官報資料版 平成11年6月23日




                  ▽外交青書のあらまし………………………………………………外 務 省

                  ▽家計収支(二月分)………………………………………………総 務 庁

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部四月中旬速報値)………総 務 庁











外交青書のあらまし


―新たな世紀に向けたリーダーシップのある外交の展開―


外 務 省


第1章 総括

1 二十一世紀を迎える世界と日本

 一九九八年を通じて、日本外交は新たなかつ多くの困難な課題に取り組んできた。それらの中でも特に、インドとパキスタンによる核実験の実施及び北朝鮮によるミサイル発射などの安全保障にかかわる問題から、九七年のアジア通貨・金融危機に続くロシア、中南米の金融不安などの経済面での動揺に至るまで、地域や世界の安定を損ないかねない新たな事態への対応が大きな焦点となった。
 このような状況の下、九八年の日本外交は特に@アジア太平洋地域、ひいては世界の安定と繁栄を一層増進していくとの観点から、米露中韓及び多くの国々との間で積極的に首脳外交を展開したこと、さらにA大量破壊兵器の拡散防止から紛争の予防、更には紛争の根本原因の一つである貧困への対応といった様々な局面で、包括的かつ独自のリーダーシップを発揮したことに特徴づけられる。
 まず、積極的な首脳外交については、三回に及ぶ日米首脳会談を通じて、アジア太平洋地域の平和と安定の基礎である日米関係を強化し、両国が幅広い分野で緊密な協力を行っていくことを改めて確認した。ロシアとの間では、ハイレベルの「間断なき対話」を通じて、東京宣言に基づく西暦二〇〇〇年までの平和条約締結に向けた交渉を含むあらゆる分野で、二国間関係が着実に進展した。日中関係についても、日中平和友好条約締結二十周年という節目の年に、日中両国首脳は「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」の名の下に、日中共同宣言を取りまとめるとともに、三十三分野にわたる協力項目について共同プレス発表を行った。
 また、日韓両国首脳は「日韓共同宣言―二十一世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」に署名し、過去の問題に区切りをつけて二十一世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを構築していくことで一致した。その後の日韓閣僚懇談会開催などを経て、この共同宣言は着実に実践されつつある。さらに、ハノイにおける日・ASEAN首脳会議やクアラルンプールにおけるAPEC首脳会議の場を通じて、日本経済を再生させるとの強い決意の下、アジア経済の回復のためにもアジア太平洋における地域協力の推進を引き続き重視する日本の姿勢を改めて強調した。
 第二に、このようなアジア太平洋地域の安定と繁栄の基盤である域内諸国との友好協力関係を一層強化する努力に加え、九八年中に起こった様々な出来事に対応して、日本は包括的かつ独自の外交を展開した。
 まず、深刻な安全保障上の問題を提起したインドとパキスタンによる核実験の実施に際し、日本は、両国に対して断固たる抗議の姿勢を示すとともに、G8や国連安全保障理事会などの場を通じて国際的な核不拡散体制を堅持・強化していくべきことを強く訴え、国際世論を喚起した。また、核不拡散・核軍縮のための国際レジーム強化のための有識者の英知を結集するために「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」を開催したり、国連総会において今後の核軍縮・核不拡散への道筋を示す決議案(圧倒的多数の賛成を得て可決)を提案するなど、積極的にイニシアティヴを発揮した。
 さらに、北朝鮮によるミサイル発射に対しては、これを日本の安全保障に直接脅威を及ぼす極めて遺憾な行為として、北朝鮮に対して国交正常化交渉の開催や食糧等の支援の当面の見合わせ等毅然とした厳しい対応をとった。また、日米韓三国の緊密な連携を維持・強化しつつ、国際社会に対しても積極的に問題提起を行い、その結果、国連安保理議長による対プレス声明の発出をはじめとし、国際民間航空機関(ICAO)、ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)等の国際場裡(り)においても日本の懸念が広く共有された。
 一方、新たな形態の危機としては、九七年以来のアジア通貨・金融危機、さらにそれが引き金となったロシアの金融不安や中南米経済の不安定化への対処が挙げられる。このような国際的な経済・金融危機の発生を防ぎ、また発生した際に適切に対応していくために、五月のバーミンガム・サミットをはじめ、IMF・世界銀行等の一連の会合において国際金融システムの強化策が検討された。
 日本は、金融システムに焦点を当てたグローバルな取組への積極的な参加に加え、九七年の通貨・金融危機からの回復が最優先課題となっているアジア諸国に対して、九八年末までに総額約八百億ドルの支援策を表明し、これを着実に実施してきている。
 次いで紛争への取組については、フン・セン、ラナリット両首相間の確執が顕在化していたカンボディアにおいて国民和解が遂げられ、自由で公正な選挙が実施されるなど、いわゆる「四項目提案」をはじめとする日本の努力が実を結んだ。また、第二回アフリカ開発会議を開催し、紛争との関連をも視野に入れた開発促進へのイニシアティヴをとり、アフリカの開発に携わる関係国・国際機関から高い評価を得た。
 これらの取組に加え、日本は、六月に改正された国際平和協力法に基づいて、九月にボスニア・ヘルツェゴビナに選挙要員を派遣し、また、大規模なハリケーン災害に見舞われた中南米諸国のうち特に被害が深刻であったホンデュラスに対し、十一月に初めて国際緊急援助隊として自衛隊の部隊を派遣した。
 いずれも従来以上の目に見える日本の貢献として、関係国から高い評価を受けており、グローバルな脅威から世界の平和と安定を守っていく上で日本が果たし得る役割も広がりを見せつつあることを示した。
 このような九八年の締めくくりに当たり、小渕総理大臣はアジアの二十一世紀を展望し、「人間の尊厳に立脚した平和と繁栄の世紀」の構築というビジョンを打ち出した。このビジョンを支える行動分野のひとつに「人間の安全保障」の重視が謳われているが、これは、人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的に捉え、これらに対する取組を強化していくことを目指すものである。
 日本は、また、危機に瀕したアジア諸国の安定と繁栄の実現に向けて、経済危機のしわ寄せが深刻な社会的弱者層を救済し、社会の安定化を図る必要があるとの考え方に立脚し、九八年末までにこれらの国に対して世界最大規模の支援策を表明した。こうした日本の取組はアジアのみならず国際社会の多くの国から高く評価され、アジア太平洋地域の安定と繁栄の確保を目指す日本外交の基本方針が改めて国際社会において明確に認識されたことは、今後の日本外交の展開にとって積極的な意義をもつ。
 以上、九八年の日本外交の主要な動きについて概観したが、最後に、二十一世紀を迎えようとするこの機に、世界を特徴づける今後の大きな流れをどう見るべきか、三つの側面に整理して捉えてみたい。
 [脅威の多様化]
 まず第一に挙げられるのは「脅威の多様化」である。今日の国際社会において大規模な戦争が発生する可能性は低下しているものの、個人の生命や安全にとっての最大の脅威は依然として武力紛争である。冷戦終結後、局地的な紛争は多発しており、これに対応する形で、過去十年間に新たに展開した国連平和維持活動の数はそれ以前の約二倍に膨らんでおり、紛争の原因は、民主化をめぐる政府と反政府勢力との対立、領土やアイデンティティー(宗教、民族等)をめぐる対立など多岐にわたっている。
 紛争の地域的分布についても、ここ数年の紛争発生件数が最も多い地域はアフリカとアジアであるが、欧州等他の地域もその脅威を免れてはいない。実際の紛争における武力行使の手段に着目すると、紛争の局地化現象と相まって対人地雷や小火器等の使用が増加し、それが紛争の激化や人的な被害の拡大・深刻化を招いていることがわかる。すなわち、冷戦期において脅威の主たる源となり、その規制が議論されてきた大量破壊兵器や弾道ミサイルのみならず、通常兵器も今や現実の脅威となっている。このように、武力紛争の増加とともに、その形態、原因、手段が多様化していると言える。
 一方、武力紛争とは異なる次元で人々の生命や安全を脅かす問題が出現している。それは環境破壊、テロ、国際組織犯罪、薬物、人権侵害、難民、感染症等であり、これらが国境を越えた広がりを見せ、人類共通の問題として我々の前に立ちふさがりつつある。そして、広がる問題に対処する人類の側も協調を迫られている。
 従来、国家の専権事項とされてきた分野において国際的な規範が形成されつつあるなど、近年の主権国家間の協調に基づく対処のあり方は、主権平等の原則や内政不干渉の原則が絶対視されていた近代においては想定し得なかったものであろう。しかし、今日においては、こうした問題に関しては国家がその主権の及ぶ範囲で個別に問題に対処することでは足りず、国際社会全体の協調・協力が決定的に必要とされている。
 しかし、これらの分野における国際的取組は、必ずしも常に円滑に進んでいるとは言えず、一国の短期的な利益と国際社会全体の長期的な利益とがしばしば衝突するという困難を抱えつつ進められているのが現状である。さらに、国際テロのように、テロ組織や個人など主権国家以外が国際社会に脅威を及ぼす主体となっていることが問題への対処を更に複雑にしているものもある。
 [国力の多元化]
 第二は「国力の多元化」である。百九十か国近い主権国家が共存する今日の国際社会においては、他の国家との関係の処理、すなわち「外交」を支える国力の源泉にも多様性が現れている。帝国主義列強がその勢力を競い合った近代においては、強大な軍事力が外交関係を大きく左右していたが、冷戦が終結し、世界の一体化が進む現在の世界では、軍事力のみならず、経済力、技術力、文化の力など様々な要素が外交に影響を与えている。
 現実の国際政治において、秩序維持・回復のための最終的な手段として軍事力が引き続き一定の役割を果たしていることは疑いないが、今日、外交を通じて国益を実現していくためには、軍事力以外の様々な力を背景に国際的な発言力を増していくことがますます重要になってきている。また、二十一世紀を視野に入れた新たな国際秩序の形成においては、構想力、設計力、説得力といった能力も国際社会を自国に有利な方向に牽引していく上で必要不可欠な資質である。
 [グローバリゼーションの進展]
 第三はグローバリゼーションの進展である。特に経済面において、今世紀後半急速に進展したグローバリゼーションは、今後とも不可逆的な一大潮流として継続していくものと考えられる。
 移動・情報通信技術の発達やそれに伴う国境を越えた経済活動の拡大を通じて、世界は未曾有の繁栄を享受している。一方、活発な貿易・投資や巨額の民間資本の流れは、世界規模での経済の効率化を進めると同時に世界を一種の運命共同体と化した。アジアの通貨・経済危機やロシアの金融危機がその後中南米などに飛び火し、全世界を震撼させたことはいまだ記憶に新しく、これが国際金融システム強化の議論を呼んでいる。
 また、グローバリゼーションがもたらす世界規模での競争の激化は、開発途上国のみならず先進国においても、競争における敗者や競争から取り残される者を生み出し、社会の不安定化を招く危険性をはらんでいる。これについては社会的弱者に対するいわゆるセーフティー・ネットの構築等の対応がとられつつある。グローバリゼーションの波は不可逆的であり、また、そのうねりを完全に制御することは不可能である。我々はこのことを十分認識した上で、そのダイナミズムを世界の安定と繁栄の一層の増進に最大限活用していく工夫を続けていかねばならない。
 以上、二十一世紀を迎える世界を特徴づける潮流を三つに整理して敷衍(ふえん)した。九九年は、この潮流を視野に入れつつ長期的展望に立った日本外交のあり方を見定めていくべき重要な年と位置づけられよう。

