらに長期間にわたって貯蔵し続けることができるほか、木材製品の製造・加工時の消費エネルギーはアルミニウムや鉄に比べて格段に小さいこと、化石燃料に代えて燃料として利用すれば、化石燃料の使用による炭素放出が抑えられることなどから、その利用は地球温暖化防止に有効である。

(二) 木材を使うことが循環型社会を築く
ア 成熟しつつある身近な資源
 我が国の森林蓄積は三十五億立方メートルであり、人工林を中心に毎年七千万立方メートル増加している。
 人工林の一部には、すでに主伐の対象となる林齢に達しているものもあり、森林資源の活用に本格的に取り組むべき時期が来ている。
イ 木材が使われてこそ森林が整備され公益的機能が高まる
 我が国の森林面積の六割は個人や企業が所有する森林であり、その五割を占める人工林のほとんどは、木材を生産することを目的として育てられてきたものである。これらの人工林を、良質で公益的機能の高い健全な森林として育成し、循環利用を進めていくためには、人工林から生産される木材の販売収入を基に、造林、保育、間伐、伐採等の一連の生産活動が適時適切に行われることが必要である。このため、木材が使われることは森林を適切に整備していくために極めて重要な鍵となる。
 また、人工林は、二十から三十年生の若い時期に、二酸化炭素を吸収する能力が高いことから、木材生産を行う人工林等では、適切な時期に伐採して木材として利用するとともに、植林や保育を確実に行い、健全で活力ある森林を育てていくことが、地球温暖化防止のためにも重要である(第1図参照)。
ウ 木材を使うことが循環型社会を築く
 森林の整備と合わせて木材を有効に利用することは、「大気→森林→木材(リサイクル、多段階利用により繰り返し利用)→大気」という炭素の循環を形成することになる。木材を軸とするこのような循環型システムを十分に活用し、不断に機能させることができる経済社会に移行させていくことは、環境と調和した循環型社会の構築にもつながることになる。

二 どうすれば木材は使われるのか

(一) ニーズに合った製品の供給
ア 需要構造は大きく変化している
 我が国で消費される木材の用途の大半は住宅建築に用いられており、木材の利用を進めるに当たっては、まず住宅建築用製材品に対する需要への対応が必要である。
 近年、住宅建築については、洋風化が更に進むとともに、耐震性や断熱性といった性能の向上に対する要求も高まっている。このような中で、住宅に使われる木材についても、節の有無などの表面の美しさよりも、強度といった品質面で優れたものについてのニーズが高まっている。
 また、大工技能者の減少、住宅建設コストの低減や施工期間の短縮などが求められる中、柱、梁、土台等の接合部を工場で機械加工したプレカット材の使用が進んでいる。
 木材の利用を推進するためには、このような需要構造の変化に的確に対応して、品質の明確な製品を低コストで、しかも安定的に供給できるようにしていくことが必要である。
イ 鍵は品質の明確化とコストの削減
 木材は、多くの優れた性質をもっているが、天然素材であることから「腐れ」、「狂い」や「割れ」が生じることがある。このような問題を解消するため、人工乾燥、高次加工化といった取組が進められている。
 品質の明確な製品を供給していく上で、木材乾燥への取組は必要不可欠である。しかし、我が国の製材品生産量に占める乾燥材の比率は一割ほどにとどまっていることから、今後、効率的でまとまりのある乾燥材供給体制の整備、乾燥コストの低減に取り組むことが必要である。
 また、集成材やLVL等の高次加工された木材製品や製材のコストを引き下げることが必要であり、製造の際の歩止まり向上、製材ラインの大規模化や自動製材システムの導入等の推進が必要である。
 さらに、建築基準の性能規定化に伴い、品質が明確で安定しているといった信頼性の向上が不可欠である。そのためには、木材製品の品質管理を徹底する必要があり、日本農林規格(JAS規格)を活用した木材製品の品質の確保と、それに基づく表示を一層進めることが重要である。
 このほか、小径木の用途の開拓や新製品の開発、樹木から抽出される有用成分の効率的な抽出方法の開発や新たな成分の発掘、エネルギー資源としての木材の利用を進めることが重要である。
ウ 消費者の側に立った取組が重要
 木材需要の大半が住宅建築用であることを踏まえると、住宅のデザインや機能といった住宅取得者の多様化、高度化するニーズを的確にとらえ、これに応じた製品を供給することが鍵となる。このため、木材供給者、住宅設計者及び大工・工務店の三者が連携して取り組むことが重要である。
 また、木材の良さを消費者に積極的に普及啓発していくことが重要である。そのためには、木製品PRフェア等の開催、パンフレットの作成・配布やインターネットの活用等により、消費者に積極的に働きかけていくことが必要である。

