官報資料版 平成11年6月9日




                  ▽漁業白書のあらまし…………………………………水 産 庁

                  ▽家計収支(一月分)…………………………………総 務 庁

                  ▽平成十年度平均全国消費者物価指数の動向………総 務 庁











漁業白書のあらまし


―平成10年度 漁業の動向に関する年次報告―


水 産 庁


 「平成十年度漁業の動向に関する年次報告」及び「平成十一年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」(いわゆる漁業白書)は、平成十一年四月二十日、閣議決定のうえ、国会に提出、公表された。
 「平成十年度漁業の動向に関する年次報告」の第一部「漁業の動向に関する報告書」においては、我が国が本格的な二百海里時代を迎え、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた水産資源の保存・管理の重要性が高まる中で、特に、内外の水産資源の保存・管理の現状を詳細に分析・検討するとともに、今後の資源の持続的な利用に向けての課題について整理を行っている。また、水産物の消費・流通の現状や漁業経営の動向、漁場環境の保全に向けた取組等についても、幅広く紹介している。
 本報告書のあらましは次のとおりである。

はじめに

 漁業は、国民への安定的食料供給の重要な一翼を担っており、多種多様な水産物により動物性たんぱく質の約四割を供給し、我が国の豊かな食生活に貢献してきている。また、漁業は、沿岸地域の基幹産業であり、水産加工業等の関連産業とともに地域経済に重要な地位を占めている。さらに、全国津々浦々に存在する漁村は、地域色豊かな魚食文化、祭礼、伝統行事等我が国固有の文化の形成・保存に寄与するとともに、沿岸域の環境保全等に大きな役割を果たしてきている。
 しかしながら、我が国の漁業を取り巻く現状をみると、周辺水域の水産資源は、海洋環境の悪化や過剰な漁獲努力量等から全般的に低位水準にあり、漁業生産は減少を続けてきた。また、漁業就業者の減少・高齢化の進行は著しく、将来にわたって周辺水域の水産資源を持続的に利用し、国民に安定的に水産物を供給していくための生産体制の脆弱化が懸念される状況にある。
 こうした中、我が国は、平成八年七月に「国連海洋法条約」を締結し、排他的経済水域が設定され、九年以降、漁獲可能量(TAC)制度が導入されるなど、本格的な二百海里時代を迎えた。こうした状況の下で、我が国としては、排他的経済水域内の水産資源の保存と持続的利用を中核に据えた水産政策を積極的に展開していくための枠組みを再構築していくことが求められている。
 十年度の漁業の動向に関する年次報告は、以上のような基本認識を踏まえ、主として九年以降の我が国の漁業の動向を分析し、今後の進むべき方向を探ろうとしたものである。

第T章 水産資源の持続的利用と我が国漁業

一 世界の水産物需給

 (一) 世界の漁業生産と水産物貿易の動向
(世界の漁業生産の動向)
 世界の漁業生産量(養殖業を含む。)は、一九九一年(平成三年)まで横ばい状態であったが、その後、中国の漁業生産量の増大等を背景に、増加傾向で推移してきている。一九九六年(平成八年)は、前年比四%増の一億二千九百八十五万トンとなった(第1図参照)。国別にみると、一九九六年の中国の漁業生産量は、前年比一五%増の三千七百五十一万トンで、一九八八年(昭和六十三年)以降、世界第一位の生産国となっている。一方、上位国であるペルー、日本、チリの漁業生産量は横ばい又は減少傾向で推移している。
 世界の漁業生産量のうち養殖業を除いた生産量は、総じて横ばい状態が続いており、順調に生産量を伸ばしてきた養殖業では、養殖場の環境悪化や餌料コストの増大等の不安定要因が顕在化しつつある(第2図参照)。
(世界の水産物貿易の動向)
 世界の水産物貿易の規模は、おおむね拡大傾向で推移してきている。一九九六年(平成八年)の輸入量は前年並みの二千百十六万トン、輸入額は前年比一%増の五百六十九億ドルとなった。一方、輸出量は前年比二%増の二千二百二十八万トン、輸出額は前年比二%増の五百二十五億ドルとなった。国別にみると、輸入については、輸入量、輸入額とも先進国の占める割合が高く、我が国は、世界の輸入量の一六%、輸入額の三〇%をそれぞれ占めており、いずれも世界第一位となっている。一方、輸出については、輸出量では、魚粉が主要な輸出品であるペルーが、輸出額では、タイが、減少に転じたものの依然として第一位となっている。
 世界の水産物貿易を金額ベースでみると、これまで増加傾向で推移しているが、近年の輸出入を量ベースでみると、一九九五年以降、伸びは鈍化しており、横ばいとなっている(第3図参照)。輸出入単価は、世界的な水産物に対する需要の強まり等に伴い、上昇傾向で推移している。
(我が国の水産物貿易の動向)
 我が国の水産物輸入数量は、水産物に対する国内の根強い需要、国内生産の減少等を背景に、量、金額とも増加傾向で推移してきた。しかし、量ベースでみると、八年は、魚粉が前年に比べ大幅に減少したこと等により七年ぶりに前年を下回った。九年は、輸入元国におけるさけ・ます類やえび類等の生産量の減少や、我が国経済の低迷による需要の停滞等により、前年比一%減の三百四十一万トンとなり、二年連続の減少となった。金額は、前年比二%増の一兆九千四百五十六億円となり、五年連続の増加となった。なお、ドルベースでみると、八%減の百六十一億ドルとなった。
 一方、我が国の水産物輸出は、さば類、まぐろ類等の国内生産の増加等により、前年比数量で二五%、金額で二七%増加し、それぞれ三十四万トン、一千六百九十八億円となり、二年連続増加した。
 (二) 世界の水産物需給と我が国の水産物需給の現状
(世界の水産物需給)
 世界の水産物需要は、開発途上国を中心とする人口の増加や経済成長、先進国での健康志向等から拡大傾向にある。
 世界の魚介類の供給量を三年ごとの平均値でみると、近年、食用魚介類の供給量は増加傾向にあり、一九九三(平成五年)〜一九九五年(平成七年)の値は前回(一九九一〜一九九三年)に比較して一五%増加し八千万トンとなった。しかしながら、これらの増加は主に中国の急激な増加によるところが大きく、中国を除いた魚介類の供給量をみると、食用は四%の増加、非食用は一%の増加にとどまっている。
 一方、我が国の水産物貿易の輸入元となっている主要国の年間一人当たりの食用魚介類の自国内消費向け供給量について、一九九三〜一九九五年の値と一九八四〜一九八六年の値をみると、中国は、十年前に比べ三倍の供給量となっているのをはじめ、他の国々においても、自国内消費向け供給量を増加させている(第4図参照)。
 今後、我が国の主要な輸入元国で、自国内消費向け供給量が増加傾向で推移した場合、水産物の輸入大国である我が国の水産物需給に大きな影響を及ぼすことから、我が国としては、引き続き国内供給力の維持・強化に努めていく必要がある。
(我が国の水産物需給)
 我が国の水産物需給動向をみると、九年の総需要量は、輸出量が増加したものの、国内消費量が減少したため、前年比一・一%減の一千百八十七万トンとなった。一方、九年の総供給量は、食用の国内生産量、輸入量とも減少したものの、非食用の国内生産量、輸入量とも増加したため、前年比〇・五%増の一千二百七十三万トンとなった。
 九年の食用魚介類の自給率(国内消費仕向量に占める国内生産量の割合)は、前年比二ポイント上昇の六〇%となった(第5図参照)。これまで低下傾向で推移した自給率が、九年に上昇したのは、食用の国内生産量が小幅な減少にとどまったことに加え、食用の輸入量の減少等により国内消費仕向量が三十九万トンとこれまでにない水準で減少したためである。