2 九八年の注目すべき動き

 (1) インドとパキスタンによる核実験
 インドでは総選挙の結果、三月にインド人民党(BJP)を中心とする連立政権が発足し、核政策の見直しと核兵器導入オプションの行使に言及した共通政策綱領が発表された。一方、隣国のパキスタンでは四月六日に「ガウリ」中距離ミサイルの試射が実施された。こうした南アジアにおける緊張の高まりを懸念して、日本は、橋本総理大臣発ヴァジパイ・インド首相宛親書を通じて同国の核政策における慎重な対応を求めるとともに、パキスタン政府に対してもミサイル・核開発の抑制を求める申し入れを行ったが、インドは五月十一日及び十三日の二度にわたり核実験を実施した。
 インドによる核実験実施後、パキスタン国内では核実験実施に向けた圧力が高まり、五月十六日にバーミンガム・サミットで発出された「G8首脳による声明」にも見られる国際社会の一致したインドによる核実験実施への非難の姿勢や、パキスタンに核実験の自制を求める日本からの総理特使の派遣といった外交努力にもかかわらず、五月二十八日及び三十日の二度にわたり核実験を実施するに至った。
 両国による核実験は、南アジア地域の平和と安定に悪影響を及ぼすのみならず、核兵器拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)を中心とする国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、また、核兵器のない世界を目指す国際的な核軍縮努力に逆行するものであった。
 日本は、インド・パキスタン両国に対して両国の核実験実施は容認し得ず、極めて遺憾であるとの日本の立場を伝えるとともに、新規の無償資金協力(緊急・人道的性格の援助及び草の根無償を除く)及び新規の円借款の停止等の厳しい措置を決定した。
 国際場裡においては、六月四日のジュネーヴでのP5外相会合で共同コミュニケが発出されたほか、六月六日には、日本が共同提案国となった国連安保理決議一一七二が採択され、また同十二日にロンドンで開催されたG8外相会合でも共同声明が採択された。これらの一連の声明・決議等においては、インドとパキスタンによる更なる核実験の停止、両国のCTBT締結等、国際社会として両国に求める要求項目が明確化された。
 また、日本独自のイニシアティヴとしては、上記G8外相会合の際、小渕外務大臣より、インドとパキスタンの核不拡散体制への取組と両国間の緊張緩和・信頼醸成のための具体的方策を検討するタスク・フォースの設置を提案し、同会合が二回にわたりロンドンで開催された。また、国内外の有識者の参加を得て核不拡散・核軍縮について提言を行うことを目指す「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」が日本国際問題研究所と広島平和研究所の共催により、八月下旬に東京で、第二回会合が十二月に広島で開催された。
 こうした国際社会の動きに対し、核不拡散に対するインドとパキスタンの態度に一定の好ましい変化が現れており、九月の国連総会の一般討論演説においてパキスタンのシャリフ首相が九九年九月までのCTBT締結の方針を表明し、インドのヴァジパイ首相もCTBT締結に前向きなトーンの発言を行った。また、両国ともカットオフ条約の交渉に参加する考えを表明している。
 日本は対話を通じた両国への働きかけも重視し、七月末のASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合の際に高村政務次官とインドのジャスワント・シン国家計画委員会副委員長が会談した。また、九月の国連総会の際に高村外務大臣とパキスタンのアジズ外相が会談するとともに、十一月にアジズ外相が訪日し、高村外務大臣と会談した際、九九年九月までのCTBTの締結及びより厳格な核・ミサイル関連の輸出規制の法制化の二点について明確なコミットメントを示した。
 こうした状況を踏まえ、また、核実験実施後のパキスタン経済の悪化が地域の不安定化を招きかねないことを考慮し、日本は、当時交渉中であったIMFの対パキスタン支援プログラムに必要な国際金融機関の融資への支持を表明するとともに、上記二点のコミットメントに留意しつつ二国間経済協力の部分的な再開を検討し得る旨を表明した。
 一方、核実験後、インドとパキスタンの間において対話の再開に向けた動きが見られる。七月の第十回南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会合の際に、核実験後初の印パ首脳会談が行われ、九月の国連総会の際に再度首脳会談が行われ、印パ間の次官級協議の再開が合意された。これを受けて、十月に「カシミール問題」及び「平和と安全保障」に関する外務次官級協議、その後、経済、文化等、分野ごとに両国の担当次官級協議が開催されており、今後の印パ間での対話の進展が注目される。