(二) 丸太の安定的な供給が条件
ア 活性化が必要な林業生産活動
 我が国の素材生産量は、昭和四十二年をピークに減少を続け、平成九年には二千百五十五万立方メートルとピーク時の四割にまで減少した。
 また、木材価格は、スギを例にとってみると、製材品は昭和五十五年と比べ八三%であるのに対し、丸太と立木はそれぞれ五五%、四五%となっており、立木価格の下落が著しい。
 このような中で、林家は採算が合わない等の理由により、伐採を控える傾向にある。素材生産量の減少は、また、丸太の安定的な確保をも困難にし、丸太生産及び製材コストの削減に向けた生産性の向上への取組を阻害する要因となっている。さらに、コストの増加による収益性の悪化は、原料となる立木価格の一層の低下を招く悪循環を形成していると考えられる。
イ 活性化の鍵は川上と川下の一体化
 国産材の市場競争力を高めていくためには、品質のそろった製品をまとめて供給できるようにすることが不可欠である。そのためには、製品の加工流通コストを抑えるとともに、丸太の生産を効率的に行って生産コストを引き下げることを通じて林家等の立木販売収入を確保して、伐採意欲を高めるとともに、丸太を継続的かつ安定的に供給していくことが重要である。さらに、林家等においては、育林段階でのコストの削減についても取組を進めることが必要である。
 このような取組を効果的に行うためには、育林から素材生産、加工流通に至る川上から川下までの各段階において、コスト削減に向けた取組を一体的に行うことが重要である。

三 木材を軸とした循環型社会の構築に向けて

 地球温暖化の防止や安全で快適な生活への要求、生活の質や自然との共生が一層重視される時代といわれる二十一世紀の社会において、木材の利用や森林のもつ多面的な機能の発揮に対する国民の期待は一層高まるものとみられる。
 このため、国民一人ひとりが森林を大切にして、生活のいろいろな場面に木材を有効に利用することに心がけることが、環境と調和した循環型社会の構築に貢献し、経済社会の持続可能な発展につながることとなる。

U 森林づくりの推進と山村の振興

一 森林づくりの基本的な考え方

(一) 国民が求める森林の働き
 森林は、木材やきのこ、山菜等を私たちに与えてくれるだけでなく、洪水や土砂崩れなどを防いだり、空気をきれいにするなど、公益的機能と呼ばれる様々な働きを通じて、安全で快適な生活を守っている。
 近年、このような森林のもつ公益的機能の発揮に対し、国民の期待がますます高まっている。また、地球環境問題への関心が高まる中で、二酸化炭素を吸収・貯蔵し、地球温暖化を防ぐ森林の働きに対しても国民の期待が高まっている(第2図参照)。

(二) 長期的な視点に立ったわかりやすい森林づくり
 森林のもつ様々な働きを維持するためには、長期的な視点に立って、森林の変化を把握するとともに、森林のもつ生態的な特性を踏まえ、森林づくりを進めていくことが必要である。
 平成八年十一月、我が国の森林の長期的な取扱いを定めた「森林資源に関する基本計画」が改定された。その中では、我が国の森林が、新たに造成する段階から、造成した森林を健全に育て、利用する段階に入っているとして、的確な保全・管理を行うことが必要であるとしている。
 また、森林の保健・文化・教育的な利用に対する国民のニーズがますます高まるとして、都市と山村の交流の場等として、森林を様々に利用できるような森林づくりが必要であるとしている。

二 森林づくりへの多様な取組

(一) 健全で機能の高い森林整備の方針
ア 健全で機能の高い森林づくりの推進
 樹木の成長に応じて抜き伐りを行う間伐は、良質な木材を育てると同時に、公益的機能を高める上からも重要な作業である。このため、作業の集団化、路網の整備、間伐材の利用促進等の総合的な取組に加え、行動計画の作成、一般市民等への普及啓発などを通じて間伐推進のための新たな運動を展開している。
 また、水土保全を重視する森林においては、健全な水循環の確保、森林の土壌の安定化を図る観点から、複層林施業や長伐期施業を推進することが効果的である。さらに、森林に対する国民の期待が多様化・高度化する中で、里山林等の森林はますます貴重な存在となっている。
 このため、複層林施業等を誘導するための特定森林施業計画について、森林所有者が共同して作成できるようにするとともにその対象に天然林を追加し、広葉樹の森林整備を進めることとした。
イ 治山事業や保安林整備による防災機能の強化
 我が国は、地形が急峻で地質が脆く、梅雨期等に降雨が集中する気象条件下にあり、土石流等の山地災害や洪水が発生しやすい。このため、治山事業の実施や計画的な保安林の指定と指定目的に応じた森林づくりを進め、災害に強い国土の基盤づくりを進めていくことが求められている。
ウ 病害虫、鳥獣等による森林被害の予防と復旧対策
 病害虫、鳥獣や気象災害等による森林被害は、森林の損失にとどまらず、森林所有者の経営意欲の喪失、森林の公益的機能の低下等につながり、その復旧には多大な経費と期間を要する。このため、各種被害に対する適切な予防と復旧対策の充実が必要である。
 近年、シカによる枝葉や樹皮の食害等の被害が深刻化する中で、防護柵の設置等の防除、被害対策を総合的に進めることが必要である。