二 世界の水産資源の保存・管理の現状と国際漁業協力

 国連海洋法条約の発効後、沿岸国が自国の排他的経済水域内の水産資源の管理について適切な措置をとるという同条約の考え方は、世界的に定着してきている。また、公海において地域漁業管理機関が水産資源の保存・管理措置を設定すること等を内容とする国連公海漁業協定も主要漁業国が署名している。このように、排他的経済水域、公海の双方について、国際的に水産資源の保存・管理の枠組みが整えられつつある中で、現在、国際機関等において、水産資源の保存・管理を推進していくための議論が活発に行われている。
 (一) 国際機関等における水産資源の保存・管理
(FAOによる取組)
 近年、漁業に関する国際的な問題を国連食糧農業機関(FAO)において議論し、解決を図ろうとする動きがみられる。十年十月に開催されたFAOの政府間会合において、漁獲能力の管理に関する国際行動計画案が合意され、十一年二月の水産委員会で採択された。
 我が国は、行動計画に盛り込まれた遠洋まぐろはえ縄漁業の漁船数の削減について、我が国遠洋まぐろはえ縄漁船の二割にあたる百三十二隻の減船を行うこととし、国際規制の強化によって減船を余儀なくされる漁業者等に対して不要漁船処理のための交付金措置、離職者対策等を講じる国際漁業再編対策事業を実施することとした。
(地域漁業管理機関をめぐる動き)
 水産資源は、関係する沿岸国及び漁業国が参加する枠組みにおいて適切な保存管理措置を講じることが重要であることから、既に多くの漁業管理機関が設けられており、加盟国は、それぞれの機関が定める水産資源の保存・管理措置の下で漁業を行っている。
 大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)等において、近年、地域漁業管理機関に加盟していない国の漁船が無秩序な操業を行い、国際的な資源保存管理措置の効果を減殺していることが問題となっており、非加盟国による不適切な資源の利用を早急に是正しようとする動きが活発化している。
 一方、地域漁業管理機関が設けられていない海域について、設立に向けた動きも活発になっている。
 (二) 諸外国の漁業管理
 欧米諸国等では、漁獲可能量(TAC)の設定等によって漁獲量を直接管理する漁獲量規制と免許・許可等による漁獲努力量規制等を併用して漁業管理を行っている。
 漁獲量規制は、当初、多くの国で、自由競争による漁獲を認め、漁獲量がTACに達した時点で操業を停止させる「オリンピック方式」によるTAC制度が導入されたが、先取り競争等の問題が生じたこと等から、漁獲可能量を漁業者や漁船ごとに配分する「個別割当方式(IQ方式)」や個別の割当を他者に譲渡できるようにした「譲渡性個別割当方式(ITQ方式)」等が実施されるようになっている。
 また、欧州連合(EU)や米国等において、漁獲努力量の削減方策の一つとして、減船を実施している。
 (三) 我が国漁業の外国二百海里水域内等での操業
 外国二百海里水域内及び公海における我が国漁業の生産量は、公海における漁獲規制の強化や入漁相手国における漁獲割当量の削減等を背景に、平成元年は二百万トンを超える水準にあったものの、八年以降百万トンを割り込む水準にとどまっている。
 今後とも、これら水域における我が国漁業を通じて、我が国周辺水域の水産物の供給力の補完及びまぐろ等我が国排他的経済水域では需要に見合った供給ができない魚介類の安定的供給の確保に努めていく必要がある。
 (四) 国際漁業協力の現状
 我が国は、漁業に関して多くの優れた技術や知見を有しており、これらを基に開発途上国の漁業振興に貢献することが期待されている。このため、水産無償資金協力のほか、各種の技術協力等が実施されている。海外漁業協力財団では、技術協力と融資制度を有機的に連携させることにより、海外漁業協力を推進し、我が国漁船の海外漁場及び安全操業の確保を図っている。
 近年、開発途上国においても適正な水産資源の管理の必要性に対する認識が高まってきていること等を反映して、水産資源の増殖や調査、漁場環境の改善等に係る協力要請も増加してきている。