 (2) 北朝鮮によるミサイル発射
 [事実関係及び日本の対応]
 八月三十一日正午頃、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。三十一日夜、日本政府は、このミサイル発射は日本の安全保障や北東アジアの平和と安定という観点及び大量破壊兵器の拡散防止という観点から極めて遺憾であり、このような北朝鮮の行為に対して厳重抗議するとの官房長官コメントを発表し、同日中に北朝鮮側に対して、ミサイル発射に対する遺憾の意を直接伝達した。また、翌九月一日、政府は、北朝鮮によるミサイル発射に対する日本の対応について、以下のような官房長官発表を行った。
―日米韓の間で意見・情報交換を進める。
―国連において然るべき形で本件問題を提起する可能性を探求する。
―北朝鮮側に遺憾の意を伝えて厳重抗議し、説明を求めると同時に、ミサイルの開発・輸出の中止を求める。
―国交正常化交渉の開催、食糧等の支援及びKEDOの進行をそれぞれ当面見合わせる。
―画像衛星活用についての調査の推進等、日本独自の情報収集能力を高める方策を検討する。
―弾道ミサイル防衛システム(BMD)の技術研究について引き続き検討するとともに、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)関連法案等の早期の成立・承認を期待する。
 これらの措置に加え、二日に北朝鮮の高麗航空に対して与えられていたピョンヤン―名古屋間の貨物チャーター九便の運航許可を取り消し、その後の運航も不許可とすることとした。
 一方、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)については、北朝鮮の核兵器開発を阻むための最も現実的かつ効果的な枠組みであり、これを崩壊させることによって北朝鮮に核兵器開発再開の口実を与えてはならないとの考慮の下、十月二十一日、政府は、KEDOへの協力を再開する旨を発表した。同時に、このことが北朝鮮への誤ったシグナルとならないよう、上記のKEDO関連以外の措置については維持する方針を明らかにした。
 [国際社会の動き]
 北朝鮮によるミサイル発射に対する日本の懸念は広く国際社会においても共有された。まず、日本の働きかけにより、九月十五日に国連安全保障理事会議長による対プレス声明が発出された。この声明は、安保理メンバーが八月の北朝鮮の行為は地域の漁業及び海運活動に危害をもたらし、域内諸国間の信頼醸成に逆行するとして懸念を表明するとともに、この発射が事前通報なしに行われたことへの遺憾の意を表明するものであった。
 また、九月二十二日の日米首脳会談において、北朝鮮のミサイル発射が日本の安全保障に直接関わるのみならず、北東アジアの平和と安定にとっても極めて憂慮すべき行為であり、北朝鮮に対してミサイル発射、開発、輸出を行わないよう種々の場において毅然たる態度で働きかけていくことが確認された。その二日後に、北朝鮮問題に関する日米韓三国外相協議が行われ、共同発表が行われた。この共同発表の中で、北朝鮮によるミサイル発射に対する非難が明示され、「合意された枠組み」及びKEDOを維持することの重要性が確認され、今後の米朝ミサイル協議を通じて北朝鮮にミサイルの発射、開発、関連物資・技術の輸出の中止を求めていくとの米国の決意が表明された。
 さらに、十月八日の日韓首脳会談において、両首脳は、国連安保理議長が安保理を代表して表明した懸念及び遺憾の意を共有するとともに、北朝鮮のミサイル開発が放置されれば、日韓及び北東アジア地域全体の平和と安全に悪影響を及ぼすことについて意見の一致を見た。
 なお、九月に開催された国際民間航空機関(ICAO)モントリオール総会において、また、十月に開催されたミサイル輸出管理レジーム(MTCR)ブダペスト総会においても、北朝鮮のミサイル関連活動に関する懸念が共有され、北朝鮮のミサイル発射に関連する議長声明、決議が各々採択された。