(二) 森林づくりの体制を整える
ア 流域を単位とした森林整備の推進
 流域を単位とした森林づくりや林業、木材産業の振興を図るため「森林の流域管理システム」を推進するとともに、下流の自治体が上流の自治体と協力して水源地の森林づくり等の取組を一層進めていくことが必要である。
イ 市町村による森林整備の推進
 保育・間伐等を着実に進めていくためには、森林所有者等にその必要性を十分に理解してもらい、積極的に取り組んでもらえるようにしていくことが必要である。そのため、市町村が森林・林業行政にこれまで以上に主導的な役割を果たしていけるよう、その役割を大幅に強化したところである。
 また、森林・山村対策や国土保全対策の地方財政措置等により、市町村の財政基盤の充実が図られた。
ウ 森林の新たな利用と国民の参加・協力による森林づくりの推進
 森林に対する国民の関心が高まりをみせる中で、森林環境教育の重要性が指摘されたり、ボランティア活動や募金を通じて、一般市民が森林づくりに参加する取組が増加している。このため、国民各層がそれぞれ可能な手段により森林づくりに参加できるよう、体制を整備することが必要である。
 平成十一年二月に出された中央森林審議会の答申では、国民が森林の恵みを享受しながら森林から環境との調和や資源の循環利用について学び、社会生活にいかしていくとともに、森林・林業・山村への国民的理解の醸成を図るため、森林の新たな利用を推進していくことが必要としている。

(三) 森林づくりの担い手を育てる
 健全で機能の高い森林づくりを進めていくためには、それに必要な体制の整備とあわせて、実際に森林づくりを担う人材や組織を育てていくことが必要である。
ア 林業公社等による森林づくり
 林業経営が厳しさを増す中で、地域の森林整備の担い手として、林業公社、森林開発公団等の公的機関が安定的、継続的に事業を展開していくことが必要となっている。
 また、森林開発公団は、平成十一年度中に農用地整備公団の事業を継承する予定であり、水源地域の森林と農用地の一体的な整備に取り組むことが期待されている。
イ 林業事業体と林業労働力の育成強化
 間伐等の森林施業を実行する上で、森林組合の役割はますます重要になっている。このため、広域合併の一層の促進等により経営基盤を強化するとともに、職員の資質の向上を図ることが必要である。
 また、林業労働力確保支援センターでは、林業事業体の雇用管理の改善や事業の合理化、林業への新規就業の円滑化を目的に研修等を行っている。

三 山村の振興

(一) 山村の果たす重要な役割
ア 山村の現状
 山村では、過疎化と高齢化が同時に進行するとともに、都市部に比べて道路、上下水道等の社会資本の整備が遅れており、市町村の財政基盤も弱いことなどから、経済と活力の低下が続いている。
 さらに、山村の主要産業の一つである林業は、収益性の低下等により、森林の適切な管理や手入れが行われなくなってきている。このような状況が続くと、森林の多面的機能が発揮されなくなり、山村住民だけでなく、森林の恩恵を受けている多くの国民の生活にも重大な影響を及ぼすことが心配される。
イ 山村の役割の高まり
 森林の多くが存在する山村は、森林の整備等を通じて、安定した国民生活の確保と均衡ある国土の発展に重要な役割を果たしている。また、山村に対して農林産物の供給はもとより、自然とみどり豊かな余暇空間や潤いとゆとりある居住空間の提供等の要請が高まっている。

(二) 魅力ある地域づくり
ア 多様な地域資源の活用
 山村では、森林整備や特色ある地域づくりに資する地域の木材資源の活用、林産物の販売や関連産業の振興等による就業機会の創出等を通じ、安定的な所得が確保できるようにすることが必要である。
イ 地域の特性をいかした生活環境の整備
 産業の振興と併せて、医療、上下水道等の生活環境施設の整備を進め、山村住民や都市の人々の第二の居住場所として定住が促進されるような魅力ある地域づくりが必要である。
ウ 都市との交流による山村の振興
 林業・山村の活性化を図っていくためには、都市との交流を推進し、森林・林業・山村に対する国民の理解を醸成していくことが必要であり、山村がこれに積極的に対応していくことが重要である。
エ 地域リーダーの養成
 地域資源の活用、都市との交流等を通じて山村の活性化を推進するためには、その活動の中心となる人材の育成が必要である。

V 循環型社会の構築に向けた木材産業の振興

一 国産材を中心に低迷する木材の需給

(一) 冷え込む木材と住宅の需要
ア 縮小する木材需要
 平成九年の我が国における用材の需要量(丸太換算値)は一億九百九十万立方メートルとなり、前年に比べて二%減少した。用途別にみると、景気の低迷による新設住宅着工戸数の減少等を背景に、製材用材と合板用材は前年に比べてそれぞれ三%減少した。一方、パルプ・チップ用材は印刷用紙の需要が好調で紙・板紙の生産が堅調だったことから、前年並みとなった。
イ 低迷が著しい住宅建築
 平成十年の新設住宅着工戸数は、昭和五十九年以来十四年ぶりに百二十万戸を割り込んだ。特に、木造住宅の新設着工戸数は、統計をとり始めた昭和三十九年以来の最低を記録した。