三 我が国の水産資源の保存・管理の現状と課題

 (一) 漁業生産と周辺水域の水産資源等の動向
(九年の漁業生産)
 九年の漁業生産量は、沿岸漁業で減少したものの、沖合漁業、遠洋漁業で増加したこと等から、前年並の七百四十一万一千トンとなり、平成元年以降の減少傾向は弱まった(第6図参照)。
 魚種別にみると、かたくちいわし、するめいか、さけ・ます類等が前年に比べ減少したものの、さば類、まぐろ類、さんま等が前年に比べ増加した。漁業生産額(捕鯨業を含む。)は、一%増の二兆二千二百二十六億円となった。
(水産資源及び生産の動向)
 近年、我が国周辺水域における主要魚種の資源状態は、魚種や系群によっては資源状態の良いものもみられるが、全般的には中位又は低位水準で横ばい又は減少傾向にある。資源状態が低迷した背景として、藻場・干潟の埋立て、海砂利の採取、自然海岸の減少等に伴う繁殖、保育の場の喪失による資源の再生産力の低下や、漁船の大型化、漁労機器の高性能化等による漁獲努力量の増大等があげられる。さらに、浮魚資源については、海水温等海洋環境の変化も少なからず関与している。
(漁獲努力量の現状)
 近年、周辺水域の水産資源の水準が総じて低迷する中にあって、我が国の漁業は、依然として漁船の高馬力化が進んでおり、漁獲努力量は高い水準にあるとみられる。
 また、アンケート調査結果によると、最近二十年程度の間に減少傾向を示している地先沖合海域の水産資源として、かれい類等の底びき網漁業の対象種やあわび類等の定着性資源を中心に二十七種、九十七件が報告されている。減少要因としては過剰な漁獲圧力が三九%、環境悪化が一二%となっている(第7図参照)。
 今後、資源水準に対し過大となっている漁獲努力量の削減を図るとともに、その適正化に資するため、漁獲努力量の定量的把握等に関する知見の蓄積を進める必要がある。
 (二) 中国、韓国等との漁業関係
(新たな漁業協定の締結)
 日韓間及び日中間において、沿岸国主義による新たな漁業協定の早期締結に向けて協議等が重ねられてきた。
 我が国は、平成九年十一月、中国との間で新漁業協定の署名を行った。本協定は、十年四月の通常国会で承認され、発効に向けて、暫定措置水域における管理措置や暫定措置水域以外の協定対象水域における操業条件等についての協議が続けられている(十一年三月末現在)。
 韓国との間では、平成十年九月末に、排他的経済水域の境界画定が困難な水域における暫定水域の設置、暫定水域における適切な管理の実施、双方の排他的経済水域における相手国漁船の漁獲割当量を三年で等量とすること等を内容とする基本合意に達し、十一月末に新たな協定の署名が行われた。その後協定は、我が国においては十二月の臨時国会で、韓国においては十一年一月に国会で承認され、十一年一月二十二日に発効した。
 我が国は、排他的経済水域及び暫定水域における適切な資源管理及び取締りの確保を図るため、新協定に基づく両国の相互入漁の条件、入漁手続規則、暫定水域における資源管理、取締り等の協議を行い、韓国漁船の我が国排他的経済水域への入漁条件について合意したところであり、日韓間においては、国連海洋法条約の趣旨を踏まえた資源の保存・管理体制が整備された。
 今後、日中間の新たな漁業秩序の早期確立に努めるとともに、我が国排他的経済水域内はもとより、「日中漁業共同委員会」及び「日韓漁業共同委員会」の協議を通じて、暫定水域等旗国主義の下で相互に操業する水域においても、実効ある資源の保存・管理措置を講じることにより、水産資源の持続的利用を図る必要がある。
(北方四島周辺十二海里水域内における操業)
 十年五月、北方四島周辺十二海里水域内における日本漁船の操業枠組みについて日ロ間の協定が発効したことを受けて、我が国漁船の北方四島周辺十二海里水域内における操業が実現した。十年は、ほっけ、たこ等を対象として、十月から十二月まで、二十五隻の我が国漁船が当該水域内において操業を行った。
 (三) 漁獲可能量制度の運用状況
 我が国の漁獲可能量(TAC)制度は、さんま、すけとうだら、まあじ、まいわし、さば類、ずわいがにの六魚種を対象に九年から実施され、十年からするめいかを加えて運用されている。九年における対象魚種のTACの消化状況をみると、おおむねTACの範囲内で採捕された。
 TAC制度は、我が国が排他的経済水域内の水産資源の保存・管理を適切に進めていく上で、公的な資源管理制度の中核となるものである。韓国との新しい漁業協定が発効し、また、今後、中国との新たな漁業協定が発効することに伴い、強制的規定の適用も見込まれることから、採捕量の正確かつ迅速な把握体制を整備する必要がある。また、より効果的なTAC管理のためには、TAC協定の締結等により、漁業者の自主的な取組の促進を図っていくことが必要である。
 (四) 資源管理型漁業の現状と課題
 資源管理型漁業は、昭和五十年代に、我が国周辺水域の最大限の有効利用と漁業経営の安定を目的として、漁協系統組織の運動として始められ、現在、各地の漁業実態に応じたさまざまな取組が行われるようになっている。今後は、対象魚種の拡大や複数魚種を対象とする取組、複数漁業種類間における協調的な取組、さらには、流通・消費を見据えた新たな取組の展開等、より高度な取組を実践していく必要がある。さらに、試験研究機関等との一層の連携の下、各地域の実情に応じた創意と工夫を凝らすとともに、栽培漁業等との連携を図りながら、推進することが必要である。
 (五) つくり育てる漁業の現状と課題
(栽培漁業)
 さけ・ます類の人工ふ化放流事業は、回帰率が向上し、事業効果が顕著に現れるようになった(第8図参照)。また、我が国の種苗放流対象種は、昭和五十年代はじめの約三十種から約八十種に増加し、そのうち、まだい、ひらめ、くるまえび等十一種については、年間一千万尾を超える種苗が放流されている。以上のように、資源の増殖に向けた積極的な取組が展開されたことにより、しろざけ、ほたてがいをはじめ、瀬戸内海のまだい、ひらめ、北太平洋海域のひらめ等では、資源水準が高位又は中位で安定的に推移している。
 今後、栽培漁業の一層の定着化を図っていくためには、適正な場所、時期、尾数及びサイズに留意した放流はもとより、種苗生産における経費低減等の効率化を推進し、漁業者の負担を低減すること等が重要である。
(海面養殖業)
 近年の海面養殖業は、養殖場の制約や供給過剰による魚価の低下、餌料供給状況の大きな変化等を背景として、生産量は頭打ちの状態にある。
 将来にわたって持続的な養殖生産を確保していくため、対象種の放養量、飼餌料の種類や給餌量等を適正に管理し、海域の浄化能力の範囲内での養殖業を推進することが重要となっている。
 また、毎年魚病により大きな被害が発生しており、近年においてはウイルス性疾病等、薬剤での対処が困難な魚病が急増している。このため、国内で既にまん延している疾病や新疾病に対して適切な措置を講じていくことが重要となっている。
 (六) 遊漁と資源管理
 海面遊漁者数は、平成五年漁業センサスによると年間延べ三千七百万人にのぼっている。九年における遊漁船業を利用した船釣りによる水産資源の採捕量は、二万九千五百トンと推計されている。また、海域や魚種によっては、遊漁の採捕量が漁業者の漁獲量を上回っていることが指摘されており、水産資源の保存・管理を行う上で、遊漁による採捕は無視できない要素となってきている。我が国周辺水域の水産資源の保存・管理を適切に行うためには、遊漁者を含めた資源管理のあり方を検討する必要があり、そのためには、採捕の実態が明らかになっていないプレジャーボート利用等の遊漁については、その実態の把握に努める必要がある。