 (3) アジア及び世界の経済情勢
 [アジア経済情勢]
 九七年七月のタイ・バーツ下落に端を発した東南アジアの通貨・金融危機は、その後インドネシア、韓国等に波及し、世界経済全体にも影響を及ぼした。タイ、韓国については、IMF合意の着実な実施等により危機的状況を回避したが、その後インドネシアでは、輸出入の停滞、華人系住民に依存した流通システムの崩壊、食糧・医薬品の高騰・不足などの諸問題が深刻化し、次第に社会不安、ひいては暴動にまで発展し、五月にスハルト大統領の辞任に至るという政治不安までもたらす結果となった。このインドネシアの混乱は、進出していた外国企業等に働く外国人の一時的な海外退避を余儀なくさせ、多くの邦人企業が一時活動を停止せざるを得ない状況となった。
 今次のアジア通貨・金融危機の特徴としては、まず、大量かつ急激な短期資本の流出から発生した危機であること、また、民間の対外債務の返済圧力が過剰に高まったことが直接的要因となったこと等が挙げられる。さらに、金融システムの脆弱性、政治的不安定、心理的な要因等従来型の経済危機とは異なる要素も指摘されている。
 その後、アジア各国自身の努力とIMF、世界銀行等の国際機関や日本を中心とする各国の支援により通貨・金融市場は落ち着きを取り戻し、経常収支等のマクロ経済指標も一部改善し、九八年後半には多くの国が通貨面での危機的な状況をおおむね脱したと言える。一方、実体経済面では景気の停滞、失業者の増大が顕著であり、さらに、当初影響が小さかったフィリピン、マレイシア、ヴィエトナム等、他のアジア諸国にも影響が広がっている。
 こうしたアジア諸国が取り組むべき課題は、危機発生当初の最大の課題であった通貨の防衛から、経済再活性化、構造改革・人材育成、社会的弱者の救済、中長期的な通貨安定等に移っている。これらの課題の克服は当事国の努力が前提となるが、国際社会の支援も必要である。
 このような認識の下、日本は危機発生直後にIMFと協調して総額百九十億ドルの支援を表明、その後も九八年末までに世界最大の総額約八百億ドルにのぼる種々の支援策を表明し、これを着実に実施してきている。これらを通じた各課題への日本の取組は次のとおりである。
―経済再活性化
 資金不足や信認低下により、民間資本の呼び戻しを含む十分な景気刺激策や雇用対策を独力で実施することが困難な状況にあるアジア諸国に対し、日本は十月に三百億ドル規模の新宮澤構想、十一月のAPEC首脳会議・閣僚会議の際に米国と共同で発表した「アジアの成長と経済回復のためのイニシアティヴ」、十二月にはアジア各国の景気回復や雇用確保、構造改革に貢献するための追加的支援策である三年間で六千億円を上限とする特別円借款の創設等種々のアジア支援策を表明し、協力を行っている。
―構造改革と人材育成
 アジア諸国は、民間債務処理、不良債権処理を含む金融システム整備、構造調整、法整備、産業育成を進めようとしているが、そのために必要な人材やノウハウが不足している。日本は「日・ASEAN総合人材育成プログラム」や一万人の現地研修、官民合同の技能開発センターへの専門家の派遣等を通じ支援している。
―社会的弱者の救済
 経済危機によるしわ寄せが最も深刻な社会的弱者に対する救済の問題は、アジア各国の共通の課題として真剣に受け止められている。また、社会的弱者の困窮が引き金となって社会不安が高じて政治不安に至れば、経済危機の解決を一層遅らせることにもなる。日本はいち早くこの問題に注目し、例えばインドネシアに対してコメ支援、医薬品支援等に加え、迅速な資金拠出が可能な円借款を活用した社会的弱者支援策を積極的に実施している。
―通貨安定
 今回の危機を通じて、通貨の投機的取引を含む大規模かつ急激な資本移動の問題点が広く認識されるようになり、IMFを中心とした現行の国際金融システムについて改革が必要であることも明らかとなった。マレイシアはヘッジファンド等の影響を封じるための緊急避難措置として、九月に為替管理・資本流出規制措置等を決定した。アジアで他に同様の措置をとった国はないが、資本移動のモニタリングの強化やヘッジファンドに関する何らかの監視・規制を求める声が高まる中、日本は喫緊の課題である国際金融システムの改革に取り組もうとしている。
 今回の危機を通じ、日本の大規模なアジア支援についてアジア諸国から高い評価と期待が示されている。同時に、アジアのGDPの三分の二を占める日本が再びアジア経済の「先行の雁」となり、牽引者としての役割を果たすことについても高い期待が示されており、日本がアジア経済の発展と成長のために積極的に貢献していくことがますます重要となっている。
 [世界経済情勢]
 一方、九七年のアジア通貨・金融危機は、九八年に入ってロシアの金融危機をはじめとして中南米など新興市場諸国にも飛び火した。これは、日本のみならず、欧米諸国の経済にも影響を与え、世界的なデフレ懸念を引き起こした。
 まず、ロシアにおいて、原油価格の下落による経常収支の悪化、財政赤字の増大等のファンダメンタルズの悪化を背景とした銀行システムへの不安が深刻化し、外為・株式市場等の金融セクター全般にこれが波及し、八月、ロシア政府・中央銀行はルーブルの切り下げの実質的容認、一部対外債務返済凍結等の一連の措置を発表した。その後、為替・株価の下落は一時収まったが、IMFとの協議不調により融資は凍結されたままで、ロシア経済は依然厳しい状況に置かれている。
 中南米の多くの国は経常赤字や財政赤字に悩まされ、対外債務の返済金まで外資に依存せざるを得ない状況にあるにもかかわらず、大量の資金が国外に流出した。例えば、ブラジルでは八、九月の二か月間で約二百五十億ドルの外貨資金が流出するという危機に瀕した。
 このような事態に対し、政府は高金利対策や財政調整プログラム等相次いで対策を発表、G7、IMF等による総額四百十億ドル(国際機関を通じた支援を除いた日本の二国間支援額は十二億五千万ドル)を上回る支援を発表したことにより、大規模な経済混乱は遠のいた。しかし、中南米経済の不安定化は、最も密接な関係にある米国経済等を通じて世界経済をも揺るがしかねず、引き続きその動向に注視していく必要がある。
 また、新興市場諸国の経済・金融危機は先進国にも波及し、株価が一時的に下落するなど、日本のみならず欧米諸国においても景気減速の兆候が現れた。例えば、米国では、八月末にはピーク時(七月中旬)から二〇%近く株価が下落し、九月下旬には大手ヘッジファンド(LTCM:ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)の経営破綻が明らかになるなど、先行きへの不透明感が強まった。このような兆候に対して、先進各国政府は協調利下げ等の対抗措置を講じた。
 今回のアジア経済危機とその世界規模での連鎖反応により、既存の国際経済システムの脆弱性が露呈したが、これを克服するためには金融分野にとどまらず、貿易、投資、開発等の分野における既存のシステムの見直しに早急に取り組む必要がある。また、経済危機は、国によっては政権担当者の交代など政治問題に発展しているのみならず、当該国の社会的弱者層への大きな打撃となっており、社会的側面からの取組が必要である。
 日本としては、アジア経済危機に対する様々な支援策を実施している経験から、危機の回避、危機に直面した国がとり得る対応、迅速かつ有効な国際支援のあり方、被支援国に課すべきコンディショナリティ等について、国ごとのきめ細かい対応が必要と考えており、こうした議論に貢献できるよう取り組んでいる。また、社会的弱者に配慮しつつ、マクロ経済政策運営、金融技術、裾野産業の育成等の面での技術協力を強化していく必要がある。

 (4) イラク情勢
 九七年六月頃から協力拒否や妨害の事例が目立っていたが、九八年一月、イラク政府は査察団の国籍別構成が米英に偏っていることなどを理由に、大量破壊兵器廃棄に関する国連特別委員会(UNSCOM)の査察を拒否した。国際社会はイラクに対しUNSCOMとの完全な協力を求めたが、イラク側が応じなかったため、米国政府は武力行使も辞さずとの姿勢を示すなど、イラク情勢は緊迫化した。
 これに対し、二月、アナン国連事務総長が調停のためイラクを訪問し、イラク政府との間でUNSCOM等の査察への協力に関する了解覚書に合意・署名した。これを受けて、三月初めに、この合意を承認し、イラクに対し関連安保理決議に対するいかなる違反もイラクにとって最も深刻な結果をもたらすであろう旨を警告する安保理決議一一五四が採択され、危機は回避された。
 イラクは、アナン事務総長との合意以降、夏まではUNSCOMとIAEA(国際原子力機関)に対する協力姿勢を継続した。しかし、八月初め、バトラーUNSCOM委員長がバクダッドを訪問した際に交渉が決裂し、十月末、イラクはUNSCOMに対する全面的な協力停止を決定した。このため危機は再燃し、十一月、安保理はイラクの対応は関連安保理決議に対する重大な違反である旨非難する決議一二〇五を採択した。この際、米英はイラクが協力拒否を続ける場合には、武力行使をも辞さずとの断固たる態度を示したこともあり、イラクはUNSCOMに対する協力再開に合意し、危機はとりあえず再び回避された。
 しかし、その後もイラクがUNSCOMによる査察に協力しないケースが再発し、十二月十五日、UNSCOMより、イラクは約束した完全な協力をUNSCOMに対して提供しなかったとの報告書が安保理に提出された。これを受け、同十七日、米英はイラクの百か所の軍事目標等に対し巡航ミサイル等による武力攻撃(「砂漠の狐作戦」と名づけられた。)を実施した。この武力攻撃は、四日後の二十日、クリントン米大統領とブレア英首相が所期の目的を達成した旨を宣言するとともに終了した。
 米英による武力攻撃後、イラク政府は、UNSCOM及びIAEAの査察・監視に対する協力を拒否するとの立場をとっており、今後イラクに課せられた大量破壊兵器廃棄義務をはじめとする関連安保理決議上の義務の履行をいかに確保していくかが国際社会にとって課題となっている。また、十二月二十八日及び三十日の両日、イラクの北部及び南部のいわゆる飛行禁止区域を飛行中の米軍機及び英軍機に対し、それぞれイラクが地対空ミサイルを発射し、米軍機がイラクのミサイル基地に反撃する事件が発生しており、再度イラク情勢が緊迫化することも懸念されている。
 一方、イラク国内では、八年以上に及ぶ国連制裁の結果、物資の不足やインフレなどの経済状況の悪化が進んでいると見られる。この状況に対応すべく、九六年十二月、食糧や医薬品等の人道物資購入を可能とするためにイラクの限定的な石油輸出を認める安保理決議九八六(採択は九五年四月)の実施が開始された。同決議は百八十日ごとに更新されてきており、九八年六月からは安保理決議一一五三により、限定的石油輸出の限度額がそれ以前の二十億ドルから五十二億五千六百万ドルに拡大されている。しかし、国際市場における石油価格の低迷等により、九八年六月から十二月の六か月間においても、限定的石油輸出による収入は十分に確保できていないことから、イラク国民の窮状の更なる悪化も懸念されている。