(二) 外材依存が強まる木材供給
 国産材の生産量は徐々に減少している一方で、外材は輸入量が増加するとともに、製品輸出へのシフトが進んでいる。また、製材用材の需要が伸び悩んでいる一方でその大半を外材に依存するパルプ・チップ用材、合板用材の需要が高まる傾向にある。その結果、我が国の木材自給率は、平成九年には二〇%を割り込んだ。
ア 減少を続ける国産材の生産
 平成九年の国産材(用材)の丸太生産量は、対前年比四%減少の二千百五十六万立方メートルとなった(第3図参照)。また、丸太生産量を樹種別にみると、伐採可能な人工林が徐々に増えていることから、スギの割合が高まる傾向にある。
イ 製品輸入へのシフトが進む外材
 平成九年の外材(用材)の輸入量は、丸太に換算して対前年比二%減の八千八百三十四万立方メートルとなった。用途別には、製材用材と合板用材が前年に比べ減少したが、パルプ・チップ用は前年並みで推移した。外材は、丸太輸入から製品輸出へのシフトが進んでおり、製材品、合板等の形で輸入されるものが輸入量の七割を超えている(第4図参照)。

(三) 低調に推移した木材価格
 平成九年は木材需要が減少する一方で、平成八年の好調な住宅需要の影響を受けて、製材品、合板等の輸入が高水準にあったことから、これらの在庫が急増した。このようなことから、平成九年の木材価格は下落傾向で推移し、平成十年に入っても木材価格は低調なまま推移した。

二 変化に直面する木材産業

(一) 厳しさを増す木材産業の経営
 木材・木製品の製造業と販売業の倒産状況をみると、平成九年末から平成十年の夏頃までにかけて、件数、負債金額ともに前年に比べて著しく増加している。
 このような状況に対処して、@農林漁業信用基金が行う債務保証における無担保一〇〇%保証の拡大、A木材産業等高度化資金の融資の充実等を図り、木材産業の安定化に努めている。

(二) 変化への対応が迫られる木材加工業
 住宅建築分野では、耐震性、省エネルギー性等がこれまで以上に重視されるようになっている。このため、強度等の性能が明確で品質の安定した木材製品へのニーズが一層強まり、集成材、LVL等への需要が高まるなど、木材の需要構造に大きな変化がみられる。

(三) 変化する木材流通と進むプレカット
 国産材の製材品は、買受者が製材品を吟味した上で買入れる現物熟覧方式により取引されることが多いが、近年、品質のそろった製材品の安定的取引を求める大手住宅メーカーと製材工場との直接取引も増加している。
 また、大工技能者の減少・高齢化が進み、住宅建築の施工期間の短縮が望まれる中で、プレカットの進展が木材加工から住宅建築に至る一連の流れを短絡化・緊密化し、住宅建築の低コスト化・合理化を促進している。

三 木材産業の活性化に向けて

(一) 高まる木材産業への期待と役割
 木材産業は、国民生活にとって必要不可欠な木材を加工し、消費者に供給するとともに、山村地域の重要な産業として、重要な役割を果たしている。また、木材産業を活性化することは、林業の振興につながり、人工林等の適切な管理と整備を通じて、国土の保全、水資源のかん養、生活環境の保全等にも役立つことになり、その健全な発展が、今後ますます求められることになる。

(二) 体質強化が必要な木材産業
 木材産業では、木材の需要構造の変化に対応して、乾燥や高次加工化を進め、品質の確かな製品をより低コストで安定的に供給できるようにしていくことが必要である。
ア 乾燥材、高次加工化の推進と製材等のコスト削減への取組
 我が国の製材業は、規模の零細性等に起因して、製材コストが海外の製材工場に比べて高いとする調査結果もあり、大規模化や自動製材システム等の高性能機械の導入への取組を更に進めていくことが重要である。また、丸太から多様な製品の生産を一貫して行う総合的な木材加工団地を整備し、企業が協力して運営の効率化を高めることも効果的である。
イ 国産材の安定取引の確立
 木材産業を活性化していく上では、加工体制の整備と併せて国産材の安定的な供給体制をつくることが必要である。
 このため、丸太の生産段階では、路網の整備、機械化等を進め、作業効率を一層向上させることが必要である。さらに、製材品の見本取引や共同出荷体制の整備等により、丸太と併せて、製材品等の流通コストを削減していくことも必要である。

(三) 期待される木材需要の拡大と木材産業の対応
 木造住宅への国民の根強い人気にみられるように、木材需要は潜在的に大きなものがある。また、木材は、人の健康に良い影響を与え、その生産・加工に当たっては地球環境への負荷も少ない。このため、健康や環境に対する国民の関心の高まりに伴い、今後、木材需要は更なる増大が期待される。
 また、住宅分野では、消費者が安心して住宅を建設・取得できるようにすることが求められている。このため、木材産業においても、住宅資材を供給する立場として、品質の安定した木材製品の供給に一層努めていくことが必要である。
ア 期待されるリフォーム市場の成長
 我が国の住宅の寿命は、諸外国に比べて短い。今後は良質な住宅ストックの整備を進めるとともに、住宅を長期にわたり有効に使っていくことが重要であり、リフォーム市場の成長が見込まれている。
イ 建築基準法の改正と木材の利用
 木造三階建て共同住宅の規制、内装や外装における木材使用の制限等の見直しが順次行われ、木造三階建て住宅が増加するなどの変化がみられる。さらに、平成十年に建築基準法が、仕様規程から強度、耐火性等の性能を重視したものに改正されたところであり、建築物への木材利用を進めていくためには、品質が明確で多様な木材製品の供給体制の整備に一層努めていく必要がある。