四 水産資源の持続的な利用に向けて

 我が国国内供給力の維持・強化を図っていくためには、本来、高い生産力を有する漁場である我が国排他的経済水域の水産資源の回復を図ることが重要な課題である。そのためには、資源水準に対し過剰となっている漁獲努力量の削減を図りつつ、漁獲可能量制度については「漁業法」等による既存の漁業管理制度と併せてその適切な運用を図り、資源管理の実効性を高めることが求められている。
 また、資源管理型漁業の広域回遊資源、複数魚種・複数漁業種類への取組の高度化等、つくり育てる漁業の広域回遊資源における放流効果等の十分な発現や効率化等の諸課題に適切に対応していくことが肝要である。さらに、各取組の一層の連携を図り、より効果的な資源の維持・増大を図ることが必要である。
 なお、我が国は、科学的根拠に基づく資源の保存管理措置に立脚した責任ある漁業を実践するとともに、国際協調の下に行われる水産資源の保存・管理等の取組への積極的な対応等を通じて、持続可能な漁業の確立に向けて、国際社会においても主導的な役割を果たしていくことが重要である。
 以上のような取組によって我が国排他的経済水域の水産資源の回復と持続的利用の両立を図ることは、漁業経営を安定させるとともに、漁業地域における生産活動を活発化させる基礎となるものであり、漁業及び関連産業を魅力ある産業へ転換していくために不可欠なものである。

第U章 水産物の消費及び流通・加工の現状

一 水産物消費

(消費者ニーズの多様化と消費者の購買行動)
 消費者の「安全志向」が強まってきていることや、「健康志向」あるいは「本物志向」などを背景として、鮮度の高い魚介類を求める傾向がこれまで以上に強まっているほか、量と価格とのバランスや環境・衛生への関心の高まりなど、食品に対する消費者ニーズは極めて多様化かつ高度化してきている。
 近年の消費者の購買行動は、鮮魚小売店の減少もあり、「専門小売店(いわゆる魚屋)」での購入が減少している一方、「スーパー」及び「生協」等での購入が増加している(第9図参照)。
 また、消費者は、近年、国産品や輸入品を問わず多種多様な水産物が出回っていること等を背景に、適切な産地に関する情報等を求めている。
(水産物の消費動向)
 八年は、腸管出血性大腸菌O157による食中毒被害の拡大もあり生鮮魚介類の支出額が大幅に減少したが、九年は、個人消費の冷え込み等もあり、名目は前年並み、消費者物価指数で実質化した実質額では一・九%減少となった。また、品目別にみると、生鮮魚介類及び他の魚介加工品では、名目で増加したものの、消費者物価指数が前年に比べ上昇したことにより、実質支出額は減少した。塩干魚介類及び魚肉ねり製品は、名目、実質とも減少した。
 水産物は、良質なたんぱく質、脂肪等のほかDHA等の有用な機能性成分をも含んでおり、健康的で豊かな食生活の実現といった面からも重要な役割を果たしている。若年齢層の魚ばなれが指摘されている中で、多くの年齢層で魚の消費を増やしたいという意向をもっており、引き続き安全性及び鮮度の高い水産物の供給に努めるとともに、消費者に適切な情報を提供していくことが必要である。