 (5) 第二回アフリカ開発会議(TICADU)
 日本は、十月十九日から二十一日まで国連及びアフリカのためのグローバル連合(GCA)との共催により、「第二回アフリカ開発会議」(TICADU)を開催した。同会議には、八十か国(アフリカ五十一か国、アジア十一か国、北米及び欧州十八か国)、四十の国際機関、二十二のNGOが参加し、アフリカに明るい未来をもたらすことは可能だとの信念のもとに、教育、医療、民間セクター開発、女性の社会参画、平和等を通じたアフリカ自身の手による国づくりを目指した。
 近年、サブ・サハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南に位置する四十七か国)の約二十か国において、年間のGNP成長率が五%を超え、政治面でも複数政党制下での選挙が行われる国の数が増加している等の明るい面が見られる一方、大半の国は、グローバリゼーションから取り残され、同地域の人口の四割はいまだに一日一ドル以下の生活を余儀なくされている。また、紛争の多発、難民の問題なども依然として深刻である。
 TICADUでは、この両面にわたる現状を踏まえ、サブ・サハラ・アフリカ諸国が「オーナーシップ(自助努力)」及び援助国・機関との「パートナーシップ(協調)」の下で、国づくりに取り組むことへの支援を強化するため、日本やアジアの国づくりを大きな参考として提示し、教育、保健等を通じた人づくり、女性の社会参画、農業、民間セクター支援等に関する二十一世紀に向けての「東京行動計画」を採択した。また、同会議において、アフリカ開発への支援に弾みを与えるために、日本は例えば次のような新たなアフリカ支援プログラムを提示した。
―教育・保健医療・水供給分野で、今後五年間を目途に九百億円程度の無償資金協力を供与(社会開発/人づくり)。
―アジア・アフリカ投資情報サービス・センターの設置、アジア・アフリカ・ビジネス・フォーラムの開催、債務管理能力を向上させるための人材育成及び債務救済無償資金協力の対象拡大を検討(経済開発)。
―南部アフリカでの地雷除去支援及び国連開発計画(UNDP)、アフリカ統一機構(OAU)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等の協調でガヴァナンス(良い統治)、紛争分野の支援(開発の基盤)。
―今後五年間で新たに二千人のアフリカ人を対象にした研修事業(南南協力)。
―アフリカ人づくり拠点の設置、開発研究機関ネットワーク構想(協調の強化)。
 同会議において、アフリカ諸国がその潜在力を最大限生かしつつ自ら国づくりに取り組むべきであり、また、アフリカ諸国が援助国・機関と対等なパートナーとして開発を進めていくべきであるとの認識が共有されたことは大きな成果であった。
 さらに、会議全体を通じて最近のアフリカの経済動向や民主化を踏まえて将来への明るい展望を打ち出せたことは、アフリカに対する悲観的な見方が根強い中で、国際社会に対する重要なメッセージとなった。今後は、オーナーシップとパートナーシップの考え方の下でアフリカ諸国を含む国際社会全体が「東京行動計画」及びTICADU開催時に作成・配布された、アフリカ開発プロジェクトの中で行動計画を具体化する上で参考となるプロジェクトを集めた「例示リスト」を実際の取組に結びつけていくことが期待されている。

3 アジア太平洋の安定と繁栄のための取組

 (1) 日米関係
 [総 論]
○ 日本外交の基軸としての日米関係―アジア太平洋における安定と繁栄に不可欠な基盤、幅広い事項についての協議・協力の実施。
○ 日米両国の緊密な連携―アジア経済危機、インド・パキスタンによる核実験、北朝鮮のミサイル発射等への対応に当たり緊密な連携を保ちつつ、協力して取組。クリントン大統領訪日(十一月)、北朝鮮問題や国際金融システムの強化に関する日米の緊密な連携や、中東和平等の二国間関係の枠を越えた世界の平和と繁栄に対する両国の貢献を確認。リチャードソン国連大使来日(二月)、オルブライト国務長官来日(四月及び七月)、英国において日米首脳会談及び外相会談開催(五月)、高村外務大臣訪米(八月)、ニューヨークにおいて日米安全保障協議委員会及び日米首脳会談の開催(九月)など緊密な対話の実施。
○ 日米安保体制―第二章第一節(2)。
 [日米経済関係]
○ 日本経済の早期回復及び世界経済の安定に向けた日米協調が焦点。米国は、アジア経済及び世界経済の回復と安定を図るためにも、日本が内需主導の景気回復を早期に実現することが重要であるとして、金融システムの安定化、財政刺激策及び更なる規制緩和の実現を強く期待。九月と十一月の首脳会談では、世界経済及びアジア経済の安定と繁栄のために、日米の協調が不可欠であるとの認識で一致。十一月、「アジアの成長と経済回復のためのイニシアティブ」を発表。
○ 規制緩和―「規制緩和及び競争政策に関する強化されたイニシアティブ」の下での対話の成果を、五月、「共同現状報告」として提出。十月、規制緩和等に関する要望事項を互いに提出。
○ 鉄鋼―米国鉄鋼業界及び労組により、日本などからの熱延鋼板の対米輸出が急増しているとして、九月、アンチ・ダンピング提訴、商務省及び国際貿易委員会(ITC)の調査実施。
○ 保険―七月、主要分野の規制緩和に関する基準達成、二〇〇一年一月一日に第三分野での激変緩和措置が解除されることに。
○ 港湾運送―九七年の米国連邦海事委員会(FMC)の制裁措置に関し、七月、日米政府間の協議を開催。
○ 航空―一月、日米航空協議大筋合意、四月の書簡の交換により最終的に決着。
 [広がる日米協力]
○ 日米コモン・アジェンダ―三月、「コモン・アジェンダ・オープン・フォーラム」開催、テーマは「健康」と「保全」、日米両国政府と民間やアジア太平洋諸国を含む第三国との相互対話の一層の強化、広報活動等を通じた社会的環境の整備の必要性などについて議論。十一月、コモン・アジェンダ円卓会議主催のインドネシア環境教育プロジェクト開始。
○ 電子商取引、コンピューター二〇〇〇年問題、全世界的衛星測位システムの民生利用、民主主義に関する取組などでの協力の拡大・強化。

 (2) 日露関係
○ 対露外交の基本的考え方―東京宣言に基づいて北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、日露関係の完全な正常化を達成するために最善の努力を払うとともに、ロシアの改革努力を支持しつつ、様々な分野における協力と関係の強化を図ること。領土問題については、北方四島の帰属の問題の解決に向けての確実な前進と、四島交流や四島住民支援等問題解決のための環境の整備を「車の両輪」のように同時に図っていく。
○ 九七年のクラスノヤルスク首脳会談の成果を受け、日露関係はあらゆる分野で着実に進展。平和条約交渉については、平和条約締結問題日露合同委員会が活発に活動、経済分野でも「橋本・エリツィン・プラン」を着実に実施。
○ ハイレベルでの「間断なき対話」の継続―小渕外務大臣訪露(二月)、エリツィン大統領訪日(四月)、バーミンガム・サミットの際の日露首脳会談(五月)、G8外相会合やARF閣僚会合の際の日露外相会談(五月、六月、七月)、キリエンコ首相訪日(七月)、橋本総理大臣外交最高顧問訪露(九月)、高村外務大臣訪露(十月)、小渕総理大臣訪露(十一月)。
○ エリツィン大統領訪日(四月、静岡県川奈)―両首脳間の個人的な信頼関係が一層の深化。平和条約交渉について、領土問題解決のための日本側の提案が示されたほか、「平和条約が東京宣言第二項に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、二十一世紀に向けて日露の友好協力に関する原則等を盛り込むべきこと」で一致(川奈合意)。
  経済分野では、ロシアへの投資推進のために両国が協力して投資会社を設立することを検討することで一致し、また、引き続き「橋本・エリツィン・プラン」を拡充しつつ着実に実施していくことで一致。
○ 小渕総理大臣訪露(十一月)―「日露間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言」に署名、二十一世紀に向けて政治、経済、安全保障、文化、国際協力等、あらゆる分野において日露間の協力を一層強化し、日露関係を「信頼」の強化を通じて「合意」の時代へと発展させていくという両国の決意を謳う。
  平和条約交渉については、四月の日本側提案に対するロシア側の回答が提示され、日本側がこれを持ち帰って検討し、九九年の首脳会談までに検討結果を回答することに。東京宣言並びにクラスノヤルスク合意及び川奈合意に基づいて、平和条約を二〇〇〇年までに締結するよう全力を尽くすとの決意を再確認し、交渉を加速することで一致。平和条約締結問題日露合同委員会の枠内に国境画定委員会と共同経済活動委員会を設置すること、旧島民及びその家族による北方四島へのいわゆる自由訪問を実施していくことで一致。
  小渕総理大臣は日露協力に関する新しい施策(世界銀行との協調融資による十五億ドルの輸銀アンタイド・ローンの枠内での八億ドルの融資の実施など)を表明。日露投資保護協定や観光、環境等の分野での日露協力に関する覚書等の署名・発表。
○ 夏川統合幕僚会議議長とクヴァシニン参謀総長の相互訪問、捜索及び救難に関する自衛隊とロシア軍との共同訓練の実施等、防衛交流も進展。北方四島周辺水域における日本漁船の操業に関する枠組み協定に署名、操業開始。ロシアにおいて「日本文化祭98」実施。