W 国有林野事業の抜本的改革の推進

一 改革の枠組みづくり

(一) これまでの歩み
 国有林野事業は、これまでそれぞれの時代の要請にこたえ、豊かな国民生活の実現に貢献してきた。
 しかし、その一方で木材価格の長期低迷、資源的制約等による伐採量の減少、事業運営の効率化が進まなかったことから、その経営は次第に悪化し、債務が累積し、ついには危機的な財務状況に陥った。
 このため、経営の抜本的改革を推進することとなり、いわゆる国有林野事業改革関連二法案を国会に提出した。

(二) 改革のねらい
 抜本的改革の基本的な考え方は、国有林野を国民の共通財産として、名実ともに「国民の森林」とすることである(第5図参照)。
 そして、それが可能となるよう、開かれた国有林を具体化しつつ、国有林野事業の財政の健全性を回復し、国有林野を将来にわたって効率的に管理経営する体制をつくり、国土の保全等の公益的機能の発揮、林産物の供給、地域の振興等の使命を十全に果たすことが抜本的改革の趣旨である。

(三) 改革の基本方針
 木材等の生産に重点を置いた管理経営から、国土の保全、良質な水の安定的供給等の公益的機能の発揮に重点を置いた管理経営へと転換することとする。
 また、伐採、造林等の事業を全面的に民間に委託するなど、効率的な実施体制を確立するため、雇用問題や労使関係に十分配慮しつつ、組織・要員の徹底した合理化、縮減を進めることとしている。
 さらに、独立採算性を前提とした特別会計制度から、一般会計からの繰り入れを前提とした特別会計制度に移行することとしている。なお、累積債務の処理に当たっては、国有林野事業で可能な限りの自助努力を行うが、これを上回る債務については、一般会計に引き継ぐこととしている。

(四) 新たな計画の策定
 「国民の森林」としての国有林野の管理経営の方向を明らかにするため、「管理経営基本計画」を定め、平成十一年一月一日から実施している。
 また、計画を案の段階で縦覧し、広く国民の意見を聴くことによって、国民の期待や要請を国有林野の管理経営に反映している。

二 進む「国民の森林」づくり

(一) 公益的機能を重視した管理経営の推進
ア 新たな機能類型区分に応じた管理経営
 国有林野には、様々な形の森林があり、国民のニーズに応じて、適切に管理することが求められている。このため、管理経営基本計画では、重点的に発揮させるべき森林の機能により、「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」の三つに区分することとした。区分に当たっては、公益的機能を重視した管理経営方針への転換に伴い、水土保全林と森林と人との共生林からなるいわゆる公益林を、これまでの五割から八割に拡大することとしている。
イ 保護林等優れた自然環境をもつ森林の維持、保存
 奥地脊梁山地に広く分布する国有林野には、世界遺産に登録された屋久島や白神山地をはじめ、優れた自然景観をもち、貴重な野生動植物が生息・生育するなど、豊かな森林生態系を維持している森林が比較的多く残されている。
 優れた自然環境をもつ森林の維持や保存は、地球環境の保全や生物多様性の確保という観点からもますます重要になってきている。このため、特別な取扱いが必要な森林については、積極的に保護林に指定するなど、その拡充を進めることとしている。これに加え、森林生態系保護地域を中心に他の保護林とのネットワークを形成するため、これらの保護林の間を自然樹林帯でつなぐ、いわゆる「緑の回廊(コリドー)」を設定することとした。このことにより、野生動物の移動経路が確保されるなど、より広い範囲で効果的に森林生態系を保護できるようになる。
ウ 国有林野の総合利用の推進に向けた取組
 国有林野事業では、自然とふれあう機会を求める国民の要請に応え、これまでにも「自然休養林」等のレクリエーションの森を設け、森林とのふれあいの場を国民に提供してきた。
 さらに、管理経営基本計画では、国民に開かれた管理経営という改革の趣旨を踏まえ、保健・文化・教育的な活動の場に適した国有林野については、「森林と人との共生林」に区分するとともに、レクリエーションの森として選定し、国民の利用に供することとした。

(二) 簡素で効率的な体制の確立
 管理経営基本計画では、国が行う業務は、森林の保全管理、森林計画、治山等に限定し、伐採、造林等の実施行為は全面的に民間委託を行うとの基本方針の下で可能な限り簡素で効率的な組織と必要最小限の要員により行うこととした。なお、民間委託になじまないものは、国で実施するなど、適切に対処することとしている。
 また、国有林野事業の組織については、平成十一年三月に七つの森林管理局と九十八の森林管理署等に再編した。さらに、職員数に関しては、今後の業務内容に応じて、必要かつ最小限のものとすることとしている。