二 水産物流通

(多様化・高度化する水産物流通)
 近年の水産物流通は、多種多様な輸入水産物が増加したこと等もあり、その流通経路も多様化しており、従来の卸売市場を中心とした市場流通に加え、インターネット等を活用した通信販売等の多品種少量化に対応した流通や、魚種によっては、大型量販店等の大口需要者と生産者等との直接取引等の市場外流通も活発化している。また、保管・配送や在庫管理、包装、品質管理等の外部委託が増加している。
 一方、消費者の間では、食品の安全性の向上と品質管理の徹底を求める声が一層高まっている中、流通段階においてもHACCP(危害分析・重要管理点)方式による高度な衛生管理の導入に向けての検討が進められている。
(市場流通をめぐる状況)
 卸売市場を取り巻く状況は、スーパーマーケットのシェアの拡大、外食等の業務用需要の拡大の進展等により、大きく変化しており、市場経由率の低下、卸売業者の経営悪化等がみられる。しかし、多くの漁業者は、産地市場を水産物の出荷先の中心とみなしており、漁協合併等と連動して市場統合を進め、大量で安定した集荷を確保するとともに、市場経営の効率化を図りつつ、高度化する消費地側のニーズに積極的に対応していくことが必要である。
(末端流通の動向)
 鮮魚小売業では、従業者数五人未満の鮮魚小売業いわゆる魚屋の商店数は、年々減少している。販売額は、単独店が低迷している一方、多店舗展開をしている商店では増加傾向で推移している。一方、生鮮魚介卸売業は、商店数、販売金額は、三年を頂点として減少傾向で推移している。
 外食産業は、これまで順調に成長してきたが、現在、景気の低迷、法人需要の低迷等により、その伸びは低下している。一方、近年、弁当やそう菜等を購入して食するいわば「中食」産業は、女性の社会進出や若者を中心とした単身世帯の増加、生活の二十四時間化などのライフスタイルの変化を背景として、また、スーパーマーケットや百貨店における弁当・そう菜品の品揃えの強化等に伴い、急速に成長してきている。
 個人消費が低迷する中、大型量販店、外食産業等では、差別化した商品としての国産品の認識が高まっており、今後、生産者や流通業者等においては、消費者ニーズ、小売業・外食産業等の動向を的確に把握することはもとより、その業態特性を見極めつつ、対応していくことが重要である。

三 水産加工

(生産動向及び経営体の現状)
 近年の水産加工品の主要品目の生産動向は、総じて横ばい又は減少傾向で推移している。特に、ねり製品は、高年齢層を中心に根強い需要があるものの、総体的な消費の低迷や、原料供給の不安定等により、また、油脂・飼肥料は、主原料であるまいわしの生産が大きく減少していることから、減少傾向にある。
 水産加工経営体は、近年、国内生産量の減少による原料魚介類の減少、輸入原料の価格上昇や製品の低価格化等による収益性の低下等から、厳しい経営環境にある。
(品質・衛生管理をめぐる状況)
 流通加工業者は、安全な食品を提供するため、検査機器の導入・改善や従業員への研修会の実施等様々な分野で新たな対策を実施、あるいは計画を有している。しかし、安全確保対策を講じるに当たっては、情報・知識の不足、資金不足、人材不足など、個別企業の対応では限界があると考えている業者も多く、個別企業のみならず業界全体で取り組むべき重要な課題となっている。
 中小企業が多い我が国の水産加工業においては、HACCP(危害分析・重要管理点)の導入に際し、施設整備に対する融資制度はもとより、専門的な知識を有する人材育成のためのHACCP講習会の開催、HACCP導入の指導等を含めた適切な支援を継続・強化する必要がある。
(加工残滓の処理)
 水産加工業において発生する残滓の一部は、飼肥料等の原料として利用されているものの、水産加工業が盛んな地域では、これら加工残滓の処理に莫大な費用を要している。今後、加工残滓の安価な処理技術や再利用のための新技術の開発等に積極的に取り組むことにより、環境に負荷の少ない生産活動を行うことが求められている。

第V章 漁業経営と就業環境

一 漁業経営体の現状

 漁業経営体は、経営主の高齢化、後継者不足による廃業等により、年々減少を続けており、平成九年は前年比二%減の十五万七千となった。このうち、沿岸漁業経営体は二%減の十四万九千、中小漁業経営体は一%減の七千六百、大規模漁業経営体は五%減の百四十七となった。近年、漁業経営体全体としては、おおむね二%前後の減少率で減少しているが、主として養殖業を営む経営体は、七年から八年にかけて三・七%、八年から九年にかけて四・八%と高い減少率であり、特に、主としてのり養殖やわかめ養殖を営む経営体が減少している。

二 沿岸漁業経営の動向

 平成九年の沿岸漁船漁業の経営状況は、かたくちいわし、するめいか(生鮮)等の魚価が上昇したものの、漁獲量が前年比八%減少したため、漁業収入は、前年比二%の減少となった。一方、漁業支出は、前年比二%減少し、この結果、漁業所得は前年比二%減の二百四十五万円となった。
 海面養殖業の個人経営体当たり漁業所得は、たい類養殖漁家、かき養殖漁家、真珠養殖漁家及び真珠母貝養殖漁家では前年度を下回ったものの、他の養殖漁家で前年度を上回ったため、前年度比一六%増の七百五十四万円となった。
 漁家(十トン未満の漁船漁家、小型定置網漁家及び海面養殖漁家)の平均所得は、沿岸漁船漁業の漁家所得が前年並みとなったものの、ほたてがい養殖業、ぶり類養殖業及びのり養殖業の漁家所得が大幅に増加したことにより、前年比三%増の七百十六万円となった(第10図参照)。