 (3) 日中関係
 [日中間の対話]
○ 江沢民国家主席訪日―日中平和友好条約締結二十周年に実現。二国間の政治・経済から国際情勢まで、幅広い分野について率直で突っ込んだ意見交換。日中共同宣言(「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」に基づき、国際・地域情勢及び日中関係全般についての広範な共通認識に言及)取りまとめ。共同プレス発表(北京・上海高速鉄道、シルクロード文化遺跡の保存、人権、不拡散、治安・警察交流等を含めた幅広い具体的な日中協力の内容)発出。
○ その他、胡錦濤国家副主席訪日(四月)、高村外務大臣訪中(八月)。防衛担当者でも、遅浩田国防部長訪日(二月)、久間防衛庁長官訪中(五月)、張万年軍事委員会副主席訪日(九月)。
 [日中経済関係]
○ 約六百四十億ドルの貿易総額、中国は日本にとって第二位、日本は中国にとって第一位の貿易相手国。九月に東アジア経済に関する次官級の日中ハイレベル協議が実現。中国のWTO加盟については、九七年にモノの貿易について実質的な合意が成立、中国はサービス貿易分野での交渉を進めるべく努力中。
○ 対中経済協力―江沢民主席の訪日の際、第四次円借款の「後二年」分として、九九〜二〇〇〇年度に計三千九百億円を目途とする円借款を供与することで一致。
○ 漁業分野―新たな日中漁業協定、四月末に国会承認。早期に同協定を発効させるよう両国間で協議中。
 [台湾との関係]
○ 民間の地域的な関係、すなわち非政府間の実務関係として維持。十月に中台間の対話が再開。
 [二十一世紀に向けて]
○ 両国間の諸懸案(旧日本軍の遺棄化学兵器の問題、東シナ海における大陸棚及び排他的経済水域の境界画定問題、海洋調査活動等を含む海洋法の問題、歴史認識、尖閣諸島を巡る問題)に着実に取り組みつつ、若い世代を含む種々のレベルの交流を拡大しながら相互理解をより一層深め、国際社会の諸課題についても協力していくことが重要。
  歴史認識については、日中共同宣言の中で、双方が過去を直視し歴史を正しく認識するとの基礎の下で両国の友好関係を発展させていくことを確認、こうした基本的姿勢を堅固に維持していくことが重要。尖閣諸島をめぐる問題については、尖閣諸島が日本固有の領土であり、現にこれを有効に支配しているとの日本の基本的立場を踏まえて今後とも対処していく方針。

 (4) 朝鮮半島
 [日韓関係]
―二十一世紀に向けたパートナーシップの構築
○ 金大中(キム・デジュン)大統領訪日(十月)―「日韓共同宣言―二十一世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」に署名、また、過去の問題に区切りをつけて二十一世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを構築することによって、両国関係を更に高い次元の友好協力関係に発展させていくことで一致。十一月には鹿児島で日韓閣僚懇談会を開催。
―日韓経済関係
○ 厳しい経済状況に直面する韓国支援のため、日本輸出入銀行による十億ドル相当円の支援の実施(五月)、更に三十億ドル相当円の輸銀支援の実施を表明(十月)。日本の官民投資環境調査団が訪韓(五月)、韓国の官民合同の投資誘致団が来日(十月)。官民合同の投資促進協議会の開催(十二月)など、日韓間で投資促進のための取組が活発化。日韓閣僚懇談会では、日韓投資協定締結のための予備的協議を行うことで一致。
―日韓漁業関係
○ 新たな漁業協定―九月下旬基本合意、十一月二十八日に署名、十二月十一日に国会承認。日韓大陸棚北部境界画定協定に定める大陸棚の境界線を漁業に関する主権的権利を行使する水域の境界線(漁業暫定線)とし、その線の北部(日本海)及び南部(東シナ海)にそれぞれ暫定水域を設定すること等を定める。
 [日朝関係]
―日朝間の懸案事項
○ 第二次世界大戦後の不正常な関係を正し、朝鮮半島の平和と安定ひいてはアジア太平洋の安定と繁栄に資するとの観点から、米韓と緊密に連携しつつ北朝鮮との関係に対処していくとの方針。
○ 日本人配偶者の故郷訪問―三回目については六月、朝鮮赤十字会中央委スポークスマンが訪問の申請を取り消した旨発表し実現せず。
○ 日本人拉致疑惑―四月、橋本総理大臣より北朝鮮最高指導者に対して問題解決に向けた真剣な対応を呼びかけ。朝鮮赤十字会中央委員会スポークスマンは、日本捜査当局が北朝鮮に拉致された疑いがあると判断している七件十人の日本人は北朝鮮内には存在しないとの調査結果を発表。
―南北関係と四者会合
○ 南北間の和解・交流を積極的に進める金大中大統領の対北朝鮮政策―三原則(「武力挑発は拒否する」、「吸収統一はしない」、「和解と協力を可能な分野から促進する」)、国際的なコミットメントの遵守の立場提示を示している。北朝鮮半潜水艇侵入・撃沈事件等の発生。鄭周永(チョン・ジュヨン)現代(ヒョンデ)グループ名誉会長訪朝(六月、十月、十一月)。
―米朝関係
○ 八〜九月に米朝協議の実施、九月に合意の主要点(米朝ミサイル協議と米朝テロ協議の再開、米朝間の「合意された枠組み」の完全な履行の再確認、四者会合第三回本会談の開催及び北朝鮮の秘密核施設疑惑に関する真剣な議論の継続)発表。九月末以降、テロ協議、ミサイル協議、秘密核施設疑惑に関する協議の実施、十月、四者会合第三回本会談の開催。
―朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)
○ 七月、軽水炉プロジェクトの経費負担についてKEDO理事会メンバー(日、韓、米、EU)間で実質的に意見一致、その後理事会決議案の採択は北朝鮮によるミサイルの発射を受けて先延ばしに。日本は、十月二十一日にKEDOへの協力を再開、KEDO決議案に署名。所要経費見積は四十六億ドルとされ、日本は一千百六十五億円(コミット時の十億ドル相当円)を負担する意思を表明。