(三) 公益林の管理と整備のための会計制度の見直し
 国有林野事業特別会計法を改正し、これまでの独立採算を前提とする特別会計制度から、公益林等の管理や整備に必要な経費については一般会計から繰り入れることを前提とした特別会計制度に移行した。

(四) 健全な経営のための累積債務の本格的処理
 三兆八千億円に及ぶ国有林野事業の累積債務については、可能な限りの自助努力と国民の理解を前提に、一般会計に引き継ぐことを基本として本格的に処理することとなった。
 約一兆円については、五十年をかけて国有林野事業で返済するとともに、それ以外の二兆八千億円については、一般会計に引き継がれることとなった。

(五) 開かれた国有林に向けて
ア 国民の意見を踏まえた管理経営の計画づくり
 国有林野を名実ともに「国民の森林」とするためには、まず、管理経営の基本となる計画が、国民の意見を聴いた上でつくられることが重要である。今般の抜本的改革に当たっては、国レベルと地域レベルでの計画づくりの段階で、国民の意見を聴いて計画を定めることとなった。
イ 国民への森林整備への参加に向けた取組
 国民の森林づくりへの参加意識の高まりにこたえ、国有林野事業では、これまで、分収造林や分収育林制度を実施してきている。
 今後は、これらの取組に加え、国有林野をボランティア団体等が自主的な森林整備を行うなどのフィールドとして提供することにしている。このため、こうしたフィールドとして「ふれあいの森」を各森林管理署に一か所程度設定していくこととしている。
ウ 国民の理解の増進に向けた取組
 国有林野を「国民の森林」として管理経営していく上で、国民の理解と参加は不可欠である。このため、「森林の市」、「森林倶楽部」等の各種イベントの開催やインターネットのホームページを開設した。
 このような取組を通じて、開かれた国有林として、多様な情報、サービスを提供し、国民の意見、質問に対応することは、国民の国有林野や森林・林業に対する理解を増進する上でますます重要になってきている。

X 持続可能な森林経営に向けた国際的な動きと我が国の貢献

一 減少が続く世界の森林と増加する木材貿易

(一) 開発途上地域を中心に減少が続く世界の森林
 平成七年現在、世界の森林面積は三十四億五千万ヘクタールで、陸地面積の二七%を占めている。しかし、一年間に一千百二十七万ヘクタールの森林が減少したと推計されている。その内訳をみると、先進地域で微増しているものの、開発途上地域では年平均で一千三百三万ヘクタールの森林が減少している(第2表参照)。

(二) 増加傾向にある木材貿易
ア 増加傾向にある世界の木材消費量
 平成八年の世界の木材消費量は、昭和四十五年と比べて三七%、九億立方メートル増加し、三十三億六千万立方メートルに達している。特に、薪炭材が急速に増加している。
イ 付加価値の高い製品の輸出が増加
 木材の輸出は、数量、金額とも継続的に上昇傾向にあり、特に、紙・板紙、合板等の加工され付加価値を高めた製品の輸出が増加している。
ウ 木材貿易に関する継続的な検討
 平成十年十一月に開催されたAPEC閣僚会議では、貿易・投資の自由化・円滑化、経済・技術協力等について議論が行われ、早期自主的分野別自由化の問題については、我が国は、自主性の原則に基づき、林産物、水産物については、貿易円滑化及び経済・技術協力には参加するものの、関税・非関税措置への参加は困難であると主張し、最終的には関税措置はWTOの場で交渉されることとなった。

二 持続可能な森林経営に向けた国際的な取組

(一) 持続可能な森林経営の考え方
 平成四年に開催された地球サミットでは、森林の保全と利用を両立し、森林に対する多様なニーズに永続的に対応すべきという「持続可能な森林経営」が打ち出された。

(二) 世界で展開される様々な取組
 地球サミット以降、世界の各地、各地域で持続可能な森林経営の達成に向けた様々な取組が展開されてきた。
 平成九年に開催された第十九回国連特別総会では、地球サミット以降の取組成果が評価されるとともに、「森林に関する政府間フォーラム」(IFF)の設置が合意された。IFFでは、森林条約等の国際的な取決め及びメカニズムの検討などの三つの検討項目を設け、平成十二年までに成果を取りまとめることが決定された。
ア 国際政策対話の進展
 平成十年五月に開催されたG8外相会合で「森林に関する行動プログラム」が発表され、引き続き開催されたバーミンガム・サミットでは、平成十二年のサミットでこのプログラムの進捗状況を評価することとされた。
イ 世界の各地で進む基準・指標づくりへの取組
 基準・指標は、持続可能な森林経営の達成状況を客観的に評価するためのものであり、現在、これらの取組に参加している国の森林面積は、世界の森林面積の八割を超えるまでになっている。
ウ 持続可能な森林経営を支援する認証・ラベリング
 認証・ラベリングは、一定の基準、規格などを満たす森林経営が行われている森林又はその組織などを認証すること及びその森林から生産された木材・木製品にラベルを貼付することにより、消費者の選択的な購買を通じて持続可能な森林経営を支援するものである。