三 中小・大規模漁業経営の動向

(中小漁業の経営)
 平成九年度の中小漁業の一経営体当たりの漁業収入は、さば類、まぐろ類、かつお等の漁獲量の増加、かつお(冷凍)、すけとうだら等の価格の上昇により、前年度比三%増の一億二千二百十六万円となった。また、見積り家族労賃を含む漁業経営費は、油代、販売手数料等の増加により二%増の一億二千九十四万円となった。この結果、漁業利益は百二十二万円となり、四年に赤字に転じて以来六年ぶりに黒字となった。
 しかしながら、財務面では、資本の安全性を示す自己資本比率の低迷、借入金への高い依存度等、経営体質は依然としてぜい弱である。
(大規模漁業の経営)
 資本金一億円以上の漁業会社(大規模漁業会社)においては、漁労部門の一部維持を図りながら、海外からの水産物買付等の商事部門、冷凍食品製造等の食品加工部門を中心にした食品全般に関する水産系の総合製造販売業として、事業内容の再構築が図られている。売上高に占める漁労部門の割合は前年度と同様の二%となっている。

四 漁業就業者の動向と労働環境

(漁業就業者の動向)
 漁業就業者は、昭和二十八年の約八十万人を頂点として、減少傾向が続いている。九年は、前年に比べ減少率は低下したものの、三%減の二十七万八千人となった。沿岸漁業就業者は三%減の二十三万七千人となり、沖合・遠洋漁業就業者は五%減の四万一千人となった。
 男子漁業就業者について、年齢階層別にみると、六十歳以上の階層の割合は増加しており、九年は前年比二ポイント増の四二%となった(第11図参照)。
(漁船労働)
 国内の漁船船員の労働力需要は、総じて低調に推移している。しかし、新規就業者は減少しており、一方で高齢化に伴う離職者は今後更に増大することが見込まれ、漁船労働力の不足が深刻化の度合いを深めることが予想される。
 航海士、機関士等の資格を有する漁船職員についても、将来的にますます安定的な確保に支障をきたすことが考えられ、的確な対応を図る必要がある。
 資格を必要としない漁船部員についても、その不足が深刻化してきている中、我が国の漁船を外国企業に貸し出し、外国人漁船部員を乗船させてこれを用船する、いわゆる「マルシップ方式」が、平成十年七月から導入された。

五 漁業協同組合の組織強化

 平成四年度から九年度までの間に八十一件、二百八十八漁協の合併が行われるとともに、信用事業については、二十二県において三百六十五漁協から信漁連に対する事業譲渡が行われており、四年度以降合併、信用事業譲渡の気運は急速に高まってきている。しかしながら、農協における合併の進捗状況と比較した場合、漁協の合併は大きく立ち遅れている。
 このため、十年三月、「漁業協同組合合併助成法」が改正され、「漁業協同組合合併促進法」として拡充・延長された。同法に基づく合併の促進等を通じ、組織体制の整備と事業基盤の強化に向けた取組をこれまで以上に推進していくことが求められている。

第W章 海洋環境の保全と地域活性化

一 漁業と環境とのかかわり

 漁業は、環境及び生態系に大きく依拠する産業であり、これらを良好な状態に保全していくことは、漁業の健全かつ持続的な発展を図り、安全な水産物の生産と供給を行っていく上で、極めて重要な課題である。
 世界人口が増加を続ける中で、食料供給における漁業の役割は以前にも増して重要なものとなっており、我が国としても、引き続き、持続可能な漁業を推進するとともに、野生生物種の保存や、生息環境の保全に積極的に取り組むことにより、漁業に対する正当な理解が国際的に得られるよう努めていく必要がある。このため、今後とも、科学的根拠に基づき、水産資源の適切な保存管理とその合理的な利用を図ることはもとより、さらに科学的知見を蓄積し、国際的な協調の下、環境や生態系に配慮した漁業を実践していくことが必要である。

二 海洋環境の保全と地域活動

(海洋環境の現状)
 藻場・干潟は、重要な漁場であるばかりでなく、産卵、幼稚魚の生育等の水産生物の増殖の場としての機能、水質の浄化機能等重要かつ多面的な機能を有しているが、埋め立て等により、昭和五十三年から平成三年の十三年間に、藻場で六千四百三ヘクタール、干潟で三千八百五十七ヘクタールが消滅している。また、自然状態を保持した海岸の減少や、砂浜の浸食も進んでおり、近年深刻な問題となっている。各種の開発行為に際しては、事前に十分な影響調査・評価を行うほか、開発行為の影響を最小限に抑える手法の開発を推進していくことが必要である。
 ダイオキシン類等については、発生源対策を強力に推し進めることが重要であり、現在、関係省庁が連携を図りつつ、魚介類中の蓄積状況等の実態調査や発生源対策等が進められている。内分泌かく乱物質についても、その蓄積状況や影響実態の把握、蓄積機構の解明等の調査研究や発生源対策を充実・強化していく必要がある。
(海洋環境の保全に向けた地域活動)
 海洋汚染や水生生物の保護等に関する国民の関心が高まる中で、社団法人海と渚環境美化推進機構(マリンブルー21)や漁協系統団体による海浜清掃活動も積極的に行われており、全国一斉の海浜清掃活動の参加者は、平成八年には百万人を超え、九年も引き続き百万人規模となった。漁業者自らが植林活動を行う事例も多くなっており、漁業者等による植林活動は、森林組合等の協力を得つつ、広域的に展開されている。
 今後、広く国民に対して、海洋保全に対する意識の高揚を図ることが重要となっている。