 (5) 東南アジア
 [ASEAN諸国]
○ ASEAN地域フォーラム(ARF)や二国間の安保対話、防衛交流を通じた関係強化―ARF閣僚会合(七月、マニラ)、小渕外務大臣及び高村政務次官が参加、インドとパキスタンによる核実験、アジア経済危機、東南アジア各国情勢等について意見交換。タイとの間で安保対話と防衛定期協議の開催。
○ ASEAN諸国の経済再生支援―日・ASEAN外相会議(七月)、APEC首脳会議・閣僚会議(十一月)、日・ASEAN首脳会議(十二月)等の場で、日本経済の再生への強い決意、できる限りのアジア支援を継続し、「連帯基金」等を通じた日・ASEAN協力を強化するとの意図を表明。ASEANとの首脳会議で小渕総理は、二十一世紀に向けての対話と協力の促進など四項目からなる「小渕・ASEANイニシアティブ」を表明。
 [カンボディア]
○ 総選挙の実施と日本の役割―国外出国中のラナリット殿下の参加なしに選挙が行われるのではないかとの懸念の高まり。日本は事態打開のための四項目提案(ラナリット殿下とポル・ポト派との軍事協力関係の中止、政府軍とラナリット派軍との即時停戦、ラナリット殿下の裁判の早期実施と国王による恩赦付与、ラナリット殿下の選挙参加)を行い、二月、高村外務政務次官がカンボディア及びタイを訪問、フン・セン第二首相及びラナリット殿下に働きかけを実施。
 両当事者が日本の提案を受け入れ、三月にラナリット殿下が帰国。日本は、投票箱、投票所機材等の購入や投開票スタッフ手当等のための資金協力、短期国際監視員三十二人と専門家一人の派遣等、人的支援を実施。
○ 七月二十六日選挙実施、国際監視団により「おおむね自由・公正」に行われたと評価。サム・ランシー党及びFU党の選挙結果に対する抗議行動に対し、日本はカンボディアの全指導者に対し、カンボディア国民の意思である選挙結果の尊重と早期の新政府の樹立及びシハヌーク国王の下での協力を呼びかけ。十月、町村外務政務次官がカンボディアを訪問。
○ 十一月、国王主宰の下で人民党とFU党との間で連立政権樹立等を合意、十一月三十日に新政府(フン・セン氏が首相)樹立。十二月、国連代表権の回復やASEAN加盟の決定等が実現。同月小渕総理大臣はフン・セン首相と会談、九九年二月に東京でカンボディア支援国会合を開催し、その際フン・セン首相を東京に招待したい旨を伝達。

4 グローバルな取組―国際連合

 [グローバルな取組の強化と国連改革の必要性]
○ 国連の機能強化の必要性。日本は、平和と開発の問題が相互に密接に関わることから、安保理改革と開発面での改革、またそれを支える財政面での改革の三つの分野が均衡のとれた形で進められることを主張。アナン事務総長は、九月の総会演説の中で、「二〇〇〇年総会」において、二十一世紀の国連の役割とあり方を見直すことを提案。
 [安保理改革]
○ 様々な面でグローバルな貢献を行い得る新たなメンバーを加え、安保理の作業方法等を改善していくことが必要。
○ 「安保理改革に関する作業部会」等の場における議論を通じて、安保理の実効性と正統性を向上させるために常任・非常任理事国双方の議席の拡大が必要であることについてはおおむね各国の意見が一致、運営方法の改善や透明性の向上を図る方法についても議論は進展。日独の常任理事国入りについては幅広い支持。しかし、拡大後の安保理の規模、新常任理事国への拒否権付与や現在の常任理事国の拒否権維持の是非、途上国からの新常任理事国の選出方法などの問題を中心に議論が継続。
○ 日本は、グローバルな責任を担う能力と意思を有する限定された数の国を新たに常任理事国に加え、安保理の機能を強化することや非常任理事国の議席数の適当な増加により安保理の代表性を強化することの必要性、各国の政治的決断の必要性等を主張。九月の国連総会演説において、小渕総理大臣は、包括的合意の早期成立に向けて各国の英断を呼びかけるとともに、憲法の禁ずる武力の行使は行わないという日本の基本的な考えの下で、多くの国々の賛同を得て安保理常任理事国として一層の責任を果たす用意があるとの従来の立場を改めて表明。
 [開発分野の改革]
○ 先進国と途上国の「グローバル・パートナーシップ」に基づく冷戦後の新しいアプローチを通じて開発問題に効果的に取り組む必要があるとの認識の下、日本は「新たな開発戦略」を提唱、国連諸機関間の円滑な連携を図る改革の必要性を主張。六月、開発協力に関する国際シンポジウム及び新開発戦略に関する東京会議を開催、十月、第二回アフリカ開発会議(TICADU)を国連等と共催。
 [財政分野の改革]
○ 分担金滞納などにより引き続き深刻な財政状況。日本の分担率は、九九年には一九・九八四%、二〇〇〇年には二〇・五七三%に。国連行財政諮問委員会(ACABQ)選挙でも日本候補者が多数の支持票を集めて当選。滞納金の解消、分担金負担の衡平化は引き続き重要な課題。
 [国際刑事裁判所]
○ 国際刑事裁判所は、国際社会にとって最も深刻な罪(集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪等)を犯した個人を国際法に基づいて訴追し、処罰するための常設の国際刑事法廷。九八年六月から七月にかけてローマで行われた外交会議において、裁判所の設立条約が賛成多数で採択。

第2章 分野ごとに見た国際情勢と日本外交

第1節 平和と安定の確保

1 日本の安全の確保
@ 日本の安全保障政策の三つの柱―日米安保体制、適切な防衛力整備、国際平和と安全を確保するための外交努力。
A 日米安保体制―意義、新たな「日米防衛協力のための指針」の実効性確保(関連法案提出など)、技術・装備面での防衛協力、沖縄における米軍施設・区域の扱い。
B 地域の信頼醸成に向けた取組―域内対話の緊密化、ARFの活動。

2 軍備管理・軍縮及び不拡散体制の強化
@ 大量破壊兵器―カットオフ条約交渉の開始、究極的核廃絶決議案の採択等。
A 通常兵器―オタワ条約の批准、地雷除去・犠牲者支援、小火器問題。

3 世界平和の実現に向けた取組
 包括的アプローチの意義、紛争予防(考え方、具体的取組)、国際平和協力(PKOの現状、日本の協力)、難民問題、コソヴォ情勢。

第2節 世界経済の繁栄の確保と途上国の開発問題

1 世界経済の繁栄の確保
@ グローバリゼーションの進展、世界経済問題への取組(国際金融・通貨制度の強化、多角的な貿易・投資の枠組み整備)、新たな課題への対応。
A 多角的貿易体制(WTO)―第二回閣僚会議の開催、次期自由化交渉に向けた取組など。
  地域経済協力―APECクアラルンプール会合など。
B エネルギー・食糧問題。

2 途上国の開発問題と日本の政府開発援助
@ ODAを巡る動向―ODA実績と透明性・効率性の向上に向けた改革努力。
A 九八年の動き―アジア経済危機への対処、対アフリカ援助、新開発戦略。

第3節 より良い地球社会の実現に向けた取組

(1) 人間の安全保障―考え方、具体的取組。
(2) 以下のそれぞれの分野における国際社会の取組や日本の協力を説明。
@ 地球環境問題―国際的取組(COP4など)と日本の協力。
A テロ―事件の頻発と国際協力の強化。
B 人権の擁護及び民主化の促進。
C 国際組織犯罪、薬物。
D 原子力安全の確保及び科学技術分野における国際協力。

第3章 主要地域情勢

 以下のそれぞれの地域における主要な動向及び日本との関係を概観。
@ アジア及び大洋州―中国内政・外交、北朝鮮情勢、インドネシア情勢など。
A 北米―米国内政・外交、日加関係。
B 中南米―政治・経済情勢(ブラジル経済危機など)、民主化を巡る動き、ハリケーン災害と日本の支援。
C 欧州―統合の進展(ユーロ導入に向けた動き、EU拡大など)、NATO拡大と新戦略概念、経済情勢、日欧関係の進展。
D ロシア・NIS諸国―ロシア内政・外交、ロシア経済情勢の深刻化、NIS諸国情勢。
E 中東―中東和平(ワイ・リバー合意)、イラン情勢など。
F アフリカ―政治面の進展と紛争などの課題、開発問題、日本との関係。