三 地球環境の安定のための森林の貢献

(一) 国際条約等へ反映された森林の重要性
 森林がもつ機能の重要性については、地球サミットで採択された森林原則声明やアジェンダ二十一で強調されるとともに、生物多様性条約、砂漠化対処条約、気候変動枠組条約等にも反映されている。

(二) 地球温暖化防止に向けた国際的な動き
 平成九年に開催された「気候変動枠組条約第三回締約国会議」では、先進締約国の温室効果ガス排出量の抑制・削減とともに、二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫である森林等の取扱いについても取決めが行われた。
 また、平成十年に開催された、第四回締約国会議では、今後の作業計画及び具体的取組を規定する「ブエノスアイレス行動計画」が作成された。

(三) 我が国の地球温暖化対策
 我が国は、緊急に推進すべき地球温暖化防止対策として「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。大綱では、木質廃材等を活用したバイオマスエネルギー導入の推進、木材需要の拡大等木材の有効利用の推進が二酸化炭素排出源対策として明確に位置づけられるとともに、植林の推進等の二酸化炭素吸収源対策の推進等が盛り込まれた。
 また、林野庁においても大綱等を踏まえ、森林・林業、木材産業分野における地球温暖化対策の一層の推進を図るため、「森林・林業、木材産業分野における地球温暖化対策の基本方向」を策定した。

四 持続可能な森林経営の達成に向けた我が国の貢献

(一) 国際合意を形成するIFFへの積極的な参画
 現在、持続可能な森林経営に向けた国際合意の形成はIFFの活動を中心に進められており、我が国としては、これに積極的に参画していくことが必要である。

(二) 「モデル森林」を通じた実践的な取組の展開
 持続可能な森林経営に関する国際的な合意を具体的な行動に結びつけていくためには、これまでの取組を通じて得られた知見等を活用しつつ、現場レベルの実践的な取組を展開することが重要である。このため、我が国では国際ワークショップ等を開催し、「モデル森林」の考え方を提唱してきた。

(三) 森林・林業協力の効果的な実施
ア 二国間森林・林業協力の推進
 我が国は、国際協力事業団を通じて、専門家の派遣、研修員の受け入れ、機材の供与やこれらを一体的に行うプロジェクト方式の技術協力のほか、森林資源調査、開発調査、無償資金協力、海外経済協力基金を通じて行う有償資金協力を実施している。
 これらの二国間協力を通じて、各国における持続可能な森林経営の推進体制を早期に確立し、自立的な発展を促すことが重要である。
イ 国際機関を通じた森林・林業協力
 ITTOには、熱帯林の持続可能な経営と熱帯木材貿易の安定についての取組を一層推進することが期待されており、我が国は、ITTOへの貢献を継続・強化することが必要である。
 また、我が国は、森林・林業分野の唯一の国連機関であり最大の国際機関であるFAOに対し、本部、アジア太平洋事務所への人材の派遣等の支援を行っている。
ウ その他の国際森林・林業協力への取組
 NGO活動は、政府・企業ベースで行われるプロジェクトに比較して資金や事業の規模は小さいが、現地の住民と一体となった草の根レベルの活動が多く、きめ細かな対応ができることを特徴としており、森林・林業協力の多様な展開を図る上で、重要な役割を果たしている。
 また、企業の海外植林への取組も、原料確保を目的とした従来型の海外植林に加え、電力会社や自動車メーカー等による地球温暖化防止や開発途上国への社会貢献を目的とした海外植林の計画が明らかにされており、様々な業種の企業において海外植林への取組への気運が高まっている。


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二月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十一年二月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十一年二月末の十五歳以上人口は、一億七百六十三万人で、前年同月に比べ六十四万人(〇・六%)の増加となっている。
 これを就業状態別にみると、就業者は六千三百三十四万人、完全失業者は三百十三万人、非労働力人口は四千百三万人で、前年同月に比べそれぞれ七十七万人(一・二%)減、六十七万人(二七・二%)増、六十八万人(一・七%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百七十七万人で、前年同月に比べ八万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は五千八百九十七万人、完全失業者は三百二万人、非労働力人口は二千四百六十九万人で、前年同月に比べそれぞれ七十六万人(一・三%)減、六十五万人(二七・四%)増、一万人(〇・〇%)増となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千六百四十八万人で、前年同月に比べ九万人(〇・一%)の減少となっている。男女別にみると、男性は三千九百八十万人、女性は二千六百六十七万人で、前年同月と比べると、男性は十万人(〇・三%)の増加、女性は二十万人(〇・七%)の減少となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六一・八%で、前年同月に比べ〇・四ポイントの低下と、十三か月連続の低下となっている。

◇就業者

 (一) 就業者

 就業者数は六千三百三十四万人で、前年同月に比べ七十七万人(一・二%)減と、十三か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百九十一万人、女性は二千五百四十三万人で、前年同月と比べると、男性は二十八万人(〇・七%)減と、十四か月連続で減少、女性は四十九万人(一・九%)減と、九か月連続で減少となっている。