三 活力ある漁村の創造

(漁業の担い手の育成・確保)
 我が国漁業における若年齢層の就業人口は年々減少しており、総じて担い手の確保が不十分な状況にある。平成九年の調査によると、海面漁業の自営漁業世帯の漁業後継者がいる割合は、「漁業に従事している後継者」と「予定の者がいる」を合わせても二四%にとどまっている。販売金額別にみると、販売金額が大きい規模ほど後継者を確保している割合が高く、安定的な漁業収入の確保が重要となっている(第12図参照)。
 一方、都市生活者の自然志向の高まり、労働に対する価値観の多様化等を背景に、幅広い年齢層の就業者が漁業に参入しつつある。
 新規参入者の定着を図るためには、安定的な漁業収入を確保するための漁業技術や経営技術の習得、居住環境の整備、地元漁業者との交流等、漁業、生活双方にわたる総合的な支援策を講じることが必要である。
(漁村における女性の活動)
 平成九年の女性漁業就業者は、総漁業就業者二十七万八千人の一八%を占める五万一千人となっている。漁村において女性は、海上作業のほか販売活動を通じ、生産物の付加価値向上に寄与するとともに、漁協の婦人部を中心に、生活改善、魚食の普及等多岐にわたる地域活動を展開している。また、魚食文化や伝統文化の継承の担い手として、将来の後継者に対する教育、家族の健康管理等の面でも重要な役割を果たしている。今後とも、女性が十分な能力発揮と快適な生活ができるよう、「定休日の設定」等の労働環境の整備はもとより、教育施設、生活環境設備の充実に努めることが重要である。
(地域資源の有効活用)
 漁業地域は、新鮮な魚介類、豊かな自然や景観、個性ある伝統文化等貴重な地域資源を有しており、近年、産地漁協等が定期的に開催する朝市、漁協によるホエールウォッチングやダイビング等の事業や、都市住民を対象とした漁業体験等により地域の活性化を図っている事例もみられる。今後とも、地域資源の有効活用や、体験学習等教育の場の提供、都市住民との交流の場の創出により、漁業地域の活性化を図っていくことが重要である。

むすび

 我が国漁業の確固たる基盤を築き、国民に対する水産物の安定供給を確保していくための基本的課題について展望すると、以下のとおりである。
一 水産資源の持続的利用と責任ある漁業の推進
二 消費者・実需者のニーズに対応した流通・加工体制の確立
三 漁業経営の安定と生産体制の合理化
四 漁業を核とした魅力ある定住圏づくり




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消費支出(全世帯)は実質一・四%の増加


―平成十一年一月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年十一月以降十二か月連続の実質減少となった後、十年十一月は実質増加、十二月は実質減少となり、十一年一月は実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成十年十一月、十二月は実質減少となったが、十一年一月は実質増加となった。
 消費支出は、平成十年七月以降四か月連続の実質減少となった後、十一月は実質増加、十二月は実質減少となり、十一年一月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十八万三千八百九十円。
 前年同月に比べ、名目〇・五%の減少、実質〇・七%の減少。














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平成10年度平均全国消費者物価指数の動向


総合指数は前年度比〇・二%の上昇


総 務 庁


一 概況

 平成十年度平均全国消費者物価指数は、平成七年を一〇〇とした総合指数で一〇二・五となり、前年度に比べ〇・二%の上昇となった。
(1) 近年の総合指数の動きを前年度比でみると、平成四年度は生鮮野菜などの下落により一・六%の上昇、五年度も衣料などの下落により一・二%の上昇と一%台の上昇で推移した後、六年度は耐久消費財を中心とした工業製品の下落幅が拡大したことなどにより〇・四%の上昇と昭和六十三年度以来六年ぶりに一%を下回った。七年度は工業製品の下落に加え、米類や生鮮野菜が大幅に値下がりしたことなどにより〇・一%の下落と、比較可能な昭和四十六年度以降初めて下落となった。八年度は工業製品などの下落幅が縮小したことに加え、生鮮魚介や衣料が値上がりしたことなどにより〇・四%の上昇となった。九年度は消費税率引上げの影響などにより二・〇%の上昇と、三年度以来六年ぶりに二%台の上昇となった。
  平成十年度は、自動車等関係費の値下がりや電気代の値下げなどがあったものの、天候不順により生鮮野菜が高騰したことに加え、医療保険制度改正の影響が残ったことなどにより〇・二%の上昇となった。
  なお、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前年度に比べ〇・二%の下落となった。
(2) 十大費目指数の動きを前年度比でみると、食料は生鮮野菜などの値上がりにより一・一%の上昇、被服及び履物は衣料などの値上がりにより〇・七%の上昇、保健医療は保健医療サービスの値上がりにより四・〇%の上昇、教育は授業料等などの値上がりにより一・七%の上昇、諸雑費はたばこなどの値上がりにより〇・五%の上昇とそれぞれ総合の上昇率を上回る上昇となった。このほか、住居は〇・二%の上昇となった。一方、光熱・水道は電気代の値下げなどにより二・四%の下落、家具・家事用品は家庭用耐久財などの値下がりにより一・六%の下落、交通・通信は自動車等関係費などの値下がりにより一・七%の下落、教養娯楽は教養娯楽サービスなどの値下がりにより〇・六%の下落とそれぞれ下落となった。
  なお、総合指数の前年度比の上昇幅が平成九年度(二・〇%)に比べ一・八ポイントの縮小となった主な要因を十大費目別にみると、電気代の値下げなどにより光熱・水道が四・三%の上昇から二・四%の下落へ、教養娯楽サービスの値下がりにより教養娯楽が二・二%の上昇から〇・六%の下落へ、それぞれ前年度の価格水準を下回ったことや、外食などの上昇幅が縮小したことなどにより食料が二・二%の上昇から一・一%の上昇へと上昇幅が縮小したことなどによる。
(3) 商品・サービス分類指数の動きを前年度比でみると、商品は、農水畜産物などが値上がりしたものの、工業製品の値下がりや電気・都市ガス・水道の値下げにより〇・一%の下落となった。サービスは、公共サービス料金などの値上がりにより〇・五%の上昇となった。
  なお、総合指数の前年度比の上昇幅が平成九年度(二・〇%)に比べ一・八ポイントの縮小となった主な要因を商品・サービス分類別にみると、サービスが二・四%の上昇から〇・五%の上昇へと上昇幅が縮小したことに加え、生鮮商品の値上がりなどにより農水畜産物の上昇幅が拡大したものの、工業製品が前年度の価格水準を下回ったことなどにより商品が一・七%の上昇から〇・一%の下落へと前年度の価格水準を下回ったことによる。