第4章 国際交流と広報活動

1 国際交流の推進
 国際交流の意義、青少年交流の拡大、多国間文化交流の動き、文化遺産保存への協力(世界遺産委員会の開催)、地方自治体・民間団体との一層の連携の必要性。

2 広報活動の推進
 国内外における広報活動の強化・推進:外交記録の公開、インターネットなどの利用、諸外国の対日理解の促進。

第5章 外交体制

1 外交実施体制
 強化の必要性、機構定員、予算面での努力。

2 領事体制
 海外安全対策の強化、在外選挙準備など。








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消費支出(全世帯)は実質三・八%の減少


―平成十一年二月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年十一月以降十二か月連続の実質減少となった後、十年十一月は実質増加、十二月は実質減少、十一年一月は実質増加となり、二月は実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成十年十一月、十二月は実質減少となったが、十一年一月は実質増加となり、二月は実質で前年と同水準となった。
 消費支出は、平成十年七月以降四か月連続の実質減少となった後、十一月は実質増加、十二月は実質減少、十一年一月は実質増加となり、二月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十四万八千二百三十九円。
 前年同月に比べ、名目、実質ともに二・九%の減少。














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消費者物価指数の動向


―東京都区部(四月中旬速報値)・全国(三月)―


総 務 庁


◇四月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・〇となり、前月比は〇・四%の上昇。前年同月比は一月〇・一%の上昇、二月〇・二%の下落、三月〇・四%の下落と推移した後、四月は〇・二%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・八となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は一月〇・一%の下落、二月〇・一%の下落、三月〇・二%の下落と推移した後、四月は〇・二%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇三・〇となり、前月に比べ〇・八%の上昇。
    生鮮魚介は一・九%の上昇。
     <値上がり> いか、かつおなど
     <値下がり> かれい、まぐろなど
    生鮮野菜は一二・一%の上昇。
     <値上がり> ほうれんそう、レタスなど
     <値下がり> ねぎ、えのきだけなど
    生鮮果物は二・二%の下落。
     <値上がり> いちご、りんご(ふじ)など
     <値下がり> オレンジ、グレープフルーツなど
(2) 光熱・水道は一〇〇・五となり、前月に比べ〇・七%の下落。
    電気・ガス代は一・〇%の下落。
     <値下がり> 電気代など
(3) 家具・家事用品は九三・一となり、前月に比べ〇・三%の下落。
    家事雑貨は〇・九%の下落。
     <値下がり> コーヒーわん皿(輸入品)など。
(4) 被服及び履物は一〇三・八となり、前月に比べ二・五%の上昇。
    シャツ・セーター・下着類は五・四%の上昇。
     <値上がり> 婦人Tシャツ(半袖)など
(5) 保健医療は一一四・八となり、前月に比べ〇・三%の上昇。
    保健医療サービスは〇・七%の上昇。
     <値上がり> 診察料
(6) 教育は一〇七・八となり、前月に比べ一・二%の上昇。
    授業料等は二・〇%の上昇。
     <値上がり> 私立大学授業料など

三 前年同月との比較

 ○ 上昇した主な項目
   生鮮果物(七・五%上昇)、授業料等(二・〇%上昇)、上下水道料(三・九%上昇)
 ○ 下落した主な項目
   生鮮野菜(五・三%下落)、教養娯楽サービス(一・五%下落)、肉類(二・九%下落)、設備修繕・維持(二・二%下落)
   (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・八となり、前月と変わらなかった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・七となり、前月と変わらなかった。

◇三月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・〇となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は十二月〇・六%の上昇、一月〇・二%の上昇、二月〇・一%の下落と推移した後、三月は〇・四%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は十二月〇・三%の下落、一月〇・一%の下落、二月〇・一%の下落と推移した後、三月は〇・一%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇二・七となり、前月に比べ〇・五%の下落。
    生鮮魚介は〇・八%の上昇。
     <値上がり> いか、かれいなど
     <値下がり> えび、かきなど
    生鮮野菜は七・〇%の下落。
     <値上がり> にんじん、だいこんなど
     <値下がり> ほうれんそう、キャベツなど
    生鮮果物は二・二%の下落。
     <値上がり> バナナ、みかんなど
     <値下がり> いちご、なつみかんなど
(2) 家具・家事用品は九四・六となり、前月に比べ〇・二%の下落。
    家事雑貨は〇・四%の下落。
     <値下がり> コーヒーわん皿(輸入品)など
(3) 被服及び履物は一〇二・二となり、前月に比べ三・四%の上昇。
    衣料は七・〇%の上昇。
     <値上がり> 婦人ブレザーなど

三 前年同月との比較

 ○ 上昇した主な項目
   授業料等(二・一%上昇)、生鮮果物 (五・一%上昇)、たばこ(七・八%上昇)
 ○ 下落した主な項目
   生鮮野菜(一四・一%下落)、自動車等関係費(一・七%下落)、家賃(〇・三%下落)
   (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・三となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・三となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。


















不正改造車を排除する運動
「しない させない クルマの不正改造!」

 暴走行為や過積載などを目的とした自動車やオートバイの不正改造車は、道路交通の秩序を乱したり、排気ガスなどの環境問題を引き起こしたりしています。
 このような不正改造車をなくすため、運輸省では、関係省庁、自動車関係団体の協力を得て、「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開しています。特に、六月一日〜三十日を重点期間とし、自動車ユーザーへの不正改造防止の呼びかけや、不正改造車を対象とした街頭検査、事業者に対する指導の強化など、さまざまな活動を実施します。
 不正改造の防止についてご理解のうえ、自動車を正しくご利用ください。
●不正改造の例
 <乗用車>
・灯火類の灯光の色を変える
 制動灯、方向指示器などは、それぞれ灯光の色が定められており、その他の色を使用すると他車の誤視を招き、事故を誘発する恐れがあります。
 基準は制動灯→赤色、方向指示器→橙色、尾灯→赤色、車幅灯→白色・淡黄色・橙色、後退灯→白色、後部反射器→赤色。そのほか、取り付け位置や明るさなども規定されています。
・タイヤおよびホイールの車体(フェンダー)の外へのはみ出し
 適切なタイヤやホイールを使用しないと、車体やブレーキ機構などと干渉したり、車体から突出して歩行者等に危害をおよぼす恐れがあるなど、たいへん危険です。
・運転者席および助手席の窓ガラスへの着色フィルムの貼付
 運転者席および助手席の窓ガラスに濃い色の着色フィルムを張ると、夜間などに周囲の状況を確認しにくくなるなど、たいへん危険です。
 着色フィルムを張った状態での可視光線透過率が七〇%未満のものは貼付できません。
 <ダンプカー>
・荷台さし枠の取り付け
 さし枠を取り付けて過積みの状態で走行すると、制動停止距離が延びるなどたいへん危険です。
・突入防止装置の切断・取り外し
 突入防止装置(リアバンパー)は、後ろから追突した自動車の乗員の被害軽減のため、その寸法や強度などが規定されています。
・排気管の開口方向違反
 排気管を横に向けると、排気ガスが歩行者等に直接かかることになります。排気管は、車両中心線に対して左右三十度以内に取り付けることが必要です。
 <オートバイ>
・消音器(マフラー)の切断・取り外し
 消音器を切断したり取り外したりすると、周辺に生活する人の生活環境を破壊し、騒音公害の原因になります。

 不正改造車に関するお問い合わせは、各地方運輸局までご連絡ください。
(運輸省)



    <6月30日号の主な予定>

 ▽通商白書のあらまし………………………………………通商産業省 

 ▽法人企業の経営動向(平成十年十〜十二月期)………大 蔵 省 




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