 (二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千二百八十三万人、自営業主・家族従業者は一千三十五万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は七十二万人(一・三%)減と、十三か月連続で減少、自営業主・家族従業者は六万人(〇・六%)減と、十三か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百五十三万人で、六十九万人(一・三%)減、十三か月連続の減少
 ○常 雇…四千六百十九万人で、九十五万人(二・〇%)減、十四か月連続の減少
 ○臨時雇…五百十二万人で、二十六万人(五・三%)増、平成八年九月以降、増加が継続
 ○日 雇…百二十二万人で、一万人(〇・八%)減、前月は四万人の増加

 (三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百三十九万人で、五万人(二・〇%)減、前月は五万人の増加
○建設業…六百四十七万人で、二十一万人(三・一%)減、平成九年十一月以降、十六か月連続で減少、減少幅は前月(十五万人減)に比べ拡大
○製造業…一千三百三十六万人で、五十六万人(四・〇%)減、平成九年六月以降、二十一か月連続で減少、減少幅は前月(三十二万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…四百五万人で、四万人(一・〇%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月(二万人増)に比べ拡大
○卸売・小売業、飲食店…一千四百六十一万人で、五万人(〇・三%)増、五か月ぶりの増加
○サービス業…一千六百七十五万人で、五万人(〇・三%)増、三か月ぶりの増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百三十四万人で、二十一万人(三・八%)減、前月は同数(増減なし)
○製造業…一千二百二十一万人で、四十八万人(三・八%)減、平成九年六月以降、二十一か月連続で減少、減少幅は前月(二十五万人減)に比べ拡大
○運輸・通信業…三百八十四万人で、五万人(一・三%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月と同数
○卸売・小売業、飲食店…一千百七十八万人で、十万人(〇・九%)増、八か月連続で増加、増加幅は前月(十五万人増)に比べ縮小
○サービス業…一千四百二十万人で、一万人(〇・一%)増、三か月ぶりの増加

 (四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百十七万人で、二十六万人(一・五%)減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百三十万人で、三万人(〇・二%)増加
○五百人以上規模…一千二百四十二万人で、二十九万人(二・三%)減少

 (五) 就業時間

 二月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百五十四万人で、三十万人(二・三%)増加
○三十五時間以上…四千八百四十一万人で、百四万人(二・一%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四三・一時間で、前年同月に比べ〇・一時間の増加となっている。

 (六) 転職希望者

 就業者(六千三百三十四万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百二十八万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百六十四万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十九万人(三・一%)増、十八万人(七・三%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・九%で、前年同月に比べ〇・四ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・九%、女性は一〇・〇%で、前年同月に比べ男性は〇・七ポイントの上昇、女性は〇・一ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

 (一) 完全失業者数

 完全失業者数は三百十三万人で、前年同月に比べ六十七万人(二七・二%)増加し、比較可能な昭和二十八年以降で最多となっている。男女別にみると、男性は百八十九万人、女性は百二十四万人で、男女共に昭和二十八年以降で最多となっている。前年同月に比べると、男性は三十八万人(二五・二%)の増加、女性は二十九万人(三〇・五%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十六万人で、二十七万人増加
○自発的な離職による者…百十三万人で、二十三万人増加
○学卒未就職者…十三万人で、三万人増加
○その他の者…八十万人で、十万人増加

 (二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・七%で、前年同月に比べ一・〇ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・七%、女性は四・六%で、前年同月に比べ男性は〇・九ポイント、女性は一・一ポイントの上昇となっている。

 (三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十万人(八万人増)、一〇・二%(二・三ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十三万人(十一万人増)、四・八%(一・二ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十二万人(四万人増)、二・八%(〇・五ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十万人 (九万人増) 、三・二%(一・〇ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十六万人(五万人増)、六・七%(〇・五ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十七万人(二万人増)、四・二%(〇・三ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十九万人(四万人増)、一〇・四%(一・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…十万人(二万人増)、三・四%(〇・六ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十万人(四万人増)、八・三%(一・五ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十万人(十二万人増)、七・一%(二・一ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十八万人 (四万人増)、 三・六%(〇・九ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十二万人(七万人増)、三・三%(一・一ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十三万人 (二万人増)、 三・二%(〇・四ポイント上昇)
○六十五歳以上…一万人(同数)、〇・六%(同率)

 (四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十一万人(十七万人増)、三・三%(〇・六ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…四十万人 (十三万人増)、 二・九%(一・〇ポイント上昇)
○その他の家族…百三十五万人(三十一万人増)、七・六%(一・七ポイント上昇)
○単身世帯…四十七万人(七万人増)、六・五%(一・三ポイント上昇)

 (五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は四・六%で、前月に比べ〇・二ポイント上昇し、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。
 男女別にみると、男性は四・七%で前月に比べ〇・二ポイント上昇、女性は四・六%で前月に比べ〇・四ポイント上昇し、男女共に昭和二十八年以降で最高となっている。










 5月26日号の主な予定 

 ▽男女共同参画の現状と施策………総 理 府 

 ▽原子力安全白書のあらまし………科学技術庁 




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