二 費目別指数の動き

(1) 食料は一〇三・三となり、前年度平均に比べ一・一%の上昇となった。生鮮食品についてみると、生鮮魚介は○・七%の上昇となった。生鮮野菜は、天候不順の影響などにより四月、五月及び十月〜十二月に前年の価格水準を大幅に上回ったため一〇・二%の上昇となった。また、生鮮果物は、十月〜二月に前年の価格水準を大幅に上回ったことなどにより八・五%の上昇となり、生鮮食品全体では六・一%の上昇となった。
  生鮮食品以外では、菓子類は〇・五%の上昇、飲料は二・一%の上昇、外食は〇・二%の上昇とそれぞれ上昇となった。一方、穀類は〇・九%の下落、乳卵類は一・六%の下落、油脂・調味料は〇・七%の下落、酒類は〇・五%の下落となった。
  なお、肉類及び調理食品は前年度と変わらなかった。
(2) 住居は一〇三・五となり、前年度平均に比べ〇・二%の上昇となった。内訳をみると、家賃は〇・三%の上昇となった。一方、設備修繕・維持は〇・五%の下落となった。
(3) 光熱・水道は一〇二・四となり、前年度平均に比べ二・四%の下落となった。内訳をみると、電気・ガス代は三・〇%の下落、他の光熱は九・七%の下落とそれぞれ下落となった。一方、上下水道料は二・四%の上昇となった。
(4) 家具・家事用品は九五・四となり、前年度平均に比べ一・六%の下落となった。内訳をみると、家庭用耐久財は三・九%の下落となった。また、他の家具・家事用品は、家事サービスが一・九%上昇したものの、室内装備品が一・五%の下落、寝具類が一・三%の下落、家事雑貨が〇・一%の下落、家事用消耗品が一・八%の下落とそれぞれ下落したため〇・七%の下落となった。
(5) 被服及び履物は一〇四・八となり、前年度平均に比べ〇・七%の上昇となった。内訳をみると、衣料は一・二%の上昇、シャツ・セーター・下着類は〇・一%の上昇、履物類は〇・五%の上昇、生地・他の被服類は〇・三%の上昇といずれも上昇となった。
(6) 保健医療は一一二・七となり、前年度平均に比べ四・〇%の上昇となった。内訳をみると、保健医療サービスは平成九年九月の医療保険制度改正の影響が残ったことなどにより八・四%の上昇となった。一方、医薬品は〇・四%の下落、保健医療用品・器具は一・五%の下落とそれぞれ下落となった。
(7) 交通・通信は九七・四となり、前年度平均に比べ一・七%の下落となった。内訳をみると、自動車等関係費はガソリン(レギュラー)などの値下がりにより二・九%の下落、通信は通話料の値下げなどにより二・二%の下落とそれぞれ下落となった。一方、交通は〇・四%の上昇となった。
(8) 教育は一〇七・〇となり、前年度平均に比べ一・七%の上昇となった。内訳をみると、授業料等は私立大学授業料などの値上がりにより二・一%の上昇、教科書・学習参考書は一・三%の上昇、補習教育は一・一%の上昇といずれも上昇となった。
(9) 教養娯楽は一〇〇・三となり、前年度平均に比べ〇・六%の下落となった。内訳をみると、教養娯楽用耐久財は、ワードプロセッサーなどの値下がりにより二・八%の下落となった。また、他の教養娯楽は、書籍・他の印刷物が〇・四%上昇したものの、教養娯楽サービスが〇・七%下落したため〇・四%の下落となった。
(10) 諸雑費は一〇三・〇となり、前年度平均に比べ〇・五%の上昇となった。主な内訳をみると、理美容サービスは〇・九%の上昇、たばこは二・三%の上昇となった。一方、理美容用品は〇・六%の下落、身の回り用品は〇・四%の下落とそれぞれ下落となった。

三 商品・サービス分類指数の動き

(1) 商品は一〇〇・九となり、前年度平均に比べ〇・一%の下落となった。内訳をみると、農水畜産物は、米類が一・四%の下落、他の農水畜産物が一・一%の下落とそれぞれ下落したものの、生鮮商品が四・〇%上昇したため三・一%の上昇となった。
  工業製品は、食料工業製品が〇・二%の上昇、繊維製品が〇・六%の上昇とそれぞれ上昇したものの、耐久消費財が二・〇%の下落、その他の工業製品が一・八%の下落とそれぞれ下落したため〇・七%の下落となった。
  電気・都市ガス・水道は二・五%の下落となった。
  出版物は〇・五%の上昇となった。
(2) サービスは一〇四・二となり、前年度平均に比べ〇・五%の上昇となった。内訳をみると、民営家賃は〇・三%の上昇、持家の帰属家賃は〇・五%の上昇、公共サービス料金は〇・八%の上昇、個人サービス料金は〇・三%の上昇、外食は〇・二%の上昇といずれも上昇となった。
≪別掲項目≫
 公共料金は一〇四・〇となり、前年度平均に比べ〇・二%の下落となった。これは、平成九年九月の医療保険制度改正の影響が残ったほか、水道料や下水道料の値上げなどがあったものの、電気代や通話料の値下げなどがあったことなどによる。














 
   <6月16日号の主な予定> 
 
 ▽平成九年全国物価統計調査………総 務 庁 

 ▽毎月勤労統計調査…………………労 働 省 




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